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政府委員(
高橋通敏君) 第八条及び第九条の犯罪人引き渡しの問題でございますが、第八条の一項にございます
通り、御
承知の
通り、たとえば
英国である犯罪を犯した
英国人か何かが
日本に逃げて参ります場合に、
英国からその犯罪人を自分の方に引き渡してくれという要望があるわけでございます。もちろん
英国人が
英国におきます犯罪でございますから、
日本でそれを
処罰するという問題は起らない。従いまして、
英国が犯罪人を引き渡してくれという場合に引き渡すかどうかということは、これが
条約によりまして引き渡す、
条約ができますと必ずそれをお互いに引き渡すということになるわけでございます。ところが、この犯罪人引渡
条約には除外例がございます。御
承知の
通り、政治犯罪というのはこれは引き渡さないことになっておる次第でございます。そこでこの八条の第一項は「引渡犯罪とみなされるものとする。」、すなわち第一条、二条の犯罪は必ず犯罪人引渡
条約におきまして、こういう犯罪は引き渡すということを現在もまた将来も約束しなければならない。すなわち、こういう犯罪は引き渡さないということをお互いに約束してはいけないのだということが第八条の
趣旨とするところでございます。それからさらに第二項で、犯罪人引き渡しについて、「
条約の存在を条件としないものは、」、この
違反行為は引き渡す。すなわち、諸国間の慣例によりまして、必ずしも犯罪人引渡
条約がなくても、お互いの慣行上引き渡すというようなことをやっておる国もあります。そこでそういう国の場合は、これはやはり第一項の場合と同じように、第一条、第二条の違反は引き渡す、こういうことを約束する、こういう
趣旨でございます。
それから今度は第九条でございますが、自国民、たとえばこの犯罪人引渡
条約で例外といたしましていろいろな引渡犯罪の例外は、政治犯なんかは引き渡さないということを
規定してあると同時に、自国民不引渡、たとえば
日本人が
英国で犯罪を犯しまして
日本に帰ってくる。その場合、
英国の犯罪でございますから、
英国が
処罰しようとしてその
日本人を引き渡してくれという場合に、そういうような自国民であった場合には、これは不引渡、自国民不引渡の
原則と申しますか、犯罪人引渡
条約にはそういうことを例外として
規定するのが通例でございます。ところが、もしそうなりますと、犯罪人を引き渡さない。たとえば
日本人が
英国で第一条、第二条の犯罪をいたしまして、
日本に帰ってくる。しかし、
英国から犯罪人引渡
条約で引き渡せと言っても、
条約で自国民不引渡という
原則がありますから引き渡さないということになりますと、それは
日本の国内でも
処罰できず、また、
英国側に引き渡さないとすると、
英国側でも
処罰できないということになりますと困りますので、第九条一項で、この場合は必ず犯罪人引渡
条約の通例ではあるが、例外として自国に帰ってきたものは自国で
処罰するようにしようというのが第九条一項の
規定でございます。ところが、第二項になりまして、そういうことが
外国人にかかる場合に、
外国人を引き渡さないということになりますと、たとえば、
英国で犯罪を犯した
外国人が
日本に逃げてきて、そうしてその
外国人を引き渡さないということになりますと、その
外国人が同じように
処罰できないということになります。そうすると、
外国人との彼此権衡の問題がありますから、第九条第一項に当る場合もこれは
適用がない。こういうような
規定でございます。