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大竹平八郎君 私は、本
委員会でしばしば問題にしておりまする、まず
経済外交という見地から外務省にお尋ねをいたしたいのでありますが、これは昨日及び本日の新聞紙上ですでに御承知の
通り、
台湾における
国民政府が、今度の
日本の中共に対する政策に関しまして、いわゆる通商断絶、まさに国交断絶の一歩手前までの意思表示を表明したもの、こういう大きな問題でございます。本来ならば岸総理の特に御出席を求め、当然外務大臣の御出席も得られるものと思っていたのでありますが、残念ながらきょうは外相が出られないので、政務次官がかわっておいでのようでありますが、いろいろ時間の関係もございまするので、あえて政務次官にこれから二、三、質問をいたしたいと思うのであります。
私どもはむろん中共貿易が拡大発展をするという点につきましては、何らのわれわれは
異議をはさむものではないのであります。しかしながら、これは
政府当局にもしばしば申し上げている
通りに、あくまでも、国際情勢の複雑な立場からいたしまして、あくまでも
民間ベースによってそうしていうということが、年来の
政府の主張のように私どもは聞いていたのでありますが、今度の第四次日中貿易協定の状況等を見まするというと、ほとんど商品類別の問題であるとか、あるいは決済の問題等も、第三次貿易協定と違いまして非常にスムースに運んだ。ところが、問題になりましたのが、昨年代表が参りまして問題になりましたのが、いわゆるこの代表団の人員の数の問題である。で、私はこのことに対しまして、先般の当
委員会におきまして、当時出席をいたしました三代表の方々に対しまして質問を申し上げましたが、そのときにおきまして、ほんとうに貿易をやろう、そうしてこの
経済的な見地からこの第四次貿易協定を結ぶということであるならば、何もあえてその通商代表の員数をたくさんに固執するということは、私どもの頭としては
考えられない。これはむしろそういった純
経済的な問題を超越をいたしまして、中共
政府自体に大きな政治的な意図があるのではないかということを、私は当時参考人の諸君にまあ質問をし、同時に
政府にもその問題につきましてお尋ねをいたしたわけであります。私どもがそう
考えておりましたことが、全く裏打ちをせられたような状態となって現われたのが、この今度の第四次貿易協定の覚書の問題であるのでございます。それでこのすでに通商断絶のような状態にまでなって、そうして昨晩おそらく駐日中国大使館にあてまして、
台湾の
国民政府よりは公式のおそらく電報が入っているのではないかと私どもは
考えるのであります。これはもうすでに一般の
経済問題を越えまして、大きな政治問題になって現われていると言っても過言ではないのであります。
そこで、その問題の中心でございますが、覚書の内容を見まするというと、
(1) 双方は相手側の通商代表部およびその構成員の安全保障に適切な措置をとる。もし法律上の紛争を引起した場合は双方が連絡して双方の同意した方法で処理すること。
(2) 双方は相互主義に基いて相手側の通商代表部の所属人員に、出入国の便宜、通関の優遇および貿易活動を目的とする旅行の自由をあたえること。
(3) 通商代表部は業務遂行上に必要な暗号電報を使用することができること。
(4) 通商代表部はその建物に本国の国旗をかかげる権利を有すること。
以下略しますが、まあこういう覚書があるわけでございます。このうちに最も大きな問題になりますことは、言うまでもなく国旗掲揚の問題でございます。岸総理は国会においてこの問題についていろいろ御
答弁せられるように聞いておるのでございますが、国旗の掲揚の権利を認める。そしてまた同時に、この国旗掲揚に対して、これを引きおろすということの権利はないというように御
答弁をされておるように、私どもは聞いておるのでありますが、これが今の通商断絶の一番大きな問題になるのでありまして、この国旗を掲揚するということに対しますると、言うまでもなく二つの中国というものが認められる。
政府があくまでも
民間べースによって中共貿易をやるということを逸脱をいたしまして、政治的に中共というものを認める、まあこういうようなことになったのが、今回の通商断絶の問題になったと、こう思うのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)そこで、私はなぜこういうような問題が起るのに対しまして、
政府は今まで
国民政府、その他国際関係というものに対しまして、政治的なこういう関与をするならば、どういう
影響があるというようなことを、最初から一体お
考えになっていなかったのか。そうであるとするならば、私は岸内閣の大きなミスであろうと断ぜざるを得ないのであります。この問題は情勢判断という問題にもなるのでありますが、この前の日ソ共同宣言が締結をせられたときであります。私は本会議におきまして、当時の鳩山総理、重光外相に質問をいたしたのでありますが、そのときにちょうど、あの条約を締結をいたしまして、調印を済ました一週間の後に、御承知の
通りポーランド、ハンガリーというような大事件が起きたわけであります。で、これをもし外務省が当時、そういうソ連の革命以来、四十年以来かつてないような大事件が胚胎をしておるにもかかわらず、それをキャッチでき得なかったということについて私は鳩山首相、並びに重光外相を責めたことがあるのであります。で、当時ちょうど調印の九日の前までは、フルシチョフを初めといたしまして、ソ連の首脳部がほとんど全権になっていた。ところが、この問題の収拾のために、フルシチョフその他のほとんどが、ポーランド、ハンガリーに飛んで、シェピロフと、
あと新たに二人の人が入って、全権団として調印をしている事実がある。で、もし私はその調印が一週間、かりに外務省の情勢判断によって一週間おくれるということがあるならば、ソ連を中心にする
世界情勢というものは、もうすっかり変ってくるのであります。そういう点から言うならば、日ソ条約の問題、ことにこの漁業の問題などは、非常に
日本に有利に展開をしたということを私は申し上げたのであります。いろいろ御
答弁があったようでありますが、果して当時私が質問した問題が、ただいま、現在
日本の外交の一番大きな難点になって現われておるわけであります。そういう
意味からいたしまして、私はなぜに一体こういう情勢というものについてお
考えがなかったのか。隣りの韓国のごときは、強硬一点で、きております。しかるにかかわらず、竹島の問題さえ
一つ解決をできないというような体たらくであります。(「同感」と呼ぶ者あり)しかるにもかかわらず、
国民政府は信義をもって、少くとも今日まで外交をやってきておるのであります。もの言わぬ連中ならばあくまでも等閑視していいということは、これは外交常識の上から
考えられないことなんである。私はそういう
意味におきまして、こういうような状況になりましたことについて、私は外務当局として非常なまず
責任があると思うのでありますが、そこで、まず、この覚書の問題についてお尋ねをすると同時に、この情勢の判断につきまして一体外務省はどういう御見解を持っていたか、ということをまずお尋ねいたしたい。