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国務大臣(
根本龍太郎君) 御指摘の
通り十数年前の戦争によって一番多くの犠牲を受けたのは
住宅でございます。さなきだに人口の増加の署しい、周密なる人口を有する日本の国にとっては、戦前から
住宅問題が非常に深刻な問題でありました。ところがあの大戦争によって全く収拾すべからざる
住宅地獄になった。戦後
国民の努力によって食生活、衣料の方は安定しましたけれ
ども、何しろ
住宅となりますれば金額も相当これはまとまったものでなければ
建設できない、戦前におきましては
住宅投資が一応経済的に成り立った、しかるに戦後においては
住宅に投資することは採算がとれないのみならず、かえって現在の
家賃の状況からみればこれはできないということになりましたために、やはりこれは相当程度のまとまった金を持った人でなければ、
住宅を作れないという状況になったことが、より以上
住宅問題を深刻にしたものと考えなければならないと思います。なおまた従前でありますれば、不動産金融が相当簡易、簡便に
地方銀行においてなされたけれ
ども、現在ではほとんど不動産金融がなされていないということが、
住宅政策に対するいわば金融の窓口が全部シャット・アウトされておるということが、第三のこれは難点として出てきたと思われるのでございます。しかも一面におきましては、
住宅に対する要求が、家を焼かれた人のほかに、新しい家庭を持った人方がどんどんふえてくるということにもなりました。こういう観点からいたしまして、鳩山
内閣のときに初めて
住宅問題に重点を指向して参ったのでありますが、しかしなかなか
政府の
財政状況が必ずしもその意図のままに資金の投入ができない、こういう
現状できておるわけでございます。
今
住宅に対するフィロソフィを述べろということでございまするが、これは戦後各国を見ましても、やはりこの
住宅問題がその国の政治的あるいはまた思想的な大きな問題になっておりまして戦後行われるいろいろの犯罪の頻発、こういう問題も、まあ究極するところは、
住宅問題にその根拠を発するんじゃないかといわれるような状況であるわけでございます。その
意味におきまして、これは単一の方法ではなかなかできないわけでありまするから、あらゆる総合的な施策をもって、この
住宅の充足をはからなければならないと考えておるわけであります。その
意味におきまして、
政府といたしましては、いろいろと
住宅建設に関する税制上の優遇の
措置、あるいはまた直接
政府資金によって
住宅を建てて供与する、あるいは公庫によって金融の
措置を講ずる、あるいは
市町村団体が補助助成を受けて低
家賃制度でやるというふうな、非常に多角的な
措置をとらざるを得ないと思っておるのでございます。こういう観点からいたしまして、先般も御
説明申し上げました
住宅五カ年
計画を立てましてやっておるのでありますが、また一面におきましては、
住宅はやはり今スイート・ホーム論が出たごとくに、一応の企画によって
政府が建てておるけれ
ども、それでも必ずしもみなが満足しない点がある、やはり個人差というか家庭は自分の住みよきものにしたいという考えがありますので、その点で活用されるのは公庫ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。この
住宅問題は現在いろいろの
政策の中で、最も重要にして、かつ、最もむずかしい問題でありまするので、私もできるだけの努力を傾けておるのでございます。これについては、やはり従来から問題になっておりましたごとくに、
住宅を作れということと、しかもそれは安く作れということに非常に問題があるのでございます。現在のところでは、
公団住宅を作るということになれば、これは入りたい人がたくさんあるから、非常に奨励されておりまするが、一たん入ってみると、どうも自分の給与との
関係から見れば高過ぎるという反発が起されます。また一方からいうと、
政府が作って、しかも安いものに入って不満であるなら、おれ
たちがかわってやろうじゃないか……特定の人間に対して特定の利益だけを与えるというのは適当でないという議論も出て、ここにいろいろの
紛争が起るのでありまするけれ
ども、しかしこれはその個々の立場からみて、いろいろの議論がございましても、やはり究極において、総合的に見て、できるだけ
住宅をたくさん作り、しかも漸次これが規格も高くなり値段も低く持っていくという、余裕ある態度でこの
住宅問題を考えないと、
一つ一つの個々の立場から片目でものを見れば、せっかくのこういう問題も円満に遂行できないじゃないかということを考えておる次第でございます。特に先ほど指摘いたされました宅地の問題がその
一つの例でございます。現在
住宅政策で一番困難な問題は、宅地の人手難、それが高いということです。これをやろうとすると、今度は農地との
関係があって、すぐに農地をつぶすのはけしからぬ、しかもそれが安く買い過ぎる、もう少し高くせいという要求が出て参るわけです。そうすると自然に
家賃にかぶさってくる。こういうような状況で、やはりこれはおのずから公共の立場から見て、総合的に施策をいたすようにわれわれも考えまするし、
国会におかれても、そういう点から、
一つ高い
段階から御指導御協力を賜わりたい、かように考える次第でございます。