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政府委員(
松尾泰一郎君) 今
大臣から御答弁がありましたが、この貿易
振興会の方は、いわば積極的な市場開拓、調査宣伝ということでまあ突進すると申しますか、そういう方向の貿易
振興をやるわけであります。で、それから今先生の御指摘の問題は、過当競争をいかにして防止するかという、やや消極的な国内でのいろいろな対策になろうかとも思うのであります。もちろん、貿易
振興会が海外にいろいろな触覚を持ちますためにいろいろな情報を送ってくる。その情報を参考にして国内で過当競争の防止をすべく手を打っていくという意味においては、貿易
振興会も過当競争防止と関係がないとは言えない、非常に関係があるわけでありますが、今先生の御指摘の点は、国内における過当競争防止を今後いかにしてやるか、あるいは現在どういうふうにやっているかというお尋ねとも思うのでありますが、
大臣が御
説明になりましたが、今大体この輸出入取引法の運用によりまして過当競争を防止していく場合と、それから外国為替管理法の運用によってやっていく場合と、それから中小企業安定法の運用によってやっていく場合、それからもう
一つは、輸出水産物の
振興法の運用によってやっていく場合、大きく分ければ四つに分れるかと思うのであります。まず、輸出入取引法の運用による場合でありますが、現在商品別に輸出組合というものが結成されております。で、輸出組合におきまして必要がある商品につきましては、過当競争を防止しなくちゃいかぬという商品につきましては、組合の内部で、ある特定地域に向けましてその商品の年間の輸出数量は、この程度にしよう、あるいは価格はこの程度にしようという、組合内部のいわば協定というようなものをやっておるわけです。それに対しましては、もちろんアウトサイダーもございまするので、その組合の協定を援護するために、
政府におきましても取引法の二十八条に基きまして、アウトサイダー規制
命令というようなものを出しまして、アウトサイダーの取締りをやりまして、この輸出組合のいわゆるそういう過当競争防止の事業を援護しておるわけであります。それも現在のところ、かなりな数に上っております。約五十くらいな協定が、繊維以下あらゆる商品についてできております。そのほか輸出組合というワク内じゃなしに、同種の輸出業者が組合を一応離れまして、業者だけで、たとえばオーストラリア向けの綿布の輸出はこの程度にしよう、価格はこの程度にしよう、あるいはヨーロッパ向けはこうだというふうな、輸出業者協定と言っておりますが、そういう協定でもって、数量、価格の調整をして過当競争の防止をやっておりますのが約七十三件ばかりございます。そのほか、これは今申しましたのは、税関線と申しますか、輸出面だけのそういう
措置でありますが、どうしても国内のメーカーとの関係の調整をいたさなければならぬということで、輸出品の国内取引に関する協定もできております。これは合計十八件ばかりの件数になっております。
それからその次の問題としては、いわゆる輸出品の一手買い取りのための指定機関、いわゆる俗称買い取り
会社の問題であります。これも先般輸出入取引法の御改正を願いまして、法律はそういう改正ができたわけであります。ところが、残念ながら現在までのところ、その
会社を認める条件が非常にまあむずかしい状況になっておりまするので、まだこの指定機関として認可したものは、一件もない状況なのであります。これはなぜそうむずかしいのかということになりますと、この輸出業者とメーカーの間の中間にある機関でありまして、いわゆる独占機関になります関係上、ここの
審議におきましても、非常ないろいろ議論がありましたように、非常に指定機関の認可というものについては、慎重を期せなければいかぬというようなことで、生産者団体もそういう
会社を希望するメーカーの団体も、輸出業者の団体も、それを希望するみなの双方の意思の一致したところでしか、そういう買い取り
会社は認めちゃいかぬというふうな、まあ法律の建前になっております。従いまして、なかなか、その輸出業者だけがそういう機関をほしい、あるいはメーカーだけがそういう機関をほしいと言いましても、両者の意思合致が非常にむずかしいというようなことで、現在この候補者になる
会社が、まあ十七ぐらいはできてはおるわけなのでありまするが、実際なかなか認可ができないというような状況になっておるのが実情であります。われわれとしては、この認可の条件は、次の機会に法律改正を願って、もう少し簡易にやれるようにしたいというふうに思っておるわけであります。まあ、そういうふうな点が輸出入取引法の運用による過当競争の防止の
措置であります。
それから次は、外国為替管理法に基くもの、これは御存じのように
政府がある品目を指定いたしまして、通産
大臣の承認がなければ輸出ができないという承認の品目にしまして、承認のときに数量なり価格なりをチェックして過当競争が起らぬようにしていくもの、これも現在のところ、かなりな品目に上っておりまして、この品目の数え方にもよりますが、現在の輸出承認品目が三百六十二品目あるわけでありますが、そのうち、特に過当競争防止ということで実施をしているものが、約三十品目であります。
その次は、いわゆる中小企業安定法の運用によるものでありまするが、現在四十四業種につきまして、全国規模、または府県規模の調整組合が結成されておるのでありまするが、そのうち、輸出品を主たる目的にしているものが二十四業種あるわけであります。中小企業の安定法によりまして、この調整組合がやっておられますことも、過当競争防止については非常に役立っておるのではないか。それから、輸出の水産物につきましては、御存じの独立の
振興法というものがありまして、たとえば輸出用のマグロ類とかカン詰類、まあいろいろ種類がありますが、そういうものにつきましては、いろいろ業者間の協定がやられるということになっておりまして、現在かなり進行しておるわけであります。
以上が現状でありまするが、それで、もちろんその不十分の点もあるからこそ、そういう問題が起ってくるのでありまするので、われわれといたしましては、できるだけこの組合の協定、あるいは業者の協定が迅速にできまするように、今、現行の取引法を一部改正する必要があるのではなかろうかという点が
一つ、それから、先ほども
大臣が言われましたのは、今の法律体制が、業者の方が自主的にやられる、それを
政府が受けて立って、いいか悪いかの判断をして承認をすることでありますので、まず、そのイニシアチブは業界がとられる。だから、業界が動かれぬ場合には、
政府として何もできぬというようなのが、現在の法律体制でありまするが、必要がある場合には、
政府の方から、そういう協定をしなさいという積極的な勧告をするような体制に持っていったらどうだろうというふうなことも
考えておるのであります。それからまた、現在のところ輸出品のメーカーがそういう過当競争防止のために、協定を締結することができるのでありますが、これはメーカー団体の協定でありまするので、非常に慎重を期さなければならぬということで、アウトサイダーの規制
命令が認められておらぬのであります。そこで、これも輸出
振興のためには、メーカー団体ではありまするが、過当競争防止のために、アウトサイダーの規制
命令を必要とするのではないかという点が、今度の輸出入取引法の改正のときに
考えております一点なんであります。その他、なお若干の点もありまするが、長くなりまするので、省略させていただきますが、まあそういうふうな事情でありまして、現行法の運用によりましても、かなりなことはできると思うのでありますが、ところが、何分これは、業界の利害、あるいはメーカー、サイドと輸出業者サイドとの利害の関係もありまして、まあ、ちょっとやそっとの行政指導では、なかなかできにくいというのが実情であります。海外で輸入制限運動が起った、もうぐずぐずしておったのじゃ、どうしても関税引き上げになってしまう、あるいは輸入制限になるというような事態になれば、これは大へんだということで、非常に業界の団結が早くいくのでありまするが、かりにそういう事態がない場合におきますと、非常に急速に輸出が伸びている、去年の数十倍、あるいは百倍に輸出が伸びている商品につきまして、いずれは問題が起きるだろうという場合に、なかなか役所がこれを少し何とかしなくちゃならぬじゃないかということを申し上げても、なかなか業界として決心がつきかねるというのが実情でありまして、
大臣が率直に先ほど申された
通りでありまして、われわれとしましては、問題が起ってしまってからやると、なかなか事態の収捨にも時間がかかりますし、損失を生じますので、できるだけ、いま少し業界の自覚といいますか、を早めまして、過当競争防止の問題について最善を期したいというふうに
考えておるんであります。目下輸出入取引法の改正をしておるわけなんでありますが、なかなか法令的にもむずかしい点がありますし、若干時間的におくれておるわけであります。そういう事情でありますので御了承を願います。