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1958-03-20 第28回国会 参議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十日(木曜日)    午前十時四十八分開会     —————————————   委員異動 三月十九日委員岡三郎君辞任につき、 その補欠として竹中勝男君を議長にお いて指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     近藤 信一君    理事            青柳 秀夫君            相馬 助治君    委員            大谷 贇雄君            小沢久太郎君            小幡 治和君            小滝  彬君            小西 英雄君            高橋進太郎君            高橋  衛君            海野 三朗君            島   清君            椿  繁夫君            加藤 正人君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君   国務大臣    通商産業大臣  前尾繁三郎君   政府委員    外務政務次官  松本 瀧藏君    通商産業政務次    官       白浜 仁吉君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省軽工    業局長     森  誓夫君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会開会の件 ○合成ゴム製造事業特別措置法の一部  を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○経済の自立と発展に関する調査の件  (日本台湾との貿易問題に関する  件)     —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより商工委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  岡三郎君が辞任され、その後任として竹中勝男君が選任されました。     —————————————
  3. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、先ほど委員長及び理事打合せ会を開き協議いたしました結果、本日の議事順序は、午前中まず合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案を審議し、午後からは大竹委員よりの要求により、日本台湾との貿易問題について所管大臣質疑を行い、そのあと理化学研究所法案を審議することとし、大蔵委員会連合審査申し入れに応ずることを申し合せました。右御了承願います。     —————————————
  4. 近藤信一

    委員長近藤信一君) まず、連合審査会の件についてお諮りいたします。  昨日大蔵委員会から、同委員会の決定により、本委員会に付託されておる企業合理化促進法の一部を改正する法律案及び中小企業信用保険公庫法案について連合審査会開会されたい旨、申し入れがございました。大蔵委員会申し入れに応じて連合審査会開会することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会日時等につきましては、先例により、委員長間において協議の上、決定することにいたします。     —————————————
  6. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより合成ゴム製造事業特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  7. 海野三朗

    海野三朗君 私はこの前の国会で、合成ゴムのことをぼんやりして通してしまったのですが、よく合成ゴム会社性質考え、また、政府が十億の株式を持つということを考えてみますると、十億の株を持つということは、つまり金を貸すわけになるので、配当がなければ何年でもそれは据え置かなければいけない。そうすると配当ができるまでその十億の金を無利息で貸しているという結果になりはしませんか。どうなんですか、その辺。
  8. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) これは出資でございますから、本質的には融資とは違うわけでございます。しかし、経済的な会社の思典という面から見ますると、いわば無利子の金を借りているという見方も、それと同様な効果があるということは言えると思います。
  9. 海野三朗

    海野三朗君 そこで、配当が出てくるまでは、つまり無利息で金を貸したという結果になると思いますが、それはどうなんですか。十億の金といっても大した金でありますね。今日中小企業金融公庫でも、商工中金でも零細なる五万円からの金を貸して中小企業のために融資しておる。それはちゃんと利息は容赦なしに取って融資しておるわけです。ところが、一方は融資にあらずして投資という、うまいごまかしの名前を使って無利息で金を使わせるという結果になる。これは私は不合理だと思うのですが、あなたはどうお考えになりますか。
  10. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 融資出資とは本質的には違うわけでございまして、融資ですと必ずこれは取り返す。しかも、その金利を合せて取り返すということは、当然予想されておるものでありますが、出資の場合は、事業の危険をともに負担するという意味で、これは融資とは本質的に違うものでございます。もし融資でいくといたしますると、われわれもいろいろ研究したのですが、その場合には、この会社がそれだけ金利負担等が重くなるわけでございまするので、会社採算がとれるようになる時期がさらに二、三年おくれるということになります。そういうことでは、民間出資者もとてもたえられない。つまり事業が結局起されなくなるということで、普通の融資よりは、もう少しこの会社負担を軽くするという意味出資、また、そうすることによって、初めてこの会社設立されるということから、融資ではなくして出資という形をとらざるを得たかったのでございます。
  11. 海野三朗

    海野三朗君 投資の形をとらざるを得なかったと言われますが、これは果してもうかりますか、この会社は。どうなんです。どういうお見通しですか。もし必要があるならば、必ずそこに会社が生まれる。損をするのであるならば会社が成り立たない。それを政府が助けてやらなければ、これが発育しないからというような御親切があるならば、今日中小企業のつぶれていくやつを救う方が先じゃないかと私は思うのですが、その辺はどうなんですか。投資であるといってその事業を助けるのだと言われますが、果してこれがもうかるだけのお見通しがあるのですか、ないのですか。どうなんです。
  12. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 前回にも申し上げましたが、今後の天然ゴム供給見通しと、ゴム一般需要見通しからいたしますると、どうしてもわが国で合成ゴム製造をやらないと、日本の必要とするゴムを確保することができないということで、こういう計画を作ったのでございます。従いまして、将来におきましては、この会社製造計画に基く数量の合成ゴムは、需要が必ずあるという見通しをもっておるわけでございます。しかしながら、この会社採算がとれるようになりますのは、今から数えましても数年先のことでありますから、従ってまずそのころまでは、投資家は金をいわゆる塩づけにしておかなければいけない。また、それから先もこれは世界経済によって、ゴム需給事情はいろいろ影響を受けるでありましょう。そういう意味で必ずしも数年先には、必ずこの会社がもうかるということを断言することはできないかと思います。ただ、可能性の議論で推定していくだけのことであります。そういうふうにいたしますと、数年後には一応黒字になる。それからあと投資家としては非常に楽でしょうが、それまでは投資家としては、非常に苦しい金をただ寝かしておくということになりますので、普通の民間投資家にまかせておきますと、そういう金を今寝かしておくということは、だれも希望しないわけで、このままでは、なかなか民間からこういう事業は起らない。そこで、国が相当な援助をしてこの事業を起すという決意をいたしたようなわけであります。
  13. 海野三朗

    海野三朗君 数年後にはもうかるであろうというお見通しは非常に甘いのじゃありませんか。どうなんです。
  14. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 数年後のことを、ここで直ちに断定することは困難かと思いますが、一応われわれの承知しておる事柄を総合いたしますと、数年後にはこの会社フル操業ができるようになり、会社としては、一応普通の配当ができるようになるというように考えております。もちろん、これは経済界の動きは、いろいろな原因で起って参ります。必ずこういうわれわれが今想定しておる通りにいくということは断言できませんから、少し長期的な観測をすれば、少くともこの会社製品は必ず売れる、採算ベースに乗るようになるだろうということは、見通しとしては言えると思うのであります。
  15. 海野三朗

    海野三朗君 はなはだ失礼な申し分かもしれませんが、昨年の予算の最終日に当って、一千億の拡大均衡政策云々ということを池田蔵相が力説をしたから、私はそれはあなたの見方は甘いと言った。ところが、甘くありませんと言って、断じて間違いはないということを言ったが、それは速記録をごらんになればわかりますが、そうしておったところが、半年たつかたたないうちに、経済界がばたばたしてきたでしょう。ちょうどそういうふうに失礼ながら、あなたは数年後と言われるが、数年後は予測はできませんよ。月世界旅行に行く時代になるかもしれません。数年後の世界見通して、今ここに十億の金を出して投資するという、いわゆる無利息で金を貸すというようなことは、政府としては大責任がありますよ、国民に対して。私はその点をはっきり伺いたいのです。投資といってもこれは無利息で金を貸したということになる。日本中小企業に対しては、あれほど利息を取っておりながら、この大企業に対して投資をしたということ、そのことが私は根本的に違っておるのではないか、まあ少し考えがえこひいきである、へんぱである。数年後というのは、あまり先見通しが甘いというふうに私は思うのですが、あなたどうなんですか。
  16. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 中小企業政策とのバランスについては、これは私が申し上げるには、少しはばったいと存じますから、そこで、言葉を控えさしていただきたいと思いますが、少くとも日本において今後経済上非常に重要な地位を占めまするゴム供給を確保し、かつ価格の安定をはかるためには、こういうふうにある程度国が資金的な援助をしないと、日本合成ゴム事業が起らない。で、今後のゴム供給の確保なり、価格の安定なりが期待できないという見地から、この程度援助を国がすることになったのでございます。もちろん、この企業の確立によりまして、中小企業が大部分を占めまするところのゴム加工業が非常に安定するということになるのでございまして、この事業中小企業政策にも非常に大きい効果を持っておるということも申し上げたいと存ずるのであります。
  17. 海野三朗

    海野三朗君 私はもう一つお伺いしますが、この話は少し古くなったかもしれませんが、このゴム工業に対してこういうふうだというお考えは、政府みずから考えたのですか、民間会社の要望によって政府がこれに同意したのですか、どうなんですか、あなたの御見解は。一体どっちがほうとうだったのですか。
  18. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) これは政府がいろいろ計画をしてきめたのでございますが、これを進めるに当りましては、いろいろ民間の意見も聴取いたしたわけでございます。
  19. 海野三朗

    海野三朗君 それならば、私はまず無利息で金を貸すということが間違っておるということに対する御答弁は、私は納得いかない、これは。ほかの中小企業方面に対してだけ、いわゆる融資という名目でもって利息を取っておりながら、大企業に対して投資という言葉を使って、無利息で何年でももうけが上るまでただ貸しておくという、そういうことが第一私はいけないということを申し上げたい。それからまた、これを構成するに当って、政府がそれほど力を入れるのであるならば、将来とも政府が強いここに監督権を持つなり、何かそういうふうなことに対する構想はないのですか。もうけるようになったならば、その株というものはすっと民間に売り渡して政府がそしてもうけるのだ、こう言われますけれども、あまりそこが私ら考えてみるに、この事業そのものは将来国のためにもなりましょう、どんな事業だって国のためにならない事業一つだってない、国のためにならない事業なら滅んでしまうから……。ところが、この合成ゴムに限ってそういうふうな、これだけが国策の線に沿うとか何とかいうことには、私は受け取れないと思うのですが、どうなんですか、あなたのお考えは。
  20. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) これはたびたび申し上げましたごとく、通常融資の手段によりましては、企業設立されないような事情にあるものでございまして、従って国が出資をすることによりまして、通常融資以上の恩典を与えざるを得なかったということでございます。  それからなお、この会社採算ベースに乗りますると、政府所有株式は放出しまして、政府は手を切るわけでございますけれども、しかし、今後この会社運営につきましては、たとえば同種の製品の輸入は自由でございまするので、そういう操作によってこの会社合理化を推進するような一つの特例もできるかと思います。また、そのほか現在の会社運営には、いわゆる官庁関係の人も入っておりまするので、そういう方々との連絡もよくとりまして、政府の意図にそむかないように行政指導をして参りたいというふうに考えております。
  21. 海野三朗

    海野三朗君 その無利息で金を融資した形になるということに対する御答弁は、どういうものですか。
  22. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) まあ、国がある企業援助していく、どうしても国家的に必要な事業を起そうという場合に補助する仕方としては、いろいろなことがあろうかと思います。一番普通考えられますのは、国家資金融資するということでございますが、そのほかには、たとえば補助金を出す、これは一応やりっぱなしになりますが、しかし、まあ成功すれば出した補助金金額だけは返させるというようなことを最近行なっております。それでもなお足りないという場合には、もうほとんど百パーセントに近く国が出資をして、完全な国策会社としてやるというようないろいろな段階があるわけでございますが、合成ゴム事業の場合には、事業を始めましてから数年間だけ赤字である。そのためにどうも民間資本が集まりにくい。それを救う意味政府出資をするということで、その程度援助をしてやれば足りるのである。しかし、普通の融資ベースでは、まだ会社の経理上の安定が得られませんので、融資上の援助はやはりしなければいけないというようなことで、こういう一つのある暫定的な出資という形をとったわけでございます。これはまあ、必要にしてかつ十分な程度援助であるというふうに考えております。ただ、これは投資した金額を、その金額だけを回収するというのではありませんで、国が回収し得る金額は、おそらくこれの一、二割多い金額になろうかと存じます。最近の例によりましても、ある国策的な会社に対して国が出資をいたしましたが、その株を政府は漸次放出いたしておるのでございますが、これは額面よりも大体二割くらい高いところで売っております。そういう意味では、国はむしろ利益を受けたというような形になっておりますが、この会社の場合も、数年後には一割二分程度配当ができるというようにわれわれは推定をいたしております。もしそういうことになりまするならば、現在の額面のやはり少くとも二割くらい高いような市価が形成されると思います。その価格で国は株を売りまするので、十億円の出資は十二、三億円という金となって返ってくるわけでございまして、国としてはこのために、出資のために損をしたというようなことはあるまいというふうに思うのでございます。
  23. 海野三朗

    海野三朗君 これを今私は将来五、六年の後には商売上引き合うという仮定のもとに申したのでありますが、これはもし引き合わないで、将来赤字赤字がずっと続いた場合にはどうですか。あくまでもそれに出資しますか。国策会社であるからまだ金を投資しますか、どうなんですか。これが赤字であって立っていかない、そうなりましたらどういたしますか。まるで道楽息子を預かったみたいなもので、どこまでいっても金を注ぎ込まなければならぬという結果が招来せぬとも限らぬ。そういう点に対してはどうお考えになりますか。私は失礼な話しですが、必ずもうかりますかという念を押したのは、その点にある。私はおそらくその点は暗黒であろうかと思います。各国の方はなおさら進んでおりますからね、外国の方は。ゴム工業に対してはどうなんですか、その点のお見通しは。これはもしつぶれたらどうしますか。もうだめになってしまったら、十億の金をただすったということになってしまう。
  24. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) この会社がフルに操業のできる場合には、まず普通の配当は可能であると考えるわけであります。損をした場合というのは、つまりこの能力であります年産四万五千トンの生産量が十分に売れない場合だと思うのですが、これはどういう場合に売れないかと考えますと、国際価格よりも非常に高いものであるという場合がまず第一であろうと思います。この点につきましては、先回も申し上げましたごとく、この会社技術なり、設備なりは国際水準のものでございます。大体アメリカ会社技術を導入いたします。機械設備も、大体その設計などは、全部アメリカ技術提携が行われるわけであります。そういう設備なり、加工技術の点では、国際水準にあるということは言えるわけであります。原料につきましても、これは石油精製廃ガスでございますが、原油は大体国際的に同一の価格のものでございますし、設備も大体、これは石油会社設備も国際的な程度にあるということは言えると思います。従いましてそれから出る廃ガス等も、大体国際価格のものであるということは考えられますので、合成ゴム会社製品は、そういう意味で、大体国際水準価格であるということが、一応想定されると思います。従ってそういうわけでありますので、価格の面からして、国際競争に破れるということはまず考えられないと思うのでございます。次の点は、天然ゴムが予想以上に非常に増産されて、合成ゴムが要らなくなるということが考えられますけれども、これも私たちの観測なり、また国連の国際ゴム研究会研究結果によりますと、そういう時代は今予想されないということでございます。さらにまた、合成ゴムというものは天然ゴムと非常に似た性質を持っておるのでございますけれども、この日本合成ゴム会社で作ります合成ゴムは、そういう天然ゴムと非常に似たような性質を持っておるのでございますけれども、また、天然ゴムにないようないい性質を持っておるという特色のために使われるという面も一部分あるわけでございます。そういう考えで、これは天然ゴム供給過剰等のためにこの会社が作ります四万五千トンの生産量が売れないということは、われわれとしてはまだ考えられないのでございます。しかし万一、何か国際的な経済事情変動で、われわれの予測が若干はずれるとしましても、これは一、二年くらい会社配当できる時期がおくれるというようなことはあるいはあろう、あるいはこれは絶対ないとは言えないかと思いますが、その程度の損害でとどまるのではないかというふうに思っております。もちろん、これは会社採算ベースに乗る時期が非常におそくなりますると、その間は政府はずっとこの会社の株を持っておりまして、また、この法規に書いてあります厳重な監督をずっと続けていくわけでございます。なお、非常に損失があった場合に、とめどなく国の資金を入れるかというような御質問もあったかと思いますが、これはそういうことは考えておりません。政府出資は一応設立の際にいたしまする十億を限度としてこの程度でとどめておきたいというふうに考えております。
  25. 海野三朗

    海野三朗君 私は御答弁を伺っていると、どうもそれでいいのかという疑問がわくのでありますが、先にも申しましたように、この仕事国家のためになるのだというのでこれに投資する。ところが、五、六後においては、よくなってくるであろうというお見通しでおやりになっているが、それはどうなるかわらない、実際は。なるであろうという予測でありますね。五、六年後、財界のことは半年先が見えないのだから、一年先が見えたら上等であって、どう変動が来るかもわかりませんのに、これに十億の金を投資して、そうしてもし悪かったらこれは帳消しだ。会社がつぶれてしまったらそれきりだということは、一方中小企業金融対策と比較してみますと、一方は融資ということで利息をちゃんと取ってやっている。なかなかあやしい二、三年後のことまで見通して金を貸してはおりません。今やっている商売に対して貸しているのが、中小企業金融公庫の現状であります。商工中金にしてもその通り。ところが、四、五年後を予想して十億の金をここにいわば無利息で貸す。株を払うときには、一割か二割高く買うのだとか何とか言われるけれども、年五分の利息といたしましても五、六年放っておけばどうなりますか。これは大した額ですよ。それじゃその仕事が起きないから、こう言われるけれども、そういうお見通しがもし間違ったときには、国民に対して何というお詫びをいたしますか。もし、これがだめになったときに、国民に対して十億の金をすった責任はどうこたえますか。私はその根本を伺っているのである。どうなんですか、その点は局長。あなたがただ職分上からおっしゃるのではなくて、ほんとうにお考えになった信念を伺いたい。これが一つ。それからここの株の持主をずっと見ましたが、これでゴム関係業者はほとんど網羅されておりますかどうか。どうも聞くところによると、これはある業者の方はずっと入っていないように聞き及ぶのですが、これで大体日本全体にいきわたっておりますか、どうなんですか、その二点をお尋ねいたします。
  26. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 最初の点でございますが、われわれとしてはこれまでもいろいろ申し上げましたように、現在知り得るすべての資料を基礎にして計画をし、まずこれは失敗することはないという考えでやっておりますのでありますが、しかし、いろいろなこれは世界経済影響を受けやすい事業でございますので、必ずしもそれがわれわれの予測が百パーセント的中するかとも言えないかと思いますが、しかし、少くとも失敗するということは、われわれは今考えておりません。今後もちろんわれわれも大いに努力をいたしまして、これが成功するように努力はいたしたいと思います。  それから株主でございますが、ゴム業界の全体を網羅するつもりで大いに努力いたしたわけでございます。そうしてゴム業者であって出資をする意向のある者はすべて網羅いたしております。この工作を念入りにやったために、会社設立が若干おくれたと言ってもいいくらいでございます。その結果として見ますると、いわゆる中小ゴム業者出資をいたしておりますのが百名をこえております。全体で非常に零細のものまで入れまして、ゴム工業業者というのは五百名前後でございます。一々これらにすべて勧誘をいたしましたけれども、出資してくれた者はそういう百二、三十社であったかと思いますが、その程度のものでございます。従ってこれは一応ゴム業界としては出資のために全力を尽したというふうに考えてよろしいと思います。従って御指摘のような一部の者だけから出資を集めたというふうなことは毛頭ございません。
  27. 海野三朗

    海野三朗君 こういうふうな仕事が至ってモノポライズする傾向があるので、もし、もう一つこういうふうな会社が起ってきたときには、やはりその方面にも投資してくれますか、どうなんですか。ある団体があって、こういうことをやるから投資してくれということを政府に言ってきたときに、投資しますかしませんか、どうなります。
  28. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 合成ゴムというものは、大きく分けて二種類ありまして、普通の合成ゴム、これは天然ゴムと非常に類似した性質を持っているものでございます。それと、特殊合成ゴム、これは非常に特殊な、たとえば耐油性を非常に要求される用途に使うとか、非常な特殊な用途に使われるもの、二種類あります。われわれが今問題としておりまするのは、天然ゴムと同様な性質を持つ合成ゴムでございますが、これにつきましては、今後の需要がそんなに多くないわけです。今から数えまして、まあ六、七年後でも、大体年間四万五千トン程度需要しかないと考えられるのであります。そういたしますと、国際水準で、そのものを生産しますと、最低やはり四万五千トン程度のキャパシティの設備でなきゃだめだということになるのです。従って、こういう種類の合成ゴムにつきましては、他に企業が起り得る余地はないと思っております。もし、そういう計画があったといたしましたならば、これは非常に不適当な事業でありまするので、国としては援助をする必要はないというふうに考えております。つまり、国として見れば、過剰投資という結果を来たすおそれがありますので、その分の育成はいたさない考え方であります。  それから第二番目に申しました特殊の合成ゴム、これは割合小規模でも採算ベースに乗る事業であり、従って、これは現に一つその企業があるわけですが、国が特にそういう経済的な援助はいたしておりません。技術導入その他では、非常に援助はいたしておりますけれども、経済的には少くとも援助はいたしておらない。こういうものにつきましては、国の援助を待たずして、また場合によっては、他の会社ができるかもしれませんが、しかし、当分、合成ゴム一般について見まするというと、需要の関係から見まして、そう企業が多くできるということは考えられないと思います。
  29. 海野三朗

    海野三朗君 それならば、今、砂糖の問題で、砂糖の精糖工場の設備というものは非常な、つまり生産過剰の設備をしておる。ちょうどそれと同じように、四万五千トンを基準にしてこれでたくさんだというふうにあなたが言われるけれども、もし、ほかに何万トンかのこれの製造をやるのだ、科学的な方法において、より経済的にやり得る方法を発明をして、これをやるというようなときには、政府はどういうふうにしますか。やっぱりこのもとの合成ゴムを助けていこうというお考えであるか、あるいはそれ以上の会社ができて、会社と、その技術ができたと考えた際に、それは援助するのですか、しないのですか、そういう場合には。
  30. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) それは、そういう技術がどういうところで作られたものか、あるいは、その技術がどういう程度にりっぱなものであるかというようなことによって、対策が変ってくると思います。できれば、そういう新しい技術が現われたときには、この会社で何かそういうことをやらすということが、一番適当な方法だと思います。まあ、それ以外に企業を作るということになりますと、これは大へんむずかしい過剰投資のような結果になりまするので、この際には政府としては、よくこれは検討して、なるべく過剰投資にならないような政策を講じていかなきゃいけないと思っております。
  31. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 今回の、この法律の骨子は、前の法律の付則の第三項の問題でございますが、それは開発銀行の出資政府出資に切りかえるという点でありますが、せっかくの機会でありますので、ごく簡単に、この会社事業であるゴムのことについて二、三お尋ねをいたしたい。これはむしろ、この会社を作るときの根本の問題でありますから、あるいは不適当かと思いますけれども、この機会にお尋ねをいたします。日本の現在輸入しておりますゴムの原料は、価格にしてどれくらいであるか、それから合成ゴムのようなものを現在輸入しておるかどうか。そういう点と、それから日本ゴム製品をどれくらい加工したものを輸出しておるか、そういう国際収支の点をまずお伺いしたいと思います。
  32. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 合成ゴムの最近の輸入量についてまず申し上げますが、昭和三十二年度について申しますると、SBR、これは天然ゴムと同様の性質を持っておる合成ゴム、つまり今度、日本合成ゴム会社に作らせようとしておるものでございますが、これが八千トン、それから特殊合成ゴムが五千七百トンであります。計一万三千七百トンの輸入をいたしております。一部、見込みが入っておるわけでございますが、それに対して天然ゴムは、十三万トンの輸入をいたしております。計、日本への供給量は十四万三千七百トンということでございます。  それから輸入価格でございますが、これは合成ゴムは、非常に価格が安定いたしております。現在の価格は、大体昨年の七月からずっと同じでございまして、二十一万六千円、これはトン当り二十一万六千円のCIF価格でございます。これが国内での運賃等を加えまして、大体、工場渡しの価格といたしましては……。
  33. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 総額でいいです。
  34. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 輸入総額ですか。——大体二十三万五千円、工場渡しの価格、トン当りとしては、そういうことになるわけであります。それから合成ゴムの輸入金額の合計は三十億円でございます。それからゴム製品の輸出額は年間、最近三千万ドル、自動車タイヤ等が主力でございます。
  35. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 三千万ドルですか。
  36. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) そうでございます。
  37. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 円に直せば百億。そうすると、輸入が三十億円で、輸出が百億という……。
  38. 森誓夫

  39. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 合成ゴムだけ。それでは合成ゴムだけ見れば、輸入は、原料が入るので三十億円で、輸出の方は約百億円、非常に国際収支上はいいわけですね。
  40. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 百億円の輸出をされまするものの原料は、合成ゴムよりも、合成ゴムのほかに天然ゴム、これが大量を占めておりますものでございます。それから先ほど申しました輸入額は、単に合成ゴムだけの輸入額を申し上げましたので、天然ゴムを合せて申し上げますと、三百億円になるわけであります。従って、三百億の輸入をして、百億円の輸出をするというのが、ゴム関係の国際収支であります。
  41. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 そうしますと、合成ゴムだけについて伺いたいのですが、合成ゴムの国内における需要量といいますか、そういうものは、どれくらいであるか、それから現在生産されておる合成ゴム生産量は、どれくらいあるか。続けて申し上げますけれども、私がなぜそういう質問をするかといえば、今度の会社が四万五千トンの規模の合成ゴムを作る計画なんです。これは結局、外国からやはり一つは、合成ゴムというものが輸入されておるのを防止しようというところに目的があるのだと思います。あるいは天然ゴムを輸入しておるけれども、これにかわるものは合成ゴムだから、できるだけ天然ゴムの原料も輸入を少くするために、合成ゴム工業を日本でやっていきたい、こういう趣旨だと思うのでありますが、そういう意味において今の質問をいたすわけであります。
  42. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 昭和三十二年の合成ゴム需要につきましては、先ほど申しました数字とほとんど一致するのです。SBR、普通の合成ゴムが八千トン、特殊合成ゴムが五千七百トン、計一万三千七百トンということであります。現在国内に合成ゴムの生産は全然ございません。従って先ほど申し上げました供給量、すなわちこれらの需要量と一致するわけであります。それから昭和三十三年もこれは合成ゴムの国産というものは全然ないわけであります。三十二年度の合成ゴム需要一万三千七百トン、これが少しずつふえて参りまして三十三年度では大体二万二千トン程度でございます。三十四年度には三万五千トンという程度で、三十七年度になりまして、これは六万一千トンということになります。この場合はこの六万一千トンは特殊合成ゴムを含んでおりますので、ここで言うSBR、通常合成ゴムとしては四万五千トンということになるわけであります。
  43. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 そうしますと、現在は合成ゴムというのは、普通の合成ゴムも、特殊の合成ゴム日本ではできていない、全部外国から買っておる、こういうふうに了承していいわけですか。
  44. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) さようでございます。
  45. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 そこでいま一つ伺いたいのですが、今度の四万五千トンの規模の会社ですね、これは前にも御説明があったように、この程度であれば世界ゴム工業に負けないといいますか、あるいは採算が合うというか、この程度の規模のものならやっていけるというふうに伺っておりますが、外国たとえばアメリカあたりにはやはりこの程度の規模のものがあるんでしょうか。それともこれより大きな規模のものがあるんでしょうか、まあ、言葉をかえて言えば四万五千トンの規模のものが国際的に見て、生産上何といいますか、有利であるというか、せっかく作ったけれども、これじゃコストが高くてやっていけぬということになったらつまらぬと思うのですが、その点は自信があるのでございましょうか、念のために伺っておきます。大体でよろしゅうございます。
  46. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 現在合成ゴムの生産をやっておりまする国は、アメリカが第一でございますが、アメリカの場合は四万五千トンよりもっと大きい規模でございます。これは一番大きい需要を対象としておりますので、相当大きいことになりますが、そのほかヨーロッパ諸国におきまして、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア等が合成ゴムの生産を実行し、または企図しておるわけでございます。イギリスの場合は五万トンでございまして、ドイツが四万五千トンでございます。それからフランス、イタリアはちょっと落ちて三万トン程度でございますが、これは普通の合成ゴムのほかに特殊合成ゴムなんかも入れまして、経理はもうかりやすいような形をとっておるようでございます。大体世界の大勢を見まして、四万五千トンならば、まず一人前の形であろうというふうに考えられます。
  47. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 この会社はすでにでき上りましていよいよ事業をやっていかれるわけでありますが、その資金というものは資本金の二十五億、その中には政府出資が十億でありますが、なお百五十億というような相当多額の経費を使われる会社になっております。で、私はこういう政府が後援して作らせるような会社はとかく、よくゆけばいいんですけれども、そうでない場合は、やや普通の事業と違って安易に流れて、もちろん、経営の局に当られる人は、できるだけ経費を有効に使われると思うのでありますが、そうでないと、先ほどいろいろ議論がありましたように、無利子の金を投入しているようなわけなんで、経営が安易になって、設備その他についても、むだと言ってはあれですけれども、いま少し安く買えるものを高く買うとか、そういったようなことがあっては相済まないと思うのでありますが、そういう点については、十分会社当局が努力されているとは思うんでありますが、スタートのときでありますから、特に一つりっぱな会社ができるべきだけれども、いろいろの点で相当多額の金なんですから、節約して有効なものを使われることを私は特に希望したいんです。この書類を見ますと、敷地なんかが八億円ばかりかかるようになっておりますが、これなんかは、これは予算でありますけれども、実際の土地の状況からいって合理的なものでございましょうか。できるときに非常に地価なんかが引き上げられるというようなことも聞くんでありますけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えになっているかということと、いま一言伺いたいのは、この前の法案の衆議院の付帯決議にも、第三に、これは先の話ですけれど、本法による会社製品については中小企業者の利用を容易ならしめるようにやれということがついているんです。ですから、私はこの会社日本ゴム加工のいろいろたくさんある中小業者とよく連絡をとって、決してそういう人のむしろ利益になる材料を作ってゆくんだというところに、重点を置いて進められることが必要であると思う。その点に対する政府はどういう指導といいますか、お考えを持っていられるか。  それからいま一言は、これは字句の問題になるんですけれども、この法案を見ますと、すべて「会社」というふうに今度切りかえて書かれているのに対して、付則のところだけは「合成ゴム会社」、こういうふうになっております。付則の第二項ですね、これはどういうわけでこういうふうになっておるか。その三つを伺って私は質問をやめます。
  48. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) この会社の経理が非常に厳重に行われるための機構としましては、第一に事業計画資金計画について政府の認可を受けるということになっておりまして、政府の方で相当事前にこれを検討するということになるわけであります。それから実施の段階に入りましては、この会社の取締役等にゴム業界の者が相当数おるわけです。また、社長もゴム業界の代表者であります。この会社の経理が放漫に流れますと、生産品の価格が高くなる、そうしてゴム業界は高いものを買わなければいけないというところから、そういう会社経営の首脳の地位にある者が需要者側を代表しまして常に見ている、目を光らしているということになっておりますので、この会社資金ができるだけ有効に使われるのであろうというふうにわれわれは考えております。  それから土地等のお話が出ましたが、四日市に最近やっと土地がきまったわけでございますが、一応土地だけの購入代は、坪二千三百円ということでございまするので、十万坪とすれば二億円前後ということですが、これに整地費等を加えますると、これが若干それより高くなるかと思います。予定のただいまの八億円と申しまするのは、当初の予定でございます。きわめて正確のものではなかったことと、用水の関係の費用が入っておりまして、これはまあ相当いろいろ水路を作るというようなことで、相当金を食うわけでありまして、そういうわけで、八億ということになっておりますが、これらは、なお実施の段階において、きわめてむだのないように使わせるよう、われわれとしても監督していきたいと思っております。  それから中小企業がこの製品を使いやすいようにいろいろ考慮せよという付帯決議に対しましては、われわれとしてもいろいろ考えておるのでございますが、中小企業がこの製品を使うためには、途中でもう一度加工処理をするという段階が必要でございまして、そのための設備を全国で一、二カ所集約的に設置いたしたい。それには、国としてもできるだけ資金上のめんどうを見ていきたいというふうに考えておるのであります。これは、まず合成ゴム会社の方の操業が始まるまでには、そういう計画を実行に移したいというふうに考えております。それから、なお、われわれとしては中小企業に対して合成ゴムの使用についてのいろいろの技術指導等についても、今後努力をしていきたいというふうに考えております。  第三点の付則の問題でございます。が、これは御質問ごもっともでございまするが、この規定は、会社設立の初年度の事業計画資金計画会社設立後遅滞なくやれということで、事業年度の開始以前にやる規定は適用しないということでございますが、会社のできた年は、その事業年度の前に、計画の認可がおくれるということができないことは当然であります。従いまして会社設立後遅滞なく事業計画の認可を受けるということでございますが、これはすでに会社設立されましてから認可を受けておるわけでございます。従ってこの規定は、すでに必要のない規定でございますが、従来立法上の、何と申しますか、法律上の技術としましては、過去において、もうすでに過ぎ去ったような規定、役目を果したような規定は、改正の際には、それをそのまま置いておくというような慣例になっておりまして、その慣例に従っておるだけの話で、別に新しい特別の意味はないわけでございます。
  49. 加藤正人

    ○加藤正人君 ちょっと簡単に。この法律は、この会社はすでにスタートしたようなもので、もう矢は弦を離れておるようなものである。今この設立の根本問題についてとかく申すわけではない。また、私は一昨日申し上げたように、戦時中、石橋君と私は、陸軍から合成ゴム製造を要請された関係もあり、多少この方面について関心を持っておりますから賛成であります。ただ、御説明を聞いておると、この会社の前途に対して、相当楽観的な御説明である。われわれはすでに、戦時中ではありますが、そういう要請を受けたときに、石橋君と一カ月以上もかかって論議を費してみたように、非常に困難な事業だということを前提として話をした経験から見ると、非常に時期が変ったとは申しながら、安易な前途を考えられておる。これは非常に私は賛成ではあるにしても、賛成しながらも、これは非常に懸念しておることであります。本来ゴム事業なんぞは、今、石橋君などがブリヂストンで非常に成功して富をなしておりますけれども、これはゴム製造そのものではなくて、初めは加工でもうけたんです。ゴム靴や何かでもうけた、ああいう卑近なもので大きな数量を作ってもうけたものであります。今の御説明は、もうかるもうかると言われますが、本来こういうものは私はもうからぬ方がいいのではないかと思う。これは賛成をしてスムースに議事を進めたい意味では、もうかるもうかると言わぬと不便でもあるから、おっしゃる点があると私は思うけれども、本来もうからなくてもいい。しかし、一面私はこういうことも考えるのです。これから戦争をするのじゃないのだから、なるべく自由貿易で、自分の国で作れないもの、外国から技術まで導入しなければならないようなものは、今日他国から自由に買う、輸入によってやっていく、これは戦争でもするのなら、戦争のときには買えなくなるからということもあるけれども、もうそういうこともないのだし、自分のところに技術がないものなら、そうあわててアウタルキーを急ぐ必要はないと思う。しかもまた、将来のためになまゴムとの対比上、これはやっておいた方がいいと言っても、なまゴム生産量なんぞについては、国連の何か統計か何かで言われるけれども、国連の調査必ずしも私は全幅に信頼すべきものではないと思う。ああいうプラントすればどんどんふえるようなゴム林なんていうものは、いつでもできるものです。ゴムの相場が高くなれば、どんどん耕地を拡張するということがあるのですから、これは私はなまゴムの生産がふえないなんていうことは、大へんな考え違いだと思う。そういうことは議論は別でありますが、少くとも私はにわかに日本でこれをどうしても作らなければならぬという必要もないようにも考えているのです。まして、これの原料になる、石油工業から出る、バイプロタクトというようなものを原料にされているとすると、石油工業というものはこれからだんだん盛んになる。そういうこの合成ゴムの材料がますますよけいに供給される時期にいるのでありますから、そういう面から言っても、おくれるほど原材料の供給がスムースに、多量にまかなわれる。企業を起す上におきましても、そうあわててやらぬ方が、将来の方がよほど有利に計画ができるというように思うのであります。もう次の戦争に要るのだ。そのときには、どうしたって軍備のために要るのだから、今のうちにやっておくのだというようなことでやられるのではないとすると、この際何を好んで急いでやるのかと思うくらいでありますが、すでにもう会社ができておるのでございますから、こういうことを言う必要はないかもしれませんけれども、少くともこの仕事は一昨日申し上げました通り、コストを下げるときには、マスプロをしなければならない。マスプロをするには、需要に限界があるというなかなかむずかしい仕事なんですから、あくまでもこの仕事は、そう安易な将来は私は考えられないと思う。私は最初設立には賛成しておるものでありますから、根本的にはむろんけっこうだとは思うけれども、あまりに御説明が安易過ぎる。それで私は心配するのです。一応、質問であるか、警告であるかわけのわからぬことになりましたが、以上申し上げます。
  50. 小滝彬

    ○小滝彬君 これは加藤さんにお伺いした方がいいかもしれぬけれども、これは基本的なことを質問して悪いけれども、今のなまゴム合成ゴムの輸入は自動承認制でやっているのですか、割当制をやっておるのですか。それで、もしその輸入操作によって保護されるようなことになるというと、需要者側についてのいろいろな関係も出てくるんで、その点を説明してもらいたい。  それからもう一つは、これはしろうとなんで、専門家の加藤さんのような方に聞いた方がいいと思いますが、僕のしろうとが感じたことは、特殊合成ゴムというものはペイするとすれば、どうせやるならそれも一緒にやった方が、会社合理化とか、企業的な採算からいうと楽なんだろうが、それは既存の会社があるので、それと競合の関係があってやめたのか。その二つだけ教えていただきたい。
  51. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 加藤先生のおっしゃいましたことは、私もよくわかるのであります。昔の軍備を中心にしたような考え方で、何でもかでも経済採算を無視してこれで自給をはからなければいけないという、そういう考えはわれわれとしても毛頭持っておりません。今私たちのこの計画が行われた場合には、一番わかりやすい例で申しまして、経済的に、日本経済にとっても非常にプラスになるということを一つ申し上げたいと思いますが、たとえば、国際収支の改善という角度から見てみますると、日本合成ゴム事業が起らなくてこれを輸入するといたします。まあ、数年先には三万トン程度合成ゴムを輸入するということにいたしますと、その金が大体千六百方ドルくらい一年間にかかるわけでございます。この事業を今起して合成ゴムの自給をはかろうといたしますると、外貨の関係からいいますと、いろいろ技術の導入代とか、あるいは機械設備の輸入代とか、いろいろなものが必要でございますが、そういう建設費一切ひっくるめて、また、初年度の原材料の輸入料等を入れましても千三百万ドルの外貨の輸出で済むわけでございます。差し引き三百万ドル以上のプラスになるというようなことで、国際収支改善ということから考えましても、この合成ゴムの国産化をはかるということの、その必要がわかるのでございます。  それから、将来の、今非常に楽観しているというふうな御警告をいただきましたが、われわれとしても、これはそう手放しに楽観しているわけではございません。成立後の採算のとれるというような可能性があるということを申し上げているのでありまして、今後の会社運営上、十分国際的ないろいろな情勢の推移に対しては十分注意し、会社運営上またできるだけの合理化をはかるようにしていきたいというふうに考えております。  それから原料の供給量のお話が出ましたが、大体現在の石油精製業は相当な規模に達しておりまして、そういう点もいろいろ調査いたしたのでございますが、この会社ができるころまでには、りっぱにこの原料のガスを供給できるような状態になるということが見通されるのでございます。まあ、そういうふうなわけで、今この会社を作って操業をさせるということは、われわれとしては国民経済的に意義があるというように考えますが、その運営上いろいろ十分の注意をしていきたいというふうに考えます。  それから次に、合成ゴムがAA制であるかどうかという問題ですが合成ゴムその他天然ゴムがAA制であるかどうかという問題ですが、これはAA制にいたしております。需要家の利益を十分考え意味でそういうような制度をとっておるわけでございます。この会社操業が開始された後においても、一応こういうAA制をとって国際競争にさらして、十分会社が勉強するような姿でいきたいと一応われわれは考えております。  それからこの会社がもうかるのは、需要家のために困るというのはもっともであります。私がもうかると申し上げましたのは、国際競争にたえ得るようなものになって、通常会社程度配当ができるようになるということで、それ以上の配当がもしできるようになりましても、これは製品価格の引き下げの方に使って、あくまで需要家の利益を中心に考えて、公共的な使命を果すべきであるというように考えております。  特殊の合成ゴムは割合採算がとれるのだが、これも一緒にやったらどうだというお話しですが、これは昨年の法案を審議されたときにも、おそらく非常に議論されたところだと思いますが、まあ、そういう見方も確かに成り立つと思いますけれども、しかしこれをやる会社が別にありましたので、これを一緒にして企業をやっていくということが、非常に国の圧力をかけなければいけないというような事情もあったのではないかと思います。その点は民間の自主性を尊重するということで、分れていったのじゃないかというふうに考えます。
  52. 小西英雄

    ○小西英雄君 いろいろ承わったのですが、この会社の前途に対しては、非常な政府の楽観論と、まあいろいろ経験者の悲観的な見方もいろいろあるようですが、それで一つこの点が明らかでないのでお尋ねしたいのですが、この会社配当ということは、どういうふうな通産大臣の認可を得るのか。もう一つ明らかでないのは、十億円の出資が全部完了した後に配当をやるような考えか何か、そういう書類に何か載っておるのですかな。それをちょっとお尋ねしたい。つまり、政府が持ち株を処分した後にやるのか、それともその出資が無利子で——われわれ国民の感情から言うと——出資しておる会社がそれを返さぬうちに株主配当をやるのか。そういう点をちょっと伺いたい。
  53. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) 法規の第六条では、「合成ゴム会社の定款の変更、利益金の処分、合併及び解散の決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」とありまして、会社配当する場合には、その配当率なり時期等につきまして、通産大臣の承認を受けるということに法規上なっております。それからこの配当の開始の時期と政府の持ち株を処分する時期との関係、これはまあ、一がいに今どうでなければならぬというふうにきめてはおりません。少くとも政府の持ち株が相当のときに、つまり配当が少くとも予想されて、相当額面価格よりも高くなったときでないと手放さないということは、これはいたさなきゃいけないと考えておるのでありますが、その時期が一応、どちらを先にすべきかということは、今ここできめてはおりません。場合によっては一度くらい配当があって、それから後政府の持ち株を処分するというようなことも考えられるかと思います。それはそのときになってみて、そのときの情勢を見てきめるようにしたいというように考えております。
  54. 小西英雄

    ○小西英雄君 それが非常な、われわれ委員の立場から、国の金を使う場合に、国の方の出資が、無利子に近いものでこの株式会社に貸されておって内容がようなった場合に、政府の方に、国家から出した金の方には利益がないのに、先にこの会社の株主に配当するということは、矛盾を感じる点があったからお尋ねしたのですが、そういう点については、政府は、通産大臣の許可を得てやると……、それらの点が定款上にも何も載っておりませんので、そういうことを尋ねたのでありまするが、政府が、そういう場合にきぜんたる態度で、こうした場合利益を得るという予定でやっておりますから、そういう点はもう少し明らかにされたいと思うのです。その点を一つ、今忠告といいますか、そういうような意味で申し上げておきます。  それと、もう一つ、これは巷間伝えろところでありまするが、真偽のほどはわかりませんが、とにかく、石油精製業者が現在寝かしておる材料を、合成ゴムの手でこれを使うために、石油事業家の原料を輸入せいという立場と、両方かね合いでこの会社に高く売るのだというふうな悪口もいろいろ出ておるので、これは真偽のほどはわかりませんが、そういうふうな疑われるような資材購入についてやられることは、そういう会社が相当多額の出資をしておるというふうなことも承わったので、政府はそういう点を一つ十分注意してやってもらいたいと思います。
  55. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 時間がありませんから、簡単に一、二点伺いますが、簡単に御答弁願います。一点は、先ほど国際収支の問題について御答弁があったようでありまするが、大体この見通しとしまして、石油会社から買う原材料、まあ年度によって違いますが、金額にして大体どのくらいあるのですか。これは非常に重要なことです。事業計画の最も基本的な問題なんです。……答弁できなけりゃ時間の関係上……。
  56. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) これは詳細な会社の経理計画事業計画についての資料はございますですが、ちょっと今すぐ見つけることができないので、あと一つ……。
  57. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それで、私の言いたいことは、先ほど局長の、国際収支の問題云々ということがありましたが、日本石油会社というものは、御承知の通り相当外資が入っておるのです。そういう関係で、かなり石油会社自体というものが利益が上りましても、実際は相当日本が外貨を払うというような格好になるわけで、たとえば東亜燃料のごときは、東亜燃料としてあれだけの大会社でありまするが、東亜燃料というような名前、商標というようなものは、全然市場に出ておらない。全部いわゆるスタンダードの商標によって出ておると、こういうような点を考えますと、この操業するについての製造方法としては、技術を導入し、しかもそれが三段階にわたって三会社と契約して四百万ドルのような高価を払う、なおかつ、原材料が石油会社から、どの会社からどの程度もらうか、これは後ほどその資料によってわれわれは検討いたしますが、この石油会社にさらにまた膨大なあれを払うということは、実際問題として、あなたのおっしゃられる国際収支云々ということの線には沿わないのですがね。その点いかがでしょうか。
  58. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) この合成ゴムの原料の廃ガスは、さらにもとをたどれば原油としてほとんどすべてが外貨を払って獲得されているというお話しであります。その通りでございますが、しかし、その合成ゴム製品価格の中に占めるそういう原料ガスの割合がどの程度であるか、今計数ですぐお示しすることはできませんが、少くともこれはその一部であるにすぎない。といたしまするならば、製品である合成ゴムを輸入するよりは、少くとも日本合成ゴムを作った方が、外貨収支の面ではプラスになるということはこれは言えると思うのでございます。
  59. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それからいま一点伺いますが、この前、質問が私は十二分でなかったのでありますが、この技術導入に対して四百万ドル、これは膨大なものを払うわけでありますが、これはロイヤリティはないという話しなんですが、この企画と同じものが世界のやはりどこかにあるのですか、あるいはこの日本合成ゴム株式会社で導入するこの特許権といいますか、こういうものは専属に用いられるものであるかどうか。あるいはその会社がよそにも、ほかの国にもやはり日本と同様にこの技術を売るという言葉はどうかと思うのですが、売って、同様なものが世界のどこかでできておるか、そういう点を一つ伺いたい。
  60. 森誓夫

    政府委員森誓夫君) この技術は三社から導入してくるわけでございまして、この三社の組み合せが完全に外国でもそのままに使われておるということは、おそらくないのではないかと思いますけれども、たとえばこの三社のうちの一社ですが、グッドイアー、最後の重合段階の技術の提携社でありますが、このグッドイアーは、イギリスの合成ゴム会社の重合段階の技術の提携社になっております。こういうように、おそらく、たとえばその前の段階のフードリーにしてもエッソリサーチにしても、他の外国の合成ゴム会社技術の提携をしておる場合があるだろうと思います。そこでつまり、日本の提携先は、日本だけに限られる独占的なものではないということは申し上げられると思います。
  61. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 他に御質問もあろうかと思いますが、午前の審議はこの程度にとどめ、午後一時半より再開することにして暫時休憩いたします。   午後零時八分休憩      —————・—————   午後一時五十九分開会
  62. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより委員会を再開いたします。  まず、日本台湾との貿易の問題について、質疑の通告がございます。御質疑のある方は、順次御発言願います。
  63. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、本委員会でしばしば問題にしておりまする、まず経済外交という見地から外務省にお尋ねをいたしたいのでありますが、これは昨日及び本日の新聞紙上ですでに御承知の通り台湾における国民政府が、今度の日本の中共に対する政策に関しまして、いわゆる通商断絶、まさに国交断絶の一歩手前までの意思表示を表明したもの、こういう大きな問題でございます。本来ならば岸総理の特に御出席を求め、当然外務大臣の御出席も得られるものと思っていたのでありますが、残念ながらきょうは外相が出られないので、政務次官がかわっておいでのようでありますが、いろいろ時間の関係もございまするので、あえて政務次官にこれから二、三、質問をいたしたいと思うのであります。  私どもはむろん中共貿易が拡大発展をするという点につきましては、何らのわれわれは異議をはさむものではないのであります。しかしながら、これは政府当局にもしばしば申し上げている通りに、あくまでも、国際情勢の複雑な立場からいたしまして、あくまでも民間ベースによってそうしていうということが、年来の政府の主張のように私どもは聞いていたのでありますが、今度の第四次日中貿易協定の状況等を見まするというと、ほとんど商品類別の問題であるとか、あるいは決済の問題等も、第三次貿易協定と違いまして非常にスムースに運んだ。ところが、問題になりましたのが、昨年代表が参りまして問題になりましたのが、いわゆるこの代表団の人員の数の問題である。で、私はこのことに対しまして、先般の当委員会におきまして、当時出席をいたしました三代表の方々に対しまして質問を申し上げましたが、そのときにおきまして、ほんとうに貿易をやろう、そうしてこの経済的な見地からこの第四次貿易協定を結ぶということであるならば、何もあえてその通商代表の員数をたくさんに固執するということは、私どもの頭としては考えられない。これはむしろそういった純経済的な問題を超越をいたしまして、中共政府自体に大きな政治的な意図があるのではないかということを、私は当時参考人の諸君にまあ質問をし、同時に政府にもその問題につきましてお尋ねをいたしたわけであります。私どもがそう考えておりましたことが、全く裏打ちをせられたような状態となって現われたのが、この今度の第四次貿易協定の覚書の問題であるのでございます。それでこのすでに通商断絶のような状態にまでなって、そうして昨晩おそらく駐日中国大使館にあてまして、台湾国民政府よりは公式のおそらく電報が入っているのではないかと私どもは考えるのであります。これはもうすでに一般の経済問題を越えまして、大きな政治問題になって現われていると言っても過言ではないのであります。  そこで、その問題の中心でございますが、覚書の内容を見まするというと、  (1) 双方は相手側の通商代表部およびその構成員の安全保障に適切な措置をとる。もし法律上の紛争を引起した場合は双方が連絡して双方の同意した方法で処理すること。  (2) 双方は相互主義に基いて相手側の通商代表部の所属人員に、出入国の便宜、通関の優遇および貿易活動を目的とする旅行の自由をあたえること。  (3) 通商代表部は業務遂行上に必要な暗号電報を使用することができること。  (4) 通商代表部はその建物に本国の国旗をかかげる権利を有すること。  以下略しますが、まあこういう覚書があるわけでございます。このうちに最も大きな問題になりますことは、言うまでもなく国旗掲揚の問題でございます。岸総理は国会においてこの問題についていろいろ御答弁せられるように聞いておるのでございますが、国旗の掲揚の権利を認める。そしてまた同時に、この国旗掲揚に対して、これを引きおろすということの権利はないというように御答弁をされておるように、私どもは聞いておるのでありますが、これが今の通商断絶の一番大きな問題になるのでありまして、この国旗を掲揚するということに対しますると、言うまでもなく二つの中国というものが認められる。政府があくまでも民間べースによって中共貿易をやるということを逸脱をいたしまして、政治的に中共というものを認める、まあこういうようなことになったのが、今回の通商断絶の問題になったと、こう思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで、私はなぜこういうような問題が起るのに対しまして、政府は今まで国民政府、その他国際関係というものに対しまして、政治的なこういう関与をするならば、どういう影響があるというようなことを、最初から一体お考えになっていなかったのか。そうであるとするならば、私は岸内閣の大きなミスであろうと断ぜざるを得ないのであります。この問題は情勢判断という問題にもなるのでありますが、この前の日ソ共同宣言が締結をせられたときであります。私は本会議におきまして、当時の鳩山総理、重光外相に質問をいたしたのでありますが、そのときにちょうど、あの条約を締結をいたしまして、調印を済ました一週間の後に、御承知の通りポーランド、ハンガリーというような大事件が起きたわけであります。で、これをもし外務省が当時、そういうソ連の革命以来、四十年以来かつてないような大事件が胚胎をしておるにもかかわらず、それをキャッチでき得なかったということについて私は鳩山首相、並びに重光外相を責めたことがあるのであります。で、当時ちょうど調印の九日の前までは、フルシチョフを初めといたしまして、ソ連の首脳部がほとんど全権になっていた。ところが、この問題の収拾のために、フルシチョフその他のほとんどが、ポーランド、ハンガリーに飛んで、シェピロフと、あと新たに二人の人が入って、全権団として調印をしている事実がある。で、もし私はその調印が一週間、かりに外務省の情勢判断によって一週間おくれるということがあるならば、ソ連を中心にする世界情勢というものは、もうすっかり変ってくるのであります。そういう点から言うならば、日ソ条約の問題、ことにこの漁業の問題などは、非常に日本に有利に展開をしたということを私は申し上げたのであります。いろいろ御答弁があったようでありますが、果して当時私が質問した問題が、ただいま、現在日本の外交の一番大きな難点になって現われておるわけであります。そういう意味からいたしまして、私はなぜに一体こういう情勢というものについてお考えがなかったのか。隣りの韓国のごときは、強硬一点で、きております。しかるにかかわらず、竹島の問題さえ一つ解決をできないというような体たらくであります。(「同感」と呼ぶ者あり)しかるにもかかわらず、国民政府は信義をもって、少くとも今日まで外交をやってきておるのであります。もの言わぬ連中ならばあくまでも等閑視していいということは、これは外交常識の上から考えられないことなんである。私はそういう意味におきまして、こういうような状況になりましたことについて、私は外務当局として非常なまず責任があると思うのでありますが、そこで、まず、この覚書の問題についてお尋ねをすると同時に、この情勢の判断につきまして一体外務省はどういう御見解を持っていたか、ということをまずお尋ねいたしたい。
  64. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  65. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記を起して。
  66. 松本瀧藏

    政府委員(松本瀧藏君) お答え申し上げます。御承知のごとく、民間べースに立脚したところの取引というものに対しましては、与党、野党ともにこれを伸ばすことについては、賛成しておりました。ただし、政府当局といたしましては、特に外務省におきましては、政治的意図のある取引はいかん。すなわち、中共承認に導れるようなことはいかんというので、これには相当強く抵抗して参りました。相当どころではない。非常に曲解されるほど強く、われわれはこれを拒んで参りました。一番最初に起りました問題は、御承知のごとく、先ほど御質問の中にありましたごとく、人数の問題であったのであります。しかしながら、通常の取引をする正当な人数であれば、これを拒む必要はないのでありまするが、それ以上に持ってくるということは、第一ここに政治的意図があるというので、われわれは、人数をしぼらなければならんということを、徹底的に意見を述べて参りました。また、もう一つ問題になりましたのは、指紋免除の問題でありました。この問題につきましても、われわれはずいぶん口をきわめて説明をして参りました。他の国の商人は指紋を取っておるのに、特に中共の代表部だけ指紋を免除するということは、はなはだ不穏当ではないか。まあ、この問題は、先般の国会で成立いたしましたところの指紋に関するところの法案で一応片づきました。すると、これらが片づきまして、まあ、通常の取引のできる人数にしぼろうということになったやさきに、先ほど御質問がございましたごとく、いろいろと文書に、雑誌、新聞等あたりに表われているところを見ますると、あるいは、謄写版でわれわれの手元まで配付されましたものを見ますると、先ほどあげられたような点がございます。もちろん、この第一点の、外交官特権を与えるという意味のことは、断じてこれを許すわけにはいきません。と申しますのは、これは承認の一歩手前、あるいは、これに準ずるものになるからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)第二の問題、これはさほど問題はないでありましょうが、第三の暗号の問題であります。はなはだ残念なことでありまするが、秘密暗号を取り締る法令が国にないのであります。そこで、この問題に関しましては、いろんな角度からわれわれこれを検討をして参りましたけれども、いかなる国、あるいはいかなる国の商人といえども、暗号を使うことをわれわれ拒むことのできない制度になっております。一番問題は、先ほど御質問の中にありましたごとく、国旗を掲げる権利であります。私どもは、元来、国旗を掲げなければ取引ができないという議論はおかしいと思うんです。(「その通り」と呼ぶ者あり)ドイツは、皆さん御承知の通り、中共を承認しておりません。しかしながら、この協定を、民間ベースの協定を結びまして、これはもう実に簡単なものであります。そして、国旗も掲げなければ、代表部も持たないで、そしてこの貿易は伸びておるんです。しからば、どうして日本だけは国旗を上げる権利を認めなければ取引ができないのか、これは私は理屈にならんと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)その意味におきまして、われわれは、国旗を掲げる権利の問題に関しましては、強くこれを反発して参りました。  従って、国民政府に対しましても、その旨をわれわれ伝達して参ったのでございまするが、いろいろと新聞その他の報道等の資料あたりによりまして、国民政府は、今日相当遺憾の意を表しております。ただし、まだ通商断絶という通告は、われわれ受けておりません。ただ、われわれが公電で受けておりまするものは、台湾におきまする日本大使館に通告して参りましたことは、一応、この旗の問題その他中共を認める一歩手前まで政治的に日本が歩み寄るかどうか。このことを見きわめるまでは、一応商談を中止し、通協定の会議を中止しろということまで来ておるのでありまするが、もちろん、先ほど申しましたような線に沿いまして、われわれ、今後国民政府といろいろな問題を、誤解をほぐすように努力していきたいと思います。
  67. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 通産大臣にお尋ねをいたすわけでございますが、御承知の通り、今回の問題につきまして、日本の商社は相当恐慌を来たしておる状況でございます。まず第一は、この新年度に行われるべきところの貿易会談、これが事実上中止になっております。それと同時に、LCを既存のものをどうするかということはまだ決定していないようでありまするが、これもまだはっきりした態度を示しておりませんが、既存のもの、あるいはまた、まさに発行前、将来のものはむろん許されないのでございますが、こういうような状態で、非常に恐慌を来たしておるようなわけであります。われわれは、一台湾と申しましても、大陸から来られた人、それから現存あそこに居住しておりまするかつて私どもの兄弟であり、同胞でございました台湾省の人が六百五十万人、この人たちは、その貿易の大体八0%近いものを日本に依存をしておることは、御承知の通りであります。従いまして、一台湾と申しましても、貿易の高というものは、相当な数字に上っております。かりにこれを最近数年の統計をもって見ましても、日本から向うへ輸出いたしましたものは、一九五二年は六千七十五万ドル、翌年一九五三年が六千九十六万ドル、一九五四年が六千五百九十二万ドル、一九五五年が六千三百八十二万ドル、一九五六年が七千七百八十五万八千ドル、昨年のごときは八千四百二十七万五千ドル、こういう膨大な数字を示しておるのであります。これを中共との比較を見まするというと、むろん、この六年間の前半は、ココムの問題であるとか、あるいはチンコムの問題等もございましたが、一昨年あたりから事実上このチンコムの問題は解消せられております。これを一九五二年の例にとってみますというと、わずかに五十五万ドルにすぎない。翌年一九五三年が四百五十三万ドル、一九五四年が千九百十万ドル、一九五五年が二千八百五十五万ドル、一九五六年が六千七百三十四万ドル、それから昨年がずいぶん鳴り物入りで騒がれた中共貿易がどのくらいいっておるかといいまするならば、六千四十八万五千ドルというような工合なんであります。台湾の貿易問題などはほとんど一般の無関心の状態でありまするが、事実はこういう工合に数字が証明をいたしておるのであります。従いましてわれわれが全世界の貿易の比較を見まするならば、台湾はおそらく輸出において五、六位を占めておる、こういうような状態であります。しかし、先ほど申し上げました通り、その中に六百五十万というかつてのわれわれの同胞、兄弟であった者が日本の商品に多く依存をいたしておるというようなこういう状態であります。しかるにもかかわらず、今回こういう問題になりまして、一時的であることを私どもは祈るのでありまするが、ほとんど通商断絶の一歩手前まで来ておるというような状況なんでありまして、まずこれに対しまして通産大臣がとられた態度、あるいはまた先ほど松本政務次官にも私は申し上げましたが、こういうような状況に、あの中共貿易の、政治的にあまりにも関与というものが大きいために、当然起り得るこういうような問題について、全くお考えがなかったのかどうか、その点をまずお伺いしたいのであります。
  68. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 今回の第四次協定につきましては、私も非常に関心を持ち、心配をして、極力成立をしてもらいたいという気持は持っておったのでありますが、しかし、これを政治的に取り扱うということについては、私はあくまでこれを政治的に利用されては困るという考え方は常に持っておったのでありまして、まあ、民間の代表の方々が行かれるにつきましても、われわれとしましては、政府として極力政治的な問題を除外してもらいたいというようなことで行かれたのであります。ところがその結果は、大体当初、以前からきまっておりましたようなそのままの線に調印されたという結果になったのでありまして、これをどういうふうに取り扱うか、また、事実代表の方々が帰られて、いろいろな当時のいきさつのお話を伺っておりますが、しかし当時のいろいろの詳細は、文書によってまだ申し出がないのでありまして——一応申し出はありましたが、一切の書類をよく検討して、それに対して慎重な今政府としての態度もきめ、回答もしよう、こういうことになっておるのであります。しかるに、ただいま台湾のお話しのような国交断絶というところまではいかぬにしましても、貿易も停頓するような問題になって参りまして、これにつきましてはよほど慎重に、お話しのように、私は台湾貿易というものが非常に大きな意義もあり、量的にも相当な量があるわけであります。従ってこれはよほど慎重に、そうして台湾に対して十分な了解を求めて善処しなければならぬというように慎重に考えておるわけであります。
  69. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私はまず大臣にお尋ねいたしたいのは、その点もありますけれども、通産大臣といたしまして、ことにこの貿易を管掌しておるお立場から、民間ベース民間ベースと申しておりましても、自然にああいう政治的な導入をこれは余儀なくされたと申しましょうか、そうなったと申しましょうか、そういうような事実を前にいたしまして、そうして今度のような問題が、これは私どもは、常識上申しまして当然起り得るということを私どもは少くとも考えていたのでありますが、大臣は最初からそういうことは念頭になかったのかどうか。これは単に通産大臣としてではなく、国務大臣の立場から申し上げまして、全然そういうものは念頭に入れておかなかったのかどうか、あるいはもし念頭に入れておかれたならば、この問題の波及する点をお考えになるということは、これは当然なんでありますが、その点をまず私は伺いたいのであります。
  70. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) その点は十分私も念頭にあり、また、外務省のいろいろな意見も聞き、外務省と打ち合せもし、外務省に対しての態度につきましてももっともであるというふうに考えて、一応そういう打ち合せをしておったわけです。ただ、その後に事実上の調印が行われましたために、それに対して今後どういう態度をとっていくかということについては、これは政府部内も一体となって、的確な処置をしていかなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  71. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 この問題は大臣に強く申し上げますが、一この台湾だけの問題ではないのであります。これは先ほど私は数字をあげましたが、台湾だけですら過去六年におきまして、その輸出のトータルを見ますというと四億一千三百五十九万三千ドル、こういう膨大な数字になっておるわけであります。これを中共と比較いたしますると、中共の六年間の輸出は、あれだけ大騒ぎを政治的にやり、あれだけ新聞で書かれておりましても一億八千五十六万ドルにすぎない。私どもはその台湾を失うだけでなく、三十一億五千万ドルというのが新年度におきましての日本の輸出の目標でございます。これはあらゆる問題を克服しても、この三十一億五千万ドルというものを達成するというのが、政府の貿易政策であり、そうして大きな経済政策の根本であるわけなんであります。この台湾だけではありません。東南アジア全体に及ぼすこの影響でございます。私どものおそれるのは。現在御承知の通り東南アジアにも千二百万という華僑というものが散在しております。そのうちあるいは国府系、中共系というものがどの程度に分けられまするか、私どもにはしかとそのことはわかりませんが、フィリピンの経済状態を一つ見ましても、あるいはタイ国の経済状態を一つ見ましても、その経済的活動力の基礎になっておりますのは、これはほとんど華僑なんです。ことにタイのごときはもう全くと言っていいくらい華僑によって占められている。本日の外電によりますると、その東南アジアにおけるところの華僑が、今回の問題に憤激をいたしまして、そうしてかつての日貨排斥のような運動がすでに展開されているということが報じられております。私どもは今までの対台湾との貿易は、ただ台湾との貿易だけでなく、そのおられるところの華僑の東南アジアというものを、さらにわれわれは重大視して日本の貿易というものがあったと思うのであります。こういう影響が直ちに東南アジア全体に出てくるということにつきまして、これは政府の至上命令でございまするところの三十一億五千万ドルの輸出を果して果し得るか。まず私はこの点についてお尋ねいたしたいと思います。
  72. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 三十一億五千万ドルの目標達成につきましては、もちろん従来の上に、さらに中共、ソ連等につきましても、貿易を拡大していかなければならぬという数字でありまして、片一方に中共貿易が促進しましても台湾が減るということでは、これは意味をなさぬことでありまして、少くとも従来の市場は十分確保していかなければならぬ、その上にさらに進んで行かなければならぬと、こういうように考えているわけであります。それにつきましては、私はあくまでも中共なりソ連に対しましても、政治と貿易というものは、ことに中共に対しましては政治と貿易というものは切り離して、と申しましても、もちろんいろいろ関連はあるでありましょう、しかし、少くとも中共承認という考えは持っておりませんことは、はっきりしているわけであります。また、それに利用されるということであってはならぬということもはっきり考えているわけであります。純粋に貿易ということを考えましたら、この点は私は何も日本を利益するばかりでなしに、中共にとりましても当然日本の商品、ことに鉄鋼等につきましては、向うに十分需要のあることなんであります。貿易だけ切り離してそうしてお互いに共同の利益を得るということは望ましいことでありまするから、そういう意味合いにおきまして極力促進していこうというふうに考えてきたのでありまして従来から、あるいは従って中共貿易の方々には、私の答弁はどうも不満だというふうにお考えになった場合が多いかと思います。しかし、あくまで政治は切り離して、そうして純粋な貿易として、またその意味におきましては、われわれは場合によりましてコマーシャル・ベースに乗るものでありましたら、輸入も促進したいということで御答弁をし続けてきたわけでありまして、それは今後におきましても変らずに、あくまでそういう意味努力をしたい、かように考えておるわけであります。
  73. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 政治は政治、経済経済ということをおっしゃいましたが、私は今度の問題がむしろ、それは政治の過剰だというようにこれはもう断定せざるを得ないのでありまして、それが今度の問題に発展をいたしたわけなんでありまして、私どもは過去の国民政府との貿易の状態を見まして、そうしてまた、国民政府のやり方を見ましても、これはただいま通産大臣がお述べになりました通り、全くコマーシャル・ベースによってやってきておるわけであります。中共は政治的な相当な含みを持ちまして、ときにコストを無視した商売もおやりになる。自分の方は一世紀ないような大水害がありましても、そうして政治的に必要と思いまするならば、十五万トンの米を日本に送るというような手を打つわけなんであります。そうして、そういう意味国民政府は今日まで日本とのいわゆる貿易経済合作の促進を唯一の目的としてやってきております。それから過去のオープン・アカウントの実績を見ましても、御承知の通りバランスはきわめてとれておるわけなんでありまして、そうしてまた、他国のように焦げつきなどというものはございません。まあ、昨年千七百万ドルのあれがございますが、これは御承知の通り日本の前年における米の買い方についての日本の不履行に伴うところの昨年度の貿易協定の延引でありまして、従いまして、三十二年度の貿易協定が三十二年の八月の下旬に初めて締結を見たというような関係からいたしまして、船積み、LC等の関係でこれは相当たまったと思うのでありまするが、こういうような状態で二十四カ国の私どもオープン・アカウントの国に対しまして、少くとも国民政府のやり方というものを見まするというと、私どもは紳士的であった、こういうふうに認めておるのでありまするが、その点に対する大臣の御認識はどうでございましょうか。
  74. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 台湾貿易につきましては、私は、何ら不安もなしにただいまお話しのように、両方、これは実に経済的から申しましても、距離も近いし、過去の長い関係もありまするし、また態度としましても、紳士的態度でずっとやってきておりまするので、最もわれわれとして重要な市場であり、また、将来にわたって重要な市場であるという認識につきましては、ただいまのお話しに私自身も劣らぬ考えを持っておるわけであります。
  75. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、ずっと以前は別でございますが、最近の国民政府のやり方は、一時は中共との取引をしておる商社に対しては取引をしないというような狭い考えも、過去においてはあったようでございますが、最近は日本の商社も純粋な取引の立場でございまするならば、そのことについて、とやこう言うようなことはやっていないのであります。それどころではございません、台湾というような特殊地域を中心にしております。しかも、日本への依存度というような点から考えまして、国民政府をしましては、この経済合作もでき得るならば長期合作でやりたい。ことに砂糖の問題は、非常に相場が年々狂うのでございますので、三十五万トンから四十万トンを日本台湾から年々買っておるのでありまするが、こういうようなことで、相場の波動をなくするというような意味からいいましても、長期合作というものも提案をしておるわけであります。こういうように私どもは国民政府の従来の日本との貿易のやり方というものは、先ほど申し上げました通り、相当私は紳士的だとこう思うのでありますが、それが今こういうような状況になりまして先ほど御答弁もございましたが、あなたのいわゆる通産大臣の立場といたしましてただこの問題を善処をするということでなく、現に私は数百万ドルに近いLCの問題が宙に浮いておるということは現状だと知っております。そういうようなときに、ただ単に善処するということでなく、何か一つ具体的に、あなたがこれはもう通産大臣として、また国務大臣として、対策がこの緊急事態に対しておありになりまするならば、この際一つお示しを願いたいと思うのであります。
  76. 前尾繁三郎

    ○国務大臣(前尾繁三郎君) 私はこの問題に関しまして、まだ日本政府の態度が十分台湾国民政府に了解されてないんじゃないかというふうに考えるのでありまして、また、向うも断定し、また公式に相談を破棄するというところまでいっておるわけではありません。十分納得のいくように外交ルートを通じ、了解を求めて、今後にそういうような心配のないようにまずすべきだ、かように考えておるわけでありまして、十分また納得も私はしてもらえるというふうに考えております。
  77. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、松本政務次官にお伺いいたしますが、むろん、この問題に対しまして、駐日中国大使から、いろいろ外務省に対しまして詰問的な御交渉があったと思うのでありますが、まず一番の中心は、私は先ほど伺いました国旗掲揚の問題、この点について松本次官の御答弁は、全く私と同様なのであります。これをほんとうに政府が、あなたのおっしゃる通りに、われわれはあくまでも民間ベースによって、純粋な貿易を重点に置いてやっていくのだというような立場をあくまでも固執をするならば、この国旗掲揚はあくまでも認めないんだ、こういうような御態度を大使なりあるいは大使館当局にお示しになったのか。それからまた暗号電報の問題でありますが、これは政務次官のおっしゃる通りかもしれません。それからいま一つ大きな問題は、外交的な特権の問題であります。これはあなたもおっしゃられた通りなんで、貿易をやるのに特別の外交的な特権の必要もなし、それからまた貿易を純粋にやろうとするならば、何も旗を立てなくても貿易というものはやれるのであります。その見地はあなたと私は全く同感なのでありますが、こういう大きな問題に対しまして、外務当局は、中国大使なり、あるいは大使館首脳部なり、あるいは国民政府なりに、いかような御回答をせられたか、お差しつかえない限り承わりたいと思います。
  78. 松本瀧藏

    政府委員(松本瀧藏君) 差しつかえない程度の御説明をさしていただきたいと思います。国民政府代表といたしまして、大使が外務省に参りまして、いろいろとこの問題につきまして要談したことは事実でございます。さらに、新聞にも発表されておりまする通り、蒋総統から岸総理のところに親書の来たことも事実でございます。そこで、旗の問題ですが、これはいろいろとめんどうな規定等たくさんあります。まあ、たとえばデパートに中共の旗を飾っておったからといってこれをおろせということは、日本の法規上できないのであります。また、見本市とかいろいろな所に飾りみたいに旗を立てておるのを、これをおろせとは言えないのであります。そういうところからおそらく岸総理は、先ほどのお話しの中にありましたような御答弁をされたと思うのでありまするが、ただ、われわれが非常に問題にいたしますのは、政治的意図を持って、これが承認に一歩前進するのだというようなことでやられるということは、非常に困るのです。たとえばここに二つの中国を認めることになるじゃないかというようなことで、国民政府も非常に侮辱を感ずるでありましょう。さらに、国民政府系統の者が行って、その旗をかりに代表部の屋上から引きおろしてこれを裂いたといたしますると、果してこれが不敬罪になるのかどうか、刑法九十二条にこれが該当するかどうかという問題等あたりありまして、われわれは非常に迷惑なことになりますので、まだ正式には、この文書でこれこれの次第であるという報告は、政府は受けていないという工合に承わっておりまするが、内容をはっきりしたものが提示されましたときに、これをさらに検討したいと思いますが、私どもが国民政府に繰り返して申しておりますことは、絶対に承認しないのだ、中共を承認に導かれるような、たとえば外壕を埋められ、さらに内壕を埋められて承認に持っていかれるようなことに対しては、あくまでもこれは抗するのだ、従ってこの取引は従来通り了解してもらっておったように、民間ベースで純然たる、どこまでも一つの貿易としてこれをやるのであって、何ら政府間の協定とか、申し合せとか、同意とかというようなことでなくてやっていきたいのだという工合に説明をしておるのでありまするが、非常に事を荒立てました一つの原因は、これは私の主観であるかもしれませんが、十八日に日本政府がこれに正式に回答をするということを、何らかの報道機関を通じて大使が承知しておったようであります。従って十八日でありますれば、もうあす、あさってに迫っておるのだ、従ってこれを、旗を上げる権利を認めるとかというようなことを承認されてはたまらぬというので、相当殺気立っていろいろの行動に出るということも想像できるのでありますけれども、政府といたしましては、先ほど申しましたごとく、一応三団体の代表から文書をもってこれが提出されました、それを検討してはっきり表明して台湾の方に伝達したい。なお、先ほどの通産大臣の御答弁にもありましたごとく、われわれはあらゆる手段を尽しまして、そうして国民政府に対する過去の友好関係をわれわれは感じておりますので、措置をいろいろと今後継続したいと、こう考えます。
  79. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今松本次官の答弁の中に、デパートでもどこでも好き勝手に旗を上げるのは差しつかえないじゃないかということのお話がございましたが、これは私が無知識であればそのまま御容認下さってよろしいのでありますが、私どもの常識から申しまするならば、今まではその国の旗を立てるということは、大体その国との条約関係を結んだ国に限られてあるようにわれわれは考えております。そうしてまた、一般の店で売っております万国旗をいろいろな会場等に飾る場合も大体私どもはそう考えているのであります。それで私はこれを一歩譲って、そういう意味で容認をするのだというようなことで、この承認もしない中共が、代表部の屋上かどこか知りませんが、この旗を立てたということになりまして、まあここには、日本には御承知の通り国府系はむろんでありまするが、中共系の華僑もいろいろな過程を通じましてたくさんおるわけであります。そういう場合に、かりに血気盛んな国民政府の青年たちが、その旗を引きおろしたということになりますと、これは不敬罪に認めていないからと言いましても、それは代表部だけではございません。今申し上げました通り、全国にいわゆる中共系華僑というものもございますし、それから神戸、大阪、東京、長崎等におきましても中共系の、いわゆる中華学校と称するものもあるわけです。これらがまた同様に旗を立てるということになりまするというと、そこに不測の私は葛藤というものを生ずるという問題が出てくる。これは単にその承認をした国じゃないから不敬罪にはならない。そうしてこれは私はよくわかりませんが、器物破損とか何とかというような法律でこれを処罰するのかもしれませんが、そういうような日本におりまする華僑は、私どもの推定によりまするというと、大体四万七、八千ぐらいだろうと思うのであります。これが三分の二か四分の三か知りませんが、とにかく大部分が国府関係の華僑が多いと思うのでありますが、しかし、とにかく中共関係の華僑もいるということになりますというと、そういうような葛藤が至るところに起るという場合においての責任は、一体外務省がお負いになりますか、この点を一つ伺いたい。
  80. 松本瀧藏

    政府委員(松本瀧藏君) そういったことを想定いたしておりますので、われわれは旗を上げられることは困るということを堅持しておるわけであります。法律問題は別問題といたしまして、政治的に決して好ましいものではないという立場をとっております。さらに、先ほど御説明申し上げましたごとく、ドイツとの関係におきまして旗を上げなくても、とにかく取引は十分これが円滑に進められている、また代表部もお互いにこれを認めておりません、ただ、普通の商人の自由の往復によって伸びておりますので、従って日本の場合におきましても、旗を立てなくても取引きができるのじゃないかという建前をとっております。従って承認に導かれるようなことはわれわれはあくまでも一つ、何とかして絶ちたい、こう考えるのであります。
  81. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから私は最後にお尋ねをいたしたいのでありますが、本日の新聞紙上等にも出ておりまするが、この問題を契機にいたしまして、マッカーサー米国駐日大使は台北に飛んでおりますし、それから韓国の台北におります大使を中心にいたしまして、あるいはまた、米国の上院議員であるところのノーランドが台湾に飛んだ、そうして実情を調査をするというような工合で、自由主義陣営というものが相当騒然たる状況を呈しておるように思うのであります。そこで私どもは、これに対処する外務省の態度をお示し願いたいのであります。
  82. 松本瀧藏

    政府委員(松本瀧藏君) 差しつかえない程度にこれも御説明さしていただきたいと思います。アメリカその他自由陣営の国々に対しましては、民間ベースにおけるところの取引の趣旨というものは十分説明をいたしまして、承認にわれわれは決してこれを持っていくものではないということは、十分説明してございます。
  83. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連してお尋ねしますが、この問題が起きたときに、八木参事官が代理大使として向うの政府におもむいて事情を説明して、了解工作をした、こういうことは新聞にも見えておりましたが、まだ堀内さんはこちらに、日本の国内にきょう現在おるのですか。
  84. 松本瀧藏

    政府委員(松本瀧藏君) この問題が起きませんでしたならば、他の在外公館長と同じように、本日か明日あたりはたつ予定になっておりました。この問題が起りましたので、慎重にこの問題を政府と打ち合せいたしまして向うに帰る、これは先方においても了承しております。
  85. 相馬助治

    ○相馬助治君 逆のように考えるのです。こういうふうに大きな問題が起きたときには、さっそくやはり責任者である大使が自分の任地に帰任されて、そうして鋭意向うと折衝されるというのが建前のように考えますが、今の次官の説明ですと、問題が起きたからこっちで打ち合せしているということですが、こういうことでは手ぬるい、というよりはいささか妙じゃないかと、こういうふうに考えるのです。  それからもう一つ次官に承わりたいのですが、今度の問題が起きて各新聞が取り上げているのを見ますと、まあ楽観説が多い、こういうことを新聞が書いているのです。新聞が勝手に書いているのじゃなくて、政府のやはりその筋の人々が、なに大したことはない、今がんがんこういうふうな騒ぎになっているけれども、いずれもう中国政府の方が折れるであろう、こういうふうなたかをくくった考え方をし、そういう発言等でもあったから、ああいうふうな新聞の記事となって現われてくるのじゃないかと、こういうふうに考えるのですが、その辺については外務省としてはどのようにお考えになっているか。そして今までのやり口で手落ちがありはしなかったか。そうしてあの民国政府を侮辱したような、なめたような、いずれ折れてくるだろうというような考え方が、財界の一部あるいは商社間等にかりにあったとしたら、これほどのやはり重大な問題であるから、こういうのはもっと積極的に指導しなくちゃならなかったのじゃないかと思うが、その辺の経過とお考え、これを承わりたいと思うのです。
  86. 松本瀧藏

    政府委員(松本瀧藏君) 堀内大使をいつまでもこちらに置いておくというのではありませんで、一日か二日くらいは慎重にいろいろ打ち合せの都合もございますので、おくれるであろうということを申し上げたのであります。それから中国が今に折れるであろうと、おそらく国民政府のことを相馬委員はおっしゃったのだろうと思いますが、(「そうです」と呼ぶ者あり)国民政府が折れるであろうというような考え方を、すぐ折れるであろうというような楽観的な見通しは、決して外務省としては持っておりません。どういうところからその記事が出たのか、私は承知いたしませんけれども、慎重にこれを検討いたしまして、打開策を目下いろいろと考えて折衝しております。
  87. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に御意見を伺って私の質問を終りたいと思うのでありますが、私はやはり外交というものは、やはり道義というものが中心になければ私はならぬと思うのでありますが、ちょうど終戦の末期に私どもは漢口におりまして、例のじゅうたん爆撃に会いまして、それからいよいよ日本の戦況が不利だ、その場合もし日本が万が一負けるというような場合があって、世界の一体どこの国から一番報復を受けるかということを、私はその爆撃の中に考えたことがあるのでございますが、それはイギリスにあらず、アメリカにあらず、それは実に十四年間、侵略と暴虐をほしいままにいたしました日本のやり方に対する中国の報復手段だということを私は考えたのであります。私どもの心配がほんとうになりまして、日本が敗戦になりました。それで三百万人に近い人間が中国に軍官民がいたのでございますが、これが御承知の通り、いわゆる仁愛の精神によりまして、蒋総統の暴に対して徳をもって報いよという有名なこの言葉一つによって、三百万人に近い人間というものが無事に日本に帰された。しかも、当時のアメリカは引き揚げに対しては非常に強硬だった。しかるにもかかわらず、中国政府というものが非常に厚くもてなし、そうして所持品のごときは、アメリカの要求するものをけって倍も持たしたということは、これは次官もおわかりと思うのであります。一面において、ソ連が宣戦も布告しないで日本人を北満の野においてあれだけ虐殺をし、そうして千何名という人間をモスコーに持っていって、これを外交的の手段に使って、なおかつ、今日日本の領土が解決もできないというような状態を顧み、そこに私は天地雲泥の相違があるということを申し上げるのであります。こういうような中国の状況に対しまして、われわれはおのおのの歩んできた道、おのおのの立場というものが違うのではありますが、そういう意味で私はやはり外交は信義であり、道義でなければならぬとかように考えている。その意味で、私どもはソ連と対比したところの中国の状況というものを見ればおのずからわかるのであります。その中国のやり方に対しまして、国府のやり方に対する従来の政府の態度というものは私は決してそれに報いていない、かように考えますので、われわれはこの際どうか一つ政務次官のお話しのような、あくまでも一つ、国旗は認めないのだ、しかし貿易は純粋な経済的な立場から推進しなければいけないのだということを、十二分に私は強調をしていただいて、そうしてどうか一つこれの円満解決に最善の努力を払われんことを要望いたしまして質問を終ります。
  88. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  89. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記を起して。  他に御発言もなければ、本日はこの程度にとどめて散会いたします。    午後二時五十七分散会