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1958-04-15 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十五日(火曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————   委員異動 四月十一日委員鈴木万平辞任につ き、その補欠として西田信一君を議長 において指名した。 本日委員高野一夫君及び坂本昭辞任 につき、その補欠として最上英子君及 び松澤靖介君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            草葉 隆圓君            斎藤  昇君            寺本 広作君            西田 信一君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            西岡 ハル君            横山 フク君            片岡 文重君            木下 友敬君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君            竹中 恒夫君   委員外議員            坂本  昭君   衆議院議員            野澤 清人君   国務大臣    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君   政府委員    厚生省医務局長 小澤  龍君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○保健婦助産婦及び看護婦等産前  産後の休暇中における代替要員の確  保に関する法律案片岡文重君外九  名発議) ○日雇労働者健康保険法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送  付) ○あん摩師はり師、きゆう師及び柔  道整復師法等の一部を改正する法律  案(衆議院提出) ○連合審査会開会の件 ○母子福祉資金貸付等に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○児童福祉資金の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまより社会労働委員会を開きます。  委員異動を報告いたします。  四月十一日付をもって鈴木万平君が辞任され、その補欠として西田信一君が選任されました。   —————————————
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 保健婦助産婦及び看護婦等産前産後の休暇中における代替要員確保に関する法律案議題といたします。提案理由説明を願います。
  4. 片岡文重

    片岡文重君 ただいま議題となりました保健婦助産婦及び看護婦等産前産後の休暇中における代替要員確保に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  現在保健所並びに国立、公立の病院及び診療所に就業している保健婦助産婦並びに看護婦准看護婦及びこれらの者の補助をする職務に従事し看護助手その他の名称で呼ばれている女子の数は、全部で約六万二千人を数えますが、このうち、年々出産する人々は、相当数に上っているのであります。  国民の健康の保全のために保健所病院及び診療所においてその第一線に立ち、日々激しい勤務に従事しているこれらの女子職員については、現在国も地方も、その財政事情に制約せられて、余裕ある定員確保することが困難な実情にあり、ために人命を預かり健康の管理に当るこれらの職務の性質上、勢い法によって保障される産前産後の休暇期間中も激しい勤務を受持つ結果となっているのでありまして、これは母体、胎児を保護する立場からまことに遺憾であり、さらにはこれらの職務の正常な通常の確保が危ぶまれるに至るのであります。  この点に関しまして、これらの女子職員産前産後の休暇をとる場合においてその休暇中、当該女子職員職務を行わせるため代替要員臨時的任用に関し必要な規定を設け、もってこれらの女子職員について、その母体保護が促進されることを期して、ここに本法案を提出いたした次第であります。  次に、本法案内容のおもなる点について御説明申し上げます。  第一点は、保健所または国もしくは地方公共団体の開設する病院もしくは診療所において保健婦助産婦看護婦法規定する業務をその職務としている保健婦助産婦看護婦もしくは准看護婦またはこれらの者の業務補助をその職務としている女子産前産後の休暇をとる場合、任命権は、その休暇期間任用期間とし、その者にかわって職務を行わせるに適する者を、臨時的に任用しなければならないことにいたしました。  なお、現に国家公務員または地方公務員である者を、現在の職を保有させたまま、臨時的に任用することは許されないものといたしました。これは、臨時的任用に際し職務の補充が不十分であってはならないことに基くものであります。  第二点といたしましては、関係法令改正により、臨時的任用をされた職員は、職員定員ワク外にすることを明らかにいたしました。  これは、本法に定められた要件を充たす場合、任命権者は必ず任用するという建前からワクをはずすことにいたした次第であります。  以上がこの法律案提案いたしました理由であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  5. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案質疑は、次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  7. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  提案理由説明を願います。
  8. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) ただいま議題となりました日雇労働者健康険保法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  日雇労働者健康保険は、昭和二十九年に発足し、その後逐次給付内容改善を行なって参りましたが、その内容はいまだ十分とは申しがたく、特に疾病保険として重要な要素である傷病手当金及び出産手当金制度を欠いており、また、療養給付受給手続についても、繁に過ぎるきらいがあるのであります。一方、最近財政が非常に不健全な姿をとっているにもかかわらず、国庫負担の道もいまだ十分に確立されず、かつ、保険料額の面においても最近の実情に合わない点もありまして、制度内容及び運営について検討すべき点が少くないのであります。  このような実情にかんがみ、今回の改正は、本制度の健全な進展を期するため、制度改善及び内容の充実をはかろうといたしたのであります。  すなわち、この法律案規定いたしております改正点は、第一に、傷病手当金及び出産手当金制度を創設すること、第二に、療養給付受給手続簡素化をはかること、第三に、賃金日額の区分を変更し、保険料の額を若干引き上けること、第四に、医療給付費に対する国庫負担割合並びに傷病手当金及び出産手当金に対する国庫補助割合を明文化すること等であります。  以上が、この法律案提案いたしました理由並びに法律案の要旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  9. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案質疑は、次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  11. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑を願います。
  12. 勝俣稔

    勝俣稔君 政府当局の方に、事務当局にお伺いいたしたいと思います。  既往三カ年間において、どのくらいの人が試験を受けてこの資格を得たか。つまり、本年は一体どのくらいになる見込みであるかということまで入れて下さい。  なお、どのくらいの人数が、あの当時から試験を受けねばならぬ人がおるかということもお話し願いたい。
  13. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 昭和二十三年当時、すなわちこの業種を禁止することがきまった当時に登録した業者の数は、総計一万四千六百十三名であります。これらの者に対して便宜試験をして、あんま師にする道を開いたわけでありますが、講習受講者は、昭和三十二年末で三千九百十四名ございました。すなわち三十一年度におきましては、相当数受講したわけでございます。しかるに昨年は、非常に受講成績が悪くて、わずかに六百六十一名、昨年十二月末までで六百六十一名にすぎなかったのでございます。  これらのうちの中で、試験に合格いたしました者は総計三千九十四名でございます。
  14. 勝俣稔

    勝俣稔君 本年はどんな予定でございます。
  15. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 本年は、各都道府県を督励いたしまして、一昨年以上の実績を上げるつもりで努力いたしたいと思っております。
  16. 勝俣稔

    勝俣稔君 昨年は六百六十名であったというのは、どういう理由であったのでございますか。
  17. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 的確な理由は私ども掌握しておりません。想像するのに、あるいはこの法案禁止期限が延びて、さらに同じ業務が、医業類似行為継続することができるのではなかろうかというような考え方業者間にある程度は出てきたためではなかろうかと想像しております。
  18. 勝俣稔

    勝俣稔君 この前の法案は、これは政府提案であったのでございますが、政府は、この既往の三カ年間で相当成績をあげるというつもりでこの法案を作りながら、わずかに三千九百十四名しかないという事柄は、政府努力があるいは足りないのではなかろうか、一体どういう努力をしておったか、伺いたいのです。
  19. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 私どもといたしましては、都道府県衛生当局を通じまして業者間に呼びかけをいたしまして、積極的に講習会を開催し、これを受講せしめるように努力して参ったのであります。先ほど申し上げましたように、一昨年はかなり成績を上げたのでございまするが、昨年は、努力をしたにもかかわらず十分な、成績を上げられなかったことは、まことに遺憾なことだと存じます。
  20. 勝俣稔

    勝俣稔君 そういう成績であって、今後三カ年間延ばして、そうしてその成績を上げると言われるが、どういう成績を上げ得るかということについては、政府当局は自信をお持ちなんですか、どうですか。
  21. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) これは、一にわれわれの熱意努力と、業者理解と相待って成就すると存ずるのでございます。従いまして、私どもは、従来以上の熱意努力を傾け、かつ業者の方方によき理解を促すということによりまして、所期の成績を上げていきたいと考える次第でございます。
  22. 勝俣稔

    勝俣稔君 今度の法案議員提出法案でありますが、政府は、今の考えほんとうに実行するつもりでおいでになっているのだと思いますが、ぜひ最初の、初年度のように、約四千名の人が講習を受けるというようなことをぜひやってもらわなければ、これは困るのではなかろうか。  現在なお残っている人は幾人あるのでございますか。これから引いてみますると、一万一千人くらいのようでありますが、自然になくなった方、いろいろな方がありますので、実際は何人くらいありますか。
  23. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 死亡した者並びにこの業を廃した者につきまして、的確な資料を打ち合せておりません。しかしながら、いろいろな資料で推計いたしまして、現在約九千人残っていると考えております。
  24. 勝俣稔

    勝俣稔君 九千人なら、三千人ずつやれば、必ずこれで解決がつくのではなかろうか、こういうふうに思うておるのでございますが、私はなお、提案者野澤さんに一つ伺いたいのでございます。三十年の七月二十九日の付帯決議は、これは再確認していいわけなんだろうと私は思いますが、どういうふうなお考えてございましょうか。
  25. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) 当時の国会情勢としましては、当然そうした付帯決議が尊重されなければならぬと思っております。しかし、先ほど先生から政府の方にお尋ねがありましたように、三十一年度の受講者を調べますと、三千九百人もあって、三十二年の四月から十二月までの間に、わずかに六百名程度のものしかない、その理由はというので、政府の方ではあいまいな返事をしておりますが、実際は、三十二年の二十六国会の際に、衆議院において神田厚生大臣は、従来の考え方と全く反対の答弁をしました。しかも、会期末でありましたか、既得権を尊重するということを速記録にはっきり載せてあります。そういうことから、おそらく全国の業者としても、この厚生大臣言明に対して相当の期待を持ったのでないか、それから指圧以外の方々、たとえば電気とか光線とかをお使いになっておる方々は、当然厚生大臣言明であるから近き将来に尊重してもらえると、そういう考え方が基本になって、受講者が少くなったのではないか、こういう政府の経過的の流れを見ますと、当時の情勢とは中間においてかなり変化があったというように私は考えられます。この点は、感じたまま実態を申し上げたわけでございます。
  26. 勝俣稔

    勝俣稔君 そうなると、いよいよお聞きしなければならないのですが、政府は、同一行為に対して、いわゆる何というのですか、どういう態度を将来とっていくか、また、科学的にこれが危険性ありや否やというような問題、従来科学的に研究をされておったその見解を承わっておかなければならないことになりはしないかと思います。
  27. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 昭和二十三年から、政府におきましては予算を計上いたしまして、大学等に御依頼を申し上げまして、この業態における医学的効果あるいは危険の度合い等研究していただいたのでございます。その結果といたしまして、御承知のごとく、指圧療法は、あんまに医学的に通ずるものがあるので、大体これを取り入れて差しつかえないという結論に達しましたので、昭和三十年に法を改正いたしまして、試験制度によってあんま業に吸収するという方針をとったことは、御承知通りでございます。同時に、ひとり指圧業者だけだなくて、その他の業者も、生計の通を奪われることは気の毒でございますので、できるだけこの方面に収斂いたしまして、講習会等試験によりましてこの方面に吸収していく、将来その道を見出していただきたい、こういう念願で努力して参ったのでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、第一年におきましてはかなり成績をおさめたにもかかわりませず、昨年は受講者が非常に少かったという事実は、これは否定できないのでございます。今後これをいかにするかという問題がございますが、指圧の問題は、大体あんま業に吸収することによって解決ができると思いますけれども、その他の光線とか温熱とかいったような療法につきましては、ある療法につきましては、効果のある場合もあるけれども、同時に危険の伴う場合もある、そう考えております。あるいは、非常に効果の少いものにつきましては、危険も少いけれども効果も少いといったような事情もございますし、のみならず、御承知のごとく、この治療法は非常に種類が多く、たくさんの種類があるばかりでなくて、今後陸続としていろいろな方法考えられ、実施されるのではなかろうか、そういうことを考え合せまして、これを医療の中にいかに適正に取り入れるかということにつきましては、われわれは、技術的に事務的に実は当惑しているということを率直に申し上げざるを得ないのでございます。今後三カ年間を延期になりましたことにつきましては、従来の方針をそのままわれわれ事務当局としては熱心に続行していくということのほかに、他に適当な方法があるかないかということについても検討していきたいと存じておる次第でございます。
  28. 勝俣稔

    勝俣稔君 野津さんに伺いますが、先ほど、前の付帯決議両院両方決議されたものですが、事情変化によってこれは御破算にするようなお話を承わりましたが、私は、あの付帯決議というものは、この問題について最も重要な問題じゃなかろうか、ことに唐人の方、身体障害者のこういう方面に対しては、政府は十分なるその保護の道を講ずるべきだというような事柄もあり、これをただ、今の事態であるからこの決議御破算にするというようなお話は、私は納得できないのです。ぜひ私は、この決議決議としてやはり再確認するという線に進まねばならないのじゃなかろうか、討論めいたことを申し上げてまことに申しわけありませんけれども、この点は、一つ前の場合も、純学問的の問題、また純人道上の問題、最近における盲人鍼灸あんまに対する晴眼者よりの圧迫、いろいろな事柄があり、ことに神風タクシーのような、この世の中ではなかなかああいう方々が歩いて、そうして業務にはげむということができないというような危険な状態である。この状態は、今後とも相当激しくなるのじゃないか、なお大きな旅館等においては、盲人人たちほんとうに働くということにはなかなか、いわゆる部屋へ通してもらうのにも案内者を必要とするというような状態でありまして、これは私は、ぜひこの付帯決議は可確認すべきものじゃなかろうかというように考えておるのでございます。
  29. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) ごもっともな御意見だと思います。それで、先ほど私が申し上げましたことは、付帯決議を尊重しないと申し上げたのではございません。御破算にすることは申し上げておりません。あくまで両院付帯決議というものは尊重さるべきものである。けれども時代の推移が、昨年の二十六国会会期末に、時の厚生大臣がはっきりした言明をされておりますから、これは経過的な一つの現われとして私は申し上げた次第でございます。なお、盲人対策等につきましては、先生のおっしゃる通りでありますので、これらについては、自民党も社会党も、当然今後大きな社会問題として、これは政策的に取り扱わなければならぬ。特に国民保険の重点というものが、老人、母子、しかも身体障害者というものに標準が向けられるとすれば、これは超党派的に、こういう職業に対する不安というものを一掃するために、盲人対策としての国家保障の面、あるいは社会保障の面というものが、やがて良識ある議員諸君のお力によって、なんらかの形で現われてくるのじゃないか、こういうふうな感じもいたしますものですから、お説はごもっともでございますし、御破算にしようという考えはありませんので、あくまでも尊重はしたい、従って今回提案いたしましたものは、この前にきめました法律内容のまま、ただ実施期を延長するというだけのことでございますから、まげて御了承願いたいと思います。
  30. 勝俣稔

    勝俣稔君 私の思い違いでございまして、御破算ということは私は取り消しまして、なおこの決議の線を十分尊重して政府の方ではやっていただくというように理解いたしまして、私の質疑を終ります。
  31. 山本經勝

    山本經勝君 今、勝俣先生からも御質問があった点なのですが、付帯決議について政府当局にお伺いしておきたい。この付帯決議を見ますと、衆議院の方の付帯決議参議院付帯決議も、内容においては大体共通の点をつかんでおると思います。で、この国民保健上弊害のないものについては、その業務継続ができるよう適切な措置をすみやかに講ずるという項目がございます。こういうようないわゆる行政指導ないしはその他必要な措置を、厚生省としては事実上おとりになっておらなかったのではないかという疑いがある。ですから、先ほどのような非常に簡単なお答えでは、私どもなかなか理解がいかぬわけです。だから、先ほど野澤議員お話にもありましたように、神田厚生大臣が、いわゆる既得権として生活を守らなければならぬというような意味の話は、たしか参議院でもなさったような記憶もあるのですが、このことと結び合せますというと、今申し上げましたように、この種の医業類似行為に従事しておる業者既得権を認めて、しかも、いろいろとここでは、その業務継続ができるよう適切な措置を講ずるといいますと、何か別個の手がすでに打たれていなければならないと、こう思うのです。付帯決議といいましても、両院でそれぞれやっておるわけでありますから、この点は、政府としても責任をもって遂行しなければならない点だと思う。だから、もう少し詳細に、どういう措置を講じて今日に至ったか、そうして先ほどお話のように、わずかにこの三カ年間において受講をして合格した人たちは三百九十四名と言われておる。こういう実情で、約一万一千名という人々がなお依然として、この法のあることを知らなかったのか、あるいは知っていても意識的にこれに従わなかったのか、そこら辺も私は重大な点だと思う。その辺を含めて御説明をいただいておきたい。
  32. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 御承知のごとく、昭和二十三年にこの医業類似行為規定ができましたときは、その当時その業務に従事しておった者は登録いたしまして、登録した者は、昭和三十年十二月三十一日までその業務に従事することができたのであります。それがさらに三カ年延長されまして五十三年末になり、今回さらに三カ年延長すべきことの提案がなされた次第であります。医業類似行為内容につきましては、昭和二十三年当時におきましては、必ずしも十分な調査研究が行われていなかったことは事実でございます。そこで、この実態を明らかにする必要があると考えまして、間尺衛生上有効であると認められるものがあるならば、これは、この措置について考慮すべきことは当然でありますので、自後五カ年間にわたっていろいろな調査研究をいたしたのでございます。その結果、先ほども申し上げましたように、指圧につきましては、その技術においても、あるいは学理においても、あんまマッサージと共通な基盤に立っておることが明らかになりましたので、これをあんまマッサージの方に取り入れるような措置を講ずることにいたしたのでございます。その他の医業類似行為につきましては、電気光線温熱刺激など、いろいろ分類できますけれども、それぞれ一つ一つ種類を取り上げますと、数百種類の複雑な内容を持っておりますので、これが効果判定とか、危険の度合いの測定とかいうことはなかなか困難であり、また一概に論ずることができないのでございます。しかも、これを積極的に取り上げて、疾病治療なり国民保健の具とするというものが見当らなかったのでございまするために、今日われわれがとりましたような措置をとって経過して参ったような次第でございます。大学その他の学者に委嘱いたしまして検討願いましたような成績は、かなり膨大なものに上っておるのでございまして、これを全体的に申し上げますというと、ただいま私が申し上げましたように、一つ一つはなかなか判定ができない。ことに医療効果というような問題は、直ちに医療効果は必ずしも現われるものではございません。相当沿革性を見なければならない。果してその治療でよくなったものか、自然によくなったものか、他の方法でよくなったものかということは、これを判断し、検討するためには、非常な日にちと金と努力を傾注しなければならぬ。そういったものが数百種類に上っておるために実施ができなかったために、医学的の一般的判断から申しまして、特に取り上げなければならないものが見当らなかったのでございます。  私ども取り扱うたくさんの業務の中で、この医業類似行為の取扱いというものが非常に苦労の多いものでございまして、今まで苦労して参り、心配して参ったのでございますけれども、ただいま申し上げましたような次第でございまして、遺憾ながら講習会によってあんま業にほとんど全部の人を吸収しようと企図したものが昨年度においては十分でなかった。その結果といたしまして、さらに三カ年延長しなければならなかったのでございます。その三カ年の期間の間に、従来のわれわれの方針を貫くという一面におきまして、正当の医療の中に取り入れるか、取り入れないかということにつきましても、今後検討してゆきたいと思っております。
  33. 山本經勝

    山本經勝君 局長さんの今の御答弁は、自分の思うことを話しておられて、さっぱり私の質問とかけ離れてしまっておる。それはこういうことです。私も、この法案審議された際に、この委員会で十分聞いておった。一年生で勉強さしてもらったんです。で、その当時に言われたときも、こういうことがあったことを私は記憶しております。つまり、あん摩師はり師、きゅう師、柔道整復師その他の医業類似行為といわれる電気あるいは光線等を利用して療費に当る、あるいは健康保持のために求めに応じて施術をする、こういうふうな指圧等を含む問題が論議になった際に、それぞれこれらの業者は、今まで長い間それを業として生計を営んでおるという、すでに歴史的な基盤が発生しておる。そのことは、すでにその事前において、いわゆる生活という重大な問題につながっておる。ですから、これを軽々として一つ一つの問題を切り離して処理することは困難な問題である。しかも一方に医師あり薬剤師あり、あるいはこうした本筋の科学的ないわゆる療養方法国民がまんべんに受けられることが至当であるし、また適切な方法ではあるが、しかし、このあん摩師はり師、きゅう師、柔道整復師あるいは指圧医業類似行為といわれる電気あるいは光線等を利用する療術も、必要があってこそ今日まで歴史を作ってきておるのであるから、これが有効に国民の保健上利用されることは望ましいということであったと思う。そうしますと、そこで発生する問題は、少くとも医師、歯科医師等を含む正規の科学的な療養方法を中心として、あるいは薬剤師の協力を得て、そうしてこれらの療術体系を根本的に編成し直すべきではないかという意見が出たと思う。そうして、しかもそのことが、参議院における付帯決議内容であったと私は記憶しておる。で、それが国民保健上弊害のないものについては将来適当な措置を講ずることというような表現になったり、あるいは第二項に掲げられておるような、本法運営に関し特別の配慮を払うことというような問題に展開されて、一応皆さんが了解をされておったと私は記憶しておる。そうしますと、今申し上げるような趣旨におけるいわゆる努力というものは、厚生省は、ただ調査研究をして、その趣旨がどうであったかということを一応検討はなさったかしれませんが、その努力というものは、全く申しわけ的なものとしか受け取れぬ。そのことのために、一応きまった法律が有効に行われず、再度期間を延長して同じことを繰り返さなければならぬ、こういう、羽目に追いつめられておると思う。これは、いやしくも国会決議政府が実行しないなら、忠実に行わないなれば、決議することあるいは決定すること自体がおかしい。そうして当てもなく、また三年また三年で、次々とこの法律を延ばしていくということによって、何らの施策が、恒久効果が上ってこないということであれば、これは厚生省の責任だと私は思う。この点は、局長はどうお考えになっているのか、私はきわめてふしだらな姿だと思う。きめた法律が、できた法律が有効に実施されずに、そうしてまたさらに期間を延長して、その中に書かれている、しかも付帯決議まで付けて、こうすべきであるということが論議されたにもかかわらず、三年後の今日、また同じ論議をここで繰り返さなければならぬということほど私はばかげたことはないと思うが、もう少しはっきりした責任ある御答弁を承わっておかなければならぬ。
  34. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 御指摘の点は、まことにその通りだと思います。私どもといたしましては、従来の調査が医薬的、技術的の方面の評価ということに重点を置きまして、これをいわゆる医師、歯科医師等の医療担当者とからみ合せるという点については、全然検討しなかったわけではございませんけれども、その点については、前段の医薬的技術的調査ほどは努力をしなかったということは申し上げられるかと思います。しかし、それはなぜそういうことになったと申しますと、ただいま申し上げましたように、たしかにこれは、数十年来世の中にある程度広がっておったものでありまして、有効ではあるに違いないというような一般の常識ではありますけれども、しかしながら、一面において、その方面の医学者、物理学者等の御意見を総合いたしますというと、プラスの面もあるかもしれないけれども、マイナスの面もあるのじゃないかという点が非常に心配されるし、特にこれを、一般的に総括的に申し上げまして、取り上げるべきものがない、目下のところでは見当らないということにからみ合いまして、これを医師、薬剤師の生来の行為とからませて、どう処理するかという点には十分考えがいかなかったのでございます。御指摘の点は、重々私どもよくわかるのであります。今後三年の猶予期間におきまして、ただいまおしかりをいただきましたけれども、その方面についても十分検討して参りたいと考えております。
  35. 山本經勝

    山本經勝君 今、局長さんにしても、あるいは厚生省当局その他皆さんが見られたらおわかりのように、あんま、はり、きゅう、この種の人々は、やはり盲人、それからろうあ者等がやはり大体中心をなしておる。これらの人は、今のところこういう業種を選ぶ以外に生活の方法がないという現状に置かれている。それからさらに、物理学的な器具等を用いてやる医業類似行為についても、これは、きのうきょうに始まったものでなくて、相当長い歴史を持っておると思う。それから、しかもそのことが、先ほど申し上げたように、生活につながっておる。ですからこそ、この問題が論議になり、あるいは国会審議をするといいますと、勢い関係業者が大挙国会にお見えになって、いろいろと実情を訴えられる。この問題を掘り下げて申し上げるならば、この目の見えない人やあるいはろうあ者で、いわゆる一人前の完全な機能の発揮できぬ身体を持って非常に苦しんでおられる人々は、まず第一番に根本問題としては、国が社会保障制度の確立によって見ていくべき筋合いのものだ。その人々が、同じ立場にありながら、かかえた茶わんをたたき落すような悲惨な対立関係を作って、今なお苦しい戦いを続けられておる現実を私どもは見逃すわけにいかぬ。これは私どもだけでなくて、厚生省当局もよく御存じだと思う。それであればこそ、この付帯決議は付けたと私は思う。しかも、今も申し述べられたような局長さんの方の見解では、これは、努力はしたが、あるいは技術的な検査はしたと言われますけれども、そういうことで解決のつく問題ではないわけなんですよ。ある現実の姿をそのまますなおに受け取っていくなれば、これはどうすべきかということを、一応付帯決議の中に方向が盛り込まれて、衆参両院のそれぞれ表現は違ったが、内容については共通だと私は思う。そうして国会できめたものを、厚生省当局が積極的に責任を持って推進するという努力に欠けておるということは一応お認めになっているのですが、しかし、さらに法律を延長したからといって、これは簡単に解決がつかないことだと私は思う。だから、そういう点では特に御要望を申し上げておきたいが、これは、今後さらに努力をなさるという抽象的な表現では不十分であって、どういう方法でやろうとしているのか、たとえば、現在医業類似行為として療術によって生活を営んでいる人々、あるいはその他あんま、はりきゅう師の中にも別の問題がある。というのは、先ほど申し上げたように、盲人やろうあ者、あるいは身体の不自由な人々にこれは特権的に与えられたところの職業であると解するのも若干の無理がある。ところが一方、最近は、若い娘さんが多数、農村地帯から農村の余剰労働力が都会に流れ込む、あるいは観光地、旅館に来て、そうして仕事をやっておられる、それが今度はあんまという、はりきゅう師という看板を掲げた所に雇われて、これがむごたらしい安い賃金で酷使されているという事実を見のがすことができない。そうすると、このあんま、はりきゅう師というものの中に多数の失業者が流れ込む、余剰労働力が流れ込んで来て、職域をせばめているという事実も見のがすことができないと思う。こういう事実に対して、厚生省当局は何らかの手を打たなければ問題の解決はできない。それを今すぐここで考えなさいと言うことは無理かもしれないが、しかし、何らかの考えがなければ、厚生行政の推進というものは困難だと思いますが、これは大臣から伺いたいのですが、おられませんから、局長さんでもいいですが、局長さんからもう少し懇切なお話を承わりたい。
  36. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 今お話の中で、盲人対策の問題でございますが、特に盲人等の身体障害者は手厚く保護しなけばならない、その点は、私どもも同感でありまして、これまた、社会保障制度の発展によって保護していかなければならないと思います。ただ、あんまマッサージ等の業種は、保健衛生につながる問題であるし、国民の健康状態を向上せしめる目的をもちましての制度ができ、資格が認定されているわけであります。ところが、現状におきましては、晴眼の人々あんま業界に進出いたしまして、盲人人々の職域を侵す、それは、正当なる有資格者が正当なるあんま業を営むのじゃなくて、無免許の人々がはびこるという傾向のあることは事実でございます。従いまして、その問題につきましては、私ども昨年来、国家警察とも十分な連絡をとりまして、これが監督指導に当って参っているわけであります。さらにまた、従来あんまの養成所は、きわめて簡単な養成課程におきましてあんまになり得るようになっているのでありますが、盲人に対するあんま教育と格段の相違がありますので、最近省令を改正いたしまして、盲人あんま教育と同じ程度の教育をするにあらざれば、晴眼のあんま学校を認めないということに方針を改めまして、逐次この方面から、正当な業務がともに行い得るようにいたしたのであります。結果といたしましては、不当なる晴眼業者のために盲人あんま業者のこうむるところの被害をできるだけ少くするという方向に行っているのであります。医業類似行為につきましては、大体晴眼の方がやっておられるのでございます。この方面につきましては、先ほど来だんだん申し上げましたように、この際、具体的にこうするということは申し上げられませんけれども、今後とも御趣旨をよく体しまして、十分検討し善処していきたい、かように考える次第でございます。
  37. 山下義信

    ○山下義信君 この法案は、今、同僚諸君から御質疑がありましたが、政府の今の答弁では、明快でないのでありまして、もう少し念を入れて、この際将来の方針をはっきりしておくのがいいのじゃないかと思う。今はっきりさせることができなければ、いつはっきりさせるかということもきめておいてもいいのです。これは、前回三カ年延長したときに、実はその点も念が入れてなかったということもわれわれは反省します。しかしながら、三カ年延長する国会の意思は、今各位が御質疑になりましたように、付帯決議で実は明確になっているのです。それで、もう一度これを三カ年延長しようという法案が出ました機会に、一つ念を入れておくのがいいのじゃないかと思う。これは、私があらためて言うまでもないことですが、三カ年延長するということの内容が二つあるのですね。一つは、言うまでもなく附則の第二項、一つは第十九条の二の第二項ですね。二つあるです、三カ年延長するということは。それで、附則の第二項の方の指圧関係のことは、今医務局長が数回重ねて答弁せられましたように、これはもう問題がないですね。これはすでに、あんま、はり、きゅう、柔道整復師等の法律の中にこの業種を認めたのであって、ただ試験を受けさせる、受験する期間を延長したにとどまるのでありまして、これはきわめて明快であるから、指圧に関する限りは、この三カ年間にすべて試験を受けさせる、そうして正当なあんま、はり、きゅうの業の中にこれを包含してしまうということの筋は、これはきわめて簡単明瞭ですね。従って、三カ年延長すれば、附則二項の指圧業に関する限りは解決するのだという見通しで三カ年を延長するのだという理由がはっきり立つ。ところが、今問題になっている、いわゆる物理療法の療術師関係の第十九条の二の第一項というのは、そもそも本来の本法の条文は何を意味するのかということ、これは、実は法律内容があいまいなのです。私はそう思う、実のところは。それで、前回のわれわれが立法するときに念が足りなかったということを今反省するのですが、この第十九条の二の第一項は、医務局長の先刻の答弁の中に一部それに触れたような点があったが、この第十九条の二の第一項の趣旨はどう解釈するかということ、これは、三ヵ年間の延長の期間の間に全部あんま師はり師、きゅう師、柔道整復師等のようなものになれという趣旨ですか。これはどういう趣旨なのか、第十九条の二の第一項はどう解釈しているのですか。それから、そうじゃないのだ、全部あんま師はり師に転業せいという趣旨じゃないのだ。その場合に、あんま、はり業の免許を受けて、その療術行為をやっておれという趣旨だと、こう解釈するのですか。どう解釈するのですかということなんです。おそらく後者だろうと思う。この第十九条の二の第一項のどこを見ても、お前たちの仕事はこれからやらさない方針だと、しかし三カ年間は、あんま、はりの許可さえ受けていれば、依然として療術行為はやって参っていいのだということの、ただいわゆる無免許で療術行為をしておるその業者に向って、一応合法的にあんま、はりの免許のもとにその仕事をやれと、この三カ年の間、その間に何とか始末をつけてやろうという趣旨が私は第十九条の二の第一項だったと思う。この法律の第十九条の二の第一項をこのままに置いておくと、これはおかしいものになってしまう。合理的でない、これを置いておくと、あんま、はり、きゅうの免許を受けたならば、いろいろ電気光線、熱その他のあの物療的な行為をすることの資格と何の合理性があるか。ただ、無免許でやってはいけないし、その状態をいつまでも野放しに置くわけにもいかないし、どうするかという一応の何か軌道に乗せて将来の処理をしていかなければならぬ。暫定的の措置としてこうなっておるのですね。これが置いてあるのですね。ですから、これをどこかで片づけなければならぬ。第十九条の二の第一項というこの条文は片づけなければならぬ。それで、政府方針はどういう方針をとるのか。その者は、そういう療術行為という業種はやめさせて、なるべくあんま、はり、きゅう師というような方の業種にかわらせるという趣旨なのか、そうじゃなくて、そういう療術行為というこの業種は、できるだけ良否を選別して、適当なものはやはり適法にその営業を存続させようという方針をとるのかということは、どうしてもこれは、どこかではっきりと方針を確立していかなければならぬ。それを、先ほどからの御答弁を聞いていると、研究しても研究しても、プラスがありマイナスがありまして、どうも何とも見当が立たぬのでございますと、こう言っていたのでは、これは、今度もう三カ年延長するという理由が私はなくなると思う。何のために三カ年延長するのかということを、無方針のもとで三年延長するという手はない。一定の方針が立って、その方針に進むためには三カ年の暫定期間が要るのだということで、初めて今回三カ年いま一度延長をするという理由が立つ。方針なくして三カ年どうするということになるわけですね。ですから、これは提案者としても明確にしておいていただきたいと思うのですが、同時に、政府として、やはりでき得べくんば、提案者と同一見解のもとに三カ年延長をする、どういう方針、目標のもとにこの三カ年の延長期間を有効に使っていきたいのだということを明快にしておくことがいいじゃないかと思うのです。御所見を承わりたい。
  38. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 第十九条の二の第一項の法律上の趣旨は、指圧療法のみならず、その他の光線、温浴、電気等の業種を含めて、あん摩師試験に合格した者に対してはあん摩師の免許を与えることができるということが法律の趣旨になっております。しかしながら、実際問題として考えました場合におきましては、ただいま山下先生の御指摘の通り指圧業者は、これは容易にあんま業者に、指圧あんま試験を受けて合格すれば、その業種に転向しやすいのでございます。電気温熱等の業種の者は、全然仕事の種類が違いますので、これは転業は容易でない。従いまして、法の趣旨は、指圧療法あるいは電気光線業者もひっくるめて、これで考えておるわけでございますけれども、実際問題といたしましては、先生の御指摘の通りだと考えるのでございます。従いまして、私どもは、まず法の趣旨から申しますというと、両方ひっくるめて勉強していただきまして、あんまさんにかわっていただきたいという従来の考え方を指導方針といたしまして、今日まで参ってきておるのでございます。しかしながら、今後どうするかという問題になりますというと、法の趣旨はそうでありましても、中身から申しまして、仕事の種類指圧光線とは全然違いまするので、第一重点としては、指圧の人は、ことごとくこれは試験を受けさせまして、あんま業種に吸収するという方針を今後とも努力して貫いていきたい。光線温熱についても、ただいまの考え方は同様でございますけれども、その他になお考えなければならぬ余地があるかどうかということが問題になってくるのでございまして、私どもは、誠心誠意この方面について検討を続けたいと考える次第でございます。
  39. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) 山下先生の御質問、御意見等は、全く私も同感でありまして、衆議院の方の前の法律改正のときに出ました話の経過から判断いたしますというと、先ほどの第一、第二と、二つの問題点を指摘されましたが、十九条の解釈等は、全く先生のおっしゃる通りであると私も承知いたしております。つまり、当時期日がなし、また相当な論議になったために、指圧だけはあんまの業態でもよろしいが、温熱とか電気光線等を使うものは別個にやはり考えなければならぬという議論が非常に強うございました。けれども、その余裕がないし、法律をまとめる関係上、やむを得ず当時あんまの免許を一応取らしておいた者については、既得権者は全部仕事をしてよろしい、こういうことで了解をつけまして、あのときに改正をやりました。しかしながら、実際面から見ますというと、行政府と立法府との意思の疎通が欠けておりました。立法府としては、当然古くからやっておりました歴史的なこの療術行為というものは認めてやろうという考え方厚生省自体としては、何とかこれを殺したいという考え方、その間ニュアンスの差はありますが、表現の仕方がやむを得ないからというので、局長自体もああいう答弁はしていますが、実際は、早くこれを打ち切りたいという考え方が基本であります。しかもまた、医業の実態から申しますというと、やはりこれは害がある、マイナス面があるということも指摘されております。この件については、急遽、厚生省としては、どの業種だけは救えるかということの検討をするはずになっておりまして、これは全く御指摘の通りであります。ところが、実際面から見ますと、各都道府県にまかせたという局長の答弁がありましたが、各都道府県には、講習会を開く予算さえありません。従って、相当受講料を出しながらやっておるという状態でありますから、最初は、一生懸命受けなければ業態を続けられないというので始めました。しかし、その後において予算の関係等で、二回も三回もやれないというような実態も出たので、局長にも、当局にもいろいろそのお話もしました。極力受講するように、また試験を受けさせるようにということは、衆議院としても再三やっております。やむを得ず今回こうした措置をとりまして、従来の法律の趣旨のままながら、御承知通り衆議院が解散直前でありますので、これならば大体無事に通るのじゃないか、もう余分なひもをつけないで行こうじゃないかというので、自民党と社会党とお話し合いの工で、共同提案としてこの法案を出しました。暫定措置として三カ年延ばす。延ばす以上は、前にありました決議、さらに神田前厚生大臣政府の代表としてはっきりとこれは言明されておりますのですから、機会がありましたならば、近き将来において行政府自体の意向も聞いて、もし厚生省がどうしてもやらぬのならば、あるいは国会でやらざるを得ない状態に追い込まれるのではないか、こういうふうな話し合いも自民党、社会党では内内いたしました。従って、先生のはっきりせいということでありますが、提案者といたしましては、経過の実態をありのまま申し上げたのでありますから、ぜひ御了承を願いたいと思います。
  40. 山下義信

    ○山下義信君 私は要望しておきますが、結局この三カ年間の過去の実績は、何か、深くは存じませんが、耳にするところによりますと、この暫定措置によって、電気光熱の物療を業とする人があんま、はり等の免許を受けて、免許を受けておるけれどもあんまはり師の仕事をしておるのではなくして、そして法律の方で許しておるのですから、実際は物療の仕事をする、こういう状態を続けておる、看板と仕事が異なっておるようなことを続けておって、こういうあいまいな法律の条文をこのまま置いておくと、こういう疑問が起きてくる。あんま、はり、きゅうの正当な免許を受けておる、つまりあんま師はり師は、これは物療の仕事をしていいのですかということが起きてくる。合理的なんです。その方は三カ年の期間も何も要らない。この法律のこういう体裁のものをそのままにしておくというと、この電気光熱の物療師に対しては、あんま、はりの免許を受けよ、その間免許さえ受けておればやることができる暫定措置にしてある。ひっくり返って、あんま師はり師の側からいえば、あんま師はり師の免許を受けておる人は、あなた方が許そうと許すまいと、こういう療術的な行為をしてよろしいのだということが言えなければ合理的でないのですね。そこで、そういうふうな療術行為あんまはり師の仕事だ、こういうことにだんだん発展をしていく可能性が非常に強い。これは非常に注意をしなければならぬことだろうと思うのです。ことにあんま師はり師の諸君の中には、身体不自由の人もあり、盲人諸君等があって、非常に鋭い勘があって、特異な能力のある人もたくさんありますけれども、そういう盲目の方々が、果して物療法等いろいろ機械器具を使う療法をすることが適当であるかどうかということも検討する必要がある。一面においては、大いに特権も尊重しなくてはならぬ。この人たちの仕事をふやしていかなければならぬ。守っていかなければならぬ。しかしながら、そういう身体不自由の人が精密な機械を動かすような療法が果して適当であるかどうかということも問題があろうかと思う。で、私は、できるだけ政府は根本的な検討を加えて、国会の意思を尊重して、将来の方針をすみやかに確立して、整理しようと思えば、こういう法律の、こういう暫定的な措置のもとに整理をするということは実際は困難である。むしろ療術師法というがごときものを作って、そして政府の学理的な検定、認定等を受けて通過した者が営業ができる。その価値判断、あるいは、同じことを言うようであるが、学理的に見て不適当だというものは許さぬというものを別個の法律で作れば整理が早い、私はそう思う。こういう暫定措置法律のままで抜本塞源的な処置をすることはむずかしいので、むしろその適当な業者を存続するためにも、あるいはまた整理するためにも、一応私は、必要な法律措置か何かとって、政府方針がきまったらば、そういう方向に検討する方が非常に合理的である。多年の問題が解決できるのではないか。同時に、われわれもいたずらにこの療術行為の諸君を色めがねで児ないで、今は玉石混淆されておるが、必ずしもインチキばかりではないでしょう。かつまたわれわれが、非常に誇大に、妙に、あまり広告し過ぎて、インチキがかっておるとかつては思っていたそういう物理療法も、今日は、医師諸君がどんどん取り入れておって、かつては白い目で見ておったそういうような行為も、むしろ最近には医術の中に取り入れられておるようなものもあるのじゃないか。従って、いつまでもそれを一種の冷眼視したり、批判的に見るばかりではなくして、公平に見てあげて、そうして適当なものは、すみやかにこれを政府みずからが監督指導のもとにやらせていく、こういう方向に進むべきではないかと私は思うのです。医務局長の見解を聞いておきたいと思うのです。
  41. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 大へん私どもにとりまして示唆の多いお話、ありがとうございました。御趣旨のほどを十分かみ合せまして、また、必要があれば御相談申し上げまして、善処していきたいと思っております。
  42. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私も、るる各委員の方方の質問なり、あるいは討議の御説明によって大体は了承して、同じことは言いたくないのですが、従って、現実に応じて暫定的に二年の延長期限もやむを得ぬと思うのですが、ただ漫然と延期されては困るのであって、前回の決議が、ただいまの御答弁によると、具体的な引例によっての答弁はなされておらないわけです。付帯決議の第一にいたしましても、この猶予期間中に相当に十分な指導を行えという決議が出ておる。ただいま野澤先生お話では、地方庁等の予算との関係で、なかなかそういうものができにくかったのだということであり、衆議院としても、その点は強く当局にも再々要望というか、指摘をしたとおっしゃっておるわけですが、実は、歯科医師の特例技工士の面で、この前この法律が出ましたときに、指導方針ということを、相当当局なりその団体が力を入れた関係で、成績が十分上っております。やはり当局の熱意いかんということがよくこの付帯決議を生かし得るのじゃないか。予算面におきましてもちろん支障はあると思いますが、それを乗り越えるには、要するに当局の熱意いかんにあると思う そういう点は重ねて質問いたしませんが、そういうような気持を持っていただかなければ、二回、三回と、いわゆる暫定措置が暫定でなくなって、恒久措置になっては私は困ると思うのです。もう一つやはり、付帯決議の第二としての身体障害者に対しますところの取扱いですね。この問題について、先ほど身体障害者としての福祉法によって云々ということがありましたが、これは、あんま師に限らず、全身体障害者に対する福祉でありまして、あんまを業としておる身体障害者に対しては、そういう福祉法以外に、別個にやはり業務上の面についての特別な措置をしろということが出ておるわけですから、やはりそれに対しても、今回は十二分な配慮をしてもらいたいと思いますが、特に私がお聞きしたいことは、最後の無免許の問題なんですが、無免許でやっておる人の問題なんですがね。一体、厳重な取締りをし、国家警察と連絡をとってやっておるというような抽象的な答弁がありましたが、今回の売春防止法等によって、相当多数の方々がその方面に無免許で現在流れておる実情があるわけです。とかくこういう取締りについては、警察当局もあまり力を入れないわけです。いわゆる点数稼ぎにならない関係上、重大犯罪でないので、警察当局も力を入れませんが、しからばというて、このままほうっておくということでは、重大な私は、保健上、衛生上いけないことだと思うのです。少しく取締りについての具体的な過去における例があれば、その実績を御説明願いたいし、また、将来そういうことに対して、なかなか警察も認めにくい。これについて、何か保健証を出すとか、方法があると思うのです。そうした点に私は非常に欠ける点があると思うので、最後の、無免許に対する取締りについて一つの御見解を承わりたいと思います。
  43. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) ただいまの御質問は、無免許あんまに関する御質問と存じます。これにつきましては、昨年の十月ごろから、警察庁と相談いたしまして、それで取締りの方針を立てまして、そうして警察庁からは、各管区の警察局の方へ、あるいは各都道府警警察本部長の方へ通知を願いまして、私の方は私の方といたしまして、各都道府県に通知をしたしまして、第一線機関である警察と保健所がタイアップして、これの取締りをするということにいたしたのでございます。御指摘のごとくに、無免許あんまの取締りというのは、非常にむずかしい要素を含んでおります。と申しまするのは、旅館等では、場合によりましては、目の見えないあんまさんよりも、目のあいたあんまさんの方が都合がよろしい。一々部屋まで案内する必要もない。それから、とかくお客さんもそういう人を好む方もおられまして、という関係から、なかなか警察、保健所の方に通報が積極的に出てこない。また、お客様の泊っているところの部屋に踏み込んで行って云々ということもなかなかできませんので、具体的にこれを検挙する、あるいは積極的に取締るということは非常に困難でありますけれども、それにもかかわりませず、かなり全国ではあちこちで熱心にやってもらっておるようでございます。最近警視庁から報告がが来ておりますが、相当警察の方の取締りがきびしいので、実は非常に困ることである。寄り寄り業者が相談いたしまして、保険所なり警察の方に、もう少し手心を加えてくれというようなことをこっそり頼みにきたというふうなことを言っておったような何がございますけれども、そういうことを逆から申しますと、ある程度取締りがかなり徹底し始めたのではなかろうかと私ども考えておりますが、なお取締りは今後ともゆるめない。ことに私どもは、通牒にも書いてございますけれども、大きな都市とか温泉地を重点としてやっておるということでございまするので、取締りを引き続き継続して参りたい、こう考えております。
  44. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 やはりきわめて抽象的な答弁になるわけですが、なるほど旅館の側からいえば、目の見えた人がいいのだ、便利がいいのだ、お客さんもそれを好むというようなことは事実でしょうが、少くともそういう実態をつかみ得ないとおっしゃるが、これは常時的にやるわけですから、その現場をつかまなくても、聞き込みなり何なりで、はっきりと、これを一つの業としてやっておるということかわかるわけですから、積極的にやれば、私は取締ることができないはずがないと思う。そうした点について、ただもう少しゆるやかにしてくれと言うておるのだから効果が上ったというようなことでは、私はどうかと思うのです。もっともっと積極的に、正しい、全盲の方々保護するという見地から、もっと熱心にやってもらいたいと思います。
  45. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕は、今の質問に関連して、無免許あんまというものを厚生省はつかんでおられるのか。どうも私は疑問に思うのですよ。それで、私の知っている範囲では、五人とか十人とか置いておられて、それでぽっと出てきて、少しもみ方を覚えれば十人置いておる所でも、免許を持っておるあんまさんはほとんどおらぬ。主人が免許を持って、十人とか八人おる人で、免許を持っておる人は一人もおらぬ。これが現状ですよ。それなら、学校があるのだから、学校へやっておるかというと、学校へもやってないで、それで免許もない。これが普通ですよ。あなたは調べて厳重に厳重にと言うけれども、どこを厳重にしているのか。東京のを調べてみなさいよ。免許を持っておる人なんて、ほんとうに探さなければわからぬほど、全部免許を持ってないですよ。それで、五人とか八人とか十人とって、その方々をどういう待遇をしているかというと、たとえば治療費三百円もらったら、その三割の九十円だけ本人に渡すのですよ。その七割は主人が取って、食事を与えているようだけれども、その食事たるや、個個に聞いてみると、とんでもない食事を与えている。それで、ほとんど技術が十分でない状態で、それであなた、三割与えて学校へもやらぬ。そのままの状態で、ものすごい数ですよ。免許を持っている人の何倍という数がそういうことをやっておる。私は、それを今直ちにとめよとは言いませんよ。やはりその日の生活のためにやっておられる人が多いのだから、過剰労働その他の問題で、やはり何か職について生活しようということで来ておられるのだから、私は直ちにとめよとは言わないけれども、少くとも主人が、そういう人を使うなら、きちんと学校に入れてあげて、そしてその免許を取らすようなことが、その人に免許を与えるような、国家試験を受けられるような条件を、七割も取って三割しか与えないで、ろくな物も食わさないで、それで永久に学校へもやらないで、これをずっとやっていったらどういうことになりますか。これほどひどい搾取体制はないと思う。これをあなたは厳重にやっていると言う。どこを厳重にやっているのか、僕は知りたい。厳重といっても、厳重のしょうがないじゃないですか。東京の方を歩いてみなさい。これは、府県の取締りというけれども、府県の取締りなら取締りをなぜ厚生省はやられないのですか。この問題に関連して私は質問しておきたい。
  46. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 先ほど申し上げましたように、無免許あんまの取締りというのは、技術的に非常にむずかしい面があるのでございます。具体的にどういうふうにやっておるかというと、なかなか現行犯としてこれを抑えるということは困難でございます。ところが、よく同業関係からの投書などがございます。それから聞き込み、そういうところから見当をつけて、保健所と警察とタイアップして取締りをやっておるというのが実情でございます。なお、さような無免許あんまを発見した場合におきましては、ただいま藤田先生御指摘のごとくに、免許者が数名の無免許者を雇って働かせておるという事実がございます。その場合には、雇用者を共犯としてこれを検挙するという方針をとって参っております。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 共犯として取締りの現行犯であげたときにどうするという問題でないのですよ、私の言っているのは。現実にそういう者が全部といってもいいでしょう。行われているという現実はあなた、現行犯とか現行犯でないとかという問題でない。その業をしている所みんなそうですよ。これはどうするのですか。私は、今直ちにこれをやめなさいというようなことを言っているのじゃない。それには、適切な養成所、学校があるのだから、そういう方が来られたら、必ずその学校へ行って、一年くらい教育を受けた人がやることもいいでしょうし、場合によっては、需要と供給の関係ですから、需要供給としておやりになるのですから、それもいいでしょうけれども、必ず、そこへ雇っておくのなら、学校に入れて、免許をとる手段を積極的にするという条件がなければ、私は意味がないと思うのですよ。意味ないですよ、それをやらないと。それを厳重にやっているといっても、どこを歩いてみても東京を見てみなさい。免許を持っている人が一人おって、五人とか八人、十人おるのは全部無免許です。それをどういうふうに指導するかということを言っている。厳重にといっても現行犯であげて、主人も一緒に罰するとか何とかという問題でないのですよ。三百円取って、二百五十円の所もありますけれども、その三割だけ本人に渡して、それでやらしているのじゃないですか。これは現行犯とか何とかというのじゃない。現実の問題です。これをあなた、なかなかわかりにくいということを厚生省がここで言われるのはおかしいと思う。なぜその問題を明らかにされないのですか。
  48. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 実は、私どもの方といたしましては、無免許あんま行為をしてもいいという建前で事を延しておるわけではないのでありまして、無免許あんまは、あくまでこれを発見して処分するという建前をとらざるを得ないのであります。しかしながら、ただいま藤田先生御指摘のごとく、無免許であんまをやっていいのだ、分け前をよけい無免許者に与えよという指導はできませんが、さような人間をつかまえた場合におきましては、無免許行為をとめさせて、なお学校等の正規のルートに乗せてやる、そういう人たちを善導するということについての指導は、今後とも、御注意によりまして、保健所等を通じまして行いたいと考えます。
  49. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いつからおやりになるのですか。現実に、私らの知っておる範囲では、全部そうなんですから、お指導しますとここで言うだけでなしに、いつからどういう工合に指導するということを明らかにしてもらいたいと思うのです。そうでなければあなた、このままの状態で、何年でも同じですよ。
  50. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 直ちに省に帰りまして、関係方面と十分協議いたしまして、すみやかにこれを実施いたします。
  51. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) ただいまの藤田先生の御発言ですが、御参考までに、私の郷里のお話を申し上げておきますが、現在宇都宮市では、無免許者の同居雇用を禁じました。従って、学校へ行っておる者だけがインターンとして昼夜かせげるようなことになっております。これ以外は全部禁じましたので、かなり骨が折れるようですが、一つの良俗だと思います。御参考までに申し上げておきます。
  52. 片岡文重

    片岡文重君 大体私の尋ねんとするところは、同僚諸君によって尽されておるようですが、なお二、三点お聞きしておきたいと思う。  これは、厚生省にまずお聞きするというよりも、要望を申し上げたいのだが、近時、院における付帯決議なるものに対する政府考え方というものが非常に軽んぜられておるという傾向があります。特に本法案のもとになっておる本法の付帯決議、この付帯決議に対してどういう措置がとられたのかという同僚諸君の質問に対して、長々と答弁をいただいたけれども、結論するところは、何にもやっておらぬということです。ほとんど措置がとられておらない。特に一項、二項についてそういうことが言えるし、三項についても、同様なことがやはり僕は言えると思う。旅館等におけるたとえば無免許あんまについても、旅館等の調査がはなはだ困難である、無免許者の取締りが困難であると言いますけれども、その旅館に出入りするあんまというものはきまっておるのですよ、御承知のように。従って、その出入りするあんまさんが免許を持っておるか持っていないか、どういう状態にあるのか、どういう雇用者のもとにどういう生活状況におるのか、雇用状態に置かれておるのかということは、行けばすぐわかることなんだ。さらに、晴眼者でなければ旅館が呼ばないと言うけれども、少くとも私たちの歩いた経験では、たとえ余然見えない者でも、旅館に出入りするようなあんまさんは、女中の案内なんか必要としない。むしろ新米の女中よりも、どんな大きな旅館でもよくわかるのです。全く私らがびっくりするぐらい全盲者でもわかるのです。しかも技術は、これまた比較にならないのです。これは、おそらくこういう実情を知らないで御答弁しておるのじゃないかと思う。十分承知しておって、なおかつそういう措置をとっておらない。それは手が足りないとか、警察の手が足らぬとか、いろいろな理由はあるでしょうけれども、結局はやっておらぬということなのだから、私はこの際、そういう長々とした御答弁よりも、少くともこれからの誠意ある措置について、具体的な御決心を披瀝していただいた方が、本委員会としてはむしろ望むところではなかろうかと思うのです。  それから、付帯決議の第二項の問題についても、同じようなことが言えると思うのですが、厚生省で出しておられる厚生白書、これも、私は実はこの白書を読んでみて、三十二年の十月に出された白書ですから、少くとも三十一年の資料が載せてあるものと見ましたけれども、これは、三十年の資料で一年古い、今になれば二年も古いのですが、これによってみても、視覚障害者は十七万九千、大体十八万人おる。この中であんま師はり師、きゅう師という職業に従事しておる視覚障害者は、この十八万のうちの二〇%をこえているわけです。これらの諸君が少くとも視覚障害者ですから、全盲の諸君もあるでしょうし、あるいは非常に困難であるけれども自分用ぐらいは足りる人もあるかもしれぬけれども、この障害者十八万人の二〇%ですから、少くとも三万六千の人がこの職業に従事しているわけであります。そのほかに、全然職業についていないという人は、この厚生省で出された資料を見ても、ほとんどおらぬと言っていいくらいに、全部の者が何らかの職業についておられる。こういうことは、身体障害者に対する生活保障という措置が欠けておるということを明瞭に物語っておるのですから、これらの点については、厚生省は、もっと真剣になってやっていただきたいと思うのです。同じ行政官庁であっても、大蔵省とかあるいは労働省とか、そういうその他の官庁については、いわゆる圧力団体というものもあって、熱心な要望も運動も行われておって、行政官庁としても、積極的であるとか消極的であるとかは別として、あるいは本意不本意は別として、少くとも積極的な施策が次次と出ざるを得ない状態にあるようです。しかし、幸か不幸か、厚生省の行政の対象となる諸君は、非常に政府の施策に頼らなければならない人々が多いにもかかわらず、他の官庁に要望をするような諸君とは違って、たとえば、昨日の新聞にも出ておりましたけれども、ある母子家庭の母親が政府の今日の施策に非常な感謝をしておる。税金も納めない私たちが、このような措置をしていただくことは感謝にたえぬと言っておるのです。こういう気持を持った諸君が大部分、厚生省所管のもとに行政の対象となっておるわけですから、厚生省としては、その点を十分考慮して、私は積極的にやっていただかなければならぬと思うのですけれども、従来においては、はなはだそういう点において遺憾な点が私は多いと思うのです。特に言いたいことは、この付帯決議をされた場合に、この付帯決議が真に履行できるのかできないのかということはやはり十分考えられて、万一この付帯決議に沿い得ない場合には、私はやはり率直に、その決議の場所で政府の所信を披瀝すべきだと思うのです。一たん約束したものは、どんな困難を排しても私はやるべきだと思うのです。付帯決議がじゅうりんされておるという例は、こればかりではありません。幾らでも実例を私はお目にかけることができると思うのです。しかも、これは特に大臣のおるところで言いたかったのですが、今大臣は、衆議院法案成立のため来られないそうですから、お伝えいただきたいのですが、八カ月でかわられる、その期間の間に、自分のやりたいこと、考えておることだけをやって、今までの先輩諸君が築き上げてきた、あるいは厚生省の局長、課長、担当者の諸君が粒粒やってこられた、これらの積み重なってきた成果、業績というものを少しも考えに入れないで、自分の名前を残そう、自分の業績を残そうとするようなやり方をされる。こういうやり方は、過日本委員会で、山下委員から健保の問題できびしく叱責をされておった、あの健保に対する三十億の国庫補助は、十億に本年度は削られておる。こういうことも、これは所管の大臣としては、他の何ものが削られようとも、これだけは残さなければならないという決心があってしかるべきだったと思うのですが、削り取られても、少くとも三分の二の補助を削り取られても、しかも平然として本委員会に臨んでおる。こういう態度は、私どもとしてきわめて遺憾です。こういう考え方は、前任者、先輩の残された、あるいは約束をされた公約をじゅうりんして顧みない考え方にも通ずるのである。これがやはり院議を無視し、委員会の付帯決議等も軽んぜられるというところに私はつながっていくと思うのです。そういう点について、厚生省としては、この付帯決議がむだにならないように、今まではともかくとして、今後の具体的な措置一つ即刻立案され、実施をされていただきたいと思うのです。  それから、提案者である野澤議員にお伺いしたいのですが、大へん失礼なことを申し上げるようですけれども、この本法案がかりに成立しますと、ちょうどこの次の解散をされる時期にまたぶっつかってくるわけです。ここで解散をされて、三年後にまた解散間近になってくるわけです。そこでしからば、政府がこの付帯決議に沿って、この三年の間に、心配御無用です、もうさらさらこれを延ばしていただくようなことは必要ございません、こういう状態に幸いなればけっこうです。ところが、今私が強く御要望申し上げましたけれども、今までの例からいって、強い御要望は、私のみならず、各委員からしばしば御要望申し上げておるのにもかかわらず、そう成果が上ったということは数が少いわけです。この意味で、今ここでもって三年間の延長をされて、該当者の救済をはかられるわけですが、これがこの三年間に十分な成果を上げられなかった場合に、野澤さんは御郷里においても当選確実のように伺っておりますし、当然再選されておいでになると思う。で、ごうんちくを傾けられて、またこの方面に御活躍をしていただけると思うのですが、その場合に、この三年たって成果が土らなかったときはまたこの延長をお考えになるのかどうか、どういう事態があっても、断じて再び延長するようなことはないということを言明していただけるのかどうか、御所見を伺っておきたい。
  53. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) だんだんと私ごとのお話が出まして、当選確実になったようでありますが、(笑声)事態は、そうした深刻なお話し合いも、衆議院の自民党、社会党では話し合いをいたしまして、当時は、もしこの前の立法通り考えで、既得権だけを尊重するという考え方でいくならば、年限を切らないで、無期限で当分の間ということで野放しにしたらよろしいじゃないかという御意見もありまして、それから一部には、年限切らぬでおくということは、付帯決議、また立法経過から見ても不合理である、こういうことから、一応五年くらいにというお話がありました。五年と切りましたのは、かなり内容が複雑しておるし、政府がなかなかやる気がないから骨が折れる、こういうことで五年という案が出まして、これは自民党の方です。そうしますと、社会党の方では、そんなに長く延ばされちゃ困るから、一年か三年で片づけようじゃないかということで、二年という案が出ました。それでやむを得ず、五年と二年と話し合って、まずとりあえず三年ということにきめようじゃないか。これほど強い御要望があるとは気がつきませんで、衆議院では一切がっさい議論せずに、こちらへ回して参りましたものですから、今、だんだんと諸先生方のお話をお聞きしまして、これは早急に解決しなきゃならぬという決意になりました。ただし、次期国会参議院の諸先生方は当然残っておられるのですから、この法案が成立しまして、選挙が終りました後に、十分政府を督励して、衆議院も、おそらく調印をとりますと三百五十名以上は賛成者だと思います。分離する、単独法を作るというような問題になってきますと、ただ問題があまりにも小さいので、おえらい先生方が、お年寄りほどお世話になっておりますから、かなり社会党も自民党も賛成者が多うございますからこれは、まげて先生方の御尽力によって、何らかの解決方策を講じていただければ大へんけっこうだと存じます。
  54. 小澤龍

    政府委員小澤龍君) 付帯決議の尊重に関する片岡先生お話、私から厚生大臣に逐一説明いたしたい所存でございます。なお、私ども事務当局としては、あくまで院議を尊重しなければならぬという考えに徹しておるのであります。今後とも、御決議の趣旨は十分に体してやっていきたいと思うのでございます。先ほど、無免許のはり、あんま取締りの問題が出ましたけれども、これは、率直に申し上げますというと、あんま業というものは、戦前、昔からあるのです。これがほとんど放任状態で最近まで継起してきたということは事実でございます。この二、三年、晴眼者の無免許あんまがはびこったため社会問題化したのであります。そこで私ども、この問題を取り上げまして、昨年警察あたりと連絡したのが第一回、ほとんど第一回と言っていい。これは、線香花火に終らせるつもりはございません。片岡先生の申されましたごとく、単に取締りではなくて、善導するというところに重点を指向いたしまして、仕事をやって参りたいと思う次第でございます。
  55. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  なお、修正意見等おありの方は、討論中にお述べを願います……。ほかに御意見もないようですから、討論は終局したものと認めるに御異議ございませんか、   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議なしと認めます。  それではこれより、あんま師はり師、きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案通り可決することに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  58. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     勝俣  稔  西田 信一     木下 友敬  木島 虎藏     高野 一夫  藤田藤太郎     山下 義信  西岡 ハル     坂本  昭  中山 福藏     横山 フク  山本 經勝     斎藤  昇  片岡 文重     竹中 恒夫
  60. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 休憩いたします。再開は午後一時半にいたします。    午後零時二十五分休憩    ————・————    午後二時二分開会
  61. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  委員異動を報告いたします。四月十五日付をもって坂本昭君及び高野一夫君が辞任され、その補欠として松澤靖介君及び最上英子君が選任されました。   —————————————
  62. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) この際お諮りいたします。委員外議員坂本昭君から発言許可の申し入れがございます。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  64. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 藤田君。
  65. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はこの際、連合審査の問題について提案をいたしたいと思います。今、法務委員会にかかっておりまする刑法の一部改正の問題、刑事訴訟法ですか、親告罪の問題が非親告という問題をめぐって、労働問題に非常に関係があると私たちは考えております。もう一つの問題は、あっせん収賄という問題をめぐって、法務委員会と連合審査をいたしたい。で、ぜひここでおきめをいただきたいと思います。提案します。
  66. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) お諮りいたします。ただいまの藤田君の発言の通り、刑法の一部を改正する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対し、法務委員会と連合審査することの申し入れを行いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ吉あり〕
  67. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。よって法務委員会に対し連合審査の申し入れをすることに決定いたしました。   —————————————
  68. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑願います。
  69. 山本經勝

    山本經勝君 今次の本法改正案につきましては、ここに提案理由説明の中でも明らかにされておりますように、こういう母子福祉の家庭を援護するという趣旨にのっとって、生業資金の貸付額を、第一点は五万円の従来の限度を十万円に引き上げるという考え方、これは非常にけっこうなことだと思うのですが、これに関連をして厚生省にお伺いしたいのは、提出になっております資料の中で、「母子福祉資金国庫予算及び貸付状況調」というものの中を見ましてもわかりますように、昭和二十八年度に七億九千何がしという予算が出されております。そうして自来二十九、三十、三十一と、年々この貸付総額が減ってきておるが、私どもが一応推察いたすところによりますと、この種の貸付金が、総体的に対象人員が減少したということは考えられぬような気がいたします。にもかかわらず、年々減少の一途をたどって、三十一年度は四億五千万円、こういうようになっておる。しかも、その貸付額の、予算額の貸付状況を見ますというと、実際に利用された金は二億三千六百六十六万一千円ということになっておるようであります。そうしますと、結局三十一年度だけを見ましても、四億五千万円の予算額が組んであって、実際貸し付けた額は、約その半額の二億三千六百六十六万一千円、そこで剰余金となって、この予算額が浮いてきたその額が二億一千三百三十三万九千円、こういうことのように見受けます。これは、一応政府の方でお出しになった資料によるものですが、最近の地方新聞のある記事を見ますると、母子福祉資金の貸付予算額が割当てられておっても、借り手がないので、全部返還をしたというような事例があったやに聞いておりますが、一体、せっかくこの予算を組んで、そうして国会の同意を得て政府実施をしていくのであるし、また、法そのものの根本的な精神から言うて、こうした母子家庭の困窮を救済して、平和な、豊かなとまでは申しませんけれども、少くとも最小限度の生活の保持なり、あるいは子女の養育なりというものができていく、あるいは教育ができますように念願をして作られた法律で、しかも予算を取っておきながら、それが実際に運用せられぬ、利用されないということは、まことにこれは情ないことだと思う。見せ金であってはならない。いやしくも国の予算でここに取ってある以上は、それが有効に使われるような仕組みでなければならぬ。それで、せっかく法改正の趣旨はよろしくても、中身において実際の運用がされぬということになりますと、これは、どこかに重大な欠陥がなくてはならぬ。そこら辺の事情一つ事務当局の方から、局長の方から一つ御解明をまず願っておきたい。
  70. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 今お話しありましたように、たとえば、三十一年度におきましては、半額近くが剰余金として国の予算が使い残りの状態にあるというような、こういうような状況にかんがみまして、一つ地方財政の状況も考えて、三十二年度におきましては、従来国と県との負担割合が二分の一ずつでありましたのを、三十二年度からは、国が三分の二、府県が三分の一、そういうふうにいたしまして、すなわち田に対する府県の負担割合を軽減をいたしまして、総体としての資金源の増加を計画をいたしたような次第でございます。   〔委員長退席、理事山下義信君着席〕 しかし、三十三年度における状況を見ますると、やはりかなりの額が消化されないというような状況になっておりまして、この辺大へん残念に思っているのでございます。一方、母子世帯の資金の貸付の需要がないかと申しますと、私どもの手元にあります調べによりますと、形式的に申し込まれたもののうち、貸付けられたものの割合というものは、やはり六〇%ないし七〇%程度である、そういうふうに、十分需要に応じ切れないおもな理由は、貸付財源がない、そういうふうなのが約半分を占めているというようなことになっているのでございまして、もちろんこれは、いわゆる顕在的な申し込みに対する割合でございますから、潜在的な申し込みの規模を加えますと、さらに、この需要に対する貸付の実現というものが低率になると考えるのでございます。そういう意味からいいまして、貸付に対する要望というものはかなり強いのにかかわらず、地方における予算計上が不十分なために、この資金源というものが十分手当できない。その結果、国の予算というものが相当額剰余を生ずる。端的に申し上げますと、そういうような現状にあるわけでございます。これに対しまして、私ども、府県における母子福祉資金の予算計上につきましては特に意を用いまして、督励をいたしますと同時に、関係の未亡人の方々等においても、地方において相当骨を折っておられるように承知いたしておるのでございますが、今後とも地方における予算の計上については、ますます努力をして参りたいと考えております。
  71. 山本經勝

    山本經勝君 続いてお伺いしたいのですが、この貸付に当って、何といいますか、一定の基準といったようなものがあって、その尺度でもって非常に厳重な貸付条件に対する審査等がある。そのために、実は借りたくても借りられない。また一つには、今お話にあった地方公共団体等における負担の問題も大きな障害になっておるやに承わるのですが、その辺のやや具体的な事情を、今この際、やはり厳密な意味において検討をする必要があろうかと思うのですが、そこら辺を少し具体的にお話をいただきたいと思う。
  72. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 昭和二十八年から三十一年までの間におきまして、貸付の希望に対しまして貸付けなかった者、すなわち決定しなかった理由別に地方の状況をとった結果について申し上げますと、先ほど申し上げましたように、金がない、そういう事情に基く者が約五三%、それから、事業内容が適当でない者、不適当な者、これが約二五%、それから、法律に貸付を受ける資格が定めてありますが、その資格に欠けておる者、これが六%、その他がいろいろなその他の事由に基くものでございますということになっておるわけでございます。これは、法律に基いて貸付をするわけでございますから、法律に定めてあります資格に適合しなければならないことは言うまでもございませんが、問題は、事業内容が適当か不適当かということの認定が一つの問題だと思います。これにつきましては、借りたい方の気持と、貸す方の気持とは、これはやはり、具体的なケースについて当れば、かなり食い違う場合もあろうかと思います。もともとこれは貸付でございまして、給付をするわけでございませんので、やはり償還の可能性ということも考えなければならないし、それに伴って事業内容が客観的に見て大体適当であるかどうかということは、もちろんこれは検討すべき重要なポイントだと思いますけれども、しかし、普通のいわゆ商業ペースにおける金の貸し借りとは違うわけでございますから、その辺のところは、十分身体的な事情に即応した、妥当な措置がとられるように私どもの方としては指導をいたしておるようなつもりでございますが、今後、それらの点については、なお気をつけて参りたいと思います。それから、要するに金がなくて貸せないというものにつきましては、これは、先ほど申し上げました、地方における予算計上をますます促進をしていく。そういうようなことでこれの打開をはかっていかなければならないと思っております。
  73. 山本經勝

    山本經勝君 その金がないというのは、地方公共団体において金がなというわけなんですか。
  74. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) これは、法律の仕組が、御承知のように、地方におきまして予算を計上して、それに対して現在は三分の三を国が県に対して貸し付ける、そういう仕組みになっておるわけでございまして、県が予算を計上いたしませんというと、国の予算が結局消化できない、そういう結果になるわけでございます。
  75. 山本經勝

    山本經勝君 一応地方公共団体等における問題はあと回しにいたしまして、今お話がありました事業内容の認定なんですが、これはどこでやりますか。
  76. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 窓口といたしましては、いわゆる社会福祉事務所、これの職員が具体的な窓口になります。決定は県において行います。決定をする過程におきまして、各県ごとに児童福祉審議会という審議機関がございます。その審議会にかけてきめる、そういう仕組みになっております。
  77. 山本經勝

    山本經勝君 それと関連をして、生業資金が貸し付けられる、むろん貸付ですから、いわゆる実際に貸さなければならぬ。そうすると、返済ができるかできぬかという可能性の問題は、これはやはり一応は問題になると思うのですが、しかし、資金の貸付の目的から申しますというと、これはやはり高利貸しとは違うので、要するに、金利を上げてもうければいいという建前ではむろんありませんし、あるいは地方公共団体にしても、これはやはり、負担が増大するという半面もあるでしょう。そういう関係で、償還の可能性というものが非常に大きな認定の基礎になり、ウエートを持つということになりますというと、言われるように、せっかく予算が組んでありながら、地方公共団体で負担すべき部分の予算の編成ができなかったり、あるいはそのことが、できぬことは非常に都合が悪いものだから、うまくいわゆる事業内容の認定や償還の可能性にひっかけて、とかく窓口における審査があまりにも厳重過ぎて、   〔理事山下義信君退席、理事勝俣稔君着席〕 十分な貸付の目的が果せぬ、あるいは援護の目的が果せないという現状に置かれておるのではなかろうかという気がいたしますが、そこら辺は、当局側としてはどうお考えになっておりますか。
  78. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) この制度は、法律で御承知のように、母子世帯の経済的な自立の助成ということが重要な眼目になっておるわけでございまして、すなわち、この貸付制度による貸付によりまして経済的自立の助成をやる。そのためには、もちろん貸し付けることの対象となる事業が明らかにまあ見込みが立たないというようなものでは、経済的自立の助成という目的を達することができませんので、結局これに主眼を置きましても、そうなりますと、償還の問題と表現の違いということに結果としてはなるわけでございますが、そういう目的を持っておりますので、当然これは事業内容について、まあ本人の主観的な考え方もさることながら、客観的に冷静な判断をするということは、貸付の場合における重要な要素と考えなくちゃならぬと思いますが、同時に、もう一つ償還を、これはよけいなことかもしれませんが、見ますというと、償還の状況が実は、お手元に差し上げてあります資料の二十一ページに書いてございますが、だんだん下っておるわけでございます。すでに六〇%台に落ちておるように承知をいたしております。これはもちろん、先ほどお話がありましたように、商業ベースにおける金の貸し借りでありませんので、まあ償還のことをあまりやかましく言うのもどうかというような御見解もあろうかと思いますけれども、しかし、償還されましたものは、同時にほかの母子世帯に対する貸し付けの財源になるわけでございまして、その意味から言いますと、つまり償還が的確に行われるということは、この資金の効率を向くし、同時に、母子世帯に対する貸付料を増大させることによって制度の趣旨をますます発揮する、そうした性質のものでございますので、償還率があまり下りますということは、結局この制度自体に停滞をなさしめることになりまして、間接に母子世帯の利益を害するというような結果にもなりかねないと思いますので、償還の問題については、私どもとしても頭を痛めておる問題でございます。
  79. 山本經勝

    山本經勝君 ちょっと先ほども申し上げたのですが、ある地方新聞の記事ですが、せっかく国が更生資金を出した、そうしてそれぞれ都道府県に流しておる、それが都道府県でいわゆる赤字であるところでは、それに見合う県の予算というものが編成されなんだのかどうか知りませんが、とにかく七割くらいの金が余って返したというような事例があるやに聞いておりますが、そういう具体的な事実を厚生省はご存じですか。
  80. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) ある地方におきまして、割合はよく覚えておりませんが、相当額がその地方において消化されなかったといいますか、貸し付けられなかったという事実は、私ども承知をいたしております。これには、それに相応ずる一つ理由もあったようでございますが、しかし根本的には、やはり母子福祉資金制度についての母子世帯の認識と申しますか、十分これを承知をし、理解をしていただくという努力を私どもも重ねることかなお必要じゃないかと思います。逆に申し上げますれば、こういう制度についてよく知らないために、貸付の申し込みをしない、そういう向きもあろうかと思いますので、その辺につきましては、今後母子世帯の一つの自立の有力な手がかりとしてこういう制度がある、あるいは、これを借りるについてはどういうふうな手続をするか、その辺についての親切な指導なり認識の徹底というものについて、これはさらに意を用いなければならないということを痛感をいたしております。
  81. 山本經勝

    山本經勝君 そこで、厚生大臣にお伺いをしたいのですが、今お聞きのような状況であったので、せっかく国があたたかい気持で、母子家庭の困窮を救済しよう、あるいは自立更生の道を促そうという努力をしておることは確かにわかるが、俗に仏作って魂を入れずという言葉があるように、せっかく法律もあり、そうして資金も一応不十分ながら取っておる。ところが、実は十分に利用をされず、消化をされないという実情は、これは非常に私は遺憾なことだと思う。これは、あながた厚生省、あるいは厚生大臣と当局幹部のみの問題ではないでしょう、局長さんがお話しのように、十分なこの制度理解が不徹底であつたり、あるいは利用する人々の心がけが不十分であったりするような欠陥もこれはいなめないと思う。ところが、法並びにその制度の基本的な精神は、これらの人を救済することを目的としておる。ですから、当然消化するような行政指導が、厚生省あるいは各関係府県等においてなされなければならぬと思うのですが、こういう面の行政指導なり、あるいは根本的な制度の精神にのっとって、どういう日常の御指導をなさってきたのか、根本問題として、大臣からこの点解明を願っておきたい。
  82. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私も、母子福祉貸付資金が実際に消化されない点を見まして、実は驚いているのであります。御承知通り、金利は三分である、しかし貸付金が五万円では少し、率直に言って、私は利用価値が今の貨幣価値から見れば足りないであろうということが考えられます。今回これを倍額にいたしましたのも、もう少し私としては多く貸し付けるようにいたしたいという気もいたしましたのですが、何しろ従来五万円でしたのですから、さしあたり十万円にして、事業の選択の範囲を広げることができるように、それから、手続が非常に繁雑で、この利用手続が繁雑といいますか、各段階を経て参りますために、適切な時期に適切に借りられないというふうな点は、さらにその点についても、今回のように、臨機の処置がとってやれるようにすることが必要であるというふうに考えまして、この法律案改正の御審議をわずらわしておるわけでありますが、と同時に、率直に言って、地方自身が本来、今お話のように、資金の需要というものが、あなたのおっしゃるように、もっとあるべきはずなんであります。それが地方財政その他のために盛られないということ自体がおかしな話だと思います。もっとそういう点、母子の家庭に対して国が考えていると同じように、あるいは以上に、地方の団体がもっと積極的に考えるべきでなかろうか。それからもう一つ、これは法の関係とは違いますが、これらの行政は、率直に言えば、ただ受けて立つような行政では、私はほんとうに円満な運用ができるものでないと思うのであります。で、これらの人は、まあいわば世間の事情及び、生業資金で言えば、実際の事業の経営の苦労さ、あるいは何が適当なものであるかというふうな点についての知識経験に乏しい人であります。こういう貸付金制度を設けました以上は、法本来の趣旨に従って、政府が積極的に御相談に応じ、そうしてそれをどうしたら本人のほんとうに自立を助けるようになって参るかというところまで本来お世話しないと、なかなか私は、所期の目的を達成しない。外国の例を見ましても、これらの資金を貸し付ける場合には、そういうふうないい相談相手というものが非常に必要なんであって、それらは、今後福祉事務所なりその他の積極的な活動によりまして、現在、御指摘のような、資金に余りがある、また償還の率がだんだん低下していくというようなことがないようにすべきでなかろうか。これは、外国の例を見ましても、私は、そこまで突き進まなければいけないのだ、こういうふうに考えまして、今後につきましては、この法律自身が幸いに御承認を得られれば、そういう方面に積極的な活動をいたしたい、何しろ今のままで、五万円であるとか、その他いろいろな機関を作って審査をしているというような状況ではいけない。まずこれを法律改正いたしたい、こういう考えでおるわけであります。
  83. 山本經勝

    山本經勝君 局長さんにお伺いをしたいのですが、大体この三十三年の現在のあれで、これは正確な数字であれば、おそらく本日、現在のこの対象人員は何名であるかということが不確定であるかもわかりませんが、少くともわかる範囲でお知らせをいただきたいと思うのですが、三十三年のたとえば四月一日現在で、あるいは三月末日現在が、一体全国にあるこの種母子家庭なるものは何戸ぐらいあって、人口数にして何名くらいあるかをお知らせを願いたいと思います。
  84. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 三十一年の八月一日現在をもちまして、全国の母子世帯の調査をいたしました。これによりますと、この法律の対象となります母子世帯が約百十五万ございます。そうして大体一世帯に対して二人の子供がおる、そういうようなことになっておりますので、まあそれの三倍が結局人口になるというわけでございます。その後の状況はつまびらかにいたしておりませんけれども、大体三十一年とそう年月もたっておりませんので、これによって御推察をいただきたいと思います。
  85. 山本經勝

    山本經勝君 このお出しになっておる資料の中の何ページですか、資料の中の、「母子福祉資金資金別貸付状況調」の中に人数が一応出ておりますね。そこで、人員にして、貸付を受けた者が、昭和二十八年から三十一年度にわたって、総計十九万七千六百七十九名となっておる。そうしますと、一応、今局長さんのお話のように、三十一年の調査において、すでに世帯数にして百十五万という多数に上っておる。そうしてそれが二人の子供をかかえて、合計三人ということになるということになりますと、三百四十五万人という多数の人口になるわけですから、するとあまりにも——この貸付条件がどうなのか。何らかの理由によって、これが一般的にあまねく行き渡るようになってこないと、むろん金額がかりに五万円と仮定しますならば、みなん五万円借りていけば、これは金が足らぬことははっきりすると思う。しかし、わずかな金さえも余っておるという実情ですから、この間の矛盾があまりにも大きすぎるわけです。すると、かりに大臣の今のお説を考えてみますというと、生業資金を貸し付ける場合に、その生業の内容あるいはこの返済の見通し、こういうようなものをあわせ考える場合には、直接厚生省もしくは地方公共団体において適切なその生業の計画なり運営なりについて指導をすることなくしては困難であろうと言われておる。全くその通りだろうと思う。   〔理事勝俣稔君退席、委員長着席〕 こういうことは、今日まで実はやられておらなかったのですか。あるいはやられても、それが十分に浸透していなかったのか。そこら辺の事情はどうなんですか。
  86. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 母子世帯に対しまする指導の職員としましては、御承知のように、母子相談員という制度がございまして、大体福祉事務所一カ所に一人当りということになっておりますけれども、これがまあ人員的に申し上げましても、あるいは内容的に申し上げましても、そう高度の指導をするというには十分でないという点が、これは一つあると思います。それから福祉事務所が、今申し上げましたように、この貸付の実際の窓口的な世話をするということになっておりますけれども、これは、御承知のように、生活保護の仕事に非常に追われておりまして、勢いこういった方面に手が十分回りかねるという点がある。これもいなめないことだと思います。それから、そのほか民生委員ないし児童委員方々がこの相談の相手となって、御指導いただいておると思うのでございますが、これもまあいろいろな仕事をかかえておられる関係上、十分こちらの方に手が回っておるということは、これは保証はできない。まあそういったようなことで、一応仕組みとしては、相談の相手なり組織なりというものが曲りなりにも存在をしておるのでありますが、これが十分、 いわゆるがっちりした形に確立をしておるというふうには、率直に申し上げて、これは言えないうらみがあることを非常に残念に思います。
  87. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、この母子相談員というのは、今の局長さんのお話ですと、各福祉事務所に一名ずつ配置されている、こういうことなんですか。
  88. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) そうです。
  89. 山本經勝

    山本經勝君 すると、もう全国では、この母子相談員なる人は何名くらいになっていますか。
  90. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 八百三十名でございます。
  91. 山本經勝

    山本經勝君 先ほどの局長さんのお話にもありましたように、三百四十五万という多数の母子の家庭が、戸数にして百十五万という多数がある。ところが、それに全国わずかに八百三十名という相談員の配置、これではしょせん、言われるように、せっかく厚生大臣はああいうお話をしておいでになりましたが、手をとってやる、たとえば生業の指導、計画に対する、あるいはまた運営に対する指導なんということは、しょせんこれは絵にかいた餅と言うよりもはなはだしい結果になっておるのは当然だと私は思う。そうしますと、かりにこの資金の額を増額して、効率を高め、あるいは五万円じゃ少いから十万円程度、あるいはまあそれ以上も投入すればりっぱな営業ができる、あるいは生業が憎まれるということではないのですから、やはり計画を立てて、あるいはその立地条件等を考慮してやる、生業についても、十分な選択が必要であろうと思う。そうすると、それらに対する十分な、何と言いますか、経験を持っていない人が多いのじゃないか。ですから、勢いそうした人にほんとうに親身になって話し合って、手を取って指導をしていくというような仕事がなされなければ、これはやはり、法そのものも死物になりますし、先ほどから申し上げるように、せっかく予算を組んでも借り手がないという現実もまたその一環をなしていると思う。ですから、そういう点で、政府の指導なり、あるいはまたこれが都道府県において、あるいは、先ほど言われたように、民生委員等も協力するでしょう。また、直接責任がある仕事だと思うのですが、そういうものがあっても、やはり有効ないわゆる法目的あるいは制度の活用ということになってこない、こういうことになってくると思うのですが、これを改善する方法として、まず私は第一番に、やはり八百三十名程度では少な過ぎるので、相当大幅にこれは増員をするというようなことでも考えなければ、貸付金額をふやしたから、それでうまくいく、こういうことになってはこぬのではないかと思う。というのは、貸付条件について、あるいは返済等も含めて、認定をする審議会の最終決定にしてもなかなかむずかしいし、あるいはまず第一番に、窓口そのものが問題である。ですから、そういうこととあわせて考えますと、これはやはり、積極的な指導機関がもっと強化されなければならぬ。そのためには、まず第一番に、県におる母子相談員なる人々がもっと充実した有力な配置でもって、具体的な指導に当るということと並行していかなければ、やはり貸付金の回収も困難であるということが先ほども言われたのですが、その困難な理由は、せっかく悪意でやってはおらぬと思うのですが、とにかくやった仕事がうまくいこうと思っていたところが、なかなかいかんということで、そういうような事情になるのでしょうが、そういう場合の指導がいわゆる裏と表、表裏一体になってうまくいかぬということになると、これはやはりうまくいかぬということになると思うのですが、そこら辺、局長は十分御存知じだと思うので少し突っこんでこまかななるべく具体的なお話を承わっておきたいと思う。
  92. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) お話のように母子相談員の制度と申しますか仕組みを確立することがやはり母子福祉全般の問題として特に重要な点だと思います。ただ母子世帯に対する相談という性質からやはり大体女性を中心に考えることが至当だと思いますのでその辺からおのずから事業の内容等についての判断の制約はこれは免れない点だと思います。同時に一つの問題は、やはりこれらの人たちは、金を借りるにいたしましても書類を一枚書くにいたしましても、それらの手続についてふなれな方が多いわけでございますから、その辺を手を取っていろいろ世話をするという具体的な、そういう世話が届くような仕組みにすることが、これが最も必要なことではないかと思うのでございます。それらの事務的な面については、やはり福祉事務所をもっとこの面に強化をしていくということが、やはり一つの重要な点じゃないかと思うのでございます。今お話のありましたまあ趣旨を直接目的としたものではございませんが、三十三年度におきまして、母子福祉資金の償還促進費としまして、約千六百万円の予算を計上しておるのでございます。これは、福祉事務所ごとに適当な人を嘱託をいたしまして、償還の促進に当るということでございますけれども、償還の促進ということは、期限が来たから返しなさいということでは、これは意味をなさないので、やはり常々から償還ということを一つの目当てにした事業の具体的な指導でありますとか、あるいは償還の計画、あるいは準備というものについて親切な指導をすることによって、初めてその償還の目的が達せられるわけでございますので、目的は、今申し上げましたような趣旨の経費でございますけれども実態におきましては、お話の趣旨とやや呼応するようなふうに運用をいたしたいというので考えておるのでございます。具体的な指導の問題も、そういう線で参りたいと思っております。
  93. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど申し上げた地方公共団体ですね。ほとんど三割程度しか利用されなかったというお話を私は聞いているのですが、こういう事例があるということも、局長もお認めになっておるし、また大臣も、そういうことを聞いておると言われた。そうしますと、これは何か特殊な理由があるのだろうと思う。その区県の一応名前はあげませんが、その場合に、その地方公共団体における内部のいろいろな特殊な事情があるのじゃないか。もしそれがあるならば、厚生省としては、やはりその府県の実情に即した解決策を講じてやらなければならぬことになってくると思う。で、今のお話とともに、局長さんの方から、その問題点がどういうところにあって、そしてどういうふうな処理をなさったか、その点伺っておきたい。
  94. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) あるいは私の考えている県が、先生のお考えになっている県と食い違っているのかもしれませんが、私の承知しておりますところは、予算計上の時期がいわゆるまあ非常に時期を失したと申しますか、そういうことで、その年度において相当剰余を生じた、そういうふうに承知をいたしておるのでございます。従ってこれは、いわゆる臨時的な現象と私どもの方は考えておりますし、同時にそれはそれとして、やはり根本的には、先ほど申し上げましたように、この制度についてのまあ知らせ方というもののその努力が足りなかった、あるいは金を借りるについての具体的な窓口の世話が十分親切でなかった、手が行き届かなかった、そういう点がやはり板本的には一つの原因であると考えられますのでそれのことをさらに徹底をするようにその当該の衆に対しましては指導をいたしたのでございます。
  95. 山本經勝

    山本經勝君 資料を見ますと、返済状況は、先ほど局長がお話のように、二十八年度においては八一・五%の償還率である。それから年々それが低下をしていって、三十一年度には六七%に減っている。これはもうお話通りだと思うのですが、こういう場合の償還のできないものに対する特別な措置は何か講じられたことがありますか。あるいは、それは督促をするばかりでほったらかしておる、こういうことなんですか。その辺はどうでありますか。
  96. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) まあ大へんむずかしい問題でございますが償還がおくれている、いわゆる償還すべき時期に償還の計画に沿った償還が行われなかったということから、こういう状況が現われておるわけでございます。そういうふうに償還の時期がおくれているものにつきましては、事業の内容等についてできるだけ指導をし、それで償還を促進すると、そういうふうな指導方針をとっておるのでございますが、一般的な償還対策につきましては、先ほど申し上げました予算の問題もその一つでございますし、またこれは、やはり金を貸した方から返せ返せということをせっつくということよりも、自主的にこの償還の努力をすると、理解の上に立って償還の努力をするということがやはり一つの重要なポイントでございますので、この制度の対象となっております未亡人の世帯、その団体、特にその団体等におきまして、これらについても十分気をつけて、たとえば、かねがね償還のための貯蓄をお互いにし合っていくというふうな、貯蓄組合を作って償還の準備を整えでいく、そういうような努力を自主的にやっておられるところもございますし、それらにつきましては、私どももできるだけ後援をして参っておるような状況でございます。
  97. 山本經勝

    山本經勝君 これは、ちょっとこまかな話になりますが、かりに今度法改正が行われて、五万円が平均額一応ワクとして十万円に引き上げられた場合には、そうしますと、たとえば昭和三十年なら三十年度においてその人が五万円の借り入れをして生業を営んでおる、その後その生業がうまく参りませんので、償還が困難な実状にあると、もしその事柄内容を調べて、その結果資金が十分でないので生業が思うようにいかないと、こういうかりに一つの事例があったと仮定いたします。そうしますと、その資金を補給してやることが必要になって参りますが、そうしなければ償還能力は十分に発揮できぬし、法本来の目的である自立化の方向というものも確立ができない、こういうことになろうかと思うのです。ですから、そういう場合における実際の実務上の取扱いを、たとえば、今度増額することになったのですから、今まで前に五万円貸して、まだそれは完全な償還の状況になっておらないけれどもですよ。その内容によっては、さらに追加して五万円なりあるいは十万円なりの貸付をして、生業の本来の目的を完全に果せるように指導できるのか、なさろうと考えているのか、まあそこら辺のことからあわせて御説明をいただきたいと思う。
  98. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) お話のような場合には、一応この法律の解釈と申しますか、あるいは取扱いとしまして、生業資金をダブって貸し付けるというのではなくして、事業継続資金という一つの貸付の資金がございますが、限度は三万円以内ということになっておりますが、この事業継続資金をそういう場合には貸し付ける、そういうふうな仕組みになっておるわけでございまして、そういうふうな運用の仕方をいたしておるのでございます。まあ資金源がそう無限に潤沢にあるわけではございませんので、なるべく広く母子世帯の方々に借りていただくという意味において、ダブって貸し付けるということは避けるように実はいたしておるのでございます。今申し上げましたような運営のいたし方で参りたいと思いますけれども、今お話のありました点につきましては、さらに一つ検討をいたしたいと思います。
  99. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、なるほど事業継続資金でも、名称は何でもいいんだと思うんです。かりにそういう実例をあげましたから申し上げますけれども、実際には中途半端で、さっぱりまとまった仕事にならぬ、あるいは事業の収益もあげ得ない、こういうようなことが私は起りかねないものだと思う。そういう場合が相当あるのじゃないか。このことが償還の困難を作り上げておる。そうしますと、むしろ償還をするために必要なある程度の金額の貸付を増額するなり何なりして、しかも、これは非常に大事なことは、一度貸し付けた資金によって十分な更生、生業が展開できないということですから、これこそ具体的な、技術的な指導が必要になってくると思うのです。そういうものとあわせて、もう少し積極的な手を打って参りませんと、せっかくつぎ込んだ資金も死物になりますし、のみならず、当の障子家庭においては思うような生業の発展がない、こういうことになってくると思うのですが、そこら辺で、たとえば、地域的に申しますなれば、ある市町村等において、何人かの母子家庭が集まって、先ほど申し上げた貯金の組合を作るのもけっこうでしょうが、その他いろいろな話し合いの機会等を打たせて、そうして横の連係を保って、他のいわゆる同業者との協力関係もみずからの力でつちかい、また育てていくということがなされなければならぬでしょう。そういう場合に一番必要なことは、福祉事務所に配置されておる相談員あるいは民生委員等の協力を求めるということになっていくのでしょうけれども、そういう具体的なスケジュールといいますか、厚生省としては、指導に関する何らかの具体案をお持ちになるのですか。
  100. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 今お話になりましたように、その貸付を受けて、さらにその貸付を受けなければ元も子もなくなる、そういうようなケースは、普通の金融の場合におきましてはよくある例でございますし、従って、こういう母子世帯の場合におきましても、そういう事例は、それはあり得るともちろん考えなくちゃならぬと思うのでございます。そういう場合には、大体、今申し上げましたように、事業継続資金によってその事柄の処理をしていく、そういうような立て方をいたしておるのでございます。もちろん、その金額それ自体がきわめてわずかな金でございまして、これだけで十分の成果をあげるということはむずかしい場合もあろうと思いますけれども、この法律の範囲内においてそれは処理をしていかなくちゃならないと思いますし、それから、やはり少い資金源をなるべくたくさんの母子世帯に潤わせるというようなこともございまするので、その面からも、ある程度はこれはやむを得ない面も出てくるかと思うのでございます。それらの指導につきましては、先ほど来申し上げておりますように、児童委員、民生委員ないし母子相談員、あるいは社会福祉事務所の窓口、これらが一体となって当るというふうにこれはいたしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、その辺が、仕組みは一応そういうふうになっておりますけれども、十分の成果を上げているかということについては、いきさか満足にいかない点があることは、これは認めざるを得ないと思います。
  101. 山本經勝

    山本經勝君 お出しになっておりまする資料の二十二ページに、「生業資金貸付所要額調」というのを見ますと、第一番に出ているのはゴム風船売りで五千円というようなふうに、いろいろ業種別にあげられているのですが、これは実際上、まあ大小にかかわらず、一応自分の住宅に店舗を持つとまあ常識的には考えられますね。その場合に、今まで貸し付けられておったものの状況はこういうことだと、今度の十万円引き上げることを対象としてこの資料を作られたのですか。
  102. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) まあ実は、こういう公けの資料として出すのがあるいはいかがかとも思いますけれども、一応たとえばここに書いてあります事業を営むにいたしましても、もちろんこれは、家から作ってということでないことは、もう金額によって御承知通りでございますが、それにいたしましても、同じたとえば文房具店にしても、これはピンからキリまであるわけでございまして、この通り土下があることは言うまでもございませんが一応五万円あるいは十万円という限度の問題を提起するにつきまして、あるいは御参考になるのじゃないかと考えて、商工会議所等の資料をもとにしまして、ここに計上したわけでございまして、そういう意味で、一つ軽い気持でごらんいただきたいと思います。
  103. 山本經勝

    山本經勝君 これは、こういうような資料が悪いのじゃなくて、むろん、今からこういう業種等も対象にして考えてみようという努力は、決して悪いことではないんですよ。ところが問題は、この業種別の費目を見て参りますと、これはおそらく、その品物をまず初めに一応並べるのに必要最小限度の金額だとしか言えぬと思う。これは私は、商売はあまりというより、全く経験がないのですが、おおよそ一つの、最初に仕入れた商品が現金に変って、そうしてまた新しい商品の仕入れをするという順序になりますから、勢い貸付限度額が、これは一応現在の五万円をさらに十万円に増額をいたしたとしても、こういう零細な、ごく零細な、顕微鏡で見なければならぬような小さな経営ですから、勢いある程度の余裕といいますか、運転の資金が見込まれていかなければ、これはやはり実際の実効が上らぬことになりはせぬかと思う。たとえば、ゴム風船売りを五千円でやるというならば、おおよそ最初はゴム風船の代価に尽きる。それだけでは、要するに風船を売って、利益がなんぼあるか知りませんが、大したことはないと思う。そうして母子家庭が生存をし、更生をするということですから、そのためにはあまりにも零細な金額である。この最低限を五千円、これはまあ局長のお話しになったように、善意に実態を一応考えて見たということで了解をいたしますが、しかし、全体の額から言いましたら、これは、八百屋さん等にしても、六万円くらいな金では、私は運転ができぬと思う。おそらく一カ月では、なるほど市場で仕入れてきて、毎日現金で払わぬでも済むかもしれませんが、それにいたしましても、私どもの生活環境の周囲にある小さな八百屋さんを見ても、なかなか相当な資金が要るということを言っておるですから、これはやはり、もう少し額がふやされることがむしろ望ましいと思うのです。一応予算のワクの中にあることですから、あながち今にわかに強調してもやむを得ないでしょう。しかし、こういうような具体的な問題は、ほんとうの意味で指導するのには、先ほどお話しの母子相談員、こういうものだけじゃ足らぬから、なるほどその都道府県もしくは市町村等に配置されておる民生委員等が積極的にやってもらわんならぬと思うのです。ですから、そういう民生委員等の協力を求めるということはすでに言われておりますが、そういうようなあらゆる可能な、最大限度の協力を総動員して、そして先ほどから申し上げておるような、ほんとうの意味における母子世帯の更生に役立つような具体的な方法を何かお考えにならないと、これはまた、一応十万円に貸出限度額を拡大してみましても、実際には今まで出た総額とは変りない。今までの予算額と変りない。厚生省は、悪い言葉で申しわけありませんが、悪く言えば、三十二年度における貸付額の五億四千万円ですか、これも半分余っておる、従って、要するに、これは十万円貸しても一応貸せるではないか、一応そういう安易な考え方の上に立って増額を言われておるのであれば、もしそうであったとするならば、これはまことに誠意のない話だと思う。せっかくの法の精神を生かし、母子世帯を更生に導こうという親心であるならば、その辺はどういうふうにお考えになっておるのか、これは大臣に伺いたいのですが、大臣がおられぬので、局長の方からはっきりと御答弁を願っておきたいのです。
  104. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 生業資金五万円という制限につきましては、法律が制定された当初からずっとそのままで参ったわけでございますが、実際の経験に徴しまして、五万円では何ともならない、従って、これを上げてもらいたいという要望が、母子世帯の方からも、あるいは直接これらの仕事に携わっておられます県その他の関係者の方からも非常に強い要望があった点でございまして、そういう意味で、確かに現在の世情において五万円、これも最高が五万円でございますから、すべて五万円を貸すというわけではないので、やはり三万円のものもあり、四万円のものもあるということでございますから、それで生業資金と銘打って、それが自立更生云々ということは、いかにも低過ぎるというような考え方のもとに、これを引き上げることを企図して、御提案を申し上げたような次第でございます。もちろん、この貸付の対象となる事業それ自体が非常に各種各様でございますし、特に商売でありますとか、その他のいわゆる事業ということになりますと、これは、世の常としてなかなか、うまくいく場合とうまくいかぬ場合と、その辺については、いろいろ基礎的な条件というものがひっからんでくるわけでございまして、これをひとりまあ母子相談員の判断等だけでまかなうということも不可能な場合が多いと思います。その辺については、やはり相当こういう経済問題なり、事業の問題について、知識経験を持っている人たち考え方を総合してこれに参与をさせる、そういうことでなければ、十分目的を達することができないと思うのでございます。その意味においては、やはり現在の制度としては、母子相談員の人たちが全力をふりしぼることはもちろんでございますが、児童委員なり民生委員人たちに十分立ち入ってお世話をいただく、そういうふうにすることが最も必要なことではないだろうか。もちろん、県の出先機関でありますとか、あるいは市町村の当局者であるとか、これは、公けの機関がこれにいろいろ援助もし、指導もすることは、これは当然のことでございますけれども、特にこの民生委員、児童委員方々に援助をいただく、そういうふうにいたさなければならないと考えております。
  105. 山本經勝

    山本經勝君 もう一点お伺いしておきたいのですが、この民生委員は、これは厚生省の、何といいますか、適切な言葉がちょっとわかりませんが、直接指導下に置かれるということにはならないんじゃないかと思うのですが、そういう場合に、やはり地方公共団体が正式に厚生省の方の事務の委託を受けるか、何らかの形が必要ではないかと思うのですが、そこら辺の関係はどうなりますか。
  106. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 形の上から申し上げますと、民生委員、児童委員は、厚生大臣が任命をして、そうして業務上の指導は府県がする、そういうような仕組みになっておるわけでございまして、国が直接これを指導監督をするということにはなっていないわけでございます。しかしながら、こういった母子世帯の問題であるとか、その他低所得者の問題というものを、突っ込んで親身になって世話するというのが民生委員、児童委員の本来の職分でございますので、それらの仕事がうまくいきますように、これは、私らの方としては、十分意を用いて参りたいと考えております。
  107. 片岡文重

    片岡文重君 大体、山本委員質疑で尽きたようですが、なお一、二お尋ねしておきたいと思います。大体結論から先に私は申し上げますと、どうもやることが中途半端じゃないかという気がするのですね。たとえば、この貸付金額をふやしたということ、大へんけっこうです。これは、ぜひふやしていただきたいと思う。しかし、今ここで山本君からも例があげられましたけれども、この厚生省でお出しになった資料を拝見をして、一番高額なのがたばこの店です。これは最高を示したものであって、この金額よりも少いものも相当これはあると思うのです。貸し出されておって、借りる方も返すことを考えれば、そうワクがあるからといってむやみやたらに借りる人はないはずなんです。しかし、返す困難を考えてもなおかつ所要の金がなければ事業はできないわけですし、たとえば、ここでもって趣味の店を開こうとしても、同業者がそばにいればできない、たまたまたばこ屋があるけれども、これをやろうとしても、また、この貸付法によって、たばこの小売については優先できるわけだから、やろうと思う。ところが、金がないという事態にも当面すると思うのです。今の金で十万円ということになれば、これは、ショーウインドーを作る金で足らないわけです。幸いにして手持ちがあればいいですけれども、なかった場合には、十万円では、やりたくてもできぬというわけです。そういう点を考えれば、不必要に借りる者はないのであるから、やはりワクだけはできるだけ高くとっておいて、利用者の自主的な判断と、有効度が最高に発揮できるような仕組みをしておくべきだと思うのです。予算の関係等もあるでしょうけれども、大体三十三年度の一般会計予算を見ても、この社会保障関係の予算額は、防衛関係費の三分の一しか見ていないわけです。もっとこういう方面には徹底して出して、こういう中途半端なことでなしに、少くとも、生業資金については最高三十万円くらいのことは認めてしかるべきではないか、こういうことは私は考えられるわけです。それから、学校の育英資金ですが、この貸付も、これで見ると、二十才で打ち切られる。今まで二十才であったやつが二年間延ばされる、こういうことになるのです。そうでしたね。そうすると、これは二十二才までということになりますから、大学までは安心をして卒業できるのではないですか。こういう点については、やはり二十二才で卒業をしてすぐにということでできればよろしいのですけれども、一、二年浪人したものは、これはできぬということになるわけです。やはりこういう点については、それでなくとも、母子世帯では相当困難もあるはずだから、こういう面についてこれが利用できるということになるならば、できるだけこういう頭打ちといいますか、頭を押えることばしないで、せめて憲法で保障された教育の自由くらいは享受できる、こういうことに私はすべきだと思うのです。従って、かなり修正的な意見になりましたけれども、こういう点について、もっと積極的に十分な施策を講じても、決して予算の上においてそう足らないということには私はならなかったと思うのです。こういう点について、どうしてこの程度でもって打ち切ってしまったのか、もう少し明確な御所見を伺っておきたいと思うのです。第一点です。
  108. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) お話のように、ある事業をやるについていわば要るだけ金を融通をしてやる。それで不十分ならば、さらにつぎ込んでその事業の完遂をはかっていく。これも確かに一つ考え方だと思いますし、そういうことが理想であろうかと思いますが、ただ、この資金それ自体が母子家庭を対象にした特殊な貸付の制度でございまして、ほかの一般のいわゆる庶民金融等に比べますというと、相当有利な条件になっておるわけでございます。そういう意味からいたしまして、普通の金融の場合と似たようなベースでこれの諸条件を決定をするということにも、これはいろいろ問題があろうかと思うのでございます。そういう意味で、この限度でありますとか、あるいは償還であるとか、そういったことがこの法律にこういうふうに規定されているものと私ども承知をいたしているのでございますが、これをできるだけ実情に即して改善をしていくというような趣旨で、この改正案を提案をしたような次第でございます。この点、一つ御了承をいただきたいと思います。  それから、修学資金についてお話がありました点でございますが、これは、たとえば二十才以前に大学に入ります。そうすると、それは大学を卒業するまで貸付を行う、そういうふうな仕組みになっておるのでございまして、お話の点は、おそらくまあ修業資金の方だと思いますが、これはいわば正規の学校でございませんで、裁縫でありますとか、その他特殊の技能を習得する、そういう意味でのものでございますので、期限を切ってあるわけでございます。
  109. 片岡文重

    片岡文重君 生業資金のことですがね。なるほど一般の市中における庶民金融とは逢います。違いますが、そもそもこういう母子家庭については、特に戦争被害等によった母子世帯等について、本来なら、私は、国の責任で、社会保障の面からこの母子世帯の生活などというものは保障されてしかるべきだと思うのですね。しかし、国の保護が十分ではなくて、結局国の政治には頼っておられないから、あえて社会的な危険を冒してまで、女手一つで事業をやっていこう、店を開いていこうというけなげな気持になるわけですから、これらの人々に対して、国はやはりどんな手厚い保護を加えてみたところで、決して行き過ぎであるということは私はないのじゃないかと思うのです。そういう意味から考えましても、少くとも厚生省としては、こういう点、取り立てること、償還不能になるということの危険を考えるよりも、もっと最高の、国家資金の利用が容易にできるような方法を考うべきではないか。このいただいた資料によると、年々償還率が悪くなっている。貸し付けた額も多くなってくる半面、償還率が悪くなっているということは、それだけやはり困難な状態にこの母子家庭が置かれてきている。少くとも困難な、生活困難な、あるいは事業経営の困難な母子家庭が年々ふえてきているということが、この表の上からも私は言えるのじゃないかと思うんです。こういう意味から、こういう面等を考えますれば、ますますやりいいような方法をとってやる、そうしてあまりこの償還不能などということについての配慮よりも、むしろいかにしてこの母子家庭がそう苦労なしにやっていけるかというところに重点を置いて、この貸し付けの問題は考うべきではないか、こう思うのですが、償還促進費としてさらに一千六百万円も使っている。かりに十万円づつこれを貸し付ければ、百六十人の母子世帯がやはり救われるわけですね。ただ取り立て一本ではなくして、生業の指導もして、率先して回収できるようにし向けていくのだ、そのための経費だという御説明もあったようですが、こういうところに金が出せるならば、私は、もっとほかにこの促進費としての使い道があるのではなかろうかと思うんです。再度答弁をわずらわして恐縮ですが、この生業資金等については、もっと厚生省としては増額をする意思はないのかどうか。少くとも三十万円程度に増額をする意思はないのか。もしこの国会で予算も通ったことであるからというならば、次の国会あたりでも、この三十万円程度に増額をする気持ちはないのかどうか、この点を一つ聞いておきたい。
  110. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) この母子福祉貸付の資金につきましては、先ほど来申し上げておりますように、一番大きな問題は、私はこの資金源をどうやって増大をするかということであろうと思います。国の補助金が相当消化できないというようなことでは、これは困ります。しかし、資金源を増大することによって貸付をする対象もふえ、その内容改善をしていく、そういうふうにこれは考うるのが、これは第一の問題だと思います。今お話しのありました生業資金について、確かに五万円では少い。十万円にすれば、十万円でも少い。こういうことは確かに言えると思いますけれども、やはりこれは、一つは、そういった資金源全体とのにらみ合わせの問題も考えなければならないと思いますし、それから同時に、多少事務的な議論になりますけれども、ほかのこの種の資金との均衡の問題も実はございますし、従来ずっと五万円でありましたのを、この際一つ十万円に引き上げて、それでしばらくその成果を見さしていただきたいと思います。私どもも、この引き上げに伴う、いわゆる改正に関連をしまして、先ほど来いろいろお話しのありました貸付の手続あるいは事業の指導、それについては十分意を用いまして、この法律の本来の目的でありますところの経済的な自立の助成という目的を達しますように、万全の努力をして参りたいと考えるわけであります。
  111. 片岡文重

    片岡文重君 ちょうどいい機会に大臣が来られましたから、一つ、先刻来お待ち申し上げておりましたので、御所見を伺いたいのですが、この貸付法律改正する法案を御提出いただいて、今までのたとえば生業資金の五万円を十万円にしてくれる、そのほか修学資金、修業資金等各種にわたって改善をされる、まことにけっこうなことであり、私どもも賛意を表するにやぶさかではありません。大へんけっこうだと思うのですが、ただしかし、今日の経済社会の情勢からいって、生業資金十万円ということでは、従来から見れば十割の増額ではありますけれども、現に厚生省からお出しいただいた資料を拝見をしても、十万円という限度では、十分な、また必ずしも希望する生業につくということがはなはだ困難のように思われます。そのほかの増額の程度を見ましても、せっかくの御好意ではあるけれども、どうも中途半端に施策が抑えられておるような気がしてならぬ。今も申し上げたのですが、これら生活保護並びに社会保障の経費というものは、防衛関係の費用の三分の一にも及んでいないということから見れば、この方面にはもっと積極的な施策がなされてよろしいのではないか。償還率の減少等も、このお出しいただいた資料を見て確かに承知できます。できますが、しかし、償還率の低下というものは、母子家庭の性質からいって、決して返さぬでもいいのだとか、あるいは返し得るものを返さないと、こういう性質のものではなくて、やはり返したい、借りておきたくないという希望を強く持っておっても、なおかつ、事業の不振等によって返し得ない、こういうことが重なって、この数字に現われてきておると思うのです。従って、この貸付が多くなればなるほど、国に与える不利益も多くなる、こういう考え方ではなしに、むしろ額を多くしてやれば、希望する商売もできることであるし、資金難にも陥らないわけですから、それだけ営業も比較的容易にやっていけるわけですから、償還が困難になるということも少くて済むということも私は言えると思う。従って、ワクを広げたからといって、これが償還率が悪くなるというようなことはもちろんないと思いまするし、母子家庭のためには非常にいいことであるというふうに考えます。従って、少くとも、この際、生業資金等については三十万程度、事業継続資金については十万円程度のことはお考えいただけるのかどうか。で、会期末等の関係もこれあり、すでに本法案も提出しておることであるから、これはこのまま認めてほしいということであるならば、少くとも次の通常国会には、その程度の増額はお考えを願えるのかどうか。先の見通しとあわせて御所見を伺っておきたいと思う。これが一点です。
  112. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 珍しくほめていただきまして、私には非常にうれしいのであります。たまにほめられるのですから、非常にうれしいのですが、少しほめられたついでに、私も実は経験があるのです。民間の社会事業をいたしておりまして、そして生業資金を貸し付けて、そしてこういう母子家庭の自立更生を促すという方面に金を貸しておったんです。率直に言えば、今までは五万円、もう少し率直に言わしていただくと、役人は、小さな金を貸しておいて、そして実はまあ返すかどうかで、そしてその問題を考えていればいいと思うのです。ところが、実際にそれが適切なのかどうか、もう一ぺん振り返ってみる必要がある。それは片岡さん、だから私は、山本さんの御質問に対してもけさほどお答えしたのですが、一体その五万円やそこらでほんとうに仕事が——自立更生の金、生業資金になるのかというのが私の疑問なんです。ですから、まあ十万円で一体何ができるかという問題になってきますと、それは私は、実は二十万円、三十万円がいいと思う。私は率直にこの法律を提出した人間でなしに、一般並みとしてです。しかし、厚生大臣として見ますと、ともかくも五万円を十万円にするということは、金額は少いけれども、倍にしたことなんです。従来の考え方から言うと、実は相当飛躍している。しかし私は、償還率の悪いことも、実際言えば、五万円貸すのだったら、中途半端というより、まあお困りの家庭だと、生業どころでなくなっちゃうのですね、露骨に言って。で、償還率が悪い。そうなれば償還率は悪くなって参ります。根本は、けさほど山木さんに申し上げたように、金を貸したら金が生きる——第一金を貸すのにも御相談相手が要るのです。こういう家庭というものは、率直に言って、世の中のことにそうあなた、知識、経験の豊富な人がやるわけじゃない、これは、世の中の母子家庭というものは、実態を見てみれば、実際何か自立更生したいのだけれども、何をしたらいいか、そのときにいいかげんな、これがようござんすよと言って、うまいことを言ってきた人間にとっかまれば、もうすっちゃうにきまっているのです。だから、先の見通しについても、どうして行ったらいいか、どういう種類のものが一番適切か、先見込みはどうだ、そういう見きわめを真につけてやれる人は、率直に言って非常に少いのです。で、私は、根本は、その御相談相手になる資格のある人がなければ、それは困る。まあ福祉事務所の人に、ほんとうにそういうことに適格者がいるかどうかという問題も問題になって参ると思います。しかし、外国の例を見ていると、こういうおよそお金を貸す以上は、お金がほんとうに生きるようにしていって、終局は、本人の自立更生がすみやかに達成できるというふうな状態にまで、何と申しますか、御相談相手になって、親切にその目的を達成するようにすべき実態をそろえていくことが一番必要だと、で、私どもの方の実態から見まして、これが三十万円貸しても大丈夫だ、あるいはそれの方がかえって償還率が多くなってくるというようになるのが私どもの行政の一番大切なところであり、基本的なところでなかろうかと私は考えております。で、現状に対しまして、まあ御相談相手になるような人選が非常に私は大切だと思いますが、それらと相待って今後この問題を処置して参りたい。しかし、取りあえず、まあともかくも今までの現状から見れば、これでもやや飛躍的だと、まあそう飛躍的だとよく言えた、こんなものをとおっしゃるだろうと思いますが、ともかくも当分、この法律改正をさしていただいて、今申し上げたような私どもの行政の実態に伴うのを待って、相伴ってそれらの問題を処理して参りたい、こう考えておるような次第で、私の経験から見ました貸付金の実態はそうでございますので、今後そういうふうに向けて参りたいということだけをここではっきり申し上げ得ると思います。
  113. 片岡文重

    片岡文重君 まあ計数で言えばまさに十割の飛躍、一〇〇%の増額ですから、選挙目当ての宣伝としては、まことにけっこうだと思うのですけれども、今所信を述べられましたように、自身述べられましたように、とにかく私は、三十万円でもまあ不足でしょうけれども、取りあえずという意味で、少くとも三十万くらいはなければいかぬだろうということで、今後とも御努力を要請してやまぬわけです。  それから、そこでもう一つお伺いしておきたいのは、今適当な資格を持った相談相手という言葉がありましたが、この母子家庭が社会の荒波から比較的危険なく守られていくということのためには、やはり母子相談員を初めとして、今日設けられておるところの民生委員、児童委員、あるいは社会福祉司等、官民すべての組織をあげて、これはそれぞれの方たちが百パーセントにその誠意と技量を発揮していただく必要があると思う。しかし、これらの人々は、やはりかすみを食って生きているはずはないのです。ましてすべてが十分な資産があり、経済的にすぐれた余裕があってやっておられる人たちばかりでもなかろうと思います。やはり、大へん失礼なことを申し上げるようですが、衣食足りて礼節を知るという言葉もある通りですから、またなされた努力に対しては、十分その労に報いるくらいの気持もあってしかるべきである。何か福祉大会その他の全国大会等には、厚生大臣等の表彰状等がだいぶ贈られるようですけれども、やはりこの一片の表彰状もさることながら、要は、日々の活動に経済的な考慮をしなくともやっていけるということが、私は最大の必要事ではなかろうかと思うのですが、これらの点について、特に母子相談員、民生委員等の処遇について、厚生大臣はどういうようにお考えになっておられるか。今後はどういうふうにして改善をされるおつもりなのか。できるだけ一つ明確に御答弁をいただきたいと思います。
  114. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) これは、片岡さんよく私の性格を御承知だと思います。私は、選挙のために別段のことを考えてはおりません。社会保障を推進する以上は、これは当然の責務として、そういう問題をすべて離れて、お互いの問題として解決いたして参りたい。まあ決して片岡さんが私の心情をお知りにならぬとは思いません。議会の与野党に分れます立場上そうおっしゃるのだろうとは思いますが、せめてその点は、私ぬぐっておいていただきたい、こういうふうに考えているような次第でございます。  率直に言って、今片岡さんのおっしゃる通りです。私は、いろいろな感謝状を出すときに、振り返って一番情ないと思いますことは、その人たちの労に報いるように一体国家は何をしたろうということで、よく、厚生省というところは、こんなに人をただで働かせるものだと、私参りましてから、そればかり考えております。昔の日本の社会が安定いたしておりましたときにはいざ知らず、戦後の日本の社会におきましては、皆自分の糊口をぬぐうことに専念して余力がないと言っても過言でないような社会情勢の中で、真に母子相談員なり、あるいは児童福祉司なり、あるいはまた民生委員なりの方方の御協力を得なければ、厚生行政というものは、広く言いますれば、すべての国民方々の御参加によらなければ、ほんとうの円満な運営はできないという信念を持っておりますことは、厚生白書の序文にも私の信念として書きましたような次第でございますが、現在の社会情勢から見て、ほんとうにおのれを忘れて、これらのために尽して下さるそういう人に報いるということの非常に薄いために、社会の現存の実情からは反しておるということは痛感いたしております。不幸にいたしまして、力足らずして、それらの努力もまた十分でなくって、本年度予算におきましては、むろん私が——お前は予算を取らないでそんなことを言っても始まらぬとおっしゃられればその通りです。しかしまあ、少しは自分の気持というものを、従来長い懸案でありました民生委員の会議の、集まって業務を遂行するに必要な経費すら従来は出していなかった、それじゃそれは、本人の生活に報いるどころではない、身銭を切らしているという状況でございましたので、幾分でもその点については、御承知通りに、まあ心ばかりでございますが、いたしました次第であります。今後この方面につきましては、私としては、できるだけの努力をささげて参りたい、こういうように考えているような次第でございます。
  115. 山下義信

    ○山下義信君 重要な御質疑がだんだん同僚委員諸君からありましたので、私は、補足的に一、二の点を伺っておきたいと思うのですが、児童局長に伺いますが、先ほどから、るる大臣からお話があったのですが、母子相談員というものに対する考え方というものを、私は厚生省一つしっかりと持っていただきとたい思う。先ほどから、各委員の強い、運営の機構についての、あるいは運営の強化について要望があったのですが、何もかもが、みんなが寄って世話をするということは、はなはだ言葉としてけっこうでありますが、しかし、この母子福祉資金の貸付の運用に関しては、母子相談員という特殊の世話係が置いてあるのだ、これが重点なんだ、これが世話をするんだ、ほかの人が寄ってたかって力を尽して下さることはけっこうであるが、世話方の主体性は母子相談員であるということを忘れてもらっちゃ困る。この制度の運営は、母子相談員にやらせます。極力奨励をして、母子相談員をして十分サービスさせるという、これが基本たりと私は思うのです。私間違っておったら指摘して下さい。そこであなたは、先ほど、この母子相談員というものは高度の指導はできないのであるということを言われた。これは速記に残っておる。私は、この言葉はどういう意味で言われたのか、非常に奇異な感を持っている。高度の指導とは何をいうのか、どういうところに高度の指導性が要るのであるか、そんなむずかしいことは言わないで、母子相談員というものは、高度も低度もあったものじゃない。何か指導の力の欠けたような、足らないような者が母子相談員であるというようなことを所管局長が言っておるということは、これはあとに間違いを起す。私は、今どのような人が母子相談員として委嘱されておるか知らぬけれども、十分である、能力がある、やっていけるということでなければならぬ。また、この程度の指導をするのに、そんな高度の指導性なんて必要ありますか。また、そういった高度の指導性が必要な部分は、あなた方が十分通牒、訓示その他で、足らざるところは教えてあげればいいのである。主としてこの母子相談員のような女性の人に当ってもらうのに、そんな高度の指導性なんか要求する必要はありませんし、これだけの仕事に、さほどそんなむずかしいことは私は要らぬと思う。あれば特殊の場合。でありますから、もし相談員が、これが母子福祉に関して、今は貸付でありますが、運用については、母子の福祉の相談としては、この母子相談員が当るのである。これが中心になってやるのである。足らざるところは、ほかのいろいろの福祉関係のボランティアの人々が幾ら突っついて下さってもけっこうであるが、母子相談員がやるのだという方針は堅持してもらわなければならぬ。それを堅持していくという上において、母子相談員の待遇をどうするか。今のような状態でいいか。非常勤職員という立場に置いておいていいか。仕事が山ほどある。実際は涙ぐましい働き力をしておる。そうしてその待遇はまことにお粗末である。この状態でいいかどうかということが問題になってくる。私は、それが順序だろうと思う。これは、御承知のように、私が言うまでもなく、初めは国費負担の待遇がしておった。これを途中からやめにしてしまって、今のように地方交付税の中に入れられてある。しかもその待遇は、もう世間周知のごとく——ほかに婦人相談員とか、いろいろある。そういう人たちから見ると、他の制度の婦人相談員から比べると、待遇が低くなっている。どういうわけで低いのであるか、これでいいかというようなことになると……。待遇が低いということは、たとえば、売春対策の相談員から見ると低い。低い待遇というのは、売春の方の相談員は高い知性が要るのであるか、あるいは相当りっぱな何か資格が要るのか、こっちは低くていいのか、そういうことになってくる。そうじゃないんでしょう。むろん母子相談員も、できるだけ適切、適当な、いい人になってもらわなければならない。待遇の改善ということは大きな問題でしょう。それが、母子相談員の話が出ると、これは何だか二の手三の手であって、大した頼りにもしていないというような考え方、それにまぎらわしいような答弁というものは誤解を生むから……。厚生省は、母子相談員というものをどれだけ力にしておるのか。頼りにしておるのか。この母子相談員というものに対する待遇について、どういうことを望んでおるのか。できるかできないかは大蔵省との相談であるが、一応あなたの方では、確たる方針というものがなくちゃならぬと私は思うのですよ。児童局長はどうお思いになりますか。
  116. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 私の考えは、今お話のありましたことと全く同じ趣旨でございます。もし私の申し上げましたことが誤解を生ぜしめたとすれば、それは、私の言葉が足りなかったせいだと考えるのでございます。この母子相談員が母子福祉についてのいろいろな相談の中核体になって、これをがっちり固めなければならないということは、私どももそういうように考えております。この母子相談員の中核体として、事務的な面は、これは社会福祉事務所のいわゆる事務面で補っていくし、それから、事業その他の面につきましては、児童委員あるいは民生委員方々の御加勢をいただく、そういうふうな考え方でいくべきものだと思うのでございます。そこで、この母子相談員の人員並びに待遇の問題、これを確立しなければならないという問題になるわけでございますが、母子相談員を前のいわゆる補助制度に返すということが、これを確立をする一つのポイントだと考えまして、その実現に向って従来努力をいたして参ったのでございますが、いまだその実現を見ませんことは、私どもも非常に残念でございますが、今後ともこういう線で進みたいと思います。
  117. 山下義信

    ○山下義信君 実は、本日の審議に当っては、財政当局の出席を求めて、十分私は言っておかなければならぬと思ったのでありますが、時間の関係もあり、省略されてあるわけですが、速記録にも残りますから、私はその点を強く要望しておくわけです。  それで、いま一点は、この母子資金の貸付は、今さらここで、この法律の歴史的過程を申しませんが、これは、これだけのことをすればいいというのでできた法律ではないのですね。これは、母子世帯に対する国のできるだけの福祉を注いでいこうという中の一つ制度なんです。もとよりこれが中心ではありますが、こういう金貸しの仕事だけしておればいいというのじゃないのでありまして、これは、非常な母子世帯に対する国の施策の重大な使命を持っているんですね、内容的なものとしては。そういう観点で、これの運用や、まあいろんなことを、一つ重大に厚生省としても考えていってもらわなければならぬのですが、今度の改正は非常に改善されたので、私も、片岡委員と同じように多といたしますが、ちょうど五年やってきた。五年やってきて、この段階にきた。これは非常に考えなければならぬ段階ですね。それで三十三年度、これからも今までのようなやり方でやるのか。ここで一つよく検討して、五カ年間の実績を見て、現状とにらみ合せて、これからの行き方に一つ何らか新工夫を講じていくという、私は母子資金貸付制度の曲りかどにきていると思う。当局もお考えだろうと思うけれども……。  それで、たとえば償還率を見ると、こういう数字は幾らでも見方があります。よくも見られるし、悪くも見られます、数字は。しかし私は、こういうふうに来て、初めは償還率がよくて、償還率がだんだんと落ちてきた。これはどういうところに原因があるか。これは何を示すものであろうかということを考えなくちゃならぬと同時に、この状態というものを改める必要があるのであるか。これからこの程度の償還率の横ばいでいいのであるか。つまりこの程度でいいのであるか。これが当り前の状態であるか。当初のように、八〇%も九〇%も、どんどん返してきた償還率がいいか。あれはノーマルな状態であるか。あれは特殊な状態であったかということを私は考える必要があると思う。そこでこれは、見方によりますと、成績が悪いように見えるけれど、見方によるというと、いわゆる母子世帯に対する貸付制度、その運用の効果をこれから期さなくちゃならぬ段階に入った。つまり償還率が悪くなったということは、その貸付金によってその金の効果がなかなか上りにくい段階になってきたということは、それに力を注いであげなくちゃならぬ段階になってきたということですからね。八〇%も九〇%も、どんどん償還率がいいときには、あなた方は、つまり横になっておってもぐっと戻ってくるような、つまり金を借りた母子世帯が、その金の使い方、運用なり効果等を別にどうもしなくてもどんどんできる、そういう種類の者に初めは貸したのか。そういう比較的償還率のいいような対象者に対して一番先にどんどん初めは貸していった。あとから順次貸付を希呈する対象者は、だんだんと力の弱い、条件の悪いものが来たのだとも見れるでしょう、これは。そういう対象にこそ力を注ぐのが福祉資金の貸付でしょう。福祉制度でしょう。これが単なる高利貸しや、単なる銀行や金貸しなら、困ったな、返し方が悪くなってきたということでありますが、これは本来、こういう対象者こそ国の制度の対象として持っているのですから、力を注ぐのはこういうところからなんです。そういうことも、私はこの償還率の程度によって見ることができると思う。  それで私は、この償還率が悪くなったのを見て、この償還率を引き上げねばならぬぞと、もっと借金の返し方を督促しなければならぬ、奨励して八〇%も、八五%も金が返ってくるように、どんどんやらなければならぬぞ、こういう施策が肯綮に当っているかどうか、こういうことも考えなければならぬと、私はそう思う。それで、当局の御方針が私はわからぬが、金を返す力のある者へ督促してこそ施策がぴったりと当るのです。返すことの困難なもの、つまり、金を借りても事業がなかなかその緒につかないで償還についてのいろいろな状況が思わしくないという者に督促するということは、的をはずれておると思うのですが、これは高利貸し的な……、私は、政府が三十三年度予算に、もしそういうような施策でもやっておられるということなら、考えてもらわなければならぬ。われわれの耳にするところによると、政府は、何かそういったような督促係のようなものを置いて、そうして償還の悪い人たちに向って、大いにその督促をしようとすることを、もし大蔵省がそういうことでも要望したら、頑強に抵抗してもらわなければならぬ。私らも加勢します。そんなことをすぐやることは、私は、少し時期尚早でもあるし、考えてもらわなければならぬような気もするのですが、それで、督促でなしに、返すことに困っている対象者があったら、督促というような言葉は避けて、指導ですね。どうしたらば返せるようになるかという、指導を加えていくということがその前に先行しなければならぬ。督促をする前に、あなたの方の施策として、そういうような成績の上らない世帯に対して、成績が上るように、これを指導してやるということに全力を注いでもらわなければならぬ。私はそういう必要があると思う。金だけ貸しておいて、そうしてそれが機械的に返ることをあなた方は手をつかねて待っておるだけじゃないでしょう。この資金の貸し付けには、プラス指導、指導とはすなわち福祉でしょう。これは、ただ単なる金貸しじゃない、金を貸して返せるような立場にしてやること、それの指導、言いかえれば、指導することがすなわち福祉の施策でしょう。それが先行してもらわなければならぬ、私はそう思う。そうしてなおかつ償還が困難な者には、今度あなたの方には、改善して下さる、いろいろと涙をもって見てやる制度もあるのですから、ですから、私は、そういうことは十分注意していただいて、請求がましいような、高利貸し的なような態度は、もう断固としてこれはおとり下さらぬように願わなければならぬ。私は、母子世帯にあわれみをかける段階は過ぎたと思う。これは未亡人世帯を、何もこれを、弱い者をあわれむような、甘やかす時代は過ぎたと思う。あの世帯もりっぱに独立しなければならぬ。基本人権は認めていかなければならぬ。ですから、甘やかすという意味でもなくて、ほんとうに自立して、りっぱな更生をされるように、社会の一員として活動してもらいたいためにやるのでありますからして、甘やかすという意味でなくして、国が福祉資金として貸すのですから、バンカーでないのですから、この点は、私は、いろいろ嘱託等を置かれまして、これからいろいろな指導などをおさせになるに当りまして、十分その趣旨を徹底するようにしていただきたいと思いますが、御方針はどうなっておりますか。
  118. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) まず第一に、償還の状況についての御判断でございますが、私どもも、当初の八〇%程度が一つの目安になって、それに持っていくというような固まった考え方をとっておるわけではございません。問題は、その率が年々低下をしていく、そういう傾向の状態にあるわけでございまして、この低下が年を重ねるに従ってどんどん下っていくということでは、これは大へん困る。そういうような考え方を基本的にはとっておるわけでございますし、それから、最終的にどの辺にしからば落ちつくべきものであるかということにつきましては、これはよく実態を検討いたしまして、目標をきめなければならないと思いますし、これらの点については、今後検討いたしたいと思います。  それから、償還対策費の問題につきましては、全く今お話のありました通りでございまして、この貸付制度それ自体が金の貸し借りというよりも、母子世帯の経済的自立の助成、そういうことが目的でございますので、結局、その目的に沿うた金の貸し方、償還の仕方ということになるべきことは当然でございますし、従いまして、償還につきましては、かねがねから、その貸付の目的が十分達成できて、結果として十分償還ができる。そういうふうに逆に申し上げれば、経済的自立の助成という目的を達成できるように指導をしていくことによって、初めてこれは償還が可能になってくるわけでございます。もともと資産のある人でありますれば違うと思いまするが、資産に乏しい方でございますから、ほかの資産から償還に充ててもらうということは不可能でございまするので、結局、その事業というものを今申し上げました趣旨で指導していくということが前提にならなければならないのでございます。そういう意味におきまして、これの人選につきましては、単なる金の催促でございますというと、いかなる人でも、これは催促の得意な人であればけっこうでありますけれども、そういう人ではなしに、実際の人選に当りましては、未亡人等で、十分この母子福祉の問題について、かねがねから関心と熱意を持っている人、そういう人を選ぶように指導いたしておるような次第でございます。そういう人たち努力によりまして、今お話のありました趣旨に沿うような、この予算が生きるように私ども努力をして参りたいと考えております。
  119. 山下義信

    ○山下義信君 それで、もう一つ私は、この制度について、厚生省としても一定の方針といいますか、計画というものを研究しておいてもらわなければならぬと思うことは、年々歳々母子福祉資金の貸付費として予算で計上して、国の予算で出していく、これをいつまで続けるかという問題です。言いかえるというと、母子福祉資金のファンドの総額はどこを目標にしていくか、百億あればいいと見るか、五十億あればいいと見るか、その金の総額によって、運営その他将来にわたっての全般的なおよそ考えを持っていかなければならぬ。年々五億なら五億ずつずっと出していく、三年も五年もずっといくのか、およそ母子世帯に必要な資金の総額を、もう五年も六年もやってみると、どのくらい要るということの予想目標は、私は計画的に持つ必要があると思う。それで、今幾らあるか知らぬが、およそ四十億幾らか、先般児童局長が細部説明のときに言いましたが、初めは二分の一、国と地方で持つのですから、これは戻ってきて、そうして地方地方で、それを償還して戻していく、だんだん。  その次は、国が最近は三分の二となり、三分の一となっていくのですからね。これが四、五年の間にどういうふうに、地方と国との出し前が戻ってきたやつが資金にどれだけ入ってきて、どういうふうに動いていくのかということを、いろいろ予想を立て、計画をして、そうして資金の需要度というものとにらみ合して、およそ七十億あるいは百億、これに、百億の総額を持つつもりでいくのだというふうに、一つの目標が要るだろうと思う、その目標を立てて、それで、今までの実績をにらみ合して、ただ五万円を十万円にしたという限度の引き上げ、大へんけっこうでありますが、それだけでなくして、据置期間も今のままでいいかどうか。償還率が悪いのは、自立とか運営とか、金の使い方が下手だとかということだけでなくして、一体、一カ年とか二カ年とかという短期の据置ですぐ返せるをように鳥が卵を生むよう、どんどん仕事が成り立っていくかということも問題だ。資金の総額からいろいろとにらみ合せて、この貸付制度の中身も、私は検討してみる必要があると思う。そういう点について、主管局は、総合的計画を樹立するお考えがあるかどうか。
  120. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 率直に申し上げまして、この法律が議員立法として成立をいたしましてから、行政当局としては、これの円滑なる運営に非常な努力を、国会の御趣旨に従って払って参ったのでございます。最近に至るまで、何とかこの資金源の増大ということに、あるいは国と地方との割合の率の改訂その他、あるいは予算の増額等に努力をして参ると同時に、内容改善にも努力をして参ったのでございますが、先ほどお話がありましたように、この制度それ自体が一つの曲りかどに来ておるのじゃないかというお話しでございますが、私どもも、今日予算消化の状況、それから償還の状況その他全般として、将来の見込みをつけなければならない段階にだんだん近づいてきておることを痛切に感ずるのでございます。もちろん、この制度が円滑に運用され、ますます母子世帯の上に福祉をもたらすことを念として努力をして参るべきことは当然でございますが、そういう目標に向って、一応既往の実績、経験等をさらに検討し、それから将来の資金需要の点についても検討をして、将来の見込みをこれはつけるべき段階にきておるということを私どもも感じます。お話のような線に沿いまして、今後これの計画化という問題に努力をして参りたいと思います。
  121. 山下義信

    ○山下義信君 最後に、これはまあ伺っていいかどうか、まあ伺いますが、実は衆議院の方で付帯決議がなされておる。住宅問題について特段の努力をするようにという決議なんですね。これは衆議院決議でありますから、衆議院の諸君に聞かなければわからぬわけでありますが、非常に適切な決議だと思うのです。母子世帯の福祉の問題の中心点は、一つにはこの資金の貸付でありましょうし、一つには確かに住宅問題である。これは、衆議院では非常に適切な決議をされたと私は思う。厚生省の方でも、母子住宅については、従来努力されましたけれども、実が上らない。なかなか財政当局は要望に沿わない。これは、相当の覚悟をもって将来母子住宅の解決には一つ努力をしてもらいたいと思う。何らかの御決意があるか。当院においてもこれは承わっておかなければならぬ。  それで、関連して。住宅補修資金の貸付があるのですが、これは微々として振わぬ。この貸付資金の中で、一番これが低調なんです。金額も少ない。これは何かあなたの方で、この八種類の貸付の目の中で、住宅補修資金の貸付は、全体の中で何パーセントとかというワクをきめておるのかどうか知らぬけれども、非常に低い。これは、われわれが生酒保護法の扶助制度を作るときにも、住宅扶助をやってみた。当初は、住宅扶助が成り立つか成り立たないか問題であると言っていたが、とにかく。やってみようというのでやった。はなはだ僣越でありますけれども、私も主唱者の一人だ。初めはなかなかもたもたしましたが、これも実は低調でありますが、しかし、生活保護の住宅扶助は、これは借家人にも扶助するのですよ。ところが、あなたの方の母子世帯の貸付資金、これは、借家人には補修資金を貸しているのですか、貸していないのですか。もしこれが、自分の持ち家でなからねば貸さぬというのでは、これは非常にこの本来の趣旨にそむくと思うのでありますが、借家人にも間借人にも、できるだけその補修資金がこれは貸し与えられるようにすべきであると私は考えるのですが、実情にうといのでありますから、この際あわせて、将来の母子住宅に対する何かきぜんたるお考えを持っているかということと、この貸付資金制度の中の住宅補修資金は、いまのように借家人や、間借人にも貸すか貸さないか、そしてまた、それのワクも、二%、三%ということでなしに、できるだけ拡大して貸し与えるようにするのか。この母子の住宅問題の解決の私は相当大きな役割をかついでいると思いますからね。これをお尋ねしておいて、私の質問を終りますが、いかがでしょうか。
  122. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 第一に、母子住宅の問題につきましては、さしあたっての問題として、建設省が中心になってやっております住宅政策のうちのいわゆる第二種公営住宅について、母子世帯については優先的に入居せしめる、その措置を講ずるように、従来両省話し合っておりましたけれども、実際問題として、地方においても必ずしもそういっていない面が少くない状況でありますので、これを機会に、さらに建設省とも十分打ち合わせまして、その辺の趣旨が地方にさらに徹底をするように努力をして参りたいと思います。その問題を中心にして、この毎子住宅全般の問題について、両省一つ十分打ち合わせをいたしまして、実効が上るようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから、住宅補修資金の問題でございますが、これは、率直に申し上げまして、実は住宅補修と申しますと、まあいわばピンからキリまで、いろいろの内容のものが入ってくるわけでございますし、従ってこれが範囲を広げますということは、相当これは、この資金の需要が総体に大きくなることが当然予想されるわけでございます。そういうわけで、この全体の資金源が大きくなれば、これは問題はございませんけれども先ほど来だんだん話に出ておりますように、資金源がそう潤沢でない現状におきまして、この住宅補修資金の方があまり増大をいたしますというと、当初からありました肝心の生業資金でありますとか、あるいは住宅資金でありますとか、そういうどちらかと申し上げますというと、本来の資金を圧迫する結果にならないとも限らない。それはやはり、この母子福祉資金貸付の制度の本旨にかんがみましていかがかと考えますし、そういう意味において、この住宅補修資金をやはりある程度の率で抑える。それから、内容的に申し上げましても、まあ住宅補修と申しますと、骨からふすままで入ってきますが、そういうところでなしに、もっと根本的なところというふうに限って運用をいたしておるわけでございます。この点は、全体の資金のワクとにらみ合わせて、これをどの程度にするかということを考えておるわけでございますが、お話のように、現在の制度が、現在の実際にやっておりますことがあまりに窮屈な面もこれはあると思いますので、この辺は、将来の問題として一つ検討いたしたいと思います。それから、借家につきましては、これは原則として家主が補修をするという建前と、原則としていわゆる自分の家ということにいたしておる次第でございます。
  123. 松澤靖介

    松澤靖介君 二、三、局長にお聞きしたいと思いますが、先ほどの御説明によりますと、今度の生業資金のいわゆる増額されたということは、関係担当官の希望あるいは母子世帯の要望、そういうようなものが相当大きかったから、多かったからこういう工合におやりになったということをお聞きいたしたように記憶しておりますが、そのほかに、いろいろ個々の点について、たとえば仕度資金、事業継続資金、住宅補修資金、技能習得資金、それから生活資金、修学資金、修業資金、それらの点について増額の希望がもっとあったかどうか、そういうことについて御質問申し上げます。
  124. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) もちろん、この現在の各種の資金について定めております限度が不十分である、十分でないことは、これはもう申すまでもないのでございますが、生業資金を含めまして、資金限度をどうするかということは、結局全体の資金源、資金のまあいわゆる貸付財源との関連が、これは一つのやはり問題点でございますので、貸付財源がそう急に増大をしないのに、各種の資金の限度だけを引き上げるということになりますというと、結局それだけ貸付の対象が減るという結果になるわけでございます。そういう意味で、この生業資金の五万円という金額の引き上げにつきましても、今日まで停滞をしておる面があると思うのでございます。しかしこの生業資金は、いわばこの法律の根本の趣旨としております経済的自立の助成の一番根幹に属するものでございますし、常識的に考えまして、この五万円という金額は、あまりにも低額であるというような考え方のもとに、今度十万円ということに引き上げたわけでございます。さしあたっての問題としては、ほかにもいろいろこれは改善の必要がある面があろうかと思いますけれども、こういう体制でしばらくやってみたい、かように考えております。
  125. 松澤靖介

    松澤靖介君 ただいまの御説明によりますと、資金の限度というものがある、ワクがある、そういう意味において、希望があってもほかのものは増額され得ないという立場であるというように了承したんですが、しかし、現実の面において、私は一つのこの中の例をとってみましても、修学資金の問題ですが、修学資金というものは、私は、母子世帯にとっては非常に重大な、あるいは非常に大きく取り上げるべき問題かと思います。自分の子供の将来というものが、やはり学校に入れ、そうして卒業してりっぱな職業につくというような意味合いにおいて、その前提である修学というものは、非常に私は関心の大きいものだと思っておりますが、それについてこれを見ますと、高等学校は千円以内、大学は三千円以内というこのワクでは、私はほんとうに学校に入れて教育することはできないんじゃないかというような考えを持つものですが、これについてどんな考えを持っていますか。ことに本年度から、文部省におきましては、高等学校から大学卒業までの一貫したいわゆる育英制度というものを考えられまして、やはり千名でしたか、それらによって見ますと、その額というものは、もっとこれよりも大きい額であると、私はさように覚えておるんですが、それらとにらみ合せても、こういう点についてもう少し増額して、そうしていわゆる母子世帯のその母である人に、あまりにその方の心配をさせないようにさすべきじゃないかと考えられますが、これらの点についての御所見を承わりたいと思います。
  126. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) お話の修学資金につきましては、最近一両年の間に、たとえば、高等学校については、七百円を千円に、それから大学につきましては、二千円を三千円にということで、引き上げて参っておるわけでございます。これらは、すべて文部省の方の育英資金と同じ時期に同じ額にして、両方同じ状況になっておるわけでございます。従って、現在も向うと同じような金額になっております。もちろん、この千円、三千円という金額は十分でないことは、これは言うまでもございませんし、私どもも、この引き上げの必要なことについては感じておるのでございますので、今後よく育英資金の方とも連絡をとりまして、これの引き上げについては、研究し考慮していきたいと考えております。
  127. 松澤靖介

    松澤靖介君 ただいまおっしゃった文部省の育英制度が千円と三千円だというお話ですが、これは、私今御説明申し上げましたように、本年度から新しくやられたところのそのことを申し上げたんで、これは千名でしたか、そのことを申し上げたんで、それは、過去の育英制度は、私は内容が変っておると思います。そういう点でやはり、その方が内容がよかったならば、何かしらよくしなければならぬという考え方のもとにおやりになったと思います。そうすれば、やはり母子家庭のような、非常な不安をお持ちになっておる、あるいは生活苦を持っておる方々に対しましては、もっと増額すべきではないか、この額は、ちょっと忘れましたが、五、六千円ぐらいじゃないかと思います、大学は。これは、過去のものを私は言っているんではなくて、本年度の予算にも計上されておって、予算は議決されたんですから、その点のことを申し上げたんで、そういう点から考えましても、やはりそういう国の制度としてやる場合においては、一貫性を持つようなものであってよろしいんじゃないか。片方は高くて片方は安いままにしておくというようなことではどうかと考えるがゆえに、なおそういう方々に対しましての特別な御考慮があってしかるべきじゃないか、こういうように思うので、申し上げたんです。その点、なお御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  128. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 私ども承知いたしております範囲におきましては、ことし新たに設けられましたのは、御承知のように、進学保障の制度でございまして、これはちょっと、形が違ったものでございますが、従来からありますいわゆる育英資金の貸し付けにつきましては、金額におきましては、母子資金の修学資金と同額になっておると承知いたしております。
  129. 松澤靖介

    松澤靖介君 育英制度と進学保障というものは、名前は違うかもしれぬけれども内容的に私は同じようなものだと思っています。有利な制度を設けて、そして国の秀才を養成して、国家のために尽させるような意味からこれはできたと思いますが、育英制度よりも一歩前進したものと思います。そういうよいところを取り上げて、こういう方面に拡充していかれることは、私は非常にいいことじゃないか。ことに、何べんも繰り返して申すようですが、自分の子供の将来というものが最もわれわれにおいても、ことに母子家庭においては重大なことだと考えるがゆえに、さような点をお尋ねするのですが、これらの点について、もしも国の育英制度なりがよりよい内容になった場合、あるいはまた、今言った進学保障などとにらみ合せて、これらの点をよりよくするお考えがあるかどうか、なおお聞かせ願いたいと思います。
  130. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 今お話しになりましたように、母子世帯が子供の成長に望みを託して苦闘をしておられる状況からいたしまして、この子弟の就学、就職の問題については、これは特に助けてやらなければならないことは、お話通りでございます。修学資金の内容につきましては、これは、先ほど申し上げましたように、もちろん改善についてわれわれ努力いたさなければならないと思います。育英資金の方が向上すれば、もちろんこれは、それに応じてこちらの方も引き上げる、両々相並んでこの改称に進んで参りたい、かように考えておるのでございます。  なお、よけいなことでございますけれども、今まで、たとえば高等学校を出まして浪人をいたしますというと、かりに大学に入りましても、大学分の育英資金を借りながら、高等学校分の借りた育英資金の償還をしなければならない。そういう矛盾をした、非常に困った状態になっておったのを、今回提案申し上げておりますように改正をいたさんとする趣旨も、同じような趣旨に基くものであることを御了承いただきたいと思います。
  131. 松澤靖介

    松澤靖介君 もう一つ、私は、大学三千円の金では少ない、そういう意味から、もしも文部省の育英制度の厄介になるというような場合においては、これは、許可があれば差しつかえないことだと思いますが、この点についてなお御答弁をお願いします。
  132. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) この育英資金の方を選ぶということは、もちろん差しつかえないと思います。
  133. 松澤靖介

    松澤靖介君 両方やっても差しつかえないかということなんです。
  134. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) ダブるということは、いろいろこの点については議論はあろうと思いますけれども、実際問題として、そういう取り扱いにはいたしておりません。
  135. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は、だいぶほかの方が質問されて、大体のことはわかりましたが、もう二点ほどお聞きしておきたいと思います。  これは修学資金の問題ですが、これは、償還するときには猶予期間相当与えなければ、学校を卒業と同時に返還するというような余裕はないと思うのですがね。据置期間というものを御考慮になったんでしょうか。どうでしょうか。それから、年次的に月給はふえていくのですから、そのふえる率に応じて償還させるということがどうも道理にかなうように思うのですが、その点どうでしょうかね。そういう点、お考えになりませんですか。
  136. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 修学資金につきましては、この法律の第五条に、その据置期間は、当該学校を卒業しました後六カ月を経過するまでとするということになっておりまして、それから償還の義務が発生する、そういうことになっておりまして、償還の年限は二十年ということになっております。しかし、その間における償還の方法につきましては、これは具体的によく打ち合せをして、一定の計画を立てて進める、そういうような仕組みになっておりますので、お話のような点は、十分その場合にしんしゃくされてしかるべきだと考えております。
  137. 中山福藏

    ○中山福藏君 その三カ月はわかっているのですが、それぐらいじゃちょっと不足じゃないかと思うのですが、せめて三年ぐらいの据置期間を置かなければ十分でないと思うのですよ。これは、ようやく一人前になって、月給をまあ七千円くらいから一万二千円くらいもらうものと思うのですね。それからそろそろ嫁さんをもらう支度もしなければならぬ。そうすると、やはりそこに三年か五年の余裕を置いておかないと、なかなかこれは償還をするのはむずかしいのじゃないかという気がしておりますから——この三カ月は、私はよく知っておるのです。知っておりますが、そのくらいの一つ何はお考えおきを願う方がいいのじゃないか、こう考えるものですから聞いたわけですが、これは一つ、将来この点について考慮されるかどうか、厚生省においてどういうような処置をとられるか、この際一つ承わっておきたいのです。
  138. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 六カ月でございますが、それから年賦でいきますと一年半分ということになるわけでございますが、お話の点は、結局返す金額の問題と関連をいたす問題だと思うわけでございますが、もちろん卒業して間もない間に相当多額の金を毎月毎月返すということになりますと、これは、だれが考えても相当困難を伴う問題だと思うのでございます。その辺の金額の調整は、これはもちろんいたさなければならぬと思いますけれども、一本立ちになりましたならば、応分の償還を遂げていくということは、これはやはり一面において必要なことでもあるし、望ましいことじゃないかと思うのです。
  139. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一つ尋ねておきますがね。大体この貸付に関することは、私は、一つ社会保障的な意味が多分に含まれておると思うのですがね。この第九条のところに、違約金を取るということが書いてあって、百円について日歩四銭を三銭にまける、こう書いてあるのですが、これは無利子になさったらどうですか。
  140. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 利子は三分という、非常に低率になっておりますが、やはりこれは、金を借りるという以上は、一般の利率に比べますというと、相当低いわけでございますが、低いのは低いなりにやはりその義務を負っていくというのが、これはやはり一つ考え方だと思います。  それから、違約金の点については、これは、お話の点も、よく私どもとして理解できる点でございますけれども、しかし、やはり母子世帯でありましても、金を借りた以上は返す義務が発生するし、返すと約束した以上は、その約束を守るということが、これはやはり、制度自体の問題と同時に、母子世帯の自立の達成という意味からいっても必要な面も——これは見方によろうかと思いますけれども、そういう意もこれは考えなくちゃならぬ点だと思いますし、この程度の違約金はやはり取るという前提の方が、むしろ考え方によりましては適切じゃないだろうか、私はかように感じております。
  141. 中山福藏

    ○中山福藏君 最後に、私意見を申しておきたいと思うのですが、私は、あなたのおっしゃることは理論的によくわかります。しかし、いわゆる母子福祉資金の貸付という建前から、これは普通の貸し金とは私は違うと思うのです。それでそれをお尋ねしたわけですが、実はこの前予算委員会で、(山下義信君「厚生省何がおかしいのだ、審議中に。」と述ぶ)こういうことをお尋ねしたことがあるのです。それは、いわゆる拾得物に対して、官庁が保管しておる金ですね。その金というものは何百万とあるわけです。その金とその利息というものを、万一落し主がわかったときには、どうして返すのかと聞きましたところが、元金だけを返してやると。ところが、その拾った金というものは、大蔵省なり、その当該官庁がそれを保管して、これは運営されておるに違いない。従って、それには利息がつくわけですね。ところが、落し主がわかったときには、元金だけを返すという答弁があった、政府から。こういうふうな不合理なことを政府はやっておる。私は、落し主がわからないときは国庫に帰属するものであるということはよく知っておる。しかし、落し主がわかったときは、元金に利息を添えてこれを返すということが理の当然だと私は思っておったんですね。ところが、利息のつかぬところに預けておる、こういう答弁があった。そういう不合理なことを一方においてしておいて、こういうふうな社会保障的な問題について違約金を取るということは、私は理に合わぬと、こういうふうに考えるんですね。だから、こういう質問をしてみた。笑い事じゃないんですよ、こういうことは。これは相当の大きな金額ですわ。この間私は、予算委員会で尋ねてみたところが、一カ年に拾得する金あるいは物ですね。金の面については無利子で返すと、こう言うんですね。私は、こういうことから考えまして、こういうふうな法律の性格からいって、一種の補助的なこれは考え方で、金を貸したから利息をつけて返せというのは、これは普通の金貸しのやることですね。私は、そういう点は少し考えていただかなければならぬ、こう思いますから、この質問をしたわけなんです。今山下議員から、笑い事じゃないと、全く笑い事じゃないと思う。こういうふうな、実に同情に値する母子家庭というものを救済する法案審議ですから、十分一つ政府としてはお考えおきを願いたい。希望を申し上げておきます。
  142. 坂本昭

    委員外議員坂本昭君) 先ほどの局長の発言の中で、二点だけ簡単に私の考えを述べて、ここで御返事があるならばいただきます。  一つ母子住宅の問題。建設省と相談をするということでしたが、実は昭和三十年に次官通牒を出しておられる。出しておられるけれども、それを厚生省は少しも実施していない。私は、厚生省の怠慢だと思います。今さら建設省と何も相談しなくても、すでに昭和三十年にやったことを、それを実行すれば、それだけでいいのであります。その点。  それからもう一つ、貸付金の償還促進費用を千六百万円今度組んでおられますが、もうすでに各地方に対しては、母子家庭に貯蓄組合を作るようにあなたの方で勧めておられる。あるいは督促旅費ではないというふうな説明がありましたが、何も私は、厚生省は日本銀行のちょうちん持ちなどをする必要はない。貯蓄組合を作るようなことで千六百万円を使うよりも、先ほど来同僚委員お話があった通り、十万円で百六十世帯に貸すことができるのです。私は、厚生省厚生省のすべきことをしたらいい。二点だけ指摘をしておきます。
  143. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 住宅の問題につきましては、前に通牒を出して、そしてそれの実施について私ども努力をして参っておるのですけれども、実際の問題として、これは、地方におきましては、主として建設関係の局が中心になるわけでございますが、その通牒の趣旨が十分生かされてないという現実に照らしまして、さらにこれが徹底方についてどうすればよろしいかということについて、十分打ち合せを遂げて、実効の上る方法でやっていきたい、そういうふうに考えております。  それから、第二の千六百万円の問題は、これは、いわば貯蓄組合の問題とは別個の問題でございまして、これの運営の方途といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、結局この法律の趣旨というものが母子世帯の自立の達成でございます。自立の達成によって初めて償還が可能になるわけでございますから、償還々々というと、いかにも聞えが悪いわけでございますけれども、償還ということと自立の達成ということは、いわばイコールの問題でございますので、その辺を十分、それらが達成できるように指導をして参る結果として償還が促進される、そういうふうな趣旨であるわけでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  144. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は、討論中にお述べを願います。
  146. 山下義信

    ○山下義信君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本案に対して賛成の意を表するものでございます。  賛成の理由につきましては省略をいたしますが、なお、本案内容につきまして、かつまた、本制度の運営につきまして、われわれ社会党所属の委員から、だんだんと政府当局に要望いたしました点は、速記録にあります通りでございまして、山本委員からは、運営についての強化拡充、また、十分な母子世帯に対しての指導等につきましては私どもから申し上げました通り片岡委員からは、貸付限度の引き上げについて将来十分考慮するように御要望を申し上げました。松澤委員からは、修学資金の貸与等につきましても、なお新たなる奨学制度の、たとえば進学制度等の十分趣旨を取り入れて、その内容を充実するようにという要望も申し上げました。また、母子世帯の住宅問題につきましては、坂本議員から強く厚生省の今後の強力なる施策を要望いたしました。それらを十分政府当局は勘案されまして、母子世帯に対しまする福祉の完璧を期せられたいと思うのでございます。  なお、私どもが申し上げるまでもなく、母子福祉の問題につきましては、何と申しますか、あらためて十分再検討いたしまして、そうして真に母子福祉の施策を完備いたしまする時代が参つておるように考えるのでございます。従いまして、母子資金の貸付制度の拡充強化のみならず、あわせまして、多年母子世帯の諸君が強く要望し続けて参りました総合的な母子福祉の施策につきまして、政府当局も十分熱意を持って、新たにこれらの問題の検討に御着手が願いたいと思うのでございます。  なおこの機会に、言うまでもございませんが、朝野がひとしく要望いたしておりまする国民年金制度の中に、とりあえず当面その対象者が存在いたしておりまするこの母子世帯等に対しましては、私ども無醵出年金制度の即時実行を考えておるのでございますが、政府当局におかれましても、おそらく御検討に相なっておることだろうと存じまするので、すみやかなるこれらの実現を要望してやまないのでございます。従いまして、私どもといたしましては、母子世帯に対しまする、戦後の日本の特異なこれらの問題に対しまする福祉の施策の完璧は、一つには総合的な福祉の対策であり、その中核をなすものはこれらの資金の貸付制度である。しこうしてこれを貫徹いたしまする重大な支柱となりますものは、母子年金であろうと考えまするので、ぜひとも今日の段階におきましては、朝野力を合せまして、多年のこれらの母子世帯に対しまする福祉の問題の解決に邁進いたしたいと考えるのでございます。この点、強く政府当局に御要望申し上げる次第でございます。  かくいたしまして、戦後のあの激しい動乱のさなかに、非常な苦難の波に漂いつつ今日まで、その尊い母子の立場を自覚いたしまして、今日まで苦難の中で堅持して参りましたこれらの幾十万の、あるいは幾百万の世帯、もしこれらの母子世帯が、あの戦後の狂瀾怒濤の波にのまれまして、その家庭を失い、その立場を忘れ、ことごとく転落の道に落ちたとしまするならば、今日の日本の社会、今日のわが国のありさまはどういう姿になっておるであろうかということを考えますと、まことにりつ然たるものがあるのでございます。幸いにして、これらの母子世帯の諸君が奮闘努力せられまして、今日まで進んでこられましたその労苦に国が報いまするのが、今これからであろうと私ども考えておるのでございます。これらの奮闘努力母子世帯に輝ける栄冠を、国として大きな福祉の手を差し伸べて与えていただきたいと切望してやまない次第でございます。  つきましては、この際私は、同僚諸君のお許しを得まして、本案に賛成をいたしますこの機会に、次の付帯決議をつけさせていただきたいと思うのでございます。案文を朗読させていただきます。    母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   母子家庭の福祉を増進するため、政府は此の際、母子福祉に関する総合的施策を確立し、特に次の事項の実現に努力すべきである。  一、母子福祉資金貸付制度の運営を円滑ならしめるため、母子家庭に対する相談指導の機構及び職員の充実強化を図り、これに要する経費を確保すること。  二、母子年金制度を速急に実施すること。   右決議する。  この決議案の趣旨は省略させていただきます。  以上で、私の賛成討論を終ります。
  147. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ行あり〕
  148. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それではこれより、母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  149. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、対論中に述べられました山下君提出の付帯決議案を議題といたします。  山下君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  150. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致と認めます。よって山下君提出の付帯決議案は、全会一致をもって、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきまてしは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には、多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     木島 虎藏  勝俣  稔     寺本 広作  横山 フク     西田 信一  谷口弥三郎     西岡 ハル  山下 義信     山本 經勝  藤田藤太郎     片岡 文重  松澤 靖介     竹中 恒夫  斎藤  昇     中山 福藏   —————————————
  152. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、児童福祉法の一部を改正する法律案議題といたします。  御質疑を願います。
  153. 坂本昭

    委員外議員坂本昭君) 時間の関係もありますので、数点、簡単にお尋ね申し上げます。大臣の説明をいただきたいと思ったのですが、この児童福祉法の一部を改正する法律案の中で、先般の参考人の方の陳述にもありましたが、未熟児に対する保健所職員の訪問指導ということが、実際に現在の保健所職員の実力で果し得るかどうか。もちろん、今回の措置では、予算もわずかでありますし、対象の未熟児の子供も千名そこらですから、しばらくの間はできるかもしれませんが、この法の意図するところの趣旨にのっとって、果して現在の保健所の態勢でできるかどうか。そういう点で、児童局長としては、十分公衆衛生局と連絡をとって、これは、この法案をやっておられるのか。私の考えでは、今のような定員の充足率、あるいは厚生省が一般の医師を動員する、そういう態勢が十分できていない今日において、先般の参考人の指摘されましたような、一般医を動員する、あるいは保健所職員が十分な時間を持って訪問指導する、そういうことが果してできるかどうか。そのことが第一点であります。
  154. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) この未熟児の問題につきましては、保健所を主管いたします公衆衛生局ともちろん十分打ち合せを遂げて、両方合意の上参ったのでございます。もちろん、お話のありましたように、保健所は、いろいろな仕事をかかえ込んでおる割合にはその定数も十分でございませんし、かてて加えて、相当多くの保健所において、その技術職員定員を充足しかねておるような状況のところも少くありませんので、その保健所によります訪問指導につきましては、やはり相当な荷重がかかるということは、これは率直に認めなければならぬと思います。ただ、現実の問題として、従来とも母子関係につきましては、保健所の最も重要な仕事の一部分でございましたし、保健所は、大体一月当り二百七十三件ぐらいの母子関係の訪問指導をやっておる実績に承知をいたしておるのでございます。一方、この未熟児の関係につきましては、年間約十万人になると考えられますので、これを保健所当りにいたしますと、年間約百三十名ぐらいになるわけであります。これらの中には、もちろん、相当頻度の高い訪問指導を行わなければならないのと、そうでなく、割合にまあ緩慢な訪問指導を行なって差しつかえない面もあろうと思いますので、一概にこの数字でどうこうということは、これは言えないと思いますけれども、そういうふうな従来の母子関係の訪問の指導の実績と、それから、未熟児の数がそう大きな数でないということで、何とかこれは、こういうような措置によってやり遂げていくように、両局相談をして努力をして参りたいと思います。
  155. 坂本昭

    委員外議員坂本昭君) 次に伺いたい点は、先般の参考人の力のいろいろな御説明を聞きまして、当委員会としても、現在の乳幼児対策というものがいかに不十分なものであるかということを非常に反省いたした次第であります。特に、児童福祉のきわめて重大な根幹をなすところの爆音町というものの憂うべきところの現況、特に保母の過労あるいは保育料の徴収事務の不当な負担、そういった点で、われわれとしても非常な参考になりました。特に全社協の方たちが、この保育所の事業を何とかして円満に運営していきたいということで、厚生省とも十分協議をされた。そうしてその厚生省とは、方向においては一致したが、具体的な案が厚生省から示されるに及んで、この案ではとうてい保育所の運営はできない。そういう説明もありました。で、参考人のお話を聞いておりまして、全社協の今までの努力、また、特に三十三年度の予算獲得に当っては、保母さんたちは、その仕事を放擲してまでも、いわば厚生省に協力したのであって、この段階においては、厚生省自体としても、信義と徳義をもって保育所の運営に当るべきであるということを痛切に感じた次第です。  そこで伺いたいことは、最近も、各県からいろいろ意見書が集まってきていると思うのでございますが、それらをまとめて、厚生省当局としては、新しい年度の保育所の運営について、どういう具体的な方針を立てられているか。そしてまた、すでに示されたいわば厚生省原案というものにおそらく、私は、賢明なる厚生当局は固執はされないだろうと思うのです。でありますから、この将来の見通しとして、どういうふうな具体的な修正と申しますか、案を作られるか。また、その作られる時期はいつごろくらいまでにまとめられるつもりでいるか。その間の御説明を伺いたいと思います。
  156. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 保育所は、現在、御承知のように、約九千ヵ所オーバーしている状況でございまして、これが最近の十年の間に非常に急速な増加を見ております。それに伴って、経営上の問題あるいは行政上の指導監督なりが追いついていかなかったということは、これは確かに認めざるを得ない点でございます。それがまあ現在保育所についていろいろ問題が出ている一つの、原因にもなっていると、私も率直に認めて、反省をしておる次第でございます。保育所につきましては、御承知のように、年々歳々予算のときにいつも問題になり、そのほかのときにも、いろいろそれぞれの立場から問題になるのです。結局これは、御承知のように、公けの補助金と、それから保護者からの保育料と、両方で運営をして経費をまかなっている状況でございますが、保育料の徴収につきましても、これは、現実のいわゆる徴収の基準というものが、率直に言って、その通り守られていない現状でございます。それから、公費の補助の方も、これも非常に複雑になっておりまして、法律上は、最低基準を維持するに足る経費を補助するということになっておりますけれども、非常にばらばらになっておりまして、両面とも、このままでは何とも十分やっていけない、そういうような場面にだんだん逢着して参りましたので、何とかこれを改善する方途はないものかということで、今お話通りに、昨年来関係の向きといろいろ打ち合せをして、これらの施設の経営に当っておられる方ないし市町村の関係あるいはそれらの団体の方方とも意見の交換をして参ってきたわけでございます。その結果、結局、これが何らかの形で打開の方途を講じなければ、このままでは行き詰まっているし、ジリ貧に陥ってしまうというようなことで、一つ考え方というか、それは結局、徴収の面につきましては、もっとはっきりした形に、簡素化してすっきりした形にする。それから、補助の面につきましても、いわゆる単価制約的な考え方をとっていくという基本的な考え方においては、皆さんこれは大体賛意を表していただいているし、私どもとしても、そういうように承知をいたしているのであります。ただしかし、この問題は、結局徴収のまあ基準を変え、あるいは新しい制度を確立いたしますというと、少くとも現実行われている姿に対して何らかの変革が超ることは、これは言うまでもないことでございますし、その結果として、従来よりもきつくなる面と、ゆるくなる面と、それぞれの地方によって生ずることも当然起るべき現象でございます。それから、補助の面につきましても、結局単価制をとるという考え方をとります以上は、上、下がある程度ならされる結果になります関係上、相当高い俸給のところがある程度低く——補助の対象としては低くなるということが、そういう現象が起るということは、当然それに起因して起る現象であるわけであります。しかし、それにしても、そういう考え方をやっていこうじゃないかというような考え方の基礎においては、現在やっておりますことがあまりにも適当でない面が少くないということにまあ原因をしているわけでございます。しかし、趣旨においてはそうでありましても、私どもとしましては、これを実施した場合にいかなる姿になるかということが一番肝心な点でございますので、その点については、従来もいろいろ地方から集めましたデータに基いて、それらの案を検討して参りましたけれども、さらに、一つ考え方に基いて、地方においてその考え方に即応したデータの材料の収集ないしは結果の見方というのを集めまして、同時にそれで、適当にあらざる面については、具体的にどうしたらいいか。抽象的にこれでは困るとかあれならばよろしいというのでは、これは話になりませんので、具体的に修正の考え方を出してもらう。それらを十分検討をして、これは改革である以上、多少その現状に変革が起ることは、これは当然予想しなくちゃなりませんけれども、それにしても、できるだけその間を円滑にするという趣旨において、それを慎重に検討いたしまして最終案を作りたい。かような考え方のもとにおいて、現在地方から意見あるいは資料の収集中でございます。これについて慎重に検討いたしまして、早急に案を作りたいと思うのでございますけれども、何しろこれは、相当結局数字がものを言うわけでございますから、数字に基いて検討をしなければならない問題でございますし、相当この計算に手間を取る問題でございますので、まあ文書みたいに、一夜づけで作るというわけには参りませんけれども、そういう意味で、事柄を慎重に、計算的な基礎に立って判断をするという意味において、現在作業いたしておるような状況でございます。もちろん、今申し上げたことからおくみ取りいただけると思いますけれども、私ども、その考え方としては、大体、一般の世間の人たち、あるいは直接この仕事に関係しておられる人たち考え方というものの、十分その線に沿って具体的に作業をして参りまして、しかし、それを実現に移す場合におきまして、その一つの材料を集めるという意味において、一つの試案的な数字をまあ地方に内示をいたしまして、それに基いてこれは材料を集めるということでございます。これを、私どもの趣旨としては、公表をして、あるいはそれをその通りにやると、押し通すという意味では毛頭ないことは、これはもう、当然その数字を示した場所にお立ち会いの方は十分御理解をいただいておるものと私ども理解をいたしておるのでございますが、そういうことでございますので、今後さらに十分慎重に検討いたして参りたいと考えております。
  157. 坂本昭

    委員外議員坂本昭君) 局長の御説明を判断しますと、従来出されていた厚生省原案は必ずしも強行はされない。全国九千に余る施設の人たちがよりよい運営のできるような点を十分考慮し、また、従来全社協ともよく協議されてこられましたが、それらの人たちの意見を千分尊重せられて最後の具体案を決せられる、まあそういうふうに私どもも判断いたしました。なお、新しいこの合理化と申しますか、改革によって、いろいろと経済的にプラスになる施設、マイナスになる施設があるという御指摘でありましたが、なるほどそれは、場合によれば、改革に伴う必然的なものとしてやむを得ない面もありましょうが、今度の改革案によるプラス、マイナスを検討すると、従来厚生省の指導に従って保育所として一つの規格をもって、いわば模範的と言えば少し言い過ぎるかもしれませんが、比較的いい経営をやってきたところが今度は財政的に悪くなる。そういう特徴が一つあることと、それからもう一つは、施設の大きいものが、百二十あるいは百八十というように、大きくなればなるほど、今度の改革案によると財政的に豊かになり、小さいものほど悪くなるという、そういう二つの傾向が実は私は見られると思うのです。この点は、今後いかなるふうにまた原案が修正されるかわかりませんが、少くとも乳幼児対策の根幹をなす保育事業が今のレベルより悪くなるということは、これは国民としてがまんのできないことであります。ですから、レベルを上げる、全般的に上げるという点において十分具体的な案を御検討願いたい。このことを一つ御指摘申し上げておいて、あと時間の関係で一点お尋ねいたしたい。  それは、先般の参考人の中で、保母さんがきわめて感銘の深い陳述をされました。開くところによると、非常にこの施設の悪い保育所の中で、子供のけがなども非常に多い。やかんをひっくり返してやけどをしたり、あるいは、保母の定員が足りないために、水たまりに落っこって溺死をしたり、あるいは自転車にひかれてけがをする、こういう子供のけが、それからまた非常な過労な保母さんが子供の保護のために、神奈川県の列車事故で、子供を驀進してくる列車から守ろうとして、子な点で、義務教育の学校については、??学校安全会というようなものができて、子供のけがに対するいろいろな保護ができていますが、一番保護を要する保育所の子供たちに対しては何もない。それからまた、ここに働く保母に対しても、やっと健康保険ができた程度で、退職金の制度もなければ、労務災害の規定もない。そういう中で、営々として第二の国民保護のために一生懸命に努力しておられる。私は、厚生省としては、こういう事情ほんとうに認識するならば何らかの財政的にもまた法的にも手段を講ずべきではしないか。先般の保母さんの説明を聞いておって、私は、心ある局長ならば、冷淡には過ごされないであろうと思ったのですが、局長の御意見を承わりたいと思います。
  158. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 保育所のみならず、特に、今お話には出ませんでしたけれども、肢体不自由児施設でありますとか、精神薄弱児施設でありますとか、そういういわゆる収容施設における保母さん、これらを含めて、非常に待遇その他が十分でないのにかかわらず努力をして、子供の保育ないし保護に尽力をしておられるということは、今お話通りに、涙ぐましい努力だと私ども思っております。こういった施設の運営については、いろいろな問題がありますけれども、やはり何と言っても保育力の充実ということが、これは第一の問題だと思いますので、これをやはり中心に考えていかなければならぬのは当然のことであります。率直に申し上げまして、従来明けても暮れても措置々々ということで、いわゆる経理の面、金の面にお互いに神経が集中しておりました関係上、こういったたとえば保母その他の職員勤務形態の問題でありますとか、あるいは待遇の問題でありますとか、さらに広くは施設運営の、運営自体の問題でありますとか、これはもう、坂本委員よく御承知通りに、病院なり療養所においてはずいぶん進んだ形態になっておるのでございますけれども、児童福祉施設等におきましては、それに比べますと、今申し上げましたような事情も手伝って、ずいぶんおくれておるように私ども承知をいたしておるのでございます。この措置費の問題をできるだけ早く解決をいたしまして、こういった運営の能率化の問題でありますとか、勤務形態の合理化の問題でありますとか、処理の問題でありますとか、その辺の問題と真剣にこれは取り組んでいかなければならぬと私ども考えておる次第でございます。  それから一番初めに、これは御質問ではございませんでしたけれども、まあ施設、保育所の措置費の問題に関連をしてお話がありましたが、十分これらは私ども念頭において検討いたしたいと思っております。ただ問題は、結局これは、予算の問題にからんでくる問題でございますけれども、予算が一定でありますというと職員の待遇を含めた内容の向上を果そうといたしますならば、結局保育料の増徴をはからなければならない。増徴を避けようと思えば、待遇その他いわゆる内容をある程度のところでがまんをしなければならない。そういう問題にもぶつかるわけでございますし、現在の姿として、結局、内容相当よくと申しますか、相当高い経費を使っておって、徴収が少い場合には国の金がたくさん行っておるわけであります、そういうところと、経費をそうかけないで、しかも徴収が相当成績をあげておるところは、国の金が少く行っておる。現実の姿としては、そういうような姿になっておるわけであります。それを、初めに申し上げましたように、単価制の考え方をとるといたしますというと、ある程度この間において平衡化という問題が起ってきますし、そうなりますというと、今申し上げましたように、両方の問題というものがからみ合いになってくると、そういうような問題になってくるわけでございます。それはそれとして、これが実施につきましては、もちろん、経過的な措置というものは、これは考えなければならないと思いますけれども制度の改革に関連をいたしましては、そういう問題があるということは、これは十分御理解をいただきたいと思います。
  159. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時十二分散会    ————・————