○
政府委員(高田
浩運君) まず第一に、
母子福祉資金の
貸付等に関する
法律の一部を改正する
法律案について御
説明申し上げます。
この
法律は、御承知のように
昭和二十八年から実施をいたしておりまして、すでに四十数億の金がこの
法律によりまして母子家庭に貸し付けられまして、母子家庭の自立更正には非常に役立っておると私
ども確信をいたしておるのでございます。なお、母子家庭の
状況は、これも御承知の通りに、三十一年に実態調査を行いましたところ、この
法律の対象となります母子世帯の数は百十五万という数字になっています。その前に行いました調査によりますと、いわゆる母子世帯六十九万ということでございまして、その両者の間に
相当数の開きがございますが、これは該当のまあ対象それ
自体も
相当違った範囲になっておりますし、必ずしもそれだけ数がふえたということにはこれはならないわけでございまして、私
どもとしてはこの
法律の対象となる母子世帯の数は、最近行いました百十五万世帯というのを基礎にして
考えるのが至当である、かように
考えておるのでございます。
この
法律によりまして、御承知のように、八
種類の資金の貸付を行うということになっておりますが、改正をいたしました点は、第一に、生業資金、これは母子世帯が新しい仕事を始めようというような場合におきまして、その準備等のために貸し付ける資金でございますが、その貸付の限度が従来五万円ということになっておりました。実際問題としまして五万円ではあまりにも少額でございまして、その成果を上げることが困難でありましたので、今回これを十万円ということに引き上げたいという改正でございます。もちろんこれは限度でございますから、実際問題として、従来五万円限度の場合においても実際の平均は大体三万ないし四万という見当になっておりましたし、十万円に今回引き上げましても、すべてが十万円に近くなるというふうにはこれはならないことは当然でございます。
それからその次に修学資金、これは
子供が高等
学校ないし大学に行きます場合において、学資を貸し付ける、そういう資金でございますが、現在、その額は、高等
学校につきましては一月に千円以内、大学につきましては三千円以内ということになっております。高等
学校から大学に継続をして業を修める場合におきましては、これは問題ございませんが、不幸にして途中、いわば、大学の入学試験に落第をして浪人をするというような場合におきましては、
法律構成上、大学に行って、大学に行きながら高等
学校で借りた修学資金の償還もなさなければならない、そういうようなことになっておったのでございます、その点を改めまして、途中、浪人を経て大学に就学し、あるいはインターンをやります、そういう場合においては、その高等
学校分の修学資金の償還金の支払いを猶予することができるということにして、実際問題としては、従って、大学を出てから両者を一括して一定の計画に基いて返還をさせる、そういうふうな仕組みを開くということでございます。
それから第三は、修業資金、これはまあ
学校ではなくて、あるいは洋裁でありますとか、その他そういったようないわゆるまあ業務の修習をやる場合におきまする資金でございますが、これは
法律上、そういう知識技能を習得する期間は二年間ということにきめてあるわけでございますが、二十才をこしました場合においては、その二年の範囲内においても従来その貸付が打ち切られるというような仕組みになっておりましたので、この点を改めまして、二年の範囲内であるならば、二十才に達した後においても継続して貸し付けることができると、そういうふうにいたしたい、そういうことでございます。
それからその次の第四点といたしましては、
母子福祉資金の貸付に関しましては、都道
府県の
児童福祉審議会、その
意見を聞いて貸付あるいは却下をする、すなわち処理をする、そういうふうな仕組みになっておったのでございます。理屈の上では従ってこの審議会を一々開いてやれば、まあそう大した支障はないわけでございますけれ
ども、実際問題としては、やはりこの
児童福祉審議会が開かれるまでの間、多少いわゆるためて、一緒にかけるというようなことも実際問題としてありましたし、そういうことで非常に急ぐ場合におきまして、その
児童福祉審議会が開かれるまでに貸付が実際に延びる、そういうようなきらいもございましたし、その点の
一つの救済方法といたしまして、急を要する場合におきましては、審議会の
意見を聞かないで、貸付を決定することができる、そういうふうにいたしたのでございます。もちろんこれはそういうことで、県だけが行いますについては、十分気をつけてやらなければならないことは、言うまでもございませんが、必ずその次の審議会には、それを詳細報告させるという
措置をとりたいと思いますし、それからこれは貸付の場合でございまして、却下する場合には、必ず審議会の
意見を聞いて却下をする、そういうようなことになるわけでございます。
それから、その次の第五点といたしましては、償還につきまして、いわば約束に反して延滞をするという場合において、まあ違約金を取るということになっておりますが、これの利子が百円について一日四銭の割合ということになっておりますのを、ほかの国税等の例にならいまして、これを三銭に引き下げるということでございます。これが大体提出をいたしております改正
法律案の内容でございます。
次に、
児童福祉法の一部を改正する
法律案について御
説明を申し上げたいと思います。
これの改正の条文は
相当たくさんにわたっておりますが、内容といたしましては、この未熟児の養育についての規定を設けることが、まあ大部分を占めるわけでございまして、そのほかに母子保健指導の関係を改正をするというような、まあ大体二つのことを内容とするのでございまして、ほかのいろいろな条文は、これに関連をいたしまして、あるいは条文整理をし、あるいは字句を直す、そういうようなことでございます。
未熟児の関係について、まず、申し上げますと、未熟児はお手元の、
資料も差し上げてありますが、全体の出生児の中に、まあ未熟児と
考えられるものが、大体六・六%、その数にいたしまして、約十一万を数えておるのでございます。これは、まあ、御承知のように、月が満たないで生まれる者、それから、まあ、重さとしましては、これは国際的な水準として、二千五百グラム以下の
子供、それから、なお、
医師がまあ発育その他の
状況から見まして、いわゆる未熟児と判定する者と、そういった者が内容でございますが、その数は今申し上げた通りでございます。もちろん二千五百グラム以下が、今申し上げましたように
相当な数になっておりますけれ
ども、大体の感じといたしまして、二千三百グラム以上、すなわち二千五百ないし二千三百、その辺のクラスにつきましては、これはいわば未熟の程度が軽いわけでございますから、成熟児とそう大きな径庭を見ない。すなわち、手がかからないで済むというふうに
考えておるのでございます。その数が約四三%ぐらいに
考えておるのでございます。そして、一番気をつけなければならないのは、大体千八百グラム以下というふうに
考えておるのでございます。それに応じましてこの対策を立てて
考えておるわけでございまして、
法律の内容といたしましては、二千五百グラム以下の乳児が生まれました場合におきましては、保護者の方から
保健所長に届出をさせるということにいたしております。これは
医者に届出をさせることがいいじゃないか、そういうような
考え方ももちろん成り立つわけでございますが、むしろ
考え方としては、これは保護者がいわばいろいろな施策の受益者になるわけでございまして、その意味において、
結核とか、
伝染病の届出と違って、いわば申請的な意味を持つと
考えまして、保護者に届出の義務を課したわけでございます。もちろん、それはそういうわけでございますから罰則をつけておりません。
法律上の一応の義務といたしておるのでございます。
次に、この届出のありました、あるいはその他の方法によりまして発見いたしました未熟児につきましては、第一には、
保健所の職員をしてその未熟児の保護者を訪問させて必要な指導を行わせる。すなわち保健指導を行わせる。これは
医師の場合も、助産婦の場合も、保健婦の場合もあろうと思います。そういうふうにいたしまして、それからさらに程度の重いものにつきましては、どうしても病院なり、あるいは診療所に収容をして、特別の養育医療を施さなければならないというものにつきましては、そういった病院に入れて養育医療を給付する、そういうような二本立の
考え方をとっておるわけでございます。大体区分けといたしましては、千八百グラム以上のものにつきましては、大体これは保健指導でいくものと
考えておるのでございます。千八百グラム以下のものにつきましても、
死亡するものを除きましては、一部はいわゆる家庭で養育をするものについて訪問指導をするし、一部は病院、診療所に入れまして養育医療を給付する。そういうような
考え方をとっておるのでございます。
そこで養育医療につきましては、肢体不自由児における育成医療と同じような
考え方に基きまして、設備その他の点を勘案をして、そのための医療機関を指定をいたしまして、この指定の対象としましては、もちろん、設備その他の点を勘案しなければなりませんので、現在のところそうたくさんは望めないと思いますが、さしあたって、一
保健所区域に一カ所程度のものはこれはどうしても指定をしなければならないと思いますし、それ以上につきましては、設備等の点を勘案して、なるべく指定をする、そういうふうな
考え方で進みたいと思っております。
保健所が大体八百ございますから、そういうふうな数字にお
考えをいただいてけっこうだと思います。
それから、その指定医療機関におきまして給付します養育医療の内容は、
法律に書いてありますように、診察あるいは薬剤、
治療材料の支給その他ずっと書いてある。あるいは入院費あるいは看護の
費用、移送の
費用というふうに書いてあるのでございますが、これについての診療報酬でありますとか、あるいは指定医療機関の指定取り消し、そういった観念は従来の育成医療の指定医療機関と大体同じような形をとっておるのでございます。それから、なお、未熟児の養育につきましては、保育器が必要な場合が
相当あるわけでございます。これらを各家庭でそれぞれ持つということもなかなか大
へんでございますので、
保健所に保育器を備え付けまして、必要な場合に貸し出すということも
考えておるのでございます。この未熟児の対策は、三十二年度の
予算に初めてこういうような形をとって計上されたのでございまして、金額といたしましては、約二千六百万円でございまして、もちろんこれをもって十分とはこれはいいかねる
状況でございますし、たとえば養育医療の給付につきましても、この
予算で予定をいたしておるのよりも多い場合も
考えられるのでございますけれ
ども、この未熟児対策それ
自体が、今、申し上げましたように、いわば初めて発足したわけでございまして、いろいろな点で未熟な点もあろうかと思いますが、今後この施策の進展に伴いましてこれが充実をはかって参りたいと思います。
次に、母子保健指導につきまして、すなわち妊産婦、乳幼児等に対します保健指導に関しては、従来、都道
府県知事の権限として、都道
府県の
保健所を中心にして運営をいたして参ったのでございますが、特に
保健所を設置いたしまする市、すなわち政令都市と申しておるのでございますが、この
保健所を設置する市に対しましては、都道
府県知事のこういった権限を移譲をする。移していくというふうなことを内容といたす改正でございます。これは、母子保健指導それ
自体が、まあ根本的に申しまして、妊産婦あるいは乳幼児を対象とするものでございますから、それらの者の身近な所でそういったサービスをするという形の方が、いくべき方法だと
考えます。その意味において、一般の市町村の問題は、これは将来の問題として当然
考えなければならぬと思いますが、さしむけ、
保健所を持っております市に対しましてはこういった権限を移譲することが、この仕事を円滑に、かつ、十分にやっていく上において賢明ではないか、そういうふうな
考え方のもとにこういう改正をいたしたのでございます。
その他の条文につきましては、技術的な点にわたる点が多うございますので、省略をさしていただきたいと思います。
なお、申し落しましたが、乳児の
死亡率は御承知のように終戦後急速に低下をいたしまして、現在千対四十の線を上下をしているような
状況でございますが、そのうち約三分の一は未熟児が占めておる、乳児
死亡の三分の一は未熟児が占めておるような
状況でございます。未熟児の
死亡率は正常児の
死亡率の大体十倍近くなっておりまするので、この乳児の
死亡率は
相当低下をいたしましたが、これをさらにいわゆる国際水準並みにこれが低下をはかる上から言いましても、未熟児の問題をやはり手をつけていくということが非常に大切な問題ではないかというようなふうに
考えておるのでございます。
簡単でございますが、それだけ申し上げまして、御質問によってお答え申し上げます。