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説明員(新關欽哉君) ただいま、
曽祢委員から、
国際情勢の問題、特に
ソ連の
動向に
関連いたしまして、最近の注目すべき現象といたしましての
ソ・ユ関係についての御
質問がございました。
ソ連の
動向につきましては、非常に、御
承知の遡り、
判断は困難でございまして、いろいろな情報によりまして、大体どういう
方向に動いているのではないか、ということを見きわめようといたしまして、私
ども努力をしておるわけでございますが、確かに
曾祢委員の御
指摘のように、
ソ連の
ユーゴに対する
政策というものは、最近に至りまして、ことに、最近の
ユーゴの
党大会で採択されました党の綱領をめぐりまして、非常に表面化してきたという事実はあろうと思います。
ソ・ユ関係の
基本、あるいはその背後にある――もっとも
ソ連の
外交政策の、最近における
根本の方針が規定されましたのは、御
承知のように、二年前、
ソ連の第二十回
党大会であります。その
党大会の線に基きまして、
ソ・ユ関係におきましても、何と申しますか、
ソ連といたしましては、大きな
世界政策面から、
中立国を積極的に
利用していくという新しい線を打ち出しまして、その線に基きまして、
ソ・ユ関係の
緊密化が行われたのであります。
ただいま御
指摘ございましたように、一九四八年に
コミンフォルムの問題がございまして、これは、
スターリン時代のことでございますが、
ソ・ユ関係が非常に危機的な状況に立ち至った。これに対しまして、いわゆる
フルシチョフは、そういった
ユーゴ関係を是正する必要というものを
世界政策の観点から痛感したものと思われまして、ここに
ソ連と
ユーゴとの一応の
和解というものが、例の
ベルグラード宣言を
中心として、なったのであります。ただし、ただいま
曾祢委員から御
指摘もございましたように、
ハンガリーの、特に、
ハンガリーの問題でございますが、一昨年の
ハンガリーの
暴動事件、あれに対してとった
ユーゴの
態度というものに対して、
ソ連の方が再びあきたらないという
態度を示して参りまして、相当の痛烈な
批判が、昨年すでに行われたわけでございます。これに対しましては、いろいろな応酬がございましたが、昨年の八月に
フルシチョフと
チトーが、ルーマニアのブカレストで
秘密裏に会合いたしまして、一応の打
解策がここで打ち合わされ、御
承知のように、東独の
承認というような
措置にまで
ユーゴは踏み切ったのであります。
このようにいたしまして、
ソ・ユ関係におきましては、二十回
党大会、あるいは、
ベルグラード宣言の線に沿いまして、
ソ・ユ関係の
正常化という線が打ち出されておりましたけれ
ども、それらに、その後においては、いろいろな大きな波と申しますか、
上り下りがあるというふうに考えられるわけであります、ことに最近の
ユーゴ共産党に対する
ソ連の
批判というものは、今までの
ソ・ユ関係の単なるアップ・アンド・ダウンというにしては、あまりにも深刻なものがあることは、確かに御
指摘の
通りでございます。そういったことについて、
ソ連の、あるいは
フルシチョフの真意がどこにあるかという問題になりますけれ
ども、私なりの結論を申さしていただきますならば、やはりそこには第二十回
党大会で打ち出されました、何と申しますか、中立主義をエンカレジしていくという
方向に対して、これをあまりエンカレジしていくと、
国内に対するはね返り――
国内と申しますか、圏内に対するはね返りというものが生じてくる、そういった
意味におきましては、私は今度の問題などは、ポーランド、
ハンガリーにおける最近の
事態と
関連があるのではないかという感じがするわけであります。つまり二十回
党大会におきまして、中立主義をエンカレジしていくという線が打ち出されますと同時に決定されました重要なポイントといたしましては、
イデオロギーの面においては平和的共存はないということをはっきり
フルシチョフが言っておるわけでございます。そういった観点を推し進めて参りますと、
ユーゴの問題というものは、二つの考え方の間にはさまったような問題になってくる、
一つには修正主義という
言葉で言われている問題でございますが、
ユーゴのインフルエンス――まあ修正主義という
言葉で呼ばれております
ユーゴの共産主義の立場というものが、やはり東欧の諸国――
共産圏、
ソ連圏の中に入っております東欧諸国に相当のインフルエンスをもつてくる、ことにポーランド、
ハンガリーあたりに対しては、相当に影響力があるわけであります。こういった
意味におきまして、私は最近の異常に痛烈な形をとった
ユーゴ攻撃というものは、
ソ連圏内の地固めと申しますか、足並みをそろえると申しますか、そういった最近の
動きと非常に
関連があるのではないかとこう考えております。その
意味において注目されますのが、最近モスコーで開催されましたワルシャワ条約
関係国の会議、それと並行して行われました東欧諸国の経済相互
援助に関する会議がありましたああいった会議の
動向を見て参りますと、何やら東欧圏内の、一時スターリンの死後、結束のゆるんだ、ことにまた、
ハンガリーの事件、ポーランドの事件によって、一時危機に瀕した東欧の、つまり
ソ連圏の政治的、経済的協力態勢というものを、この際も一回把握し直さなければいけないといういわば再検討の
段階にきているのではないか、そういった
動きと、私は今度
ユーゴに対する
ソ連の激しい攻撃とは、非常な
関係があるのではないかという感じがするわけであります。まあこういった
意味におきまして、
ユーゴ問題は、
イデオロギーの闘争といたしましてももちろん非常に深刻なものがあると思いますが、ただこれが、今後国際的な政局にとういうふうに影響して参りますかと申しますと、
ユーゴとしては、やはり今までの
建前から、自分の主義、主張というものを早急に変えるということは、とても考えておらぬし、
ユーゴをそういった
意味におきまして、あまり政治的、経済的に締め上げていくということになって参りますと、全般的な
ソ連の
政策、つまり巨頭会談を前にいたしまして、
中立国をもできるだけ自分の立場に引き寄せていこうというそういった考えと、また、一種の矛盾をしてくるわけでありまして、そういった
意味合いからいたしますと、私は
ソ・ユ関係につきましては、党と党の間の
関係というものは、今後非常に調整が困難な
事態がずっと続いていくと考えられますけれ
ども、
ソ連と
ユーゴ、つまり国家間の
関係におきましては、たとえば外交断絶とか、そういったような非常に深刻な
事態まで発展するとは思われないのであります。もちろんその中間的な形態といたしまして、最近
ソ連は
ユーゴに対する経済
援助と申しますか、クレジットを五年間停止する、引き延ばすというような
措置をとっておりますけれ
ども、
ソ連といたしましても、あまりに
ユーゴを極端なところまで追い詰めていくということは好んでおらないのではないか、ただ、
イデオロギーの問題になりますと、やはり東欧諸国の全体の足並みをそろえるというような観点からいたしまして、
ユーゴのいわゆる修正主義というものに対しては、非常に手きびしい
態度を今後とも続けていくのではないかと考えておるわけです。
それからまた、中共の
態度に
関連いたしましては、確かに中共の人民日報の書いた
ユーゴ攻撃の論文、それから、それと前後いたしましてプラウダで発表された
ユーゴに対する攻撃の論文、その調子に確かに食い違いと申しますか、
ユーゴに対する攻撃に、中共の方が
ソ連よりも遙かに激しいというようなことが一時ございました。その点からいろいろな揣摩臆測が行われたわけであります。たとえばスターリニストの勢力が、最近
ソ連共産党の中で非常に強まったとか、あるいは中共がスターリニストと提携して、そうして
フルシチョフをいろいろと圧迫しているのだというようないろいろな説がございましたが、私は、その
根本的な考え方において、中共と
ソ連の間に大きな差異はないのじゃないか。中共といたしましても、やはり昨年十月のに命四十周年記念におきまして、共産党の宣言が採択されましたときに、
ソ連を盟主とする、つまり
ソ連を頭にいただく国際共産主義運動ということにつきまして、非常に積極的な支持を与えております。そういった
意味におきましては、一時
ユーゴ攻撃において見られたような
ソ連と甲兵の
態度の相違というものは、本質的には存在しないのではないか、また、そのことが、最近
フルシチョフがブルガリアを訪問いたしまして、ブルガリアの共産
党大会におきまして演説をいたしまして、初めて
フルシチョフとして
ユーゴに対する攻撃を行なったのでありますが、その内容などを読んでみますと、前に行われました中共の人民日報の攻撃の調子と全く軌を一にしておるわけであります。そういった
意味におきましては、
ユーゴ問題に
関連いたしまして、中共、
ソ連の
態度の間に、何らの考えの違いはないのではないか、こういうふうに考えておる次第であります。