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1958-04-03 第28回国会 参議院 外務・法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月三日(木曜日)    午前十一時四十九分開会   —————————————  委員氏名   外務委員    委員長     寺本 広作君    理事      井上 清一君    理事      鶴見 祐輔君    理事      森 元治郎君    理事      石黒 忠篤君            井野 碩哉君            鹿島守之助君            重宗 雄三君            杉原 荒太君            苫米地英俊君            永野  護君            野村吉三郎君            吉江 勝保君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            佐藤 尚武君            安部 清美君   法務委員    委員長     青山 正一君    理事      大川 光三君    理事      一松 定吉君    理事      棚橋 小虎君    理事      宮城タマヨ君            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            井上 知治君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            松野 鶴平君            安井  謙君            吉野 信次君            赤松 常子君            亀田 得治君            藤原 道子君            山口 重彦君            後藤 文夫君            辻  武壽君   —————————————  出席者は左の通り。   外務委員    委員長     寺本 広作君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            森 元治郎君            石黒 忠篤君    委員            井野 碩哉君            鹿鳥守之助君            重宗 雄三君            杉原 荒太君            永野  護君            野村吉三郎君            吉江 勝保君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            佐藤 尚武君            安部 清美君   法務委員    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            棚橋 小虎君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            赤松 常子君            亀田 得治君            藤原 道子君            後藤 文夫君   政府委員    法務政務次官  横川 信夫君    外務政務次官  松本 瀧藏君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局総    務課長     横井 大三君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○人身売買及び他人売春からの搾取  の禁止に関する条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付)   —————————————   〔外務委員長寺本広作委員長席に着く〕
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから外務法務委員会連合審査会を開会いたします。  前例によりまして、外務委員長の私がこの会議を主宰いたします。  人身売買及び他人売春からの搾取禁止に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑を行いますが、質疑はなるべく法務委員会の方を優先して許可して参りたいと存じますので、この点あらかじめお含みおきを願います。政府側出席者は、松本外務政務次官高橋条約局長横川法務政務次官横井刑事局総務課長、以上であります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 青山正一

    青山正一君 質疑問題点を、この条約基本的立場、つまりこの条約趣旨、こういうことにしぼって御質問を申し上げたいと存じます。  第一点は、本条約規定を通観して見ますると、婦女売春行為それ自体には特に触れるようなところはなく、もっぱら売春からの婦女の保護を趣旨としているようでありますが、第一に御質問申し上げたいことは、この条約売春に対してどういう思想的立場を持っておるかどうか、その点について御質問申し上げたいと思います。  それから第二には、わが国がこの条約加入しようとする趣旨について御説明願いたいと存じます。これは条約局長から御説明願いたいと思います。  それから第三に、英国なり、米国なりあるいはフランス、こういった大国、あるいはノルウェーデンマーク、こういった国々の社会福祉国家、アジアの多数国はまだ加入していないようでありますが、その理由について御説明願いたいと存じます。加入の現状から見まして、わが国は現在の時期に加入しても、この条約の二十八条等の関係もありますし、加入の意義とか、あるいはその効果が非常に薄いように思われますが、その点について御説明願いたいと思います。  以上、三点について、一応御説明願いたいと思います。
  4. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 第一点の、どういう精神でこの条約が作られたかということにつきましては、本文の中にも若干触れてありまするが、もちろん集約いたしますると、人間の基本的人権、あるいは道義的の問題等あたりからいたしまして、国際的にとにかく力をそろえてこれを防止、守っていこうじゃないかということと、特に国際間におきましていろいろこういうような普通トラフィッグという言葉をもって表現いたしておりまするが、それを防止したいということでありまするが、従いまして、徐々にこういう思想が高まっていくにつれまして、二つ条約並びに一つ協定がすでに作成されまして、日本は戦前にこれに加盟していたのであります。しかしながら、これはまだ十分なものでないので、一九三三年に当時の国際連盟におきましてこれらを一括いたしまして、さらに修正を加えたのがございまして、日本はまだもちろんこれには加盟していなかったのでありまするが、さらにさきに日本が批准いたしました二つ条約及びこの協定と、それからただいまちょっと説明いたしました国際連盟で作成しましたところの条約、これを一括いたしまして、新たに一九四九年に国際連盟におきまして、従来のただ年令等あたりに一応制限が加えられた条約であったのでありまするが、年令とか男女別、こういった区別は撤廃いたしまして、範囲を広くいたすと同時に、こういう売春を経営いたしまする融資の問題であるとか、あるいは経営の問題と搾取の問題、あるいは売春目的とするところの宿の取締り等あたり広範にわたっていろいろと触れたものであります。そういう趣旨のこれは内容でございまするが、さらにこまかい点に関しましては、技術的のいろいろ問題もございますので、条約局長から答弁させます。
  5. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 補足して答弁さしていただきます。  御承知通り条約のそもそもの起源と申しますか、初めは一九〇四年の「醜業行ハシムル為ノ婦女売買取締ニ関スル国際協定」というのがございまして、それ以後同じく一九一〇年、また、一九二一年にもこのような条約がずっとでき、さらに一九三三年にもできている次第でございます。そこでこのたびの条約は、これらの条約を総合しまして、一体となってこれらの条約にかわるものとしてできた次第でございますが、この条約は、いずれもここにございまするように、婦女子売買禁止醜業を行わしむるための婦女売買の取締りというふうに、実は条約自体としましては、売春そのものを問題にするよりも、売春することは社会悪と申しますか、そういう被害者という立場に立ってそのような行為をすること自体を取り締ろうというふうなのが、この条約の一応の目的であろうというふうに考えている次第でございます。すなわち、売買される婦女自体行為でなくて、その売買行為ということ自体をこれは問題にしているというようなことから、これが発足した経緯を持っている次第でございます。また、この条約につきましては、先ほど御指摘のように、まあ現在においては二十カ国加入しておりますが、英、米、仏のような大国それからノルウェーデンマーク等がまだ加入していないのでございます。このうちノルウェーとか、デンマークの何ゆえに未加入であるかというようなことの実は詳細につきましては判明いたしておりません。ただ、英国とか、米国のような大国が入らないという理由といたしましては、英国は多くの植民地を持っております。そこで、その植民地関係上にわかにやはりこういう条約には入りがたいという点があるのではないか。それからアメリカの方は、このような禁止とか、処罰というのは州の立法になっている次第でございます。そこで、各州がまあ各州なりにいろいろな立法をいたしますので、国として一がいに直ちに入るというわけにはいかないというような国内事情があったというふうに考えております。
  6. 青山正一

    青山正一君 次に、第四番の問題としてお伺いしたいことは、わが国は一九五一年に国連から加入招請を受けながら長らく加入手続をとらないでいる理由について、つまりこの第九条の関連問題点について御説明願いたいと思います。  それから第五に、加入の暁は、憲法の第九十八条、これは条約尊重の問題ですが、それから本条約の二十七条によりまして、条約適用確保のために必要な立法上の措置を約束することになりますが、その国内立法行政上の措置についてどういうふうに考慮しておりますか、その点について御説明願いたいと思います。  最後に、この売春防止に関する各国立法傾向はどうなっているか、その点について、以上三点についてで私の質問を終りたいと思います。
  7. 横井大三

    説明員横井大三君) 第一に一九五一年に加入招請を受けながら現在まで加入しなかった理由いかん、こういうお話でございますが、一九五一年と申しますと昭和二十六年でございまして、実はまだ占領中でございます。その後いろいろ検討いたしました結果、先ほど御質問にもございましたように、第九条の趣旨があまりはっきりいたさないということで、国連ともいろいろ折衝いたしまして、最近に至りましてその解釈が確定いたしました。それともう一つは、国内事情でございまして、売春防止法が成立する、こういう状況になって参りましたので、われわれとしましても、この売春防止法と同一の趣旨国際条約ということでございますから、これに加入いたしまして、そうして売春防止問題に関しまする世界の協調に加わるというのが適当であるということになりまして、今回加入をお願いするということになった次第でございます。  その次は、加入いたしました場合、現在の国内立法あるいは行政措置で十分であるかどうかという点でございますが、売春防止法が成立いたしました今日、この条約に加わりまして国内的に立法上特に措置すべき点は現在の状態では、ないかというふうに考えます。行政的にもほぼ十分な措置が講ぜられておるというふうに考えておる次第でございます。  各国立法傾向でございますが、先ほどの御質問にもございましたが、だんだんと日本売春防止法と同じような立法傾向になっておる。これが廃娼主義と申しまして、要するに貸座敷とか鑑札などを認めませんで、それでこれを取り締っていこうという廃娼主義傾向世界の大勢でございます。ちょうどそれは日本売春防止法と同じ考え方でございまして、日本はこれに乗っておる、むしろ一歩進んでおると申してもいいかと存ずる次第でございます。
  8. 大川光三

    大川光三君 ただいまの質問関連をいたしますので、私から二、三法律問題につきまして伺いますが、ただいまの御説明ですと、その条約加入しても国内立法行政上の措置についてはあえてその必要がないのだという御答弁でございますが、そこで、この条約国内法との関係について多くの疑問が起って参ります。申すまでもなく、条約第一条の趣旨は、第三者婦女子売春をさせるような勧誘誘引拐去搾取処罰しようとするという趣旨と見受けられます。しかるに、わが国売春防止法第五条では、婦女子売春目的勧誘をしたり、勧誘をするために人の身辺に立ちふさがったり、またはつきまとうたり、客待ちをしたり、広告その他の類似の方法で誘引をしたりした場合を処罰の対象といたしておる。言いかえますると、条約では、婦女子を、売春を食いものにするという搾取者から守ろうというところにある。ところが、わが国売春防止法第五条ではこれとは全く反対であって、婦女子自身処罰しようというのでございまして、条約第一条の犯罪の主体というものが全く相異なっておるのでございますが、それを国内立法に今何らの改正も加えないで、行政措置も加えないで、どうして条約第一条とわが国売春防止法第五条との調和をはかっていこうとするのか。もし売春防止法以外において、条約第一条の趣旨に沿うことができるのだという現行法令があれば、この機会に御説明をいただきたいと思います。
  9. 横井大三

    説明員横井大三君) 一般論といたしまして、われわれとしましては、売春のこの条約趣旨に沿うための国内立法的な措置は完成しておる、あるいはそれ以上のものを含んでおるというふうに考えるわけでございます。ただこの条約は、御案内の通り、多数国間の条約でございますので、各国国内法に移して考えます場合には、言葉の点でいろいろ違いがございます。ことに刑事関係規定と申しますと各国それぞれ特色がございますので、それぞれの特色に応じて、それぞれの国の刑法刑罰体系が組み立てられておるわけでございます。従いまして、この条約上の文字を日本国内法規定に持ってきてぴったり合わないじゃないかというような面が出てくることは、これは各国ともあることでございまして、われわれとしましては、条約趣旨を達成するために必要な国内立法が整っておれば、これをもって条約の実施のための立法措置はできておる、こういうふうに申し上げてもよろしいのではないか、こう考えている次第でございます。これは一般論でございます。そのことは条約の十二条に「この条約は、この条約に掲げる違反行為各国においてその国内法に従って定義され、訴追され、及び処罰されるべきであるという原則に影響を与えるものではない。」というふうになっているのは、そこら辺の考慮があるものと考えるわけでございます。ただいまお尋ね売春防止法五条とこの条約の第二条との関係でございます。確かに売春防止法五条は、婦女子道路その他の場所におきまして公然と相手を勧誘するという行為処罰しております。そうして条約の第二条におきましては、第三者売春からいろいろ利益を得る、いわゆる売春を容易ならしめるような行為をするという点をねらっているようでございます。しかしながら、そこら辺の点は、売春防止法第二章の規定を全部見ますと、売春からの搾取、その他売春にからむいろいろな不正行為というものを処罰するための規定としてはかなり整ったものがあると存じます。それ以外に具体的に法律があるかというようなお尋ねでございますので、申し上げますと、たとえば勧誘に当る行為といたしまして、刑法の百八十二条の淫行勧誘罪、あるいは売春防止法六条の周旋の罪、あるいは職業安定法におきまする職業紹介事業に関する規制の罰則規定、さらに児童福祉法におきます児童淫行をさせる行為、これに伴う罰則規定がございます。これらは勧誘に当る行為規定考えられるわけでございます。それからさらに、誘引に当る行為といたしまして、ただいま申し上げましたような勧誘に当る行為も一面においては誘引は当るのでございますが、それ以外にたとえば児童福祉法の三十四条の一項、七号に、児童淫行させるおそれのある者に児童を引き渡す行為を罰することにいたしております。さらに売春防止法七条一項、二項には困惑等による売春ということもございます。刑法二百二十四条には、未成年者略取誘拐等規定がございます。刑法の二百二十五条には、営利誘拐等規定がございます。これがこの条約の第一条にいいまする誘引に当るかと思われます。さらに拐去に当る行為といたしましては、ただいま申し上げました各種規定も一面におきましては拐去ということに当るのではないかと考えられるわけであります。さらに搾取に当るものといたしましては、売春防止法八条一項、二項、あるいは労働基準法中間搾取の排除の規定等があるわけでございまして、これらを総合いたしますると、この売春防止法二条の国内立法としてはほぼ完成しておるというふうに考えられるわけでございます。
  10. 大川光三

    大川光三君 いろいろ他の法令をあげて御説明をいただきましたので、よくわかりましたが、ただ一点、引用されました条文のうちで、売春防止法の六条によっても相当まかないがつくという御説明でございましたが、これは多少解釈が違っているのじゃないかと私は考える。御承知のように、売春防止法第六条の周旋に関する規定は、第三者売春相手方を求めるために、平たく言えば、婦女子相手方となる男子を勧誘したり、勧誘のため道路その他の公共の場所で人の身辺に立ちふさがったり、つきまとったり、その他広告したりということでありまして、いわゆる売春相手方の男性を求めるための処罰規定であります。ところが、条約第一条とはそういう意味において全然内容が違っておる、こう思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  11. 横井大三

    説明員横井大三君) 確かにお説の通り、そういう若干の違いはあろうかと思います。しかしながら、周旋行為というのは、売春を売る方と、買う方の間に立ちまして、それをあっせんすることでございますので、両方に対して口をかけまして、その仲立ちをするということもあり得るわけでありますが、それを婦女子に対する関係からみますと、周旋も、売春をするように勧誘することの事前の行為みたいな形をとりますので、今申し上げたのでございますが、今お尋ねのような意味におきまして、厳格に見ますと、そこに若干ズレのあることは確かでございます。
  12. 大川光三

    大川光三君 もう一点、法律問題を伺いたい。条約の第三条におきましては、「第一条及び第二条に掲げるいずれかの違反行為未遂及び予備も、また、国内法が認める範囲内で処罰されるものとする。」かように規定をいたしておりますが、ここにいう国内法が認める範囲内の意味いかんという疑問でございます。現に国内法において、未遂予備を罰せられる規定が設けられておる場合をさすのか。それとも本条約の第二十七条にいわれておりまする、「この条約の各締約国は、その憲法規定に従い、この条約適用を確保するため必要な立法上その他の措置を執ることを約束する。」という条項と、それから本条約最後に掲げられておりまする議定書趣旨に沿うて、結局国内法法理論、政策の許す範囲内においてできるだけ条約趣旨に沿うように未遂予備犯をも認める立場をとるべきであるかどうかという、この疑問でございますが、ところが、これを考えてみますると、現行売春防止法改正する必要が起ってくるのではなかろうかということであります。もちろん、わが国売春防止法の第五条とか、あるいは第六条には、未遂予備を入れる余地はないと思われますが、少くとも条約第一条に相当するような刑罰売春防止法の中に新たに追加して、そうして予備未遂処罰するというところまでいかなければ、条約趣旨に沿い得ないと私は考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
  13. 横井大三

    説明員横井大三君) 問題は、刑法未遂とか、予備ということと、本犯との関係になってくるわけでございますが、法律形式論から申しますと、構成要件に該当する行為実行正犯でございまして、それの前段階が未遂予備ということになるわけでございますが、ここの条約に書いてございます未遂予備ということがどこら辺までさすのかということにつきましては、いろいろ議論が出てくると思いますが、この条約のねらいといたしますことは、売春というものを世の中からなくしていこう。さらに売春についていろいろな不正行為のからんでおるものを除いていこうというところに中心点があるように思われるわけであります。そういたしますというと、そこを中心にして見ますというと、勧誘行為というようなものは、実はその中心点から見ますと、予備的な行為になるわけでございます。そこでわれわれとして、現在の売春防止法、それからただいまいろいろお話ししました各種のその他の法令規定と、刑法原則でございます未遂予備に関する規定とを総合いたしまして、現在の規定でこの条約の申しておりまする未遂予備処罰を希望するという、その期待にこたえるにはほぼ十分であろうと存ずるわけでありますが、ただ形式論として、国内法で認める範囲だけで処罰すればいいのだという趣旨でないことはその通りでございまして、条約趣旨に沿うように、なるべく広く処罰するように、こういう御趣旨であろうと思いまして、その意味から検討いたしました結果、国内法によってこの条約のねらっておりまする未遂予備の点の処罰としてはほぼ十分ではないか、こう考えておりますが、なお、今後の運用によって不十分であれば、売春防止法改正ということも考えられるわけでございます。
  14. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 松本外務政務次官が、余儀ない所用のために退席を申し出ておられますので、松本政務次官質疑のおありの方は先にやっていただきます。
  15. 藤原道子

    藤原道子君 ちょっと一点だけ松本さんに伺っておきたい。私はこの条約に加盟すべきであるということを長く考えておりましたのが、今日これが提案されたことは少々おそいと思うくらいで、まことにけっこうだと思うのです。そこでお尋ねいたしたいのは、外人が、日本芸者とかあるいはその他のことに対しては、あなた方が考えているよりももっと違う考え方を持っているらしいのです。この間も実は外国から来られたお客さんを某料亭にお招きして——政府の会合でございますよ、そのときに、芸者がお酌にはべったということを非常に不潔だったといって、憤慨したものが発表されております。こういうこともございますので、松本さんにお伺いしたいことは、この条約を見ましても、第二条におきましては、「売春宿を経営し、若しくは管理し、又は情を知って、これに融資し、若しくはその融資に関与すること。」「他の者の売春のために、情を知って、建物その他の場所又はその一部を貸与し、又は賃貸すること。」となっているわけです。この条約はあとで係の方に伺いますけれども、あなたの考えから言って、待合というようなものがこの法文の趣旨に該当になるかどうか、どういうふうにお考えになるかということが一点と、それから売春そのものに対するあなたの理念というものを私はこの際伺いたいと思います。それからもしかりに、外国から来られた方から婦人を提供されることを迫られた場合に、拒否していかなければ条約違反になると思いますが、そういうことをやれるだけの勇気がおありになるかどうか、松本さんにお伺いしたい。
  16. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 日本芸者に酌をしてもらって、非常にけがらわしい体験だったというようなことが新聞に出ておったということでございますが、私その記事を読んでいないのでありまするが、もちろん芸者に対する観念には、外国人の間に二通りあると思うのであります。一部は、やはりこれはただ単に酌をするばかりでなく、いかがわしい行動をする者もあるであろうということを想像している一部の者もあるようであります。しかしながら、日本本来の姿の芸者というものに対しては、また、別の考えを持っている者も多数あるのであります。たとえばあの手踊りであるとか、また、その他非常に高度に発達したところの、彼らの表現をもっていたしまするならば、クラシカルなこれはダンスであると讃美している者もあるのであります。従いまして、一様に私この白黒ということはここに申し上げることはできないのであります。  それからもう一つ売春に関する理念ということでありますが、私は社会のこういう事情につきましては、きわめてうといものでございますので、どういう工合にこれを規定していいか、まだ私考えたことも実はございません。ただし、大まかに申しまして、一般の通念としてのこの売春というものに対しては、もちろん私どもはこれを廃止すべきであるという論者であったのであります。どこからどこまで線を引くべきであるかということについては、はなはだ不勉強でございまして、私満足に値する回答のできないことをはなはだ残念に思います。
  17. 藤原道子

    藤原道子君 最初売春禁止法では、これは単純売春を罰していたわけなんです。それからおめかけさんも罰することになっていたわけなんです。それで芸者の手踊りなんかは非常にきれいなものだ。なるほど東おどりを見たり、都おどりを見ますと非常にきれいなんです、私たちが見ても。しかし、あれに出るには非常に莫大な費用がかかるわけです。その費用はパトロンから出ておるということになると、これも一種の売春になりはせぬかと思います。どうでしょう。
  18. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) はなはだ不勉強でございまして、私はっきりした回答をできないことを残念に思うのでございまするが、少しばかり勉強いたしまして、また機会を見て回答したいと思うのでありますが、非常に線を引くことはなかなか困難じゃなかろうかと普通に考えておるのでございますが、必ずしも全部が全部その通りではないような話も聞いておりまするが、あまり私その方面に対して深い関心がございませんので、興味がございませんので、不勉強ではなはだ残念に思います。
  19. 大川光三

    大川光三君 松本政務次官に一点だけ伺いますが、申すまでもなく、現在の沖繩では、わが国の主権は潜在的状況にございます。しかし、同胞の将来のために、アメリカの沖繩における売春対策の情報提供を受ける必要があろうかと考えまするが、その点について、どういう御所見を持っておられるか。また、今日まで沖繩におけるアメリカの売春対策の状況をお調べになったかどうか。お調べになったとすれば、現状はどうであるかという点を一点伺います。
  20. 藤原道子

    藤原道子君 関連。私もその点をあとで聞こうと思っていたところでございまして、ついでに聞きますが、最近、廃業した女性が沖繩に売春婦として流れて行っているというような情報も聞いております。沖繩における売春は実に人権じゅうりんというか、痛ましいまでの状態になっているということを私どもは聞いておりますが、外務省として、今御質問のあった点について今まで調査されたことがあるか。あるいはどういう状態だとお考えになっているか。その点について私もあわせてお伺いしたいと思います。
  21. 松本瀧藏

    政府委員松本瀧藏君) 私の知る限りにおきましては、調査を依頼して向うで情報を提供しておるということはないのでございまするが、ただいまの御注意というものはごもっともだと思いますので、今後一つ一生懸命にそういう方面の資料を集めまして、一応調査さしていただきたいと、こう考えます。
  22. 井上清一

    井上清一君 法務当局に伺いたいと思うのです。  実は本条約を審議の途中において、私いろいろ考えたわけでございますが、つい先だっての週刊雑誌でございましたか、新聞でございましたか、神戸のあるバーの女給が、酒に酔わされて、船に積み込まれて香港に引っぱって行かれた。そうしてシナ人に売り飛ばされて、危うく逃げ帰ったという記事があったのであります。最近香港あるいはシンガポールその他で日本婦女が醜行に従事をしておる者がかなりあるという情報を私どもは聞いておるのであります。また、それに反して、最近東京に外国人のコール・ガールがたくさんおる。フィリピン人の女がおる。あるいはまた外国人の女がおる。これは電話でもって秘密に連絡をすると、いろいろとはんべると、そうしてこういう商売をやっておると、こういう国際的な相当組織網があるやに私どもは実は聞いているのです。今度の条約締結を機会に、法務当局とされては、そういう国際的な人身売買団、あるいは国際的な売淫——国際的な売春網というものに対しておそらくメスを入れられると思うし、また、本条約の十七条によりましても当然そうした義務がわが法務当局に課せられるわけである。ところが、これに対して果して法務当局としては、この条約を忠実に履行する準備があるかどうかという問題です。あるいは風紀検察官というようなものを、国内あるいは国外にそうしたものを置いて情報を収集するとか、あるいはまた、そうした出入国管理庁だけの手では、これはとてもそうした観点にまで手が及ばないと思いますので、特にこの条約をわれわれが批准する前に、一体法務当局としてそうしたいろいろな事情まであなた方は御存じないかもしれないけれども、世間にはいろいろそういううわさがあると思う。そういうものに対処するような組織なり情報網なり、また、これに対する対策をお持ちかどうか、この意を私は承わりたいと思います。
  23. 横井大三

    説明員横井大三君) この条約の情報機関として、警察と相談いたしまして、法務省が当ることになったわけでございます。で、ただいまのお尋ねの、日本人が外国売春婦として出ると、あるいは外国人日本に来まして売春行為をやるというような点につきましては、いろいろうわさを聞いております。しかし、われわれとしましてもまだうわさ程度でございまして、その実態を把握するまでには至っておりませんが、警察と寄り寄り協議いたしまして、そういうことがだんだんと目につくようになってきたので、ここらへんの点につきましても十分調査をしなければならないという話し合いはいたしておるわけでございますが、現在のところ、まだその実態をつかむには至っておらない次第でございます。しかしながら、この条約に入ります以上、われわれとしまして、国際的な協力義務の一環といたしまして、それらの点についても十分な情報を得て、外国との情報の交換をいたしまして、そうしてこの事案の排除に努めなければいけないということは考えておりますので、入管、警察、われわれの間におきまして十分連絡いたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  24. 井上清一

    井上清一君 ではこの問題について、香港なら香港、シンガポール等に駐在機関を置くとか、情報収集の費用を計上したとか、あるいは国内の港々にそうしたものについての特別な係官を配置するとかいうような予算を、本年度の予算に御計上になっておるかどうか、この点を承わりたい。
  25. 横井大三

    説明員横井大三君) 法務省、検察庁関係ではそれはございません。ただ警察関係におきましては、香港の方に、情報機関ではございませんかもしれませんが、連絡機関があるように聞いておりますが、法務自体といたしましては、そういう機関は持っておりません。予算的な措置もいたしておりません。
  26. 井上清一

    井上清一君 私はせっかくこういう条約を通しても、ことにその最近の国際間の売春組織網というものは非常に密に張り回され、かつまた、日本の敗戦後の風紀の頽廃に乗じて非常にそうした問題がはびこっておるやに聞いておる。また、実際、新聞、雑誌等を詳しくいろいろお読みになりますと、いろいろな材料があると思う。そうした際に、私はこうした条約を通す以上は、そうした点について十分お考えを願わなければ画竜点睛を欠くことになると思う。これは一つ今後十分御注意願って、そして予算を計上するとか、政府としては、条約は通ったけれども、こういう措置をやりましたということを伴わなければ、条約を通すことの私は意味がないのじゃないか、こういうような感じもするわけでございます。その点どうですか。
  27. 横井大三

    説明員横井大三君) 御趣旨に沿うように今後も尽力いたしたいと存じております。
  28. 大川光三

    大川光三君 関連して。ただいま井上委員からの御質問がございましたが、この機会に、わが国に在留する売春婦である外国人の数、また、外国に在留する売春婦である日本人の数等について、概要のお調べがあれば御発表願いたい。
  29. 横井大三

    説明員横井大三君) 大へん申しわけございませんが、その材料を持ち合せておらないわけでございます。日本におきまする売春婦の数を把握することすら非常に困難でございまして、それが日本人が外国に行っておりまして売春をやっているかどうかということになりますと、なお困難になろうかと思います。それに比べまして、日本におりまする売春婦で外国人である者、こういう者の方は売春婦の調査を徹底いたしますと、ある程度わかってくるかと思いますが、今後調査いたしまして、判明いたしますれば御報告申し上げたいと思います。これに反しまして外国における日本人の売春婦という者は、日本の海外の駐在の領事館等におきまする調査も、ほとんどそういう点につきましては困難じゃないかと存じますので、非常にわかりにくいことであろうと考えておりますが、もしわかれば御報告申し上げたいと存じております。
  30. 藤原道子

    藤原道子君 今の答弁不満足なんです。そんなことではこの条約を作っては困ると思う。日本にいる売春婦の数は、これは調べようと思えば調べられる。これは至急に調べてほしい。外国にいるのはなるほど困難ではございましょうけれども、在外公館の方、また、在留邦人等とも連携すれば、私は骨が折れるでしょうけれども、調査は不可能ではないと思うのですが、外務省はそれに対してどうお考えですか。
  31. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 御指摘の通り、その調査ということは必要であろうと考えております。ただ、領事館、大、公使館でその調査をするということはこれは非常にむずかしいことじゃないかと思います。と申しますのは、御承知通り、向うで大公使館、領事館として、その権利——統治権をもっておる国内とは違いますから、そこで大、公使館または領事館がみずから調査に乗り出すということは非常に困難でございますし、その国の官憲と非常に協力か依頼してやるほかないと思いますし、そうなりますと、そのうちでまた日本人がどのくらいいるか、そういうような統計があるか調べる、そういうことになると、できるだけやる必要があると思いますけれども、相当困難じゃないかと思っております。
  32. 藤原道子

    藤原道子君 先ほどちょっと触れたのでございますが、何といいますか、第二条の規定ですね、これに対してちょっとお伺いしたいと思うのでございますけれども、「融資に関与する」というのをちょっとあなたの考え方を伺いたいと思うのですが。
  33. 横井大三

    説明員横井大三君) この条約の第二条に、「融資に関与する」とございますが、この意味だと思います。融資という点につきましては、売春防止法罰則規定の中に、資金、土地、建物の提供ということがございまして、この資金の提供などはまさに融資に当るわけでございまして、それに対して関与するということは、共犯として加功する、幇助することもございましょうし、共同正犯として一緒にやることもございましょう。それらを含めて関与するという言葉を用いたものと考えております。
  34. 藤原道子

    藤原道子君 わが国刑法の共犯理論で、関与行為を十分まかなえるということになるわけですね。
  35. 横井大三

    説明員横井大三君) その通りでございます。
  36. 藤原道子

    藤原道子君 それではこういう場合はどうなんでしょう。私はどうも共犯の理論ではまかない切れないものが出てくるのじゃないかと思うのですけれども、かりにここで甲が情を知って、情を知らない第三者をあっせんして、第三者から売春宿の経営者に融資をさせた、こういう場合は一体どうなるのですか。また、甲が情を知って、売春宿の経営者に対する融資を肩がわりした場合、こういう場合にはどういうふうになるのでしょうか。
  37. 横井大三

    説明員横井大三君) 具体的な法律問題になって参りますが、甲が情を知って、情を知らない第三者をあっせんして、第三者から売春宿の経営者に融資をさせた場合はどういうふうになるかということでございますが、これは刑法理論で申し上げますと、情を知らない者が入っておる間接正犯という理論があります。これかあるいは売春宿の経営の幇助ということで、幇助というのは犯罪行為を容易ならしめることでありますが、幇助でまかなえる。  それから次の、情を知って、売春宿の経営者に対する融資を肩がわりする。融資してやるのを肩がわりするわけでありますから、そうすると、そのときに従来の融資者から新しい融資者にかわるわけであります。そこに新しい行為がありますので、これをもってやはり融資というふうに理解してよろしいと、こう考えます。従って、融資の共同正犯なり、あるいは場合によりましては幇助的なものになろうかと思いますが、共犯理論でまかなえるものと考えます。
  38. 藤原道子

    藤原道子君 非常にむずかしい問題が出てくるのじゃないかと私は心配いたしております。で四条関係で加担行為ということが出てくる。その加担行為の意義はどういうものであるか。現行法の共犯行為と同意義に解していいものかどうか。それから処罰を免れることを防止するために必要であるとして加担行為を独立の違反行為として取り扱っておる事例があったら、一つ説明を願いたい。
  39. 横井大三

    説明員横井大三君) 加担行為というのは、これは日本刑法に出てくる言葉ではございませんが、この趣旨とするところは、犯罪行為に加功する行為をいうものというように考えるわけです。ただこの共犯の概念につきましては、実は各国立法例がまちまちでありまして、いろいろな言葉を使い、いろいろな概念を用いておるということであります。そこで、その概念の混乱を避けるために常識的な言葉を用いまして、加担行為という言葉を使ったものと考えられます。従いまして、趣旨とするところは、国内法的に申し上げますと、刑法の共犯と同じように考えてよろしい、こういうふうに思われるわけでございます。  なお、四条の二項に、「加担行為は、処罰を免かれることを防止するために必要であるときはいつでも、国内法が認める範囲内で、独立の違反行為として取り扱われるものとする。」こういう規定がございます。たとえば、周旋行為でありますが、周旋行為という言葉は、これは条約の面には出ておらない。しかしながら、周旋行為がありますということは、売春を容易にする、あるいはその機会を作るということになりますので、一種の幇助的な行為になるわけであります。その意味で加担行為であります。そこで、その点につきまして、これはやはり罰することが必要であるというところから、売春防止法六条という規定ができておるのでございます。そういうのをこの加担行為を独立の犯罪にする、こういうことになろうかと思います。
  40. 藤原道子

    藤原道子君 そうすると、ポン引きの場合なんかは、これは本条約の一条の勧誘誘引等に該当するものであって、これは別の法律で罰する、独立でやるというわけではないのですね。ポン引きなんかは勧誘、それから誘引などの行為として処罰されるわけですね。
  41. 横井大三

    説明員横井大三君) 先ほどその点は、大川委員の御質問にお答えいたしたのでございますが、実は一々の言葉をこまかく分析しますと、わからなくなる点がございます。しかしながら、趣旨といたしましては、この周旋行為というものは、第一条の勧誘誘引等と比べてみますというと、対象に多少ズレがございますので、ずれる面につきましては、四条の二項の加担行為を独立犯としたという面も含めていくというふうに御理解いただきますと、全体としては、この条約趣旨を達成する一応必要な措置はできておるというふうにお考えいただきたいと存ずるわけでございます。
  42. 藤原道子

    藤原道子君 あとあとのこともございますので、少しこまかくお伺いするわけでございますが、十分理解しておきたいと思います。第七条ですが、「常習性を証明するため。」云々とございますね。「その常習性を証明するため。」というのは、常習を要件とする犯罪の立証によって、あるいはまた、単に被告人の情状を立証するための二つの場合が考えられますが、どういう意味になるのでしょう、ここは。それから後者の立証の場合を含めるものとすれば、外国の有罪判決あるいはわが刑事訴訟法上の証拠能力があると解し得るならば、この刑法何条ですか、三百二十三条の第一号の規定現行法のままで、直ちに活用し得るわけですけれども、これはどういうふうに運用をお考えになるのか。
  43. 横井大三

    説明員横井大三君) 第一の御質問の第七条の第一号の「常習性を証明するため。」というのは、常習が構成要件となっている場合と、それから常習が単なる情状、刑の量定の事情であるという場合とどちらなのか、あるいは両方含むのかというお尋ねでございますが、これは両方含む意味でございます。従いまして、日本売春防止法におきましては、常習という言葉が出ておりませんので、構成要件的には立証を要するものがございませんが、情状としてはこの外国判決が使える、こういうことになろうかと思います。それなら日本国内法で使えるようになっているかと、こういう御質問でございますが、むずかしい言葉で申しますというと、犯罪事実の証明と、それから刑の量定事情の証明とは、証明方法の手段が違いまして、犯罪事実の点につきましては、実は厳格なる証明が必要でございまして、伝聞法則というようなむずかしい証拠法則が適用されるわけでございますが、単純なる情状の立証になって参りますというと、これは自由な証明と申しまして、裁判所が信用できるものなら、それを資料として刑の量定をしてよろしい、こういうふうになっておるのでございます。従いまして、この外国判決も裁判所が信用できるということであれば、日本の法制上、情状の資料にすることができるわけでございます。お尋ねの刑事訴訟法の第三百二十三条の規定は、実はこれは厳格なる証明の場合の規定、伝聞法則の規定でございまして、これにかかわらず情状のためにならば、外国判決も裁判所が信用する限りにおきまして材料に供し得る、これが日本の法制でございます。
  44. 藤原道子

    藤原道子君 時間もないようですからあれですが、先ほど大川さんが御質問になりましたけれども、そのときの御答弁でまことに不満足だったのですが、わが国ではどこの機関が違反行為の調査結果の整理等に当るのか、また、それをやるとすれば、さっきも井上さんから御質問があったように、職務員がこれでふえてくるわけですね。そういう場合には、やはり職員を増加するとか何とかしていかなければならないとすれば、予算的措置がここで考慮されなければ、十分な効果を上げ得ないと思うのですが、それらは先ほどの御質問では、まだしておりませんとか、どこがやるかまことに困難ですというような御答弁で、ちょっと非常に不安なんです。それはどういうふうにお考えになるのですか、どこがおやりになるのですか。
  45. 横井大三

    説明員横井大三君) 十四条、十五条における情報の収集機関といたしましては、この条約加入するに当りまして法務省が引き受けることになったのでございます。従来警察の方でこれらの資料の整理をいたしておりまして、それをこの売春防止法の全面施行を機会に、法務省において統一して行うということになったのであります。それならば予算の措置はどうなっておるかということでございますが、現在のところでは、各機関の協力がなければ、こういった情報の収集というものはできない。各機関におきまして、それぞれの予算の範囲内におきまして情報を得まして、それをわれわれの方で整理して、提供するということを考えておるわけであります。それで、もし予算が足りませんことになりましたならば、この点は別途考慮しなければならないわけでありますが、現在差しあたり、それぞれの手持ちの予算の範囲内においてこの情報を収集いたしまして、そうして国際協力に支障のないようにというふうに考えておる次第でございます。
  46. 藤原道子

    藤原道子君 第十五条によりますと、情報連絡はもっぱら違反行為あるいは違反行為者に対するもののようですけれども、私どもが考えますと、被害者である婦女に関する詳細な情報を交換して、その保護の向上と充実をしなければならないと思うのです。それから海外へ行ってみますと、先ほど外務省の御答弁もございましたが、今の在外公館の権限から言って、非常に困難だというお話だし、予算が非常に少いという悩みもあるようでございますが、かりに外国に行っている日本の女性が離婚とか、あるいは経済上の相談に行っても、あまり十分な相談に乗ってやれないというような点、そういう点から転落していく人があるのです。実際にそういうのに私ぶつかってきているのです。そういう場合には、もっとあたたかい措置を講ぜられて、もし在外公館に権限がないというのならば、別個にそこに相談員とか何とかを置いて、たえず情報の交換をして転落をまず防いで、婦女子を保護してやるということが、ほんとうの法の精神でなければならないように思うのですけれども、そういうことに対しては、どういうふうにお考えになっておられますか。
  47. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの御指摘の点でございますが、私が先ほど申し上げましたのは、もっぱら統計的と申しますか、調査という部面においてはなかなか困難ではなかろうか、結局その国の地方官憲にたよって、協力してもらっていろいろな統計資料を入手しなければならない。そこで領事館や大、公使館がみずからその資料を収集するというようなことは、非常にいろいろな関係上困難であろう、こういうことを申し上げたのでございますが、事実行っている日本婦女子の保護とか、相談を聞くということは、これはもう当然大、公使館、なかんずく領事館の任務でございます。これはいかなることがあっても万全を期してやらなければ、ほんとうの仕事をしたとは言われないと思いますので、これはこの上ともやっていきたいと思っております。
  48. 藤原道子

    藤原道子君 その点につきましては、特に各国の出先には十分御連絡をして、予算的、人的に困難な場合には、それを一つ増員しても、そういう点に備えてほしいと思うのです、日本の外人と結婚して行っているいわゆる軍人花嫁さん、これは内地で言われるほど向うへ行って悪くないのです。いろいろ調査してみますと、約三万人くらい今行っているらしい。非常に不幸な状態に陥っている人は一千人くらいだろうということなんです。それは向うの領事館なり、それからアメリカの機関で日米クラブというのができておりまして、そこで、非常によく軍人花嫁さんのことをやってくれておるのです。そういう点から、あらゆる面から総合して、三万人中約千人ぐらいが不幸な状態に陥っておる、こういうことなんです。これらについてもいま少し何とかしたら救えたと思うようなものがあるのです。ところが、外国人と結婚して行ったのだから、日本の領事館の権限外の問題だというようなことで、いろいろな複雑なものがあるようでありますけれども、そういう点についても、いま少し何とかしてやったら救えたものをなあと思うような点がたくさんございました。それからブラジルあたりに移住者として行った人でも、やはり呼び寄せ移民でございますから、非常にうまいことを言われて行って、行ってみて案外そうでないというようなことで、親が奥地で働いている場合、娘を町に奉公させる、こういうところからつい転落していくというような事例もあるようでございますので、もう少し一段とあたたかい御処置が願いたい、これは私の希望でございます。  最後にお伺いしたいのは、十七条関係でございますけれども、この国際的な犯罪のわが国における取締りの実績と、その数字というようなものがもしおわかりでございましたならば、人身売買とか、婦女誘拐とかいうものの実績がおわかりになったら伺いたい。それからそういう場合の一時的保護とか、扶養とか、送還等に対しての予算措置はどういうふうになっておるか、この点についてお伺いしたい。
  49. 横井大三

    説明員横井大三君) わが国におきまする従来の国際間における婦女売買という点につきましては、取締りの規定刑法の二百二十六条の国外移送の略取、誘拐等の規定でございますが、実は最近の統計では、この犯罪が一件もあがっておらないのでありまして、あがっておらないことがないということではないかどうか、これは私どもでは実態の把握が十分にできておりませんので、わからないわけでございまして、少くとも検察面ではない形になっております。で、これはなおわれわれとしましては、実態の調査なり、犯罪の端緒をつかむということに努力して参りたいと存じております。で、予算的ないろいろの措置につきましては、それぞれの関係庁におきまして、たとえば一時保護の点につきましては厚生省の関係、それから外国へ送る場合の旅費等の場合におきましては入管関係、あるいは外国から帰ってきます者につきまするこちらの費用の点につきましては外務関係、それぞれ従来も予算の措置が講じてございますので、それに応じて措置ができるものと考えております。
  50. 藤原道子

    藤原道子君 それは日本人の場合……、外国へ送り出す場合。
  51. 横井大三

    説明員横井大三君) 外国に送り出す場合には、退去強制の形をとりますというと、国境まではというか、船に乗せるまでは日本の方において措置できることになっておりますが、外国船に乗せればそれで済むことになるわけであります。
  52. 藤原道子

    藤原道子君 とにかく外国人の、この国際犯罪が一件もなかったというのは、ちょっと私には納得がいかないのです。幸いにも四月の一日から日本でも画期的な売春防止法が発足したわけなんです。従いまして、従来とは違ってきておるわけでございますから、今後そういう御答弁では、私は今後はまあ済まされないと思いますので、十分法の精神に沿った御処置をなされたいということをお願いいたします。  それからさっき中途半端な質問でございましたが、第二条の解釈でございますが、この中には待合とかいうようなものは含まれておると解釈してよろしゅうございますか。
  53. 横井大三

    説明員横井大三君) 第二条の解釈という問題よりも、むしろこれは売春防止法の問題でございまして、待合が入るかどうかということになりますというと、これは待合の実態を十分確かめてみませんことには、入るかどうかはにわかに申し上げかねるわけでございます。ただ抽象的に申しますというと、売春防止法に触れまして、たとえば場所提供になれば、これは犯罪になりますし、そういう施設を経営すれば、施設の経営として犯罪になるということでございまして、われわれの検察の面から見まするというと、売春防止法の刑事規定がその判断の基準になるわけでありまして、端的に待合はどうかと申されましても、それぞれ実態が違うと思いますので、すべての待合がどうかというようなお答えはいささかいたしかねるわけでございますが、少くとも売春防止法に触れる限度では待合であろうと何であろうと、同じ扱いになるわけでございます。
  54. 藤原道子

    藤原道子君 衆議院の外務委員会の答弁では、これは第二条の第二項に入ると存じますというような答弁になっているのですね。あなたじゃないが。
  55. 横井大三

    説明員横井大三君) そうなりますというと、必ず場所提供になるという答えのようにうかがえるのですが、それはちょっと不正確でございまして、売春場所提供になるというこの事実関係がありまするというと、それは場所提供罪として処罰されるのでございまして、そうでない場合も十分考えられるわけでございますから、一律には参らないと思います。
  56. 藤原道子

    藤原道子君 私はあなたのお答えが正確だと思う。一律に私も待合がこの売春宿だとは思ってないのだけれども、売春宿の任務を相当果しておるということは見のがしてならないと思う。にもかかわらず、今までの警察の態度が赤線とか背線に対しては勇敢にやっておりますが、待合に対しては全然手をつけていないといっても過言でないのであります。従って私は、あなたの答えは正確だと了承いたします。しかし、大部分が売春宿の役割を果しておるというのは社会通念になっている。でございますから、おえら方の売春行為が見のがされて、庶民のもののみを取り締るというような不平もございます。そういうことのございませんように、少くとも疑いのあるところは十分に御警戒になっていただきたい。十分にやればほとんどひっかかる。だけれども、ここで、全部待合が売春宿ですということはあなたは言えないと思いますが、私はそういう意味においてあなたのお答えを了承いたしますが、それについては十分今後の取締りがいただきたいということを要望しておきます。  さらに、この間予算委員会で、あなたの方から資料をもらったのです、売春違反について。売春防止法の違反になるような、人身売買とか、搾取とか、場所の提供、こういうものの資料をいただきました。ところが、取扱い件数と、それから何といいますか、判決には、これをずっと見ますと、非常に起訴猶予、無罪、罰金、こういうのが多いのです。体刑なんというのはほとんどございません。これでは業者は一万円や二万円の罰金は平ちゃらなんです。これでは当局が売春を根絶しようとする意図があるのかないのかということに私は疑いを持たざるを得ないのです。こういう点におきまして、少くとも歴史的といわれる売春防止法の出発に当りまして、特に本条約の批准ということを今審議しているわけでございますので、私どもはこの条約を批准いたしますると同時に、国内的に、対外的に恥かしいようなことのございませんように、とくと一つ誠意ある努力を払われんことを要望いたして、私の質問を終ります。
  57. 赤松常子

    赤松常子君 私簡単にちょっとお尋ねしておきたいのでございますが、せんだって私神戸に参りまして、福原遊郭が一せいにネオンを消しましたのでございますが、そのあとの従業婦の行方を二、三聞いてみたのでございます。ところが、やはりあそこは外人の多い国際港でありますから、幾分かは海外へ流れて行ったようでございます。もちろんこの条約が批准されておりませんときでありますから、何ともいたし方ございませんです。ところが、やはり横浜とか神戸とか、特に今後こういう出入りが多いと思うのでありますが、この十七条で見ますと、空港だとか停車場では公衆の目に見えるように警告を出すとかいう程度のことしか書いてございませんですけれども、これはとても周知徹底させるといってもなかなかむずかしいことだと思いますし、一々そういうところに書いてあったって見る人もございませんでしょうし、もう少しそういう出入りの空港やああいうところに厳重な網を張っていただくことが大へんに必要だと思いますので、必要の措置を講ずることはございますけれども、どういうふうに具体的にお考えでございますか、お聞かせ願いたい。私の要望はとてもああいうところは網の目が荒いわけなんですから、今後ひんぱんにこういうことが起り得るのでございますから、厳重にしていただきたい要望を持っておるわけでございますが、具体的にどうなっているのでございましょうか。
  58. 横井大三

    説明員横井大三君) この十七条は国際間の話し合いでございますので、おそらく最小限度共通の点を規定したものと考えます。これ以上にわたってやらなければならない場合は多々あろうかと思います。国への出入りの場所におきましては、最先端に出入国管理局関係の職員がおります。なお、警察もおります。海上保安庁関係の職員もおります。それらの職員が目を見張っておるわけでございまして、おそらくこの売春防止法の施行、同時にまた、この条約への加入ということによりまして、各関係機関は従来よりも一そう緊密な網を張るように努力することと存じます。ことにただいまお話がございましたように、日本売春婦が国外へ流れるというような事実がだんだん明らかになって参りますというと、これは捨てておくわけには参りませんので、よほどの注意を払いませんといけませんので、おそらく各機関におきましてその点は十分な監視をすることと存じておりますが、ただこれは法務省のわれわれの直接の関係でございませんが、われわれとしましても、そういう点についても関心を持っておりますので、機会あるごとに関係機関と連絡いたしたいと、こう考えておる次第でございます。
  59. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 これは外務省の方にお尋ねをすべきことかと思いますが、犯罪人引き渡しの問題です。ひとしく外国で罪を犯して日本へ逃避してきたというような場合でも、その本人は日本人である場合もあり、外国人である場合もある。それからまた、犯罪人引渡条約のある国とない国とがあるわけでございます。これはどういうふうな順序でいくのか、この第八条と第九条との関連において総合的に御説明を願いたいと思います。
  60. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 第八条及び第九条の犯罪人引き渡しの問題でございますが、第八条の一項にございます通り、御承知通り、たとえば英国である犯罪を犯した英国人か何かが日本に逃げて参ります場合に、英国からその犯罪人を自分の方に引き渡してくれという要望があるわけでございます。もちろん英国人が英国におきます犯罪でございますから、日本でそれを処罰するという問題は起らない。従いまして、英国が犯罪人を引き渡してくれという場合に引き渡すかどうかということは、これが条約によりまして引き渡す、条約ができますと必ずそれをお互いに引き渡すということになるわけでございます。ところが、この犯罪人引渡条約には除外例がございます。御承知通り、政治犯罪というのはこれは引き渡さないことになっておる次第でございます。そこでこの八条の第一項は「引渡犯罪とみなされるものとする。」、すなわち第一条、二条の犯罪は必ず犯罪人引渡条約におきまして、こういう犯罪は引き渡すということを現在もまた将来も約束しなければならない。すなわち、こういう犯罪は引き渡さないということをお互いに約束してはいけないのだということが第八条の趣旨とするところでございます。それからさらに第二項で、犯罪人引き渡しについて、「条約の存在を条件としないものは、」、この違反行為は引き渡す。すなわち、諸国間の慣例によりまして、必ずしも犯罪人引渡条約がなくても、お互いの慣行上引き渡すというようなことをやっておる国もあります。そこでそういう国の場合は、これはやはり第一項の場合と同じように、第一条、第二条の違反は引き渡す、こういうことを約束する、こういう趣旨でございます。  それから今度は第九条でございますが、自国民、たとえばこの犯罪人引渡条約で例外といたしましていろいろな引渡犯罪の例外は、政治犯なんかは引き渡さないということを規定してあると同時に、自国民不引渡、たとえば日本人が英国で犯罪を犯しまして日本に帰ってくる。その場合、英国の犯罪でございますから、英国処罰しようとしてその日本人を引き渡してくれという場合に、そういうような自国民であった場合には、これは不引渡、自国民不引渡の原則と申しますか、犯罪人引渡条約にはそういうことを例外として規定するのが通例でございます。ところが、もしそうなりますと、犯罪人を引き渡さない。たとえば日本人が英国で第一条、第二条の犯罪をいたしまして、日本に帰ってくる。しかし、英国から犯罪人引渡条約で引き渡せと言っても、条約で自国民不引渡という原則がありますから引き渡さないということになりますと、それは日本の国内でも処罰できず、また、英国側に引き渡さないとすると、英国側でも処罰できないということになりますと困りますので、第九条一項で、この場合は必ず犯罪人引渡条約の通例ではあるが、例外として自国に帰ってきたものは自国で処罰するようにしようというのが第九条一項の規定でございます。ところが、第二項になりまして、そういうことが外国人にかかる場合に、外国人を引き渡さないということになりますと、たとえば、英国で犯罪を犯した外国人日本に逃げてきて、そうしてその外国人を引き渡さないということになりますと、その外国人が同じように処罰できないということになります。そうすると、外国人との彼此権衡の問題がありますから、第九条第一項に当る場合もこれは適用がない。こういうような規定でございます。
  61. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 御説明でわかりましたが、この条約締約国になるということは、特定の国との間に犯罪人引渡条約はなくても、この売春問題に関する犯罪については、犯罪人引渡条約があったと同様に扱われることになるわけですか。
  62. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) これは実はその点いろいろ問い合せたのでございますが、犯罪人引渡条約が存在しなければ、これは全然適用がない。また、条約がなくてもそういうことをやるという約束がある国は別でございますが、そういう約束もないし、また、犯罪人引渡条約締結していないという国々につきましては、これは八条、九条は適用がないという解釈でございます。
  63. 藤原道子

    藤原道子君 そうすると、今そういう約束のある国はどことどこですか、条約加盟国でなくて。
  64. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) それで日本といたしましては、現在アメリカとしか犯罪人引渡条約がないのでございます。ほかの国とはほとんど作っておりません。それからこの実は犯罪人引渡条約というのは相当昔からある歴史的な古い条約でございまして、実は現在においては、あまりに犯罪人引渡というような条約を結ぶという傾向はほとんどないわけでございます。従いまして、日本にもございませんし、それから締約国間にもそういうものはおそらくないと存ずるのでございますが、そうしますと、これもいろいろ向うに解釈を問い合せたのでございますが、八条、九条はこのような原則を書いたのでございますが、実態的にはあまり発動がなくなるであろうという解釈でございます。
  65. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 これは外務省の方か、あるいはどちらでもいいと思いますが、第五条に「被害者が、国内法に基きこの条約に掲げるいずれかの違反行為に関する訴訟の当事者となる権利を有する場合」とありますが、これはどういうことなんですか。
  66. 横井大三

    説明員横井大三君) そういう関係被害者の地位というのは日本にはないわけでありまして、ドイツなんかには私人訴追の制度というのがありまして、被害者が訴追をいたしますと、つまり刑事と同じように被害者が起訴することになりまして、裁判所がそれについて有罪か無罪か裁判をするという私人訴追の制度がございますが、これはまさにこの五条の被害者の訴訟当事者という地位を規定したことになるのでありますが、日本には私人訴追の制度はございませんので、この関係はない。  それから皆日本には、附帯私訴というのがございまして、刑事事件に附帯して損害賠償の訴えを起すということが被害者に認められております。そうなると、刑事事件に附帯しまして被害者が原告となりまして、被告が加害者という形で訴訟があったのでありますが、これも現在ございません。従いまして、五条関係日本において適用されるという場合はないというふうにわれわれは理解しておる次第であります。
  67. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 第二十条に関連して聞きますが、これは必ずしも二十条、この条約関連するばかりではないのでありますが、現在の売春婦に対して職業紹介の事業の方から、売春対策という面からしてどういう指導がなされ、また、監督がなされておるか、何かそういうことについてのお考えがあるのか、その点を一つお伺いしておきたい。
  68. 横井大三

    説明員横井大三君) これは実は労働省の問題でございまして、労働省からお答えするのが適当かと思いますが、私どもが法律の面で知りました限りは、現行職業安定法で公共職業安定機関以外の私的な職業紹介事業はこれを許可制といたしております。それから売春等の業務につかせる目的で職業紹介をいたしますというと、罰則がかかるということで、労働省において職業紹介という面から監督権を持っておりますので、それで監督をいたしておるということになろうかと思います。  なお詳細もしお尋ねでございますれば、労働省の方の御答弁がございませんと、われわれではわかりにくい点がございます。大体の趣旨はそういうふうなことであります。
  69. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 時刻もだいぶ過ぎておりますので、相なるべくは簡単に……。
  70. 大川光三

    大川光三君 ただいまの棚橋委員の御質問関連してごく簡単に伺います。  この第九条の規定を見ますると、後段において「国外で犯した後に自国に帰国したものは、自国の裁判所で訴追され、かつ、処罰されるものとする。」という一つの強行規定を設けております。ところが、わが国売春防止法におきましては、いわゆる国外犯を認めていない。しかるにこの条約では、いわゆる国外犯を処罰すべしということで強行規定になっておるのでありまして、この点をどうしても国内立法をしなければ、これに調和がとれぬという、これも一番私は重要なポイントだと思いますが、いかがでしょうか。
  71. 横井大三

    説明員横井大三君) 九条の第一項の関係では、確かに国外犯処罰規定がないと困るわけでございますが、実は九条の第二項というわかりにくい規定がございまして、これには「この条約締結国間における外国人に係る同様の場合について、外国人の犯罪人引渡を認めることができないときは、」第一項の適用がないというふうに書いてございます。この意味につきまして国連の方へいろいろ問い合せておりまして、そのためにこの国内の見解がきまらなかったのでございますが、国連からの回答によりますと、これはこの条約締約国間にすべて犯罪人引き渡しということができ上っております場合に第一項の適用がある、こういう趣旨だそうでございます。そうしますと、現在の日本におきましては、実はこの九条は働かない形になりますので、国外犯処罰規定を現在の段階では置く必要がない。しかしながら、各国がすべてそういう関係になるというと、その段階では国外犯処罰規定を置かなければならないわけでございます。それには十分注意いたしまして、遺漏のないようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  72. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 他に御質疑もないようでございますから、本連合審査会はこれにて終了することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後一時十六分散会