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政府委員(
松尾泰一郎君) それでは
輸出保険法の一部を
改正する
法律案につきまして簡単に御
説明を申し上げます。
実はお手元にこういう刷りものを差し上げておりますので、これをちょっとごらん願いたいのでありますが、この一番最初の見出しのところに、現在の
輸出保険の概要を掲げております。まず第一は普通
輸出保険、それから
輸出代金保険、
輸出手形保険、
輸出金融保険、委託
販売輸出保険、海外広告保険、海外投資元本保険、海外投資利益保険、この八
種類の保険を現在実施をいたしておるのでありますが、今度の
改正をお願いをいたしておりまするのは、まず第一の普通
輸出保険の
改正になるわけでございます。そこで一言最近の
輸出保険の運営の状況を簡単に御
説明をさしていただきますが、この
輸出保険全体といたしまして、毎年非常に順調な推移をして参っておるのであります。別途統計資料をお配りいたしておりますが、それでもごらん願いますように、ことしの保険の状況も昨年度に比べますると一回り大きく成長をしているのであります。で、まずことし、三十二年度におきます保険契約高も、年率にいたしますと千四百億円程度になると思っております。昨年度に比べますと、三三%程度の増加になっております。それから保険契約の件数も、年率にいたしまして十九万件に達しておりまして、これまた昨年に比べますと三割程度の増加になっておるのであります。で、保険料及び返納金の収入も、年率にいたしまして八億円くらいの予想になります。
他方支払保険金も、現在の状況で判断をいたしまする年間の予想が四億三千万円程度にまでなっておるのであります。
そこで、次に
輸出保険
制度を創設いたしまして以来の収支のバランスをちょっと申し上げてみますると、三十二年の十二月末におきまして十三億円の黒字となっております。しかし、このうちには約十一億円の未経過保険料を含んでおりまするので、これを差し引きますと、純粋の黒字が約二億円であります。なお、この二億円は、
輸出代金保険の保険料収入から主として生れたものでありますが、昨年の八月に
輸出代金保険の保険料を二割程度引き下げ措置をとったのであります。従いまして現在ではこの
輸出保険全部で八
種類の保険でございますが、各種保険ごとには、若干の黒、赤の出入りがございまするが、おおむね採算はとんとんで運営されているというような状況でございます。
そこで、今回
改正を願っておりまするこの点について一言
説明さしていただきまするが、先ほども申しましたように、普通
輸出保険の
改正をお願いするわけであります。それでこの普通
輸出保険は、八
種類の保険の中でどういう地位にあるかと申しますると、この全体の中のいわゆる根幹をなす保険でありまして、
輸出保険の契約総額の三分の二が普通
輸出保険で占めておるのであります。ところが、この保険に対しましては、創設以来利用者側からの批判も若干あったのでありまして、いつか適当な時期に
改正をいたしたいというように考えておったわけでありますが、今回いよいよお願いをすることになったのであります。
そこで
改正点を申し上げますと、まず第一に、再保険
制度をこの際やめたいということと、担保危険の明確化をいたしたいというのが
法律改正の主要な点でありまして、その
二つにしぼられるわけであります。なお、これに伴いまして、
法律事項ではございませんが、保険料の引き下げもあわせてやりたい、こう存じておるわけでありまして、保険料引き下げの方は、別途
政令の
改正でいたすことになるわけであります。
そこで、まず
改正点の第一点でありまする再保険
制度の廃止につきまして簡単に御
説明をいたしますると、この普通
輸出保険と申しまするのは、現在保険会社十六社を中にはさみまする再保険
制度で運営されておるのでありますが、その再保険
制度を採用いたしました理由といたしましては、この保険
制度を創設いたしました当時、政府側におきましても窓口が比較的少なかったために、保険の申し込みをさばききれないであろうという点と、それからいま一つは、保険会社の知識
経験を利用させていただいた方がいいという理由で、そういうふうに再保険
制度を採用したのであります。しかし、その後
輸出組合の
整備に伴いまして、
輸出組合によりますところの包括保険
制度が漸次発達をして参ったのであります。数字的に申し上げますと、包括保険が普通
輸出保険に占める割合が件数で九四%、金額上では八O%に及んでおるわけでありまして、さらに昨年の七月から新たに機械類につきまして包括保険
制度を実施いたしましたので、ますますこの割合が大きくなりつつあるのであります。また、この包括保険
制度にかからないいわゆる個別保険について見ましても、この保険が
輸出業者の利用する保険でありますので、大体保険契約の締結される地域もわかって参ったのであります。大体主要都市、港湾都市に限られておるというふうな点もわかって参ったのであります。従いましてこの際再保険
制度の果すべき役割はもうすでに果されたと思いまして、この機会に政府の直接引受保険に改めた方が万事好都合ではなかろうかというふうに考えたのでございます。なお、政府が直接保険ということになりますと、サービスの低下という問題も憂えられるのでありますが、今回
他方、予算におきまして保険
関係の人員の増加も若干認められましたので、今後サービスが低下しないように十分に配意をしていくつもりでございます。
それから
改正点の第二であります担保危険の明確化という点でございまするが、
現行の普通
輸出保険はこのところの
説明でもごらん願えますように、
輸入制限あるいは
輸入禁止とか、為替
取引の制限、禁止とか、戦争、革命、内乱とか、その他本邦外において生じた事由で当事者の責めに帰することのできないもの、あるいはまた為替管理法上の日本側における
輸出の制限、禁止、この五つの保険事由によりまして
輸出できないか、またはその
輸出代金の回収ができない場合を保険事故としておるのでありますが、現実の問題といたしまして相手国の
輸入制限を一つ例にとりましても、
輸入制限とは何ぞやというふうな問題に逢着するわけであります。たとえば
輸入制限が行われましたような場合、相手方の
輸入業者はできるだけ
輸入をしようといたしますし、
輸出業者は
輸出ができないままに長期にわたって貨物を手持ちしたままで金利とか倉敷の負担を背負わせられるということになる。すなわち
輸出契約は生きたままで長く存続する。従ってこの
輸出不能かどうかという認定が非常にむずかしくなる。勢い保険金の支払いができないというような事態がこれまで生じておるのであります。これまでこの普通
輸出保険の保険金の支払いが非常におくれておるという非難も多々聞かれておるのであります。平均いたしますと一年後ぐらいに保険金の支払いがなされておるという状況であるわけです。そこで今回の
改正におきましては、ここに掲げますような保険事由が発生をしている場合におきましては、それぞれの
輸出契約におきまする船積期日の経過後二カ月を経過した日までに船積みができないときはこれを不能、いわゆる保険事故とみなそうというような
規定を掲げることによりまして、保険事由と、それから保険事故をはっきりと確定をするような
方法をとりたいということであります。言いかえてみますと、担保危険をこれによりまして明確化いたしたいわけであります。かような
改正によりまして、普通
輸出保険もいわゆる保険金の支払いが非常に敏速にいけるわけです。
実情に沿うた生きた運用ができるのではないかと考えておるのであります。
以上が、今回の普通
輸出保険の
改正をお願いをしておる点でございます。
そこで先ほども申し上げましたように、再保険
制度をやめまして直接保険にいたします
関係上、この元受保険料と再保険料との差額の大部分が節約されることになるわけでございますので、この差額を流用いたしまして、普通
輸出保険の保険料を引き下げよう、こういうふうに考えておるのであります。引き下げの具体的の
方法は
政令でいたすわけでございますが、今われわれの方の計算といたしましては、引き下げ率は金額加重平均いたしまして約一二%程度の引き下げになるのでございます。
以上で、簡単でございますが……。