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1958-02-17 第28回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十七日(月曜日)     午前十時四十二分開議  出席分科員    主査 田中 久雄君       太田 正孝君    須磨彌吉郎君       中曽根康弘君    永山 忠則君       野田 卯一君    船田  中君       宮澤 胤勇君    石野 久男君       岡田 春夫君    田原 春次君    兼務 井手 以誠君    川俣 清音君       島上善五郎君    柳田 秀一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁警務部         長)      荻野 隆司君         警  視  監         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         総理府事務官         (自治庁選挙局         長)      兼子 秀夫君         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      小林與三次君         総理府事務官         (自治庁税務局         長)      奧野 誠亮君         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (大臣官房長) 田付 景一君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (情報文化局         長)      近藤 晋一君         外務事務官         (移住局長)  内田 藤雄君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      村上孝太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         運輸事務官         (海運局長)  粟澤 一男君         運輸事務官         (航空局長)  林   坦君  分科員外出席者         日本専売公社副         総裁      石田 吉男君     ————————————— 二月十七日  分科員滝井義高君及び門司亮君辞任につき、そ  の補欠として田原春次君及び石野久男君が委員  長の指名で分科員に選任された。 同日  第二分科員柳田秀一君、第三分科員川俣清音君、  島上善五郎君及び第四分科員井手以誠君が本分  科兼務となった。     ————————————— 本月の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済企画  庁を除く)、法務省外務省及び大蔵省所管  昭和三十三年度特別会計予算総理府及び大蔵  省所管  昭和三十三年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 田中久雄

    田中主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十三年度一般会計予算皇室費国会裁判所会計検査院内閣総理府経済企画庁を除く)、法務省外務省及び大蔵省所管昭和三十三年度特別会計予算総理府及び大蔵省所管昭和三十三年度政府関係機関予算大蔵省所管を議題といたします。質疑を続行いたします。田原春次君。
  3. 田原春次

    田原分科員 主として藤山さんに尋ねたいと思います。まず第一は藤山さんが外務大臣になった気持ですね。大体どういうつもりで就任されたのか、この辺で聞かしてもらいたい。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 昨年七月に外務大臣就任をいたしたわけでありますが、現在の世界情勢というものはまことに重大な情勢にあると思うのであります。その中にありまして、日本は戦後十数年たちまして、経済的にもようやく回復を見つつありますけれども、まだまだ底の浅い経済であります。従って、日本の実力というもの自体でもって世界にいろいろな発言をなし得る力、状態ではない。しかし、そういう状態ではありますけれども、戦後相当長くたって参りましたし、国際連合にも加盟を許されるという段階になって参りますと、だんだん世界政治の中にも入って参らなければならぬと思うのであります。そういう情勢をながめながら、私としましては日本の今後の外交を担任する外務大臣として努力して参りたいと思った次第であります。
  5. 田原春次

    田原分科員 それでどうです。就任国会質疑応答なんかをいろいろ見ていますと、どうも就任当時の抱負計画というものは、ちっとも進んでいないように見えるんだけれども、まだ当分これで外務大臣をやっていくつもりなんですか。岸さんは長期政権とか言っておるけれども、私が長い間の各内閣の寿命を見ますと、一番長いので四年くらい、日露戦争のときの桂さんのときですね。あとは長くて二年、短かければ三カ月くらいでやめています。だから、あなたがえらい抱負就任されていても、せいぜい二年以内じゃないか。ことに最近の自民党の党内事情を見ていますと、九月ごろには岸さんはやめざるを得ないのじゃないかと見られる。そうすると、あなたがえらい勢いで外務大臣になってみられても、あと半年くらいの間に何かやらなければ、いつまでも外務大臣というわけにはいかぬのじゃないかと思うのです。  そこで、あなたを特別にひやかす意味でも何でもないが、今の国際政局から見まして、およそ外務大臣としてあなたにやれることとやれぬことがあると思うのです。第一のやれることというのは外務省内人事、これは自分でやれますね。第二は国内における渉外事項、これも自分自身にやる意思があり、方針があればやれることです。次に、相手との交渉によりますけれども、こちらに熱意があれば、やれるものが二つある。一つ移民の問題、その次には貿易の問題がある。それと国交回復、この五点は藤山さんにその気持があればやれる。そう外交上のかけ引きを要せざるものがある。もう一つ自分でやるつもりでおっても、相手がなかなか乗ってこない問題があると思う。一番大きい問題は沖縄の問題がそうです。それからきのうの新聞に出ておりましたように、南太平洋における実験の停止の問題等も、やってもらわねばならぬけれども、あなたがやると言ったからといって、向うがうんと言うわけのものでもないと思う。これも大いに外交的手腕を要する。その次は今の日本商品アメリカ国内における輸入の制限ないし禁止の問題、これなんかも大いにやってもらわねばならぬけれども、相手のある話です。私は失礼だけれども、藤山さん、あなたのやれそうな仕事は第一の分類じゃないかと思う。自分にやる意思があればやれる、これだけでもこの内閣外務大臣中にやれば、及第ということになるかもしれぬが、それでないと、この間からの答弁を聞いておっても危なっかしいし、勉強が足らぬし、議員を甘く見ておられるようで、ときどき答弁に詰まったりしている。外務大臣仕事答弁だけじゃないけれども、これでやれるものかということをよそごとならず心配する。あなたのやれそうな仕事を五つ並べますから、これだけは適当な時期に成果をあげて、実業家出身だけれども、外務大臣になってもやるわいという信用を得た方が——もしあなたが将来総理大臣になろうという気があれば、これが第一次筆記試験みたいなものになると思う。  そこで、第一は外務省内人事の問題です。私も外務省によく出入りしますし、友人も多いが、なかなか秀才が多い。ところが平均して、海外在勤年限が非常に短かい。イギリスあたりの例を見ますと、タイ国にかつてクロスビーという大使がおった。これはビング・クロスビーじゃない、普通のクロスビーなんですが、前後四十三年バンコックだけにおったのですね。それで、あのむずかしいタイ語のなぞが解けるというくらいになって、タイ皇室にも深く食い込んでおった。ところが日本外交官は、三分の一は常に飛行機の上にあるといわれるくらいで、大体長くて一カ所に二年くらいなんですね。私、学生時代にブラジルのアマゾンの下流に行きましたが、ベレンというところで、必要があってイギリス領事館を訪問した。そうすると副領事がおりまして、顕微鏡で本日なんかを見ているんですね。アマゾンの両岸の木材の本日を調べている。あなたは何年おりますかと言うと、私はアマゾンだけに二十五年おります、五年に一回は有給休暇本国に帰っております、こういうことなんです。これを要するに、日本外交官が頭がよくても、二年くらいじゃできないと思う。現に今度新聞で見ますと、韓国交渉をやるのに、アルゼンチン井上大使が帰ってこられる。これは井上大使自身はりっぱな人に違いないが、前の韓国交渉をやった久保田大使は、交渉半ばにしてメキシコの大使に行ってしまった。この間ソビエトとの通産協定をやった広瀬公使は、今度ベネズエラの公使になる。これでは、外務省内の昇進とか人事配置等が常に外交官永久に見習いにしておくのじゃないかと思う。やはり一個所に長く置くようにせねばいかぬと思う。国内行政官との振り合いもあると思うけれども、一番の根本は外交官に限り、地位給与とを切り離してみたらどうか。ほかの各省もそうなってほしいと思うのだが、アメリカで私が経験したことなんですけれども、私はあるいなかの学校におったのですが、クリスマスごと郵便配達にプレゼントするのです。おじいさんで、配達している人ですが、喜んで持って行く。聞いてみますと、その配達を四十年くらいやっている、給料はそこの郵便局長より上なんです。すなわち勤務年限によって給料がきまるので、地位によってきまるのでない。日本地位勤務年限が並行していますから、どうしてもどこかに転任させなければやれなくなる。しかし外交官というのは、専門的知識を要するし、時には国内に帰って国内事情を知る必要もありますから、永久海外におれとは言いませんが、大別して、ラテン語系ラテン語系、フランス語、イタリア語スペイン語ポルトガル語、あるいは語学別か、本人の経験、才能によって、大体一定地域をきめて、そこからまた日本に帰ってきて、また行くというふうにすればいいんだけれども、きのうはアルゼンチンがきょうは韓国であって、また二年もすればドイツかどこかに行ってしまうというようなことでは、永久しろうと外交になるのじゃないか。相当頭のいい者もいるのですから、私は地位を保障するとともに、給与地位とを切り離して、外交官何とか令というものをこしらえて、五十年もおれば大臣以上にとれて、その道、たとえばカンボジァならカンボジァに対しては非常なエキスパートを養成すべきではないか。それに似たようなものは外務省留学生外務省書記生制度がありますけれども、これはまた上っていく限度がきまっていて、なかなか課長になれない、非常に優秀な者であってもなれない。非常に例外的には公使くらいになれますけれども、すぐそれはふん詰まりになってしまう。だから、あなたが外務大臣になられて、さすがは藤山さんだといわれるには、外務省のそういう専門家外交官の養成、それから給与地位との切り離しというような、これは予算を伴うことでありますけれども、道をあけておいたらどうか。これはあなたの一存でやれると思うのですが、どうですか。これに対するあなたのお考えでもあれば、この機会に公表してもらいたいと思う。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 田原委員からいろいろ外交官あり方等について御意見がありました。私も原則的に、外務省の外におりましたときに、そういうような考え方を大体持っておったわけであります。そういう意味で、外交官あり方というものも、できるだけ長期に任地に滞在して、その方面知識を十分に獲得する、そうして貢献するということも私は必要だと思います。従いまして、それに伴うように制度なり給与なりを改善することは今後の外務行政を動かしていく上に必要だと思います。ただ今日では、御承知のように世界情勢がほとんど一体となって動いているようなわけでありまして、現地におきます大公使が、当該駐剳国だけの問題でなしに、やはり世界的ないろいろな動き等にも注意を向けなければならぬのでありまして、過去のような場合と、若干そういう意味では違ってきております。なお待遇、給与等関係を考慮し、長くおりましても、国内事情等にも十分精通するように、規則としては二年に一ぺん休暇をとって本国に帰るような制度があるのでありますが、今日まで予算等の制約のために、実行されてない点が多々あるわけで、そういう問題については、今後各部方面の御意向も参酌し、また財政その他の事情等も勘案しまして、できるだけ今のお話のような線に持っていきますことが、外交陣容の強化になると思うのであります。今後ともそういう面で努力はいたしていきたい、こう考えております。
  7. 田原春次

    田原分科員 この障害、実現できない理由一つ予算であるとするならば、これは人件費出張費ですから、大したことはないので、またそのくらいのことはあなたが親友の岸さんに談じ込んで、これを通さねばおれはやめるというくらいにときどきけつをまくった方がとれる。せいぜい五億か十億じゃないかと思う。もしそれくらいの金で外交官外交能力を増し、国のためになることなら、金額としてはわずかなものだと思う。  第二点は人材がおらぬ関係かしらぬけれども、兼任公使が非常に多い。重要なところと思うところに、調べてみると公使がいない。そして名前だけは兼任公使になっておって、実際は書記官が一人くらいおるのですね。あるいは半年ごとに交代で回ったりしている。これは、相手国に対する非常な失礼でもあるし、それから日本が平和的に存在して発展していくためには、全世界にむしろ外交官はうんと配置してもらいたい。これなんかも、歴代の外務大臣にできなかったことを、あなたが思い切ってやれば、これはできると思うし、全体の予算からいってもわずかなものだと思う。それから各公館、大公使館領事館等ができますと、なんぼか役に立つと思う。貿易その他の情報、あるいは日本事情の説明とかできます。これなんかも、今度の予算を見ても、その特色が出ていない。去年はやむを得ぬとしても、今年はあなたの特色を出して、全世界というと八十何ヵ国ですが、この中でまだ国交回復というか、未設置のところが二十くらいあるのじゃないかと思う。特に貿易移民で問題になっている中南米におきましても、まだまだ兼任が多い。これはどうですか、何か至急に方法を講じて、年度内に多少とも増員していく気はないか。最近は人事等を見ますると、いいことか悪いことか知らぬが、しろうと外交官相当送っておるようです。また省内私立学校出であるとか、あるいは留学生出身書記生出身等相当年配の者がおると思う。そういう者のはけ口というとおかしいけれども、新設の比較的規模の小さいところの大公使館に送って、そういうところで練習させるという手もあると思う。こういう点について非常に消極的であるように思うけれども、あなたの予算面に現われた数字を見ますと、全然そういうことは反対なんですか、いやなんですか、どうなんですか、この機会に聞かしてもらいたいと思う。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 終戦後十年くらいの間、外務省の機能というものがほとんど欠けておった、また従って人的にも、数量の上からいいましても必ずしも充実しているとは現在の段階考えられません。今後独立国もふえて参ります。現在国連加盟国でも八十二ヵ国あるわけであります。従って、新しい独立国在外公館を置く、また既設のそれぞれ友好関係を持っております国に貿易関係等領事館等を置くというような問題も考えて参らなければならぬと思います。私としては大体そういうようなことを、三年くらいの間に一つ計画を立てて、一応の外務省拡充計画というようなものを考えてみたらどうか。これは財政事情とも見合って参りませんければならぬので、そういうような一応の計画を立てて、そうして二年くらいの間には十分在外公館の適当な数もふえるし、また人的の数においても、ある程度障害のないような充実を見る数を目標にして拡大していくというようなことを考えてみたらどうか、こういうふうに今考えております。
  9. 田原春次

    田原分科員 次は第二点の国内における渉外事項ですね。これはあなたがその気になればやれる問題が三つほどございますので、所見をただしてみたい。  第一は台湾韓国出身青年戦犯に問われて巣鴨に入っておって、中には刑死した者もあるし、なおまた最近は出てきた者もありますが、これに対する処遇ですね。これは外交でないと言えばそれまでのことだけれども、人数もあまり多くありませんが、戦時中義勇兵志願兵等南方に行った十八、九の青年ですね。そうしてそれが占領地で、たとえば英米の捕虜の監督をやったりしたわけです。終戦とともに戦犯に問われまして、巣鴨その他に入っておる。そうすると、これは法務省厚生省仕事になってきておりますが、だんだん事情を聞いてみますと、日本側ではあなた方は外国人だからというので、恩給であるとか、退職手当その他の対象にしてくれない。終戦ぎわまでは日本人だというようなことで使っておいて、敗戦とともに、今度は外国人だからお手当できませんということになりまして——人数は両方で、問題になっておりますのは五百人くらいのものだと思う。彼らは前の鳩山内閣以来しばしば陳情を続けまして、まず刑死した者は、一柱当り五百万円くらいの慰藉料を出してもらいたい。それから長年、十年も監獄に入った者で、何の手職もない、世の中にはうり出される。韓国に帰ろうとすると、お前たちは日本の軍閥の手先じゃないかということで、帰った者は非常なひどい目に会う。仕事はできないし、日本政府はあなた方は外国人だからどうにもなりませんといって突っぱねる。それではいかに戦争に負けたからといって、近隣親善友好で立ち直る日本気持の上から、非常にあと味の悪いものだ。そこで、これはいわゆる国内渉外事項ですね。外務省外交ではないと言えばそれまでです。しかし、現に法務省厚生省解釈では外国人として扱っておるのです。だから、あなたの方が一つ骨折って、これらの気の毒な人々の要求しておる金額を何とか差し上げるような方角に持っていけないか。軍人恩給傷病恩給意味が違うけれども、性質はかなり似ているので、ひとり台湾韓国人だけを取り残すのはあまりにも残酷じゃないかと思う。これは松本政務次官もおられますけれども、この際やはり明らかにしてもらって、たとい日本戦争に負けたけれども、義理を果すという気持を現わすことが必要じゃないかと思います。
  10. 松本瀧藏

    松本政府委員 お答えいたします。ただいま田原先生の御質問内容につきましては私どもも陳情を、外務省に入ります前に受けたこともございます。この問題は、ただいまでは法務省厚生省所管でありまして、いろいろと今調整をしております。先ほど韓国国籍の問題にからんだ質問もあったと思いますが、もちろん日本国籍を持って従軍した者もあったのですが、終戦後、韓国に籍をまた返すか、日本国籍をそのまま持続するかという自由選択もあったのであります。こういう問題等とからみまして、かなりこまかい技術的の問題等ありますので、なお厚生省法務省あたりと密な連絡をとりまして、できる限り一つこの問題解決に努力したい、こう思います。
  11. 田原春次

    田原分科員 それは非常にいい考えですけれども、われわれが質問すると、国会答弁ではいつも何とかすると言うけれども、今度国会が終って各省に行きますと、担任者がきまらない、行っても面会しないというようなことで、非常に焦燥な気分を持たせるのです。この連中は三、四年前からやっている。だから、日本財政事情も話して、これだけはできますからと、あっさりきめるべきものだと思う。日本政府第三国人として見るという解釈をやっている以上は外務省もこれを忘れぬように、担任局なんかをきめて、厚生省法務省、必要とあらば大蔵省と相談をして、ともかく誠意を持って解決する、こういうことをやってもらいたいと、これは希望しておきます。  次は沖縄小笠原島問題で、これの政治外交上の問題はしばしば同僚から質問しており、また近く論ずる機会もあると思うので、私は時間の関係内容は論じませんが、この扱いは内閣南方連絡事務局というものがあって、そこでやっておる。つまり外交でないということになっておる。ところが、われわれが沖縄に行くにしても、旅券の問題があるし、それから沖縄留学生日本に入ってくる問題がある。また小笠原島に帰るといっても、結局外交的ルートを通らなければ帰れない。そこで、これを、名前南方連絡事務局なんという遠慮した名前でなくて、沖縄小笠原島局というようなものにして、外務省内閣との共管ぐらいにして、もう少し積極的に問題を解決していったらどうか。これはほんとうの思いつきなんだけれども、どうでしょう、これらの行政の分け方なり共同管理の仕方について、何かお考えがないでしょうか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その問題につきましてはもう少し活発に動くようにただいま研究いたしておりますから、事務当局に御答弁をさせます。
  13. 板垣修

    板垣政府委員 その点、ごもっともな点もあるわけでありまして、建前の問題といたしまして、沖縄小笠原島につきましては領土権日本にございますが、現在施政権が全然ないという主として対外的関係から、一応外務省所管から離して、内閣に別に制度を設けておるわけでございます。しかしながら実際問題といたしましては外務省アジア第一課におきまして、沖縄小笠原島の問題を主として担当いたしておりますし、沖縄小笠原全体の外交問題といたしましては外務省として積極的に取り上げているわけであります。組織として置かれておりますのは主として建前上の問題からでございます。
  14. 田原春次

    田原分科員 私は二、三年前に、バルカンブルガリアという国に旅行したことがある。そこで英語の本をいただいて、帰ってから読んでみて驚いたのです。それはアンダー・ザ・ヨークー手かせ足かせのもとといったような題ですが、これはトルコが四百年にわたってバルカン民族を支配した当時における、民族独立と反抗の記録を小説風にこしらえておるもので、非常な感銘を受けたものであります。今日本における大きい問題は当然主張すべきき領土回復の問題でありまして、この点は千島、樺太の問題もむろんあります。それから沖縄小笠原島が今すでに問題になっております。沖縄の那覇の前市長の瀬長亀次郎氏の数度の声明を見ましても、実は日本政治家として恥かしいぐらいに、その無力を恥ずるのであります。時の政府はまことに腰抜けと申しますか、無力と申すますか、冷淡と申しますか、事いやしくもアメリカとの交渉に対しては実に卑屈なんですね。これを要するに、沖縄小笠原の問題があるのに、行政制度の上にその言葉が出ていないところに、私は一つの弱いところがあると思う。そこで、今のアジア局長の言う点の理由もあるだろうけれども、外務省はむしろ進んでこの問題に取り組み、たとい何十年かかっても——かつてのブルガリア民族トルコの侵略に抗して立ち上った気魄を見るときに、日本民族に置かれた今日の問題が、食糧あるいは貿易等種々な問題がありますときに、主権が残存するといわれておるものを取り返せないようではだめだ。そこで、外務省沖縄小笠原島局というものを作るか、あるいはアジア局の中に一つの部でも作って、あるいはアジア局の中に一つの部でも作って、真剣に取り組む用意をしなければならぬ。これは私の主張でありますが、そういう気持を持ってやってもらいたいと思うのです。  それから国内渉外事項の第三は、海外における日本新聞もしくは日本関係の出版物発行について、外務省の理解が足らないという点でございます。御承知のように、香港には各国の新聞が出ておりますが、出ていないのは日本語の新聞、もしくは日本人の経営する英語の新聞であります。従って、あの近い香港で日本に対する知識を得ようといたしましても、ときたま英字新聞等に出ます東京からの電報記事以外にないのです。わずか二百万か三百万の人口だけれども、東洋におけるいろんな基地、貿易上その他の基地に使われるのですから、進んで、戦前あったように日本語の新聞、英字の新聞が出せるようにすべきだと思う。もちろん政府の補助金なんというものを当てにすべきではないと思うが、あっせんをして——新聞の経営というのは広告なんですから、日本の商品が出ていきやすいように広告関係の理解を深めさせる。場合によったら電通とか博報堂なんというものをどんどん出張させて、調べさせるということをやらせたらどうか。それから北米、中南米の日本新聞も同様でありまして、松本君よく御存じのように、非常に理想に燃えた人々が、在留民の便宜のために苦労して新聞を発行しておる。北米、中米、南米合せまして、大体二十種類くらい出ておるのです。ところが日刊でやっておるのは、カリフォルニアの二、三ヵ所でありまして、メキシコに行きますと週刊です。カナダもそうです。ペルーもそうです。アルゼンチンは五種類も出しておりますが、謄写版で出したり、古い昔の活字で出したりして苦労してやっております。ブラジルも、日刊は二種類で、あとは週刊が多いのです。在留民から見ますと、言葉が不自由なために、翻訳された記事を新聞紙上で読むわけです。そこで、これもむずかしい問題でありますけれども、相手の国で出しておる、多くはその国の国籍を持つ日本系の人がやっておるわけでありますが、資本が非常に弱いので、資本を援助する——といっても外務省で援助せよというわけではないのですから、誤解しないでもらいたい。外務省がそういう気持で、貿易商の広告とか、各種の商品の広告がどんどん出るようにすれば、経営ができる時間が来ていると思う。たとえばハワイでも非常に有力な新聞が二つあります。これは、広告及び発行部数で自立で去るのですけれども、ほかはできませんために、つい競争となり、在留日本人社会で便宜のために出した新聞が、派閥のために今度は対抗する。迷惑するのは日系人ばかりなれです。だから、海外におる在外公館の人々も、積極的にそういうあたたかい気持海外日本新聞を大きくするお手伝いを、相手の国の感情を害しない程度においてするし、日本の商品広告をどんどん出すように努力してほしいと思うのです。これはあなたの方のどの局の仕事か知らぬけれども、当然やるべきだと思うが、今までやっておりません。逆に東京では英字新聞が四種類も出ている。東京でもし出すならば、朝鮮語の新聞や中国語の新聞は、在留両国人が多いから読めるはずだが、これはだれも出さない。そして、必要もないのに英字新聞がたくさん出るということは、何だかいつのまにか日本アメリカの希望する方向に引っ張っていくために、われわれが金を払って読んでいるような格好になると思うのです。それと話は違いますけれども、海外における日本新聞発展のために、もう少しあっせんの労をとっていくべきものだと思うが、何にも具体的な案が出ておらぬ。もちろん予算案に何の数字も出ておらぬ。予算を要求するわけではないけれども、これはこのままでいいでしょうか。二世、三世、四世の将来を考えますと、その国の言葉の新聞をりっぱにペイするようにやらせる、そしてまた在留日本人のために、日本語の新聞をりっぱにするよう経営に対してあっせんする気持はないか。どんなものでしょう。
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御趣旨はまことにけっこうでありまして、私ども今後御趣旨のように努力していきたいと思います。海外におきます宣伝啓発活動というものにつきましては外務省自体ももっとやらなければならぬと思っておりますけれども、今お話のように、現地におきます日本語の新聞等がだんだん発行部数あるいは内容が整って参りますと、さらに非常に有力となると思うのでありまして、そういう意味において、今の御発言のような趣旨をわれわれも今後頭に入れて進めて参りたいと思っております。
  16. 田原春次

    田原分科員 次は藤山さんがやれそうな仕事の第三点として、海外移民の問題を見てみたいと思います。移民の必要論はここで論じませんが、問題は政府の努力の仕方に対して非常な不満があるわけなんです。  戦前、たとえばブラジルだけを例にとりましても、大阪商船のさんとす丸とか、ぶえのすあいれす丸とか十一隻あって、二週間置きに神戸からこれを満載して出ていったものです。その一番最盛期でも二万七千人ぐらいしか送っていない。最近は、一年置きぐらいに移民船を作るような格好で、オランダ船をチャーターしてやったりしていますけれども、最大限一万人くらいしか行けない。日本国内では最近は大体百二十万人くらい人口がふえるといわれている。もちろん人口のはけ口という意味ではないけれども、日本人の持てるよさ、勤勉、改良工夫性、その国における法律を守るという点、こういう点からしますと、資本の投資等による開発の援助ということよりも、人間がまず行くべきものじゃないかと思うが、この点についての努力の跡が少しも認められない。いろいろ募集その地についてのまずさもありまして、せっかく行きたい者がありましても、なかなかやってくれません。そこで、この移民問題についてこまかく言うと三つあるのですが、第一は移民船なり、あるいはなくなった村田省蔵さんが最後まで主張しておりました飛行機のチャーターによる輸送なり、急速に何万人でも送る用意があるという誠意が政府側に少しも認められない。一年置きに一ぱい作るのではなしに、どうせ作るなら、私は一挙に現在の日本の造船能力をフルに動かして作っておく、こうしてもらいたいと思う。なぜかと申しますと、こちらの都合で船がおくれて、送出が非常に制限されておるけれども、相手はいつまでも日本人を待っておるわけではない。ある時期になると制限という時期が来ると思う。あるいは移住禁止になるかもしれぬ。だから、こっちで、先方が入れるというときに急速に船をふやさなければならぬが、少しもその努力が認められない。これは外務省が熱が足らないと思う。おざなりだと思う。何かほかのヨーロッパの外交か何かをやるなら、それでいいのでありましょうが、そうではなくて、日本の置かれた運命からすれば、少くともわれわれの希望を言うなら、年に五十万人くらい送れるくらいの輸送力をまず確保しなければならぬと思う。御承知のように、イタリアは本国の人口が四千八百万人くらいです。ところが海外に移住しておるのが千八百万人、アルゼンチン、それからニューヨークは市長なんかもとっております。サンフランシスコもそうです。従って、海外に行っておるイタリア人及びその子孫が郷里に送金します貿易外の外貨は莫大なものである。現に日本から行っております者が中南米約四十万、ハワイ、北米約三十万と見まして、大体七十万だが、それでも去年のを通じますと二百億円というものを貿易外に送っておる。貿易で二百億をもうけるということは、かりに一割といたしましても二千億の商売をしなければならぬ。それが、みんな向うへ行っておる人が一生懸命働いて、おじいさん、おばあさんに送り、出身学校にピアノを寄付するということで金を送っておる。現に移民を非常に歓迎されておる土地があるのに、輸送力がない、こんなばかなことはない。中南米のドミニカ、パラグァイにしてもそうです。外務省は、移民外交というものを何だか自分仕事でないように思っているかもしれぬ。だれかが言ったダーティ・ワーク、きたない仕事だと思っているかもしれぬが、もってのほかだ。貿易のことこそ主力を注ぐべきものだと思っているかもしれぬが、移民は、自分にその意思があればできるのです。これは、一つは中南米の外交官の配置が、大体私学出か外務省留学生上りで、自分恩給のことばかり考えているところに弱さがある。反面フランスだとかニューヨーク、ワシントンあたりにはだいぶん大ぜいの、公使だけで四人も行っておるのだが、何も用事がないのです。アメリカにはイエス・サー・イエス、サーと言うのが一人おればいいのであって、また東京にイエス・サー、イエス・サーと言うのが一人おればいい。ノー・サーと言うのはいないんじゃないですか。それをワシントンに四十人も置いて、そうして公使が四人もおるということはもってのほかで、こんなのは従来の英米追随外交の最もみっともない慣行だと私は思う。優秀な外交官だったら、お前、アマゾンに行ってこい、ここに移住地を作る外交をやってこいということを言わなければならぬと思うのですが、そういうことはちっともやっておられない。移民問題に対する熱情が全く藤山さんは足らぬ。前の岸さんは、山口県の関係で、多少は熱意があったかのごとくにそつのない答弁をされておったが、今度はあなたになると、まるで誠意が数字に表われておらぬ。イギリスにしてもそらでしょう。豪州、それからカナダあるいはアメリカヘ、今でも通計二十五万くらい送っていますよ。これは送れるのです。それだけの余地があるし、また歓迎するのですから、ですから、外務省外交の基準を移民貿易に重点を置くくらいに一つ切りかえなければならぬと思う。どうですか、私の考えは。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 移民が重要でありますことはお説の通りでありまして、われわれといたしましても、現在熱意を持って移民の問題を外務省としては取り扱っておるつもりでございます。また決して外務省の連中がダーティ・ワークだと思ってこれを扱っているわけではないのでありまして、熱心に、しかも強力に移民問題を扱っていきたい、こういうことで現在仕事をしております。ただ、御承知のように、移民船を作ります問題等になりますと、資金等の関係もございまして、われわれが所期しているような資金の確保ができないのは遺憾でありますが、今後ともそういう点につきまして努力をいたして、移民の問題は、令お話しのように送り出すと同時に、またそれが貿易外の収入にも将来はなってくれることでありますから、進めて参りたい、こら思っております。
  18. 田原春次

    田原分科員 外務省の官吏にしても、移民のことをダーティ・ワークだと言う者がおりましたら、少し古くなったのでもいいから、藤山さんの絹のハンカチをやって、それをふかせるくらいのことをやってもらいたい。  それで、私はこの機会に、運輸省の海運局になりますか、船舶局になりますか、移民船が遅々として進まないという理由について、一体なぜそういうふうになっているのかということと、最近の移民船の状況を一つこの際明らかにしておいてもらいたい。
  19. 粟澤一男

    粟澤政府委員 移民船の問題につきましては、運輸省としましては、累次計画造船等でもやっておりますが、ただいまお話しのように、一年置きというふうな状況で、私どもも不満足とは思っております。大体政府の方針としまして毎年移民の送出計画を立てられまして、これにマッチするような船舶を建造していく、こういう格好になっております。ことしは、御承知の通り、一万名でございますが、これが政府計画として飛躍的に来年、再来年増加されていくということがきまりますれば、当然それにマッチする移民船の建造計画も、これと一緒に立てられていく、こういうふうに考えております。
  20. 田原春次

    田原分科員 運輸省は熱意が足らぬ。もう少し移民問題と取っ組んで、移民船の建造を第一に考えるようにしてもらわなければいかぬ。  それからもう一つ外務大臣にぜひ希望をし、またお尋ねをしておきたいのは、一万人しか行けないというのは、船だけでなくて、国内の移住者の財産処理に難関があるということです。行く者は零細農でなくて、中農か小農に募集上の便宜が制限されておるために、この人たちは自分で家を持っておるのです。あるいは五反か三反か一町の田を持っているのです。いよいよ各県の海外協会の審査をパスして行けるということになりまして、突然二週間くらい前に神戸のあるいは横浜の移住収容所に入ってこいということになってくる。そうしますと、田地や家の処分なんかできない。それじゃ村の者が、あれは海外へ行くから高く買ってやるかというと、あべこべでありまして、あれはブラジルへ行くそうだからたたいてしまえということで、百万円のものが五万円くらいにしかならない。行けないで、泣く泣く途中でキャンセルする者があるというのは、移住予定者の国内残置財産処分のまとまらない点ですね。この点は、私は大蔵省とそれから外務省で話し合ってもらいたいと思うのは、まあ、仮の名を移民信託金庫とでもいうのを作るか——今の輸出入銀行にこれを委託するわけにはいかない。それから農協の農林中金に委託するわけにもいかぬ。少しずつ性質が違う。そこで海外移住者の財産を一応預かって、まああなたは行っていらっしゃい、あなたの希望する値段で売れたときに送金してあげましょうという、信頼すべき金庫がなくちゃならぬ。これは相当の利子をとってもいいし、それほどの大きな金額のファンドでなくてもよろしい。もしそれができますと、安心して海外へ行けます。海外から日本に買いたいものがある。屋敷を買っておこうとか、いろいろな場合、そういうのも信託金庫があればいいのであって、移住者がほんとうに財産をきれいに処理して行くということになると、行きたい方はどんどん行きなさい、あとは、あなたの財産は公正妥当に処理してあげましょうという、仮の名を移民金庫でもいいし、移住者信託金庫でもいいし、あるいは必要とあらば、日本輸出入銀行の中へ移住者部というものを作るか、あるいは農林中金の中で移民部というものを作るか、あるいはこれらを合せた別個の独立のものを作るかは別といたしまして、もう少しこういうものに熱を入れてもらわなければいかぬ。これは、神戸から船に乗る人が泣くように言うのです。財産が気になるけれども、実際親類にたたかれて、泣く泣くこれしか持ってこられなかった。こういうことになっておりますから、どらかそうした移民政策上の金融機関を考えてもらいたい。これは、大蔵省、おいででしたら、大蔵省の意向も、この際私は聞いておきたいと思う。われわれは、海外日本人にも知らせたいし、それから今後海外へ行く人に対しても、これは親切にやるのだということを知らせてやりたいと思う。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 移民の方々の実情に即した今のような御提案は、非常に重要な問題だと思います。十分に事務当局に検討をいたさせます。
  22. 石田正

    石田政府委員 お話のような事情がありますことを、実は私、お尋ねのあるまでよく存じておりませんでした。しかし、そういう事情があろうことも想像されますので、何かそういうことをうまく処理されるのが望ましいことだと思うのであります。ただ、今金庫のお話がございましたけれども、これは、おそらく財産は、移民の方は全国から行かれるのでありますから、方々に散在しておるだろうと思います。そういう関係から、また財産の種類も、必ずしも一様のものばかりでもないように思われます。果して金庫というものを作りまして、金融を採算ベースでやっていけますかどうか。あるいは海外移住協会のごあっせんによりまして、県とか市町村とかいうふうなものの機能を使うということの方が実際的であるかどうか、いろいろ問題があろうと思います。検討いたしていきたいと思います。
  23. 田原春次

    田原分科員 早急に検討してもらって、何かの形でそういうものができるか、あるいは運用で生かしていけるかということになるように、これは外務省大蔵省、双方に希望しておきます。  次はこれまた藤山さんでやる気になればできる貿易の問題であります。貿易といえば、もちろん英米とか東南アジアとかいう貿易はこれは、もう外務省があまり力を入れなくても、業者がやります。あなたに期待する貿易というのは、従来政府があずかっていない方面への新しい進出、この点で、お隣の中華人民共和国等の問題は協定等でだんだんできると思いますが、残っている問題は、アジアにおいては北鮮が残っております。それから北ヴェトナム、それからヨーロッパにおいては、国交回復国としてハンガリアとブルガリアとルーマニアが残っている。これは、今度郵船の黒海航路ができたりして、輸送関係は多少道が開けたわけでございますが、北鮮に対しては、韓国に気がねをするあまり、貿易状態は非常に憶病になっている傾向が見えて、まことに遺憾にたえない。この二月十二日と聞いておりますが、イギリスの商工会議所の常務理事が、北鮮の——普通に北鮮というのは、実は朝鮮民主主義人民共和国というわけですが、そこの平壌に来ることになっております。昨年の秋には、アデナウアー首相の反共政府の西ドイツから通商代表団が来て、打ち合せをしておる。こういうふうで、ヨーロッパの国々はもっとおとなでありますから、イデオロギーとか国内の指導方針というよりか、自分のところの商品市場を確保しよう。たまたま日本政府が腰抜けと申しますか、無関心と申しますか、一番近い韓国アメリカへ気がねして、貿易さえやらない。この機会をとらえて、遠い西ドイツやイギリスからどんどん来ておる。私は昨年の秋行ってみますと、平壌にはドイツの自転車が来ておるのです。四十日も海上輸送して持ってくる自転車が、十分使われておる。自動車も来ております。そういうふうでありますから、藤山さんのやる仕事としては、私は国交回復国、特に共産圏との貿易を大胆に道をあける。たとえば韓国と朝鮮にしましても、今から二万年も対立しておるということはないのです。何年、何十年か後には必ず一本になる運命にきまっておる。しかるにあなたの外務大臣としての運命は、長く見て九月までじゃないかと思う。下手すると、不信任案をわたしらも出しますからそうすると、早目にやめなければならぬということになる。従ってこの辺で、さすがに実業家の外務大臣であって、思い切って北鮮との貿易を始めた。このくらいになりますと、われわれも不信任案はしばらくあと回しにしてもいいと思うのであります。だから、あなたの貿易政策というものは、あなたがその気になれば、相手は待っているのですから、後ほど石野君から話があると思いますが、石野君は八十日も平壌におりまして、日朝民間貿易協定というものを作って、日本の歴史に輝かしい歴史を作ったりっぱな人である。しかし持って帰ると、どこもこれを相手にしない。何か共産圏との話にイエスとかなんとかいうと、あれは赤だといって、首になりはせぬかという官吏の弱いところがあって、腹の中では賛成しても、口では言えないということになる。そこで、あなた方のような偉い人が、思い切ってまず貿易からいこうというような気になってもらわなければ困ると思う。そういう国交回復国、特に共産圏各国との貿易の急速なる伸展に対して、どういう具体的な考えを持っておるか、これをこの際明らかにしてもらいたいと思う。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国交回復の国と逐次貿易を増大していきますことについては、そういう考え方で私どももおります。ただ北鮮の場合においては、現在非常にデリケートな段階にありますので、今日貿易を進めるという考え方を持っておりません。
  25. 田原春次

    田原分科員 そうなると、これは不信任案問題も考えなければならぬと思うのですが、韓国が来てしばしば強いことを言いますね。そうすると、外務省のお上品な人たちはびくびくしているのです。これに対して、私は一つの例を申し上げますと、中東でイスラエルという国ができて、アラブ諸国が非常に反対した。イスラエルと貿易をやるくらいなら国交を断絶するぞというわけで、アラブ七万国が決議をして、西ドイツへ行ったそうです。おやりなさい、商売は商売だからやりますよと言われて、別に国交も断絶せぬで、アラブの猛者連中も帰ってきたという話もある。だから、韓国から一々文句を言ってくるのは、その国の方針を取り次いでおるのですから、これはイエス、これはノーと分ければいいのであって、今北鮮と貿易をやっても、何も韓国に気がねする必要はない。形式的にいえば、三十八度線で分けてあるのです。どっちが征服したというわけでもない、あれは前の戦争の終末のときに分けてしまった。だから、北の方とも貿易をやります。いい例は、今度シベリヤのナポトカとの間に間もなく航路が開かれるでしょう、そうすると、あの帰りに北鮮の清津に七時間で寄れるのです。これは李ラインでも何でもないのですから、最大限に向うの言い分を通しましても、向うの危険なラインに触れずに堂々と商売ができるわけです。大阪の人も、新潟の人も、敦賀の人も、あるいは九州の門司の人も、みな希望しておるのです。政府だけがまごまごして相手の顔色ばかり見ている。外交では、やはりときどき強いことを言って、正しいことを言ってこれを通すというくらいの気魄を持ってもらわなければいかぬと思う。私は、あなたの在任中の最大の仕事は北鮮その他共産圏との貿易に手をつけておく。そうすれば、外務省の入口あたりに記念碑が立つのじゃないかというくらいに思う。そういう野心はないですか。もう一ぺんお聞きいたします。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の個人的な野心はございませんけれども、北鮮の問題は非常に重要な時期でありますので、私からこれ以上のことを御答弁いたしかねます。
  27. 田原春次

    田原分科員 時期等の問題で言わぬというならばしようがないが、それでは、もう一つ最後に簡単なことでお尋ねしたいのは、中国との国交回復の時期なんです。いつもここで岸さんやあなたの答弁を聞いておりますと、さしあたって貿易をやりますとか、いまだその時期にあらず、しからばいつがその時期なりやということである、これは、この辺で日本政府も腹をきめなければいけないと思うのです。なぜかと申しますと、一昨年までは、アメリカの中国に対する方針は、打倒中共だったのです。蒋介石を支持して打倒しようとしておった。ところが中国の方はたとえば武漢にあんな大きな鉄橋を作るとか、あるいは黄河のはんらんをとめる堤防をやるとか、国内に各種の工場を開くとかいうわけで、私はここ三年間続いて見にいっているわけですが、行くたびに、その建設は非常に進んでおる。そこで、昨年から今度はアメリカの方針が変ってきた。アメリカの方針が変ったのは昨年の秋に、カイロで国際赤十字総会のあったときに、アメリカの態度が現われたのです。それは何かと申しますと、台湾をこのまま自分の軍事基地に認めるならば、中国を認めていい、大小二つの中国を認めるというところまでアメリカは折れてきた。もちろん中国側では、これを承認いたしません。中国は同じ民族だから、台湾自分たちの領土であるといい、そこまで突っぱるようになっておるようでありますけれども、この辺で日本政府も進んでアメリカに勧めて、あるいは場合によったら、インドとでも協力して勧めて、この六億六千万の隣の人口、そうして国内が共産主義であるからといって、何もそれに驚く必要はないと思う。共産主義の国だから承認せぬというならば、なぜ一体ソビエトを承認したか。ソビエトの方が共産主義では親玉である。これを承認して大使を交換しておるのに、中国だけをのけるというのは、ほかに何の理由もない。結局理由は、アメリカのアジア政策に気がねをしておるというだけである。遠慮をしておるというだけです。私は遠慮外交、気がね外交、卑屈外交は、この辺で一ぺん清算したらどうか。それにはこっちがイニシアチブをとって、中国は昭和何年何月に承認する、だからそういうふうにアメリカも方針を変えろというふうに引きずっていってもらいたいと思う。中国承認の時期いかんということを、この際明らかに発表してもらいたいと思う。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外交問題につきまして、将来のことを予見するわけに参りません。
  29. 田原春次

    田原分科員 そういうふうに外交官ずれしたような答弁になると、まことに藤山さんの人気は落ちてしまう。やっぱりスポーツマン藤山さん、あるいは絵かきの藤山さん、あるいは実業家の、ほかの条件がそろっておるのですから、ははあさすがは藤山さんだという工合に思わせるようなことを、ときにホームランの一本ぐらい打たなければ、三振ばかりやっているようなことでは、私はだめだと思う。だから将来の問題でも、明らかに声明して、世界よ、ついてこいというくらいのなにがほしいのだが、それがないということは、まことに不満足であります。しかし役人になってみると、あれも言わぬでくれ、これも言わぬでくれと言われるだろうと思うが、どこか適当なところをずばっとやって、あざやかなところを見せるように希望して私の質問は一応終っておきます。
  30. 田中久雄

  31. 石野久男

    石野分科員 過日の大蔵委員会で、一萬田さんが、アジア地域におけるところの外貨の不足しているところには、なるべく円為替を取り入れて進出していきたい、こういう答弁をなさいました。前尾通産大臣は、もし引き合うならば、なるべく中共との取引を拡大していこう、こういうような話をされております。外務大臣は、そういう考え方に対してどういうふうにお感じになっておりますか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本貿易に依存して国を立てておりますことは、申すまでもないことであります。従いまして、可能な範囲内において貿易を増進させるということは、私も努めなければならぬことだと思います。
  33. 石野久男

    石野分科員 今前尾通産大臣、あるいは大蔵大臣などが、特にアジアにおけるところの貿易の拡大に非常に熱心であるということに対しては、外務大臣、別に反対でもないでしょうし、むしろ賛成だろうと思いますが、そういうふうに見てよろしゅうございますか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アジアの貿易の拡大につきましては、むろん大蔵大臣、通産大臣とともに努めて参ります。
  35. 石野久男

    石野分科員 特に前尾通産大臣は中共との貿易について非常に熱意のある答弁をなさっております。それに対して、御意見はありますか。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 前尾通産大臣の熱意のある中共貿易についての御意見、私どもも、中共に対して可能な範囲内においてできるだけのことをして、貿易を拡大していくということは望んでおります。
  37. 石野久男

    石野分科員 ただいま田原委員からもお話がありましたけれども、中共とも貿易すれば、するだけの決意を持っておれば、北鮮との貿易もやって可能であろうと思うのです。これを可能にしない、またあなたがその問題に対して触れたくないとか、あるいは触れられないという理由はどういうところにあるのですか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在の韓国との関係は、非常にデリケートなときであります。私としては、今日この席でこういう問題に触れたいとは思いません。
  39. 石野久男

    石野分科員 触れたくないという気持はわかるのだけれども、北鮮との貿易は、しないという決意を持っておるのですか、どうですか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現状においては、ただいま申し上げましたような理由で、適当でないと思います。
  41. 石野久男

    石野分科員 インドネシアの焦げつきの債権が棒引きになったということによって、オープン・アカウント関係で起きておるところのいろんなこちらの取り分になっている債権の問題が、やはり非常に問題を大きくしてきております。特に韓国との間の焦げつきの問題とか、あるいは台湾の問題、エジプトの問題、アルゼンチンの問題、こういうような問題が非常に重要な段階にきておると思うのです。きょうの新聞などによりますると、大蔵省にそういう問題を非常に苦慮して、やはりなるべく焦げつきの大きくならないようにしようという努力をしておるけれども、これに対して外務省は、外交上の理由で、大蔵省の申し入れを拒否しておるというふうに聞いておるけれども、そういうことはあるのですか。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 焦げつき債権を増大するということは、われわれも考えておりませんので、大蔵省と別段意見の相違があるわけではございません。なおその問題につきましては、経済局長より答弁させます。
  43. 牛場信彦

    牛場政府委員 お答えいたします。韓国との関係は、ただいま四千万ドルほど貸し越しになっております、これに対しては、しょっちゅう催促しておるのですが、向うが払ってくれないというのが実情であります。エジプトとは、ただいま協定の改訂を申し入れまして、交渉を始めておるところでございます。なお台湾との関係は、新聞に出ておりましたが、これはやや真相を伝えておらないのでありまして、台湾との関係が、ただいま貸し越しになっておることは事実でありますが、二、三年前には、こちらが非常な借り越しになっておりまして、その際に、台湾の方で催促しないでくれたこともございました。そういう関係もありますので、貸し越しになったからといって、直ちに支払いの要求はしないということに、大蔵省との間にも話し合いができておるわけであります。そうして三月から台北におきまして、今年度の貿易協定の交渉台湾と始めますので、その際には、もちろんこの問題もあわせて討議しようということで、これは、台湾政府とも非公式にはきちんと話し合いをいたしております。
  44. 石野久男

    石野分科員 大臣は、インドネシアの焦げつき債権を棒引きすることを決意をした。これからあと日韓との会談が出てくるようにも聞いております。韓国との債権の問題、焦げつき債権の問題について、インドネシアと同じように棒引きするような考え方でおられますか。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシアの債権の棒引きをいたしましたのは、先般賠償も解決し、平和条約も締結されましたところで、インドネシアと日本との将来のことを考えまして、棒引きいたしたわけであります。こういう債権をいつでも棒引きするという、前例を開いたという意味ではございません。従って、韓国につきまして、そのままこれを適用していくという考えはないということであります。
  46. 石野久男

    石野分科員 韓国の焦げつき債権については、棒引きをしないという考え方でおるということですね。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今後の問題になりますので、そのときの問題として処理して参りたいと思います。
  48. 石野久男

    石野分科員 この問題は、あとでいま一度触れたいと思っております。ここで一つ外務大臣に聞いておきたいのは、二月十五日までに、大村収容所と釜山収容所にいる日韓の抑留された者の交換を、相互釈放するという方針を、昨年の暮れに約束なさった、こういうように聞いておりますが、それは事実ですか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 事実でございます。
  50. 石野久男

    石野分科員 その後、その約束に従っての仕事は、どういうふうに進んでおりますか。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アジア局長から説明させます。
  52. 板垣修

    板垣政府委員 本年の一月の初めから、この実施につきまして、日韓連絡会議でいろいろと協議をした結果、大村におりまする韓国人国内釈放につきましては全部完了いたしました。釜山におります日本人の漁夫の帰還につきましては、御承知のように、第一船で三百名が無事日本に帰りました。なお大村等におりまする不法入国者の韓国送還の問題につきましても、第一次船約二百名が二十日に出ることになっております。その後、日本人の漁夫の送還問題につきましては、第二船以下がまだとだえておるわけでありまするが、これにつきましては、不法入国者の送還等に関しまするいろいろな実施上の点で、多少問題が残っておりますので、ただいま韓国側の主席代表でありまする柳公使本国に帰って打ち合せ中でございますので、これが帰って参りましたら、なお打開が進むものと私どもは期待しております。
  53. 石野久男

    石野分科員 釜山収容所におる日本人の正確な数、それから大村収容所におる者の正確な数、そういうものをこの際明らかにして下さい。
  54. 板垣修

    板垣政府委員 釜山におります日本人の漁夫は、全部で九百五十二名であります。そのうち二十九名のまだ刑を了しない者が釜山に残っておりますが、九百二十二名が刑を了した者でありまして、これが日本に送還されることになっております。なお残りの二十九名につきましては、一応昨年末の協定の範囲外でありますので、これも随時刑が終り次第日本に帰るということになっております。なお大村等におりまする不法入国者等の全員は千二百六十名になっております。
  55. 石野久男

    石野分科員 この千二百六十名と、それから九百五十一名ですか、この千九百五十一名の中で、今までに相互釈放で帰ったり、あるいは向うの国内釈放した人間を、もう一ぺんはっきり言って下さい。
  56. 板垣修

    板垣政府委員 釜山におります日本人漁夫で、帰って参りましたものが三百、それから不法入国者で韓国に送還されるべき者の予定が第一次二百五十名の予定で、これは二十日に帰る予定でございます。
  57. 石野久男

    石野分科員 昨年の暮れには、どういう話か知らないけれども、二月十五日までに大体話し合いをつけるということでしたのですが、これが今のところそういう事情になっている。そうすると、その約束通りになかなかいっていないのですが、今見通しとしては大体いつごろそういう約束の完了ができる見通しですか。
  58. 板垣修

    板垣政府委員 昨年末の協定の際に、一応一月半あれば全部完了するという予定のもとにああいう約束ができたわけでありますが、いろいろ協議をしてみますと、実施上むずかしい問題もありますので、延びております。しかし日本人の漁夫の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、金公使韓国に帰りまして打ち合せをしておりますので、その結果、打開の道がつきますれば、今月中にでも帰り得るのではないかというふうに期待しております。なお不法入国者の送還問題につきましては、数も多いわけでございますので、なお毎日片々ある程度の密入国者もありますので、一月半というのは一応のめどでございまして、これは今後も一定数に達し次第、三月以降になりましても随時送還をし、韓国側は引き取る、こういう話し合いになっております。
  59. 石野久男

    石野分科員 聞くところによると、大体それが終ったあと、三月一日から日韓会談が行われるというふうに聞いております。大臣は、こういう事情のもとで、やはり三月一日から日韓会談を開くお考え方でおりますか。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在のところ、三月一日から日韓会談を開きたいと思っております。
  61. 石野久男

    石野分科員 いま一度お尋ねしますが、それは、この相互の釈放が完了しなくてもやるということですか。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 完了することが前視でありますので、完了できるという予定がつきますれば、三月一日からやりたいと思っております。
  63. 石野久男

    石野分科員 どうもはっきりしませんからもう一度聞きますが、完了することが前提であるからという意味は完了しなければやらないというふうにとってよろしいのですか。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在、今の抑留漁夫の送還を期待しております。そして最初の予定では、今申し上げましたように二月十五日前後までに完了する予定でおったのです。従いまして、三月一日から日韓会談を開ける、こう思っておったわけです。今せっかく折衝しておりますので、三月一日までに釈放ができるのではないか、こう予想しておりますが、しかしそれが延びますれば、また日韓会談も延びるわけであります。
  65. 石野久男

    石野分科員 なるべく早くこの問題の解決をしてもらうことを希望するとともに、特に釜山におる日本人の一日も早く帰るように、そういう交渉が進められるように私ども期待いたします。同時に、やはり大村収容所におる、韓国とか、あるいは何とかいっておる朝鮮の方々を帰す問題も、なるべく早く帰した方がいいのじゃないか。これは私が言うまでもなく、ここにおる諸君は非常に長い期間抑留されておるのであって、人道上の立場からいっても、これは許されない問題だと思うのです。釜山の問題と大村の問題は今は外交上の問題とかなんとかいうのじゃなくて、むしろ人道上の立場でこれを解決するのが筋だと思っております。大臣は、やはりそういう考え方でおられるのだろうと思いますがいかがですか。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう考えでおります。
  67. 石野久男

    石野分科員 この釜山に抑留されておる漁夫の方は、理不尽に李ラインでやられたものですから、問題なくこれは帰してもらえると思うのです。ところが大村収容所におる朝鮮人の諸君についてはいろいろなやはり見方があるようです。ことに大臣もすでに御承知のように、朝鮮が不幸にし二つに分れているという関係から、あそこにおる諸君の中にも、やはり南と北との両方に関係する人たちがいるわけです。そこで問題になりますのは、この中に抑留された諸君の取扱いの問題で一番大事だと思いまするのは、これらの人々が自分たちの思うように、自今たちの意思通りに、自分の選ぶところへ帰れるかどうかという問題だろうと思うのです。これは、参議院のわが党の高田参議院議員に対しても、はっきりと法務大臣などが答えておるのですが、本人の意思に従うようにそれぞれの人々をそれぞれの国へ帰す、こういう考え方は、外務大臣、お持ちになっておるだろうと思いますが、いかがですか。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 非常にデリケートな段階にありますので、私は、今とかくのことを申し上げかねます。
  69. 石野久男

    石野分科員 本人の自由意思によってその人たちを帰すということが、大臣は一言えないというのですか。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは、一日も早く日本人抑留漁夫が帰れるように努力をしております。その微妙な段階であるということを申し上げております。
  71. 石野久男

    石野分科員 私どもも釜山にいる日本人が一日も早く帰ることを希望している。同時に、その相手になっている朝鮮の方に対しても、やはりその人たちもなるべく早く帰してやるようにした方がいいと思う。そこで、その帰る人々がいろいろな考え方を持っているから、その人々の自由な意思に基く帰国という問題、現実に朝鮮が二つに分れているという事実があるから聞くのであって、これは何も隠しておく必要はないのです。国際連合でもちゃんと問題になっている問題なんだから、そんなことは遠慮しないで、はっきり言ってもらいたい。これは、すでに政府の中では法務大臣はそれをはっきり言っているのである。外務大臣がそれを何とも言えない、そんなばかなことはないでしょう。いま一度はっきり答弁して下さい。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げたように、人道的立場に立って問題を処理していく、ただ非常にデリケートな段階でありますので、私から今申し上げるのは差し控える、こういうのであります。
  73. 石野久男

    石野分科員 今収容されている人々の中には、非常にたくさんの北の方の朝鮮民主主義人民共和国に帰るという人がいるわけです。それはすでに政府の方でも承知されて、その人たちを別むねに置いて、そうして帰るところは別だということをはっきり明示して、今まで取り扱ってきた問題である。その問題を、何も遠慮する必要はないわけでしょう。外務大臣は、すでに国内においてもそういう取扱いをしている事実を見ているわけですし、あの中でもはっきりしている。その点、何も遠慮する必要はないじゃないですか、どうですか。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは、そういうふうに物事を処理してきております。ただ非常にデリケートな段階にあります。これ以上のことを申し上げるのは、適当でないと思います。
  75. 石野久男

    石野分科員 この中で私どもがやはり非常に大事な問題だと思っていることは、中にいる人々が、とにかくこういうふうに帰りたいというけれども、なかなか帰してもらえないということが、だんだん、だんだんと具体的になってきそうな状態が見えるわけです。こういう問題を私たちはほっておきますと、国際的な問題として、やはり始末に負えないものになってくるだろうというふうに心配するわけです。これは、あなた方が日韓会談を進めるために、デリケートであるという事情もわかりますけれども、何も外務大臣相手にしているのは、韓国だけではなかろう、現実に世界の各国があるし、しかも北朝鮮の厳然として存在している事実もあるわけです。そういう問題を無視して問題を解決できないんじゃないですか。現実に中には、北の方に帰りたい人々がおって、あなた方は別むねに入れて、数年間にわたってこれをめんどうをみてきているわけです。それをはっきり言えないというのはおかしいじゃないですか。
  76. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたような事実で問題を処理しておりますし、また先ほどお話しのありましたように、人道的立場でこの問題を処理していきたいと思っております。現在非常にデリケートな段階にありますので、これ以上お答えいたしかねます。
  77. 石野久男

    石野分科員 デリケートということで、問題の本質的なものをあやふやにしておくことはできないだろうと思う。私はそのデリケートな路線の中で、問題が混乱することもおそれますけれども、それ以上に、そういうことのためにもっと大きい問題が国際的に出ることを、なおおそれるのです。それは日本の国の将来のために、やはり考えなくちゃならぬ問題だと思うからなんです。それで、もしここで公開の席上でやれないなら、私は非公開でやってもらってもいい。その問題をはっきりしてもらう必要があると思う。私はこれはあとでまたいま一度お尋ねしますが、時間の関係もありますから、それならば大臣にお尋ねしますけれども、あなた方が三月一日からやろうと予定しておる日韓会談については、すでに北朝鮮の方は、外務大臣が声明をしておる。御承知だろうと思いますが、南日外相はこういうふうに言っている。これは五八年の一月四日の声明ですが、もしもわれわれの正当な要求にもかかわらず、抑留された朝鮮公民を南朝鮮に強制送還をしたり、全朝鮮人民の利益にかかわる諸問題を南朝鮮当局と一方的に解決するならば、それから招来されるすべての結果に対して、日本政府は全的な責任を負わなければならない、こう言っている。これは、日韓会談でどういうような問題をどういうように処理しようとするのかしりませんが、送還の問題と関連して、あるいは賠償の問題、その他一切の問題について、朝鮮は南だけじゃないですよ、北もあるんですよということを明確に声明している。この問題については、外務大臣はどういうふうに見ておりますか。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、現在という時間的な段階におきまして、私がここでいろいろのことを申し上げることは適当でない、こういうふうに思います。
  79. 石野久男

    石野分科員 じゃお尋ねしますけれども、大臣は、今朝鮮が三十八度線で朝鮮民主主義人民共和国と韓国とに分れておるというその事実は、お認めになりますか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現実の事態は認めております。われわれとしては、ただ先ほどから申し上げておりますように、現在の時間的な段階において、私がとやかく申し上げることは、抑留漁夫の送還等を熱心に希望しております政府の立場としていけないことだろうと思います。
  81. 石野久男

    石野分科員 大臣は、南と北があることをはっきり認めておられる。それで、この三月一日から開かれるであろう日韓会談では、どういうことを御相談なさろうとしておりますか。
  82. 板垣修

    板垣政府委員 今大臣が南と北があるということを認められたとおっしゃったのは、事実問題としてあるということでございます。日本政府といたしましては、従来、それから来たるべき三月一日の全面会談におきまして相手といたしまするのは、やはり南の韓国政府でございます。これは、御承知のように一九四八年の国連の決議におきまして、韓国政府は住民多数の住んでおる地域で、住民の自由意思の表明である自由選挙に重きを置く唯一の合法政府であるということを言っておりますから、日本政府といたしましても、この決議に従いまして、韓国政府相手として交渉いたすということでございます。従いまして、建前としては、やはり朝鮮におきまする唯一の合法政府としての韓国政府相手とするわけでございます。ただ事実問題といたしまして、確かに韓国政府の支配の及ばざる地域のあることは事実でございますので、話し合ったこと、あるいはこれから円満に妥結をされたあと、実施上これが適用が不可能な地域があることは事実でございます。建前といたしましては、韓国政府を唯一の合法政府として話し合いをするわけであります。
  83. 石野久男

    石野分科員 大臣にお聞きしますが、私の質問には答えていない。三月一日から開かれるであろうという日韓会談はどういうことをお話しなさるのですかということについての答弁がない。
  84. 板垣修

    板垣政府委員 議題といたしましては、ただいま予定しておりまするのは、第一にいわゆる平和ラインの問題、それから韓国の在日請求権の問題、あるいは船舶の返還問題等を話し、それから在日朝鮮人の国籍処遇の問題、こういうものが一応議題に予定されております。
  85. 石野久男

    石野分科員 先ほどアジア局長は事実上その影響の及ばない地域があるという事実を認めておられる。この日韓会談で交渉されるという問題には、平和ラインの問題と対日請求権の問題、それから船舶返還の問題、在日朝鮮人の国籍の問題、こういう問題を論議される場合、この事実上影響の及ばない地域における問題については、どういうふうにお話を進めるつもりですか。
  86. 板垣修

    板垣政府委員 先ほど申し上げましたように、建前としては、全朝鮮の将来の統一を期待いたしまして、全朝鮮の問題として話し合いをいたしますが、確かに問題によりましては、実質上全朝鮮を対象にできない問題が個々に起ってくると思います。それは、その話し合いのときにきめていくより仕方がないと思います。
  87. 石野久男

    石野分科員 大臣にお尋ねします。今アジア局長は、そういう問題が起きたときは、そのときまた考えなくちゃならぬ、こういうふうに話された。一方では、民主主義人民共和国の外務大臣は、ここで全朝鮮に及ぶところの問題を論議されても、おれは知らぬぞという声明をなすっておる。こういう事実がはっきりしておるときに、日本が国を代表する会談として問題を論議して、それで一切の問題が解決することになるのですか。特に賠償の問題などについては、そういうことになりますと、また今度は新しいところから要求が出ると、またやらなければならぬことになる。二重賠償、三重賠償が出てくることになるのですが、そういう無方針の形でこの会談に臨むつもりですか。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 可能な限りの問題は、可能な範囲内において話し合ってみるということなのです。会議を開いてみなければ、どういうふうに進行するかは、現在ではわからないわけでございます。
  89. 石野久男

    石野分科員 先ほど田原さんからも、大臣に対して懇切ないろいろなあれがありました。大臣は、国を代表していろいろな折衝をなさる一つの方針を、もう少し明確に持たなくちゃいけないと思うのです。可能な限りで可能な努力をしてみるということでは、何になるかわからない。そんなことなら無理に会談に乗り込んでいく必要はない。むしろわれわれにとって大事なことは、両国の間に一日も早く友好関係を進めることにある。そのためにはなるべく障害を残さないように話を進めることだろうと思うのです。ここで私が端的に申し上げたいことは、皆さんが外交折衝上いろいろなニュアンスがある、デリケートな問題があるということで、非常におっかなびっくりの外交をやっておられて、その後にくる日本全体がもうるつぼの中に巻き込まれる、大混乱が起きるようなことがあったらどうするか、もしそれが契機になって、日本の国民の負担が倍加するようなことが起ったら、それは政府の方針としては全く無理なやり方だ。私は、この機会に、明確に政府日本のためになる外交をやってもらいたい。特に朝鮮と日本とは非常に近いし、歴史的な長い関係があるだけに、私たちは、やはりこの機会にはっきりした外交ができるようにしてもらいたい。それを、現実に自分たちの力の及ばないものがあるという事実がはっきりしておりながら、しかも朝鮮は、南朝鮮の韓国が唯一の政府だというような見方をして交渉するということはなっておらぬですよ。南なら南だけを対象にしてやるなら話はわかる。部分的だというなら、私は賛成はしないけれども、それならそれなりの理解の仕方ができるけれども、二つが現実にあり、そしてわれわれの交渉の及ばない範囲があるのだということを明確に自分でも意識しておりながら、しかも朝鮮は南朝鮮一つだ、韓国だけだというような考え方は、矛盾しておるのではないか、どういうふうにあなたは説明なさいますか。外務大臣、その点は明確に、私のわかるように一つここで答弁して下さい。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が、今お話しのように、日本の国と接している諸国と友好関係を保っていく、また親善関係を打ち立てていくということについては、申すまでもないことでございまして、われわれは、そういう意味において日韓会談を進めていくわけなのですただその日韓会談を進めた場合に、話し合いの結果として、可能な範囲内でどの程度に話をするかということはそのときの問題として考えていかなければならぬ、また妥結していかなければならぬ問題だと思うのであります。
  91. 田中久雄

    田中主査 約束の時間ですので、時刻……。
  92. 石野久男

    石野分科員 それじゃ一問だけ。今重要なところですから。  非常に時間の関係があるようですから、私はまたあと質問するにしましても、今の答弁は私は理解できない。現実に二つの朝鮮があるというような事実はわかっていながら、交渉一つだけに限るというやり方は、非常に国民の理解しないやり方だということを明確にしておかなければいかぬと思う。そこで、私はこの機会一つだけお尋ねしておきますが、双方の抑留者の送還という問題に関連しまして、大村収容所にはいろいろな問題が起きております。人権にかかわるいろいろな問題が起きておる。ところがここに対して、やはり面会などが普通なかなかできない。皆さんの組織の中でさせてくれない。これでは非常によくないと私は思います。大臣は、この大村収容所におる方々に対してやはり面会などがある場合は、これを無理に押えるようなことをしないで、面会させるようにしてもらえるかどうかということが一つ。  いま一つは、釈放される人々に対して、何かあそこの中でのいろいろな抑留者を監督されるのは、日本の行管の立場に立っておる日本政府だろうと思うのです。だからここへは、韓国の代表部の方々がその中に入っていろいろなことをなさるということは、少し行き過ぎじゃないかと私は思うのですが、もしそういうふうなことがあるとすれば、非常に困ると思うのです。そういうことのないように一つさしてもらいたいということを、この際明確にしてもらいたい。この二つの問題について、大臣から答弁をお願いしたい。——大臣から……。
  93. 板垣修

    板垣政府委員 ただいまの問題は大村収容所の面会ということは、どういう人かよくわかりませんが、これは法務省の方の所管でございますけれども、特に面会を制限するという意思はございません。ただ、今の微妙な段階におきまして、いろいろな方面の人がやってきまして、本むねあるいは別むねの方をあちこちと訪問することは非常に問題をさ紛糾せるおそれもありますので、この点は、外務省法務省で十分検討いたしたいと思います。  なお韓国側のミッションの人が大村収容所に行くという問題は、現実に起っておりますが、これは、中に立ち入るという問題ではなくて、不法入国者を本国に送還する場合に、それらの人々が現実に不法入国者であるかどうかという意味のチェックをするだけの処理をするということであります。
  94. 石野久男

    石野分科員 大臣から答弁がないので、いま一つ聞きますが、今アジア局長からお話がありましたけれども、処理する問題だといっても、処理するなら処理するでよろしいから、外でやればよろしい。中へ入ってそういうことを処理さしてはいけないと思うのですが、そこをはっきりしてもらいたい。
  95. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 実情は、ただいまアジア局長から申し上げた通りだと思いますが、大村収容所の関係は、法務省の監督下にあるものでありますから、なおその点につきまして、法務省ともよく連絡をとりたいと思います。
  96. 石野久男

    石野分科員 私の意見に対してはどういう感じですか。
  97. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げたような実情でありますので、その実情の上に立って私は意見を申し上げたのであります。
  98. 田中久雄

  99. 島上善五郎

    ○島上分科員 私は、自治庁長官並びに警察庁長官にお伺いしたいのであります。それは、本年は衆議院の総選挙が行われる年である。明年は参議院の選挙並びに地方選挙が一斉に行われる年である。そういう関係で、今事前運動がいろいろの形で行われておる。事前運動といっても、一がいに排斥すべきでないとは思いますが、つまり合法的な当然な政治活動については、間接的な事前運動でありましても取り締る法規もありませんし、また場合によっては、むしろ奨励していい問題もあろうかと思う。しかし、私が今ここで取り上げようとしておりますのは、政界あるいは選挙界を腐敗堕落せしめるきわめて悪質な事前運動が年末から正月にかけて行われ、さらに今なお行われておる。場合によっては、今後ますますそれが盛んになるおそれすらあるのであります。  そこで伺いたいのでありますが、いわゆる悪質な事前運動、政界、選挙界を腐敗堕落せしめる悪質な事前運動を防止する方法としましては、一つには取締りを厳にするということがありましょう。しかし反面には、取締りをいかに厳にしてもどうにもならぬというものもありますので、むしろ国民に対する政治常識の向上と申しますか、政治的な水準を高めるための運動、これは、選挙法では常時啓発と言っておりますが、この常時啓発を活発に行うということが特に本年は必要ではないかと思う。選挙法にも、御承知のように、これははっきりと義務的な規定として法第六条に定められておる。読み上げる必要もないと思いますが、「自治庁長官、中央選挙管理会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙が公明且つ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、云々しなければならない、こういう義務的な規定であります。この規定の建前からしましても、それから今私が言ったように、本年から明年にかけて各種の選挙が行われるというので、悪質な事前運動が盛んになってきておる。この事実に徴しましても、本年は常時啓発運動を活発に行う必要がある。こう考えておりますが、その点について、自治庁長官はどのようにお考えになっておりますか。
  100. 郡祐一

    ○郡国務大臣 お話しのように重要な選挙の行われる年でもありますし、また選挙は、どこまでも公明に行われなければ相ならぬことでありますから、いつも必要なことではありますが、特に本年は選挙民の啓発趣旨の徹底に努めることが必要でございます。そのような意味合いにおきましても、全国の選挙管理委員会に、法の禁ずる事前運動等が行われることがございませんよう、よく趣旨が徹底いたしますよう通達いたしますと同時に、警察、検察等の取締り関係とも常に緊密な連絡をとるように示達をいたし、また自治庁自身といたしましても、あらゆる機会に常時啓発の実をあげて参りたいと考えております。
  101. 島上善五郎

    ○島上分科員 その常時啓発の実をあげたいということだけではどうにもならぬことで、常時啓発するには、それにふさわしい具体的な有効適切な方法を講じなければならぬわけであります。そこで、予算の数字を調べてみましたが、昨年同様の常時啓発の予算約一億、それに本年は臨時の経費として五千万円計上しておるように拝見しました。この一億五千万円では申しわけ的に計上したことにはなりましょうけれども、実際に全国の都道府県選挙管理委員会、市町村の選挙管理委員会が、有効な常時啓発運動をするにはあまりにも少な過ぎる予算ではないかと思う。スズメの涙程度の予算ではないかと思う。確かに私の記憶するところによりますれば、都道府県の選管委員会は、最小限三億計上してほしいということを要求しておったはずでありますし、自治庁も、当初はもう少し要求しておったのではないかと思います。この一億と臨時の五千万円では一体どの程度のことをやれるかということが問題であろうと思うのです。  昨年度の予算で、一体地方の選管がどの程度の常時啓発運動なるものをやったかどうかということを伺いたい。そうして今年はさらに五千万円臨時にふやした予算で、どの程度のことをやれるか。話し合い運動を盛んにやったとか、いろいろおっしゃるでしょう。私も多少やったことは承知しております。しかし、これまた予算が非常に少い関係で、ほんの申しわけ、私の記憶しておるところによると、東京では何か常時啓発の一つの行事として、青梅と品川の公会堂と二ヵ所で政治討論会をやったことを承知しておる。その他寡聞にして、東京では一体何をやったか知らない。東京では、青梅市と品川公会堂の二ヵ所で、常時啓発のための政治討論会をやった。これは、一体どれだけの東京都民の政治常識の向上、いわゆる常時啓発に役に立っているか、申しわけだと思う。要するに自治庁、これは大蔵省かもしれませんが、こんな少額な予算しか計上しないということは、常時啓発に対する熱意がきわめて少いということの現われではないかと思う。法律にあるものですから、全然やらぬわけにいかぬ。それで、ちょっぴり計上しておるといったようなことではないかと思われる。この点に対して、自治庁長官はどのようにお考えになっておるか。
  102. 郡祐一

    ○郡国務大臣 仰せのように、これらの経費は可及的多いことが望ましいことであります。ただ従来有権者一人当り二円の金額でありましたが、今日三円になっておる、これが、大都会などではなかなかに徹底のむずかしいことでございますけれども、あらゆる社会教育の機会等も、こうした選挙の常時啓発に向け、効果の上りますようにいろいろな工夫をして参りたいと思っております。具体的なことにつきましては政府委員からお答えいたします。
  103. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 本年度、御承知のごとく一億円の委託費が予算化されたわけでございますが、これによりまして、全国的にいわゆる話し合い運動というものを展開いたしまして、この対象者が、全国で約延べ人員でございますが、六百万人弱でございまして、それから都市方面におきましては、小集団による話し合い運動は必ずしも適切でございませんので、政治講座と申しますか、従来の公民講座に付随して選挙の講座を設けまして、そういう話の徹底をはかるという考え方によりまして、都市方面で大都市及び中都市でこれが九十万人ばかりを対象といたしております。これによりまして約六百数十万人延べ人員でやっておりますので、五千百万の有権者に対しまして一二、三%に延べ人員は当るわけでございますが、実際問題としては年に数回やるということになりますと、その実対象者は若干減って参ると思いますが、これによりまして、本年度から全国的に組織的に助言者の養成を行いまして、この国の委託費ばかりでなく、地方財政計画で盛り込んでおりますところの地方団体の経費にもよりまして、選挙の公明化の常時啓発を展開いたしておるのであります。明年度はさらに先ほど大臣から御答弁がございましたように五千万円、これは、特に選挙の前でございますので、この話し合い運動に加えまして、臨時的の啓発と申しますか、投票に参加する、そういう臨時の経費をまぜまして強力に展開いたしたい、このように考えております。
  104. 島上善五郎

    ○島上分科員 私がこういうことを言うのは、あと警察庁長官にも伺うのでありますが、現在法の不備もありますが、実に巧妙にして悪らつ、悪質なる事前運動が行われているのです。これは新聞でも、大新聞がしばしば論説に取り上げております。特に最近の大新聞は、何回か社説に取り上げております。それからまた例の天声人語とかなんとかいう下の欄にも取り上げて売る。そういうような選挙界を腐敗堕落せしめる悪質な運動が行われておる。これは、そういう悪質な運動が選挙に効果があるからやるのです。ということは、国民の政治的な水準が低い。観光バスでどこかへ一ぺん案内されておみやげをもらってくると、あの人に入れなければならぬ。あるいは名入りの手ぬぐいをお正月にもらうと、その人に入れなければならぬ。もっとひどいのがありますが、そういうような国民の政治的な水準を高めることが必要だと思う。これは御承知だと思いますが、かつてイギリスにおいても、腐敗選挙防止法とかいう法律を作って、厳重に取締り処分をした。それで今日のようなきれいな選挙が行われるようになった。日本で、一方において法の不備を改めて厳重な取締りをすると同時に、一方において、もっと国民がそういうようなことをやっても惑わされないように、むしろ悪質な事前運動をしたら、これを冷笑するようなところまで国民の水準を高めることが必要だと思う。今数字をあげて、六百万であるとかなんとか言いましたが、これはよそでやっている政治講座とかいうものに便乗して、やりましたという申しわけになるかもしれませんが、私は、実際の効果などというものは、全く微々たるものでお話にならぬと思うのです。現在の悪質事前運動をそういう方面から防止するに足るというような程度のものではないと思う。長官も、現在の予算では少いということをお認めになっているようでございますが、私は、この常時啓発運動については、法律にも定められておりますように、もっと本気になって、本腰を入れてやる必要があるのではないかと思う。  時間がありませんから、警察庁長官一つ伺いますが、警察庁では、先般、たしか今月の十二日に全国の管区警察局の公安部長会議を開いて、事前運動に対しては厳重に摘発するようにという指示をされたと新聞に出ている。そこで、私も今手元に多少資料がありますが、そのような指示をされるには、もちろん現在悪質な事前運動が行われており、さらにこれが盛んになるおそれがあるという事態をつかんだからであろうと思うのです。現在警察庁でつかんだ特に悪質なる事前運動の状況について、代表的なものだけでもいいですから承わりたい。
  105. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 衆議院の総選挙が本年内に行われるであろうというふうな予想がされております際でありますので、いわゆる事前運動にまぎらわしい行為が最近特に多くなったという傾向がうかがえるのであります。先ほど自治庁長官が御説明になりましたように、もちろん選挙は公明かつ適正に行われなければならぬことは申すまでもないところでございます。従いまして、私ども警察といたしましても、まず選挙の公明化のために啓発指導がなされることが先決問題であり、それに即応いたしまして、警察といたしましても、これと協力しつつ悪質な違反行為等がないように努めて参りますと同時に、不幸にして悪質な違反行為がありますならば、これに対しては厳正な取締りを加えるという態度をとっていきたいと考えているのでございまして、先ほどお話のありましたように、先般私どもの関係の管区公安部長の会議を開きました際には、特にいわゆる事前運動の取締りにつきまして取り上げて、指示をしておいたような次第でございます。具体的に、全国的に顕著な事例があったろうというお話でございますが、私今正確に、具体的なこういう実例があったということを記憶いたしておりませんので、あるいは主管の刑事部長が承知いたしておりますならば、後刻お答えいたすかと存じております。
  106. 中川董治

    ○中川政府委員 公職選挙法が犯罪として規定しておりますのは、特に明確な選挙事前運動でありまして、目的の明らかでないものは、検挙できないことは御案内の通りであります。現在各地で行われておりますものは、そういうことが証明できる程度のものは今ございません。ございませんで、日常の社会活動、あるいは政治活動の形態をとっているけれども、選挙目的ではなかろうかと推定されるようなものが各地に散見されます。そういった状況にかんがみ、さらにはだんだんと選挙が近くなってくるという各方面の雰囲気もございますので、そういったことに備えて、啓蒙運動にあわせて、取締りの視察内偵を徹底するという趣旨でございます。具体的に証明できる程度の事前運動は今のとろころございません。
  107. 島上善五郎

    ○島上分科員 具体的に証明できる程度の選挙運動ではないということは現在の法律が不備であるからそう扱わざるを得ないというのであるならば、私もある程度了承できます。しかしながら、だれが見ても明らかに次の選挙に立候補するという人が、私は一つだけ例をあげますが、そういう者が、有権者を観光バスに乗せて、会費を形式的に百円くらい取って、一日案内をして、帰りには温泉へ連れていってごちそうをして、一ぱいつけておみやげを持たしてよこす。こういう例はたくさんある。これは、法の不備から、選挙の事前運動だとはっきり言えないという御解釈ですか。こういう運動自体が事前運動でないという御解釈ですか。
  108. 中川董治

    ○中川政府委員 ただいまの島上分科員の御設例の例は、選挙運動になるおそれのある行為だと思います。ただいまの観光バスに乗せていろいろ案内するという行為が、単に通常社会生活上、ただ観光バスに乗せるという程度のものであれば許された行為でありますけれども、当該行為が特定の選挙を目標にして、特定の候補者の当選を得または得せしめる行為であると証明するような段階にありますれば、公職選挙法の規定する犯罪でございます。
  109. 島上善五郎

    ○島上分科員 その観光バスに乗せて一ぱい飲ませるときに、私はこの次の選挙に立ちますからどうぞよろしくお願いしますと言えば、これは選挙運動です。そんなことはわかり切っている。しかし、そういうことをするような人間は悪知恵が進んでいますから、それほどはっきりしたことは言わぬ。しかし二、三日前の新聞にこういう投書が出ている。投書の文句をそのの言いますが、このごろ選挙目当ての後援会がたくさんできておる、そこで、「後援会員は部落で開く農事座談会や部落常会に押しかけ、休憩の時間や、開会前の時間を利用して、きたる選挙には○○氏にお願いしますと言い、その後で出馬予定者が顔を出しあいさつし、紙を配り、会員を募集するということを平気でやっている。私たち農民にとってはなんのために会合に出席したのか、わからなくなってしまう。」こういう文章が投書の中にありますが、こういったことはごちそうしなくとも何もしなくとも、明白に選挙運動ですが、これなどはよほど知恵の足らぬ者がしていることであって、もう少し知恵のある人間は、出ますからよろしくなんということは言いません。しかし、客観的に何人も出ると認めておる人が、観光バスで連れていって、私の知っている例では、毎日観光バスに七台、一ぱい積んで、会費を百円取って、成田さんにお参りさせて、帰りには船橋の何とかいうセンターに連れていって飯を食わせて、一ぱいつけておみやげを持たせる、これを何日もやって、何百万円、何千万円使ったろうといわれている。こういうようなことは、現在の法律が不備だからはっきり断定できないというならば、私は法律を改正するというところに持っていくべきだと思う。今言ったようなときは、もちろんこれは本人も乗って、奥さんも乗って、一ぱいついで大いにサービスする。この人が立候補するということは、だれでも客観的に知っておる、きまっておる。こういうことは、選挙運動と今の法律では解釈できない、法の不備で解釈できない、こうおっしゃるならば、それはそれで私はまたやりようがあると思う。こういう、今私が例にあげたような事実に対して、どう御解釈されますか。
  110. 中川董治

    ○中川政府委員 御設例の場合が公職選挙法に規定する百二十九条違反である、こういう態様になる場合があろうとは私は思うのであります。ところが、私ども捜査官がこれを摘発いたしますにつきましては、何といっても評拠によらざるを得ない。証拠によって、特定の選挙によって、特定の候補者の投票を得る、こういう目標を達成するということになりますと、対象上の問題があろうと思います。それで、われわれ国の刑罰権の発動によってこういうことを粛正するという点は、やはり証拠法上の隘路がございますので、その点は宿命的に若干鈍くなるという面を持っておるのであります。それで、かねて申し上げましたように、啓蒙宣伝によって、そういうものはあまりよろしくない行為だ、われわれの言葉でいえば、まぎらわしい行為はよろしくないことだとい風潮を旺盛にしていくということによって、だんだんそういう空気をなくしていくということと、他面には、われわれの刑罰権の発動によって、そういう面の証拠を収集いたしまして、特定の選挙に、特定の候補者の当選を得ることを目的にするということを証明するようには努力して参りたいと思うのであります。
  111. 島上善五郎

    ○島上分科員 そういうような運動が、今日相当盛んに行われており、今あなたが言ったようなそういうあいまいな解釈で、熱意のないことでは、今後もっと盛んになるんじゃないかと心配されるのです。もちろん証拠を収集することの必要であることは言うまでもありませんけれども、こういうような運動に対して、内偵とか査察を今後積極的にやるお考えがあるかどうか、またそのための予算措置等がとられておるかどうか、この点を伺います。
  112. 中川董治

    ○中川政府委員 お説のように、今後そういうものについて内偵、査察を厳重にするという考えは持っております。  予算の点につきましては私ども警察におきましては各方面にいろいろ犯罪捜査、全般について予算を持っておりますので、また選挙のための予算等も特にただいま御審議中の予算案中にございますので、そういう予算を活用いたしまして、内偵を厳にいたしたい、こう考えております。
  113. 島上善五郎

    ○島上分科員 おそらくは証拠をつかんでも、現実に立候補しなければ、はっきりと事前運動ということはいえないので、立候補してから以後に検挙するということになるのではないかと思います。今までは、かりにはっきりと証拠があって、事前運動であるということがわかっても、選挙が済むまでは大てい手をつけなかった。そうすると勝てば官軍で、当選してしまえば、本人に連累さえしなければいいのだ、ほかの者が、選挙運動者が多少引っぱられて違反になってもいいのだ、こういうような考えをもってやる人もあるのです。当選してしまえばいいのだ、自分に連累しないように適当に手を打っておいて当選してしまえばいいのだ、こういうような考えからやられたのでは、とてもたまらないと思うのです。今後今言ったようなことで、はっきりした証拠をつかんだ場合には立候補したら、選挙運動中あるいは選挙運動前でもこれを検挙するというようなお考えがあるかどうか。
  114. 中川董治

    ○中川政府委員 証拠収集に努力いたしまして、証拠がございますならば、選挙期日前といえども検挙すべきものであると考えております。
  115. 島上善五郎

    ○島上分科員 時間がありませんから、次の問題に入ります。これは自治庁長官にお伺いしますが、今申しましたように、本年から明年にかけて各種選挙が非常に多いので、そこで私は選挙の管理執行と申しますか、管理及び執行を公正的確に行うということのためには今日の選挙管理委員会ではなお不十分ではないかという点が感じられる。私どもこの問題について、地方へ調査に参りましたり、あるいは選挙管理委員会の諸君から陳情を受けたりしておりますが、選挙管理委員会をもっと充実するということと、独立性を確保するということがとりわけ必要ではないかと思うのです。この点、長官はどのようにお考えでありますか。
  116. 郡祐一

    ○郡国務大臣 お尋ねの点は、選挙管理委員会の機能を完全にしようという御趣旨だと思いますが、そのような機能を完全にしていくということは他にいろいろな支障のない限り考えていかなければならぬことだと思っております。
  117. 島上善五郎

    ○島上分科員 今のことをもう少し具体的に言うならば、専任職員を置くということ、それから事務局を必置制にするということになろうかと思うのです。この点どうですか。
  118. 郡祐一

    ○郡国務大臣 選挙管理委員会等でも、またその職務を完全にいたしますために、そういう希望を強く持っているかとも存じます。ただ、あとう限り地方の機構は簡素にいたしたいという要請もまた大事な要請でありますので、それらの点の調和について、さらにとくと考えてみたいと思っております。
  119. 島上善五郎

    ○島上分科員 私は時間が少いので申しませんが、職員が地方の自治体の職員と兼任しているために、選挙の公正が失われておるという事実はたくさんあるのです。仙台市長選挙が選挙無効になってやり直ししましたが、これなどもその一つの例です。ですから私は、職員を専任制にするということと、事務局を必ず置くという制度はぜひしなければ、選挙管理委員会の任務を完全に遂行することができないと思う。それから市町村の選挙管理委員会の委員は三名であります。都道府県と政令で指定した特別の市を除いては、三名です。そして、その三名の委員が全員出席しなければ委員会を開くことができない。これでは私は、選挙管理委員会の運営に非常に支障を来たすと思う。現に当事者からそういう強い要望もあります。これなどは私はそうむずかしいことではないと思う。都道府県並みに四人にするということなどは、そうむずかしいことでない。法律をちょっと改正すればそれでいい。地方自治法百八十一条をちょっと改正すれば、それで事は足りるのです。ところがこういう要望が前からあるにもかかわらず、自治庁は一向積極的でない。この点に対して、長官はどのようにお考えですか。
  120. 郡祐一

    ○郡国務大臣 補充員の制度を設けておりまするので、従来も検討はいたしながら、今日に至っておりまするけれども、確かに定員全部が出席しなければならないということは、支障のある場合が相当多いだろうと思います。この点は、なるべく選挙管理委員会が完全な機能を発揮しますように考えてみたいと思います。
  121. 島上善五郎

    ○島上分科員 これは、ぜひそのようにしていただきたいと思うし、しなければならぬと考えるわけであります。  そこで最後に一つ伺いますが、現在の政治資金規正法はきわめて不十分であって、私どもこれはぜひ改正したいとかねがね考えておりまするが、その問題は別としまして、今伺いますのは、現在の政治資金規正法によって、昨年の一月から六月まで、つまり前半期の政治資金の寄付の状況、支出の状況の報告がされて、自治庁は発表しております。もしありましたならば、後半の分もあわせてこの際御発表願いたいのですが、しかし全部発表ということになると時間がかかりますから、その全部の分はあとで資料でもけっこうです。今私が問わんとするところは、その政治献金、政党に対する寄付のうち、ここに私も資料を持っておりますが、寄付のうちで、国の財政投融資、補助金、交付金を受けている団体、これはことしの予算でも、財政投融資が非常に多額に上っておる。私どもは国から財政投融資を受けている団体は政党に献すべきものではない、こういう考えを持っております。そういたしませんと、財政投融資、補助金、交付金を多額に受けたいために献金をするということになって、汚職の原因にもなりましょうし、政界を腐敗、堕落せしめる原因になると思う。しかるに現在の政治資金規正法はそれを禁止していません。わずかに、国と請負その他特別の利益を伴う当事者が選挙に関して寄付してはならぬ、こう規定してあるだけです。私どもは、そうではなしに、国民の血税を財政投融資、補助金、交付金という形で与えているのですから、もちろんただで与えるのではありませんけれども、そういう団体からは選挙に関してはもちろんのこと、ふだんの政治献金も禁止すべきものである。外国においてはおおむねそのようにしておるように承わっておる。そう考えまするがゆえに、現在では禁止しておりませんけれども、昨年度の政治献金のうちで、国から財政投融資、補助金、交付金を受けている関係をここで明らかにしていただきたい。
  122. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 政治資金規正法の届出状況についてお尋ねでございましたが、三十二年度につきましては、上期分が届出がございまして、これがまとまって、すでに御承知のごとく公表いたしております。まだ下期分につきましては各党の御整理の関係から届出が出ておらないのでございます。上期分につきますと、自由民主党の収入は二億二千六百九十四万五千円でございまして、日本社会党の収入は四千十八万八千円、それから日本共産党の収入は三千七百五十四万円、それから緑風会の収入は二百九十三万四千円になっております。下期は先ほど申し上げましたように、まだ届出がございません。それから国と請負その他の契約の当事者であるものが選挙に関して寄付をすることができないという規定になっておるのでございますが、誇負関係のおもなるもの、すなわち土木請負の会社等を調べてみますと、上期につきましては寄付はございません。それから、また、国から財政投融資を受けている会社、融資を受けているもの、それから国が資本金の全部または一部を出資している会社でございますが、これは法律がたくさんございますので、当っておるのでございますが、現在の調査の段階では、そのような関係のものは寄付はございません。なお三十二年の上期につきまして、請負関係、土木請負の会社で、これは経済再建懇談会という団体に寄付をいたしまして、経済再建懇談会が自民党に寄付しております。その経済再建懇談会に対しますいわゆる土木請負会社の寄付を見てみますと、三十二年の上期に、清水組、鹿島組、大成組、竹中組、大林組等の五社が、一社あたり七万二千円出しております。それから間組、西松組、熊谷組、戸田組、安藤組、この五社が一社当り四万八千円出しております。それから佐藤工業、鴻池組、銭高組、松村組、藤田組、前田建設、この六社が一社当り三万二千円出しておるのでございます。それ以外には、土木請負会社が寄付をしておるのは見当らないようでございます。
  123. 島上善五郎

    ○島上分科員 国から財政投融資、補助金、交付金を受けている関係ではないかとおっしゃいましたが、それは事実ですか。
  124. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 御承知のごとく、現在の政治資金規正法は、選挙に関して請負その他特別の利益を伴う契約の当事者は寄付できない、こういう規正法の建前でございますので、そういうものは届出はございません。先ほど投融資の関係であるかないかというお尋ねでございましたので、投融資関係を調査しました結果を申し上げたのでございます。補助金等を出しておるところ、これは現在の法律の規正の対象ではございませんが、補助金等を出しておる会社は、鉱山その他試掘関係等で補助金が出ておりますので、そういう点はあろうかと思いますが、その方はまだ十分調べておりません。
  125. 島上善五郎

    ○島上分科員 私も質問のとき言っておるように、現在の法律では、今あげたような請負会社がふだん献金しても差しつかえないのです。私は法に違反してやっておるということを聞いているのじゃない。選挙に関して、衆議院選挙、参議院選挙、地方選挙に関して寄付すれば触れますけれども、ふだんの政治献金は何ら融れない。ましてや財政投融資、補助金、交付金関係は選挙に関して献金しても触れないのです。だから安心して報告されてしかるべきものです。私は今最終的な調査ができていないから、こっちからは申しませんけれども、財政投融資、補助金、交付金を受けている団体が相当多額に献金している事実はあるのです。私は、このような事実を国民の前にもはっきりして、そうして現在の政治資金規正法の不備を改正しなければならぬと、こう考えているから聞いているのです。現在は、現行法には触れていない。触れていないけれども、一方で国民の血税を財政投融資、補助金、交付金という形で受けておって、こちらから献金をするというようなことはどう考えてもこれは合理的ではないのです。政治を腐敗させることになるのです。岸さんは汚職追放に非常に熱心だし、自民党は、昨年秋の新政策発表の第一に、国民に信頼される清潔な政治ということを掲げておる。もしそれがほんとうであり、それに熱心であるならば、こういうふうな問題に対しても、もっと具体的に真剣に考えて、改正の措置を講ずべきものだと私ども考えているのですが、それだから聞いているのです。今ここで資料がそろっていないからとおっしゃれば、これはあとでまたしかるべき場所でお尋ぬしますが、財政投融資、補助金、交付金関係の寄付が、三十二年の前期にはありませんと、さっきあなたが言ったから、それは事実と違うでしょう。念のためもう一ぺんはっきりと聞いております。
  126. 兼子秀夫

    ○兼子政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、三十二年上期におきましては、国の投融資にかかるものは見当りません。ただ補助金等はこれは産業補助の補助金があると思いますので、この点はなお精査いたしたいと考えております。
  127. 島上善五郎

    ○島上分科員 それでは、時間がないから、あともう一つだけにしておきます。しかし、今の問題はありますよ。財政投融資の関係もあるし、補助金ならなおさら悪いのです。片方で補助金を受けていて、片方で献金するということは、なおさら悪い。ですから、これは調べて資料を一つ出してもらいたい。私の方でも調べていますが、まだ完全につかんでおりませんから、ここでは申しません。  最後に一つ伺いたいのは、政府は参議院の全国区を廃止するということについて、大へん御熱心であったようです。選挙制度調査会に、このことについて諮問された。しかし選挙制度調査会の議論の過程を聞きますると、なかなかこれは簡単な問題ではない。いろいろ議論しておりますが、簡単には結論は出ない。これは出ないのは当然だと思うのです。非常に大きな問題です。そうして聞くところによりますと、三月一ぱい休んで、四月になってからこの選挙制度調査会の小委員会を再会するということになった。選挙制度調査会の答申を待ってするということでは、今期国会に間に合わないことは明らかです。郡長官は、選挙制度調査会に対して、しばしば早く答申するようにという督促をされておるようですが、現状からいたしまして、私は今国会には出されないもの、こう判断いたしておりますが、いかがですか。
  128. 郡祐一

    ○郡国務大臣 全国区制問題に幾つもの問題のありますことは御承知の通りであります。また選挙制度調査会も、そのために非常に熱心な検討を加えておられます。しかし確かに問題が非常に複雑であり、また結論を得ますのに、かなり慎重にいたさなければ相ならぬ点から、選挙制度調査会の答申を得ますのには、相当の時間を要するかと思っております。従いまして、それらの状況を見まして、最終の判断をいたしたいと思っております。
  129. 島上善五郎

    ○島上分科員 こういうような大きな問題があるということは、長官もお認めになっているようですが、こういう問題は、今日二大政党といわれておりまするが、その政府与党だけ、あるいは政府だけが一方的にするということになりますれば、どうしても党利党略が入るのです。私は、こういうことを考えた当初からしても、すでに党利党略だと見ておりますが、まあ政党ですから、多少の党利党略はあるかもしれませんけれども、しかしこういうような問題は、私は二大政党間でまず話し合うということが出発点において必要ではないかと思うのです。政府は、国会運営の正常化ということをしきりに言っておりまするし、私どもも賛成です。国会運営の正常化も必要ですが、国会構成の基礎となるようなこの選挙制度の大改正を一方的にやるということは、私は間違いじゃないかと思う。こういう問題は、まず政党間で十分話し合いをする。話し合いをしてもどうしても一致点が見出せないということになれば、あるいはやむを得ないかもしれませんけれども、話し合いをするというその出発が必要ではないかと思う。その点どうですか。
  130. 郡祐一

    ○郡国務大臣 選挙に関連いたします制度というものは、できる限り慎重にいたさなければいかぬ。それで政府といたしましても、学識経験者の意見を一つ十分聞いて——これは現在の調査会の構成等をごらん下さいましても、全く純粋に学識経験者の立場において検討をされております。事実その間の議論というものは、あらゆる角度からの議論が出ておる。そうした学識経験者による検討を十分いたしましてから、政治的ないろいろなまたそれに加える配慮、政治的な御相談であるとか、いろいろな手順はあろうかと思います。まずもってあらゆる角度から、しかもそれはどこまでも制度制度として学識経験者による検討がなされる、現在その段階を持っているということは、私は手順としてまことに好ましいことだと考えております。
  131. 島上善五郎

    ○島上分科員 そうしますと、学識経験者にまずもって検討してもらって、しかる後に答申が出ますね。答申が出たからといって、もちろんそのままうのみにする場合もあるし、しない場合もありますが、答申が出た後には、両党間でよく話し合う、こういうお考えがありますか。
  132. 郡祐一

    ○郡国務大臣 答申を得ましてからどういう手順を踏んで参るか、そのことについては、まだ何らの考え方を固めておりません。しかしながら、いろいろ手厚いやり方をして参ることが望ましいとは考えております。
  133. 島上善五郎

    ○島上分科員 なかなかうまくのらりくらりと答弁しておるけれども、私はそういう意思がないと思うのです。小選挙区のゲリマンダーをやったように、今度も党利党略で、政府、与党に都合のいい答申が出てきたら、これを強行しようという考え方であろうと思う。今度の国会は間に合いませんけれども、私はこういうような問題は、衆議院の選挙区の場合もそうですが、両党間でじっくり基本的な問題は話し合うというのでなければ、国会運営の正常化なんてきれいなことを言っても、国会構成の基礎を一方的に党利党略で押し切って、国会運営の正常化もないものだと私は思います。これはそれよりもっと大事なことです。ぜひじっくり話し合うというような謙虚な気持にならなければ、国民からの批判も受けます。しかしそういう気持が少くとも今までなかったということは、私は言って差しつかえないと思う。その証拠には、今選挙制度調査会で学識経験者とわれわれ言っておりますが、選挙制度調査会から、この問題を諮問する直前に、政党の委員を全部除外した。今までは政党の委員を入れて、選挙制度調査会で小選挙区の問題も、その前の選挙法の改正もやってきた。今度に限って、選挙制度調査会から政党の委員を除外した。学識経験者といいますけれども、学者ばかりが学識経験者じゃない。選挙を実際にやっておる者こそ、私はほんとうの意味の経験者だと思う。政党はこれに対して重大な関心を持って、ふだんから研究しておる。なぜ一体政党の委員を除外しましたか。
  134. 郡祐一

    ○郡国務大臣 国会に議席を持っておられる政治家が最もたんのうな経験者であることは、よく承知をいたしております。しかしながら、御承知のように制度をごらん下さいますと、地方制度調査会でも、国会議員は、学識経験者という言葉の中に入れておりません。国会議員、学識経験者、あるいは政府大臣等に入れます場合には、国務大臣とそれぞれ書き分けております。選挙制度調査会に関しまする政令は、御承知の通り学識経験者だけ書いてある。学識経験者の中に国会議員を入れることも可能であります。国会の承認を得て入れる方法もあります。しかし制度の立て方は、私どものあずかっておる調査会でも、片方の地方制度調査会は明らかに国会議員と書いてある。選挙制度調査会には、たしか学識経験者だけ書いてあります。この選挙制度調査会が何回か人選をかえました中で、一度は確かに島上さんにも入っていただきましたし、私もそのころ入っておりました。一度だけ学識経験者の中へ国会議員を入れて呼んだことがございますが、ことに参議院の制度について昭和二十七年以来たびたび検討いたしました際には、いつも国会議員を入れずに来ております。当時議席を持っておられなかった方が経験者として入った例は、中にございますけれども、そのような意味合いで、このたび国会の方を願わずに、いわゆる政治家外の経験者をお願いいたしたのであります。こういう選挙制度に関しましては、最も公明な、天下の信を十分つなぐに足るだけの扱いをして参った。そしていい制度に到達いたしたい、それを唯一の念願といたしております。
  135. 島上善五郎

    ○島上分科員 これで最後にしますが、ちゃんと私は腹は読んでいるのです。政党の委員が入って、あなたも一緒でてこずりました、こういうことですよ。てこずっちゃった。そこで、こういう問題は一つ政党の委員をシャット・アウトして今度の委員の顔ぶれを見てごらんなさい。あなたは公平だ何だとおっしゃいますけれども——公平を得るためには、それは多少、委員の中にはほかの人を二、三人は入れなければならぬ、その大多数は、政府及び与党の考えと同じ考えを持っておる、与党及び政府のお気に入りの答申をするような人たちだ、御用学者ばかりだ。どこに公平な天下の世論の反映がありますか。私はこれ以上は、あなたののらりくらりした答弁は別に聞きたくありませんけれども、そういうような考えでは、決して公正な選挙制度の実現を期することができないと思います。ゲリマンダー、党利党略の形を変えたものが、全国区廃止ということで出てくるおそれがある。私は今の全国区問題について、たとえば選挙の方法その他検討する余地はあろうと思いますけれども、そいう党利党略から選挙制度をもてあそぶべきものではない、これはまた国民の世論でもあろうと思うのです。政府にそのことを強く要望しておきまして——要望してもきき目がないかもしれませんが、きき目がなければないように、この次はまた断固として戦いますが、こういうような選挙制度の基本を改正する際には、一つ党利党略、ゲリマンダーの非難を受けないようにやるべきであるということを申し上げて、質問を打ち切ります。
  136. 田中久雄

    田中主査 午後二時より開会することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時十三分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  137. 田中久雄

    田中主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柳田秀一君。
  138. 柳田秀一

    柳田分科員 自治庁では町村の統合を数年来進めて参りまして、おおむね統合が自治庁が考えておられる線に運んできたことは、私は御同慶の至りだと思います。そこで必然的に起ってくる問題は、町村の統合に続いて義務教育の小学校の統合が起ってきているわけですが、文部省もその点は省議として今統合を進めているわけです。中学校は新制中学校でやや先に進みましたし、小学校も今統合を進めておるわけです。そこで一番問題になりますのは、ことに中学生の場合に問題になるのは、通学距離が延びたということです。そういう関係でそういう通学距離の延びた家庭の父兄は通学費に非常に負担がふえてきた。私が調べました、これはある町ですが、中学校で三百七十六人中学生がいるのですが、そのうちで五キロ以下がわずか一四%なんです。これはどの町村ということはあとでまたお知らせしてもいいが、五キロ以下がわずか一四%、六キロ以上が八六%、そのうちで九キロ、十キロ、十二キロ——これは片道です。九キロ、十キロ、十二キロというのが三七%、そうすると片道二里以上通学するのが三七%、もっとあるのですが、九キロと十キロと十二キロだけでも三七%、こういうように延びまして、従ってここでバスを利用したり、鉄道を利用する。私も考えるに、六キロまでは絶対にそういう自転車とかバスとかその他の交通機関を利用さすべきじゃない。これは青少年の訓練のためにも六キロくらいは当然歩かすべきだ。しかし八キロ以上になりますとやはり勉強の能率の点からも子供の健康の点からも問題がある。どうしてもこれはバスあるいはその他の交通機関を利用するのは、これはやむを得ぬと思うのです。ところが現在の鉄道営業法によりまして、鉄道運輸規程というものがありまして、十二才末満は半額になっておるのです。そこで小学生は半額なんですね。ところが中学生になりますと、半額を——先般私は他の分科会で十二才という基準はどこでとったのだ、十二才くらいの子供にもおとなくらいのスペースをとる者もおるし、必ずしも私は客車の中のスペース分できめたものじゃないと思うのです。おそらく十二才という基準をきめたのは、義務教育だから、義務教育の子供の運賃くらいは半額にしようじゃないか、こういうことで線を引かれたのじゃないか。ところが今日義務教育が十五才まで伸びましたから、当然中学生も半額にしてもらえないかということを聞いてみた。ところが運輸大臣は、なるだけそういう方向に努力する、国鉄総裁は運賃審議会というものは、国鉄の中にあるので、そこに諮りたい、こう言うのです。それじや問題点として今出していますか、そういうような大臣の諮問機関の場合には大てい事務当局から問題点を出しておるが、現にあなたのところは出しておりますかと聞いたのです。出しておりません。それじゃ言いのがれじゃないか。現在貨物運賃が問題点で、旅客運賃は問題になっておらぬ。それじゃおなたの答弁は違うじゃないかと言ったら、それじゃ問題点に入れて検討したいということになった。自治庁長官も御存じですが、参議院の文教委員は昨年これを決議しているわけです。そうして運輸、文教両当局に要請して、すみやかにそういうふうにやるということを決議しているのです。きょうは文部省所管分科会にも行って、文部省はそれじゃ参議院の文教委員会で決議するように努力したかと言ったら、努力しましたと言うけれども、局長が国鉄の方にちょっと話しただけだ、国鉄はいや私のところは独立採算制をとっておりますので、なかなかそうもいきません。それだけのことなんです。一つも文部省と運輸省の間にも話をしてないのです。だからこれはあなた自治庁長官として、さらに国務大臣としてもお考え願いたいのですが、自治庁がそういうような町村合併を促進するならば、それに当然付随してくる通学という問題、ことに教育の機会均等という点から言うならば、これは遠いところの父兄は単にその通学の距離が延びる、あるいは通学のバス賃に金がかかるというような物質面の負担だけじゃなしに、相当肉体面あるいは精神面の疲労、その他非常なハンデイキャップを受けるわけです。そこで文部省ではこれに対しては一つ今後努力しますと言っておる。そこで私は解決の道は三つあると思うのです。第一は根本的には鉄道運輸規程を改定して、義務教育であるところの十五才——中学生まで運賃を半額にする。ところが全部の物見遊山に行く運賃まで半額にできなかったならば、一歩譲って通学に関するのみ半額とする、この点も一つある。第二の点は文部省でそういうものに対してはやはり補助をする。これが第二。第三は自治庁の方でそういうものに対しては、やはりこれはある町村が負担しておるところも非常に多いのですが、町村なら町村単位に、いわゆる基準財政需要額として交付税交付金の算定基準の中にやはり認めていくというやり方もあると思うのです。私は第三点が一番本問題から離れておると思うのです。本来これはそうやるべき問題ではないと私は思う。本来は私が言ったように、第一点で解決のつく問題だが、まだ解決がつかないのです。そこで自治庁としても、こういう町村統合を進めておる関係上、暫定的でもけっこうですが、やはりこういうものを一つそういう基準財政需要額の中に織り込んで認めていこうという御意思があるかどうか、それを一つ承わりたい。本来は自治庁がやるべき問題でないことは何回も繰り返して言いましたが、しりぬぐいを自治庁に持ってきてお気の毒ですが、自治庁が町村統合を進められる以上は、こういう点まで考えなければならぬ。政治というものは相関関係で関連性があるのでありますから、有機的観点に立ってこれを解決していくということは、私は決して言い過ぎじゃないと思うのです。
  139. 郡祐一

    ○郡国務大臣 柳田さんのお話のように、義務教育というものは完全にでき上りますこと、これは国が新しい学制というものにいろいろな援助をいたしますが、その一番よい結果が出てくるのには市町村が本気になって事柄をいたさなければ相ならぬ、こういう点で非常に市町村の責任は重いと思います。おっしゃるように町村の合併が促進をいたしまして、今までより市町村の規模がいくらか大きく、道路もよくなる、よい先生も入れられるようになるというように、いろいろの中身が備わりませんと、町村を寄せただけ、ことに今までの都市の周辺にいろいろ町村を寄せました場合にはほっておきますと、ただ不便の点ばかり出てくる。これは市町村を合併いたしました以上、政府の責任というものは重いものだと思っております。それで今お話の点、学区制の通学に交通機関を使わなければ相ならぬようになり、また相当遠距離でもよい学校に収容するということが今の市町村の大事な点だと思います。そこで通学費がかからないようにいたしますには、私はいろいろな点から考えなければならぬと思います。ただごらんの通り学校給食でも基準に入れましたのはごく最近であります。合理的かつ普遍な行政を維持するためにということで、ある基準の需要額に入れますと、それが結局ああいう計算でありまするから、全国の各市町村に参りますと、どの程度になったら基準に入れるべきものであろうかどうかという判断はなかなかむずかしいものでございまして、それで学校給食の場合も事柄は当然のことであり、それがどの程度に普及したら一体交付税法の中に織り込むべきものであろうか、その点はいろいろ考え、そしてようやくこの普及の程度になれば入れるべきものだろうという判断をいたしたのであります。そのような意味合いで、今の通学に要しまする経費というものを、こうした基準に入れますことが交付税法として非常に適当であるかどうか、いろいろな意味合いで市町村の自主財源を強化いたしますることは国会の皆さん方の御協力、御援助を得てだんだんと市町村の財政が充実して参ろうと思っておりますし、一歩ずつは進んで参っておると思いますが、今の交付税法の建前で基準に入れることが適当であろうかどうか、むしろ私の方で市町村として負担すべきものについては、国家の財政を指導して参りまするから、そういう場合にできる限りそういう経費を見るということに相なり、今すぐ交付税法の中に織り込むかどうかについてはもうしばらくの推移を見さしていただきたいと思います。
  140. 柳田秀一

    柳田分科員 筋の通ったお説だと思うのです。私もすぐこれを交付税に入れるということに対しては多分に疑問を持つ。本来そういうことにしないでも、この通学に関してのみでも、国家の国鉄ですから、国鉄はそれをやってよいと思うのです。それで経営の合理化をやる。独立採算性をとるのでしたら、ほかで幾らでも方法がある。ガード下について野放図な会計をし、外郭団体などでしょっちゅう問題を起しているのは国鉄なんです。このくらいのことはしれてると私は思いますが、すぐに向うではやらない。これは私はほんとうはここへ持ってきたくなかったけれども、当面これを考えていただかないと、実は合併の条件になっている。これは大臣もその道の専門家でありますからよくおわかりですが、合併の条件なんです。合併ということはそう簡単にはいかない。大てい条件をつける。必ず条件をつけますよ。へんぴなところが条件をつけています。統合して中心になるところはいいですけれども、周辺になる方は必ず条件をつけております。そうなりますと、自治庁の方からは合併の年限を切った法律が出ておる。そうしてそれを越したならば、今度は交付税で見てやらぬぞというような、半分圧力がかかってくる。他の町村はどんどん合併する。府県の方からは府県の中にそれぞれ委員会みたいなものを設けて、どんどん合併をやれやれという。自治体の長としては何とかめんどうを見ますと言わざるを得ないようなことになっておる。そういう関係で、これは全部が全部ではありませんけれども、中には合併の条件にしているところがある。私の取り上げた例は非常な山間僻地ですが、その中学校は年間全部で五百十万円、そのうちで百九十万円というものを通学費の補助に出している。こういう例は他にもあると思う。従ってこれは、普遍性という問題も、確かに今長官のおっしゃった通りですが、そういう意味で、普遍性の点で多少の問題がありとすれば、やはり特別交付税の対象ぐらいには当然取り上げてもいいのではないか。これを普通交付税の計算尺のような、がらがら回す一つのファクターの中に入れるかどうかということは私も多分に疑問を持っている。またその対象の取り方が非常にむずかしい。どこに線を引くかということが非常にむずかしいと思いますが、こういうような特別な例は特別交付金の方で多少配慮してもいいのじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  141. 郡祐一

    ○郡国務大臣 通学用のバス等について、新市町村建設の補助でありまするとか、また新市町村の建設を促進いたしますいろいろの援助をする際に考えなければならぬことでもありますし、柳田さんもおっしゃいますように、特別交付税というものは、決して恣意的な配分をしてはならないし、また三千何百の市町村に妥当するためには、ある程度個々の町村の実情も見なければいけない、なかなかむずかしいことでありますけれども、私は特別交付税でも、計算機でがらがらと出すことは、こんなものに特別交付税を出すんだが、しかし、こういうものに出すんだ、またこういうことで実際新市町村の新しい需要に応ずるんだということと合せて参ることは、よほど考えてみたいと思うのであります。そういう意味で、ただいまのような義務教育を完全にいたしますための通学費の援助というようなこと、現実に市町村が出さなければならないものについては、十分特別交付税等で考えるように、現在も見てはおると思いますけれども、さらにそういう方をよく考えまして、なるべくならばそういうことで市町村を困らせないように努力いたします。
  142. 柳田秀一

    柳田分科員 大へんはっきり御答弁いただいてありがとうございました。この問題はやはり教育の機会均等という意味から、またこれが合併の条件にからんで、町村の自治体にもかなりの重圧がかかっている問題です。さらにまたそれだけのものをある意味において、どこからか国がめんどう見たところで、やはり遠方から通う者は、何といってもそれだけでロスは免れぬですから、この問題は私はかなり大きく取り上げておりますので、やがて近い機会に自治庁長官、文部大臣、それから運輸大臣もおられるところで、相関関係で私は聞きたいと思います。よく分科会に入りますと、陳情まがいのような質問をやりますが、決してそんなものじゃない。あなたも国務大臣として閣議でも、実はこういう問題が出た、これは事の次第は考えによってはかなり大きな問題だ、文部省もやはり学校統合を進めておる、そうして教育の機会均等をうたっておる、自治庁は町村統合を進めておるということからそういう問題は起っておるということを、閣議の席上で強力に御発言願いたい。これは本来は自治庁で持つべきものじゃないと私は思います。本来は国鉄で、通学に限って中学生も、十二才未満の小学生と同じように、同じ義務教育ですから、半額にするくらいの熱意を持ってしかるべきだと思いますが、なかなか向うも公社としてむずかしいところもありますので、お考えおき願いたいと思います。ありがとうございました。
  143. 田中久雄

  144. 川俣清音

    川俣分科員 この際奄美群島復興特別措置法の一部改正について、当局の意見を伺っておきたいと思います。  御承知の通り、奄美群島復興のために特別立法があるわけであります。その一部改正について処置をとられるようなお考えでありますが、同島が特別措置法によって復興する地域にありますことは、私が申し上げるまでもなく御承知の通りであります。現在復興事業として施行中の土地改良事業の補助率は、相当高率であるわけでございますが、農業施設災害は他の土木施設災害の復旧事業との負担の均衡がとれておりませんので、当然内地の土地改良事業と災害復旧との関係から見ましても、農業施設災害復旧についてはやはり高率の補助を適用すべきであろうと思うのでありますが、これが何か見落しされておるようでございまして、何ゆえにこういう差別をつけておかなければならぬのか、どうも理由が明らかでございません。御承知の通り、内地の土地改良事業と農業施設災害復旧事業との間には災害復旧事業の方には高率補助をいたしておるわけであります。奄美大島だけは他の土木事業との均衡から見ても、当然高率補助が適用されなければなりません。同一補助が適用されなければならぬと思うのであります。一般の土地改良事業だけが高率になり、土木事業だけが高率になって、農業施設災害復旧だけが低率になっておるのは均衡を欠くものである、常識的に見ても非常に均衡を欠くものでありますが、どういう理由で均衡を欠かなければならぬのか、この点御説明願いたい。
  145. 郡祐一

    ○郡国務大臣 奄美群島につきまして、公共土木についてはおっしゃいます通り、離島振興の特例と同じような補助率にいたしたのでございまして、他の農林関係、水産関係につきましても、一般よりは高率の措置をいたすのが——またいたしたいと思います。ただこのたびは、いろいろな段取りのために、公共土木だけを取り上げてみたのですが、あるいは文教というような方にもそういう必要があろうかと思います。これらの点はでき得る限り早く、必要なものについて、奄美群島の振興をほんとうに達成できますような措置をとるように進めて参りたいと思います。
  146. 川俣清音

    川俣分科員 内地の公共事業と災害復旧事業とでは災害復旧には高率の補助をする、ところが奄美大島だけは逆だという理由は成り立たぬじゃないかと思う。しかも同じ農林関係で、土地改良事業については公共事業だというので高率補助をして、その災害復旧は低率だということは説明がつかないのじゃないか。説明がつかないようなものを放任されておくということは自治庁の怠慢じゃないかと思う。将来考慮するということだが、今改正の機会でありますから、この際明確にされておくことが必要じゃないか。金額にしてもそう大きな金額ではございません、もちろん災害が起きた場合の措置でありまして、一般公共事業というと土地改良事業は入るわけです。これは高率だ、災害は低率だというのはどうも説明がつかない。何としても理由が薄弱じゃないかと思う。この改正の際に、まだ法案も出ていないことだと思いますから、一つ御考慮願えるかどうか。
  147. 郡祐一

    ○郡国務大臣 御承知のように内地並みにはなっておるのでございまして、内地並みよりよくするかどうかということでありまするが、私はよくするに越したことはないと思いますが、しかしその実情等につきましては、現在とにかくあの予算で、そして今度若干の改正の法律をお願い申しておりますが、こうしたことでかなりよく進んではおるように思いますが、もっとよくいたしますために、一つ努力はして参りたいと思います。あるいは現在の模様など政府委員からお答え申し上げてもよろしゅうございます。
  148. 川俣清音

    川俣分科員 内地の公共事業と災害復旧との比率がある、その比率を変えろ、私は別にこういうことじゃない。わざわざ公共事業を高率にされたからにはそれに右ならえをして農業施設災害復旧につきましても同率な引き上げが必要じゃないか、区別をする必要がどこにもないじゃないか、こういうことだけなのです。国内においては差があるのですから、その差を、公共事業を高率にされるのならば、向うはそれと同様に引き上げらるべきじゃないか、こういうことだけなのです。そんなむずかしいことじゃない。むずかしいことではないのに理屈をつけて据え置かなければならない理由が私は見出せない。何か理由があるのかないのか。おそらく理由がないのじゃないか、見落しじゃないかと思うので、長官の意見を求めるわけです。
  149. 郡祐一

    ○郡国務大臣 関係各省とも相談いたしまして、なるべくよくなりますように努力をいたします。
  150. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 ちょっとその関係だけ御説明申し上げます。  今大臣から申し上げた通りでございまして、奄美について、公共土木についての復旧事業の補助率を上げるのならば、農林等についても一緒にというのはごもっともな御意見でございます。これにつきましては、内地の法律と離島振興法という特別法がある、それと奄美の復興法と三つございまして、こっちといたしましてはやはり離島振興法とのバランスも考えなければならぬわけであります。今の公共土木につきましては離島振興法がすでに内地の一般より補助率を上げているのでありますから、奄美を一般の離島より落すのはおかしいから、どうしても上げなければならぬ。農林水産事業につきましては離島振興法でも落ちておる。内地並みになっておる。これもやはり仰せの通り上げた方が一つの筋だろうと私は思いますが、離島振興法と総合的に問題を解決せぬといかぬ。これらの関係から、いろいろ論議いたしましたが、今度そこまで話がまとまらなかったのであります。この次の問題といたしまして、離島振興法とあわせて実情に合うように措置いたしたいと考えております。
  151. 田中久雄

  152. 井手以誠

    井手分科員 自治庁の長官に一点だけお伺いをいたします。地方財政の問題では多くの意見と要望を持っておりますが、先般の総括質問で、長官は検討の上にさらに検討を加えるという御答弁がありましたし、あと機会に譲ることにいたしまして一点だけお伺いいたしたいと思います。御承知の通り、地方の公共団体では早くから競輪、ボート・レース、オート・レースを経営いたしておるのであります。この問題は昨年の国会でもずいぶん論議されましたが、地方住民のことについて直接関係のある長官、特に謹厳だと言われておる郡長官でありますから、特にお伺いをいたしたいのであります。  競輪、オート・レース、ボート・レースがいかに社会に害毒を流しておるかについては私多く申し上げるまでもないと思っております。夫婦げんかはざらであります。破産や離縁など、どの町村でも部落でもたくさん起っておる。こういうふうにばくちのテラ銭で市町村の財政に寄与するという行き方は、一日も早くやむべきであると私は考えておるのであります。終戦相当長い期間がたちました。政府の説明によりますと、地方財政は曲りなりにも再建の方向に向っておるということでありますので、一つこの機会に郡自治庁長官はこの賭博類似行為を地方公共団体で経営しておることに対して、どういうようにお考えになっておるか。これはすみやかにやむべきものであるとお考えになっておるかどうか。この点をお伺いいたしたいのであります。
  153. 郡祐一

    ○郡国務大臣 私も地方財政というものはもっと歳入構成が是正されまして、いい財源で安心した経営が成り立つようにいたさなければ相ならぬと思っております。そういう努力を続けて参りますが、御指摘のような競輪等の収入が、決して好ましい収入とは私は思いません。ただただいまの段階で市町村が必要な仕事をいたしますために、とりあえずの間そういう収入に財源を期待いたしております。そのような財源はなるべく期待せずに地方財政が持っていけますように、これは事柄の面と財源の面と両方から考えまして、なるべく早く解決いたしたいものだと私は思っております。
  154. 井手以誠

    井手分科員 事柄の面についてはどういうようにお考えですか。これは一日も早くやむべきであるとお考えになっておりますか。財源についてはあとでお聞きをいたします。
  155. 郡祐一

    ○郡国務大臣 財政的に可能でありますならば、公共団体がこういう事柄によって得る収入に期待するというような状況からはなるべく早くより健全な方に向いたいと思います。従いましてその事柄自身につきまして、これを公けの団体が経営するというような状態は、私はそう長く続けていくべきじゃなかろうかと思っております。
  156. 井手以誠

    井手分科員 ずいぶんまわりくどい御答弁でございまして、私のようないなか者にはわかりにくいのでして、検討にさらに検討をいたしましょうというようなお言葉は、私にはわからぬ。この賭博類似行為を府県や市町村が行なって、その収益から事業をやるということに賛成ですか、反対ですか、それだけお尋ねいたしましょう。
  157. 郡祐一

    ○郡国務大臣 私はけっこうなことだとは思いません。ただ、今の段階で、すぐそれをやめてしまって一体成り立つかというと、すぐ成り立たない部分が起る。従って余儀なく今の状態を認めてはおりますけれども、こういうことに金を求めないでいいように早く持っていきたいと思っております。
  158. 井手以誠

    井手分科員 それじゃ長官は、そういう競輪とかボートレースというものは反対でございますね。時期の問題は別ですよ。時期は別だけれども、趣旨としては市町村がやることに対しては賛成か反対か。はっきりイエス、ノーを言って下さい。
  159. 郡祐一

    ○郡国務大臣 趣旨として好ましくはないと思います。
  160. 井手以誠

    井手分科員 それではなぜ当分の間でも置かねばならぬとお考えになっておりますか。財政の面についての根拠を一つお示し願いたいと思います。
  161. 郡祐一

    ○郡国務大臣 かなり財政を健全化するために努力をして参りましたけれども、ただいまの段階ですぐやめてしまいまして、それにかわるものを与えることができない段階であります。従いましてその段階では余儀なく——どのくらいの期間でございますか、私はそういうものに求めることは好ましくないと思いますが、なるべく早くその好ましくないという状態を実際の上でも表わしたいと思っております。
  162. 井手以誠

    井手分科員 それでは長官は競輪とかボートレースを経営している地方公共団体は幾つあるとお考えになっておりますか。経営している公共団体だけが、財政的に窮乏しておるわけでありますか。当分置かねばならぬという根拠が、なお財政が云々とおっしゃいますけれども、それは経営している団体と経営していない団体とそんなに違うのですか、それをお聞きしましょう。
  163. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 競馬、競輪等指定を受けております団体の数についてお尋ねですから、便宜私からお答えいたします。団体数は現在五百十五あるはずでございます。なお御参考までにそういうものから上っております収益の金額は三十二年度の収益見込みでは九十六億円でございます。
  164. 井手以誠

    井手分科員 局長にお伺いしますが、経営しておる団体はたとえば競輪、ボート・レース、オート・レースなど種類別に三つくらいあるものでしょうが、幾つの府県、市町村というふうにお示しを願いたい。それからもう一つは種類別に年間の財政に及ぼすというか、潤うというか、その金額をお示し願いたいと思います。
  165. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 団体数は競輪が二百三十二、競馬が百九十六、モーター・ボートが八十七、ほかにオート・レースが八つございます。さっきの数字で八つが落ちておりましたが、合せまして五百二十三になります。それから収益の見込みは競輪が六十七億、競馬が十八億、モーター・ボート十億、オート・レースが一億、合計九十六億余り、こういう状況でございます。
  166. 井手以誠

    井手分科員 その収益というのは府県市町村財政に繰り入れられたものですか。売り上げの収益ですか。
  167. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 市町村、府県のポケットに入りました純収益でございす。売上金でございません。
  168. 井手以誠

    井手分科員 長官お聞きの通りですが、経営している団体は五百二十三、そうすると府県、市町村の数は、それはあなたの方が本職ですが、五千くらいあると思います。そのうちの六分の一にも足りない府県や市町村だけが、しなくてはならぬほど悪いのですか。  ほかの市町村や府県はやらぬで何とか再建をしている、地方行政をやっておる、経営しておる。ところがこの五百二十三、これだけはやらなくてはならないほど財政が苦しいのですか。特別交付金と何か関係がございますか。きょうは意見を聞くのだから、大臣の意見だけでけっこうです。
  169. 郡祐一

    ○郡国務大臣 起りました動機は、戦災復興を早くやっていきたいというようなことで財源を求め、それが今必ずしも戦災を復興する土地だけとは申すわけではございませんけれども、そうしたことから出てきております。それで一たんそれに財源を求めますと、なしでやっていくということになかなか困難が起るのでありますけれども、しかし私は政府といたしましても、そういう財源に期待しないでやっていけるように早く持っていきます。また地方団体の側におきましても、そういう心がまえでこれから年々の計画考えていくという工合に指導して参りたいと思います。
  170. 井手以誠

    井手分科員 そういう程度では私は納得いたしません。あなたはそういう地方公共団体の財政の都合があるとおっしゃった。していない公共団体と、こういう賭博類似行為をやっている団体とでは、しなくてはならぬ事情があるのかと私は聞いているわけですよ。ほかの町村はそういうものはやらぬでもやっておる。戦災復興なんというものは今あまり目的に使われておりませんよ。ごく一部ですよ。そうなれば、ほかの経営していない市町村が曲りなりにも経営しておるならば、やっている町村はやめさしてもいいじゃございませんか。理屈が成り立たぬじゃございませんか。全国的にやらしておるものであれば、これは財政の都合ということも私どもわからぬでもございませんけれども、一部だけやっているものは、その弊害が非常に大きいからやめてはどうかと私はお尋ね申し上げているわけでございます。遠慮なく一つ、あまりお考えにならぬでけっこうです。競輪の選手の生活がどうとか、そんなことはお考えにならぬでけっこうです。それは別問題でお尋ねをいたします。決してあなたの政治的何には関係ございません。
  171. 郡祐一

    ○郡国務大臣 決して選手の生活を頭のうちに置いているわけではございませんが、九十億という財源でございますね、これをすぐやめろといいましては、行政の水準にやはり響いて参る結果に相なるだろうと思います。私はそれがなくてやっていける姿に早く持っていきますために、よく実態を見まして、なるほどそうしたものによって財源を求めないでやっていけるところが多々あるのでありますから、そうしたものは財源を求めているところは、早くそうした競輪等によらずにやっていけますようにまずさせる、またそのように考え方を切りかえていくということに私は努力をしていくべきであり、今直ちにそれでは禁止をするという状態にすぐいけといわれましても、やはり地方財政というもの一つ一つを見ますと無理ではないだろうか。しかしなるべく早い機会にできるようにいたすことを、私は一つの大きい努力目標にいたしたいと思います。
  172. 井手以誠

    井手分科員 それでは少し変えてお尋ねいたしますが、この競輪とかオート・レースとかボート・レースでどれくらい付近の住民が困っておるか、あなた御承知ないでしょう。私は競輪のあるところの近くにおります。ボート・レースも近所にあります。私もずいぶん被害を受けました。破産をしたとか、夫婦げんかで別れたとか、そういった相談や金借りでずいぶん私は迷惑を受けました。一部落で一人や二人ではございませんよ。次々に破産をしております。三十万、五十万の借金を負っておる。百姓が全部たんぼを売ってよそに逃げております。この収入が、局長の答弁によると九十六億あるとおっしゃいました。九十六億どころじゃない、これは全部ではございません。もっと多くの金が付近住民から取られておる。これは七百億になりますか、八百億になりますか、計算すると出てくると思いますが、一千億近い金が、苦しい農家や労働者や各方面から、夫婦げんかをして金が持ち出されて、そうしてそこで使われておる。この悲劇を、付近の家庭の人なんかどのくらい泣いて訴えておるか、あなた方聞えないと思いますが、毎日のごとくそういうことを私は聞かされておる。それほど毎日々々社会人の被害がふえておるのに、これを今後も続けていこう、しばらくはやむを得ないというお考えが私にはわからないのであります。ほかの市町村が経営しないでもできておるならば、こういう市町村も経営をやめさせてできないはずはございません。しかもこの賭博類似行為、ばくちのテラ銭をかせぐようなやり方、これがどのくらい社会教育に悪い影響を及ぼしておるか、はかり知れないものがあると思う。先般京都の市長選挙では高山さんが圧倒的に勝利を得られた、それは何が原因であるかといえば、競輪を廃止するというあの信念の言明が圧倒的勝利のもとであったと聞いておるのであります。それほどみんなは競輪の廃止、ボート・レースの廃止、オート・レースの廃止を望んでおる。そういうものならばここではっきりと、そんなものは早くやめさせますと言われぬはずはないと思うのですが、どうですか。
  173. 郡祐一

    ○郡国務大臣 私自身も自分の郷里等におきまして、井手さんと大した違いのない気持で事柄をとめたこともございます。弊害のあることはことに私の感じでは東京のようなところよりも、地方の方がもっと弊害が多い点があると思います。深刻だと思います。そのような意味合いで、なるべく早くやめたいという考えがないか、という井手さんのお尋ねですが、私はなるべく早くやめたいと思います。
  174. 井手以誠

    井手分科員 それでは重ねてお伺いしますが、なるべく早くやめたいとおっしゃいますが、即刻やめられない理由をお伺いしたい。あなたもそういうふうに被害を受けられておる地方の人ならば、一日も早く、あしたでもやめさせるのがほんとうだと思う。私ども社会党は昨年の国会で廃止法案を出しましたが、残念ながら少数で負けました。今日でも残念に思っております。しかし幸いにして謹厳な自治庁長官を迎えましたから、これだけあなたの所信を伺っておる次第であります。  それで局長にお尋ねしますが、そういう経営しておる市町村が、どうしてもなおしばらくは続けなければならない財政状態、ほかの町村と比べて続けなければならない理由をお聞かせ願いたいと思います。局長でけっこうです。
  175. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 これは経営している市町村だけが特別に財政状態が悪いとは私は限らぬと思います。大体先ほどお話しの通り、災害地とかその他指定市町村とかいうので、積極的に財政需要の多いところが中心になっておりますが、そういうところでないところだってあることは明瞭であります。実際この収益を使っておりますのは学校の整備とか住宅の建設、都市計画仕事とか、いわゆる建設的事業でございまして、これらの仕事は現に指定を受けている団体におきましてもなお仕事が残って、ぜひやはりやらしたいという面もございまして、今直ちにこの九十億の財源を奪ったらそうした仕事が進められなくなる、そういう悩みがあるわけでございます。そういう実情だけはやはり御了解を願いたいと思う次第でございます。
  176. 井手以誠

    井手分科員 意見になりますけれども、絶対に了解するわけには私は参りません。それでは続いてお尋ねいたしますが、それほど公共施設を建設しなくちゃならぬという理由が市町村にあるならば、ほかの市町村にもあるはずであります。とばく類似行為をさせたところが何とかやっていけて、ほかはどうなろうがそのままでいいということになりますか。あなたのおっしゃるようなことになりますと、ほかの町村にも同じような財源を与えなくちゃならないでしょう。自治庁当局が、もっと家も建てなければならぬ、道路もよくしなければいかぬということになれば、行政水準を競輪とかボート・レースをやっている市町村同様に高める必要があると思う。その点についてはどうですか。
  177. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 御趣旨はごもっともでございまして、現に競輪をやっているところでも十分でない、ましてやそういう財源を持っておらぬところで困っているところも私はあろうと思います。そういうところにもっと財源を与えて、そういう建設事業を進めさせる必要は重々あると思うのでございます。しかしながらそうだからといって、ただいま現にやっているところから直ちにそれを奪って、そうした建設事業をストップさせるということは、われわれといたしましても、一面においてしのびがたい、こういう考えでございまして、これらの運営につきましては、御案内の通りできるだけ自粛自戒をして、新しいものは認めず、既設の範囲内においてできるだけ自粛の線を保ちながらやっていくという方針にはなっておりますが、根本の精神はわれわれもまったく井手委員と同じ考えを持っている次第であります。
  178. 井手以誠

    井手分科員 長官、私はほかのことは聞きません。これだけでいい。これだけはあなたがやめますとさえ言っていただけば私は質問を打ち切ります。ここに私は、少し古い数字ですけれどもこういうものを持っております。二十九年末ですからずいぶん数字は変っていると思いますが、競輪の建設費に対しまして市町村に入った収入金額は、昭和二十九年末においてすら、少いところで三倍、多いところは九倍になっている。今日では十数倍になっているだろうかと私は考えるのであります。そして用途は、法律を作った当時の目的である戦災の関係に使っている金はほとんどございません。そうなれば競輪とかボート・レースをやった目的は達しているはずであります。なるほど今局長がおっしゃったように、九十六億の収入があるかもしれません。また住宅を建てた方がいい、学校を建てた方がいいでしょうけれども、こういうばくちでもうけたような金で学校を建てたり何を作ったりして、どこに好ましい影響がございますか。九十六億の金が入るよりも、それによって損をする付近住民の困窮、社会の不安、社会教育上の悪影響、これは私は何千億円に値いするかわからぬと思うのです。目の前に少し学校がよけい建つとか住宅がよけい建つとか、そういうことは政治じゃないと思う。社会風教上あるいは市町村の事業として好ましくないことがわかり、建設費もすでに早く取り戻していることがわかったら、これをすみやかに廃止することが政治家のとるべき道だと考えますが、一つ十分お考えになってあなたの信念をお聞かせ願いたい。私は重ねて申しますけれども、今日からしばらくの間でもこれを存置する必要はどこにもないと考えております。どこにも根拠がないじゃございませんか。
  179. 郡祐一

    ○郡国務大臣 申し上げますように、理由はもっぱら地方の財政的な理由だけであります。それでありますならば、それらの問題を解決いたしまして、なるべく早く、可及的早く廃止ができますように、私どもの考え方をそこに置いて本問題を扱っていくことにします。
  180. 井手以誠

    井手分科員 財政理由というのが私にはわからない。府県市町村の六分の一の箇所がこれを経営している。そうするとほかの六分の五の町村はこのままでいいのですか。財政理由であるならば今も同じです。将来にわたって、それは一軒でも家が建った方がいいでしょう、学校が建った方がいいでしょうが、そういう意義しか今日は持っておりません。それなら財政理由にならぬはずでしょう。そうでしょう。
  181. 郡祐一

    ○郡国務大臣 そこが考え方だと思うのです。新しいものはやらせないのです。従って新しくやろうと思ってやったらそれだけ新しく収入があるかもしれないけれども、そういうことはさせない。現にそれによって収入を得て一つのいろいろな計画が進んでおる、それを途中で切ってしまう、これはできるかどうか。それに対してはやはり政府として一つの対策、また自治体自身の財政を見まして、そうしたものによらずに市町村の経営ができますように、そこまで考えてやって、そういう計画を立ててやる。そして私は廃止させたいと思っております。
  182. 井手以誠

    井手分科員 局長にお尋ねしますが、競輪とかボート・レースを経営しておる町村は、経営していない町村よりも財政状態はずっと悪いんですか。そうであるならば幾らか理屈はわかる。同じはずだと思うのです。もし同じでありますならば、その経営しておる町村だけが割によけい仕事ができる。そうしてほかの町村との均衡がとれなくなってしまいますよ。不均衡をますます拡大してくることになります。そういった指導を自治庁はなさるべきでないと思う。それではあなたの答弁は理屈にならぬ。
  183. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 競馬、競輪をやっているところが特別ほかの団体よりも悪いということは、団体にもよりますから、必ずしも申せないと思います。ただ従来の指定が、そういう戦災地とか災害地とか、それから新市とかいったような形で行われておりまして、ともかく財政需要が相当にある、こういうところに限っておるわけであります。しかしながら、指定を受けておらぬ市町村にもそういう財政需要のあることは、事実でございます。そういう意味におきまして、一方だけよ過ぎるじゃないかという御議論も成り立とうと思いますが、よ過ぎると言われるところでさえもまだまだ不十分で、やはり一通りの教育施設なり、あるいは災害復興なりというものはできることが望ましいことでありますが、しかしこういう財源に依存しておるということは非常と残念なことであるということも、仰せの通りであろうと存じております。
  184. 井手以誠

    井手分科員 長官のお説によりますと、いろいろな事業を計画してやっておる、それまではという結論になったようでありますが、それではどういう事業を計画しておればそれまでやらせるという目標がございますか。これが完成するまではやむを得まい、実際は今でもやめさせたいけれども、そういうふうに指導したいけれども、やはり計画があろうから、それまではという一つのめどがなくちゃならぬと思うのです。九十六億の収入がある。しかし被害は何倍にも当っておる。それであるならば、一日もすみやかにやめさせる——それはあしたでもというわけにいかないけれども、その計画があれば、その計画が完成するまでというめどがなければならぬと思う。しかし考えてみますと、住宅とか、そう長期に、一億とか数千万円の事業を継続的にやっているようなものの財源には充てていないようであります。その財源を当てにしていろんな事業をやっておる、目的の収入じゃございません。そう継続的なものはないと思いますが、しかしいずれにしても一つの目標がなくてはならぬ。やめさせることが正しい、好ましくないというようにお考えになるならば、そのやめさせる目標——どこまで置くか、どこまでがまんをしなくちゃならぬかという目標をあなたがお示しになるべきがほんとうだと私は思っておる。
  185. 郡祐一

    ○郡国務大臣 都市計画その他に使われております。そしてそれは、その計画をそのままどこまでも動かぬものとして続けていく必要もないと思います。この計画を廃止するということも可能だと思います。私はその団体の財政全体を見まして、そうしてその市町村としましても、何といたしましても、そうほかの自主財源のように永続するものでなければ、また長く期待する筋合いのものでないということはわかっておるはずでございますから、そういたしますと、これだけの仕事をするまで認めるというのじゃなく、むしろその財政状態全体を見て、そして自治体が成り立つようにしてやりますれば——そのためには仕事をある程度削ってもいいかもしれません。あるいはほかの方に重点を置いてもいいかもしれません。とにかくこの場で何の措置もいたさずにやめよと言うても、無理であります。それぞれの団体の財政を見て、そうして、たとい相当長いこと、そのような競輪等の財源に期待をしておる計画をやめさせましても、とにかくその団体の全体が成り立つようにさえすれば、私は順次やめさせても一向差しつかえないと思います。
  186. 井手以誠

    井手分科員 ほかの団体は経営しなくてもやっております。不満足ながらやっておる。それじゃ、大臣に追い詰めた質問ですけれども、府県なり市町村なり、経営する公共団体の財政をすみやかに調査して、どうしてもやらなくちゃならない事業をやっておるのか、本腰でそれを調査なさる御用意があるか。その経営しておる公共団体に対して、やめさせることを前提にして、この市町村はあと何カ年はやむを得ぬだろう、この府県はあと四ヵ年はやむを得ぬだろう、私はそういうふうなめどを置くべきだと思う。それを今後計画なさる御用意があるか。
  187. 郡祐一

    ○郡国務大臣 私は、三十三年度の予算を今御審議願っておりますが、それにすぐ引き続きまして、地方財政、地方税制の一つ相当根本的な調査をいたしたいと思っております。それは今たといどういう財源でありましても、かりに一つの町村で五億なり十億なりのものを、これをお前のところでは取ってはいかぬということに相なりますならば、歳出の方を見直さなければなりません。ほかの歳入に振りかえるということは、なかなか困難なことであります。そういたしますと、地方の財政全体、ことに、私いつも考えており、また言うておるのでありますが、地方財政というのは、国会でもごらんいただきます地方財政計画というものがございます。しかしそれは三千何百というものを寄せましたものが地方の財政でありまして、一つ一つは、一つ一つ理由がそれぞれございます。従いまして、一つ一つに入って参らなければいけません。そうすると御指摘のように、こうした競輪等の収入を期待しておりますものは、どういう中身の財政状態を持ってそういう特定の財源に期待しておるのか、そうしたものがなくてやれるまでにどういう財政状態を持ったらよろしいのか、そういう点は私は当然調べまして、そうして御期待に沿うように、おっしゃる通りに調査はいたします。いたさなければならぬことと思っております。
  188. 井手以誠

    井手分科員 実際はそうしなくたって、やめてしまったって、けっこう血は出ませんよ。出るはずはありませんよ、ほかの自治体は、競輪やボート・レースを経営しなくてもやっているんですから。しかし私は、あなたの立場もあろうから、調査をしてやる意思があるかどうかをお尋ねしたわけです。一つ郷里にお帰りになって、どのくらい被害があるか、よくお考えになってごらんなさい。大へんなものです。一日一日破産が出ております。夫婦けんかはもちろんのこと、離縁が毎日相次いで起っておる。社会教育というものを少し考えてもらいたい。私は競輪、ボート・レースについていろいろ材料は持っておりますが、多くは申し上げません。大ていおわかりだろうと思うから申し上げませんけれども、すみやかにこういうものは廃止してもらいたい。ここで廃止しますなんという言葉が言えぬくらいでは、郡さん、高山市長のような人気は出て参りませんよ。  そこで、局長でけっこうですけれども、地方の府県ではこういう賭博類似の行為に対して、売券税——入場税じゃない。馬券とか船券とかいうものの売り上げに対しての税金、売券税と普通いわれておりますが、そういう税について地方の府県議会から強い要望があるようであります。これに対するお考えはどうでございましょうか。
  189. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 競馬につきましては国の財源にもなっておるわけでございまして、そういう場合に、地元の団体でお話のような税を設けたいというような意見がございます。これはやはり国も府県も市町村も、任務を分ち合いましていろいろの施設をやっておるわけでございますので、他の団体の財源を奪うといいましょうか、あるいは他の団体の財源獲得に妨害をするといいますか、こういうことは避けた方がよろしいという考え方を持っておりますので、許可はいたしかねるというような態度をとって参っておるわけであります。
  190. 井手以誠

    井手分科員 それは悪平等である。一部の市町村だけがもうける、その被害はほかの市町村の住民が受ける。ボート・レースをやっておるAという市はそれはなるほど収益は上るでしょう。上るけれども、その周辺の市町村の方は迷惑な話です。どんどんもうけた金はその方に持っていかれる。だから悪平等を是正する意味でいわゆる車券とか舟券とかいうものに税をかけてはどうかというのが売券税が起った根本の理由なのであります。悪平等を直すことですよ、いいことですよこれは、そういう意味ではどうです。
  191. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 先ほどもお話がございましたように、そういうような競馬、競輪を行います団体は、災害その他の状況を考えまして特定をいたしておるわけでございます。こういうような関係の収入を一般的に地方団体の財源にする、こういうことについては反対の態度をとっておるわけでございます。従いましてまたお説のように、そういう財源を一般化するということでありますならば、あるいは売券税的なものを認めてよろしいということになるかとも思うのでありますけれども、今も申し上げましたような特定の団体の財源のために、やむを得ずこういう制度を認めておるわけでございますので、直ちに売券税的なものを各団体に認めるという方向はとりたくないというふうに思っております。地方団体で起っております問題は、主として国の財源とされております競馬につきまして、地元団体が課税をしたい、こういうように承知しておるのでありますけれども、こういう点につきましても、お互いに他の団体の財源確保の手段を妨げないというような地方税法の立法の精神もそこに置かれておりますので、その条章に照しましても、そのような考え方を持っておるようなわけでございます。
  192. 井手以誠

    井手分科員 御検討を願っておきましょう。  両局長にお願いいたしておきますが、長官にはとっさの質問でございましたので、例の慎重な態度から明確な御答弁を得られなかったわけであります。とにかく入ってくる金はどんな金でもかまわない。露骨に言えば盗んだ金でもかまわぬ。とにかく市町村に入ってくる金はなるべく温存してやろうという態度はさもしい態度である、こう言わねばならぬのであります。お帰りになったら一つ長官をくどいて、こういうふうに競輪とかボート・レースとかオート・レースのような社会悪の根源になるようなものは、すみやかに廃止するように一つ協議をしてもらいたい、これを特に長官以下に御相談をいたしておきます。  最後に財政局長にお尋ねをいたしますが、二、三の府県では特に福岡、佐賀、長崎、山口あたりでは、鉱害問題が市町村では頭痛の種であります。この鉱害復旧事業の地元負担を災害同様にやらしてもらいたいという強い要望がある。簡単な問題であります。それに対して災害同様に、来年からでもお扱いになる御用意があるかどうか、これをお尋ねいたします。
  193. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 それはごもっともでございまして、鉱害復旧に伴う地元の事業につきましては、一般の災雲債と同様な形で起債の取扱いもいたしまして、そうすればその穴埋めは例の交付税でできるようにいたしております。
  194. 井手以誠

    井手分科員 従来そういう扱いではなかった。地元負担ができないために返上した例もあるわけでありますが、それは今度改めるわけでございますか、一つはっきりしておきたいと思います。
  195. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 災害と同様に扱いたいと思います。
  196. 井手以誠

    井手分科員 ありがとうございました。
  197. 田中久雄

    田中主査 永山忠則君。
  198. 永山忠則

    ○永山分科員 今年は地方税が減ぜられるのが相当あるんですが、税金がふえるのもあるのでございます。税がふえる面があるということがおわかりになりますか。地方民の税金がみな減るように考えられておりますが、一つふえるのがある。それは国民健康保険税でございます。これがどのくらいふえることになりますか。税の関係ですから、特にお聞きしておきたい。
  199. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 国民健康保険を実施する団体がふえて参りますので、そういうことに対して国民健康保険税の総額はふえて参るだろうと見ております。ただ特定の団体につきましては一方では受診率の向上とかあるいは診療費の単価その他から、総額がふえて参る団体があります面、他面国民健康保険業務に対する国の負担あるいは補助、こういうものが従来の二〇%から二五%に引き上げられておりますので、そういうものを相殺して参りませんと、全体的にふえるということにはならない。団体によりましては減収する団体もあり得るというふうに存じておるわけであります。
  200. 永山忠則

    ○永山分科員 非常に認識が違うのでありますが、国民皆保険で国民健康保険をやる町村はもちろん国民健康保険税が創設されます。なおもう一つ受診率等が上りまして年々ふえております。これもどのくらいふえるかということはおわかりになると思うのですが、これも相当ふえております。そういうことでなしに、政府の施策よろしきを得ずして現在国民健康保険をやっている町村が、そういう受診率がふえるということでなしに、いわゆる医療報酬の適正化によりまして、保険税がふえるんです。それはどのくらいふえるかということがおわかりになりますか。
  201. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 おっしゃっている問題はあるいは一点単価の問題ではないかと思いますが、もちろんそういう面におきまして診療報酬がふえて参るわけでございます。ただ私は税金のふえる面を実は御指摘申し上げたつもりでございまして、そういう意味で国の負担する分が従来よりも若干ふえる。そういうようなものを相殺して考えていかないと、どの団体も一様だというふうには申し上げなかったわけであります。ただ傾向といたしましては診療報酬がふえて参りますならば、それに伴って国民健康保険税もふえて参るというふうにはなって参る、こういうふうに考えております。
  202. 永山忠則

    ○永山分科員 国民健康保険の税金を負担する層——これは非常に低所得層でございますが、大体平均どのくらいな所得になりますか。すなわち国民健康保険を払う所得層の平均所得はどのくらいとお考えになっておりますか。
  203. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 今手元に持っておりませんので、大へん恐縮でございますが、その数字を後刻御連絡するようにさせていただきたいと思います。
  204. 永山忠則

    ○永山分科員 大体低所得者は年収七万円くらいのところが平均になると思うのであります。非常に所得の低い層なんであります。その層が今度の医療報酬の適正化で——政府の交付税その他の関係である全般的な問題でなしに、医療報酬の適正化でどうしても負担増をせしめられる数字、これは何億くらいになるというふうになっておるのでございますか。
  205. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 御承知のように、国民健康保険税は、被保険者平等割、世帯別平等割、所得割、資産割、この四つを基準にして構成していく建前をとっております。従いまして、本来住民税の所得割を負担しない人でありましても、被保険者平等割、あるいは世帯別平等割は負担をするということになって参りますので、そういう意味におきましては低額所得者も負担をしていただくわけであります。ことに現在国民健康保険事業が大都市等において行われておりませんので、そういう意味においては国民一人当りの被保険者の所得は比較的低い、こういう問題はあろうかと思いますけれども、個々の市町村単位で行なっております問題であるだけに、一般的にちょっと所得何万円というようなことで割り切れないのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。先ほど申しましたことで、実は個々の団体についてどういうような形になるという資料を今持っていないのでございますが、この点につきましても厚生省とさらによく連絡をいたしました上で、お答えをするようにいたしたいと思います。
  206. 永山忠則

    ○永山分科員 国民健康保険の診療報酬の適正化で、政府は今回五分を財政調整交付で出すということになっておるのであります。先刻局長の言われたあの五分は、漸次に受診率がふえること等による、保険税のふえることに対する見合いではないのでありまして、結局診療報酬の適正化に対する処置として五分の交付税を考えられておる。ところが実際問題は五分は半分にもならないわけであります。でありますから、少くとも十月からやりましても二十億以上、今からやるのは別として、現在やっておる国民健康保険の関係者が負担増になるのです。その点はよく厚生省と御相談をいただきたいのです。しかもその所得層は非常に低い層なんでございます。現実において国民健康保険の関係の保険経済は非常に悪いのでございますが、大体一般会計からの国民健康保険への繰り出しはどのくらいか、府県並びに町村へどのくらい繰り出しをしておるか、おわかりになりますか。
  207. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 国保会計へ市町村の一般会計から繰り出しております金額は、三十一年度では三十二億という数字になっております。
  208. 永山忠則

    ○永山分科員 府県の方はどうなっておりますか。今のは町村の方でございますね。
  209. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 府県は直接に出しておる、あるいは補助金で一部出しておるものもございますが、今その調べはございません。今のは市町村でやっております分で、市町村の足らぬ分を一般会計で埋めておる数字でございます。
  210. 永山忠則

    ○永山分科員 これは少し管轄が違うのでちょっとおわかりにならないかもしれませんが、国民健康保険の保険税の関係で、赤字になっておる金額はどのくらいあるかわかりますか。これは市町村の関係の一般会計から特別会計への繰り出し金ですが、赤字になっておる数字であります。
  211. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 この実質の赤字団体の赤字額だけを計算しますと、十八億あります。これは市町村からの繰り入れを前提にしてできておる赤字であります。今の三十三億の繰り入れがあって、その上なおかつできておる赤字が十八億であります。
  212. 永山忠則

    ○永山分科員 この市町村の一般会計から国民健康保険団体への繰り出しの三十三億の性格はこれは赤字と見るべきでありますか。この繰り出しは不当な繰り出しだとお考えになっておりますか。この三十三億の赤字の性格ですね。そうしてこれの処置方法はどういうように考えておられますか。
  213. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 国保会計の性質から申しますと、やはり国保会計は国保会計で計理を担当すべきものだと存じております。それでありますから、一般会計からこういう形で繰り入れが行われておることは適当だと考えておりません。
  214. 永山忠則

    ○永山分科員 この点がわれわれと非常に認識を異にしておるのでございますが、この三十三億はやむを得ず繰り出しておる赤字補てんであるという考済え方で御研究を願いたいと思います。それは最近特に地方財政の再建整備という点から、この赤字は国保会計で持つべきであるから、再建団体の、繰り出しをできるだけ押えるという考え方の指導方針でございますが、しかし国民健康保険の関係厚生省といたしましては、できるだけ一般会計からの繰り出しをある程度することがむしろ適当なことではないかという指導方針を流しておるわけであります。厚生省の方は少くとも国保会計の一割くらいは市町村がこれを一般会計から繰り出すということがむしろ望ましいというような考え方でおります。自治庁の方はこれは国保会計で完全にまかなっていけという指導方針でございますが、その間の意見調整は大体できておるわけでありますか。
  215. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 現在は国保会計というものが一般会計と独立して経理される以上は独立して経理を全うすべきであるという基本的な考え方は厚生省と変っておりません。ただ問題は、現に生じた赤字の始末をどうするか、こういう問題があろうかと思います。われわれといたしましては、ともかくも、現在の国保制度建前から見まして、たとえば診療費については一部国が補助し、他は保険税でまかないをつける。事務費については国が一〇〇%見るというようないろいろの仕組みになっておりまして、制度の本筋から見ればそれで十分にまかないがつく仕組みになっておるのであります。ただそのうちで従来補助率が十分であるとか十分でないとか、診療費につきましても非常に負担にたえかねるところがあるとか、保険税の徴収その他も必ずしもうまくいかなかったとか、そういういろいろな問題があって、だんだん赤字ができて参ったのだろうと思いますが、今度の予算措置におきましても、問題になるところは相当改善されておりますし、その筋にのっとって筋の通った経営をするのが、われわれは正当な方法だろうと考えておるのでございます。ただここで生じてしまった赤字そのものの始末になりますれば、これは市町村もしようがない、その始末の解消には努力してしかるべきだと私は思いますが、今後の経営といたしましてはやはり国保会計は国保会計として独立していけるような仕組みと態勢を確保することが、健全な国保会計を運転していくゆえんだろうと考えておるのでございます。
  216. 永山忠則

    ○永山分科員 自治庁の方ではしきりに、一般会計繰り出しを押えられつつも、なお今日やはりこれを十分押え切れぬというところに問題の本質があるのであります。同時にまた国民皆保険ということを政府はいっているのですが、実際問題としてわれわれは去年旗上げをしましたけれども、計画通りいかない。そこで四年計画——去年からいえば四年計画ですが、また一年延ばすということで、ことしも皆保険をいっておりますが、おそらくこれもできません。それは市町村の方でやればどうしても赤字が出る、赤字が出るから、一割程度はどうしても一般会計から繰り出さなければ経営が成り立たぬということが、長い間今日までやっておる常識でございまして、広島市が最近やりました。やりましたけれども、どうしてもこれは赤字は一般会計から繰り出す以外にないということで、ここもやむを得ず初めに始めた町村がまた繰り出しをやっておる。他の町村もそれを見まして、一般会計から繰り出しをとめられるようじゃ、もちろんこれはやれないということで頭打ちであると思います。これまでの分は比較的やりやすい町村であったのであります。残っておる分は非常に条件の悪いところが残っておる。その条件の悪いということには低所得者層だけを抱えてやることなる。すなわち健保その他の関係相当定時収入のあるところは全部それをやっておる。ただいわゆる庶民大衆の低所得者が恵まれずに残っておる。それだけを抱えて、それをプールにしてやろうというのであります。ことに五人未満の分をさらに政府は慫慂してやらすようになるようであります。そうなってくれば、ますます国民健康保険はさらに低所得者の庶民大衆だけを抱えてやるわけでありますから、それで市町村の一般会計の繰り出しを厳にとめられるという指導方針でいかれますれば、これはもう国民皆保険ということは実際上できません。ですから、ただ市町村の健全財政という面だけで御指導をされずに、政府の一大方針である国民皆保険を、しかも全面実施しよう、そうしてまた市町村はこれをやらねばならぬという法律に今度変えよう、強制的意味を持つ法律に変えようというときに、赤字でどうしてもやっていけない情勢が長い間の歴史で現実に起っておる。このものを無視して、さらに市町村一般会計の繰り入れを厳にとめようという考え方ではこれは皆保険を実行しようということとは大よそ離れる指導方針になるのであります。  厚生省は自治庁の方で強く言われるので、後退をしておりますけれども、元来厚生省は各市町村へ持っていって、一割程度はこれをやはり市町村財政で補てんすることが適当だということは国民保健の立場において強く指導して歩いたのでございます。そこでその精神が今残っている。なぜそういうことを強く厚生省が指導するかと申しますと、政府管掌の健保さえも赤字が出るのです。政府管掌の健保はいわゆる保険税はもうコンスタントに給料から差し引くのですから、いわゆる徴収率というものは一〇〇%に近いのでございます。その一〇〇%に近いにかかわらず、経済事情が悪いときには赤字が出る。赤字が出るから百億に近い金を繰り出してきた。本年は少し黒字が出たから十億にする。しかしその十億に減したことは不都合だ、三十億、当然出すべきではないか、こういうことを言っておるのであります。健保の政府管掌に対して、赤字が出るからこれを国の一般会計から補てんしていこうという指導方針でいくものが、弱い町村管掌にこれをまかせておく。そうして低所得者だけを抱えている。その抱えているのに対して、どうしても赤字が出るから、そこで町村の一般財政の方から補てんをしていく。これは保険の性質です。ただ国民健康保険というものだけで、一切一般会計から繰り出すべきではないという考え方ならば、健保の分の赤字だって健保だけの財政でやるべきで、国の一般会計から出すべきではないという議論になる。それは保険の本質から見てとらざるところです。保険の本質は強い力のものがプールして、これを援助してやるということでなくてはならぬのでございますから、どうしても政府管掌の健保に対して政府は一般会計から補てんをするというのなら、やはり市町村の関係におきましても、弱い低所得者だけをプールにしておるこの国民健康保険の会計へ、繰り出すということは認めなければいかぬ。そうしてこれを認めると同時に、その繰り出した分に対しては交付税の対象にするんだというところまで踏み切ってもらわなければならぬのでございますけれども、現在そういうような一般会計から繰り出す分については、交付税の対象になさっておりますかどうか、あるいは特別交付税の対象にしておられるかどうか、この点をお聞きしたいと思うのであります。
  217. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 現在の赤字の穴埋めにつきましては交付税の対象にはしておりませんし、繰り出し金ももちろんしておりません。われわれといたしましてはそうすべきものではないというふうな考えでおるのでございます。  なお参考に、国保の赤字が今三十三億、繰入金があると申しましたが、この一般会計からの繰入金と、町村の現に悩んでおります赤字額とは非常に近い関係にございまして、一般会計への繰入金の五ヵ年分を累計しますと百十億くらいになります。それに対応する市町村の全体の赤字が二百七十億になります。つまり市町村の赤字のうちの、半分にもなりませんけれども、半分近い数字に、やはりこの国保会計への繰り出しが一つの影響がある。これは数字的に出て参っておるのでございます。われわれといたしましては国保会計が健全に運転していくことを当然望まなくてはならぬので——それで本来一般会計で受け持ってしかるべき経費も、従来国保会計の中にあったのであります。たとえば診療所の経費とか保健婦の経費とか、こういうものはむしろ全市町村民を相手に診療もやれば保健指導もやっていいのであります。何も健康保険の会計の中で、被保険者だけを相手にやるということは私はとるべき措置ではないと思う。そういう全市町村民を対象にすべき事業はこれは一般会計で持とうじゃないか、こういうことで昨年からそういうものは一般会計で補いをつけよう。そうでなしに純粋の診療費につきましてはやはり被保険者の責任とそれに対応する国の責任というものとで解決すべきではないか。従来それにつきまして、先ほど申しました当然百パーセント見るべき事務費につきましても国の補助が十分でないとか、それからまた保険税でやろうとしましても、お話の通り低所得者層が多いものですから、保険税の徴収もなかなかむずかしい。そこらの穴埋めをしなければ当然成り立ちができないのであります。そういう点を今度の予算でも増して調整交付金を出されるようになったのはそういうものの穴埋めをも考えて、たとい貧乏な町村においてもともかくも一応国保の大筋を立てて自立できるような態勢に持っていこう、こういうのが今回厚生省がお考えになった措置でございます。なおそういうものを具体的に制度として確立するために厚生省の方におかれましても国民健康保険法の全面改正を考えておられまして、この改正の大筋においては従来からあったいろいろな問題が予算的にも技術的にも解決されることに相なっておると存じておるのであります。これによって国保も従来と違った姿で運営されるようになるだろう、その点には非常な期待を寄せておる次第でございます。
  218. 永山忠則

    ○永山分科員 財政調整交付金の今度の五%というのは旧来の赤字関係には全然関係ないのでありまして、旧来はさらに医療給付の二割補助の中には調整交付金制度を設けておるのであります。貧弱町村には特別調整交付金をやる。しかも徴収率が低いところにはその療養給付費の補助を政府はしないというところまで町村を縛り上げて、そして九〇%以上の保険税を徴収しなければ交付税はやらない、徴収率が悪いところは少くするぞというように非常に町村長をひっぱたいて徴収率を上げさせて、しかも政府が貧弱町村に対して調整交付方式をもってその療養給付費の二割の補助金をほとんど重点的にさいてもどうしても赤字が出ておる。その赤字の数字もおわかりにならぬようでございますけれども、実に二十億以上のものが赤字なんでございます。その赤字は実際はだれが負担をすべきかといえば、当然国が負担せにゃならぬものなんです。なぜかというと、赤字の性質はどこからきているかといえば、ボーダー・ラインをかかえておるということであります。すなわちボーダー・ラインで生活保護へ落ちるか落ちぬかというところを全部かかえておるのであります。これは国民健康保険がなければ生活保護の単給、医療給付でいくべきものなんです。国民健康保険があるためにそのボーダー・ラインを生活保護へ落さずに済んでいる。すなわち、おわかりにならぬと思うのですけれども、今日生活保護の四百億に近いものの中で八十億は療養給付費の単給なんです。その金は政府が当然に見なければならぬ。その金の二割の十六億は市及び府県が見るべきものなんです。この八十億は、実は国民健康保険をやっておる町村は政府が見るべき金を自分で国民健康保険の保険税をプールして払っておるのです。もし国民健康保険をやっていないとすれば政府は当然に生活保護をさらに八十億増さなければならぬ。そうして市並びに府県はその二割の十六億を出さなければならぬ。それを国民健康保険がボーダ一・ラインの層をかかえて、そして政府の出すべき金を国民健康保険税でまかなっておるのであります。もしそれこれが皆保険で全部できたら、今の生活保護の四百億のうちの八十億は政府が出さずに済む。それを国民健康保険の、しかも平均七万円という低所得者の——収入のいいところの層は他の保険へみな逃げている、こういう弱いものを抱かしておいて、当然に政府が見るべきところの生活保護の八十億もかかえ込んでおる。そうしておいてそれを一般会計から補てんするということはやめるべきである、府県の方からの補助金もできるだけ出さぬようにしよう、こういうように弱いものだけを集めておいて、そうしてその弱いものだけの保険経済でまかなわなければならぬ。しかもそれは当然国が持つべき単給をみずから負担いたしておる。こういう立場におるところの国民健康保険の関係に目をおおうて見ずに、ただ町村財政の健全性ということのみを中心として強く一般会計繰り出しを差しとめていこうということに対しては、われわれは非常に賛成しがたい点があるのでございます。これは国民皆保険の国策に沿うものとしていま一度政府と十分御研究されますことを要望いたしまして、あと質問を留保いたします。
  219. 小林與三次

    ○小林(與)政府委員 今仰せられました通り、政府が負担すべきものを押しつけておるところがあるじゃないか、率直にいいまして従来われわれはそういう疑念もございますので、政府が見るべきものは見るべきだ、それから被保険者が見るべきものは見るべし、それから保険者が見るべきものは見るべし、そういうところで筋を立てなければいかぬじゃないか、こういうのがわれわれの基本的な考え方で、幸いにしてことしの予算では政府の方におかれましても相当見るべきものは見る仕組みにはなっております。それでございますから、われわれといたしましては今度の予算の執行によって国保も従来よりは面目の変った形で運営ができることを非常に期待いたしておるのでございます。われわれは本来町村で見るべきものは見ることについてとやかく申す気持一つもございません。そういう趣旨でございますので、一つわれわれの立場も御了承願いたいと思います。
  220. 永山忠則

    ○永山分科員 政府の見るべきものをことしは見たということは、事務費の八十五円が九十円になっただけでございまして、それは実際は百七円かかっておるのでございます。それをようやく九十円まで持ってきたということでありまして、大蔵省と共同調査の結果で九十円前後であるから事務費はこれで百パーセントだというお考えかもしれませんけれども、実際上の面からいいますれば百七円かかっておるのであります。抽出したところの実態調査は大蔵省の指導方針でやられておるのでありますが、そういう意味からいっても事務費に対してはもちろん全額きていないのであります。さらに保健婦の補助の問題にしましても、ベースは一万九千六百円という一般べースに対して実にまだ九千円べースでありますし、その他の事務費等も十分きていないのでありまして、そういうような点についても決して満足できない立場にある。生活保護法第四条というのがあって、国民健康保険をやっておればこれが先行して一切の医療給付をやり得ることになっておる。そこで国民健康保険がボーダー・ラインの層もみな医療の責任者になっているわけであります。その生活保護法第四条をはずして、国民健康保険はそういうボーダー・ラインはやらないのだ、全部町村でやれということになれば八十億助かるのです。それを国民健康保険は医療救護の方の生活保護の面までみな先行してかつぐことになって、そういう大きな負担をしておるのでございますから、十分一つこの点は政府と御折衝をされて、将来御考慮を願いたい、こういうように申し上げたいと思うのであります。
  221. 田中久雄

  222. 井手以誠

    井手分科員 専売公社の関係で、簡単な問題ですが一つだけお伺いいたします。  これは昨年の夏から秋にかけて、大蔵委員会でずいぶん論議された問題の一つですが、専売公社の三十三年度における交付金、補助金は幾らになっておりますか。三十二年度と比べてどうなっておりますか。
  223. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。補助金、交付金の関係は、大体大蔵省所管の他の、たとえば酒造組合等の補助金、交付金と同じように、大体二割減となっております。ただ耕作組合団体交付金の関係は、従来いろいろ問題のございました種子の頒布のあっせん手数料とか、あるいは収納事務の助力手数料というふうなものを、従来とは違って手数料で見ることにいたしましたので、実質的には耕作組合関係の公社から出る金につきましては変化はございません。
  224. 井手以誠

    井手分科員 監理官も当時の委員会でよく御承知だと思っておりますが、耕作組合に交付される協力費、指示伝達費、各組合の実績によりますと三分の一程度にしか当っていないのであります。これは公聴会における参考人の公述においても明らかであります。当然公社がやるべきものを耕作組合がかわって人夫を出して、協力をしておる。専売公社の手で行うべき指示伝達の仕事、公社が負担すべきことを組合でやらせておる。組合に対してその三分の一程度を交付されておる。組合員の出血によってまかなわれておるということがよく言われております。監理官はこの点はよくお聞きだと思いますが、それではその事業の本質にそむくものだと思う。金額はお示しにならなかったのでございますが、五千万円程度だと思います。どうしておふやしにならなかったのか。当然公社が負担すべきものであるならば、もっと必要な金は全額耕作組合に交付すべきではないですか。そういうふうにあなたは監理官として中に入って、そういう予算を組むべきではなかったか、その点をお伺いいたします。
  225. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。実際に耕作組合でいろいろな公社の事務に対する協力的な事業を行いますについて、いろいろな金がかかって、その金を現在の補助金、交付金制度、あるいは来年から新しく創設します手数料制度で十分見ていないじゃないかという御質問であるように存じます。この問題はひとり公社から出ますところの補助金、交付金のみの問題ではございませんで、全般的に補助金、交付金で一定の事業をすることを要求するその場合に、受領団体、ある場合には地方団体もございますし、ある場合には民間の企業もございますが、そこでやります補助事業に要した金の十分なカバーをしておらぬという問題は前からあるわけでございます。この問題の考え方といたしましては、私はいろいろあると思うのでありますが、国といたしましては、補助金、交付金を出すわけでございますから、これだけの事業ならば、大体こういう単価で、こういう程度の員数でもってやれるはずだという一定の目安もあるわけでございます。そういう目安に従って必要かつ十分なる、いわば最低限度の金を交付することが、国民のファンドである公金を使うについての心がけであろうと思うのでありまして、普通の補助事業でも、そういうふうな目安でもって国は補助金、交付金を交付しております。ただその場合に実際の決算的な、補助事業主体である補助金受領団体が使いましたものと食い違いがあるということは往々にあるわけでございまして、そこらの論争は補助金制度とともに従来もいろいろあったわけであります。この場合耕作組合の使っております金が、そうした目安からいって全く必要不可欠なものであるにもかかわらず、公社から出るところの補助金、交付金と食い違っておるという御質問であろうと思うのでありますけれども、今申し上げましたように、決算そのものを取り上げて、これに補助金を出すというふうなことは、その法律の規定に特別にそういうふうなことが書いてあります場合に限られるのでありまして、専売法第二十五条に五号から九号までの指定事業に対する補助金は予算の範囲内で全部または一部を交付することができる、こういうふうに書いてございますので、そうした意味においては必ず決算的な事業額と交付する補助金、交付金とが全く同一であるべきだということは直ちに結論できないかと思います。ただ一般に見まして補助事業を行います場合の経費と、補助金、交付金とができるだけ一致して、しかもそれが交付金を使いますところの建前からほんとうに必要不可欠であるという金額であるということが理想的なんでございまして、そういう意味で、従来タバコ耕作組合の交付金、補助金につきましてもいささか食い違いがあったということは私も認めるわけでございますけれども、査定をします立場の考え方もよくわかるわけでございまして、昨年と同額のものを確保したということで私は努力したと思っております。
  226. 井手以誠

    井手分科員 私はタバコの収納査定に関する事務に耕作組合の人が加勢をしておる。それから公社から耕作者に達する指示伝達を組合でやっておる。それに対して、交付金とか補助金とかを交付する建前が間違っておる。そういう仕事はむしろ公社自身がやるべきではないですか。そうすれば補助金とか交付金とか決算の精算とかいううるさい問題はなくなってしまうはずです。耕作団体は交付金、補助金が非常に少くて困る。たださえ安い収納価格に対して、さらにそれから天引されて納めなくちゃならぬ、そういう不満が多いことは御承知の通りであります。私は種子の配布のあっせんであるとか、あるいは専売法違反の予防措置であるとか、そういったものについては三分の一か半分かの補助金でもけっこうだと思っておりますけれども、当然公社自身がやるべきことを耕作組合にやらせておることが問題になるならば、公社が直接やるべきじゃないですか。そういう補助金とか交付金の問題があるならば、その点はいかがでございますか。
  227. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 今おあげになりましたいろいろな事業の中でどれを公社がやるべきだといういろいろな御意見がございますと思います。私が考えますのに、あそこの二十五条の一項の五号から九条までに並んでおります仕事、そのそれぞれにつきまして公社がやるべきか、あるいは耕作組合も当然これに協力すべき問題であるか、いろいろ見方はあると思うのでございますけれども、少くともあの法律に書いてございます各号につきましては、それを耕作組合が協力して耕作者の方々に徹底するということによりまして、これはお役所仕事といえばあれでございますけれども、公社だけがやりましたときよりは、さらにうまく徹底して耕作者の方々の利便にもなるという場合も私はあろうかと思うのでございまして、一がいに公社がやるべきだということも、——その場合には一体どこまでやるべきかという問題もあるでございましょう。やはり現在のような形で、耕作組合と公社とがお互いに協力し合って——公社だけがやるならば、法律的にはそれで十分だということであっても、実際の耕作者の方々に対する御理解の程度その他で、不便だという点もあるでありましょう。ああいうような形で協力して徹底していけば、それで耕作者の方々も利便を受ける、こういう意味において、その経費の一部を耕作者の方々に負担していただくというふうな制度もあながち不当とは私は思えないのでございます。
  228. 井手以誠

    井手分科員 耕作者にも利便があるから、その一部を負担してもらうことはあながち不当ではないという結論のようでありましたけれども、私の申し上げておるのは、耕作者が大部分を負担しておるから、申し上げておるのであります。一号から九号までこの協力事業のうちに、少くとも私が申し上げておるのは、公社が当然行なっていいはずの収納鑑定の事務の費用、これを組合がやっておる。これなどは私は全額補助金を交付するか、あるいは公社自身がやるべきだと思う。公社から発せられるいろいろな通達、伝達事項、それを組合でやらせておる。そうであるならば、その費用は全額持つべきではないか、ほかの事業は別ですよ。それは見方や見解のなにもありましょうけれども、少くともこの二つだけは、私は公社が行うべきであると思う。行うことが不便であるならば、耕作組合が負担した分については、全額持つということが建前である。耕作組合に無理をさせて、犠牲をしいて、専売公社が納付金を多くしようという、そこまで私は裏をのぞいたようなことは考えておりませんけれども、しかしそう見なければならぬような事情にもなってくるわけであります。この二つについて、あなたはどうお考えになりますか。当然公社がやるべきではないですか。
  229. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 収納事務に対する助力をした場合の経費と、指示伝達に関する経費の場合に、これを全額公社で見ろというお話のようでございます。前者につきましては、この収納事務に対する助力というのは、一体具体的にどういう内容かということでございますが、私の聞いております範囲では、たとえばその地方の部落が、収納の日が何月何日というふうに予定されましたときに、その日に持ち込む耕作者の方々の産葉の包数をいろいろかげんするとか、あるいはその順序等を計画するとか、こういうふうな仕事のようでございます。これは一方から見れば、収納事務を受ける耕作者の方々の利便にもなるわけであろうと私は思うのであります。たとえば包数の整理の仕方がうまくいっていれば、早く収納事務が済んで、早く代金が受け取れるとか、あるいは順序がうまくいっていれば輸送の手段なども円滑にいくとか、いろいろあろうと思うのでありますが、この点につきましては、今度公社の希望によりまして、助力事務につきましては、交付金という形よりは手数料という方が、そうしたいわば経費負担の性格をよく表わすであろうということで、手数料ということになっているということは、これはある意味においては、おっしゃいましたように、公社の方でやるべき仕事なんだから、その経費を公社の方から委託して、その実費を手数料として支払うという形であろうかと思います。それから公社の指示伝達の問題でございますが、これは公社がすべてやるべき仕事であるというのは、どこまでかという問題があろうと思います。  一般の目につくような形で公示をするということが、一般の行政事務を普及徹底する場合の一つの要件になっておりますが、そういう程度で済むならば、その程度までは私は公社がやるべきだろうと思います。たださらにそうした事項を熟知する必要のある耕作者の方々を集めて、会合を開いて説明するとか、そういうことまで行きますと、これは一般の行政事務の普及徹底の度合いを越えまして、耕作者の方々の利便を考えてやるというふうな段階になろうかと思うのでありまして、指示伝達の方につきましては、来年度も交付金の形で支給することになっております。この両者の問題、いろいろ考え方があろうかと思いますが、現在の助力事務について手数料、公社の指示伝達事項について交付金という形でも、私は妥当と考えていいのではなかろうか、こういうふうに思っております。
  230. 井手以誠

    井手分科員 昨年の大蔵委員会で指摘しましたように、ある組合ではこの二つの費用だけ百二十万円に対してわずか二十万円しか交付されていないという事実を私は指摘いたしました。この場でどうこういうことも言えないかもしれませんけれども、公社でやるべき仕事と組合が利便のために協力する費用とをはっきり分けてもらいたい。そうすることが私は耕作者の不平なり不満を解決する道だと考えておりますので、一つこの機会に公社のやる仕事と組合にやらせる仕事とはっきり分けてもらいたい、そういうふうに一つお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  231. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 ただいまの御質問に対しまして、私も同感と思いますけれども、その分け方は、たとえば指示伝達についても、指示伝達のすべてを公社がやるべきか、あるいは組合でやるべきかということではなくて、どの段階までは一般の行政事務普及徹底だから公社がやるべきである、そこから先は組合の協力というか、耕作者の協力を得てやる、こういう分け方だろうと思うのでありまして、そういうふうに個々の事項ごとにその全部がどちらに属すべきかというよりは、もう少し一般の外郭団体の協力事務等とも比較しまして、検討いたしたいと思っております。
  232. 井手以誠

    井手分科員 小さな問題でもございますから、この程度でとどめておきますが、これは耕作者三十万の大きな不満の的になっております。公社でやるべきことを組合側でやらせて、少ししか補助金をくれない。交付金をくれないということについては、すみやかにはっきりした態度を出してもらいたい、これを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  233. 田中久雄

    田中主査 以上をもちまして、本分科会における質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。本分科会所管予算各案に対する討論、採決は予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 田中久雄

    田中主査 御異議なしと認めます。よってさように決しました、  これにて散会いたします。     午後四時二十九分散会