○
国務大臣(
正力松太郎君) ただいま
議題となりました
理化学研究所法案につきまして、
提案理由を御
説明いたします。
わが国産業の発展と
国民生活の
向上を期するためには、その根源をなすところの
科学技術の飛躍的な
振興をはかる必要があることは、あらためて申し上げるまでもないところであります。
そのためにとるべき方策は、少くないのでありますが、なかんずく、
わが国における
研究活動を一段と活発ならしめるとともに、その
研究成果を
産業界にとり入れ、その
企業化を促進することは、
科学技術振興上の要諦であると
考えるのであります。周知の
通り、
株式会社科学研究所は、多数の優秀な
技術者と
研究設備を擁し、
財団法人理化学研究所以来、四十年になんなんとする輝かしい
歴史的伝統を持った、
わが国有数の
研究機関であります。また同
研究所は、物理、化学及びその
応用等各
研究部門の
知識経験を総合結集し得るという意味においても、また
基礎研究から、
応用研究を経て、
工業化試験までを、一貫して実施し得るという意味においても、名実ともにりっぱな総合的
研究所でありまして、今日まで、幾多のすばらしい業績を上げて参っておるものであります。
同
研究所は、
昭和二十三年に、財団法人組織を改組し、名称も改めて
株式会社科学研究所として発足したのでありますが、さらに
昭和二十七年には、
株式会社としての収益
事業のために設けた製薬部門を、科研化学
株式会社として分離し、以来、
研究部門のみをもって立つところの、純然たる
研究機関として、研究及びその成果の普及という業務を行なってきたものであります。しかしながら、
研究機関として、自立採算をとるということは、
資金的基礎が脆弱なため、少からぬ困難がありましたので、
昭和三十年
株式会社科学研究所法が制定され、それ以降毎年相当額の国の援助が行われて、今日に至っているものであります。
本
法律案は、同
研究所の名称を理化学
研究所と改めるとともに、従来の
株式会社の形態から、特殊法人の形態に切りかえようとするものであります。なぜ特殊法人に切りかえをする必要があるかという点につきましては、次の二点を指摘する必要があります。
第一点は、
研究機関としての
性格、並びにこれに対する国の援助の
強化という点から見て、特殊法人を適当とすることであります。すなわち、現在の科学
研究所の
法律的な根拠をなしておりますところの、
株式会社科学研究所法に関する国会
審議の際にも、
株式会社という組織が、当
研究所にとって適当な形態であるかどうかが、問題になったのでありますが、今日までの経過、
実情から判断しましたところ、必ずしも、
株式会社組織が妥当ではないという結論を得るに至ったのであります。現在のような
株式会社の形態では、とかく画期的な発明の源泉をなす基礎的研究の実施、あるいは、
わが国にとって必要な基礎的研究から、
応用研究、
工業化試験への結びつけ等、営利性に合致しがたい
事業を重視するわけにはいかないのみならず、
研究所に対する
政府の今後の援助
強化の面から見ましても、また、
政府の方針を
研究所に反映させるためにも、特殊法人の形態が望ましいと
考えられるのであります。
第二点は、今般、新技術の
開発という国家的
事業の遂行を、同
研究所に実施せしめようとしているのでありますが、この種の
事業は、一
株式会社に行わしめるのを適当とは認められないということであります。新技術の
開発と申しますのは、
わが国独自のすぐれた
研究成果であって、
企業化に伴う不安が大きいため、
企業化することが困難と認められるものを、実際的規模において行うことをいうのであります。
わが国には、すぐれた
研究成果が、少なからずあるということは、一般に認められているところでありますが、残念ながら、この
研究成果を、
産業に導入できるようなところまで発展させ、
開発することに、遺憾の点が多かったのが
実情であります。
このたび、国の
研究機関、その他の
研究機関において上げられた、主として公共的な
研究成果のうち、
民間企業の危険負担によっては、
開発することが困難である重要な新技術を
開発するとともに、その
開発の成果をできるだけ広く、
民間企業に活用させるという新しい
事業を、同
研究所に担当せしめようと
考えているのでありますが、このような国家的な
事業の遂行は、特殊法人の形態で行わしめることを妥当とすると
考えるのであります。
これを要するに、
政府といたしましては、同
研究所の研究
機能を
拡充強化すると同時に、新技術の
開発の業務をこれに行わしめようとする
考えでありまして、この
考え方に基いて、従来の
株式会社を改組して、特殊法人にしようとするものであります。
次に、本
法案の概要を御
説明いたします。
第一に、同
研究所の設置の目的は、総合的な
試験研究の実施、新技術の効率的な
開発、並びにこれらの
試験研究、及び、新技術
開発の成果の、
わが国企業一般に対する普及の
事業を行わしめることにあります。
第二に、同
研究所の
性格は、いわゆる特殊法人でありまして、
政府は
予算の範囲内において、これに
出資し得るものといたしております。
第三に、同
研究所の
性格にかんがみ、その定款及び業務
方法について
認可制をとるとともに、
役員すべてを
内閣総理大臣の任命といたしております。
第四として、新技術の
開発業務につきましては、その円滑な運営を期するため、
研究所に
開発委員会を設置するとともに、
開発実施
計画について、
認可制をとっております。
第五として同
研究所に対しては、
登録税、不動産取得税を非課税とする等、税制上の
助成措置をとっております。
最後に、科学
研究所から理化学
研究所への切りかえのための
措置として、科学
研究所の解散等につき商法の特例を置き、また評価
審査会を設ける等の経過
規定を定めております。
以上、本
法案の
提案理由、及びその
内容に関する概要の御
説明を申し上げました。何とぞ慎重御
審議の上、御賛同あらんことを切望する次第であります。