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臼井政府委員 ただいまの周東
委員の御質問は、
教育の根本に触れる重大な問題でございまして、大臣からお答え申し上げるべきでございますが、本日大臣病気のためお見えになりませんので、いずれまた他の機会に大臣からお答え申し上げるようにいたしますが、一応私からお答えを申し上げたいと思います。
実際仰せの通り、日本の
教育は明治の初めから非常に普及いたしておりまして、従って無学文盲率においては、世界の五十三カ国を調べて見ましても、フィンランドの次に位する二番目にまで、非常に普及しております。また就学率におきましても九九・七%という、これは世界でも一番いいというくらいに普及いたしております。明治時代からこういう非常にわが国の
教育が熱心であったということのために、戦後のあの混乱も平穏にまあ一応切り抜けた、そして世界でむしろ驚くくらいの産業上の復興を来たしたというこの原因は、私は日本の
教育が非常に普及して、また高度に進んでいた、こういうことに根本原因があると思うのでありますが、ただしかし深さの点になりますと、御承知のようにまだまだ欧米各国に劣っております。これはアメリカと比べましても、国民所得がアメリカの八分の一ないし十分の一といわれる日本の経済の点から、財政上の
理由からして、
生徒一人
当りに対する費用というようなものにつきましては、これまた八分の一くらいないし十分の一くらいの費用でございまして、
設備にいたしましてもまだ不十分でございますし、従って科学においては現在欧米の先進国に比しては十年もおくれている、こういう点が今後わが国として
考えなくちゃならぬ点だと思います。
今回三十三
年度の
予算におきましても、科学に
重点を置いたというのは
一つはこの点にございますし、さらにすし詰め教室などもできるだけ
解消していこう、こういうことに努力をいたしておるのも、やはり同様の
理由でございますが、ただ御質問の精神面の復興ということになりますと、なかなかこれはむずかしい問題でございまして、戦前
教育勅語を
中心として、国家を
中心、天皇を
中心に
考えた
教育というものが、敗戦によって主権在民に変った。憲法もこれをもととして変った。
教育勅語も、これは
教育には用いない、こういうことになりまして、
教育が精神面の
指導においては非常に戸惑ったということは事実だと思うのであります。一応民主主義ということには方向づけられて根本になっておりますけれども、この経験に乏しいわが国として、そこに民主主義の解釈、また自由主義の解釈なり、個人主義の解釈という点で非常なまちまちな統一せられない点があったために、精神面における混乱というものが非常にあったのじゃないかというふうに
考えられております。自由というと、自分のわがままを通して人の自由というものをとうとばない、あるいは個人ということに重きを置いて、家庭においても親などに対しても一向かまわぬということが
当りまえだというような、間違った個人の解釈が往々にして見受けられるのでありますが、こういう点につきまして戦後十二年たった今日におきましては十分反省して、ここいらでそれらの面についても何とか将来のもう少し確固たる信念に基いた民主主義の
教育ということが
考えられることも当然かと
考えるのでありまして、定めし大臣におかれてはそういういろいろの抱負をお持ちだと思うのであります。今回
予算の面におきましても、
道徳教育の点につきまして
現職教育を行う、
理科教育におきましても先生の
現職教育を行う、これは敗戦後において財政の困難な際に六カ年間の
義務教育を九カ年間に延ばした。これが非常な無理を伴ったのは当然でありまして、これが今日いまだにすし詰め教室等が問題になる
一つの大きな根本原因でありますが、しかしそれにしてはよく今日まで一応
義務教育を完成しつつあることは、国民の非常な努力と
教育に熱心なるたまものであるというふうに
考えております。そこでただそういうふうに急速に三カ年間の延長をしたために、校舎ばかりでなく
教員の不足を来たした。そこで、それでなくても先生が戦争の犠牲によって非常に足りなくなっているところに、
義務教育三カ年延長ということになりましたので、これを統計的に見ましても、幼稚園を初め、
中学校——
中学校は
義務教育になりましたから全部でありますが、
高等学校にしても
大学にしても非常に
学生がふえております。計数的にはもうわかっておりますが、非常なふえ方でありまして、これはわが国の
教育のために、将来のために非常にけっこうでありますが、それがために優秀な先生に不足を来たした。そこで
義務教育におきましても臨時免許等を与えて、本来であれば先生の資格としてはいかがかと思われるような方にも先生として
学校にお働きを願うという点ができました。その後はさらに進んでそれらの先生が勉強もされ、資格もとられて正式の免状をとられた方もたくさんありますが、しかしそういう点でまだ相当の面においてここらで
現職教育を行なっていくべき面があろうかと思いますが、これらの点において従来多少
予算の面で足りない面がありましたので、今回これを
学校におきましていろいろ問題もありますが、ただ社会科の中に地理、歴史、道徳を一緒にやるということ、さらに全科を通じてやるという
道徳教育は、これは当然でありますけれども、ただ
生徒もつい窮屈できらう、それから先生もつい
生徒のきらうことはおっくうになるということになると、全科を通じて行なっても何となく
中心がずれて薄いというようなことが過去の
道徳教育において、
学校においてあったのじゃないかという点も
考えられますので、そこで
教育課程審議会にかけまして慎重に
研究した結果、特設時間を一週一時間設けて、そうして道徳についても先生と
生徒とがお互いに反省をして、御勉強を願う、こういう方法を四月からとることになりました。従ってそれに対する準備もできるだけ十分いたしたいというので、今仰せのように
教員の
現職教育、特に三十三
年度においては
一つ道徳問題について
研修を行いたい、かようにいたしましていろいろ
予算等を
考えて組んだ次第でございます。
一応私からお答えを申し上げます。