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1958-04-22 第28回国会 参議院 商工委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十二日(火曜日)    午前十一時九分開会     —————————————   委員異動 四月十八日委員小幡治和君及び上原正 吉君辞任につき、その補欠として松野 鶴平君及び木村篤太郎君を議長おい て指名した。 四月二十一日委員椿繁夫辞任につ き、その補欠として山口重彦君を議長おいて指名した。 本日委員松野鶴平君、山口重彦君、占部 秀男君及び吉田法晴辞任につき、そ の補欠として小幡治和君、椿繁夫君、 相馬助治君及び岡三郎君を議長おい て指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     近藤 信一君    理事            青柳 秀夫君            高橋進太郎君            阿部 竹松君            相馬 助治君    委員            小澤久太郎君            小幡 治和君            古池 信三君            小西 英雄君            高橋  衛君            島   清君            椿  繁夫君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君   衆議院議員            簡牛 凡夫君            多賀谷真稔君   国務大臣    通商産業大臣  前尾繁三郎君    国 務 大 臣 石井光次郎君   政府委員    北海道開発庁総    務監理官    中平 榮利君    通商産業政務次    官       白浜 仁吉君    通商産業省重工    業局長     岩武 照彦君    通商産業省石炭    局長      村田  恒君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選北海道地下資源開発株式会社法案  (内閣提出衆議院送付) ○航空機工業振興法案内閣提出、衆  議院送付) ○継続調査要求の件 ○水洗炭業に関する法律案衆議院提  出) ○小委員会設置及び小委員の選任の  件     —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十八日小幡治和君が辞任し、その補欠として松野鶴平君が選任され、上原正吉君が辞任し、その補欠として木村篤太郎君が選任され、また、昨二十一日椿繁夫君が辞任し、その補欠として山口重彦君が選任され、また、本日、占部秀男君が辞任し、その補欠として相馬助治君が選任され、また、松野鶴平君が辞任し、その補欠として小幡治和君が選任され、また、山口重彦君が辞任し、その補欠として椿繁夫君が選任されました。     —————————————
  3. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、理事補欠互選を行います。  去る十六日、相馬理事委員辞任いたしました結果、理事に欠員を生じましたので、その補欠互選を行いたいと存じますが、その互選方法は、慣例により、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、相馬君を理事に指名いたします。     —————————————
  5. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 先ほど、委員長及び理事打合会を開き、協議いたしました結果、本日は、北海道地下資源開発株式会社法案航空機工業振興法案水洗炭業に関する法律案の順で審議いたしたいと存じます。また、明二十三日も、午前十時から委員会を開会することを申し合せましたので、そのように取り進めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  7. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは、これより北海道地下資源開発株式会社法案議題といたします。  まず、本案内容について政府委員から説明を願います。
  8. 中平榮利

    政府委員中平榮利君) 北海道地下資源開発株式会社法案について御説明申し上げます。  この法案を作りました趣旨は、第一条にあげておりますように、北海道における地下資源開発するためでありまして、特に北海道は未開発の地域が多うございますし、気候等関係で、地質その他についても未知な部面が多いので、北海道開発を促進するためには、ぜひ国家資金を投入して、特に探鉱についてやっていきたいという趣旨で、この法律案を作った次第でございます。  この会社事業は、第八条に書いてございます通り探鉱」「委託に基く探鉱」「前二号に附帯する事業」でございますが、石油につきましては、石油資源開発株式会社がございますので、それと重複しますから、石油を除きまして、その他の鉱物についての探鉱を行うということになっております。まず第一号の「探鉱」とありますのは、自分鉱業権を取得いたしまして、設定いたしまして探鉱する場合もございますし、あるいは第三者共同して、共同鉱業権を設定いたしまして探鉱する場合もあるわけでございます。第二号の「委託に基く探鉱」とございますのは、鉱業権者自分探鉱いたしませんで、この会社探鉱委託いたしまして、会社にとりましては請負になるわけでございますが、請負探鉱事業を行うという場合でございます。第三号に「前二号に附帯する事業」とございますのは、これは探鉱を行いますことについて関連する関連事業、たとえば、探鉱用機械修理とか、あるいは修理工場を経営いたしますとか、あるいは探鉱技術者を養成するための研修を行いますとか、あるいは民間会社民間と申しますか、第三者探鉱に関する技術の相談をいたしますとか、そういったことをやるという意味でございます。それから第二項にございますことは、ことに北海道は、冬季雪が降りまして、山奥の方は非常に探鉱がしにくいという場合もございますし、その他の理由によりまして探鉱事業を行いがたい場合に、機械を遊ばして置くということは不経済でもございますので、主務大臣の認可を受けまして、探鉱用機械を貸し付けまして、これは北海道に限りませんで、内地でも事業を行う予定でございますが、機械の貸し付けの業務を行いたい。そうして会社の経営に役立たせたい。こういうふうに考えて、こういう規定を設けた次第でございます。  この法律にある主務大臣は、もちろん、これは北海道で行う事業でございますので、内閣総理府の長たる内閣総理大臣主務大臣になるわけでございますが、この事業内容が、通商産業大臣の監督する事業がこの内容となっておりますので、その関係におきましては、通商産業大臣主務大臣といたしておる次第でございます。  なお、出資につきましては、政府から今年度は二億円出資することを予定しております。民間から一億円程度の出資を受けまして、半官半民と申しますか、そういった会社運営をいたしたいと考えておる次第でございます。なお、本年度は、ただいま申しましたように、大体三億円の資本金で出発する予定でございますので、民間からの出資があります関係上、民間出資の優遇ということも考えなければいけませんので、政府株の後配という規定も設けておる次第でございます。以上でございます。
  9. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 ちょっと。本年の政府出資は幾ら、二億ですか三億ですか。
  10. 中平榮利

    政府委員中平榮利君) 二億です。
  11. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 民間は。
  12. 中平榮利

    政府委員中平榮利君) 民間は一億です。
  13. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  14. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記を起して下さい。  以上で内容説明は終りました。質疑は、後日に譲ります。     —————————————
  15. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは、これより航空機工業振興法案議題といたします。本案内容について政府委員から説明を願います。
  16. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) それでは航空機工業振興法案内容説明をいたしたいと思います。  第一条は目的でございますが、先般提案理由の御説明のときに申し上げましたように、この法律趣旨といたしますところは、航空機国産化促進でございまして、なかんずく過日成立いたしました三十三年度予算に計上してあります中型輸送機国産化目的としているものでございます。この「国産化を促進するための措置」という具体的な書き方をいたしておりますが、これはあとに出ておりまする航空機工業審議会の方におきまして、具体的な方策を審議いたすことになっておるわけでございます。  それから第二条は、これはこの法律にございます「航空機等」という文句の定義の規定でございまして、大体は航空機製造事業法と同じ趣旨でございまするが、その航空機製造事業法にございます航空機のほかに、二号といたしましては、いわゆる搭載されます機械器具等のこと、それから三号といたしましては部品材料というふうなもので、いずれも通産省令できめることになっておりまして、この内容を具体的に申し上げますると、御承知のように、航空機には各種の広範な部品もございまするし、また、それを製作いたしまする材料等も広範にわたっておりますが、省会予定をしておりますることを大体申し上げますれば、航空機原動機つまりエンジン関係、それからプロペラ、それから電気通信機器、それから燃料を供給いたしまする装置、つまりタンクあるいはオイル・パイプ等、それから自動操縦装置、あるいはプロペラをコントロールします装置等がおもな部品でございます。また、材料といたしましては、軽合金のほかにいろいろ風防関係のガラスでありますとか、またその他いろんなあるいは耐熱の特殊合金でありますとかいろふうなものがあるわけでございます。大体そういうふうなものをその省令規定いたす予定でございます。  それから第三条以下は、航空機工業審議会規定でございます。現在御承知のごとく通商産業省設置法の中に航空機生産審議会というものがあります。これは航空機あるいはその関連機器生産に関する重要事項を調査審議するという任務を与えられておりますが、これは主としまして今まで航空機製造事業法関係でむしろ生産を規制するというふうな趣旨中心になりまして運用されておったのであります。従いましてこの本法のねらいといたします航空機工業振興ということは、いささか趣旨も違いまするし、また範囲も狭いわけでございまするから、今回この航空機生産審議会を改めまして、つまり改組いたしまして、新しく航空機工業審議会というものを設けて、その任務といたしましては、第四条にございまするが、通産大臣の諮問に応じまして「輸送用航空機その他航空機等国産化に関すること。」、「その他航空機工業振興に関する重要事項」を調査審議いたすことになっておるわけでございます。第一号の「輸送用航空機」と申しますのは、先ほど来ちょっと申し上げましたが、現在国産化試作研究を進めておりまする中型輸送機、あるいは「その他航空機等」とありますが、これはたとえば、例の、何と申しますか、回転翼を持って飛んでおりまするヘリコプターなどの国産化中心に考えておるわけでございます。  それから二号は、これはそういうふうな特定機種国産化ということを離れまして、航空機工業が当面しておりまするいろいろな構造問題と申しまするか、いろいろな下請等関係がございまする、このいろいろな関連した航空機工業全般の構造の問題、あるいはそれらに対しまするいろいろな税制金融等の問題を調査審議する、こういうふうに考えておるわけでございます。  組織は、第五条にございまするように、委員は二十人以内でございまして、必要のときには臨時委員、あるいは専門事項のためには専門委員を置くことができる、こういうふうに定められております。  それでこの委員臨時委員あるいは専門委員等任命等は、これは第六条にございまするように、航空機工業あるいは航空運送事業に関しまして、特別な学識あるいは経験のある方の中から、通産大臣が任命されるということになっております。この「航空運送事業に関し学識経験のある者」というのが今回輸送用航空機でございまするから、特にこの委員の選考の範囲を広げたわけでございます。  それから任期は、第七条にございまするが、二年でございます。勤務状況は非常勤、通常審議会と同様でございます。  それから第九条には、必要あれば「部会を置くことができる。」となっておりまして、これも適宜設けて参りたいと考えております。  それから十条に、通商産業省令への委任という表題で、「審議会組織及び運営に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。」となっておりますが、これは通常委員会でいいます、いわゆる議事規則といった定足数あるいは表決の方法、その他招集の手続とかいったことを省令できめる予定にしております。  それから第十一条は、これは「国有施設の使用」という表題になっておりますが、御承知のごとく、新しい航空機研究に当りましては、非常に綿密な試験研究が必要になっております。ところが一番試験研究に多く利用いたしまするものは、御承知のごとく風洞でございます。風洞施設は、これはいろいろございまするが、相当高速度風洞あるいは大規模な風洞になりますると、事業者が個々には持てませんので、これは現在民間あるいは官庁の共用に供しまするために、総理府航空技術研究所に、目下各種の近代的な風洞を建設中でございます。あるいは若干の基礎的な研究につきましては、東京大学の航空研究所にも若干ございます。そういうふうに風洞を相当利用するということが、空気力学その他の関係から、航空機設計研究には、必要不可欠な問題となっておるわけでございます。あるいはエンジンにつきましては、試験台が要るわけでございますが、これもジェット・エンジン等になりますれば、かなりな付属装置も要しまするし、また音響の問題もございまするから、やはり国有試験施設を普通設けておるわけでございます。たしか現在も防衛庁の防衛技術研究所にこのエンジン試験台装置中と存じております。そこで、そういうふうな国有試験研究所にありまする施設を利用するわけでございますが、あまり経費がかかりますと、やはり勢い航空機研究費開発費を高めまして、その償却のために飛行機の売値にも影響するということもございますので、これは一つ時価よりも安く使用さしていただこうじゃないかということで、大体の目安としましては、燃料等の直接費はこれは払うのはやむを得ないといたしますが、人件費あるいは償却費という一般諸掛費的なものはこれは一つ安くしていただこうということで、その趣旨の政令を定めることにしておるわけでございます。大体申しましたように、この国有試験研究施設範囲は、風洞エンジン試験台でございまして、あと若干小さいものがあるかもしれませんが、主としてその辺を考えておるわけでございます。  それから第十二条は「資金の確保」という表題でございますが、これは規定書き方は、通常の例文のようになっておりまするが、ねらいといたしましては、試験研究段階におきましても、現在のところ国補助金はわずか二分の一前後でございまするので、残余の分につきましては、それをまかないまするにつきましての金融、あるいは税制上の措置も要るわけでございます。また、これが試験飛行に成功いたしまして、営業生産に入りますれば、これはもちろん設備資金が要るわけでございます。それらについて開発銀行、その他の機関の融資のあっせんをいたすという趣旨規定でございます。  付則の方は別段申し上げることもないかと存じます。  問題が相前後いたしましたが、現在中型輸送機試作研究はどういうことになっているかという点を、御審議に御便宜かと存じますので、簡単に御説明いたしたいと思います。  中型輸送機試作研究の問題は、昨昭和三十二年度予算から頭を出しておりますが、この目標といたしますところは、現在、国内のローカル線、あるいは国内幹線で使用しておりますダグラスのDC3あるいは4といった機種代替機が今世界中で注目の的となっております。これらのDC3、DC4は現在生産をやめておりますので、各国とも代替機研究開発に力を入れております。そこで、われわれといたしましては、大体座席が五十人前後、それから速力も大体時速五百キロ前後、重さも二十トン前後という点の中型機種を選びまして、これが国内航空路、なかんずく飛行場の条件に合いますように、具体的な設計研究を進めさせておりまして、方法としましては、現在航空機生産に携わっております各企業から出資金を持ち寄りまして、財団法人輸送機設計研究協会という組織を設けまして、ここで各社の専門人たちが集まりまして、それぞれのテーマを分けまして共同研究をしたりするわけでございます。大体のねらいとしましては、三十二年度から始めまして、三十三年、四年くらいで基本設計を終りまして、できれば今年度あたりから並行しまして精密設計に入る。明年度あたりから機型の製作に入りまして、できれば三十六年度、七年度におきまして破壊試験機、それから試験飛行を行います一号機、二号機等を製作しまして、テスト・フライ等を行う。三十七年度の後半あるいは三十八年度になれば営業生産に入らせたい、こういうふうに考えておりまして、大体五カ年計画になりますが、今年度はその第二年度になっておりまして、予算としましては、昨年度が三千五百万円、今年度が一億二千万円、いずれも補助金として大体所要経費の五割前後という点をねらっているわけでございます。  大体、法案内容あるいはその試作研究進捗状況は、以上御説明した通りでございます。
  17. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 以上で内容説明は終りました。これより質疑を行います。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  18. 古池信三

    ○古池信三君 ただいま本法案内容につきまして、いろいろと御説明があったのでありますが、現在の航空機に関する法律、すなわち航空機製造事業法建前は、これはあくまでも航空機を作るということの監督といいますか、規制に、その目的があったと存じております。ところが、この法案は、その名前の示すごとく、航空機工業振興しよう、こういう法案でありますから、内容として、きわめて条文は少いのでありますけれども、その有する意味は、非常に重大なものがある、かように、われわれは受け取るわけであります。そこで、私どもが承知いたしまするところでは、航空機生産するということについては、非常に多種多様な技術を要する。しかも、その技術は、きわめて高度なものであり、また、精密なものでなければならない。しかも、それが、あくまでも適当なバランスをとって、総合的に発達した技術によらなければならぬ、かように了解しておるのであります。従って、そういう、あらゆる技術進歩発達して、初めてりっぱな航空機工業というものも、ほんとうに完成を見る。また逆に言えば、航空機工業が発達すれば、また、それが各産業技術の面においても、非常に多大な貢献をするものである。両々相待って進歩発展するように考える次第でありまするが、わが国航空機に関する技術は、終戦後七年というものは全くの空白時代であって、しかも、その間に諸外国技術は非常に急速な進歩を見ておると存ずるのであります。この空白時代をいかにして取り返すか。現在の日本技術が、外国に比べて非常な格段の見劣りを見せておるということも考えられるのでありまするが、しかし、また翻って考えますると、かつては、わが国おいても航空機工業が非常に進歩して、諸外国水準にまで達しておった、決して外国に比べて遜色のなかったような時代もあったかと思うのであります。そこで、今日、この法案を提案されまして、これによって政府が大いに航空機工業発展を推進していくという建前をとられる際においては、先ほど申し上げましたように、わが国航空機工業に関する諸技術が、それによって格段進歩をするか、あるいは、かつてのように、諸外国に比べて劣らないだけの国際水準にすみやかに到達し得る能力があるかどうか、これは非常に基本的な大事なことであると思うのでありますが、これに対する大臣一つ確信のあるところをお示しいただきたいと思います。
  19. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまの御質問で、お話しにありました点は、全くわれわれ同感でありまして、以前は相当な航空機工業を持っておったのが、終戦以来、非常な空白と相なりまして、今、世界の諸国から比べますと、非常に劣っておる。その点につきましては、われわれとしましても、非常に残念であります。しかし、これを取り戻しますことは、一面、産業全般について技術向上もなければなりませんし、さらにまた、逆に、航空機工業振興することによって、また、その関連する産業技術向上を見ることができるわけでございまして、これは両々相待っていかなければならぬと考えておるのであります。もとより一般の技術振興につきましては、すでに従来から、いろいろと申し上げておりますように、科学技術振興ということに、通産省におきましても、特段の力を入れます半面におきまして、航空機工業振興して、それに関連いたします機体はもとより、部分品というようなものにつきましても、格段進歩をはかりますことによりまして、両々相待って科学技術振興をはかっていきたい、かように考えておる次第であります。まあ、従来も軍用機といたしましては、いろいろ自衛隊等におきまして発注しました飛行機を作っておるのでありますが、われわれとしましては、ことに輸送機について重点を置いてその振興をはかり、また、今後におきまして、輸送機の輸入を極力少くし、半面におきまして、将来、輸出もしていかなければならぬ、かように考えておりますので、その点につきましては、この振興法中心として今後、極力、技術向上、また、輸送機国産化ということについて、格段の努力をいたしたい、かように考えまして、この振興法を提案したような次第であります。
  20. 古池信三

    ○古池信三君 現在、外国における航空機工業発展というものは、非常に目ざましいものがあって、全く日進月歩である。もう一日たてば、それだけ非常に進んだ航空機ができように承知しておりまするが、従って、本法案を出されて、わが国おいても国産化を推進しようということは、これはもう当然なことであって、むしろ、われわれからいえば、法案の出し方がおそ過ぎたのじゃないかというようなくらいの感さえ抱くのでございます。そこで私が、国民全体の立場から考えてみまするに、今でも、すでに戦争が終って十数年を経ました今日でも、飛行機というと、すぐに軍用機、あるいは戦闘機、あるいは爆撃機というものを連想するのであります。それは、おそろしい戦争おいて、われわれが日夜空襲に攻められた、こういう印象がまだまだ深く残っておりますために、飛行機といえば、すぐ軍用機というふうに結びつけられる懸念が多いのであります。もちろん、ただいま大臣からも御説明がありましたように、この法案の意図するところは、もっぱら輸送機国産化の推進である。そういう点はその通りであろうと存じますけれども、この航空機技術を推進することによって、また、軍用機生産というようなことに力を入れるのじゃないかというような疑惑を国民が拘くとすれば、これはこの法案の意図するところとはなはだほど遠いと存ずるのであります。こういう機会に大臣からはっきりと、この航空機工業振興は、あくまでも平和的な用途に用いられる輸送機工業振興である、こういう点をはっきり宣明される必要があると思うのであります。もちろん、特に戦後における民間航空輸送事業の発達というものは、これはもうすばらしいものでありまして、わが日本における実情は今なお貧弱でありますけれども、欧米の例をとってみれば、これは全く昔日の感がありまして、もうすでに人類の生活の上において、平和的な生活を営む上において、航空機というものはほんとうに不可欠のものである。現在、文明の一番先端をいくものであるということは、これはもう疑いをいれないことであります。従って、そういう面から、わが国民の生活を向上し、利便をはかり、また、産業経済を発展せしめる、あらゆるそういう原動力となる航空機の輸送事業を進展せしむる一翼として、これが国産化を推進するものである、あくまでも、その目的は、平和的な輸送機国産化であるという点は、これは当然のことであって、これに対しては、われわれはもう何らの疑いを持たないのでありまするが、政府として、こういう法案を出されるからには、その点をはっきり宣明をされる必要があると思うのであります。これに対する大臣の所見をただしたいと思います。
  21. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) この法案はあくまで平和利用、ことに輸送機中心として考えておりますことは、はっきり申し上げたいと思います。この点は衆議院におきましても、はっきり御答弁をして参ったところであります。軍用機につきましては、これは自衛隊で使いますものは予算をもってやりますから、特にこういう法律を必要といたしません。それならこれをはっきり目的か何か航空機を限定したらどうかと、こういう御意見もあろうと思います。しかし、法律技術といたしまして、部分品等におきましては、これは全くこれを区別するわけに参りません。また、結局業者もそう数がたくさんあるわけではありません。民間機と軍用機というふうにはっきり分けて、それはどの機械はどうだというふうな区別もできませんために、こういうような法律にせざるを得なかったのであります。その意図しますところは、あくまで民間の、ことに第四条の第一号にもあげておりますように、輸送の航空機というものを中心にしてこの法案を作った次第でありますので、その点は明確に申し上げておきたいと思います。
  22. 古池信三

    ○古池信三君 それから続いて、本法案によってまず最初に手をつけたいと言われたのは、中型輸送機であります、中型輸送機をまず最初に取り上げられたその理由について、さらにまた、先ほどその概要については御説明があったのでありますが、もう少し詳しい年次計画でももしあれば、それを示していただきたいということが第二、それから第三に、一体現在の世界の情勢からいって、中型輸送機というようなものについて、外国おいてはどんな態度をとっておるのか、どんな政策をとっておるのかという点についてお答えをいただきたい、この三つの点についてとりあえずお伺いいたします。
  23. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 最初のなぜ中型輸送機の問題を一番最初に取り上げたかという御質問に対して、お答えいたしたいと思います。現在日本民間航空輸送事業者の持っておりまする飛行機の中で、国内路線に使っておりますものは、日本航空にダグラスの4が九機、あとヘロンといった中型機が四機でございます。それから日ペリ航空と極東航空が合併してできました全日本航空会社におきましては、保有機数二十三機ございますが、このうちヘリコプター五機がありますので、それを除きましてあとの十八機のうちで、ダグラスの3が五機ございます。その他いろいろな多くの機種中型機を持っております。先ほど申しましたように、ダグラスの3、4といった機種は、現在アメリカの方でも生産を中止いたしております。従って現在若干部品の補給の問題もございますが、将来これらの飛行機のかわりの機種を何に求めるかということが、日本としても問題になるわけでございます。それから東南アジアの各国の保有機数を調べてみますと、これは保有機三百機余りございますが、そのうちでダグラスの3、4といったものが百六十機あります。大体半数は、今申しましたダグラスの中型のものでございます。で、これらもまた、日本民間航空輸送事業者と同じく、将来ある時期には代替機の問題に当面いたすわけであります。そういうわけでこのダグラスの3、4というのは、非常に長い寿命を持ちまして、戦前でも、たしか日本では中島飛行機がライセンスを取りまして、たしか三百機余り生産しております。非常に寿命の長い飛行機でございますが、遺憾ながら古い型のものでスピードもおそいというふうなことで、現在は生産を中止しております。この代替機を何とか求めなければならないということで、各国ともこの開発研究にいろいろ力を注いでおります。先ほど御質問の第三の点と関連いたしますが、オランダでは特殊法人を設けまして、政府がそこに金を出しましてかなりの年月をかけまして開発研究を進めまして、最近やっとフレンドシップというこれの代替になり得るような機種を一応完成したようでございます。そこでわれわれといたしましても、これらの飛行機をかりにほかの新しい型のもので輸入するといたしますれば、大体一機あたり五十万ドルないし七十万ドル、これに補給いたしまするエンジンその他の部品を考えますれば、その五割増しになるのが普通でございますから、これは国際貸借上が相当の負担になるわけでございまするし、おまけに今後の航空旅客人員の趨勢を見て参りますると、世界的にも大体毎年一割五分前後の増加率を示しております。日本では特にこの両三年来増加の傾向が急ピッチでございまして、三〇%をこしておるような年もあるようでございます。そういうふうになりますると、今後ますます新しいルートの開拓もありまするし、また、既存の航空ルートにいたしましても就航します機数をふやすということになって参りまするし、また、先ほど来申し上げましたダグラスの機種の代替という問題もありますので、非常に飛行機の需要がふえて参ります。大体推算いたしますると、昭和三十八年から四十二年あたりにかけまして五、六十機以上になるんじゃないかというふうに考えております。そのほかに幸いにいたしまして日本の国産機が輸出できますれば、これまた東南アジア方面の代替機に当るわけでございます。そういたしますと、大体四年間に百機、年産二十五機はまず間違いないところではないか、こういう工合に考えております。  そこで、しからばどういう性能なり規格といいますか、の飛行機が適当かということも、いろいろ輸送機設計研究協会で各国の例も調べまして研究いたしたわけでございますが、現在まで得ておりまする一応の結論といたしましては、これは座席の数は大体五十座席、これにいろいろ搭載物等の関係で予備座席をつけますれば六十座席になるかもしれませんが、大体五十、それから大きさは幅が二十八メートル、長さが二十六メートルといった中型のもので、翼面積八十平方メートル、全装備重量は大体二十トン前後という辺の、ちょうど現在のダグラス・3と4の間のものになります。それからエンジンでございますが、これは相当研究してもらいましたが、やはり世界の大勢を見ますると、ある程度高速ということが必要でございます。従って純粋のプロペラ、ピストンのプロペラ機では、もうそろそろ時代おくれだということになると思いますが、さりとてこの軍用機なんかに用いておりまする、あるいは大型の国際線で使っておりまするジェット・エンジンを使いますると、これはそれなりの性能がございまするが、少しスピードが早過ぎたり、あるいは滑走距離が非常に長過ぎたりいたしまして、どうも日本のローカル輸送には向かないようでございます。世界の趨勢を見ましても、やはりこのプロペラあるいは純粋のターボ・ジェットで小回りのきくローカル線に使うという方向ではないようであります。むしろ、いわば両者を折衷と申しますか、ジェット・エンジンでふかしました燃料でタービンを回しまして、そしてそれをシャフトを通じてギアで減速してプロペラを回すという、いわゆるターボ・プロップ・エンジンが、大体どこの国でも中型輸送機には一番適当だというふうな結論で開発に努力しておるようでございます。そこで、日本といたしましても、これへ載せまするエンジンはやはりターボ・プロップがいいだろうと思っております。ただ、御案内のように、現在、日本ジェット・エンジン会社で作っておりまする小さいジェット・エンジンも、まだ完全に成功いたしておりません。なお若干の試験も残っておりますような状況でありますので、当初から国産のエンジンということはかなりむずかしいかと存じますので、ここは少し大事をとりまして、当初は輸入しても、できるだけ早い機会に国産したエンジンで取りかえようというふうに考えております。輸入いたします先も、あるいはイギリスのロールスロイスのダートという型が、かなり安定して世界的にも評判がいいようでございまするから、まあ、一応このエンジンを搭載するということで、性能を見ますと、巡航スピードが大体五百十キロメートル、時速でございますが、現在のダグラス3よりはかなり早いのでございます。また、航続距離も、これもまあいろいろ設計の問題が残っておりまするが、千キロメートルは必要かと思っております。大体そういうふうなことの性能を持ちました中型輸送機を自力で、自分のもともとの研究と設計から作り上げるということで始めておるわけでございます。  それで、先ほどちょっと申し上げましたが、大体の段取りといたしましては、昨三十二年の中葉からこの基本的な設計の研究を始めておりまして、これは先ほども申しましたように、輸送機設計研究協会という財団法人に加盟しておりまする各企業から専門家を出し合いまして、テーマをそれぞれ分けて共同研究をやっております。大体三十四年の中葉に終る予定であります。引き続きまして、先ほどちょっと間違いましたが、詳細設計に並行して入りますし、なおこの木型も今年度から作成に着手したいと思います。試験飛行を行いまする飛行機は大体三十六年ないし七年の前半には二つほど作って飛ばしたいと思います。従いまして営業生産に入りまするのは、大体三十七年度の後半から三十八年度、こういうふうに考えております。
  24. 相馬助治

    相馬助治君 議事進行。局長の懇切な説明を聞こうと思うのですが、わが党からもこの航空機工業についての、基本問題について、大臣にただしたい点があるわけです。聞くところによると、大臣は何か法案関係で、暫時衆議院に一たん行かなくちゃならないということがあるそうですから、御意見が質問中ではありますが、まあ許されるならば、わが党の方からの、大臣に対する基本質問をやらしてもらいたい。議事進行上特段に希望します。
  25. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 局長の答弁まことにけっこうで、われわれ教えられるところが多いのですが、諸般の情勢上、なるべく一つ簡潔に要領を得た答弁を一つ
  26. 古池信三

    ○古池信三君 大臣の時間の都合もありますから、相馬理事から発言されましたように、大臣に対する基本的な御質問があれば、それをやっていただき、私はまた後刻に、政府委員に対する質問を、少しありますから留保いたします。
  27. 椿繁夫

    椿繁夫君 この法案を、ずっと通覧しまして、審議会を置くことと、航空機国産化を促進するために「必要な資金の確保に努めるものとする。」ということが大体骨子のように見受けられますが、先ほど古池委員が、最初に疑点を持たれました民間航空工業振興ということについては、もちろんこれは異議はない。むしろ、おそきに失するという御意見があり、ただ、これが軍の軍需輸送力の工業振興ということに途中で転換されるのではないかという心配を、私どもも持つのであります。そこで、政府としても、長期にわたる経済計画をお持ちなのでありますから、輸送力の総合計画、造船、自動車、航空機民間輸送力の総合計画というふうなものについて、まずその構想を明らかにされ、軍の輸送力はこれこれで、この法律を成立させることによって、民間航空工業生産をする輸送力の目途というようなものを、私はまず明らかにしていただきたい。そうすることがこの軍需工業に、これが途中で転換するのではないかということの疑点を晴らす一番肝心なことではないかと思いますので、第一にこれをお尋ねいたします。  それから御説明にもしばしばありますが、輸送用航空機工業振興ということが目的であると今言われているのでありますが、その他「航空機等」というまぎらわしい言葉が出て参りまするから、なおさらこの疑点を深めることに相なりまするので、もう少し法律おいて、立法の目的というものを明確にする必要があると思うのですが、どういうことをこれはお考えになっているのであろうか。このことが第二点であります。  それから同じような見地で、審議会の構成が五条以下述べられているのでありますが、二十名の委員の中に、防衛庁関係の人もこの中に含めて、委員会を構成するつもりかどうか。そういうことになると、これはますますもってそういう面の疑点を増してくることになるのでありますから、この委員会の構成等について明らかにしていただきたい。  この二点を明瞭にされれば、私はこの古池委員が持っておられるような疑点が明らかになり、私どもの心配しております点も解明されると思うのであります。大臣の所見を伺います。
  28. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 第一点の輸送力の問題でありますが、これはまあ、陸上の輸送関係につきましても、ただいま運輸省と建設省、また、われわれといたしましても、いろいろ検討いたしておる段階であります。運輸関係閣僚の審議会を設けまして一元化なり、今後の輸送関係についての方針をきめていく、こういうような段階でありますので、いろいろすでに作られたものもありますが、まだ、それも政府の方針としてきめておるわけではありません。従って、またこの空輸という問題につきましては、これは今後の問題でありますので、従って航空機による輸送の関係につきましては、もちろん先ほど局長説明いたしましたように、一応の考え方は持っておるわけでありますが、まだ成案を得たものはないのでありまして、運輸省において、ただいま検討中ということにいたしておるのであります。  そこで、第二の「航空機等」という点につきましては、先ほど申しましたように、われわれは中型輸送機を最初に取り上げるわけでありますが、輸送機中心として民間航空機を考えておるわけであります。軍事用の軍用航空機につきましては、これは自衛隊として考えていけばいいことでありまして、振興法を作るという必要はないのでありまして、振興法を作りますゆえんは、民間航空機というものを考えておるからであります。ただ、「航空機等」と広く取り上げておりますのは、先ほど申し上げますように、この業者は全然別のものがなるわけではありません。また、部分品等につきましては、区別するわけには参りません。そういうような点からいたしまして、輸送機あるいは民間航空機ということに限定することは、非常に法律的に困難でありますので、そういう関係で、こういう規定の仕方をいたしておるのであります。  また、審議会につきましては、その委員の構成は、もとより航空機関係研究所の技術員の方というような人には入ってもらうのでありますが、いわゆる自衛隊におきましても、戦略というか、そういうような方面の人が入るわけではありません。その点は明瞭にいたしたいと思います。
  29. 椿繁夫

    椿繁夫君 輸送力の総合計画ということが、経済五カ年計画などの根本にならなければならぬと思いますが、ただいまの御答弁によりますと、何か検討中ということであります。これはまことに、もってのほかの御意見でありまして、三十七年の下期、三十八年になれば営業生産にかからせたい、こういうおつもりで、この法案を提出されておるのでありますが、どの程度民間輸送力というものを形成したいという目標が明らかにならないで、こういうことを計画されるということは、かえって去年の予算編成当時も景気の見通しを誤まって、設備の過剰投資を刺激して、それが今日の不況を招いておる、この内閣の重大な失敗を、また、この航空機工業振興計画がもし誤まるようなことになりますれば、ふたたびこれを繰り返すことになるのであります。ですから、私はこの航空機工業の投資並びにその生産の年次計画、そうして一体どういうところにわが国民間航空輸送力というものの目標を定めていくかということが、基本的には定まっていなければ私はならぬと思うのですが、検討中ということでは、これは得心ができませんので、重ねて大臣の御答弁を求めます。
  30. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もとより、われわれとしましては、一応の想定はいろいろ持っております。その点につきましては局長から。
  31. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) これは正式に公けの機関できめたものではございませんが、運輸省の推算によりますると、三十二年度の航空旅客人員、これは国内幹線でありますが、四十万六千人、これが三十八年になりますると大体七十三万五千人、四十一年度になりますれば九十万二千人、こういうふうに、かなりなピッチでふえるのではなかろうか、こういうふうに推算しておるのであります。
  32. 椿繁夫

    椿繁夫君 ただいま重工業局長のお示しになりました航空輸送力の推定でありますが、これはあなたの方でお持ちになっているだけで、政府として一致した見通しということではないのですね。で、航空旅客というものがこのように年を追うて伸びるだろうという推定に基いて、今回この民間航空工業振興したい、こういうことでありますが、これはもう少し本ぎめにしてもらわんと、まじめに法律が今できてしまいますと、軌道に乗るわけですから、軌道に乗れば、このときは単に重工業局だけの見通しでやったのだということでは、これは大へんな国の計画を誤まることになりますから、これは本ぎめに一つすみやかにしてもらいたいということを望んでおきます。  それから第二の、民間航空工業振興するためにこそ、この法律を出したのであって、軍事航空機生産に転換するようなことはないということでありますけれども、それならそのように、私は各条文を通じて明確に限定する必要があるのではないかと思うのですが、こういうことは法律技術的にできないことなのでしょうか、そのことが一つ。  それから審議会委員の中に防衛庁関係の戦略方面を担当しておるような方は、委員に委嘱するつもりはないということは明らかになりましたけれども、防衛庁の人はどうしても、技術的な方面に限定をするにいたしましても、防衛庁関係の人をこの二十人の中に加えていくお考えでしょうか。この二点を一つ大臣から。
  33. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 防衛庁の方の、先ほど申しました防衛庁の技術研究所の施設を、これはエンジン試験台がおもでございまするが、これはやはり中型輸送機開発等につきましては、いろいろ使用さしてもらう必要もございまするし、その他防衛庁の関係も、航空の技術につきましては、まあかなりの知識、経験を持っておりますので、これはやはりそういう方を審議会委員としていろいろ御審議にあずかっていただきたい、こういうように思っております。  それから法律技術の問題でございますが、これはそういう意味を含めましていろいろ立案のときにも研究してみましたが、どうもいろいろと共通の材料部品等の問題も出て参りましたりいたしまするので、むずかしいような羽目になりまして、立法技術としては、かなりまずいようなことになりまするので、それならば、むしろ、先ほど来大臣が申しましたように、運用で、これは民間機の生産中心に運用して参ろうということで考えたわけでございます。衆議院の方でも、その御趣旨で厳重な付帯決議がつけられたわけでございます。
  34. 椿繁夫

    椿繁夫君 技術向上及び国際収支の改善に寄与すると、こう大前提があるのでありますが、これは将来国内民間航空には国内でできるものを、ひとり日航といわず、ローカル線の方にも国内機を使わせると、こういうこれはつもりがあるのでしょうか。  さらに、この国際収支の改善ということは、これまで輸入に仰いでいたものを国内で作るようになるから、この面から収支の改善に寄与するということだけで、この輸出というようなことについては、お考えになっていないのか。もしあるとすれば、東南アジア等の市場性の見通し等について明らかにしていただきたいと思います。
  35. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 国際収支の改善につきましては、もとより国内で使います航空機は、極力国産でいかなければならぬと、そうして輸入を防渇するという意味におきましての収支改善が主たるものでありますが、しかし、これは量産をしていかなければなりませんから、あくまで今後におきましては、輸出ということも考えていかなければなりません。まあ、それにつきましては、日本で優秀なる飛行機ができるということになりましたら、御承知のように各地で今後航空路はどんどん東南アジア諸国におきましては開けて参るわけであります。十分今後フィリピンなりあるいはインド、インドネシアその他の国々につきましても、日本飛行機が輸出をされるという見込みは私は十分あると、かように考えておる次第であります。もとより、まあ具体的に何機というような計画を、ただいま作るわけには参りませんが、将来は十分その面にも輸出をしていきたいという意味合いにおきまして、国際収支の改善ということを考えておるわけであります。
  36. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは、午前中はこの程度にとどめ、午後は一時半に再開することにして、暫時休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      —————・—————    午後二時二十二分開会
  37. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより委員会を再会いたします。  委員異動について御報告いたします。吉田法晴君が辞任し、その補欠として岡三郎君が選任されました。     —————————————
  38. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、継続調査要求の件についてお諮りいたします。本委員会の調査案件であります経済の自立と発展に関する調査につきましては、前国会に引き続き今国会におきましても政府の基本方針を初め、産業経済各般の問題につきまして別に調査をいたして参りましたが、本調査は、その対象が広範多岐にわたり、常に内外の情勢の変転に即応して、一貫した調査を行う必要があると存じますので、この際閉会の終りにおいても継続して調査を行いたいと存じます。この旨、継続調査要求書を議長あて提出することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  40. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、午前に引き続き航空機工業振興法案議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  41. 古池信三

    ○古池信三君 時間の関係上簡単に質問いたしますから、どうか簡潔にお答えを願いたいと思います。  まず、第一条の目的の中に、この法律によって「国際収支の改善に寄与することを目的とする。」、こういうふうな条文が掲げてありますが、国際収支の改善といえば端的に申して、まず輸入を防遏し、さらに輸出を伸ばすというところにあろうと思うのであります。現在までのわが国航空機工業の現状から言いますと、おそらく相当な航空機並びに部品の輸入があったであろうと思うのですが、これらの実績についてわかっておる程度、お答えをいただきたいということ。  それからもう一点、輸出の振興政策ということにつきましては、先ほどもちょっと話がありましたが、中型輸送機を作って、これを輸出する、これはなかなか実際の問題となってみれば、容易ならぬことであろうと思うのであります。航空機一機の価格からいいましても、あるいはまたその性能、またはこれを使用する国の側からいいましても、いろいろな事情があって困難性が多いと思いますが、これについて相当確実な見通しを政府は持っておられるかどうか、まずこういう点についてお尋ねいたします。
  42. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 昭和二十七年に民間航空が再開しましてから昨年度末までに輸入をいたしました金額は合計九千七百万ドルでございます。今後の問題としまして大体この種の機種は一機当り七十万ドル見当かと思います。これに補給品、その他を加えますと、五割増しとなりますから、年間かりに二十五機とすれば千五百万ドル見当は輸入することになると思います。  それから輸出でございますが、これは午前中申し上げましたごとく、東南アジア方面にダグラスDC3という機種を半分使っております。これは世界の他の地域よりもずっと率が多いわけであります。この方面に対しましてこの施策が成功いたしまして、ある程度の経済ベースに乗りますれば、これは何機と今予想を、はっきりした数字を申し上げられませんけれども、かなり輸出ができるだろうと考えております。
  43. 古池信三

    ○古池信三君 それからこの航空輸送事業に対しましては、たとえば日本航空株式会社等に対しては、政府が従来相当な助成をやってきておるのであります。これはもとより日本の現状として、必要のあることで、当然と思いますけれども、これに比較しますと、航空機製造という面においては、今まで非常に国家の助成というものがほとんどなかったといっていいくらいであろうと思うのであります。今回こういう法律案を出して、大いに国産化を推進しようという以上は、将来航空輸送ばかりではなく、航空機工業振興という意味合いから、生産面においても政府が相当な助力をすべきであろうと思うのでありまするが、これに対しては本法案についてはその第十二条でありますか、きわめて簡単な規定がここに定められておりますが、もう少し強力なる措置を講ずるような意思はないかどうか、それに対してお答えを願いたいと思います。
  44. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 実は本年度予算の要求当初に当りまして、この設計研究を行いまする財団法人に対しまして、政府出資をした特別法人にしようということで予算要求も行いましたが、いろいろな関係上実現しませんで、残念に思っております。外国の例を申し上げますと、いろいろ政府出資を行いましたり、あるいは試験研究費をまるがかえするとかいうふうに、民間航空機開発につきまして、各国とも非常な助成、援助をいたしております。それで、この法案が成立いたしました暁には、この審議会等でいろいろ御審議願いまして、適切なる助成あるいは促進の機構につきましても、検討していただきたいと考えております。衆議院の方の付帯の御決議も第二項においてそういう趣旨のことをうたっておられますので、われわれも実施に当りましては、十分その点も検討いたしたいと思っております。
  45. 古池信三

    ○古池信三君 次に、第十一条の国有施設の使用の問題ですが、国有試験研究施設を利用させる、その場合にこの対価を時価よりも低く定めることができるということがありますけれども、この場合時価という言葉が、やや異様なようにわれわれは感ずるのであります。そこで、今までも国有試験研究施設を、民間に一定の対価を支払わせて利用させたような事実が相当多くあったかどうか。それからこの場合に時価というのは一体どういうようなものをさすか、この内容についてお尋ねをいたします。それからなお、この時価よりも低く定めるということは、結局その航空機工業をやろうという者に対して、国がそれだけ助成をする意味でありますが、いっそそこまで国が考えるならば、無償で国の試験研究機関というものを利用させたらどうか、こういうことも考えられるのです。要するにその収入というものは国庫の収入になるわけです。それによって研究機関が直接にどうこうということはなかろうと思うのです。そうなれば、むしろもうただで使用させるということも考えられるのじゃないかと思うのですが、そういうような規定がここに定められておらぬのであります。それらの点についての政府の考えをお尋ねしたい。  それから最後に、十一条の政令で委任されているような規定がありますが、どういうようなことを政令で書こうとしているのかという点についても、合せてお尋ねをしたい。
  46. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 国有試験研究施設を利用しました民間企業の例としましては、軍用機でありますが、富士重工業の今度完成しましたT1F2という中間ジェット練習機の問題があります。これが研究開発の途上におきまして、東大の航空研究所風洞を使用しています。それで風洞等の使用料の時価という問題がございますが、いろいろ関係当局の計算の基礎その他を検討してみますと、直接費としまして、風洞でありますれば、扇風機を回しまする電気代、エンジンでありますれば、エンジンに使用いたしまする燃料あるいは潤滑油といったものが直接費として必要、間接費といたしましては、人件費の割当、あるいはその施設償却費の割当等があるわけであります。そこで、われわれも当初無償と思って、いろいろ交渉してみましたが、無償にいたしますると、この扇風機を回しまする電気料とか、あるいは、エンジンの運転をいたします油の方が研究所の支出になります。そうすると、相当予算で縛られておる研究所自体が困るような事情がございますので、まあ直接費の方は、これはやむを得ず払うといたしまして、間接費に当りまする償却費あるいは人件費等を負けてもらうということで話をつけております。で、そういうふうな趣旨のこと、並びにどこの試験所のどういう風洞を使う場合に、そういうことを適用するかというようなことを政令できめたい、こういうように考えております。
  47. 古池信三

    ○古池信三君 そこで、現在のこの国有試験研究機関がある。それぞれ優秀な研究所がもっぱらその独自の研究を進めておられると思うのですが、こういうふうに民間事業者がそこへ入って試験研究を行うことによって、本来の施設目的を害するようなことはないか、あるいはかような研究所に対して犠牲をしいるようなことがないか。そういう点がやや心配されるのですが、そういう点についてはどんなふうにお考えになっているか。
  48. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) これは若干研究所の性格でも違うと思っておりますが、総理府航空技術研究所の方は、これの設立の趣旨は、本来ここの研究機関は、民間企業等で個々的に持つことが不適当なものの共通設備として作ったものでございます。そういう趣旨で、あそこにも設備の共同利用の連絡機関がございます。でありますから、これはそういうふうなお互いに利用し合うもの同士の調整をはかりまして、その施設を利用する。これは本来の目的に合うわけでございます。別段固有の研究施設のじゃまにならぬと思います。東大の航空研究所、あるいは運輸省の運輸技術研究所等になりますと、これは若干固有の研究もございましょう。そこらあたりは、もちろん話し合いで向うの研究なり試験のじゃまをするということのないように、これは十分運用でやれると考えています。
  49. 古池信三

    ○古池信三君 それから最初に私が申し上げましたように、航空機工業技術というものは、非常に多岐多様にわたっておる。こういう点からいたしまし三簡単に航空機工業というと、非常に大企業に片寄っておるような感じを与えますけれども、実は掘り下げて考えていくと、特に部品工業あたりおいては、相当専門的なやはり中小企業を育成していくという線に力を入れて、初めてこの総合的な一つ工業が成り立っていくんじゃないかというふうに考えておるわけであります。こういう点については、政府はどんなふうにお考えになっているか、また従来も、かつてわが国航空機産業の非常に盛んであった当時において、これらの技術に関与する中小企業がどんなふうな状態であったか。なお、今後日本の中小企業振興面からいって、本法案の成立が非常に寄与するところが多いんじゃないかというふうに考えられますが、これについての見通しはどうか、お答え願います。
  50. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 現在民間機を作っておりませんので、軍用機の例になりまするが、新三菱重工の名古屋の工場あるいは川崎航空機の岐阜の工場等の例を調べてみますと、あの比較的小さいと申しますか、工数の少いジェット機の機体を作るだけでも、現在大体関連の企業がそれぞれ二百五十をこしております。もちろん、共通のものがあると思いますが、その企業の中には、若干材料関係等の大企業もあることはございますが、その大部分はもちろん中小企業でございます。それで中小企業のこのいろいろな製品、これはもちろん機械関係もございまするし、電気関係もございまするし、あるいは化学関係、計測関係と、非常に広い分野を持っております。そういうものの、この航空の技術水準は、非常に高い精度、規格を要求しております。そういう高度の技術水準に中小企業を持っていくということ、あるいはその生産の方式等を、近代的な管理方式にのっけるというふうなことで、非常に中小企業に対しまして、一つは相当大きな量の仕事を与える、もう一つはいい精度のものを作る習慣といいますか、管理方式を教えるということで、この航空機関係の中小企業は、何といいますか、この航空機工業を通じまして、まあいわば近代的な経営管理の方式に踏み込んで参るということで、われわれは非常に期待しておるところであります。戦争中は、よく存じませんが、おそらく日本中の関係業種の工場のほとんどというものが、軍用機生産の下請工業になっていたんじゃないかと思っております。そういう面からもどこの国におきましても、一番山のてっぺんの航空機工業振興ということを通じて、下の関連企業まで育成するというふうな政策がとられておると思います。
  51. 古池信三

    ○古池信三君 ただいまの御説明にありましたように、この航空機工業振興に従って、あるいはそれと相伴って、関連産業、いわゆる中小企業の技術面の向上、さらにまた、中小企業の設備の近代化ということが実現を見るであろうということは、非常にこれは日本の現在の立場からいって、けっこうなことだと考えますが、そうしますと、本法案の第十二条の「政府は、航空機等国産化のための設備の設置に必要な資金の確保に努める」、そういう場合には、母体である航空機工業に対する設備の設置等に限らず、今申しましたような直接の関連産業である中小企業の設備の近代化というようなことについても、その資金の確保には政府は努力するというふうに考えてよろしいかどうか、一つこれもお答え願います。
  52. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) もちろん、関連企業につきましても適当な対象でありますれば、これは財政投融資等の直接の対象になりましょうし、あるいはアッセンブルをいたしまする親企業といいますか、総合組立企業の保証によりまして、下請関係の企業等に、現在もすでに二十億円程度の設備投資が行われております。これはいろいろ関係当局のあっせん等もございまするし、あるいは自力で相当やっておるものもございます。いずれにいたしましても、こういうふうにはっきりした製品の納入先等が保証されておるということになりますれば、金融の面で比較的レールに乗りやすいと思います。われわれの方も、そういう方向で指導したいと思っております。
  53. 椿繁夫

    椿繁夫君 午前中からの御説明によりますと、昨年三千万余、本年一億二千万ですか、試作研究費のために国庫支出をきめているわけですが、三十七年度下期以降営業生産に大体かからせるようなつもりで国の助成計画というものも立てていく、こういうことでありますが、一体わが国民間航空のどの会社に、将来一体どのくらいの中型輸送機を作らせるか、何か計画があるんでしょうね。
  54. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 生産機数につきましては、午前中に申し上げましたように大体年産二十五機見当かと思っております。この飛行機中型機でございまして、割合工数も多いものでございますから、月に二機と申しますれば、小型の戦闘機あたりになりますと、これはもう十機をこすような仕事の量でございます。かなりの仕事になるわけです。どの企業に作らせるかということでございますが、これはまだ実は具体的な検討をいたしておりません。と申しますのは、今後いろいろ設計あるいは木型製作の仕事を進めて参りまして、あるいは翼と胴体とを分けて作らせて、どこかで組み立てた方がいいか、あるいは別口の会社に作らせてそこでまとめてやった方がいいか、いろいろ検討の余地があるわけです。これはもう少し研究試作の段階が進みましてから決定するのが適当ではないかと思っております。
  55. 椿繁夫

    椿繁夫君 これは三十七年の下期以降年産二十五機という生産目標でございますか。
  56. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 正確に申しますと、三十七年度半ばごろまでに試験飛行機の二号機が作られまして、ここでしばらく飛ぶわけでございます。そうしていろいろ性能、設計等の改善すべき点もございましょうし、いろいろ試験飛行を行いました結果で、営業生産になると思います。やはり三十八年度になるんじゃないかと思いますが、その辺から積極的に国内航空輸送事業者に対しましてこれを使うように売り込むわけです。もちろん、試験飛行に際しましても、いろいろとそういう航空事業関係人たち共同試験飛行を行わなければいけませんが、そういうことを十分に安全性を確めた上で、われわれの方といたしましてはできるだけ輸入しないで、この飛行機を使ってもらいたいというような行政指導をいたしますし、また、その際たとえば関税の問題でありますとか、あるいは外貨の割当等を通じまして、積極的に国産機の使用を勧めて参る、こういうことになるだろうと思います。その暁で、もちろん注文が要りますから、はっきり初っぱなから月々の注文があるかどうかわかりませんけれども、ならして見ますれば、大体その見当の需要はあり得るんではないか、こういうふうに推定するわけでございます。
  57. 椿繁夫

    椿繁夫君 三十八年度から年産二十五機、それでずっと、こう先ほどの航空輸送の見通し等の御発表があったわけですが、国内需要とそれから輸出の市場がどうも手探りである感じを受けたのですが、年産二十五機程度で設備は大体押えたい、こういう御方針ですか。
  58. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) これは別段それで押えるという意味は毛頭ございません。注文があればこれは幾らでも作るべきだと思っております。ことにその後になりますれば、軍用機の方の仕事がかなりあくかと思いますので、かなりの能力は出てくるだろうと思います。問題は、むしろこの飛行機の売り込みにあるわけでございます。性能とそれから値段ということが問題になるわけでございます。御参考までに申し上げますと、東南アジアの各地で現在各国を合せまして三百二十機ばかり輸送機を持っております。これは各国とも民間航空非常に熱心でございますので、割合機数が多いわけでございますが、そのうちでこの中型輸送機がねらっております程度の性能、あるいは大きさの飛行機が、百六十一機ございます。ダグラスのスリーとフォアでございます。このあたりの身がわり機には、今度考えておりますのが、ちょうど適当だろうと思います。と申しますのは、東南アジア各地とも滑走路が大体短かいわけでございます。大体千二百メートルどまりでございます。ちょうど今度考えております機種が大体千百メートル前後の滑走で、悪い条件の場合でもいいようでありますから、一番手ごろの飛行機と、こういうふうに思っております。今の安全性とそれから経済性の問題がある程度のことになりますれば、これはまあ、各国との競争にはなりますが、十分に売り込みはできるだろうと、こう思っております。
  59. 椿繁夫

    椿繁夫君 東南アジアのちょうど雨季に双発の何に乗ったことがありますがね。カルカッタからラングーンでしたか、あの雨季は双発ではとてもじゃないが歓迎されないというような気が私はするのですが、国内需要の点でも飛行場の設備によりまして何ですが、中型輸送機というのは大体双発なんでしょう、四発の大きいやつの計画はお持ちじゃないのですか。これはもっぱら飛行場との関係ですか。
  60. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) それはまあ、この程度の飛行機は双発の場合が普通多いようでございますが、われわれの方の研究も、双発と最終的にきめたわけじゃございません。あるいは今御指摘のこともございましょうし、その他の状況によりまして、四発ということも検討の対象になると思っております。そこらあたりも、まだもう少しこれは各方面の意見をまとめて研究する必要がございますが、午前中申し上げましたように、当初はやはりエンジンが輸入になります。その点からあるいは輸入先の供給能力なり、あるいは値段等の問題がございまして、あるいは双発でいくということになるかとも思っております。
  61. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 関連して、ただいま椿委員の質問の御答弁として、エンジンは輸入するという御答弁でございますね、そうしますと私どもしろうとの考えでも、航空機の生命はエンジンであるというように、大ざっぱな考えになるかもしれませんけれども考えておるわけです。このいただいておりますプリントの輸送機設計研究協会でやられるか、どこでやられるかわかりませんけれども、エンジンを輸入されるということになれば、重要な、とにかく振興にならないということを連想されるわけですが、その点はいかがですか。
  62. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) これは御指摘の通りでございます。われわれもぜひエンジンも国産でと思っております。ただ、御承知のごとくプロペラの、ピストンのエンジンでは、これはもはや時代おくれといいますか、使い物になりませんので、やはりジェットの形になります。そうしますと、現在日本の現況でも、小さいジェット・エンジン試作は、一応完了しておりますけれども、まだ実は実用化しておりません。いわんや機首に積みますようなかなり大きいエンジン、しかもターボ・プロップというふうにプロペラを回す形式のジェットエンジンになりますと、これはかなり技術的な経歴が要るようでございます。私も実は個人的に技術的なことは、あまり詳しく存じませんが、いろいろとこれは専門家にも、何とかエンジン国産化にはできないかと言って検討させましたが、これは機体と一緒には国産化はむずかしいだろう、まず機体の方が、これは比較的早く国産化の可能性はある、エンジンの方は、若干おくれざるを得ないだろうというふうなことを考えております。いずれにしましても、エンジン国産化の望みを捨てたわけではございません。これはもちろん、並行しましてその研究を行わせまするが、これはどうも機体よりは若干おくれるだろうと思います。それでまあ、当初はやはり残念ではございますが、輸入のエンジンをつけまして飛ぶ、その後に至りましてエンジン国産化ができますれば、これはもちろんそれを使うという考えでございます。御参考に申し上げますと、エンジンの一台の輸入は大体十万ドル見当かと思っております。
  63. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで問題になるのは、この法案ができて飛行機試作されますね。そしてその第一回目に飛ぶのは、やはり、四、五年かかることになるわけでしょう。そうしますと、このエンジンはイギリスからお買いになるか、アメリカからお買いになるかわかりませんけれども、ここの輸送機設計研究協会では、イギリスから買うというようなことを計画されておるというふうに聞きました。しかし、私どもが政府が本腰を入れて航空機振興を行うということであれば、やはりお金がかかっても、一番むずかしいエンジンから始めなければならぬ、これは僕の原則論かもしれませんが、私はそう思います。座席がどうとか、翼がどうとか、あるいは日立の計器を使うか、芝浦の計器を使うかわかりませんけれども、そういうようなことは、ほんとうの航空機振興法にはならぬというように私は判断するわけです。それと同時に、もう一つフィリピンとの賠償協定に従って、航空機を三十六機とか三十八機フィリピンへ納入することになっているそうですね。しかし、その飛行機に使うエンジン日本でできない、できないということになると、アメリカさんから持ってくるか、イギリスから持ってくるかということになって、当然一番お金になりそうな一番重要部門、これは全然日本では何ら手を施すことができないというようなばかげたことになるのです。これは同じ重工業局ではございませんけれども、通産省管轄で合成ゴム、これは軽工業局ですか、やっている。合成ゴム等ですら十億円の金を六カ年も七カ年も無利子で貸してやる、こういうことをやっているのですから、これは全然同じ省としてどちらが重要にお思いになるかということをお聞きすると同時に、どうしても私は一番むずかしいエンジン日本製品でやるということが前提条件でなければならぬ、こういうふうに判断するわけですが、この点の見解はいかがでございましょうか。
  64. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) エンジン国産化の望みは決して捨てておりませんし、また、御指摘のように、これは国産化の前提になるわけであります。ただ、時間的にどうもエンジンの方がむずかしいので、機体の方の試作完了までに間に合いそうにないというのが実情でございます。御参考までに申し上げますると、この種類のターボ・プロップのエンジンでございますが、これも本年度の鉱工業技術補助金の中から特に金をさきまして日本ジェット・エンジン株式会社研究開始をさせる予定にしております。しておりますが、いろいろな点を検討いたしますと、なかなかこの二十七年までに間に合うかどうか若干疑問もあるようでございます。まあ、先ほど来ちょっと安全を見て申し上げたかもしれませんが、あるいは当初の飛行機は国産のエンジンが間に合わなくて輸入になるかもしれぬというようなことを申し上げたわけであります。決して捨てておりませんし、また、そのつもりでございます。まあ、大体のところは飛行機七十万ドルの値段でございます。エンジンは十万ドル見当に相なります。それだけ国際収支のあれもございまするので、私ども極力国産化を急ぎたいと思います。せいぜいこの法案成立いたしましたら、エンジンの方の補助を上げるような予算も、一つ合成ゴムに負けずに取りたいと思っております。一つよろしくお願いいたします。(笑声)
  65. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 合成ゴムに負けるとか負けぬとかいう問題じゃなくて、これは同じ省内でも他の局ですから、局長は合成ゴムの方より自分の方へほしいとお思いになるでしょうけれども、第二点目の質問は、あなたに対してではなく、通産大臣は両方の局を把握しておられるのだから、片方は十億円もどんどん出して、片方は同じ重要産業であって、航空機工業振興しなければならぬといって、こっちはさっぱり……、仏作って魂にならぬじゃないか、そのつり合いをお聞きしたい。  それからもう一つあわせて御答弁願いたいのは、さいぜん椿委員が触れておりましたが、双発の飛行機、だれも乗りませんよ。ということは、北海道から東京と、東京から福岡まで日航機の四発が通っておりますね、それからもう一つは日ペリ、北日本航空、青木航空、これは双発飛行機、単発、これもございますが、これは大体三割程度料金が安いのですよ。あなたのおっしゃるように安全であれば、その方に乗るべきはずなんですね。しかし、通産大臣局長でも安い方に乗ったということを聞いたことがないのですね。それほどやはり安定がない、有形無形の。僕の言うことがうそだということであれば、これからあなたたちはどの飛行機に乗ったか、明確に教えてもらわなければならぬ。そういうようなもので、これから四年も五年もかかってできたものが双発である。なお、エンジンはイギリスから十万ドルで買わなければならぬ、そういうふうなべらぼうなことがございますか。四年も五年もたったら、また時代おくれの飛行機になって、それからあわててお金を出してエンジン日本でできるのは、昭和七十年ぐらいになってしまうのですよ。どうですか大臣、そういうあたりの見通しはございませんか。
  66. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 合成ゴムとの比較、これはまあ、私比較にならぬと思うのでありまして、合成ゴムにつきましては十億円の出資をいたして無利息でやっておる。それに匹敵するものを今飛行機をやれるかどうかといいますと、これは機構の問題だと思うのです。新しい航空機工業の特殊法人のようなものを作るかどうかということになるのでありまして、ただいまのところ、民間航空機工業振興していこう、それにつきましては、もちろん相当な金を貸していかなければなりませんし、それだけのまた措置がなければならぬ。ただいまやらしておりますことは、補助金を出しておりますのは、遺憾ながらまだ機型という程度のことなんです。遺憾ながら、まだ日本航空機工業は、その程度にしか基礎を持っておりません。しかし、これも決しておろそかにすべきことでありませんので、極力その面も進めていくかたわら、部分品等の点につきましても、またエンジンの点につきましても、さらに一歩一歩進めていかなければならぬのであります。その意味からいたしまして、こういう特殊会社でなしに、全般的な振興法をはかっていこう、こういうことであります。もちろん、将来にはもっとそれだけの素地ができれば、合成ゴムに対する助成以上にどんどんやっていかなければならぬ時代が早急に来るものと確信いたしておるのであります。また、そういうことのすみやかにいきますような方針のもとに、この審議会でいろいろ方針なり御意見を伺って、早急に振興のできるように、また、技術進歩しますようなふうにやっていきたいというふうに考えておるわけであります。まあ、おそきに失したとおしかりをこうむるかもしれませんが、それだけにまた、早くやるべき重要性を持っているというふうに考えておるのであります。また、ただいまも局長から御答弁申し上げたように、決して国産化を放棄しておるわけではありません。もちろん、需要に応じていかなければなりません。極力最も適当な航空機を作り出すということが肝心なわけであります。双発より四発ということで考えていかなければならぬことも、私十分承知いたしておるのであります。それらの点につきましては、極力そういうような方向へ推進をしていきたい、かように考えておるのであります。要はとにかく早く手をつけて、そうしてより一そう進歩をはかっていくということになりますので、決してただいま申し上げましたようなことにこだわっておるのではなしに、さらに適切な方向に向って推進をしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  67. 椿繁夫

    椿繁夫君 エンジン国産化を放棄したわけではないという、えらい消極的な考えですね。私はこの法律案が通れば、現状ではエンジン国産化ということは、その域にまで達していないけれども、研究とか、試作というものは並行していくものだと、私はお聞きしないでいて、自分でそう思っていたのですが、今、局長のお話しによると、エンジン国産化を放棄したわけでありませんと言って、まことに消極的、これは非常に不満です。双発を四発にしなければならぬということも、これは双発なんというのは全く古いですよ。ですからこれも飛行場等の関係もございましょうけれども、やはり並行して研究を進めていくということでなければならぬと思います。法律の十二条には、先ほどもちょっと御意見が出ておりましたが、「国産化のための設備の設置に必要な資金の確保に努めるものとする。」これはこれだけじゃなしに、すでに通産省としては、大蔵省なり、あるいは開発銀行などと、三十七年の下期から営業生産に入れるというちゃんと目標も定まっているのですから、何か助成についての年次計画というものがなければならぬと思うのですが、一つそういうことを明らかにしていただきたいと思うのです。
  68. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) お尋ねの点の助成の問題でございますが、これは三十七年度末までに、この研究に幾らの金がかかるかということのお尋ねかと存じております。こまかい年度割はまだ策定いたしておりませんが、この四年間に試験飛行で飛ばします飛行機が二つ、それから共同試験で飛ばします飛行機一つ、この辺がかなり金を食いますので、大体二十九億近くの金がかかるのではないかと思っております。もちろん、これは国の補助金といったような積極的な助成の対象になるものでございます。試験研究の段階でございますので、通常金融あるいは財政投融資というようなことでは、ちょっとまかなえないだろうと思います。これは積極的に補助金とか、場合によりましては政府出資をするとかということで、助成をして参りたい、こういうふうに考えております。それで営業生産になりました暁には、どういうふうないわゆる設備資金が要るかという問題でございますが、これはまだ実はあまり検討を終えておりません。はなはだ残念でございますが、具体的な数字は申し上げられぬのでございますが、現在軍用機を作っておりまする建物とか、ある種の工作機械でありますとか、こういうものはかなりこの飛行機生産に利用できるのではないかと思っております。従ってあとは特殊の治工具でありますとか、工作機械でありますとか、そはからエンジン国産化に必要な加工の機械というものが中心になるものと思っております。
  69. 椿繁夫

    椿繁夫君 二十九億程度試作研究のため必要だというのは、営業生産に入る段階までの研究のための経費でございますか。これは国庫補助と会社負担との比率はどういうことになるわけですか。
  70. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) これを現在までのようなやり方で、約半額を国が補助金として助成するといたしますれば、残りの半額の十五億近いものが、これは財団法人、ひいては民間企業の負担となるわけでございます。これはなかなか困難のことと思いますので、今度できます審議会等にお諮りいたしまして、一体どういう方法がいいのかということは、これは十分検討しなければいけませんので、先ほど申しておりますように、あるいは政府出資といった形で、腰を据えて助成する必要があるのじゃないかと思っております。
  71. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これは本日はこの程度でとめます     —————————————
  72. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これは本日はこの程度でとめます
  73. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、水洗炭業に関する法律案議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言願います。
  74. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 ちょっとお伺いいたしますが、今度の法律を御提案になりましたのは、簡単に申し上げますと、なぜ法律を必要とするかという点でございます。伺いますと、今まで田川市とか、その他の町村では、すでに条例でこういうことを取り締るというか、規制をされている。それからその問題が全国的のものではなくて、事の性質上北九州に限られているというようなことから考えますと、あるいは従来通り市町村の条例なり、さらには県の条例でこういうことをおやりになれば、間に合うのではないかというような考えもいたしますので、この機会になぜ法律を制定される必要があるかという点についての御見解を伺いたいと思います。
  75. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 御存じのように、炭鉱には今租鉱権と申すものがございますが、この租鉱権が初めは斤先と申しまして、法律の外にありました。それが使用権になり、さらに租鉱権になったのでございますが、現在この洗い炭でいわば選炭をいたします石炭が、大体福岡県でもざっと七、八十万トン出ているわけであります。さらに、政府の計画でも、これのみではございませんけれども、昭和五十年になりますと八百万トンも雑炭が入っているわけであります。そういう面からいきましても、この洗い炭というものを法律の中に全然置いておくということは、石炭政策上も考えなければならない問題ではないかというふうにも考えるわけであります。ことに、最近のように低品位炭利用ということが叫ばれますし、また、電力用炭が比較的低品位でも十分利用できるという段階になりますと、ますますこういったものの使用が多くなって参ります。ですから、一つには石炭政策全般から言いましても鉱業法、あるいは鉱山保安法の外に置くということはいかがかと考えて法の中に置く、こういう趣旨一つあるわけであります。  それから被害の面から申し上げますと、なるほど従来も市町村条例等でもありましたけれども、市町村の村道なんかを被害を与えます場合は別といたしまして、用排水路とか、あるいは里道なんかの場合には、なかなか条例で取り締るということも困難でありますし、ことに河川の関係におきましても、各市町村並びに各県ともおのおの行政管轄を異にしているわけであります。そういった点からも、一元的な円滑なる取り締りが必要ではないか、こういうわけで法律といたしたわけであります。なるほど地域的に見ますると、常磐あるいは福岡あるいは佐賀、長崎、こういうところにやや限定されておりますけれども、それは主として石炭の産地というわけでありますから、やはり石炭政策といたしましては、今申しましたように法律で一元的な規制の必要がある。かように考えて出したわけでございます。
  76. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 いま一つお伺いいたしたいのは、先般地すべり防止法案でございますが、あれも炭鉱地のこういうような問題と非常に関係が多いように思うのでございますが、あの法律ができましても、やはりさらにこの法律が必要かという点について伺いたいと思います。
  77. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 実は地すべり防止法案でも、法律のかなりの部分を管理権のないボタ山の採掘その他による被害について規定しておるわけでありますけれども、あれは管理権のないボタ山だけでありまして、その他のボタ山自体は、現在ではボタ山自体は鉱業法に入るわけでありますが、ボタ山の採取その他によって被害が起るという場合には、やはり的確な法律の適用がないわけでありますから、管理権のないボタ山だけの場合でございまして、一般的な場合には、地すべり法案は適用がない、かように解して、この法律の必要性を認めたわけでございます。
  78. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 ごく簡単にお伺い申し上げますが、ボタ山の所有権というのは、その石炭を掘った炭鉱業者の方の所有権でございましようか、それともどちらの所有権になっているかという点、その点も一つお尋ねいたします。
  79. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) これはむしろ現在行政をやっておられます政府の方が、答弁をされるのがいいかと思いますが、われわれが考えておりまするのは、やはりボタ山は、一応そのボタ山を捨てましたところの鉱業権者の所有である、こういうようにまあ考えておるわけでございます。それが管理権がなくなるといいますか、その他時効その他でなくなるという場合には、これは別でありますけれども、一応はやはり鉱業権者の所有である、われわれはこう考えておるわけであります。
  80. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 そうしますと、ボタ山というものの所有権が、鉱業権者であれば、ボタ山から生ずるいろいろの何と申しますか被害というか、そういうことに対しましては、鉱業権者も一定の責任はあるわけでございましょうか。これはまあ提案者というより、政府に伺った方がいいかと思うのでありますが、今回の水洗炭業法案に関連して、これがとにかくボタ山を、何といいますか、水洗して、その中から有効な石炭を採取すると、こういうことは石炭政策上も必要かと思います。しかし、それが度を越して、また危険をおかしてやる場合においては、非常に被害がある。そのときの責任は、水洗炭をやる人の責任であるのか、あるいはその水洗炭をやるさらにもとの鉱業権者共同責任であるのかという点をお伺いしておきたい。
  81. 村田恒

    政府委員(村田恒君) お答えいたします。水洗炭業者がボタ山から石炭を採取いたします場合に、まずそのボタ山が、鉱業権者が現に所有しており、これの管理の義務を持っている、そういう場合に、鉱業権者がその水洗炭の業者との間の正式な契約に基きまして、水洗炭業者の名において水洗炭という仕事をやっております場合は、これは水洗炭業者の責任でございます。しかしながら、鉱業権者水洗炭業者を独立した存在としないで、単にその機関として、手足としてこれを使って、そうしてそのボタ山から石炭を採取しております場合は、これは鉱業権者が当然それによって生ずるいろいろの面についての責任を持っているわけでございます。
  82. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 いま一点お伺いいたしますが、今回のこの法案が制定になりますと、危険防止というようなことは、登録になりますから、非常によくなると思うのでありますが、一面、これによりますと、水洗業者が相当の規制といいますか、制限を受けますので、あるいは水洗炭業というものそのものから見れば不自由になるかと思う。そうなると、業者の方では非常に困るというか、あるいはそれに従事される失業者といいますか、そういうような者も出てくるし、また石炭が、これでまあ廃物利用じゃないかもしれませんけれども、有効にされているのが、そういう道が閉ざされるというようなことにもなるかと思うのでありますが、そのお見込みでございますね、この法律ができたために影響する長所と、短所といいますか、そういう点については、どういうふうにお考えになっているかどうか。その点だけをお伺いしておきます。
  83. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 今お話がありましたように、被害防止その他においては、確かに長所となって現われるわけでありますが、御心配のように、あるいはこの水洗炭によって作業方法が規制されるということになりますと、あるいは採算が立たなくてやめていくのではないか。失業者が出るのではないか、こういう御心配でありますが、確かにその心配もあるわけであります。しかし、これは私は行政のよろしきを得れば、ほとんど防げるのではないかと思うわけです。たとえば一河川を使用しておりましても、なるべく河川に、汚濁水といいますか、そういうものを流すにいたしましても、比較的被害の少い場所から流すというように、そういうように位置の選定というものが、非常に大事な要素になるわけでありまして、県その他で指導されれば、かなり防げるのではないかと、考えるわけであります。  それからもう一つは、労働行政全般から見ますると、これらの業態は、基準監督署が監督に行きましても、あるいはもうその企業は解散して、いなかったり、あるいは賃金未払いが起りましても、事業者が行方不明になっておる、まあこういう状態が非常に多うございます。そこで、ほとんど監督もできないで、放置されておる、こういう事情でありますから、そういった面から見ますると、登録制の実施によって、いわゆる雇用を完全化する、こういうよい面が同じ労働政策でも出てくる、かように解釈しておるわけであります。
  84. 相馬助治

    相馬助治君 関連してお尋ねしたいのですが、私全く石炭ということについてはわからないものですから、事は常識にあるいは属し、ないしは今まで質疑が行われておりましたら、その旨をお答え下されば、あと速記を読ましてもらいますが、私一つ心配いたしますのは、法律は立法者の意思を離れて、できてしまいますと、法律自体としての効果を発揮して参りますし、そういう場合に、その法律の存在することによって起きてきた現象については、当然政府がその責任を負うという形になるということについては、今度この法律案を起案した多賀谷代議士自身、よく御了解だと、かように思います。そこで、この法律ができることによって、水洗炭業というものが、とにかく一つの職種として法律的に規制されるわけです。そこで、低品位のものも使われるからして、将来この職業が絶えることなく、石炭山の掘られる限り絶えることなく続くという見通しも立つが、また、逆に石炭を掘る技術が最高度に進歩してくれば、文字通り廃石は廃石として、そこにはこの石炭というものを含有しないものが生じてくるというような事態が一つは予想されると思います。また、その点はそうでないまでも、いろいろ燃料政策の面から、そういう低品位のものについては、もう採算割れでもって、水洗炭業などというものが立ちいかないという場合も、予想されると思うのです。そういたしますと、ここで法律規定されたるその職業において生じまするところの、この業を経営する者の損害は、その者の自身の意思によってやっておるのですからして、国に向って損害を要求すべき筋合いのものでございませんから、道義的にはどうか知りませんけれども、法律的にさして困難な問題が起きるとも予想されませんけれども、労働者の場合には、今質問にありまするように、この法律の功罪をながめた場合に、そういうある事態になって、水洗炭業というものがもう全く立ちいかなくなったときに、相当量の失業者が生じたというような場合に、これを登録をしていた地方自治体が、ある程度の責任を持ってそういう者のめんどうを見るというようなことが予想されるのか。それともやはり法律規定した職業であって、そこに生じたところの失業者であるから、国の一つの行政事務として、労働省あたりが動いてこの問題を解決しなくちゃならないというようなことになるのか。それとも、全く私の言うていることが現実を知らぬ者のたわごとで、さようなる予想自身がおかしいと、こういうのでしたら問題は別なのですが、その辺のことは、この水洗炭業の将来とにらみ合わせていかがなものか。多賀谷代議士、ないしは簡牛代議士から、一つ御意見を承わりたいと思います。
  85. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 実はこの水洗炭と申します業態といいますか、そのものをどういうように石炭政策の上に乗していくかということが、今の政府はおきめになっていないわけです。また、先般石炭合理化法が通過いたしましたけれども、その石炭合理化法も、規制をする面がずっと出ております反面に、今度は増産態勢にいくという法律が出ておるわけでありまして、一体低品位炭利用ということが盛んに叫ばれておるけれども、これをどんどん保護していくんだと、こういう政策も積極的には出ておりませんし、それかといってこれはいかぬと、こういうわけでもなく、今申しましたように昭和五十年度には八百万トンも組まれておるということで、はっきりしないわけです。ですからそういった政策がよりはっきりいたしますならば、私たちももう少しこういった法律でなくて、いわばどちらかに進んだ法律になるわけですけれども、まあ、その辺がはっきりいたしませんから、一応主として被害防止ということに重点を置いたわけであります。  それから将来これがふえるのかどうか、たとえば技術が高度に進むと減るのではなかろうか、こういうことも考えられるわけでありまして、これはいわゆる技術と申しましても、選炭技術が非常に進みますと、もうカロリーのあるところの石炭はほとんどボタにならない。純然たる石ばかりと、こういうような状態になりますと、まあ、この仕事はなくなるわけでありますが、しかし選炭技術が進むと、比例とは言いませんけれども、それと同じ速度でもありませんけれども、若干似通うて、また低品位炭のだんだん品位の低いものまで利用されると、こういうような関係もありまして、果してずっと減るものであるか、あるいはふえていくものであるか、はっきりその点はわれわれもわからないわけであります。  それから石炭が不況になってくると、失業者が出るんじゃないかというわけでありますが、この不況になった場合は、これはこの法律を離れまして、どちらにいたしましても失業者が出たりするわけでありまして、これはむしろこの法律外に大きな問題として出てくると思います。そういった場合は、一体どこが責任を負うかという話しでありますが、それはやはり国の失業対策、労働行政の一環として救済されるものである、かように考えておるわけであります。大体以上でありますが、あるいは答弁漏れがあるかもしれません。
  86. 相馬助治

    相馬助治君 私が聞いていることについてお答え願ったので、その限りにおいてはよくわかりました。ただしろうとでありまするから、どうも、それがわからないので、もう一度念を押してお聞きしたいと思うのですが、一体廃石を利用してまた石炭をとるということが私はわからない。廃石を利用して別な工業をやるというのなら、ここに新たに立法をして、そのものを助けてこれを奨励していくということでわかるのですが、石炭山で石炭を取って、掘りかすの中にまだ石炭があるから、その石炭を取るものの被害防止というけれども、ともかく国の法律によってその職業を固定化するというふうなことに結論的になるところのここで立法措置が行われて、これが石炭採掘ということについて、何らの常識を持たない私であるから、こういう疑問を持つんだと思うが、しかしまた、多賀谷代議士のような専門家では気づかない、これはまた、やはり普通の頭の者が容易に考える疑問じゃないかと、こう思うんです。いわば、簡単にいえは、水洗炭業などというものを立法化して、被害を防止したり助けたりするならば、むしろ国の補助でもやって、石炭山でその廃石は全く泥と石しか出さぬと、石炭を全く穴の中で、ないしはその鉱業所で取ってしまうと、いわば水洗炭業なんという職業の成り立たないように持っていくということが、国の石炭行政の正しいあり方でなくてはならないと、私はこう思うんです。にもかかわらず、こういうものを立法しなくてはならないというからには、現実はこの法律を必要としているということはわかるのです。従って、私はこの法律に反対しようとしていないのです。しかし望ましい姿は、この法律は五年なり六年なりに失効をいたしまして、そうして昔水洗炭業があったげなというような伝説として残るようなことこそが、これは私は望ましい姿だと、こう思っているわけなんです。従いまして、その辺のことについてはどういうことになっているのか、もう質問すべき用語を知らないのですが、私が疑問に思っている点はわかっていただけると思うのです。一つこれは率直に御指導願いたいんです。
  87. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) あるいはこのメタルの鉱山にもあるかと思いますけれども、その当時では採算上ある品位以下のものでは採算がとれないとして廃石されたものが、だんだん価格の変動、あるいは選鉱技術がよくなって取るという場合があります。これは元と同じ鉱業権者でしたら大体問題はないと思いますが、そういう場合もございます。これとは若干違いますけれども、当時捨て石として廃石いたしましたときには、そのカロリーはあまり市場の石炭としては通用しなかった、また、使用道もあまりなかったと、こういうわけで捨てておいたのが、あとに低品位でも十分利用できるとか、あるいはほかのいい石炭とまぜれば、混炭をすれば、あるいは利用価値があると、こういうような場合があるわけであります。それが今ほとんど、過去において捨てられたボタ山が、現在生き返って使用されておるのが大部分でございます。そのほかに中小企業が、選炭設備を持たないで、そのまま原炭を出すわけでありますが、そういった場合に、さらにそれを譲渡を受けまして、原始的な水洗をして、その水洗ということによって選炭をしておるという部分もあるわけであります。さらに将来超音波その他による非常に高度の選炭機が出ますと、あるいはそういうものはなくなるかもしれませんけれども、そういう高度な機械はやはり大企業しかできないのでありまして、中小企業ではやはり利用価値の若干あるものが捨てられるんではないか、こういうようにも考えられるわけであります。ですから今まで利用価値のなかったものが再生をされておるというのが大部分でございます。
  88. 相馬助治

    相馬助治君 それでは政府委員に私お尋ねしたいと思うのですが、もう一つ不審に思うのは、なぜ、これが北九州だけでこういうものが問題になっていて、石炭山、どこでも騒いでいるんじゃないと聞いているんですが、これはそうすると逆に言うと、北九州の石炭の掘り方というのは、最も原始的で下手くそなことで掘っているのかと、こう常識論で出てくるわけです。これらも含めて政府側のその御意見をお聞きしたいと思うのです。多賀谷代議士なんかの出身地があそこですから、そう聞くのも何ですから、政府の方へお尋ねしておきます。
  89. 村田恒

    政府委員(村田恒君) お答え申し上げます。北九州地区におきまして特にこういう水洗炭業者が多いという理由は、根本的には九州地帯の石炭の採掘がきわめて古い時代から行われてきておる。従いましてその掘ったかすであるボタ山の堆積というものが、九州地区においてはきわめてその数が多い。従って、そのボタ山をくずして残っておるエネルギーを取り出して、水洗いしては売っていくという業者が非常に多い、こういうことであります。北海道あたりは、非常に新規に開発されておりますし、また、きわめて、全般的に申しますと、中小炭鉱の数も北九州ほど多くありませんので、こういう現象が少い、こういうように考えられます。それから、先ほどの御質問の低品位炭の問題でございますが、これは多賀谷代議士から申し上げました通りでございまして、将来選炭の技術、つまり石炭をよく洗いまして非常に良質なものにしていくという選炭の技術がきわめて進んで参ります場合、また、現在の技術におきましても、もっと業者が熱意を持って徹底的に選炭をやると、こういう熱意を持ってやるようになりますると、どうしてもこのようにボタ山として捨てられていく部分が少くなっていくわけでございます。将来の姿としましては、そういうボタ山の堆積というものは、ほんとうの石だけが積まれる、その中に残された大事なエネルギーをもう一回その中から取り出していくといったようなことが起らないことが望ましいことでございます。しからば、一体政府は低品位炭に対して、いかなる政策を今までとっているかということでございますが、この低品位炭というのは、今申し上げました、ここで今法律で問題になっておりますような、ボタ山をくずしてその中から石炭分を取り出していくというものも含まれまするけれども、本格的な低品位炭の助長政策というものは、あくまで、鉱業権者が石炭を採掘しまして、その選炭を徹底的にやらせまして、できるだけその捨てるものの中へむだがないように、石炭を掘るときからそのむだがないような掘り方をさせる。選炭の技術向上させ、選炭を熱心にやらせる、こういうことによって出て参りました低品位炭というものを、極力需要面に振り向けていくということが、一番大事なわけでございます。そこで、将来におきまして、現在のわれわれが考えておりますいわゆる精炭の、現在指定統計に載っておりまする精炭の出炭数量だけでは、将来の大幅に増大して参りますエネルギー需要というものに対しては、なかなか需要をまかない切れない実情でございます。従いまして、どうしても低品位炭というものを相当程度利用していかなければならないことが第一、第二に、自然条件、次第々々に深いほうへ入りましたり、というような自然条件の悪化、それから炭鉱の機械化が非常に進んで参りまして、その結果、どうしても、低品位炭というものが出てくる数量がふえるわけでございます。そこで、こういった低品位炭というものをできるだけ使ってもらう。従来低品位炭があまり思い切って生産されなかったという大きな理由は、これに伴う需要がなかったわけなんであります。ところが、最近におきまする電力の、特に火力発電の非常な発達は、特に低品位炭だけをたくような設備が発達して参りました。その意味おいて、電力部門に対する低品位炭の需要というものは、大幅に今後増大する見込みでございます。その意味におきまして、われわれは、まずこの低品位炭を電力のほうに振り向けていくという政策を進めております。さらに、この低品位炭を利用いたしまして、石炭化学、あらゆる部門に石炭化学の発達がございますが、それらのものにこの低品位炭を利用して石炭化学の方の発達に寄与せしめよう、こういう二つの方法で考えております。そういう意味おいても、この低品位炭というものは、昭和三十七年におきまして三百五十万トン、昭和四十年におきまして五百二十万トン、昭和五十年におきましては八百万トン、こういうふうな数量を見込んでおります。
  90. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 二、三点御質問する前に、この法律の第二条、定義のところに、二行目ですよ、「石炭の掘採によって生じた廃石(以下「ぼた」という。)を水洗することにより石炭を採取する」ということが書いてございますがね、どんなんだって、石を水で洗って石炭を採取するなんて、これは法制局はどこでお作りになったかわかりませんけれども、こういうことでやったら、ちょっと笑われませんですかね。石を洗って石炭を掘るなどという、これは答弁でなくして、これはどういう解釈のものですか。
  91. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) どうもボタと称しておるものをどういう言葉に換言したらよいかと、逆にまあいろいろ考えてみたわけでありますが、(「なんでボタだけにしなかったのかね、ボタでいいのじゃないかね」と呼ぶ者あり)鉱業法百九条は、「捨石若しくは鉱さい」という言葉を使っておるわけであります。何にいたしましても、捨てた石でありますから、まあ廃石というような言葉を使ったわけでありまして、なかなか適当な言葉がないわけでありまして、こういうような字句を使ったわけであります。
  92. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 まあ、そういうことでいいかもしれませんけれども、私どもは法律学者でございませんので、きわめて常識的なことで条文を判断してみますると、石を洗うと石炭が出る、こういうことに通ずるわけですね。洗炭残滓から石炭を採取するものということになればあれですが、衆議院の方は選挙でお忙しいから十分論議されなかったと思うのですが、これはもしお直しできれば、私は直していただきたいと思います。  その次に、さいぜん相馬委員も触れましたが、石炭局長は、北海道の山は新しいと言いましたが、北海道でも慶応初年から掘っておる山がたくさんあります。常盤地方にも九州に劣らない古い所がございます。しかし、常盤、北海道等におきましては、こういう問題は全然起きませんよ。土屋県知事のおる福岡だけなんです。私、別にこだわるわけでございませんけれども、たまたま北海道知事と福島県知事は、これは社会党なんです。福岡の、問題起きておる所は、これは自民党さんなんだね。これはもう県のやっぱり行政でやるべきだ、こう思うのですね。それと同時に、これは両代議士にお伺いすると同時に、政府当局からお伺いしたいことは、社会党だけが賛成で自民党さんが反対ということである場合には、議員立法もございます。しかし、もう簡牛代議士の所属しておる自民党さんが現在政権を握っておられるのであるから、こういうのは四百数十名の議員各位が全く賛成だということであれば、将来行政をタッチする政府をして提案せしめて、そうしてわれわれが賛成するということがなぜできなかったか。その点を、これは大臣に聞くのが当然かもしれませんけれども、大臣がお見えになりませんので、議員立法されたところの動機、内容、それを両代議士と石炭局長にお尋ねいたします。
  93. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 政府水洗炭業につきまして特に法案を準備いたしませんでした理由は、大体次に申し上げるような理由に基いておるわけでございます。  第一点は、従来被害防止のために水洗炭業の取締りをしてくれという要望が福岡のほうからもあったわけでございますが、水洗炭業はきわめてその設備が簡易な事業でございますし、また、その事業が行われますのも、きわめて地方的なローカルなものでございますので、その取締りは、まず第一次的に県の条例によりましてある程度取り締り得るのではないか、こういう考え方から国の立法はいたさないという建前をとったわけでございます。  また、第二には、地すべり防止法というような法律が今回国会を通りまして、これと鉱山保安法と両々相待ちまして、水洗炭業のおもな原料でありまするところのボタの出てくるボタ山につきまして、災害が起らないようにいろいろな行為の禁止制限といったようなことを規制するようになりましたので、無秩序な水洗炭業者の発生を、ある程度抑制するようになったのではないかというふうに考えて、国の立法をするというところまで踏み切って参らなかったわけでございます。  第三点は、水洗炭業の与えますおもな被害というものは、主として勝手に流します汚濁水の放流に基くものと考えられまするが、この汚濁水の放流につきましては、先般来水質汚濁防止法について具体的な取締りの基準を設けるように、その前提としての法律的な措置を今考慮しておる段階でございますので、水洗炭業をその水質汚濁防止法の対象の一環として取締りを考えなければ、運用もきわめてむずかしいであろうし、実効も期しがたいのじゃないかという考えもございまして、当面のところ水洗炭業取締りのために、特に国の立法を作るというところまで参っておらなかったわけでございます。  また同時に、先ほど来各委員から御意見もございましたし、また、多賀谷代議士からもお話がございましたけれども、水洗炭業法律を実施することによりまして、場合によっては、これだけの供託金を積んでまでこの事業をやるのはいやだ、それだけの事業をやるのにたえないというようなことが起って参ります。場合によっては失業問題ということも考えられます。そういう場合には、やはり府県の方が第一次的にどうしても責任を持ってお取り締りになると同時に、その失業問題、それに伴うまた金融上の御心配もしてあげるというようなことも、府県が責任を持ってやっていただかなければ、なかなか国としてはむずかしいのじゃないか、こういう点をいろいろ考えまして、国としての立法というもので今まで進んで参らなかったのが実情でございます。
  94. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 実は、地すべり防止法も、あるいは鉱山保安法も、一方は最近制定され、さらに、鉱山保安法は従来からあるわけでございますけれども、今申しましたように、地すべり防止法でも、これは管理権がないボタ山だけでありまして、管理権がないボタ山と申しますのは、筑豊にも十をこえる数字はないわけでございます。ですから地すべり防止法でかなり大部分を占めております法律も、実際適用には、まあほとんどないと言っても、ほとんどないと言えば、法律とは言えないけれども、十をこえない問題、こういうふうに考えるわけです。そこで地すべり防止法が出ましても、何も一般的な水洗炭の被害を取締るわけにはいかない。さらに鉱山保安法にしましても、これは今申しましたように、鉱業権者が捨石または鉱さいを堆積することによる損害の場合だけでありまして、それをさらに採取して別のところで水洗いをする、こういうことについては、何らの法律の賠償義務がない。あえて言うならば、民法の不法行為だけによっている、こういう性格のものでございます。一方、その作業がきわめて無秩序に行われておるのでありまして、被害はかなり甚大であります。そうして被害者といたしましても、鉱業法に、鉱業権者の場合は、はっきりした無過失賠償責任の規定はありますけれども、洗炭の場合には、民法の規定によるのでありまして、実際問題としてはなかなか賠償を請求することが困難であり、事実問題としても解決しておりません。そういう意味におきまして、どうしても法律が必要であろう、かように考えたわけであります。これらの法律を作らなければ、被害防止並びに被害賠償の完璧は期し得られない、こういう意味法律の必要性をわれわれは感じておるわけであります。
  95. 簡牛凡夫

    衆議院議員(簡牛凡夫君) 政府の方の提出ということが、なかなか見通しが立ちかねましたので、結局社会党さんと話し合った上で、議員立法という挙に出ました次第でございます。
  96. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私のお伺いしているのは、そういうことじゃございません。法律は必要だとか、法律内容ではなくして、両党意見の一致を見て、満場一致で決定した法案ですから、当然法案ができれば、われわれの手を離れて、とにかくきた方がやるわけです。その場合に、やはり行政府がタッチするのですから、なぜ政府に出させなかったのか、こういうことをお伺いしているのです。政府が出してしかるべきだ、もちろん、議員立法を幾ら作ってもかまわないことにはなっておりますけれども、この種の法案は当然ほかの法案と関連があるから政府が出すべきである、出すのであればですね、そうしますと、さいぜんの石炭局長の答弁のようなことになる。衆議院が四百七十何名ですか、四百六十何名そろっていて、政府をして出させるだけの力がなかったのですか。
  97. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 御存じのように、現在鉱業法の完全な監督ができていないというのが実情であります。盗掘、侵掘されましても、なかなか行政的に行き届かない。それに洗炭まで監督しなければならぬということになれば、大へんだというのが実際問題としての政府の考えではないかと思う。しかし、私たちは盗掘あるいは侵掘、施業案の完全実施ということを、やはり政府としてやってもらわなければなりませんとともに、それらが全うできないから、洗炭はこの外に置くということでは困るのでありまして、やはりわれわれとしては議員立法をして、法律を作って、一つ監督をして参りたい、こういうわけで出したわけです。
  98. 相馬助治

    相馬助治君 関連して。阿部委員の聞いておることも、こういうことだと思うんです。なぜ政府提案をさせなかったのか、なぜその努力をしなかったのか、第一はこういうことだと思うんです。ところが、これは今までの答弁で概略わかる。これは一応努力はした、したが、政府は積極的にこれに乗ってこなかった。なぜ乗ってこなかったかということは、先ほど石炭局長のおっしゃっておる通りだと、そこまでは了解するわけなんです。そこで自由党にお聞きしたいのです、私は。政府はうんと言わないけれども、やはり建前上どうしてもこういう法律が必要で、議員立法をもってでもやって、政府の好まざるところではあるけれども、やらなければならぬというなら、なぜ社会党と一緒に立案者に名前を連ねておやりにならなかったのだろう。それともまた、うがった見方をすれば、議員としては非常に賛成なのだが、政府がいやだと言うておるものを、与党として名前を連ねるわけにいかぬから、まあ社会党が出して来い、そうしたらば受けて立って賛成だけしてやる、こういうことで私どもは賛成をしたのであって、起案者の中にまでまじって、この法案を発議するわけには党内事情上いかなかったのだ、こういうことならそれでよろしいのです。それを聞いた上で、それならばこうだとか、あれならばこうだとか、議論を蒸し返そうと思って簡牛代議士に聞いておるのじゃなくて、まことに今までの法律では珍しく、社会党は全員発議者になっておる、自由党の人は一人も入っていない……(「入っている」と呼ぶ者あり)楢橋渡君外何人かは入っておりますね、そうですか、その点は大へん失礼しました。何人か自由党の方々が関係者だけ入っておる。しかし全員でこれを発議するわけには参らなかった、こういうことでしたら、その辺の事情を承わればいいのです。議論をしようとは思っていない。率直に経緯だけ聞かしていただきたいと思う、簡牛さんから。
  99. 簡牛凡夫

    衆議院議員(簡牛凡夫君) こういうようなことを、私はほかにも若干この例を見ておるのでございますが、この場合もそうだと思いますけれども、政府の方で積極的に提案するという意思はないけれども、両党の議員の方に異論がなくて提案する、議員立法をされるならば政府は異論は言わないと、そういうようなまあ了解のもとに、こういう議員立法は行われるものと思っております。これもそういうことであろうと思いますが……。
  100. 相馬助治

    相馬助治君 いいです、それで。
  101. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 同じく、石を石炭にするという法律ですから、容易なものではなかろうと思うのですが、(笑声)この登録の基準はどういうことなんですか。登録する基準ですね。第四条です。
  102. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 第四条の手続をいたしまして、第七条の条件を勘案いたしまして登録を認める、認めるといえば語弊がありますけれども、登録が拒否できる、こういう道を開いておるわけであります。
  103. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私の聞かんとするところは、たとえば私なら私が、この業をやりたいという所で登録を申請しますね。そうすると、イエス、ノーは、どういう基準によってイエス、ノーを判断するのかということが第一点と、それからもう一つ、続けてお尋ねいたしますが、さいぜん鉱業法や保安法が完全に守られておらぬ、通産省の方はそれを守るのに精一ぱいであって、こちらの方はノーズロースだ、しかしわれわれとしてはそいつをノーズロースにしておくことができぬというお話してございましたがね。しかし、いつも衆議院なり参議院のわれわれがついておるわけじゃないでしょう。法律をこしらえたって一体だれがやるのですか。多賀谷代議士のようなお考えでいくと、どうも通産当局はできないという結論になる、法律はこしらえたが。法律はこしらえてもけっこうですよ。一体だれがやるのですか。
  104. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 第一点は、第七条にあります拒否の条件を書いておるわけでございます。それは、第一には、この法律に違反して、そうして登録の取り消しを受けた者であるのか、あるいは刑の執行中の者であるのかという要件を掲げております。これは普通よく書く規定であります。第二点は、登録申請者にかかわる水洗炭業の施業が、河川、道路その他の公共の用に供する施設を損傷し、もしくは農業、林業、もしくはその他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反することとなると認めるときは、その登録を拒否しなければならぬ、こういうのが大体条件になっておるわけです。  それから第二番目の質問でございますけれども、一応実際の業務というのは、都道府県知事が大臣の委任を受けて、機関委任を受けてやる。こういうことになっております。
  105. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、やるのは都道府県知事であるから、通産当局は法律ができれば関係がない、こういうことになるわけですか。それからもう一つ、この法律規定に違反して罰金の刑に処せられるということは、この法律規定に違反して起した犯罪なんです。私の聞くのは、第一回目に、これはこの法律ができて第一回目にだれも違反者ございませんから、そうすると、第一回目はだれでもかれでもオーケーということでございましょうかということを、お伺いしておるんです。
  106. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) この法律ができてしまえば、大臣関係ないかというお話でありますが、やはり大臣が最終的な責任者ではあります。しかし関係委任をやっておるわけであります。それからこの経過措置といたしまして、付則に書いておりますけれども、一応現在水洗業を営んでいる者は、ある期間水洗業者とみなす、それから登録をしてもらう、さらにその後登録の場合にこういう審査をする、こういうことになるわけであります。
  107. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで重ねてお尋ねいたしますが、そうしますると、大臣から都道府県知事が委託を受けてやる場合ですね。一切の経費の負担は、当然都道府県知事が、まあ知事というよりも、県の予算で処理する、こういうことになりますから、通産省では予算関係その他について一切必要ないと、こういうことになるのですか。
  108. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 大部分は実は登録をする場合に手数料を取ります、若干でありますけれども。手数料を取ります。それからさらにそれで足らなければ、県が支出しなければなりませんけれども、しかし、政府としては一銭も要らぬ、まあ一応建前といたしましては予算とは関係ない、政府予算とは関係ない、こういう建前になっております。
  109. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私のお尋ねするのは、少し具体的になるかもしれませんけれども、鉱業法あるいは保安法を実施するに当って、当然監督部なり通産当局から施業案実施に当っても、それぞれ人を派遣して監督指導、あるいはその他いろいろなことをやるわけなんですよ。そうすると、通産当局においては、もう全然予算がない。なぜ行かなかったと言っても、それぞれの役人各位は、二等旅行費をもらうところを三等に切りかえて、そうして歩いておるというような現状なんですよ。この法律を作った手数料で、窓口だったら、これは福岡県の県庁一人のお役人でいいかもしれませんけれども、多賀谷先生御承知通り、とにかく筑豊炭田は、もう、人を五十人か六十人派遣しておかなければ、この法律は完全に守られない。こういうことは簡牛代議士も賛成してくれると思うのです。ですから、予算措置について、どこで一体だれがやるのか。法律を作る以上は、完全に実施してもらわなければならない。そういう点はいかがでございましようかというのです。
  110. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) これは、監督は、機関委任を受けまして県がやるわけでありますが、この法律説明会といいますか、この指導というものは、これは当然法律の主管官庁である通産省がおやりなるものと、かように考えております。
  111. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 いや、おやりになるではない。あなたが起案者ですから、やれと、こういうふうに言うてもらわなかったら、おやりになるであろうでは困る、この法律ができるまでは。できてしまえば、当然行政府の解釈でやられるのですけれども。そのあたり、明確に御答弁願いたいと思います。
  112. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) それは、主管官庁でありますから、当然この法律説明会とか、あるいはそれを現在の洗炭業者に徹底さす、こういうことは、通産省がやるべきである、これは通産省設置法の中に明記されておりますから。やはりこれは石炭行政の一部でありますから、そういうようになると思います。
  113. 相馬助治

    相馬助治君 これやはりしろうとの心配なんですが、非常に杞憂に過ぎるということになるかもしれない、そうなればけっこうなんですが、この法律ができた、そうしてこの解釈上、許可上、またはいろいろな予算上問題が起きたときに、政府として、そんな言いがかりは言うべきでないけれども、もともとこの法律は、できるときからあまり賛成じゃなかった。ところが、非常に熱心な代議士さんがいて、どうしてもこれを作れと言うものだから、そうからだを張って反対するものでもなかったので、まあ作らせたので、そこのところは、どうも国では予算措置上用意もないし、それはぜひ福岡県の方にやってもらわなければ困るんだ。そうするとまた、県の方は、いや、あの法律ができるときには、災害を防止するということに目的があったので、そんなややこしい、めんどうなことは、この法律は予想していなかったので、これはおれたちの責任じゃないのだ。こんなことにならないと、はっきりしていればいいんですが、なりかねないようなことがありそうな気がするのですが、これは全く杞憂ですか。多賀谷代議士と政府側にお尋ねしたいと思います。
  114. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) それは、行政官庁が責任を持たれるならば、そういうことはないと思います。
  115. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 立法府を通過いたしまして、法律が施行されました場合に、行政府といたしましては、これを忠実に執行する任務があると思います。その趣旨にのっとりまして、この法律の施行についてもそう心がけて処理していきたいと考えております。しかしながら、この法律の中のいろいろな規定に書いてございますように、第一義的には、これをおやりになる現場の府県の方でこの取締りの実効が上るように、また、その取り締ったことによって生じてくるいろいろな失業対策その他についても、県が責任を持ってやっていただかなければ、なかなかその実効は期しがたいというふうに考えております。
  116. 相馬助治

    相馬助治君 その、しかしながらの先がくせ者なので……、わかりました。最終的には、この法律の精神にのっとって、担当官庁である通産省が責任を持って執行する、これが結論ですね。
  117. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 仰せの通りでございます。
  118. 相馬助治

    相馬助治君 名答弁。(笑声)
  119. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 日本国中に十数県に石炭採掘やっている事業所があるわけですが、なぜしかし、福岡県だけ国会にテンヤワンヤするほど問題になっておりませんけれども、こういう法律を会期幕切れごろ出してきて、福岡県の知事の援護射撃、福岡県知事にとにかく一切権限を委任するというのですから、そうすると、通産大臣の名前をお借りするトラの威をかるキツネざむらいの法案だというふうに私考えるのですが、同時に衆議院のお二人のおっしゃることは、昭和五十年になると八百万トン、この種の洗炭事業によって石炭が出る、それは石炭業界の洗炭というこの種の産業がどれほど進歩しているか御存じないから、ここ二、三年はまだまだ出るかもしれませんが、あと五年くらいたったら、ああいう石炭は絶対出ませんよ。ですから今の数字を計算してとにかく結論的にポンと出したお答えだろうと私は思うのですが、だんだん減りこそすれ、絶対ふえていかぬ。これは断言してはばかりません。ですからそういうむちゃくちゃの基準を作って、われわれ参議院を驚かしたってその手には乗りませんからね。そういう基準を簡単にきめてやるということは、これは多賀谷代議士少しおかしいと思いませんか。あなたは衆議院随一の理論家だそうですが、もう少ししっかりしたものを出してもらわなければ困ります。
  120. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 私が八百万トンと申しましたのは、雑炭の意味でありまして、何も洗い炭だけで出るということを申し上げたわけではございません。しかし、洗い炭の状態も若干高度化しつつある。あるいは大規模にやりつつある、こういうことも現実でございまして、混炭、その他が非常に盛んになりまして、阿部委員御存じのようなかなり大規模のようにやっているのもあります。ですからそういったものも法律の外に置くのもどうか、こういうふうに言ったわけでありまして、八百万トンと申しますのは、将来非常にいい選炭機ができて、それから取られるところのいわば選別炭なども含んでおるわけでございます。これは福岡だけではありませんで、社会党の方では長崎、佐賀も含めて提案をいたしたのであります。ことに、佐賀は最近だんだん業者が多くなって、しかも今まで被害がなかったのに、急に被害が出たものですから、むしろ佐賀あたりも非常に一生懸命この法案の成立を願っておる、こういう実情でございます。
  121. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それで確かに佐賀、長崎に必要かもしれませんが、北海道出身の平塚さんもこれに名を連ねておりますから、そういうことになるかもしれませんけれども、しかし、正直に申してこの法律で果して両先生がおっしゃるような成果が上るかどうかということと、私どもはこれは立法できるのですから、議員立法は幾ら作ってもけっこうですけれども、少くともやはり十分検討した完全なものでなければならない。それと同時に、実施を都道府県知事に委任するのですから、都道府県知事のやり方によっては、相当違った面が出てくる。そういうことも私は正直に申し上げて心配しておるわけです。それから汚水等についても、必ず石炭を掘っている所の川を汚すわけです。洗炭業者の方においても、現在採掘している所も汚水を流す。これは汚水防止法とか何とかいうことで規制してございますが、汚水だけとめるということになれば、当然この法律で縛れるはずである。それから筑豊にボタ山がたくさんございますけれども、表面の方はこういう事業でやれたとしても、最後まで掘ってしまうということはとうていできません。そういうことも判断すれば、この法律はあまり有効にならぬのじゃないかということと、もう一つは、私はこういう法律をもって洗炭業者を縛るということより、政府の石炭政策というものは全く無為無策、あるときは絶対必要だと言う、昨年は五百五十万トン出してほしいという話しであったのに、今年は九百万トンと多くなっている。こういう三人や五人の洗炭業者をどうこうというのでなく、石炭政策に衆議議の各位はメスを入れるべきです。その本家本元をやるべきなのに、その本家本元も悪いけれども、こちらも必要だというようなことは、衆議院の先生方のとられる行為でないというふうに私は判断をするのですが、あなた方は本家本元についてどうお考えになりますか。
  122. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) この法律は、なるほど衆議院が提案いたしましたけれども、関係議員は参議院の先生方も、これは何も提案者でございませんけれども、賛成をされて、どちらから出すかということで、衆議院から出した方がよかろうということで、原案は実は参議院の法制局で一番最初は作ってもらったというような事情もあるわけであります。  それからもう一つ誤解がございます。この水質汚濁という点は、まだ水質汚濁防止法ができません現在、日本の法制では、水質を汚濁するということは、これは認容の義務と申しますか、現在の民法では損害賠償の対象になりません。そこで、鉱業法以上の賠償義務を要求しているものでございません。やはり鉱業法の範囲内で、必要最小限度の分だけを責任をもって追求しているわけでありまして、鉱業法では、現在石炭を出しますときの排水によって水質が汚濁する、この分についてはまだ賠償は確立しておりませんから、その点については、この法律にもないのであります。でありますから、この問題につきましては水質汚濁防止法とか、そういうような法律ができればできますけれども、この水洗炭業に関する法律だけで取り締るわけにはいきません。しかし、現在その放流によって川底が埋められる、こういう場合はやはり鉱業法の適用によりまして、鉱業権者も賠償義務がありますから、その範囲おい水洗炭業者にも賠償義務がある、こういうふうに考えております。
  123. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 ちょっとお聞きしたいのですが、先ほどの水洗炭業について、こういうような登録ということになると、将来たとえば一般のパタヤあるいは鉄くずを発掘する。要するにこれと一種の類似行為の者は一つの登録制度にするというようなことになるのではないか、その点の御配慮はどういうことになりますか。
  124. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 私どもといたしましては、鉱業権者の行う鉱害の被害の中で、陥落によるものを除きまして、大体被害の形態が同じでございます。でありますから、被害者といたしましては、鉱業権者が行う加害と、水洗炭業者が行う加害を区別されることは非常に困る、そういう意味で、その範囲内でこの法律を制定したのでありまして、私たちはそれ以上のことは、現在まで考えておらないわけであります。
  125. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 それでは第二条に、「石炭の掘採により生じた廃石を水洗する」こういうことになっておりますが、たとえばよく私のいなかでは、鉄道や何かの廃炭が土に埋っているのを掘り起してやるということは、これは含まないのですか、というのは、石炭そのものから見れば、元はやはり採掘した石炭なのです。それは今言うように、工場や、あるいは鉄道なんかで管理処理が悪くて土に埋ったり、あるいは捨ててあったりするのを、パタヤや、一般人が掘り起してやっておりますが、こういうのはこれに含むか、含まないか。
  126. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) やはり事業としてやっておるということでないから、それらを含まないとわれわれ解釈するわけです。私たちは法律でそのことは予想しなかったわけでありますが、一応業としてやっていないということで、それらは含まないと解釈されると思います。
  127. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 いや、私のやつはそれを業とした場合ですよ。というのは、第二条に「石炭の掘採により生じた廃石」とありますから、その直接石炭を採掘したために生じた廃石でなければ、いいのかとも思われる。ところが、その石炭の採掘というものを、捨ててある石炭だって、もとをただせば、採掘された石炭なんで、そう解釈すれば、やはり採掘による石炭なんで、そういうふうにも解釈されるが、そこらはどうなんですか。
  128. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) このボタ山の採取をやる場合でも、水洗いしないで採取だけする場合がある、いわゆるボタ炭といいますか、この場合にはやはりこの法律にかからない、かように解釈しております。
  129. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 そうすると今言った通り、鉄道なり、工場なりの管理が悪くて、その辺の土に埋ってあるものを水洗いをやる場合にも含むわけですね、しかも、石炭業としてパタヤか何かが水洗いをして、その石炭を処理した場合はどうなりますか。
  130. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 事実問題として水洗いをするということはありましょうか。
  131. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 私の方で、大体工場とか、鉄道とかを大体パタヤがやはり何人かあれして、それで埋め立てをしたり何かして、それを石炭の値段が高くなってくると、それを水洗いして掘り起してきて、そうしてそれを売ったり何かしておるやつがいるのですよ、実際問題としてそういうものは法律の適用に私はならないと思うのですが、それは今の石炭の採掘によると、こう書いてあるから、私は含まないものと思うのですが、どうもわからないものですから……。
  132. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 立法者としては入らないというつもりで書いておる。しかし予想しなかったことなんです。
  133. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 それからもう一つ、私は議員立法だけに、やはりここで解釈によって行政取扱いのときにはっきりとしておかないと、将来行政取扱い上問題になると思うのでお聞きするのですが、それとお聞きしたいと思いますのは、十四条の規定事業の何といいますか、「全部又は一部の停止」を命ずるのですね。そのときでも十一条の規定を準用して聴聞をしなければならないと、こういうのですが、こういうことになると、実際の違反というものが取り締れないのじゃないか、要するにタイミングの問題として、言いかえますならば、違反行為を停止する、ところが、その停止命令を出すのに、どうもこれを聴聞委員会にかけるということになりますと、なかなかやれないので、普通の行政のあれですというと、行政処分は行政処分として、停止命令なり何なりを出さしておいて、その命令自体が違反であるならば、それに対する訴願なり、異議の申し立てをさして、一応その違反行為は停止させておくということが、従来の、今までの行政慣例なんですが、こういう十四条のような書き方で、今言う違反行為があっても、停止命令をするのに聴聞をしなければならない、聴聞委員会にかけなければならないということになると、実際問題としてその違反行為に対して停止命令が出せない。そうすると、この法律全体がどこをねらったのか、非常にどうもそういう違反行為を取り締るために、せっかく作った法律が実際問題としては動かぬ、あるいは間に合わぬと、こういう形になるのじゃないかという気がするのですが、その辺のところの立法者の御意見を伺います。
  134. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) その事業停止命令を出す前にも、改善命令を出する場合にも聴聞をしているじゃないかということだと思いますが、非常に親切に取り扱った、こういうことであります。
  135. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 その点はどうもはっきりしないのですが、その次にもう一つお聞きしたいのですが、十六条の二項の規定に「各水洗炭業者は、連帯して損害を賠償する義務を負う。」こう書いてありますね。普通民法で連帯ということは、みんながその損害に対しては連帯共同責任を持つという意味に解されるのですが、ところが、その次に来て前項の「連帯債務者相互の間においては、その各自の負担部分は、等しいものと推定する。」こういう規定ですと、あれでしょう、もう前の方は何と申しますか、損害をかけた者に対しては、もう連帯して共同責任を負って、ただ負担部分は内部関係だけは、その負担部分だと、こういう意味なんですか。
  136. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 前の規定は、実はボタの採取のような場合には、比較的起らない、これから起るわけですが、どちらがどうやったかわからない場合も多いのであります。それで鉱業法の場合と違いまして坑内の石炭が、地上から見えないということではありませんけれども、責任分担というのがはっきりしない、こういうようなことで一応連帯損害賠償の義務を課したわけです。
  137. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 何かはっきりその連帯の意味がはっきりしませんが、それからもう一つ、先ほど十四条の規定で、まあ今の行政処分をする場合において、非常にその効果が薄いと思うのですが、先ほど相馬さんからも質問がありましたように、一たんこういうものを登録をすると、石炭の何といいますか、景気のいいときには割合に保証金も積んだり、登録料も払うでしょうが、同時に今度は石炭の二、三年前のように非常に炭価が安くて、そうしてどうにもならない、こういうときには、登録権者の今度はまた何といいますか、営業の賠償といいますか。そういったような問題が逆に出てきやしないかという気がするのですが、そのときの措置というものは、どういうことになるのですか。
  138. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 賠償といいますと、企業が倒壊したとか、閉鎖しなければならぬ場合の賠償……。
  139. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 補償ですね。
  140. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 補償ですか。これは結局自由経済でございますから、一応その補償の面については、この法律の外にある、こういうように考えているわけであります。
  141. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 そうしますと、この登録制度というものは、ちょうど漁業権のように新たに権利を付与するのではなくて、要するに純然たる災害防止のために一つの登録制度を施行して、そうして業者を育成して、非常に正常なる仕事をさせるのだ、従って将来、それじゃ登録したからといって、それを営業保障とか何とかという、営業権に対する保障というような問題は別になってくるのだ、これはかりに起ったとしても別個の問題だと、こういうふうに了解してよろしいわけですね。
  142. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 御存じのように、現在の鉱業権でもさらに出願を認め、さらに施業案の認可をいたしましても、現在その通りであります。ただし、国の政策で合理化法のような国の全体のそういう、低品位炭を出すとか、あるいは能率でも悪いものは規制するのだ、事業そのものを縮小するのだ、こういう方針がある場合には、これは別である、かように解釈するわけです。
  143. 高橋衛

    高橋衛君 私も石炭のことは全然わからないのですが、お教え願いたいと思うのでありますが、第二条の定義のところで、「掘採により生じた廃石を水洗することにより石炭を採取する事業」、これはよくわかるのですが、「及び石炭を水洗する事業」の、後段の及び以下はどういう意味でございましょう。
  144. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) これはなかなかわかりにくい規定だと思うのですが、実は現地におられる方はすぐわかるわけですけれども、ボタを採取して水洗するというのは、すぐわかるわけですが、その次の石炭を水洗するというのは、これは主として中小企業なんかにあるわけですが、中小企業で選炭機を持たないで、坑内から掘り出したままで、何ら選炭をしないものの譲渡を受けたとき、そうして水洗という原始的な方法によって選別をする、こういう事業でございます。
  145. 高橋衛

    高橋衛君 そうしますと、後段の石炭を水洗する事業というのは、ボタ山に関係ない一般的な、どこにでもある事業でございましょうか。
  146. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 私たちは一応鉱業権者の鉱業法に基く選炭は含んでいないわけであります。ですから鉱業権者としてやっている場合でなくて、鉱業法に基くものでなくて、しかも、鉱業権者とは離れて原始的な方法で水洗をしておる、こういう場合であります。
  147. 高橋衛

    高橋衛君 この第四条と第七条との関連で少しお聞きいたしたいのでありますが、第七条の拒否条件の中には、たとえばすでに登録の申請が行われている場所に申請をされたものというふうな規定はないようでございますが、その二つの関係から申しますと同一の土地、同一のボタ山に対して採取の場所は違うかもしらぬ。水洗施設の位置を示す図面はちゃんと書いてありますが、そのほかに省令で定める事項にどういうことが入っているかよくわかりませんけれども、とにかく同一のボタ山に対して、幾つでも登録が行い得るとこう解釈してよろしゅうございますか。
  148. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) それは現実問題として、事業者の違う場合もございますから、当然一つのボタ山で幾つも登録が行われる、こういうふうに解釈すべきものと思います。
  149. 高橋衛

    高橋衛君 もう一つお聞きいたしますが、第七条にこれも拒否条件がないのでありますが、第四条に水洗施設の位置を示す図面は書いてありますが、この同じ位置に示された登録が申請された場合にも、この登録は拒否することはできないと解釈せざるを得ないと思いますが、その点はどうでございましょうか。
  150. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 事実問題として、できないことなのでありまして、これは事実上その事業を行う場所がないと、こう考えざるを得ないと思います。
  151. 高橋衛

    高橋衛君 法律問題としては、それは事実上できないということがむしろおかしいので、第七条で同一の場所に申請された場合には、それは拒否条件に当然なる。そうしなければ行政官庁としては、それは法律上拒否するところの権限はないのであって、当然にそれは許可しなければならないということに解釈できないでございましょうか。法律の問題としては、当然法律構成としてはそう考えざるを得ないと思うのでございますが、いかがでございましょうか。まあ、そういうふうな極端な場合を除きましても、少くともすぐに隣接して、そうして実際のこの水洗炭業としてはなはだ不適当だと思われるような場合においても、拒否することができないことは、これははっきりいたしておると思うのですが、そういう場合に拒否することができるという法律構成にした方が、行政官庁としてはやりやすいのじゃございませんか。これは立法の問題でございますから、今の場合もしもその方がやりやすいのであれば、その方に訂正する方が妥当であろうと思います。
  152. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 主として私たちは登録拒否の手続としては、いろいろまあこの身分的な、罰金刑に処せられたとか、あるいは執行中のものとかいうことは別にいたしまして、あとは被害を中心に置いたのであります。登録拒否は被害に重点を置いたものでありますから、営業が成り立つか成り立たないかというようなこと、あるいは事業そのものを規制する、こういう観念は比較的に入れていないのであります。でありますから、今申しましたように同一河川でもでき得るならば、やはり認めざるを得ない。こういうふうにまあ考えるわけです。
  153. 高橋衛

    高橋衛君 それではこの点は政府にお聞きいたしますが、立案者は被害の防止をもっぱら重点に置いてお考えになっておるようでございますけれども、国家的な立場から申しますならば、やはり被害の防止という点から見ましても、その水洗炭業というものが、ある程度ペイするということでなければ自然無理をいたしまして、その被害を加えることになる。しかも、その被害の賠償というのは、なるほど五十万円積むとか、まあその他の規定はございますけれども、むしろそういうふうな賠償をさせる前に、そういうふうな被害の賠償が起らないような状態に水洗炭業を指導するということが、私はこれは国の立場として、また親切な政治として当然あるべき姿だと私はそう思うのであります。そういうふうな観点から、政府はその点についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  154. 村田恒

    政府委員(村田恒君) ただいまの仰せの御趣旨は、全然政府としては同感でございます。仰せの通り初めからそういうむだな、ペイしないような事業を初めからかりに登録の権利をこれに設定するものではございませんけれども、単に登録という制度でありましても、そういうむだな、重複したものはこれを実行上においてこれをできるだけ回避すべきあると考えております。ただ第七条は、ここに私ちょっと立法技術上それをどういうふうに持っていっていいか、今すぐに考えが出て参りませんけれども、第七条は非常に府県に対しまして、広範な裁量の余地を、与えておるように解釈されておりますので、その広範なる裁量の範囲内においてペイしないようなものは、これを拒否していくということは、運用の上においても行い得るのではないかと考えております。
  155. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 実は立法者としましては、この洗い炭業の者、洗い炭業をどう持っていくかということについては、この法律範囲外に出ておるわけです。これは個人の意見はいろいろございます。しかし、これをどういうふうに持っていくか、たとえばこれは合理化の線で持っていきますならば、ペイしないものは初めから拒否すると、こういうような考え方もありましょう。ことに能率の悪いものはもう拒否するのだ。こういう考え方もありましょうけれども、また一方においては、増産態勢というようなことを考えますと、なかなかこの業態をどういう方向に持っていこうかということは、意見がまとまらないので、また政府の政策そのものもはっきりしないので、そこで一応われわれといたしましては、最小限度にとどめて、登録の拒否は被害防止を重点に置く。でありますから、その「施業が河川、道路その他の公共の用に供する施設を損傷し」と、こういう条件があれば、同一河川に多く事業ができるということは、その面においてはチェックすることになると、かようにまあ思いますけれども、事業そのものを育成する、助長するというような面、あるいはいいものだけ残そうと、こういうようなことは、この法律では考えていないのであります。
  156. 高橋衛

    高橋衛君 先ほどの政府当局の御答弁は、第七条の条文を読み方によって、何とかなりはしないかというばく然たるお気持のようでありますが、この条文を読んでみますとただいま多賀谷先生がお読みになりましたように、「公共の用に供する施設を損傷し、若しくは農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反する」というふうにはっきりとこれは限定をいたしておるのであります。いやしくも拒否という問題についてはこれは権利の侵害でございますから、厳格に解釈するのは、法律上当然の問題でございます。従ってこれを拡張して解釈して、そういうペイしないような場合には、従ってペイしないことからつい無理をして損害を与えるというような間接的な問題については、この第七条を適用すべきでない。普通の法律上の解釈では私はそう考えるのです。従ってそういう場合にでも、登録を拒否することはできないと私は考えなければならないと思うのです。問題は、今立法の際でございますので、もしも曲りなりに下手なりにでき上ってしまったものを、行政上どう解釈するかという問題と、ただいま理想的にわれわれが一番よくするのに、どういうふうに規定したらいいかという問題と、これは別の問題でございましょう。その観点から率直にこれは御意見を伺いたいと思うのでございます。
  157. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 私、そういうふうに読めるのではないかというふうに一応考えたのでございます。軽率な発言でございましたが、仰せの通りこの第七条は制限的に列挙しておりまして、これを拡張解釈によって、ただいま高橋委員のお話しのような場合救済できない。救済することはこの条文の解釈上無理だとこう考えます。
  158. 高橋衛

    高橋衛君 もう一、二点お伺いいたしたいのでありますが、これはあるいは御質問が出たかもしれませんけれども、これは所有権には関係ございませんね。ボタ山自体の所有権には関係ございませんね。
  159. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) ございません。
  160. 高橋衛

    高橋衛君 それで、この登録をすることは第七条の拒否条件に満たなければ、必ず登録を拒否することができないのでございますから、優先的に、つまり早く登録の申請をした人に、必ずその登録が行われるとこういう結果になりますね。
  161. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) その通りでございます。
  162. 高橋衛

    高橋衛君 それでまあ、これは法律の問題でございますけれども、ボタ山の所有権者が、政府に、行政官庁のきめた登録によって、実は所有権者としては、そのボタ山を利用して何らかの利益を得たい、こう思っておったという場合に、しかも、それが相当に利益を生み得るボタ山であるという場合に、この登録が行われることによって、その利益というものが、完全に所有権者の利益は侵害されるということになると思うんですが、その点は立法者としては、どういうふうにお考えになったのでございますか。
  163. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) それは当然所有権者の承諾を得ないで、そのボタ山をくずしておるのでありますから、これはもう当然刑法にかかる問題である、こういうふうに考えるわけでございます。
  164. 高橋衛

    高橋衛君 そういうふうに、つまり所有権の侵害になる行為であるという場合にも、第七条の拒否条件には入っていない、従って行政官庁としては、たとえば他人のボタ山であって、しかも、その承諾を得ていない場合においても、やはり登録の拒否はできない、こう解釈すべきであろうと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  165. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 実は第四条の二項の、省令で定める事項に、原炭の、原炭といいますか、石炭を水洗する場合は原炭でありますが、それからボタを水洗する場合には、ボタ山の所有権者の承諾書を取る、こういうように処置いたしたい、こういうつもりであったわけであります。
  166. 高橋衛

    高橋衛君 これは政府にお聞きいたしますが、これは実際この法律を運用する場合におきまして、そういうふうなことは省令で書くということは、省令で書いて、第七条の拒否条件になるということは、私はとうていあり得ない。つまり省令で書き得る範囲ではないと、私はかように考えるのでありますが、その点は政府当局はいかに御解釈になりますか。
  167. 村田恒

    政府委員(村田恒君) これは第四条の第二項に、「前項の登録申請書には、水洗施設の位置を示す図面及び省令で定める事項を記載した書類(以下「添附書類」という。)を添附しなければならない。」この添付書類の中に、そういう承諾書を添付させるわけでありますが、この規定によりまして、この法律によって、その添付書類の内容省令に委任しておるというふうに解釈できるのではないかと思います。
  168. 高橋衛

    高橋衛君 第四条においては、省令に委任している範囲は、第七条の拒否条件を越えて、拒否条件を作ることを委任したとは、法律の普通の解釈上考えられないと思うのでありますが、この点を伺いたいと思います。
  169. 村田恒

    政府委員(村田恒君) その場合におきましては、やはり添付書類におきまする、添付書類に要求されておりまする形式の不備ということにはなりますが、直ちにそれをもって拒否の理由になるかどうかは、法律上疑問が存します。
  170. 高橋衛

    高橋衛君 その点も率直にお答えを願いたいのでありますが、これは立法の際でございますから、やむを得ずそう解釈せざるを得ないからこういうふうな省令を作ったんだということでなしに、現状において、立法の際に考える場合において、やはりそれを拒否条件にするならば、第七条に書くのが妥当である、そういうふうにお考えになりませんか。
  171. 多賀谷真稔

    衆議院議員(多賀谷真稔君) 実は、最初の原案に、原炭ボタ山の所有権者の承認書、こういうものを入れておいたわけです。あるいはその他いろいろ若干そういう条項が入っておったわけでありますが、一応省令で定める事項を記載した書類ということでいいのではないだろうかということで、こういうように提案をした次第でありまして、その点が非常に危惧されるならば、どうぞ修正していただきたい、かように考えます。
  172. 高橋衛

    高橋衛君 ちょっと速記をとめてもらいたい。
  173. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をやめて。   〔速記中止
  174. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をつけて下さい。
  175. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 さいぜん申し上げました通り、本法案が実施される場合においても、炭界の好不況によって実施されたり、法案が必要でなかったりしますので、それと関連して、石炭局長にお尋ねしますが、二、三日前からの新聞で、貯炭が相当余っている、従って大手十三社か十八社か知りませんけれども、二十億の金を投資して、そうして石炭の貯炭組合を作るというような新聞を私が見たわけです。その一日前に、今度は公取の方で、そういうことをやるのは独禁法違反であるというような、これは新聞記事ですから、私、どこまでその信憑性があるかわかりませんが、そういう一連の、関連して石炭業界の動きと、現在置かれている貯炭の状態、そういうことについてお尋ねをいたします。
  176. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 仰せの通り、これは石炭を掘り過ぎたのではなくして、実は天候その他いろいろな産業界の動向によりまして、需要が一時的に減退いたしました。そのために相当に貯炭を抱えておることは事実でございます。ただし、その貯炭は全体として多いのでございますが、主としてこれは需要家のヤードにあります貯炭が非常に多くて、いわゆる業者貯炭というものは、まだノルマルの貯炭としてもいいくらいの数量でございますが、全体としては、確かに相当な貯炭を抱え込んでおることは事実でございます。これに対しまして、今年度さらに五千六百万トンの生産というものを目標として進めておるわけであります。この五千六百万トンの生産の数字というものは、われわれは変更する意思は全然持っておりません。ただし、短期的な現在置かれております貯炭対策というだけでなくして、石炭鉱業が、本来、景気の変動に対して、きわめて弾力性が乏しい企業であるという根本的な理由から、恒久的な貯炭対策といたしまして、第一に電力会社共同でもって貯炭場を持ってもらいたいということを、前から話をしておりまして、これが一時、石炭業界から反対であるかのような意向も伝えられましたが、最近これは石炭業界としては、ぜひ進めてほしいということがきまりましたので、これを目下進めております。さらにこれはきわめて最近のことでございますが、今お話しの貯炭の大手がいわゆるダンピングをするおそれのあります石炭を、約五十万トンほどのものをこれを買取会社というものを初め考えたのでございます。しかし、買取会社案というものは、これは今の独禁法の建前で、とうてい無理であるということで組合にしたらどうだということをわれわれが話をいたしまして、目下その組合というものの形におい金融措置並びに公正取引のどの範囲まで許されるかという問題について研究をしている段階でございまして、まだ、それは具体案としては上ってきておりません。また、公正取引委員会の新聞記事も、公正取引委員会がこれに反対であるという新聞記事も私も読みましたが、これは事実そういうことはございません。逆に公正取引委員会の方から、新聞にこういう記事が出ておったけれども、自分の方はそういうことを言った覚えはないということを連絡をして参りました。これが経過でございます。
  177. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それでは公取委員長あとで来ていただいてお聞きしなければ、独禁法というものが、これは局長ではおわかりにならぬかもしれませんけれども、そこで、ただ不思議に思うのは、業者なり需要者数が同じですから、同じように会社にした場合には独禁法にかかる、それから組合にした場合には独禁法にかからぬということを私は心配したわけですが、しかし、それは事実無根だということですね。
  178. 村田恒

    政府委員(村田恒君) さようでございます。
  179. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それからもう一つ、あなたの本年度計画ですね。昨年度は業界があなたの方と相当話し合って五千六百万トンという数字を、河野経審長官の御説明によると、去年は雨が順調に降ったので石炭を使わなかったので電気が余ったというのですけれども、電気会社のそれを調べて見ると大体百八十万トンくらいなんですね。そうしますると、百八十万トン以上余っているのは、一体どういう理由かということになる、と同時にもう一点は、本年もあなた方の計画に基いて石炭がまた余ることになりはせんか、こういう点を実は心配するわけですが、そういう点は全然御心配無用という御答弁ですか。
  180. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 今後の主として豊水の状況、われわれも御承知のように一番の大きい需要先は電力でございます。電力用炭が本年度のわれわれの計画通り千四百万トン程度を電力に引き取ってもらいたいということを今進めておりますが、これは何分にも天候の問題がございます。それとさらに電力側と強力に折衝しておりますところは、石炭をある程度の条件をつけまして、その条件に従って石炭を供給した場合には現在計画されております油の使用量をさらに電力において減らしてもらう、こういうことを進めております。それと、それによって相当程度、百万トンくらいの石炭というものは電力部門だけでもこれを浮かし得るのじゃないかという計画を立てております。その他セメントその他の産業部門につきましても、極力油の消費を抑制いたしまして、それで国内炭の使用によってこれをカバーしていくという方策を進めておりますので、政府といたしましては、あくまで、業界の方とは若干食い違いがあるかもしれませんが、当初の旗じるし通り五千六百万トンの出炭計画というものはくずさない、また、それに対する必要なる需給調整措置というものは次々と手を打っていく、こういうふうに考えて今研究を進めております。
  181. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 最後にお尋ねいたしますが、独禁法にかからぬということになりますると、その経営者が組合になるか会社になるかわかりませんけれども、とにかく何十万トンか石炭を買いおくことになるわけですね。経営者が会社になるか組合になるかわかりませんが、一つの買取機関を作って何十万トンの石炭を買う、こういうことをやるということになると、あなたの方の通商産業省当局は賛成であるか反対であるか、あるいは賛成だとすれば、当然お金が必要になってきますから、銀行等にそのお金を借りるために、あなたたちは運動なされるかどうか、そういう点についてお尋ねいたします。
  182. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 独禁法のあれは事実無根であると申し上げましたのは、新聞記事に現われておりました公正取引委員会のこの考え方に対して、独禁法の建前上反対であるというようなことを言った覚えはないということを通知して参ったわけでございます。しかしながら、たとえ組合の場合におきましても、その行います協定行為の内容によりましては、どの程度までが独禁法に抵触するかどうかということは、今後公正取引委員会の方とさらに折衝を続けなければならないのでございます。それが第一点、それから通商産業省といたしましても、そういう業界の自発的にダンピングというものをある程度押えていきまして、それによって石炭鉱業の長期の安定した対策を講じようという施策に対しては賛成でございます。その意味おいて、具体案が出て参りまして、その結果、必ずこれは金融措置を必要とすると思われますが、私自身で関係方面を全部回って説明もいたし、それに所要の協力を要請いたす所存でございます。
  183. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 賛成だということになると、あなたの本年度の当初計画も、需要の見通しはきわめて自信がないということになる。自信があればそんなものを作る必要はない。もう一つ、公正取引委員会に交渉しますという内容は、これは独禁法にかかるということを言わぬでほしいという内容か、それともかからぬという方に運動するのか、どちらなんですか。あなたがとにかくそういう買取会社を作ることに賛成だということ自体が、五千六百万トンの当年の計画に自信がないから、そういう買溜め機関を作らなければならぬということになるんでしょう。自信があっても、なおそういうものを作って、石炭の価格の安定をはかるという意味なんですか、どちらですか。
  184. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 短期的な対策としてこれを見ますと、いかにも一種の不況対策のように思われるかと存じますが、先ほど申し上げましたように、石炭鉱業の将来七千二百万トンでも足りないんじゃないかというくらいのエネルギーの需要に対応して、石炭鉱業の長期において安定した作業を続けてもらうためには、今のような会社でなくても、何らかの形において貯炭対策というものを講じていくことが必要である、こう考えております。  それから、お話しの公正取引委員会と交渉いたします内容は、決して見逃してくれとか、そういう意味じゃございませんので、現在の法律のもとにおいてどの範囲の行為が許されるか、その法律を逸脱しないような行為というものの限度というものをはっきりきめるために交渉いたすわけでございます。
  185. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 わかりました。そこで最後に局長一つお願いしておきますがね。今石炭がこれこれ要るというあなたの方の計画に基いて、石炭業界は石炭を掘る、雨が降ったから石炭は要らぬと言って、石炭が余る、炭鉱は次から次へつぶれる、そのつぶれるくらいはがまんするとしても、そこにいる労働者は全部クモの子のように、路頭に放り出される、こういうことを毎回毎回繰り返している。あなたの方の計画がずさんだといって、怒ってみても、責任は負ってくれない。そういうことが当然のように今まで繰り返されてきたんです。ですから五千六百万トンですか、それを一体どう使うのか、重油を規制するとおっしゃったが、重油をどういうふうに、何リットル規制するのか、そういう明細な数字をあげた資料をこの次の委員会に配付していただきたい。
  186. 村田恒

    政府委員(村田恒君) 仰せの資料は、明日でも提出いたします。
  187. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 他に御発言もなければ、この辺で質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認めます。本件に関する質疑はこれにて終局します。     —————————————
  189. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、本委員会に付託されている請願の審査の便宜のため、請願審査に関する小委員会を設けることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認めます。つきましては、小委員の数及び人選は、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認めます。よって小委員の数は五名とし、委員長及び四理事をもって構成することに決定いたします。  次回は、門口午前十時より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会      —————・—————