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参考人(中川はつ君) 私、園児の母、中川はつでございます。
私の
保育園は、北区でもとても下層階級だと思います。現在夫婦共かせぎとか、親一人子一人の
子供が多いように思われます。私の
保育園は、現在
子供が百六十人おりますけれ
ども、夫婦共かせぎがその中で百十名おります。それで、三十名が行商とか内職をしております。あとの何名ですか、二十名でございますか、それは、うちで小さいお店をしているというような
家庭の
子供ばかり預かっております。それで、
保育園に預ける時間でございますけれど、
保育園は、八時から四時半までといわれておりますけれ
ども、どうしても働くためには会社へ行く通勤時間もございますし、残業もしなくてはならないという始末で、朝の五時ごろから、ときには、日雇いなどしておりますと、朝の七時にノートを渡さないと働くことができないものですから、通勤時間を含めますと、六時ごろか五時半ごろ
保育園に連れていかなければならないわけです。で、
保育園にお願いしたいのですけれ
ども、
予算もない、保母さんの手当も少くて、働く時間が多いため、過労で倒れてしまう保母さんがとても多いのです。私たちは、ほんとうに預かっていただくのは申しわけないのですけれ
ども、どうしても保母さんにお願いするよりほか道がないのでございます。御近所に頼むと、やはりお礼とか、お金がかかってしまうものですから、母親たちが集まりまして、特別保育の場合には、何か保母さんに上げようではないかということにしたのですけれ
ども、保母さんは、個人的に何もいただいてくれないのでございます。ですから、母親が特別保育料として月二百円、それから父母の会費として三十円、冬は全然暖房がありません。かわいい
子供を、ほとんど一日保母さんに頂けておくのに、冷たい部屋ではかわいそうですから、暖房費五十円、全然保育費を納めていない
措置費でも、四百三十円ぐらいのお金はどうしても納めなければ、
保育園に預けることができない。で、そういう
人たちに
保育園は言わなくても、よけいお金が、三百円も四百円もかかるので、そのお金は全然未納になってしまうのです。そのために、ほかのお母さんたちからいただいたお金で、全然払えないところの
子供の分まで補っていくという始末。そういう
子供はやめさせればいいじゃないかということですけれ
ども、そういう
子供こそ、
保育園では預からなくちゃならないことになっているのです。ほんとうにまずしい
子供ばかりの寄り集まりなのでございますけれ
ども、これは、ほんとうの私の近所の人のことなんですが、二、三の実例を上げまして、皆さんに聞いていただきたいと思うのでございます。
これは、私の近くの者なんですけれ
ども、五十才で、トンボ鉛筆に勤めているものでございますけれ
ども、家族が六人ございます。月給が一万四千五百円でございます。
子供が四人おりまして、中学一人、小学一人、
保育園に二人頂けております。お母さんがぜんそくなどで半年ばかり寝ておりましたけれ
ども、
保健所の検診の結果、開放性の結核だということがわかりまして、入院になってしまったのです。そのときにお金がなくて、幾らか知りませんけれ
ども、借金をしたそうです。で、お父さんは、
子供四人がいて、二人
保育園に預けて、残業でもして一生懸命働こうと思うのですけれ
ども、四人の
子供がかわるがわる病気だ、けがをしたと、会社に始終迎えに行くので、残業もできないありさまです。借りたお金の利息が一割も取られるのだそうです。どうしてそういうところから借りたのと聞きましてたら、借りるところがわからないし、貸してくれるところがないから、利息を取って貸すところから借りたと言うのですね。それで、毎月利息に追われて、生活がとてもできない。
保育園の方は、保育料は二人で百円なんですけれ
ども、二人でも、これは特別保育がありますから、四百円か五百円上げているはずです。それで、
保育所の方からは、全然請求がないものですから、つい保育費を全然払わないで、もう七カ月も全部未納になっているそうです。保母さんたちも、ほんとうにかわいそうだけれ
ども仕方がないわというので、見ているような
状態なんです。
もう一軒は、向山さん、これは親一人子一人で、失対事業とか申すものだそうですけれ
ども、月給七千円だそうです。これには、保育料四百円ときめられてあるそうです、特別保育ですから。
〔理事山下義信君退席、
委員長着席〕
この
家庭も、親一人子一人ですから、特別保育料が三百円かかっております。で、家賃は二千五百円だそうです。そのほか食べたり、いろいろなことをして七千円で、
保育園に六百円払って、七千円ではとっても苦しいそうです。これは私たちも、ほんとうにかわいそうだからと言って、下着とか何か上げたりなんかしているのですけれ
ども、家賃ばかりでなくして、電気とか水道、みんなかかると思うのです。とても苦しそうな生活が私たち見て、気の毒に思ったからなんです。
それから前野さんという、この方も近くの方なんでございますけれ
ども、御主人が慢性じん臓病で、入院したり退院したり、二年間ほど繰り返しているのでございます。家が心配ですから、途中で退院してしまって、帰ってすぐ働くと、すぐまた出てしまって入院するという
状態なんでありまして、
子供さん一人六百円で預けて、お母さんが卵売りをしているんでございます。卵売りをしていまして、最近赤ちゃんが生まれてしまったんです。妊娠したばかりに、保母さんに、
子供おろそうかしらと相談して、保母さんも、その方がいいと言ったそうですけれ
ども、主人も近くよくなるんでしょうし、一人だけではほんとうにさみしいからというんで、母親のほんとうにあたたかい気持で生んでしまったんです。ですけれ
ども、お父さんの入院医療費はただなんだそうです。ただ小づかいが、一日十円二十円はどうしても必要だというんです。お母さんが卵を売って生活をしていたんですけれ
ども、赤ちゃんが生まれてしまったら、今度働けなくなってしまったんです。その赤ちゃんも、近所に預けると、三千円ぐらい出さないと頂かってくれないそうです。
保育園でそういう
施設がありませんものですから、どうしても働かなくちゃならないんで、生まれてまだ四十日くらいの赤ちゃんをおんぶして、卵ざるをさげて、一人の
子供を
保育園へ預けて、毎日歩いております。一日売ってどのくらいになるのって聞きましたら、一個一円ぐらいしかもうけていないから、一日百十円か百二十円がいいところだわ。けれ
ども、お父さんに小づかいを一日二十円づつあげられるのよというような
状態の人がおります。
それから、もう一人は、夫婦共かせぎで、案外よかったのですが、とても御主人が弱くて、たくさんお金もいただけないというんで、保育料は五百円だったそうです。その御主人というのは、けがをして頭を打たれたために、ときどき発作的に異常がくるそうです。最近になって、会社もやめさせられてしまったそうです。御主人が、奥さんにやめさせられてしまったことを言うのがいやで、毎日お弁当を持ってどこか行って、職探しに歩いていたそうです。二カ月日に、奥さんが、どうも変だから、会社へ行ってみましたところが、あなたの御主人は、ほんとうにまじめでいいんですけれ
ども、休んでばかりいるし、病気があるから、会社としてやめていただいたと言うそうです。それでは、失業保険はどうなっているんですか、と聞きましたら、とてもルーズな会社で、そのうち何とかする——やめていまだに失業保険をいただいていないそうです。それだもんで、奥さんがとても困っちゃいまして、もちろん主人は就職探しているんですけれ
ども、奥さんが病気みたいになってしまったんです。それで、奥さんは一日二百円の日給です。最近奥さんもからだが悪くなってしまって、寝たり起きたりしているんですけれ
ども、一週間続けて休むと、会社の方から、やめてほしいというようなことを言われるんだそうです。そのために、ここの家でも、やっぱり特別保育だったんですが、保育料五百円のほかに、三百円か四百円入れなくちゃならないわけになっているんです。で、保育料が二カ月ぐらいもう滞納になってしまって、とても元気のいい奥さんで、父母の会などで、率先していろいろな活躍してくれる人だったんですけれ
ども、このごろは出なくなっちゃったんです。
子供をおぶって来るたびに、保母さんに、悪いわね悪いわねと言うんですけれ
ども、保母さんは、いいからいいからと言うんで、働いているんだそうですけれ
ども、奥さんが病気になってしまって、だんなさんがまだ全然働けないという
状態にあるときに、最近そういう
状態だというのがわかったとき、それでは
措置費をすぐしましょうと言ったら、
措置費ってすぐ取れないんだそうです。そういう
家庭というのは、保母さんが見てすぐわかるんですから、即座に、それでは一銭も要らないよというような
家庭に何とかしていただいたらどうなのかしらというように考えるのであります。
それから、これは私の問題なんでございますけれ
ども、私、三年前に主人が失業しました。失業しましたと同時に、精神的の疲労と申しますか、とてもからだが工合悪くなってしまったんです。そうしましたら、胃かいようじゃないかしらと言われたんですけれ
ども、とても入院もできませんし、病院へ行って、胃かいようだから入院しろと言われるのがおそろしくて、毎日買い薬をして、二カ月ばかり過ごしました。しかし、失業保険がありましたので、親子四人で八千円足らずで生活していましたけれ
ども、失業保険は切れてしまうし、そろそろ働かなくちゃならないという時期になりましたけれ
ども、一才と三才の
子供をかかえて、私は内職もできないのであります。そして、近くにこういう
保育園があるということを聞きましたので、さっそく
保育園へ行きましたところが、ほんとうに気の毒だけれ
ども、保育料は高いんですよ、というわけなんです。何だかかからないではいれるそうですけれ
ども、と聞きましたら、
措置費の定員がありまして、すぐには
措置になれないからと申されたんです。一体幾らかかるのかと聞きましたら、赤ちゃんは千五百円で、三つになる
子供は九百五十円でしたか、忘れましたけれ
ども。とても働かなかったら困ると申しましたら、何とか一生懸命骨を折るし、一人ぐらいやめるでしょうから連れていらっしゃい、ということになりまして、お願いいたしました。そのとき、人見知りする一才の
子供を保母さんに預けるというときの気持、母親としてほんとうに
お話し申し上げようもないような気持がいたしました。ほんとうに鬼にならなければ預けられない。もう、会社へ行っても、今ごろ泣いているのじゃないかしらというような気持で
仕事をしていましたけれ
ども、やさしい保母さんがして下さいますので、一週間くらいでやっとなれまして、どうやら
保育園に行かしていただけるようになったんですけれ
ども、とにかく保母さんが朝から晩まで、母と寝る時間のあとは、みんな保母さんと一緒にいるんです。そんなようなわけで……もう上ってしまったんですけれ
ども、とっても大
へんだと思います。私の
家庭では最近主人もどうやら働けるようになりまして、一人は学校へ上り、もう一人の
子供は
保育園に入っているのでございますけれ
ども、前に入れたときに、三カ月たって
措置になりましたですから、そのときの借金が六千円くらいあったんです。それを、働きながら百円、五十円と返していって、今二千円くらい残ったんです。その二千円を、もう一年でまたあとの
子供が行くときに、何か
保育園が高くなるというようなことを叫ばれていますけれ
ども、もし今までのままで、これから上らないでいて下さったら、私も、
保育園を終るまでに借金を返せるし、何か明るい、文化的とまでもいかないけれ
ども、生活ができるのじゃないかと思うんです。
それで最近、うちの保母さんが結婚して、一人やめたんです。そのあとへ臨時の保母さんが来たんですけれ
ども、その人が二、三日前こんな
お話をしていたのを聞いていただきたいと思うんです。いなかの
保育園にいまして、いなかの
子供って、ほんとうにきたないんですけれ
ども、
東京にもこんなきたない所があるのかしら。二才や三才になる赤ちゃんならいいけれ
ども——その方は赤ちゃん組を受け持っているんです。赤ちゃんなのに、麦と米と半分ずつ入っているのが多いんですよと申されました。きのうなどはまだよく煮えていないのを、一体こういう人のお母さんは、
子供のことをどう考えているんだろう、どういう生活をしているんだろう、ほんとうに保母していくのもいやになってしまったわ、というようなことを言われるんです。長いことその赤ちゃん組の保母さんをしていらっしゃる方が、そんなこと言っても、この辺の人は、映画も見ないし新聞も読まない、夫婦共かせぎで、朝起きたら
保育園へ持って行って保母さんに預けて、あと働くだけしかないのよ。
子供のことをしてやらなくちゃいけないのだから、今からそんなことを言って、あなた勤まらないのよ、そんな会話を聞かされたんです。それで、夫婦共かせぎだったら、とってもお金が取れるのだろうと思って考えてみますとき、結婚します前からずっと勤めていますと、月給も上ると思うんです。結婚するために女性が一度やめまして、
子供が生まれた。今度就職するというと、パートタイムとか、それでないと、一日二百円とか百五十円の臨時しかないのであります。もちろんそういう方のだんなさんという人も、やめたり入ったりするから、必ず月給って少いんです。夫婦が働いても、ほかの人の半分にしかならないような
家庭が多いものですから、とても生活に困るんです。そういう
家庭ばっかり預かっている
保育園なものですから、特別目につくのだと思うんですけれ
ども。
それから、
子供がときどき皮膚病がうつったりなんかするのでございます。そうしますと、隔離をしなくてはならないからと言って、預かってくれないんです。そのとき、会社の方はやっぱり休まなくちゃならない。御近所に頼むと、より以上高くなってしまうから、やっぱり母親が休むということになるんです。そのために、すぐやめさせられる。ですから、母親というのは、もう半年くらいで転々と歩かなくちゃならない。そのためにやっぱり収入も少いというような
状態に置かれる人が、結局、共かせぎして
子供を預けるのじゃないかと思うんです。
私は、母親として、こういう所へ出たこともありませんし、人様と
お話ししたこともありませんものですから、お断わりしたのですけれ
ども、ほんとうにもっともっと困る人が来て、ここで
お話しすればいいのですけれ
ども、そういう人は、とても行けないからと言われまして、来ましたのですけれ
ども、ほんとうに私がここで申すより、赤ちゃん組が御飯を食べているときに、皆さんに来て見ていただいたら一番よくわかるのではないかと思います。ほんとうに一日中保母さんのところにいて、母とは夜寝るだけの
子供なんですから、せめて気持よく保母さんと遊んでいただくような
保育所がところどころにあってほしいというような気がいたしまして、皆様にお願いするわけでございます。