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1958-02-15 第28回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十五日(土曜日)     午前十時二十三分開議  出席分科員    主査 山本 勝市君       周東 英雄君    野澤 清人君       橋本 龍伍君    八田 貞義君       古井 喜實君    松浦周太郎君       山崎  巖君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    島上善五郎君       辻原 弘市君    柳田 秀一君    兼務 田原 春次君    滝井 義高君  出席政府委員         文部政務次官  臼井 莊一君         文部事務官         (大臣官房会計         参事官)    天城  勲君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文部事務官         (調査局長)  北岡 健二君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚生事務官         (大臣官房長) 太宰 博邦君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     山本 正淑君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         海上保安庁長官 島居辰次郎君  分科員外出席者         文部事務次官  稲田 清助君         日本ユネスコ国         内委員会事務総         長       武藤 義雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十五日  分科員小川半次君及び島上善五郎辞任につき、  その補欠として八田貞義君及び今澄勇君が委員  長の指名分科員に選任された。 同日  分科員八田貞義辞任につき、その補欠として  小川半次君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第一分科員田原春次君及び滝井義高君が本分科  兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算文部省及び厚生  省所管  昭和三十三年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本主査 これより予算委員会第二分科会を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算文部省所管について説明を求めます。臼井文部政務次官
  3. 臼井莊一

    臼井政府委員 昭和三十三年度文部省所管予算大要につきまして御説明申し上げます。  昭和三十三年度文部省所管予算額は千五百四十一億五千三百二十七万五千円でありまして、これを前年度予算額千四百五十七億六千五百六十二万七千円に比較いたしますと、八十三億八千七百六十四万八千円を増加いたしております。  なお文部省予算額一般会計予算額に比較いたしますと、その比率は一二%弱となっております。  次に昭和三十二年度予算のうち重要な事項について申し述べたいと存じます。  第一は義務教育費国庫負担制度実施に必要な経費であります。義務教育機会均等とその水準維持向上をはかるため、公立義務教育学校教職員給与費の実支出額の二分の一及び教材費の一部を国で負担するため必要な経費でありまして、給与費としては本年度小中学校児童生徒について、それぞれ約五十万人の増減に伴う教職員約千七百人の減少と、新たに中学校における学級規模適正化に必要な教員の増加約五千人、さらに校長に対する管理職手当支給等を含めて八百九十億千四百万円、教材費としては、父兄負担の軽減をはかるため児童生徒一人当り単価を是正し、さらに従来の学校図書館整備費補助金義務教育分を吸収し、かつ国庫負担率を二分の一とすることとして所要経費十五億円を計上したのであります。  なお公立養護学校整備特別措置法に基き、公立養護学校教職員給与費の二分の一と、教材費の一部を国庫において負担するに必要な経費五千四十六万円を計上したのであります。  第二は学校教育等改善充実に必要な経費であります。教育委員会制度の円滑な運営をはかるため、教育委員会関係職員研修を行い、また国、都道府県、市町村間の指導、連絡、助言を強化するために本年度視学官五人及び視学委員三十人を増員して、学校管理教育内容等指導に必要な経費千七万八千円を、道徳教育及び理科教育重要性にかんがみ教職員現職教育実施するための経費千二百九十五万六千円を計上いたしました。さらに、公立義務教育学校児童生徒及び教職員の健康の保持、増進をはかり、学習能率向上に資するため新たに、児童生徒保健医療費補助を含めて、必要な経費三千六百九十万四千円を、計上したのであります。  第三は教育機会均等の確保に必要な経費であります。義務教育の円滑な実施をはかるためには、経済的理由により就学困難な状態にあるものに対して、特別の措置を講ずる必要がありますが、これがためいわゆる準要保護児童生徒に対し、教科書費については、一億九千四百七十四万五千円、給食費については、一億六千七十三万七千円の補助計上したのであります。  次に、盲ろう学校及び養護学校の小、中学部児童生徒に対し従来、教科書費交通費学校給食費等に対する補助が行われており、また高等部生徒に対しては教科書費のみについて補助がなされていましたが、本年度より新たに給食費補助する等のため必要な経費一億三千四百七十二万三千円、また僻地教育充実をはかるため従来の施策を続けるとともに、僻地勤務教員宿舎建築費補助二千三十九万五千円を計上いたしました。さらに勤労青少年教育振興社会教育の推進と相待って行われなければなりませんが、特に定時制高等学校設備費及び通信教育運営費補助として九千六百四十九万千円、夜間高等学校給食施設及び設備費補助として千二百六十万千円をそれぞれ計上したのであります。  第四は文教施設整備に必要な経費であります。国立文教施設整備につきましては、戦災を受けた施設復旧老朽校舎改築等、前年度よりの重要工事の施行を続けるとともに、学術及び科学技術教育進歩に即応する施設整備には特に重点を置き、その所要経費、三十一億三百八十万八千円を計上したのであります。  公立文教施設につきましては、これが必要な経費五十七億八千四十万九千円を前年度とほぼ同額計上したのであります。  特に本年度においては前年度に引き続き学校統合に対する補助金十億千十三万八千円を計上いたしましたが、これは町村合併等による学校規模適正化を促進することにより学校経営合理化及び教員適正配置等を促進し教育水準向上をはかりますためであり、また不正常授業解消のため七億三千三百五十五万三千円を計上して特に児童社会増に伴う教室の不足の解消をはかる考えであります。また、構造比率において鉄筋、鉄骨造を増加いたしました。  なおこのほか昭和三十二年度に発生した災害の復旧費及び鉱害復旧費として一億五百六十万二千円を計上したのであります。  第五は科学技術教育振興に必要な経費であります。初等中等教育については、理科教育及び産業教育振興に留意し、それぞれ四億四千七百十二万二千円及び七億五万四千円の経費計上し、新たに高等学校工業課程及び産業科新設して、産業界中堅技術者養成の要望にこたへ約五千人の増募を予定しております。  なお国立大学においては、薬学部の新設理工系の十五学科増設、短期大学の新増設等により、約千七百人の学生増募を行なって技術者養成に備え、また前年度に引き続き五大学、三研究所において原子力に関する講座または部門増設を行い、新たに、蛋白質研究所航空研究所設置工業材料研究所統合整備をはかるなど、科学技術進歩に即応した学術振興に特段の措置を講じ、これに加うるに、講座研究費並びに教官研究費及び学年経費について増額を行なって基準経費充実をはかることといたしたのであります。また在外研究員派遣に必要な経費増額して一億千万円を計上したのであります。  さらに科学研究重要性にかんがみ、研究の促進をはかり、その振興に資するため科学研究費交付金等に必要な経費十四億四千二百四万円、また私立学校についても、同じ趣旨に基き理科特別助成費として一億九千八百五十万円、研究基礎設備補助として一億九千七百万円をそれぞれ計上したのであります。  なおこのほか民間学術研究団体補助七千四百九十万円、さらに本年度国際地球観測年の本観測の年に当っておりますので、前年度に引き続き南極地域観測を含めて六億七千万円の経費計上したのであります。  第六は国立学校運営に必要な経費であります。国立大学七十二、国立高等学校八、大学附置研究所五十七、大学付属病院二十三を維持運営するために必要な経費でありまして、本年度におきましては、さきに申し述べましたように、科学技術教育振興に主眼を置きまして、北海道大学ほか十一大学に、それぞれ電子工学科を初め十五の理工学系学科新設し、東北大学、東京大学、東京工業大学、京都大学、大阪大学原子力研究に関する講座または部門増設し、新たに久留米工業短期大学を創設する等の措置を講ずるための必要な経費を含めまして三百九十九億八千三百九十万二千円を計上したのでありますが、このうち国立学校の項に、二百九十億六千六百二十九万七千円を、大学付属病院の項に七十七億五千六百五十六万五千円を、大学付置研究所の項に三十一億六千百四万円を、それぞれ計上したのであります。  第七は育英事業の拡充に必要な経費であります。優秀な学生生徒で、経済的理由により修学困難なものに学資を貸与する事業を行なっている日本育英会に対し、奨学資金の貸付と、その事務費補助に必要な経費四十三億九千四百八十八万四千円を計上したのであります。  本年度育英事業におきましては、新たに進学保障制度を創設し、義務教育修了者で特に資質優秀にして経済的理由により進学をはばまれている者に対し、その進学を強力に援助するため高等学校生徒五千人につき、従来からの採用者とは別ワクで月額三千円を貸し付けることとしたのであります。  第八は社会教育振興に必要な経費であります。従来に引き続き青年学級改善充実をはかるため、五千八百万円、公民館等設備整備に千八百万円、本年度より新たに青少年宿泊訓練団体活動指導者養成等のための青年家施設整備に六千万円をそれぞれ計上するほか、青少年教育婦人教育等社会教育として特別に助成を必要とする事項を一括して社会教育特別助成費として、これに六千七百万円を計上し、また前年度より引き続き計画中の旧松方コレクション美術作品を受入れて展観する西洋美術館の建設及び維持運営に必要な経費七千三百八十一万六千円を計上したのであります。  さらに、スポーツの振興をはかるため、新たに体育局設置するとともに本年五月第三回アジア競技大会開催に必要な経費補助六千万円を、国際オリンピック大会総会等補助を含めて日本体育協会に対する助成金千百五十万八千円を計上し、また前年度より工事中の国立競技場の完成に伴い、これが維持管理運営にあたる特殊法人国立競技場(仮称)に対し必要な経費一億四十八万九千円を計上したのであります。  第九は私立学校助成に必要な経費であります。私立学校教職員相互扶助とその福利厚生をはかるため、私立学校教職員共済組合に対しその給付費及び事務費の一部を補助するに必要な経費六千三百八十九万六千円を、私立学校振興会に対し、私立学校施設設備整備するに要する資金の一部を政府出資金として五億円を計上したのであります。  なお昭和二十八年度以降毎年度出資金計上しましたが、本年度をもって計画額五十億円は一応完了する予定であります。  第十は学校給食助成に必要な経費であります。学校における給食を通じまして、児童生徒の心身の健全な発達に資し、かつ食生活の改善に寄与するため、さきに申し述べました、夜間定時制高等学校給食施設及び設備費補助金、準要保護児童生徒に対する給食費補助金のほか、公立小中学校給食施設及び設備整備として一億五千九百九十一万七千円、特殊法人日本学校給食会に対して、その取扱い数量が増加すること等を勘案し運営費に必要な経費として千六百七十二万千円を、さらに本年度より従来農林省所管計上された学校給食用パン原料代の一部を国庫において負担することに伴う所要額食糧管理特別会計へ繰り入れるため必要な経費十四億八千万円を新たに計上したのであります。  第十一は文化財保存事業に必要な経費であります。文化財保存事業は逐年その成果をあげておりますが、本年度も前年度に引き続き国宝、重要文化財のうち、特に防災施設整備及び無形々化財保存活用重点をおきまして、保存事業充実をはかるため必要な経費四億三千四百四十万円を計上し、また国立劇場設立準備のため必要な経費千六百十五万円を前年度に引き続き計上したのであります。  以上文部省所管に属する昭和三十三年度予算大要につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上御賛同あらんことを希望いたします。
  4. 山本勝市

    山本主査 次に補足説明を求めます。天城会計参事官
  5. 天城勲

    天城政府委員 三十三年度文部省所管予算要求事項について事項別補足説明をいたします。お手元に事項別表資料として事項別内訳がございますので、両者につきまして簡単に御説明いたします。  義務教育費国庫負担金でございますけれども、内容につきましては給与費負担金教材費負担金に分れますが、給与費につきましては、資料の方に内訳が出てございますが、明年度増額が五十六億二千七百万円になっておりますけれども、その中身は現在の制度で参りました場合のいわば自然増的な経費が三十八億四千八百万円でございます。それに対しまして新しい制度を織り込みました経費が十七億七千九百万円、その中身中学校学級規模適正化によりまする教職員の増五千人を認めまして七億七千八百万円、それから新たに校長管理職手当を支給することにいたしまして、その所要額四億四千五百万円、通勤手当新設によります所要額五億五千六百万円、これが新しい用途の経費でございます。  教材費につきましては、総額十五億でございますが、中身といたしましては、従来学校図書館法補助金計上しておりました義務教育分をこれに統合いたしますとともに、学生一人当り単価を改訂し、かつ国の負担を二分の一に明確にしようという考えでおります。  なお全体の義務教育費算定基準につきましては、資料の一ページの(3)教職員数の算出、ここで明年度児童生徒につきまして、小学校で五十一万一千人の増、中学校生徒につきましては五十万四千人の減が見込まれております。これに基きまして、学級数を推定し、二枚目に入りますが、教員数を推定いたしましてその数を出したわけでございます。単価につきましては明年度昇給原資二%を見込んで計算をいたしております。  事項別表に戻りますが、学校教育等改善充実経費でございます。中身教職員現職教育を新たに二つ起したいと考えております。一つ道徳教育、これは明年から小学校教育課程が改訂になりますし、道徳教育を四月から実施することに備えまして、小中高等学校先生方現職教育実施したい、そのための経費でございます。それから理科教育現職教育につきましては、科学技術教育振興のために特に実験実習中心とした現職教育を行いたい、こう考えまして八百八十万の新たな計上になっております。  それから教育委員会運営指導経費でございますが、これは前年度事務局職員研修、それからこの委員会調査指導等経費計上しておりましたが、明年度加えまして視学員三十人の設置視学官五人の増を見込んでおります。  次の学校健康管理の強化、これは現在学校病といわれているような病気がいろいろございますが、これを学校身体検査を励行いたしまして徹底的に治療したい、その場合に、いわゆる要保護児童あるいは準要保護児童につきましては、その治療費につきまして国で補助したい、こう考えているのが新しい要素でございます。資料の二ページの2に中身を記載してございますが、対象児童は要保護児童二・五%、準要保護児童二%と考えまして、要保護児童については公費で全額、国はその二分の一の補助、準要保護児童につきましては公費で半分、国がその半分を補助するという考え方でございます。なおこの経費は別に法律制定考えておりますので、実施等の関連から半年分を計上しております。  事項別表に戻りまして、第三の教育機会均等の項でございますが、最初盲ろう児童就学奨励、これは盲ろう学校児童生徒に対しまして就学奨励費補助して参りましたが、明年度高等部学生につきましては、新たに給食費補助をいたしたいと考えております。従前は教科書費補助のみでございました。その中身資料の三ページの3に詳細にお示ししてございます。  それからその次の準要保護児童生徒教科書費補助、それから準要保護児童生徒給食費補助、これは教科書費及び給食費につきまして、準要保護児童に対して国で補助して参りましたが、明年度それぞれ単価を改訂し、対象児童生徒数を若干ずつ伸ばして計上してございます。これは四ページの4に教科書費につきまして資料がございます。5に給食費についての資料を掲げております。  その次の公立養護学校教職員給与費及び教材費国庫負担金、これは、養護学校につきましてはいまだ義務制が施行されておりませんが、盲ろう等義務制学校に準じて諸制度を扱うことになっておりまして、この場合、給食費教材費につきましても、盲ろう学校義務制と同じような扱いをするための所要経費計上しております。その資料は四ページの6にございます。  事項別表の4で、定時制教育振興でございますが、内容定時制高等学校設備費、及び通信教育運営費補助でございます。明年度若干増が見込まれておりますが、これは設備費におきまして理科関係設備考えたためでございます。定時制高等学校給食施設設備補助でございますが、——いわゆる夜間高等学校の分でございます。大体従来の線に沿って計上しております。  五番目の文教施設でございます。文教施設は、国立文教施設公立文教施設に分れますが、国立文教施設におきましては、明年度約三十一億計上しておりますが、その内容といたしましては、国立大学病院研究所等で、まだ戦災復旧が相当ございますので、それの整備一般科学技術教育振興に伴います必要な施設整備重点を置いて、ここに掲げてございます。  それから公立文教施設整備費補助でございますが、金額的には前年度同額の五十七億八千万でございます。詳細につきましては、資料の六ページに内容がございますが、二、三申し上げますと、小学校の不正常授業解消重点を置きまして、小学校校舎という事項で一億四千万ほどの増を考えております。それから屋内運動場経費は、従来予算的に計上がありませんでしたけれども、明年度から僅少ながら新しく頭を出したわけでございます。  事項別表の二ページに入りますが、学校規模適正化、これは町村合併に伴います学校統合中心考えておりますが、それにおきまして約二億の増でございます。非義務制学校では、高等学校定時制におきまして約一千万の増、それから高等学校戦災復旧につきましては、四千八百万円ほどの減になっておりますけれども、年次計画に従いまして、一応明年度をもって終了するという計算でございます。工事量あるいは基礎数等につきましては資料の六ページに詳細にございますので、省略させていただきます。  事項別表の二ページの科学技術教育振興でございますが、これには学術あるいは大学関係から初等中等教育関係事項までをまとめてございます。最初科学研究振興でございますが、明年度十四億四千二百万円で、前年度に対しまして約二億二千万の増を見込んでおりますが、これはいわゆる科学研究費補助金でございまして、重点的に研究テーマに従って助成していくための経費でございます。次の民間学術団体助成、これは七千四百九十万で、前年度よりも若干減少いたしておりますが、この減少理由は、前年度限りの助成すべき事業が終ったための減でございまして、それ以外は大体従来の民間学術団体助成していく考え方でおります。その次の在外研究員派遣でございますが、約一千万の増になっております。文部省によります国立大学教官留学費でございます。その次は、私立大学関係助成でございますが、一つ私立大学研究設備費助成でございます。これは大学としての一応備えるべき設備費助成しようという経費でございまして、前年度八千八百万に対しまして、明年度一億九千七百万、約一億の増でございます。その次の私立大学理科特別助成、これは私立大学の主として理工系におきます教育上必要な設備費補助助成でございまして、前年度五千万円に対しまして、一億九千八百五十万、約一億五千万の増を見込んだわけでございます。その次は国際地球観測年事業費でございますが、六億七千万円計上いたしております。これは南極地域観測国内一般観測ロケット観測を含めての経費でございますが、事業計画に従いまして所要経費計上したわけでございます。その次は理科教育設備費、これは理科教育振興法に基きます小、中、高等学校理科設備補助金でございますが、前年度に対しまして、六千三百万ほどの増、四億四千七百万を計上いたしております。  次は産業教育施設設備補助金でございますが、これも産業教育振興法に基く補助金でございます。所要額七億を計上いたしておりまして、前年度に対し約二千四百万の減が出ておりますけれども、実質的には前年度までで当初計画一般設備費の充当が一応終っておりますので、その経費が約三千八百万ほどございますので、それを除きますと、明年度経費の中には新しい事項がかなり入っておるのでございます。これにつきましては、資料の七ページに内訳がございますが、明年度新たに考えております事項といたしましては、工業高等学校に機械及び電気の課程新設したい、そのために設備費及び施設費を新たに補助するということと、高等学校に一年ないし二年の産業科というものを設置いたしまして、これに要する施設及び設備補助するというようなことが新しい内容となっております。この産業教育設備費補助の三番目にございます実習船建造費補助、これは明年度計画に従いまして、大型二はいと中型二はいを計上いたしました。最後の中学校研究指定校補助金、これは、中学校産業教育につきましては、研究指定校制度をとって設備費補助いたしおりますが、明年度九千万円、約六百校を考えております。  その次は国立学校運営費でございますが、ここでは予算上の組織としての国立学校経費を一括計上いたしまして、前年度に対しまして約三十億の増でございますが、これにつきましては、資料の一番最後の二枚が国立学校関係でございますので、ごらん願いたいと思います。三十億の増額のおもなる中身は、庁費以外におきましては、講座研究費あるいは教官研究費の増、学生経費の増、教官の研究旅費、それから病院医療費、設備費等に分れておりますが、新規事項といたしまして、資料にもございますように、原子力研究、これは前年度から発足いたしております五大学研究所におきます講座増設研究部門増設考えております。学部の創設としましては、東京大学の医学部薬学科の分離独立でございます。それから研究所の創設としましては、蛋白質研究所、これを大阪大学新設いたします。次に東京大学の理工学研究所を転換いたしまして、新たに航空研究所にいたします。その次は東京工業大学の建築材料研究所と窯業研究所を合せまして、新たに工業材料研究所に転換いたす、こういう事項でございます。その次は短期大学関係としまして、新たに久留米に工業短期大学設置いたし、また大阪外国語大学に外国語の短期大学部を創設いたします。学科としましては、群馬大学、徳島大学、電気通信大学の短期大学にそれぞれ機械、土木、通信工学の学科を創設いたします。それで約百五十名の学生増が見込まれるわけでございます。  その次は大学学部の学科新設でございますが、京都大学の原子核工学以下十五学科増設考えております。その次のページに入りまして六番目、医学歯学進学課程設置、これは東京医科歯科大学の医学進学課程を千葉大学から移してくるという考えでございます。  付属研究施設新設といたしましては、それぞれの研究の発展に応じまして新たにここに記してございます研究施設を作る考えでございます。  八番目の付属病院設置でございますが、鹿児島大学におきまして県立の医科大学の合併を進めて参りまして明年度病院を吸収することになりました。鹿児島大学医学部の付属病院を新しく設置することになりました。  その次は講座増設研究部門増設等考えております。  なお最後に理工科系の学生につきまして約一千七十四人の増募を見込んでおります。  これらを含めまして所要経費三百九十九億八千三百万円を国立学校運営費として計上いたした次第でございます。  その次は育英及び学徒援護事業費でありますが、最初の育英会の補助金、これは事務費でございますから大したことはございませんが、次の三ページに入りまして、育英会の貸付金でございます。これにつきましては資料の八ページに中身がございます。新しい事項といたしましては、高等学校の奨学生につきまして新たに進学保障制度という制度を立てまして、従来の学生のワク以外に五千名、三千円の奨学金を貸し付けることになっております。これは一般の奨学生が千円でございまするが、特に優秀にして経済的事情に困る生徒に対して三千円を貸し付け、原則として上級進学まで保障していこうという考え方でございます。そのほか大学院の博士課程に六千円及び一万円と二口の奨学生がございますが、一万円の奨学生の数を約六百人ふやすということをおもな内容にいたしております。  それから事項別表の9の社会教育振興関係の経費でございますが、ここで特に申し上げておきますことは、青年の家の補助というのが新しく六千万計上されております。これは従来青少年の家ということで私たちの方で二十数カ所地方団体に設置してできておりますが、この規模と内容充実して明年度これを拡大したいということで、新しく六千万円計上いたした次第であります。  スポーツ関係におきまして、明年度は五月にアジア競技大会が開催いたされますので、これに伴います国の補助金六千万円を計上いたしております。それから文部省に新しく体育局設置することになりまして、その所要経費計上いたしております。それから国立競技場建設及び運営費補助でございますが、前年度約十三億をもちまして神宮の競技場を改築して国立競技場を建設して参りましたが、これはアジア大会に備えまして五月に竣工いたします。その明年度にかかります工事費とそれ以後の運営費をここに約一億計上してございますが、設立後は特殊法人を設置しましてその法人にこれを管理させる考えでおります。  それからその次の国立西洋美術館創設の経費でございますが、松方コレクションの美術品の受け入れに備えまして、上野に美術館を創設する、前年度一億五千万円でございますが、明年度から建設費を加えまして明年度中に建設し運営を開始したいと考えております所要経費でございます。  それから十番目の私学振興に要する経費としまして、さき科学技術の方で申し上げました大学研究設備あるいは理科教育設備以外にここに二つの事項を掲げてございます。一つ私立学校振興会資金でございます。明年度五億を計上いたしておりますが、これは当初この計画に従いまして五十億出資という線がございまして、この五億をもって一応終了する考えでおります。  次は私立学校教職員共済組合補助金でございますが、これは長期給付の分につきまして百分の十五という法律の規定がございます。それに基きました補助事務費補助計上したわけでございます。  国際文化の交流の事項で特に申し上げますことは、外国人の留学生の招致関係でございます。年度当初在留いたします留学生は九十五名でございますが、明年度新たに七十名を、主として東南アジアでございますが、招致しようということを予定いたしております。  最後の学校給食助成でございますが、最初学校給食施設設備費補助金、これは義務教育関係でございますが、特に申し上げることはございません。大体学校の増を見込んで一億五千九百万円を計上してございます。次に学校給食会の補助金、これも特殊法人日本学校給食会に対する事務費補助でございます。最後の食管特別会計繰入金は資料の九ページの14にございます。学校給食用のパンの原料費に対しまして国が財政補助をいたしておりますが、その所要経費十四億八千万円でございます。これは食糧管理特別会計に繰り入れまして操作されることになっておりまして、従来農林省の一般会計計上されておったのでございますが、本年度から文部省所管に変えて計上いたすことになりました。前年度に対しまして一億八千万の増を見込んでおりますが、これは給食の所要量の増を見込んだためでございます。  ユネスコ活動の促進のことにつきましては特に申し上げることはございません。  十四番目の文化財保存事業の強化でございますが、この中で申し上げますことは、一つ国立劇場設置の問題でございます。国立劇場設置につきましては明年度やはり準備費といたしまして千六百十五万円を計上いたしております。それから日本の古美術の海外展覧会開催に必要な経費八百四十万円、そのほかは国有文化財の保存修理費あるいは防災施設費補助を見込んでおります。  以上合計いたしまして文部省所管一般会計千五百四十一億五千三百万、前年度に対しまして八十三億八千七百万の増になっております。  簡単でございますが、以上で補足説明を終ります。
  6. 山本勝市

    山本主査 質疑の通告がありますので、順次これを許します。周東英雄君。
  7. 周東英雄

    ○周東分科員 私は、二、三、根本の問題について、実は文部大臣のお考えを聞きたいと思っておりましたが、大臣は御病気のようでお休みであり、社会党の諸君も主として大臣にお尋ねするそうでありまして、大臣が御出席にならなければ質疑が進行せぬというような話もありますので、与党といたしまして、その間において私が申し上げることで、根本に触れる問題があれば、一つぜひ大臣にお伝えを願って、適当な機会にお答えを願う、こういうような考えで質問を進めたいと思います。  教育というものが国の興亡に密接な関係を持つということは申し上げるまでもないのであります。幸いにして、終戦後におけるあの混乱時代からいたしまして、今日顧みますと、経済、産業の方面については、満足ではありませんが、ともかくも著しい、目ざましい復興といいますか、復旧を示しております。しかるに、精神方面と申しますか、国民のものの考え方というような方面においては、むしろまだ非常に混乱しているんじゃないかというふうなことを思いますときに、教育に対する施設指導のやり方が将来に対してどんな影響を持つかということは言わずもがなのことであります。ある人が——経済界の人でありましたが、雑誌にこういうことを書いております。日本はもはや経済復興ということよりも、精神復興という方向に今後進まなければならぬということを言っていたのを私は読みました。このことは、一部でよく言われるように、そういう精神復興とかいうと、すぐに封建的に返るんじゃないかとか、あるいは逆コースだとかいうようなことをよく言う人がありますが、私は必ずしもそういうことを意味しているんじゃなかろうと思う。  思うに、戦争中及び戦前における日本の指導者の考え方というものは、ともすると、個人の人格といいますか、個に対する人格の尊重ということが実に軽くて、よく攻撃もされたんですが、戦争中は、人間は一銭五厘のはがきを出せばすぐ来るけれども馬はそうはいかぬということさえいわれたほどに、個に対する尊重の観念というものは非常に少かったんじゃないか、これは認めなくちゃならぬと私は思います。しかるに戦後における状況はどうかというと、集団社会に対する公共性の観念はほとんど捨てられてしまって、個の方が重んじ過ぎられているということは、私は考え直さなければならぬときではないかと思う。個人の人格なりその人の自由というものは十分尊重しなければならぬけれども、社会の構成されておる現在においては、やはり社会があっての個だと思います。十分に個人の人格、自由というものを尊重しつつ、社会の安寧秩序、繁栄というものに対する考えは、集団的な個の問題に対してはよほど考えていかなければならぬ。戦前と戦後の違いは、戦前は個を非常に軽んじて、社会性を重んじ、個はどうあってもいいという考えが行き過ぎておったと同様に、戦後の状態というものは、あまりにも個人というものの関係を重んじ過ぎられて、社会、国家というものに対する集団安全といいますか、あるいは繁栄というものが軽んじられているのじゃないかと思う。これはやはり教育の問題に重点を置かなければならぬということを意味して、精神復興ということを言っていると私は思う。最近において出ているいろいろな問題は、ある立場、ある集団、あるグループの利益というものの追求に急にして、国家社会の利益というものが軽んじられているということが非常に表に出てきておるのじゃないか、こういうふうに思いますときに、現松永文相はそういう点におそらく思いをいたされて、道徳教育の尊重ということが一つの表われ方として出ていることは、私はけっこうだと思うのであります。  ただここに、道徳なりあるいは理科系の学問を重要視して、これに対して予算を盛ったという説明が、先ほどありました。一体どういうようにしてこれを推進されるかということを実は聞きたいのです。道徳教育及び理科教育重要性にかんがみて予算を増加して、そうして現職教員の再教育をするということかもしれません。これはよほどしっかりやってもらわなければいかぬ。一体こういうふうなことについて、今日小学校の先生も、中学校の先生も、大学の教授は別として、われわれの将来の国家を背負う第二国民の教育に携わっている小学校の先生というものが、果して道徳教育をやっていくしっかりした人格と頭ができておるかどうかということに対して、一体どうお考えになっておるか。これに対してここに再教育をやるというなら、どういうふうな方法でおやりになるのか。これをまずお伺いしたい。
  8. 臼井莊一

    臼井政府委員 ただいまの周東委員の御質問は、教育の根本に触れる重大な問題でございまして、大臣からお答え申し上げるべきでございますが、本日大臣病気のためお見えになりませんので、いずれまた他の機会に大臣からお答え申し上げるようにいたしますが、一応私からお答えを申し上げたいと思います。  実際仰せの通り、日本の教育は明治の初めから非常に普及いたしておりまして、従って無学文盲率においては、世界の五十三カ国を調べて見ましても、フィンランドの次に位する二番目にまで、非常に普及しております。また就学率におきましても九九・七%という、これは世界でも一番いいというくらいに普及いたしております。明治時代からこういう非常にわが国の教育が熱心であったということのために、戦後のあの混乱も平穏にまあ一応切り抜けた、そして世界でむしろ驚くくらいの産業上の復興を来たしたというこの原因は、私は日本の教育が非常に普及して、また高度に進んでいた、こういうことに根本原因があると思うのでありますが、ただしかし深さの点になりますと、御承知のようにまだまだ欧米各国に劣っております。これはアメリカと比べましても、国民所得がアメリカの八分の一ないし十分の一といわれる日本の経済の点から、財政上の理由からして、生徒一人当りに対する費用というようなものにつきましては、これまた八分の一くらいないし十分の一くらいの費用でございまして、設備にいたしましてもまだ不十分でございますし、従って科学においては現在欧米の先進国に比しては十年もおくれている、こういう点が今後わが国として考えなくちゃならぬ点だと思います。  今回三十三年度予算におきましても、科学に重点を置いたというのは一つはこの点にございますし、さらにすし詰め教室などもできるだけ解消していこう、こういうことに努力をいたしておるのも、やはり同様の理由でございますが、ただ御質問の精神面の復興ということになりますと、なかなかこれはむずかしい問題でございまして、戦前教育勅語を中心として、国家を中心、天皇を中心考え教育というものが、敗戦によって主権在民に変った。憲法もこれをもととして変った。教育勅語も、これは教育には用いない、こういうことになりまして、教育が精神面の指導においては非常に戸惑ったということは事実だと思うのであります。一応民主主義ということには方向づけられて根本になっておりますけれども、この経験に乏しいわが国として、そこに民主主義の解釈、また自由主義の解釈なり、個人主義の解釈という点で非常なまちまちな統一せられない点があったために、精神面における混乱というものが非常にあったのじゃないかというふうに考えられております。自由というと、自分のわがままを通して人の自由というものをとうとばない、あるいは個人ということに重きを置いて、家庭においても親などに対しても一向かまわぬということが当りまえだというような、間違った個人の解釈が往々にして見受けられるのでありますが、こういう点につきまして戦後十二年たった今日におきましては十分反省して、ここいらでそれらの面についても何とか将来のもう少し確固たる信念に基いた民主主義の教育ということが考えられることも当然かと考えるのでありまして、定めし大臣におかれてはそういういろいろの抱負をお持ちだと思うのであります。今回予算の面におきましても、道徳教育の点につきまして現職教育を行う、理科教育におきましても先生の現職教育を行う、これは敗戦後において財政の困難な際に六カ年間の義務教育を九カ年間に延ばした。これが非常な無理を伴ったのは当然でありまして、これが今日いまだにすし詰め教室等が問題になる一つの大きな根本原因でありますが、しかしそれにしてはよく今日まで一応義務教育を完成しつつあることは、国民の非常な努力と教育に熱心なるたまものであるというふうに考えております。そこでただそういうふうに急速に三カ年間の延長をしたために、校舎ばかりでなく教員の不足を来たした。そこで、それでなくても先生が戦争の犠牲によって非常に足りなくなっているところに、義務教育三カ年延長ということになりましたので、これを統計的に見ましても、幼稚園を初め、中学校——中学校義務教育になりましたから全部でありますが、高等学校にしても大学にしても非常に学生がふえております。計数的にはもうわかっておりますが、非常なふえ方でありまして、これはわが国の教育のために、将来のために非常にけっこうでありますが、それがために優秀な先生に不足を来たした。そこで義務教育におきましても臨時免許等を与えて、本来であれば先生の資格としてはいかがかと思われるような方にも先生として学校にお働きを願うという点ができました。その後はさらに進んでそれらの先生が勉強もされ、資格もとられて正式の免状をとられた方もたくさんありますが、しかしそういう点でまだ相当の面においてここらで現職教育を行なっていくべき面があろうかと思いますが、これらの点において従来多少予算の面で足りない面がありましたので、今回これを学校におきましていろいろ問題もありますが、ただ社会科の中に地理、歴史、道徳を一緒にやるということ、さらに全科を通じてやるという道徳教育は、これは当然でありますけれども、ただ生徒もつい窮屈できらう、それから先生もつい生徒のきらうことはおっくうになるということになると、全科を通じて行なっても何となく中心がずれて薄いというようなことが過去の道徳教育において、学校においてあったのじゃないかという点も考えられますので、そこで教育課程審議会にかけまして慎重に研究した結果、特設時間を一週一時間設けて、そうして道徳についても先生と生徒とがお互いに反省をして、御勉強を願う、こういう方法を四月からとることになりました。従ってそれに対する準備もできるだけ十分いたしたいというので、今仰せのように教員現職教育、特に三十三年度においては一つ道徳問題について研修を行いたい、かようにいたしましていろいろ予算等を考えて組んだ次第でございます。  一応私からお答えを申し上げます。
  9. 周東英雄

    ○周東分科員 次官からお答えがありましたが、一応けっこうであります。私の尋ねておるのは、先ほども申し上げましたように、主として戦前戦後における国民の考え方というものが違ってきているのだ。戦前はあまりに個人をないがしろにして、ずいぶん人間の自由も個人の自由も奪って、すべて国家本位に考えてきた。ここに大きな行き過ぎがあったのだ。ところが今度戦後においては反動的と申しますか、急速に個人の人権、個人の自由というものが出てしまって、一部個人の利益というものばかりが主張されて、社会国家という全体的の利益というものが無視されてきているのじゃないか、そういうところに一つ教育の方向を向けられるべきじゃないかということを前提に置きつつ、そうしてこの道徳教育をやるとおっしゃるならば、どういうことをやるのかと聞いたわけです。もう少し補足して申しますれば、長幼序あり、あるいは親というものに対して孝行することもけっこうだ、これはやるべきだと思うのです。しかしながら何も国家に、君に忠という教育勅語というような復古調をやれとは言いません。しかし今日の日本の社会というものは、やはりナショナルというか、日本の国というものに対しては、国の安全性とか、あるいは国の繁栄ということは国民全体がしっかりと把握しておかなければならぬだろう。何だかいつの間にやら日本の国はどうでもいい、よそを祖国と言うような者が出てくるというようなところに、私は一つ教育中心が置かれなくちゃならぬじゃないかと思う。決して私どもは復古調によって何とかしようということを言っておるのじゃないが、しかしあくまでも今日社会を構成しておる個であるけれども、社会全体の安寧、繁栄というものの上に立ってものを考えるということは、これは私は当然なことだと思う。そういうところが抜けておって、たとえば、この間われわれの同僚が予算委員会でもお尋ねをいたしました。たしか川崎君であったと思いますが、ともかくもああいうふうな日教組の動きが教育関係にしてもある。そうして出勤簿だけは押しておって、大いに勤務評定に反対とかいうことをやっておる。一体われわれの次の時代を背負う第二国民の教育に専心してもらわなければならないものが、いわゆる経済闘争にあらず、政治闘争に終始しておって、出かけて行って、父兄もまたこれに対して何ら疑いを持っていないということは、ここに社会というものの全体を考えないで、やはり集団的なある者の利益を考えた形の、何か知らぬがその方がいいというような考え方を持たれておるのじゃなかろうか。私はむしろ教室とか教育の行き方だけで指導するのじゃなくて、身をもって範を示すというならば、ほんとうにわれわれの次代の国民を今の方向へ持っていこうとするならば、そういうような反道徳運動や政治運動に身をやつすというような形は、多かれ少かれ、小さい第二の国民の頭にはよい影響を与えないと思う。そういう点についてしっかりと文部省考えたらいいのじゃないか。私どもとしては、教員の方々に対しても、決してこれを弾圧せしめろとかなんとかいうことは言わない。しかし正しい道において、第二国民の教育に専心してもらうような方向に持っていくのがいいのじゃないか、そうして、ほかのものは別個の形で要求してもらう。その意味においては、ここに義務教育国庫負担法も出ておりますが、私どもは、目前の予算というものが必ずしもこれで十分満足とは思っていないのであります。財政の問題もあるわけでありますけれども、何とかしてぜひ義務教育関係については国が大きく持って、後顧の憂いをなくしておいて、どうか一つ日教組のような関係に入らないで、専心教育に従事してもらいたい。これが道徳教育に専心できる道をこしらえるゆえんじゃなかろうか。ああいう労働争議だとか政治運動をやっているのをそのままにしておいたら、何ぼ道徳教育でいいことを言ったところで、子供はついてこないのじゃないかというような気持を持っているのです。そこで、個を尊重し過ぎている今日、社会あるいは国家の利益というもの全体をよく考えないで、特別な関係だけに片寄っているのじゃないか、そういうときの教育を元に引き戻しをするという面は、文部省はどういうお考えを持っているかということが聞きたい。
  10. 臼井莊一

    臼井政府委員 ただいまの周東分科員の御質問は重大な問題でございますが、ただ私どもたとえば道徳教育を時間をとってやるということになりますと、しからばその内容をどういうことを教えるかということにつきましては、これは教育課程審議会あたりの専門家の先生、また学者等の意見を聞いてやらなければなりません。少くとも戦後のわが国においては、ことに憲法の新しい考え方に基く行き方ということも必要であります。しかしながら、国というものは、個人が社会生活を営む、また自由を守るという意味においてやはり必要があるのでありまして、決して国家なり社会なりを無視して、個人だけが存在するということはあり得ない。従ってやはり長い間の伝統ということもあわせて考えていかなければ、その国々のそれぞれの歴史なり伝統というものがあるのでありますから、それを無視して個人の教育というものもあり得ないのではなかろうか。ただそこに時代の推移がありますから、新しい時代に応じた行き方というものをもちろんこれに加えていく、かように考えるのであります。ただ戦後は、お説のように戦前の行き過ぎた超国家主義の点が非常にわざわいがあった、そこで今度は反対に、国というものを無視するような、あまりに個人重点主義に陥る点がなきにしもあらずである。そこで、適当に国なり社会なりと個人とが調和できるような社会、国のあり方、これを教育の面でどうするかということが今後大きな問題だと存ずるのであります。これらの内容につきましては、それぞれ調査機関あるいは諮問機関等で研究いたしておりますし、また内藤初等中等局長からこれについてはお答え願いたいと思います。  いろいろ日教組等のお話もございましたが、日教組につきましては本来職員団体でありまして、勤務条件とか俸給の問題等に関して交渉するというのが建前であるはずが、多少そこに行き過があるというところに問題があろうかと思うのであります。私どもとしては、教育の秩序というものをやはりこの際確立する必要がある、こういう点は考えておるのであります。これは今お話しのように、個人にしても、社会の秩序、国の秩序というものを考えて、これに基く調和のある教育というものが必要であると同様に、ことにその教育におきましては、第一に教育界そのものの秩序、教育のやり方についての秩序、機構についての秩序と、いろいろの問題がございましょうが、戦後の多少混乱している面から脱却して、教育の秩序を立てたいということだけははっきり申し上げてよろしい、かように考えております。
  11. 周東英雄

    ○周東分科員 その点はけっこうです。私はその点が一つの新しい教育の方向になると思う。つまり教育の秩序を正していくということ、また教員のその他の要求については、要求として別個にいろいろ考えてあげるということは必要でありますが、ああいう形で集団闘争を行なったり、これが政治闘争になるような形を見捨てておいて、そうして子供に対して道徳教育をしても始まらぬじゃないか。これも一つ道徳教育の本筋だと思う。つまり社会、と個の調和、調整というものがあるはずだ。そういうことを文部省は見のがしておいて、自由にさせておいて、そうして先生があっちに行ったりこっちに行ったりしてきょうも休み、明日も休みということになると、子供はどういうことを言っておるかというと、きょうもストライキごっこだ、こういうことでは大きな教育上の問題だと思う。私どもは、この問題についてはすでに党派をこえて深刻に考えねばならぬ時期にきていると思う。そういう意味において私はお尋ねしたのですが、どうやら社会党の諸君も大臣でなくても、次官がおられるなら質問されるということですから、今中継ぎとして私はやったので、いずれ大臣に対して私は個人としての質問を申し上げたいと思いますから、きょうはこれで打ち切って、あとに留保しておきます。
  12. 山本勝市

    山本主査 では内藤初中局長から、補足説明をしたいとのことでありますから、これを許します。
  13. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ただいまの問題でありますが、私ども、ただいま行われておる教育内容昭和二十六年の占領中にできたものでございますので、これにつきまして、わが国が独立国家となって新しい国際情勢にもなっておりますので、民族の独立と国家の繁栄、こういう見地から、国際社会において信頼と尊敬をかち得るに足る日本人の育成、こういう点に大きな目標を置いて、全面的に教育内容を検討しておるわけであります。特に日本の歴史なり地理なり、日本の文化なり、日本の伝統なりを十分身につけて、しかも国際社会において信頼と尊敬をかち得る人間を育成する、こういう日本人を養成するということに主眼を置きながら、一つ道徳教育一つ科学技術教育この二つの柱を中心に、ただいま教育内容の全面的な検討を続けておるわけであります。で、三月の中ごろまでには大体検討の大綱が終るつもりでありますが、それに基きまして、学習指導要領の改訂、さらに教科書の改訂等が行われまして、昭和三十六年度から新しい教育内容に即応した態勢ができる、かように存じております。もう一つ道徳教育につきましては、先ほど政務次官からお答えがありましたように、大体時間を一時間特設する、これにつきましては今本年の四月から間に合うようにそれの手引書を作りたい、かようなことで研究いたしております。なお本年度予算に四百万円計上されておりますので、全国各府県に道徳教育の趣旨の徹底の講習会を開き、各学校から一名ずつ参加いただきまして、そして文部省の手引書を中心に十分説明するように努力いたしたいと考えております。  なお教員諸君の問題につきましては、一応すし詰め学級の解消等をはかりまして、学級規模適正化を期し、さらに教員の定数を確保することによって、教員に首切り等の不安が起きないように、義務教育水準維持向上する方策を一方に立っております。同時にただいま政務次官から申しましたように、行政面における秩序の確立、これはたとえば学校管理規則とかあるいは勤務評定の励行等、十分に秩序の確立に邁進いたしたい、かように考えております。
  14. 山本勝市

    山本主査 辻原弘一君。
  15. 辻原弘市

    ○辻原分科員 先ほど周東さんも言われました通り、文教の問題は、主として大臣の施政にかかる重要問題が今山積いたしておりますので、大臣の御出席を願っていろいろ根本的な問題についてお伺いをする予定でありましたが、御病気で本日出席がございませんので、重要な問題はいずれ来週早々の分科会で大臣の御出席を願いまして、お尋ねをして参りたいと思います。  本日は非常に当面している緊要な問題の一つであります南極本観測の問題につきまして、責任者の方々から、今後の方針なりあるいは今日までの経過あるいは今後の措置、こういうものについて承って参りたいと思います。統合本部の稲田副本部長、それから海上保安庁の方も御出席でありますので……。  昨日私はラジオ放送で聞いたのでありますが、特別発表といたしまして、観測本部から現地における宗谷の行動が非常に重要な段階に到達をしていわゆる本観測が今後ほとんど不可能な状態に立ち至った、断念せざるを得ない状態に立ち至ったという御報告があったのでありますが、まずこの緊急発表についての決定をされました諸般の情勢について、簡潔に稲田さんの方から承わりたいと思います。
  16. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいま御質問の点でございますが、このほど中皆様に非常に御心配をかけております問題であるわけでございますが、すでに御承知のように、宗谷が本年の極地の非常な予期いたしません気象状況ないし気温、海流等の諸条件から、ついに米国のバートン・アイランド号の援助を要請いたしまして、バートン・アイランド号とともに昭和基地になるべく近接しようとして、先般来努めて参りましたが、現在、昨日までおりました地点より近接することが困難となったことは、先日来の状況であったわけであります。その後引き続きまして、いろいろ計画を立てまして、最初計画よりも隊員の人数を縮小いたしまして、八名程度の人数を本観測に従事せしめるために越冬せしめる目的で、あるいは航空機をもっての輸送、あるいは氷上雪上車を利用しての輸送等を種々研究いたしましたが、その後引き続いて好天気に恵まれない状態でありました。しかしそのうちにおきましても、とにかく第一次越冬隊十一名を無事航空機をもって収容し得たのでありますが、その後八名を新たに送り、またそれに必要な物資を送るというような点につきまして、天候の回復を待っておった様子でございますが、昨日朝に至りまして、隊長から連絡の電報が参りました。それによりますると、大体現在第二次越冬隊として三名を送り込んで、もっぱら航空機によって物資の輸送に従事いたしておったのでありますが、なかなか天候の関係でそれが困難でありますので、まずその三人をできるだけすみやかに船に収容いたして、その後宗谷及びバートン・アイランドは、その現地の氷状から見て、一刻も早くその地点を離脱しなければならない。それから第二に離脱をいたしまして外洋に出ました場合においては、さらに東方に進入路を見つけまして、もしその距離が現在の宗谷と昭和基地との距離以上に短い地点であり、しかもまたその付近にそりを用いて航空機が発着可能な場所があり、しかもさらにその地点というものが、宗谷及びバートン・アイランド号が仕事の後安全に離脱できる地点である場合に限って、縮小いたしました八名の越冬隊を新たな地点から送り込むことを試みたいという連絡があったわけでございます。その連絡のうちにも、こういう状況であるので、越冬隊残留不可能の公算が増してきたということを申しておったわけであります。われわれといたしましても、当日午後総会を開きまして、これらの報告及び気象庁に集まっております資料、海上保安庁にあります各種の資料等から種々検討いたしました結果、まあ隊長の報告に掲げております処置を了承いたしたわけであります。すなわち第一に、現在昭和基地にいる三名の隊員をなるべく早く収容して、現地を離脱して、外洋に脱出する第二にその後さらに隊長のあげたような適地があって、安全かつ確実に昭和基地に空輸可能な場合には、第二次越冬隊の残留に努力する。右のような好条件がない場合には、本観測は断念することもやむを得ないという方針を決定いたしまして、現地にも連絡をいたした次第でございます。なお今朝までの間におきましてこの三名の隊員は航空機によって無事宗谷に収容いたしまして、宗谷及び、バートン・アイランド号は停泊地を出発して、東北方に向けて出発したという報告があったわけであります。途中現在相当困難に当面しておるようでございますけれども、われわれとしては一刻も早くこの氷原を離脱して、できれば次の行動にすぐとりかかってもらいたいと念願しておるのが現在の状況でございます。
  17. 辻原弘市

    ○辻原分科員 昨年の予備観測の成功から、本年の本観測についておそらく全国民がその成功を期待しておったと思うのでありますが、それが今日残された若干の道はあるにいたしましても、ほとんど絶望視せられるような状態に至りましたことはまことに遺憾であります。現地において活躍をされておりますところの隊員の方々の御苦労あるいはこちらにおられてこれを援助されておる方々の御苦労はもとよりでありますが、これにかなりの国費をかけ、あるいは国民の各方面からの応援の資金等をも受けまして行なった観測であるだけに、われわれとしましてただ単にこれは失敗に終ったということでは、何がしか割り切れない問題が残るのであります。そこでだんだんとお伺いをいたしたいのでありますが、今の御報告によりますと、また昨日来の新聞の報道等を見ましても、残された道はすでに宗谷並びにバートン号は離脱を開始して、東北方からあらためて進入する、その進入をいたしました場合に、現地の模様を伝えておるところを聞きますと、結局航空機による物資輸送あるいは残留越冬隊員の輸送の道しか残されていないということでありますが、果して東北方から進入をいたしました場合に、まず十のうちどの程度の公算があるのか、私どもはだんだんその後明らかになって参りましたいわゆる南氷洋あるいは南極地帯の気象状況その他から、しろうと目に観察をいたしましても、きわめて困難な条件に置かれておるのじゃないかと判断をするのでありますが、あと一週間の勝負だと、こういうふうに申し述べられておりますが、どの程度の一体可能性があるのか、またこれをもちろん現地のバ号の協力を得まして打開の策におそらく苦慮されておると思うのでありますが、何かはかに最後に残された道について、この一週間に救援その他打つ手がないものかどうか、この点について観測本部としてはどういうふうにお考えか。ただ現地の措置は、天候の奇跡的転換と申しますか、そういうものにゆだねて傍観をしなければならぬという状態でありますかどうか、その点について承わっておきたい。
  18. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 おっしゃる通りでございまして、本年は去年に比べますと、非常に気象状況が悪いのでございます。たとえば一例を申し上げますと、気温は去年の一月末、二十三日ごろから三十一日ごろまでは大体プラスだったのであります。ところがことし気温がプラスになったのは、ほんの一日か二日でございます。非常に少い。それから去年は水温が、これから一週間おくれて二月一日ごろから七月ごろまでプラスになりまして、それから十日ごろまたプラスになりましたが、今年については水温がプラスになったということはほとんどございませんで、大体よくて零度前後くらいにしかならなかったような状況でございます。それから各地で、非常に悪いので、砕氷船が閉じ込められた例を申し上げますと、日本の昭和基地から西の方約三百海里くらいのところにベルギーがことし初めてブライド湾というところに基地を作りましたが、そこに一月の十二日から砕氷船二隻がずっと閉じ込められておったようなわけでありまして、ごく最近二、三日前にその氷が割れまして、その二隻が出た、こういう情報を得ておるわけでございます。それから日本の基地から東の方約六百マイルのところに豪州のモーソン基地がありますが、そこでもまた二千百トンばかりの船、宗谷よりも小さいのでありますが、これがずっと氷に閉ざされているという状況でございます。それからアメリカのウエストウインドという砕氷船がまた閉じ込められておる。それから南極一を誇りますグレイシャーという砕氷艦も、非常に氷の状況が悪くて、スクリューの横を損傷させまして、ニュージーランドで修理しておった、こういうふうな状況でありますので、全般を通じまして、今の現実的な気温、水温、なお風のことを申し上げますと、リュッツオフ、ホルム湾では南の風が吹きますと、大へん寒い風ではありますが、しかし北の方へ押し流されるので、いわゆるクラック、割れ目ができるわけでありますが、南の風が非常に少くて、東の風、また東北の風というのが吹きまして、非常に天候が悪かった。それからまた実例で申し上げますと、昨年の場合は南の風も多く吹き、天候がよかったので、宗谷もヘリコプターをずいぶん便っておりまして、実は私の方の中央では、少し使い過ぎるから押えようとしたくらいよく使ったのでありますが、ことしはそういうふうに霧、または雪の天候が非常に悪いため、なかなか使う機会が少かったというような実際の状況から見ましても、ことしのリュッツオフ、ホルム湾の状況は非常に悪いのであります。  そこで今のように外洋に出まして、東の方へ回るわけでありますが、大体ここのリュッツオフ、ホルム湾の海流は東から西へ流れておりますので、氷原がだんだん西の方へいっているわけでございます。そこで西の方にはクック半島がございますので、そこに押しつけられる。東の方にはプリンスオラフ・コーストがございまして、その地図でごらん下さいますと、プリンスオラフ・コーストの方からずっと西の方へ流れますので、東経四十度線あるいは四十二度線くらいには割れ目ができる自然の道理なのであります。そこで一応外洋に出て、この割れ目が多分できるであろうから、この割れ目をもう一ぺん入っていく試みをやろう。そこでやバートンアイランドは三メートル六の砕氷能力もありますので、これと大いに協力して外洋まで行ってみて——とても昭和基地まではいけませんけれども、ここからなるべく短距離のところを選んで昭和基地に航空輸送をしよう、こういうようなことでありまして、別にこれというきめ手があるわけでもございませんが、幸いにまだ宗谷も燃料がございますので、外洋に出たらできるだけそういう試みをしてがんばってみよう、こういうふうな状態でございます。
  19. 辻原弘市

    ○辻原委員 今長官の御説明によりましても、結局は気象状況の変化に頼る以外には、あと残された東方よりの進路に対する期待は望み薄し、こういうふうな判断をせざるを得ないのであります。そこで私は、現地の問題をとかく申しましても、おそらくあらゆる努力を払っておられることだろうと思いますので、それに期待する以外、当面の措置の問題はそう知恵は出ないと思うのでありますが、ただ私は今後の問題として、きわめて重要な問題をはらんでいると思いますので、それらの点について承りたい。今長官も申されましたが、南氷洋における気象状況の把握であります。今水温について、昨年はプラスの日がかなりあった。しかし本年は進入時期に当っている一月から二月の中旬に至る間においては、プラスの日がほとんどなかった、こういうお話であります。また先ごろ発表された資料を見ましても、霧あるいは雪、こういう気象状況を見ましても、昨年度は一月から二月の中旬に至る間においては、それら濃霧あるいは雪に災いされた日数が約二五%、本年はそれに比較をいたしまして四〇%、きわめて悪い気象条件下に置かれている、こう言われているのであります。ところが私どもがいろいろ関心を持って聞いてみますと、むしろ昨年の気象条件はきわめてまれな好条件に置かれて、本年のごとき状況がむしろ南氷洋における大体平均化された気象条件ではなかろうか、こういう判断も考えられるのであります。去年の予備観測の成功は、もちろん諸般の準備、現地における努力、そういったことにおいて成功を見たものでありますが、同時に非常に恵まれた気象条件の助けを得られたということが、私は大きな要素であったと思います。そういたしますると、今年が特に悪くて失敗したという場合と、こうしたいわゆる南氷洋の平均された気象条件の中における観測というものと、そういった場合における不成功というものは、非常に価値判断が違ってくると思います。考え方が非常に異なってくると思います。もしそのような気象状況が大体平均した場合の南氷洋の状態であるならば、私は少くともそういうことを相当量といいますか、相当量以上に考慮された諸般の準備、これはあらゆる資材、機材、またやる時期、こういうものについての考慮がめぐらされなければならぬ、こういうふうに判断するのであります。大ざっぱに申しまして、ことしは特に悪かったのか、あるいは去年が特によかったのか、こういう点についての判断は保安庁としてはどういうふうにされておるか。南氷洋の気象というものはきのうはよくてきようは実に予測できないような悪い天候になる。これは現地からのいろいろな報告に基く新聞発表を見ましても、二、三日前まではかなりよかった、しかしあくる日は猛吹雪に包まれておる、こういうふうなまことに変転きわまりないような気象状況を示しておりますが、それらを総合いたしまして、去年とことしの気象状況の判定は、科学的にどういうふうに考えられておるのか。また日本の観測といたしましては、去年からの経験でありますが、すでに先進各国においてはかなりの資料を気象条件において得られているはずだと思いますが、どう判断されておられるか、その点を伺いたい。
  20. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 一昨年宗谷が第一回に参ります前に、実は初めてそういうところに行くのはわれわれの方といたしましても大へん重大なことでございますので、その前の年に松本船長、山本航海長、重松機関長、この三人を急拠年末に捕鯨船に乗り込ませましてリュッツオフ・ホルム湾近傍までやったのであります。そのときの結果だけ申し上げますと、松本船長が帰りましての報告に、大体宗谷くらいで行けると思います。こういうふうな報告であったので、私は松本船長の報告を信じまして、第一回の観測に立ち向ったような次第でございます。そこで最初に松本船長が行ったときのこの辺の状況と、去年の状況というものはそう大して差異はなかったかとわれわれは実績から観察ができるわけであります。ところが去年とことしになりますと、格段の相違があるのであります。気温、水温の下る傾向は去年とことしと大体同じようなカーブをとって下っておるようでありますが、その下り方、つまり全体のラインが去年よりも格段に下である、こういうふうなことが言えるのでございまして、その意味におきますと、われわれ自身の取り得た資料によりますと、一昨年と昨年とことしと三回しかございませんけれども、それだけで言うと、前二年に比べてことしは格段に悪いということが言えるかと思うのでございます。しかしながらリュッツオフ・ホルム湾の資料というものは、御存じのように今まで歴史的に各国が接岸を試みて、どこの国も六回も七回もやって、ノルウエーもソ連もまた英国もみな行けなかったところでございますので、ここの資料はどこにもないわけでございますので、南極全体ということはとにかくといたしまして、ここの場所の資料がないので、何ともわれわれとしては申し上げにくいのでございますが、まずこの三年だけの統計をとる——というとどうもはなはだ学理的ではございませんけれども、この三年にとり得た資料だけで申しますと、ことしは相当悪かったのではなかろうか、こういうことが言えるのではなかろうかと思います。
  21. 辻原弘市

    ○辻原分科員 今の長官のお答えによりますと、リュッツオフ・ホルムの方の資料が今日日本のみならず各国にもあまりない、三年間の、経験に徴して特にことしが悪かったのではなかろうか、こういう判断をされておるようでありますが、私はこれは後刻の問題と関係がありますので、特にその点をお尋ねいたしておるのでありますが、何かしらそのお答えには不安なものを感ずる。非常に不安なものを感ずるのです。ということは、今もお話がありましたが、ベルギー船、あるいはノルウエー船等々がこのリュッツオフ・ホルムに進入をして七、八回の失敗をしておるというこの事実、この事実は何を物語るかと言えば、おそらくその船は宗谷に比較いたしまして砕氷能力、あるいは総トンにおいて劣っておる船だとは考えられないのであります。しかもそれらの船が行って従来失敗をしておる。そういう状況の中に宗谷が突っ込んで行ったわけでありますから、私はそこに非常な無理があるということをしろうと目にも考える。そこで気象条件の把握については、三年間で去年がよかった。その前も大体去年と同じ程度であった。ことしは特に悪いのだ。だからことしの悪いということを条件に置かずに、比較的それよりも希望的条件を備えて、そうしてそれに対応するというのでは、非常に不安なものを感ずるのです。そうじゃなしに、むしろリュッツオフ・ホルムの気象条件を把握するには、われわれが今まであなたの方で発表された資料に基いてほのかに見ましても、やはり相当悪いのではないかという感じが深いのであります。そういたしますとやはり比較的いいということを条件に置かず、この悪い気象条件下にある本年の経験に徴しての立案が今後の対策として重要であろうと思うのであります。この点については簡単でよろしゅうございますが、どうでございましょう。もちろんそれだけの慎重さはあるだろうと思いますが。
  22. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 先ほどのをもう少し補足させていただきますと、前にベルギーとかノルウエーとかその他が行った船は、実は宗谷ほどの実力のある砕氷船ではなかったのであります。現在でもベルギーなどは大体五百トンくらいの船しか使っておりません。というのはほかの基地はリュッツオフ・ホルム湾よりも着きやすいのであります。この間も新聞に出ておりましたが、私どもは行ったことがございませんが、ミールヌイのソ連基地などは非常に着きやすくて、基地のところにぴたぴたと水打っておるような海水面があるようででありまして、ここが特に割当てられた経緯は私なんかあとですから存じませんが、そういうわけでベルギー、ノルウエーが参りました船は、宗谷ほど能力のない小さい船であります。この点を一つ御了承願いたいのであります。  そこで本論に入りますが、去年出るときにああいうふうにひっかかりましたので、われわれは南極の全般の資料——これは英米の資料をずいぶんもとにしまして離岸の時期なんかを研究したのであります。そこで前から二月の初旬に離岸しなければいけないということであったのでありまして、それがいろいろな事情で十五日になりまして、それでひっかかったので、ことしも早く行って早く出てくるようにというので、十八日ばかり東京港を出港するのを早くいたしました。それからなお宗谷の砕氷能力を増すというふうな工作、それから宗谷の外観を、下の方を二重張りにするとかいろいろなことをして出したようなわけであります。しかしながら今回のように氷原に行くのにはスクリューをこわす。あれも実はスクリューは普通当ると曲るような金属でありますが。宗谷においてはもし曲ったならば、これは非常に危険でありますので、非常に硬い金属を便いまして、もし氷が当ったならばむしろこわれた方がいいから、そういうふうな意味でそういう金属も使い、いろいろな面において工作いたしまして出したようなわけであります。しかし今回そういうような支障もありましたので、またこの次参りますならば、そういうようなところも帰ってからはよほど慎重なる検討をして、修繕のときに手入れしなければならなくなるだろう、こういうふうに考えておる次第であります。
  23. 辻原弘市

    ○辻原分科員 気象条件、天候の工合、こういうものはできるだけ楽観的な観測は禁物であろうということを私は老婆心ながら申し上げたのであります。  それからいま一点は、今もお話が出ましたが、昭和基地そのものの問題でございます。今も長官の口からありましたが、ベルギーあるいは豪州、アメリカ、ソ連等々、各国の基地を見ましても、この昭和基地に比較いたしますると接岸についての可能性、あるいは進入あるいは海流の関係等々は非常に有利な条件に置かれているようにわれわれは見るのであります。その中で最も悪い進入路といいますか、悪い海流の関係の状態はやはり昭和基地に向う日本の場合でないか、こういうようなことを言われてもおりまするし、私自身もそういうように感ずるのでありますが、今もお話がありましたように、これにかけられた経費あるいは準備等から比較いたしまして、これだけの悪い基地に対して、各国に及ばないような成果を上げるということ自体、何かこれも無理のことがあるのじゃないかというふうに私も一般的に感ずるのですけれども、この基地設定についての経緯というもの、どういう形において行われたのか、それからたとえばロス湾との比較も新聞等に出ておりましたが、基地に比較的近い暖流をかかえておるならば、これは氷の工合が好転する見通しが非常に得られやすい。ロス湾の場合には約千四百キロ、ところがこのリュッツオフ・ホルムの場合には約二千百キロというふうに、それぞれ近接の基地を比較いたしました場合に、やはり明らかにそういう点の諸条件が悪いということであります。現地に赴いた観測隊の装備が、もちろん日本の国としてはかなりのことをやったのでありますけれども、膨大な資金量、膨大な何を持っておるアメリカ、ソビエトその他と比較いたしまして、もちろん日本よりも下のラインはたくさんありますけれども、しかしながらそれらと比較いたしまして悪い条件に置かれるならば、それに対応するだけの準備がなければならぬ。その準備がどうしてもそれだけ整わないならば、せめてそういった自然の条件に恵まれるような基地を何らかの形で打開をしてみるということも、これは一つの成功に導く大きな要素であろうと思う。いかなる経緯でこの昭和基地の割当を受けて設定をしなければならなかったか。現地に赴いてきわめて狭い範囲の選択しか現地の観測隊には与えられておらなかったというふうに私は考えられるのですが、そういうような万々の経緯を、これは本部長の方から御説明願いたいと思います。
  24. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいまの点でございますが、昭和三十年の夏ごろでありました。南極地域観測に関しまする国際会議がありましてわが国から東大の永田教授が参加いたしました。その際各国からいろいろ相談がありまして、日本も参加を勧誘されたわけであります。御承知のように南極地域にはソ連あるいはアメリカ、その他ノルウエー等々、今島居さんからお話のようにずっと戦時中からも手をつけております。それぞれもうすでに基地を持ち、勢力圏を持ち、いろいろやっております。それらの国々が参加いたしたわけでありますが、わが国もその十二カ国のうちの一カ国として参加いたします場合に、現在までわが国といたしましては足がかりを持っていないのでございます。そこで会議において勧められましたのは最初。ピーター一世島という島であります。これは島であります。し、日本の科学陣営をもってするならば、大陸あるいは大陸にごく近いところで参加いたしますれば、科学的の貢献が非常に偉大であるということは各国も希望しましたし、われわれとしても考えたわけであります。そこでわれわれとして、いわば残った地域において、しかも近接可能と思われるところを考えざるを得なかったのでありまして、その結果プリンス・ハラルド海岸付近というようなことで参った次第でございます。しからばそれに対しまして計画を立てる場合に、とにかく危険がなく実現が可能である、その上において計画を立てることはもちろんでございます。続いて同年の秋九月学術会議が時の政府に希望を申し入れ、さらに十一月閣議決定で参加を決定いたしますまでに、わが国の各方面の学者陣営が額を集めてこの問題について考究いたしました。その結果使う船といたしまして宗谷を決定いたしました。この経緯につきましては、第一は時日の問題でございます。予備観測に出発いたしますのは、翌年の秋である。もし一万トン級あるいはその前後の船を作るとなりますと、どうしても二年半程度の歳月を要する。従って、そういう新造船を考えることは不可能である。また用船ないし買船等の点につきましても、手を回していろいろ考えましたけれども、各国とも大きい船は大てい軍艦であります。また用船等で適当にわが国の意思において動かし得るものも見出し得なかった、そういう関係上、白竜丸、宗谷丸等を改造することを考究いたしまして、宗谷の改造を決定いたしました。そこで宗谷の能力ということを前提といたしまして、果して可能であるかどうかということを確かめるために特にただいまの船長松本氏を他の船に乗せまして、南極海付近に行かせました、またアメリカその他の材料を集めまして、ともかく宗谷程度の船で近接可能であるということをそのときにおいて検討いたしました。その結果出発いたしました予備観測は幸いにして到達いたしたのであります。二年間かくのごとき状況であり、本年は先ほど島居氏から説明されましたように、天候が昨年より非常に悪い。従ってこれは長い年月の資料ではございませんから、アレージがどの点であるかということは申しにくいのでございますけれども、去年がたまたま非常にまぐれ当りで、ことしが普通で悪いとは私ども判断する資料も持ち合せてないのでございます。そういう次第で宗谷を使用いたしまして、昨年一応成功いたしましたことも、また本年いろいろ御心配をかけましたけれども、われわれといたしましては、極力危険を排しつついたしましたことも、これまたわれわれといたしましては全然予期に反した結果とは考えたくないのでございます。それからさらに、これは学術的の調査であり、実験であり、探険でありますから、ことに未知の場所に参ることでございますから、いかなる条件を充足すれば絶対安全確実ということは言い得ないと思うのでございます。たとえば宗谷より大きく、今助力を受けておりますバートン・アイランド級の船であったらどうか。現にその船も協力していただいて、非常に困難しておられる。同型のアトカはスクリューを折っておる。あるいはグレイシャー号も先般故障を生じたというようなことであって、結局万全の用意、どうころんでも間違いない用意という点は、未知の世界の調査にはおそらく考え得られないものだと思います。しからば、そういう場合に、こういう学術的の国際協力に一体参加するかしないかという場合の私どもの腹は、あくまでも危険は冒さない、無謀はしない、どこまでも人命尊重、科学的に進退する、これは鉄則だと思います。もちろんその上において成功を希求するのでございますけれども、これは科学の実験であり、調査でありますから、不成功ということも不幸な場合にはあり得ないこととは考えていなかったのでございます。しかしどこまでも成功を選ぶか、不成功を選ぶかという場合に、危険を冒すか冒さぬかという問題があったならば、絶対に危険を冒さない道を選んでくれ、これがわが国の観測の基本方針として立てて参ったところであります。今日の状況は決して私ども残念に思わないことはないのでございますが、また将来成就するかもしれない機会はあるのでございますけれどもそうした次第で、最初から必ず成功を期したかと言われれば、今言ったような状況である。しかしながら人間に危険のない程度の装備と計画をもち、さらに船の弱いところは足の長い飛行機を持ち、あるいはヘリコプターを普通一機搭載するところを二機搭載するとか、あるいは氷上の長い輸送を考えまして、本年は特に八台の雪上車を用意するというように、船の能力は他の機関によって補う。さらにこれは国際協力の観測でございまして、日本もその意味で参加することでございまするから、あらかじめ各国とは協力の約束をいたしております。そのゆえにおいて、昨年はオビ号、本年度はバートン・アイランド号に喜んで協力していただいております。そういう意味合いにおいて、事の成就におきましても、危険の防止につきましても、われわれといたしましては単に船の力ばかりでなく、考え得るあらゆる用意をいたしまして臨みました点は御了承いただきたいと存じます。
  25. 辻原弘市

    ○辻原分科員 基地設定の経緯につきましては国際会議でプリンス・ハラルド付近ということが最終的にきめられて、現地においてその選ぶ範囲というものはきわめて極限をされておったようであります。その線に立って今日まで予備観測、本観測へと進んできたわけでありますが、もちろんきょうこの場所で、今回の本観測がいわゆる完全に絶望視されて、現地の越冬隊員が残せないという判断を下して、その前提に立っての議論を進めることは、現地の御努力に対しても私はいささか申しわけないような気がするのであります。するのでありますけれども、しかしもうすでに残しました三名の人々も収容して、船は出発をしておるのであります。先ほどからのお話によりましても進入路の選定、また今度残す八名の越冬隊を空輸によってやるということは非常に人的にも不可能な条件もわれわれ考えられるのであります。そこでもし最終的にそうした状態に至った場合、越冬隊員も残せないという状態に立ち至った場合、今後の問題としてどうするかということが出てくるわけであります。その場合に今稲田さんがお述べになりましたような経緯できめられた基地でありますけれども、しかしながらこれらは今あらゆる国際的な協力が——日本が求めると同時に、しかもまた日本も協力をしていくというそういう立場に立った観測でありますから、自体それが無理であるならば、私は基地そのものについて、あるいはプリンス・ハラルドというこの割当についても再検討をしてもしかるべきではないか。そういう点についてはもはや余地がないものか、あるものか、一体どうなのか。そういうことも今後の一つの考慮の要素として、今日本部としては検討せられておるのかどうか、この点を簡単に一つ
  26. 山本勝市

    山本主査 ちょっと申しますが、もう一人同じ問題の質問があるのです。時間的制約があるので、一つ準備があるとかないとか、結論だけ簡単に説明をしていただきたいと思います。
  27. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいまの本観測は政府で計画し、国会において予算で御承認いただいておりますのは、本観測中心とする前後三年にわたる計画でございまして、その後の計画につきましては現在持ち合せていないのでございます。
  28. 辻原弘市

    ○辻原分科員 それは私も今後の問題としてまたその点についてはあらためてやりたいと思いますが、先ほど言われましたように、必ずしも今回のこういう状態に立ち至ったことに非常に悲観をしていないというようなニュアンスのお話があったわけであります。もちろん科学的あるいは学術的に考えての成果というものは、私は非常に大きいものがあろうと思います。しかし一般の国民がこれを見ましても、やはり単なる探険ではない、いわゆる観測でありますから、越冬隊員を残して、それによって初めて国民はことしも成功したという印象と、さらにその成功に立脚して、国民全体がこの問題に協力しなければならぬというふうな気分が生まれると思います。ところが去年はソ連のオビ号に協力を求め、救援を求めてやった。ことしはアメリカのバ号に救援を求めてやった。この問題だけをとらまえてみましても、いわゆる国際的な協力、まことにこれは美しい話であります。しかしながら考えてみれば何かしら宗谷に物足らぬものがあるのではないかという印象を与えていることは事実だと思います。また現にバ号が救援に向った当時、正確かどうかは別にいたしまして、現地におられる探険団員の方々もそれについては若干の不満の色を示したという話も伝わっておるのであります。そういうことを判断に入れますと、やはりいろいろ求めて探したけれども、事実間に合わなかったから宗谷にきめたという経緯はわかりますし、これはまたかなりむずかしい問題があったに違いないと判断されるのですが、そうであったといたしましても、もちろん次官にお話のように、未知の世界に参ったのでありますから、絶対的にこれで大丈夫だというものはあり得ないと思う。ただ、それは相対的に可能不可能の問題を論ずるだけであろうと思います。しかしそれはできるだけ可能性に近いものをわれわれはあげていきたいという希望、そうすると今日の宗谷の能力、それと救援に向ったバ号の能力を考えてみましても、バ号は一万トンに満たないけれども六千五百トン、速力は平常十二ノットと発表されております。また救援に向つた宗谷と会合するまでの速力は、宗谷はあの氷海でも八ノットしか出なかった。しかしバ号の方は十二ないし十三ノットの速力で見る見るうちに近寄って来たということが、何か劇的に書かれておりましたが、そういうことを判断いたしますと、やはり能力は多々ますます弁ずであります。去年もことしも救援してもらわなければ動けなかった。おそらく現地の人々のみならず、国民の気持は何とかしてこの世界注視の探検を自力でもってやってみたいという希望は、もだしがたいものがあったに違いないと思う。その希望もわれわれはかなえていない。とするならば、やはりこれはないからだめだというのではなしに、日本の艦船建造能力を見ても、これは世界第一であります。その国において船がどうも間に合わないから、適当の用船もできないから、この程度で間に合わせたというのでは、これは何だかくしの歯が抜けたような気持に立つのであります。観測年の計画というものは本年までのものでありますけれども、しかし南極探検は本年度予算にも計上せられておりますように、今後やはりこれは考えて参らなければならない重要な問題であるだけに、一応それらを見合って、経験に徴してだめであるならば、あっさりだめだという結論を出して、より能力の高いものに切りかえていく。おそらく宗谷を改装するにいたしましても、去年すでに氷に対する抵抗力あるいは砕氷能力あるいは積載能力、こういうものはいろいろ改装を加えたと思う。これ以上の改装についてはもうかなり限界にきておるのではなかろうか、そういう立場から考えますると、別の観点で、やはり観測船というものを考慮する必要も漸次生まれつつあるのではないか、かように考えるのであります。一体本部としてはどういうふうに今後の措置についてお考えになるか。
  29. 稲田清助

    ○稲田説明員 先ほど申しましたように、前回は第一時間的の制約があって、予備観測に取りかかりましたし、予備観測から本観測までの間はさらに短い時間において考慮するという条件があって、現在に立ち至りました。もしこういう時間的の経過なしに、将来新たな観点においてやるかやらないかということを初めから考えるといたしますれば、お話のように、できるだけ大きな船を用意することが望ましいことはもちろんだと考えます。
  30. 辻原弘市

    ○辻原分科員 あと時間がないようでありますから、端折って聞いて参りたいと思います。今の次官の御答弁によりますと、あらためてこれらの問題を従来の経験にかんがみて検討する場合には、私が申し上げたように、やる船についても、あるいは装備についても、全般的な検討が得られるということでありますので、われわれもそういう心組みをして参りたいと思います。これは漏れ聞くところによりますると、金にしぶい大蔵省等も、この分についてはかなり言いなりに協力しておるという話もあるのであります。ですから、一つこれは観測についての成果を期待すると同時に、未知の世界へ人に行ってもらうのでありますから、やはり時間的制約その他むずかしい問題があろうとも、十分な準備が今後において期待されなければならぬと考えるのであります。  そこで一、二点ちょっとこまかい問題を先に承わっておきたいと思うのでありますが、今も私はちょっと触れましたが、今回のバ号救援の問題でありますが、いろいろなことが言われております。頼まぬのにやってきてくれたんだ、それは先ほどの国際協力もあると思うのでありますが、これは真相はどうなっておりますか。おそらくそういう場合の判断というものは、もちろん現地と本部、双方いずれかによる場合もありましょうし、双方の見解が一致する場合もあろうと思いますが、今回の場合はどうでありますか。観測本部の方が早手回しでやったものであるか、現地がそういう要請をしたのか、自発的にアメリカ船バ号が救援にかけつけたものであるか、これを承わりたい。
  31. 稲田清助

    ○稲田説明員 現地と本部とは毎日のように電報を往復いたしまして相談いたしております。本部で物事を決定いたしますのも、現地の意見を重要な前提といたしまして、いたしております。従いまして、外国船の救援の問題もその一つでございます。ただ外国船に手配いたしますと申しましても、少くも二週間以前に現地の意見を聞かなければなりませんので、その意味において、必要があれば、そういう期間が要るからどうかとこちらから聞いてやりましたところ、現地の意見で、頼みたいということであったので、手配いたしました。ただ現地から他の隊員からの報道に、知らなかったというようなことが書いてありまするけれども、これはおそらく察するに、現地における船長なり隊長がある期間その腹に置いて処理するというような物事もまた状態も、それはもちろんあったろうと思うのでございます。それらのことは帰って参りますれば明らかでございます。
  32. 辻原弘市

    ○辻原分科員 明瞭でありましたので、こういう問題は私は現地と本部との意見のそごとか、あるいは隊員相互間、隊長と船長との間の意思の不疎通というものが何かしら、これは前回もそういうようなことがありました。そういう問題が事実であるとすれば、これは重要な問題でありますが、事実でないとすれば、いたずらに疑心暗鬼を生じさせる結果になりますので、そういう点は常に明瞭にされることが必要だろうと思います。これは御注意申し上げておきます。  それから昨年の越冬隊員の引き揚げ、それから本年の越冬が不可能だという状態に立って、引き揚げ、収容の問題が起った際に、何か民間の団体等の中で、人権尊重の立場から、これは人間じゃなしに、犬権尊重の立場から、樺太犬の収容をやかましくいわれておりますが、もちろんわれわれヒューマニズムの立場に立てば、現地にわれわれがそのために使ったそういう動物であろうと何であろうと、少くとも生命を持つものをむげに見殺しにしてくるということは忍びないところでありますから、国民の一部に署名運動が起ったということも、あながち、私は単なるエピソードとして申し上げるわけにはいかぬと思う。やはりこれらも万全の手を尽していると思いますが、何かきのうの発表によりますると、場合によれば、若干の犬は積み残しになるかもわからぬという話でありましたが、すでに船が出発しているようでありますが、現地の状況はどうでありますか、人及びそういう犬の収容は完全に終ったものかどうか、この点も一つ伺いたい。
  33. 稲田清助

    ○稲田説明員 人が三人船に移乗いたします際に、さらに犬を三匹連れてきたという報告はございますが、自余の分につきましては、ただいままで報告に接しておりません。おそらく現地といたしましても、状況が許す限り犬を連れてきたい気持で一ぱいであることは想像にかたからぬ次第でございますが、今日のところ、それ以上の材料を持ち合せておりません。
  34. 辻原弘市

    ○辻原分科員 最後に本年度予算でありますが、先ほど天城会計参事官の方から御説明のありました科学技術振興費の中に、南極観測経費が組まれておりますが、その六億七千万円という中には、御説明によりますると、ロケットの試作費であるとか、その他一般の観測費等々の経費も加わっているようであるが、純粋にいわゆる南極探検に使用されるものはいかほどになっておるか、またそれはどういう方面に使おうとしておるのか、この点を承わりたいと思います。
  35. 緒方信一

    ○緒方政府委員 国際地球観測年事業の全体の予算額といたしまして、昨年度は八億五千万円、本年は六億七千万円でございます。そのうち南極の関係は二億一千五百万でございます。先ほど稲田次官からも御説明いたしましたように、南極観測事業は、本観測の終ります本年をもって、一応観測といたしましては終るという建前になっておりまして、来年度予算は、本観測の越冬隊員を撤収いたすために、さらに船を派遣いたしまして、これを連れて帰る、それにかたがたあわせまして可能な観測実施させたい、かような予算計上いたしておる次第であります。
  36. 辻原弘市

    ○辻原分科員 今の御説明によりますと、結局本年度計上した経費は、あと収容して、観測の跡始末のための経費である、そう理解して差しつかえないと思うのであります。そこで、先ほどちょっと申し上げ、稲田次官の見解も聞いたのでありますが、これで一応観測年としての南極観測は、最初計画されたものは終りになる。今後あらためての問題になると思いますけれども、しかしそれだけの成果を上げたものを簡単に打ち切るということには私はなるまいと思う。今後この機会に継続されてこれらの観測事業を行われようとするのであるか、それともまた何か国際的な一つの機会をとらえてやろうとするのであるか、これらの点についてお考えがありましたら、お述べいただきたいと思います。
  37. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいまの点につきましては、日本学術会議におきましても、また政府部内におきましても、まだ何ら計画が進んでないのでございます。また国際的にもまだ反映されておりません。すべては今後の問題と存じております。
  38. 山本勝市

    山本主査 今澄勇君。
  39. 今澄勇

    今澄分科員 今永田隊長、松本船長の努力のかいなく、こういう状態になったことについては、現地の皆さんは非常に残念に思っているだろうと思います。私が一つ国民の前に明らかにしておかなくちゃならぬのは、こういう結果になったことは、今お話のような気象上の問題もありましょう。けれども、いろいろ注意しなければならぬ点で怠っておる点もあると思うのです。第一番に、西堀越冬隊長がアメリカへ事情調査に出がけたときに、アメリカ探検隊の人から、南極へ行くのならば、南極へ行ったことのある経験者をガイドに連れていったらどうかというお話があって、シュロスバッハという人が紹介された。これはかつてバード隊について南極に数回行っておる。こういう人をガイドに連れていこうという意見があったにもかかわらず、本部においてこれを採用しなかったのは、一体どういう意味が。なお海上保安庁が航海担当責任の立場から、これに反対したというのですが、一体それはどういう理由で反対したのか。本部長と保安庁の長官から一つお答えを願いたい。
  40. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいまの点でございますが、確かにその話はあったのであります。ただ話を聞きましたときが非常におくれておりましたこと、すなわち乗船員及び隊員がきまっておりまして、キャパシティの関係で余裕がなかったこと、それからさらにわれわれとして非常に配慮いたしましたことは、その方は非常にエキスパートとして偉い方だと思うのでございますけれども、やはり外国人の方をそこに入れます場合の心理的の問題と申しますか、かなり隊長なり隊員の方の心理的負担が重いことがありはしないかというようなことを考慮いたしました結果、取りやめた次第であります。
  41. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 先ほどのお言葉でございますが、航海の立場から海上保安庁が反対したという事実はないと思います。今稲田文部次官からおっしゃられたようなことが、その内容でございます。
  42. 今澄勇

    今澄分科員 私はやはりこういう重大な、世界のヒノキ舞台で日本が文化国家としての科学を争そう、こういうときには、そういう万全の用意、こういう結果になるよりは、むしろそういうガイドを連れていく方が最も賢明な策であったということを、今にして思います。もう一つ長官に聞きますが、非常に装備をよくしたと言っておられますけれども、日本の宗谷はディーゼル直結方式です。これは発動するまでに二分間くらいかかります。外国船はディーゼル電動方式です。氷を発見する、直ちにこれに対する処置ができる。トン数も問題だけれども、砕氷能力における近代的な装備をどうして宗谷につけてやらなかったのか、長官に一つ伺いたいと思います。
  43. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 おっしゃる通りでありまして、ディーゼル・エレクトリックでやれば非常に急速にスピードが出るわけであります。われわれとしてもぜひやりたかったのでありますが、時日の関係その他でできなかったような次第でございます。
  44. 今澄勇

    今澄分科員 私はこの電動式にしなかったことが、宗谷が氷の中で立ち往生した大きな原因であって、永田隊長に対しては、国会議員の一人としてまことに気の毒だと思います。もう一つ私は文部次官に聞きますが、一体あなた方の東京における統合本部が、南極の天気図を掲げたのはいつですか。
  45. 稲田清助

    ○稲田説明員 これは前回からもいたしております。今回は常に通報に用いていたしております。掲げたとおっしゃいます点が、私どういう意味だか存じておりませんが、本部といたしましては、常にそういう資料をもととして、去年もことしも研究いたしております。
  46. 今澄勇

    今澄分科員 われわれが見るところでは、海上保安庁には毎日四回宗谷から定期的に気象状況が送られておる。気象庁には南極にある各国の基地の気象データが集まっておるわけであります。これを集めて、本部で南極の気象図をきちっと用意しておけば、私はいろいろな点において助かったと思うのです。機構だけはすごく大きくて、文部大臣初め四十何名の大機構になっておるけれども、天気図がデータとして本部で掲げられたのは、大体ことしになってからではないか。私は気象庁の計画部長にもお話を聞いておるのです。そういった永田隊長の前線の努力に報ゆるに、統合本部においてなすべきことで怠ったものがあるのではないか、稲田次官はどうお思いになりますか。
  47. 稲田清助

    ○稲田説明員 気象庁長官初め気象庁の職員は、統合本部の重要なメンバーでございまして、緊急連絡の場合その他も常に加わっております。もちろん気象庁が天気図を持っていないようなことはないわけでございます。昨年といえども、今年といえども、それは持っております。ただ、ある一室にそういうものをぶらさげたかどうかという話は、私は存じませんが、とにかく気象図なしに仕事をしたというような事実はないと信じます。
  48. 今澄勇

    今澄分科員 現地主義、現地主義とさっきから答弁がありましたが、一月十三日付で、永田隊長が松永文部大臣に連絡してきておるところによると、宗谷が動けぬ以上越冬計画を変えねばならないだろう、本部の指示を仰ぎたい——これにこたえて、本部が、稲田次官、あなたを中心に三時間にわたっていろいろ議論をされております。なぜこのときにもっと明確な指示ができなかったのか。二月一日が接岸期であるということを、どうしても変更できなかった理由はどうですか。
  49. 稲田清助

    ○稲田説明員 二月一日を変更しなかったというようなことに固執した事実は、全くございません。それから、ある会議がある日において三時間以上かかったかもしれませんけれども、私どもは常に、ここにいる島居氏とは毎日何回も会い、何回も電話で話しております。また現地には、毎日海上保安庁なりわれわれの方から電報いたしております。従いまして、現地とわれわれの連絡及び海上保安庁と文部省その他各省庁との連絡、これは毎日とっておるわけであります。
  50. 今澄勇

    今澄分科員 しかし永田隊長は、あなたも御存じでしょうけれども、文部省の緒方局長に対して、こういう連絡をよこしている。当方のこれまでの報告は、船長と相談の上承認を得たものである、しかし海上保安庁は独自の立場で直接連絡があり、永田はすべてこれを知っておるわけではない、この連絡は海上保安庁法の上で合法的なものであるから、当方ではいかんともすることができない、従って海上保安庁との連絡、調査は、本部において行なっていただくようにお願いする、こういう連絡が来ているのです。
  51. 稲田清助

    ○稲田説明員 そういう連絡の記憶はございません。
  52. 今澄勇

    今澄分科員 私は今回こういう世界のヒノキ舞台で、現地の非常な努力にもかかわらず、あきらめねばならないかというような情勢に至ったことについては——海上保安庁の命令系統、これは船長へ直接行きまして、永田隊長が隊長としての命令系統、これとが別個である。私は調査団が船をチャーターして、一切が永田隊長の意思によって動く、こういうことになれば、非常にスムーズにいったであろうと思うのです。そういう機構上の問題について、稲田次官は今回の挙に関して考えられるところはありませんが。
  53. 稲田清助

    ○稲田説明員 おそらく各国の例も、チャーターしておるという例は希有であろうと存じます。それから、わが国においてそのために統合推進本部というものがございまして、重要なことは本会議でいたしますし、あるいは事務的なことは幹事会で一々連絡いたします。さらにまた緊急を要するものは、その中の特に集まるのを適当とする人たちが集まるわけでございますが、海上保安庁とわれわれとの関係におきましては、さきにお答え申しましたように、この島居氏と会わない日はなく、電話を二回以上かけない日はないのでございます。そういうふうに緊密な連絡をとっておりますので、その点は御安心いただきたいと思います。
  54. 今澄勇

    今澄分科員 私は今回の宗谷の状態を見て、日本の練習艦隊などをハワイへ派遣をして、そうして諸外国の軍艦から見れば、礼砲をうつ問題についても気がねをしながら、諸外国のどの国もやっておらないような儀礼的なことに一億に近い国の金を使って、文化国家である日本がほんとうに日本の学術的真価を示そうというこういう重大な問題に、それらの金を統合的に使わなかったということにも今日問題があると思います。あながち稲田副本部長の責任と申すわけじゃありません。しかしながら海上保安庁は海上保安庁としての船長に対するいろいろの立場、たとえば二月一日接岸は、ある人の意見によれば、この前日本が置いた重要物資八十トンも氷が自然に解けて海の中になくなったのですから、何も二月一日が接岸の必ずしもいい日であるということではない。統合本部の中の会合では、この二月一日説がなかなか最後まで動かなかったから、非常な問題を生じてきたと思うのです。だからこの際やはり国家のすべての力をこういう学術的な壮図には集中する。それから統合本部はそういう役所のなわ張りを離れて、これらの問題に関してほんとうに緊密に努力をして、たとえば外国船の援助についてのしろうとのアマ無線等の連絡が現にあるのですから、そういうものは全然知らなかった—現に永田隊長はその報告を聞いて非常に憂うつになったというようなアマ無電関係の連絡等もあって、私はやはり本部において今日の事態を生ぜしめた多くの責任があると思います。永田隊長が幾ら前線でがん張っても、今日のこの機構のもとにおいては、もちろん天候もあったでしょうけれども、なかなかそれは困難であった。私どもは現地の永田隊長並びに船長に対して敬意を表し、文部当局はもう少しこの問題については検討を新たにして、十分一つ今後の対策を練っていただかなくちゃならぬと思います。  なおもう一つ、一月二十三日付で永田隊長から膨大な報告が来ておりますが、その中の一つは、天候は比較的良好、宗谷は動けない。第二番は、氷海脱出は一月末の予定である。第三は、脱出できれば再進入をはかる。第四番は、第二次越冬隊は十一名に縮小、外国船手配されたし。第五番は、最悪のときは第一次越冬隊のみ救い出す。第六番は南極観測は一年延長できぬか。こういう報告が来ているのです。この南極観測について一年延長をするかどうかということについての文部省の態度はどうですか。
  55. 稲田清助

    ○稲田説明員 先ほど辻原委員にお答えした通りでありますが、現在といたしましては本観測中心とする三年の計画以外には何ら計画を持っておりません。
  56. 今澄勇

    今澄分科員 現地からせっかく隊長が南極観測は一年延長できぬかというこういう血の出るような情勢に対して、そういう計画を持っておらないというその理由は、何が最大の理由ですか。
  57. 稲田清助

    ○稲田説明員 これはすべて国際会議において国際協力の線が出て参りますが、国際会議といたしましても、地球観測年の計画は本観測中心とする会議以外にはないのでございます。またわが国におきましては、これは学界の総意を結集した学術会議において検討し、政府に勧告する。それに基いて政府としては方針を決定すべきものと考えておりますが、学術会議といたしましても本年まだその域に至っていないのであります。いずれこの国際間の動きもございましょうし、また現地から帰って参ります隊員の報告等もございましょうし、その後の推移の上考慮するということは新たに起ってくるかもわかりませんけれども、政府として計画し、予算の御協賛を願っている意味は、本年をもって終了する意味であるとお答え申し上げる以外にはないのでございます。
  58. 今澄勇

    今澄分科員 船の装備に二億五千万円を費やし、機械費、装備費等を差し引いた残りの一億三千万円が隊員の人件費や本部費に充てられておるのでありますから、言うなればこれだけの大壮図をはかるにしてはあまりにも貧弱な予算だと私は思います。だから本部長の文部大臣は多忙であまり力が入れられないでしょうけれども、担当している文部次官の稲田さんは、国会においてそういう政府のきまり文句の報告でなしに—それは探検隊が延びれば金もかかりましょう、人件費も要りましょうけれども、どうせ帰ってくれば、これらの苦労した探検隊の諸君から一年延長の希望も出るでしょう、国際情勢の問題も検討されるでしょう。私はこれらの情勢を検討して、本部は少くとも一年延長に努力をするというくらいの情熱がないということが今日のこういう事態になった原因だと思いますが、そういう情勢が変れば、本部としては再検討するわけですか。
  59. 稲田清助

    ○稲田説明員 これはあくまでも学界の意見というものを前提といたしましてわれわれ役所におるものとしては考えなければならぬと思っております。この点につきましては学術会議の茅さんあたりと始終会っておりますが、茅さんあたりといたしましても、やはり国際関係の会議の推移あるいはまた観測隊の帰着後でなければいかんとも判断しがたいということを常に申しておりますから、われわれといたしましてもそれらの推移を見守る以外に現在のところは申し上げようもないと思います。
  60. 今澄勇

    今澄分科員 時間になりましたから、これで私は終りますが、現在の状態のもとにおいてはいろいろ突っ込んでお聞きしたいこともありますけれども、対外的影響もありましょう。この程度でおきますが、統合本部においてはこれらの点を十分留意していただきたいと思います。
  61. 山本勝市

    山本主査 文部省所管に対する質疑は一応この程度といたしまして、残余の質疑は明後日に保留いたします。午後二時より再開し、厚生省所管に対する残余の質疑を行います。  暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後二時三十九分開議
  62. 山本勝市

    山本主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。  厚生省所管に対する残余の質疑を行います。質疑の通告がありますので順次これを許します。野澤清人君。
  63. 野澤清人

    ○野澤分科員 質問の通告者がたくさんありますので、重複しないようになるべく簡潔に質問いたしますから、簡単でけっこうでございますがお答えを願いたいと思います。  そこでちょうど次官が見えておりますので、総体的な問題として一点だけ次官に伺いたいのですが、今度の昭和二十三年度予算が構成されましてから、一般に批判的な言葉が全く正反対な現象を来たしているという点がございます。特に社会保障制度に対する予算関係で、社会保障制度が岸内閣によって後退させられておるという見解と、それから実際に予算面を見てみると、将来に対する希望の持てる明るい予算だというように、正反対の見方を二大政党でしているようであります。これに対して厚生当局としては真実後退なのか、明るい希望の持てる予算であるのか、この点政務次官からはっきりした御回答を願いたいと思います。
  64. 米田吉盛

    ○米田政府委員 御承知のように、今年は千七十二億の予算でございまして、前年度に比較して約五十八億増加をいたしております。そうしてこの金額は金額といたしまして、この金額よりもはるかに大きな社会保障の道を開いておると信ずるのであります。おもなるものを申しますと、長年懸案でございました診療報酬の引き上げ、これに関連しますところの経費、これが今年は三十二億前後でありますが、半年分でありますので、これがまるまる一年支払われることになりますと、その額は相当大きな額に達するわけであります。またこの中に盛られておりますところの国民健康保険の五分の調整交付金、これなども今回創設したわけであります。国民皆保険の非常な隘路をなしておりましたのを、新たなるこういう構想を実現することによって、地方財政が赤字から免れて、皆保険達成を可能ならしめる、こういう考えでございます。また日雇い労働者健康保険におきましても、非常な赤字でございましたが、今まで一割五分であった国庫補助を一躍二割五分に引き上げたわけでございます。一躍一割も引き上げたというような点は、今まで補助金としてはそうたくさん前例はないのではないかと考えるわけであります。またさらに傷病手当金、出産手当金の制度も今回日雇労働者に創設をする、これら所要の予算計上したわけでございます。また御承知のように、健康保険組合中、財政が非常に脆弱なものについて、二億円を限って、今年補助金を出す、こういうようなこともいたしたわけであります。こういうことをいろいろ保険関係だけについて考えてみましても、まるまる十二カ月支払われる年になりすまと、相当大きな額が支払われることになり、今まで単価の値上げの問題だとかあるいは皆保険のじゃまになっておる国保の赤字であるとか、その他もろもろの隘路を今回まず一応打開し得た、こういう考えを持っておるわけでございます。  第二の点としましては、社会保障関係全体としましては、今年は千二百五十六億でありまして、前年度に比して百二億増加しておるわけでございます。またそのほか、母子健康センターを創設いたしまして、あるいは母子貸付金を増額して、今までの倍に増額する。あるいはまた児童対策としましては、未熟児対策を行いまして、せっかくこの世に生まれた人を完全な健康な人として育ち得るように、国家の厚い手を伸べるというような対策も今回はできる見込みでございます。また国立療養所というような国立病院関係に食費がひどく少くて、患者の食費に困っておりましたが、これの値上げも今回若干達成することができました。また僻地の診療所は患者が少くて非常に運営費に困っておりました。これらについても運営費補助して赤字を解消するというようなことをやりますとか、また低所得階層の貸付の事務の補助金を出すというようなこと、あるいは厚生援護施設事務費補助であるとか、またあるいは同じ施設整備するところの補助であるとかいうような補助金も、相当に今回は新しく設けたものもあればさらに進めたものもあるわけでございます。それから売春防止法がいよいよ実施されますので、婦人更生の資金を貸し付ける、また被服のない者にはその被服までも、これは支給してしまう、こういう補助金計上してございます。また児童保護施設に勤務しております職員の期末手当が、今までほとんど見るべきものがなかったのでありまするが、O・五カ月をとりあえず計上する、また保育所のおやつ代の引き上げをする。さらに児童遊園地を全国に相当たくさん設置いたしまして、その補助金を出す。あるいは母子福祉貸付金の返還事務費補助するとか、結核健康診断を強化いたしまして、できるだけすみやかに結核患者を発見して、そうしてこれに対処するために診断を能率化する、あるいはその精密度を向上さすというような措置を講じまして、新規の、あるいは拡充せられた施策をいろいろととり行ってその所要経費計上したわけでありまして、断じて後退してはおらぬと考え予算に示された金額以上のさらに大きな道を開いたものであると信ずるものであります。
  65. 野澤清人

    ○野澤分科員 冒頭に申し上げたように、時間が少いので、質問も簡単にするからお答えも簡単にとお願いしたのですが、だんだんとうんちくのある絶対信念を持った御回答を得て、きわめて満足であります。ついては一問一答の形式で要点だけお尋ねいたしますので、所管局長さんでもけっこうでありますから、要領よくお答えを願いたいと思います。なおただいまの次官のお話で、所要の経費を五十何億か増額してとったという御答弁で、絶対に後退しないというお言葉の中に、私は厚生行政に対する予算の裏づけの根本理念というものは、一体予算をたくさんとる方が社会保障の前進になるのか、予算は少くとも柱があらゆる面に立っていく、しかもそれが国民の保健衛生を満足する施策が一つ一つ立っていくという状態が前進なのか、そうした事柄については、むしろ予算を膨大もなくとったから前進なのだ、予算が少いから後退したのだというような判定でなしに、要は事柄は内容のいかんにあると思う。この点については後刻また御意見等も拝聴いたしたいと思いますが、今まで本委員会で質疑されました状態から判断しますというと、次官のおっしゃられた通りであると存じます。そこで岸内閣の社会保障政策の二つの柱として立てられた国民皆保険と国民年金の問題についてお聞きしたいのですが、国民皆保険を実施するについての基礎的条件というものの整備がやかましく唱えられております。その整備基礎条件というものは、一体政府はどんなことを考えておるのか。これは官房長でも保険局長でもけっこうですからお答えを願いたいと思うのです。
  66. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 国民皆保険を進めて参ります上の基礎条件といたしましては、まあいろいろ考えられるわけでございますが、一つには、何と申しましても国民健康保険あるいは健康保険というようなもろもろの社会保険の財政を強化、健全化するとともに、それの運営を逐次拡大していくという問題が一つあろうかと存じております。それからその次には、皆保険態勢が進んで参ります場合に、それに見合う医療態勢と申しますか、そういうようなもの、端的に申しますれば、いわゆる僻地などで医療機関の少いようなところでは、皆保険態勢をとりましても、なかなかその実が上らないわけでございますので、そういうようなこと、あるいはそれに関連しまして、中央地方のそういう医療機関を整備して参るというようなことが、その次に上ってこようかと存じます。それから第三番目には、診療報酬の問題も、あるいはこれは見方によってはいろいろございましょうが、やはり大きな関連を持つ一つでございます。六年間放置されたというこの診療報酬の問題を、とにもかくにも解決いたしまして、この医療担当機関のさらに御協力を得るとともに、将来適正なる医療が行われるようにする、こういうことも一つの大きなあれかと存ずるわけであります。さらに進みますれば、結核対策というものも従来から亡国病といった、またいろんな社会保険の負担を相当重くせしめている大きな要素の一つでございます。これなどにつきましても、逐次他とのあれもございまするけれども、その結核対策というものを進めまして、そしてそういう面のウェートを軽くする、こういうことが同時に他の社会保険なり何なりを進めて参りまする一つの大きな要素であろうかと考えておる次第でございます。あるいは一、二ほかにあるかもしれませんが、とりあえずそういうようなことが基礎的条件の一つの大きな柱ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  67. 野澤清人

    ○野澤分科員 そこで今五つほどあげてもらいましたが、政府は政府としての柱があり、与党は与党としての柱があるでしょうが、一番私の感じますことは、社会保険の財政の基礎づけをする、医療担当者の待遇改善をする、医療機関の整備をするというようにいろいろな面がありますけれども、とりわけ今後の社会保険等を育成する上において、国民皆保険の前提条件となるものは何といっても国民病といわれる結核対策が主じゃないか。しかも結核対策については五カ年で半減させるとか十カ年対策を立てるとかいうような話があったが、今度の予算にはごくわずか増額はされておりますけれども新しい思い切った施策というものは予算そのものに現われていない。これに対して厚生当局としては今後どういうふうに推進される考えか、少くともこうした医療保障を中心とした保険制度、あるいはその他の法律制度等を数えて、社会保障に類する法律というものが十五、六あります。こうした法律を野放しにこのまま温存しつつ一体国民皆保険態勢あるいは国民年金態勢というようなものに入り得るのかどうか、こういうことを考えていくと、どうしても結核対策というようなものは一日も早く解決しなければならぬと思うのですが、こうした点についての決意のほどが予算に全然現われない、今後このまま放任するのかあるいはおやりになる考えか、的確に決心だけでけっこうでありますから、これも官房長でも次官でもけっこうであります。はっきり御見解を承わりたい。
  68. 米田吉盛

    ○米田政府委員 ごもっともなお話でございますが、私らの省としましても、今年相当の新対策を考えて立ち上ることを考えておったのであります。御承知のように今年は各方面に画期的の道を実は厚生省としては開きまして、それにはそれ相当の予算が実は関連をいたしまして、勢い同時にこれもやることができなかったという結果になったわけでございます。しかし若干先ほども説明申しましたように、結核対策についても若干前進いたし、三億八千万円の予算がその方でふえておりまして、今までとは少くとも方針がはっきり出れるような格好ができておるのでございます。今後については最後の追い込みをしっかりやりまして、明年からはこの問題と正面取り組んで解決をいたしたい、こういう考えでございます。
  69. 野澤清人

    ○野澤分科員 次に保険局長に伺っておきたいのですが、予算委員会滝井委員の質問に大臣が答えられたようでありますけれども、どうも一般国民が相当誤解していると思われることは、一点単価の値上げに対するこの医療費の値上げ問題です。当初政府が一点単価一円程度の値上げをするだけでも、三十三年度では二百十七億かかる、こういう声明をいたしております。ところが今度の予算の結果を見ますというと、一円の値上げに見合う八・五%の値上げの実態というものが、わずか四十億くらいで解決をされた。一体これは値上げなのか、均衡予算なのか、値下げなのか、国民自体がわからない。医療担当者も危惧の念を持つと同時に、国民自体も政治のからくりというものの実態がわからぬ。従ってこの点については、一体政府の考えている八・五%の甲案、乙案というものを実施した場合に対処する国家予算負担分というものの姿を明らかにしない結果だと思いますので、こうした点は誤解のないように、端的に御解説を願いたいと思います。
  70. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大体八・五%程度、これを現行点数を前提として単価に直しますと、一円程度になるわけでございますが、それを引き上げますると、ただいま御指摘のように、二百十億余りの金がかかる。支払いがふえるといいますか、受け取りがふえる。医療費の膨脹が招来されるということを申し上げたのでありますが、その点は、その後のいろいろ来年度の政府管掌の医療費なり、あるいは各管掌の見通しなりというものが予算を通じて明らかになって参りまして、数字に若干の出入りはございますけれども、大体二百十億余りということで、私どもの最初に申し上げました数字が大きく動いてはおりません。ところが国の、しかも一般会計が持った予算というものは、とんでもない少いじゃないかというお話でございますが、これは当時から私ども御説明を申し上げておりますように、二百億余りの医療費増というものは、これは医療費の総額がそれだけふえるわけでございまして、言葉をかえて申せば、医療機関の受け取る金がそれだけふえるということでございます。ところがその中で各制度が自分で支払います金はまた別でございます。たとえば被用者保険なら被用者保険のシステムによって支払って参りますし、国民健康保険であれば、患者が大体五割程度は窓口で払っている、こういうことでございまして、各制度が自分の財政から払うものは、大体達観をして百五、六十億程度ということに相なります。それが第二段に出てくるわけであります。この第二段に出てくる各制度が支払いをいたす金というのは、それぞれ各制度予算に組まれるわけであります。政府管掌健康保険の例をあげて申しますと、来年の医療給付費の中に、十月以降六カ月分といたしまして、十八億五千八百万円という経費がプラスして計上してあるわけでございます。政府が管理をしております、すなわち支払者に立っておりますものは、政府管掌健康保険と日雇い労働者健康保険、船員保険、この三つでございます。これらはそれぞれの特別会計のその勘定の支出面に医療支出面として、それだけのものが八・五%分が計上してあるわけでございます。ところが国民健康保険、それから組合管掌健康保険、あるいは生活保護その他の制度におきましては、これは支払いをいたすものは政府ではございませんで、市町村であったり、あるいは各組合であったり、公共団体であったりするわけでございます。従って政府管掌の、今申し上げましたものに当る支払い予算は、それぞれの制度運営者の予算において組まれるわけであります。こういう各制度の支払いに対しまして、それでは一般会計がどういうふうな援助をするかという問題になってくるわけであります。その場合に、各制度で財政的に強い制度には、まあ言ってみれば、財政的には援助をする必要はない、弱い、足弱のところに一般会計が税金でもっててこ入れをしていく、こういうことになるわけです。それで今申し上げましたように、そこに二段、三段の段階があるわけでございまして、従って二百億余りの総医療費のふくれ上りというものと、最後の一般会計が税金でもって各制度を援助していくという金額との間には何ら関連性はないわけでございます。関連性がないと言うと語弊がありますが、たとえば八・五%上ると何百億医療費がふえるというふうな、そういう関連性はないわけでございます。最後の点につきましては、先ほど政務次官が御答弁になりましたように、税金で援助いたします一般会計の持ち出し分といたしましては、純粋に診療報酬引上げということにぴたりと形式的にもはまります金といたしましては、十八億五千万円程度、これを平年度に直しますと大体四十億近いものになるかと思うのであります。その他、関連分を入れて考えますと、実質的にはこれと非常に関連をしているという経費を合せ計算をいたしますと、政務次官のおっしゃいましたように、大体三十二億程度の税金からの援助ということになるわけでございます。
  71. 野澤清人

    ○野澤分科員 次には保健所の問題についてお聞きしたいのですが、よく保健所の処遇改善とか待遇改善とか、あるいは医師、歯科医師等の就職率が悪くて、保健所の所員の強化ができないとかいわれますが、一体政府の方では、保健所を運営する上においての隘路と思われる点はどういうことを考えておられるのか。この点、簡単でけっこうですから……。
  72. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 保健所の人員の充足率が非常に悪い、それに対して仕事が非常に過重であるために運営にいろいろ困難を来たしているということは、ただいま御指摘の通りでございます。そこでその運営に困難を来たしている一つの——両方の面から考えなければならないと思いますが、やはり荷物をある程度整備して、従って保健所が指導的役割をもって市町村でやらせ得るというようなものは、それで十分市町村が活動してやっていけるようなものにつきましてはできるだけ市町村にその仕事をまかせる、そうして保健所が指導的立場で仕事をしていくというふうに持っていくべきだと思います。また重複して保健所に対していろいろ仕事が課せられているという面もなきにしもあらずでございます。そういう点を整理しなければならないと思っております。しかしいかに整理いたしましても、合理化をはかりましても、公衆衛生の仕事が伸びていきますと、やはり第一線機関である保健所がこれを背負っていろいろやっていかなければならぬという面がたくさんふえて参ります。そこで保健所を人的にも物的にも強化して参らなければならないと思うのでございますが、物的の面は逐次強化されつつはございますが、人的の面は残念ながらここ二、三年来かえって予定の人員よりも充足率が減少するというような傾向が見られるわけでございます。そのためにはやはり私ども従来は地方財政との関係もあって、地方で国が考えているだけの予算化を行わず、従って人員の充足を行わない。そこで荷物が非常に過重になるというようなことがございますので、国の援助をもっと大幅にすべきではないかという線で進んで参ったわけでございます。そういう点でやはり保健所に財政的な裏づけが十分行われていないということが、保健所運営一つの隘路になっているんじゃないか——一つと申しますか、非常に大きな隘路になっているんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  73. 野澤清人

    ○野澤分科員 一つの隘路だけは生まれたのですが、一体厚生当局としては、厚生行政の最末端機関であり、最も重要な出先機関である保健所の運営に対して、ただ単に予算の裏づけが少いからという隘路だけを発見して、今後の強化、拡充ができますかどうか。毎年同じようなことを言われて、一体物に重点を置くのか、人に重点を置くのか、運用に重点を置くのか、そうした面がはっきりしない。はっきりしないままに官僚だけが苦労しておって、いよいよ期末になると、予算折衡をして、みなたすきをかけて陳情に来なければならぬ。こういう実態を行政を担当する当局としてこのまま放任していいのかどうか。かような状態を継続していけば、やはり来年もあのままで厚生省はがまんするだろうという結果が生まれてくると思う。こういう問題については、もう少し幅広く末端厚生行政の機関としてどう育成しなければならぬかという問題を、立体的にも平面的にも私は検討する必要があるんじゃないか。こういうことを今後おやりになる考えがあるのか、それとも局長中心として役人だけで苦労していこうというのか、はっきりした御見解を伺いたいと思います。
  74. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 保健所の問題は、ただいま御指摘のように、衛生行政の盛衰を直接になうものでございますので、行政官と申しますか、役人たちだけでこの問題を解決するということはなかなかむずかしいと思うのでございまして、先ほど申し上げましたように、仕事の合理化の問題、それから増強の問題と同時に、全般的に保健所の運営というものを、小は地元の保健所運営協議会というものがございますが、そういうものの活用によって、できるだけ効率よく仕事ができるようにしなければならないと思いますし、また全体としては各方面の御意見を伺いながら、今後現状ではどうにもやっていけないというところまで追詰められてきておりますので、何とかしてこれを各方面の御協力を得て打開して参りたい、そういうふうに考えております。
  75. 野澤清人

    ○野澤分科員 次に精神衛生対策費についてでありますが、この予算内容が多い少いということでなしに、結核対策等もつぶれ、精神衛生対策等も当初の計画からははるかに下回っているという感じがしますが、一体老人病対策とが精神対策というものは、やがて第二の結核と同じようなケースに追い込まれる傾向があるんじゃないか。一日早ければ一日の利益だと思うのですが、こうした問題について当局としてはどんな考えがあるのか。また予算内容を見ますと、公立に二千百五十カ所をふやすというような計画が出ていますが、現在まで国立公立、あるいは私立等の病床はどのくらいの分布状況になっているのか、概略でけっこうですから、お示しを願いたいと思います。
  76. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 精神衛生対策が結核にとってかわる時代が来るのではないかという御指摘でございますが、いずれはそういう時代が来る。すでに最近数年間精神衛生問題が非常に大きく取り上げられてきているということは、その一端を示すものだというふうに考えるわけでございます。ただ精神衛生の対策と申しましても、従来は国の方針としては、ただ精神病患者を檻置して隔離をして置く、そうして他人に害を与えないようにしておくということに考慮の重点が置かれて参ったのでございますが、その点も決してゆるめるわけには参りませんが、やはり精神衛生対策としては、精神障害者の発生防止という面に主眼点を向けていかなければならないというふうに考えているわけでありまして、昭和二十五年精神衛生法ができましてからも、そういう線で進んできているのでございますが、何分にも現在放置されている精神病患者が非常にたくさんございますので、やはりその収容というところにまだ重点が置かれているというわけでございます。精神衛生対策は、単に厚生省の私ども主管の局だけでなく、厚生省内におきましても各局に関係がございます。また政府全体といたしましても、法務省なり文部省なりいろいろな方面に関係の深い広い問題でございますので、今後の根本対策をどういうふうに打ち立てていくかということは、せっかく一両年来検討して各省と相談をしてきているわけでございますが、そういう方向で今後の精神衛生対策というものを進めて参りたいというように考えております。  それからただいまお尋ねの病床の数でございますが、これは三十二年七月十二日現在で全体が五万七千二百二十床でございます。そのうち国立が四千四百五十一、これは厚生省所管とその他の政府所管のものも合計してございます。地方公共団体立が九千二十七、法人立が二万九千百八十二、その他が一万四千五百六十というような分布状態になっております。
  77. 野澤清人

    ○野澤分科員 大事なことであるが逐次これをおやりになるというお考えなのか、積極的に急速これの対策を今後熱を入れてやっていくという御決心なのか、これも後ほどお答えを願いたいと思います。  ついででありますから、環境衛生部長が見えてないようでありますので、局長にお尋ねいたしますが、環境衛生対策の中で費目の内容を見ますと、観光地対策という費目が出ております。そこで観光地対策として未設置地域と既設の簡易水道が充足された土地との分布状況はどんな程度になっておりますか。近年でもまだ集団赤痢等の発生を見ている現状ですが、どういうふうな状況か、その現況を御説明願いたい。
  78. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 環境衛生対策の諸施策のうちで、観光地だけをどういうふうな状態になっているかというお尋ねでございますが、これは政府の方針として、観光地は単に環境衛生だけでなしに、全体の問題として観光地対策を打ち出しているわけでありますが、その場合に観光地がどの程度になっているかという分布の状況の、ただいま手元にこまかい資料を持ち合せておりません。全体的に日本の観光地ではまだいろいろな環境衛生対策、特に簡易水道の問題あるいは屎尿処理の問題がおくれておりますので、そこに重点を置いてやって参りたいと考えております。
  79. 野澤清人

    ○野澤委員 これも小さな問題ですが、下水道の終末処理施設というものが厚生省の行事の一つになっていますが、聞くところによると、鉄管が伏せてあって、下水道の完備ができたところが百数カ所ある。それで予算がないために終末処理ができないんだというふうに聞いておりますが、一体今度の予算で下水道の終末処理の解決し得る見込みのあるものはどのくらいか、数字がわからなければあとでけっこうでございます。
  80. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 下水道の施設につきましては、ただいま御指摘のように従来単に水を排泄するということに重点を置いて管渠の敷設ということに重点を置いて参りました。従って全国で百数十カ所の下水のある都市のうち、終末処理場を持っておるのはわずかに六カ所にすぎないという状況でございます。今度の予算でそれが立ちどころに解決するということはとうてい不可能でございます。これは現在下水の設置の状況、それから建設省で管渠の敷設をやって参りますので、それと打ち合せをしながら、とにかく従来管渠があって終末処理場がないというところをできるだけ早くやるという方針で進んでいっております。
  81. 野澤清人

    ○野澤分科員 もう一つ下水道についてですが、上水道については簡易水道という簡易な方式が生まれて、全国的に非常に整備されてきて喜ばしいのでありますが、大体来年度あたりが峠であって、むしろ今後の大きな問題は、環境衛生面から見て下水道の整備をしなければならぬのではないか、こういうことを考えますと、蚊とハエの撲滅運動を自主的にやっている地方の自治体あるいは部落等において、手っとり早く蚊とハエを撲滅する目的で、しかも環境衛生処置を行うので、きわめて簡易な下水道措置というものをやっているようであります。これらについて、あえて何も簡易水道があるから簡易下水道を作れという意味じゃありませんが、そうしたものについて厚生省当局としては今まで検討を加えたことがあるかどうか。しかも環境を整備する上において非常に適確な方針であるという結論が出るならば、こうしたことは建設省の力を借りないまでも、厚生省で十分できる問題ですから、こうしたことに将来着手する意思があるかないか。これもきわめて簡単でけっこうです。
  82. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 簡易水道に対して簡易下水というようなことを考えているかという御指摘でございますが、下水につきましては簡易下水というような考え方、これは決して下水のやり方に手を抜くということではなしに、簡易水道につきましては浄水の手を抜くということではなしに、むしろ小規模にいろいろできるというところを簡易水道としてやって参ったのであります。しかも簡易下水と申しますか、ただいまお話のような点については、終末処分のやり方を現在のやり方よりももら少し簡単にできる面があるのではないかという点が一つ考えられます。それから管渠の整備につきましても、昨年から予算計上していただいております。蚊とハエの駆除の対策とからんでの溝渠を設置するというような線と二つ考えられておるのでございますが、処理のやり方ができるだけ簡単な方法があるかどうかという点については、従来検討いたしております。また来年度もでき得れば厚生関係に対し続けていきたいと思っております。それから今の溝渠の設置につきましては、ことしは残念ながら予算が少し減っておりますけれども、こういうことを通じて、これを簡易下水と申し上げていいかどうかわかりませんが、そういう排水の処理ということを環境衛生対策の一つの大きなものとして生かしていきたいと考えております。
  83. 野澤清人

    ○野澤分科員 蚊とハエを中心にした国民運動というものは、国家の示唆によらないで自然に盛り上った、いわゆる世論政治のモデル・ケースだと思いますので、こうしたものにもう少し政府は腹の底からこたえ得るような施策を一つ強力に打ち出していただきたいと希望しておきます。  次に医務局長に医療機関の問題についてお尋ねしたいのですが、予算面から見ますと、基幹病院整備費等相当多額の費用があり、また公的医療機関の僻地診療その他についても予算計上されておりますようですが、これらの予算面から見ますると、基幹病院といい、公的医療機関といい、厚生省自体の対象としておりますものは、当然政府でありますから、こうした機関を重点にされることはけっこうだと思います。しかし反面日本の医療機関の中核をなす私的医療機関に対する施策というものが何ら予算面に現われておらない。これらに対して当局としてはどういうふうな施策をお持ちなのか、また予算は要求したけれどもとれなかったという事実があるならば、それもお聞かせ願いたい。
  84. 小澤龍

    ○小澤政府委員 実はわが国の医療制度は公私二本立で行なってきておりましたし、今後とも二本立でもって医療を行うつもりであります。従いまして公的なものには一切補助その他いろいろな施策が講ぜられておりますので、かたがた私的医療機関に対しましても、資金の面におきまして何とか融資する手を考えていきたい。われわれといたしましてはそのつもりでおります。特に医療機関、診療所等、大都市への集中の傾向が強いので、これを是正する方向において私的医療機関の資金助成をするということを実は今年度考えております。そのために医療金融公庫というような新しい制度を作りたいと存じまして努力いたしたのでございますが、本年は遺憾ながら財政上の事情から見送らなければならないことになりました。この問題は今後ともわれわれ努力いたしまして、ぜひ実現いたしたいと考えているのでございます。
  85. 野澤清人

    ○野澤分科員 これもこまかな予算ですが、科学試験研究費というのが計上されております。しかも科学試験研究補助金というものも、薬業合理化補助金というものも前年度より減額されたという状況ですが、一体この科学技術振興をやかましく叫ばれている岸内閣として、厚生省に対する科学技術の普及徹底をはからせるというような話し合いは当局としてはされなかったのかどうか。またこうした予算上の経過として、どういうことに使われるのか私の方でよくわかりませんけれども、薬業合理化補助金といい、科学試験研究補助金といいましても医学、薬学の分野が今日ひとり従来の医学、薬学の範囲内だけでは終始できないので、つまり文部省予算一つ見ましても、原子力研究課が新設され、しかもまたこれに伴うところの近代科学の粋を集めた製造技術、研究技術というものがどんどん進化してくる。一体こういう研究過程において、不慮の災害等が発生した場合に、これに対応するだけの厚生省で準備機関を持っておるのかどうか。またそうした災害予防等について工場法に基くものでなしに、保健、衛生の面から厚生省自体で研究しなくてよろしいのかどうか。少くとも自然に発生してきます不慮の災害が、しかも高度な科学技術によって誘発されるこういう事態が生じた場合に、一体対処できるのかどうか。他の省では科学技術振興費というものが、教育の面においても、研究過程においても膨大もなく増額されております。ひとり厚生省だけが、サイエンスという言葉を使った費目が二つとも削られている。これは一体どういったことなのか、当局としての御見解をはっきり聞かせていただきたいと思います。
  86. 森本潔

    ○森本政府委員 お答えいたします。科学技術研究の中に二つございまして、科学試験研究補助金と薬業合理化補助金とあります。そのうち私の方でお答えいたしますのは薬業合理化の方でございますが、これにつきましては他の一般の省費の削減によって一応削減された、こういうことでございます。しかしながら、ただいまのお話のように、最近におきましてはアイソトープでありますとかいろいろ新しい問題が出て参ります。それで、それらの研究につきまして、衛生試験所にアイソトープだけの研究で七百九十万円、一般の研究費といたしまして約百万円、こういうものがずっと出ておるわけでありますが、その項目といたしましては減少いたしましたが、他の方面において新しい研究として追加されております。こういう実情であります。
  87. 山本正淑

    山本(正)政府委員 ただいまの御質問のうちで、原子力関係で厚生省の特に研究機関に入っておる予算でございますが、三十二年度におきまして二千三百十八万円でございますが、三十三年度予算におきまして四千九百三十四万七千円と、原子力諸般の関係の研究費がふえております。
  88. 野澤清人

    ○野澤分科員 一体そんな予算原子力関係の高度な技術の変化、また軽金属等の製造なども、ジルコニウムとかハフニウムとか特殊の金属がどんどん出ておる。しかもそれの製造をやり運搬をやっておる。こういう事態に対処するだけの準備が厚生省は満足にできますか。この点どなたでもけっこうです、特に災害に関しては医務局あたりの問題が起きてくると思うのですが、薬務局、医務局全般を通じて厚生省としていかがでしょう。
  89. 小澤龍

    ○小澤政府委員 医務局といたしましては特に災害防止という積極的な予防面においての研究はしておりません。ただ災害患者に対しまして緊急適切にいかに処理するかという点については研究しておるということであります。
  90. 野澤清人

    ○野澤分科員 満足なのですか。
  91. 小澤龍

    ○小澤政府委員 そのためには国立病院等につきましてはそれぞれ研究費が計上されてございますが、その研究費の中身の仕事といたしまして、その方面の研究もきわめて十分であるとは申し上げられませんけれども、逐次やっているような次第であります。
  92. 野澤清人

    ○野澤分科員 できたことですからこれはやむを得ませんが、少くともこういう近代科学の発展に伴う施策というものは厚生省全体として常に検討を加える必要があるのではないかというので、老婆心ながら御注意申し上げておきます。  それから薬務局長の方の関係ですが、医薬品の輸出振興対策費として若干計上されております。この内容についても私自身承知はいたしておりますが、輸出源としての医薬品の輸出というものは非常に重要なウエートを占めるものじゃないか。戦後のドイツの貿易の復興状況を見ましても、東南アジアから南米まで医薬品の輸出はほとんど独占事業と言われるくらいに広範な輸出を行なって外貨をふんだんに獲得しておる。ところが日本の輸出の実態を見ますと、今度の予算にも独創的医薬品というので五千万円計上されておるようでありますけれども、厚生当局としてこの重要な輸出源であって、しかも量が少くて技術料がたくさん取れるというようなものの輸出対策としては、もう少し広範な組織立った総合施策が必要なんではないか。たびたび尋ねてはいますけれども、的確なそういう施策が今まで生まれておらない。忙しいことも忙しいのでしょうけれども、基本的なこうした国策の線に沿えるような対策というものは一日も早く確立をして、予算が多い少いにかかわらず、とにかく一貫した方策を樹立しなければならぬと思うが、具体的に今後どんな振興対策を立てようとするのか、また独創的薬品だけが輸出源なのか、こういう点についての見解を明らかにしていただきたい。
  93. 森本潔

    ○森本政府委員 輸出振興の問題でございますが、わが国の薬業は最近終戦後十年間でやっと一人前の形になったというのが事実ではないかと思います。従いまして輸出の状況を見ますと昭和二十七年ごろからぼつぼつ出ております。最近になりますと生産額の約五%程度が輸出されておるような実情でありまして、大体毎年二、三割ずつの増加を示しておる。本年の目標は大体五十七億でありまして、これは達成されると見ております。緩慢ではございますが、一応ある程度伸びておるというようなことであります。  それでこれを根本的にもう少し大規模に計画的に振興方法を講じてはどうかという問題でありますが、これにつきましては今お話のように輸出源としての適格性は十分認められます。ただ問題なのは、輸出する場合には、外国にない薬を持つことが一番有利なやり方でございます。そういう意味におきまして、独創的医薬品の発明と、それの輸出の振興ということを第一に考えていく。それからその他の医薬につきましては競争品目がありまして、結局価格の問題になってくるわけであります。価格が安くなければ同じ品目で輸出できないという問題がございます。これらの点につきましては結局企業の合理化でありますとか、大量生産であるとかいうような根本的な問題を解決しなければ、輸出という考えだけではできないのではないか。そういう点で根本策を講ずる必要を感じます。それから直接の輸出の方策といたしましては、海外市場の調査でありますとか、海外宣伝、あるいはあっせん事業、こういう施策が考えられます。これらの経費は御存じのように輸出振興対策の経費一本といたしまして通産省に計上してございまして、本年度約十七億であります。これらの費用もこの医薬品につきましても当然使われるわけであります。ただここに書いてありますのは、医薬品だけの経費でありまして、一般の振興費の中で医薬品につきましても輸出振興に使う、こういうことであると思います。今後一そうやっていかなければならぬのでありますが、今申しましたような方策を総合的にいたしまして、その成果をあげて参りたい、かように考えます。
  94. 野澤清人

    ○野澤分科員 もう二点で終ります。ついでに薬務局長に伺っておきたいのであります。小児麻痺ワクチンの製造費としてわずかの金額が計上されておる。対象人員が七千五百人という費用が出ておりますけれども、これはただワクチンを作っておくという費目であげたのか、対象人員はもっとあるのだけれども、重点的にこれを使いたいという考えであげられたのか。  それからもう一つ、アヘンの特別会計についてでありますが、この歳入歳出の状況を見ますと、大体のバランスはとれておりますけれども、現在厚生省が監督いたしております麻薬類の密輸入の実績の状況はどんなふうなのか、その点を簡単でけっこうですが、承わりたい。
  95. 森本潔

    ○森本政府委員 小児麻痺ワクチンの製造でありますが、三十三年度実施いたしますのは七千五百人分の製造であります。この技術はわが国にはまだございませんので、予定では試験方法を確立する、検定方法を確立する、こういう目的であります。従いましてできました七千五百人分は大体試験用に使う、そうして翌年以後は本格的な製造をする、こういう計画であります。  それから次の麻薬の問題でありますが、これは最近の傾向といたしましては、違反件数から申しますと、約千五百人ほどの検挙をいたしております。大体横ばいの状況でございますが、御存じの通りアヘンはわが国にはほとんどできませんで、大陸でできます。大体香港ルートから参っておりまして、それらのルートで入ってきたものを検挙するわけでございますが、大体例年千五百人ほどの者を検挙している、こういう状態であります。
  96. 野澤清人

    ○野澤分科員 最後に児童局長に伺いたいのですが、婦人保護と児童保護の予算が出ておりますけれども、基本的な問題として補助費の内容の相違点、あるいはこの保護制度というものは一体施設重点を置いていくのか、運用面に重点を置いていくのか見当がつかぬような状態、たとえば今度の母子健康センターのように建物さえ作ればよろしいんだというような考え方からいけば、これはまた悪い弊害が起きる、一体どっちに重点を置いておるのかということが一点。  それから運用面で実際に効果をねらっているんだとすると、保母の待遇改善等が切実に叫ばれておっても、十年一日としてこれもさっぱり前進していかない。そうかと思うと相談員の、質的向上をはからなければならぬという、理屈は立っていますが、母子相談員にしてもあるいは児童相談員にしても、こうした面についての一貫性がないように考える。特に保育所なんかの問題を考えてみましても、施設が基本なのか、人的資源の運用が適切にいけば効果が上るのか、この点を第二点として伺いたい。  それからもう一つ、保健所の運営について、予算構成にきわめて不明確というか、不明朗というか、たとえば会計検査院から、当然とるべきものからとっておらないというような指摘を受けているようでありますが、この改善策について急速に何か代案でも作って、新たな保育所の費用等の徴収方法を考えておられるのかどうか、おられるならば早急にこれの対策をいたしますというだけでけっこうで、内容についてはいずれ詳細に拝聴できると思いますので、以上三点を伺っておきます。
  97. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 児童行政についていろいろ御注意をいただきましたが、お話のように児童行政それ自体出発が新しいために、いろいろ不備な点がありますことは私どももこれを認めておるところであります。大体従来の立て方といたしまして、たとえば親のない人でありますとか、あるいは精神的な、あるいは身体的な不自由な人でありますとか、そういう特殊な児童につきましては、収容して保護しなければならない者については、これはなるべく収容をして適切な保護を加えていく、そのためには収容施設等について、施設面から及び人的面から適切な運営と、それから量的な拡充をはかられるように努力をして参る、そういうことでございますけれども、しかしそういうふうにして収容をして保護するということは、これはやはり相当経費のかかることでございまして、一面においてはそれを必要としないように、たとえば家庭において十分手当をし、保護していける者につきましては、その面を強化していく、あるいはまた特に保護しなければ、特別の保護を加えなければならないような児童を生じないように、たとえば妊産婦、乳幼児の時代から十分の手当を加えて、いわゆる特殊な児童の発生を未然に防ぐ、そういうような対策を強化しなければならない。そういう面が非常にあるのでございます。私どももそういう面の伸張を志して参ったのでございますが、率直に申し上げまして、従来いわゆる終戦後の特殊な事情に応じて収容面に追われておりましたために、そういった面、一般児童の対策の面において、多少おくれをとっているということは事実でございます。この点は社会保障全般の運営の見地からも、その効率的な運営をはかる上からいって強化をして参らなければならぬ、かように考えております。施設の面につきましては、今申し上げましたように、人的、物的両面が整っていかなければならぬと思いますが、その面に努めて参りたいと思いますけれども、同時にこれはやはり施設の効率的な運営という見地から見ていかなければ、反省をしていかなければならない、検討しなければならない面も多々ございますので、これらの点については今後十分努力して参りたいと思います。  最後に御指摘の保育所の問題につきましては、徴収でありますとか、あるいは公けの経費補助のやり方等について、相当検討を要する面が多いと考えておりますので、これらの点については、この際児童福祉法の精神を生かすように十分一つ検討して、りっぱな対策を立てて、新年度から実施に移していきたい、そういうような考え方のもとにせっかく検討いたしておりますので、また後日お聞き取りをいただいて御批判をいただきたいと思います。
  98. 野澤清人

    ○野澤分科員 これで終りますが、ちょっと希望を申し上げたい。いろいろこまかいことばかりお聞きしましたが、結論として私厚生当局にお願いをしておきたいことは、経済白書等を見ますと、かなり計画的な行政面というものが強く打ち出されている。それから、実際の予算面を見ますと、積み上げ方式で厚生行政というものがだんだん伸びていくように感じられる。要するに一つの立体的なあるいは平面的な企画を持って、一角ずつ形作るというのならけっこうなんですが、実質を調べてみますと、れんが一枚々々ただ無計画に積んで、そうしてそれが国民とどの程度マッチするか、どの程度の効果があるか、——厚生行政というのは、積み上げ方式をとればいいのだという考え方が省内に横溢しているのではないかと考えます。全体として総合施策を立てられた上に、こまかい点についての基礎づけをやっていただくように希望申し上げて私の質疑を終ります。
  99. 山本勝市

  100. 田原春次

    田原分科員 厚生省の予算要求額事項別調では地方改善施設となっている問題、世間的には同和事業、われわれの立場からしますと部落解放運動という言葉を使っておりますが、いずれにしましても、同じ目標に向っての解釈なり運動方法の違いでございますので、ひっくるめてお尋ねしたいとお断わりしておきます。ただしきょうは本式の厚生大臣はいないし、また代用の厚生大臣も出ていないようでありますから、従って直接の局長それから政務次官から一応御答弁を承わって、満足できない点についてはあらためて十七日なり十八日に大臣に質問しますから、この点はあらかじめ委員長の御承認を得ておきたいと思います。  まず最初に、事項別調の十七ページの上から四行目の地方改善施設二千四百四十万、それから内容として隣保館七カ所、共同浴場十カ所と書いてあります項目について、こういうふうになりました経過、それからその当初の厚生省の要求、これらの説明を一応ここで承わりたいと思います。
  101. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 明年度同和対策の費用といたしまして、隣保館が七カ所と共同浴場が十カ所の予算が組んでございます。隣保館の計画といたしましては、大体同和部落のうちで四百世帯以上を持っておる地区が六十二地区ございます。そのうちすでに二十二地区ができ上りましたので、あとの四十地区につきまして今後できるだけすみやかに設置を終りたいと思っておるわけであります。それから共同浴場につきましては部落のうち二百世帯以上を持っておる地区が百五十地区ございます。そのうち既設の十地区を除いて百四十地区に対しまして、同様にできるだけすみやかに補助をして設置をしていきたい、こういうふうな感じでおるわけであります。  それでここに至りました経過を話せということでございますが、大体戦後はこういった問題につきましては、新しい憲法の精神もございまして、これをことさら取り上げて、そうしてまとめた行政にするよりは、各省の間で、自分の主管をいたしております仕事の上でそういう精神を生かして行政をやろう、こういったようなやり方になって参ったわけでございます。それで二十七、八年ごろまで進んでおったのでありますけれども、だんだん地方にいろいろ問題等もありますし、各府県におきましてもそういう要望があって、地方庁で予算を出しておるようなところもございますので、そこでまず厚生省といたしまして、自分の所管行政の中でやり得る仕事について、少しずつそういった問題について補助をしていきたいというので、まず取り上げられたのが隣保館であったのでありまして、共同浴場は昨年度からこれに加わったようなわけでございます。
  102. 田原春次

    田原分科員 各省にまたがる、あるいは各省ごとにやった方がいいという問題については各省でやるというお話でありました。それで厚生省としては隣保館と共同浴場をやる。共同浴場は二百世帯以上の地区が百五十あって、すでに十地区だけは共同浴場ができた、残りが百四十地区あるというわけですね。これは別に皮肉を言うわけではないが、今回の十カ所の浴場を作って、あと百三十地区はふろに入らぬでいいということですか。こういうものは年度を分けてわずかずつやるというよりは、急速に施設をして、あと設備改善等を次年度あたりに持っていくのがほんとうじゃないか。全然持っていないところが多いということは納得できない。どうしてこういうことになったのか。あなた方の努力が足らなかったのか、熱情が足らなかったのか、あるいは大蔵省方面の理解が足らなかったのか、まことに不満足なんですが、将来毎年十地区ずつやるとすると、十四年かからぬととても二百世帯以上には行き渡らない。そうすると五十戸、百戸というところは何十年もかかるといことになりますが、その点はどうなんでしょうか。
  103. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 一応計画を申し上げたわけでございまして、隣保館のごときは相当数今までに行き渡ったのであります。一ぺんに作りますということも、いろいろ財政上の理由もございますし、なおまた地元の部落の負担力等もございますので、できるだけ早い機会にそういう工合にするように、今後ともいろいろ予算の要求その他について努力をして参りたいと思っておるけわであります。
  104. 田原春次

    田原分科員 それから、別にあげ足を取るわけではないが、厚生省の説明の中にはどこにも地方改善という説明は出ておらぬ。もちろん初めに予算の概要を説明すると書いてあるから、一応二千四百万円くらいのものは微々たるものだというかもしれませんが、事の性質はそうはいかない。金額は少くても性質としてはもっと重要視すべきものだと思うのです。並びに厚生白書を見ましても、厚生白書には全然入っておらぬ。だから厚生省としてすでに熱意を失なっておるのじゃないかと思いますが、なぜ一体厚生白書ではこの項目を出さずに、それから予算説明の中にも抜けておったのか、これを明らかにしておいてもらった方がいいのではないかと思います。
  105. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 厚生白書に載っていないということは、田原先生から御指摘を受けるまで存じなかったわけでありまして、別に他意があったわけでございません。ただ予算金額が少いものでございますから、そういうふうな取扱いを事務的にいたしたものと思いますが、今後そういう問題につきましては十分気をつけたいと思います。
  106. 田原春次

    田原分科員 今後の対策で、地方改善はふろ場と隣保館だけで終るのじゃないと思うのです。しかしながら厚生省本来の仕事の範囲もあるので、厚生省としてはこれだけかと思うのですが、ほかの省の大蔵省あるいは農林省等を見ましても、特に地方改善を標傍した予算はどこも計上していないわけです。従ってもし厚生省がこれを取り上げるならば、むしろ率先してほかの省にも呼びかけて、ほかの省の所管として適するものはほかの省に出させるくらいの努力があってほしい、と申しますのは、密集した零細地帯は主として家内手工業であり、従ってまた事業資金の面においても、中小企業金融公庫もあり、住宅については住宅金融公庫もあり、国民金融公庫もあり、農林漁業金融公庫もありますが、結局貸さないのです。そこでどこが一体中心で押せばいいかということになりますとどこもない。一応中心らしいところは厚生省であるが、厚生白書にもうたってない、予算はわずか二千四百万円で説明の中にもないというので、中心がないことになる。さればといって国の方でも各種の支出があることですから、特にこのための一局を設けるとか、あるいは一省庁を設けることができないこともわれわれわかるわけです。それならそれで中心推進をどこに置くかということです。社会保障もしくは生活保障あるいは社会福祉と見るのか、あるいは政治全般の今までの立ちおくれからこういう犠牲者が出ているのか。せめて厚生省だけが、ともかくわずかでも地方改善施設という名前で載せているのですから、それならば厚生省が中心となって、零細産業については通商産業省、零細農業については農林省、こういうふうに関係経済省にも呼びかけて終始これを刺激し、必ずしも金を全部やる必要はないと思うのでありますが、生活の道の立つような方法を講ずるようにしなければいかぬと思うのです。その中心には、小額であっても地方改善施設費を見ている厚生省が今のところいいじゃないかと思うのです。みずから引っ込んで、経済関係は自分の所管でない、それはそれでするというようなことでなく、進んでこれらの関係省に呼びかけていくようにしたらどうかと思うのですが、あなた方のお考えはどうですか。
  107. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 同和地区の問題は、お話のように社会福祉だけの問題ではないのでありまして、もっと全般的一般的な経済問題等があることはもちろんでございます。そこで厚生省の今やっております役割は、そういった各省にまたがりますことにつきまして、厚生省がいわば窓口になるというような役割も実はいたしておるわけでありますけれども、微力でありましてなかなか思うようにいっていない点ははなはだ残念に思っておる次第であります。そこで四、五年前から同和対策連絡協議会というのを作っておりまして、これには関係各官庁の方も出てもらっております。それから民間の有識者にも三、四人入ってもらっておりますが、そういう機会に、今田原先生のおっしゃったようなことをできるだけ知らせ、またお願いをするようにいたしておるわけです。たとえて申しますと、同和問題にはいろいろ同和対策協議会等で作りました一つの案がございまして、どういう点が要望の要点であるかということもわかっておりますから、そういった資料もその機会には配付いたしまして、そうして各省の協力を要請いたしておる次第であります。たとえば、今住宅のお話が出ましたけれども、公営住宅等につきましては、建設省は相当やはり予算を配賦いたしておることも事実でございます。それから農林省にいたしましても、その他の省にいたしましても、私ども、そういった地区に一体どのくらいの予算が使われておるかということをいろいろ聞くのでございますけれども、農林省といたしますと、たとえば一つの村であるとか町であるとか、そういったものを中心に出しますために、その中にいろいろ入り組んでおりますところの部落に対して、幾ら出したということ等を精密に計算するということをいたしていないという点で、また正確な資料が得がたいという事情もあるわけでございます。いずれにいたしましても、そういう点はもう少し今後も力を入れて各省がほんとうに協力してくれるように、私どもも一そう努力をして参りたいと思います。
  108. 田原春次

    田原分科員 そこで私は、ここに一つの案を考えておるのですが、こういう案について、実現の可能性ありやいなや、それから厚生省がこの案の実現に努力してもらえるかどうかということをお尋ねしておきたいと思う。それは、部落内における主として家内工業、手工業的な仕事に対しましては、金融の便が非常にない。そこで高利で相対借りをする。そうするとまた非常な問題が次から次へと起るということで、経済的にまことに恵まれぬ立場にあるわけです。私はここに非常に突然な案でありますが、かりの名を同和金融公庫といったようなものを設立してはどうかと考えるのです。もちろん公庫というのはそう簡単にできないものと思いまするが、こういうものを作って、そうしてみずから政府の方のある種の預託を受けるか、または住宅金融公庫から毎年貸出額の一割なら一割、それから中小企業金融公庫の貸出額の中の一割なら一割、あるいは国民金融公庫の一割なら一割、あるいは農林漁業金融公庫の貸出額の一割なら一割というもののワクを同和金融公庫が一応預かって、そうして特別の理解と調査の上で、零細な、主として二、三十万円程度さえもなかなか調達することは困難なものですから、しかし一面、政府は輸出奨励なんといって輸出奨励をいたしましても、竹細工とかその他になると、やはり細部は同和関係部落の製品あたりが出るわけです。しかし資金がないということになっておりますので、従来の隣保館や浴場の仕事を続けるととも、経済面に少し出て行ってはどうか。これは厚生省であるから、経済官庁でないからやれぬということじゃなしに、今お話のように、各省連絡協議会があれば指導力をもって今から研究していく。大蔵省等も説いて、政府から何億かの金が出ればよし、出なければ、既存の公共的性格のある金庫から特にワクを出させてやれば、そうむずかしくないと思う。かように考えますが、これらの構想について、厚生省ではどういうように見ておられるか、これもこの際明らかにしてもらいたい。
  109. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 同和地区で一番困っておりますのは、適当な職がない、仕事がないということなんでございますから、中小企業、ことにいろいろ皮革の関係でありますとか、その他それぞれ独特のものもございますし、そういうものが振興いたしますならば、これは雇用量も増大いたしますし、何よりの振興策だと思います。私ども同和対策をやっております立場からいいますならば、そういったような特別な金融公庫でもできまして、そうして金融がうまくいって、中小企業が振興されるということは、非常に望ましいことだと思います。実は四、五年前でございましたが、やはり関西のある市の方々で、これは公庫ではございませんけれども、自分たちでそういうものを作るから、県や市でもって若干の出資をしてもらって、そうして金融をうまくやろうじゃないかというような案が出たことがありましたけれどもも、これはその後いろいろな事情がございまして、立ち消えになったような事情がございますが、やはり金融機関でございますから、ほんとうにそういう地区の人だけを対象にするということが果してできるかどうか、またそういったような場合にも、やはり回収とかその他というようなことが条件としていろいろ問題になるに違いないのでありますので、その辺のことは私どもよくわかりませんけれども、いろいろむずかしい問題があるようでございます。先ほども申しましたような協議会もあることでございますから、田原先生の御趣旨は、そういう協議会にかけまして、関係の省にもよく私の方から相談をして参りたいと思います。
  110. 田原春次

    田原分科員 地区を対象とした特殊な金融公庫的なものができるかどうかということについては、一応私も疑問を持ってみたのですが、大蔵省の出している銀行年報等を見ても、北海道東北開発公庫という東北と北海道だけの地区を対象としたものがある。たまたま北海道と東北にはいわゆる同和関係の密集部落がない。そこでそれ以外の、関東から中国、四国、九州にかけての特定市町村の中の一地区なんですから、これは理屈の立て方ですが、現に困っておる金融でもありまするし、何か話をすればできるのじゃないかと思う。なお貸し付けた場合に、回収が困難な場合もこれはあり得ると思う。けれどもその場合も、これも大蔵省の銀行年報を見ますと、奄美群島信用保証協会というのができておる。奄美群島が日本籍に正式に復帰した後において、かれこれ今のところは年間十億程度貸し付けた場合の保証だけの補給をしておるわけですな。北海道東北開発公庫の方は、政府が二十五億くらい毎年出しておるわけです。奄美群島信用保証協会の方は、貸し倒れの場合における保証として五億から十億見当出しておるわけです。それとは性質が違うといういたずらに分析論だけでなくて、必要論から来るならば、何かの形で金融公庫的なものを作るか、もしそれがはなはだしく困難ならば、商工中金の代理機関に信用協同組合というものがありまして、地域別に貸し付け、その調査、回収等もやっておるわけです。一種の代理店です。従って何かやるということであれば、全然似たような前例がないわけでもないから、さしあたり現在の資本主義機構のもとにおける零細産業に対する金融の国家的な措置をするというつもりでおれば、これは一種の財政投融資でありまして、金額も何十億ということにならぬでいいと思う。やってやれぬことはないと思うのでありますから、やはり来年度の問題として積極的にこの点を研究してもらえぬか。なおわれわれの方からも大蔵省その他にも積極的に勧めてみて、研究の空気を助長していきたいと思いますので、何だか陳情めきますけれども、一応これはせっかく予算の中に地方改善施設と入れておる以上は、もう少し経済面に対して、厚生省がバックとなって、関係各省が協力した零細金融機関を作るという方向に進んでもらいたい。政務次官はどうですか。何も御返事がないから熱意がないのですか、それとも熱意があるのですか、あなたの御意見を聞いておきたいと思う。なお本件については、いずれ大臣の答弁をあとで求めたいと思います。保留しておきます。
  111. 米田吉盛

    ○米田政府委員 最初に、本式の大臣も、また代理の大臣も出ないし、政務次官くらいでは物足らないというような意味の御発言がありましたので、その物足らない者がいろいろ申しましても、お気に入らぬだろうと思って、なるべく私は黙っておったのであります。(田原分科員「熱意があれば物足る方だ」と呼ぶ)私は基本の考えとしましては、田原委員と同じような考えを持っております。しかし今日、中小企業全般の問題としまして、金融が非常に梗塞しており、これを打開することが刻下の重要な問題になっております。正直のところこれは部落だけの問題ではない。日本人全体が、低所得者があえいでおる、その数があまりに多い、こういうような考えで全般的に見ていくのが、将来こういう部落関係というものをなくす方法じゃないか。私は基本的の考えとしては、終戦直後にありましたように、同じような立場でなくしていく、ものの考え方は、部落だ部落だということで特別扱いにしない方が、かえってこういうものがなくなっていくのではないか。私はそういうような考え方で、正しい一般国民と関しまして生活に困るという場合については、一般の水準で強くこれを推進していくべきじゃないか、特別に最近のような傾向に扱われるということは、かえって部落民のためにならぬ結果になるのではないかと思います。大体忘れつつあるのにまたそれを呼び起すような結果になってはいかぬのじゃないか。私は一般の貧困者という線で十分に強力に推進していくべきじゃないか、こういう考え方であります。
  112. 田原春次

    田原分科員 これは議論の分れるところですが、今の政務次官のようなお考えの人も相当あるわけなんです。しかしながらそういう議論と、現実に生活に困って、事業資金もない人の問題がある中で、何も金融公庫を作ってみたからといって、あるいは信用保証協会のごときものを作ったからといって、それで特に差別がひどくなるものではない。これは議論ですけれども、やはりやれる限り政府はやるのでなければいかぬと思うのです。今あなたの御答弁の中にも、一般の零細事業者に対する資金の供与でいいと言いますけれども、現実には中小企業金融公庫その他へ行ってもこれは返さぬだろうから貸さぬということになって、制度を作った当時の金融公庫の精神と、実際に金融公庫が独立企業体でやる場合には違う。返還能力ということを問題にするためにどうしてもあと回しになってくる。そこで暫定的といいますか便法といいますか、中間的な機関を作って、それ自身は資金を持たなくても、各金融公庫からワクをあっせんするというようなことで、公庫形式にするか、または信用保証協会的なものにするか、これは専門家でないとわからぬけれども、努力をして、現在困っておる者を助けるいろいろなものがある中の一部をさいていってはどうか、そういう意味であります。これは討論になりますし時間がありませんからして、私は希望を申し上げて質問を終りたいと思います。
  113. 山本勝市

    山本主査 ちょっと今の問題、私からお尋ねしますが、この項目に地方改善施設ということになっていますが、これじゃちょっと読んでも何のことやらわからぬ。今田原さんが真剣に取り上げられて内容がわかったわけだけれども、国会でこうしてはっきりと問題にされて、解決を要する問題としておるのに、こんな変な名前をつけたというのはどういうわけですか。地方改善施設というのじゃわからぬですよ。
  114. 米田吉盛

    ○米田政府委員 これはずっとこういう言葉で最近きておって、これでわかっておるのです。こう言えば今の同和事業をさすんだ、代名詞だ、こういうことは一般にわかっておるのです。今までそれは問題になってきませんでした。
  115. 山本勝市

    山本主査 これは問題になるのならはっきりとすべきで、何か及び腰でかかっておるということがこの言葉の中に表われておるのじゃないか。田原さんがあれだけ真剣に自分ではっきりと内容を示されて言っておるような問題を、名前などを変えてカムフラージュしておる。わかっておるわかっておると言うが、これは説明を聞かないと日本人でもわかりませんよ。その人はわかっておるかもしれぬ。それで私主査としてちょっと承わっておったのですが、国民金融公庫は地方に対しましてはなかなか貸さぬところもありますけれども、支払い能力に応じて金額は少くとも必ず貸すのが当りまえなんです。それで府県によっては、たとえば埼玉などは申し込みの七四、五%は貸しておるのです。それは金額は減らしますよ。ですからこういうところで特に貸さぬなどということがあれば、これは重大問題なんで、私は大蔵委員ですが、そういうことがもしあったとしたら大蔵委員会あるいは通産の中小企業関係は放置すべからざることだと思うのです。私はそういうことはないのじゃないかと思うのです。それで資金組合を作ってやればある程度楽ですが、支払い能力がないという場合はこれはかえって借りた者も迷惑するし貸した方も迷惑します。私は田原さんが一生懸命にやられておるのを承わっておったのですが、むしろその点ならば大蔵委員会でやるべきじゃないかと思うのです。
  116. 米田吉盛

    ○米田政府委員 ちょっと速記をとめてもらいたいのですが……。
  117. 山本勝市

    山本主査 速記をとめて。     〔速記中止〕
  118. 山本勝市

    山本主査 速記を始めて。滝井義孝君。
  119. 滝井義高

    滝井分科員 概括的に厚生行政についてちょっとお聞きしたいのですが、その前に環境衛生関係でぜひお聞きをしておきたいのです。  それは丹下という建築家が、東京は窒息しつつある、病気である、こういうことを二、三日前の朝日新聞だったかに書いておったと思うのです。今や東京は大手術を必要とする、日本人が十年間でこれだけの世界一の大都市を作った、そのエネルギーは大したものだ、しかしこの東京の実態を見ると、東京は大混乱の大都市なんだ、そのエネルギーというものに秩序が与えられていない、こういうことをまず第一に書いております。同時に空から東京を見ると、東京というものはちょうどカタツムリのようなからをしょっているんだということなんです。ということは、この東京という都市は大きく膨れ上っているけれども、そこにはわが家意識、わが党意識、わが集団意識というきわめて封建的な意識が支配をしておって、そして社会的な意識がないんだ、市民的な盛り上りがないということを同時におっしゃっているわけですね。さらに第二番目には、東京には続続とアパートが建っておる。外国ではアパートが建つような場合には、まずそこに教会ができ、クラブができ、商店街ができ、そしてアパートができていく。ところが日本ではアパートができる、しかしそこには何らの社会性がない、盛り上りがない。あじけなき、いわば集団の寝床ができているだけなんだということを同時に書いてある。従ってもはや東京というものは窒息をしておる。だからこれは大手術を必要とするのだということを書いておるわけなんですね。私はそれを読んで、実はあの衆議院の九段宿舎の屋上にふとんをほしてみた。ところが驚くなかれ一時間もたたないうちに、そのまっ白いふとんの上に黒々した煤煙が乗っかるのです。今年のこの厚生省の予算を見ると、環境衛生対策費十七億五千三百六十六万三千円を計上されておる。そして首都圏施設整備一億八千八百三十万円を計上されておるのです。この十七億の予算をずっと見ると、主としてわれわれの排泄物の処理と下水の処理が主たるもので、青空を見上げることが何にもないのですね。もちろん私たちは原子爆弾を受けた国民として、放射能を含んでいるちりの問題を解決しなければならぬが、それより前に鉱害の中の、特に煤煙の問題というのをやはり考えなければならぬじゃないかという感じがするのです。多分昨年のこの予算委員会分科会であったと記憶しておりますが、神田厚生大臣は、鉱害防止法というようななものはできないが、煤煙とかあるいは個々のものについて、やはり一つ考えなければいかぬ、と同時に汚濁水の防止、たとえば典型的な汚濁は日本の淀川、それから炭田地帯を流れておる遠賀川というようなものは、世界保健機構のH・G・クラッセン博士がいつらっしゃって、もはやあれは飲用水に適合しないのだという水が、今平然と飲まれているわけです。そういう鉱害の問題が非常にひどいのですが、何としてもまず典型的な例は今言ったように東京なんです。いろいろ資料を見ておったら、たまたま東京都の環境衛生課なり都の公衆衛生部が出している資料が目についたのですが、丸ノ内とか麹町は一平方キロで一カ月に百六トンの煤煙が降ってくる。それから日本橋が五十トン、小石川、新宿が二十トン、平均して二十八トンということになると、まっ白いふとんをほすとそれが一時間もたたないうちに黒く煤煙が降り注いでくるということはむべなるかなという感じがしたのです。一体厚生省はこういう問題をどう考えておるかということなんです。私の友人がいなかからやって来た。そして東京の子供と女を見て、東京の女はこんなに足が小さくて、おしりがこんなに小さい、一体あれで子供が産めるだろうかという疑問を私に投げかけた。そして東京の子供も、やはり同じように色が青いのです。なるほど資本主義の世の中では大都市というものは、もう三代目には唐様の文字で売家と書くということと同じように、だんだん強いやつがいなかから出てくる。その二代目くらいはいいが、三代目くらいになると敗残者になって、ボーダーライン層になって、次に新しいのが出てくるという、こういう人的な循環が肉体的に行われているのかもしれません。しかしこれは文化の面からいっても人物経済の面からいっても、これはきわめて不経済、不合理なことだと思うのです。そこでいなかから僕らが出てきて痛切にこの東京の空気の悪さを感ずるのです。鉱害防止とかなんとかいう大それた大きな法でなくて、まずこの煤煙の問題を片づけなければいかぬと思うのです。ロンドンは一平方キロ当り十五トン、リヴァプールが二十一トン、グラスゴーが十六トン、東京が二十八トン、大阪が三十トンで、宇部のごときは五十トンだそうです。われわれのいなかでもこのスモッグというやつが出てくる、どういうときに出てくるかというと、石炭のボタからシャモットというものを作りますが、このシャモットというのは製鉄所の耐火れんがの原料になるわけです。そのボタを焼いてシャモットを作るときに非常に濃厚な煙が出ます。それから石炭の粉末から燃料の豆炭を作るわけです。これがやはり同じように煙を出すのです。これは人間に非常に大きな危害を与えますが、そういう煤煙の形のものとすすの形のものと、二つあるのですが、これは学問的に見ていけば紫外線を非常に減らしておることは事実です。それからそういうことのために栄養失調状態が起る、あるいは骨の発達がおくれる、あるいは呼吸器を害するし、同時にこれがスモッグを作れば交通事故を来たすというように、非常に大きな害毒を与えておるのです。首都圏の整備をやろうということで一億八千万円ばかりの予算をとっておるのですが、下の方の話ばかりでなくて、一つ青空を仰いでみる必要があるのではないかという感じがするのですが、こういう点昨年立法をやるということを言明されておったのですが、今度の国会で厚生省の提出予定法案を見ると、そういうものは影も形もないように思います。一体どういう工合にお考えになっておるのか。窒息をしている東京を何とかして救ってもらいたということなんです。
  120. 尾村偉久

    ○尾村説明員 ただいまの煤煙による被害の問題でありますが、ただいまのお話の通りで、厚生省ですでに設けております鉱害防止対策委員会というもの、これは法律によるものではございませんが、これを設けまして、関係の学者に委嘱いたしまして研究をしてもらい、その結果を持ち寄りましてまた討議をするという会を持っておりますが、一月に学者の方々に集まっていただきまして研究を発表いただきましたところ、それぞれ研究対象になっておりました地域の内容が、中間報告でございますが、ある程度出ました。やはり相当憂慮するような濃厚な地帯も幾つか指摘されております。そこでわれわれといたしましても昨年の国会でお約束のような形になっておりますので、これを至急何とかしたいということで、どういうふうにこれを規定すればその地域の煙がほんとうに害以下になるかということを相談をかけたのでございます。結局これは空気中に含むそういうような有害物の基準をきめなければいかぬということであります。しからばその基準をきめるのにはどこから先が大衆に相当影響するかということを見つけ出さぬと、ある程度法で規制する基準が出ないということでございます。さらに学者の意見といえども、今直ちにまとめて、こういうことでなければいかぬという線がまだ出にくいということで、至急出すためにもう少し継続して研究したいということで、三十三年度におきましては主として今まで大体見当のつきました濃厚な地帯を対象にした研究を、厚生科学研究費によりまして続行する。しかもこれは今までのように地域を見出すのではなくて、今の地域における適当な基準量を見つけ出すということにしぼりまして研究を進める。そのためには相当数の医学的な研究、人体の方から見る研究もしないと何でございますから、こういうような内容で進めるということの話し合いがきまったわけでございます。従いましてこれをできるだけ急いで、早く結論が出るように、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお先ほど出ました遠賀川等の問題、これはまっ先に厚生省で取り上げまして、昨年以来これを法規化するということを進めた結果、これとの関連は各省にわたりますので、経済企画庁がこれの取りまとめ役になりまして、水質汚濁防止法案として経済企画庁の方でまとめて上程するということになりまして、そこのところまで各省から審議会の委員が出まして法案を練ったわけであります。そこから先は経済企画庁の方で着々準備中であると承知いたしております。
  121. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、あとの方から聞いていきますが、水質汚濁防止法案というものは今国会に提出できる見込みなんですか。
  122. 尾村偉久

    ○尾村説明員 これは経済企画庁の所管でいくということになっておりますので、われわれの方は今国会に提出してほしいという希望を、その審議会の構成委員といたしまして厚生省側から表明しております。
  123. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、煤煙防止の立法は今度の国会ではできないことになるわけですか、今のような調査をやらなければならぬので。
  124. 尾村偉久

    ○尾村説明員 今度の国会はまだ会期が相当ございますので、今の研究取りまとめの進み工合によりましては、基準を法案化することが可能になりますれば、全然出さないというようなことをきめる必要はないと思います。今の見込みでは、先月の各学者の意見発表の内容では、ごく最近の期間のうちにこれを法案化するにはまだ資料が不足でございます。
  125. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、かたい見通しでいけば、今度の国会はどうもむずかしいかもしれぬ、こういうことなんですね。問題は、煤煙というものは工場地帯には案外少いんですね。なぜ工場地帯に少いかというと、結局工場地帯はその煤煙を出すボイラーと煙突がいいのです。ところが工場のない都市のまん中の、千代田区の麹町とか丸の内になぜ一体煤煙が一カ月一平方キロに百六トンも落ちてくるかというと、結局これは暖房装置の問題なんです。ビルにある暖房の煙突、ボイラーが悪いという点に帰着してくるのではないかと思うのです。一体こういう点について厚生省は何か基本的な調査なり取調べをやったことがあるのですか。
  126. 尾村偉久

    ○尾村説明員 都会に降ってくる煤煙量は、先ほど言いましたように、各地の委員会委員諸公に委託をいたしまして、先般中間報告がされました。ただそれの源になるものが主としてどの種類の煙突から出るかということは今のところまだ的確な結びつきの資料は出ておりません。しかしながら都会地における原因の探求はぜひ必要であるということはその委員会でも討議されました。これがどこから来るかという一つ一つの原因探求は非常にむずかしいそうでございますが、これは府県並びに市でありますと、大きい市は市自身の協力を得なければなりませんが、この方と協力いたしまして、今後の調査対象にしたいと考えております。
  127. 滝井義高

    滝井分科員 東京においては、大体家庭的な燃料はガスか電気でやっておるわけです。いなかみたいにそう豆炭をたいたり、まきをたくということは少いわけです。煤煙の出る原因を探求していって、中心的な官庁街その他に多いということになれば、ふろと暖房以外には主たる根源というものはないのではないかという感じがするのです。従ってそういう点を少し探求して、ある程度の予防措置をまずそこらあたりから打っていくことが必要ではないか、ということになると、ボイラーの問題や煙突の問題になるとこれは必ずしも厚生省ばかりではいかないかもしれません。どこかほかの官庁もあるかもしれませんが、これはやはりぜひやっていただかなければならぬのじゃないかと思うのです。九百万になんなんとする人口がやってきて、密集して、そして交通は激しいし、みんなノイローゼになっておるという状況で、空気が悪いということになれば大へんなことだと思うのです。従って私は、首都圏整備のために、終末の問題とともに一つ青空の問題も考えてもらいたい。姿勢を正しくして、地上ばかりを見ずに青空を見ようじゃないかという厚生行政をまず環境衛生からやってもらいたいというのが私の第一のお願いです。  それからその次は結核対策なんですが、日本の厚生行政の動きをずっと見てみますと、今から三、四年前のキャッチ・フレーズは結核対策だった。それから一、二年前までは国民皆保険だった。ところが今年からは国民年金がキャッチ・フレーズになっちゃった。従って次第に一番初めに大きく国民的な輿望をになって取り上げられた結核対策というものが、今や予算的に言うと忘れられ、今年は国民皆保険が忘れられようとしておる。そして今やそれにかわって年金が登場してきたわけです。私は年金に火をつけたが、同時に今度はもう一ぺん前のを反芻してやる必要が出てきたと思う。年金制度を打ち立てようとするなら、まず何といっても結核対策と皆保険という土台がしっかりしていなければ、その上にできる年金制度は砂上の楼閣だというのが私の感じなんです。そこでお尋ねをいたしたいのは、ことしの結核対策の予算を見ると、しみじみと昔ながらの道を歩いている結核対策しかとられていないということなんです。ところが昔ながらの結核対策というのは何かというと、予防の中心を保健所に置き、治療の中心を結核療養所に置いておる。そしてアフター・ケアの中心を後保護施設に置くという、こういう三つの方策をとって結核対策が進められてきた。ところが進められて三、四年たつと、はなばなしく登場した結核対策は、予防の中心である保健所の機構が整備されないままで、いわゆる技術者の充足率が七割そこそこのまま依然として歩みを続けてきておる。だから予防の中心の保健所の充実を見ないままで結核対策というものは今やキャッチ・フレーズから消え去らなければならぬ運命に陥った。それから療養所の充実も万全を期さないままに、新しい抗生物質の出現によって療養所はもはや空床ができ始めた。と同時に療養所の空床を満たすためには皆保険政策が徹底しておらなければならぬ。ところが皆保険政策もこれまた徹底しないままで老兵は消え去ろうとしておる、こういう形です。従って、結核療養所に入院している者は生活保護の患者かあるいは健康保険の被保険者以外は、国民健康保険の諸君も入院できなければ、健康保険の家族の諸君も半額負担のために入院ができないという事態が起ってきておる。それからあとの後保護施設に至っては何をか言わんやという不徹底のままなんです。そうすると、日本の結核対策というものは、三、四年前に高らかに掲げて、二十八年に結核の実態を調査し、二百九十二万の治療を要する結核患者がおり、百五十三万の入院を要する患者がおるということがわかったのだけれども、それが何らしりぬぐいされずに、そのままやってきた従って私は、ここらあたりで日本の結核対策というものをもう一回考え直す必要があるのじゃないか。なぜならば、予防の中心の保健所も充実ができないし、それから入院ができるような態勢が大衆の間に経済的にできていないとするならば、日本の結核による死亡がぐっと落ちてきた今の段階でその政策を打ち出すことが時期的には一番いいわけなんです。政策というものが昔ながらの考え方で金をくれないとするならば、一体どうしたらいいかという新しい工夫と創意が日本の結核対策に必要じゃないかという感じが、私はことしの予算を見るにつけて、あるいはキャッチ・フレーズがだんだんと国民年金に移るにつれてしてくるのです。日本人は好きやすのあきやすだと言われ、非常に熱しやすくてさめやすい国民だと言われることが、こういうことにもよく表われていると思うのですが、そういう国民性にのっとった結核対策というものが何かないかということです。これは私は非常に根本的な問題だと思うのです。こういう点、案外しろうとの政務次官の方が的確なものを教えていただけるのじゃないかと思うのですが、今私の考えを述べたのですから、まずそのしろうとの次官の考え、それから専門家の山口さんの考えを一応お聞かせ願いたいと思います。
  128. 米田吉盛

    ○米田政府委員 先ほどから大へん該博なお考えを拝聴して、われわれ非常に参考になりました。今の結核の問題についてはいろいろ考え方がありまして、結核患者の治療は一本化してやっていく、こういう考えが大体今日結論的には妥当じゃないか、私はしろうとの考えとしましてこういう考えを持っております。各保険でいろいろやるというよりも、結核予防法というものを強化して、それの裏づけ予算をとって、いやしくも結核である者はこれを一本で強力に推進する、この態勢なくしては私は撲滅はなかなか時間がかかる、こういう考えを持っておりますので、私どもとしましてはそういうことを基本に今後は施策を考えていきたいと考えております。
  129. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 結核対策が過去数年間にいろいろ形を変えつつあるということで、結核の状況も変ってきておる、従ってこの際新しい考え方でいくべきではないかという滝井先生の御指摘でございますが、現在私ども結核の医療の面、それに伴っての結核患者の推移を見て参りますと、やはり先ほど御指摘になりましたように、医療費の裏づけのある階層では、患者の数の減少が非常に著しくなってきております。これに比べて医療費の裏づけのない無保険階層のところの減り方が少い。しかし全般的に見ますと、これはやや下向きになっておるということであります。そこで結核対策を今後進めていくのに、どういうやり方をやっていったらいいかということでございますが、やはり結核対策の常道は健康診断に始まる予防、それからその発見された患者に適正な医療を与えるということが常道だと思うわけでございます。そこで健康診断について従来のやり方が保健所中心である、そして依然として三十三年度予算でも保健所中心であるというふうな御指摘でございますが、これは必ずしも私どもはそういう考え方で三十三年度計画考えているわけではございませんで、保健所の現在の整備状況からしますと、健康診断をいたしますにしても一定の限度がございまして、保健所は保健所なりに健康診断をやると同時に、別に予算でお願いしております検診班の活用によってレントゲン自動車を活用する、あるいは公的医療機関、医師会等の協力を得て、いろいろな地区における計画は保健所が立てますけれども、実際手を下すのは決して保健所中心主義ではないという行き方でいきたいと考えているわけでございます。それから治療の面につきましても、決して療養所中心というようなことではなしに、やはり早期発見、早期治療ということで、現在の結核の状況から見ますと、早期発見された患者は、必ず療養所に入所させないでも、一般医療機関で十分にその成果を上げてもらえるということがはっきりいたしておりますので、治療についてもそういう線を今年度予算で幾分出しているわけでございます。しかし根本的には当初私どもが考えましたように、また先ほど政務次官がお答えになりましたように、全般的にそろったレベルで全国民が同じように結核の健康診断を受け、医療を受けられるように持っていくということはぜひやっていかなければならないと思うのでありますが、限られた費用を使います際には、これは次善な方法になるかもしれませんが、いろいろな医療費の裏づけのない人たちに重点的にやっていく。そうして医療を同じように受けられるように、健康保険の被保険者その他相当結核の医療を受けている人たちと同じ程度に、ほかの人たちも医療を受けられるような方向へ持っていきたいというふうに考えたわけであります。従って従来のようにのんべんだらりと無差別平等というのじゃなくて、私どもの考えとしては、今後、これは財政的ないろいろな関係もありますが、やはり一番社会保障の手の伸びていない人たちに重点的にこの結核対策費を注ぎ込んでいく、そうして国全体が同じようなレベルで結核の検診なり医療が行われるように持っていくべきだというふうに考えております。     〔八田主査代理退席、主査着席〕
  130. 滝井義高

    滝井分科員 政務次官が結核対策は治療の面を一本化してやりたい、これは私も同感なんです。三十一年の十一月八日であったと記憶しますが、内閣の社会保障制度審議会が医療保障に関する答申を出しまして、日本の経済の成長率と見合いながら国庫支出が可能な額というものは、少くとも結核対策においては三百億ないし四百億支出可能なんだ、またこれだけ出せば日本の結核対策というものはうまくいくんだということを、二年前に教えてくれたんです。ところが依然として、うまいことを教えてくれたけれども、しかもそれは財政的に見て支出可能な額であるという折紙がついておるにかかわらず、厚生省が結核予防法に基く公費負担分を三分の二ぐらいにしようとしたり八割にしようとしたりしても、一向にその鉄砲はから鉄砲に終っているということなんです。私はこういう事態というものは結局現実の日本では死亡が減ったので、政治家というものが結核対策をもはや忘れかかっておる、こういう状態が出てきている一つの具体的な証拠じゃないかと思うのです。そしてもはやすでに次の段階の年金というものが大きく論議をせられておるということなんです。もし政務次官の言の通り、ぜひ一本化をやるというなら、ことしは過ぎたのですからやむを得ません。来年のことを言うと鬼が笑うと言うかもしれませんが、やはり一年の計は元旦にあるので、一つ来年そのことをやるなら、今からやはり足固めをして、来年は八割負担を確保する、こういう決意でいかなければいかぬと思うのです。私も来年は国会議員であるかどうかわかりませんが、来年この問題は一つむし返したいと思うのです。何回もむし返しておかなければ、もはやこれはどうにもなり得ない状態なんです。今ぜひ皆保険政策なり国民年金をやろうとするなら、結核対策というものはすべてに連なっておる大事な政策でございますから、ぜひ努力をしてもらいたい。今の答弁ではどうも昔ながらの答弁で、満足はいきません。それは健康診断をやることは何より先決であることはよくわかっておる。しかし健康診断をやって百万人の結核患者を見つけ出しても、その百万人の結核患者に、結核患者であるという烙印を押すだけの効果しかなくて、あとは何にもないということです。烙印を押された百万人の結核患者の中から何人かの自殺者を出すという悲劇を助長こそすれ、日本の結核対策の前進、現在の結核対策の一番基礎をなす予防というものがなっていないということを、われわれは認識をしておらなければならぬということです。こういう点については、まあよくわかっている厚生省に言ってもしょうがないことなんです。しかしまずそういうことを十分われわれはやはり大衆に認識をしていただいて、一つの世論としていく政治でなくちゃならぬ、こういうふうに思うのです。もう少し私も考えますが、一つ厚生省当局も、行き詰まった結核対策、忘れかかろうとしておる結核対策を一体どうしてこの際もう一回大衆の脳裏に植えつけて、そうして一つの転機を作っていくかという大事な時期がきていることを、私は警告しておきます。  次は年金の問題ですが、今度その年金の準備費として千百五十万九千円が計上されておる。昨年より八十万ばかりお金が多いのですが、一体どういう段取りで厚生省は国民年金を確立する所存なのかということなんです。これは今申しますように、皆保険もできていないし、結核対策も不十分なところに国民年金を今からやるのだが、一体どういう段取りでおやりになるつもりなのか、この一つ段取りを、厚生省の考えておるどういう段階を経て国民年金を作っていくのかということをお教え願いたいと思う。
  131. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 便宜私からお答え申し上げますが、国民年金制度は、あるいはそれと関連する一連の年金制度を全国民に実施いたしますということは、これはそれ自体なかなか大へんな問題でございます。そう一つの案ができたからといって、すぐ翌年からできるという筋合いのものではないことは申すまでもないところでございます。片方におきまして、国民皆保険という問題等がございまして、これもあるいは御指摘にもありましたように、私どもとしてもまだ決して満足すべき段階ではないというふうに思っておるのでありますが、順序から申しますれば、やはり皆保険というものをとにもかくにも達成いたしまして、そういう日常の医療の面、そういう面を解決し、それからその年金の問題は、それに応じてその次の段階へ出てくるというのが一つ考え方かとも思うのでありますが、しかし今日の社会の要望は、この皆保険と並行と申しますか、並んで、やはりこの年金制度も相当熾烈な要望となって早期実施が望まれているように私ども感じておるのであります。政府といたしましても、その辺のタイミングをどういうふうに調整していくかということは考究しておるところでございまして、なかなか簡単に、明確にぴたりとそろえるわけにはいかないと思うのであります。正直に率直に申しまして、ただいまのところ一昨年からですか、社会保障制度審議会に諮問しておりまする年金の基本的構想が、今年の五月ごろには答申があろうかと考えております。また厚生省の年金委員も相並行いたしまして、ただいまそういう方面の具体化の、これは基本的構想が出てからそれにとりかかったのではあるいはおそくなろうかと考えまして、相並行して今審議を進めておる段階でございます。これも早晩のうちに何らかの結論が出てくるであろう、その過程におきまして、私どもはいろいろあれやこれやというふうな問題点をとらえては試算もしてみたこともございますが、いろいろ考えておる、こういう段階でございまして、これはやはりその基本的な構想及びこれに基きまする具体的な年金委員の結論というようなものをにらみ合せまして、その上で、また片方の国の財政状況なり国民経済等もにらみ合せまして、結論を出したいと思っております。気持といたしましては、今日としてはなるべく早くこれを実施することが国民の期待に沿うゆえんではなかろうか、こういう程度に考えておる次第であります。
  132. 滝井義高

    滝井分科員 どうも今の御答弁では、どういう段取りでやるか、段取りがきわめて抽象的ではっきりしないのですが、もう少し、やはりこれだけの国民的な世論として年金問題が巻き起ったからには、一体どういう手順でやるかということを政治としては示してもらわなければならぬと私は思うのです。特に政局を担当している与党側からそれを明確に示してもらわなければならぬと思うのです。そこで一つ具体的に尋ねてみますが、一体それじゃ厚生省は恩給との関係をどう考えておるかということです。あとで援護法関係  が出てきますが、国民皆保険と並行して年金をやられるとするならば、もう一つの範疇に属する恩給との関係を一体どう考えておられるか。
  133. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 この点は、先般国会におきまして総理大臣が答弁申し上げました中にあったと存じますが、恩給制度というものは、それ自体は社会保障制度ではございませんけれども、その中には、社会保障制度的な要素もあろうかと存じます。そういうような面を考えまして、将来はそういう面につきましては、こういう国民年金制度との間の調整をはかって、むしろ国民年金制度中心考えていきたいという気持を持っております。ただし、現実には今日の社会情勢におきまして、恩給制度、その中にございますいろいろな不均衡な面を是正する措置というものは、これはそれ自体として、適切な処置をとることを認めざるを得ない、かように考えております。
  134. 滝井義高

    滝井分科員 恩給の中にも、社会保障的な要素がある。従って不均衡は是正をしていく。そうしますと、総理は、年金と恩給との調整をはかると言ったのです。私は、そのとき実は具体的に調整とはどういうことをするのかということを聞きたかったのですが、総理はしろうとだから、そう聞きもしなかったのですが、厚生省は、少くとも年金問題を担当する主管官庁なんです。そうすると、恩給と年金との調整というと、一体具体的にはどういうことをお考えになっておるのか。
  135. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいま正式にお答え申し上げるのは、しばらく御猶予いただきたいと思います。
  136. 滝井義高

    滝井分科員 実は年金の調査、基本的な調査のお金を出したばかりです。従ってやっぱり国民の一千万円という血税を使うからには、やはり腹がまえ、ものさしというものは作っておかなければならぬと思うのです。そうしないで、ものさしも何もなくてやっていくところに問題があるのです。それじゃ厚生行政も、ちょうど日本の自衛隊の潜水艦を作るのと同じです。私は午前中向うで潜水艦の話をしてきた。日本の潜水艦というのは、一体どうして作っておるのか、まず船体と機関部というものはある会社に持っていく、二十七億の潜水艦を作るのに、十四億だけは一つの会社に作らせる、あとの残りの十三億はどうなっておるのか、十三億はほかの会社に別ないろいろなものを作らして、その会社に官給品として渡しておる、そうして進水する、進水すると、潜水艦に何も武装がない、一体この武装はどうするのか、これはアメリカからもらってきます、アメリカからもらってきた大砲が重たかったら喫水が違ってきたりする、それが問題なので、潜水艦の向うからくれるMDAPの兵器がまちまちなので、潜水艦を作るのはいつも長引いております、こういう答弁と同じです。これじゃ厚生省、防衛庁同じことになる。額が、向うは二十八億の金を何も計画なくうやむやに使っておるのと、一千万円の額の違いだけなんです。しかしこれは国民の税金であるという点については同じです。なけなしのわれわれの膏血であるという点については同じです。そういうことでは困る。少くとも政府、与党が年金をやると言ったならば、その腹がまえはなくちゃならない。太宰官房長に言ってもしょうがない。堀木厚生大臣がおれば、堀木さんに言わなければならぬが、大臣いらっしゃらないので、政務次官も御無理だと思いますが、しかしこれでは私はいかぬと思う。総理が恩給との調整をやると言うならば、具体的にいかに調整するかというようなことを、私はやっぱり聞かしてもらわなければならぬと思う。ところが具体的に調整をどうするかということになる、それがわからぬということでは困ると思う。  そこで私はお尋ねしたいのは、現在国民健康保険のためにわれわれ被保険者が負担しておる一世帯の一年の額は、二千八百円程度です。三千円を割ります。ところが二千八百円の国民健康保険の保険料を、全国の、今三千四百万くらいになっておるかもしれませんが、三千万ちょっとこえる被保険者の諸君は納め切れない。その一世帯二千八百円を納め得ることのできない大衆諸君の上に、今や国民年金をかぶせようとする。国民年金をかぶせるとするなら、わが党が専門家にしてもらった具体的な調査でも、三十五年掛金をして、三十五年の後に八万四千円をもらうためには、現実の国民所得と現実の状態において、少くとも一年に二千円はかけなければならない。月に百五、六十円はかけなければならない。月に百円だけがけるにしても、これは一世帯一人に直しても、厚生省の案のように女性はかけない、男だけだということにしても、月に百円をかけると、一年に千二百円になる。千二百円を積んでいくのです。一体日本の人口の四割を占める農村の諸君がこれに耐え得るかどうか、耐え得ないのです。そうすると、恩給と調整して国民年金をやりますといったって、具体的にそれを保険料の面からまず考えてきたときに、日本の国民経済の状態では、今の予算編成の方針のもとにおいてはどうにもならぬ。そうすると国民年金というのは、数字の上からできないということなんだ。できないならば、今の恩給との調整を具体的に一体どうするかという、この方針を主管官庁としての厚生省がはっきりしなければ、国民年金というキャッチ・フレーズはおろしてもらわなければならぬ。社会党の独占物にしてもらって、保守党の内閣は一つおろしてもらわなければならぬ。今はそれ以上答弁ができないそうですから、もう少し堀木厚生大臣が病気がなおって出てくるまでには、一つ年金の具体的な構想を、基本的な方針だけは打ち出してもらって、その基本的な方針に基いて、具体的な調査費九百九十二万円というものを使ってもらわなければならぬ。何も目標もなければ、腹がまえもなくして、ただ調査費だけで調べるというのならば、これは調べない方がいい。しかし一応腹がまえを持って、どこかきちっとした目標をつけていけば、調査の対象が出てくるだろうと思う。そういう点で、これは一つ保留をいたしておきます。  次には、公的医療機関の問題でございます。この予算書を見ますと、今度僻地に診療所を作られたり、あるいはわざわざ国庫債務負担行為によって、五カ所の基幹病院ですか、国立病院をお作りになるようでございます。まず私がお聞きしたい点は、現在結核療養所にしても、国立病院にしても医者が集まりません。熊本県のどこか結核療養所であったかと記憶しておりますが、入院患者ばかりになって、医者がいなくなったという例がある。もう今私は名前を忘れましたが、定員でいえば医者が四人か五人いなければならぬのに、お医者さんが一人になってしまったという例ができた。なぜ一体国立病院、特に結核療養所に医者が集まらないか、初任給が安いからだ。一万何千円だ。このごろある療養所の諸君が陳情に行った。ところが人事院の多分主管課長だと思いますが、どういうことを言っておるかというと、こういうことを言った。あなたたちお医者さんはやめたらどこでも行かれるから、それだけわれわれよりいいのだ、われわれ法科では、やめたら行きどころがないのだ、これだけはお医者さんの方がいいのですよ、だからそれでがまんしておかなければいけませんよ、こういう答弁をしている。私は書いたものを見た。ところが言葉の上ではそれでいいと思うのです。しかし実際に税金をつぎ込んで病院を作ってたくさんの患者を抱えておるところに医者がないということは、残念なことです。しかも最近の公的医療機関の実態を見ると、専任の医者がなくなってきつつある。みんな兼務です。これはいずれ機会を改めて聞きますが、保健行政の上においても、一つの大きな問題を提起しております。なぜならば、その医者は別に開業をして保険医療の機関を持って、保険医でやっておる。入っては自己の保険医療機関の保険医であって、出でては今度は公的医療機関の保険医になっておるという二重性を持つ者が出てきておる、すなわち、兼任の人が非常にふえつつあるというのが、現実の公的医療機関の実態である。これでは私的医療機関と公的医療機関との二本建で日本の医療機関がやっていくのだといっても、そこに働く保険医というものは一人である。兼任しておるということなんです。これでは日本の全き医療行政というものはできない。一体こういう実態を知っていらっしゃるのがどうかということなんです。一体この対策をどうされるのかということなんです。日本の公的医療機関である結核予防の第一線の保健所にも医者が寄ってこない。そうして第二線である、いわゆる治療の中心と今まで言われておった結核療養所にも、医者がいなくなってきつつある。その実態はもはや給与体系というものを再検討しなければならぬ段階に来ておると思う。これを率直に一つ医務局長の所見をお問い申し上げ、同時に政務次官の所見もあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  137. 米田吉盛

    ○米田政府委員 先ほどお尋ねになりました年金の具体的な進め方、これは私はこういうことに大体承知しております。醵出制度というものは原則としてやるべきではないかという考え方を持っております。もちろん全国民がことごとく醵出能力はないわけであります。そういうものは無醵出でやらざるを得ない。そこでこういう方面、これは御承知の総合方式というのでございますが、そういう方式で行くことをもちろん可能にしなければならない。それには先ほど仰せになったように、一体税金としてどれだけずつ国民が支払えるか、負担能力ですね、こういうことを今年は調査して進めていきたい。そのうちに自然負担し得るもの、負担し得ざるもの、能力の限界、こういう点が明らかになって参りますれば、その総合方式、統合方式というものが、どういう程度にやれるが、またどの程度の保障ができるかという目安をこれで明年度は立てたい。そうしてできるだけ最近に、これは言葉だけでなしに、実現をはかりたい、こういう基本的考え方でおるわけでございます。  それから今の医療機関整備の問題は、これはお説のように非常に報酬が安い。このためになかなかたくさんの人が希望してこない、こういううらみもあるわけでございます。これらについては今年は実質的に待遇改善をはかる道を若干講じて、費目は研究費等の名目でございますが、相当に前進しておるわけでございます。もちろんこれはこういう財政の制約下でございましたので、当初の要求のような結果は見ておりませんが、滝井委員の御心配になっておる点は私も同感でありまして、その点努力をした跡はお認め願いたい、こう考えます。
  138. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘のごとく、医師の臨床医師としての就業の状態は、特に小さい病院、いなかの診療所等においてまことに少く、勤務者を得ることは困難である状況でございますけれども、これは一つは、とかく若いお医者さんが都会地への生活、都会地への研究にあこがれを持ちまして、なかなかいなかへ行きたがらないという点が一つでございます。もう一つは、御承知のごとく医学博士の従来の制度が近く廃止になりますので、若いお医者さん方が大学制度によらざる現行制度のもとにおける医学博士という称号を得たいという願望から、とかく大学等の付属機関の方に集中していくという結果ではなかろうかと考えておる次第でございます。一年に大体新しく医師になる者の数は三千人、それから死亡その他によって、医師でなくなる者が大体一千人という見込みでございます。二千人ずつ医者がふえております。一方人口は百万足らずの増加でございますので、百万対二千人でございますからして、かなり医者の増加の速度は早いわけでございます。にもかかわらず、現実には医者のいない地域が多いということはただいま申し上げた理由によるものではないかと思っております。また御指摘になりましたように、特に結核療養所において医師が得がたいという事実、これは御指摘の通りでございます。国立病院は大体都会地にありまして、相当大きい施設が多いものでございまして、比較的医者が得やすいのでございます。国立療養所、特に施設の小さいいなかの国立療養所等におきましては、医者が得にくい。また国立療養所につきましては都会においても得がたいという傾向があることは事実でございます。結核対策上憂うべきことだと考えておるのであります。なぜ結核療養所に医者が来たがらないかということでございますが、御指摘の給与の問題も当然ございますが、最近若いお医者さん方と話し合ってみますというと、結核というのはそのうちに減ってしまうのじゃないだろうか、今自分たちが勉強しても、結核の専門家になっても、将来自分の専門技術を適用する場が少くなるのじゃないかという将来に対する不安から、結核専門医に対する意欲を失いつつあるかのように考えておるのであります。非常に残念なことでございます。現在の結核対策を進める上において非常に困ったことであると考えております。そこで私は給与をよくする一面において、こういう臨床医学なかんずく結核治療に対する何か魅力を与えて積極的措置を講じなければならない、かように考えておるのであります。給与につきましては、御承知のごとくに、昨年公務員の給与規定が全面的に改正されまして、その中で医療従業者、なかんずく医師、歯科医師の給与は他の職種に比べまして、比較的いいのでございますけれども、世間一般のお医者さんに比べるというと、問題にならないくらい現在でも悪いのでございます。しかし公務員としまして、いろいろな職種のある中で、お医者さんだけ特段によくするということは事実できなかったので、現段階においては、この程度で忍ばなければならぬのじゃないだろうか。しかしながら御承知のように、医療職は、医療職の一号という給与表でございますが、これは五等級五種類の俸給区分になっておりますが、できるだけ高い俸給区分のポストに定員をよけいとりまして、若い医者をできるだけ早いうちに、上のクラスに送り込むということによりまして、少しでもいい待遇を与えることに努めたいと考えまして、人事院等とも相談いたしまして、この点はかなり認められてきておるのであります。さらにまた国立療養所、病院等の医師等の技術職員につきましては、従来とも研究費の制度がございましたが、これはかなり少かったのであります。国立療養所につきましては、医師、薬剤師を含めまして、一カ年平均大体六千円程度であった。これを倍額の一万二千円というふうにふやしたのでございます。なお良心的な医療、研究的な医療ということをさせることによりまして、医師の学門的な興味をつながなければならないという観点からいたしまして、来年度は従来にましまして、医療器械等の整備に力を注ぐ、そう多くはございませんけれどもふやして参ったのでございます。全体を通じまして、決して十分とは申しません。まことに微々たるものでございますけれども、国立病院国立療養所の方におきましては、さような措置を今後とも継続することによって、医師をつなぎとめるようにしていきたいと考えておる次第でございます。一般の公的医療機関——国立病院、療養所以外の公的医療機関、ことに小さい地方の病院におきまして給与が少いということにつきましては認めておるのでございます。これは旧学位令のと申しますか、現行学位令でありますが、これの期間がたしか再来年で終るかと思います。その時期を契機としてかなりその点は改善されるのではなかろうか、かように考える次第でございます。
  139. 山本勝市

    山本主査 滝井君、ちょっとお願いですが、時間がありませんので簡潔に……
  140. 滝井義高

    滝井分科員 もう一、二問で終ります。今御発言の中にもありましたが、結局国立病院は割合都会に近いところにあるが、療養所は比較的閑静ないなかに多い。同時に結核が次第に減少しておるので、勉強して一つの技術を身につけても、将来自分の生活していく上に足しにならないのじゃないかということなんですね。私がさいぜん指摘したのは実はこういう点もあるわけです。そういう点から、やはりベッドによるいわゆる日本の結核療養方式というものが一つの転期に来ておるというのはそういう点からも来ておるのです。従ってこれはたとえば内科的なあるいは小児科的な治療でなくして、外科的なものに転換をしていくと、胸郭整形術ができる者であるならば開腹手術もできるというふうに応用がきいてくるのです。こういう点からもやはり公衆衛生、医務両局は結核対策というものを考えていかなければならないと思う。人的な充足なくしていかに結核対策を唱えてもそれはナンセンスですよ。これはぜひ一つ考えていただきたいということです。そういうことと関連をして国立病院はある程度技術者が集まるが、結核療養所には集まらないということは、そのまま小さいケースとして僻地診療所にそれが適合できるのです。僻地診療所にいろいろとたくさん金を出して無医村対策をやることになるわけなんですが、その場合にやはり人が集まらない。この問題はやはり基幹病院との有機的な連携の問題に還元されてくる。それが現在行われていない。やられたらもう伊豆の大島に流された昔の島流しと同じ形になる。従って子供がある程度大きくなって、高等学校大学に行くころになると、もはやおれないといって東京に出てくる。これは何も僻地の診療所だけの問題ではない。現在の大学の教授がみなそうです。若い間はしんぼうしていなかの短期大学なり何かに落ちていっておりますが、しかし子供が大学高等学校に行くころになると、官立大学の教授でなくてもいいのだ、私立でもどこでもいいから東京にというので、いわゆる東下りが東上りになってしまう。こういうことは何も僻地診療所ばかりじゃない。みな都市集中で東京へ東京へと集中してきている。こういう現象が端的に医療の面に現われておるだけなんですけれども、僻地診療所の問題をほんとうにやろうとするならば、あるいは結核療養所の問題をやろうとするならば、基幹病院との有機的な連携方式を考えなければならぬ。それが十分に行われていないところにこういう問題が出てくるのです。一つの療養所に十年も十五年も置くということでなくして、何かそこらに人事の交流というものをはからなければならぬと思うのです。そのためには基幹病院の適正な配置というものが当面の問題として登場してくるだろうと思うのですが、そういう点は一体厚生省としてはどういう工合にやっておるのかということなんです。これは何も国立病院ばかりじゃない。少くとも公的医療機関と名のつくもの、まあ広い意味の公的医療機関、たとえば年金病院、労災病院もひっくるめたものでなければいかぬと思う。というが現在その行政を見ていると、年金病院は年金病院で勝手なことをやっている。労働福祉事業団というものができて勝手なことをやっている。それから年金は年金でやっている。医務局は医務局でやっている。保険局は保険局で社会保険病院——いずれまた質問しますが、社会保険病院でやっている。ばらばらです。従って一人の人間があるときには開業をしながら社会保険の嘱託になっている。あるいはまたその人が国立病院の嘱託になっている。一人で開業もする。嘱託は二つもやる、またはなはだしいのは保健所の嘱託にまでなっている、こういう形で、一人のお医者が二つも三つもやっているのが日本の現状なんです。ですからこの際皆保険をやり、年金をやろう、あるいは結核対策をほんとうにやろうとするならばまず動く人間が中心ですよ。機構はその人間のあとについてくるものでなければならぬ。機構が第一にできておっても、人間が兼任をしておったのではものの役に立ちません。従ってこういう点は、もはや日本の医療法を根本的に解決しなければならぬ段階に来ておると思うのだが、次官この点どうですか。もうここらあたりで縄張り根性を捨てて、日本の医療行政というものを厚生省の医務局に一元化するという段階にいかなければ、もはやこの僻地診療所の問題も、結核療養所における大事な技術者の充足の問題も解決しないと思うのです。これは非常に唐突に政務次官の方にやいばを向けたので困るだろうと思いますが、どうお考えになりますか。
  141. 米田吉盛

    ○米田政府委員 いろいろ承わって、ごもっともだと思います。いろいろな機関が相互の連係をとって、今仰せになったような点を打開していくということは、結局国民皆保険もそういう姿で実現できることになると思います。今仰せになったような一人の人が数カ所のかけ持ち嘱託になっているということは、私は実は初耳でして、一カ所くらいの嘱託はあり得るものと常識的に考えますが、同一の人が三、四カ所も嘱託になっている、これは私は許せない悪だと思います。こういうような点は先ほど医務局長説明しましたように、医師の絶対数というものもだんだんあまるくらいになりつつあるわけです。もっともその中で専門的権威者が幾名あるかということ、また別の問題ではありますが、何とかしてこれらの点を打開していきたい。それには何といっても今おっしゃったような各方面の機関が有機的に連絡をいたしまして円滑を期するということが、さしあたってのやり方である、このように私も考えます。
  142. 滝井義高

    滝井分科員 次官は大臣にかわっての御答弁でございますので、ぜひ一つそうしていただきたいと思うのです。まず有機的連絡をとる。これがとれたら次の段階、医療法の改正に持っていくという、これだけの政治力を一つ発揮してもらいたいと思うのです。  そこで参考のために医務局長にお尋ねをいたしておきますが、一体国立病院でどの程度の兼任の医者がおるか、その趨勢は一体ここ二、三年どうなっておるかを一つ次官に説明する意味においても御答弁願いたいと思います。
  143. 小澤龍

    ○小澤政府委員 前の御質問、御意見に対してまずお答えを申し上げたいと思います。療養所の医師の配置転換、転勤等に十分気をつけろということでございますが、私どもは十分気をつけているつもりでございます。なお僻地といいますか、農村等の療養所の若いお医者さんは、内地留学と申しまして、大学なりあるいは大きい施設の方に勉強に来る機会を与える。一方大きな療養所のすぐれたお医者さん、たとえば肺臓摘出が非常に上手だというお医者さんを地方の療養所に回しまして、その病院の若いお医者さん方を指導してあげるというよいうことをやりまして、療養所自体の治療水準を高めていく。同時にお医者さん方に対して結核治療の魅力をわかってもらうということをやっております。  それからあとの御質問に対してお答えいたしますが、国立病院、療養所の医師の兼務者についてはただいま資料を持っておりませんが…
  144. 滝井義高

    滝井分科員 傾向だけでもけっこうです。ふえておるのか、減っておるのか。
  145. 小澤龍

    ○小澤政府委員 兼務者の数は、国立病院においてはそうふえていないと思います。しかし結核療養所においては若干ふえているはずであります。
  146. 滝井義高

    滝井分科員 今申された通り国立病院兼務者がふえていないが、兼務者があることは確実です。それから療養所はふえつつある。これが趨勢でございます。私もきょうは数字を持ってきておりませんが…。  次にお尋ねしますが、低額所得層の中で未熟児養育指導費、母子健康センター設置というものがあるわけです。私は母子健康センター設置費をいろいろ尋ねてみたのですが、これは保健所から非常に遠いところにそういうものをお作りになるんだ、そういうことを聞いた。一体保健所とこれとの関係、こういう二つの政策との関係は一体どうなるのかということですね。保健所は主として公衆衛生局所管ですね。そうしますと、こういう二つの新しい母子保健対策というのは、児童局なり社会局に少し近い政策になってくるわけなんですね。行政の一元化ということが必要なんですが、一体これが出先でどういう関係になるかということなんです。
  147. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 母子健康センターというのは、母子衛生の一つの場になるわけです。母子衛生は御承知のように広い意味の公衆衛生の部門でありますし、そういう意味において母子衛生の仕事は、地方の機関としては主として従来保健所を中心として運営されておったわけでございます。ところが御承知のように妊産婦、乳幼児の保健の特殊性にかんがみまして、保健所から割合に遠い地域については、むしろ町村に母子健康センターというものを作らして、そこを中心にしてこの仕事を推進していくということが適切である。もっとも技術的な点その他運営のことにつきましては、これは十分保健所の指導監督を受けていくわけでございますので、従ってその意味においては保健所の支所的な性格も持っているわけでございます。そういうわけで保健所とは緊密に連絡をしていくというふうに私どもは考え、かつ今後もそういうことでいきたいと考えます。
  148. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 母子健康センターと保健所との関係は、ただいま児童局長説明いたしましたように、一つの特別な仕事についての出先というような考えでやって参りたい。もちろんこれは地方に参りますと、県によりましては民生、衛生両方に分れるわけでございます。それらの点は十分先般の打合会でも指示して遺漏のないようにしております。
  149. 滝井義高

    滝井分科員 一緒に答えて下さい。未熟児養育指導費というのは一体どういうことをやるのか。これもニュー・フェースですが、わかりませんからお答え願いたいと思います。ただ母子健康センターの設置で、こういうように保健所さえもが医者がいなくてわずかな予算でどうにも動かないところに、またわずかの八千万円ばかりの金をつぎ込んでやるという政策が大体いいのか悪いのかということなんです。一体そういうセンターはだれがやるか。医者以外にない。優秀な保健婦か、少くとも医者がやらなければならぬ。そうすると、現実に保健所さえもできないものが、市町村が医者を雇えるかというと、絶対に雇えません。しろうとがやるかというと、しろうとがやる母子センターなんてナンセンスです。そういう点で、これは思いつきとしては非常にいいことだと思います。しかし日本の公衆衛生行政というものは、まだ筋金が通っていない。バック・ボーンのないところに幾ら骨のないものを集めても、それは骨ができていないということなんです。ですからそういう点は、私は反対はいたしません。しかし反省をする必要があるということです。まず保健所に筋金を通して、その次に今度これを補強工作としてやるのならいいが、まだナマコのようにぬらぬらしているのに、ほかに小さな保健所を作っても、これはナンセンスだということです。中山マサ先生のお話を聞いて、これを作るのにずいぶん骨折ったということには敬意を表します。けれどもその運営については、今後よほど有機的な連絡をとっていっていただきたいということです。  あと二、三点は一緒に質問しますが、今回援護法の関係で障害年金が出されることになっているわけなんです。そうしますと、これらの障害年金を受ける諸君に、補装具というものをやらないのかどうかということです。年金とともに補装具を、学徒動員、徴用工等で身体障害を受けている者にやはり出す必要があるのではないか。これらの諸君は、いろいろ調べてみますと、補装具等をもらっていない。現在補装具をやるのは社会局ですか、社会局の所管からそれらの諸君にやっているかというと、やっていない。ですから当然、今度の身体障害者年金、いわゆる有期的な年金ができると同時に、これらの者をやはり考える必要があると私は思う。何万お金を上げることになるか知りませんが、わずかのお金をお上げして、それで相当金のかかる補装具を自分で金を出して作れということでは、親心としては行き届いていない。だから政治としては、年金を上げるとともに義手、義足という補装具くらいはあげる必要があるのではないか。そういう予算というものはやはり考えてもらわなければならぬ。  それからいま一つ、これは最後になりますが、予算委員会で、五十二億円の国の財政収入は一夜にしてどこから出たのだと言ったら、その中に国立病院の収入、診療費改定分として四億七千万円が出てきた、一体これは、この費目で言えば、どういうところから出てくることになるのか、それだけをお教え願いたいと思います。
  150. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 第一の未熟児の問題につきましては、児童福祉法の改正を来週提案する予定になっておりますので、それで十分御審議をいただきたいと思いますが、簡単に申し上げますと、あるいは保健婦、助産婦等を家庭に派遣して養育に対する指導をし、あるいは収容して養育をしなければならない未熟児につきましては、指定病院あるいは診療所に収容をして養育、医療を加える、これに対しまして医療費の補助をする、そういうようなことを内容とするものでございます。  それからその次に、母子健康センターの問題につきましては、これは根本的には母子衛生と申しますか、妊産婦、乳幼児の保健指導の仕事は、将来町村の仕事に移していくということが、一つの方向じゃないかというふうに考えておりまして……。
  151. 滝井義高

    滝井分科員 これは法律を出すのですか。
  152. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 これは法律はございません。そういう考え方もございまして、この母子健康センターを町村に整備をしていくというような考え方が基本にあるわけでございます。これはある意味においては、保健所の仕事を町村におろすものと、保健所に残すものと、一面においてはそういった整備をし、それから町村の公衆衛生に対する活動を十分促進し、これを援助していくという意味においては、ある意味においては、保健所の逆に強化になる面があるわけでございます。そういう意味においては、これは決して保健所を弱化せしめるものとは、私どもは考えていないわけでございます。
  153. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 お尋ねは、学徒の動員された者が傷痍者になった場合の補装具の問題だと思うのであります。そういった法律の中に補装具を支給するということは、まだ私ども承知いたしておりません。そこで、そういう場合にはどういうことになるかと申しますと、現在の一般の身体障害者に対する補装具の交付、これが約一億五千六百万円。それから同様な問題はやはり更生医療のこともあろうかと思うのでありますが、これが五千万円ばかりある。これは別に対象を制限しておりませんから、そういう者で補装具が必要であり、更生医療が必要であれば、それぞれ適用されることになっております。もちろんこの場合にはやはり生活保護のミーンズ・テストよりかなり高いのでありますが、自分で負担することのできる者は自分で負担しますけれども、できない者はこちらで見ることになっております。それからお尋ねの傷痍軍人につきましては、これは別に予算が組んでございまして、この方は全額国庫負担で府県に委託をするというふうな予算になっておるわけであります。これには、今のお話の学徒の問題は現在法律がまだでき上っておりませんので、含まれていないと承知しております。
  154. 山本正淑

    山本(正)政府委員 最後の四億七千万円が病院収入で収入がふえたということでありますが、これは医療費の引き上げによる十月以降の分で、厚生省と文部省所管病院収入——厚生省の国立病院は特別会計になっておりますから、それはそのまま特別会計の収入になります。国立療養所の収入増が三億一千六百万円、それから一億数千万円は各大学の収入、これは一般会計になっております。合計四億七千万円余、こういうふうになっておりまして……。
  155. 滝井義高

    滝井分科員 今のは、この予算書の国立病院収入、あれに入ってるんですか。
  156. 山本正淑

    山本(正)政府委員 国立療養所でございます。
  157. 滝井義高

    滝井分科員 すると、診療報酬の改定で、国立病院も収入がふえる、療養所もふえる、両方合わせると三億何がしになるわけですか。それから今安田さんの御答弁の通り、傷痍軍人ならば全額国が出して補装具はくれるわけです。ミーンズ・テストをやって生活保護の対象者はくれる。ところが学徒動員だけ盲点になってるんです。それも傷痍軍人と同じ取扱いにして、ある程度有期の年金を考えるとすれば、年金と一緒に補装具をやれないものかということです。所管は安田さんの方になるだろうと思いますが、法律の関係は引揚援護局関係になるわけです。だから、年金とともに物をやるという形にできないものかどうかということです。
  158. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 動員学徒その他の処遇でございますが、従来障害者に対しては何らの処置がされてなかったのであります。今回の恩給調査会等におきましてもこの問題が慎重に御検討いただいたことは、御承知の通りでありますが、それによりまして障害者たる旧軍人に対しまして障害給付金を出すというようなことをただいま考えて、法案の作成を急いでおるわけであります。ただいま御質問の補装具その他の問題につきましては、引き揚げ援護の方の関係になりますと、いわゆる更生医療という面になるわけでありますが、この点は障害者対策として社会局で一元的におやりになるというふうになっております。その実態的な面については安田さんから今お答えした通りです。実態の方がそうであるということになりますと、法律の方で入れるという段階まではまだなっていないわけであります。
  159. 米田吉盛

    ○米田政府委員 今の動員学徒の問題、これはお気持よくわかりましたから、何とか一つ研究いたしまして、必ずとは言えませんが、できれば御趣旨のように私もいたしたいと思います。
  160. 山本勝市

  161. 八田貞義

    八田分科員 滝井委員が長く時間をとりまして、いろいろ質問いたしたいと思って準備して参ったのですが、きょうは簡単に質問さしていただきますので、また簡単に御答弁をお願いしたいと思います。  滝井委員は盛んに極端な例をあげて、政治的な結論で、今までの問題について、特に年金問題についてもとうていできないであろうというような結論をもって言われておりますが、私はやはりこの同じステージの上に立って、お互いに厚生行政を伸ばしていくのがわれわれ国会議員の務めであろうと考えるわけであります。そういう意味におきまして二、三の問題をお聞きしたいのであります。  第一に家族計画の問題でありますが、これは昨年厚生省では人口対策費というような名前で取られた予算なんですが、今度は私の注意に応じて家族計画普及費という名前に変えられたことは私非常にありがたいと思うでありますが、この家族計画というものをやられてきて、現在家族計画の普及運動によって、母の方の一体子供をどれくらいもうければいいかというような気持を数字によってお表わしを願いたい。一体母は何人子供を持てばいいかということは、今日どういうふうになっておるか。ちょうど家族計画問題が昭和二十七年から始まっておるわけです。そのときにはお母さんの方は少くとも三人の子供を持ちたい、こう言っておったのですが、最近はどういうふうになっておりますか。
  162. 米田吉盛

    ○米田政府委員 この問題はなかなか大問題だと思うのです。日本の人口問題を一体どう見ていくかということに直接つながってくると思うので、今すぐに具体的にどの家庭に何名という数をもって表わすというところまではまだいっておらぬ。御承知のように人口問題の研究委員というのをこの間新しく委嘱いたしまして、総会がこの間持たれましたときにも、この人口問題が日本の政治の上に非常に重要であるという点は考えておりますので、一つできるだけすみやかに調査研究の結果結論を出してもらいたい、こういう要望をしておるわけでございます。どの家に何名の子供ということの観点よりも、ただいまの厚生省のねらいとしましては、人工流産をどんどんやっていく、それがひいては母体に及ぼす悪影響というものをせめて防止したい、こういうようなところの出発からただいまの家族計画の一半があるわけであります。もちろん養育する能力のない者がむやみに子供を生んでいくということは困る、そういう面もありますが、一半は今言ったように母体の保護という点を考えて、人工流産は一つしないようにした方がいい、こういうところからやっておるわけであります。仰せのような、厚生省として何人くらいがいいかという人数の点は、これは三人説もあり、二人説も欧米にはあると聞いておりますが、これはなかなか即断はできない問題であります。
  163. 八田貞義

    八田分科員 私が次官に質問したこととお答えが違っているのですが、私は、家族計画にあらかじめ人数を指定してやられるということはいかぬと思います。今の答弁でいいですが、私の質問しているのはこういうことなんです。昭和二十七年ごろは、母の会を開いたりして、講師を呼んで話を開いて、子供は何人ほしいかというと、大体最大公約数三人がいいというのがその当時の事情であったのであります。ところが、最近サンガー夫人などが来て、産児制限運動がずっと広がってきて、最近では、母の会では、子供は二人くらいしかほしくないという気運が高まっているのです。厚生省が指導しないでも、講師の人が、たとえば一人子供を生めば七十万円くらいかかる、七十万円という借金証書に判を押したようなことになるというようなことを話すわけです。そうすると母の方では、それでは子供はたくさん生まない方がいいというようなことになってくるわけです。次官がお話しになったのは、家族計画と受胎調節とをごっちゃにして御答弁になっておりますが、受胎調節と家族計画とは違うと思うのであります。いろいろな調査を合せてみますと、母の方は大体現在のところは二人というのが多いのです。ところが、母の方は二人という意見になってきたけれども、子供さんの意見はどうかということです。子供さんの意見というのはどういうことかというと、兄弟を何人ほしがっているかということです。家族計画でであるならば、同じ構成員である子供の意見も尊重しなければならぬ。そうすると今日子供は、最大公約数によると四人ほしいというのです。母親の方は二人ですから、四人と二人で二人の差になってきたのです。これは非常に大きな問題です。そこで私は、次官が言われんとする気持はよくわかるのですが、ただ問題は、母性保護という見地から、これは非常に重大なことなんですが、サンガー夫人が来られて人工堕胎というものが非常にふえてきたということです。そうして母体の危険というものはだんだんふえてきているのですが、人口問題を考える場合に——これは人口対策とは全然違うのであって、人口問題を考える場合には、まず家族計画の普及に対して基本というものがなければならぬ。というのは、子供がふえて、すなわち人口がふえて国が滅んだためしが一体世界のどこにあるかということです。これは世界のどこにもないです。人口がふえて国が滅んだというためしは世界のどこにもない。人口が減っていって民族が滅んだという歴史はどこにもあることなんです。わが国でもアイヌ民族を見ればよくわかることであります。ところが、現在家族計画の普及運動においてやられる普及員といわれる講師の方々が非常に間違っておられるわけですが、こういったことについて基本を間違えないようにしてやってもらいたいと思うのであります。この点は特に厚生省において中心となってこの運動をやられて、国民の税金を使ってやっておるのですから、単純な見地から国を滅ぼすような、子供がふえれば貧乏になるのですよというようなことを言うのはいかぬです。この点は、今後の指導方法の基本として十分に守っていただきたいと思うのです。  これと関連しまして、畜犬税というものは一体毎年どのくらい収入があるか、これをちょっと私はお伺いしたい。
  164. 山本正淑

    山本(正)政府委員 畜犬税の関係は幾らという数字をちょっと承知しておりませんが、たしか来年度から廃止になることになっておるはずであります。
  165. 八田貞義

    八田分科員 今まででいいですが、わかりませんか。
  166. 山本正淑

    山本(正)政府委員 自治庁の関係で……。
  167. 八田貞義

    八田分科員 畜犬税をなぜ私が問題にするかというと、これが犬のために何も使われていないのです。サンガー夫人式の産児制限ということをいうならば、むしろ私は犬に産児制限をいうべきだ。一体毎年々々セパードとかコリーとかいう犬をどれくらいい輸入しているか、この点についておわかりにならぬと思うのです。そういう調査をおやりになっていないと思うのです。ところが、どんどんコリーとかセパードを輸入してきて、そうしてわが日本の状態はどうであるかとみると、外国からばかり輸入して、日本から輸出する犬は何もない。秋田犬も土佐犬もどんどん減っている。そうして雑犬が非常にふえてきているのですね。私はこれを考えてみると非常に問題だと思う。犬の放し飼いをするなかれといっている。しかし、今日畜犬税をとられているから、どうも登録すると税金をとられるからいやだということで登録しない。それがたくさんにおるわけです。野犬が一ぱいおる。その野犬が一ぱい食う米の量になると大へんな量になる。雑犬が非常に多くなって、日本に純良種が何もないのです。こういったことに対して、むしろ私は産児制限ということを大きく取り上げていうなら、人間に対してよりも犬に対していうべきだ。犬の産児制限について私はやっぱり公衆衛生局なんかが十分に考えていくべきだと思う。そうしなければ非常なむだだと思うのです。ネズミ算式にネズミはふえるというけれども、犬は犬算式にどんどんふえていく。しかも狂犬の源になる。こういったことについて、やはり犬の純系を保つとか、あるいはまた犬の断種手術をやって犬を食糧に回すとか、そういうことを考えていくしかない。日本人はエンゲル係数が非常に高いとかなんとかいいますけれども、要するに日本人が蛋白をとるためには牛肉を食わなければならぬというような考え方でいるからいかぬのであって、むしろこのような雑犬はどんどん食糧に回していけば一番いい。ですから今後畜犬税をとる以上は、犬に対するところのいわゆる優生学的な対策を考えていくというようなことが私は必要じゃないかと思う。それから、先ほど来から滝井君も言っておったのですが、今度の予算の中で栄養改善指導費というものが少いと思うのです。実際日本人の主食というのは、一体どういうのを主食というかというのですね。主食の概念についてちょっとお知らせ願いたいと思うのです。
  168. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 食物の問題を栄養学的に申しますときに、主食という言葉を使うということはよくいわれているわけでございますが、従来、日本人の食生活の習慣から考えて、米を主食といっておりますけれども、これは識者の間では、そういうものに対して主食という言葉を使うのは適当でないというふうにいわれております。従来の慣習は、一応米とが雑穀類を主食というふうにいわれております。外国では必ずしも米を主食というような意味には言っておりません。そこがやはり外国の食生活の習慣との差異であるというふうに考えます。  犬の純系保持、これは狂犬病予防法の立場からいろいろな措置を講じなければならぬ場合もございますけれども、純然たる犬の純系保持というようなことになりますと、これは農林省の問題になるのではないかというふうに考えております。狂犬病の立場からは、厚生省も重大な関心を払わなければならぬ、そういうふうに考えております。
  169. 八田貞義

    八田分科員 日本人の食の問題というものは——米は主食に違いないのですが、白米は主食でないと思う。これは主食という概念でもって白米が考えられて配給されているというところに問題があるわけです。白米を食べておれば結局死んだ米を食っておるのですから、栄養分としては何らいいところがないわけです。われわれは以前玄米白米優劣論を戦わせて、やはり生きた玄米を食った方がいいだろうと言われておった。ところが死んだ白米を食べてそれを主食ということで生活を規制していく、日本人は白米を非常にたくさん食べる。その結果蛋白類なんかの摂取というものが非常に減ってきた。特にこれは農村に強いのです。そうしてこの計算がエンゲル係数で現わされてきておる。私は、エンゲル係数の現わし方は白米を主食として現わしていく限りは、これは改善されないと思う。しかも日本人が白米にたよっておる限りは、毎年々々二千万石くらいは外国から輸入しなければならぬ。こういう問題が起ってくるわけなんで、私はエンゲル係数をもって国民の生活基準、生活の状態を現わすということは、白米を主食として考えていく場合には間違いだと思う。ところが厚生白書を見ますと、やはりエンゲル係数をもって生活水準の現わし方をやっておる。これは私は非常に間違いだと思う。この点は今度厚生白書をお書きになる場合、エンゲル係数によって非常なウエートを与えるような生活水準の現わし方というものは間違っておるわけですから……。私は現在の白米を主食と考えてそれをたくさんに食べるというような現在の状態においては、エゲル係数の正しいものは現われてこないと思う。この点について政務次官はどうお考えでありますか。
  170. 米田吉盛

    ○米田政府委員 私実は白米との関係においてエンゲル係数がどういう関係にあるかということはちょっと今判断はいたしかねます。関係がないのじゃないかというような感じを持っております。まあ白米の利と害とこれは両方あるだろうと思う。また栄養があるからといって人間が必ずしも嗜好するものばかりではない。だから人間の食というものは栄養もあるし、嗜好にも合致する、これでなくちゃならぬ。栄養があるからといって辛くてしょうがないもの、すっぱくてしょうがないものを年がら年中食わされては参ってしまう。またそういうものが栄養があるかないか知りません。ですから私は、栄養論議の問題は、やはり嗜好と栄養とが調和して一致するところにおいて人間が実際にそれを摂取する、それを日常食するという結果になると思う。学者の間には極端な議論をする人がいろいろあると思う。だから今まで長い間白米というものが日本人の常食である、それの害も説かれて、御承知のように学校給食制度なんかができておるわけですから、私としてはこれは基本的にはエンゲル係数と白米というものがそう直接の関係があるようには思わないのです。
  171. 八田貞義

    八田分科員 時間もないようでありますから……。白米といろいろな日本人の高血圧、こういったことの関係も相当あるのです。白米を食べておりますと、やはり白米亡国論が出てくるくらい問題になっておるのです。今日白米を三ばいぐらい普通食うことになっておりますが、私はこの食習慣が間違っておると言うのです。白米の質的な面においては悪いときまっている。量的な面も考えていかなければならぬ。私は、白米にあまりにウエートを置いている食生活が間違いだと言っておるのです。栄養学的にいいから、まずいものでも何でも食えというわけではなくて、あまりに白米というものを主食という概念でとらえて、質的に劣ったものをたくさん食べる慣習というものが間違っておる。ですから、そういった慣習をそのままにしておいて、そうしてエンゲル係数をはじき出したのでは間違いなのであって、私はやはり栄養配分というものと、もちろん嗜好という面を織りまぜた食改善というものを進めていくべきだと思う。ただ厚生省の食改善運動と農林省の施策とはちぐはぐになっているのです。今日はどこの国を見ましても、畜産食物が食生活の上に大きく出てきている。ところが日本の方はずっと畜産食物というものは食生活の中に入っていない、こういうことの差があるわけなんですから、どうか一つ厚生省の従来指導されておる食生活改善運動と農林省の食糧政策との間にちぐはぐにならぬように、今後一つ御努力願いたい。  なお、いろいろと質問いたしたいのでありまするが、お約束の時間も参りましたので、あとは次に質問さしていただきます。
  172. 山本勝市

    山本主査 これにて厚生省所管に対する質疑は一応終了いたしました。  明後日は午前十時より開会し、文部省所管に対する残余の質疑を行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三分散会