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1958-04-18 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十八日(金曜日)    午後二時五分開会   —————————————   委員異動 本日委員木下友敬君辞任につき、その 補欠として田中一君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君    委員            有馬 英二君            草葉 隆圓君            斎藤  昇君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            西岡 ハル君            西田 信一君            横田 フク君            片岡 文重君            田中  一君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君    委員外議員            大矢  正君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○けい肺及び外傷性せき髄障害に関す  る特別保護法の一部を改正する法律  案(大矢正君外六名発議) ○労働基準法等の一部を改正する法律  案(藤田藤太郎外大名発議) ○職業訓練法案内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 開会いたします。  委員異動を報告いたします。四月十八日付をもって木下友敬君が辞任され、その補欠として田中一君が選任されました。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の一部を改正する法律案労働基準法等の一部を改正する法律案、右二案を一括議題といたします。  質疑を願います。
  4. 山本經勝

    山本經勝君 労働大臣にお伺いを申し上げたい。実は、この委員会で、けい肺法一部改正の問題を審議しておりまして、のみならず、昨年の臨時国会以後、委員会の際に、数度にわたっていろいろと御質問を申し上げたんです。この法律成立当時に、付帯決議が四項目にわたってついておる。そこで、当然、その問題については、労働省としては、審議会に諮問をして、何らかの答申を得られなければならぬ性質の問題である。それからさらに、本法が施行後すでに三年になって参る。そうしますと、いろいろな欠陥等も出て参りましたから、そこで、質疑あるいは要望等もいたして参ったんですが、さっぱりその審議会の答申なるものが得られないという実情にある。これは、少くとも、この法律の本来の目的であり、また性格であるこの不治の病にかかった人々は、つまり、職業のゆえに不治の病にかかって、現在の医療制度下では全快することが不可能な実情である。であればこそ、この法律成立します当時にも、人道的見地から、何らかの特別保護が必要であるということが一致して叫ばれたしまた、その意味においてこそこの法律成立したと思う。そういう重要な法律が、当然審議会の議を経て、何らかのまとまった改正なり、あるいは必要な措置労働省から出されるものと期待をしておったのですか、残念ながら、申し上げるように、審議会は一向に進行をせず、しかも、聞くところによりますと、昨年以来審議会はわずかに三回しか開かれておらない。こういう実情のように伺う。せんだっても、審議委員の各位を参考人として出席を求めて、そうしていろいろ意見を聴取したわけです。そこで、大臣としては、少くともこの問題に関し直接最高責任者でありますから、どういうふうにお考えになっておるか、この点からまずお伺いを申し上げておきたい。
  5. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 審議会結論がなかなか得られないことは、非常に残念でありますが、できるだけ早く審議会結論を得て、付帯決議趣旨を生かすようにいたしたいと考えております。しかし、一般的に申しますと、この病気は、現在のところ不治の病と言われておるわけでありまして、非常に病症の重い人々についての処置は、けい肺法の示す期限を越えても何か処置をしなければならないという考え方のもとに、法改正準備とあわせて、その法改正に至るまでの経過的な措置についても、できる限りのことをいたすように、今方途を研究いたさせておる次第であります。
  6. 山本經勝

    山本經勝君 昨年から今日まで、この審議会開催になった実情等を、これは、局長の方からやや詳細に御説明を願っておきたい。
  7. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) けい肺審議会開催状況につきましては、昨年におきましては、当時会長でおられた、また現在も会長でおられますが、勝木先生が外遊され、また、労使関係者委員の方も、国際会議等で出張されるというようなことがありましたために、昨年におきましては、その開催がほとんどなかったわけでございます。しかしながら、昨年の秋に新らしい任期の委員を改選いたしまして、昨年の十一月末以来、けい肺審議会開催状況は相当活発の状況でありまして、昨年の十一月末以来現在まで、五回開催しておるようでございます。その間におきまして、いろいろな問題もあわせまして、この付帯決議処理百の問題につきましても、検討は願ったこともあるわけでありますが、労使間、それから中立の意見が必ずしも一致しておりませんために、今日に及んでおるわけであります。しかしながら、この問題の処理も緊急を要すると思いますので、最近の総会におきましても、近く、なるべくすみやかな機会に、この問題のための小委員会を再開いたしまして、具体的に議論を詰めていく、このような予定になっておるのであります。
  8. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、今の局長お話ですと、昨年十一月から年末にかけて五回審議会が行われた。それからさらに、今年に入って、小委員会を設けて審議をしておいでになる。そういたしますと、最近はやっておられるというふうに見受けられぬこともないでしょうか、私の直接聞くところによりますと、関係委員の側から、特に労働側委員皆さんから、強力な開催要求が最近出ておるはずです。それについてはどういう処置を講じられたのか。
  9. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、先ほど申し上げましたように、十一月末以来五回開催いたしておるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、小委員会をなるべくすみやかに開催したいということで、準備をしておるわけでございます。ただ、その間におきまして、実は一月から四月にかけまして、決算期であるということのために、使用者側委員がなかなか都合がつかない。それと同時に、四月に入りまして、産業医学会が開かれたために、公益側勝木博士、それから南博士都合がどうしてもつかないというような状況もありまして、延びておるわけでございますが、最近になりましてそのような心情もなくなりましたので、至急開く予定で、百下準備しておるのでございます。
  10. 山本經勝

    山本經勝君 なるべく早くということは、まことに幅の広い話で、月に一回開いても、あるいは二カ月に一回開いても、今お話のように、委員の一人一人の御都合等もあることもわかるのですが、そういうことが理由になって結局審議会が開かれぬ、あるいは小委員会開催できない、こういう実情は、たとえば付帯決議内容につきましても、いずれもこれはずいぶん前の話なんですから、この内容に沿う行政的な方法、指導なり、あるいは何らかの措置が当然講じられなければならないと思うのですが、この点は大臣に伺っておきたい。付帯決議というものは、大体最近非常に軽視される傾向が私ども見受けられてかなわぬ。これは、付帯決議というのは、申すまでもなく、少くともこの法の制定当時において、予想された状態が法の条文に明記することができなかったために、審議の過程で付帯決議という結果を作っていると思う。しかも、これも満場一致で、全会一致成立した法律でございますから、勢い当然政府としては、講じなければならない応急の措置であったと思うのですが、すでに、申し上げたように、三年も経過した今日、なおかつ、この付帯決議案内容なるものが何らかの形で、たとえば三十三年度予算の中で、どういうふうに盛り込まれているか、私にはさっぱり見当らぬ。この点、付帯決議に対する見解を一つ明確にしていただきたい。
  11. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 付帯決議趣旨を尊重して、できる限りすみやかに具体的措置を講じなければならぬ、ことは、これは申すまでもないのでありますが、この問題につきましてのけい肺審議会結論がなかなか得られなかった事情は、ただいま政府委員からお答えをした通りであります。なお、付帯決議趣旨について具体的な予算措置につきましては、政府委員からお答えをいたします。
  12. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 付帯決議の中にございます転換給付の問題、それからスライド制の問題につきましては、これは、労使公益委員意見がいまだ一致いたしませんので、その具体的な予算は、主十三年度予算に計上してありません。就労施設の問題につきましては、やはり審議会において審議を願っておるところでありますが、労働省の力といたしましては、三十二年度予算の中に若干額を計上してあります。それで、意見がまとまりますれば、さしあたりいかなる作業を行わせるか、あるいは入所者家族をどうするか、あるいは入所者がかりに発病した場合に、家族を含めて本人の処置をどうするかというような諸姉の問題を検討いたしました上で、なるべくすみやかに実施いたしたいと思っております。この内容につきまして、労使間及び公益の間におきまして意見がまだ一致しておりませんので、小委員会におきましてこれらの点を御検討願った上で、努力いたしたい考えであります。
  13. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、国会付帯決議をした、その決議内容についても、これは、成立当時労働省としては十分御承知なんです。ところが、この付帯決議内容をさらに審議会に諮ってということはどういうことなんですか。これは大臣の方からお伺いしておきたい。
  14. 石田博英

    国務大臣石田博英君) その内容の具体的な実施方法については、やはり審議会に諮らなければならないことと存じておるわけでありまして、方向として、大筋として、付帯決議実施しなければなぬことは申すまでもないことでありますが、その具体的実施内容については、この法律趣旨に基いて、審議会に諮るわけでございます。
  15. 山本經勝

    山本經勝君 この付帯決議内容、これは、非常にはっきりこの第一項にいっておりますように、転換給付については、すみやかに増額の措置を講ずべきである、こういうことですね。それからあるいは、今局長からお話しのあった就労施設の設置については予算措置を講ずる、ところが、こうした事柄は、審議会にあらためて諮らなければならぬような問題ではなくて、少くとも政府が積極的に、この非常に気の毒な不治の病にかかった労働者に、もしあたたかい親心があるとするなれは、少くともそれらの措置は、審議会に諮って、そこで審議をしてやらなければならぬというようなものではなくて、審議会よりも、私は、国会の方が責任もあるし、同時に権限を持っておると考える。そういう事柄をどうしてその長たらしい、あるいは昨年なんかほとんど開かれておらない、十一月末から辛うじて五回ばかり開いたというような審議会にまかしておかなければならぬのか。このことは、かわった意味で言えば、けい肺に関するこれらの労働者の気の毒な状態に対して、これは少数だから問題にする必要はないというお考え方なのか。もしそうでなかったなら、少くとも審議会にすみやかに結論を求めて、何らかの措置をとるという、私は積極的な意図があってほしいと思うのですが、労働大臣としては、どうお考えになっておるか、伺いたい。
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) この法律の中で、けい肺に関する重要事項は、審議会意見を聞かなければならないということになっております。付帯決議の条項を具体的に生かしますためには、法改正を必要とするわけであります。従って、法改正ということは、けい肺について最も重要な事項一つでございますから、けい肺審議会意見を聞かなければならぬということになっておるわけでございます。しかしながら、これがなかなか結論を得られないという実情は、先ほども申しました通り、きわめて遺憾なことだと存じておるわけでありまして、こういう結論が得られないという事情のもとにおきましても、けい肺法の規定する期限の過ぎた者に対して具体的に適切な処置をとるように、早くから研究を命じておった次第でございます。なお、ただいま政府委員から説明を申しました通り、いろいろの事情も差し迫って参りましたから、文字通り、及ぶ限りすみやかに結論を出してもらうように、重ねて督促をいたしたいと考えております。
  17. 山本經勝

    山本經勝君 そこで、根本問題としては、今の大臣の御答弁で了解はいたしましたが、問題は、現にこの法律によって、目下療養中の人々が逐次二ヵ年の療養機嫌が切れて、そうしてどうにもならない状況に追いやられて、しかもこの前——いつであったか、はっきり記憶しませんか、この委員会で、昨年の自殺者が出た問題等も引例を申し上げたつもりなんです。そういう非常に悲惨な状態に追い組められつつある問題なんですから、勢い基準局長としては、もう少し積極的な解決策、あるいは具体的な対策を推進すべきであると思うのです。その点、局長はどうお考えになっておりますか。
  18. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいまお話のありましたように、いろいろ根本問題は横たわっておりまするが、それと並びまして、特に二カ年間のけい肺保護法による保護期間が終了いたしましたにもかかわらず、なお非常に気の毒な状況にある患者の方が相当出ておられるのでありまして、この点につきましては、人道上の見地からもゆるがせにできないものであるとわれわれは考えまして、この解決のために、鋭意努力しておるわけであります。さしあたりの措置といたしましては、根本問題は別といたしましても、労災保険等施設等を利用いたしまして、気の毒な状況にある方で、しかも保護措置期間が切れるというような方につきましては、事実上療養を継続させる、このような方向で、三十三年度におきましても若干の予算措置を講じてあるわけでありまして、これにつきまして目下検討しておりまするが、今後におきましても、さしあたりは過渡的な措置といたしましてこのような措置を講じまして、それによって、まず当面保護期間か経過したにもかかわらず、非常に気の毒な状況にある方々は、ぜひ事実上療養が継続されるように配意してあげたい、このように措置してあるわけであります。
  19. 山本經勝

    山本經勝君 これは、局長十分御存じだと思うのですが、昨日こういう資料をお配りになった。これは、今度社へ会党提案をいたしました改正案を中心にして組み立てられた法改正に伴う予算……。
  20. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいまの資料、実はわれわれ存じておりませんですか、話を聞いてみますと、これは委員部の方からお配りしたということでございまして、提案説明資料としてお配りになったものであろうと存じております。
  21. 山本經勝

    山本經勝君 私は、今の局長お話、きわめておかしいと思う。先日労働省から持って見えた原本はこれなんです。ごらん下さい。そうしてこれと同じものがプリントになったというだけなんですよ。内容においては、私は労働省から出したものだと思うのですが、違いますか、局長。これはかつて、どなたでしたかね、お宅の課長さんが持って見えて、会館部屋で御説明になった資料なんですね。それがたまたま、同じものが調査室にあったので、委員会審議をされるからプリントにして回された、こういうことではないかと思う。少くともこれを局長さんが知らないということは私はないと思う。どうなんですか。
  22. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 二の点につきましては、今回のけい肺法改正案実施すればどのくらいの経費がかかるかというような内々のお尋ねもありまして、それに関して、私どもの方から非公式に御説明を申し上げた事実はあるわけでございます。そこで、われわれの方といたしましては、かような見地から、非公式な推算はしておりまするが、その資料をもとにされまして、調査予算でこの資料をお作りになったものと思っております。内容につきましては、これは突き合せして見ませんと、ちょっとはっきりいたしませんが、ただいま拝見いたしますと、数字等につきまして若干の違いがあるようでございます。その点につきましては、後ほど調査してお答え申し上げたいと思います。
  23. 山本經勝

    山本經勝君 それで、まず確認をしておかないと、私が御質問申し上げるのに実は底なしのような格好になって困るわけです。まず、後ほどでは困るのであって、局長さんか今おっしゃったように、労働省から要求があって出たのか、あるいはどうか、私も存じませんか、しかしながら、労働省課長さんがお見えになって、説明になったことだけは事実なんです。私が会うている。いいですか。会うて聞いているのですから。そういうことは、いいかげんなことを申し上げているんじゃないんですよ。それでまず、これは労働省から出ているのだということは間違いないですか。
  24. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) われわれの方の推算によりますと、一応書面……。
  25. 山本經勝

    山本經勝君 そういう説明を聞いているんじゃない。この資料労働省から出ていることは間違いないかということを聞いておる。
  26. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点は、ただいまちょっとこの数字を見ますると、われわれの方で推算いたしました数字と若干違っておるように思います。従いまして、私どもの方の資料がそのまま出ておるのではないと考えます。
  27. 山本經勝

    山本經勝君 調査室はおりませんか。一応確めて下さい。
  28. 大矢正

    委員外議員大矢正君) 昨日印刷いたしましてお手元に配付いたしました、改正案に伴う所要経費の概算というものの内容でございます。か、実は、残念ながら、提案者といたしましては、昨日もお答を申し上げましたように、初年度ないしは二年度まで程度の予算でありますれば、まあ百パーセントとは申しません、ほぼ見通しがつくと存じますが、何分にも平年度と言われますと、その平年度を一体いつに基準を、とるかということに発展をいたします関係上、なかなか数字をとらえがたい……。
  29. 山本經勝

    山本經勝君 ちょっと待って下さい。お答え願いたいのは、この資料がどこから出て、どういうふうになったかということを伺っておる。
  30. 大矢正

    委員外議員大矢正君) この資料は、私は、特別こういう内容のものを配付していただきたいというお願いはいたしたわけじゃございませんが、承わるところによりますと、労働省の、人員等のある程度の数を基礎といたしまして出た内容であると、こう考えておりまして、これは、調査室の方で出されたものと考えております。
  31. 山本經勝

    山本經勝君 ちょっと、労働省はこの資料一つごらんいただきたい。これは、私がいただいた資料なんですが、間違いないかどうか、ちょっと見てもらいたいですね、突き合して。これによって質問を申し上げておるので、食い違うのではおかしいです。間違いないですか。
  32. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 今、突き合せしております。
  33. 斎藤昇

    斎藤昇君 今のに関連しまして。きのう、この配付せられました資料によって、提案者からわれわれ説明を聞いたのです。ところが、この資料はどこから出たかわからぬというので、どこでどうして作ったかどうかわからぬという提案者説明では、私は、この資料によって審議することができないので、もう少しはっきりした……。
  34. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) この説明があったと思いますが、提案者の方からは、初年度、二年度は、ほぼ確実な数字をつかんで出しております。あとのやつは、調査の方から出ておるようでございますが、これは、労働省が出されたものを基礎にして出されたものである。こういうことを今大矢君が言っておるのでございます。その基礎は何ものか、どこから出たものかということか今の質問の焦点になっているものと私は思っております。
  35. 山本經勝

    山本經勝君 突き合せはすぐできるのですか、できないのですか。こういう怪文書がある。清算の基礎等について重大な問題を含んでいる。私の手元にある限り同じものか、わざわざ労働省から課長さんお見えになって、私の会館部屋で御説明いただいた資料なのです。これは、基準局から出ていることだけは確実なのです。これと、今のこのプリントを私が突き合せた範囲では、ほぼ変りはないと思う。多少金額の点で違いがあるようですけれども、もしこの資料基礎にして出されたものならば、私は、一応労働省が提出された資料だと受け取る以外に方法はないですよ。
  36. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  37. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて下さい。
  38. 山本經勝

    山本經勝君 局長さんにお伺いしたいのですが、いわゆる療養給付、これは、一応資料が来るまでに御質問申し上げておきたいのですが、今お出しになった資料によって、口答の御説明をいただきたいと思う。
  39. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕           ・……。
  40. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて下さい。
  41. 山本經勝

    山本經勝君 それでは、ほかの問題でお伺いしておきたいのですが、再三再四この委員会で、現在法律実施下におけるけい肺に対する検診等は逐次進行をしている。しかも、その実態が明らかになったのは三十一年度だけであって、今も聞きますというと、三十二年度については、正確な資料がまだまとまっておらないというお話であります。ところが、このけい肺動態は、すでに三カ年たっておりますから、その間の実態が明らかにならないことはないと思う。その点について、どういう実情であるか、御説明を伺っておきたい。
  42. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) けい肺健康診断につきましては、けい肺保護法の定めるところにより、最初の三年度は国か実施することになっております。その結果は、昭和三十年度と三十一年度につきましては、けい肺健康診断の結果は明らかになっております。そのけい肺健康診断実施いたしました労働者数は二千八万七千五百四十一名、うち正常と認められるものが二十五万二千三品七十名、第一症度が二万八千四百十三名、第二症度が三千百十三名、第三症度が千六百三十八名、第四症度が千二百三十一名、労働者異動等による審査不能の者が七百五十九名でございます。昭和三十三年度につきましては、実施対象者は約五万五千名でございますが、これは、目下本名に、地方審査が終了し、送付を受けておる者が、そのうち約万八千五百名でありました。目下その送付を受け、これによって集計実施しておるわけでございますが、その結果は、三十三年度につきましては、本年の七月ごろには一応の集計が完成する予定になっております。
  43. 山本經勝

    山本經勝君 局長さんに重ねて伺いますが、けい肺動態ですが、一応私がこの前の委員会資料の請求をしたのですが、これ一部しか持ってこない。これもやはり委員皆さんに配っておかれなければ、注文して、委員会要求したら、要求した者だけに資料をやるということはどうもけしからんと思う。私どもも、これは一つの席上でこうして院審議をするのですから、同じ資料がなければ、やはり共通の問題点の把握というものは困難であります。とかく労働省は、資料を出すことを渋られる、この点はどうなんですか。
  44. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、労働省でこういうものを出すのを渋っているわけでございませんが、全員要求なさる場合は、委員長を通じて御要求いただきますと、全員に配付をいたします。個人的な御要求については、個人的にやらざるを得ないのであります。全員に配付する必要のあるものは、ぜひ委員長を通じて御要求願いたいと思います。
  45. 山本經勝

    山本經勝君 おかしいですよ。この委員会動態を明らかにしてほしい。それに必要な資料を出して下さいということを要求した。何回も要求して、そこでやっと……今渋っておらぬとおっしゃるが、出たのが、たったこれだけの三枚のプリントなんであります。これがしかも、三十二年度については、十月までは一応明らかになっておるがという、この間お話があった。ところが、その分はついていない、三十年度と三十一年度の分だけしかついていない。ですから、さっぱり見当がつかない。しかもこれは、たとえば、ただいまお話のありましたように、四症度という者で千二百三十一名、こういう多数に上っている。そうすると、この人々があるいは療養その他の休業等の状態になっていると思う。あるいはこの三症度の千六百三十八名という多数の人々の配置転換か、何らかの措置が講ぜられるように法律上なっているのですから、そういうものがどういうふうになっておるかということが、いわゆる動態と私ら申している。ところが、三十一年、三十年の数字だけ羅列した資料しかいただいていない。これは大臣、どういうふうに考えてみても、資料を出し渋っておられるとしか受け取れない。これはどうなんですか。
  46. 石田博英

    国務大臣石田博英君) この前、多分去年の九月ごろであったと思うのですが、何か資料の件数は忘れましたが、同様なことがございまして、その節も、先ほど私がお答えしたようなことをお答えしておきました。渋っているわけではございません。要求資料を明示して下さいますならば、全長に配付いたします。
  47. 山本經勝

    山本經勝君 それはそれでよろしいですが、そこで、基準局長にお伺いしたいのですが、大体現在言われた検診の結果だけはわかりました。そうしますと、申し上げるように、当然配置転換、あるいはまた、配置転換といいますか、療養あるいは休業という実態になっておると思うのですが、そういう現在療養をしておる者の数、あるいは休業しておる者の数、または転換を勧告した者の数、そういう数字を明らかにしてもらいたいと思う。
  48. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 昨年度の十月末におきまする患者数の正確な集計がありますが、これは、労災保険法の適用を受けておる患者数は、けい肺が千百四十九名でございます。それから、けい肺特別保護法の適用を受けておる患者数が八百十七名でございます。なお配旧転換につきましては、基準局長から転換勧告を行なった者の数は、昭和三十二年十月末口現在で五十四名でございます。
  49. 山本經勝

    山本經勝君 労災保険でもって療養を受けておる者が千百四十九名、けい肺法による療養中の者が八百十七名、そうすると、合計約二千人近くなりますね。その人々は、現在すべて休業療養をしておるわけですね。
  50. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、このほかにも新しく最近入所された者もあります。それからまた、退院された者もあるわけでございまして、現在の数字につきましては、これと若干の変動があると考えております。
  51. 山本經勝

    山本經勝君 この退院されたというのはどれくらいありますか。もう少しこまかに伺いたいのですが、その退院というのは、いわゆる病気が全快をして退院することもあると思うのですが、まあこのけい肺については、まずわれわれの知っておる範囲では、なおって退院をしたというのを聞かない。そこで、法の定める療養期間が満了をして、おることができなくなって出た人、そういう人々はどれくらいありますか。
  52. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) けい肺保護法の適用を受け、二年経過したために給付が終了した者の数は、同じく十月末の調べでございますが、けい肺が七十一名でございます。
  53. 山本經勝

    山本經勝君 労災保険の分はありませんか……、これはないのだな。それから、小出しに一つずつ言わんで、もう少し実態説明してもらうといいな。死亡者がありましょう。死亡者は、今おっしゃった三十二年十月現在における数は何名ですか。
  54. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) これは、労災保険の分につきましては、昭和三十年度が死亡者五名、三十一年度が二名、それから、けい肺保護法の分につきましては、昭和二十九年度が五名であります。このような数字になっております。なお、ただいまの詳細の実態につきましては、なお正確な数字は、後刻取り調べまして、資料として一緒に、一括して差し上げたいと思います。
  55. 山本經勝

    山本經勝君 局長お話、この死亡軒なんというものは、非常にたくさん出たり、至るところで出るという関係でもないと思う。少くとも所管の直接最高責任者である局長さんが、死亡者者数を一々相談をなさらにゃならぬというようなことは、どうも解せぬごとなのですが、まあやむを得ぬといたしまして、そこで、この転換を勧告された者は、三十二年の十月現在において五十四名ですか。
  56. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) さようでございます。
  57. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、少くとも三症度、あるいは二症度の中でもそういう必要がある人々があると思うのですが、三症度だけを見ても、千六百三十八名という多数がある。その中のわずか、五十四名が勧告をされたということは、一体どういう原因があるのか。その点を、局長の方から詳細な説明をいただきたいと思います。
  58. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 配置転換の勧告をいたしまする場合には、その基準は、けい肺対策審議会等にお諮りいたしまして、それによって転換の勧告を事実上いたしておるわけでございますが、これにつきましては、御当人の御意見、それから労働者側の御意見というようなものを事前に伺いまして、そうしてその十一で転換の勧告日を行なっておるわけでございます。従いまして、それによって勧告を行なった者の数字は五十四名になっておるわけでざいます。
  59. 山本經勝

    山本經勝君 さらにお伺いをしたいのですが、審議会に諮って御決定になる転換の勧告ですが、この転換の必要があっても、あるいは本人がつまり粉塵作業から離れて、いわゆるけい肺症度進行を阻止するような方法を本人が期待しておっても、少くとも転換をすることによって収入は低下するという実情もあると思う。そういうことのために転換を好まぬというようなこともあるやに聞いておるのですが、そういう点は、局長どうお考えになっておりますか。
  60. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) さようなことはあると承知しております。
  61. 山本經勝

    山本經勝君 これは非常におかしい。そういうことはあると承知をしておる。あるということを承知しておるということは、やむを得ぬということで見送るというお心持なんですか。この法律の精神は、少くとも基本的には予防にあったと思う。あるいは、今改正しようとする問題点につきましても、ただ、かかった患者がまあ生きておる間療養を見てやろうと、あるいは給付を保障しようというようなことの消極的なものを実は苦さんが求めておらない。むしろ粉塵作業によってこうした病気にかかって、死以外にないというような状態に陥るよりも、でき得るならば粉塵作業場を十分管理することによって予防をしたいということが根本だと思う。ところが、不幸にしてそうした状態に陥ったなれば、さらに症度進行しないうちに職場を転換することによって、粉塵から離れて、幾らかでも安全な作業につかせたいという基本的な私は態度でなくてはならぬと思う。ところが、そういうものはありますよというようなのんきな話では私はないと思うのですが、これは、きわめて局長さんの御答弁はけしからんと思うのですが、それはそれでよろしいですか。
  62. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、この配置転換の勧告を行う場合に、どのような方法をとったらいいかということを労使中立三者構成のけい肺対策審議会に御相談をいたしまして、やはりこのような配置転換の勧告を政府がする場合には、労使間にまず相談して、労使間で転換の勧告をすることに、受けることについて異議がないという者につきまして、配置転換の勧告を行う。このような措置をきめているわけでございます。ただ、実際問題といたしましては、この配置転換を行いますために、転換前の賃金と転換後の賃金におきまして、相当の開きがあることは事実でございまして、この点はしかし、現在のけい肺保護法は、転換の場合には、転換給付として  一カ月の転給付を支給する、このようになっております関係で、われわれの方といたしましては、現行法のもとにおきましては、配置転換の勧告を行う場合には、今のような取扱いをけい肺審議会にお諮りいたしまして、それによって勧告を実施しているわけでございます。
  63. 山本經勝

    山本經勝君 今のお話は一応実態かもしれけせん。ところが、こういうことがこの法が成立する当時にも論議をされ、予想されだからこそ、付帯決議の第一項には、法第十条指定の転換給付についてはすみやかにその増額措置を講ずべきことというのがついておったから、私は、審議会に諮っておられるが、一向に結論が出ておらないという、このなまぬるい労働省の態度、基準局当局の態度というものは、まことに法の精神を無視していると思うのですが、そうではないのですか。
  64. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、国会付帯決議趣旨もありまして、われわれとしては、これを尊重して、この具体的実施考えているわけでございますので、これにつきましては、やはりけい肺保護法の中に転換給付を一カ月、このようになっているわけでございますから、これを増額するというようなことは、やはり法律改正の問題になるわけでございまして、この点につきましては、けい肺に関する重要な事項は、けい肺審議会意見を聞くということにけい肺保護法の中にも明記されておりますので、われわれれとしては、けい肺審議会にこの問題についてお諮りをしているわけでございまするが、残念ながら現在まで意見が一致せず、結論が出ておりませんわけでございますが、われわといたしましては、なるべくすみやかにこの結論が出てくることを望んでいるわけであります。
  65. 山本經勝

    山本經勝君 これは、局長さんが望んでおられても、やはり進行するように、推進をされる私は努力が十分ではなかったと率直に申し上げざるを得んのです。これは、たとえば去年できた法律というようなことなら、これは多少無理な注文かもしれない。しかし、これは、すでに三十年に成立をみて実施になっている。その間すでに三カ年間を経過している。しかも、検診がどんどん進行して、非常に多数の患者のあることが明らかになり、すでに転換を必要とする、少くとも法の精神にのっとって考えるならば、早く転換をしたほどいいと思う。ところが、一応現在の基準にのっとって転換を勧告するとしても、ただそれが、けい肺審議会に諮ってやるというような手続的な点はやむを得ない、一応法律があるのですから、やむを得ぬといたしまして、少くともそういう状態においておくのがいいという考え方でやむを得ぬというお考えですか。私は局長さんにはっきりと伺っておきたい、これが特別保護法として制定されたゆえんのものは、初めにも申し上げましたように、少くとも人道上から見て、その職場か粉塵を防止することができなければ、いやおうなしに、その職場に働らいている者は、ある期間たつというと、けい肺にかからざるを得ぬという実情のもとに置かれている。きのうちょっとほかの同僚委員からも御質問がありましたが、普通に起る災害等とは全然意味が違う。あるいはその予防措置ができないならば、かかったならばすみやかに転換することによって、症度進行を防ぐという次善の措置をとられるのが当然だと思う。しかも、転換がわずかに二千名に近い多数の中で五十四名ですか、少数の人しか勧告されておらない。これは、本人が好まない。好まない理由は何かといえば、給与の低下がおのずから現われてきて、生活か困難になってくる。あるいは家族の扶養が困難になるからというに違いない。そのことは、局長もお認めになっている。そうしたら、法の精神にのっとって考えるならば、すみやかにこうした転換が可能になり、また、進んで転換をして健康を保持したいという心持が現実化するように指導し、あるいは救済をしていかなければならぬ。そのことか私は基本的には法の精神だと思う。その法の精神はどうともあれ、事務的に考えて、法の条文通りのことをやっておけばいいのだというお考えなのか。そこら辺が度の改正案審議する場合の非常に重大なかぎになってくるだろうと思う。一体これは、局長さんとしてどちらをお考えになっているのか、伺いたい。
  66. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) われわれといたしましては、現行法のもとでは、この規定を実施するより仕方がないわけでありまするが、現行法の内容につきましては、いろいろまだ改善を要する点が相当あるように思っております。ただ問題は、この法を実施いたしましたときに、その予算措置をどうするか、あるいは使用者に対する負担をどのようにするか、このような問題とからみ合っている問題でございます。従いまして、この問題につきましては、目下けい肺審議会等にお諮りして、検討を願っておるわけでありますが、われわれとしては、ただ単にそれだけにおまかせするということではなしに、それと並行いたしまして、現行法のさらに改善を要する点につきまして、あるいは事実上の措置によって補うことも必要でございましょうし、あるいは法律改正を今後要する問題もあろうと思うのでありまして、その点につきましては、われわれとしても積極的にこの内容の検討をしておるわけであります。
  67. 山本經勝

    山本經勝君 局長さんが今おっしゃった、先ほどもお話があったのですが、現行法のもとではということなんですが、現行法が不備であるからこそ、改正案発議者によって提案をみて、この委員会審議をしている状態なんです。そうしますと、今の局長さんのお話ですと、改善を要する点はお認めになっておりながら、審議会にぽっとまかして、そこでああでもないこうでもないとこねくり回して時間がたつよう、そういう状態に放置しておくことがいわゆる労働省のとるべき当然の対策ということではないことは、お認めになるでしょうね。
  68. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 審議会にお諮りいたしまして、法律改正の問題については御検討を願うと同時に、われわれといたしまして、たとえば、先ほど申し上げました、現在二年の経過期間が切れる、しかもなお気の毒な状態であって、さらに療養することが実際できないという力につきましては、法律によらないでも、事実上の措置といたしまして療養を継続させる、このような方途をあわせて講じておるわけであります。
  69. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、今の局長さんの言業をそのまま引用して考えてみると、療養期間が切れた人々に対する措置というものは、どういうことが具体的に講ぜられておりますか。
  70. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、労災保険法の保険施設費を利用いたしまして、事実上労災保険の保険施設として療養を継続させる。このように事実上の措置を講じておるわけであります。
  71. 山本經勝

    山本經勝君 実際問題について考えて参りますと、本人はけい肺にかかっている、療養をしている。そうすると、療養給付は、一応療養を継続させる状態である。ところが、その家族というのは一体どうなるのでしょうか。家族がある場合には、家族はどうなるのです。
  72. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、特別保護法の適用を受けまする前に、千三百日の打切補償費を支給し、そのあとで、さらに二年間療養の給付と休業の給付を継続しておるわけであります。そこで、その二年が切れた後におきまして、事実上さらに気の毒な状態にあって、療養が必要である、このような方に対しては、事実上の療養を継続いたします。御家族の問題につきましては、これはただいまの打切補償、あるいはそのほか、さらに国民健康保険その他の社会保険施設費等ともにらみ合せ、このような問題について、われわれとしては、御家族の生活の維持につきましても、今のような総合的な運用によりまして、遺憾のないように期したいと考えておる次第でございます。
  73. 山本經勝

    山本經勝君 これは局長、打切補償というのは、あなたの方は、たとえば労働省が所管の省として、あるいは基準局長さんの方から別に恵んでやった金じゃないのですね。くれてやった金ではない。法の規定に基いて、打切補償として受けるべきその金を生活費に引き当てるということは、一体どういうことなんですか。つまり、家族の生活扶助に引き当てるということは、政府のとるべき政策ですか。
  74. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) けい肺に罹患されて療養しておられる方の療養につきましては、ただいま申し上げましたように、事実上の療養措置を継続する、このようにしておるわけでございます。その他の問題につきましては、一般の社会保障の問題とあわせまして、今後解決されるべき問題であると考えております。
  75. 山本經勝

    山本經勝君 この大体打切補償を取るということは、これは、その労働者にとっては、もう最終のものだと思うんです。しかも、いずれ健康を回復して、再び職場に復帰するか、あるいは新しい職場について生活の基盤を確立していくという見通しを持たぬこれは患者ですね。そうじゃありませんか。今申し上げたように病院で療養これ努めて、回復をして、再び元の職場に復帰するか、あるいはそうでなくて、新しい職場にでもよろしが、職場について、生活の基盤を確立することのできる患者であるかどうか、その点はどうなんですか。
  76. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) けい肺に罹患された患者の方につきましては、大部分は、これは元の職場に復帰することは不可能な患者であると考えます。
  77. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、その他の職場には、これはつけますか。
  78. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 自宅で軽い作業等をされる程度に回復される方はあると思いますが、事実問題といたしまして、元の鉱業的な部門に戻って仕事をされるということは、まず現在ではむずかしい方がほとんどであると、このように考えております。
  79. 山本經勝

    山本經勝君 この軽い作業についておる、先ほどお話になった、退院した人は何名でしたか、七十何名でしたか。七十一名が三十二年十月現在で退院をしておられる、その退院をしている人々で回復した人、それからさらに、軽い作業に従事しておられる人、そういうものの実態はどうなっておりますか。
  80. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 先ほど申し上げました七十一宿という数字は、給付が終了された方でございます。二年間の期間が切れた方の数字でございまして、このうちの一部分は、そのまま療養を継続されております。それから一部分は、自宅にお戻りになりまして、自宅で療養をしておられる、このようなことになっておるわけでございます。
  81. 山本經勝

    山本經勝君 その自宅へ帰りまして、軽い作業をやっていると言われた、それは何名ぐらいおりますか。
  82. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) その点につきましてはこれはいろいろ分類されるわけでございますが、寝たきりでおらなければならない者、寝たり起きたりして自用を弁じ得る者、あるいは家庭の雑用が少しはできる者、それから、軽作業可能あるいは従事中の者、このように分けられるわけでございますが、今通院しておられる方の患者については調べた資料がございますが、これは、四百七十名のうち、寝たきりで看護を受けておられる力が四名、寝たり起きまして自用を弁じ得る方が百八十八名、家庭の雑用が少しはできる程度の方が二百四十三名、軽作業可能または従事中の方が二十九名、普通労働に従事中の方が六名、以上のような数字になっております。
  83. 山本經勝

    山本經勝君 寝たきりで動けぬという人は四名で、死を待つばかりという姿で、それから自用というのは、手っ取り早く言えば、御飯を食べたり、トイレに通ったりすることができるという程度なんですね。要するに、生活のために、あるいは家族がしておる家庭の作業を、あるいは仕事といいますか、そういうものを手伝うということは不可能な状態だと考える、そういうのじゃありませんか。
  84. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) さようでございます。
  85. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、軽い作業というのが二百四十三名あると言われるが、これはいわゆる、むずかしく言えば、生産的な仕事といいますか、何らかの賃金報酬等を得られる作業をさすのか。そうではなくて、たとえば周囲にある畑をいじくったりするような程度のものなのか。そこら辺はどうなんですか。
  86. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) これは軽作業でございまして、自宅の付近の草をむしったり、あるいは、何と申しますか、余暇を利用して、たとえばかごを編む等の手芸をやられるというような程度はできる、この程度のものでございます。
  87. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、大体今の数字を合せますというと、約四百数十名になるようですが、この数字は、結局、帰ったけれども、退院はしたけれども、要するに生産的な仕事に従事をして、自分の家計をささえることは不可能だということに相なると思うんですが、これは間違いありませんか。
  88. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) われわれが調査いたしましたところによりますと、以上のような数字でございますから、大体お話通りだろうと思います。
  89. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、これは、直接家族が手をかけて、いわゆる看病をするという状態の者は四名程度と、こう見ることができるでしょう。しかしながら、その状態は、家庭に帰って、その家庭の家族から援護を受けて、辛うじて命をつないでいるという状態に置かれている、こう考えざるを得ぬ。そうしますと、これらの生活問題というものが大きく浮び上ってくる。職場に復帰できない。あるいは新しい職場につく方法もない。またできない。で、辛うじて自分の身の回りのことをする程度、あるいは自分の気なぐさみに畑をいじくったりする、あるいは手芸をしたりする程度のことしかできない。こうなりますと、せっかく療養をしておって、療養期間が切れて、しかも自宅に帰った、退院をしたというけれども、それは重大な問題だと思う。これは、自分が好きこのんでなったんじゃない。災害とはいえ、明らかに、この職場に継続的に作業を続けておるなれば、けい肺にかかるであろうということが予想される所におって、そうしてけい肺にかかって、そうして法はせっかくあっても、これらの人にあたたかい手を差し伸べて援護することができない。あるいは保護することができない。であればこそ、この法改正というものは、まさに必要に迫られている、こういうことになってくると思うんですが、こういう状態で、なおかつ、この法改正審議会の答申を待ってというなまぬるい態度でおられる局長さんのお考え方は、どう考えましても解せないんです。これは、少くとも、法の条文あるいは規定等に照らして、事務的な処理をする機関であると労働省をお考えになっているか。基準局をお考えになっているか。そうでなかったなれば、少くとも積極的にこれに対する対策を推進する責任基準局長さんは帯びていると思う。そうでなかったら、いわゆる労働基準を確立して、そうして労働者の生活を安定し、向上させるという大理想は、ただのから念仏にひとしいと思いますが、局長さんはどうお考えになりますか。
  90. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) その点につきましては、われわれも、人道的な観点から、このけい肺に罹患されました患者の方の援護措置を万全ならしめ、さらにこれを今後も向上さしていくということは、これはぜひ必要であると考えております。ただ、その場合におきまして、これをけい肺法改正によって行なって、現在の体系の、国庫が二分の一、使用者が二分の一というような負担でいくのがいいか、あるいは社会保障的な見地からの考え方がよいのであるか、あるいは、それと関連いたしまして、けい肺のほかに、一、二の例を申し上げてみますると、たとえば両手両足が災害によってなくなった方、あるいは両眼失明の方、このような方に対するところの労災保護措置との均衡問題はどうであるかというような点につきまして、検討をしなければならないと思っております。われわれとしても、このような、ほんとうに産業災害のために非常なお気の毒な目に会っておられる方々の援護措置をさらに向上させるということは、われわれも熱望しておるところでありまして、この点につきましては、十分に検討を続けるつもりでございます。
  91. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連。一言だけ。私は、その熱情を持っているという、不治の病気であり、災害であり、内容をよくして、何とかしたいという気持を持っていると、先ほどから私はこう聞いておりますと、どうも十分に理解ができないのは、三年前にできて、付帯決議もあって、必要だということを今基準局長がここでおっしゃるなら、なぜ三年の間に、必要な分の労働省改正案をお出しにならなかったか、いまだに審議会結論が出ないというようなことで三年の間、それは私は、もっとも、むずかしいと言われればそうかもしれませんけれども、こういう具体的な問題だから、そう三年もかかって結論が出ないという問題じゃないと思う。それをここでは答弁して、いかにも改正して、守らなければならぬということをおっしゃるけれども、具体的事実としては、今日三年たって、まだ審議会結論が出ていないというようなことが現実にここで起きながら、あたたかい気持を持っているとか、そうやろうと思っているとかいうようなことは、私は、これはまあ青いわけにすぎないと思うんだ、僕は横で聞いていて。なぜもっと早く今まで処置を講じなかったか。今ここで、改正が必要な段階に来て、それで、それに対する言いわけとして、われわれも検討いたしております、何のかんのと、そういうことじゃ、国会審議というものに対して、特にこの付帯決議までつけた問題に対して、国会軽視と言われてもしょうがない事態に来ているのじゃないか。私は、先ほどからずっと聞いていて、あまりそれは言いわけがましすぎるじゃないかということを、私は特に感じるのだけれども、これは、労災保険というものは、たとえば、今の負担の問題についてもお話がありましたね。労災の関係では全額事業主が負担、これは半額負担ですけれども、しかし、そのようにして特別の不治の病で、負担になるから、国家が半分負担するということで、これには社会性というものがだいぶ来ているわけです。だから、そういう問題の結論にしても、労働省は、専門家ばかりたくさんおいでになるのだから、私は、ここへ来てどうも言いわけだけを聞いているような感じを持つのですが、これは私は、今のような質疑に対する答弁じゃ、これはなかなか納得できないと思うのです。だから、この法案の必要性というものは、ここでほんとうに法案を出して実現しようという者に対する答弁としては、まあ基準局長は、三年間おられたどうか知りませんけれども、しかし、労働省全体としては、これはあまりこの問題に対して、今何と言われようと、三年も、それも付帯決議をつけたものを今までほうっておいたということは、これは何と言われても、言いわけがましすぎやせんかと思う、どうですか、その気持は。
  92. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいまいろいろおしかりを受けましたが、私といたしましては、昨年着任以来、この問題については、全力を傾注しておるつもりでございます。そこで、法律改正の問題につきましては、これは、けい肺審議会に諮らざるを得ないわけでございまして、その点につきまして、目下検討願っているわけでありますが、ほんとうに気の毒な方で、二年の保護期間が切れたというような方については、さしあたり療養を継続する措置を事実上講ずるというようなことをあわせまして、私としては、最善を尽したいと考えておるわけでございます。
  93. 山本經勝

    山本經勝君 資料できますか。そうすれば、資料が来ましてから、もう少し中身について伺っておきたいんですが、しばらく……。
  94. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて。   〔速記中止
  95. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて。  本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。
  97. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、職業訓練法案を議題といたします。質疑を願います。
  98. 田中一

    田中一君 昨日に引き続いて、二、三の点をお伺いいたしますが、きょうは、文部省からだれか見えておりますか。
  99. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 間もなく見えます。
  100. 田中一

    田中一君 昨日伺ったうちの百二十四という職種のほかに、必要においては伸ばそうというような御答弁があったように思いますが、とりあえず事務当局として考えておられる職種はどういうものであるか、伺いたいと思うのです。
  101. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 昨日大臣からも御答弁申し上げましたように、とりあえずの措置といたしましては、従来からの百二十四職種をそのまま踏襲いたしまして、その後、新たにどのような職種をつけ加えるべきかどうかという点につきましては、中央に中央職業訓練審議会等も設置されますので、その辺の御意見を十分拝聴いたした上で、必要に応じて逐次追加いたして参りたい、こういうふうに考えております。
  102. 田中一

    田中一君 そういたしますと、ある職種の労働者なり、あるいは事業主が、   〔委員長退席、理事山下義信君着席〕 自分の職種を入れてほしいというような意向を持ちましても、それは中央審議会の方に申し出るのか、あるいは労働省の方に申し出るのか。その認定は、どういう形でなさるのか。
  103. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) そういった、具体的にこの職種をつけ加えてもらいたいという希望があれば、中央におきましては当然労働省に、それから、地方におきましては、この行政を担当することになります都道府県の方に希望を出していただきまして、それを都道府県なり本省で検討いたしまして、ただそれを実際に取り上げるべきであるかどうかという点について、職業訓練審議会意見を聞いて決定する、こういうふうになっております。
  104. 山下義信

    ○理事(山下義信君) 田中委員に申し上げますが、文部省の政府委員出席しました。内藤初中局長出席いたしております。
  105. 田中一

    田中一君 次に、第二十六条の技能検定と受験資格というものに対する政府の意向は、どういう基準と、それからどういう試験によってきめるか。
  106. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 受験資格につきましては、第二十六条で規定いたしておりますが、その一つは、この訓練法によって定められておりますところの「公共職業訓練又は認定職業訓練」、認定職業訓練というのは、事業内の訓練でございますが、このどちらかを修了した者で、この公共職業訓練と認定職業訓練とは、それぞれの訓練の期間も違いまするし、それから、職種等も当然異なって参りますので、その訓練の期間の長短、それから、職種の内容に即応いたしまして、さらに具体的に、たとえば、公共職業訓練で一年の訓練を受けた者は、その後何年の実習を経た者が受検資格を受ける、そういうふうな細部につきましては、この第二十六条第一号によりまして、労働省令で具体的に定めて参るわけでございます。それから、第二号の方は、「前号に掲げる者に準ずる者で政令で定めるもの」。それで、第一号だけで参りますると、この訓練法による公共職業訓練か認定職業訓練のどちらかを受けた者でなければ、技能検定を受けることができないことになりますので、それでは不均衡が出て参りますので、この法律による訓練を受けない者であっても、たとえば、旋盤工として五年なり十年の実際の経験を持っておる、そういう人が技能検定を受けたいというものがあります場合は、一号に準じて受検資格を与えていく方が適当ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  107. 田中一

    田中一君 そうすると、ことごとく政令による認定ということで理解してよろしいんでございますね。  それから、国が法律によらないで訓練している技能者、たとえば、建設省にいたしますと、予算を相当取ってやっておりますけれども、機械を操縦する技能者ですね。何といいましたか。建設事業開発青年隊といいましたか、これらの対象は、どういう認定を使われますか。
  108. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) そういった、法律なり一つの制度の上に立たないで、いろいろな訓練が国なりあるいは地方団体なりその他民間におきまして、非常にバラエティを持って行われておるわけでございますが、私どもは、この立法の精神から考えまして、できるだけ広範囲に受検資格を与えて参るように考えていきたい。ただし、この受検資格を与えるにつきましては、受検資格を持っておるというふうに認定できるだけの基礎がなければ、当然認めるわけには参りませんけれども、基本的な考えとしては、できるだけ広く受検資格を与えるように考えて参りたい、こういうふうに考えております。
  109. 田中一

    田中一君 たとえば、その親方が指導員の資格を持っておる。そこに、まあ年期制度はございませんけれども、それに類似した雇用契約といいますか、雇用契約なしでもかまいませんが、それらの君たちは、どういう形で考えておられるんですか。
  110. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 第二十六条第二号で予定しておりまするものは、雇用契約のあるなしは考えておりません。雇用にあろうとなかろうと、その点は無関係でございます。
  111. 田中一

    田中一君 そうしますと、指導員が自分の仕事をする作業内で日々訓練をして、三年なり五年なりたって技能を修得した者は、当然その対象となるというように理解してよろしゅうございますか。
  112. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) そういったような、ただいまお話のあったような状態において、三年なり五年の実際の訓練を受けておったということが実際上確認できるならば、そういう者も、当然受検資格を得るようになると思います。
  113. 田中一

    田中一君 その親方が指導員の資格がなくして、しかしながら、もう数十年の経験を持っている職人が、今のような形式の青年をうちに入れて訓練をした場合には、どういう認定をいたしますか。
  114. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 第一号の方の系統では、職業訓練指導員の資格を持った者でないと、訓練を担当できないことになっておりますから、第一号の方は当然そういうことになりますが、第二号につきましては、そういう制限は一切ございません。
  115. 田中一

    田中一君 そういたしますと、もう一応の技術を持っておる者ならば、認定によって受検資格があるんだというように理解してよろしゅうございますね。
  116. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 先ほどもお答え申しましたように、第一号に準じて取り扱うわけでございますので、第一号の方に準ずるだけの実際上の訓練を受けておったということが確認できることは、どうしても最小限度の前提条件となると思います。
  117. 田中一

    田中一君 その確認の方法は。
  118. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) これは、ただいまもお答え申しましたように、非常に各種各様の訓練が行われておるわけでございますので、概括的に答弁することはなかなか困難でございますけれども、その実情を調べまして、その具体的な実情調査の結果、第一号に準ずるに値するという認定が得られました場合は、これを第二号で受検資格を与えていきたいと考えております。
  119. 田中一

    田中一君 その認定の基準は、どういう範囲のもので認定をするかということです。これは、あなたはよく大体においてわかっていると思いますけれども、末端に参りますと、そうはいかなくなってくるんです。
  120. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 一般的に申しまして、一番客観的な基準基礎となりますものは、経験年数であろうかと考えております。
  121. 田中一

    田中一君 そういう具体的な御答弁を願えれば、はっきりわかるんです。末端に参りますと、法文をそのままの解釈をいたしますと、あるいは条例その他でむずかしい考えを持ちますと、なかなかそれを認めてくれないことが多い。最近、数々指導員の免許を与えておる基準局では、これは、大幅な理解を持っておる所もございますけれども、地方に参りますと、えてしてそういうことがある。ことに労働組合に加入しておる者がそういう申請をいたしますと、石田さんの方に属しておる知事さんがおる所では、往々にして認定をきびしくするというようなことも実際にあるわけです。
  122. 石田博英

    国務大臣石田博英君) そんなことは……。(笑声)
  123. 田中一

    田中一君 そういう点は、十分に公平にやるように御指示願いたいと思うのです。  それから、文部省に伺いますが、この職訓法に盛られておる考え方と学校教育の限界です。それを一つ明確にしていただきたいんです。文部省の考えておりますところの意思を明確にしていただきたい。ここに資料としてきょう配付されましたところの「高等学校工業課程科目と技能者養成教習事項基準との比較」というのが出ております。この内容から見て、これはまあ、幸いに、非常に労働運動に理解のある労働大臣がこれを一応提案したわけでありますけれども、ひょっといたしますと、文部省との間に権限争い的なものが生まれる危険が多分にございます。そこで、この内容をごらんになりまして、文部省が教育の面において担当する面と、
  124. 山下義信

    ○理事(山下義信君) お静かに願います。
  125. 田中一

    田中一君 この職訓法によるところの訓練との間に、正しい解釈をお互いに持ったからこそ提案されたものと思いますけれども、当委員会の議事録に残す必要がございますから、その辺を詳細に、明確に御答弁を願いたいと思います。
  126. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 文部省でいたしておりますのは、いわゆる初等普通教育、中等普通教育あるいは専門教育というものが中心でございますが、主としてそこには年令で、まず、小学校を出てから中学校で満十五才になる。それから、十五才から十八才までが高等学校でございます。御承知の通り大学が四年、こういう建前になっておりますので、一つはまず年令の点が問題になるかと思います。それかと、内容的に考えますと、文部省でいたしておりますのは、一般的、基礎的な教育でございます。もちろん、大学に参りますれば、職業的あるいは専門的教育もございます。そこで、労働省でお考えになっていらっしゃる分は、むしろ現場に即した応用的な技術、こういうものが中心になろうかと思うのであります。  特にこの法律で規制されておりますのは、一般的に申しまして、この一つは事業内の職業訓練でございます。この場合、企業と非常に密接な関係がございます。ですから、文部省でやっておりますところの学校教育のような、一般的な基礎的な教育でなくして、むしろ企業に役立つような、応用的な教育になろうかと思うのです。この部門の中でも、学校教育にある程度相当する部分があろうかと思います。私どもは、学校教育に相当する部門は、できるだけ学校教育とみなすように措置いたしたいと考えまして、その面の重複は避けるようにしたい。  それからもう一つ、公共職業訓練所でおやりになる教育でございますが、これはやはり現場の、社会の実際面から考えて、最も職業の需要が多いもの、こういう点から特に選ばれた職種を訓練させるわけでございます。この点は、学校教育におけるほど基礎的一般的なものではないと思いますこういう点で、むしろ現実の社会で最も必要とせられているような、単能工と申しますか、そういうある意味では狭い技術だと思います。こういう点で、学校教育とは私ども重複はないと考えておるのでございます
  127. 田中一

    田中一君 そこでかりに重複がないとはいいながら、ある面は重複している面が相当なくてはならないのです。で、定時制の専門の高等学校一年なら、一年で終える。そうしてそれが、何らかの都合で、あるいはまた、定時制の高等学校を出るよりも、かえって職業訓練所に入った方が、同じ三カ年でありますから、卒業後の自分の社会的な安定というものが確保されるのではないかというような考えを持って、一年を修業してやめて、そうして職業訓練所に入るといった場合その、何と言いますか、交流して、高等学校を一年やったから、今度職業訓練成では二年に編入されるというような形の交流は考えておりますか。また、この法律ではどうなっておりますか。
  128. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) ただいまの定時制の中で、定時制で一年やったといいますけれども、定時制の一年というのはどういう単位をやったのか、実は、高等学校全体で八十五単位になるわけです。その八十五単位をどういうふうに取るかということは、各学校できめておるわけです。そこで、何単位を取ったから、今度は職業訓練所の場合に、それが何単位に相当するかというようなことは、現在のところ規定はございません。しかし私どもは、定時制に通っている子供たちで、事業内の職業訓練を受けておる者が多いと思います。こういうようなものは、今後は何単位か職業訓練所で受けたものを高等学校の教育とみなすようにして、できるだけ高等学校の卒業資格を与えるように措置いたしたいと考えまして、ただいま学校教育法の一部改正国会にも提案しておるような次第でございます。
  129. 田中一

    田中一君 通信教育の場合は、どう考えておりますか。
  130. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 通信教育につきましても、この定時制教育と通信教育、これを一つにいたしまして、そこで、今申しましたように、職業訓練の方で取った単位は免除いたしまして、定時制と通信教育であわせて取れるように措置いたしたい。で、通信教育自体につきましは、従来は普通課程を中心にしておりましたけれども、最近、特に科学技術教育の振興という点から、職業過程を大幅にふやして、通信教育だけで卒業ができるように措置いたしたわけございます。
  131. 田中一

    田中一君 教育法第四十四条の改正がこの国会を通らぬ場合にはどうなりますか。
  132. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 私どもは、なるべく早い機会にそういうふうに措置したい、ですから、この国会で時間が間に合わんければ、次の国会になるべく早い機会に御審議いただきまして、早く成立するように希望いたしまして、勤労青少年教育が充実できるようにいたしたいと考えております。
  133. 田中一

    田中一君 通らない場合でも、この法律案が通った方がいいと、こういう御希望ですね。これは労働大臣伺います。
  134. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それは、五円の品物が買えないからといって、一円の品物をあきらめるというわけにはいきませんので、やはりこの学校教育法の改正が通らなければ、完全とは言えないかもしれませんが、やはり本体の法律は、ぜひ通過さしていただきたいと考えております。
  135. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 ただいま内藤局長説明団によりますいわゆる定時制高等学校の問題ですが、所によって、定時制教育も、前期、後期の二つに分れている所がございます。その前期を取った場合において、後期の単位を訓練所の方で取るように措置を講ずるというような便宜が得られないものでしょうか。どうですか。
  136. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 実は、学校教育の体系と、今こちらで御審議願っておる職業訓練の体系は違うわけでございます。これをどういうように関連を持たせるかということは、今後の私どもの課題だと思います。私どもといたしましては、勤労青少年教育機関、ことに勤労青少年教育機関で学校教育に準ずるようなものは、できるだけ広く学校教育の一環として取り入れたい。それによって、残ったものを定時制なり通信教育で補充をいたしまして、高等学校の資格を付与いたしたい、かように考えておるのでございます。
  137. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 そういたしますと、今御説明によりますと、必ずしもその後期というものを訓練所の方に取り得ないということはないとも言えるのですね。
  138. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) その辺は、きめ方の問題だと思いますが、特に私どもとしては、高等学校に準ずるような教育施設というものを指定いたしまして、その指定されたところで受けた単位は、高等学校の教育の一部とみなされる。そこで、今お尋ねの前期、後期の点でございますけれども、後期の部分が全部その施設で教育できるかどうか、これは私、疑問だと思うので、やはりある程度残り得ると思う。その残った分は、何らかの形で、定時制なりあるいは通信教育なりで補わなければならないかと考えるのでございます。
  139. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 そうしますと、通信教育なりで補えれば、そういうことはあり得るということに了解してよろしゅうございますか。
  140. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 全部の施設がそうなるかどうか知りませんけれども、高等学校の教育に準ずる施設につきましては、そういうことが可能でございます。
  141. 片岡文重

    ○片岡文重君 大体総括的な質疑は、田中委員からされたようですけれども、なお、この法案を拝見すると、私どもが知りたいと思う具体的な点、さらに相当重要だと思うような点が、非常に多く政令なりあるいは省令にまかされております。このまかされておるところの政令なり省令の内容はすでにできておるのかどうか、案が。まだ案までいっていないとしても、せめて骨子ぐらいはできておるのかどうか。まず、その点からお尋ねしたい。
  142. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) この法の施行のためには、御承知のように、非常に技術的な、専門的な内容を持っておりますために、その詳細な点は政令なり省令に譲らざるを得ない、こういう事情がございますので、相当程度のものが政令または省令に譲られておるわけでございますが、その政令、省令の大体が、労働基準法あるいは職業安定法の職業訓練に関する部分をこの訓練法の方に踏襲するわけでございますので、大体の骨組みはあるわけでござい的に一体化して、職業訓練法を実施しよう、こういうことでございますので、そのまま踏襲したのでは意味がございませんので、その点につきましては、職業訓練審議会に諮問をいたしまして、万全を期して参りたい、こういうふうに考えております。
  143. 片岡文重

    ○片岡文重君 この法律は、国会成立すると、たしか六ヵ月以内に実施するようになっておるのですが、昨年のけい肺審議会の例も、これは、労働省で諮問する各種審議会審議状況というものは、はなはだスピーディだとはちょっと申し上げかねるような状態だが、この職業訓練法については、そういう点、この法実施までには十分間に合い得る自身がおありになると思うのですが、この点いがかですか。
  144. 石田博英

    国務大臣石田博英君) この問題は、純技術的な問題が非常に多いわけでありまして、それぞれのお立場によっての意見の対立ということがほとんどない問題でありますから、今まで問題になりましたようなことはない、自信を持って、すみやかに成案が得られることと考えております。
  145. 片岡文重

    ○片岡文重君 訓練を受ける生徒の問題については、だいぶ質問が進んでおりますが、この生徒を訓練生を訓練し、指導をする方の職員の待遇等について一、二お伺いしたいのですが、たとえば、東京都の例などを見ますると、私の聞いておる範囲では、約四百名のうちに、正規の職員が百七十名しかおらぬ。あとは臨時職員でやっておる。しかも、この二百三、三十名の臨時職員のうらに、時間講師がその大部分である。こういうようなことでは、十分な身の入った指導訓練は行われないのではないか。やっぱりこの訓練所における職員が、親身になって若い人たちをめんどう見てくれなければならぬのに、大部分が臨時職員であったり、時間講師であったり、しかも、これが非常な安い給料で使われておる。ひどいのになると自分の給料。その教える方の給料よりも、卒業していった訓練生の方が初任給が高かったりなんかしておる。こういう例が、実際には、東京都にはあるそうです。こういうことでははなはだ心もとないと思うのですが、この指導所の指導員の待遇の改善、ひいてはこれは素質の向上ということにもなってくると思うのですが、こういう点について、大臣はどういうようにお考えになっておられるか。現状の把握と、それから今後の措置について、具体的に御所見を伺いたいと思います。
  146. 石田博英

    国務大臣石田博英君) この職業訓練を大幅に実施いたしますにつきまして、一番困難を来たしておりますのは、指導員の問題でありまして、量、質ともに望ましい状態でないのであります。特に、御指摘の通り、待遇等がよくない実情もありまして、指導員を引き抜かれるというようなことも非常に多くございます。そこで、指導員の待遇を改善する、身分上の地位を安定せしむるということがまず第一必要でありますとともに、指導員の指導能力の向上を確保する必要もあると存じまして、本法案の中でその規定を設けてあるわけであります。ただ、全部を本職員にするという問題であります。がこれは、単に予算上の問題その他ではなくて、教科科目その他の関係から申しまして、特に専門家を招請しなければならないというような事例もございます。必ずしも、時間職員あるいは臨時職員がおるということが、それだけをもって全部が待遇劣悪な事情にはならない場合もありますが、そういう特殊な例を除きましては、やはり身分上の地位の安定と待遇の改善を考えなければ、本法律案の目的を達成することができない、こう強く考えておる次第であります。
  147. 片岡文重

    ○片岡文重君 抽象的な点では、それでけっこうだと思うのですが、結局、素質を高めていくということになれば、資格等に厳格な規制を当てはめるということも一つ方法ではありますけれども、やはり優先するものは待遇の面だと思う。   〔理事山下義信退席、委員長着席〕 大臣の言われるように、容易に引き抜かれてしまうということは、結局、そこよりもほかにいい給与が与えられるからということなんでして、本来ならば、その指導員になるような諸君は、いわば俸給などよりも、その子供たちを育てていくことに魅力を感ずる諸君が多いはずなんですから、こういう諸君がやはり引き抜かれていくことは、結局かすみを食っては生きていけないという現実面に制約され、しばられていくのですから、どうしてもそういう諸君をとどまらしめ、かつ、長きにわたって指導的な手腕を発揮させるためには、相当優遇の道を講じなければならぬと思うのですが、この法案を勉強さしてもらったところでは、そういう点については、資格等について厳格に規制をする条項はあるようですけれども、これをどの程度に優遇していくのかという点になると、私どもにはあまりよく了解できないようですが、待遇の面について、どういうふうに考えておられるわけですか。給与等の面について、でき得れば具体的にお示しをいただきたい。
  148. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 御指摘の通り、技術者を非常に要求するような時代になりますと、それだけ技能訓練の必要性も生まれて参ります。それだけにまた、指導員の質量の確保が必要になる。ところが、そういう時代になりますと、教える力を持っている技術者をまず引き抜くというのが実情であります。これでは非常に困ることはもとよりでありまして、その状態を改善いたしますためには、資格を厳格にいたしますことよりも、待遇をよくし、身分上の地位の安定をはかることが前提であると考えております。そこで、その質でできますが、高等学校の教員程度の質に引き上げることを目標にいたしたい。従って、待遇その他も、当然それに準ずるように取扱う方向にいきたい、こう考えておるわけであります。具体的な俸給表等については、これから研究をいたしたいと思います。
  149. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  150. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記つけて下さい。
  151. 田中一

    田中一君 文部省の局長が帰るそうそうですから、私の今質問した最後の締めくくりをしてもらいます。そこで、先ほど労働大臣に、解散いつかと聞いたのですが、実際この法律に直接関係ないからというような大臣の言葉が速記なしで出ましたが、それならこの法律案か通って、教育法の改正というものは見送ってもいいということになるわけなんですよ。しかし、それでいいかどうかという問題が残ると思うのです。私は、定時制の学校に行っているというものはまあ貧困者、あるいは貧困者と言っちゃいかぬけれども、負担にたえない人間が多いと思うのです。そうして修学の熱意を持ちながら、体力的にも、あるいは金銭的にも、負担にたえずして休学するものが多い。これは、過去一年半なら一年半というものを学校に行って、現在ではもう休学して二年たっている。しかしながら、その当時取った単位というものは若干あるという場合、今度の教育法の四十四条の改正によって、それらのものは単位を取ったというこの現実はこの法律に含ませて、取ったという資格を、その部分だけ認めて、そうして訓練所の三学級なら二学級に入るというような措置をとってほしいと思うのです。これは、通信教育も同じです。そこで、そういう場合はどういうことに考えているのか。
  152. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) この職業訓練は、従来からやっていらっしゃるわけです。私どもは、このせっかくやっている職業訓練で、高等学校に準ずるような教育をする。これは、高等学校教育の一部とみなしてやる。そうすることによって、生徒の負担が軽くなって早く高等学校を卒業できる、こういうことになりますから、この職業訓練が充実して、行事業体でますますこれを振興させていただけば、私どもは、それだけ高等学校の卒業者が多くなるという結果になるので、非常に喜ばしいと思っております。ですからこれは、従来からやっていらっしゃることを今度集大成されて、職業訓練法を出されたわけです。このことによって、私どもは直接は影響はないわけです。文部省の学校教育法に基いて文部大臣が指定して、初めて高等学校教育の一部というようにみなされるわけでありますから、面接は関係ございません。そういう意味でございます。
  153. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 今、田中委員お話は、この文部省の学校教育法の一部を改正する法律案を逆に御質問されているように思います。私の力は、実技を付与することが重点でありますから、高等学校ですでに一年やったからといって、一年免除するというわけには参りません。その逆の、高等学校卒業の資格を獲得するのに便宜を与えようというのでございますから、もちろん、学校教育法の一部を改正する法律案成立は望ましいのでありますけれども、それがないからといって、この法律案そのものの実体的目的を阻害するものとは考えておらないのでございます。
  154. 田中一

    田中一君 今、その逆のを言っているのです。逆の場合はどういうことになりますか。逆に、定時制学校の途中でやめて、こっちに入ってくる場合……。
  155. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 時間表をごらんいただきましても、また、教育の実体的目的をお考えいただきましても、実技の修得、すなわち、平たい言葉で言うと、腕に職をつけるということが重点でありまして、それにいろいろ、工業数学、物理その他のものにいたしましても、それに重点を置いておるわけでございます。面等学校の教育と重なりますものは、社会科と体育だけであります。従って、年限の中からそれを差し引くということは、実際問題として不可能でございますから、逆な場合は、ちょっと適用いたしかねると思います。
  156. 田中一

    田中一君 これは、建設大臣、それから建設省がおらんから、的確な御審弁ができないと思うのですが、御承知のように、建築士法に、たとえば二級建築士試験の受験資格としてこうなっておるのですよ。「一、学校教育法による大学、旧大学令による大学又は旧専門学校令による専門学校において、正規の建築に関する課程を修めて卒業した者又はこれらの学校において、正規の土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して一年以上の実務の経験を有する者」、二が「学校教育法による高等学校又は旧中等学校令による中等学校において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して三年以上の実務の経験を有する者、三として「都道府県知事が前各号と同等守以上の知識及び技能を有すると認める者」、四が「建築に関して七年以上の実務の経験を有する者」、これが有資格者なんです。受験の資格なんです。それで、これは私は、職訓法が成立して、これが施行されて、これに重い負担をかけるという意味じゃございませんから、誤解しないで聞いていただきたいのですが、こういう建築士という資格を得るには、これだけの受験資格が必要だといわれている。一方この職訓法で一定の認定というか、公認した者は、建築技能士というような名称を与えられて、社会的にも一つの国家資格が付与されるということになります。これはおおむね三年でございましたね。
  157. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 三年でございます。
  158. 田中一

    田中一君 三年という過程を経て、建築技艦上という資格が与えられるわけです。あるいは建築技能士になるか左官という技能士になるか、あるいは大工という技能士になるか知りませんけれども、大体において建築関係は、建築技能士、だと思うのです。そういたしますと、社会的に受ける印象といいますか、またこれは、印象というよりも実態というものが、給与なり何なりの社会的な処遇の差異というものをどういう形で認めることになるのかということです。なるほど、建築に関して考えてみますと、まず大工さんは、建築の職人は建築技能士という一つの資格が与えられる。同町に、現在でも、昨年の建築士法の改正によって、本年度も約六万人近い大工さんが二級建築士の資格を与えられました。選考または考査によって与えられたのです。それで、二級建築士が一級建築士の資格を取る場合には、二級建築士の資格が取れなければ、一級建築士の受験資格がないということになっておりますが、こういう場合に、単に国が資格を与える諸法律、これは無論、基礎は学校教育法になっております。学校教育法によるところのものが基準となってきめておるわけなんです。そこで今、労働大臣も、この法律は技能修得が主なんだと、こう言いますけれども、建築士法では、建築に関する技術家に対して資格を与えるのだということになっておりますが、この法律は、技能者に対して与えるのだということになっております。これは私は、単に建築だけを言っておるのですけれども、たとえば電気にしましても、電気の技術家というものは、一級、二級、三級、三級くらいまであったでしょう。たしかございますが、そのために、国家試験制度をもって資格を与えておる。これには、大部分のものが学校教育が基本となって、下地となっております。そういうものとのバランスをどう考えるか。まあ学問でございますから、何か、人が五年かかって一定の技術、学問、学校教育を受けて資格を取った、おれは二年で取ったから、その方が得だといって、便宜をはかって、認定でもって、どんどん学校の卒業資格を与えるということは、これは問題もあると思います。しかしながら、今日のように生存競争が激しくて、雇用関係も、それから企業にいたしましても、全く野放しな自由経済社会においては、功利的な近道を走るというような傾向があるのではないか。また、そういうものを助長するような措置は、これは当然考えなければならぬじゃないかというような気がするわけなんであります。私は、今建設委員会にばかり行っておりますから、建設関係のものだけを言っておりますけれども、おそらく他の委員会が持っておりますところの各種の法律の中にも、類似のものがうんとあるのじゃないかと思うのです。そこで、そういう点について、文部省は十分に——何といいましても国家が与える資格なんでございますから、十分に他の国家が与える資格とを比較検討なさって、社会に出て、社会的にあらゆる面の処遇なり、あるいは精神的にも、この立場というものが合理的な価値を持つような形の姿にならなくもやならない。こう思うわけなんであります。文部省は、十分にこういう点の御検討と、また、その各種の国家が与える資格の学問的な、学問といいますか、知能的な高さ低さというものの違い方を検討されたかどうか。もしも検討されたならば、電気の場合はこうこうであって、こういう工合にやる。あるいは、電気の専門の学校はこうなっている。何といいますか、電気の一級何々、二級何々とあるでしょう。そういうものの比較がどうなっておるか、御説明願いたい。
  159. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは、直接他の技能検定等は、学校教育に関連ございません。そこで、私ども考えておりますことは、他の職業訓練なり技術訓練なりをしたような施設で、どの程度教育履修したかということが問題になると思うのであります。この場合測定になるものは、単位は、やはり授業時間ですね、というものが中心になると思います。私どもは、高等学校の卒業を八十五単位とみておるのであります。一単位は、一時間で三十五週という計算をしているのであります。ですから、この時間数というもので他の訓練施設における教育を測定するわけであります。この測定によって、高専学校教育の何単位を履修したかということをはかるわけであります。ですから、その場合に、普通の高等学校へ行った場合の修業年限、それから、技能者訓練でおやりになったこの年限というものが、アンバランスになってはならぬという御指摘は、まことにごもっともであります。ですから私どもは、双方で実際勉強した授業時数というものが中心に換算される、こういうことでございまして、今御指摘になりましたような他の資格と、技能検定の資格とは、学校教育は直接関係がないということを申し上げたいと思います。
  160. 田中一

    田中一君 そこで、今の学校の場合は、時間時間と言っておりますね。時間が一時間足りないために卒業する資格がない場合もあるわけであります。これも、一つの人物の能力を測定するのに、ただ居眠りしても出て、いればいいんだというようなことじゃ、まるで最近の国会みたいなものです。(笑声)それじゃやはり学力測定にならないわけなのです。特に職訓法というものは、技術にウエートを置くということになるならば、この別の基準というものをやはりはっきりしなきゃならぬと思うのです。その基礎となるものは、やはり学校教育法によるところの基礎的なものがなければ、これらの科目も修得できぬということになりますと、そこで、さっきの基準というものを、こういう工合に押えようとするのか。学校教育法は、今言ったように、出席の時間だということにすぎないわけでしょう。それじゃ、ほんとうの意味の社会に対して一人前の技術者として立つ人間を養うのではなくて、ただ学校教育というものは、きのうも言っているのですが、日本のような大学の多い所はございませんと、大学を出て、失業するために大学を出るようなものです。それよりも、この職訓法によるところの訓練所を出る方が社会のためになり、民族のためになる人間になるわけなのです。そういう点については、あなたの方で、ただ単に出席する時間によってのみ測定するということであっちならない。だからといって、この職訓法によるところの三年なら三年という期間だけが別のものだということになりますと、今の建築士法その他の国家の与えている資格の試験の基準から見ると、アンバランスになっちゃならぬ。だからといって、職訓法によるところの修得者を、これを時間でもって制約して、資格を与えるのを延ばすというようなことをしちゃならぬ。こういうわけで、非常に矛盾があります。矛盾がありますが、その点を文部省でもって十分に御研究にならぬと、単なる国家の検定試験と、その学校教育と違うのはわかっております。社会にその吉年が巣立って、民族に与える利益というものは、今の学校教育法によるものなんかゼロです。束古小でさえ、今二十万、三十万という学校卒業生がいるんです。それよりも職訓法がずっといいんです。この予算をもっと算入して、三千万円くらいではなくして、三十億くらいこの戦訓法に持ってきて、実業教育をした方がずっと民族のためになる。だから、そういう点で、文部省でそういう研究をしているかどうかという点に私は問題がある。その点について……きょうはざわざわして、もう帰りたい人がいるんじゃないかと思いますけれども、(笑声)これは委員長、まだいいのですか。この点については、あなたの方で、文部省としては十分にお調べになって、そうして検定試験を受ける者ですから、その技術を受けるには、その人たちはどういう学校教育を、受けてきているかということもお調べになって、ここに御答弁願いたいと思うのです。今ここで、あなたの上手な答弁を聞いても、私はだまされそうですから、お調べになって答弁して下さい。その点、答弁を留保してかまいませんから、次回に譲ります。
  161. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十四分散会    ————・————