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政府委員(村田恒君) 本
法案の概要について御
説明を申し
上げます。大体の輪郭はせんだって当
委員会におきまして通産大臣から提案理由の御
説明を申し
上げました際に述べられておるところでございますが、本日はお手元にお持ちの
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する
法律案要綱というガリ版の縦書きの資料がございますが、お手元にございますでしょうか、これを朗読しながら御
説明さしていただきたいと存じます。
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する
法律案要綱。
(一) 改正の要旨
石炭鉱業の現状及び今後のわが国エネルギー需要の趨勢にかんがみ、現存炭鉱の近代化、機械化をさらに強力に推進するとともに積極的に未開発炭田の合理的開発を促進することにより、将来の石炭需要の増加に対応して石炭鉱業の生産規模の拡大をはかりつつ、その合理化を促進し、もって豊富低廉な石炭供給の確保をはかることを目的として、
石炭鉱業合理化臨時措置法に所要の改正を加えるものとする。
これは、現在の合理化法は御承知の
通り昭和三十年に制定されまして、当時の非常に石炭業界におきまする不況というものを背景として制定されたものであります。従いまして限時立法として昭和三十五年八月までがその有効期限となっております。それに対しまして、その後合理化も逐年促進しておるわけでございますが、かたがた本年度を初年度といたしまして新しい長期経済計画が樹立されまして、昭和五十年においては七千二百万トンの出炭を要請されるに至っております。そういうような新しい要素を背景にいたしまして、現在の合理化——合理化というのは広い
意味におきまして、これはある場合においては生産制限のみでなくある
程度の合理的な増産というものを含むわけでありますが、そういう合理化というものの理念にさらに増産という要素を加えまして、この新しい改正をお願いしたわけであります。
(二) 目的
本法の目的として未開発炭田の急速かつ計画的な開発を促進する旨を追加して規定する。
ただいま申し
上げましたように、昭和五十年七千二百万トンの出炭の背景となりますものは、昭和五十年におきまする総エネルギーの需要が七千カロリーの石炭に換算いたしまして、二億七千六百万トンの石炭が必要であるとされております。二億七千六百万トンのエネルギー需要というものの中で、輸入エネルギーは、かりに七千二百万トン出炭をいたしましても、輸入エネルギーはその中の四八%を占める、四八%というものは概算いたしまして約十五億ドルの外貨を必要とすると考えられるわけであります。従いまして第一次的なエネルギーの輸入に十五億ドル
程度の外貨を使うということは極力これを減少していく、節約していくということが必要だと感じられますので、最少限度の目標として七千二百万トンを出炭していきたい、こういう
意味におきましてどうしてもここで画期的な増産をしなければならないわけであります。画期的な増産と申しましても、どの地域も同じような力の入れ方でいくということでは足りないのでありまして、特に今まであまり開発がされていない処女地帯でありまして、しかも石炭の品質その他から見まして特に合理的な開発に適すると思われるところに対して急速に
重点的に開発をしたい、こういうことを考えて、この
法律の改正を行なっておるわけであります。
(三) 法の有効期間
本法の有効期間を昭和四十二年度末まで延長する。ただし、石炭鉱業整備事業団の納付金の規定は、延長しないものとする。
これは、昭和四十二年度までといたしましたのは、昭和四十二年度まで新しい炭鉱というものの育成をこの
法律の背景をもって強力に進めます場合には、おおむね七千二百万トンの出炭の目的を達し得るものと考えております。従いまして昭和四十二年度という限度を切ったわけであります。ただこの中に、現在の合理化法の中にございます整備事業団が非能率炭鉱を買い取るという規定がございますけれ
ども、その中に必要なところの、その買い取りのために必要な納付金の規定というものは、これは現段階におきましては一応昭和三十五年八月すなわち現行法の有効期間の範囲内にとどめたわけでございます。その理由といたしましては、当初合理化法が三十年に制定されましたときに整備事業団の買収の目標として掲げました三百万トンの買い入れというものは、本年度末までに大体契約がこれを完了し得る、おおむね当初の目的を達成したというためにこの三十五年八月で一応打ち切る、こういう
建前をとったわけでございます。
(四) 石炭鉱業合理化計画
石炭鉱業合理化基本計画の目標年次を昭和四十二年度に改め、計画の内容のうち、合理化工事に関する事項を削除し、未開発炭田の開発に関する事項を追加する。
これは、年次を延ばしましたために、現在もあります合理化の基本計画というものを年度を延ばした、さらに未開発炭田の開発を一項目入れて、こういうふうに改めたわけであります。
第五に坑口開発の制限でございます。
(五) 坑口の開設の制限
(1) 坑口開設工事許可
制度の延長坑口開設工事許可
制度を本法
施行期間中延長する。
(2) 坑口開設工事許可
制度の
運用の改善
坑口開設工事許可
制度の従来の
運用にかんがみ、次のように改正する。
(イ) 坑口開設工事許可の基準を通商産業省令で定めることとし、その省令の制定改廃に当っては石炭鉱業審議会に付議することとし、個別の処分を石炭鉱業審議会に付議することを廃止する。
(ロ) 鉱山保安法第二十五条命令に基く坑口開設工事については、許可を要しないこととする。
これは、坑口開設の問題は、特に合理化法が三十年に制定いたしましたときには、できるだけよけいな出炭をさせないという
建前をとりましたので、坑口の開設を一々許可をとられるという
制度をとっております。ところが、この規定だけはことしの、本来この
法律の有効期限は三十五年八月まででございますが、この坑口開設許可の条項だけはことしの八月をもって切れてしまうわけでございます。これを果して切れたままでほうっておいていいかどうかということになりますと、最近特に鉱山におきます保安問題がいろいろと論議されております。また、かたがた合理化というものは、今後も増産と合して推進していかなければならない
二つの理由から、坑口開設許可
制度もやはりこれを延長すべきであるという結論に達しましたので、その延長をお願いしておるわけであります。そうして、ただしかしながら、従来坑口開設許可の
一つ一つの、個別の書類を東京の中央の審議会——青山
先生を
委員長といたします審議会にまで持ってきて一々やっておりますが、これはあまりにも煩瑣でありますので、これは全部地方の坑口開設の特別の
委員会に全部これをおまかせしまして、それで東京の
委員会としては基本となります基準だけをきめていただく、こういうふうに行政の簡素化をねらったわけでございます。なお、鉱山保安法第二十五条の命令に基く坑口開設工事というものは、これはこの
法律が当初制定されました当時におきましては、鉱山保安法第二十五条に基きますたとえば通気口を開くというような保安命令というものが非常に広範に出されることはあまり考えておられなかったのでありますが、最近におきます保安のいろいろな重要性にかんがみまして、鉱山保安法第二十五条というものは、
相当発動されてくるということを期待しておるわけでございます。その場合に一々保安上の必要によって命令されました坑口開設について、一々許可
制度をとるということは矛盾がありますので、これをはずしておるわけでございます。
次は、未開発炭田の開発でございます。
(六) 未開発炭田の開発
未開発炭田の開発に関する規定を追加することとし、その内容は次の
通りとする。
(1) 地域の指定及び指定地域の調査
(イ)
通商産業大臣は、石炭の鉱床の
状態、地質の
状態その他の自然条件及び立地条件に関する調査を行い、その調査の結果に基いて石炭資源の開発が十分に行われていない地域であって、石炭鉱業の合理化のためにはその開発を急速、かつ、計画的に行う必要があると認められる地域を指定することができる。この場合においてあらかじめ石炭鉱業審議会の
意見を聞くものとする。
(ロ)
通商産業大臣は、前号の調査のため必要があるときは、その職員に他人の土地に立ち入らせることができる。
(ハ) 前号により他人の土地に立ち入る職員は、調査のためやむを得ない必要があるときは、障害となる植物を伐採することができる。
(ニ) 前二号の行為により損失を生じたときは、国は損失を受けた者に対し補償するものとする。
これは、あとの規定は土地収用法等の規定と同じでございますが、ここで新しい
措置をとりましたのは、特に
通商産業大臣がこれから積極的に、かつ、
重点的に開発していこうとする地域に対しまして、まずその調査を行いまして、その調査の結果に基いてその地域を指定するという
措置をとったわけでございます。その地域を指定しますことによって生じまする
法律上の効果というものは、
法律上の効果、言いかえますると、その地域内に鉱業権を持っておりまする者がどのような制約を
法律上こうむるかということは、そのあとの開発計画の届け出というところに現われて参ります。その調査費といたしまして本年度四千万円の調査費をちょうだいいたしまして、本年度の最初の年の計画といたしましては北海道の釧路地域と九州の有明地域の開発調査、これをやっていきたいと考えております。今後さらにどういうところを指定地域として考えているかと申しますと、宇部の東洋鉱区、それから北海道石狩炭田及び天北炭田、これらの地域を今後引き続いてやっていきたい、こう考えております。
それから開発計画。
(2) 開発計画
(イ)
通商産業大臣は、前項により地域の指定をしたときは、遅滞なく、石炭鉱業審議会の
意見をきいて、その指定をした地域(以下「指定地域」という。)の石炭資源の開発に関する計画(以下「開発計画」という)を定めるものとする。
(ロ) 開発計画に定める事項は、次の
通りとする。
(a) 石炭資源の開発に関する目標
(b) 石炭資源の開発のため実施すべき工事に関する事項
(c) その他石炭資源の開発に関する重要事項
これは、まず役所側が、
通商産業大臣が基本的な開発計画を(a)(b)(c)の三項目にわたって樹立するわけであります。この開発計画に基きまして、後に述べますような、各業者が開発計画に基いた具体的な工事の届出をする、事業計画の届出をするという
建前をとっております。
第三に、いろいろ論議のありました鉱区の調整の問題を規定したわけでございます。
(3) 鉱区の調整
(イ)
通商産業大臣は、指定地域内の鉱区がさくそうする地域において、採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減を行うことによって、その地域の鉱床の急速かつ計画的な開発を行うことができると認めるときは、当該鉱区にかかわる採掘権者に対し、採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減の出願について協議すべきことを勧告することができる。
(ロ) 前号の規定による協議をすることができず、または協議がととのわないときは、当事者は
通商産業大臣の決定を申請することができる。
(ハ)
通商産業大臣は、決定の申請があったときは、当事者及び利害
関係者から
意見書の提出を求めた後、石炭鉱区調整協議会の
意見を聞いて、採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減の決定を行うものとする。
(ニ) 前号の決定があったときは、当事者の間に採掘権の譲渡または採掘鉱区相互の間の鉱区の増減について協議がととのったものとみなす。この場合、対価を支払うべき者が対価の全部の支払または、供託をしたときは、通商産業
局長は、採掘権の移転
または変更の登録を行うものと
する。
(ホ) 前各号の外、処分の禁止、決定手続等所要規定を鉱業法の規定に準じて規定するものとする。
この鉱区の調整は、現行の鉱業法におきましてもある種の鉱区調整を行い得る規定があるわけでございますが、それはなかなか条件が
相当厳格でございますし、さらに役所側の権限といたしましても、通商産業
局長がこの鉱区調整について勧告することができるという規定にとどまっているわけであります。これを特にこれから積極的に開発していこうという地域につきましては、鉱区調整をやります条件を比較的ゆるやかにいたしまして、と同時に、
通商産業大臣の権限としては決定まで持っていくことができる、こういうふうに強くしたわけでございます。これは旧鉱業法におきまして、未開発の鉱物は国の所有であるという規定がございまして、現在の鉱業法におきましても、あとに述べますように、事業着手の義務というようなものが存在している精神からいたしましても、合理的な開発を行うために、一定の地域につきましては特に鉱区調整までやって積極的な調整をやるということは妥当な
措置であろうと考えているわけであります。
(4) 事業計画の届出及び事業着手義務
(イ) 開発計画が定められたときは、当該指定地域内の採掘権者は、三月以内に、開発計画に準拠して、当該鉱区における石炭資源の開発に関する事業計画を定めて
通商産業大臣に届け出でなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(ロ) 前号の事業計画には、次の事項を定めなければならない。
(a) 石炭資源の開発のため実施すべき工事に関する事項
(b) 前号の工事が完了した場合における生産数量、生産能率及び生産費の見込
(c) その他通商産業省令で定める事項
(ハ)
通商産業大臣は、開発計画の円滑な実施をはかるため必要があると認めるときは採掘権者に対し、事業計画を変更すべきことを指示することができるものとする。
(ニ) 石炭については鉱業法第六十二条の事業着手義務が適用除外されているが、地域の指定があったときは、指定地域内の採掘鉱区にかかわる採掘者についてはその適用除外を廃止し、事業着手義務を復活させるものとする。
先ほど申し
上げました通産大臣が基本的な開発計画を立てますというと、その開発計画に準拠して、その地域指定を受けました地域内に鉱区を持っております鉱業権者はそれに準拠した事業計画を届け出なければならないということを規定いたしております。その届出に対します役所の
措置といたしましては、必要があると認める場合には採掘権者に対して通産大臣が事業計画の変更の掲示をすることができるということをうたっているわけでございます。さらに鉱業法第六十二条は鉱業権が設定されまして、六カ月以内に正当の理由がなくして事業に着手しなかった場合には鉱業権を取り消すことができうるという規定になっておりますが、この合理化法が昭和三十一年に制定されましたときは、むしろ石炭の生産を合理的に調整していこうという立場が非常に強い
法律でございましたので、着手義務を置いておくことは非常に矛盾いたしますので、石炭鉱業につきましては着手義務を全面的にはずしております。言いかえますと、全国の石炭業者は鉱業法第六十二条の事業着手義務を持っていないわけでございます。ところが、今度はある地域に限りましては、積極的に開発さしていこうという
意味におきまして、その地域に限って六十二条の事業着手義務を復活したわけでございます。
最後に、石炭鉱区調整協議会でございますが、
(5) 石炭鉱区調整協議会
(イ) 通商産業省に石炭鉱区調整協議会を設置する。
(ロ) 石炭鉱区調整協議会は、
通商産業大臣諮問に応じ、指定地域内における鉱区の調整に関する重要事項を調査審議する。
(ハ) 石炭鉱区調整協議会は、五人以内の
委員で組織する。
鉱区調整というのは、いろいろと利害
関係を含みますので、これはあくまでも客観的な第三者的な学者の方にお願いしたい、こういうふうに考えております。
以上簡単でございますが、要綱について御
説明申し
上げたわけでございます。