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1958-04-03 第28回国会 参議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月三日(木曜日)    午前十時三十五分開会   —————————————   委員異動 本日委員笹森順造君辞任につき、その 補欠として吉江勝保君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     寺本 広作君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            森 元治郎君            石黒 忠篤君    委員            井野 碩哉君            鹿島守之助君            重宗 雄三君            杉原 荒太君            永野  護君            野村吉三郎君            吉江 勝保君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            佐藤 尚武君            安部 清美君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務政務次官  松本 瀧藏君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務参事官   白幡 友敬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国インドネシア共和国との間  の平和条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国インドネシア共和国との間  の賠償協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○旧清算勘定その他の諸勘定残高に  関する請求権処理に関する日本国  政府インドネシア共和国政府との  間の議定書締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) それではただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、以上三案を一括して議題とし、前回に引き続き、質疑を続行いたします。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 曾禰益

    曾祢益君 平和条約の問題でおそらく同僚委員から御質問もあったし、御答弁も当局からあったと思っておりますが、この第三条の(b)項にある「貿易、海運その他の経済関係分野において」「該当する条約又は協定」ができるまでの間、「いかなる第三国に与える待遇に比較しても無差別待遇相互に与える」こういう規定になっておるわけですが、この無差別待遇ということは、理由があって、特に先方希望があって、こういう表現になったやに伝えられておるのですが、なぜ普通のような、最恵国待遇というような言葉を使わなかったのか。また、最恵国待遇と、いわゆる第三国に比して無差別待遇という表現待遇上いかなる相違があるのかないのか。これらについて、これは条約的な問題ですから、係官からでもけっこうですから、御説明願いたいと思います。
  4. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) この条文作成の際、先方から最恵国待遇という言葉は、インドネシアとして今までどこの国とも最恵国待遇条項、そういったものはない。また、言葉の感触からいっても、インドネシア側でどうも好ましくないので、無差別待過にしてもらいたいという希望があったのでございます。しかし、この内容につきましては、全く最恵国待過と同じ意味であるということはこの際了解をしたわけでございます。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 これはまあ新しい国ですから、従来の国際法あるいは条約表現等を好まないということもあるかもしれません。最恵国待遇と違わないという点については、いかなるはっきりした、たとえば両方が同意した議事録等な作ってあるのかどうか、最恵国待遇と違わないということをどう明確にされているか、この点はどうです。
  6. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) お答え申し上げます。  特に文書をもってこれを明確にしたわけではございませんが、当初からこの平和条約の中に、この種の条項を入れるときに、日本側から最恵国条項というものを要求したのでありますが、先方が反対いたした。その際にはっきり、口頭ではございますが、これは全く意味は同じものであるという説明を得たわけでございます。
  7. 曾禰益

    曾祢益君 その点について、この最恵国待遇無差別待遇と同じものだということについての、いわばはっきりした証拠は、はっきりした条項にはならないと思うのですが、それは第二の問題として、最恵国待遇という言葉無理別待遇という言葉が、日本側から見て条約上同じだということははっきり言えるのかどうか。従来の慣例等から見て、先方主張にかかわらず、理論的にそういうことが言えるのかどうか。また、そういう不都合がないのかどうか、これは日本側解釈伺いたいと思います。
  8. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 御指摘通り、われわれとしましては、また、一般国際的にはモースト・フェイバード・ネイションですか、最恵国民待遇という言葉をずっと使いならしているわけでございます。従いまして、最恵国民待遇という、いわば一種のテクニカル・タームスを使った方が一番はっきりするわけでございますが、この条約交渉の経緯からしまして、インディスクリミネィトリィと申しますか、無差別待遇という言葉を使いました。ところが、よくその結果を考えてみますと、これはやはり全く同一のものではないか、すなわち、最恵国でございますから、一番最恵国にどの国かがある待遇を与えられて、それが一番いい待遇であればそれに右へならえするというのが最恵国待遇でございます。ところが、それが右へならえしなかった場合には、そこに差別的待遇が生じますわけでございますから、結局右へならえした最恵国待遇ということは、実質においては無差別になっていくというふうな、結果的に見ますと表現は多少、そのような表現は使いますが、私どもとしましては、結果的には同一であるというふうに観念しております。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 無差別ということから、最もよりよき待遇を得ている国の待遇に均霑するということは確実だ、こう見られた、こういうわけですね。  それからもう一つ、これはもちろん日本国として条約上の特殊の権利義務をきめるのでしょうが、実は国民に対する待遇というものを当然含んでおりますが、第三国民に与える待遇日本国民も受ける、個人であろうと、法人であろうと。その点は、日本国とあるいは第三国無差別ということから、これは含んでいるのですか。
  10. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 御指摘の、ここに第三国とありますけれども、当然国民も含んでおると観念しております。
  11. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 第三条に、「バンドンにおいて開催されたアジアアフリカ会議における決定精神に従って」云々とありますが、こういうアジアアフリカ会議決定精神、こういう条項がどういう趣旨で入るか、その経過をちょっと御説明願いたい。
  12. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) 御承知のように、この種の条約に、かようなバンドン会議精神云々という言葉が入りますのはきわめて例が少いところでございますが、インドネシアといたしましては、バンドン会議インドネシア国内で行われまして、しかもこれがアジア新興国の歴史の中ではきわめて大きなできごとであり、意義深いことである。インドネシアは非常にここに民族的な一つの喜びと申しますか、誇りを感じておるわけでございます。そこで、この会議には、日本も参加しておりまして、この精神には賛成しておるわけでありますから、これをぜひ入れてもらいたい。特に先方がその際言いましたことは、インドネシアとしては、このバンドン会議に集まった国々に対しては、特に気持の上でほかの国よりもさらに親密感を持っているのである、むしろこの主張を入れてもらうことによって、インドネシア日本との関係というものが非常に密接なんであるという自分たち気持表現しておるのであるという説明でございました。形といたしましてはきわめて新しいと申しますか、特異な形ではございますが、われわれといたしまして、この条項を入れることによって、何ら日本に不利になるとかというようなことはございませんので、こういうことを入れたわけであります。
  13. 井上清一

    井上清一君 インドネシアに対する賠償に関連します経済協力について、二、三伺いたいと思いますが、経済協力というのは、これはビルマの場合と違いまして、純然たる民間ベースで、コマーシャルベースでやるわけですね。この商業上の借款並びに投資についてどういうような形で、そしてまたどんなような投資なり、あるいはまた、借款というものを予想されておりますか。そういう点についてお伺いを申し上げたいと思います。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この経済協力の問題でありますが、これはフィリピンとの場合と同じ条件になっております。それで、民間人たち同士の間においてインドネシア経済開発あるいは経済建設等にお互いに協力していこうというようなことをとり行なっていく。それは普通のコマーシャルベースによってとり行われていくものでありまして、両者が同意いたしますれば、そういう点が進行して参るわけであります。対象としては、現在のインドネシア経済から見まして、大きな問題からあるいは中小企業の問題まで相当範囲な問題が数えられるわけでありまするけれども、日本側からいたしますれば、おそらく日常消費物資の生産問題とかいうことから始りまして、大きなものはプランテーションであるとか、あるいは鉱物資源開発であるとかいうような問題に範囲が広がっていくのではないか、こういうふうに予想されております。現在までのところ、日本インドネシアとの間に国交が回復しておりませんので、具体的にまだそういう問題について両者相当意見を戦わしている点が少いわけでございまするが、にわかにここでどういうプロジェクトが大きな問題として取り上げられるということはちょっと申し上げかねますけれども、相当これが活用されるとなれば範囲は広範囲なものになる、こういうふうに考えております。
  15. 井上清一

    井上清一君 インドネシア政情は、だいぶどうも騒然たるものがあったようでありまして、最近新聞では、だいぶ落ちつきを見せてきているということでありますが、インドネシアに対する経済協力という、このせっかく交換公文でもってきまりましたものも相当政府がてこ入れをしなければ、なかなか実際として動かないのじゃないかというふうにも考えるわけでございますが、こういう点について御意見伺いたい。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 従来、ビルマもしくはフィリピンに対する経済協力にいたしましても、相当この問題の進行というものは予想よりも活発でないわけでありまして、こういう条約締結されました当時は相当希望をもって交渉をいたす人も、あるいはそういう問題を取り上げるということも出てきておりますが、なかなか実際問題としては、最終的に決定する場合が少いようであります。その原因と申しますと、むろん日本経済界において外国投資あるいは共同事業ということになれておらぬ点も根本的にはあるわけでありますが、同時にまた、それぞれの国の政情等に対する安定感というようなものも場合によっては影響あると思います。それからもう一つは、やはりこういうものに対しますその国の為替管理関係その他の法律関係もございますし、また、日本側におきましては、やはり今日のような日本の資金が非常に窮屈な時代でございますので、金利あるいは償還方法というような問題についていろいろな難点もあるのであります。政府といたしましては、可能な範囲内において、そういうものに対してできるだけあっせんしていくという立場をとってきているわけでありまして、今後ともそういう意味で、責任は負っておりませんけれども、スムーズにそういうものができるようにあっせんしていきたい、こう考えております。
  17. 井上清一

    井上清一君 従来、フィリピンあるいはインドネシアビルマ等わが国賠償を取りきめました国々との間に、フィリピンには四の割合、また、インドネシアには二の割合ビルマは一というような割合賠償をやるんだというような俗説と申しますか、そういうふうなうわさがだいぶ流れておったのでございますけれども、それは話し合いに出た問題ではなしに、何か世間の取りざたとでも申しますか、そういうふうな割合で今後賠償をするんだ。そうしてビルマが一の割合であって、もしそれが他の国に対する賠償の比率が非常に高まるというと、ビルマの方では、いわゆる対ビルマ賠償ビルマとの平和条約の第五条のエスカレーター条項によって、ビルマは新たに日本インドネシアなり、フィリピンなりと高い割合でもって賠償約束をすると、ビルマはそれに均霑してビルマの要求を再検討するんだというような約束があるわけでございますが、それについて、現在のその他の国々とのインドネシアなり、フィリピンなりとの賠償のつり合いがビルマとの場合において大体とれておるというふうにお考えになっておりますか。この点について伺いたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ビルマ賠償条項について、エスカレーター条項がついておることは御承知通りでありますが、フィリピンインドネシア等賠償決定いたして参りますと、あとにそういう問題が条約上は起り得るということはあります。しかし、一般的にいいまして、世評があります議論に対しましても、あるいはまた、今回の取りきめによります金額をわれわれが三国の関係の上で検討してみましても、大体、適当な金額ではないかというふうに考えておるわけでありまして、日本としては、十分そういうことに対して説明し得る準備もしておるつもりでございます。今日までのところ、ビルマはまだエスカレーター条項等について何らの意思表示を正式にいたしておりません。
  19. 杉原荒太

    杉原荒太君 インドネシアとの賠償協定の中の第六条に、使節団特権等のことがずっと規定してありますが、これが国内法との関係はどうかということを事務当局の方から説明していただきたいと思います。
  20. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答え申し上げます。  第六条で、使節団に関連しますいろいろな特権規定がございますけれども、これにつきましては、別に国内法上の措置をとらずに、私は条約自体によって適用になるというふうに解釈いたしております。
  21. 杉原荒太

    杉原荒太君 この中には、税法関係——国内法の観点からする税法関係とか、国事訴訟法関係、そういう点から見ても特例が規定しているわけなんだが、こういった場合には、ことに民事訴訟法関係など相当問題だと思うんだが、こういう場合には、何らかやはり国内法上もこういうことが可能だと、法律的に可能だという基礎があってやってきているのですか。今までの例から見て、この条約自体国内法的にも効力を持つという実例、それは何ですか、この割に例は少いことだと思いますが、これはこのままでこれはすぐ裁判の方に関係するんだと私ども思うんですが、それはそのままでいいのですか。何か既存の民事訴訟法なり、解釈からしてもこれは出てくるというならばそれでよろしい。そうじゃなければ、そっちの方の改正をするというようなことを、今までこの条約批准に伴って国内法の方の改正をしておったか、その点どうなんですか。
  22. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その点も御指摘通りでございまして、御承知通り、普通ならばまあ条約ができまして、この条約を受けてそれを実施するための国内法が必要な場合には国内法を作るというのが通常の様式でございます。しかし、必ずしもそれによらないまあ例外的な場合として、必ずしも当ると申しますか、私が現在承知している範囲ではもう郵便条約郵便料金の件があったかと思います。この点は、条約上において郵便料金決定いたしますと、別に国内法上においてそのまた処置をせずに、そのままそれを公布することによって、それが国内法と同じ価値及び拘束力を持ってくるというようなことも例もないことではないと考えております。従いまして、やり方としては、実は非常に統一的じゃないのでございますけれども、この使節団という限られた人員と限られた範囲におけるこのような特権でございますので、特にことさら例外措置国内法上でうたうというようなことでなくて、このまま便宜適用するというふうに考えている次第でございます。たとえば、まあ御承知通り一般外交官特権というようなものも、これはまあ国際慣習において当然認められたということによりまして、国内法で、たとえば関税定率法のようにうたっている場合もございますけれども、必ずしも国内法では全部うたってない、これはまあ直接国際慣習法をそのまま適用して国内法の上に当然の例外になるというふうに考えられておりますので、ここのところは、特に条約規定し、これを公布することによって、その例に大体ならっていこうというふうに考えております。
  23. 杉原荒太

    杉原荒太君 この外交上の一般に認められたこの外交上の特権免除という点などは、私は実際上、そういう今言われたような取扱いでも差しつかえないのじゃないかと私自身は思うのであります。民事訴訟法関係ですね。一番あとの方の七項、第八項というところ、ここなどは、ただこれが即法律効力を生じて裁判所拘束するという何か少しこの粗雑な感じがするのですね。それでも特に法改正措置をとらぬでも、国内法自体民事訴訟法の中に何らかもう少し一般的にでも条約を適用するというふうなことがあればまだいいけれども、こういうこれは何ですね、ここにこの使節団等の財産に対しては強制執行対象にはならぬとか、あるいは個々の裁判所のこの最終判決最終裁判を、使節団拘束するものとして受諾するものとする。」これは本来ならば当然に拘束をしてしまうのであって、受諾行為というものがそこにあるのじゃない。しかし、これはこれ自体によって受諾というものがきまって初めてそういうふうになる。その他「訴訟費用の担保を供する義務免除」するというのですが、これは司法内部でも十分打合せされた結果、これでよろしいと、こういうことになったのですか。
  24. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その点は、法務省とも打ち合せまして、法務省の側でも、条約法律というような考え方でこれは適用するから、これで差しつかえないというふうな了解の上にそうやったわけであります。それから同じようなことは、御承知通り通商代表部特権もやはり同じようなことをやっておりますので、実はそれにつきましても、国内法上の措置をとらずにやった次第でございます。やはり同じように考えておる次第であります。
  25. 井上清一

    井上清一君 平和条約の第三条の(b)項に、「海運その他の経済関係分野において」とあるのです。この中に「海運その他の経済関係分野において」という中に、国民居住とか、入国とかあるいは経済活動というようなことがこの中に入っておるのかどうか。それからもしこれが入るならば、なぜ一体こういう大事な問題が「その他の経済関係」というような中に入れてあるのか。これらの理由について承わりたいと思います。
  26. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) これは当時交渉いたしました際に、わが方からは、日本側からは、ただいま御指摘通り、詳細に項目に入れまして、その形でもって最初持っていきたいということを言ったのでございますが、先方では、この平和条約の中に、基本的な問題の中に特に個別的に入れられると、往々にしてどうしてもインドネシア国内で誤解を起す可能性があるので、非常に抽象的な広い意味をもって、その中にすべて居住であるとかあるいは船舶という問題あるいは商社活動経済活動というものを明らかに含むものであるという了解のもとにかような表現をとることになったのであります。
  27. 井上清一

    井上清一君 それからもう一つ、ここで「いかなる第三国に与える待遇に比較しても無差別待遇相互に与えるものとする。」こういうふうに無差別待遇規定いたしておりますけれども、これは実は最恵国待遇じゃないかと思うのです。そういたしますと、オランダ人に従来与えておった待遇に均霑するのかどうか、これらの点を一つ伺いたいと思います。
  28. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) お答え申し上げます。他の国に与えております待遇よりも悪くない待遇日本側が享受できるのでございますけれども、たとえば、オランダ側に与えておる待遇よりも悪くはならないわけでございます。ただしかし、現在、インドネシアオランダとの関係におきましては、御承知のように、オランダに与えております待遇は、オランダインドネシアの間の円卓憲章を樹立しておりますが、これが現在失効してきております。現実の問題としていろいろオランダに与えておった特権的なものは非常に制限されてきております。従いまして、オランダのみが特別な待遇を受けているという事態は、インドネシアの場合にはなくなっているだろうと思います。
  29. 井上清一

    井上清一君 オランダとの場合は別といたしまして、従来インドネシアはどうも日本人入国、滞在、事業または職業活動に関しましては制限をしておったのでございまするが、今後これが緩和されるというふうにお考えになりますか。また、実際上その範囲等について十分な見通しをお持ちになっているかどうか。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般インドネシアに参りまして、その調印をいたしましたときに、スバンドリオ外相から私に対しまして、これの待遇についてはお話しのありましたように、無差別待遇入国その他に対してする。同時に、当時この条約批准されない場合においても、できるだけ早い機会にそういう待遇入国その他に対して、インドネシア政府としてはとるというようなお話をしておられました。私は条約批准されましたらば、当然そういう考えのもとに、インドネシア政府条約上もするであろうし、運用されるものと、こう考えております。   —————————————
  31. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいま委員異動がございました。笹森順造君が辞任されまして、吉江勝保君が補欠選任されましたので御報告いたします。   —————————————
  32. 吉江勝保

    吉江勝保君 この機会に、外務大臣出席でありますので、お伺いをいたしたいと思います。今まで日本インドネシア共和国の間に平和条約調印あるいは批准というものがありませなんだが、あまり取り上げられなかったと申しますか、論議の対象にならなかったように思います問題なのでありますが、今度こういうように調印あるいは批准になります際におきましてお伺いしたい一点があるのです。それはインドネシアに残留している日本人の扱いなんであります。その後どういうように外務省におきましては御調査になっておりますかということと、日本人の念願しておりまする国籍の問題、インドネシア国籍を取得したい、こういう問題につきましては、その後、外務省におきましてはどういうようなお取扱いになっているか、この二点につきまして、この際お伺いをいたしたいと思います。
  33. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) お答え申し上げます。インドネシアに残留しております日本人、つまり当時の離隊者でございまするが、今日まで依然として相当数残っているわけでございます。外務省といたしましては、昭和二十六年に在外事務所を開設いたしまして以来 この残留邦人の所在、生命その他状況を極力情報を集めて、収集いたしております。現在外務省に、ある程度の資料はそろっております。この人たちが長い間、インドネシアにおきましてはいわゆる無国籍状態であったわけでございます特にインドネシアの側から法的な保護を受ける態勢になかったわけでございますが、私たち承知いたしておりますところでは、昨年インドネシア側から、全部でないかもしれませんが、相当範囲日本人が、一粒の仮国籍証のようなものを受け取りまして、準インドネシア国籍の者と同じ待遇を受けているという状況にあるわけでございます。国交を回復いたしました際には、この問題につきまして、外務省といたしましては、インドネシア政府と話し合いをいたしまして、もし本人たちインドネシアに帰化をする希望でいる、あるいは長くインドネシアに滞在することを希望する者につきましては、インドネシア側と協議をいたしまして、そこに適当な処置を見出したいと思います。
  34. 吉江勝保

    吉江勝保君 インドネシア相当多数な日本人が残留しているというお話を今確認いたしたのでありますが、大体現在、外務省の方でおわかりになっております残留日本人というのは、どのくらいあるということになっているのでしょうか、お調べがありましたら御発表願いたいと思います。
  35. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) ただいまその統計的な数字はちょっと持ち合わせておりませんので、正確なことは申し上げられないのでございますが、大体ジャワ島及びスマトラ、これにつきましてほぼ大体わかっているつもりでおります。ボルネオ、セレベス方面では若干漏れているところがあるのでありますが、数からいたしますと、私の記憶では、大体二百から二百五十見当ではなかったかと思っておりますが、詳細な数字は後ほど調べてからお届けいたします。
  36. 吉江勝保

    吉江勝保君 その在留、残留日本人の調査ということにつきましては、総領事館あるいは領事館におきましては、どういう方法で御調査になっているのでしょうか。
  37. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) 御承知のように、インドネシアにおります日本人で比較的都会地に住んでおります者はいろいろな方法で連絡がとれますので、これは自然大体領事館あるいは総領事館あたりに連絡をしてきております。それから領事館がございません、たとえばスマトラ方面におきまして、メダンとかパダン方面の人たちは、残留者が一種の団体と申しますか、親睦会のようなものを作っておりまして、その中の世話役から領事館に連絡をしてきておるのもございます。それ以外の日本人につきましては、非常に僻遠の地におるかと思われます。これを積極的に探すということは、その日本人がすでにインドネシアの名前に変えておる者もございますので、なかなかつかみにくいわけなのでございますので、次から次に新しくわかりました日本人の筋を伝わって聞き込みがありました場合に、そのつど資料として残して記録してきておるのでございます。
  38. 吉江勝保

    吉江勝保君 大体のお話し了承できるのでありまするが、現在、その総領事館なら総領事館におきまして、残留の日本人の名簿というのですか、そういうものが備えつけられておりまして、日本から参りました者が行きましたならば、いつでも、同胞のことでありまするので、そういう人に残留日本人の名簿を示しまして、もしその方がインドネシア国内でも旅行するような機会には、できるだけ連絡をとらすような便利を、あるいは調査していただくような便利を外務省の方ではおとりになっておるのでありましょうか。
  39. 白幡友敬

    説明員白幡友敬君) 現地からは本省の方に、調査いたしましたものを、六カ月とか一年ごとまとめまして逐次報告をしてきておりますので、従いまして、現地の公館ではそういう名簿をまとめておるものだと思っております。ただ、これを日本からおいでになりました方々に直ちに供覧に供し得るような態勢にしてございますかどうですか、実は私まだその点を確かめておりませんのでございますけれども、確かに、御指摘通り、出先の公館といたしまして、さような準備をいたすべきものだと思いますので、本省から至急その資料を出すことにいたしたいと思います。
  40. 吉江勝保

    吉江勝保君 その問題につきましては、大体先にお話がおりましたので、これ以上言うことを差し控えたいと思いまするが、しかし、私の受けました感じでは、そういうような調査を継続的になさっておる——熱心な方がおられたときには、調査も一応なされたかも存じませんが、人がかわりまするというと、そういう名簿はあるのかないのか、やっておるのかやっておらないのかわからないような状態になってしまって、その後の日本人の情勢というものが、領事館におきまして十分に把握されておらないんじゃないだろうか、こういうような感じを持つのであります。私は、非常にこういう点につきましては、ほかにいろいろ重要な問題もあろうかと思いまするが、残留日本人の上に思いをいたされて、常時総領事館がそういう人の安否なり、調査をあらゆる方法、手段でお調べになっておるということは、これは私は一番大事なことじゃないだろうか。実にそういう点で遺憾な感じを持っておるものであります。  これでやめまするが、十分に一つ現地の方でお調べを願いたい。これはインドネシアだけではないのでありまして、何もソ連、中共ばかりに残留日本人があるわけではないと思いますので、在外公館の方には十分な措置一つおとりをいただきたい。これは外務大臣に、どういうお考えをお持ちか、お聞きいたしたいと思います。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話はごもっともでありますので、できるだけそういう調査を完全にいたしますように、本省からも一つ訓令を出すことにいたしたいと思います。ただ予算等の関係もありまして、必ずしもはかばかしくいかない点もあろうかと思いますけれども、しかし、そういうことだけを言っておらぬで、できるだけのことはやらなきゃならぬことは当然でありますので、そういう訓令を出すことにいたしたいと思います。
  42. 吉江勝保

    吉江勝保君 残留の日本人の調査につきましては、一応大臣からお話がありましたので、これでやめまするが、私は予算の問題よりも、出先の機関がそういう気持を常に持っておってくれるかどうか、残留日本人のことを思っておってくれるかどうか、あらゆる機会を利用して、外務省の出先の人が出張して調べなくても、いろいろな機会があるのであります。そういう機会を利用して、常に思いをいたされれば調べる機会がありますので、そういう点につきましての心がまえと言いますか、態勢と言いますか、そういうものをお聞きいたしたわけでおります。  次は、国籍取得の問題でありまするが、先ほど一応のお話を聞きましたが、現在インドネシアの憲法におきましては、インドネシアの独立戦争に参加いたしまする軍人というものは、これはもうインドネシア国籍を持った者でなければ軍人になれない、こういうことに憲法がなっておるわけであります。こういう憲法のもとにおいて、インドネシア独立——日本軍が撤退いたしましたあとインドネシア独立に、残留の日本人が参加いたしまして、インドネシアの国軍の軍人としてオランダ軍と戦ったのでありまして、中にはそのために戦死をしておる者もございますし、また、負傷した日本人もおりまするし、現在無事に残っておりまする者も相当おるのでございます。こういう人たちは、インドネシアの憲法からいたしますれば、インドネシア国籍を持った者でなければ軍人になれないという憲法のもとにおいて、正式の軍人になった者は、いわばインドネシア国籍を認められた者だと、こういうことになるのであります。その日本人に対しまして、現在まで国籍の問題が、一部の者だけには何か準国籍のような、証明書のようなものが出されたというようなお話の程度ではまことに物足りないと言いますか、遺憾な感じを持つのでありまして、こういう点におきましても、インドネシア国の憲法と照らし合せまして、日本人で、生命を賭して独立戦争に参加した者の国籍取得については、もっと熱心に、外務省におきましてはこれを交渉されるべきではなかっただろうか、こういうように強く感ずるものであります。御所見を伺いたいと思います。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 平和条約批准されまして、平常の状態になりますれば、この問題はインドネシア側と、先ほど申し上げておりますように交渉をしまして、また、本人の意思に従ってその手続をとることにするわけでありますから、そういう意味において万全の努力をいたしたいと思っております。
  44. 吉江勝保

    吉江勝保君 外務大臣一つほんとうにその気持で御答弁願いたいのでありまして、私はここで別に外務大臣に、特に一応の御答弁を承わろうという意味で聞いておるのではないのでありまして、ほんとうに向うに、生命を賭して残りました日本人が念願しておりまするのは、インドネシアの国を愛しますがために、軍籍に身を置きましてオランダ軍と戦って、しかも憲法で認められておりまする権利が現在なお認められておらないというような状態におきまして、私は今ここに平和条約なりその他の条約批准になりまする際におきまして、思いを強くそういう問題に、外務省がもっと入れてもらいたい。真剣になって一つ考えてもらいたいということをお願いをいたすものでありますので、重ねて外務大臣から、真剣にこの問題の解決に当っていただきまする決意を御披瀝願いたいと思います。
  45. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は、当然ただいまお話のように、日本側として、そういう功績があり、かつ、現在においてもインドネシア政府の運営に参画していられる方については、当然日本としてそういう話をいたすことが当然なことだと思います。ただこの問題自体は、インドネシア自身の問題でありまして、インドネシア政府も友好関係になりますればその方面において十分力を入れた判断をされることと思うのでありまして、日本が押しつけてこの問題を解決すべきでなく、友好の上に、インドネシア側気持の上から解決してもらうのが一番適当な解決方法じゃないかと思うのであります。そういう意味において、われわれは、十分われわれの考えインドネシア側に入れ、また、そういう解決ができることを期待しております。
  46. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記とめて下さい。   〔速記中止〕
  47. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記起して下さい。  他に御発言もございませんようですから、三件に対する質疑は、終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  49. 森元治郎

    ○森元治郎君 賠償協定締結して平和条約を結び、そして、今累積債権を放棄するこの三件に対しては、日本社会党は賛成であります。  ただ、日本インドネシアのこの三件の企図するところを完全に遂行するためには、やはり、インドネシア政情の安定がやはり大事だと思うのであります。現在、インドネシアでは武力的なトラブルがありまするが、これは簡単に容共とか反共とかと割り切れないものがあるようで、新しく誕生した国家にはつきものの事態であろうと思うのでありますが、しかし、第三国がこれに興味を持って手を出すようなことがあるならば、問題は大へん大きくなりそうな危険をはらんでおるように認められるので、政府は、この機会に、インドネシアの国内の安定を妨げるようなおそれのあることに対しては、断固たる監視的態度を持って、そして両国の国交回復の趣旨を徹底されるようにされんことを希望いたします。
  50. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 問題の三件に関しまして、賛成を表するものでございます。  なお、インドネシアのただいまの国内事情、ひいては国際事情にも及ぶことあるべき、種々困難な微妙な問題があると存じますが、政府はそれらに対して稠密な報道を得て、善処せられんことを希望いたします。
  51. 吉江勝保

    吉江勝保君 私、この提案されておりまする三案に対しまして、賛意を表したいと思うのであります。  聞きまするところによりますと、インドネシアの方におきましては、すでに国会の議決も済まされておるやに聞いております。ことに、この賠償の問題につきましては、昨年はハッタ前副大統領が日本にお越しになりまして、賛意を表されております。また、岸総裁の訪イもあります。この問題につきましては、すでに議会におきましても、また、当局の側におきましても、インドネシアにおきましては、国をあげましての賛意を表しておられるのであります。私は、政局の問題等もありますが、この大方針に向いまして本委員会が採決されますことには賛意を表したいと思います。
  52. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 他に御意見もないようでございますが、三件に対する討論は、終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件  日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件  旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件  以上、三件全部を問題に供します。三件を承認することに賛成の方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  54. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 全会一致でございます。よって三件は、全会一致をもって承知すべきものと決定いたしました。  なお、ただいま承認されました三件について、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから報告書には、多数意見者の署名を付することになっておりますから、三件を承認することに賛成された方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名     鶴見 祐輔  井上 清一     森 元治郎  石黒 忠篤     井野 碩哉  鹿島守之助     重宗 雄三  吉江 勝保     杉原 荒太  永野  護     野村吉三郎  佐多 忠隆     安部 清美  佐藤 尚武
  56. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 本日は、これにて散会いたします。    午前十一時二十七分散会    ————・————