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藤田藤太郎君 ただいま
議題となりました
国際労働条約八十七
号批准に関する
決議案の
提案の
趣旨について御
説明申し上げます。
まず、
決議案を朗読いたします。
国際労働条約第八十七
号批准に関する決議
千九百四十八年国際
労働機関の総会において採択された「結社の自由及び団結権の擁護に関する条約」は
労働者の基本的権利をうたったものである。
わが国が国際
労働機関に復帰して相当な年月を経たにもかかわらず、この条約がいまだ批准されていないことは常任
理事国として誠に遺憾であり、このことは国際的にも批判されている。
わが国の国際信用を高め、貿易の発展を促進し、円滑なる労使
関係を確立するため、この条約の批准は緊急かつ必要である。
よって
政府は、今国会において
国際労働条約第八十七
号批准の手続をとるべきである。
右決議する。
理由を
説明いたしますと、「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することが出来る。世界の平和及び協調を危くするほど大きな社会不安を起す不正、困苦及び窮乏をもたらす
労働条件の存在は、これを改善することが急務である。」「
労働は商品でない」「表現及び結社の自由は、不断の進歩のため欠くことが出来ない」「一部の貧困は全体の繁栄にとって危険である」
これは、国際
労働機関憲章の前文において、又その附属書であるいわゆる「フィラデルフィア宣言」の冒頭においてうたわれた言葉で、国際
労働機関の目的及びその使命を宣明したものであります。国際
労働機関が一九一九年創立されて以来加盟国は既に七九カ国、採択された条約は百七に達しております。主要加盟国にあっては重要な条約について多くの批准を見、世界における社会正義の確立に大きな貢献をいたしておることは、御
承知の
通りであります。
然るに、我が国における条約批准の状況を見ますと、百七に及ぶ条約のうち、これを批准いたしましたものは、戦前において十四、一九五二年復帰が認められて以後十、合計でわずか二十四の条約にすぎない実情であります。
インド、パキスタン、セイロン、ビルマ及び戦後独立した東南アジアの後進諸国においても、最近においては
国際労働条約の批准に熱意を示し、日本の批准数に達しつつある現状であります。我が国は、今日世界の十大主要産業国として常任
理事国に指定されており、
労働者の
労働条件等に関しましては世界注視の的となっております。
国際
労働機関加盟諸国、特に東南アジアにおける後進国の諸国が条約批准に熱意を示しているにかかわらず、我が国のみひとりこれの批准状況が遅々としているのは誠に遺憾であると申さねばなりません。
特に今回批准について
提案いたしました結社の自由及び団結権擁護に関する条約は、冒頭にも申し上げました
通り、
国際労働条約の根本的精神を表わすものであります。本条約がまだ批准されないことは、世界に、我が国の国際
労働憲章に対する加盟国として、責務を自覚せざるがごとき印象を与えるおそれがあるものと
考えます。本年三月ジュネーブにおいて開催された第百三十八回国際
労働機関
理事会におきましては、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約の未批准国に対しては、これを批准することを可能ならしめるに必要な
措置をとるよう緊急に要請することが
決定されているのであります。
わが国は、かつてチープレーバー、ソーシャルダンピングの悪名高く世界の批判は厳しい時代がありました。
国際労働条約批准の状況が現状のごとく遅々として促進されないならば、再び国際信用の上にも影響し、ひいては貿易の伸長にも一つの隘路となることは明確であります。
国際労働条約の批准、特に結社の自由及び団結権擁護に関する条約の批准が今日おくれていることは
理由のいかんにかかわらず、わが国に対する国際不信を招く一つの原因となることはいなめないのでありますから、
政府は直ちに国会にこれの批准の手続をとるべきものであると
考えます。
以上述べましたように、本条約批准は、わが国の国際信用を高める上に貢献するものでありますから、本
決議案を
提案いたした次第であります。何とぞ御
審議の上すみやかに御可決あらんことを御願いいたします。