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政府委員(朝田静夫君) 過日の南海丸の事故にかんがみまして、当
運輸委員会におきまする国政
調査の御
意見、あるいは当
委員会におきまする御質疑を通じまして、私
どもの日ごろ扱っておりまする行政を率直に反省をいたしまして、事故の絶滅を期するために、去る二月の五日に省内に旅客船
事故防止対策委員会というものを設置いたしまして、種々
問題点を検討して参ったのでございます。お手元に差し上げてございまする資料はそれの中間
報告でありまして、今後この方向に向って
対策を具体的に進めて参りたいと思っております。なお、これにつきまして当
運輸委員会の御高見をも拝聴いたしまして、逐次実施に移して参りたいと思っておるのでございます。
まず第一に、そこにあります海運局の関係の問題でございまするが、御承知のように、国内旅客船には老朽船が非常に多いのでございまして、早急にこれを代替いたさなければならないのでございますが、三十三年度の予算におきましても、旅客船
事故防止対策という構想を私
どもは立てまして、共有制度を通じまして船質の改善をはかりたい、こう考えて
努力をいたしたのでございまするけれ
ども、すでに御承知の通り、予算が成立いたしませんので、三十四年度の予算にはぜひともこの実現をはかりたいと、こう考えておるのであります。当面その間におきまして、開発銀行あるいは中小企業金融公庫等に対しまして、融資のあっせんをはかって参りたいと考えております。北海道におきましては、すでにいち早く、共有制度によりまする船質改善の方途といたしまして、離島航路整備会社というものの設立を目下進めております。道庁、北海道開発公庫、民間、こういった構成におきまして、新年度早々設立される見込みでございます。
次の2のディスパッチャー制度の採用、3の気象海象の把握の定型化、これは
二つ相関連をいたす問題でございまするが、気象海象の情報の入手と伝達につきまして、航路及び企業の
実情に即した合理的な手続を、ここに定型化していこうということを考えておるのでありまして、それがまた、当
委員会でも
お話がありましたように、船長の出港
判断を助けて合理化していくためには、
一つの仕組みといいますか、体制を行政指導によりまして進めて参りたい、こういうふうに考えるのでございます。
4のPR活動の強化でございまするが、これは運航、営業両面におきまする実際の業務担当者の協力を得なければ、海難防止の実効が上らないのでございまするので、新しく海難防止協会というものを四月の早々に設立いたしまして、講習会あるいは実地の技術指導、あるいはパンフレットその他の啓蒙、そういった活動を強力に展開して参りたい、こう考えるのでございます。
その次の船舶局関係の船舶の安全性の基準の問題でございまするが、この
対策委員会におきまして決定をいたしまして、当
委員会にもその際御
報告申し上げました、南海丸の僚船のわか丸の実船試験の結果を、お手元に別紙の資料として配付を申し上げておるのでございまするが、去る二月二十五日から二十八日に至りまする間において、運輸省を中心に、運輸技術研究所、あるいは大学の専門家の協力を得まして、これはみな造船技術審議会の安全部会の
委員の方々でございまするが、そういった方々の御協力を得まして、傾斜試験、動揺試験、あるいは実船航行試験、こういったものを実施いたしました結果は、お手元に配付をいたしておりまする資料のように、復原性の基準に適合しておる、ということが判明をいたしたのでございます。また、いろいろの性能上の数値がそこに出ておりまするが、特異な点は見出されなかった、こういう結論で精密な学術試験
調査というものを終了いたしておるのでございます。ところが問題は、現実に事故を起して沈没しておるのでございまするので、復原性の基準に合格したことが判明をいたしましても、さらに安全性を高める方が望ましいという見地からいたしまして、所要の改造を行うことを運輸省からも慫慂いたしましたし、会社からもその具体的な計画案というものが出て参りましたので、これを承認をすることにいたしております。今後の
対策の問題といたしましては、ここに
一つの問題がございまするのですが、沿海区域というものが、もっと十分外洋に準ずるような航路もあるのであるから、安全性基準の適用の上からいって、もう少し航路を細分化するか、あるいは特定の航路に対して、安全度を高めるような措置を基準の上で考えるべきであるという御
意見もありましたので、そういう方向に向って、造船技術審議会の方に、官民の専門家の集まりでございまするので、その審議会に諮問をいたすことにいたしております。
それから、その次の復原性に関する資料を整備していない船舶、主として復原性規則の制定以前の船舶の中で、さしあたり沿海区域の旅客船の二百隻を目途といたしまして一斉
調査をいたし、順次平水区域の船舶にも拡大をいたして参りたいということでございます。その資料ができ上りました船舶から順次、検査時期を利用いたしまして復原性の試験をやりまして、その性能を確認いたしまして、就航航路の適否を決定するような措置を講じて参りたいというふうに考えるのでございますが、航路の特殊性というものにつきましては、海上保安庁、あるいは気象庁等の科学的な基礎になるような資料をもとにいたしまして、
調査を行なって参りたい、こういう
方針を立てたのであります。そういう
調査をいたしまして、それとともに、こういった資料に基きまして、各船別に定員を再検討をいたすということが、そこにあがっております2の問題であります。
その他、船舶通信施設の拡充、あるいはゴムボートの救命艇代替とラジオブイ設備の強化、検査方法改善、検査組織の強化、臨時旅客運送を行う小型船舶に対する安全規則の改正、あるいはレーダー、自記測深器の設備強制、航海計器の検査の法制化、あるいはまた非常の場合におきまする出入口を、夜光塗料を塗りまして表示して明らかにしたい、平水航行の船舶に海図を備え付けさせる、また国際航海で行なっておりまする非常訓練の実施を国内航海にまで拡大をするというようなことにつきましても、具体化を研究しようということが、船舶局の関係の問題でございます。
その次に、船員局の関係でございますが、船員局関係といたしましては、この
対策委員会で主として問題にいたしましたのは、船員の素質の向上という問題と、乗組船員の実態
調査、こういう二項目に分れておりますが、船舶職員につきましては、旅客船の航路の
実情に応じまして、その資格について、法制的に検討を加える必要があるとも考えられるのでありますが、差し当り行政指導によりまして、航路によって適正な配乗を行うということを実行いたします。それと同時に、職員につきましては、優秀な船員の配乗を指導していく。わが国ではまだ批准しておりませんが、エーブル・シーマンの制度について国際条約がございまするので、そういう趣旨を取り入れまして、将来法制化にまで持っていくことも検討をしてみるということであります。その他、教育、指導につきましては、講習会あるいは講演会、パンフレットの頒布等によりまして、あらゆる機会を利用して
現場指導を行なっていく、特にローカル気象の教育に重点をおいて指導を行なって参るということであります。また一番
最後の、乗組船員の実態
調査でございますが、労働条件あるいは労務管理の悪いときには、やはり事故が起っておる実績でありますので、そういう方面について強力に行政指導をやり、また、この方面についての
調査研究も続けていきたいというふうに考えておるわけであります。
その次は海上保安庁関係でございまするが、特に旅客船に対する取締りを強化するために、去る二月二十五日
現地に指令を発したのであります。定期取締りと特別取締りとに分けておりまするが、特に行楽シーズンを控えておりまして、立ち入り検査あるいは保安官の派遣、あるいはそれに対する警乗、こういったような方法を通じまして、適切な取締りを実施するということにいたしております。旅客船航路筋の航路標識が整備をされていないために事故が起るという問題もありまするので、大体三十三年度の予算におきましては、十四カ所、三千百万円をもってこういった施設の整備をはかる予定にいたしております。
それから潮流急激な個所についての潮流図の作成、あるいは潮流の急激な水域付近に、気象、海象報知を行いますステーションを設置する、あるいは海流の予報、海上保安庁関係の通信所の聴守体制を強化して参る、夜間に遭難
事件が多いことにかんがみまして、小規模通信所は、定員の関係で昼間だけ執務いたしておりまするが、夜間も聴守できるように整備をいたしますとともに、通信施設のないような所は、小規模通信所等を新設いたし、また巡視船艇にも施設を整備して、陸上部署相互間の
連絡通信網もあわせて強化して参りたいということでございます。
次に、気象庁の関係は先ほ
どもちょっと触れましたが、気象、海象資料の収集強化であります。今回の事故にかんがみまして、気象、海象資料の収集の上において、あるいは不十分な点があったのではないかというふうにも考えられますので、離島あるいは岬の突端等に風向、風速の観測所、ロボット観測所を設けまして、こういった方面の施設を整備して参りたいと思うのでありますが、三十三年度にもこの種の要求を予算においていたしたのでございまするが、これも成立をいたさなかったのでございまして、実行の上において
一つ特定個所に試験観測を行なってみようということをこの
委員会でとりあえずきめたのでありますが、大体気象庁の内部においても、できるじゃないかというところで今なお検討をしておりまするが、実行で一カ所、少くなくとも百万円ばかりの経費を要するのでありますが、そういうものを実験的に施設をいたしまして、これで陸上風と海上風との差異、あるいはそれの相関関係といったものも究明して参りたいと、こう考えておるのであります。また、海上におきまするそういった資料の収集につきましては、どうしても船舶から臨時通報をしてもらいます、そういう資料を収集する必要もございますので、現在は法規的には義務づけてはおりませんけれ
ども、行政指導によって、なるべく船舶からの通報を得まして、そういう方面の強化をはかっていきたいということであります。それからNHKその他の放送機関の気象
注意報、警報の周知の迅速化の推進、あるいはまた、その次の旅客船の多い航路につきまして、局地気象報知制度をしく、先ほど申し上げましたような、海象、気象の資料の収集強化という体制ができ上りますと、照会のあったときに知っている範囲で答えるという方式で、ある程度局地気象の報知が可能であると考えられます。また異常時にはラジオで放送することの可能性も行い得るように、将来検討していきたいということであります。
その次の気象警報標識あるいは拡声器等の施設の強化でありますが、これは気象庁が整備するのではございませんが、主として利用者によって整備されるものが多いのであります。あるいは先ほど申し上げました海難防止協会等が、その利用者に対してある程度補助をして、施設を整備していくというようなことも考えられますので、そういったものに対しまして、通報の基礎となるインフォーメーションの提供については、気象庁はできるだけ協力をするというような手段を講じたい、あるいはまた防災気象
連絡会などを活用して参りたい、気象指導、気象情報の解説、気象測器の検査の強化と、こういうことにも
努力をして参りたいということであります。
以上、種々の
問題点を検討をいたしましたが、この中には、今後長時間をかけて、相当科学的に
調査研究を必要とするものもございまするし、早急に実施に移し得るものもありますので、そういったものにつきましては、逐次具体的に、その推進をはかって参りたいと思うのでございまするが、当
委員会の御
意見も拝聴いたしまして、さらに具体化に
努力を進めて参りたい。こう考えておるのであります。