運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-04-08 第28回国会 参議院 社会労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月八日(火曜日)    午前十時五十四分開会     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     阿具根 登君    理事            勝俣  稔君            木島 虎藏君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            斎藤  昇君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            西岡 ハル君            横山 フク君            片岡 文重君            木下 友敬君            松澤 靖介君            山本 經勝君   衆議院議員            八田 貞義君            福田 昌子君   国務大臣    厚 生 大臣  堀木 鎌三君   政府委員    厚生政務次官  米田 吉盛君    厚生省公衆衛    生局長     山口 正義君    厚生省児童局長 高田 浩運君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   衆議院法制局側    参     事    (第二部長)  鮫島 真男君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○予防接種法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○衛生検査技師法案衆議院提出) ○母子福祉資金貸付等に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○児童福祉法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまから委員会を開きます。  予防接種法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を願います。
  3. 中山福藏

    中山福藏君 私は、予防接種法の一部を改正する法律案に関して、基礎的な問題を一、二点当局にお伺いしておきたいと思うのです。さきの委員会で、私は予防接種法の一部を改正する法律案参考資料としての資料の御提供を求めたところ、きょう出て参りました。それで、今日までの予防接種に関する成績がきわめて悪かったということについての四つの例がここにあげられておるのでありますが、多くの場合は、リンパ腺体質等不可抗力に起因するものであるが、中には予防接種液原因があり、あるいは予防接種時の消毒が不十分であったためと思われる。この場合には集団発生となっているが、しかし最近は、検定及び接種技術の向上と不断の注意により、ほとんどこの種の事故は見られない。こういうことがこの参考資料説明書についておるわけですが、そこでお尋ねしたいのは、この四つの場合の状況を見てみまするというと、こういうことになるのじゃないかと思うのです、結論として。  第一は、施術者適格審査というものがほとんど行われてない。たとえば、肺結核患者のお医者さんが注射をした。その点についての適格審査というものが少しも行われていないように感ぜられる。  第二は、被接種者体質検査というものが行われていない。たとえば、リンパ腺がはれたとか何とか書いてあって、結核性体質であったとかなんとかいうことについて、事前審査というものがきわめて不徹底であると、こう思われる。これを不可抗力ということで片づけておられる、この点。  それから第三には、予防薬製造過程におけるところの監督がどういうふうに行われているか。これについては何らの説明がしてない。  それから第四には、予防接種時の消毒というものが果してどういうふうにやられているか。その予防接種時の消毒に欠陥があっただろうということをこの説明書にうたわれているが、どういうふうなことを消毒の場合に注意しておられるのか、その点を明確にしていただきたい。  第五には、製薬者に対して、万一その薬品というものが非常に不良な場合においては、厳罰主義をとっておられるのか。あるいは一時製薬を停止されるような措置をとっておられるのか。その辺を一つ明確にしていただきたい。  第六には、死亡者相当ありますが、これはどこでしたか、六十八名ほど死んでいる、手落ちのために。これは、京都府の昭和二十三年十一月の場合でありますが、いわゆる通常の副作用と認定された者が六百六名のうち三百二十九名、うち死亡者が六十八名、こうなっている。これは大へんな迷惑な話で、こういう大量の死亡者が出るということは、いかにもどうも、当局手落ちじゃないかという気がするのです。それから、事件を解決するのに、慰謝料を払う期間というものが、十年間かかってようやく片がついたと、こうなっている。これは私は、父兄がへたばったということをこれで端的に現わしていると思う。十年間かかって慰謝料を払えば、両方ともその交渉にくたびれる。こういうことについて、どういうふうな交渉をされた結果十年という年月日を要したか、そういう点を一つ含めて、大臣でも局長でも、どちらでもけっこうですが、御答弁をわずらわしたい。
  4. 山口正義

    政府委員山口正義君) 予防接種についての根本的な数々のお尋ねがございました。逐次順を追うてお答え申し上げたいと存じます。  第一の予防接種に当る医師適格性と申しますか、その点についてでございますが、全般的に申し上げまして、そのあとリンパ性体質の問題あるいは消毒問題等もからみまして、予防接種法に基きまして予防接種を実施いたします際に、その衝に当る医師あるいはその補助者はどういう心がまえで、あるいはどういう注意をもって接種に当らなければならないかということにつきまして、一つ一つ予防接種につきまして、それぞれ少しずつ趣きを異にする場合がございますので、予防接種心得というものを大臣の告示で出しまして、それに基いて予防接種を行なっているわけでございます。この事故の例としてあげられましたものの中に、その担当の医師結核性疾患であったというようなことにつきまして、これは、その後いろいろ調査いたしました結果、はっきりそれと断定することはできないのでございますが、そういう疑いが持たれるということで、こういうふうに私ども考えているわけでございますが、こういう事故がありましたのにかんがみまして、特にその衝に当る医師については、自覚的にそういう点を注意して、開放性結核患者というような人はそういうものに当らないようにやってもらうように指導いたしております。それから、できるだけマスク等を使用するというようなことを指導しているわけでございます。  それから、リンパ性体質の問題は、これは、予防接種心得に記載してございますが、予防接種を実施いたします際には、予防接種種類によりましては、相当反応の出るものもございますので、特に事前健康診断注意して行うように、心臓疾患あるいはじん臓疾患というような疾患を持っておるものに対しては、接種を猶予して、延期するようにというような措置を講じておるのでございます。接種によりましてときに事故を起しましたものをよく調べてみますと、事前健康診断した際に、なかなかそういう特殊な疾患を見つけにくい。それで、特殊な例で、解剖なんかをいたしました際に、解剖の結果、その人が胸腺リンパ性体質の持主であったというようなことがわかったというようなことがございます。私ども予防接種をいたします際には、事前にできるだけ健康診断注意深くやるように指導いたしておりますが、この胸腺リンパ性体質というものがなかなか発見のしにくいものでございますので、そういう不幸な例があったのでございますが、できるだけリンパ性体質の人に注射をいたしますと事故が起りやすいということは、これは、その衝に当る医師に十分注意いたしておりますし、医師も、リンパ性体質の人については、特に気をつけなければならぬということを承知いたしておりますので、この胸腺リンパ性体質のものの認定ということは、なかなか医学的に申しまして、むずかしいことではございますが、特に注意を払うように指導いたしておるわけでございます。  それから、製造につきましては、これは現在薬事法に基きまして、こういう細菌製剤製造の際の監視、さらにでき上りました製品に対する国家検定ということをいたしておるわけでございます。府県庁に駐在いたしております薬事監視員製造の際に立会うというようなことをして、この監視をするような制度を設けているわけでございます。後ほど申し上げます、先ほど御指摘のございました京都事件につきましては、その薬事監視のやり方というようなことについて、いろいろ疑義を持たれたというような点もあるのでございまして、そういうことから考えて、特に薬事監視員というものの監視の仕方ということについて、手落ちのないようにしているわけでございます。  それから、消毒につきましては、先ほど申し上げましたように、予防接種心得に記載してございまして、接種いたします場所の、皮膚の消毒、あるいは接種に用います注射器注射針消毒というようなことについての規定をいたしているわけでございますが、終戦直後二、三年の間、非常にいろいろな混乱がまだ治まりきらないというような状態がございましたときに、一々注射器をかえてやらなければならないというようなときに、注射器をかえなかったり、また、一本々々針の消毒をやるという際に、その針の消毒アルコール綿等によっての消毒を十分にしなかったというようなことで、その局所に化膿を起したというようなこともあったのでございまして、そういうことからかんがみまして、注射器あるいは注射針消毒には特に気をつけるようにということを指導いたしておりますので、最近においては、そういう事故は起らないようになっているわけでございます。  それから、製造の際に、京都事件のように、接種液そのもの製造手落ちがあって事故を起したといったものにつきましては、これは、刑事事件として取扱いをしております。製薬業者に対しては、刑事上の刑罰が加えられているわけでございます。もちろん行政上の措置もとっているわけでございますが、刑事上あるいは行政上、両方ともそういう不注意によって事故を起したというものに対しましては、しかるべき処罰を課しているわけでございます。  それから京都事件が、先ほど御指摘になりましたように、予防接種に伴います最も大きな事故でございます。これはまことに遺憾なことでございましたが、ジフテリア予防接種液を作ります際には、ジフテリア菌から製造されました毒素をホルマリンで中和して、そうして無毒にして、それと接種液として使うのでございますが、その製造過程に、幾つかありますびんを分けてやりました際に、その一つの大きなびんに、製造者の方でホルマリンを入れるのを落した。これはちょっと考えられない事故でございましたけれども、いろいろ調査いたしました結果、それが判明したのでございますが、そういうことがございましたので、その大きなびんから小分けされましたものを使って接種いたしました子供さんたちに、こういうふうなことにお気の毒な事故を起したのでございまして、私ども予防接種を取り扱っているものとして、非常に申しわけのない事故であったのでございます。それにもかんがみまして、特にその後におきましては、製造の際の監視状況あるいは検定でそれを見つけ出すことができるようにというような、検定の方法をも変えるというようなことで、そういうことが二度と起らないようにというような措置を講じているわけでございます。  それから、御指摘のございました、いろいろな事故に対する慰謝というようなことが非常に長くかかったではないかというようなお話でございますが、これはもちろん、そういう事故によって病気にかかられた人に対しまする治療ということについては、たとば、宮城県における百日ぜき予助接種後の結核性疾患発生というようなことにつきまして、当時非常にストマイが入手しにくい時期でございましたが、特別に駐留軍からの手配によって、それを特配して治療に当らせるというようなことで、治療そのものについては、政府当局としても、できるだけの手を尽しておったのでございますが、百日ぜき予防接種、それから、兵庫県におきまする事故というのは、いわゆる法ができます、あるいは法ができておりましても、それが施行に移される前の問題でございましたので、果してこれを国家賠償とするかどうかというようなことで、長年そういう立場からいろいろ問題が起ってもまれておったのでございます。ところが、一番最後の岡山県の問題は、二十六年に起りましたが、これは、予防接種法施行になりましてからの問題でございますので、比較的問題の解決も早く参りました。それで、岡山県のこの事故に対して、国並びに県あるいは町がその見舞金を出すというようなことをやりましたので、それに伴って、さかのぼって、宮城県、それから兵庫県の問題が蒸し返されて起って参りましたので、そういうふうに長くかかったのでございまして、最初は、賠償というようなことは、地元ではあまり考えておられませんでした。一時は国家賠償ということを考えて、宮城県では裁判まで起されたのでございますが、裁判で争うか、あるいはそういう見舞金でやるかというようなことで、いろいろ長くかかっておりまして、そこへ岡山県の例が出て参りましたので、割合その後早く話がついたのでございまして、初めから見舞金を出すか出さないかという問題が相互考え方によってはっきりせず、少し食い違いがございましたために、こういうふうに長くかかったのでございまして、宮城県、それから兵庫県というのは特殊な例でございまして、十年間もかかったというわけでございます。  あるいは説明が不十分だったかと思いますが、そういうわけで長くかかったわけでございます。以上、お尋ねがございました点につきまして、簡単でございますが、お答え申し上げた次第であります。
  5. 中山福藏

    中山福藏君 第一の問題ですが、この参考資料は、顕著なる場合における四つの例を当局としてお出しになったと思うのです。この四つのうち二つまで、施術者肺結核であったということが出ておりますので、だから、この施術者適格審査というものを厳重にやっていただかなければ、結核の場合は、マスクを当てて医者が施術するというような簡単なことでは、私はどんなものかと思うのですね。もちろん今日、日本の医術というものは、世界に遜色のない優秀なものであるということを聞いておりますから、お医者さん方を私は相当信頼しているのですけれども、がんぜない子供に対して多量な接種を施すというような場合におけるところの施術者は、もう少し、全然そういう伝染病保菌者でないという、完全無欠なお医者さんを採用していただかなければ、伝染する病気は持っておるけれども相当の医学的な予防措置さえ講じたらいいのじゃないかというようななまぬるいことでは、きわめて私は深憂にたえないものだと思うのですが、その点どうでしょうかね。
  6. 山口正義

    政府委員山口正義君) 御指摘の点、ごもっともでございますが、まあ行政指導と申しますか、そういうものによって、接種にたずさわる医師を、開放性結核患者を全部排除するというようなことをやるべきではないかという御意見かと思うのでございますが、私どもは、接種に当る当事者が医師であるということから、それを信頼して、当然自分がどんどん結核菌を出しているというような人は、子供に接すること自体が、これは学校先生もみな同じことになると思うのでございますが、子供に接すること自体注意して避けてもらわなければならないというふうに考えているわけでございます。マスクを用いろということは、決して結核性のことだけを考えているわけではございません。たとえば、かりにかぜでも引いておりますというようなときでも、病毒をまき散らす心配がございますので、特にそういう注意をさせるようにしているわけでございますが、現在結核性医師予防接種に従事してはならないというところまで、禁止命令まではあまり強く出していないわけでございます。これは、もっぱらその衝に当る医師自覚と申しますか、医師考え自体にまかして、自主的に考えてもらいたいというふうに考えているわけでございます。その兵庫県の道場村の問題あるいは宮城県の岩ケ崎事件につきましても、いろいろ原因考えられるのでありますが、あと考えてみますと、医師結核性患者であったということがございますので、その後は府県注意をして、そういう事故もあったから、特に注意してほしいということは、会議の席その他で指示はいたしておるのでございますが、絶対に禁止するというところまでは、現在まだ指示をしていないのでございます。
  7. 中山福藏

    中山福藏君 ちょっと堀木大臣お尋ねいたしたいのですが、今の山口局長のお答えですが、あんな微温的なことで……たくさんの児童を預かっている学校で、接種が施されるだろうと思うのでありますが、これは、普通の場合と違って、相互に自主的に、これに関心を持って、予防措置を講ずるということはけっこうですが、これは、死んでしまった者は迷惑しごくです。六十八名も死んだということはね。これは、何かそこにお考えは起りませんか。堀木大阪一つ確かめておきますがね。
  8. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今、政府委員との御質疑を拝聴しながら考えておったのですが、むろん、予防接種をいたしますときに、施術者医者自身が、それらについて万全の処置をすることは当然のことでなかろうかと、それが自主的にまかされているから、こういう心配が起る、事実が起るというふうなことがありますれば、これは、われわれとしても十分考えなければならぬ問題であります。しかし、今の問題、いろいろ、たとえば、結核だけに例をとりましても、開放性の非常に危険な場合と、全然そうでない場合とがあるだろうというふうなことも考えられるのでありますが、今後御心配の点、予防接種と従来の事故、ことに医師適格性の問題、接種者体質の問題、消毒の問題――まあ消毒の問題は、私は最近はほとんどないのではなかろうかと思っておりますが、それから、薬品製造業者の問題、また、万が一起りましたときの賠償慰謝等の問題、十分今後あやまちなきを期するように処置いたしたいと、こう考えております。
  9. 木下友敬

    木下友敬君 これは、もうだいぶ前のことですから、言うても帰らぬことですが、予防接種に当った開放性のお医者さんというのは、これは、どういう種類のお医者さんですか。どこかへお勤めになっておられるのですか。開業しておられる方ですか。
  10. 山口正義

    政府委員山口正義君) 宮城県の岩ケ崎のも、それから、兵庫県の道場村のも、当時開業しておられたお医者さんを嘱託いたしまして、そうして接種に当っていただいた、そういうふうに承知しております。
  11. 木下友敬

    木下友敬君 医師治療するときは、患者と非常に近いところにおって向き合ってやるのです。患者者が、ひどい感染源を持っておる患者であれば、医者の方が危険であるし、医者がそういう病気を持っておれば、学校における先生病気を持っておる以上に、非常に近いから危険である。ですから、これは、業者が取り締られると同じように、医者自体も、たくさんの人に面接するのですから、ほんとうは、これは医師自体健康状態というものを調べてもらわなければいかぬ。ところが、結核におきましても、ガンにおきましても、これは、症状がないのが非常に多い。お医者さんといえども、胃ガンがすでに手術不可能になるほど大きくなっているのを気づかない場合さえときどきありますし、結核も、空洞ができておっても知らない医師が、医師自体にあるのです。これはやはり、客観的な立場からこれを調べるということでなければ、施術者の自主的な、良心的な反省に待って、こういうあやまちの起らぬように努力すると言ったって、それは空文だと思います、そういうことは。だから、保健所のお医者さん方を主としてこういうことには使う。そしてそういう方々の体格検査を十分した上でそういうところに使うということを確立すると同時に、開業しているお医者さんを使う場合にも使わない場合にも、こういう接種のときだけじゃなくても、ふだんでも、たくさんの患者と毎日応対しておるのであるから、その健康状態というものは、やはり保証されていなければならぬというふうに思うのです。何かそれについて腹案はありませんか。
  12. 山口正義

    政府委員山口正義君) 予防接種保健所医者でやらすべきではないかという木下先生の御指摘でございますが、まあいろんな問題を御審議いただきます際にたびたびお話が出ますように、保健所医師がなかなか充足されておりません実情としましては、保健所としては、その管下の開業の医師会先生方にいろんな面で御援助を願っておる現状でございます。この予防接種を実施いたします際にも、通例管内医師会先生方にお願いして、御援助をしていただいておるというのが実情でございまして、保健所だけでこの予防接種、いろんな種類予防接種をするということは、なかなか困難ではないかというふうに考えますので、現状は、今後当分の間は、やはり医師会の力を借りてしなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。その際に、私ども、こういう事故がございましたので、通牒を出して、予防接種に際して結核を感染せしめた例もあるというような、疑いのあった例もあるというようなことを例示して、通牒を出しておるわけでございますが、先ほど木下先生の御指摘では、医者の自主的な自覚に待つということでなしに、むしろ、行政当局として、そういう衝に当っていただく先生については、あらかじめ健康診断をすべきではないかという御意見だと思うのでございます。これは、受けられる方の先生方のお気持もあるかと思いますが、そういう点につきましては、最近におきましては、そういう事故は幸いにしてございませんが、今後お手伝いをしていただく方に対して、健康診断をどういうふうにして実施していくかということについては、具体的によく研究してみたいと思います。
  13. 木下友敬

    木下友敬君 相手が非常に若年者であった場合を考えましても、注射のときの器具が汚染されていた程度で死亡者まで出したということは、施術者がよっぽど……きょうあすに死ぬというような重症の患者、そうして非常にたくさんの濃厚な結核菌を出すような場合でも想定しないと、わずかの結核菌がぽっと出るくらいので汚染された器具を使って死亡まで至らせるということは、普通の常識では考えにくいですよ。たとえば、開業医として活動能力がなくて、自分の家でこたつに入っておるようなひまなお医者さんを特に引っぱり出してきてお願いしたというようなことで想定しないと、そういうひどい感染源を持った、それほど、人を殺すほどのばい菌で汚染されるような、そういう感染源の者は注射にも行けないだろうと思うのですね。やっぱり私は、こういう予防接種などにどういう人を動員するかということについて、ただ動員の費用がないというようなことで、間に合わせ的な、何人予防接種をしたのだというような、数だけ合せるというようなことでなくて、相当費用も投じて行うような考え方を持ってこなければいかぬと思う。それから、厚生大臣自体は、保健所のお医者さんが非常に少いということは、この間も私、指摘してお願いもし、意見も述べておきましたが、もう少しああいう予算の獲得については、私は本気でなくちゃいかぬと思う。今、保健所医者は、全国的に非常に不足しておるが、その予算も十分取りきらないような状態で、そうしてこういう予防接種とか何とかのときも一般の開業医、しかも、開業医の中の最も危険な状態にあるような、病人の開業医をかり出さなければ予防接種ができないような厚生行政に甘んじていられるというのは、私は非常に遺憾です。たとえ五人でも十人でも死亡者を出したというのは、これは大へんな責任であるから、こういうような法案が出ますのを機会に、もう一ぺん私、ほんとうに力を入れて、保健所の拡充とかいうようなことに力を入れるべきであると思う。厚生大臣どうですか。大臣の御意見を聞いておきたいと思います。
  14. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 保健所医師の充足問題につきましては、前に御答弁申し上げました通り、この点につきまして一そうの努力をいたしたいということは、申し上げたつもりでございます。ただ、問題は、予算だけでなしに、この充足についてのいろいろな問題がある。充足しやすい諸条件を整えなければならぬことは、木下さんもよく御承知の通りなんでありまして、これらについても努力いたしたい。それから、予防接種の関係でも、私は、いかに充足いたしましても、やはり今後は、相当他の医師援助を受けたい、また受けなければ実際できないだろうということを考えますので、今、それらの予防接種に当る医者の選定につきましては、今後十分注意いたしたいと思うのであります。ここにあけました例も、当時の社会情勢上相当無理があったために起ったんじゃなかろうかという気はいたしますが、今後は、予防接種の上でこの種の事故が絶対に起らないように、各種の点について配慮いたして参りたい、こう考えておるような次第でございます。
  15. 木下友敬

    木下友敬君 関連して質問いたしますが、保健所医師だけでは間に合わないし、開業医その他にも協力を求めてそういうことをやっていきたいという御意見のようですが、近来の、厚生大臣とそういう医師の団体である医師会との間には、なかなかおもしろくないような空気があるようですが、これについて大臣は、もっと大乗的見地から、ああいう協力団体に十分の協力を得るような努力をすべきではないかと思いますが、この点について、大臣の御意見お尋ねします。
  16. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) まあ巷間伝えられるほど、そんなに間隔があるわけではございせん。と同時に、ともに国民の健康のために、お互いが寄与していく立場にあるのでありまするから、これらの点につきまして私は、十分協力できるものである、こういうふうに考えております。
  17. 木下友敬

    木下友敬君 先般も、新聞の報道によりますと、日本医師会は指令を出して、二百の結核検診班を出して、厚生省の結核の検診に協力するということを指令を出しておったようでございますから、ああいうようなおもしろくないような確執の間においても、日本医師会としては、協力態勢をくずしているとは思いません。医師の良識において、国民の保健衛生についてはほんとうに協力しつつあると思いますが、どうもしかしながら、厚生省対日本医師会という関係においては、私どもは非常に不安を感じておる。そういう状態において、同じ協力するといっても、また、協力を求めるというても、十分な効果が上らぬのじゃないかと思って、私は、ただ目先だけの協力というのじゃなくて、この間も問題になりました十五人委員会とか、ああいう問題につきましても、やらぬのだという一点張りではなくて、やはり窓口をあけるという意味ででも努力して、たとえば診療所問題につきましても、すみやかに解決するような方法を考えるべきであると思う。大臣の任期中にこれは起った最近の状態であるし、解散になろうとなるまいと、大臣は、これを選挙のあとに回すのだということでなくて、すみやかにこれを解決して、そうして、日本の医療衛生行政に不安のないような状態に持っていく責任が現在あると思う。これを選挙などと結びつけて、選挙のあとにこの問題には触れるということが新聞にも出ておるようですが、そうでなくて、何か早く解決するというような積極的な、面目とか、そういうようなことをもう一擲してしまって、折り合っていくというようなことをお考えになりませんか。
  18. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 私は、選挙があろうとなかろうと、そういうことに一向関係いたしません。国民の大事な医療問題を解決いたしますのでありまするから、総選挙がいつ行われようが、それによって私は問題を遷延すべきではないというふうに考えております。ただ、木下さんのおっしゃるように、十五人委員会ができたらすぐ円満にいくのかという問題が、一番私は問題がある。だから、十五人委員会を設ければすぐ円満にいくんでしたら、私はいつでも作ります。しかしながら、従来の経験から、十五人委員会という、いわゆるそういう種のものを作るには、それがいい結果を及ぼすだけのお互いの基礎工作を誠意をもってやらなくちゃいけない。こういうふうな考え方であり、ことに、ただ形だけ作りまして従来うまくいっておりませんから、その失敗にこりて、なるべくできた以上はりっぱなものに、協力関係が円満にいきますように作りたい、こういう念願にすぎないのであります。でありまするから形式の問題よりは、その地盤を作ることが大切であるというふうに私は考えております。事柄が円満にいきますれば、これらの問題についても、先ほど申し上げましたように、お互いの責任から考えまして、お互いに決して協力できないはずはない。ただいたずらに相手を誹謗していて、迷惑するのは国民でありまするから、私は、そういうつもりは初めから持っておりません。ことに私自身は、一日としてその席にある以上は、これらの問題の解決に努力はいたすつもりでおります。
  19. 木下友敬

    木下友敬君 話はどうも、この問題を少し離れましたから、いつまでもこの問題をしはしませんが、事のついでですから、もう一言だけ言わしてもらいますが、もし大臣が、今急に十五人委員会を作ることにちゅうちょしておられる、基礎工作をしなければああいうものを作ってもだめだというお考えだと、今のところ、どういう糸口で、今の日本医師会とのおもしろくない関係を緩和していく、あるいは円滑に進むようなふうに話を進めていく、その方法がどこにありますか。ただ、向うの方から何かいい方法を考えてくるまでは、厚生省としてはきぜんとして形をくずさない、たとえば労働争議における資本家側が、絶対に言うことをきかない、お前たちの言うことはきかない、組合の足並みが乱れてくるのを待っているというような態度でいくのか。そうでなくて、何とかそこに和解の方法に積極的に、大臣御自身でなくても、あるいは部内の人でも話をして、円満に持っていくというようなことについて、何かの御努力をしておられるかどうか。あるいはされる考えがあるかどうか。これだけ一つお答えを願います。
  20. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) まあ木下委員のせっかくの御質問でございますが、そんなに私ども、よそでお騒ぎになるほど、私の方自身が特に何か考えておるつもりはありません。当然の責務は、いかなる場合でも尽さなきゃならない。だから、その点について、私は終始一貫同じであると思っておるのであります。ただ方法論で、結果がいろいろとうまくいくような結果を持ちたいという念願にすぎないのであります。今お前、どういうふうな方法を考えておるかとおっしゃいますが、これはもう実際のところ、最近の情勢から、私は、非常にお互いに反省心は十分あるのじゃなかろうかというふうに考えておるのであります。それらの点をにらみ合せつつ、うまく事を運んでいくのが私の責任であろう、こういうふうに考えておりますので、そんなに、この点はいいとか悪いとか、そういう形式的なものじゃないのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。なお、御趣旨の点は十分わかりますので、私ども自身は、この問題については、誠心誠意解決に当りたいという終始一貫の気持で参りたいものである。ときにいろいろな波紋、あるいはそれが世上伝えられるようなことが新聞記事になりましても、そういうことに一向わずらわされずに参りたい、こういうふうに考えております。
  21. 木下友敬

    木下友敬君 世上伝えられるような大ごとではないというような考えのようですが、そういう御意見でしたが、実際はそうではない。もし診療担当者の協力が得られないというような状態が、万一ほんとうに今にでもだんだんこれがつのってきたなら、それは大へんなことなんです。あいつら幾ら騒いだって、こっちの方では大ごととは思っていないのだというようなことでは、これは、案外大へんなことに進展すると私は思うのです。そういうことがはらまれておると私は思うのです。それが診療担当者である医師の団体のよしあしは別として、相手が間違っておるとか間違っていないとかいうことは別としても、事実協力態勢が行われないというような状態が今以上進んでいったら、これは大へんと思うのですから、どうか、自分たちはそう大ごととは思っていないのだという、非常に大きなかまえというものをいつまでも堅持しないで、一つ柔和な気持になって、事の解決に向って進むように御努力のあることを希望をして、私の質問を終ります。
  22. 中山福藏

    中山福藏君 お尋ねいたしますが、このリンパ腺体質は、これを発見するのに非常に困難であるというお話でございまして、不可抗力だという考え方、死んだ者は死に損んだと、こういうことになるのですね。そこでお尋ねしたいのは、この日本の学校児童、まあ少くとも中学、小学校だけでもいいですが、リンパ腺体質というのは、統計上どういうふうになっておりますか。それはお調べになっておりますか、厚生省では。比率はどうなっておりますか。それを研究しておおきにならないと、リンパ腺体質を発見することはできないということで、それに接種をしておったらば、そのつど相当の人が死ななければならないということになる。これは、政府としては、当然その点について重大なる関心を持って、あらかじめ十分な準備をしておかかりにならぬと、そういう簡単なことで死んでしまっては大へんなことだと思う。
  23. 山口正義

    政府委員山口正義君) 学童の中、あるいは日本の子供の中で、こういう胸腺リンパ体質の者が何パーセントあるかという数字につきましては、私今、申しわけございませんが、はっきりした調査はないのではないかというふうに考えます。ただ、予防接種法の心得の中に、そういう胸腺リンパ体質の発見がなかなかむずかしい、普通の心臓疾患じん臓疾患に比較して、比較的むずかしいものであるということは申し上げたのでございますが、たとえば、ジフテリア予防接種心得の中には、「脚気、心臓または腎臓の疾患相当の疾病のある者及び胸腺淋巴体質疑いのある者に対しては予防接種を行なってはならない」というふうに規定してございますが、これは、医学的な、非常に専門的な問題になるかと序じますが、胸腺リンパ体質の発見の方法としましては、リンパ腺がはれておる、あるいは非常に虚弱な体質を持っておる、過去において何か注射でも受けたときに、非常にショックでもあった。そういうふうないろいろな既往症とか、それからその子供体質、体格等を調べて、胸腺リンパ体質疑いを持つということになるわけでございまして、ただ一般の疾患に比べて非常に診断が、発見がむずかしいということを申し上げたわけでございます。胸腺リンパ体質はもっぱら不可抗力だから、どうにもしようがないのだ、だから、そういうふうな者にあまり注射をしていないのだというような意味ではございません。いろいろな接種種類によってみな違いますけれども、胸腺リンパ体質については最も注意するようにということを、私の方で指示いたしておるわけでございますが、注射の衝に当っていただくお医者さんは、そういう点、注意しながらやっていただいておるわけでございます。それでも、発見され得なかった方に不幸なことが起ったということでございます。
  24. 中山福藏

    中山福藏君 発見することは非常にまあ至難だと、これは、現在のお医者さん方の診断の程度では、それが不能な場合もあり得るでしょう。しかし、普通われわれの肉眼で見ても、これはリンパ腺体質だと、しろうとが見てもわかる人がありますね。そういう点について、厚生行政の一環として、なぜ統計というものがとれていないか、これは非常な私は手落ちだと思う。これは私、ずぶのしろうとでも、全く不行き届きだと、こういう感じがします。私は、そのためにこういう資料を求めて、反省を促したわけであります。この点、大臣どうですか、将来統計でもおとりになるつもりはありますか。
  25. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 今御質問の点は、われわれとして十分今後注意していくべき事柄であるというふうに考えますので、今後につきまして、お説により、一そうのそれらについて注意をいたし、それに伴う行政的な処置をいたして参りたいと考えております。
  26. 中山福藏

    中山福藏君 おざなりの答弁では困るのですよ。実際その実行していただく御答弁をいただいて私は、あなたが怠けられるということは言うのじゃありませんけれども、多くの答弁はおざなりの答弁で、何年かたって、速記録を一ぺん繰り返して見ようじゃないかというような場合が相当起り得るのです。ですから私は、こういう人の生命に関する問題は、これはほんとうに、基本的人権の問題だと思うのですが、ことに厚生行政というのは、命と幸福を追及する問題に関連しておる、これは重大な問題でございますからね。こういう過去の事実にかんがみて、一つ十分やっていただかなきゃならぬと思うのです。  最後に、もう一つお尋ねしておきますが、この製薬業者手落ちというものに対しては、司法措置行政措置とが、両面的な処罰があるはずだが、今日までとられた措置は、どういうふうな実例があるのですか。一つ実際の場合を摘示して、お示しを願いたいと思います。
  27. 山口正義

    政府委員山口正義君) 予防接種についての製造業者手落ちと申しますのは、この例にございます、京都ジフテリア事件が、私の承知いたしておりますのでは、一番顕著なものであり、それからほかに、予防接種液製造が悪かったために事故を起したというのは、私記憶がないのでございますが、この京都事件につきましては、もちろん、行政措置としては、そういうものにつきまして業務の停止をやったわけでございますが、その期間は、私、今ちょっとはっきりおぼえておりませんが、監視員と、それから製薬業者両方が起訴されておりますが、監視員は、裁判の結果無罪になりました。それから、製薬業者は有罪になったのでございますが、その刑の量につきましては、ちょっと私、正確なものを今記憶いたしておりませんので、これは、はっきり調べまして、御報告申し上げたいと思います。行政的な業務停止の期間、それから刑法上の刑の量につきましては、ただいまお答え申し上げるのはお許しいただいて、後ほど正確なことを申し上げたいと思います。
  28. 中山福藏

    中山福藏君 それから慰謝料の額、これはどれくらい今までお払いになっておるか。六十八人もいろんな人が死んだり、一人死んだり、また二人死んだ場合もある。国及び県においてこれを負担したということが現われておるのですが、それはどのくらいの額になっておるか、一人死亡しましたとき。
  29. 山口正義

    政府委員山口正義君) これは、年次によりましていろいろ貨幣価値が違うものでございますから、変ってくると思うのでございますが、京都ジフテリア事件の際は一人十万円、当時の金額でございますが、これは、事件後間もなく払われております。それから、昭和三十一年に支払われました宮城県の事件、あるいは昨年の兵庫県に対して支払われましたのは、平均一人十万円弱でございます。もちろんこれは、なくなった方、それから、あとの疾病の軽重によって差がつけられているわけでございますが、一応――こういうことはあってはいけないのでございますけれども、その際に、大蔵省と、財政当局といろいろ折衝いたしました際に、一応のまあ基準と申しますか、目安を作ったのでございますが、なくなられた場合は、未成年者に対しましては二十万円以内、成年に達したものには四十万円以内というような一応の目安を作って、全体の額をきめて、そうしてそのなくなった方あるいは症状の軽重に従って、見舞金を差し上げておる、そういうふうにしておるわけでございます。
  30. 中山福藏

    中山福藏君 最後に私、厚生大臣一つお尋ねしておきますが、森永ミルク事件というのがこの前起りまして、この社労委員会でもいろいろ問題になったわけですが、私は、この食品、いわゆる衛生食品ですね、あるいはこういう接種薬の製造業者、こういうものに対しては、一罰百戒でもって、そういう趣旨によって、厳重にこれを処罰するということが最も必要だと思うのですが、いまのような、下っ端の事務の担当者だけが起訴されたというようななまぬるいものではいかんと、こういうことは、全然製造を禁止するぐらいの決意をもって、厚生当局が監督指導の任に当るということにならなければ、これは全く何でございますよ、一番上役の連中は左うちわで、ああ死んだかということで、涼しい顔をしておるものが相当ある。こういう点について、最後に、決意を一つ伺っておきたい。
  31. 堀木鎌三

    国務大臣堀木鎌三君) 中山さん、私、議会の答弁をいいかげんにした覚えはございませんし、むしろある意味においては、私には、まじめに答弁し過ぎるほどお前は答弁しておると言われるのがほんとうの事実ではなかろうか。従いまして、先ほどからの御質疑応答についても、私は、自分行政、まことに申しわけないが、一生懸命これらの問題について努力するために、注意書きをとっておるわけで、なお今、食品関係、薬品製造業関係に対して、従来の厚生行政の方法が緩に過ぎたのじゃないかというふうな点につきましては、私、厚生大臣になりましてからも、その点については一そう、決して厳罰主義そのものが全部だとは思いませんが、しかし、ともかくも、従来よりはやかましく、これらの点について、今おっしゃいましたような行政罰及び刑事罰等につきましても、十分励行いたしますという方向に指示をいたして、私自身も、直接目を通して見ているような次第でございます。なお今後とも一そう、その方向については注意いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  32. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ほかに質疑ございませんか。――他に御質問もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は、討論中にお述べを願います。  他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、予防接種法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  35. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     勝俣  稔  横山 フク     木島 虎藏  西岡 ハル     寺本 広作  山下 義信     山本 經勝  片岡 文重     木下 友敬  松澤 靖介     中山 福藏     ―――――――――――――
  37. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、衛生検査技師法案を議題といたします。質疑願います。
  38. 片岡文重

    ○片岡文重君 提案者にお尋ねをしますが、前回お尋ねをしました際に、明確なる御答弁を伺うことができませんでしたので、はなはだ残念でしたが、この二条の「医師の指導監督」という問題について、その後提案者の方々並びに厚生省等において意見の一致をみられるなり、あるいは見解を統一されるなりされたかどうか、もしされているならば、その点に関して御説明を伺いたいと思うのです。その御説明によって、なお質疑をしなければならないのでしたらお伺いしたいし、その御説明で了解できるものならば、この点については了承いたしたいと思うのです。
  39. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) この「医師の指導監督の下に」と、ここに明記しております範囲は、官公立の病院または研究所あるいは保健所等におきましては、その病院の長たる医師がその指導監督をするという意味でございます。なお、ときによりましては、院長のほかに、当該施設の医師の指導監督を受けるということも含めているわけでございます。その他民間で設置いたしております衛生検査所におきましては、その衛生検査所自体が委嘱いたしております医師でございましたらば、その医師の指導監督ということでございまして、またときには、検査を依頼いたしました医師がこの検査の内容につきまして指導監督をいたすことも含まれております。
  40. 片岡文重

    ○片岡文重君 前回の委員会における御説明から見ると、大へんはっきりしてきたように思いますが、そうしますと、二点だけをお伺いしたいのですが、第一点は、この保健所なり病院なりあるいは検査所なりにおけるその長の指導監督ということになりますと、この「指導監督」の中には、検査技師としての当然の職責上取り行うべき業務に対する指導とそれから監督ということになると思うのですが、これは、いわば経営者もしくは管理者が、その部下なり自分の管轄下にある部下に対する行政上の指導監督、こういうものとの区別はどういうふうにつけられるのか。また、業務本来の指導監督とは、どの程度のことをさしておられるのか、これが第一点です。  それから、町で独立して検査所を開設しておられる場合には、開設しようとする場合には、しからば医師の指導監督というものが不可欠の条件であるのかどうか。もし不可欠の条件だとするならば、衛生検査技師のこの検定を取られても、自分が信頼して指導監督を受くべき医師がなかった場合、あるいは近くに得られなかった場合には、その検査所というものを設置することができないことに私はなってくると思うが、この場合に、適当な医師が求められない場合には、衛生検査技師の資格を取っておる、つまり国家検定を得られた検査技師が、検査所を独立して開設することはできないのかどうか。この二点をお伺いしたいと思います。
  41. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 官公立病院または研究所あるいは保健所におきまする長たる医師の監督の範囲は、御承知のように、一つには、行政的な立場における監督指導の立場がございますが、この衛生検査技師に対しまする場合は、そのほかに、業務の内容についても指導監督する、こういうことでございます。指導監督のその範囲についてはいかなるものかというお尋ねがございましたが、それにつきましては、衛生検査技師の業務の内容、つまりいろいろな検査の方法その他につきましても監督をする、こういうことでございます。  また、民間で研究所を持っておる者が監督の医師を持たなかった場合には一体どうなるのか。これは、民間のそういう衛生検査所というものはどういう運営になるのか、こういうお尋ねでございましたが、これにつきましては、ともかくこの法律の成立後は、いずれの機関におきましても、医師の監督がなければ衛生検査としての業務を業としてなすことはできないという立場に相なりまするので、かような場合におきましても、監督し得る立場医師というものが必要になって参ります。この点につきましては、まだ法律の不備な点がございまして、民間衛生所に対しまするその内容を規定いたしまする法律は、ただいまのところございませんので、それは、実は今後の問題に待たなければならない問題であろうかと思っております。
  42. 片岡文重

    ○片岡文重君 最初の一点ですが、検査技師の当然の業務に対する指導監督という場合に、現に検査技師がその検査室に入って薬品を使い、あるいは器具を使って、その検査を行うそばに立って、この技術的な指導を行うというような場合には、私は、指示なりあるいは指導なりということが言い得ると思うのです。またさらに、自分は所長室なり院長室におって、この検査は、こういう方法でやってくれ、この検査はこういう方法でやれということで、普遍的なといいますか、一般的なものについてはあらかじめ指示が与えられるでありましょうし、特定なものについても、院長室におって、あるいはその医師の勤務する部屋におって、直接検査技師のそばにくっついておらないでも、これは、指示も指導も私はできると思う。ところが、監督ということになってくると、これはやはり、そばについておってやらなければ、業務上の一つの技術に対する監督ということになってくれば、遠く離れてやるということは、おそらく私はできないのじゃなかろうか。なお、この監督というのは、そういうところまで含むのかどうか。もしそこまで含むなら、これは、検査技師を置かぬでも、自分がやった方が早いということになってくるのですね。そういうところまで私は含まぬのではなかろうか。少くとも指示なり指導の範囲で、あとは結局行政上の管理の面におけるところの、行政面の意味ではなかろうかと思うのですが、その点の区別は、どういうことになっておりますか。
  43. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 片岡先生指摘の通りでございまして、私ども、この文面におきましての意味を、「指導監督の下に」という表現をいたしましたが、考えておりまする内容は、指導と最終的な責任を持つと、こういう意味合いでございまして、仕事の現場に最初から終りまでつき切りでそれを監視する、かような意味ではございません。
  44. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういうことになると、私は、監督という字は少し強過ぎるのではなかろうかというふうに考えるわけです。ですから、この点について、指示なり指導なりの範囲の仕事は、監督的な立場にある医者によって行われる、ここにいういわゆる監督ということは、経営管理者の立場にあり、あるいは診断の責任の立場に置かれたところの医師がその面から監督をしていくということであって、行政的な面の内容である、こういうふうに理解してよろしいのかどうか。
  45. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 私どもも、ただいま片岡先生指摘の通りに考えておりまして、その考えのもとにこの表現をいたしたわけでございますが、あえて監督という言葉を入れましたのは、監督の立場にある医師の責任をはっきりする意味で、「指導監督」と、二つ言葉を重ねた方が一そう責任が明らかになるだろう、こういう意味合いで、いろいろな方の御意見を伺いまして、こういう表現にいたした次第でございます。
  46. 片岡文重

    ○片岡文重君 その次に、先ほどお伺いした第二点ですが、あくまでも医師の指導監督ということが不可欠の条件である。従って、本法の成立後においては、検査技師だけで独立開業をするということは不可能になってくる。こういう御説明のようでありましたが、そうなってくると、従来町で開業をして、独立して、自分の学識と技術とをもって誤まりなく業務を遂行し、衛生検査所なるものを経営してこられた諸君が、この法案の成立することによって、その誤まりなく遂行されてきた自分の営業といいますか、経営ができなくなってくる、こういう重大な場面に到達するわけでありますが、そのことについて、提案者としてはどういうふうにお考えになっておられるか。
  47. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) ただいま御指摘いただきました点は、非常に重大な点でございますが、御指摘のような問題も起って参りますので、それを防ぐ意味におきまして、また、保護する意味におきまして、早急にそういう民間の衛生検査所、研究所なりの設置に関しまする法律を必要とするということを、私たびたび申し上げたのでございます。そういう意味合いにおいて急いでいるわけでございますが、もう一つには、このただいま御審議いただいております衛生検査技師法なるものは、これは、業務立法ではございませんで、おもに官公立の研究所、病院あるいは保健所に御勤務いただいております方々の、つまりは身分法という意味においてこの法案の内容を考えている次第でございまするから、幾分か、それに触れ合う場面も、民間研究所の設立者及びそこに御勤務の方に出て参るかと思いますが、かような点につきましては、たびたび申し上げるように、これから考えて参る法律によってその部分は規定して参りたい、かように考えております。
  48. 片岡文重

    ○片岡文重君 業務禁止の法律であり、検査技師の業務を主体とした法律でありまするならば、これは、その資格条件として、あるいは現在町で独立開業しておる者が、その要求する技術なり知識水準なりが不足しておるということで廃止されるようなことになるならば、これはやむを得ないことだと思うのです。ところが、これは業務立法ではなくして、単に名称を与えるということだけであって、そういう名称を与えるということだけの法律のために、瑕瑾なく営業しており、経営を続けてこられた衛生検査技師が経営ができなくなる。ここに私は、やはり重大なことが一つあると思う。さらに、憲法で保障された職業の自由というものが、この身分法によって不当に拘束されることにもなってくるわけです。将来はともかくとして、今日まで続けてこられたものが廃止しなければならぬということになるのですから、将来の立法によってこれが救済されるという今の御説明ですが、もしそういうことであるならば、というよりも、むしろそれは、もちろん早急に一つやっていただかなければならぬ問題ですが、その間の経過措置として、当然行政措置として何らかの救済が私は考えられなければならぬと思う。この点について、厚生省としてはどういうふうにお考えになるのか、御意見を伺っておきたいと思います。
  49. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 厚生御当局から御説明いただくと思いますが、その前に、御理解いただきたい点は、ただいま民間で営業いたしておりまする研究所というものの研究の内容につきましては、すでにおおむね何らかの形で医師との関連がございまして、その医師の、まあ法律的な制約は受けておりませんが、やはり慣習上医師の監督あるいは相談というようなもとでその業務が営まれておる実際が多いのでございます。従いまして、このいわば身分法でございます衛生検査技師法ができましても、民間で開業しておりまする衛生研究所あるいはこれに類する業務の内容が制限を受ける、憲法で保障されておる人権の侵害を受けるというようなことはあり得ないと、かように考えられます。なお、完全な措置といたしまして、たびたび申し上げますように、この業務立法を考えている、こういうことでございます。
  50. 山口正義

    政府委員山口正義君) 前回の委員会においても、片岡先生の御質問に私お答え申し上げたのでございますが、現実の問題といたしましては、ただいま提案者の福田先生からお答えがございましたように、この衛生検査所の仕事をしておられる方は、どなたか医師の方と連絡があるというふうに考えるわけでございます。しかし、理論的に、どなたもそういう方はないのだということになりますと、この法の上から申しますと、やはり医師の指導監督を受けなければならぬということになります。行政的に、どうしてもどなたもおられないというような場合には、この衛生検査所の設置場所とか、担当者、業務内容等については、これは省令で規定いたしたいと存じますが、保健所に届出て、保健所を経由して、知事やあるいは政令市長に届出ていただきたいと存じますが、そういう際に、その所轄の保健所の所長なりあるいは医師の指導監督を受けられるようにしたい、そういうふうに考えております。
  51. 片岡文重

    ○片岡文重君 次に、この免許を受ける場合には、衛生検査技師試験というものが行われるわけでございますが、十五条に定められておりまする資格は、これからの問題として考えられますけれども、すでにこの法案の提出される今日以前において、この検査技師としての技術を習得し、学術を修習して、病院なり保健所なりあるいは検査所等において現実にこの業務に従事しておる者、それがこの十五条に規制しております資格を得ておらなかった場合、あるいは現に本法成立以前の状態考えて、この検査技師たらんとして技術並びに知識を修習しておる者、こういう者に対する経過措置としては、この附則において定められているようでありますけれども、これではなお不十分な面があるのじゃないか。特に二年以上の指導監督を必要とするというような面、それから、旧中等学校令によるつまり旧制中学校の卒業者あるいは新制高校の卒業者でない場合、こういう人たちが現に修習をしておるわけですが、これらの人々の救済措置について、どうお考えになっておられるのか。特に今日、アフター・ケアにおいてその修習を行なっている諸君もあるわけですが、この法律で、特に附則二項で、試験に関する特例としての経過措置を見ましても、これに、二年以上の医師の指導監督ということが必須の条件になっております。それで、さらに、アフター・ケアの今日の組織は、御承知のように一年間である、こういう点等を考えてみますると、この経過措置というものは、はなはだ欠格者を多く出して、経過措置としては、あまり条件を具備しておらぬのじゃないかというような感じもするのですが、この点について率直に一つ、提案者としての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  52. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 試験に関しまする資格及びこの法律のその試験の受験の場合の特例に関しましては、ここに経過措置におきまして述べてございますが、これだけでは、なお思いが足りないではないか、中学を卒業して衛生検査技師たるに必要なことを養成所において勉強しておられる方、また、アフター・ケアの人たちに対する思いやりが足りないではないか、こういう御指摘を受けましたが、私ども、この法案を検討いたしておりますときには、さような意見を伺っておりませんでしたので、そういう点につきまして、まことに思いの足らざる点があったことを遺憾に思います。従いまして、今日この委員会におきましてでも、さような点につきましての御趣旨がございますれば、私ども、その御趣旨に従うことに決してやぶさかでございません。
  53. 片岡文重

    ○片岡文重君 きわめて率直な御意見の御表明でありましたので、これ以上、経過措置についての御質問は必要ないかと思いますが、さらに、ここでお伺いをしておきたいのは、たとえば、ここにアフター・ケアを出られて、すでに衛生検査技師として就職をしておる諸君が数多くあるようです。これを、今ここに私は、一例として清瀬の例を持っておりますが、これを見ますと――ちょっと厚生省も少し聞いておいてほしいのだが、これは厚生省に尋ねておりますから、アフター・ケアを出て、そして日本臨床病理学会が行なっておるところの検査技師の検定に合格をして、すでに職についておられる諸君の状況を見ますと、最初は、国立、公立等の病院なり療養所等に勤務されておる者が非常に多かったわけです。ところが、最近の情勢を見ると、ほとんど国立あるいは公立ではなくて、私立の病院なり療養所に就職をしておられる。これは、国立なり公立等において、結核を克服されたあとも、既往症のあることによって採用されないことになっておるのじゃなかろうか。そこで、縁故をたどるなり何なりして、私立病院に就職をするという結果に私はなってきたのではなかろうかと思うのであります。アフター・ケア等の使命からいきましても、こういうアフター・ケアで修習をされるような諸君の就職等については、十分厚生省としては私は考慮すべきであろうと思うのです。で、この検定の結果を見ましても、アフター・ケア出身の諸君の合格率は、きわめて優秀のように見られます。従って、就職後においても、相当やはり熱意を持ち、熱心な仕事ぶりが私は信ぜられると思う。こういう点から言っても、せっかくアフター・ケアにおいてこういう技術を修習させるのですから、これが検定を受け、あるいはその資格を得たならば、むしろ厚生省あたりは、経営の不安定な私立の病院なり療養所という所ではなくて、本人が私立を希望するならこれは別ですが、国立なり公立を希望しておるような場合には、むしろ、そういう方面に厚生省としてもあっせんをしてやるべきであるし、かりにこれらのアフター・ケアを出られた諸君が、将来の就職期間中において十分な仕事ができないような状態に立ち入ったような場合には、私立の機関においては、やはり身分の不安定というものがすぐに考えられることですから、そういうようなことも考慮に入れられて、就職並びに今後の保障については、一つ厚生省として十分私は配慮してやっていただきたい。この点について、厚生省はどういうふうにお考になられるか、御所見をこの際伺っておきたい。
  54. 山口正義

    政府委員山口正義君) 国立の施設に対する採用というようなことにつきましては、所管の上から申しますと、私の直接の所管でございませんで、あるいはその点で御不満かと存じますが、厚生省全体としましては、私はこれは、身体障害者、結核回復者という方々の就職ということについては、むしろ国の機関が率先して、そういう方々に職場を開放するという政策をとっていくべきではないかというふうに考えるわけでございます。公立のそういう機関等に対しましても、結核回復者の方々で、今後そういう資格と申しますか、この衛生検査技師という名称を使われる方が出て参りますという場合に、私どもは、やはり公立の機関に対して積極的にお世話をすべきである、そういうふうに考えております。
  55. 片岡文重

    ○片岡文重君 さらに、関連をしてお伺いしておきたいのですが、衛生検査所が地方に現在あるわけですが、この地方における衛生検査所というのは、たしか都道府県の条例に基いて設置されておるのであって、国からの補助もきわめて薄弱であり、ことに三十三年度からは、その補助も打ち切られたのではないかと思うのです。こういう状態のもとで、この衛生検査所――今は衛生研究所といっておりますね、この衛生研究所の目的とする円満な業務の遂行は、はなはだ困難ではないかと私は思うのですが、その困難な理由の中には、予算がというか、財政的な国の援護がはなはだ不十分であるということ、従ってまた、検査技師その他の技術者の配置というものが十分に行われ得ない。従って、目的とする業務が十分に行われない、こういうことになってくると思うのですが、この際、保健所等の設置にならって、地方の衛生研究所の設置法というようなものを制定をする御意思は、厚生省としてないのか、提案をされる御意思は今のところないのかどうか、お伺いしておきたい。
  56. 山口正義

    政府委員山口正義君) 地方衛生研究所という制度が、昭和二十三年に地方の衛生行政機構が確立されました際に、従来、細菌検査所あるいは衛生検査室というものを合併をして、一つの独立した機関とした方がいいということは、行政指導で当時通牒を――次官あるいは当時の三局長の連名通牒等で指呼して参ったわけでございます。それに対して国は、先ほど片岡先生から御指摘がございましたが、わずかずつではございましたが、最初三カ年間は営造物に対し、その後は内部設備の整備ということで、若干ずつの補助をやって参りました。地方財政としてなかなか予算の組みにくいようなものに対してこちらから援助するという、呼び水程度でございましたが、補助して参りました。三十三年度は、御指摘のように、その予算が計上されておりません。これは、単に地方の衛生研究所に対する一般的な補助というよりも、むしろ何か特殊な事業を通じての、国がいろいろ援助をした方がいいじゃないかというような考えで今後行った方がいいというような示唆もありまして、今後はそういう面に切りかえて参りたい。現実の一つの現われは、厚生省直接ではございませんが、科学技術庁から、放射能平和利用というようなことに伴っての、これは全部の地方衛生研究所ではございませんが、事業に対する補助をいたしておるわけでございます。今後は、そういう方向で育てていくようにした方がいいのじゃないかというように考えております。法律につきましては、この問題については、従来からいろいろな角度から検討されておったのでございますが、地方自体の営造物、これは、保健所と同じようなものになると思いますが、これが法律化されておりませんために、地方としては予算もとりにくい、人員の配置もなかなかむずかしいという実情も聞いております。私どもとしましても、地方の営造物でございますので、関係する方は、地方庁なり、あるいは財政に関係して参りますから財政当局、いろいろ関係するところが多いのでありますけれども、目的とするところは、その地方衛生研究所が健全に発達して、所期の仕事をやっていただけるようにするのが一番いいというふうに考えておりますので、今すぐこの法律を提案する用意があるかどうかとおっしゃいますが、もう少し時日をかしていただかなければならないと存じますが、先生指摘の点は、私どもも十分よく承知しておりますので、今後十分検討して、できるだけそういう線に持っていきたい、そういうふうに考えております。
  57. 片岡文重

    ○片岡文重君 もう一つお尋ねしたいのですが、その前に、今の地方衛生研究所の設置法とでもいうべき法律の提案については、やはり保健所等の例と私はあまり違わないと思いますので、地方のこの機関に対する財政的な支出の、あるいは補助のしやすくなるように、国としての監督なり責任の十分に持てる根拠が与えられるように、やはり立法措置は私は講ずべきであると思うので、厚生省としては、一つできるだけ早く提案をされるように希望いたしたいと思います。  それから、いま一つ伺っておきたいのは、本法成立によって、当然、衛生検査技師なるものは、国家試験による検定を受けて、相当権威ある技術者として名称を持つわけなんです。で、業務禁止等の制約はないにしても、一応厚生大臣の指定する国家試験によって、その技術なり知識というものは保障されるのですから、同種の技術者とやはり給与、待避等の面においては、少くとも国家機関に奉職する場合には当然、もしくはその公立の機関に就職し、もしくは現にしておる者に対しては、たとえばエックス線技師のごときものはそうでありますが、同じ待遇が与えられる、給与等についても同じ給与が保障さるべきであると考えるのですが、これは、人事院の問題になりますけれども、厚生省としては、この場合、その点についてどうお考えになるのか。また決定の暁には、本法が通過し、所定の試験に合格をされた上は、つまり正規に衛生検査技師としての名称を得るに至った場合、人事院等に対して、これが取扱いについて厚生省としては何らかの措置を、措置といいますか、要請といいますか、人事院としての考慮を求められるような積極的な配慮をされる意思はないのか。私は、この際なさるべきではないかと思うので、むしろ要望をしておるのですが、御所見を伺いたい。
  58. 山口正義

    政府委員山口正義君) 本法が制定されまして、所定の研修を済ませ、国家試験を受けられたその暁に、こういう名称を使われる方に対する給与の問題は当然起ってくると思うのでございまして、現在も、保健所に勤務しておられる方々の平均給与は、エックス線技術者に比べてやや低いというような状況でございます。国の機関についてこの問題は、先ほども申し上げましたように、所管の問題もございますので、直ちにどうこうというようなことは、すぐにお答えいたしかねるわけでございますが、筋としては、やはり身分が確定いたしますれば、その身分を得ますために、それ相当の年限の研修なりあるいは、試験を受けられるわけでございますから、その給与のバランスということは当然考えていかなければならない、そういうふうに私ども考えているわけでございます。
  59. 中山福藏

    中山福藏君 提案者に一つだけ、特殊な場合を想定して私お尋ねしておきたいんです。衛生検査技師が高度ないわゆる検査の知識を適用して、応用して、たとえば水質の検査、水にばい菌が入っておるかどうか、あるいは自宅に、何と申しますか、ミルクというものが子供の栄養のためにとってある場合に、それに細菌がおるかどうかというようなことを、まあ水質検査とか、ミルクの内容の検査とか、そういう場合に、きわめて緊急を要するというような場合に、衛生検査技師というのは、医者の指導監督を受けずに、これは公益のためから、直ちにこれを発表したり、あるいは適当な役所にそれを通告をするというような場合が、これはないとは限らぬわけですね。そういう場合に、医師の指導監督を得なくても、単独にやり得るということになるわけですか。それを一つ、これは特殊の場合ですけれど、一ぺん確かめておきたいと思います。
  60. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) ただいまの御質問でございますが、水質の検査とか、あるいは牛乳の検査とか、これはもちろん、常時保健所を通してやっておるわけですが、もし衛生検査技師の方が、個人的に何か危険な状態を発見したような場合には、やはり保健所に届け出てもらって、その結果を報告する、こういうふうに願うことになっておるんです。
  61. 中山福藏

    中山福藏君 そうすると、単独行為をとっていいと、事前の検査行為に対しては、指導監督を受けんでもいい、こういうことですね。
  62. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) その場合は、保健所のやはり指示、監督を受けるわけです。
  63. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 ちょっと提案者に御質問いたしますが、衛生技師の仕事というか、業務というのは、非常に広範囲なものと思います。この第二条に掲げてあります通り、「細菌学的検査、血清学的検査、血液学的検査、病理組織学的検査、原虫・寄生虫学的検査その他の政令で定める検査」、かように、相当の広範囲なものと思いますが、この広範囲ないろいろのその検査の種類の中において、全部をやるのがその仕事であるのかどうか、あるいは一部をやられるのもその業務として認め得られるかどうか、この点を御答弁願います。
  64. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) ただいま御指摘の点につきましては、仰せの通り、非常に業務の内容が広いわけでございますが、一応この法律の趣旨といたしましては、これらのすべての検査業務が一応はこなし得る、やり得るという範囲のものを衛生検査技師と考えておるわけでございます。従いまして、その考えに基きまして、今後の養成機関におきましても、それだけのものをやり得る勉強をしていただく、こういうことでございます。
  65. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 そうしますと、相当広範囲な業務になりますが、一例をとってみますと、病理組織学的検査というものになりますと、その結果というものの判定というものは、私は非常な重要な問題かと思いますが、この判定という、それまで技師の業務であるのかどうか、その点をお聞きします。
  66. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 私どもといたしましては、その判定は、医師以外の人でもやり得る、まあ割に簡単な反能とか、あるいは簡単な検査方法でございましたら、判定までもこの検査技師の方におまかせするということを考えておりますが、非常にその判定の困難なものにつきましては、当然監督者たる医師が判定する、かように取り扱うべきだと考えております。
  67. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 先ほど片岡委員の御質問に対しまして、その指導監督という意味は、羅列したにすぎない。実際問題は指導的立場であるというお話でしたが、今お話によりますと、先ほどの答弁と食い違いがあるように私は感ぜられますが、この病理組織学的検査というような、その判定につきましては、医者であるためにすべてのものがこれはわかるというほどのものじゃありません。非常なこれは専門的の知識を要するものであります。そういうものに対していわゆる医者の指導という、単なるそういう意味で、これは私は納得し得られるものかどうか、そういう点について、私はなお御答弁願いたいと思います。
  68. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 私、先ほど片岡先生の御質問に対しましてお答えさしていただきましたのは、原則としてお答えさしていただいたのでございまして、原則は申し上げた通りでありますが、なお判定の困難な場合、あるいはまた、非常に医学的な知識を要するような特定の検査方法に対しては、いずれにいたしましても、最終的には医師の責任のもとに判定なさるべきものでございまするから、さような場合には、医師の指導監督という問題が一そう綿密になって参るという意味で申し上げたのでございまして、私の申し上げました言葉に足らざる点があったかと思いますが、さような意味で申し上げたような次第でございます。
  69. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 今の御答弁でありますが、私は、はなはだあいまいもこたる点が相当あると思います。病理組織の判定なんというものは、ただすべての医者がわかるようなものじゃありません。専門的の人たちの判定によりましても、われわれの経験によりますと、甲の専門医の判定と乙の専門医の判定とが違う場合もあります。それほど非常なむずかしいものである。それが医者の指導監督ということによって実施されるものか。ただ、病理組織学的の標本を作るという意味であるなら、私は何をか言わんや、ごもっともなことと思いますが、そういう結果において責任を持つようなことであるならば、私は、相当この問題に関する限りは問題があるんじゃないかと考えるので、事人命に関する問題である。あるいは病理の問題といいますか。相当のガンであるかどうか、あるいは悪性のものであるか、良性のものであるかというような決定的の事項に関する重大問題である限り、私は相当のこれは問題点じゃないかと考えますが、それに対する御所見をお伺いします。
  70. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 松澤先生指摘の通りに、医師といえども、こういう病理組織学的な検査につきましては、たんのうじゃないものもいるじゃないかということにつきましては、私どもも、さように考えました点もないわけではございませんけれども、いずれにいたしましても、この都道府県でやっておりまする衛生研究所あるいはまた保健所、あるいはまたこういった官公立の研究所におきまするその指導監督の立場にある医師たるものは、臨床医家とは多少違って、この方面につきましても、当然造詣が深くあるべきものだと考えております。かような立場における医師の指導監督のもとにということを含んでおります次第でございまして、この法律の精神からいたしますれば、そういう造詣のない医師が今日監督いたしておりまするような立場にございまするならば、これは、行政的な立場におきまして、造詣の深い医師に御監督願うように配慮していかなければならない問題だと考えております。
  71. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 ただいまの答弁は、ちょっと解せないのですが、先ほどから問題になっておりまする民間のこういう検査所というようなものも放任されておる、今日は。ただ、あなたの今の御答弁によりますと、官公立の権威ある検査所というようなこと、そんなことは、私、あなたにお聞きしなくても、当然わかっております。それらの所には権威者がおります。問題とするところは、先ほどから問題になっておるところの私の検査所とか、そういう点が問題になるのだと思います。問題にならない点は、もう一々申し上げていただいても、私は何にもこの問題の解決にならないと思います。おのおの論議しておるところの問題点を解決になって、そうしてよりよい衛生検査技師法案というものができるのじゃないか、衛生法というものができるのじゃないか、かく考えるゆえに、私は御質問申し上げるのであって、ただ単に、これが通りさえすればいいというような、そんな考えでお出しになるというならば、私としては、どうも納得いかない点が多々あると思います。問題点があったならば、お互いに研究し合って、そうしてよりよいものにして、そうしてまた、より高いところの法案を作るということであってこそ初めて提案者であって、また、初めてこれを要望しておるところの皆さんの意図でもあると考えております。変なものをごまかして、そうしてただ単に、作りさえすればいい、おれが作ったのだという、そういうような考えでなくて、ほんとうにお互いに研究し合って作るところにこの法案の価値があると私は考える。このために私はお伺いするものである。  広範であるがゆえに、私は、非常な問題点があるのじゃないかと、こう考えるがゆえに申し上げておる。ただ細菌検査とか、そういうものは簡単なものである。しかしながら、検査にも種類があって、ただいま申し上げた通り、組織学的検査とか、そのほかのものであれば、相当のこれは知識が要るのであって、そういう点についての考慮が払われておるかどうかということを私はお聞きしたいために、御質問申し上げておるのであります。  なお、この点について、厚生省の御所見をお伺いいたします。
  72. 山口正義

    政府委員山口正義君) 行政当局に対するお尋ねの意味は、私、取り違えたかもしれませんが、病理組織学的検査というのを、どの程度のことを考えておるかということについては、先ほど提案者の方からお答えがあったのでよかろうと存じますが、その前の、松澤先生が最初に御質問になりました、すべてのものをやらなければいけないのかどうかということにつきましては、私どもも、このすべての検査をやり得る人を衛生検査技師というというふうに解釈すべきだろうと考えております。それから、病理組織学的検査、これは松澤先生の御専門でいらっしゃいますが、病理組織学的検査、普通申します病理組織学的な検査はやはり一応できるということでないと困るのではないか。その検査のやり方について、医師の指導監督をどういう程度に考えていくかということにつきましては、医師の指導監督は、先ほどからもお話がございましたように、全般的な指導監督でございまして、必要に応じては、具体的に個々に指導されるということもあるかと思いますが、先ほどお尋ねがございましたように、しょっちゅうつきっきりでやるというような意味ではないというふうなお話でございますので、私どもも、そういう提案者の御趣旨に沿ってこの「医師の指導監督」という文字を解釈して、そうして先ほどもお答え申し上げましたようなこととか、あるいは本日お配り申し上げました資料に記載しております考え方で、行政的な運用をはかって参りたいというふうに考えております。まあ発言をお許しいただきました機会に、まことに恐縮ではございますが、本日お配り申し上げました「医師による指導監督について」、先般山下先生から、厚生省がどういうふうに考えているか、資料として提出するようにというお言葉がございましたので、それにお答えしてお配り申し上げたわけでございますが、そのうちの二のうちの(一)、(二)、(三)、(四)とございますが、それが原則でございまして、(二)、(三)は、ごく例外的な場合でございますので、むしろ考え方といたしましては、(二)、(三)を削除させしていただいた方がいいのではないか、そういうふうに考えております。発言をお許しいただきました機会に、資料の訂正をさせていただきたいと思います。
  73. 松澤靖介

    ○松澤靖介君 今の私に対する答弁は、答弁にならないですけれども、私は、時間の都合上よそに行かなくちゃならぬので、やめますが、なお一点お聞きしますが、放射線技師などですと、あのレントゲンの写真をとったその判定というものは責任はないと私は考えておりますが、それと同じような、いまのむずかしいところの、高級の知識を要するところの……病理組織の標本というようなものを作るということの私はことであったなら話はわかると思います。その判定というか、診断というか、それほどまでああいうものはやらなくとも済むのだというような意味であるならば、私は非常にいいのじゃないか、放射線技師のあれの問題であっても、写真をとってみて、いついつ空洞がどこにあるとか何とかいう、そういうようなことをやっておらないと思います。また、やったとしても、だれも信用されないと思います。そういう意味において、私はそれに関連した意味において御質問申し上げているのであって、いわゆるただ単に羅列したところのものであって、それで衛生技師というものがより高い身分になったというような、そんなあさはかなものではなくて、知識がないならないでいいと思います。そういう意味において、確かな意味の身分法というものを制定すべきだ、ただ単にごまかし的の意味でやるような提案者であってはいかぬじゃないかという意味で私は提案者にお聞きしたのであって、放射線技師法のような意味において、医者の監督でありますけれども、判定までしておりません。御存じと思います。私は、そういう意味において、ああいう高級なものはそれでいいのじゃないか、結論はそういう意味なんです。それほどまでもその人たちに責任を持たせなくてもいいんじゃないかという意味で御質問申し上げるので、ただ一時的のごまかしにおいておっしゃられては、私は、はなはだその提案者に対して不可解と思うので、これだけ申し上げて、私はちょっとよそにいかなくちゃならぬので、失礼をいたします。
  74. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 松澤先生からの御質問に対しまして、ちょっと御説明申し上げておきたいと思います。私ども提案者といたしまして、単なるごまかしで、ともかくこの法律だけを通したいという意味で書きました次第では毛頭ないのでございます。むしろ最終責任は当然医者にあるという意味におきまして、従いまして、レントゲン技師法におきましては指導という名ばかりで、監督という文句は入っておりませんが、それをあえて入れましたのは、最終的には医者が責任を持つという意味で入れたのでございまして、毛頭ごまかしとか、いいかげんな意味で、法律だけを通すという意味で出したのではございませんので、説明させていただきます。
  75. 木下友敬

    木下友敬君 この二条の中に、「その他政令で定める検査」というのは、どういうことをお含みですか。
  76. 山口正義

    政府委員山口正義君) 政令でございますので、私からお答え申し上げます。今考えておりますのは、生理学的検査で、尿、糞便、それから胃液、髄液等の定性的な検査を考えているわけでございます。
  77. 木下友敬

    木下友敬君 ほかのは、たとえば「原虫・寄生虫」というような、ああいう意味ではっきり書いてありますが、なぜ政令という言葉を使っているのか。たとえば、化学的検査とか、生理化学的検査とかいう、はっきりした文字がなぜ使えないのですか。同じ虫という字がついておっても、原虫と寄生虫と分けて書いてあるような綿密な記載の中で、政令ということにひっくるめて、尿の検査とか、しかも、その尿の検査が定性だけに限るというのは、政令の考え方もどうかと思いますが、それについての御意見をお聞きいたしたいと思います。
  78. 山口正義

    政府委員山口正義君) 一応、衛生検査技師の実施いたします検査の内容といたしましては、二条に列挙してある検査でございますが、これは、最初の御質疑のときにあったかと存じますが、薬剤師のやられる仕事との限界をできるだけ区別したいというような趣旨で、この細菌学的、血清学的と羅列してございますので、大体のものは包含されるわけでございますが、そのほかに、それと非常に大体同じような範疇に属するものが考えられ得る場合もございますので、そういうものがあります場合は、政令でそれを定めるようにというような余裕を残されたというふうに承知いたしております。その政令で定めます際に、ただいま申し上げましたように、主として定性的な検査だけを考えるようにというようなことでございますので、政令でそういうふうに定めたいと考えております。
  79. 木下友敬

    木下友敬君 定性と定量と、なぜ区別したのでありますか。定性だけ考えると……。それじゃ重ねて。こういう資格を得るためには、たくさんの勉強をしなければならぬが、その中には、生化学の勉強もあるわけでしょう、試験科目の中には、もちろん。生化学の検査もなければならないと思いますが、その点をはっきりしてもらいますことと、それからもう一つは、その勉強の中でも、定量の問題を入れないで、定性だけに限られているように伺いますが、なぜ定性だけか、わけがわからない。たとえば、一つの尿を検査する場合に、これはどうも、尿の中に糖が出ている。どれくらい出ているかということの検定をやらせないのはおかしいように思うが、これはむしろ、きわめて簡単なことのようであるが、なぜそれをやらせる意思がないか。
  80. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) 先ほど山口局長から答弁がありましたように、薬剤師との関係を考えまして、薬剤師の業務との、何ですか、重なりと申しますか、そういった点につきまして考慮を払って、定性だけを考えている。定量の問題は薬剤師の方にお願いしよう、こういうことで、薬剤師との業務の関係を考えて、こういうような取扱いをやったわけであります。
  81. 木下友敬

    木下友敬君 そんなあほなことはないですよ。定性と定量で薬剤師との区別がつくような、そんなあんた、あなたもたしかお医者さんだと思いますが、そんなばかなことはないですよ。定性と定量で、薬剤師と衛生技術者の区別をするなんて、そんなあほうなことはないと思いますが、いいですか、そんなことで。それから、そんなことを言うなら、病理組織学的の検査というものは、これは、医者の仕事が衛生検査技師の仕事と、これも重なるから、遠慮しなければならぬということになりますか。このどれを一つとってみても、医学、医師の検査の範囲でしょう、従来は。薬剤師の範囲を侵すから、重なるから、それをやめたと言うなら、その検査というのは、今までみんな医師がしておったじゃないか。重なるからやめるというなら、衛生技師は、仕事はなくなってしまう。
  82. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) 今お答え申し上げたのは、もちろん、こういった衛生検査技師が行う仕事というのは、医師が本来業務として行う仕事なんであります。仕事でありまするが、衛生検査技師の方にお願いするということでございまして、個々の問題を取り上げて参りまして、先生がおっしゃいましたように、尿の中の糖の定量とか、そういった、個々の問題についてのいろいろな問題がございまするが、やはり生化学的検査というのは、薬剤師がやって……そういう、結局、定性という言葉を強くお考え願いますると、いろいろ問題がございますが、医師が行う検査、たとえば、尿の中の糖の定量とか、あるいは水質の検査の場合の定量とか、そういう場合は、もちろん衛生検査技師の方が行われる、こう解釈をして提案いたしておるわけであります。
  83. 山口正義

    政府委員山口正義君) 私、先ほど定性という言葉をあまり強く申し上げ過ぎたかと存じますが、先ほど御指摘になりましたような、尿の中の蛋白の定量、定性という程度のことはいいと思うのでございますが、例示的に申し上げますれば、たとえば、ビタミンの定量検査というようなことは、この衛生検査技師の業務ではないと申しますか、まあこの政令で定める中には考えていないというようなことでございますので、先ほど私のお答えが行き過ぎでございましたならば、訂正さしていただきたいと思います。
  84. 木下友敬

    木下友敬君 多分そうだろうと思う。尿の検査の中で、たとえば蛋白があるということだけを報告するのか。あるいは蛋白が〇・何%あるということを知らなくちゃ治療ができないわけなんです。それを一概に、その定性だけで、定量はしないというような答弁は、それはおかしいと思ったのです。それは間違いだろうと思ったから……それは許しますがね。だけども、薬剤師の範囲だからそれをよけたという、この条文は非常におかしなものになると思うのですよ。病理細菌学の検査というもの、それから生化学的の検査というのは、これは、医者治療の面において、臨床的にどうしても同じな、対等的なものなんです。尿の検査もしなきゃならぬし、それから、血液の検査あるいは細菌学の検査、これはみんな並行的にやらにゃならぬ。その中から、この並んである中から、生化学的なものだけを脱落さして、それは薬剤師の業務に遠慮したのだ、おかしいじゃないですか、それは。どうしても医者の監督とかあるいは指導というものが書きたければ、生化学とかいう検査も加えておいて、そうして薬剤師、医師の指導監督と書く手もあるでしょう。まあ技師からいえば、そういう監督指導を受けることはいやだから、医師だけくらいにとどめて、同時に、生化学的の検査というのは譲歩するというような、そういう考え方もあるかもわからぬけれども、これは、学問的に考えて、この条文は非常におかしいですよ。生化学というものがここから抜けるのは、歯の抜けたようなものです。しかも私は、この医師の監督あるいは指導というところに、この指導の中には、一体いろいろの検査をする検査の方法等に対する指導も入っているかどうかということ、テクニックの指導も入っているか。テクニックの指導監督も入っておるか。監督の中には、常時ついていないでもいいということであったが、指導ということにはテクニックも入っているか、その点もあわせて一つ御答弁を願いたい。
  85. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) 今の御質問でございますが、「指導監督の下に」という言葉の中には、たとえば、どの検体をどの方式で検査するかの決定ですね。あるいは検査の結果に基く当該患者の疾病の有無、病名の決定などは、医師の責任に属しているわけであります。検査の内容自体及び菌の保有量あるいは検査の陰性、陽性の別等の決定は、もっぱら衛生検査技師の責任に属するわけです。
  86. 木下友敬

    木下友敬君 そうすると、もし衛生検査技師に誤まりがあっても、指導監督という責任を持っている医師の責任になる場合が非常に多いと考えられる。
  87. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) 医師の責任になるわけでございます。
  88. 木下友敬

    木下友敬君 先ほどのお話の中に、病理組織の問題が取り上げられたとき、造詣深い医者ということを御発言になっているのです。造詣深い医者だから、一般の臨床医師でなくて、そのとき、造詣深い医者が指導監督するというような意味の御発言がありましたが、条文の中には、ただ「医師の指導監督」、医者でさえあればいい。たとえば、非医者医師の免許を持っている非常に老朽の医師の名前だけ借りて、そして開業しているというようなところが現在でもたくさんございます。ありがちのことなんです。それが、こういう私立の衛生検査所というものができた場合に、医師の指導監督が要るという意味で、ここの指導監督に当るところの顧問の医者木下先生であるというようなことをはっきりしても、私の場合は造詣深くない。ガンであるか、結核であるか、分け切らない目しかないわけです。だから、そうすると、医師の指導監督という文句は空文になってしまう。ですから、空文になるからこそ、速記録をお読みになれば、お二人の方は、常に一応一応という言葉を使っておられる。一応病理組織学の検査もできる衛生検査技師だと言う。もう一々、一応という言葉をさっきからつけて御答弁になっておりますが、同様のことは、医師にもいえるわけなんです。開業しているお医者さんのみならず、あるいは大学にいるお医者さんなんか、特に専門的に訓練されておりますから、細菌の検査もできれば、病理組織もできるということじゃない。今日の医学の進み方は、非常に専門的に分れておりますから、どうかすると、もう近い将来に、左の目、右の目という、別々の人が扱うかもわからないという状態なんです。そんなときに、医師の監督で細菌学の検査もする。病理学的な検査の責任も医師が負うのだということは、これはナンセンスだと思う。私は、どうも医師がこの責任に当るということはむしろ危険だと思う。責任だけ引き受けて、実際は、自分は検査の仕方も知らない。そういう者が、ただ名前だけそこの顧問であり、指導監督に当って、そして病理の、衛生検査技師のいうままに診断を認容するようなことがあったらば、これこそ私は、世の中に害毒を及ぼすと思うから、衛生検査技師の責任においてこういうことの業務をやっていけるようにし、他力本願じゃなくて、衛生検査技師が責任を負うべきものだ。何を恋々として、医師が指導監督しなければならぬという主張をするのだろうかと思う。医者がしたかどうかわからぬけれども、あたかもこれで見れば、衛生検査技師という一つのりっぱな技術的職業が成り立つのに、ほかからこれを監督しなければならぬ。なぜそういうことを考えるかということは、薬剤師の場合でも言えると思うのです。
  89. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) 先生の御質問の意味は、十分に私も理解しておるのでございますが診療に対する場合には、診断が、必要でございますが、診療業務の補助的な業務を衛生検査技師が務めるわけでございます。ですから、すべて判断は、病名の判断です。あるいは決定というのは、医師が責任を持たなければならないわけでございます。そういう意味で、指導監督ということをいたしまして、その責任の帰趨を明らかにしたわけでございます。先生も御承知のように、たとえば、血清の検査をして、ヴィダール反応をやってくれ。その場合に、チフスとかパラチフスとか、そういったものに対する凝集価だけを検査技師は報告するわけでございます。この場合に、その報告に従って、医師は臨床上の診断の上と結びつけまして、初めてそこに、補助診断としての血清の凝集価が裏づけとなって、病名が決定されるものだ。こういう考えから、「指導監督の下に、」という、責任の帰趨を明らかにした次第でございます。
  90. 勝俣稔

    ○勝俣稔君 細菌検査所というか、細菌学的製剤を作るところの所長というのですか、主任技術者といいますか、こういう者については、現在は、どういうような資格になっておるか知りませんけれども、私は、古い技術官でございますが、その当時は、その主任技術者の経歴等を十分検査した上でなければ、これを許さないような格好をとっておったのでございます。これについては、その当時、伝研に諮問いたしまして、ただ医者なるがゆえに、細菌学的製剤を作るところの主任技術者とはしない。経験の十分ある人でなければいけない。つまり伝研が極印を押して、これならばいいぞという人でなければしないというような形をとってきたので、まあそれほど誤まりもなくてやってきたようなことでございましたけれども、提案者の方では、今のような点で、医者でありさえすれば何でもいいという意味合いでなくして、何らかこれは、政令等で制限ができるか、どうであるかというようなことを、一つ意見を承わりたいと思うのであります。
  91. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) ちょうど勝俣先生木下先生の御質問が、同じところにあると思うのでございますが、今度のこの法案というのは、現在、官公私立の衛生研究所とか、あるいは保健所の検査室あるいは病院検査科等で働いておられる人々の身分法というのは、現在何もないわけであります。それで、これらの方々に対して身分法というものを制定いたしまして、はっきりとした業務上の責任と資質の向上、こういった面をねらったのがこの法案の意味でございます。従って、現在衛生研究所とか、保健所とか、病院検査科等におきましては、それぞれその方面に関して、衛生検査に対しまして非常に造詣の深い方々が現在責任者になっておられるわけでございます。私どもといたしましては、現在働いておられる方々に対して身分法を制定して、ほかのたとえば看護婦とかエックス線技師等には、もうすでに法的の規制があるわけでございます。ところが、衛生検査に当っておられる方々だけにはないものでございますので、その身分法を規定いたしまして、何とかして資質の向上と待遇の改善をねらっていきたい、これが趣旨でございます。従って、勝俣先生の御質問に対しましても、現在具体的に、どこの医師かということは書いてはございませんが、衛生研究所、保健所、病院の検査科等には、それぞれ造詣の深い医師の方がその責任者になっておられるわけでございます。
  92. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 木下先生の御質問にお答えさしていただきたいと思いますが、「医師の指導監督の下に」と書いてあっても、医師には、その指導監督に値いするだけの知識と内容を持っていない医師が多いのではないか、従って、こういうのは空文ではないかという御指摘がございましたが、私どもといたしましては、医師たるものは、原則的にこの衛生検査技師の業務として規定いたしておりまする内容のものはすべて勉強いたしておりまして、一応知っておる者、それだけの知識を持っておる者が医師たる免許状ももらっておると、かように考えております。ただ、そういうものを一応勉強いたしましても、医師の業態がいろいろ専門的に分れておりまする今日の職責上から、習ったものもすでに忘れている医師もございましょう。従って、一般の医師全般から申しますと、この衛生検査技師の業務の内容につきまして知らざる、忘れておるお医者さんもたくさんあるかと思います。そういうお医者さんを問題にいたしますれば、医師の指導監督という、この文句が死文に等しいという御懸念になろうかと思いますが、私どもがこの法案の骨子として出しましたのは、一応この衛生検査技師の業務の内容について造詣のある医師という意味を含んで、「医師の指導監督」という、この言葉にいたした次第でございます。従いまして、そういう意味合いでございまするので、今後この法律の取扱いにおきましても、厚生当局においては、行政的にそのようにお取り計らい願いたいものだと考えております。
  93. 中山福藏

    中山福藏君 私、ちょっとお伺いしておきたいのですが、この「指導監督」という文字を扱っておるために非常な問題が、質疑応答が起るわけですが、そこで、今提案者が監督という字を入れた理由を御説明になったのですが、すべて医者に責任があると、これは、単独に医者が責任を負うという意味か、あるいは衛生検査技師と、両方で連帯責任を負うと、これは記録に残るわけですから、もしこれが検査を誤まっておったら、法律上の損害賠償問題が起ったときは、医師が全責任を負うという言葉に聞えるのですが、そこはどうですか。これは記録に残って、後日引用されると思うのです。これは非常な責任が生ずるわけですが、そこのところをはっきりしていただかぬと……。
  94. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記を止めて。   〔速記中止〕
  95. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起して。  休憩いたします。再開は二時半にいたします。    午後一時二十五分休憩      ―――――・―――――    午後三時七分開会
  96. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 再開いたします。  午前に引き続き、衛生検査技師法案に対する質疑を行います。  まず、午前中の中山委員質疑に対して提案者より答弁を求めます。八田貞義君。
  97. 八田貞義

    衆議院議員(八田貞義君) この場合の「指導監督」というのは、社会通念上の軽い意味の指導監督でございまして、常に共同行為として責任を負うような指導監督の意味ではございません。ただし、医師が指導監督に当って明らかに不都合なことがあったような場合は、その指導監督上、医師の責任となることもあり得ると思います。なお、詳細は法制局の御答弁にお願いいたしたいと思います。
  98. 鮫島真男

    ○衆議院法制局参事(鮫島真男君) ただいまの事柄につきまして、八田議員の御説明に補足して申し上げます。  この法案の第二条は、衛生検査技師の定義といたしまして、衛生検査技師が行う衛生検査の内容を規定したものでありますし、さらに医師との関係を規定しておるものと存じます。衛生検査の性質といたしまして、医療を担当いたします医師と、それからその医療の補助的な行為でありますところの衛生検査を扱います衛生検査技師との関係をどうするかということが大事な問題でありまして、この両者の関係を規定いたしますにはいろいろな考え方があろうかと思います。一つには衛生検査の地位を完全に医師とは独立なものにいたしまして、この衛生検査は衛生検査技師が独立になし得るのだというような立て方もできるかと思います。それからもう一つは、医師が衛生検査技師に対して一々こまかいことまで指示をいたしまして、あたかも衛生検査技師を手足のようにして衛生検査を行わせるという立て方もあろうかと思います。それからもう一つは、衛生検査技師の立場をある程度独立に認めまして……認めますが、その衛生検査が医療上と非常な密接な関係がございますので、衛生検査技師の地位の独立をある程度認めますけれども医師がこれに対してある程度の指導を、関係を持つという立て方があろうかと思います。この法案にございますこの第二条の規定は、ちょうどこの最後の段階を規定したものと存じます。要するにこの衛生検査技師という者の地位をある程度認めつつ、しかしその行う衛生検査がこの医療と非常な密接な関係があるということからいたしまして、医師はこれに対して概括的な指導監督をいたす、こういうことであろうかと思います。  まあ、そういうような前提でこの規定はできていると思いますので、ただいま八田議員が申されましたように、ここにおきまする「指導監督」と言いますのは非常に概括的なものでありまして、本来衛生検査技師がなし得る衛生検査行為につきまして、それが医療上と非常な密接な関係があるということから、これに対して概括的な指導監督をいたす、こういうような関係になると思いまするので、その具体的な場合におきまして、衛生検査の方法が誤まったというような両者の関係は、先ほど八田議員が御説明されたような結果になろうかと思います。
  99. 木下友敬

    木下友敬君 御答弁を聞いて、またちょっとわからぬようなことになってきましたが、そうすると監督というのは、私は今までは福田さんの答弁などで行政監督の意味かと思ったら、そうではないのですね。やっぱり技術方面の監督という意味に今のでなってきたように思うのですが、その点はどうですか、今までの答弁では行政的な監督……福田さん、ちょっとその点。
  100. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 私どもがこの第二条に「医師の指導監督」という文章にいたしましたその理由は、先ほど八田先生からも御説明がございましたように、まあ社会通念上の、おしかりを受けるかもしれませんが、ごく軽い意味の指導監督という意味で考えておりました次第でございまして、おもに行政的な指導監督は当然でございますが、必要な場合はその衛生検査の業務の内容につきましても軽い意味の指導監督の立場にある、かような意味でございます。
  101. 木下友敬

    木下友敬君 わかりました。「指導監督」というのは、まあ文章のあやで、なおかつそれがあった方が単に都合がいいというような考えの程度にしか解せられぬようなことで、ほんとうはこれは取ってもらいたいと思うのです。  これからいけば大体今度高等学校を出て、そうして修業をして国家試験をやるのですから大学出ですね。今度の衛生技師というのは大学を出たわけなんです。そうして衛生検査技師というりっぱな資格を得ておるこういうりっぱな資格を持っている者がほかから監督を受けなければならぬ、行政監督ならいいです、しかしその技術の面においても監督を受けなければならぬ、また指揮を受けなければならぬというようなことは、これはせっかくそういう身分法を作っても一体それがほんとうの身分法かどうかを疑われる。これは、今までの衛生検査技師というものが医師に従属して、病院なり診療所なりで医師に従属して、あるいは監督なり、あるいは資格のない者にこれをやっておけ、これをやるんだといった徒弟的な封建的な考えがまだこの中に残っている。そうではなくて、ほんとうにりっぱな修業を積んで大学を出て、国家試験を通ったりっぱな技能を持った人ならば、独立してこれはやるべきであって、いつまでも封建的な、医師がこれを指導監督するということはこれはおかしい。独立性がない。そういう点からいけば、どんな軽い意味であっても非常に目ざわりになる。そういう考え方は医薬分業が行われる以前の医師は薬剤師に対しても持っていた。薬剤師というものは医者にある程度従属しているかのような考え方を持っておった。それは誤まりであって、今日になってみれば、助産婦はどうですか、助産婦は、現在おる助産婦は大学を出て国家試験を受けない者もたくさんおりますけれども、やはり助産婦というものは独立で医師の監督なしに助産の行為ができる。そういうものとにらみ合せてみれば、大学を出て国家試験を通った者に、いつまでも指導監督というような、しかも御説明によればきわめて軽い意味で、言葉のあやであり法文としてのあやであるというような、そんなあやふやなものをつけておくということじゃ納得いかないので、これはあっさり私は「指導監督」というものは取ってしまうべきだ、この点についてなぜあえて「指導監督」というものをいつまでもがんばっておつけになるかということについての所信を聞きたい。なぜいつまでも粘るか、そんな軽いものならば無理につけぬでもあっさり取っていいじゃないか。
  102. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 大へん適切な御質問をいただきましたが、私どもも実は先生が仰せのように考えまして、一応「医師の指導監督」というこの言葉はない方がよいじゃないかということを考えました次第でございますが、この法案の立法に当りまして、大ぜいの方々の御意見も聞かせていただき、なお他の立法では、たとえば診療エックス線技師法というような法律その他もいろいろ参考にさしていただきまして、他の法案におきましては医師指示というような言葉が入っているかと思いますが、私どもがこの際「医師の指導監督」という言葉を入れましたのは、この類似のエックス線技師法に入っている医師指示という言葉と大体同じような意味としてこの「指導監督」という言葉を入れました次第でございまして、いろいろな方々の御意見を聞きまして、誤まりのない、まあ妥当な規定としてこの「医師の指導監督」という言葉を入れました次第でございます。  繰り返し申し上げますように、私ども先先と同じような御意見を持っておる者もたくさんございましたし、私も一時そのように考えておりました次第でございますが、多数決に従いまして、「医師の指導監督」という言葉を入れました次第でございます。(笑声)
  103. 片岡文重

    ○片岡文重君 この際厚生省にちょっとお伺いしておきますが、これに関連してお伺いをしたいのですが、この衛生検査技師を目ざしてアフター・ケアの中に修習する科目が置かれているわけですが、現在はこの検査技術を修得せしめる機関も一年以内ということになっております。元来は頑健な人たちがこの特殊な技術を身につけるために修得、修習しているわけではありませんから、アフター・ケアの本来の目的から言って、当然その修業されている者の健康状態が主体となってそれに技術を修得せしめるという建前に立たなければならないと思う。そういう意味からすれば、一年という期間ははなはだ短かいように私は考えられるのですが、この点について、この科目については、もちろん全科目にわたってアフター・ケアというものは一年という期間を区切らないで、もししいて区切るということならば、最低やはり三年や四年ということに私はすべきだと思う。とりあえず今一年以内ということで、これもまた別に法律をもって明文で定めたものではないはずでありますし、やはり予算その他は行政措置でやっていると思うのですが、この点について近い将来に二年もしくは三年までこの修業期間を延長するお考えはないのかどうか、でき得るならばこれは可及的に早くアフター・ケアの期間を延長してほしい、そういう努力をしていただきたいと思うのですが、この際厚生省の御所見を伺っておきたい。
  104. 山口正義

    政府委員山口正義君) お尋ねの点は、結核の回復者、後保護施設に関する問題でございますので、社会局の所管ではございますが、所管局長おりませんので、私からかわってお答え申し上げたいと存じますが、問題はその一年の期間が短か過ぎるから二年あるいは三年――従ってそうなりました場合に、厚生大臣の指定するような養成施設というふうにもなり得るわけでございますが、そういう方向に向けてもっていくということにつきましては、御趣旨の点よくわかるのでございます。そうしますためには、施設の充実なり内容の、職員の充足というような点もいろいろ問題が多々ございますので、その点につきましてはもう少し慎重に検討させていただきたいというのが厚生省の意見でございます。
  105. 片岡文重

    ○片岡文重君 御質問申し上げました趣旨は御了解いただけたことと思いまするし、その趣旨に沿ってせっかく検討したいという御答弁でありますから、早急に所管の局部なり大臣等とも御相談いただいて、なるべくすみやかに実現するように一つ御努力をお願い申し上げておきます。
  106. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ほかに御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見等おありの方は討論中にお述べを願います。
  108. 片岡文重

    ○片岡文重君 私はこの際、委員長の手元に提出いたしておきました修正案の通り本案を修正することの動議を提出いたします。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  109. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまの片岡君提出の動議は成立いたしました。片岡君提出の修正案を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。よって片岡君提出の修正案を議題といたします。  発議者から修正案の趣旨説明を願います。
  111. 片岡文重

    ○片岡文重君 最初に提出いたしました修正案を読みます。    衛生検査技師法案に対する修正案   衛生検査技師法案の一部を次のように修正する。   附則第二項を次のように改める。(試験に関する特例)  2 次の各号に掲げる者は、当分の間、第十五条の規定にかかわらず、試験を受けることができる。   一 この法律施行前に通算して二年以上、医師の指導監督の下に、衛生検査の業務に従事していた者   二 衛生検査の業務に必要な知識及び技能を修得させる施設であつて、学校教育法第五十六条第一項の規定により大学に入学することができる者又は附則第四項に規定する者であることをその入所資格とし、かつ、その修業年限が二年以上であるもので厚生大臣が指定したものにおいてこの法律施行前にその課程を修了した者又は当該施設においてこの法律施行の際現に修業中でありこの法律施行後その課程を修了した者   三 衛生検査の業務に必要な知識及び技能を修得させる施設であつて、その修業年限が一年以上であり、かつ、厚生大臣がその教科の内容が充実していると認めて指定したものにおいてこの法律施行前にその課程を修了した者又は当該施設においてこの法律施行の際現に修業中でありこの法律施行後その課程を修了した者で、それぞれ当該課程を修了した後通算して一年六月以上、医師の指導監督の下に、衛生検査の業務に従事したもの   附則第七項を附則第八項とし、附則第三項から附則第六項までをそれぞれ一項ずつ繰り下げ、附則第二項の次に次の一項を加える。  3 衛生検査の業務に必要な知識及び技能を修得させる施設であつて、学校教育法第四十七条の規定により高等学校に入学することができる者又は省令の定めるところによりこれと同等以上の学力があると認められる者であることをその入所資格とし、かつ、その修業年限が一年以上であるもののうち厚生大臣がその教科の内容が充実していると認めて指定したものにおいて、その課程を修了した後、通算して五年以上、医師の指導監督の下に衛生検査の業務に従事した者は、昭和四十一年十二月三十一日までの間に限り、第十五条の規定にかかわらず、試験を受けることができる。  修正案の提案理由を御説明いたします。  この法案では、付則において御生検査技師の試験の特例を経過的に認めておるのでありますが、なお現在の実情から考えて必ずしも十分でない点があるにかんがみまして、本法案を修正することにより、受験の特例の範囲を広げようとするのがこの修正案を提出する理由であります。  その内容を申し上げますと、次に述べる三つの場合についても当分の間、本則の規定にかかわらずそれぞれ試験を受けることができることといたしたわけであります。  第一に、衛生検査の業務に必要な知識及び技能を修得させる施設であって、高等学校業者またはこれと同視すべき者であることを入所資格とし、かつ、その修業年限が二年以上であるもので、厚生大臣が指定したものにおいて、この法律施行前にその課程を修了した者、またはこれらの施設においてこの法律施行の際現に修業中であり、この法律施行後その課程を修了したものについて。第二に、入所資格の限定をせず、かつ、その修業年限が一年以上で、厚生大臣がその教科の内容が充実していると認めて指定した施設において、この法律施行前にその課程を修了した者、またはこれらの施設においてこの法律施行の際現に修業中であり、この法律施行後にその課程を修了した者で、それぞれ当該課程を修了した後通算して一年六カ月以上、医師の指導監督のもとに、衛生検査の業務に従事した者について、以上二つの場合はいわば既得権者の救済であります。  第三点は、中学校業者または省令の定めるところによりこれと同等以上の学力があると認められる者であることをその入所資格とし、その修業年限が一年以上である養成施設で、厚生大臣がその教科の内容が充実していると認めて指定したものにこの法律施行後入所した後、通算して五年以上医師の指導監督のもとに衛生検査の業務に従事した者について昭和四十一年十二月三十一日までの間に限って本則第十五条の規定の例外として受験できることといたした次第であります。
  112. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それでは、ただいまの修正案に対し質疑のおありの方は御発言を願います。――御発言もなければ修正案に対する質疑は尽きたものと認め、これより原案並びに修正案について討論に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  114. 中山福藏

    中山福藏君 私は修正案並びに修正の部分を除いた原案について賛成の意を緑風会を代表して表するものであります。  近時医学の進歩はまことに驚異に値するものであります。従ってこれに対応いたしまして、疾病の診断、治療、予防等の基礎的の資料、すなわちたとえば細菌学的な検査、あるいは血清学的な検査、あるいは血液学的な検査、あるいは病理組織学的な検査、原虫・寄生虫学的な検査等々の資料の精密周到な研究をしていただいて、そうしてその治療、予防に誤まりなからぬことを希望するものであります。  本法案はいまだもって完全とは言い得ません。ことに、ただいま木下委員がおっしゃいましたように、この「指導監督」という文字があるために、この法案というものは何だか従属的な感じを私どもに与えるのであります。しかし、これは将来に待つといたしまして、その改正補足は他日に譲るということにいたしまして、一応現下の要請にこたえたものと考えます。願わくば本法案による資格を獲得せられました方々は、みずからその責任の重大なるを自覚せられて、ますます研さんを重ねて、社会の要請にこたえられんことを望みます。なお、後続部隊に対するところの強化育成の点につきまして十分御注意賜わりまして、将来、過日医薬が二つに分れた、この分派的な精神というものは必ずこの法案にも現われてくるときがあると私は考えております。そういうふうな立場でありながら、今日いろいろ答弁を聞いておりますと、薬剤師会から云々、医業会から云々という言葉を聞くということは、この委員会の一員といたしまして私は非常に何と申しますか、不快と申しますか、考えさせられるところが多いのであります。どうかこういう点についても十分一つ業界の方々は御注意を賜わりまして、ますます一つ社会の要望にこたえられるようにお願いするわけであります。これをもって私の討論を終りたいと思います。
  115. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより衛生検査技師法案について採決に入ります。  まず、片岡君提出の修正案を問題に供します。片岡君提出の修正案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  117. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって片岡君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  118. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 全会一致でございます。よって修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は全会一致をもって修正すべきものと議決せられました。  なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  それから、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次、御署名を願います。   多数意見者署名     勝俣  稔  谷口弥三郎     木島 虎藏  西岡 ハル     斎藤  昇  山下 義信     山本 經勝  片岡 文重     木下 友敬  中山 福藏     寺本 広作
  120. 福田昌子

    衆議院議員(福田昌子君) 適切な御慎重な審議をいただきまして、本法案を御可決いただきましたこと、なお私どもが不備でありました点につきまして、さらに修正をいただきましたこと、ありがたく感謝いたします。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  121. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案児童福祉法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。これから質疑を願うのでありますが、政府委員から細部説明を願います。
  122. 高田浩運

    政府委員(高田浩運君) まず第一に、母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  この法律は、御承知のように昭和二十八年から実施をいたしておりまして、すでに四十数億の金がこの法律によりまして母子家庭に貸し付けられまして、母子家庭の自立更正には非常に役立っておると私ども確信をいたしておるのでございます。なお、母子家庭の状況は、これも御承知の通りに、三十一年に実態調査を行いましたところ、この法律の対象となります母子世帯の数は百十五万という数字になっています。その前に行いました調査によりますと、いわゆる母子世帯六十九万ということでございまして、その両者の間に相当数の開きがございますが、これは該当のまあ対象それ自体相当違った範囲になっておりますし、必ずしもそれだけ数がふえたということにはこれはならないわけでございまして、私どもとしてはこの法律の対象となる母子世帯の数は、最近行いました百十五万世帯というのを基礎にして考えるのが至当である、かように考えておるのでございます。  この法律によりまして、御承知のように、八種類の資金の貸付を行うということになっておりますが、改正をいたしました点は、第一に、生業資金、これは母子世帯が新しい仕事を始めようというような場合におきまして、その準備等のために貸し付ける資金でございますが、その貸付の限度が従来五万円ということになっておりました。実際問題としまして五万円ではあまりにも少額でございまして、その成果を上げることが困難でありましたので、今回これを十万円ということに引き上げたいという改正でございます。もちろんこれは限度でございますから、実際問題として、従来五万円限度の場合においても実際の平均は大体三万ないし四万という見当になっておりましたし、十万円に今回引き上げましても、すべてが十万円に近くなるというふうにはこれはならないことは当然でございます。  それからその次に修学資金、これは子供が高等学校ないし大学に行きます場合において、学資を貸し付ける、そういう資金でございますが、現在、その額は、高等学校につきましては一月に千円以内、大学につきましては三千円以内ということになっております。高等学校から大学に継続をして業を修める場合におきましては、これは問題ございませんが、不幸にして途中、いわば、大学の入学試験に落第をして浪人をするというような場合におきましては、法律構成上、大学に行って、大学に行きながら高等学校で借りた修学資金の償還もなさなければならない、そういうようなことになっておったのでございます、その点を改めまして、途中、浪人を経て大学に就学し、あるいはインターンをやります、そういう場合においては、その高等学校分の修学資金の償還金の支払いを猶予することができるということにして、実際問題としては、従って、大学を出てから両者を一括して一定の計画に基いて返還をさせる、そういうふうな仕組みを開くということでございます。  それから第三は、修業資金、これはまあ学校ではなくて、あるいは洋裁でありますとか、その他そういったようないわゆるまあ業務の修習をやる場合におきまする資金でございますが、これは法律上、そういう知識技能を習得する期間は二年間ということにきめてあるわけでございますが、二十才をこしました場合においては、その二年の範囲内においても従来その貸付が打ち切られるというような仕組みになっておりましたので、この点を改めまして、二年の範囲内であるならば、二十才に達した後においても継続して貸し付けることができると、そういうふうにいたしたい、そういうことでございます。  それからその次の第四点といたしましては、母子福祉資金の貸付に関しましては、都道府県児童福祉審議会、その意見を聞いて貸付あるいは却下をする、すなわち処理をする、そういうふうな仕組みになっておったのでございます。理屈の上では従ってこの審議会を一々開いてやれば、まあそう大した支障はないわけでございますけれども、実際問題としては、やはりこの児童福祉審議会が開かれるまでの間、多少いわゆるためて、一緒にかけるというようなことも実際問題としてありましたし、そういうことで非常に急ぐ場合におきまして、その児童福祉審議会が開かれるまでに貸付が実際に延びる、そういうようなきらいもございましたし、その点の一つの救済方法といたしまして、急を要する場合におきましては、審議会の意見を聞かないで、貸付を決定することができる、そういうふうにいたしたのでございます。もちろんこれはそういうことで、県だけが行いますについては、十分気をつけてやらなければならないことは、言うまでもございませんが、必ずその次の審議会には、それを詳細報告させるという措置をとりたいと思いますし、それからこれは貸付の場合でございまして、却下する場合には、必ず審議会の意見を聞いて却下をする、そういうようなことになるわけでございます。  それから、その次の第五点といたしましては、償還につきまして、いわば約束に反して延滞をするという場合において、まあ違約金を取るということになっておりますが、これの利子が百円について一日四銭の割合ということになっておりますのを、ほかの国税等の例にならいまして、これを三銭に引き下げるということでございます。これが大体提出をいたしております改正法律案の内容でございます。  次に、児童福祉法の一部を改正する法律案について御説明を申し上げたいと思います。  これの改正の条文は相当たくさんにわたっておりますが、内容といたしましては、この未熟児の養育についての規定を設けることが、まあ大部分を占めるわけでございまして、そのほかに母子保健指導の関係を改正をするというような、まあ大体二つのことを内容とするのでございまして、ほかのいろいろな条文は、これに関連をいたしまして、あるいは条文整理をし、あるいは字句を直す、そういうようなことでございます。  未熟児の関係について、まず、申し上げますと、未熟児はお手元の、資料も差し上げてありますが、全体の出生児の中に、まあ未熟児と考えられるものが、大体六・六%、その数にいたしまして、約十一万を数えておるのでございます。これは、まあ、御承知のように、月が満たないで生まれる者、それから、まあ、重さとしましては、これは国際的な水準として、二千五百グラム以下の子供、それから、なお、医師がまあ発育その他の状況から見まして、いわゆる未熟児と判定する者と、そういった者が内容でございますが、その数は今申し上げた通りでございます。もちろん二千五百グラム以下が、今申し上げましたように相当な数になっておりますけれども、大体の感じといたしまして、二千三百グラム以上、すなわち二千五百ないし二千三百、その辺のクラスにつきましては、これはいわば未熟の程度が軽いわけでございますから、成熟児とそう大きな径庭を見ない。すなわち、手がかからないで済むというふうに考えておるのでございます。その数が約四三%ぐらいに考えておるのでございます。そして、一番気をつけなければならないのは、大体千八百グラム以下というふうに考えておるのでございます。それに応じましてこの対策を立てて考えておるわけでございまして、法律の内容といたしましては、二千五百グラム以下の乳児が生まれました場合におきましては、保護者の方から保健所長に届出をさせるということにいたしております。これは医者に届出をさせることがいいじゃないか、そういうような考え方ももちろん成り立つわけでございますが、むしろ考え方としては、これは保護者がいわばいろいろな施策の受益者になるわけでございまして、その意味において、結核とか、伝染病の届出と違って、いわば申請的な意味を持つと考えまして、保護者に届出の義務を課したわけでございます。もちろん、それはそういうわけでございますから罰則をつけておりません。法律上の一応の義務といたしておるのでございます。  次に、この届出のありました、あるいはその他の方法によりまして発見いたしました未熟児につきましては、第一には、保健所の職員をしてその未熟児の保護者を訪問させて必要な指導を行わせる。すなわち保健指導を行わせる。これは医師の場合も、助産婦の場合も、保健婦の場合もあろうと思います。そういうふうにいたしまして、それからさらに程度の重いものにつきましては、どうしても病院なり、あるいは診療所に収容をして、特別の養育医療を施さなければならないというものにつきましては、そういった病院に入れて養育医療を給付する、そういうような二本立の考え方をとっておるわけでございます。大体区分けといたしましては、千八百グラム以上のものにつきましては、大体これは保健指導でいくものと考えておるのでございます。千八百グラム以下のものにつきましても、死亡するものを除きましては、一部はいわゆる家庭で養育をするものについて訪問指導をするし、一部は病院、診療所に入れまして養育医療を給付する。そういうような考え方をとっておるのでございます。  そこで養育医療につきましては、肢体不自由児における育成医療と同じような考え方に基きまして、設備その他の点を勘案をして、そのための医療機関を指定をいたしまして、この指定の対象としましては、もちろん、設備その他の点を勘案しなければなりませんので、現在のところそうたくさんは望めないと思いますが、さしあたって、一保健所区域に一カ所程度のものはこれはどうしても指定をしなければならないと思いますし、それ以上につきましては、設備等の点を勘案して、なるべく指定をする、そういうふうな考え方で進みたいと思っております。保健所が大体八百ございますから、そういうふうな数字にお考えをいただいてけっこうだと思います。  それから、その指定医療機関におきまして給付します養育医療の内容は、法律に書いてありますように、診察あるいは薬剤、治療材料の支給その他ずっと書いてある。あるいは入院費あるいは看護の費用、移送の費用というふうに書いてあるのでございますが、これについての診療報酬でありますとか、あるいは指定医療機関の指定取り消し、そういった観念は従来の育成医療の指定医療機関と大体同じような形をとっておるのでございます。それから、なお、未熟児の養育につきましては、保育器が必要な場合が相当あるわけでございます。これらを各家庭でそれぞれ持つということもなかなか大へんでございますので、保健所に保育器を備え付けまして、必要な場合に貸し出すということも考えておるのでございます。この未熟児の対策は、三十二年度の予算に初めてこういうような形をとって計上されたのでございまして、金額といたしましては、約二千六百万円でございまして、もちろんこれをもって十分とはこれはいいかねる状況でございますし、たとえば養育医療の給付につきましても、この予算で予定をいたしておるのよりも多い場合も考えられるのでございますけれども、この未熟児対策それ自体が、今、申し上げましたように、いわば初めて発足したわけでございまして、いろいろな点で未熟な点もあろうかと思いますが、今後この施策の進展に伴いましてこれが充実をはかって参りたいと思います。  次に、母子保健指導につきまして、すなわち妊産婦、乳幼児等に対します保健指導に関しては、従来、都道府県知事の権限として、都道府県保健所を中心にして運営をいたして参ったのでございますが、特に保健所を設置いたしまする市、すなわち政令都市と申しておるのでございますが、この保健所を設置する市に対しましては、都道府県知事のこういった権限を移譲をする。移していくというふうなことを内容といたす改正でございます。これは、母子保健指導それ自体が、まあ根本的に申しまして、妊産婦あるいは乳幼児を対象とするものでございますから、それらの者の身近な所でそういったサービスをするという形の方が、いくべき方法だと考えます。その意味において、一般の市町村の問題は、これは将来の問題として当然考えなければならぬと思いますが、さしむけ、保健所を持っております市に対しましてはこういった権限を移譲することが、この仕事を円滑に、かつ、十分にやっていく上において賢明ではないか、そういうふうな考え方のもとにこういう改正をいたしたのでございます。  その他の条文につきましては、技術的な点にわたる点が多うございますので、省略をさしていただきたいと思います。  なお、申し落しましたが、乳児の死亡率は御承知のように終戦後急速に低下をいたしまして、現在千対四十の線を上下をしているような状況でございますが、そのうち約三分の一は未熟児が占めておる、乳児死亡の三分の一は未熟児が占めておるような状況でございます。未熟児の死亡率は正常児の死亡率の大体十倍近くなっておりまするので、この乳児の死亡率は相当低下をいたしましたが、これをさらにいわゆる国際水準並みにこれが低下をはかる上から言いましても、未熟児の問題をやはり手をつけていくということが非常に大切な問題ではないかというようなふうに考えておるのでございます。  簡単でございますが、それだけ申し上げまして、御質問によってお答え申し上げます。
  123. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 同案に対する質疑は、次回以後にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  この際、参考人出席要求についてお諮りいたします。  児童福祉法の一部を改正する法律案審査に資するため、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じます。その人選、日時、手続等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと存じます。委員長は理事と協議の上進めることにいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三分散会      ―――――・―――――