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1958-04-01 第28回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月一日(火曜日)    午前十時二十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     寺本 広作君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            森 元治郎君            石黒 忠篤君    委員            鹿島守之助君            笹森 順造君            苫米地英俊君            杉原 荒太君            永野  護君            野村吉三郎君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            佐藤 尚武君            安部 清美君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   説明員    外務参事官   白幡 友敬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百五十七年十月三日にオタワで  作成された万国郵便条約及び関係諸  約定締結について承認を求めるの  件(内閣送付予備審査) ○連合審査会開会の件 ○人身売買及び他人売春からの搾取  の禁止に関する条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付) ○日本国インドネシア共和国との間  の平和条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国インドネシア共和国との間  の賠償協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○旧清算勘定その他の諸勘定残高に  関する請求権処理に関する日本国  政府インドネシア共和国政府との  間の議定書締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (核実験禁止等に関する件)   —————————————
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから外務委員会開会いたします。  千九百五十七年十月三日にオタワで作成された万国郵便条約及び関係約定締結について承認を求めるの件(予備審査)を議題といたしまして、政府から提案理由説明を聴取いたします。
  3. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 千九百五十七年十月三日にオタワで作成された万国郵便条約及び関係約定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国は、一八七七年以来、万国郵便連合加盟国となっておりますが、現行万国郵便条約及び関係約定を改正するため昨年八月からオタワで開かれました万国郵便連合の大会議にも代表を参加せしめ、同会議で採択されたこの万国郵便条約及び関係約定に署名いたさせました。  この条約は、現行条約と同様、万国郵便連合の組織及び構成を規定するとともに、通常郵便業務を規律し、また、関係約定はその他の特殊業務を規律したものでありますが、五年前にブラッセル大会議で採択された現行条約及び関係約定実施の経験にかんがみ今日の事態に適応した改善を加えております。また、諸約定のうち貯金国際業務に閲する約定は、今次のオタワ会議において初めて作成されたものでありますが、貯金国際間にわたる業務の創設することを目的としているものであります。  この条約及び関係約定は、いずれも明年四月一日から実施されることになっておりますが、国際社会の発展及び国際関係緊密化に伴ってわが国海外諸国との郵便物交換が日々増加の道をたどりつつある現在、これら条約及び約定批准し、郵便連合を通じての国際協力を維持、増進することは、わが国としてもきわめて有意義なことであると考えます。  よって、この条約及び関係約定批准につき御承認を求める次第であります。御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。   —————————————
  4. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、連合審査会開会についてお諮りいたします。人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関する条約締結について承認を求めるの件について、法務委員会連合審査会開会することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時は、法務委員長協議の上、決定いたすこととなりますので、あらかじめ委員長に御一任願っておきます。   —————————————
  6. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。  なお、法務省からは刑事局横井総務課長が見えております。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 議事進行についてですが、大臣はどのくらいおられるのですか。
  8. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 正午までです。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 国際情勢に関する質疑の方が相当おありになると思いますが、そうすれば、この方は適当に一つお願いしたいと思います。
  10. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) それでは、人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関する条約締結について承認を求めるの件については、別に御発言もございませんので、本日のところ、本件に関する質疑は、これで終了いたしておきたいと存じます。   —————————————
  11. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諾勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、以上、三件(衆議院送付)を一括して議題とし、前回に引き続き質疑を続行いたします。  初めに、前回永野委員質疑に対して政府答弁を留保しておられます生産物外貨関係についての統一見解について、政府の御所見を承わります。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般永野委員から御質問のありました、外国から原材料を輸入してという問題について、留保しておりました政府見解をこの際申し上げておきます。  外国為替上の追加の負担とは、外国から原材料等を輸入して加工した物資を賠償として供与することはすべて禁止するという趣旨ではなく、賠償実施のために特に新たな、そのためにのみ必要な外貨負担を伴うようなものは、賠償として供与せず、その他のものでも日本国にとって外貨負担を伴うものは供与について検討するという意味であります。  右の趣旨を具体的に表現することは困難であって、個々ケースについて検討する以外に方法がなく、このためにこそ関係各省間で協議し、協定するものであります。
  13. 永野護

    永野護君 いわゆる良識に待つようなことになると思うのですけれども、金額は今の文字をそのまま了承すれば、どんなに少くとも、そのために新しく外貨を要するような原料を使うことはできないということになるわけでございます。そういうふうに聞える。そこは良識問題だろうと思いますけれども、かなりその良識食い違いが起きる、こう思うわけです。外務省通産省が非常にわれわれの良識と合う判定をされるときに、ごく具体的に申しますと、大蔵省良識が非常に食い違う場合が多い。これはこの問題だけでなくて、外務省対外折衝の結果おきめになったその運営が、大蔵省良識と違うために困難をきわめておる実例が非常に多いのであります。そこでその一々、その関係事務当局同士ケースバイケースの取りきめ方をさわるというのでありますけれども、こういう機会に、その全体を通じてのこの問題だけではないのでありますけれども外務省が十分に折衝されて、相手方との了解を得て取りきめられたことを、国内の関係官庁の意見の相違からそれが実行できないようになるケースをなるたけ避けるために、なるたけこれは相手国、もちろん日本のためもありますけれども相手国希望に応ずるように取り計らうのだというようなばく然としたことでもありますけれども、今の程度の御答弁より少し進んで、幾らか潤いといいますか、幾らか余裕を持たせた御答弁が願えぬでしょうか。それを記録にとどめておけば、将来交渉というのは、対外交渉でありますけれども、幾らか円滑になるのではないでしょうか。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま政府統一見解を申し上げましたように、その中でも触れておりますが、大体個々のいろいろなケースの問題になってくると思うのであります。従いまして、そういう点について良識を持って判断をして、しかもまあ国際関係のことでありますから、できるだけ相手国にも十分満足のいくような方法で、せっかく賠償を行います場合にはやって参りませんければならぬわけであります。しかし同時に、日本為替上の問題もありますので、その点も決してないがしろにするわけには参りませんけれども、今申し上げたような趣旨でもって各省間で十分協議をいたしたいと思います。今後とも、そうして、ただいま御発言の御趣旨にありましたような目的が達せられるように、できるだけ努力をいたしたいとこう思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  15. 永野護

    永野護君 わかりました。なおそれに関連してでありますが、賠償協定だけではありませんけれども経済協力を進めていく上に、かなりにこの通産省外務省見解大蔵省見解が非常に食い違いが起ってくるようなことも多い。みすみす当然成功すべき事業が、資金の行き詰まりから非常に窮境に立ち至っておる実例が多い。でありますから、私はこの上とも外務省及び通産省の方々と大蔵省の間での少しトップレベルの話し合いをしていただいて、総括的の了解と申しますか、なるべく取りまとめができるように努力をするというような方向をはっきりきめておいていただきたい。今のところは、ほんとうの現場の事務当局だけの折衝にまかされておるケースが非常に多いように思います。そうして、その場合には多くの場合、大蔵省主張が通って、他のいわゆる原局主張が立ち往生するようなケースが非常に多いと思いますから、今の問題だけに限りませず、トップレベルの間のそういうお申し合せといいますか、了解をつけておいていただくことが望ましいと思います。それは希望として申し上げておきます。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま永野委員お話のありました経済関係のいろいろな問題につきましては、内容もそうでありますと同時に、そのタイミングというものが非常に大事だと思うのであります。従って、内容がきまると同時に、その内容が適当な時期にやはりきまりませんといかぬことは、私ども国際関係をあずかっておりまして痛感するわけであります。従って、今後とも、できるだけ事務当局の打ち合せをいたさせておりますけれども、やはりある中間の期間なりあるいは最終的に事務当局の打ち合せができるのが、タイミングがはずれるような場合がありますれば、できるだけ上の方のレベルで話をして問題を解決していくということが必要だと思うのであります。外務省省内においては、そういう各省間との連絡をしている場合に、ある程度中間報告もしてもらい、また、適当な時期には、私からもあるいは次官からも、関係外省次官なり大臣なりと話し合うというように、できるだけしていくことが必要だと思って、現在そういうようなことを省内に申しておるわけで、今後ともそういう問題につきましては、十分考え一つ折衝をしていきたいと思っております。御了承願いたいと思います。
  17. 森元治郎

    森元治郎君 このインドネシアの今かかっておる三件ですが、政府は、衆議院を通過してこっちへ回ってきたこの三つ承認に当って、政府及び与党の内部に何か情勢待ち、もう少し待ってみないと、反共側が盛り返してくるかもしらぬというようなことじゃないかと思うのですが、その情勢待ちの空気があるような印象を受けるのですが、政府態度はどんなものですか。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府としましては、一日も早くとのインドネシア賠償関係の三件を上げて、平和条約等を上げていただきたいのでありまして、インドネシア国会もすでに通過をいたしておりますから、最近の情報によりましても、向う側でも、日本国会における批准が終ればすぐに批准書交換にこちらに人を出し、また、賠償ミッション人選等もやっているような状況でありますので、そういうような事務上の進行工合から見ましても、また、他面インドネシア経済の現在の事情から申しましても、経済建設に一日も早く協力していくという日本立場から申しましても、できるだけ早い機会に両院の批准を得たいというのが、政府の現在の考え方でございまして、従って、私といたしましては、今日まで予算委員会等出席が悪かったので申しわけないわけでありますけれども、できるだけ早い機会質疑応答に私も出ましてやりますから、上げていただきたい、こう希望いたしております。
  19. 森元治郎

    森元治郎君 スカルノ政府側の放送では、外国がこれを反乱軍の方を援助すると、スペイン内戦のようになるかもしれぬという声を上げているのですが、これに対して、この前も政務次官にちょっとお尋ねしたのですが、政府としては、やはり他国いろいろ干渉をし、挑発するというようなことは慎しんでもらいたいというようなことをやはり言わなくちゃいけないと思うのです。それが一つと、それからこれは私は確実ではないのですが、ニュージーランドだったと思うのですが、ちょうど反乱軍交戦団体として認めるような意向を表明したと私は記憶しておるのですが、どこかの国で、反乱軍交戦団体というような黙示的というのですか、国際法でいう黙示的な承認を与えておる国があるのですか。この二点を伺いたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまの御質問の、反乱軍交戦団体と認めるというようなあれは、今どこもございません。
  21. 森元治郎

    森元治郎君 その前の方のスペイン内乱のような形勢にあるというふうに、だいぶ予想を出しておるような、緊迫をした感じを受けるのですが、現実は切迫しておらないのですか。政府情報はどうですか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府としてインドネシアの方から聞いております情報によれば、われわれはそれほど激しい状態にますます陥りつつあるというふうには考えておらぬのでありまして、その内乱程度等もそう大規模に現在発展するとは思っておりません。ただ西欧側その他からいろいろなニュース等ありますけれども、これは相当やはり十分考え判断していかなければならぬと同時に、あるいは一部にはそういうことを希望するというような立場のあれもあろうかと思いますが、日本といたしましては、従ってできるだけ早い時期に、こういう平和条約締結し、賠償によって経済協力に貢献する、また、焦げつき債権の相殺によってインドネシア負担を軽減するというような方向に持っていきまして、全体としてのインドネシアを助けていくということに進んで参りたい、こう思っております。
  23. 森元治郎

    森元治郎君 それは、比較的事態楽観をしておるというふうに伺ってよろしいかと思います。それからやはり日本インドネシアに新たに三つ関係ができるに当って、この円満なる関係を続けていくためにも、あの辺が平和であるということがぜひ必要なので、他国干渉をしないようにということを、私は、やはり外務大臣から国会を通じておっしゃることが大事だと思うのですが、この際。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 争乱の現実の事実というものは私ども楽観をしており、事態はそんなに急迫しておるという見方をいたしておりません。ただお話のように、こういうことが非常に大きな事態ではないにしても、長期に続きますことは好ましいことではないと思うのでありまして、そういう長期に続くことによって、いろいろな変化が出てくることをわれわれとしては、できるだけ好ましい事態でないとしてながめていかなければならぬと思うのでありまして、そういう意味においては、平和克復になりまして、そうしてできるだけインドネシア経済を助けていくこと自体が、やはりこういうものの解決にも資していくのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  25. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 議事進行。  議場の整理をお願いしたいのですが、議事が始まってから、映画ですか、写真ですか存じませんですが、非常にがたがたしまして、よく質疑応答を聞きとれない状況であります。大臣のお声も、それから森委員質問の声もあまり大きくない方なので、そうでなくてさえ聞きとれないので、実は議事が始まってからこういうことをするというのではなしに、もし、映画ですか写真が必要ならば、議事の始まる前にちゃんと整備をしていただきたいと思います。本日はこれでやむを得ないといたしまして、次回からは一つそういうふうにお願いしたいと思います。
  26. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記一つとめて下さい。   〔速記中止
  27. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起して下さい。
  28. 曾禰益

    曾祢益君 ただいま森委員からの御質問の点に関連して、もう少し伺いたいのですが、前提として森委員の言われたように、また、外務大臣答弁されたように、インドネシア内乱状態にかかわらず、平和条約及び賠償案件をすみやかに日本においても国会審議を了し、批准承認を与えていくのが正しいと思うのですが、それからインドネシア事情については、必ずしも私は今外相の言われたほど楽観できないような面がありはしないかということを懸念する。現地事情についても、主として特に戦闘行為スマトラ方面でやっておることでもあるし、必ずしも日本外交機能のそれ自身情報が、現地からのファースト・ハンドの情報があるわけではない。われわれも新聞情報しか持っておりませんが、今も外相が言われたように、これが長引くようになれば、そこにやはりこの紛争国際化の危険はますます大きくなっていくと思う。そこでこれに対処する日本態度としては、これはなかなか機微なものがあろうと思いますが、まず、先ほど反乱軍交戦団体の問題が出ましたが、いわゆる反乱政府の方から日本に何らかの接触をしてきたのか、そういう事実があるのか。すなわち交戦団体なりあるいは承認なりの申し出があったか、この点を伺いたい。
  29. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 反乱軍の方から何らの接触もございません。
  30. 曾禰益

    曾祢益君 そこでその交戦団体とか何とかいうことはしばらくおきまして、いわゆるこの紛争外国干渉してはいけない、これはもうその通りだと思う。現実にはしかし、これは純粋に国際法的に見てもなかなかむずかしい問題で、現実にはやはり結局武器供給等も特に問題がある。純粋な国際法からいえば、武器供給を個人がやる場合に、それ自体は何にも国際法に反しない、形式論は成り立つ、そこの問題が非常に私は危険だと思う。で、そういう点からもしぼっておくならば、実際上この紛争国際間の、また、地域的に言っても、また、インドネシア事態から見ても、いわゆるスペイン戦争的な武器援助という形で国際紛争化するおそれは十分にある。そこで、反乱軍にせよあるいは政府にせよ、外国から武器を買う権利はある、あるのだけれども、われわれは内政干渉をするものではないが、この武力抗争をもっと激化させるような結果を招来する武器供給はいずれの側に対してもこれを行わない、このことによって最も危険な国際紛争化を阻止する、あるいは少くともそれに限界を設ける、こういうことがやはり考えられなければならないのではないか。これは軽々にして言えば、いずれの側からいっても、特に正統政府からいえば、それこそ内政干渉だというそしりがあるかもしれない。しかし、結局は、いずれの側に対しても武器供給することが、かえって国際紛争の原因をますます作ることになるという見地に立つならば、日本も、今森君の言われたこととあるいは同じ方向ではないかと思うのですが、要するに、外国干渉しないということをより現実的に言うならば、外国が、いずれの側に対しても武器を援助しないという一つの申し合せというふうなものをやるべきではないかと思うのですが、その点について、外務大臣はどうお考えでありますか、お聞かせ願いたい。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私ども現在まで内戦事態推移を見守っておるわけでありまして、現在までのところ、楽観的な見方というお話もありますけれども、今日までの事態は、それほど激しい事態だとは考えておりません。しかし、先ほど申し上げましたように、これが事態は必ずしも大きくならないまでも、長期化するということについては、アジアの平和のためにも相当注意をして見て参らなければならぬのでございまして、ことにただいまお話のありましたような、スペイン内乱というような事態に追い込まれますことは好ましいことではないと思うのでございまして、そういう事態推移に応じて、政府としても、いろいろ問題を考えていきたいというのが現在の考え方でございます。
  32. 曾禰益

    曾祢益君 直ちにこの問題に御答弁を求めるのは困難だと思いまするので、私自身考えを申し上げて、御考慮資料にしていただきたい。やはり時期を見て、必要がありそうならばすみやかに特にわが国とインド、ビルマ、マラヤ、これらのアジアのいわゆる自主独立の線をはっきりしている国と、これに日本が加わって相談をして両陣営に呼びかけるようなことも、これは一つの私は考え方じゃないか、その基本において、日本自身がもちろんそのいずれの側にも武器供給なんかはしない、平和条約賠償協定は、インドネシアの国民に対する当然の日本立場として明らかだけれども、しかし、日本自身武器供給しないというこの原則の上に立って、そういったようなことも考える必要がありやしないかと思うので、申し上げておきます。
  33. 永野護

    永野護君 武器供給の問題については、私具体的なことは知りませんが、船舶については、反乱軍正統政府と両方から相当活発な動きがあることを承知しております。従いまして、今曾祢委員の言われるように、これに関して日本政府が全然傍観しておっていいのか、あるいはある一定の方針をお示しになる必要がある程度あるのじゃないかというような気持もしております。大体大したことはあるまいが、長期化するだろうという常識的な結論になっているようでありますけれども、私が心配しますのは、この前、大臣御欠席のときに伺ったのですが、判断資料をお集めになるのにははなはだ失礼ですけれども、非常にお手元不如意の今の外務省予算でどういう資料を持っておいでなのか、といいますのは、今の外務省予算は非常に不十分だと思っております。これは平素の何にも事件のないときでも不足がちの経費で、こういう非常な大事件、めったにない大事件が起きておるときに、今の経費でこれに対処する資料を集めるということは、いかにも不十分じゃないかと思います。従って、この方は予備費か何か申請なさるようなお気持はないか。これはこの場合だけではないのでありますけれども、今の外務省予算が平時の扱い方でありますから、インドネシアだけに限らないで、何かこういう大事件の起きたときには、今までの予算以外の予算を順次出して、少くとも東京におられますと、判断力の問題じゃなくて、その判断力材料になるもの、その材料がたくさんあったら結果が違ってくると思いますから、そういう意味で適当な人をさらに派遣されて、場合によったら、さらに進んであるいは調停の機会日本にあるかもわからぬというようなこともあり得ると思うのです。そういう機会をミスしないように、特殊の考慮、まあ具体的に申しますと、インドネシアの問題に関して予備費を請求されるような何らかの計画はございませんかということをお伺いするわけですけれども
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま永野委員からお話のありましたように、こういう問題について正確な判断をやりますためには、情報調査等の機能を十分活用していかなければならぬわけでありまして、御指摘のように、外務省予算は必ずしも十分でありませんけれども、できるだけこういう問題が起りました段階には融通をいたしまして、そうして調査の方面に使っていきたいと、こういうことを考えております。なお、ただいまお話のように、調停というお言葉がございましたけれども、調定というような問題はなかなかむずかしい問題と思いますが、しかし、情報関係あるいは有力な指導者等の意見を直接聞くというようなことも必要なんじゃないか、特にハッタ氏及びスカルノ大統領等と話すことも必要じゃないかという考えは私どもも持っておるのであります。そういうように持ちながら事態推移を見ていくという、こういうところが現在の段階でございます。
  35. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は事務当局から答弁していただいてけっこうな問題について二、三お尋ねしたいと思います。  第一点は、インドネシアとの平和条約とサンフランシスコ条約との関係です、そしてそれをさらに分けて言うと、インドネシア側の方から先に言いますと、今度のインドネシアとの条約内容と、それからサンフランシスコ条約との内容を比べてみますと、必ずしも矛盾するとは言えないように思うのです。インドネシア側では署名はしているが、いまだ批准はしていない、インドネシア側として、サンフランシスコ条約に対しては批准についてどういう態度をとるかということが第一点。それから第二は、日本側ですか、日本側の関係では、このサンフランシスコの二十六条というもの、ことに二十六条の末段の均霑条項というのはこの場合には適用される余地はないという考えであるかどうかということ、これは二つとも私が今お尋ねしたことは、何だか自明のことのように明らかなことのようでありますけれども、念のために確かめておきたい。
  36. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) ただいま御質問のございました最初の第一点、桑港条約との関係について私から御説明申し上げたいと思います。御承知のように、インドネシアはサンフランシスコ条約に参加いたします際、当時のインドネシアの政情から申しますというと、やはり二大政党でございましたマシュミ党と国民党というものが併立して入っておりました。その他の諸政党も入っておりましたが、一諸に内閣を構成いたしました、その内閣におきまして当時スキマン内閣と言っておりましたが、その当時、桑港条約に全権団を派遣すべきかどうかということで非常に議論がございました。しかし、閣議の決定は、若干全権団を派遣すべしという票数が多うございました、その結果に基きまして派遣されたわけであります。その後サンフランシスコに参りまして、全権団が本国政府と連絡をとっておりまして、桑港条約内容につきまして、インドネシア政府として最終的に調印すべきかどうかという問題がやはり起きておりました。当時もやはりこの問題につきましても、閣内に賛否両論がございまして、最終的には閣僚の票をとりましたところが、一票の差でもってこれに調印すべしという結論が出たわけであります。それくらいに桑港条約に対するインドネシア政府態度というものは、当時から非常に、割と考え方がいろいろございまして、しかもその賛成論と反対論の差というものがごくわずかであったようでございます。で、とにかくそれで桑港条約を調印いたしまして帰って参りました。ところが、そのスキマン内閣と申しますのが、その後間もなく倒れて、その後できて参りました歴代の内閣は、スキマン内閣よりはるかに進歩的な勢力で占められてきております。従って、その後、日本から、昭和二十八年、時の外務大臣、岡崎外務大臣インドネシアを訪問されましたときに、先方から正式にサンフランシスコ条約というものはインドネシアとしてはたな上げしていきたいんだという話がありましたが、従って、日本インドネシアとの関係を規律するものは、新たに別個な平和条約でもってやっていくという希望が表明されまして、そのとき以来、日本インドネシアとの平和条約に関する話し合いの上では、桑港条約というものは完全にたな上げになっておりまして、単独の平和条約でやっていくということでずっと話が継続してきて今日に至ったわけであります。従って、ここに単独の平和条約ができたということになっております。
  37. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの御指摘の点でございますが、従いまして、インドネシア平和条約には署名はしております、しかしながら、自後この日本国との間で正式の平和条約ができ上ることによりまして、私はこの平和条約が当然優先いたしまして、この署名したということはもう、何と申しますか、無効になったというふうに考えております。従いまして、次に第二点の二十六条の問題でございますが、これは私はこの二十六条の義務は三年で満了するというふうに考えております。従いまして、平和条約発効後すでにもう三年経過いたしておりますから、この問題は、すなわち彼此均衡の問題はインドネシアとの平和条約との関係では発生しないのではないか、と申しますのは、この二十六条ではもちろん三年間という義務は前段だけでございますが、後段はこの前段に引き続いて、前段の三年間によりいい待遇を与えた場合に日本国がなすべき義務、いわば一種の制裁規定というのが後段だと思っております。従いまして、その後段に三年という期間がうたってはございませんが、当然前段に引き続き、前段の制裁規定として書かれたものであるから、やはり三年間で満了する、こういうふうに考えております。
  38. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、これも条約局長からの答弁でけっこうですが、インドネシアとの平和条約というものがその前提として、言うまでもなく、日本インドネシア国との間に戦争状態というものが存在しておったということを前提にしておるわけですが、インドネシア国との戦争状態というものが存在しておったということの法律的説明、法律的の構成はどういうふうに外務省としてはしておられますか。
  39. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの御指摘の点でございますが、御承知の通り日本はオランダと戦争状態に入ったわけでございます、ところが、当時インドネシアは、オランダの領土、オランダの植民地であった、ところが、自後、オランダに対して、一九四五年でございますか、独立宣言をいたしまして、四九年に主権を移譲され、そこで正式に一つの独立国家となった、私はこういうふうに考えております。従いまして、この独立国家になったとき以来、その前にオランダの領土として、その地域に関して戦争に関連して発生したいろいろな権利義務と申しますか、請求権と申しますか、そういうのはオランダから引き続きインドネシア側が独立によって移譲を受けたと申しますか、相続をした、こういうふうになったと私は考えております。
  40. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の説明の中で、権利義務の関係、ことに財産とか、そういった権利義務の承継というものはわかるんだが、戦争状態の承継というのは法律上考えられるんですか。インドネシア国の発生によって新しく国際法上の人格が発生したわけなんだが、戦争状態を旧本国から継承するというような、そういうことになるわけですか。
  41. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 確かに御指摘の点は、いわゆる戦争の結果生じ、または生じたであろうととろの権利義務は、相続という問題になりますが、そういう戦争状態そのものが、新しく成立した独立国家によって承継という問題が起るかどうかということは、厳密に言いますと、相当法律上の問題はあるかと考えております。しかしながら、いずれにいたしましても、インドネシア側は独立することによって、日本と戦争状態にあるというふうに向うが考えまして、そしてサンフランシスコ条約にも行ったということは、戦争宣言をしたとか、そういうふうな新しく日本と戦争関係に入ったということを宣言したり、明言はいたしておりませんが、サンフランシスコ条約に行ったということは、すなわちインドネシア側の意図としては、新しくできた独立国家も日本と戦争状態にあるのだ、そしてその結果、自分もサンフランシスコ条約に行くのだということを表明した結果になっているのじゃないかと、こういうふうに私は考えております。
  42. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 もう一つ続けて。これは最後ですが、今度のインドネシアとの平和条約の第四条の一の(b)(i)によって、インドネシアが処分権を持つことになった。その処分権の対象になる日本国または日本国民の権利、利益、財産というもの、この処分権の対象になるものは、具体的に今どういうようなものですか。
  43. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) 現実に向うで対象となるものは、戦後インドネシア政府が敵産管理いたしました日本の民間のいろいろな財産がございます。一番大きなのは、農園関係でございます。これは全部敵産管理になっております。今後この協定に従いましてインドネシア政府によって処分されることになります。それ以外にはほとんど目ぼしいものはあまりございません。農園関係の地上に関するもの、それから若干鉱業関係がございます、鉱石関係。それからあとはごく微細な個人の財産というものも若干あるのじゃないかと思いますが、こういうものが敵産管理になっておるという話は聞いております。
  44. 森元治郎

    森元治郎君 議事進行。  インドネシア関係はこのくらいにして、国際情勢の方に移っていただきたいと思います。
  45. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 森委員御提案のように取り計らいまして、よろしゅうございますか。   —————————————
  46. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) それでは次に、国際情勢に関する調査に移ることとし、藤山外務大臣質疑を行います。  質疑のおありの方は、逐次お願いいたします。
  47. 曾禰益

    曾祢益君 ソビエトの最高会議におきまして、予測されておったことでございますが、核実験の停止、これをグロムイコ外相が最高会議の合同会議に提案し、これが決定されたようでございますが、われわれはこれは非常にけっこうなことであると考えまして、国際的にもいろいろ大きな進歩への足がかりになると考えるのであります。もとよりこの一方的停止については、これはまだ条件付といいますか、もし米英等がこれに従わない場合には、再び実験する権利を留保するというふうな点もあるようであります。さらには、実験の停止についての明確な期間等も示されておらないようであります。また、かようなものがほんとうにがっちりした基礎に立つためには、やはり現在すでに核兵器を持っておる、少くとも三国との間に実験停止なり禁止なりの確実な約束ができ、また、これに伴ってその国々がお互いに信用し得る程度の、ある程度の査察制度等がからまれて協定されることが、より確実とは存じます。しかし、それにしても、またここに至る間に、いろいろソビエトが一カ月の間に九回も続けざまに実験をやったから当分やらないだろうというような見方もあろうかと思います。また、この問題についてのいろいろな大国同士のいわゆるパワー・ポリティックスの面もなしとはしないと思います。しかし、わが国立場でいうならば、むしろそういう面はあってもこれを前進への足がかりとするように積極的にとらえ、あわせてこれを契機として、政府がしばしば言っておられるように、核実験を即時大国にやめさせるような方向に力強く踏み出すべきだと思うのです。その問題について、外務大臣政府としての態度をどういうふうにされたか伺いたいと思います。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま曾祢委員からの御質問でありますが、ソ連が昨日、核実験禁止の国内的な宣言措置をはかったと同時に、国際的にはその線に沿って協力していこう、話し合いを続けていこうという声明を国内的、国際間の問題として二つの面を取り上げておられます。この問題についての今曾祢委員の御指摘もありましたように、ソ連がいろいろ核実験についてはすでにもう数回もやっておるし、そうして自分のやることだけはやったから当分やらないというような声明をしたようにも考えられるわけであります。しかしながら、ただいまお話のありましたように、日本としては核実験禁止という問題については、国民的要望として、また、議会の決議等もありまして、政府としてもこれが終局的に禁止希望しておるわけです。しかもその一日も早いことを希望しております。従って、ソ連がこういう声明をしたということをただいまのお話のように手がかりとして、そうして今後、大国間の間に話し合いをする、そうして具体的にその時期なり期間なりあるいは査察方法なりというものの話し合いをして、そうして十分最終的な核実験禁止方向に向うように努力しますことは、当然のことだと思うのです、日本立場として。従って、これに関する詳しい公電等も来ました上で、政府としてはそれを検討して、そうして政府の所見を表明したいと、こう現在考えております。
  49. 曾禰益

    曾祢益君 この具体的な措置については、さらに同僚委員各位からいろいろ建設的な御意見なり御質問があろうと思うので、私はこれ以上申し上げませんが、ただ、今私は探知制度と言い、外務大臣は査察制度ということを言われたのですが、私の言っておることが誤解されるといけないからこの点だけは明らかにしておこうと思うのですが、この核爆発実験についての探知制度というものは、これは望ましいのであって、またこれなくしてはほんとうの意味の協定による実験の停止、さらに進んでは禁止にいかないと思いますが、その探知制度というものは非常に比較的簡単なものでいい。軍縮全体の査察、核兵器の生産なりあるいは貯蔵なり、こういうものの査察制度というものとは全然意味の違った、現実に爆発したかしないかをある地点で押えるという探知制度、これならば両方とも異議なくできるのではないか、軍縮全体にからめた査察制度ではなく、そういうものに核実験の禁止をからませることははなはだ不当である。こういうように考えておるので、この点を明らかにしておきたいと思います。  それからもう一つ伺いたいのは、先般の本院の予算委員会で私が質問した点でありまするが、アメリカの南太平洋における爆発実験に、国連の科学委員会を呼ぶ、その関連において、日本側の人が招待に応ずるか応じないかという問題であります。私は純粋に科学的に見るならば、これは完全に向うがデータを十分に示し、その実験等について十分に、単なる招かれた客だけでなくて、科学者としてあらゆる研究の自由が許されるならば、これは一つ意味がないとはいえない。しかし、これも単に科学的な見地のみに考えられない。政治的な大きな立場から考えるならば、日本はあらゆる実験爆発に反対している。その日本がなるほどこの前のネバダにおけるアメリカの爆発の場合と違って、国連の機関としての日本人ということに形は変ってはおるけれども、やはり政治的な意味は変らないのであって、こういう招待には応ずべきでないという意見を申し上げたわけですが、けさの新聞等によれば、大体外務省の意見もほぼきまったやに伝えられておりまするが、この際、時期も迫っておることなので、政府の明確な態度をお聞かせ願いたいと思います。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第一点の査察制度の問題でありますが、探知関係が発達したということから、探知の方法によって査察の、核実験そのものが行われたという査察の方法もある。そういうことがアメリカあたりにも最近核実験停止というような問題について若干、つまりお互いが承知し合える方法が進んできたということから意見もあるように思います。従って、ただいま曾祢委員の言われましたように、私の申しました査察の中にも、問題によっては今の探知という限りにおいてやれる査察もあるという意味で御了承いただきたいと思います。  それから第二の点でありますが、これはまだ正式の招待状を受けておりませんので、最終的にはその招待状を受け取って決定すべき問題だと思います。しかしながら、われわれの見解といたしましては、科学者の立場から十分こういう問題に参加して研究をしてみたいという意欲は相当あるのではないか、学者としてみればあるのではないかという考えをもちますが、しかし、今お話のように、日本としては平和利用にこれを使うという場合には、友好的に科学者がそういう問題について賛意を表し、参画し、また調査もして、平和目的の達せられるような科学的な調査を十分にやらなければならぬと思っております。しかし、爆弾として使う実験を、日本の科学者が研究するという必要はないとまでは申し上げては、あるいは科学者に対していけないかと思います。それはいろいろ関連して平和利用にもできるかと思いますけれども、それほどの緊急性は科学者にとってもないのじゃないか。それに加えて、政治的に見ましても、相当日本の従来の主張から見まして、それが結果的に見ていいとか悪いとかというような判断にもなるわけでありまして、政治的関連をもってくるわけでありますから、まだ招待状を受け取っておりませんから、最終的の態度は決定いたしておりませんけれども、そういう意味において最終的な案内状と申しますか、受けたときには考えていきたい、こう思っております。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 ただいまの曾祢委員の御質問に対して外務大臣からのお答えの中で、いろいろ今度ソ連の核実験禁止の提案について査察制度など、その他いろいろな具体的な問題の提起を待って、十分政府としても検討したい、こういうお答えでありましたが、それは一応ごもっともであります。しかし、前の核実験禁止に関する国連の総会における政府の動きを見ても、日本案とソ連案と、そして西欧案とが出て、非常に日本としてもかれこれ動いたわけでありますが、今度の場合ももちろんソ連としては、他国がこれに同調しない場合には、またソ連としても実験を再開するということを言っておるような、条件付のものではあるけれども、しかし、何にしてもこれはソ連が踏み切ってこういう提案をした、こういうことは私は画期的なことだと思う。だから、こういう問題はタイムリーでなければならぬと思いますから、条件もあるだろうし、もっと具体的な提案を見なければわからないだろうし、この査察制度の方をより完璧にしなければならぬということもありましょうし、そういう技術的な問題もあるだろうと思いますが、何といっても画期的な問題だと思う。日本政府としても、しばしば今日まで日本が実験禁止の好ましいことを宣言もし、声明もし、また、今度の国連総会にそれを提案しよう、しかも一般軍縮と切り離しての提案をしようというふうにも聞いておるのでありますから、勘考してとか——勘考は必要でありましょう。勘考してとかあるいは情勢を待ってとかという、国際情勢待ちでなしに、やはりこれに備えて、確固たる日本態度を前面に打ち出すことが、これは西欧陣営がどうとか、あるいは東の陣営がどうとかという、そういう問題でなしに、この際、日本政府当局が大胆に踏み切って、むしろこれを正攻的に達成させて、アメリカもイギリスも世界各国が同調するような主導権——イニシアチブを日本がとっていくだけの決意がなければならぬ。情勢を待ってとか、査察制度がどうだというようなことでは、私は目的を達成することは困難だと思う。この際、政府が非常な決意をもって、この問題に踏み切っていかれることを私は希望いたします。外相の決意はどうですか。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 核実験禁止問題につきましては、政府としても今日までの態度から見まして、これが一つの国から言われたことでも、当然これに賛成であることについては申し上げるまでもないことであります。ただ、今、曾祢委員に御答弁申し上げたのは、これを手がかりとして今後具体的に発展するというような問題、あるいはこれを巨頭会談で取り上げる問題にするかというような問題について、あるいはその場合の方法論というような問題について、日本としても私は若干の意見を言った方がいいのじゃないかと考えておるわけでありまして、そういう問題については、公電が来ましたときに十分検討して、適切な方法考えていきたいと、こういうことで申し上げたのでありまして、核実験を禁止されたという声明そのものに対して賛成であることは、むろん申し上げるまでもないことであります。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 東西の頂上会談等についていろいろな具体的希望を述べるととはけっこうですが、私は重ねてくどく申し上げますが、相手の出方を見てとか、もう少し内容を見てということでなしに、やはり日本が、先日来、予算委員会等を通じて同僚議員の質問もあり、日本としてのとるべき立場は明確になったと思う。そういう際に、しかもああいう提案が向う側からあったから、どちらに有利になったとか、不利になったとかそういう段階ではないと思う。むしろそれを契機にして世界がそういう方向に踏み切るようなことになるようにするためには、日本が相手の出方、もう少し詳報を待ってということでなしに、むしろ日本のみずからの立場で積極的に踏み切る気持はないか、また、すべきだと、こういうことをお伺いしておるのです。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん日本として、この問題については国民的熱意もありますし、それから総理もしばしば議会で説明もしあるいは声明もしておられる通りでありまして、核実験の禁止というものが即時行われることについては、日本としては心から賛成するところであります。ただ、今申し上げましたのは、さらにそれを具体的に進めていくためにできるだけ日本努力をしなきゃならぬわけだと思うのです。しかも、ここに一つの提案が出ておりますから、そういうものを十分具体的に、ほんとうの問題にしていくという問題については、いずれ内容をよく検討した上で、日本側としての意向を表明したいと思うわけでありますが、それは決して各国の出方がどうとかいうことでなしに、十分日本独自の立場、ことに日本が原爆被災国として未曾有の大きな過去の経験を持った国としての立場として問題を進めていきたい、こういうことを申し上げたわけです。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 要するに、これに対応する処置をとるというように了解してよろしいんですか。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そう了解していただいてけっこうです。
  57. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は昨月のグロムイコの提案ですか、これが世界中に非常に大きな反響を巻き起したと思っております。で、この反響が日を追うて私は大きくなっていくと思う。米英もこれに対しまして黙って無視していく、あるいはこれにけちをつけてほったらかしておくわけにはいかない段階にきておると思う。で、問題は、実際にこれが効果を発揮するように、日本もまた積極的な働きをしなければならない、こう考えるのですが、アメリカは近く一連の実験を開始しようとしておるのですね。で、今の藤山外務大臣お話ですと、いろいろ向うから参りました公電をもとにして検討をしてということになっておりますと、そのうちにアメリカはどんどん四月ごろから始めることになるのです。ですから始めない前に、私は日本政府としても態度をはっきりさして、アメリカ側に申し入れなければならないこれは緊急を要する問題だと思うのですが、これはイギリスに対しても同じだと思うのですが、イギリスなりアメリカなりが実験を始めないうちに、すなわち近々のうちに、政府は米英に対しまして、やはり即時実験停止するように申し入れるつもりであるかどうか、まずその点をお伺いしたい。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまそれらの点については、十分に研究をいたしておるわけでありまして、われわれが核実験を禁止するという問題については、申し上げるまでもない強い態度を持っておりますので、御了承を願いたいと思います。
  59. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それはいいんですよ。それはいいんですけれども、目の前に行われようとしている米英の実験を停止してもらうように、即時に申し入れる用意があるかどうかということをお伺いしている。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その点につきまして、ただいま申し上げたように、われわれとしては十分考えていかなければならぬということが現在の段階であります。
  61. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 十分に考えていかなければならぬということは、私の言うように早くやるということを意味するんですか。そうでなくて、十分に考えて長い時間かかってということを意味するのか、そこらを一つはっきりさして下さい。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題につきましては、当然核実験の禁止というものを一日も早くやめたいということを考えておることは申すまでもないわけであります。が、しかし、それについて今どういう方法をとるかということは、先ほどから申し上げておりますように、きょう今ここで、まだ最終的な決定をいたしておりませんので、申し上げかねると思います。
  63. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 藤山外務大臣は、事務当局の方じゃないんですから、あなたがこうだという方針をきめて、あとの具体的な技術的なことはおやりになればいいんで、つまりアメリカなりイギリスなりの核実験をやる前に申し入れるということが、私は大切なことだと思うし、日本国民もそうすれば、政府の言うことを納得すると思うのですから、重ねて外務大臣の方針を明らかにしていただきたい。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) すでに九月にもアメリカに、太平洋における核実験の禁止日本としては要請いたしておるわけでありまして、そういう意味において、決して日本がこの問題をないがしろにしているわけではないのであります。従って、この段階においてどういう処置をとるということを今考えておるわけであります。
  65. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 チャンスをのがさないように一つやっていただきたいということを申し上げておきます。  それから次に、国連に対してどういう処置をおとりになるか、一昨年、昨年、日本は提案をいたしましたが、一昨年のごときはまるっきり失敗であって、まあ私どもに言わせれば、物笑いの種、昨年は狐疑逡巡をいたしまして明確な態度を打ち出さなかった。右顧左眄というのは、こういう問題では一番悪いと思う。今度は右顧左眄するときではない、国連の方で、総会にいたしましてもそう長くいつまでも続いておるわけではありません。これも早い方がよろしいと思う。よその国からも同じような問題が提案されてくるだろうと思うのでありますが、日本としては従来の立場からいいましても、日本がこの問題について被害国であって、そして日本が世界に向って特にこの問題について強い発言権を持っておるという立場からいいましても、これまた早く国連に提案をする必要があろうかと思うのですが、その準備があるかどうか、それをお伺いしたい。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本が、国連において核実験の問題を取り上げることは、当然なことだと思うのでありまして、昨年の案も右顧左眄した案だというお話でありますけれども、われわれとしては、一日も早くこの問題が解決するような具体的案として提案したわけで、決して右顧左眄した案を出したつもりはないのでありますが、しかし、その後の情勢も進展しておりますので、さらに一そうわれわれとしては、昨年の情勢と違った情勢のもとにおいて、一日も早く実行可能な案を国連に提案してみたい、こういうことを考えております。
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これまた早きを要するのであって、私ども希望といたしましては、米英に対して実験の即時停止を申し入れると同時に、国連に対しましても提案をしていただきたいと思うのであります。  次にお伺いしたいことは、社会党といたしましては、日本が核武装をするということは非常に危険なことであるしいたしまして、従来から反対をして参りました。これは岸首相もあるいはその他の方々も、日本は核武装をしないということをしばしば言明されておりますけれども、なおかつ、われわれには一まつの不安が残されておる、それは内閣がかわりまして、あるいは情勢が変ったという口実のもとに、ドイツでやったようなことが強行されないとも限らぬし、また、よそから日本に対して押しつけてこないとも限らない、そういうことも考えまして、また、現在の日本の国民の要求あるいは国際情勢の動きから考えまして、社会党としては、すでに御承知と思うのでありますが、鈴木委員長が本国会の劈頭の代表質問のうちで述べましたような、日本自身が核非武装地帯として宣言する、そしてよそからも持ち込まないし、また、自分も武装をしないし、製造も、貯蔵も、使用もしないということをはっきり世界に向って打ち出す、これが必要だと思う、私たちは今度国会にこのことを提案しようと思っておりますが、こういうような点について、政府は、従来の、ただ核兵器の持ち込みに反対するというだけであって、積極的に日本が、そういうふうに核非武装の態度をはっきりさせるというおつもりはないかどうかお伺いしたい。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この点は、総理もしばしば議会で言っておられますように、われわれとして、核兵器の製造、使用、保有を禁止するということが最終の目的であって、それに努力しておるわけで、通常兵器の軍縮も当然でございますけれども、少くも核武装というものをしない、核兵器を使わない、また、製造も禁止するということを主張しておるわけであります。従って、そういう意味において、日本は当然核武装をしないということも言えるわけなんでありますし、また、総理も信念を持ってその点を強調しておられるわけであります。そういう意味において、相当広く強くそういう問題を声明しておられますから、必ずしも現在の段階において、そういうような宣言をすることが必要であるかどうかということについては、将来の問題として十分考えていかなければならぬという意味において、現在の段階ではまだそういう問題を取り上げてないというところであります。社会党がどういう案を出されるか、その案を拝見いたしませんければ、われわれとしても賛否を申し上げかねると思います。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 関連して、今岡田さんから、今の日本の宣言というお話があり、先ほど国連総会についての日本政府態度の御質問がありましたが、国連総会が開かれるのはずっと先にいくと思う、時期的にかなりずれてしまう。もし日本政府としてとるべき態度があるとすれば、他国協議をすることは必要でない一方的宣言か、そうでなければいつになるか、これも時間的にはむずかしい、予測は困難でしょうが、東西巨頭会談に政府が意思を述べる、そういう席に何か親書を送って、日本政府立場を訴えるとか、私はそういう方法をとらなければ具体的にならぬと思うのです。だから、一方的宣言を、他国協議をする必要がない一方的宣言という方策をとるか、しからずんば国連総会を待つか、これは時期的におそい。そして東西巨頭会談に日本政府が親書を送って、この核武装、核実験禁止に関する具体的な何か希望意見を関係各国に表示する、表明するということは一つの方針だと思いますが、そういう御用意はありませんか。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連総会において取り上げることはむろんであります。同時にただいまお話のありましたように、巨頭会談というものが開かれた場合に、直接日本が参加する場合もありましょう、しかし、現在の巨頭会談からいえば、日本がまだ参加するような資格がないのじゃないかと思うのですが、そういう場合に、巨頭会談でどういう問題を取り上げてもらいたいか、また、取り上げなければならぬということは、巨頭会談の進行と同時に、私は日本態度をはっきり巨頭会談で取り上げてもらいたいのだ、巨頭会談では、少くもそういう問題に触れてもらいたいのだ、それが巨頭会談で取り上げられるか、取り上げられないかは別としまして、当然巨頭会談という大きな会談が開かれた場合、日本立場として取り上げる、そういうことを申し入れをしていかなければならぬと私は考えております。その中に核実験あるいは軍縮の問題があることは当然なことだと思うのです。そういう意味において考えておりますが、その他のアジアの問題その他についても、われわれは考慮していいのじゃないかと思います。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 具体的に提案をやると了承してよろしゅうございますね。
  72. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) よろしいです。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これまでの同僚諸君の質疑大臣のお答えを聞いていて、どうもこの問題に対して、大臣なり日本政府が非常に熱意を持ち、積極的であるという感じがうかがわれないのです。これはまことに遺憾なんですが、従って、私はもういろいろ論議は尽きておりますから、もう少し具体的にお尋ねをしますが、第一に、今同僚諸君が言われたように、この問題は非常に大きな、ある意味では歴史的な宣告であると言ってもいいくらいに大きな意味を持っていると思うのです。そこで、この問題に対して日本政府はどういう考えを持ち、どういう態度をとるかということを、早急にやはり態度表明をすることが必要だと思うので、しかもその態度表明は、これまでいろいろな場合になされたように、文化局長談というような問題でなしに、岸総理が、あるいは少くとも外務大臣みずからが、明確な態度表明をすみやかになされなければならないと思うが、その点をどうお考えになるかということが第一点。  それから次には、いろいろ各国に申し入れをしろというお話しがありました。これもその通りだと思いますので、まず第一には、ソ連に対して、一方的にストップをするという勇敢な措置をとったことに対してこれを歓迎をし、さらにこれを激励をするという、われわれ日本がしばしば単独にでもおやりなさいということを言われたのだから、それが一応事実においてなされたのだから、そういう意味での歓迎と激励の申し入れですかをやられる必要があるのじゃないか。同時に、その際には、さらには注文して、従ってすみやかな時期に、これをやるべき時期あるいは期間等をこちらの希望を明確に出して、これに沿うようなふうに進めるのが至当だという、さらに要求なり希望をつけられることも必要ではないか。さらに条件をつけて、もし他国がこれに応じなかったらば、あるいは再開の自由を持つのだという留保をつけておりますが、ソ連としてはあるいは無理からぬことかもしれませんが、日本希望としては、そういう方向に留保をつけることよりも、さらに一方的に宣言をソ連はしたのみならず、米英も必ずこれに従わなければならないような方向に問題を展開するように、ソ連も積極的に動くべきだと、こういう希望をつけた申し入れをまずやることが第一。  それからそれに引き続いてやはり先ほど問題になっておりますように、アメリカ、イギリスおのおのに対しても、ソ連がすでに一方的にこういう宣言をしたのだから、あなたの方もそれにおくれをとらないで、直ちに一方的な禁止の、ストップの宣言を応じてやって、少くとも実験禁止を全世界的な事実に盛り上げる必要があるじゃないかということを両国に明確に申し入れをされることが必要だと、特に先ほど問題になっているように、エニウエトクの実験も間近に迫っておることでありますから、非常に時期を考えなければならないので、両国に対する申し入れをそういうふうにする。それから次に、今やそういう意味で核実験のストップという問題は、もはやもう論議の問題ではなくて、実行の問題になっている。従って、今度は巨頭会談の問題は、核兵器生産のストップあるいはその保有、貯蔵、生産、使用、そういう核兵器の全面的な禁止ということが、むしろ相互間の協定なり協議の問題になってきている、問題はもうそこに移ってきている、それを巨頭会談その他において明確に打ち出し、その段階において話をきめることに全力を注ぐべきだと、これもあわせて各国に申し入れをし、そういう態度で先ほど申し上げた総理大臣なりあるいは少くとも外務大臣態度表明を至急になさるべきだと思いますが、それらの点をどういうふうになされますか。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) このソ連の今回の問題に対しては、日本の総理大臣の談話となりますか、あるいは日本政府の声明となりますか、そういう意味のものを出したい、こういうふうに考えております。むろん今後の国際問題が起りましたときに、私としてはいろいろな説明、理解を国民に得るためにできるだけ多くの機会情報局長談というものを出して、そしてわれわれの見解を述べたいと思いますが、今回の問題は相当に重要な問題であるということは御指摘の通りでありますので、政府の声明といいますか、あるいは総理大臣談といいますか、そういうものを出したいということで今考えております。  それからそういうものを出した場合に、さらに第二段として、各国にそれぞれ申し入れるかどうかというような問題でありますが、この問題につきましては、われわれも十分ただいまの政府の声明というものをどういう形で出すかというのとあわせて一つ考慮して参りたいと思います。巨頭会談が行われましたときの問題として取り上げられるべき問題は、まあいろいろあると思いますが、巨頭会談としての議題というものが非常にこまかにわたるとは私ども思っておりませんし、また、非常に細部のものにわたり、末梢的なものにわたるともそう思いません。従って、現在の段階では、やはり核武装の問題というような問題は巨頭会談における大きな話し合いだと思います。ただいま佐多委員の言われましたように、核実験の停止というものがすでにもう現実の事実となっているからというお話でありますけれども、やはりこれを取り運んでいくためにも、やはり巨頭会談で核実験の問題も取り上げてもらわなければ、ほんとうに具体化していくということにはならぬと思いますから、そういう意味においては、核実験の問題なり、あるいは核武装なりあるいは全体の軍縮の促進というような問題について日本としては、これは要望していきたいというのが現在の考え方でございます。
  75. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私の希望なり申し上げたい点は、核実験の停止の問題は、もはや巨頭会談で論議をする問題である時期は過ぎてしまった。そういうことを持たないで、各国別に独自に、もはややるべきだということを強く訴えてもらいたいし、従ってまた、巨頭会談の題目はもう一つ高い段階の題目だということも明確にし、それを中心にして巨頭会談も早く開かれるような積極的な働きを、もっと日本が積極的にその働きをすべきだということを申し上げているのであります。  それからもう一つ、これを契機にして核実験なり、核兵器の禁止の問題なり、核武装の問題なりというのは非常に大きな世界的な問題に展開して参ると思う。しかもこの問題については、もう申し上げるまでもなく、日本が最も関心があり、最も積極的に動かなければならない問題であり、昨年は国民使節をお出しになった。ことしこそ、さらに大がかりな国民使節を各国に派遣をする必要な時期でもあり、段階でもある。こういう気がするのですが、従って、それに対し政府は何かお考えになっておるか。お考えになっていないとするならば、この際あらためてお考えになって、特段の措置を講じられる必要があるんじゃないか、その点をどうお考えになりますか。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 核実験の禁止、あるいは核武装、核兵器の生産、保有、使用の禁止まで進むことが、世界の平和が到来する一つの大きな道だと思うのであります。平和国民として生まれ変っている日本としては、当然そういう問題について努力をすべきが当りまえでありますし、また、日本人が原爆の最初の体験者としての国民的な意識からいいまして、当然それに熱意を持ってやるわけであります。政府としても、その点は十分熱意を持って今日までも努力してきているつもりでありますが、今後とも努力して参りたい、こういうことを考えておるわけであります。その具体的方法としてあるいは国民使節を出すというような問題等につきましては、今後の問題として、一番適切な方法をなるべく強くとっていくというようなことで考慮していきたい、こう考えております。現在今、国民使節を出すとまできめてはおりません。
  77. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 ただいまいろいろ各委員から御意見が出ましたソ連の今回の声明の取扱い状態ですが、私は、これの根本的な問題が前提条件にあると思うのであります。それはこの世界の緊張関係が今日ほど激しくなっておらなければ、この問題の取扱いは、たとえば技術的に、予算委員会で同僚の苫米地議員が質問しましたように、ジュネーヴの国際会議で毒ガスを禁止したというふうな、その中に核兵器も一切禁止するという条件を一つ入れて、持っていてもこれを使わないということもできるのでありますが、それは今日、毒ガス禁止の問題のように簡単に片づかないのは、この核兵器のために東西両陣営が生命を賭するような状態になってきている。それはこの緊張関係が非常に先鋭化しているからだと思うのであります。なぜ先鋭化するかということは、私は本会議質問でも触れたのでありますが、この世界の平和というものを、力のバランスによる平和によるか、あるいは話し合いによってお互いに合理的なる基礎の上に平和を発見することができるかという建前とで変ってくる、こう思うのであります。たとえば、このソ連の今回の実験禁止に関する宣言につきましても、各国の受けている反響を、今日だけの新聞によりましても、多少の疑惑を持ってこれをながめるのは、つまりこれがソ連側においては、力の関係において有利だからこれを声明したのじゃないかという一まつの疑念があるからだと思うのであります。私はこの際、世界の平和を維持して緊張を緩和するためには、お互いが不信の観念を持ってすべての問題を取り扱っていく場合には、なかなか解決が困難であって、一見回り道のようでありますけれども、どうやったらこの緊張緩和という問題に、力の関係によらない方法で新しい道を発見することができるかという問題をあわせて考えなければ、今回のロシヤの一方的宣言だけをすなおに各国が受け取れないような状態にあるのではないか。従って、私は、日本はこの問題については非常に被害者としての立場にもおり、自分は核兵器を持っておらないのでありますから、公正な立場に立って議論ができる位置でありますから、私は世界の世論が納得するような正しい方法で緊張緩和の大きな問題を取り上げて、それのうちの一つ方法として、こういう核実験禁止ということを各国が受け取れるような状態の展開を研究するその一つとして、この問題を取り扱う、こういうふうなことは、このことが回り道のようであってかえって具体的ではないか、かように考えますが、外務大臣はいかがでございますか。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 世界のこの現在の困難な状況というのは、二つの陣営における不信感にあることはお説の通りだと思います。従って、その不信をできるだけ取り去らなければ、お互いの間の緊張が、国際間の緊張が緩和しないということもその通りでありまして、私どもその通り信じております。従って、われわれは、あらゆる機会に、今両方の側がお互いに不信を払拭するような方法を、またお互いに相手方を信じ合えるような道に進んでいくように、われわれ第三者としては、努力をしなければならぬ、それが今お話のように問題を解決する一番早道だということを考えておるわけであります。従って、われわれとしては、そういう面に十分な今後とも努力をすることは当然だと思います。同時にまた、この核実験の問題につきましても、やはりソ連側も真摯な態度で、自由主義陣営の方に誤解されないような態度をとってもらわなければならないと思いますし、また、そういう態度が出てきますれば、英米側もやはりそれに対して信頼し得るような考え方になってもらわなければ、この問題は解決しないと思うのであります。そういう意味において、従ってそれぞれの国に対してお互いに不信感を払拭するような、ただ口頭で宣言したということでなしに、実質的に不信感が除去するような方向にソ連側も歩いてもらわなければなりませんし、また、英米側もそれに対して十分な理解をもっていくということにならないといかぬと思うのであります。そういう意味において大きな一つの手がかりができたわけでありますから、そういうものを今お話のように、具体的な問題としては、核実験の問題という問題でありますが、それを手がかりにして、不信感が除去されるような方向にいければ、それは次に起ります核武装の問題にしても、あるいは全般的軍縮としても解決の道が容易になってくる、そういう意味において考えております。お説の通りであります。
  79. 森元治郎

    森元治郎君 簡単に伺いますが、この核実験禁止について、政府がいつももたもたする感じがする理由は、自由陣営にとって不利な場合にはどうもやりたくないというようなことにあると思うのですが、正しい日本の国の、日本政府気持に合うならば、たとえソビエトの提案でも、ソビエトの提案だからといって留保したり、あるいはくさしたりしないで、率直に飛びついていくという決心がおありかどうか。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、私どもは、ソ連側の提案だから反対する、自由陣営の提案だから賛成するという考え方は毛頭ないのでありまして、ほんとうに先ほど鶴見委員の言われましたように、お互いに不信感を除去するような立場に立って、そうして正当なことを言われる限りにおいては、どちらの提案についてもわれわれは十分サポートしていいのだと思います。そういう意味において、決してソ連が言い出したのだから反対し、あるいは自由陣営が言い出したものだから賛成するというような態度は、今日までもとっておらぬつもりでありますが、今後ともそういうことでいっておるわけであります。
  81. 森元治郎

    森元治郎君 これまでもとらないと言うが、昨年の登録制という不可思議なる案がありました。その次に、秋には今度は一般軍縮とからませて、あやふやな、われわれでもわからないと思ったら、ソビエトにも変な目で見られ、アメリカではソ連案だと言って、両方からけられてしまった、行方不明になった、こういう過去の例があるから私は伺うのであります。これからははっきり、やはりたとえ反対陣営のものでも、正しい、自分の方の主張に合っている場合には、勇敢にやっていかなければ、国際社会を乗り切れないと思うのでありますが、もう一ぺんお尋ねをいたします。
  82. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 核実験の国連における場合でありますけれども、登録制の問題については、実は私の就任以前でありますので、どういう情勢の判断からああいうものをいたしたか、私は承知いたしておりませんし、当時としては、当然ああいうのは適当であろうとして提案されたことだと思っております。昨年の場合においては、これは英米の考えを入れるとか、あるいはソ連の考えをないがしろにするとかいうわけではなくて、たびたび申し上げておりますように、この問題については、人道的な立場からただ言いますよりも、具体的な問題として、国連の場において一日も早く取り上げられる方法考えていくというのが、一番あの際の情勢において必要ではなかったかというのが、まあ私の考え方であります。従って、昨年の提案についてはいろいろの御批評もありますけれども、私としては、あの総会においては必ずしも不適当な案であったとは考えておりません。また、当時私は国連に参りまして、ソ連の代表部とも三度ほどグロムイコ外相とも会いましたのですが、インドのネール代表とも会ったのでありますけれども、頭から必ずしも日本の案をくさしてもおらなかったのでありまして、しかしながら、事情のあれからいって必ずしも日本案に賛成されなかった点もありますし、また、自由主義陣営においても賛成されなかったわけでありまして、まあこれは見方の相違になるかもしれませんが、あのときの段階においては、私は必ずしも悪い案ではなかった、最良とまで自分で申し上げてはどうかもわかりませんけれども、かなり適当な案ではなかったかと考えております。
  83. 森元治郎

    森元治郎君 そこで世界の大勢は、先ほど外務大臣も申された通り、核実験禁止は一般軍縮から離していく方の傾向にきたと思うのであります。そこで政府としては、これからは、核実験を禁止にしぼって世界に向って主張されることが成功される公算が多い、アメリカもそっちの方にきていると思うのですが、それに対するお考えと、これをはばむものがもはや査察ということが大へんな問題でなくなって、どこで実験をやったかわかるようになってきたために、一番はばむ要因としては、自由主義陣営側がおくれているから、もう少し実験をやりたいというところにあると思うのです。これは表面的には言わないかもしれませんが、アメリカの軍部としてはもう少しやりたい、ソ連におくれておるからもう少しやりたいということでくると思うので、これに対する外務大臣のお考えを伺いたい。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在のような科学の日進月歩の進歩によりまして、先ほど曾祢委員の言われましたように、探知の方法というものが昨年考えられたよりも非常に進歩してきた、従って、世界のどこで実験を行なっても探知する方法があり得るのだ、従って、いわゆる査察という面において、その探知という面から核実験の査察というものが可能になりつつある。実際的に行われるのだということが、現在の段階では、核実験の問題を切り離して考えられるような段階にきたと思う。一般軍縮あるいは核兵器の問題については、まだそれらの方法が完全でないから、そういう何か査察の方法が確立すれば、あるいは空中査察であるとか、あるいは現地査察であるとかいろいろな問題について行き悩んでいるところがあると思うのであります。従って、今日の情勢から言いますれば、一般軍縮からあるいは核兵器の保有、その他の問題と切り離してこれが考えられるという段階に逐次なってきたということは、私もそう考えておりますし、また、アメリカ方面あたりでもそういうふうに考えておるのじゃないかと思うのです。従って、切り離してやるということが、実際の問題として現実化されてくるような趨勢にあることば間違いないと思います。
  85. 森元治郎

    森元治郎君 政府の方針……。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府としては、従って、そういう情勢をにらみ合せながら、現実に問題が解決する方向に向って進んで参るわけでありますから、一日も早く、そういう問題が解決する方法として、核実験だけが査察の方法論が確立すれば、当然そういう面について実効を上げ得るということになりますれば、切り離していけるということを考えております。
  87. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 私は単に私の意見を簡単に申し述べまして、そうしてそれは私の希望として、外務大臣に申し上げておきたいと思うのであります。大臣の御答弁は私は要求いたしません。  なるほど、ソビエトの今回とりました核実験禁止に関しまする態度、声明というものは、これは非常に重要な声明であり、画期的なものであったということにつきましては、私も同感であります。しかしながら、もう一つ事実としまして、この数週間来、シベリアのどこかの位置でもって何回かたび重なる実験が行われた、核爆発の実験が行われたという、何回でありますか存じませんけれども、あるいは十数回に上ったという情報もあるのであります。そうしておいて、突然今回の核実験禁止という声明を発したというところに、何かしらぬ私自身としましては疑惑を感ぜざるを得ないのであります。自分の方の実験はある程度まで済んでしまった、この点でもって相手方を封じれば、自分たちの方が優位を持続することができるのだ、こういったような考え方から、もしもソビエトがああいったような声明を出したとしまするならば、これは私どもよく考えさせられる問題がそこに残るわけであります。もしその事態が反対であって、アメリカが核兵器の問題でもってソビエトに対しては優位な地位を占めておったと仮定いたしましょう、事実は反対でありまするけれども。もし、しかし、アメリカがそういったような優位を保っておったとして、そうしてソビエトが今回やったような、何回も何回も実験を続けてやって、そうしてこれでもう自分たちの方は安心だ。ここで核実験禁止を声明して、そうしてソビエトを引っぱって、ソビエトのこれから先追っつこうとする実験を禁止するというようなことがかりにあったとしまするならば、現在の日本の空気におきまして、少くとも世論の一部には非常な反対があったろうと思うのであります。アメリカのやり方は不公平だ、いやアメリカのやり方は狡猾だと、ずるいやり方だと、こういったような非難が当然起きてきたに相違ないと思うのであります。事実はこの反対であって、ソビエトの方が核実験問題も、核兵器問題でも優位を占めて、そうして今申し上げましたごとく、数回にわたる実験をやったあとでもって突然実験禁止を声明したということに対しましては、そういったような考え方から申しまするというと、はなはだあきたらぬものを私としては感ぜざるを得ないのであります。でありまするからして、政府とされましては、あらゆる方面の情報を集められまして、日本政府日本政府らしく、何もソビエトがそういったような声明を出したからといって、あけっ放しにとれに飛びついていくというようなことではなしに、日本立場からじっくりとよく考えられて、そうして適切な方法をとられることが、私は日本政府としての当然の道ではないかと思うのであります。それだけのことを希望として申し上げておきます。
  88. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 本日は、これにて散会いたします。    午後零時十五分散会    ————・————