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1958-04-17 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十七日(木曜日)    午前十時五十七分開会   —————————————   委員異動 四月十六日委員木下友敬辞任につ き、その補欠として田中一君を議長に おいて指名した。 本日委員田中一辞任につき、その補 欠として木下友敬君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君    委員            有馬 英二君            草葉 隆圓君            斎藤  昇君            西田 信一君            谷口弥三郎君            西岡 ハル君            横山 フク君            片岡 文重君            田中  一君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君            田村 文吉君            竹中 恒夫君    委員外議員   大矢  正君    衆議院議員   井堀 繁雄君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    労 働 大 臣 石田 博英君   政府委員    外務省国際協力    局長      宮崎  章君    通商産業政務次    官       小笠 公韶君    労働政務次官  二階堂 進君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   説明員    労働大臣官房国    際労働課長   宮本 一朗君    日本国有鉄道副    総裁      小倉 俊夫君    日本国有鉄道職    員局長     兼松  学君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○駐留軍関係離職者等臨時措置法案  (衆議院提出) ○職業訓練法案内閣提出衆議院送  付) ○労働情勢に関する調査の件  (ILOの問題に関する件) ○けい肺及び外傷性せき髄障害に関す  る特別保護法の一部を改正する法律  案(大矢正君外六名発議) ○労働基準法等の一部を改正する法律  案(藤田藤太郎君外六名発議)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 開会いたします。  委員異動を報告いたします。四月十六日付をもって木下友敬君が辞任をされ、その補欠として田中一君が選任されました。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 駐留軍関係離職者等臨時措置法案議題といたします。  質疑を願います。  別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は、討論中にお述べを願います。  別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより駐留軍関係離職者等臨時措置法案について採決いたします。本案原案通り可決することに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告内容議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には、多数意見者署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     山下 義信  山本 經勝     藤田藤太郎  松澤 靖介     田中  一  竹中 恒夫     田村 文吉  西岡 ハル     木島 虎藏  勝俣  稔     横山 フク   —————————————
  8. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、職業訓練法案議題といたします。  質疑を願います。
  9. 田中一

    田中一君 今提案されている職業訓練法、これは、御承知のように、戦後このような形のものがわが国では一番必要だったのです。労働基準法ができましてから、第七十条で、技能者養成に関する規定が省令で出ておりますけれども、それの延長としての考え方でいるのか、あるいは、今の日本情勢から、新しい構想をもって出発しようとするのか。もしそうであれば、従来ありますところの技能者養成というこの考え方に欠陥があったのかどうか。それから、その成果というものはどういう形に今日まで現われておるかという点について、総括的な御答弁を一応願いたいと思います。
  10. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労働基準法は、御承知のごとく、労働者の諸条件を守るために、経営者使用者側に対する取締り法規とも解せられるものであります。そういう立場から行われておった技能者養成、そういうものが成果が上らなかったというわけではございませんけれども、それはそれなりの成果を上げているわけでございますけれども、今、わが国雇用状態、それから技能を中心といたしました労働者需給状態から考えまして、より積極的な職業訓練の必要を痛感をいたしましたために、労働基準法における技能者養成と、それから職業安定法における職業補導、これを一本にまとめまして、総合的な構想のもとに、積極的な施策を講じようといたしたものでございます。
  11. 田中一

    田中一君 現在の社会情勢に応じて、技能者養成単行法によって行うのだという、今日の日本の国内、国外等を通じて、その条件というものはどういう形で現われておりますか。
  12. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 第一に、企業全体の中で非常に高度の技術要請されるようになって参りました。科学技術あるいは経営技術その他の異常な進歩に従いまして労働者にだんだんと高度の技術要求されるようになって参ったということが一つでございます。それからいま一つは、その技術労働者配分が、大企業等におきましてはそれぞれの、自主的な努力あるいは基準法によりまする技能者養成等によって充足されつつはございますけれども、しかし、中小企業においては、技能労働者の著しい不足が見られるという事実があります。それは、中小企業生産性の低さの原因ともなっておるわけであります。それからいま一方、非常に労働力需給が全体としてアンバランスで、供給がはるかに需要を上回っている状態であるにもかかわらず、職業安定所の窓口だけを通して見ましても、未充足求人の数が十数万人を数えているわけであります。その未充足求人原因は、技能不足だけとは申せないのでありますけれども、しかし、技能不足ということがその大きな原因をなしておるという事実、それから、職業についてもそれが安定を見ない、非常に動くということの原因は、やっぱり技能不足ということによる事実、こういう点から勘案をいたしまして、産業界進歩に即応し、同時に、労働力需給バランスをとって、雇用機会を増大せしめ、さらに雇用された労働者職業上の地位の安定をはかるという必要を痛感いたしました結果でございます。
  13. 田中一

    田中一君 むしん、職業補導なりあるいは技能を持たすことによって、前提としては、完全雇用という姿が出なければならぬと思います。この法案を全部通読して見て、その約束がされておらぬことが第一です。それから、今あなたは、るるとして産業界現状ということを言っておりますけれども、今日の産業あり方というもの、企業あり方というものは、しょせん私企業にすぎないのです。もうける産業は、利益の上る産業は、自然に労働力の吸収も激しくなり、かつまた、その企業に対する利潤を生むための技術は当然修得されておるわけです。従って、政府がこの法律案を出して、たとえば、技術を持たない労働者に対して技術を与えるとか、あるいは日本の今日の高度化されつつあるところの産業、そうしたものに対応するためということを言っておりますけれども、前提としては、やはり雇用というものが前提にならなければならない。従って、この法律においては、公共職業訓練と、それから事業内における訓練と、分けておりますけれども、どちらにウエートを置いて政府は考えたか。ことに私企業の場合には、単なる利潤追求のための産業が常に繁栄をしておるのです。国自身計画的な産業構造と申しますか、産業計画というものを立てなければ、一体だれがどのような技術を選択し、どのような技術習得させ、また、労働者本人がどの技術をやりたいという意欲が起きるかどうかの問題については、はなはだ不安定な状態にあるわけなんです。従って、その二本立のこの法律案訓練所の立て方が、政府としては、どちらにウエートを置いて考えたものか。
  14. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 今まで、基準法によって技能者養成をやっておりましたものの多くは大企業で、生産性の高い、企業安定度の高いものでございました。しかし、全部がそうであるわけではないのでありまして、中には、小規模経営者連合体となりまして、基準法による技能養成に基くものをやっておる所もございます。しかし、ただいまお説のごとく、大きな企業におきましては、これは、それぞれの自主的な養成能力を持っておるわけでありますから、そちらに本計画重点を特に置く必要はない、おっしゃる通り雇用機会を増大するということが一点と、第二点は、技能を付与することによりまして、わが国就業構造を変えて、労働者職業安定度を高めていく。同時に、その生活条件の向上にも資する、こういう建前でございますから、積極的に政府施策としてやるものは、やはり公共職業訓練であるべきだと思っておるわけであります。しかし、同じ企業内と申しましても、先ほど申しましたように、必ずしも大企業とは限らない。むしろ中小企業におきましても、大企業におけるような、一企業体単独でやることは困難でございましても、連合体を作るなり何なりしてやられる場合においては、それに対しても、やはり積極的な援助の手は伸べるべきだと考えております。おりますが、御質問のごとく、いずれに重点を置くかという御質問でございましたならば、やはり今雇用機会をまだ持っていない者、あるいは持っておっても、不安定あるいは低収入である者を対象に主として置くべきものと考えておるわけでございます。
  15. 田中一

    田中一君 技能者養成規程によりますと、百二十幾つかの業種を指定しております。今までの、昭和二十三年でしたか、昭和二十七年でしたかな、これ以来、どの職種にどのくらいの人間養成されてきたか。これはたかだか九百万程度補助金しか出しておらないようですから、実績も相当下回っておると思う。最初は二千万円くらい出しておったのが、だんだん低下しておりますので、年度別に、どのくらいの人間がどの職種において技能養成を完成したか。同時にまた、その雇用状態はどうなっておるか。同時に、習得雇用された者の異動というものは、どういう形で社会に流れておるかという点、むろんこれは、この法律案を出すためには、十分なる御調査になっておると思いますから、その点を一つ明らかにしていただきたい。
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいまの御要求数字は、いずれ事務当局からお答えをいたしますが、先ほどの御質問の中に取り忘れておりましたのは、公共職業訓練をやります場合の職種を選ぶ方法であります。これは、非常に地方的な事情によって違いますから、職業訓練審議会等で慎重に御協議を願って、その実情に合うように選びたいと思っております。同時に、今までの公共職業補導所実績は、これはほとんど一〇〇%をこえる状態でございまして、これは、拡大していけばいくほど雇用の増大になるものと考えております。御要求数字政府委員から。
  17. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 労働基準法に基く技能者養成実施されましたのは、昭和二十二年度からでございまして、三十一年度までの実績があげられておるわけでございますが、その概況を申し上げますると、昭和二十二年度におきまして職種の数が十五、それからこれは、養成工は数は不明でございますが、職種は十五。二十三年度におきまして職種が四十七、実施事業場数が六十、養成工数が千九百六十八。二十四年度が職種が四十七、事業場数が百五十五、養成工数が二千三百九十九、途中を省略いたしまして、二十九年度に参りますると、職種の数も大幅に増大いたしまして百二十四職種実施事業場数が二万八千二百八十二、養成工数が六万四千九百八十一名。三十年度職種の数が百二十四、事業場数が二万七千百七十二、養成工数が六千一千三百八十八。三十一年度、職種の数が百二十四、事業場数が二万三千四百七十四、養成工数が五万五千百三十一。このような状況でございまして、昭和二十九年度以降におきましては、安定した職種事業場数養成工数、いずれも大体横ばいの状況であります。
  18. 田中一

    田中一君 それらの諸君が、同じ訓練所があったとしても、これは公共的な訓練所、それから企業内の訓練所、いろいろあると思うのですが、それがどういうような程度になっておって、雇用状態がどうなっているのか。それらの行方が、今日においては年度年度にそのまま定着しているものかどうか、あるいは移動しているものかという点、これは委員長、表でもってお出し願えれば一番いいと思います。
  19. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいまの澁谷政府委員から御説明申し上げましたものは、企業内の技能者養成だけの数でございます。これと、公共職業補導所で今までやりましたものの就職の状態等につきましては、後刻できるだけ早く表を作りまして、お手元に配付したいと思います。
  20. 片岡文重

    片岡文重君 関連質問。今、政府委員から述べられました数字によると、たとえば、三十一年度の職種百二十四はいいとして、事業場二万三千四百七十四カ所、養成工が五万五千百三十一ということになると、一カ所平均が二人ちょっとということになるのだが、これの数字は誤まりないのかどうか。これは二十九、三十、三十一年度、三年を通して見て、大体そういうことが言えるので、資料を提出されるときに、最大何名くらいの養成をしておられるのか、一つ事業場について。それから最低というか、最小何人くらいの養成をしておられるのか。その養成所規模についても、最低最高程度でいいですから、一緒に出していただきたい。
  21. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) お手元職業訓練法案関係資料を一括してお配りしてあると思いますが、(「そんなものはもらわないよ」と呼ぶ者あり)失礼いたしました。後ほど、資料ができておりますので、お配りいたしたいと思いますが、これは実施事業場数規模別、それから養成工数等の詳細な資料ができております。それをごらんいただきますると、全貌がはっきりいたすのでございますが、この表によりますると、労働者数十人未満事業場数が圧倒的に多いわけでございます。大企業は、労働基準法に基く技能者養成規程外のところで行われておるのが相当数ございます。というのは、大企業は、御承知のように、自力が強うございますので、技能者養成規程に基いてやりますると、御承知のように、いろいろな労働条件のやかましい監督があるわけであります。そういうような事情もございまして、大企業におきましては、基準法技能者養成規程ワク外でどんどんやっておる、それで、技能者養成規程ワク内でやっております事業場数を見ますると、労働者数、十人未満事業場が圧倒的に数が多い。たとえば、事業場数で申しますると、労働者数、十人未満事業場数が二万七百三十一、十人以上五十人未満が千九百七十六、五十人以上百人未満が三百十三、百人以上五百人未満が二百九十六、五百人以上千人未満が五十四、千人以上の数が百四、このような状況になっておるわけでございます。これは、表ができておりますから、後ほど御配付申し上げたいと思います。
  22. 田中一

    田中一君 そこで、今度の法律で指定をしようという職種は、今までの技能者養成規程に基く百二十四、これをそのまま適用しよう。当てはめようという考えでおるのか。もしこれだけに当てはめようというのですと、もはやこの新しい単独法を出す必要はないのです。少くとも百二十四の——簡易な技術です。理論的な高度の技術ではなかろうと思うのです。そういう面から見ると、政府としては、どのくらいの職種重点的にさせようとするのか。これだけのものが、百二十四の職種のうちの、今読み上げたものだけでも、おそらく二十万あるいは三十万程度のものが技能習得したと思うのですが、この人間行方がわからない。また実態をつかんでおるならば、その資料をもらって、あらためて質問するわけなんですが、百二十四の業種に対して、この法律によって全部を指定するつもりなのかどうか。
  23. 石田博英

    国務大臣石田博英君) いずれ表はあとで差し上げますけれども、その訓練を受けたものの職業は、大体安定をいたしておるのでございます。そこで、この法律によって職種をどうするかということでございますが、一応百二十幾つかのものを踏襲いたします。しかし、この法律に定められておりまする都道府県職業訓練審議会あるいは中央職業訓練審議会の御協力を得まして、実情に合ったものを順次追加していくという考え方でございます。なお、ただいまの段階で、この職業補導をより積極的にやりますために一番必要なものは、補導をいたします指導員養成指導員不足ということが一番大きな問題にだんだんなりつつあります。これも職種の選定とにらみ合せましてというか、逆に指導員養成ともにらみ合せなければならない面も多いものでありまして、あわせて訓練審議会の御協力を得て、追加をして参りたい、こう考えておる次第であります。
  24. 田中一

    田中一君 そこで、労働大臣は、第四条では、職業訓練計画というものを立てるということになっておりますが、これは、審議会の議を経てということになるのでしょうけれども、審議会構成メンバーというのはどういうように考えておるのですか。
  25. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 修正案法案の中に添付してあるところをお読みいただきますと明確になっておりますが、審議会委員は、関係労働者を代表するもの、それから関係事業主を代表するもの、及び学識経験のあるものの中から労働大臣が任命するということになっておるわけでございます。
  26. 田中一

    田中一君 この修正案衆議院で修正されたので、私ども考えております考え方が盛り込まれたので、非常にけっこうだと思いますが、労働大臣は、常に審議会要請によってのみ行動しようとするのか、あるいは別に、行政の長として、この法律執行者として、それ以外のものも行動できるようになっておりますけれども、その点はどういうことになっておりますか。
  27. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 審議会の御意見要請を待っているというような消極的な態度でなく、積極的に、労働大臣といたしましてやりたいと思うことも、こちらから審議会にお諮りをいたしましてやって参りたい、こう考えておるわけでございます。
  28. 田中一

    田中一君 そうすると、その計画内容あるいは習得すべき技術、その内容というものは、大体どの程度のものに縮めておりますか。ということは、きょうは文部省が来ておらぬという話でありますから、知育、徳育と申しますか、今盛んに文部大臣が言っている道徳教育的な問題をもこの訓練所では教え込もうとするのか。その限界を明らかにしていただきたいのです。
  29. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、授業時間について資料がお手元に……これもいずれお配りいたします。申すまでもなく、この職業訓練を行います主たる目的は、実技能力を付与するということでございます。しかし、その実技能力を持つに必要な普通学科は、これは教えなければなりませんが、それをこえるものは、やはり一般教育でやってもらうべきものだと考えております。従って、時間の配分等につきましても、そういう点を考慮をいたしておりますので、御質問のようなところまで入る意思はございません。しかし、社会人として御活動願うのに必要な一般の常識的な知識——社会科とでも申しますか、そういうものには若干の時間をさいております。それから、健康維持のための体育、あるいは国語、それから技術に必要な外国語知識を持つ程度外国語、そういうようなものは考えておりますけれども、それを乗り越えたものは、本訓練所目的とする範囲ではございません。
  30. 田中一

    田中一君 これはむろん、文部省とも十分に打ち合せをしてでき上ったことと思いますから、一応教育という面に含まれる課目はないものと了解してよろしゅうございますね。
  31. 石田博英

    国務大臣石田博英君) まあいわゆる文部省で行うべき教育というものと重複しないようにいたしております。ただ、たとえば定時制高等学校その他の授業をあわせて受けている者につきましては、この訓練法に基く訓練を受け教育を受けたものの中の学科、それは、その定時制高等学校の課程の中で受けたものと考えるような調整をいたしております。両方あわせてやらなくてもいいように、そういう程度のことはいたしております。
  32. 田中一

    田中一君 対象となる者の年令は、むろん義務教育を終えた者ということになると思いますが、一方、失業者と申しますか、職を求めている連中に対する再起というものも含まれておりますが、これは、どちらにウエートを置いて考えているのですか。
  33. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私は、これは実施の面で、できれば同じ程度バランスまで持っていきたい。相当年令の高い人たちで、技能を身につけて職業戦線に立ちたいという人に訓練機会を与えるように、この法を実施する面において持っていきたいと望んでおりますが、今までの実績は、残念ながら非常に年令層の低い人に多かった。これを何とかして、年令層の高い人もこの法の適用によって技術習得できるように、運営上努力をいたして参りたいと思っておるわけであります。
  34. 田中一

    田中一君 非常にそこに問題が生れてくるわけなんです。この的確な数字がお示しないのでわかりません。ことにまた、その数字が正しいか正しくないかも、私ども了承できない面があるのじゃなかろうかと思うのでありますが、過去の習得者がおそらく一つの職場にとどまっておることは少いのじゃないかと思うのです。常に転々として行く職種が多いのじゃないかという危険を多分に感ぜられるわけであります。同時にまた、高度の技術を教え込むなんというようなことは、このような制度では不可能です。絶対にあり得ない前提に立たなければならぬと思う。今日のように、大学は、短期大学を含めて、世界に類のないような高度の教育をしておる日本の国柄であって、そうしてそれらの者は、これは私が言うまでもなく、今日の社会においては失業難にあえいでおる。青少年が職がないというのは非常に多いわけなんですね。この現状を見て、教育の、何といいますか、教育機関乱設といいますか、これを補うためにも、高度の学校教育を受けた者においてすら、これらの訓練を受けさすことが必要な者もあるのじゃないかと思うのです。従って、根本的に、日本教育制度というものが、この法律規定によって一応反省しなければならぬ段階に来ているのじゃないかと思うのです。これは、単に私が言うばかりでなく、おそらく世論としても、国民もみな考えておると思うのです。従って、このねらいというものは、職を得るために訓練を受けて技能習得するのか、あるいは、社会にいよいよ出発するときに当って、今までの義務教育程度のものであっては、直ちに、今日の労働基準法の制約からいっても、一人前の賃金をもらえない。だから、これを三カ月なら三カ月という期間を置いて、特殊な技能を持たせてやるのだ、この二つの前提に立った場合、どちらにウエートを置いて考えておるのか。同時にまた、ほんとうにこれをやろうとするならば、次に来るところの雇用の問題を目の前に見なければ、おそらくついて参りません。従って、法律ができたけれども、あるいは訓練を受ける人間の増大——数の多いことを誘ってはならぬと思うのです。実際の実態というものがどうなっているか、ほんとうに、今わかりませんけれども、私はそういう危険を多分に感ずるのです。むだな習得をさせることがあるのじゃないかと思うのです。そういう点について、どちらに腰を入れてやろうとするのか。
  35. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、この法律の第五条の一項に、明確に「求職者に対して、基礎的な技能に関する職業訓練を行う。」こう規定してございます。つまり職を得るための訓練でございます。それから、今までの訓練を受けた者の実績でございますが、数字は後ほどお手元まで差し上げますけれども、一般に安定しております。それから、もちろんこういう訓練をやります以上は、訓練を受けた者に職業があるという保証がなければ、これはなりません。現在のところでは、先ほども概括的な数字を申し上げましたが、職業安定所の昨年度の窓口を通しましただけでも、十三万人程度の未充足求人があるのであります。これは明らかに、技能を受ければそれだけの職があるのだという目標の数字ともなり得る。もう一つは、実際の面におきまして、公共職業補導所を修了いたしました者は、はるかに求人の方が上回っております。地域によってバランスは違いますけれども、上回っておるわけでございまして、わが国実情から申しまして、この訓練実施は、直ちに職業を保証し得られるものと考えても差しつかえないのじゃないか、こう思っておるわけであります。  それからもう一つは、一般教育技能との関係でございますが、御説明の通り、今の大学教育、高等教育というものは、就職というものとは非常にかけ離れた状態にございます。しかし、それでも、いわゆる技術習得して卒業いたした者の雇用状態というものは非常にいいのでございますが、人文科学系統を卒業した者は非常に困難な状態にございます。このバランスを、労働省といたしましてもぜひ是正してもらいたい。今は大体七、三くらい、人文科学七、それから理工科系統が三の割合でございますが、このバランスの是正がなければ、高等教育を受けた者の就職難というものは改善されない。文部省等に対しても、しばしばこの改善方の要請をいたしておるわけでございます。この訓練法実施され、成果をおさめて参りますならば、より高度の技術を求めることにも結局なってくるわけであります。この法律だけでより高度の技術を求められないことは、御指摘の通りでございますから、従って、従来の学校教育、高等教育内容にも相当大きな影響を及ぼして参るものと考えておるわけでございます。
  36. 田中一

    田中一君 そこで、技能の認定を受けて資格をもらえる。資格をもらった場合の労働者の賃金というものは、他の同じような状態にある労働者の賃金と比べて、どのくらいに考えておりますか、賃金差といいますか……。
  37. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、実質的に当然訓練を受けた方が上ってくるものと、こう考えておるわけであります。
  38. 田中一

    田中一君 私企業訓練を受けた技能習得者は、おおむねその私企業内の功利的なといいますか、営利的なといいますか、特殊な技術習得させるということが主として多いわけであります。同じ紡績業にいたしましても、おのおのその産業の特殊性というものを持っております。むろんこれは、産業の特殊性というものは、労働者のために考えたのではなく、自分の企業利潤のために考えているのが通例なんです。従って、そういう人たちが、技能習得したけれども、他の職場につく場合には、習得したという資格を持っているという理由によって、賃金は当然同じであるというような考え方に立ってよろしいかどうか。というのは、公共訓練所で受けた者と、それから、私企業内で受けた者との差異というものはどうなるか。同時にまた、それが移動した場合には、その賃金というものは、国はどういう保証を考えているか。
  39. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それは、制度上あるいは立法上、そういうものについて、保証や、あるいは技能を受けていない者との差別をつける規定はございませんけれども、実質上は、これは当然差別がつくものと思っておりますし、また、公共職業訓練所でとった資格と、それから、企業内の技能者養成所でとった資格と、その資格においては同様に取り扱われるべきもの、こう考えておるわけであります。  それから、この法律習得せしめる実務上の技術というものは、先ほど田中委員も御指摘の通り、そう高度なものにはなりませんから、一般的にそう実質上の差ができるとも考えておりません。ただいま御指摘のように、これは必ずしも企業訓練に限らず、そのほかの訓練教育におきましても、教師、指導員の差あるいは所在地の差等によりまして、若干の較差というものが出てくることは、これはやむを得ないと思いますが、しかし、そういうものを乗り越えて、与えられた資格というものは平等に取り扱われる、こう考えておるわけであります。
  40. 田中一

    田中一君 そういたしますと、企業内の訓練を受けた者は、むろん直ちに雇用されるでございましょう。その場合には、直ちに雇用される者もあれば、また、雇用するといっても、それを離れていくこともむろんこれは自由でございますね。
  41. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それは自由でございます。
  42. 田中一

    田中一君 私は、先年ソビエトに行って、ソビエトの職業訓練状態を見て参ったのですが、一切が企業訓練に終始している。高等学校を出て、大学の入学試験を受けて落第すると、自動的に国が一つ企業に配属させる。そこで二カ年の専門的な、一応賃金をもらいながら、専門的な技術習得して、熟練工になるというような過程を踏んで、すべての青年が技術教育を受けて、技術習得している姿を見て、非常にうらやましいと思って帰ってきたのであります。そういう例から見ても、私は、雇用ということが前提にならなければ、いかなる訓練をしても、ついてくる者はおらない、いかなる訓練所をもってしても、ついてくる者はおらないと思うのです、そこで今、大臣は、日本産業構造産業形態あるいは日本産業の発展というものを考えながら、百二十四の業種を考えておられるかもしらんけれども、これらのものは、しょせん私企業に就職せざるを得ないのです。そうなりますと、これは、非常に安定しているといいながら不安定なものです。経済計画、生産計画というものがやはり安定しなければ、その労働者の生活というものは、保障されないわけです、私は、ここで伺いたいのは、その企業の安定ということを、大きな日本の民族的な産業の面から、政府としては今後の方針というものを立てているのかどうか。ただ審議会要請、これは単なる諮問機関です。審議会は、労働大臣の諮問機関にすぎません。しかし先ほど、その諮問機関の議を経て、そうして自分としてはこうしたいというような御意思が明らかになっておりましたけれども、今後全体の日本産業経済というものがどういう方向に向うべきであるか、また向わなければならないのだという大きな構想が国になければならぬと思うのです。ただ単に審議会が、あるいはその時期の景気不景気あるいは繁栄産業等の要請にこたえてのみ作る場合には、労働者の生活の安定というものは期せられないわけです。従って経済企画庁長官とも、いろいろ日本の今後の産業構造についての話し合いもあったと思いますけれども、どういうような構想政府が持っているということに対する理解を持っていらっしゃるか、労働大臣としては。
  43. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 職種の選定は、これはもちろん、長期経済計画との関連において考えていくべきだと思っております。そこで、長期経済計画の中におきまする今後の見通しというようなことについては、これは直接私の所管ではございませんが、雇用構造というものをどう変えていくか、これはやはり、わが国雇用構造と、それから西欧諸国の雇用構造と比較をいたしまして、一番特徴的な現われは、やはり第二次産業における雇用が、第一次産業、第三次産業に比較をして少い。これは大ざっぱな数字でございますが、多分わが国においては、第一次産業が三、四〇%、第三次産業が同じく三、四〇%であるに比較いたしまして、第二次産業が三〇%未満であろうと思っております。ところが、イギリス等におきましては、第一次産業はおそらく一〇%にも達しないで、第二次産業が約五〇%というような状態になっておる。これが現状におけるわが国雇用構造の一つの特徴でないかと思います。  いま一つは、その従業上の地位から申しまして、自家営業、あるいは雇い主というものに比べて雇用者が諸外国に比べて少い。これをやはり長期経済計画を通して改善をしていくということが必要であろうと存じております。言いかえますと、一次産業の従業者を減らして、二次産業の従業者をふやすようにしていく。前時代的な雇用関係を減少せしめて、近代的な雇用関係へ直していく、こういうことが雇用計画としての長期経済計画の基本でないかと思っております。  それからいま一つは、わが国雇用状態を考えてみますときに、完全失業者の数におもな重点があるのではなくて、やはり不完全就業者の膨大な数に問題がございますから、それを改善をしていくということがやはり大きな目標でないか。そういう方向に向けて職種の選定も訓練の方向もやって参りたい、こう考えておるわけでございます。
  44. 田中一

    田中一君 次に、この衆議院の修正によって、どうやらこれも、私どもの期待しておったように改正されましたけれども、昨年の二月の初旬に、労働省の松本参事官に来てもらって、審議会の答申による労働省の考え方を伺ったわけなんです。その際に、当然現在ある労働組合が指導している職業訓練所、まあ現在の技能者養成所です。これは当然この範疇に入るのだというような言明があったのですけれども、法律案を提案になった際には、それが抹殺されておりました。幸い衆議院の修正によって、それが起きたような状態になっておりますけれども、これは、なぜこのように、そうした労働組合が自主的に技能者養成をしようという場合に、政府としてはそれを削除したか。審議会の、審議会と申しますか、何といいますか、前にあなたが諮問した機関の意思を認めないで原案を提案されたか、この点に対する労働大臣の見解を率直に伺いたいのです。
  45. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、今までも、いわゆる労働組合が表に立ってこの職業訓練をやっておったというのではなくて、企業内の技能者養成を、つまり基準法における技能者養成という形でやっておられたのであります。従って、それは当然事業職業訓練に入るという見解で、特にそういうことを書かなかった。しかし、御要求で、明確にしろということでございますから、同じことでございますので、明確にしたわけで、決して排除する意味ではございませんし、また、今までも、労働組合が表に立ったわけではなくて、企業内の職業訓練としてやっておられる。たとえば、土建の建設業界等におきまして、小さなと言ったら語弊があるかもしれませんが、小規模業種がたくさん集まって、そして企業の組合として、その中で企業訓練としてやっておられる、こういうことでございます。
  46. 田中一

    田中一君 そうしますと、その点は、労働大臣は当然含まれるものという前提に立っておったところが、事務当局が、何だか知らぬけれども、あなたの意思に沿わない原案を出した、こういうわけですね。
  47. 石田博英

    国務大臣石田博英君) そういうわけではございませんです。この原案の中でも、今まで労働組合がやっておったと申しましょうか、実際上の面からいえばそういう御説明もつきましょうが、しかし、役所の取扱いといたしましては、基準法企業内の技能者養成ということでやっておったものであります。そういうものは、この十二条以下の事業職業訓練の中で当然やられるものと、こう考えて、私も考え、事務当局もそういう考えで提案をした。しかし、これは不明確だ、もっと明確にしなければならぬということでございますので、修正に応じたわけでございます。同じことでございます。
  48. 田中一

    田中一君 そうしますと、現在の技能者養成所、これはむろん、ある職種の連中が集まって、その企業内のものとしてのその現在の姿を認める。同時にまた、今後労働組合が自主的に訓練所を作る場合には、これに対しては、むろん企業内の訓練所として認めようとするのか、公共的な訓練所として認めようとするのか、どちらに認めようとするのですか。
  49. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 企業内の職業訓練としても、形によりますが、認めますが、同時に、今度改正によりまして、その範疇も拡大されました。労働組合その他営利を目的としない法人が、あるいは市町村などが職業訓練を行う場合に、「労働省令で定めるところにより労働大臣の認可を受けたときは、この法律の適用については、その職業訓練は、公共職業訓練とみなす。」と、こうなっておりますから、両方あるわけであります。
  50. 田中一

    田中一君 了解しました。そこで、一般職業訓練所、現在職業補導所としてやっておりますこのものが切りかえになりまして、変って、発展して、一般職業訓練所という形になるのかどうか、その点はどうなんです。
  51. 石田博英

    国務大臣石田博英君) その通りであります。
  52. 田中一

    田中一君 そうしますと、その職種は、現在は主としてどういうものを扱っておりますか。そうしてそれらの実績というものはどうなっておるのか。就労成績と申しますか、また、それらの生活程度というものは現在もこういうような状態にあるというような資料をお出し願いたいと思います。
  53. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) その点の資料も、ただいま持って参りました資料の中に詳細に書いてございますので、それで一つごらんいただきたいと思います。  大体概況を申し上げますと、一般職業補導所の数は、全国で二百五十八カ所でございます。年間の訓練の延べ人員が、三十二年度が約四万三千人、それから三十三年度におきましては、駐留軍の対策等もございまして、約五千名増員いたしまして、延べ四万八千九百七十名というふうになっておるのでございます。
  54. 田中一

    田中一君 総合職業訓練所、これは、この要綱を拝見いたしましても一応わかります、わかりますが、聞くところによりますと、これは、労働省の外郭団体といいましょうか、あるいは労働省の意思を体して行なっておる民間団体といいますか、そうした団体が行うというように聞いておるのですが、その団体の人的構成、あるいは定款というか、規約の概略を一つお示し願いたい。それも資料に入っておりますか。
  55. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それは、労働福祉事業団というものが前国会において成立いたしておりまして、その定款その他を御審議を願って、御可決をいただいたものであります。
  56. 田中一

    田中一君 これとの関係として、この中央職業訓練所は、これもその事業団の中に入るのですか。
  57. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それも、第七条の二項に書いてあります、「中央職業訓練所は、失業保険法第二十七条の二の規定による福祉施設として、労働福祉事業団が設置する。」と、こう書いてございます。
  58. 田中一

    田中一君 それから、身体障害者に対する手当支給の問題ですけれども、これは、失業者といいますか、求職者ですね。これはむろん、この身体障害者と同じように、生活困窮者に違いないわけなのです。もしも身体障害者の職業訓練には一日五十円でしたか、支給するようになっておるならば、失業者に対してはどういうことを考えておられますか。
  59. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 身体障害者は、これは明確に一般条件にある、普通の条件にある人々に対してハンディキャップがございます。それで、特殊の保護措置を考えておるわけでありますが、一般訓練を受ける者については、そういう規定はございませんです。まあ同じじゃないかという御議論は、それはあるかとも思いますけれども、先進諸国におきましては、いずれも身体障害者に対しましていろいろな保護の規定を設け、わが国でも設けておりますが、特に職業を得る機会につきましては、諸外国等におきましては、法律によって、一定のパーセンティジは身体障害者を使わなければならないというようなものまで作っておるところもあります。わが国におきましても、願わくばそういうところへ一日も早く行きたいと念願いたしておりますが、少くともその機会をより増大せしめる措置に対しまして、特別のハンディキャップがあるということでもって設けたことを御了承いただきたいと思います。
  60. 田中一

    田中一君 いや、支払っちゃいけないというのではない。もっと支払えということを言っておるのですが、失業者もやはり同じような状態にあるのじゃないかと思うのです。これは、もう一歩進んで、失業者を国が探して歩いて、こちらへ来い来いと言って訓練をするようなことこそ望ましいのです。今のところではそうなっておらぬでしょうけれども、私は、もうそれらのものも含めたもの、たとえば、扶助料をもらっておって遊んでおる人もある。また、働くと扶助料がなくなってしまうということもあり得るのであって、就労しようという、技術習得しようという意欲を持つ者は、その意欲を増させることが非常に至当じゃないかと思うのですよ。そういう点で、何か今後労働省として考えようとするようなものを持っておるかどうか。
  61. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 一般失業者に対しましては、これは、失業保険の給付を受けつつ習得する者もありまするし、それから、十一条の二項は、今回衆議院の修正によりまして、「前項に規定する公共職業訓練を受ける求職者に対して、手当を支給することができる。」という規定、今回は予算措置をとっておりませんけれども、できるだけそういう方向に行きたいと考えておるわけであります。それから、先ほど申しました、義務教育を終った直後の低年令層だけでなくて、職を持っておって失った失業者の諸君にも訓練機会を与えて、少くとも五分々々くらいに持って行きたいと思っておるわけでありまして、そのためには、やはり積極的な勧奨の方法を講じなければならない、そうしなければ、なかなか高年令層人たちは、職業訓練を受けに来ようという気持にもなかなかならないじゃないか、こう思っておるわけでありまして、そういう方法について今後努力をいたしたいと思います。ただ、現在の状態は、むしろ受けに来る方が、これで相当設備も拡大されますけれども、その希望者の方が、入所希望者の方が収容人員をかなり上回っている状況でございますので、これを、設備の拡大と相待ちまして、そういう御希望に沿うようなことを考えておる次第であります。
  62. 田中一

    田中一君 これは、建設関係の労働者の面でありますけれども、前国会で、一定の経験年数を持っておる者に対しては、建築士法に基く二級建築士の資格を選考によって与えたということがあるのです。そこで、技能養成を受けた者と、それから、もはや他の法律でもって取っている資格、この資格を持っている者との、社会的なというよりも、企業から見たところの処遇の問題です。こういうものはどういう工合に考えておりますか。
  63. 石田博英

    国務大臣石田博英君) まあ、ただいま御指摘の法律に限らず、そのほかいろいろな法律技能工の資格を与えることになっております。そういうものは、その法律によって適宜の資格を得られればいいと思って、そういう法律で与えられない者について、この法律で資格を与えるわけでございます。ただいま御指摘の建設業関係に働いている人たち技能とそれから賃金の関係、これは、特に国家の予算との関係、これは私は、改善の必要のあるものが非常に多いと思っておるわけでありまして、技能進歩を求め、技能の付与を考えましても、特に国の予算等におきまして、そういうものを考慮に入れないで予算を計上するような状態では、実施面において困難を来たします。そういう点については、将来とも改善の方途を講ずべきものと、こう考えておる次第であります。
  64. 田中一

    田中一君 たとえば、第四章にある職業訓練指導員、この指導員の賃金と、それから別の法律できめておりますところの、国がきめている資格者ですね。やはりこれは、むろん、同じ大工は大工でありましょうけれども、賃金というものは、労働省並びに建設省の了解で作っておりますPWというものによって一つの賃金基準もございます。で、資格を持っても賃金は同じなんだということでは、これはまた魅力にならない。そこで、二級建築士の資格を持っており、かつ技能訓練を受けた者であって一級の技能検定に合格した者の賃金はどうなるかということになりますと、これはやはりPW、あの政令できまっておりましたかな、ああした標準賃金というものを撤廃しなければならぬと思うのです。さもなければ、そこにはっきりとした処遇の基準というもの、賃金の基準というものを新しく設けなければならぬと思うのです。これは、大蔵省がやかましいから、国の事業の場合には、まあまあ最低の賃金で押えて予算を組むということが通例なのです。そういう点についてどう考えますか。
  65. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、先ほども申し上げましたように、技能を持っておる者と持っていない者とが、同じ機械的な賃金で平等に扱われるのでは、これは、励みにも魅力にもならないことは御指摘の通り、特に建設業関係におきましては、国の予算等の関係がありまして、これは改善を要するものと考えておりまして、労働省といたしましては、この法律の施行だけでございません。たとえば、特に建設関係労働者の問題については、建設省、大蔵省に対してこの改善方の研究を申し入れ、できるだけすみやかに改善したいと思っておる次第でございます。
  66. 田中一

    田中一君 それはいつごろまでに、三十四年度予算編成までにはむろん間に合いますか。
  67. 石田博英

    国務大臣石田博英君) なかなか技術的にむずかしい問題もございますが、私どもはまあ、何年何月と締め切りを答えると、それまで私が果しておられるものやらおられぬものやらわかりませんので、締め切りをこしらえられることも困るのでございますが、労働省といたしましては、これは改善をいたさなければならないものという考え方の上に立って、関係各省と折衝を進めておる段階でございます。
  68. 田中一

    田中一君 そこで、資格を二つ三つと持っておる人、アメリカの各建設労働者のその資格のうちに、フォアマンという資格がございますが、いわゆる日本でいうと、世話やきといいますか、段取り屋といいますか、こういう職階が一つできております。日本の建設労働者の中で——これは建設労働者ばかりではございません。一種の工場労働者におきましては、職長という職務、これは、同じ機械工であっても、職長というような、すべてのマネージメントを、その部分のマネージメントをするような資格を持っておる人がおるのですが、私は、今後機械化される日本産業構造の中にあっては、そういう職階と申しましょうか、言葉は不適当かもしれませんが、そうしたあり方が必要なんではないかというように考えておるのです。たとえば、建設業法を見ましても、これは二十幾つというものの、何々工、何々工という、種別的な規定でもって律しておるのです。それから、むろんこの技能者養成規程を見ましても、何々工何々工というものだけでもってやってる。そしてこの法律では、第四章で、職業訓練指導員というものをクローズ・アップさしておるようなんです。この職業訓練指導員というものも、職場においては、やはりフォアマン的な役割を演じておるのです。これは特殊な技術でございます。大工を十五人使うなら、十五人を間違いなしに与えられた賃金の範囲内で仕事を行わせる。日本は賃金が安いから、その中でも、なおかつ収入の取れるような段取りをして、労働者の賃金を増そうというので、小間割りその他の報酬を取っておりますけれども、労働大臣としては、そうした形の職制を、各職階といいますか、各階層の中に、各種別の中に持とうという気持があるかどうか。非常にこれは、今の現状から見て重大な問題なのです。
  69. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、もっと広く、職業の種類、能力、それから労働力の量、質、そういうものと賃金のあり方というものについて、実は今まで合理的な調査というものはわが国になかったわけであります。そこで、本年度の予算におきましては、賃金の基本的調査のために二千五百万円ほど新たに計上いたしまして、この基本的調査をいたさしめるようにいたしております。そういうものとの関連におきまして、技能と賃金のあり方、労働の量、質と賃金のあり方、そういうものについての合理的な結論を得ました上で、その制度化に向って進んでいかなければならないものと、こう考えておる次第でございます。
  70. 田中一

    田中一君 もう少し強く労働大臣から言明していただきたいのですが、これは、事務当局でもよくおわかりと思うのです。これは、そういう職務が非常に大事なんです。これは、諸外国ともそれがあるはずでございます。従って、そういう方向を十分御理解になってるという前提でもって、調査してからどうこうでなくて、もうそのことは目の前にあることだから、あなたがいつまでおられるかわからぬけれども、いるうちに事務当局に命じて、そのような方向に向って研究なさるというようなことを伺えませんか。
  71. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私は、この労働省に就任早々、そういう方についての検討を命じておるわけであります。ただ明確に、どうなさなければならないかということは、田中委員の御意見と私全く同一でございます。しかし、それを制度化いたしますための基本的調査が残念ながら今までにございませんでした。その基本的調査をいたさしめているというわけでございまして、どうしなければならぬということについては全く同意見でございますが、それを制度化するための準備をしているのであって、調査をした上でどうするか考えるというのではございません。
  72. 田中一

    田中一君 最後に、これは、いずれ資料を拝見して、また明日伺いますが、きょう最後に伺いたいのは、現在建設関係の労働組合が行なっておりますところの、事実において労働組合が行なっておる、というよりも、企業内の各職務の人間が集まってやっておるのですが、実態というものは労働組合の組織の中でやっておるのです。従って、この問題に対する国の補助率というものは——これはむろん公共性のものなのです。従って、これは今後とも、本年度は間に合わぬにいたしましても、何らかの便法を講じて、ことしは三千万円でしたか、予算は。そのうちから何らかの方法で補助金を出して、そうしてそうした訓練所を設けるというような機運を、あるいは意欲を持たせるという方法をとっていただきたいと思うのです。ですから、御答弁願いたいのは、本年度はどういう措置をとろうとするか、明年度はもっと高率な補助をしようというお考えであってほしいと思うのですが、その点、御答弁願いたいと思います。
  73. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 事業訓練としておやりになる分については、もちろん補助をいたすつもりであります。その補助率については、やはり逐年増加をしていくことが望ましいのでございますけれども、もう一つ目的は、やはり範囲を広めると申しますか、補助率を高めるということと同時に、適用範囲をうんと広くしていくというもう一つ目的も達成しなければなりません。従って、その両面について、そのときの予算の許す状態のもとに、そのときの客観的な雇用状態その他の情勢に基いて善処をいたしたい、こう考えておる次第であります。
  74. 田中一

    田中一君 これで最後でございますが、あなたも、先年東南アジアにおいでになったと思いますが、東南アジアを歩いて参りますと、いわゆるアジアの後進国と申しますか、この国々は、職人の技術ですね、これを非常にほしがっておる。私がびっくりしましたのは、インドネシアに行きますと、むろんミシンなんという高級なものは使いません。手縫いはできない、裁縫はできない、日本のように。従って、洋服職人というものを非常に望んでおるということを社会党の人間から聞いて参ったのですけれども、これは、そういうような高度の技術でなくていいのです。われわれの、日本社会情勢からいって職人といわれておるような技術が非常に歓迎されておる。最近インドネシアとも国交が回復いたしましたし、自由に行かれると思うのですが、そういうような意図を含んでおるこの訓練をしようとする要素が含まれておるかどうか。
  75. 石田博英

    国務大臣石田博英君) この技術移民と申しますか、そういうものの要請が後進国にいろいろあることは、承知いたしております。従って、そういうことにも、日本の人口政策その他から考えましても、応じなければならぬ、こう思っておりますが、ただいまの段階は、こういう訓練を受けたものに対する国内の需要がむしろ満たされないという状態でございます。従って、この法実施の中に、ただいま御指摘のようなことも当然含ませ、訓練を受けたものの中から希望者を求めて、進出をしてもらうということは望ましいのでありますが、実情は、ただいま申しました通り、国内の需要の方が供給を上回っておるという現在の状態であります。なお一そうこの訓練を積極的にいたすことによりまして、そういう後進国の要請にもこたえたい、こう考えております。
  76. 山下義信

    山下義信君 関連して。今の、東南アジアのことじゃないのですが、先ほどから田中君の質問の中で、まだ明快な御答弁がなかったように思うのです。私も実は、伺っておきたいと思ったところだものですから。今、ちょうど衆議院の方からも見えております。衆議院の修正の点ですが、例の訓練を受けるものの身体障害者の手当の修正があったのですね。身体障害者が訓練を受ける場合に手当を支給するというのはわかるのです。これを、一般の者も手当を受けるように衆議院で修正したのですね。一般の者が受ける手当というのはどんな性格のものか、何の目的のために手当を出すのか、ということですね。それは、田中君の質問の中に、一体生活困窮者の場合には、生活扶助料から差し引きされるのか、別途に支給されるのかという問題がある。それが割り切っておるのか、解決がついておるかという質問であった、おそらく。どうも大臣の答弁が、私、聞き洩らしたかもしらぬが、はっきりしておらなかったように思う。衆議院が修正した点ですから、あなたの方からそういう点を明確にしておいていただいて、あわせて、政府の方でもちゃんときまりをつけてあるかどうかということを答弁願いたい。
  77. 井堀繁雄

    衆議院議員(井堀繁雄君) 身体障害者が職業訓練を受ける場合に手当の支給ができるという原案を、そのまま一般職業訓練を受ける人にも適用をしようという意図にはっきり修正をしたのであります。それから、今お尋ねの身体障害者と一般の場合の異なる事情についてのお尋ねがありましたが、私どもとしては、身体障害者であろうと、しからざる者であろうと、今日職業訓練をこの状態において受ける場合においては、当然その間手当を支給するという道を開いておる。その場合に、多少いろいろな異なったケースがあり得るかもしれません。そういう問題については、原案でも、身体障害者の場合については一日五十円という規定はありますけれども、一般の場合については、そういう何らの金額やあるいは支給の過程における詳細なものは明らかにいたしておらない。われわれは、この点は、審議の過程におきましては、一応身体障害者の実態に右へならわせるという考え方でこの修正をいたしたわけであります。その他のことについては、当局の方からお聞きいただく方がよろしいかと思います。
  78. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 身体障害者の場合の手当は、これは、身体障害者は、手足、特に足が不自由な人が多いのであります。通勤が非常に困難で、寄宿をするというケースが多い。そこで、その食費の一部というような意味も含まれております。従って身体障害者で生活保護を受けている者から、この補助は差し引かれません。それから、一般の場合にこれが適用される場合におきましては、やはり通勤の費用あるいは教材を買う費用、まあそういうものと解釈されるべきものだと思いまして、これは当然、生活保護費から差し引かれないものという考えでおります。
  79. 山下義信

    山下義信君 身体障害者に出す手当と一般の者に出す手当との性格が違うならば、身体障害者の手当にプラスが、一般の者の受けるべき手当よりも、やはり身体障害者にAプラスBが与えられなければ合理的でない。それで、身体障害者に与える手当の性質と一般の者に与える性格が、支給する手当を何に使うかということでなくて、手当というものの性格が何であるかということを明確にしておく必要が私はあると思うのです。その金の使途ではない。また、使途が違えば、AプラスBでなければ、一般の者と身体障害者との平衡がとれない。その手当というものの性格が違うならば、どういう性格のものかということをはっきりしておかなければならぬ。生活保護の方を差し引かないということは、今御答弁で明確になったのですが、手当の性格とは何ぞやということは明確にしておく必要がある。
  80. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 当初原案を提出いたしましたときは、身体障害者については、今申しましたような条件の差がございますので、補助を出すことにいたしました。衆議院修正によりまして、一般の求職者に対して訓練を受ける者に対しても同様の措置ができるようになりました。ところが、その一般人たちに対する補助の性質は、今御指摘の通り、違うわけであります。しかも、その一般の保護を受ける人たちの保護を受けなければならない条件は、身体障害者においても同様にありますから、身体障害者の場合には、一般の者よりそれだけの差につけらるべきだ、身体障害者については、つまりよけいな補助を与えらるべきものだと、こう考えておるわけであります。
  81. 田中一

    田中一君 一つお聞きしておきますが、現在の職業補導所では、主として裁縫、洋裁その他をやっておるように聞いておるのです。これはむろん、そこで生産される何かがあるはずであります。実習と申しますが、これは賃金を払っておるのか。また、生産されておりますというと、おそらく刑務所においてすら、これは、習得しながら生産されるものに対する賃金はもらっておるはずであります。従って、その補導所でもって、たとえば、一つのデパートならデパートから委託されたところの、どう言ったらいいか、女の着物はわからぬけれども、そういうものを作る、そしてそれをおろす、そういう場合には利潤があるはずです。工賃が含まれておるはずです。従って、そういうものはどういう工合に処置されておるか、これは、井堀君からお伺いしたいと思います。
  82. 井堀繁雄

    衆議院議員(井堀繁雄君) 私の方からお答えするのは適当でないと思いますけれども、この修正をいたしました考え方を明らかにする必要があると思いますので、その点で申し上げておきたいと思います。身体障害者に対する手当を出すということについては、これは、一般の人よりは保護を加える必要があるという意味でこういうものを設けたという政府の見解は、私ども承知しておるわけであります。しかし、われわれがこれに右へならえをさせたのは、今、田中さんのお尋ねのありました、現実において利益を上げるような事業をかたわらやりながら職業訓練をやっておるかいなかについては、詳細は私どもも承知しないところであります。しかし、いずれにいたしましても、その過程においても何がしかの利潤を生むような、あるいは商品化できるような過程が起り得るであろうことは、想像ができるのでありますけれども、私どもは、そういうことを想定してこの案を設けたのではないのです。これは、言うまでもなく、全体の法案構想の中で指摘しておりますように、熟練労働を必要とするのは、個々の労働者の就職の機会を便宜ならしめるというだけではないのです。その国の経済全体の水準を引き上げていきたい、どうしてもその必要があるという公けの立場から、この法案の強い要請があるという点を重視しておるわけであります。そういう点からいたしますると、実際問題として、こういう過程を経て熟練労働に従事していこうという人々は、言うまでもなく、家が貧しかったりあるいはその他の経済的な事情で上級学校などに入り得ない者が非常に多い。それから、新しい日本教育基本法の精神にもありまするように、勤労の精神を尊重するというこの行き方は、こういう場合にこそ高く取り上げたらいいじゃないかという基本目的が論議されました。そして諸外国の事例などもあげまして、一応雇用契約を前提としてこういう機会を作るのでありますから、その職場に入ったときには、しろうとよりは熟練の高い者がより企業に貢献する率の高いことも、言うまでもないのであります。本来ならば、企業がそういう技能養成をするような場合が日本でもかなり多いのであります。しかしながら、中小企業、零細企業の場合には、そういう施設も持ち得ないし、そういう方法をとろうとしてもでき得ないいろいろな事情がある。そういうところで、こういう訓練を受ける機会が非常に多くありたい。その場合には、当然これによって訓練を受ける、受けなければならない人々というものは、おおむね直ちに生活のかてを必要とするとか、その他経済上のいろいろな困難を他の道で援助を与えなければ、この目的を完全に達することの困難な場合をわれわれはいろいろ具体的に想定をいたしまして、そういう点から、身体障害者並みというのではなくて、身体障害者にもこのような手当を出すという道も開けておるのだ。一般的にもそういう点を十分満たし得るように法案を生かそうというので、ここにこういう形で出したのでありますから、いかにも、この文章から見ますると、身体障害者とそういう者とを一緒に並べているという感じですけれども、持たれた意義はそういうところにありますので、いわば本法に一番大きな筋金を通したという考え方でございますので、十分御検討いただきまして、その精神をもっと強く生かすようにお骨折りをいただければ、なおけっこうだと思います。修正はそういう意味であります。
  83. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 先ほどの田中委員の御質問の点でございますが、一般職業補導所におきましては、大体訓練期間が一年でございます。それで、最初の半年間くらいは、これはほんとうの勉強時代でございまして、製品としても市中に売れるような物はとうていできません。しかし、あとの半年、少くとも後半の三カ月くらいになりますと、木工にしても、あるいは大工にしても、ある程度の製品が作れるわけでございます。従って、これを一般に売った場合の措置をどうするかという御質問でございますが、全国の状況を申し上げますると、原材料費は、当然県の歳出予算から出ておるわけであります。従って、でき上りました製品を売りました収入は、一応は県の歳入予算に全部入る建前にいたしております。しかしながら、その過程におきまして、補導生が実際に働いて、何らかの作品、商品を作るわけでございますから、それに対する相当の対価として手当を出す、その予算は、県の歳出予算に組んでおるわけでございます。その歳出予算で組まれた手当の中から訓練生に対して手当を支給しておる。こういう措置をとっております。
  84. 田中一

    田中一君 それでは、一府県でよろしいから、歳入歳出、それから製品、原価計算、利潤、工賃というものを一つ表にしてお出し願いたいと思います。
  85. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  休憩いたします。    午後零時三十三分休憩    ————・————    午後二時二十三分開会
  87. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  委員異動を報告いたします。  四月十七日付をもって田中一君が辞任され、その補欠として木下友敬君が選任されました。   —————————————
  88. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) この際、追加いたしまして、労働情勢に関する調査の一環として、ILOの問題についての質疑を行います。質疑を願います。
  89. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 きょうは、予定された外務大臣、通産次官がお見えになりませんから、国鉄からおいでいただきましたから、国鉄の小倉副総裁、職員局長質疑を行いたいと思います。  私は、この前の三月十三日の吾孫子常務理事との間に、今の公労法四十三条、ILOの八十七号団結権の自由の条約、この関係につきまして質疑を行いまして、今日、これに関連して問題の起きております機関車労組の問題について質疑を行ったのでございます。労働省並びに国鉄当局との質疑の中で、だんだんとこの問題が明らかになって参ったのでございますが、公労法上の組合であるけれども、適格条件云々ということになっておる。しかし、当局と組合の間を見てみると、いろいろの問題は、組合との関係というものはもう断ち切られた格好になっておる。しかし、時間外労働であるとか、その他労働者を働かす問題だけは、三六協定として締結をされておる。その他の問題は、千二百何号ですかの通牒をお出しになって、陳情やその他もしてはいかぬ。または当局がお出しになる書類すら、機関車労組にお見せにならない。こういう状態の関係が続いている。だんだんと質疑が進むにおきまして、三六協定も現実にやって、基準法関係の二四協定も、今、中央地方で話し合っている。だからこれもやるのだ。やるというのは、単なる話し合いじゃなしに、協議をする、話し合いをするということは、まとめるという目的があって行われるものだと私は認識をいたします。そのときの段階としては、二四協定も、三六協定も、当局としてはおやりになるということを、吾孫子常務はここで約束をされておるわけです。ところが、だんだん聞いてみると、その後、お話は具体化していないとお聞きをするわけです。そうなると、ここでお話しになられたことと少し違うのじゃないかと思いまして、きょうは小倉副総裁に御足労をわずらわしたわけです。副総裁から、ぜひその点を、今日おやりになっておる問題を、明確にしていただきたい。
  90. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) 機労はいろいろの点で正常化をするまでに至っておりませんので、国鉄といたしましては、公労法上の団交はできないという建前をとって参ったのでございます。仰せの通りに労組法の組合ではございまするが、やはり、公共企業体内部の組合といたしますれば、公労法の規定の適用を受けますので、その場合に、法律に違反する行為がございますれば、やはりその責を負わなければならぬ、こう考えるのでございます。私の方も機労をとやかく申すのではございませんのですが、ともかく公労法違反の事実がありますので、できるだけすみやかに正常になるようにと念願いたし、また、忠告もいたしているのでございますが、それが違法状態が解消しない以前に、公労法上の団体交渉はいたすことができないということで、それが例の通牒でございます。ただし、現場の支部、下部機構におきましては、これは労基法上の問題でございまして、三六協定といい、二四協定といい、これは労基法のことでございまして、公労法と法制が違いますので、それで三六協定というもは、別の意味合いで、これもこちらがしいて強制いたすなんていうことは毛頭考えておりませんし、また、そういうことができるはずのものでもございませんで、これは双方の合意によりまして締結いたしているのでございます。二四協定につきましても、二四協定はいろいろな内容がございまして、それは双方の意思の合致がありますれば、協定が成立いたすのでございます。しかしながら、三六協定と同じ性質の労基法による交渉でございますから、これにつきましては話し合いと申しますか、団交と申しますか、こういう道は開いていくというつもりをいたしております。ただし、その協定が成立するや否やは、双方の意思によるということでございます。
  91. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三十六条協定については、おやりになっている。そうすると、たとえば私の聞いているところによりますと、この月の四日には就業規則の指示をおやりになり、これは基準法に基く就業規則ですね、おやりになって、三十六条協定の組合支部代表とお結びになっている、三十六条協定は。ところが、その就業規則の同じ基準法の問題は、ここで吾孫子理事は、組合との関係を続ける、こういうことをおっしゃっておるのだが、就業規則の通達には、その支部代表者でなしに、職員代表という名目がなければ、話し合いは受け付けをしたらいかぬという、一つの通達を出しておる。こういうことになりますと、この前、吾孫子理事がおっしゃったことと、だいぶ違ってくるのじゃないかと私は思うのですが、副総裁どうですか。
  92. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) 就業規則につきましては、私まだ詳細に存じておりませんので、職員局長から答えさせます。
  93. 兼松学

    説明員(兼松学君) お答えいたします。七百七十五号と申します通牒で、三六協定につきましても、基準法上の協定につきましても、私どもとしては、原則として職員代表と結ぶということを下部に出してございます。その考え方は、全般としては変っておらないのでございまして、基準法としても、私どもは、その原則でおることは事実でございます。この前のいろいろな御議論のときに、地方において、現実には、三六協定が支部の委員長の名で結ばれておるものがあるのではないかという御質問があったのに対して、私どもの方の吾孫子理事からお答え申した件に関連すると思うのでございまするが、まあ原則でございますので、例外的な面も事実あることは承知しております。原則としては、そういう解釈をいたしております。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、なんですか、今の現実、組合の組織が中央地方にあって、地方でその支部の代表者というものは、どういう格好で当局はお認めになるのですか。やはり、その団体の責任を持つ代表としてお認めになって、三六の協定を結ばれる、それは例外だということは、どういう解釈になるのですか。現実の問題を私は言っているのです。あなたの方が、職員代表でありたいということはあるかもわかりませんが、現実、そういう働く方の問題は、支部の代表者とお結びになっておる。それでいて、それは原則じゃないのである、そういうものもまじっているのだ、これはちょっと私は、機関車労組の人を呼んでこなければ、それ以上のことはよくわかりませんけれども、しかし、三六協定の結ばれている対象者は、機関車労組の支部である、こういう工合に私は認識するし、ここでこの委員会自身も、そういう認識の上に立って質疑が行われたと私は理解している。ところが、それは例外だという工合におっしゃられると、非常に認識が困るのですがね。理解の仕方を少し変えなきゃならぬことになって困るのですが、どういうことなんですか。
  95. 兼松学

    説明員(兼松学君) お答えいたします。今申し上げました例外の関係では、事実、職員代表として結ばれたものよりも、代表として委員長の名がついて結ばれたものの方が多かったということは、率直に認めざるを得ない事実でございます。ただ、その点につきましては、組合のいろいろのいきさつがございまして、これは七百七十五号が出ましたときは、昨年の八月の五日でございました。その段階と十二月との間に、労使双方の姿に変化がございましたゆえんも、その通達にいろいろ反映しておるのでございまして、それぞれの時点における労使関係の相互の理解というようなものも影響しておるのでございます。
  96. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうしますと、この委員会では、三六協定と二四協定はやりますと、明確に吾孫子常務理事は言っておられる。中央の話し合いも少しはされたようですが、地方は明確にやっておるし、やるのだということを明確にされておる。基準法関係の問題だけは、とにかくやるのだという工合に、明確にされておる。二四協定のところ、これだけ私は機関車労組を調べてみました。そうすると、二十七地方管理局支部があって、協定に立っておる所はゼロである、調停事項にかかっておる所が五カ所、その他は、ここで話し合いさしてこれをまとめるということを言明されながら、その話が一つも進んでいない。これはどういうことなんですか。ここで御返答されて、われわれが理解したことと、現実に行われておることと、これだけ食い違いがあるということで、いいでしょうか。これを私はお聞きしたかったのです。
  97. 兼松学

    説明員(兼松学君) お答えいたします。終局的な法律の解釈といたしまして、二十四条と三十六条とが法律的に同じ考えのもとに、基礎のもとに立つものであるということにつきましては、私どもも理解いたしております。で、その方向に向っていたしたいと思っております。機関車労働組合のあたりとも、きわめて非公式ではございますが、常時、その点についてのお話し合いをいたしております。それにつきまして、この問題を地方に出しますにつきましては、お互いの立場でございますので、相互の理解と協力ということが、労使関係には大事であると考えます。その意味で、私どもの方も、地方に対しての解釈上の通達を出すについて、機関車労働組合の方でも、具体的なやはり考え方を出してくれないか、そこで初めて歩み寄りができるというお話をしておりまして、本件についても、やや、その点で一歩入ったことと存じておりますので、まあ時期の問題ではないか、こう考えております。
  98. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 協定、話し合いに入るには、何かほかに、もう一つ条件があるようにおっしゃるが、この国会の質疑は、議事録が明確にあるのですから。「二十四条も三十六条も地方地域でやっておると」いうことですね、「さようでございます」と、明確に吾孫子常務はお答えになっておるのですね。その前の方は、時間をとりますから省きますが、それじゃ、私たちは、そういう理解のもとに、この前の十三日の委員会は終っておる。それで、あなたの話を聞いていると、何か話し合いを始めるまでに、もう一つ条件があるような話なんです。この話し合いをするのに、どういう条件を組合が云々ということになるのですか。そうでなければいいです。私のお聞きした認識では、そういう条件というものをお出しになって、どうこうというように言われたように聞くのです。吾孫子常務理事の話では、そういう条件とか何とかということでなしに、基準法に関係した、特に三六協定、二四協定についてはやります、むろん現実にやっておるのだ、こういうお話だった。ところが、聞いたところが、やっていない。そこで、御足労をわずらわすことになったわけであります。ですから、そこのところをもう少し明確にしていただきたい。
  99. 兼松学

    説明員(兼松学君) むずかしい条件等は別に出しておりませんが、吾孫子理事から申し上げましたと同じことでありまして、終局的には、私どもの方としてもやっておりますが、条件というようなことは、特に私どもとしては、はっきりいたしておりませんが、労使間のお話し合いでありますので、話をするについての相互の理解なり何なり、国会での質疑というものは、御質問に対してお答えいたした当方の結論でございます。しかしながら、労使間というものは、いろいろデリケートな相互の事情がございますので、国会の質疑と離れない範囲内におきまして、しかし、全般的には相互の理解と協力前提にして話は私ども進められるものと思っておりますから、そういった話をしておる事情でございます。時期の問題で結論には到達いたしておりませんが、まだ前提的な時間の関係である、こう思っております。
  100. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、それならここへ来ていただく、御足労をわずらわすということはなかったと思います。これは話をしておられて、労使の問題ですから、どういうところに話をきめようと言って、二十七カ所によってお話し合いが進んでおれば、結論はまだ出ていないという問題なら、私はこういう質問をしません。先ほど申し上げましたようにゼロだ、そうしてその話し合いの糸口すらできないから、五カ所が調停申請をしている、これが現実だと聞いてみると、もう一ヵ月以上たっておるのに、ここできちっとわれわれが理解しておるのと違ってくる。あなたはそうはっきりおっしゃらなかったと思いますけれども、国会で答弁したことと労使の関係は微妙だとおっしゃいますけれども、しかし、こういう工合におやりになるということだけは明確なんでしょう、そうでしょうね。それじゃその方向によって微妙な労使の問題があっても、皆さん方がこれをやろうということを——それは労使の話し合いというのは二十七カ所に進むわけです、進まないはずがない。あなたの方が進められないから、もう労使の間の糸が断ち切れておるという状態なんでしょう。それが、この前われわれが御返事を聞いて一カ月もたっているのに、そういうことなんです。あなたの今のお話を聞くと、何か話し合いをしておるんだけれども結論に達していない。そういうことなら、私はここであなたに質問する必要はないと思います。促進して下さい、何かして下さいという言い方に私はなると思う。しかし、全然行われていないところに、私は、問題としてここでお約束されたことと、一カ月もの間やっておるのに違うじゃありませんか、これはどういうことですかということを、お聞きせざるを得ないんですね。これは議事録というものは外へ出ますから、組合の方は、こういう状態で明確になっておるのに、一つも進まないから、これはどういうことですかということをお聞きされると、私らも現実に職場々々を回って見るわけにいきませんから、副総裁以下来ていただいて、明確にせざるを得ないんです。現実行われていないというところに問題がある。だから、いつからおやりになるんです——それじゃ、今話し合うなら、どういう格好でやっておるんですか、それを一つ聞かせて下さい。
  101. 兼松学

    説明員(兼松学君) これは二つの段階がございます。一つは、本社の私どもと本部の委員の一部の方に、今こういった問題の扱い方について、従来の経緯その他を全般として懇談をいたしておるものでございます。その一部は、きょうの午前も、私が機関車労働組合の書記長とも約一時間御懇談いたしております。まだいろいろな問題がございまして、結論には達しておりませんので、地方に全面的な指示を出すには至っておりませんが、地方別に調停のあります場合、あるいはその他の場所等につきましては、現に部分的に話の行われておる所もございます。こういった問題は、場所によって非常に違いますし、それから支部その他と局との労使関係のいろいろな姿によっても違っておりますので、二十七全部同じであるとは申しかねるのでございますが、二十七一つも話をしないというわけでは絶対にございません。全体としての足がそろいますのには、なお少しの時間がかかるのではないか、こう考えております。
  102. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、なんですね、こういう工合に理解していいんですか。一、二話し合いが進んでいる所がある、そして当局としては二十七の地域においていつでも交渉する態勢を持っている、あしたからでも交渉というか、話し合い、組合の支部の方から申し込まれたときには、話し合いに応じる、こういうことだと理解していいですか。
  103. 兼松学

    説明員(兼松学君) ただいまの後段は、御理解をしていただくのはちょっと早いと思います。ただし、今申し上げました通り、本社、本部の間でいろいろな問題についての十分な理解がつきますれば、私どもの方でも近々に指導はいたす方針でございます。全面的にいつでも用意ができておるという状況には、まだ立ち至っておりません。ここ旬日を要するのではないかと考えております。しかし、結論といたしましての行きつく先につきましては、将来はお話の通りでございます。
  104. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そのあとの方が少し違うとおっしゃるけれども、もう一カ月以上たっているのですね。その一カ月前の話し合いを各地方地域でやっておるということを吾孫子常務はここで確認されておるのですよ。それにまだ何か指導しなければその話が進まぬという話になりますと、いつからそれじゃその話になるのですか。  私はここでお聞きしたいのは、中央では少し今のところまだ理解のしようが足らぬけれども、地域では、話は全部やっておるのだと、だからその点については現実行われているのだから、われわれも促進をいたします、中央、地方で促進をいたしますというようなふうに、私は理解をしておったのですが、ところが、まだ旬日を経なければ、それから先、将来その交渉、話し合いが始まらぬ。それにはこっちが指導を云々と、私は、そういう話になってくると、われわれがここで質疑をして理解したことと非常に違ってくるから困るんですね。これは副総裁どうなんでしょうね、その点は。  もう一つ、私は職労一二四九号の通牒、この通牒のたとえば、内容のいかんを問わず、実際の陳情、話し合いに応じないとか、こういうことで労使の関係はあっていいかどうかということを、私は考えております。だからそういうところの副総裁のお気持を聞かしていただきたいと思います。
  105. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) 先生のおっしゃる通りでございまして、国鉄は労組と管理者側とがお互いに信頼し合って法律を守っていくということが、公共企業体として一番課せられた使命でございまして、そういう方向に行くべく努力いたしておるのでございます。しかし、私どもと組合との間で立場の相違もございますので、いろいろ食い違いが起ることもございまするが、そういう点はできるだけすみやかに、円満に、話し合いで協調していきたいというのが、私どもの念願でございます。ただ、繰り返して申し上げますが、ただいまのところ、機労が公労法上の違反をいたしておりまするので、そういう点で、公労法上の団体交渉ができないのを私も遺憾に思っておりまして、まあこれは私どもの立場からだけの話でございまするが、機労の諸君に、できるだけすみやかに正常化をしていただきたいというのが念願でございます。  ただいまの具体的の問題に触れまするが、私どもも、国会で吾孫子常務から答弁いたしたように、とにかく三六協定と二四協定とは、労基法上の同系列の事項でございまするので、これにつきましては、諸先生の御注意もあるようでございまして、この三六協定ばかりでなく、二四協定につきましても、話し合いの窓口を設けたいと、こう思っております。この点につきましては、前々お答えした通りでございます。ただ、話をいたしますにつきましては、今までいろいろこじれた問題もございまするし、それからいろいろお互いにこの軌道に乗るような理解を持ちまして、その上に立って労基法上の話し合いを進めていきたいと、それにつきまして、ただいま職員局長から話があります通りに、多少の日時をかしていただきたいと、こう申し上げたのでございまして、ただいま先生がおっしゃいましたように、私どもは御催促の意味と解しまして、できるだけ事務をすみやかに進めていきたい、こういうふうに考えております。
  106. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、三六、二四の協定、また機関車労組の陳情や話し合いは、窓口を開いていくというお気持なんですね。  そこで、私は時期の問題を明確にしておきたいと思いますけれども、旬日とか、早い機会とかおっしゃいますけれども、それはあとでどれくらいだということをお聞かせを願いたいと思いますが、もう一つは、この通牒に出て参ります非公式であるといなとを問わずとか、または内容のいかんにかかわらず一切の陳情、話し合いに応じないというようなこととは、ここでは食い違って参りますね。今の小倉副総裁のお話、また、実際に二四協定、三六協定はおやりになろうとすることとは、だいぶ私は食い違ってくると思うのですが、その通牒はどういう今後取扱いをされますか、それと二段お答え願いたい。
  107. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) まず最初のお話の、時期の問題でございますが、先ほど申しますように、労使の話し合いというのは単純ではございませんで、いろいろな問題がからんで参りますので、先ほど職員局長が申し上げました通りに、筋は筋でございまするが、まあいろいろな理解のもとに立って話し合いを進めるということでございまするので、そういう意味合いで、いつそれが両方の理解が成立するかというふうなことは、これは労使の団交のことでございまするからして、いつまでに必ずやるというお答えは差し控え、またお許しを願いたい、こう考えます。  それから一二四九でございましたかその通牒につきましては、それは公共企業体の法律関係におきまして団交はいたさないと、こういう通牒でございまするが、それがまあ申し上げていいのやらどうやらわかりませんですが、それを一度誤解を受けるような取扱いを受けたものですから、話し合いも陳情もできないということに相なったのでございます。しかし、前々から申し上げまするように、現場におきまする話し合いは、これは労基法上の話し合いでございまして、その通牒にもかかわりませず、現に三六協定というものは締結いたしておるのでございまするからして、そこに矛盾は私はないと、こう考えております。
  108. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、当然この通牒の問題が関係してくる問題で、このままで陳情や話し合いということは、一切問題のいかんを問わずというような格好でやって、労使関係というものの関係であってよいと私は思えないのですね。これは第一の問題です。  そこで、具体的に基準法関係の話し合いをする、すみやかにということでございます。だから、先ほど職員局長は、書記長と懇談をしたという話がありました。で、書記長との懇談——二四と三六の協定は地方でおやりになるというのだから、私は地方で早急にこの話をやはり進めるということを、ここで私は何かはっきりしておいてもらいたい。そうでないと、まだじんぜんと、この前ははっきりしておって、一カ月もたって早急にやる、近い将来にやるという格好でいつまでも同じ状態が続くと思う。だからこの点は、副総裁の立場から、いつになったらそれじゃ窓口を開いてこの問題を地方で始めるのだという見通しを一つつけておいていただきたい。
  109. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) 先ほども申し上げましたように、それはまあ国鉄部内におきまする管理者と機関車労働組合の問題でございまして、しかも、それはただいま話し合いをいろいろ進めておる過程でございまするので、いつまでにそれをどういう格好で実行するということにつきましては、これは一つここでお約束申し上げることは差し控えたいと、かように考えます。
  110. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと誤解があるようですけれども、私の言っているのは、この協定をいつまでにするという話まで私はここで立ち入れないと思うのです。私の言っているのは、話し合いをいつからお始めになるかということを聞かせてくれと、こう言っているのです。全然もう窓口が開かれない、締っているままの状態ですから、ここではっきり一カ月前に窓口を開いて話し合いをするのだということをおっしゃっているのに、その出発点がまだ見通しがつかぬ状態ですから、協定をどうこうという問題まで立ち入るのではございません。窓口の話し合いをいつからお始めになるかということを聞きたい、こう申し上げておる。ちょっと誤解があったから……。
  111. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) 誤解はまことに恐縮でございました。先ほど職員局長もお話し申し上げました通りに、労使間のいろいろな問題もございまして、結局二四協定にいたしましても、そのうちの取り上げるべきもの、取り上げられないものの意思の合致が見られないもの、いろいろございまするが、そういう話し合いを進めて参りますにも、双方の誠意と理解、協力といったようなものが必要になつて参りますので、その話し合いを本部でいたしております。で、本部でいたしておりまして、そういう理解をできるだけすみやかにつけたい。これにつきましては、私どもも誠意を持ちますが、機労の方にも極力御誠意を持ってもらいまして、そうしてその上で地方において交渉の窓口を開くと、こういうことになりまするので、そういういきさつでございまするから、本部におきましてそう長いこともなく——双方努力を重ねておりまするので、先ほど職員局長が申しましたように、そう長いことではない、旬日の御猶予を願いたいと、こう申し上げておる次第でございます。
  112. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それではわかりました。本部で今お話し合いをしておられるわけですね。それじゃわかりました。それでは、それは非常に短い時間の間に、地方に移して話し合いになるように努力をすると、こういう工合に理解をしてよろしいですね。——わかりました。  それじゃもう一つ聞いておきたいのですが、先日出ました仲裁裁定の問題について、機関車労組の所属職員についても同一の態度をもって対処するよう要望するという裁定が出ていますね。こういうのは、機関車労組に対してどういう工合に通達されたか。お取扱いになったか。この前、私は非常に一つ気になるのですが、通牒を見せてくれと言ったって見せもしなかったというような話があったのですが、今はまあ中央と当局でそういう話があるというのだから、そういうことはまさかないと思いますけれども、念のために、このことだけ一つ聞いておきたい。
  113. 兼松学

    説明員(兼松学君) これは藤林公労委の会長から十河総裁あての手紙のことと解しますが、その点では、去年機関車労働組合は仲裁の実施を国鉄労働組合より先にいたしました。で、機労が優先実施いたしましたのですが、今回は公労委の委員長から、優先実施についてはしないで、同時にやれと、他の三組合と同時というふうなお手紙のようにいただけますので、私どもの方としては、他の組合と——交渉のできる組合と交渉ができましたならば、直ちにそれを機労さんにも同時に実施するようにいたすつもりでおります。  それから、現在でも、この春の期末手当、その他の仲裁につきましても、他のいろいろな実施につきましても、機関車労働組合にも、他組合との協約の内容もお見せし、また、同様に実施するということのお知らせも正式にいたしてもおります。交渉はできませんけれども、実施内容につきましては、理解をしていただくようにしております。
  114. 木島虎藏

    木島虎藏君 関連質問。この問題については、この前予算委員会でちょっと問題になったことがあるのですが、例の何号という通牒は、どうも文面があまりひどいということがあのときに議論になった。ところが、団体交渉すると、現在の法律の建前からいうと、当局が団体交渉をやろうと言い出すと、当局が法律を破ることになるのだ。そういう議論がございました。そこで、今、話し合いを進めるというふうに話をしておられましたが、団体交渉と話し合いとの限界を、およそどういうところに置いておられるのですか。
  115. 兼松学

    説明員(兼松学君) 労使間の理解ではございますので、的確なお答えとはならないかもしれませんが、一応、公労法上、団体交渉の対象となるべき事項というものがきまっておりますので、その対象となるべき事項についての意見の交換なり何なりは、すべて交渉のうちであると考えますが、公労法の交渉事項以外のものにつきましては、話し合いということに了解いたしております。
  116. 木島虎藏

    木島虎藏君 そこで、今のような限界でよろしいかと思いますが、その最初の通牒にあったように、お前のようなのは相手にしないのだというふうな扱い方で職員との関係をおやりになるということはどうかと思うので、そこで、今、藤田委員から話が出たと思いますが、今、御答弁にもありましたように、団体交渉にわたらざる範囲でもけっこうだが、それがはっきりするまでは事実上のそういう業務の運営なりをしていくように、差しつかえないようにやっていただきたい。こう希望する次第であります。
  117. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 最後に副総裁に聞いておきたいが、問題は三十六条と二十四条協定の問題が、ここで、この前の質疑から通じて、今、中央の機労の本部との間に進める手続について話し合いをしているというのですからいいのですが、そういうことになって窓口を開くということになると、一二四九の通牒というものは、今、木島委員が言われたように、だれが見てもちょっとひどい。それは労使関係で、そういうことをやっていいのかということが、私は、今の問題点だと思うのです。今、直ちにここで御返答が、先ほどから申し上げたが、できぬようですけれども、私は強い希望として、このような通牒については、やはり考え直していただかなければならぬ。それを十分に一つ考えてもらいたいということだけを、私は最後に希望として申し上げます。  それではどうもありがとうございました。時間がありませんので、国鉄当局に対する質疑は終りたいと思います。  通産次官がおいでいただきましたので、通産次官に、この際、お尋ねをしたい問題なんです。  それは、この前、通産局次長が、中山さんですか、お見えになって、今、この社労委員会で取り上げておりますILOと、それから日本の経済施策との関係なんです。この点について、この前、次長と私との質疑の間では、一応考え方についてわかったような気がするのでありますけれども、私は、きょうは大臣にぜひ来ていただいて、明らかにしていただきたいと思っておりましたのは、私は、やはり日本の通産行政をおやりになる責任者である大臣、きょうは大臣が御都合が悪いということですから、次官においでを願ってお聞きしておきたい。明確にしておきたいと思うことは、この前も質疑のときに申し上げましたが、日本の経済の歴史、特に貿易が問題になると思いますけれども、チープ・レーバー、ソーシャル・ダンピングという関係、ILOというのは一九一九年から続いている問題です。一時日本は脱退いたしましたけれども。そこで、日本の商品というものがそういう形でボイコットされた時代というものは、私は歴史的にあったと思います。今日それと同じ条件かというと、そうとも言いきれない面があると思いますけれども、何といってもILOというものが国際労働保護の建前に立ってできてから、ILOの一番大きな目的というのは、労働者の保護、社会保障と労働保護の基準を上げていくというのが根本でございますけれども、あわせて第二の大目的というものは、これによって世界の経済の繁栄と、そうしてその人類の生活、近代社会への道を開いていこうという経済の問題と、絶対に切り離せない問題だ、私たちはこう考えておる。ところが、この前少し質疑をしてみますと、どうも四十回も総会を一九一九年から開いて、そのあらゆる問題が、条約でも百七つも作っておる。それについて通産省が、産業政策、経済政策をお立てになる所において、非常に無関心であるという気が私は非常に深刻にしたわけです。だから、私は、これでいいのかどうかという問題が、第一の疑問点として出て参りました。私は、この社会労働委員会で、労働行政、厚生行政を質疑いたします中から出てくるのは、たとえば厚生行政の千百十三万のボーダー・ライン層、今日、日本政府の統計発表によって六十五万の純粋失業、数百万の潜在失業という、こういう両面から見ても、非常に生活の低い人がおるという、こういうものも関係なしとはいえない。だから今度の石田労働大臣は、労働大臣になると同時に、日本産業経済政策を立てるには、労働者の問題を考えなければこれは無意味なんだ。これをまず基礎に置いて経済政策を立てなければだめなんだということをここで言明され、そのように内閣員の一人として理解されるということは、私らは非常にいいお考えだと、そういう工合に考えたわけです。ところが、具体的に進んでくると、それは二、三年ちょっと待っただ、ということになりましたけれども、これは労働行政の面でございますけれども、しかし、それくらい今の世界の国をながめて見ても、労働者の生活、社会保障、保護という問題が、国の政治の中心をなしている。そういうものについて、通産省としてはどういう工合にお考えになっておるかということを、私はお聞きしたのでございますけれども、もう少し私は——私の理解するところまで御説明がいただけなかったから、今日おいでを願ったわけなんです。だからILOについて、まずどういう工合に国際労働基準を上げていくという問題と、日本産業経済政策にはどういう形で考慮されておるかということを、一つお聞きをいたしたいと思います。
  118. 小笠公韶

    政府委員(小笠公韶君) 日本産業経済の発展をはかっていく、こういう立場に置かれておるのであります。私はその目的の達成のために、結局産業の発展というのは、人によってプロモートされる。従いまして、労働力の向上、労働者の生活向上という問題が、当然に重要な問題であると考えておるのであります。従いまして、ILOと産業政策の関係は、御指摘のように、非常に密接な関係を持つものと考えております。私は、与えられておる正面から申しますと、まず産業政策というものを立てるに当りまして、それをできるだけ能率的に上げていく、同時に、これの、所得の配分というような問題につきましても、十分な考え方を持っていかなきゃならぬと。私はそういう意味から、特に戦後の生産性向上運動というようなものが、従来の合理化運動と違うのは、そこらに重点があるものだと私ども考えておるわけであります。
  119. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃ、通産省の質問をちょっと譲りまして、大臣が見えましたので、外務大臣にお尋ねをいたしたいのであります。  それは、御承知通り、この前、外務省の国際協力局長においでを願ってILO条約の問題についてお聞きをしたのでありますけれども、どうも、ILOが一九一九年にできて、そうして、まあ今は国際連合の下部組織という工合に、国際連盟から国際連合に変っておるということでございますけれども、しかし、その労働省が担当の所管省でありましても、具体的には、たとえばILOの総会とか、諸会議においては、外務省の出先がやはり主要なメンバーとしてここに参画されていると私は認識をいたしております。私も経験があるわけです。そこで、私は、今この百七つの条約の中で、日本が二十四しか批准をいたしておりません。ほかに勧告がございますけれども……。ところが、批准された問題というのは、むしろ多くは一九二〇年代の問題で、近代国家への、各国が努力をしている中で、三〇年、四〇年代の条約とか勧告というものが、どうも日本の国政運用の中では、十分に取り組まれていない。これはやはり、国全体の経済または貿易との関係に非常に密接な関係がある国民生活の関係、労働保護の関係にも、日本の経済繁栄の問題にも、非常に関係がある。だから、私は主管省が労働省であっても、外務省という立場からは、この条約の批准、この批准と同時に、これと同じように基準を上げていくという努力がされてしかるべきものだ、こういう工合に私は考えておる。ところが、まあこの前の外務省の御答弁を聞きますと、国際的な平均が二十四批准しているから——二十二ですか、日本は二十四だからまあいいとこだというような御発言があって、私は驚いたんです、実際問題として。今日、ILOの十大産業国として、常任理事国として日本は列しておる。そういう立場である日本の外務省が、まさか外務省全体がああいう御意見ではないと思いますけれども、そういう御答弁を聞いて、私は非常に驚いた。今日、たくさんの条約、勧告について審議し、この国際的なきめに対して、国内の政治をどう引き上げていくかということに、私は全体が努力しなきゃならぬときにおいて、ああいう気持が、たとえ少しでもあるとしたら、非常に残念なことである。だから、そういう面で、ぜひ外務大臣に来ていただいて、この問題の見解を一つ聞いておきたい。そうでないと、われわれは労働行政、厚生行政と、二つにかかっているこのILOでありますから、国の経済に非常に密接な関係がありますから、ぜひ御見解をお聞かせを願いたいというのが、来ていただいた趣旨なんです、どうか一つ御所見をお伺いいたしたいと思います。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ILOの条約の批准の問題について、ただいま藤田委員からのお話がございましたが、国協局長は、従来の経過なり、あるいは実績、あるいは他国との比較等について技術的な御説明をしたことと存じますので、その点は、さように御了承を願いたいと思います。  私といたしまして、日本がILOに加盟しておりますことは、日本が国際社会に出て参ります上において、国際間のいろいろな重要な取りきめの一つとしてILOの決議等も尊重して参らなければならず、また、問題によりましては、むろんその決議ができますときに、日本側がそれに対して反対の態度をとる場合もあろうと思いますが、決議ができまして、それが世界的な規則になって参りますれば、それを尊重して参りますことは当然だと思うのであります。ただ、これらの問題は、国内のいろいろな経済発達の段階もございますし、あるいは国民の長い間の習慣を急激に変えるというような問題も起ってくるかと思うのでありまして、従って、これらの問題を国内行政的に十分関連させて、そうしてこれらの条約を一日も早く批准して、日本もそれらに従っていき得るような態勢に逐次整備していくということが必要だと思うのでありまして、そういう意味においては、条約討議の際に、日本がそれぞれの条約に対してとりました立場等からも類推して、あるものはすぐに国内態勢が整って批准できるものもありましょうし、あるものについては相当長期間をかけてそれらの態勢を整備していかなければならぬ場合もあろうかと思うのでありまして、そういう意味において、逐次国内態勢が整備されていく、また国内態勢の整備の一つの機縁になるというようなふうにも考えられるわけでありまして、そういう意味においては、やはり将来にわたってこういう国際的な関係を十分尊重しつつ、国内態勢の整備というものに努力して、そうして国際社会に同じような立場でもって歩いて行き得るようにすることができることを、私として希望し、また、そういうことが適当であろうと、こう考えておるわけであります。
  121. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の外務大臣の御所見については、努力をすると、で、一般的なILOに対するお考えを申されましたが、ところが現実の問題は、大臣、百七つのうち、今、日本の批准は、先ほど私が申し上げたような状態の中でとまっている。この委員会で問題になっているのは、団結権の自由の問題が、決議案として出されて問題になっている。これはここで私はあなたと論議しようとは思いませんが、そのように、今日の近代社会がもうとっくに卒業しているような問題が、まだまだ未批准で残っているというところに問題がある。労働時間の問題、社会保障の問題、その他いろいろな問題がある。だから私は政府に、労使一、一という会議でもって三分の二以上できめて、そうして国際労働基準を作り上げようというこの趣旨を、私はやはり引き上げていこうという日々の努力が具体的にされないと——一般においては非常に大臣のお言葉の通りに理解していいと思うんですが、ところが、それが具体的に実現されないと困るという問題で、だから労働大臣、通産大臣、外務大臣が特に関係があると思いましてそういう質疑や御所見を承わっておるわけなんですが、主管大臣は労働大臣であるが、特に協力関係にある外務大臣としては、もっともっと努力されて、国内の水準を上げる、また、国際的な水準がきまれば、これに合わすように努力をするように、具体的な処置が講じられなければ……。私は、一番よく知っていられるのではないかと思っているのに、単にそうだと、ILOと協力していかなければならないものだということだけでは、ちょっと私は今の現実の問題と、少し離れ過ぎるのじゃないか。だから、外務大臣としてはこのILOの問題が、今度はILO全体の問題になっておりますから、積極的に一つやりたい、今年は一つやりたいというお気持のほどを、一つお聞かせを願いたいと思います。
  122. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国内の労働上の環境を改善し、あるいは労働関係の諸般の法規を整備していくというようなことは、私は非常に必要だと思うのであります。私も政府に入ります前に、自分が事業を経営しておりまして、能率的な労働力の結集ということが、やはり生活の向上であり、産業の向上であり、また、諸般の環境の整備ということが、実質的に労働の能率を高め、そして非常に大きな生産力の原因になると考えもし、やってきたものであります。従いまして、私としては国内の諸般の問題が整備されるということについて、労働関係の担当の仕事はいたしておりませんし、あるいはまた、通産行政の方の関係の仕事をしておりませんが、十分関心を持っておることは、私の経歴から申しても当然持っておるわけであります。ただ御承知のように、この種の協約が二十年前には相当非常な勢いで批准されたが、その後一向に進んでいないというのは、現状から申しますれば、終戦後の混乱したいろいろな状況その他から起ってきておるのでありまして、そういう意味において、国内態勢の整備強化という問題についても、必ずしも十分でなかった点もありますし、あるいは急激にいろいろな変化が起ってきておりますので、それらに対する対応力というようなものも、必ずしも十分整備しておらぬ点もあると思います。現在の労働大臣は、こういう問題について非常に熱心でありまして、この種の問題につきましても、過去の取りきめられております条約等について十分検討を加え、一面においては、それらの検討を加えた結果として、国内法制の整備というような問題についても考慮しつつ労働行政を担当しておられるのでありまして、そういう意味において、私は敬意を表しておるわけであります。われわれといたしましても、むろんそういう面について日本の経済産業の発展を庶幾する上においては、やはり適当な環境と適当な待遇とその他諸般の労働関係を整備する必要があると思っておりますので、今後ともそういう問題について十分な関心を持って側面から協力していきたいというふうに考えております。
  123. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、大臣にもう一言聞いておきたいと思います。  私は、今日の外交というのは、むしろ経済外交とよく言われるように、ほんとうにウエートからいくと、経済の外交が非常に高いのじゃないかと思います。そこで問題になるのは、日本の製品の、または外国の製品の貿易の問題、過去を振り返って見て、さっき通産次官に申し上げたのですが、チープ・レーバー、ソーシャル・ダンピングというような形、今日は、同じ形ではありませんが、とにかく日本の製品のボイコットの問題、出先においでになる商務官ですか、こういう方がおいでになっておるといっても、やはり国を代表して経済外交をおやりになる。私は、そういうところにおいて——今ここで論議をしておるようなILOの労働基準、社会保障の問題を、近代国際社会の中で経済外交をおやりになるところにおいて、いろいろの問題を、あなたの直接の出先が、身に感じておられると思うのです。だから、そういう問題をやっていくと、どういう工合にそれでは外務省の出先公館は、この問題を、ILOの問題を、やっていくのかということに、非常に私は疑念を持っておったのです、今まで。いろいろ外務省としてもやはり経済外交の非常に大きな役割を果されるのですから、今の外国における輸出商品ボイコットの問題も、単に国内のいわゆる産業保護というだけでなくて、ことに全体的にある問題というのは、苦汗労働から生まれてきた日本の商品に対してどうこうというのは、その土地のいわゆる労働者とか社会人とかいうものが、非常に全体的にそういう目をもって日本の貿易というものを見ておるという工合に私は感じ、だから、貿易というのは、一時的、瞬間的に伸びるときもありましょうけれども、しかし、どこかにおける要するに苦汗的な条件のところがあることによって、他の国際的一般的繁栄のじゃまになるという工合に、明確にILOが宣言しておる。そういう精神というものは、この国際社会の貿易親善についても、非常に重要な要素を持っておるのではないか。だから、そういう面から見て、私は外務省の今までおとりになってきたこの問題を見られる目というものには、熱意が足らぬという工合にしか感じられなかった。大臣は、いろいろと生産についてこられた今までの歴史の御経験を今お話しになりましたけれども、なおさらそういう問題については身に感じられておると思う。だから、そういう点について、たとえば今の貿易のボイコットを受けておるような問題が、どういう工合に、相手の国はどういう感じを持っておるかということが一つと、それから在外公館の出先が、公館長会議だとか外務省なんかに報告をされるときに、この外交問題についてどういう報告がされておるかということについて、この際、お聞かせを願いたいと思います。
  124. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 経済外交と申しますか、あるいはその中の一つであります輸出貿易の振興という建前からしまして、日本の商品の輸出増加あるいは低価格によりまして、それが日本のソーシャル・ダンピングではないかというような問題は、しばしば各地で提起されるわけでありまして、まことにそういう問題が起ることは遺憾であります。われわれとしても、そういう問題について十分情報を集め、また、輸入制限なりあるいは関税を上げるというような問題が起って参りましたときに、日本の立場というものを十分説明して参らなければならぬと思うのであります。そこで、日本のソーシャル・ダンピングというものについては、私は若干の誤解があると思うのでありますけれども、日本人の国民生活全体のレベルから見まして、それをそのまま引き直して見る。しかも、それを労働賃金だけに引き直して見るというところに、若干相手国側の認識が足りない。あるいは故意にソーシャル・ダンピングの問題にそれを引きつけていくという点があろうかと思うのであります。しかしながら、日本がやっぱり国際社会におきまして、貿易をほんとうに競争していくためには、日本の国内の労働条件が十分に改善されて、そうしてそういう問題について、やはりどこからも、たとえ若干の誤解があろうとも、そういう問題が指摘されないことが望ましいことなんであります。ただ、日本の御承知産業組織というものが、輸出産業のおもなるものが中小企業を主体としてやっておりまして、過去におきましては、やはり人口過剰の関係もありまして、そして安い品物を、粗悪であろうと安い品物を売っていく、こういうような立場からいきますと、やむを得ず低賃金になる、特にそういう問題に関して、低賃金になることが起り得ると思うのであります。これはやはり日本産業全体が技術的にレベルを上げまして、そしていい品物を作っていく、質のいいものを作っていくということによって、相当な価格で、従来言っておりますように悪かろう安かろうではなくて、よかろう高かろうという段階に持っていかなければならぬ、そういう面については、むろん技術的に、労働者技術的水準というものを一面では非常に上げていかなければならない、他面は、中小企業その他に対する金融方面の政策その他によりまして、十分にそういう仕事ができる、あるいは新しい技術を取り入れて、いろいろな金融的な措置その他が、並行して国内産業政策の上で行われて、そうして初めて十分ないい品物を、しかも高くというような段階に持っていけるのではないかと思うので、御承知のように最近戦後十年が過ぎまして、戦前と比べて、日本技術水準というものはずっと上ってきて、いろいろ輸出しております物の品質も、決して戦前と比べて悪い物ではない、むしろ非常に質のいい物が出てきておる、これがなお過当競争その他のために安く売られるということは、はなはだ残念なんでありまして、そういう面等に注意して参りますれば、従来いわれておりますような低賃金でなくても、十分な賃金も給与しながら、いい品物を売って、そして外国からもソーシャル・ダンピングというような点についての苦情といいますか、あるいはある場合においては言いがかりとも思うわけでありますが、そういうものを改善していけるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。そういう意味において、全体のいろいろな力を総合して、一日も早くそういうことに持っていこうということを、われわれは経済外交、特に貿易等の問題を取り扱っていて、感じるところでありまてし、外務省といたしましても、今後のそういう問題については十分関心を持ってやらなければならぬと思うのであります。ここで外務省の言いわけを申し上げるわけでもございませんが、戦後、外務省の機構はこわれておりまして、急激に外務省が関係いたして参ります国々の数も多くなっておりまして、なかなか人手も足りないということであり、あるいは外務省内における仕事も非常にふえておる関係上、両々相待ってこういう問題についてもっと十分注意をしながら、あるいは労働省なりあるいは通産省なりと、外国等の実情等について打ち合せもし、あるいは情報等も入れ、そして努力していくところに、若干欠けるところがあるようにも考えるのでありまして、今後ともそういう面については、われわれとしても十分の努力をして、他の関係各省の御期待にも沿うように、われわれ日本の貿易を振興しておるのでありまして、いたずらにそういうことの汚名と申しますか、そういうことのために輸出貿易が阻害され、あるいは制限され、あるいは関税問題等が取り上げられることのないように、努力していかなければならぬ、こう考えております。
  125. 山本經勝

    山本經勝君 今、藤山外務大臣が言いわけではないという御説明ですが、実は言いわけそのものだと思うのですよ。問題は、先ほどおっしゃったようにILOの条約批准に関する問題は、事、労働省が所管省として労働大臣が中心になってやるということは、私ども一応存じておる。ところが、ILO条約の根本になっておる規定を見ますというと、総会で決定された条約案あるいは勧告等、これは日本政府代表が参加してやっておるのですから、帰ってきて閣議に報告するはずなんです。しかも、これは一年半の間に少くとも検討をして、何らかの意思表示をしなければならぬことになっていることは、外務大臣御承知通りなんです。そうしますと、内部態勢をこれに合せることの準備が必要だといわれる、そうしますと、当然この間に国内で閣議の報告を経て、そうしてしかるべき対策が、この国会にはかられることになっている、立法府にはかるということになっている、こうした手続は、ほとんど今まで過去三年間においてはしていない、また、同僚、先輩等の話を聞きますと、その間にそういう事例があまりあっておらぬ、そうしますと、国内態勢がいわゆるこの決定された条約案あるいはまたこの勧告等の内容について、日本の国内内部の事情があるために阻害されている、こういうことに実は現在なっておるのですよ、そのことが、今この委員会で非常に問題になって、この国会を通じてやかましく検討されている。そこで今、外務大臣の言葉をかりて言えば、国内態勢を今からぼちぼちと整備すると言われますが、その手続、順序等は何一つやっておらない、この間政府代表でILOに出られております飼手参事官ですか、この方のお話も聞いた。ところが、これは帰ってきましたら当然義務づけとして閣議に報告がされている、そうしたら、閣僚の一人として、しかも外務大臣という重要なポストにおられて、しかも外交を担当されておって、その外交の場面では国際連合と並んで非常な重要ないろいろな機関がありますが、これらのものは、もともと基本は国際連合を中心にして動いておる実情である。そうしますと、当然外交問題としてもう少し積極的な推進方がなされなければならぬと思う。それは単に所管が労働大臣である、あるいは労働省であるからというので見送るような事態ではない。そのことがむしろ国内の状態を非常におくれた状態に温存するために、政策的にやられたのではないかと、悪くとると、解釈できる、これは非常に重大な問題であって、国内情勢を整備するために必要な手続をおとりになってきたか、これをまず第一点、お尋ねしたい。
  126. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん外務省は、政府代表の一人でもあり、当然これらの問題について十分な発言をして参らなければならぬのでありまして、過去においても私はおそらくそうだったと思うのでありますが、今後においても、われわれとしては、もちろん条約を作り、内容等につきましては、労働省その他と十分協議をしていかなければならぬわけでありますけれども、当然条約を締結した一人の責任者として、当然いろいろな意味において努力しなければならぬことは、申すまでもないことであります。
  127. 山本經勝

    山本經勝君 もう少し具体的なことを私はお伺いしたい。たとえば、さっき申し上げたように飼手参事官が政府代表で、そうして労使の代表二名と、合計三名が日本のILO代表として正式に理事会あるいは総会等に参加をして参って、そうして帰ってきますと、その状況を閣議に報告したといわれている。そこで、閣議でその問題について、今言われたように国内態勢が必ずしもその決定を見た条約案あるいは勧告案等について一致しないかもわからない、そういう場合には、しかも理事国という立場でありますから、進んで国内態勢を整備して、それに合わすという努力、それがされておらなかったということを私は指摘しておる、そういうことがやられたのかやられなかったのか、そのことをはっきりお聞きしておきたい。
  128. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこの種の条約に関係しております外務省としては、そういう問題について、十分関係各省と連絡しながら話し合いを進めていく、しかし、国内的な政策の問題については、それぞれ当該省、担当の方々がその問題についてさらに具体的な点を考えるということになろうかと思います。
  129. 山本經勝

    山本經勝君 それは今大臣のおっしゃる通りだと思うのです。閣議に報告されて、その閣議で一番大事なのはやはり総理大臣です。あるいは副総理、その次はやはり外務大臣という立場があると思うのです。そうしてしかも、事条約の批准に関する問題であれば、当然、批准に関する限り、当面の批准の中心になるという見方を私は持っている。これは間違いかどうか。もし、そうだとするなれば、少くとも、その批准がなされるような国内態勢を整備することは、それぞれ所管大臣が中心になってやることは申すまでもありませんが、まず手続としては、国会に諮って、つまり権威ある、権限ある立法府に、立法機関に諮るということにきまっておりますが、そのことは、日本では国会だと思うのです。そうしますと、当然国会に報告をして、そうして批准の促進等について、今言われる内部態勢を作る必要があったはずです。そういう手続を努力されたのか、やっておられるのか、私ども一向そういう事実を承わっておらぬ。ですから、やられたのかやられないのかということを、実は大臣から伺っておきたい。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 過去のいろいろな問題につきましては、私も、おそらくそういう手続あるいはそういう努力をされたのだと思います。私としても、今後、外務省が調印いたしました条約の進行等については、十分な努力をしていきたいと、こう考えております。
  131. 山本經勝

    山本經勝君 今さら、その話を伺っているのじゃなくて、先ほど藤田君の質問の中でも申しましたように、すでに長い期間、なるほど、あの戦争当時に一時、戦争前から脱退した日本の立場もありました。しかし、復帰してからあとでも相当な期間になっておる。でありますれば、当然、百七つもの重要な案件がいわゆる条約案となり、あるいは勧告等となって発表を見ておるのですから、それらの中で、私どもは、たとえば労働時間と、あるいは団結権の自由、あるいは結社の自由、団結権の擁護、あるいはその他のいろいろな大事な問題、最低賃金もあります。こうした協定が、重要な案件については、日本では批准されておらぬのですが、こういう重大な基本的な案件については、いやしくも優先的に、外務大臣みずから労働大臣等と協力をすることによって、批准を促進する内部態勢の確立に努力すべきであったと思うのです。そういう過去の事実は、なさっておったのか、なさっておらなかったのかということを聞いている。今からやりますということは、これは当然のことであって、言い得べくして、それは非常に不安定の状態にある。私が伺っておるのは、今までに、この規定通りなぜおやりにならなかったのか。あるいは、やっておられるのなら、いつ、どういう方法でやったかということを伺いたい。こういうふうに申し上げたのであります。
  132. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 労働大臣とは、この種の問題については、いろいろ話し合いをいたしておるわけであります。労働大臣としても、内閣に労働懇談会を作って、条約そのものについてずっとレビューをして、そして処理の方法をきめていこうという考え方でおられるのでありまして、私どもは、それを了承し、同時に、それの進行を待っておるような状況でございます。
  133. 山本經勝

    山本經勝君 どうも大臣、私、納得がいかぬのです。それはどういうことかというと、ILO条約の基本になる規定の中に、加盟各国は、総会で決定を見た条約案あるいは勧告案について、それぞれの国々の権限のある機関に諮って、この批准を決定するということがうたわれておる。しかも、この期間は一年半、一年六カ月ということになっているのです。そうしますと、今申し上げたように、日本の代表が参加してきめて、そうして閣議に報告を帰ってするのですから、したときに受けて、それを直ちに、国内態勢と合わなければ、国内態勢を直すことと同時に、問題は、日本の権限ある機関といえば、国会だと思うのです。この国会に報告をして、そうしてどうするかということ、あるいは、こういう点に欠陥があって批准ができないが、この問題はどうするかということ、あるいは、その他必要な事項について、閣議は少くとも国会に諮るべきであると思うのです。そういう規定になっておる。ですから、そういう手続をとられなかったのはどういうわけなのか。あるいは、とっておられたというなれば、いつ、どういう形式でとりましたか。こういうことを伺っておるわけであります。
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 批准をしない条約がたくさんあるわけでありまして、それらの問題を十分検討してみる必要がありますので、労働大臣等とも協議し、労働大臣も、今回は積極的にこういう問題を一つレビューしてみようという考えのもとに、内閣にあります労働懇談会等にかけて、いろいろな条約をずっとレビューしておられる段階だと思うのであります。そういう意味で、いろいろ若干のわれわれとしても進歩を見るような方法をとりつつあると、こう考えておるわけであります。
  135. 山下義信

    山下義信君 関連質問。外務大臣は、非常に慎重な答弁をしておられるのでありますが、具体的にはっきりとしたお答えを、身のある御答弁を願うことは、ただいまの段階では、あるいはわれわれが無理をしいるのであるかもわからぬと思うのでありますが、しかし、せっかく御出席下すったのですから、少しばかり身を入れてお答え願ったらどうかと思うのであります。おそらく外務大臣としては、言うまでもなく、この問題については労働大臣と御協議に相なって、外務大臣としては、できるだけ早い機会に批准すべきであるというおそらく見解はお持ちだろうと思う。ただいままでの御答弁の中に、若干の御示唆がありましたが、あとは労働大臣の決意をお待ちになっておられるのでしょう。外務大臣としてはおそらくそうだと思う。言うまでもなく、公労法の第四条第三項を削って、職員外の労働組合の代表者をも、これを認める段階に踏み切るということの政府部内の御意見の決定の時期をお待ちになっておるのだろうと私どもは推察する。また、そうでなければならぬはずであると思うのでありますから、具体的にお答えをいただこうとは思いませんが、外務大臣としてのお見通しとしては、この条約の批准が近い将来にできる見込みがあるという、また、しなくちゃならぬというお見通しを持っておるかどうかということの御所見ぐらいは、お漏らしおきを願った方がいいのじゃないかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  136. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いろいろな未批准中の条約の問題につきましては、ただいまそれぞれ検討を、政府としても、労働大臣を中心にしていたしておるわけでありまして、その一々について、見込みがある、見込みがないというような、あるいは、いつの時期にこの条約は批准できるだろうかというところまで、ただいま申し上げるわけにはいかないと思うのでありますが、前提として、私が申し上げましたように、慣習に従って、できるだけ日本の国内態勢を整備さして、そうしてこういう条約につきまして、十分な効力の発生するような方向に努力をするということについて、私どもとしても十分考えておるわけであります。
  137. 山本經勝

    山本經勝君 非常にくどいようで、申しわけないのですが、重大なことはやはり手続なんですね。まず、これは誠意を持って努力をするというとかく御答弁がございますが、じゃどういうふうにしてするのかということになると、さっぱり、あいまいもことしておって、けじめがつかない。それで、今まで再三にわたって、繰り返し御質問申し上げたのですが、そこでも、きわめて不満足であるだけじゃなくて、結局、何ら得るところがないという格好のようですが、しかし、ILOに加盟をして、責任のある立場で、しかも、理事国となって、そうして今後ILOを発展させ、そうしてそのことは、ILOの宣言の中にもありますように、世界の平和なり、あるいは人民の幸福をこいねがう気持に一致、集結しておると思うのです。そうしますと、そういう理想と目標を実現するためには、日本がやはりこれに加盟しておりますし、理事国でもあるのですから、進んで国内態勢をそれに適合するように改善していくという努力がなければならぬと思うのです。その手続としても、当然、申し上げるように、閣議に報告せられたら閣議で取り上げて、どうするかということを検討し、どういう欠陥があるかということであれば、その欠陥の是正の方法をあわせ講じなければならない、そういう努力が具体的に今まではなされておらなかったと、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  138. 木島虎藏

    木島虎藏君 今の山本さんの御質問に関連して、私からちょっと確かめておきますが、今の八十七号の批准に関しては、労働大臣から御説明を伺ったところによると、それをどういうふうにやろうかということで、今、審議会を開いて検討しておられるということを聞いたのですが、外務大臣もその結果をお待ちになっておるかどうか、そういう点ですね。その点一つお聞きしたいと思います。
  139. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話のありましたように、条約が調印されますと、これを批准するということをやるわけでありますが、それについては、御承知のように、こういう条約についての成立の過程においては、あるいは日本として必ずしも初めから賛成でない、あるいは現状において適合していない立場の上からいって、急速にできないような問題もあることはもちろんであると思います。従って、過去においても、それぞれ政府が十分な努力をされ、またあるいは、そういうような批准をし得るような状態に国内の労働行政上、あるいは通産行政上の措置をだんだんとられながら、そういうものが将来ある時期において批准できるような方向に持っていかれつつ努めておられるということを私は信じておるわけなんです。そこで、今回の問題におきましても、労働大臣としては、こういういろいろな未批准の問題があるので、一応それをどういう準備なりあるいは国内態勢の整備の状況からにらみ合せて、まっ先にどういうものを批准に出していくかというようなことをただいま検討しておられるわけでありまして、私としては、やはり主管官庁の労働大臣のそれらの意見の決定を待っておるということは当然のことでございます。
  140. 山本經勝

    山本經勝君 大臣のお話もですが、今木島委員からお話のあった機関というのは、労働大臣が言っておりますのは、労働問題懇談会と称する大臣の私設諮問機関、これは、ILOの規定にあります権限ある国の機関ではございません、そういうものに相談をしておるというので、それが理由になるのは非常に問題だと思う。ILOで言っておる国の権限ある機関とは、立法府をさしておるということは明確になっておる。その立法府というのは国会である。だから、国会に報告して検討を求められる、あるいはそれに対して批准に対する国内態勢の整備をはかると、こういうことになっておりますから、これは、大臣は十分御承知の上で適当な答弁をなさっておるような印象を受けて、私は非常に残念に思う。もしそういう、私の申し上げた言葉がそうでないならば、御説明をいただいておきたい。  それからもう一点、これは質問と若干違いますが、要望を含めて申し上げておきたいのは、実は私は、この委員会で、駐留軍労務者の離職対策の問題をいろいろ検討してきました。ところが、その中で大事なことは、駐留軍労務者の離職対策の中で、離職をなるべくしないような方法を講ずることが必要であろうと考えて、労働省あるいは関係各省、調達庁等と話し合いをして参りましたが、非常に大事な問題が起ってきた。それは、行政協定十二条の解釈の問題です。だからその問題と、さらに最近新聞を見ますというと、皆さんの切実な要望、あるいは特需等対策連絡協議会等が設けられて、あるいは対米あるいは対軍交渉をやっておるにもかかわらず進行しない状態、この問題について、大臣としっくりこの委員会で御意見を承わり、あるいは取り扱ってこられた経過等も詳細にお伺いして、さらに将来の対策を検討いたしたい。こういうことで、御出席を再三御要求したんですが、遺憾ながら外務大臣、やっと国会の中で初めてこの社労委員会に顔を見せていただいて、非常に光栄に存じております。実は、御答弁はきわめて不満だが、私は、本日時間もないようですから、本日は、外務大臣に対する質問はこれで打ち切りますが、この次の機会に、あらためて委員部から連絡すると存じますので、一つ必ず御出席をいただいて、そうして外務省からも、私の質問内容について先ほどもお問い合せがありましたから、私はかなり懇切に申し上げておきました。今度は十分に御準備をしておいで下さるようにお願いして、私の質問を打ち切りたいと思います。
  141. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私が先ほど外務大臣に質問いたしましたことは、通産省もそうですけれども、特にこのILOの問題で重要な役割を果しておるのは、外務省の出先公館の人たち、その人たちは身に感じ、肌に感じて、この労働基準引き上げ、これは世界経済の発展、国内の経済発展、繁栄のために必要な問題だ、だから、そういうことを感じて、今日はもう在外公館の方々でも感じておられる、国内でも、経済外交といわれるこの状態の中で、所管の大臣が労働大臣であるけれども、しかしこの問題は、積極的に労働大臣を鞭撻し、また閣議において積極的にこの推進をやらない限りは、これは通産行政と関連いたしますけれども、日本の経済というものには大きな支障が来るということを私は考えておる。そういう面から、もっと積極的に外務大臣としてはこの問題に取り組んでもらわなければ困るということを主としてわれわれは質問をしておるわけです。ですから、今のILOの要するに憲章による手続その他の問題が、重大な支障があったときでも一年六カ月、十八カ月でこの手続をとらなければならぬ。具体的な十分な手続をとられないところに問題がある。だから、八十七号の問題はそのうちの一つです。ILO全体の問題として私たち質疑をしておるわけですから、根本的に、ILOに対して外務省はもっと真剣さがなくてはいかぬ。もっと真剣に取り組んでいかない限り、日本の経済の問題にも重大な支障が来るという立場から、私たちはこの問題についてあなたに御所見を伺っているんですから、その点は、私は明確にしてもらわなければならぬということなんです。だから、この問題は、今まで以上に積極的に、それじゃILO全体の問題として取り組んで、日本の将来の経済への問題のために努力をするということをお約束されるわけですね。それだけ承わっておきます。
  142. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私といたしましては、決してILOの国際労働会議を軽視してもおりませんし、また、その中で行われている諸般の取りきめというものについて、重大な関心をもって見ておるわけだし、また、私自身の基本的態度というものは、先ほど申し上げたような考え方でおるわけです。従って、むろんこの問題は、国内態勢の整備がされないで済むというわけにはいかぬものがたくさんあろうと思います。またあることが当然だと思います。従って、それらのものを整備してゆくということは、ただいまお話のように、国内官庁のそれぞれの任務ではありますけれども、われわれとしては、国内官庁の方々と協力し、また国際的な立場に立って、それらの問題について十分意見も言い、協力し、あるいは推進に努めるということも、今後とも私どもの考えとしては十分やっていきたい、こういうふうに考えておるわけです。
  143. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、このILO全体の問題は、総理大臣に来ていただいて、内閣の責任者である総理大臣から、この問題と日本の国民生活との関係について質したいと私は思っております。しかし、きょう外務大臣には今の問題について質疑が行われました。時間がないようですから打ち切りますけれども、これに関連して、通産省の次官に一言だけお聞きしておきたいんです。  今、いろいろ外務大臣との関係において論議がありましたように、何といっても私は、日本の経済の問題に関係して、外務省と通産省は、このILO批准については重大な関心と積極性がなければいかぬと私は考えている。もうきょうは時間がありませんから、くどくは申しませんが、先ほども答弁がございましたけれども、私は、この前中山さんですが、中山さんの答弁には、何か知らぬけれども、この質疑を行なっていくと、たとえばぼけてくるわけですね。労働問題というものから経済政策、経済政策として考えられることが、この労働問題、基準とか保護とかいう問題がぼけてくるような考え方が、非常に私は印象として受けたのです。そういうことであっては、私はとんでもないことじゃないか。今も外務大臣に申しあげたような、もうそこまで国際社会に生きていこうと日本においては来ているのじゃないかと思う。だから、経済政策を推進するというなら、国内の今の労働基準を上げて、国際社会に仲間入りしていきたいという日本の政治の熱意がなければ、日本の経済も伸びない。外国とのつき合いもできないというところまで今日来ているということを私は御認識いただきたい。そういうことについて、一言だけ御所見を伺っておきたいと思います。
  144. 小笠公韶

    政府委員(小笠公韶君) 先ほどもちょっとお答えいたしました通りに、生産性を上げていくということは、私は、労働の生産性を上げるといいますか、それと密着不可分の問題だと実は考えておるのであります。そういう意味から、経済の発展をはかっていくという問題の一翼をなしておる、こういうふうに考えております。特に対外輸出貿易につきましては、すでに御承知通りに、日本の商品は、戦後比較的に戦前と違った形において出て参っておりますが、特に輸出の伸長の問題から考えましても、安売り必ずしも永続的な市場でないことは、もうすでに御承知通りであります。いわゆるリーズナル・プライスで安定した輸出を継続していく、こういう意味におきましても、今お話しのような問題に十分留意していく必要があると私は考えます。
  145. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  146. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して。
  147. 片岡文重

    片岡文重君 極端に短くということですから、極端に短く。(笑声)  ILO条約関係ばかりでなしに、諸外国との条約なり協定なりについて、日本が信義を守っていくということは、国際信義を高めていく上においてきわめて必要なことだと思うのです。従って、国際関係一切を外務省にだけ依存するという消極的な態度では困ります。しかし、外務省としては、その本来の職責からいって、この国際信義を高めていく上からも、日本の国際信用を高めていく上からも、これらの諸条約あるいは諸協定の締結、批准等については、できるだけ積極的に行動をされなければならぬと思いまするし、今までの御答弁を伺っておると、積極的に努力をされておったかに御答弁があったようであります。しかし、結果としては、私どもとして、満足な、積極的な御行為があったとは遺憾ながら了承できない。そこで、将来のことについてのお尋ねなんですが、たとえば、労働省関係には、ILOの条約を初めとしていろいろ問題がある。そのほかにも、あるいは運輸省にも、あるいは通産省にも、あるいは大蔵省にも、国際間の取りきめ、諸条約等の案は、まだまだたくさんあるわけであります。で、それらの諸条約なり協定なりの内容に立ち至って、外務省が一々マスターしていくということは困難でありましょうし、これの指導権をとれなどということはもちろん申し上げませんが、いやしくも外務省が積極的にこれらの諸条約なり諸協定をすみやかに締結をせしめ、そして国際信義にもとるようなことのないような方法を講ずるためには、現在の一体外務省の陣容なり組織なりで十分に足りるのかどうか、少くとも私は、たとえば外務省の中に、条約局なら条約局の中に、通産省担当あるいは労働省担当あるいは運輸省担当、たとえばです、それぞれの専門の担当官を置いて、常に関係の諸条約なり諸協定、あるいは勧告等について周知、鞭撻し促進をはかる、このくらいの措置は少くとも私はとらなければならないと思うのです。今そういう手段がとられておるのか、もしとられないとするならば、今後そういう特別の専門の促進の相当官を置くような意思はないかどうか、お聞きしたいと思います。
  148. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御指摘のありましたように、また、先ほど私が申しましたように、外務省の陣容というものは、必ずしも現在のようなボリュームの仕事を積極的にこなすだけの十分な組織に私はなっておらぬと思います。従いまして、本年度も若干の予算の増加はしていただきましたが、引き続き、やはり独立国も八十数カ国になってきておりますので、大公使を交換するのも、それに応じた数を出さなければならない。外務省の設置法等の関係もありまして、また、予算との関係もありますので、私としては、外務省の拡充三年計画というものを立てまして、そうして三年目にはこのくらいの人員で、このくらいの予算で大体いくというような目標を立てて、今後常時大蔵省と折衝していきたい、こういうふうに考えておるのであります。  現在、御承知のように、外務省がむろん原局ではないのでありますけれども、サケ・マスから始まりまして、貿易の関係、原子力の関係、またこの労働関係というような、非常に広範な条約の締結を受け持っておるわけであります。そういう意味において、現在の陣容その他では十分でないと思っておりますので、私としては、できるだけそういう拡充計画のもとに人員を増加させて、そうして外務省の機能というものを十分に発揮できるように今後は持っていきたいということで、ただいま省内でも、そういう各局からそれぞれの案を出させまして、近く最終的な三年計画案というものを作って、そうしてこの程度の予算でこの程度の人数の充実、また、それに従いました今御指摘の質の問題もあるわけであります。広範多岐の問題を扱うわけでありますから、質の問題におきましても、いろいろな知識を持った人を吸収していく必要もあろうと思います。そういう点について、十分な考えを持って進めておるわけであります。
  149. 片岡文重

    片岡文重君 三カ年計画という外務大臣のお立てになられました計画内容は、私ども残念ながらつまびらかにいたしておりませんから、どういうことかわかりませんが、今私がお尋ねいたしました、他の官庁との間の促進といいますか、積極的な外務省としての行動をなされるのに十分な配慮が当然その中に私は含まれておると思いますが、その点について、どういうふうにこれを促進されていこうとしておるのか。御計画をせっかくお立てになったので、もしその中に含まれておるとするならば、その一端をお示しいただきたいと思います。
  150. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、各局からそれぞれ案を出させまして、ただいまそれを検討して、最終的な案はまだできておりませんけれども、最終的な決定を最近して、そうして今後やって参りたいと思います。これは、私が初めて昨年——率直に申し上げますと、予算折衝をやったときに痛感したわけでありまして、そういう見地から、計画的な案をもって三年ぐらいに拡充していく、それには人も相当ふやして参らなければならない、人につきましても、今お話のありましたように、専門的な分野の人も外務省の陣容の中に入れて参りませんと、プルトニウムの問題もありますし、サケ、マスの問題もありますし、あるいは労働関係の法規の問題もあります。あるいは文化的な仕事の面もありますし、非常に広範多岐にわたって、外務省は、ほとんど国内官庁の持っておりますあらゆるものの窓口として通過してくるわけでありますから、そういう意味で、人的な充実は十分考えなければならぬと思います。
  151. 片岡文重

    片岡文重君 私のお尋ねをしていることに一つ御答弁いただけばいいのですが……。外相の御抱負は十分わかりました。そこで、今言ってるように、たとえば、労働省なら労働省の担当は置くのか置かれないのか。運輸省の関係に対して、外務省としての積極的に行動をされる担当者を置くのか置かないのか。その点をお伺いしておるわけであります。
  152. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、組織の点につきましては、最終的な決定はいたしておりませんので、検討しておりますが、しかしながら、こういうふうに外務省の仕事が広範になってきますと、やはり労働省関係は労働省関係としぼりますか、あるいはたとえば、通産行政の中においても、通産行政というだけにしぼりますか、あるいは経済協力と、あるいは貿易という面でしぼりますか、そういう点については、いろいろ問題のあるところであります。しかしながら、それぞれ持っております仕事が非常に広範にわたりまして、そういう問題についてそれぞれ専門的な人を置くと、今では地域別、あるいは経済と政治というぐらいな大まかな考え方で課が分れ、あるいは人がいるという程度なのでありまして、しかも、それも数人というようなことで広範な問題をやっておるわけであります。例を国連にとりましても、国連の関係もやっておりますか、こういうような労働関係の法規の問題も扱っておりますし、そういう意味においては非常に手不足だと思います。従って、今御指摘のように、そういうものが課になるものもありましょうし、あるいは担当の人だけを選定してするということでいい場合もありましょうし、いろいろその点については組織の上で問題はありますけれども、ただいま申し上げましたような、御趣旨のような考え方を取り入れながら将来の機構を整備する。これも財政上の状況ともにらみ合せなければなりませんので、私は、実は遠慮して、三カ年計画というようなことでやろうかと、こう思っておるわけであります。
  153. 片岡文重

    片岡文重君 どうも御答弁がはなはだお上手です、抽象的で。お上手ですけれども、私のお尋ねしている結論に対してはまだはっきりしておりませんが、少くとも要望申し上げておる趣旨は、おわかりいただけたようでありますし、三カ年計画だか何だかわかりませんが、その計画の中には、再び、こういう国際信義にもとるような未批准の条約が幾つも残されて、それが何回もこの委員会で論議されることのないように、やはり国際関係を担当する外務省としては十分に留意をして、具体的にやはりその対策を立てられるように、時間もないようですから、答弁は必要といたしませんが、強く私は要望しておきたいと思います。
  154. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 このILOに関係して、労働省に一言だけお伺いしたい。  あの四十回の総会の条約の勧告は、国会に手続をいつおとりになるか。それだけ聞かしていただきたい。
  155. 宮本一朗

    説明員(宮本一朗君) 目下手続をいたすべく準備しております。
  156. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、二十一日にその手続をおとりになるということを聞きましたから、そうですかと言ったら、よかったと思いますが、そうじゃないのですか。
  157. 宮本一朗

    説明員(宮本一朗君) 今国会に提出すべく準備をいたしております。
  158. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今国会に出すわけですね。
  159. 宮本一朗

    説明員(宮本一朗君) その予定で準備を目下進めておる状況でございます。
  160. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと明確にしていただきたいと思うのです。二十一日か二十二日か、どちらか、来週でしょう、今準備中だというから。今週には無理かもしれないが、そのときにお出しになるのですか。そうでないと、明日でもその問題で労働大臣に来てもらって、それをやらなければならぬので、それをはっきりしておいて下さい。
  161. 宮本一朗

    説明員(宮本一朗君) 仰せの通りに、来週中には出せるように準備いたしております。
  162. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  164. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案、労働基準法等の一部を改正する法律案、右二案を一括議題といたします。  質疑を願います。
  165. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、提案者に質問ということになるのですが、どうもこの法案について、私は理解をしておるわけですけれども、どうも、今度の問題、改正点について、理解の点が少し話と食い違いがあるように聞きましたので、のこ際提案者から、今度の法改正の趣旨の根本をなすものについて少し御説明を願って、それから質問に入らせていただきたいと思います。
  166. 大矢正

    委員外議員大矢正君) 御存じのように、けい肺にかかりました患者は、現在の医学をもっていたしましては、これを完全に治癒せしめることが困難であるというその立場から、またある場合には、今日の工学技術をもっていたしましては、あらかじめけい肺にかかることを予防することが不可能であるというような、こういった観点に立ちまして、三十年にけい肺法が制定を見たことは、御了承の通りでありまして、当時制定をされました時期におきましても、けい肺患者を保護することが、これは恩恵的なものではなくて、国としても、また事業主といたしましても、当然の義務として、このけい肺にかかった患者を保護しなければならないという一貫した考え方が流れておるものと私は考えております。従いまして、今回新たに改正案を提案して、お願いをいたしておりますのは、以上のような趣旨にのっとりまして、三つをこの際お願いをいたしておる次第でございます。  その第一は、法律にもあります通りに、作業転換をしなければならない立場のものをどのようにして救済をし、将来において四症度に進行し、入院加療を要するような人を未然に防ぐかという、このことのための法律改正の措置が第一点であります。これの具体的な方向といたしましては、作業転換をしなければならない状況に追い込まれた労働者については、原則としては、前職種の賃金を補償して上げたいという立場でありますが、しかし、いろいろまだ今日の情勢では問題点もあろうと思いますので、その額を百分の三十に限定をいたしまして、前職種の賃金の補償をいたしたいということが、これが作業転換に対する第一点であります。  次に、第四症度と認定をされてやむなく、入院加療をいたさねばならない立場のものに対する措置でありますが、これはやはり、今日の医学をもってしては治癒することが困難であるという前提がありますので、そういう意味合いにおきましては、やはりけい肺にかかった労働者に、療養を必要とする期間、療養給付を支給する必要性があるのじゃないか、こういう立場、それからいま一つは、現行保護法において、二年間休業給付の支給を受けて参りましたが、もう三年間これを延長して、休業給付の支給をいたしたいということ。  それから、第三点目といたしましては、入院患者が、現在の百分の六十の労災法または基準法規定によるところの給付をもってしては、完全に療養をすることができないし、また、家族の生活等も考慮いたしまして、これを百分の六十から八十にまで引き上げたい、わかりやすく言いますと、大体この三点に尽きるものと思います。  最後に、いま一つ特にお願いをいたしたい点は、それは、何と申しましても、けい肺にかかり、そうして職場を転換しなければならない、ないしはまた入院加療をしなければならない者が多く出るということは、経済的にも、また、人的な面におきましても、損失は非常に大きいと考えられますので、でき得る限り未然に予防措置を講ずるための国と経営者努力が必要であり、また、それに協力する労働者の立場も必要ではないかという観点から、ここにけい肺を予防するために、従来まで行われておりますところのけい肺審議会の下部機構といたしまして、特に予防部門を専門的に担当いたしまして、今後科学的に、医学的に、技術的に検討をするための機関を作り、学識経験者その他を網羅いたしまして、一日も早くこのけい肺が治療できるように、あるいはまた、予防措置が講じられるよう努力をいたしたい、また、かような考え方をもって措置をしていきたいというための法改正の要点であります。  以上、骨格的には三つの点にわたりまして、今回の改正提案をお願い申し上げている次第であります。
  167. 木島虎藏

    木島虎藏君 今お話を聞きまして、二、三点ちょっとお尋ねしたいのですけれども、第一点は、けい肺にかかった方は不治の病だというお話がございましたが、私にはよくわからぬですが、あるいは厚生省の方からでも、どっちからでもいいが、これはほんとうに、ほんとうにというか、近ごろ医学が相当進歩しておりますから、治癒の道があるかないかということが一点。  それから、もう一つ次の点は、これは発議者にお尋ねするのですが、なるほど今の御説明を聞きますと、私も、けい肺というのはあまり実はよく知らなかったのですが、お話を聞いてみますと、気の毒な病気だと思います。そこで、これは一つ職業病でございますが、私どもが今まで見聞きした中に、交通労働者のように、足が切られたり手が切られたというような職業病がございます。職業病と言っては失礼でございますが、職業上のそういう身体障害を受けられる気の毒な方がございます。そういう点との関連をどういうふうにお考えになるか、それがその次の点。  それから第三点は、これを提案になっておられるように、この通り実施した場合の経費といたしまして、国が支出しなければならぬ経費が一体どれくらいか。それから、これはおそらく経営者と申しますか、雇っている人が負担する経費があると思いますが、これが一体どれくらいか。しかも、それがだんだん全体がふえていくのか、減っていくのか。それでさしあたり、どれくらいふえるのなら、その次はどれくらい、その次はどれくらい、平年度およそ一体どれくらいのものになるかという、もちろんこれは、こまかいことはおわかりにならぬと思いますが、大体の規模でもおわかりになったらお教え願いたい。
  168. 大矢正

    委員外議員大矢正君) 第一点の、現在の段階において治癒することが可能であるかどうかという点でありますが、私が調べ、そしてまた、承わっております範囲内におきましては、治癒することは不可能であるという結論を見出しております。ただ、症状を外少なりとも固定をすることによって、本人の苦痛を減少せしめることはあり得ましても、完全に治癒せしめるということは、これは不可能ではないかと思いまするし、私の考え方というものは、単に私たちの考え方でなくて、労働省自体におきましても、そのことはお認めになっておられることと思いますし、また先般労働省から出されておりますところの、また労働省が編集をされておりますけい肺法の解説の本の中にも、これは不治の病であるということが明らかにされております。こういう点におきましては、私が先ほど来申し上げております、治癒することがまず不可能であるという考え方は正しいのではないかと、かように考えております。ただしこれは、特例の特例というものもありますから、百パーセントまるまる自信を持ってお答えすることはできませんが、まず九〇%以上は治癒することが不可能であるということは言い得ると思います。  次に公務上の負傷その他によって具体的には、手足が切断をされたというような人と、このけい肺患者との内容の相違をどう考えるかという問題でございますが、確かに公務上によるところの負傷もしくは疾病という点においては、考え方を同一にするかもわかりませんけれども、その内容におきましては違う点があるのではないかと存じます。たとえば、けい肺それ自身は、御存じの通りに、本人の過失や、それから、本人がまたいかように防ごうといたしましても、これはいわば防ぎ切れない疾病でありまして、本人の過失ということは一切ないのであります。ただ言い得ることは、本人がけい肺に耐え得る体力であるかどうかという、体質的な変化はありましても、本人の過失によってこういうような負傷や疾病にかかるということは、考えられない事態であります。翻って、公務上その他の傷害を見まする場合には、不可避である、不可抗力であるという傷害もございますけれども、またある場合には、不可抗力ではない場合もあるのじゃないかと存じます。で、そういう面におきましては、本質的に、けい肺というものと、それから負傷されて労災法を適用された方の相違がございます。従って、片方は職業病でございますし、片方は、これは職業病とか職業的負傷とかというものではなくて、明らかにこれは公務上によるところの傷病ということで、明確に区分ができまして決してこれは、かりに事故によって手足が切断されたというようなこれは、職業病ではないし、職業的な負傷ではないと言うことは、必ずしも当らないのではないかと思いますが、職業病という立場において明確に区分をする必要があるのではないかと考えております。  それから、次に経費の問題でございますが、この問題につきまして、今私の方でとりあえず計算いたしておりますのは、これは、三十三年度に限っての計算でございますが、この内容は、約二億三千万円見当の国費を必要といたすと考えます。当然半額が国費負担でございますので、あとの半分の二億三千万円程度の金は、事業主負担となると考えられますので、総体的には、両方合せた金額が必要だと考えております。  それから、それじゃ三十三年度はいいが、平年度は一体どうなんだということにつきましては、平年度というものを一体いつに基準を求めるかという点につきましては、今の段階では、確実にその基準をつかむことはできないと考えます。たとえて言いますと、平年度は二億三千万円の国費の負担でよろしいけれども、二年度はどうかということになりますと、二年度の罹病率、あるいは三年度には三年度の罹病率、こういうようなものを全部計算して参らなければなりませんし、その間におきましては、予防措置ないしは医学の進歩ということも考慮に入れざるを得ませんので、将来何年後に平年度として計算した場合に、どれだけの金額が必要であるかという御答弁は、残念ながら今の段階ではできないと存じますし、また、労働省といたしましても、確信を持った御答弁は、かりに計数を扱っておられてもできないのではないか、かように考えております。
  169. 木島虎藏

    木島虎藏君 今の平年度のわかりにくいということは、多少了解いたしますが、およそこの法案実施したら、三十三年度はこうだけれども、およそどれくらいのものだかということはおわかりにならぬですか。
  170. 大矢正

    委員外議員大矢正君) これは、けい肺という病気は非常に重篤な病でありまして、往々にして死を招くということは、御了承の通りであります。従って、普通の状態の場合に入院加療を要して、どの程度の期間本人がその後なお、健在とは申せませんけれども、どうにか余命をつないでいけるかという、この期間的な計数の問題になりますと、なかなか今の医学では、どなたといえども明らかに述べることはできないのじゃないかと私は存ずるのであります。それからまた、そういうことからいきますと、何年目に一体最高の要療養患者が増加をするか、あるいはまた、転換給付として三〇%の加給をしなければならない人員がふえるかということも、これまた、今一朝にして判断をすることはなかなかできないのじゃないか。しかし私は、当面、今年とそれから明年程度の予算の内容というものは検討できますけれども、三年、五年あるいは十年はどうなるかということは、なかなかこれは言い切れない問題であろうと存じております。
  171. 木島虎藏

    木島虎藏君 それでは、明年は一体どれくらいに推定なさっておるのですか。もちろん推定でしょうが……。
  172. 大矢正

    委員外議員大矢正君) 私どもの現在の推定によりますと、国費の負担額が大体三億八千万円程度で二年目は越せるのではないかと考えております。当然これは二分の一でございますので、経営者負担は、これと同額のものがあるということをつけ加えておきます。
  173. 木島虎藏

    木島虎藏君 それから、一つつけ加えるのですけれども、この間参考人を呼んでお聞きしましたけい肺審議会ですか、あのけい肺審議会の御意見を、この法案をお作りになるときにどの程度参酌なさいましたか。全然それには無関係かどうか。
  174. 大矢正

    委員外議員大矢正君) 御存じのように、けい肺審議会というものは、労使それから公益という三者の集合体でございまして、これは、法律的に規制をされております。かようにいたしまして、公益側は別でございますけれども、まあ労使という立場におきましては、お互いに利害が相反する立場の方々の集合体でございまするので、なかなか思うように法律の改正をするための審議をわずらわしていただくことは困難であろうと、かように考えておりますことと、それから、審議会の仕事の範囲というものは、これは、政府の諮問に基いて審議会が検討するという原則がございまするので、そういう意味で、私どもが勝手に行って、こういうものを検討せよ、あるいはこういうものをすべきであるということを言うわけに参りませんので、これは、政府の諮問に基いて審議会が検討するという立場をとっておりますので、そういう意味合いにおきましては、私の立場からどうこう申し上げることはできないと存じております。以上のような理由におきまして、審議会の意向を十二分に参酌できなかったことは、まことに残念だと存じますが、しかしながら、すでに昨年八月をもって療養給付が打ち切られ、そうしてまた、休業給付が打ち切られて、悲惨な状況に追い込まれつつあるけい肺患者が、あちこちのけい肺病院に相当数あるというこの事実は、放任することができませんので、やむを得ない事情といたしまして、私どもはここに、審議会の十分な御意見の拝聴をせずして、法案を提出したという事情でございます。
  175. 山本經勝

    山本經勝君 今、木島委員から御質問のあった点なんですが、これは、このけい肺に関する問題をこの委員会でいろいろと調査案件としてやってきた経過もございます。そこで、その当時労働省として、大臣以下当面の皆さんがお答えになったのは、特にけい肺審議会に諮問をしておるが、まだその結論が得られないのであるという御答弁であった。そこで私は、労働省の方にお伺いしたいのですが、特にこの法律が成立したときに——これは三十年の七月一日に衆議院の本会議を通過している。そのときの付帯決議がございます。それでそのときに、この法律について、なお不十分な点が多々ありそうだということで、議論がずいぶん長時間にわたって戦わされて、従って、一応成立は見ましたけれども、その法の中に、やがてこれは問題になるであろうということが予想せられて、付帯決議がついておる。あるいは、法を有効に推進し、実効を上げるために必要な措置として、四項目の付帯決議がついておる。そこで、この前調査案件でいろいろ御質疑申し上げました際にも話が出た問題ですが、重ねてお伺いして、この際は法案の審査でございますから、明確にして参りたいと思います。  まず、この付帯決議あるいはその他けい肺法の一部改正等を含む審議会への諮問は、その後どういう経過をたどっておるのか、内容を含めて、労働省の方から御説明をいただきたいのですが、本日は、大臣もお見えにならぬし、あるいは政務次官も、先ほどちょっと顔を出されて、また消えられておる。これは労働省はきわめて不誠意な状態のように見受けるのですが、まず基準局長から、その点正確にお答えをいただきたい。——大臣もいない、次官もおられぬし、当面の基準局長もおいでにならぬ。そうして、その説明員をしてやらされるというようなことは、全く奇怪しごくなんですが、この点どうなんですか、委員長
  176. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記とめて下さい。   〔速記中止〕
  177. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記始めて下さい。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会