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1958-06-09 第28回国会 参議院 外務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月九日(月曜日)    午前十時三十八分開会     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            森 元治郎君            石黒 忠篤君    委員            井野 碩哉君            鹿島守之助君            笹森 順造君            杉原 荒太君            苫米地英俊君            永野  護君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            安部 清美君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   説明員    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務参事官   新關 欽哉君    外務省経済局米    州課長     吉良 秀通君    外務参事官   北原 秀雄君    外務省国際連合    局科学課長   松井佐七郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)  (報告書に関する件)     ―――――――――――――
  2. 井上清一

    理事井上清一君) ただいまより、外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題といたします。  政府当局に対し、質疑を行うことといたします。政府側出席者は、金山欧亜局長板垣アジア局長の予定でございましたが、若干おくれますので、ただいま欧亜局からは、新開参事官アジア局からは三宅参事官が参っております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 それじゃお伺いいたします。ここのところ、新聞やラジオで伝えられておるところを見ますというと、アメリカとの問の原子力協定がいよいよその締結される段階に来た。ただ問題は、日本でもって輸入したウラン、あれをこちらでもって使いまして、そのあと出ましたものを向うで引き取る場合、日本側では、前回からそれは軍事力には使ってはいけないというふうに向うに求めておったのですけれども、どうもアメリカの方が聞かないということで、だいぶ締結がおそくなっておったのですが、どういうふうな形で今それが進められつつあるか、そして果して新聞で伝えられておるようなことで落ちつくことになるのか、まず、その経過を一つ説明願いたいと思います。
  4. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 御答弁いたします。  最近、新聞に種々日米原子力協定関係いたしまして、日本で行います平和的利用過程においてできましたプルトニウム米国政府の、何と申しますか、先買権と申しますか、それに関しまして種々臆測記事が出ておるわけでございますが、この問題に関しましては、日本原子力基本法建前からいたしまして、日本における平和利用の結果できますプルトニウムに関しましては、方が一それが協定にうたわれております米国政府によります先買権が発動されました場合にも、必ず平和利用にのみ限るということにつきまして、米国政府から適当な約束を取りつけるために種々努力して参ったおけでございますが、実際に申しますれば、この問題は、今回、米国議会におきまして原子力法五十五条の改訂問題をめぐりまして、いろいろ日本国内にもその波紋を投げかけておるのでありますが、実際問題といたしましては、現在。プルトニウム日米協定、十年間の有効期間がございますが、その間、日本が輸入することを予定しております二・七キロトンのウラニウム、これからできますプルトニウムは、日本原子力平和利用が順調に進捗いたしますれば、必ず日本国内でもそれを平和利用に使い得るという大体のまあ計画を持っているわけでございますが、この計画は今直ちにプルトニウム平和利用に使うということに日本原子力帝業において着手し得るということを意味するものではございませんが、今回の協定の中には、今後三年あるいは四年の後に実際に原子炉が稼働いたしまして、その結果できましたプルトニウムは直ちにそのプルトニウムが余りました場合には直ちにアメリカがこれを買取権によって買う〉一いう趣旨ではございませんので、どうしても日本利用できない。プルトニウムが余った場合には、これはアメリカが買うことが日本がよその国に売る前にアメリカが買うという建前のまあ条項を入れているわけでございますが、実際問題といたしましては、これは必ず日本において使い得るということ、それから万が一それがもしも日本において利用されない場合には、アメリカ政府が買い取りました場合において、これを必ず平和利用に使うということについてのある意味米国政府確約を得ております。  委員長ちょっとお願いがあるのでございますが、いましばらくの間、これはできますれば秘密会に……。
  5. 井上清一

    理事井上清一君) いかがでございましょう。ただいま外務省当局から、しばらくこの問題につきまして秘密会にしたいという要求がございますが、お諮りをいたしたいと思います。懇談会という形にした方がよろしいと思いますが。(「速記だけをとめればよろしいではないか」と呼ぶ者あり)そうですが。
  6. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 速記をとめていただくことでけっこうですが、しかし、ちょっと新聞の方は。(「実際新聞に出ているじゃないですか。」と呼ぶ者あり)
  7. 井上清一

    理事井上清一君) 大へん恐縮でございますが、新聞関係の方は……お願いしたいと思います。  速記をとめて。   〔速記中止
  8. 井上清一

    理事井上清一君) 速記を始めて下さい。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、協定そのものは、両方とも国会で論議されて承認される必要がある。ところが、それにつけられる付属文書だけは、片方の方はこれは取り扱わないわけで、日本側だけこれを論議していくということになるわけですが、今までこういうふうな例はあるのですか。
  10. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 具体的には私、前例を存じておりませんが、本件につきましては、もともと、先ほど岡田委員からも御指摘がございましたように、これはやはり先方行政府の長としての大統領声明をそのまま確認するという趣旨でございますので、先方におきましては、対議会の手続上は必ずしも出す必要はないのではないか。当方におきましては、協定関係関連参考書類といたしまして、国会において御審議を願うということになると思います。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、協定も、本文の方は両方国会がこれはまあ承認するということになるのですが、付属文書覚書の方は日本側だけだと、向う側は別にこれを取り扱わないということになってくると、この付属文書効力というもの――両国間において取りきめられた全体との関連においての効力というものは一体どうなるのか。
  12. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 覚書文書そのもの効力につき、ましては、これは両方政府の委任を受けました代表によりまして協定調印と同時にイニシアルされますので、これは両国政府間の効力に関しましては疑う余地はないと思っております。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本側の方では国会でもって承認をすると、もし向うの方で協定本文の方はよろしいと、向う国会もこれを承認すると、ところが、付属文書の方について文句が出た場合、これはまあ国会にかからないわけですけれども、しかし、これが国会にかかって討議される場合には、いずれこの付属文書関連するものとして論議されて、これにいろいろと向う文句が出る場合も予想されるのですが、そういう場合には一体どうなるのですか。
  14. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 本協定は、米国側におきましての取扱いに関しましては、行政府国会に一カ月間この協定テイブル――提出して公開するわけでございますが、その間に何らの異論がなければ、そのまま行政府に対する承認が与えられたという取扱いになりますので、この間、これは今後のことでございまして、覚書そのもの米国議会に提出されないということからいたしまして、この覚書に関して、米国議会の方から何らか異議がある場合に、どういう取扱いになりますか、ちょっと私この席では御答弁できないのでございますが、現実の問題といたしましては、これは行政府の長がその権限範囲内にあることを声明いたしましたものでございますから、米国議会といたしましては、新たな立法措置をとらない限りは、これに関しては、法的には有効な異議を出し得ないのではないか。そういうような意味におきまして、ただいまの御質問は、現実にはそういう事態が起らないで済むのではないかというふうに考えております。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 それに関連して。大体一種の、何といいますか、協定全体が、向うから見ると、向う法律の中の一種のエキゼクティブのアグリーメントみたいな取扱いになります。従って、全体について一カ月間テイブルしておいて、文句がなければ、あらためて向うが三分の二の議決をしなくとも、つまりトリーティーの扱いをしない、全体がそういう関係になるのですか。
  16. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) さようでございます。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 そうしますと、今岡田君の言われた点は、全体としてアメリカから見れば行政協定みたいなもの、行政府がやれる権限内のものである。従って、アイゼンハワーの従来の政策ですね、つまり外国援助したウラニウムから出てくるプルトニウムも、純粋にアメリカに返った場合も平和的利用のみに限るということも、これは行政府だけの見解でやっておって今のアメリカ原子力法からいうと少しも矛盾はないから、従って、議会の方でその政策を変えるような法律の改正をしない限りは、そのアメリカ政府声明だけで、日本政府としては十分な保証だと見ると、こういうことになるわけですか。
  18. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 現存の米国原子力法建前が続いております限りは、そういうことになります。万一その米国原子力法建前が変りました場合には、これは日米協定条項によりまして、協定の改訂なり再交渉ということに現実にはなるものと存じます。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 そこで、もう一つバック・グラウンドの――これは新聞のニュースしか知らないのですが、事情として、外国側援助の結果できてくるプルトニウムを、これまたやはり軍事目的に使う必要が最近出てきた従って、その点を、今言っておる現アドミニストレーションの政策を変えて、やはり平和利用の結果であるプルトニウムについても、これを軍事目的に使えるように改正しようという動きですね、これはどれほど強くなっておりますか。
  20. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 確かに、今御指摘動きは、最近の米国議会にも出て参ったわけでありますが、この点に関しましては、目下米国が各国の平和利用援助のために出しておりますウラニウムからできますプルトニウムの数が、現在米国がその軍事利用のために計画上必要としておりますプルトニウムの量に比較いたしまして、まことに僅少なわけでございますので、その点からして、先日民主党から出ました動きというものは、そのままの形では通らないのではないかという見通しをしております。他面、万一そういう場合に、たとえば日本よりも相当数量の多いウラニウム援助を受けております国が、将来生産し得べきプルトニウムの買取りが万一行われるという場合には、それを軍事目的のために使う場合には、現在の原子力法が続いております限りは、平和利用に関する協定のほかに、軍事利用に関する協定をもう一つ新たに作りまして、その軍事利用に関する協定に従ってプルトニウムを買い取る。これは現在NATOとの国の間に問題になりつつある問題だと推測しておりますが、聞いておりますが、建前上はそうなると考えております。それから米国内におきましては、この動きは、現在のように、原子力産業を民間にゆだねている限りは、米国においては平和利用という点からして、英国のようには早く進まない、つまりエネルギー源が非常に安うございますので、この点について、米国内の原子力平和利用に関する産業を全般的に国有に変えるという措置にまでもっていかなければ、この点は根本的には解決しないのじゃないかという情勢判断をいたしておるわけであります。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つ伺いたいのは、さっきあなたの御説明の中にあった、現実にはウラニウム数量そのものが、非常に小さいのだし、今のところ、日本でその能わがないにしても、現実に稼働するころになれば、できたプルトニウムそのものを、日本で平和的に利用する余地ができるではないかというお話で、従って、現実にはアメリカの先取りを援用して、実際買ってくるあれでなくて、日本の方でそのプルトニウムを平和的に利用する可能性が多いように言われたのですが、それはどういう目的で、どういう趣旨で使われるのか。また、そのこと自身が日本原子力基本法からみて、技術的の可能性の問題はわからないけれども、差しつかえない。ほんとう平和目的プルトニウム利用するとか、核融合反応とかは、いきなり試験的にもやれる段階にないように思うから、日本で作ったプルトニウム平和利用するという可能性は、どういうものであるかということを説明してほしい、これは外交問題じゃないかもしれないけれども
  22. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) この点につきましては、今度の協定にうたわれております買取権というものが、余った瞬間にすぐ返すということでなしに、非常にその間時間に関しましては、極端に申しますれば、十年間日本保存しておいてもいいという建前になっておりますので、この点が一つどもとしては、プルトニウム平和利用への技術的な面でおくれた場合には、これを一つ保証として考えておりますが、これを日本において平和利用に使われます場合に、どういう点が考えられるかという点に関しまして、私はあまり詳しく存じませんので、担当課長一つ説明を。
  23. 松井佐七郎

    説明員松井佐七郎君) 北原参事官の御説明なさったそのあとのことを少し補足して申し上げますが、日米協定プルトニウムが問題になったのは、まず、日本平和所要量が規定してあるので、日米協定でもこの点を書くへきだったと思いますが、この協定では平和所要量認定権日本が自主的に定め得るわけです。それの対象は、原子力委員会計画を策定するわけであります。御存じのように、将来動力炉のような原子炉が設定されれば、当然平和利用燃料として再使用する。それをこえたものが起った場合に、初めて先買取権というものが発生するわけであります。現実の問題としましては、協定有効期間十年間に二・七キロトンの濃縮ウランをもらいますけれども、第一号炉の本格的な原子炉の輸入というものは、今後数年間おくれると思います。というのは、発注しましてから、設計、建設……日本で稼働するまでには約四年ないし四年半かかるそうであります。従って、それに必要な燃料は早くからもらってくる必要はないのです。大体購入……動力炉の場合、購入でございますけれども、要りもしないうちに初めから買いますと、倉庫料その他かかるのでして、必要な合理的な範囲内の期間を貫いて、その前に買っておけばそれでいいと思います。従って計算しますと、大体五年の間に十五万キロワットの……どういう原子炉を使うか知りませんけれども、主として加圧水型の原子炉を使うとしますと、一年間にプルトニウムがどのくらい出てくるかということは単間土の計算ができるわけです。大体一年間に十五キロから十七キロ程度、それを五倍いたしますと、七十五キロかあるいは八十五キロ程度で、割合少い量でございます。これの平和所要量協定上何ら……どういうふうにしてきめるか、何に使うかということは、全然きめていないのです。従って、これはもう処分権日本政府にまかせるという建前です。従って、もしも先取権というものを、アメリカ軍事利用されるという、さっきの北原参事官の御説明で、そういうおそれはないということを十分確信していただいたと思いますが、しかもなおかつ、それ以上に理論上の問題として心配があるとおっしゃるならば、平和利用の問題をもっと具体的に考えることがいいと思うのです。御参考までに申し上げますと、イギリスの協定では、平和所要量の問題につきましては、ペーパープラン平和利用目的ということになっております。日本処分権がありますから、その貯蔵処分というものは、一に日本政府にまかせてあるわけです。その点につきましては、原子力基本法の精神の自主性というものは十二分に尊重されておる建前になっております。
  24. 曾禰益

    曾祢益君 大体先取権があるけれども、一応保存と平和的の利用ならば、ペーパープランでもいいけれども、一応処分権日本にあるのだという大前提では、現実にどう処分していくかということは、動力炉の問題は、それを作る能力だとか、そこまで開発が進んでいるかということによって違うだろうけれども、一応は日本保存ができない。貯蔵権処分権があって、しかし、これが平和的にできない場合には、ですから外に返す場合には、先取権が出てくる。だから二重にも三毛にもギャランティがある。現実の問題においてはそのくらいの少量だから、それがいよいよ稼働して、しかも最初少量使うくらいならば、その時分には計画もできるだろうし、完全に一本で基本法に反しない純粋な、平和的利用プルトニウムを使う計画ができていくだろう。そうすれば、実際問題として買取権の問題ば起らないで済む、その程度数量だ、大体こういうふうに解釈していいのですか。
  25. 松井佐七郎

    説明員松井佐七郎君) 大体曾祢先生のお考えの通りだと私は信じております。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 この付属文書で、今言ったように、アメリカの方で先に買い取った場合に、平和利用するということが明らかにされるわけですが、アメリカ日本以外の国との間の協定については、やはりこういう形式でやられているのですか。
  27. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) この平和利用に関しまして、協定の条文以外に特別の平和利用に関する点についての確約を取りつけるというのは、おそらく日本だけがやったことだと存じております。
  28. 森元治郎

    森元治郎君 さっき北原さんの御答弁の中に、ちょっとはっきりしない、気になる言葉は、アメリカ側からある意味確約を得たという御答弁があった。これは外国から買ったプラトニウムを平和利用以外にはしないのだ。こういうことを言っているのだろうと思うのですが、ある意味確約というと非常に弱くなるのですが、それはほんとうの御説明が足りないのかどうか、その点。
  29. 北原秀雄

    説明員北原秀雄君) 先ほどある意味と申しましたといたしますれば、それは言葉の誤まりでございまして、内容は、平和利用にのみ使うということに関しての五六年の大統領声明を、米国政府の今後も続けるポリシーとしてここに確認するという点でございます。
  30. 曾禰益

    曾祢益君 新關参事官が来ておるようですから、一つ純粋国際情勢ポリシーの問題じゃなくて聞きたいのですが、それはお互いに国際情勢というものを大きく研究しておる間柄としてお伺いしたいのですが、それは最近のソ連及びソ連圏ユーゴとの関係が相当大きな問題が起りつつあるのではないか。何といっても、われわれしろうと的に考えて、フルシチョフスターリン主義を清算するということを言い出して、それの対外的大きな現われ、それは共産圏及び共産圏に近い諸国との関係を規律する非常に大きな問題として、フルシチョフがまずユーゴとの和解を行なった。そのときには、これは明瞭にかつてのコミンフォルム追放が間違いであったというようなことをはっきり言って、そうして和解をした。それの事態からさらにポーランド、ハンガリーの反乱問題があって、そのときが一つの伝搬だったと思うのですが、ユーゴも、これはいろいろの理由があるでし、ようが、ハンガリーの問題については、スターリン主義の行き過ぎが根本原因だということをつきながら、やはり最終的にはあの反乱をソ連軍が力によって弾圧したのはこれはやむを得ない。いいことではないけれどもやむを得ない。かなり同情的な態度をとったそういう過程を経て、昨年の冬あたりの、今度はソ連樹内、共産圏内の立て直しというような方向から、今度はユーゴの方が、チトーの方が非常にその前から東ドイツの承認にまで踏み切るというようなかなり接近していたのに、どうもそれから両者の関係というものはかなりまずくなった。で最近のような、ついにユーゴの第八問ですか、共産主義者大会を契機として、これははっきり公然たる、少くともイデオロギー論争時代に入ってしまった。かてて加えて、その後の状態を見ると、いろいろな政治的、経済的圧迫を加える。そして最近の状態になっている。こういうわけです。  そこで、それらの発展について、これは単なるイデオロギー論争としても非常に興味のある問題ですが、それが国際政局上にどういう影響を考えるか。ユーゴと、ソ連中心とする、ことに中共が、それに対して非常に強くユーゴ修正主義反対を、それは国内的の理由もあるでしょうが、強く追及の先鋒になっている。この関係からいわゆる共産圏の地固めとユーゴとの関係ユーゴは一体どっちに行くのか。こういうような問題について、一つ外務省のエキスパートとしての見解説明してもらいたい。
  31. 新關欽哉

    説明員(新關欽哉君) ただいま、曽祢委員から、国際情勢の問題、特にソ連動向関連いたしまして、最近の注目すべき現象といたしましてのソ・ユ関係についての御質問がございました。ソ連動向につきましては、非常に、御承知の遡り、判断は困難でございまして、いろいろな情報によりまして、大体どういう方向に動いているのではないか、ということを見きわめようといたしまして、私ども努力をしておるわけでございますが、確かに曾祢委員の御指摘のように、ソ連ユーゴに対する政策というものは、最近に至りまして、ことに、最近のユーゴ党大会で採択されました党の綱領をめぐりまして、非常に表面化してきたという事実はあろうと思います。ソ・ユ関係基本、あるいはその背後にある――もっともソ連外交政策の、最近における根本の方針が規定されましたのは、御承知のように、二年前、ソ連の第二十回党大会であります。その党大会の線に基きまして、ソ・ユ関係におきましても、何と申しますか、ソ連といたしましては、大きな世界政策面から、中立国を積極的に利用していくという新しい線を打ち出しまして、その線に基きまして、ソ・ユ関係緊密化が行われたのであります。  ただいま御指摘ございましたように、一九四八年にコミンフォルムの問題がございまして、これは、スターリン時代のことでございますが、ソ・ユ関係が非常に危機的な状況に立ち至った。これに対しまして、いわゆるフルシチョフは、そういったユーゴ関係を是正する必要というものを世界政策の観点から痛感したものと思われまして、ここにソ連ユーゴとの一応の和解というものが、例のベルグラード宣言中心として、なったのであります。ただし、ただいま曾祢委員から御指摘もございましたように、ハンガリーの、特に、ハンガリーの問題でございますが、一昨年のハンガリー暴動事件、あれに対してとったユーゴ態度というものに対して、ソ連の方が再びあきたらないという態度を示して参りまして、相当の痛烈な批判が、昨年すでに行われたわけでございます。これに対しましては、いろいろな応酬がございましたが、昨年の八月にフルシチョフチトーが、ルーマニアのブカレストで秘密裏に会合いたしまして、一応の打解策がここで打ち合わされ、御承知のように、東独の承認というような措置にまでユーゴは踏み切ったのであります。  このようにいたしまして、ソ・ユ関係におきましては、二十回党大会、あるいは、ベルグラード宣言の線に沿いまして、ソ・ユ関係正常化という線が打ち出されておりましたけれども、それらに、その後においては、いろいろな大きな波と申しますか、上り下りがあるというふうに考えられるわけであります、ことに最近のユーゴ共産党に対するソ連批判というものは、今までのソ・ユ関係の単なるアップ・アンド・ダウンというにしては、あまりにも深刻なものがあることは、確かに御指摘通りでございます。そういったことについて、ソ連の、あるいはフルシチョフの真意がどこにあるかという問題になりますけれども、私なりの結論を申さしていただきますならば、やはりそこには第二十回党大会で打ち出されました、何と申しますか、中立主義をエンカレジしていくという方向に対して、これをあまりエンカレジしていくと、国内に対するはね返り――国内と申しますか、圏内に対するはね返りというものが生じてくる、そういった意味におきましては、私は今度の問題などは、ポーランド、ハンガリーにおける最近の事態関連があるのではないかという感じがするわけであります。つまり二十回党大会におきまして、中立主義をエンカレジしていくという線が打ち出されますと同時に決定されました重要なポイントといたしましては、イデオロギーの面においては平和的共存はないということをはっきりフルシチョフが言っておるわけでございます。そういった観点を推し進めて参りますと、ユーゴの問題というものは、二つの考え方の間にはさまったような問題になってくる、一つには修正主義という言葉で言われている問題でございますが、ユーゴのインフルエンス――まあ修正主義という言葉で呼ばれておりますユーゴの共産主義の立場というものが、やはり東欧の諸国――共産圏ソ連圏の中に入っております東欧諸国に相当のインフルエンスをもつてくる、ことにポーランド、ハンガリーあたりに対しては、相当に影響力があるわけであります。こういった意味におきまして、私は最近の異常に痛烈な形をとったユーゴ攻撃というものは、ソ連圏内の地固めと申しますか、足並みをそろえると申しますか、そういった最近の動きと非常に関連があるのではないかとこう考えております。その意味において注目されますのが、最近モスコーで開催されましたワルシャワ条約関係国の会議、それと並行して行われました東欧諸国の経済相互援助に関する会議がありましたああいった会議の動向を見て参りますと、何やら東欧圏内の、一時スターリンの死後、結束のゆるんだ、ことにまた、ハンガリーの事件、ポーランドの事件によって、一時危機に瀕した東欧の、つまりソ連圏の政治的、経済的協力態勢というものを、この際も一回把握し直さなければいけないといういわば再検討の段階にきているのではないか、そういった動きと、私は今度ユーゴに対するソ連の激しい攻撃とは、非常な関係があるのではないかという感じがするわけであります。まあこういった意味におきまして、ユーゴ問題は、イデオロギーの闘争といたしましてももちろん非常に深刻なものがあると思いますが、ただこれが、今後国際的な政局にとういうふうに影響して参りますかと申しますと、ユーゴとしては、やはり今までの建前から、自分の主義、主張というものを早急に変えるということは、とても考えておらぬし、ユーゴをそういった意味におきまして、あまり政治的、経済的に締め上げていくということになって参りますと、全般的なソ連政策、つまり巨頭会談を前にいたしまして、中立国をもできるだけ自分の立場に引き寄せていこうというそういった考えと、また、一種の矛盾をしてくるわけでありまして、そういった意味合いからいたしますと、私はソ・ユ関係につきましては、党と党の間の関係というものは、今後非常に調整が困難な事態がずっと続いていくと考えられますけれどもソ連ユーゴ、つまり国家間の関係におきましては、たとえば外交断絶とか、そういったような非常に深刻な事態まで発展するとは思われないのであります。もちろんその中間的な形態といたしまして、最近ソ連ユーゴに対する経済援助と申しますか、クレジットを五年間停止する、引き延ばすというような措置をとっておりますけれどもソ連といたしましても、あまりにユーゴを極端なところまで追い詰めていくということは好んでおらないのではないか、ただ、イデオロギーの問題になりますと、やはり東欧諸国の全体の足並みをそろえるというような観点からいたしまして、ユーゴのいわゆる修正主義というものに対しては、非常に手きびしい態度を今後とも続けていくのではないかと考えておるわけです。  それからまた、中共の態度関連いたしましては、確かに中共の人民日報の書いたユーゴ攻撃の論文、それから、それと前後いたしましてプラウダで発表されたユーゴに対する攻撃の論文、その調子に確かに食い違いと申しますか、ユーゴに対する攻撃に、中共の方がソ連よりも遙かに激しいというようなことが一時ございました。その点からいろいろな揣摩臆測が行われたわけであります。たとえばスターリニストの勢力が、最近ソ連共産党の中で非常に強まったとか、あるいは中共がスターリニストと提携して、そうしてフルシチョフをいろいろと圧迫しているのだというようないろいろな説がございましたが、私は、その根本的な考え方において、中共とソ連の間に大きな差異はないのじゃないか。中共といたしましても、やはり昨年十月のに命四十周年記念におきまして、共産党の宣言が採択されましたときに、ソ連を盟主とする、つまりソ連を頭にいただく国際共産主義運動ということにつきまして、非常に積極的な支持を与えております。そういった意味におきましては、一時ユーゴ攻撃において見られたようなソ連と甲兵の態度の相違というものは、本質的には存在しないのではないか、また、そのことが、最近フルシチョフがブルガリアを訪問いたしまして、ブルガリアの共産党大会におきまして演説をいたしまして、初めてフルシチョフとしてユーゴに対する攻撃を行なったのでありますが、その内容などを読んでみますと、前に行われました中共の人民日報の攻撃の調子と全く軌を一にしておるわけであります。そういった意味におきましては、ユーゴ問題に関連いたしまして、中共、ソ連態度の間に、何らの考えの違いはないのではないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  32. 曾禰益

    曾祢益君 大体、スターリン主義の清算から、その行き過ぎが、少くとも圏内においては、ポーランド、ハンガリーの問題になり、それから調整時代に入って、今や引き締めが相当強く行われている、これは世界的の情勢だろうと思うのです。またその場合に、中共の演じた役割というものは、初めは調停者であり、さらにはソ連中心とする共産世界のいわゆるソリダリティー――連帯の方向をむしろ強く打ち出すという点に、ソ連の立場というか、それを強く主張する積極的な役割を演じて今日にきたと思う、そんな関係からいっても、ソ連の方から見ると、どうもやはり少くとも東ヨーロッパの事態に関する限りは、ユーゴのような独自の道の行き過ぎということに――かれらは行き過ぎと見るわけでありますが、非常にじゃまになる、そういう意味で修正主義は徹底的にイデオロギーの上でたたいて、しかし、そういう修正イデオロギーの問題と、いわゆる国対国の外交問題をはっきり分けるということは常に困難。従って、そのことがやはり行き過ぎれば、クレジットの問題の取り消しだとか、いわゆる外交にも響いてくるわけですね。ですから、そこに悩みがあるわけです。で、どこまで追い諦めるかというと、確かにあなたの見ておられるように、完全に四八年の当時みたいに、外交的にも軍事的にも経済的にも完全にユーゴを窮地に陥れるほど強くいったんじゃいかぬ、それは手心を加えながらやっていくというところだろうと思う。また同時に、ユーゴ側からいっても、いわゆるユーゴの独自の道というものを捨てたんでは、これはチトーの立場……、もうスターリン主義に屈服するか、それともジラス主義の方に屈服するかという、これはどっちにも傾けない、やはり一つ危うい橋渡りをやっているのが現在のチトーイズムじゃないかと。そういう意味からいうと、独自性は主張する、しかし、外交上はあまりにひどい圧迫がこない限り、やはり友好関係を持っておって、完全に西側に押しやられない程度に、やはりタイトロープの危うい綱渡りをしていこうというのがユーゴの行き方であるやに思う。大体そう思うんですが、特に何らか、外務省の方でもいろいろ在外公館からのリポートもあるだろう、そういうものを消化して、今度はユーゴ側の行き方等について何か見方があるならば、一つ説明していただきたい。
  33. 新關欽哉

    説明員(新關欽哉君) ユーゴの見方につきましては、実はことしの二月でございましたか、ソールズベリーに対するインタビューにおきまして、チトーフルシチョフを、まあ個人崇拝の問題と関連いたしまして、フルシチョフを非常にほめたたえたのです。フルシチョフ国内において非常に重大な改革を行いつつあるし、また、外交政策の面において非常なフレキシビリティを持った人間である、ということを言っておるのです。ただ、つまりチトーといたしましては、またチトーばかりじゃなく、ユーゴの首脳といたしましては、フルシチョフに対する信頼感と申しますか、そういうものは相当強いものがあったと思います。いわゆるユーゴ党大会で、あるいはベルグラード宣言の線に沿いまして、フルシチョフこそはユーゴとの和解、また、従来の行き過ぎを是正しよう、つまり、スターリン下の線に沿って是正しようと考えている旗頭である、という考えを非常に強く持っておったわけであります。ただ、最近の在外公館からの情報の中にちらほら、最近フルシチョフ態度について、今までフルシチョフこそは大事な男だと、しかし、フルシチョフのそばにいろいろなじゃま立てをする連中がいる――スースロフなどはその一人でございましょう、そういうような考えでございましたけれども、最近の情報といたしましては、フルシチョフ自体の考えが変ってきているんじゃないかというような点について、危惧の念をユーゴの指導者たちが抱き始めたという情報もあるわけでございまして、まあそれだけに今度の問題が非常に深刻なものだということが言えると思うのであります。ただ、ソ連の立場からいたしますと、曾祢委員も御指摘のように、ソ連の行き方は確かに二兎を追っているわけでありまして、一つといたしましては、大きな世界政策の遂行の面から中立主義の促進ということに努力する、そうすれば、何と申しましてもユーゴの積極的中立主義というものの、エジプトのナセルだとか、あるいはインドのネールに一脈通じる立場というものを、できるだけ元気づけていきたいという気持はあると申せます。しかし、反面、先ほど申し上げましたように、そういった政策、つまりエジプトのナセルだとか、インドのネールと違う点は、ユーゴにはユーゴの独自のイデオロギーというものがあるわけなんで、それがやはり一つの影響力というものを持つ――私は特にハンガリーだと思いますが、持っている、こういうところにソ連としても非常にむずかしい問題がある。片一方の目的に到達しようとすると、もう一つ目的の方がくずれてくる。そこで非常に何と申しますか、確かに御指摘のように、綱渡り式に両方ねらってバランスをとっていこうと、こう考えておる。ただ、ユーゴといたしましては、フルシチョフに対する評価も最近は少しくずれかけつつあるような徴候がございます。まだユーゴの立場といたしましては、世界が二つの軍事的、政治的のブロックに分れたとしても、そのどちらにもくみすることができないという立場はずっと依然として持ち続けていくわけでございます。また、アメリカからの軍事援助も断わっているという状況でございます。さりとて最近のソ連の経済制裁と申しますか、経済制裁にまで至りませんかもしれませんけれども、例のクレジットを五年間延ばすというような報復手段というものをほのめかしてきているこのような時期におきましては、勢いユーゴといたしましても、西欧諸国との間の関係を経済面において特に緊密化していかなければいけないという希望が生まれてくるのはまた光りまえだと思います。また、最近の新聞報道では、アメリカからの経済援助というものをユーゴが相当真剣に考え出したという情報がございますけれども、今のところは情報程度でございまして、そういった意味におきまして今後の情報は、われわれといたしましては非常に注目いたしております。
  34. 曾禰益

    曾祢益君 大体伺いたいところを伺ったんですが、最後に二つばかりきようのニュースでどういうふうに判断されるか。一つユーゴの中で、いわゆるこれはスターリン主義者というか、むしろソ連と仲よくやろうという連中を逮捕し始めたというんですが、今度は逆にソ連の中では、、五月の幾日ぐらいからスースロフの姿が見えないからどっかに引っぱられて行ったんじゃないかという、これはどっちもコメントするのにはあまりにも、それほど確度もわからないニュースかもしれないし、今後の発展を見なければならぬが、ルてれらの点について何か情報等がおありだりたらお知らせ願いたい。
  35. 新關欽哉

    説明員(新關欽哉君) 確かに曾祢委員の御指摘のようなニュースが新聞に載っておるし、私も見たわけであります。まあコミンフォルム関係者と申しますか、ユーゴはコミンフォルミストと呼んでおりますが、そういった連中の逮捕が行われた、しかも相当重要な人物――ユーゴの中の、たとえばクロアチア共産党の中で相当の要職にあった連中も含めて逮捕が行われている。これまた、コミンフォルムによってユーゴが破門された直後においてならばともかく、その後においては全然見られなかりた現象でありまして、ユーゴとしても相当思い切った手段に出てきたということが言えると思います。  もう一つの、スースロフの問題につきましては、確かに先ほど御説明申し上げましたコメコンと申しますか、東欧の相互援助会議のときに、本来ならば大体東欧の問題、しかも理論的な問題となりますと、スースロフが必ず出ておったのであります。しかるに、今度はスースロフが相当長期にわたりましたあの会議の席上、全然現われておらないというようなことから、まあいろいろな説が行われておるようでありますが、しかしながら、この点はまあスースロフ自身はどちらかと申しますと、フルシチョフよりももっとユーゴに対してきつい立場をとっておると一般に信じられておった人物でありましてちょうど二年前でございますが、例の東欧諸国で怪文書事件というのがございましてユーゴの民族共産主義からの働きかけを警戒しようという文書がユーゴ共産党の知らないうちに東欧諸国の間に流布されておる。そういうようなことで、そういう関係が非常に一時まずいことになりました。そのときにスースロフが提案者であるということも言われておりました。そのことについて、ベルグラード宣言趣旨に反するというおそらく趣旨の抗議があったと思われるのでありますが、その後においてコミンフォルムが正式に解体されるというような事件が起りまして、そういうような点から見ますと、どちらかというと、ソ連の共産党の中でスースロフは強硬派と申しますか、ユーゴに対しては強い線を出していく三張者だと思います。現在フルシチョフ自身が最近のブルガリアの共産党大会で言っておりますように、非常に強い線を出しておる現在において、スースロフの姿が消えておるということは一見矛盾したような現象でございましてあるいはスースロフが姿を見せないからといって、粛清された、あるいは追放されたとか言って、判定することは行き過ぎかと思います。ほかの何らかの理由があるかもしれません。それらの点につきましては、私どもの方には何ら情報が入っておらない状態であります。
  36. 羽生三七

    ○羽生三七君 経済局長はお見えですか。
  37. 井上清一

    理事井上清一君) 経済局長は見えておられませんが、経済局の米州課長吉良君が見えております。
  38. 羽生三七

    ○羽生三七君 私のお尋ねは貿易に関連したことですが、これは非常に政治的な問題になるので、いずれ機会を見て新内閣の担当者にお尋ねしたいと思うのですが、きょうは事務的にお答えをいただいてもけっこうですが、御承知のように、今年度の日本の輸出目標は三十一億五千万ドルということになってこの輸出目標三十一億五千万ドルを達成するという立場に立って、予算も財政投融資もそれから国民経済の成長率も何もかもすべてきまっておるわけです。ところが、きょうも資料を出していただきましたが、アメリカとの貿易においても日本の輸出は減る一方であるのに、輸入はふえておるという状態。しかも一方では中共との貿易は閉ざされておる。従って、三十一億五千万ドルが、悲観的に見る人では二十八億万ドル、よく見る人でも三十億万ドル程度、大体その中庸で二十九億万ドルぐらいがせいぜいのところではないかという説が相当に強くなっておるわけです。そうなってくると、国民経済の成長率も違ってくるし、それからすべての、三十一億五千万ドルを基礎として算定をしたいろいろな国の予算なり、財政投融資なり税、財政収入の点も非常な大きな影響をこうむることになると思うのです。しかし、そういう問題について、私政治的に外務省にお尋ねをする意思はないのです。これはむしろ通産省のことだし、また、外務省にお尋ねするとすれば、政治的にしかるべき人があると思いますが、そういった中で外務省としては、対米貿易についても朝海大使が先日アメリカ当局に何らかの抗議を申し入れたようでありますけれども、一体積極的に外務省としては、どういうことを考えておるのか。それから中共貿易についても、先日の問題は、いわゆる中共貿易の問題はプラス・アルフアではないと思うのです。これは三十一億五千万ドルの中の不可欠の条件として私は入っておると思うのです。ですから、達成できなくてもこれはプラス・アルフアだから差しつかえないのだということにはならないので、片道一億万ドルが欠ければやはり日本貿易に非常な大きな影響を持ってくる。そういう場合に中共との当面の問題はどうするかという、そういう政治的な問題は別として、一体外務省として、経済局としては諸種のそういう条件からして、日本貿易を所期の目的通りに達成するために具体的に一体どういうことを考えておるのか。これは通産省まかせで差しつかえないというのか、その辺のお考えを少し、政治的なものでなくていいから、外務省としてはどういう努力をしようとされておるのかお伺いしておきたい。
  39. 吉良秀通

    説明員吉良秀通君) 米州課長といたしまして、ただいま御質問の全部の問題にお答えすることは私としてはできないところでございますが、ただ米州との関係におきまして、一外務省は、特にアメリカにおける輸入制限運動にはどういうふうに対処してきたか、どういうふうに対処していくつもりかということにつきましては、事務的にある程度お答えできるのではないかと思いますので、若干最近におけるアメリカの輸入制限運動の発展と、それに対してどういうふうな手を打ってきたか、今後どうするかということにつきまして御説明していきたいと思います。  今年は、御承知通りアメリカにおきましては中間選挙の年に当りまして、かつまた、若干デフレーションが進行するというような経済的な事情もございまして、輸入制限運動というものは例年になく強いものでございますことは御承知通りでございます。そこへまた、アメリカとしては、自由諸国における経済貿易のリーダーシップをとっていくためにはどうしても必要となる互恵通商協定法の期限が切れる年にもなるので、これの再延長というものはどうしてもはからなければならないという問題もございまして、そのためにはアメリカの輸入制限論者の言うこともかなり聞かなければならないというつらい立場に立っておる。そういうことで今年から、年初早々に御承知通り、金属洋食器の関税引き上げの勧告が出まして、引き続きこうもりがさの骨、体温計等につきまして、それぞれ関税引き上げの勧告が出たのでございます。これにつきましては外務省といたしましても関係業界、通産省と力を合せまして十分対策をいたしまして、現地におります大使館に対しまして、あくまでもこういうような関税引き上げが実現しないように大使以下の活動につき強い訓令を出しまして、その結果、朝海大使の方でも非常な努力をして、関係の官庁のみならず、アメリカの議員等にも働きかける等、非常な努力を重ねまして、それのみならず、一般の新聞等にはマス・コミュニケーションを通ずるPRをやりまして、対日輸入制限のアメリカにとつで非なる旨を十分強調いたしまして、ルの結果、御承知通り、金属洋食器につきましては直ちに関税引き上げを行うことをせず、一カ年様子を見た上で再審査ということになりましたし、洋傘骨につきましては三カ月間経過を見た上でもう一ぺん再審査するというような、いわば執行猶予の形の決定がございまして、これもわが方の、外務省だけとは申しませんが、官民一致した努力の現われであったと思っておる次第であります。ただし、最後の三つありましたうちの体温計につきましては、残念ながらいろいろ努力いたしましたが効を奏しませず、関税引き上げの結論になったことは非常に遺憾でございますが、アメリカといたしましても、特殊な今年は状況にございましたので、アメリカ行政府としても、日米関係のために最善の努力はしたものの、全部が全部について関税引き上げを拒否するということもできなかったのではないかとわれわれは考えております。これは御承知通り、この三件はアメリカの互恵通商協定法の中のエスケーブ・クローズというものに暴く関税引き上げの要求でございまして、輸入制限運動はこういうふうなエスケープ・クローズだけではございませんので、そのほかにも御承知通り、個別の法案をもって個別の商品に対する輸入制限をはかろうとするものがございます。その代表的なものといたしましては、今残っておりますのは、大きなものといたしまして、マグロとか合板というものがあるわけでございます。これもそういうふうな今出ておりますような輸入制限法案が実現しないように、外務省といたしましても現地の大使館に訓令いたしましてあらゆる努力を重ねておるわけで、それは最近に新聞に出ました朝海大使の活動によってもわかることでございまするが、時々刻々にいろいろやっております。新聞に現われただけじゃなくて、新聞に現われない面におきまして隠密裏の工作と言えば非常に鶏が立ちますが、いろいろな努力をしてやっておるわけでございます。すでに今年度の外務省の予算の中には、この関係の費用もだいぶ認められましたので、従来報償費等の使用によりましてやっておりました――アメリカのワシントンに日米貿易促進協議会というものがございまして、従来報償費でまかなってきたのでございますが、本年からは、正規の予算によってその活動が裏付けられることになりましたので、こういう団体を使いまして、米人を通じて、アメリカの百庁、議会、協会等に対する啓蒙のパブリックリレーション等をやっておるわけでございまして、外交のチャンネルを通じます正式の各種交渉のみならず、このようなアメリカの一般の大使、議会等に訴えて、PRを通じまして、今後ともアメリカにおける輸入制限が実現しないように努力したいと考えておる次第でございます。輸入制限の問題は、ここ最近非常にやかましくなりましたが、今に始まったことでございませんで、過去四、五年の歴史を持ちます。たとえば綿製品で騒がれたのは御承知通りでございますが、あれもわが方の自主的調整措置等によって、一定の安定した輸出額が確保されておりますし、今問題になっておりますマグロ、合板等につきましても、すでに問題になりました当初から、わが方としては適当な実状に合う一切の措置をとっておりますのでいまだ輸入制限の声は非常に強くあるのでございますが、いまだに輸入制限として実現したものは、先ほど申し上げました体温計一件であると申し上げてもいいわけでございまして、いろいろこれもわが方の努力、アメリカ行政府の対日理解というものが増しまして、輸入制限はいまだ実現しておりません。それを反映いたしまして、対米輸出の方も実際の輸出額というものは、毎年堅実に増加を示している。ことしもまた、輸入制限の声はやかましいけれども、実際問題としては、アメリカに対する輸出はそう減らないどころか、やはり若干伸びておるんじゃないかとわれわれは見ておる次第でございます。アメリカに対しましての米州課長としての説明はこれぐらいで終ります。
  40. 羽生三七

    ○羽生三七君 機会をみてあらためてお尋ねいたします。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 インドネシアの件は、これはアジア局長の所管かどうか……、きのうかおとといの新聞には、内乱助長、外国国内干渉排除についてインドネシア政府から、日本政府に協力を申し入れている。そして外務大臣同士の文書の交換があったようですが、これは日本だけにきたのか、あるいはその他の外国にもこういう措置をインドネシア政府はとっておるのか。
  42. 板垣修

    説明員板垣修君) どことどこに出したかということは確かめておりませんが、私ども調査しておりますところでは、日本以外の数カ国にも同じような旨の申し入れを行なったと承知いたしております。
  43. 森元治郎

    森元治郎君 何か唐突にこれが出てきたので、インドネシアの武力抗争がにぎやかだったのは、この前の第二十八国会の最中だったと思うのですが、それが五月のまん中過ぎになってこういうふうになってきたというその理由。  それから、あの文書を読んで感ずることは、何か日本側向うにちよろちょろといたずらをするので、これまでの間にインドネシア政府から抗議でも来やしないか。そういう結果ああいうものを向うから申し入れてきたのじゃないかという疑いも出てくるのです。その間はどういうふうになっておりますか。
  44. 板垣修

    説明員板垣修君) 最初の御質問に対しましては、実はジュアング首相宛の申し入れをやりましたのは少し前であったのでありますが、返事がたまたまいろいろな関係でおくれまして、少し時期的にずれたという感じをヶえたのじゃないかと思いますが、時期的には少し前に申し入れがあったものでございます。  それから、第二の点につきましても、日本がどうこうということは全然ございませんので、インドネシア側としましては、第三国が反乱軍を助長しておる、武器援助をやっておる、こういうものに対して日本としては、そういう第三者、これは純然たる内政問題であるから、第三国のもし干渉があるとすれば、こういうものに対しては、日本は支持しないでくれという申し入れがありましたが、これに対しては、まっすぐ日本政府としては同感である、これは純然たるインドネシアの内政問題である、第三国の干渉は排除さるべきである、こういう答えをしたのでございます。
  45. 森元治郎

    森元治郎君 よその国は、わかっておるところほどことどこへ出しておるのですか。
  46. 板垣修

    説明員板垣修君) 私ども承知しておりまするところでは、インド、ビルマ、エジプト、中共、ソ連等でございます。
  47. 森元治郎

    森元治郎君 その中にはアメリカは入っておらないのですか。
  48. 板垣修

    説明員板垣修君) 私の了解しておりますところでは、アメリカに対してあるいは文書でやったかどうかははっきりいたしませんが、アメリカに対しては、インドネシアはしばしば現地のアメリカ大使を招致いたしまして抗議をいたしております。
  49. 森元治郎

    森元治郎君 抗議を出しておって、そうしてああいう文書を出さないというのはちょっと理解に苦しむのですが、米ソ対立というのに片方に協力を願うというのを言わないというのは、どういうふうに解釈したらいいのですか。
  50. 板垣修

    説明員板垣修君) 私どもの推察するところによりますと、インドとかビルマとかエジプトとかいう国々に対しては、内政不干渉という線で一種の訴えをした。そのために大体同文通牒を出したのじゃないか。アメリカに対しましては、インドネシア側の主張によれば、アメリカないしあるいはアメ正カの間接に息のかかった個人なら個人が相当反乱を助長しておるという証拠がある。それに対しましては、直接に抗議をする、こういう態度に出たのじゃないかと推察しております。
  51. 森元治郎

    森元治郎君 中共その他の国々の回答はどんな回答があったかどうか、もしわかっていれば。
  52. 板垣修

    説明員板垣修君) ただいまのところわかっておりません。
  53. 森元治郎

    森元治郎君 じゃ、もう一点伺いますが、インドネシアのそういう申し入れがこのごろあったということは、せっかくインドネシアの現在の政府の努力で武装反抗団体を押えつけるところまで押し詰めてきたという見方と、とても外国の協力を得なかったならば押えきれないという二つが想像されるのですが、どっちの状態判断されるのか。
  54. 板垣修

    説明員板垣修君) インドネシアにおける現実の軍事情勢と直接どの程度関連があるかは推測できませんが、まあ私どもの一般的判断といたしましては、現中央政府は、武力的に反乱軍を制一任することについては、ずっと終始一貫して自信をもって臨んでおるようでありますし、御承知のように、スマトラにおける軍事行動は一応終息し、現在残っておるのは北セレベスだけでございますので、特に軍事行動について非常な困難があるために、よその国々の精神的あるいは物質的援助を求めるということとは関係がないのじゃないかと推測をいたしております。
  55. 井上清一

    理事井上清一君) 本調査に関しまして、この際お諮りいたします。本件につきましては、いまだ調査を完了するに至っておりませんので、閉会中調査未了の旨の報告書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 井上清一

    理事井上清一君) 御異議ないと認めてさよう決定をいたします。  なお、報告書の内容及びその手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 井上清一

    理事井上清一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時一分散会