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説明員(
川上爲治君)
中小企業団体法の
施行は、四月の一日から実施されております。四月から五月の半ばにかけまして、
中小企業安定審議会を数回にわたりまして開きまして、ただいま
委員長からお話がありました
ように、
団体組織法の第九条に規定してあります
不況要件の
判定基準を、この
審議会におきまして
決定をいたしまして、それが五月の十三日に
通産大臣の方に
答申がなされております。それに基きまして、いろいろ私
どもの方で
検討いたしまして、
内容につきましては、ほとんど全くそのまま採用しておるわけでございますけれ
ども、字句について若干修正をいたしまして、五月の二十日に
告示として
判定基準を各
方面に発表いたしております。
その
内容につきましては、お手元に配付してあります五月二十日の
告示第二号でございますが、この
内容につきましては、
あとで詳しく御
説明いたしますけれ
ども、なお、今までこの
団体法の
施行につきましてやって参りましたところを簡単に申し上げますと、今申し上げました
判定基準を作りましたことと、それからそのほかの問題としましては、いわゆる
中小企業安定法に基きます
調整組合制度を、この四月から全部
団体組織法に基く
商工組合に切りかえました。特に、まだ
名称等については変えてない
組合もあるかと思いますけれ
ども、たとえば、
調整命令とか、そういう
ようなものは、
法律に従いまして全部四月一ぱいに切りかえてございまして、その作業が相当かかりましたのと、それからもう
一つは、先ほど申し上げました
判定基準、これを
安定審議会を数回開きまして、いろいろその
審議をいたしました結果、大体五月二十日ごろまでにこれらの問題をすべて処理いたしまして、現在のところは、もういつでも、
組合の
設立の
認可申請を出してきてもよろしいという
ような
態勢に、実はしておるわけでございます。従いまして、まだ各地におきましては、
組合を
設立という
ようなところまではいっておりません。
申請もまだ新しいものは全然参っておりません。現在、各
業種においていろいろその相談をしつつありまして、作った方がいいか、作らない方がいいかという
ようなことを、いろいろ各
業界の方におきましては
検討中でございます。私
どもの方としましては、すべて各
府県に対しましても、十分な連絡をとっておりますので、いつでも
業界の方の
要望によりまして、
組合設立認可の手続ができる
ような
態勢を現在とっておるわけであります。
判定基準につきましては、この
告示の第二号に、
資料として今お配りしてありますが、第一、第二、第三と、こう三つに分けてございまして、これは第九条の
法律の趣旨に基いてやっておるわけでごさいますが、第一は、「
一定の
地域において
一定の種類の
事業を営む
中小企業者が次のいずれかの
方法により
競争を行っているとと」、要するに
過当競争の事実がなければならない。そこで、その
過当競争というのは、どういう
やり方で
過当競争をやっておるかという点を、このイ、ロ、ハ、ニというふうに分けまして、一応具体的な、抽象的な例を示しておるわけであります。
そのイとしましては、「
企業の健全な
経営を困難にする
程度に、低い
価格で物の
販売をしもしくは
役務の
提供をし、または高い
価格で
原材料その他の物の
購買をすること」。これは要するに、その
企業の健全な
経営を困難にするほどまでに低い
価格で、とにかく非常に低い
価格で
販売するとか、あるいはまた、非常に無理をして高い値段で買うとか、こういう
ような事実があるかないか、この事実があれば、やはり
過当競争ということに入るのじゃないだろうか。
それからロとしましては、「
輸出貿易の健全な
発展を阻害しまたは阻害するおそれがある
程度に、低い
価格で
販売をし、または
販売数量を急激に増加すること」。これにつきましては、
輸出貿易につきましては、特に
輸出貿易を阻害する
過当競争による事実があるかどうかという点を書いてあるわけでございます。
それからハとしましては、「正常な
商慣習に照して不当と認められる
取引方法を使用すること」。これは普通の
商習慣から見まして、非常に不当と認められます
取引の
やり方をやっておるという点があるかどうか。これもやはり
過当競争の
一つの
事例ではないか。
それから二としましては、「長期的な
需給の不
均衡をもたらす
程度に
生産設備を新設すること」。これは
生産設備を非常にふやしまして、そのために、長い目で見ますというと、
需給の非常な不
均衡を来たすという
ようなおそれがありはしないかどうか。そういう
ようなことを
現実にやっておるということであれば、やはり
過当競争の中に入るのではないかというふうに考えたわけでございます。
それから第二としましては、「前号に規定する
競争が行われているため、
当該中小企業者の
事業活動に関する
取引の運行について次のいずれかの
状態が生ずること」。これは、この
法律によりますというと、
過当競争の事実がなければならないということが
一つでありまして、その
過当競争をやっておるために、そのために
中小企業者の
事業活動に関する
取引につきまして、いろいろ問題が起きておるという事実があるかどうか、またその事実が、そういうことが生ずるおそれがあるかどうかという
ような問題につきましてこまかくイからロまで分けましてどういう事実がそれに該当するかということを書いてあるわけであります。イとしましては、「
企業の健全な
経営を困難にする
程度に、物の
販売もしくは
役務の
提供の
価格が一般的に低下し、または
原材料その他の物の
購買価格が一般的に上昇すること」。これは一のところをやはり受けまして、こういう
ような事実が
現実の問題として出てきておるか、出てきてないかということを書いておるわけであります。
ロにつきましては、「
仕向地の
輸入者もしくは
関係事業者の
利益を害する等
輸出貿易の健全な
発展を阻害しまたは阻害するおそれがある
程度に、低い
価格で
輸出され、
輸出数量が急激に増加し、または不公正な
輸出取引が行われること」、これは、
輸出貿易の問題につきましては、いろいろな
弊害が現われておるかどうかという点をここには書いてあるわけであります。それからハにつきましては、「製品、
原材料その他の物の
在庫が正常な
水準をこえて一般的に増加すること」。これは
在庫が非常にふえておるか、ふえてないか、
在庫が非常にふえておるということであるならば、やはり
競争が非常に激しくて、そうして非常に
不況に陥っておるということが言えるんじゃないか、ただ、その「正常な
水準をこえて」とかいう
ような
文句で書いてありますが、これは具体的に、じゃその何割なら何割とかいう具体的な
事例を出すべきじゃないかという
ような
意見もありますけれ
ども、どうも物によりまして非常に違いますから、結局、抽象的にこういうふうに書いてあるわけであ、ります。
それから二、「
販売をする物の
品質または
提供をする
役務の
内容が一般的に不良となること」。これは物の
品質を非常に下げて
販売しておるという
ような事実があるかどうか、これはやはり
不況要件の
一つの標準になるんじゃないかというふうに考えられたわけであります。
それからホとしまして、「正常な
商慣習に照して不当と認められる
取引方法を使用するため、著しく不利な
取引が一般化すること」。これは一部分そういう
ような事実が現われていましても、やはり一般化してなければ
不況に陥っておるということは言えないんじゃないかという
ようなふうにも考えましたので、また
弊害が現われておるというふうにも言えないんじゃないかというふうに考えましたので、「一般化する」というふうに入れてあります。
それから、ヘ「
取引の相手方が正常な
商慣習に照して不当と認められる
取引方法を使用するため、著しく不利な
取引が一般化すること」。これも同様な普通の
商習慣に照しまして、どうもその
取引の
やり方が非常にめちゃくちゃになっておるという
ような、それが一般化されておるという点。
それからトとしましては、「
代金の
回収が一般的に不円滑となること」。これは、
代金の
回収が、これもまた
一部分じゃなくて、まあ一般的に非常に悪くなっておるという点、こういう
状態が生じているかいないかということを、やはり
不況の
要件の
判定基準にしてあるわけであります。
それから三としましては、「前号に規定する
状況が生ずることにより、
当該中小企業者の
相当部分について次の
状態の全部または一部が生じ、または生ずるおそれがあること」。今申し上げましたこういう
ような
状況が生じておることによりまして、そして
中小企業者の
相当部分というのは、これは
過半数というふうに
法律では解釈しておるわけですが、
過半数のものにつきまして、次の
ようなことが行われておるか、行われていないかということを書いてあるわけなんですが、「
売上高が正常な
状態に比して著しく少いこと」。それからロは「
売上利益の
売上高に対する割合が正常な
状態に比して著しく低いこと」。それから「負債が正常な
状態に比して著しく多いこと等により資金繰りが著しく困難であること」。それから二は「賃金が著しく低いこと、その支払いが遅延していること等正常な
雇用条件の維持が著しく困難であること」。それからホとしましては、「
設備が老朽化しており、その更新が困難であること」。ヘとしましては、「
営業の廃止、
営業の譲渡その他これらに準ずる
事態があること」。これはまあこういういずれか
一つというわけではありませんが、いずれかのものに該当するならば、やはりその非常に
不況に陥っているのじゃないかというふうに
判定基準としては書いてあるわけであります。
以上申し上げました
ように、この
安定審議会におきまして作り為したものを、
文句を少し修正した
程度でありまして、
内容につきましては全然変っておりません。しかしながら、
安定審議会におきましていろいろ問題になりましたことは、もう少し
業種別にはっきりと書いた方がよくはないか、
業種別にこまかく作った方がよくはないかという
ような
意見もありましたが、どうも
業種別にはっきりこまかく作るということは、具体的になかなかむずかしいのじゃないかという
ようなまあ議論がありまして、全般に一応通ずる
ようなものを抽象的に書いてある。従いましてこれが
運営につきましては、さらに私の方からいわゆる
設立の
認可方針というのを出しまして、それに基いて
一つその
判定をしてもらいたいということでやっておるわけであります。なお、その
安定審議会におきましても、今申し上げましたこういう一般的、抽象的なものだけではなくて、さらに
設立認可については、次の
ような点を
一つ十分考えてやってくれという
ような、この
答申がなされております。今
あとで
資料を持って参りますが、
安定審議会の方で今私申し上げました
ような一般的な抽象的なことをきめてあるわけなんですが、さらにこれに付帯いたしまして、
審議会の方からこういう
答申が行われております。
第一は、「
価格または
加工賃に関する
調整事業を実施し
ようとする
商工組合については、
消費者または
関連事業者に
悪影響を及ぼすおそれがないかどうかを慎重に
検討して、
設立認可の
可否を
決定すること」。要するにこれは、この
委員会におきましてもいろいろ問題になりました
価格または
加工賃の
決定につきましては、そういう
調整事業をやろうとする
商工組合につきましては、これが
消費者なり、あるいはその
関連事業者に対して悪い
影響を及ぼすか、及ぼさないかということを十分
検討した上で、
設立認可の
可否をきめてもらいたいということが
一つ。
それから第二としましては、「
設立後実施し
ようとする
調整事業について
実効性があるかどうかを慎重に
検討して
設立認可の
可否を
決定すること」。これはただ
組合を作るだけではいけませんので、
組合を作る以上は
調整事業をほんとうにやれるかやれぬか、それは
実効性があるかないかということを十分
検討した上で
設立の
認可の
可否を
決定すべきだ。
第三としましては、「
輸出入取引法、
輸出水産業の
振興に関する
法律、
小型船海運組合法、酒税の保全及び
酒類業組合等に関する
法律および
環境衛生関係営業の
運営の
適正化に関する
法律に基き
設立された
組合と
地区および
資格事業について重複することとなる
商工組合の
設立は、
認可しないこと」。これは
商店街組合を除きますけれ
ども、こういう別な特別な
法律がありまして、
組合を作ることになっておりますものは、大体仕事が重複するおそれもありますので、そちらの方の特別な
組合で
一ついってもらいたい。これはしかし
法律では別に、もしどうしてもこの
商工組合を作りたいという
要望がありまして、また調べた結果やはり
不況要件というのがちゃんと備わっており、その
法律に適応しているということであるならば、私の方としましては拒否することができない建前になっておりますので、これは行政上の
ただ運営の一応
方針として、なるべくそういう
ような
やり方でやってもらいたい、こういうわけであります。
それからその次は、「
輸出に関する
調整事業を実施し
ようとする
商工組合については、その
調整事業が
輸出取引の不円滑な
事態を除去して
輸出の
振興に寄与すると認められる場合には、
設立を
認可すること。」これはこの
委員会の
付帯決議もありましたので、
輸出関係のものはむしろ積極的に作らせる方がよくはないかというふうに考えますので、むしろ積極的に
認可するという
方針でいきたい。
それからその次は、「
技術の
向上が特に要求されている精密な
機械工業等の
業種を
資格事業とする
商工組合については、実施し
ようとする
調整事業がその実現を阻害するおそれがないかどうかを慎重に
検討して、
設立認可の
可否を
決定すること」。
組合を作って、そこで
調整事業をやりますそのために
技術向上を阻害するということがあってはいけない。その点は
一つ十分気をつけて
組合の
設立の
可否を
決定してもらいたいという点であります。
その次は「
販売業を
資格事業とする
商工組合であって
数量に関する
調整事業を実施し
ようとするものについては、
消費者または
関連事業者に
悪影響を及ぼすおそれがないかどうかを慎重に
検討して、
設立の
認可の
可否を
決定すること」。これは直接
消費者に接する面におきましては、
数量をやはり協定いたしますというと、ややもすれば
価格をつり上げるという
ような
事態が生じますので、
数量協定につきましては
十分一つその
検討をして慎重に扱って、そういう
ような
組合の
認可につきましては、慎重に扱ってくれということを言っているわけであります。
それから「
商店街商工組合については、
組合の
地区が市の
区域または特別区の
区域(隣接した市または特別区にあっては、その
区域をあわせた
地域)、その
区域内にあるものに
限り原則として
設立を
認可し、かつ、その市または特別区の人口に対する
小売業者の数が多いかどうか、または
百貨店、有力な
購買会等の
事業活動の
影響が強いかどうかを慎重に
検討して、
設立認可の
可否を
決定すること」。これは
商店街の
商工組合につきましては、小さい町の
商店街商工組合というものには
調整事業はほとんどないと思いますが、そういうものについては、別に
組合を作らせるということは必要じゃないというふうに考えますので、少くとも市以上のものについては
商店街の
組合を認めるべきだ、こういうふうに書いてあるわけであります。そうして特に
小売業者の数が非常に多いかどうか、そういう点、あるいは
百貨店とか、
購買会等と非常に問題を起しているかどうか、そういうこともよく考えて
商店街の
商工組合については作ってもらいたい、こういうことを言っておるわけであります。従いましてこの
設立認可方針につきましての
安定審議会の
答申は、あまり
灘種別にこまかく書いてあるわけじゃございませんが、大体
輸出貿易関係あるいはまた
技術関係のもの、あるいはまた
精密機械関係とか、あるいは
販売業者とか、あるいは
商店街というふうに比較的大ざっぱに分けまして、そこで
認可方針についてのいろいろその
意見を出しておりますので、先ほど申し上げましたこの
不況要件の
判定基準についての一般的なものとあわせまして、この
答申を私
どもの方としましても尊重しまして、
設立認可方針として
地方の方へ
通達をいたしております。
以上申し上げました
ように、もうすでにこういう
通達をいたしまして、大体六月ごろになりますというと、ぼつぼつ
組合の
申請が出てくるんじゃないかというふうにまあ考えておるわけであります。なお、今申しました
ように、この
判定基準は、一般的にかつまた抽象的なことになっておりますので、具体的な措置については、各
府県の方で
商工会議所なり、あるいはその他の
方面に十分その諮問をしまして、そしてまあ心配がない
ようにやってくれという
通達をいたしております。
それからなお、
府県の方で所管するものと、それから私
どもの本省の方で直接所管するものにつきましては、これは三月の末に
中小企業団体の
組織に関する
法律の
施行令というのを出しまして、そして
中小企業者の定義とか、あるいはまた、先ほど申し上げました
府県の方でどの
程度直接タッチする、あるいはまた、国の方で、
中央の方でどの
程度タッチするという振り分けをしてあります。これに対しましては、最近
地方の方からも、どうもその
中央の権限というのは非常に大きくて、何でもかんでも
中央がおもなやつは握っておるじゃないかという
ような
意見もございますけれ
ども、私
どもの方としましては、この
法律の
施行に当りましては、慎重に扱わなくちゃならぬと考えておりますので、まあ最初は
中央の方で大体握っておいて、そして将来だんだんこの
設立認可なり、その他のいろんな規定につきまして、なれて参りますれば、これをなるべく
地方に委譲していきたいという
ような考えでおるわけでございます。
以上申し上げましたところで現在この
団体法の
施行をやっておるわけでございます。