○
政府委員(森
誓夫君)
本案の
内容の御
説明に入ります前に、昨年六月一日、本法が施行されましてから、その
対象でありまする日本合成ゴム株式会社というものが設立され、着々開業準備を今進めておるわけでございますが、その会社の設立の経緯につきまして御
説明をさしていただきたいと存じます。
これは、本日お手元にお配りいたしました「日本合成ゴム株式会社設立の経緯について」という資料がございますが、これに基いて御
説明をさしていただきたいと思います。
最初の(1)の項目では、合成ゴム国産化の必要性と、
合成ゴム製造事業特別措置法の制定について書いてございます。
わが国のゴム工業は、原料ゴムの消費量におきまして米、英、独、仏に次いで世界第五位でありまして、将来もその発展が大いに期待されるのでありますが、その原料であるゴムはその全量を輸入に依存している状況であります。
ゴム製品の
生産は、世界的に見ましても年々増大する傾向にあるのでありますが、一方原料ゴムは天然ゴムの
生産の増加がほとんど期待できないため、その需要増加の大部分を合成ゴムの供給によって充足しなければならない情勢であります。従って、
わが国においても今後増大する原料ゴムの需要の充足を図るためには
相当多量の合成ゴムを確保しなければならないのでありますが、これを輸入に依存することは、諸外国における合成ゴムの
生産がいまだその国の需要をすら満たすに至っていない状況にあるため、とうてい期待しがたいのであります。また合成ゴムの国産化を行うこととしますと、原料ゴムの輸入に要する多大の外貨の節約に資するはもちろん、ゴム製品の価格の安定をもたらすこととなりまして、現在
相当の実績を上げているゴム製品の輸出の伸張に寄与するところも大なるものがあるので、あらゆる角度から見て、合成ゴムの国産化を行うことは刻下の急務と考えられるのであります。
以上で、合成ゴムを国産化することの目的は、原料ゴムの量の確保と、それから価格の安定の二つをねらっているのであるということを申し上げてあります。
しかし、合成ゴムの国産化を行うに当って、最も問題となりますのは、その販売価格であります。というのは、
わが国においては、合成ゴムの使用がまだ十分普及されていないために、その販売価格は天然ゴムよりも安価でなければならず、またゴム製品の輸出競争力を増強する見地からも、その販売価格は少くともその輸入価格並みでなければならないからであります。
以上、国産化するにしましても、その価格は結局国際水準のものでなければならないということを申し上げてあります。
このような事情を考えますと、特殊の用途に使用され、
相当高価に販売し得る特殊ゴムは別としまして、天然ゴムに代替して最も広く、かつ多量に使用されまする普通の合成ゴムについては、その工業が典型的な装置工業である関係上、その
生産規模を大規模化することによって、その
生産費の低下をはかるよりほかはないのであります。この場合の規模は、年間
生産能力四万五千トン
程度でなければならないと考えられておりますが、現在、計画中の諸外国の例も同様でありまして、合成ゴムの原料の割高な
わが国においては、特にその必要性が認められるのであります。
しかしながら、合成ゴムの国産化を右のような
生産規模において行おうとすると、巨額の
資金を必要とする上に、操業当初においては合成ゴムの需要がその
生産能力に見合わないために、
相当多額の赤字が生ずるおそれがあり、従って、合成ゴムの国産化は、民間のみの力によっては、たとえ日本開発銀行より
相当多額の低利融資をいたしましても、その急速な実現を期することは困難と認められたのであります。
上記のような事情にかんがみまして、
政府は第二十六国会に
合成ゴム製造事業特別措置法案を提出いたしました。その
内容は、合成ゴムを量的に確保し、かつ天然ゴムに対抗して
事業が健全な発展を遂げるに必要な製造方法、
生産規模及び
生産費等の条件を具備する会社に対し、日本開発銀行から十億円を限度とする出資を行う等の特別の助成を行おうとするものでございまして、
昭和三十二年六月一日に同法は公布施行されたのでございます。
以下は、日本合成ゴム株式会社の設立経過について述べてございますが、日本合成ゴム株式会社の設立経過は次の通りであります。
第二十六国会において制定を見ました
合成ゴム製造事業特別措置法に基き、昨年の七月九日に石橋正二郎氏、池田亀三郎氏、加藤弁三郎氏、富久力松氏、首藤新八氏、松田太郎氏の六名からなる設立
委員会が設けられまして、石橋正二郎氏が
委員長に就任しました。
次に、昨年七月から九月にわたりまして、設立
委員会は
事業計画を
検討いたしまして、定款、
事業目論見書等の起草に当りました。
次いで十月二十一日にゴム工業、化学工業及び石油精製業の関係者三十四名からなる第一回の発起人会が開催されまして、発起人総代に石橋正二郎氏が選任され、定款、発起人の引受株数、株式の募集計画等について審議、決定を見ました。
なお、創立事務所は、東京都港区麻布飯倉片町二十五番地に設置されました。
次いで十一月十一日に
合成ゴム製造事業特別措置法第二条第三項の
基準を定める
政令及び
合成ゴム製造事業特別措置法施行規則の公布施行により、
事業計画
承認申請書が、大蔵、通産両
大臣に提出されまして、十一月十四日付で
承認されました。
その
特別措置法第二条第三項では、先ほど申しました開銀融資を受ける資格のある製造方法なり、
生産規模なり、
生産費等を持つ会社の
基準をきめることになっているのでございます。
次いで十一月十六日株式募集を開始し、十二月二日払い込みを完了いたしました。
そうして十二月九日に日本合成ゴム株式会社創立総会が開催されました。資本金は、授権資本二十五億、うち開銀出資は十億円を予定しております。それで設立に際し発行されました株式は、授権資本の四分の一であります六億二千五百万円でございます。社長に石橋正二郎氏、専務取締役に松田太郎氏が、通産
大臣の認可を受けて、それぞれ就任いたしております。
なお、これには書いてありませんが、最近の経過を申し上げますと、大体、工場敷地は四日市にきまりまして、これは四月から整地に着手し、八月ごろ完了の見込みであります。
なお、いろいろ外国との
技術提携をやる必要がありますが、これも一応契約は
終りまして、ただいま外資審議会で審議を受けているのでございますが、おそらく今月中には
承認されることになろうと思います。それができますと、
機械のいろいろ設計等にかかります。具体的な
機械の発注は大体六月、あるいは国産
機械の割合納期の短かいようなものは、七月以降ということになります。来年の九月には全部の
機械の設置が
終りまして、それから操業が開始されるというふうに予定いたしております。
以上、会社の設立の経過について申し上げました。
次に、法案の
内容について御
説明を申し上げます。
これはお手元に御配付いたしました資料の(4)で「新旧
条文対照表」というのがございますが、それによってごらんをいただくのが一番便宜であろうと存じます。
上の欄が
改正条文でございまして、下の欄が現行
条文で、傍線を引いてありますところが、
改正された点でございます。
まず、題名が変っておりますが、題名を今回は「日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する
法律」というふうに改めまして、また第一条の目的の中に、「合成ゴムの製造
事業の育成に必要な
特別措置」と現行法にありますのを「
昭和三十二年十二月十日に設立された日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置」というふうに改めたのであります。これは現行法においては、その育成の
対象を「合成ゴムの製造
事業を営むことを目的とする株式会社でその
事業計画について
大蔵大臣及び通商産業
大臣の
承認を受けたもの」というふうに抽象的に
規定していたのでございますが、現在においては、すでに日本合成ゴム株式会社が、本法による育成
対象として発足し、おのずからこの
対象が明らかになりましたので、この際、
法律においても、その
対象を明らかにした方がいいと考えたためでございます。また「
特別措置」と現行法にありますのを「臨時措置」というふうに改めましたのは、後に申し述べまするが、第十一条の
規定にその暫定性を示しておりますが、これと対応しまして、本法が臨時的な立法である
趣旨をより明らかにしたものでございます。
それから、第二条の
改正点について申し上げますが、現行法の付則の第三項の
趣旨を体してこの
改正をいたすのでございますが、付則の第三項は、一番最後の
ページにございますが、現行
条文は「この
法律の
規定による日本開発銀行の出資による方式は、この
法律の施行の日から一年を経過したときは、別に
法律で定めるところにより、遅滞なく、
政府の出資による方式に切り換えられなければならない。」とありますが、この
趣旨を体しまして
改正をいたしたのでございます。今回のこの
法律の
改正の中心をなす
規定でございます。すなわち第一項は、「
政府は、会社の株式を所有することができる。」と
規定してございますが、これが従来の日本開発銀行の出資による方式を
政府の出資による方式に切りかえる
規定でございます。
その第二項は、
政府が所有する株式の数と
金額との限度を日本開発銀行の出資による場合と同じく
規定したものでございまして、実質的な変更はないわけでございます。
それから第三条、第四条、第五条の
改正は単に会社を特定したことによる
条文の整理でございます。
それから第五条の二の
規定は、これは重要な財産の譲渡等についての監督
規定でありますが、開発銀行の出資を
政府の出資による方式に切りかえることによりまして、
政府は会社に対して直接の利害関係を有することとなりますので、他の立法例に準じましてこの
規定を設けることにいたしたのでございます。
それから第五条の三の
規定は、さらに社債の募集、それから
資金の借り入れについての監督
規定でございますが、これまた重要財産の譲渡等に関する
規定と同一の
趣旨に基くものでございます。以下第六条、第七条の
改正は、単に
対象を特定したということによる
条文の整理でございます。
それから第八条の
改正は、第五条の二とか第五条の三と同じく監督
規定の整備をはかったものでございまして、この
規定のうちの会社の業務または
経理の状況に関し報告を徴し得る報告徴収権については現行法においてもすでに
規定が設けられているのでありますが、立ち入り検査の権限につきましては何らの
規定が設けられていなかったのでございます。これは、従来の開発銀行出資の場合に立ち入り検査の権限まで
政府に認めてよいかどうかにつきましては、立法論的にも疑問なきを得なかったのでございます。しかしながら、今回の
改正におきましては、
政府の出資による方式に改められることによりまして立法論としても問題がなくなりましたので、他の立法例に準じてこれを追加することにいたしたのでございます。
なお同条の第二項、第三項の
規定は、立ち入り検査の適正を期するための例文でございます。
それから九条、十条の
改正は、
条文の整理にすぎません。
それから九条の二の
規定は、これは今回立ち入り検査を加えたことに伴いまして罰則の整備をはかったものでございます。
それから十一条の
規定に移りますが、
政府所有株式の処分に関する
規定でございますが、この
規定を新たに設けましたのは、日本合成ゴム株式会社は、その
事業計画等から見ましても数年後には民間
企業の
採算ベースに乗り得る会社でございます。従ってその時期には
政府所有株式を処分するものとして本法の臨時措置法たる性格を明らかにいたしたものでございます。この点につきましては、従来の日本開発銀行の出資による場合にも実質的には同一と考えてよいのでございますが、
政府出資の場合は従来の例からいいまして、
政府がいつまでも株を持っているというふうに考えられやすいために、今回特にこの
規定を設けましてその点を明らかにすることといたしたのでございます。なおこの本条で会社の
経理的基礎が確立したというのは、会社の
経理が
採算ベースに乗って配当が可能になるという
程度の
意味でございます。またその次にありまする「有価証券市場の状況を考慮し、」といいますが、これは
政府の所有株式の処分を行うに当りましては、その時期やあるいは処分
価額について慎重な考慮を払う必要がある場合もあると考えたからでございます。
それから付則の第三項、第四項を削除
規定といたしましたのは、今回の
改正によりましてこの
規定の目的が達せられることになったので、
条文の整理でございます。付則の第四項については触れませんでしたが、これは
政府出資に切りかえると同時にそれに伴う必要な事項を
規定しようという
趣旨でございまして、今回監督
規定を強化するとか、あるいは株式の譲渡のいろいろな
手続等について
規定したのはこの
規定に基くのであります。
なお、この新旧
条文対照表に載っていないのでありまして、まことに失礼でございますが、実は
改正条文の付則があるのでございますが、この資料には書かれておりません。この
改正条文の付則は、おそれ入りますが、
合成ゴム製造事業特別措置法の一部を
改正する
法律案、この
法律案の方をごらん願いたいと思います。この五
ページの三行目以下に
改正法の付則が載っておりますので、これについて御
説明を申し上げます。
まず、第一項であります。これは
改正法の施行期日を定めたものでありまして、現行法の付則の第三項の
規定には、この
法律の施行の日から一年を経過したときに
政府出資に切りかえよということの
趣旨のことがあるのでありますが、その一年を経過したときを受けまして、すなわち、
昭和三十三年六月一日からこれを施行すると
規定したのであります。
第二項は、これは経過
規定でありまして、また暫定措置でありますが、現行法の第二条によりまする日本開発銀行から合成ゴム会社への十億円の出資が金融情勢の変化等の理由からまだ全部を終っていないのでございます。そこで
改正法の施行後におきましても
昭和三十三
年度中で
政令に定める日までに会社が発行する株式については従前通り日本開発銀行がこれを引き受けることができるということを
規定いたしております。なお、
政令で定める日をいつにするかにつきましては、
政府はすみやかに会社の
事業進捗状況を把握するとともに、そのときの金融情勢をも勘案いたしまして、民間出資を督励し、これに伴って日本開発銀行の出資もできるようにし、できるだけ早く本則の正規による出資の方式に切りかえる考えでございます。
次に第三項は、前項の
規定によりまして日本開発銀行が引き受けた会社の株式は
政府に譲り渡さなければならない旨を
規定いたしております。これは
政府が株式を所有するに至る手段を
規定したものでございまして、これによれば
政府は譲り受けの方式によって株式を所有することになるのでございます。この
規定も
昭和三十三
年度末までを限っておりますが、第二項に
規定いたしますように、日本開発銀行が
昭和三十三
年度中で
政令で定める日までに十億円全部の株式の引き受けを行うことができるといたしますと、これが譲り受けのために多少の時間を要するといたしましても、
昭和三十三
年度中には
政府が譲り受けることができるものと考えてこのように
規定いたしたのでございます。
次に第四項でございますが、これは
政府が会社の株式を日本開発銀行から譲り受けるには株式の発行
価額により算定したその対価を産業投資特別会計から支払い、その株式が産業投資特別会計において保有することを明らかにいたしたのでございます。これは三十三
年度予算案におきまして産業投資特別会計にこれに要する
経費十億円を計上しておりまする予算措置に対応するものでございます。
それから第五項でございますが、これは前項の
規定による支払金を産業投資特別会計法第四条の出資の払込金とみなす
規定でありますが、これは産業投資特別会計法第四条で同会計の歳出としている出資の払込金の
範囲が、従来は新株取得の場合に限られ、既発行株式の譲り受けの場合を含まないと書いておりますので、特にこのようにみなすという
規定を設けて疑義を生じないようにいたしたのであります。
以上で
内容の概略を御
説明申し上げました。どうかよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。