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参考人(
横田肇君) それでは、私が
貝島炭鉱労働組合組合長、
横田肇でございます。
ただいま
会社側の方から、
災害の
実態についての概略的な
説明がございましたが、私どもの見ました
災害に対する御
意見を申し上げまして、御
参考に供したいと存じます。日時あるいは
賃金の問題あるいは時間的な問題については、前
説明者の方からなされておりますので、幸いまた
図面が掲示されておりますから、あれに基きまして、われわれが考えております
事柄を申し上げたいと思います。
あそこの
図面にございますように、
通常切羽と
風道との
角度は九十度、大体直角になっておるというのが
通常でございます。ところが、
図面にございますように、あの
角度は鋭角になっておりまして、大体五十度の
角度になっておるわけであります。そうして参りますと、
通風の
関係は非常に悪化されて参る、こういう
現場事態にあったということでございます。
それから、こちらに
充填の
実態についての
説明された
図面がございますが、あれに基きますと、大体ああいう形になるわけでありますけれども、われわれ労組の立場からは、この
充填の問題について非常に重要視しておりまして、去る六月前後でございますが、従来非常に
充填がおくれている、このことが
保安上ゆゆしいということで、
会社側に対しまして、
充填のおくれについては絶対にしてもらいたくない。従って、その結論といたしましても、
会社側は二間
充填を原則にするということをば認めております。ところが最悪の場合でも、ああいう
事態であればまだまだよかったわけでありますけれども、
災害が起りました当時の
実態は、あの
間数が、
充填された個所から
炭壁面にかけまして七間半、従って、最後に書いてございます、
間数が一、二、三、四、
四間半になっておりますが、あれになお三間重ねて大
肩付近はあったということであります。そうして参りますと、
落盤等のおそれも十分ごさいますし、御承知のように、
通気は
近道を迫るという形で出て参るわけであります。従って、普通の
図面の
実態でございますと、ああいう
角度でも
通風が悪くなる。それが
充填が七間半おくれている
関係上
近道を通りますから、ずっとこちらの
充填の
あとが出ておりますけれども、あれが一問、二間、三間、四間というところから七間のところを空気が通るという形になるわけであります。そうして参りますと、当然特に
扇風機がとまったという場合などは、あの大肩に
ガスが回流するという
事態が出るのは、これは、常識的に判断いたしまして、当然でございます。
次は、数日前までは、エアによるゼットで、切詰めのところの
ガスの滞流を拡散をいたしておったわけであります。それを電動機にかえまして、
ガスの拡散をやっておったわけでありますけれども、少くとも常日ごろ、あそこは
ガスがたまるということで、大
肩付近に働いておる人たちは、頭が痛くなるということを常に言っておりましたし、
係員からも、
ガスがたまるので
注意してくれということを言われておった。こういう
実態があったわけであります。この
エアーゼットで参りますと、御承知のように、
ガスというのは、何か火源がないと、
通常爆発するということがないわけでありますけれども、それをばわざわざ電動機、竹に電動機の
スイッチをば、
ガスは御承知のように軽いので、上部の方へだんだんたまって参るわけでございますけれども、その
スイッチをわざわざあの大肩の
図面に書いてございますあの個所の、しかも上部、大体あそこが八、八あるいは七、七のワクが入っていると思いますが、その上部一尺ないし二尺
程度下ったところに
スイッチをつけておる。こういう点につきましても、
保安上われわれといたしましては、経営者側としての、管理者側としての考え方が全く誤まっておるというふうに判断をいたしております。
次は、
風量をば、先ほど
説明ございましたように、二百十立米ということを言われておりますが、これは法規できめられた最低の線であるわけであります。ああいう鋭角のところで、しかも
充填がおくれておって、七間半もあるような個所で、その法規できめられた二百十立米
程度の
風量でよかったかどうかということにつきましても、われわれとしては、はなはだ疑問に思っておるわけであります。
風量が多ければ多いほど
通風状態もよくなります。ましてああいう鋭角であり、七間半も間隔のあるような
実態の中の
風量ということにつきましては、当然これは、管理者としても十分考えねばならぬ点があったというふうに考えております。
次は粘土密閉、
通常に
充填がおくれる、あるいは
充填された個所におきましても、完全に
充填ができないわけであります。深けの方は、比較的
通常の
角度がございますので、一ぱい
天井まで詰まるという形ができるのでございますが、
充填の終る上部の個所におきましては、
通常一尺前後のすき間ができるわけです。そうして参りますと、その点については、原則といたしまして粘土等を密閉いたしまして、
通風状態をよりよくしていくという
状態を作るのでありますけれども、その点を管理者としては怠っておりまして、ずうっと三、四十メートルこの
風道がございますが、
うしろの方に対しては密閉をやっておったわけでありますけれども、大
肩付近の所四、五十メートルは、密閉がされていなかった。従って
通風状態は、七間半というような間隔がある上に、なお粘土密閉がされていないという点から考えまして、相当この
通風状態が悪かったというふうに考えておるわけであります。
それからその次は、ただいま
説明がありましたように、貝島炭鉱におきましては、
水力充填をやっておるわけでありますが、その
充填する能力がなかった。つまり
採掘をしていくというこの前進の速度と、それから
あとを
充填していくその
充填は、当然
採掘の前進に対して、それに即応した
充填がなされる能力がなければならなかった。ところが、この個所におきましては、往々にしてこの
充填がおくれておる。これは、
充填の
故障という点も当然能力の中に入りますが、その後
会社側とこの点につきまして話をいたしましたけれども、
会社側といたしましても、これを六十インチ
パイプ一本でやっておりましたが、これを二本にする。二本にして
充填能力というものをば増加しまして、
採掘の前進に伴って補っていこう、並行して均衡を保たせる、こういう考えを
会社側は今度はっきり持ったわけでありますが、結局
充填能力という点を考えないで、
採掘の方ばかりを進めたというところに大きな欠陥があったというふうに考えております。
それから最後に、当然ああいう悪
状態に、それぞれの点が指摘できるわけでありますが、そういう
状態にありますれば、当然この
採掘をば
停止するのがあたりまえであるわけでありますが、その
停止をしなかった。幸い、当日は十三名の罹災者に終ったわけでありますけれども、あれがもし
採炭の方であったといたしますと、数十名の方が罹災したということになったわけであります。
次に、総体的に申し上げたいことは、あらゆる点において、この最悪な条件が積み重なっておる中で、少くも
保安管理者は、
作業実態あるいは
保安の
実態につきまして、それぞれ報告を各
係員等を通じまして受けておるわけであります。そうしますと、その
実態の上に立っての適当な指示措置が明確に指示されていなければならなかった。ところが、ああいう悪
実態にあるにかかわらず、そういうような措置がされなかったというように私どもはっきり考えておるわけであります。
それから、火源の問題でございますが、
通常スイッチのスパーク等で
ガスが
爆発したということに考えられやすいわけでありますけれども、私どもは、現在はっきりいたしておりませんけれども、
ガス爆発につきましては、マイトの
爆発と、あるいは、あそこの例で申しますと、
スイッチを入れて
局部扇風機が
運転を開始する、この際に炭塵等が当然
扇風機の中に入っておりまして、往々にしてあそこから火花を発する
事態もあるわけであります。また、
充填が
故障になって参りまして、そういう
事態の中で、
充填の
故障を判定するために、あるいは
充填の流れをよくするために、往々にして六インチの
パイプをばたたく場合があるわけであります。そうしますと、当然火を発するというような
事態もあるわけであります。そういうことで、現在防爆について、われわれといたしましては明確にいたしておりませんけれども、
スイッチというふうに断定するということにつきましては、まだ問題が多々あろうというふうに考えておるわけであります。
それから、
局扇がとまったということにつきましては、若干の時間的なズレがあるわけであります。私どもが
調査いたしましたところでは、大体午前四時に
停止が発見されております。当然この
局扇が
停止したということになりますと、
ガスが滞留する。ああいう悪
状態にありましたので、常識といたしまして、当然そのような個所で
作業をさしておくということにつきましても、これは、
係員としての常識を疑わなければならぬということになりますけれども、先ほども申しましたように、刻々上司の方へ、
作業実態なりあるいは
ガスの検定の
実態なりが報告されておりますので、当然あのような悪
状態の所につきましては、上司の方から適宜指示をさせれば、ああいう
事態がなかったというふうに判断をいたしております。で、
停止したので
係員が検定をしたというような言い方をされておりますけれども、私どもが
調査いたしました結果といたしましては、そういうふうにはなっておりません。
それから、
電工に連絡をいたしまして、
スイッチの
故障を指示したということでございますが、御承知のように、防爆
スイッチにいたしましても、当然これが
故障を起したということになりますと、現場でその修理をするということにつきましては、
保安上これは常識としても合点のいかぬ点でございまして、当然
スイッチ等が
故障いたしますれば、予備品が備えてございまして、その予備品を持って参りまして、取りかえをいたしまして、そうして
故障を起した
スイッチを
坑外に持って参りまして、そこで十分点検をする、これが常識でありますけれども、その予備品が全然なかった。また
電工にいたしましても、
通常あのような
状態の中にあっても、
スイッチの修理を現場でするという慣習が、私どもが
調査した結果といたしましては、あるわけでございまして、この点につきましても、
保安教育には、相当
保安管理者はサボっておったというふうに考えております。
それから、
有吉係員の行動ですが、少くも
局部扇風機が数日前はエァで行われておった。それをば電動機にかえたという理由は、
ガスが多いので、常時
扇風機を
運転せねばならぬ、こういう考え方で、
会社側経営者といたしましては、あれをば電動機にかえたわけであります。で、
菅牟田坑におきましては、ある一定時間、一時間ないし二時間エアがとまるわけであります。そうして参りますと、エアの
扇風機は
停止してしまう。そういうことではあすこの
保安の確保ができないということで、わざわざ電動機にかえた。そうして電動機にかえることはよろしいが、当然
停止すれば
ガス等の滞留があり、
爆発のおそれがあるということでわざわざ電動機にかえたのでございますので、当然電動機が
停止した場合には非常に危険
状態が発生するということが事前にかかっておったわけであります。従って
停止した場合における措置というもの、指示というものが明確に
係員になされておりますれば、当然あのような事故は発生しなかった。しかも二時間にわたる
停止であったことを考えましても、いかに
保安管理者としての日ごろの
保安に対する考え方が怠慢であったか、全般的に言いまして、生産能力を上げるということに全精力をば傾倒いたしておったために、
保安の問題についておろそかになり、しかもあのような悪
状態が積み重なっている中においてすら、管理者としての
保安に対する適当な指示を怠らざるを得なかった、こういう
実態にあったわけであります。まあいずれにいたしましても、この生産第一主義という観点からすべての
作業を推進する、こういう立場が結局あのような鋭角を持った
切羽実態を作り、
水力充填がおくれる、こういう
実態にありながらも、
採炭の方はどんどん進めていく、こういうことが最大の原因であり、
係員あるいは
電工等につきましても、
保安教育というものがその
実態の中から適当に教育をされていなかった、非常に形式的な教育に流れておった、こういうふうに判断をいたしております。
その他若干早急の間でございましたので、落ちた点もあろうと思いますが、重要な要点を申し上げますと以上のようなわけであります。