○
平田公述人 御
公述申し上げます。当
予算委員会並びに分科会におきまして、
委員の皆さんによってすでに
予算上のいろいろな問題が細大漏らさず論じ尽されておると思われますが、せっかく与えられました機会でございますから、許されました短かい時間内で社会保障に関する若干の見解を述べさしていただきます。
御
承知の
通り、
昭和三十三年度の
予算は、前年度より約千七百四十六億円ほど
増加を示しております。しかし生活保護費、児童保護その他社会福祉費、社会保険費、失業
対策費、結核
対策費などの社会保障
関係費も、前年度に比べまして約百二億円余り
増加を示しておりますが、これは三十三年度
予算全体の
増加額のわずかに六%ぐらいにしかすぎません。しかもこの百二億円のうち厚生省
関係分としましては五十八億円でありまして、前年度の厚生省の所管分約百四億円の増額に比べてみますと、だいぶ減っております。また社会保障
関係費の
昭和三十三年度
予算において占めております比率は九・五九%でありまして、前年度
予算におけるおける社会保障
関係費の占めておりました比率一〇・一六%より低くなっております。このことは貧困の追放による福祉国家の実現が公約されましたのに、
昭和三十三年度の
予算の編成に当りましては、社会保障のための
予算的
措置は重要視されなかった結果ではないかと思われるのであります。もとより
昭和三十三年度の
国民所得八兆四千七百五十億円に対しまする、同年度の社会保障
関係費千二百五十七億六千万円の比率を見てみますと、一・四八%でありまして、
昭和三十二年度の
国民所得八兆二千九百三十億円に対する同年度の社会保障
関係費千百五十五億千八百万円の比率でありまする一・三九%より、〇・〇九%だけ増大を示しております。この場合の
国民所得は分配
国民所得の実質集計を見込みまして、経済企画庁の
昭和三十三年度経済計画の大綱によっておりますし、社会保障
関係費は大蔵省主計局の分類に従っておるものであります。
〔
委員長退席、今井
委員長代理着席〕
予算書にあります大蔵省主計局の
予算項目の分類では、社会保障
関係費としまして、先ほ
どもちょっと触れましたように、生活保護費、児童保護その他社会福祉費、社会保険費、失業
対策費及び結核
対策費の、この五つの項目を含めております。ところが健康保険連合会の社会保障年鑑に収録されております大蔵省主計局調の社会保障
関係費によりますと、社会保障
関係費としまして、社会保険費、生活保護費、社会福祉費、住宅
対策費、援護費、失業
対策費、保健衛生費、移民
振興費その他というふうな、かなり広い項目が包括されております。同じく、この社会保障年鑑に収録されております社会保障
制度審議会の事務局調の社会保障
関係制度の総費用の項目を見てみますと、社会保険、国家扶助、医療、公衆衛生、社会福祉それから恩給、軍人恩給、遺家族援護、留守家族引揚者援護、失業
対策、住宅
施設――これは第二種でありますが――こういうふうな十一項目を包括しております。また試みに国連の統計年鑑を見ますと、ここではソーシャル・サービセスとしまして、エデュケーション、パブリック・ヘルス、シビル・ペンション、すなわち文官恩給に該当する。こういうふうなものを
わが国の社会保障
関係費を見る場合に取り上げております。他の諸国に関しましてもほぼ同様でありますが、特にカナダやアメリカにつきましては、軍人年金、ベテランのペンションを取り上げ、西ドイツにつきましては、戦争
関連の社会福祉支出などを社会保障費として取り上げているのを見出すのであります。いずれにいたしましても、
予算書における大蔵省の社会保障
関係費項目は少し狭いのではないかと思われますので、恩給
関係費や援護費や環境衛生費その他雑件中に含まれております準要保護児童
対策費や学校保健費な
ども、社会保障
関係の費目として注目さるべきものではないかと存じます。
社会保障のいかなるものであるかということの見解の相違、あるいは現実の
制度として
実施しております社会保障の姿が、各国によりましてそれぞれかなり違っております
関係上、社会保障
関係の経費をどういう範囲において把握するかということは問題の存するところであります。それだけに大蔵省なり厚生省なり労働省なり、その他
一般に社会保障に今日
関連を持っていると見られます
関係官庁や研究者などが集まりまして、
わが国では
わが国なりのできるだけ統一した社会保障
関係の重要な統計なり資料というものを作成せられるよう、この機会に社会保障
制度の推進のためにも切望されてなりません。社会保障費に恩給費を入れて考えることには、それ自体問題があると思いますが、今
日本統計協会の
日本統計年鑑によって見ますと、恩給費その他をも含めた社会保障費の歳出
予算において占める割合は、
昭和二十九年度には二二・七八%、三十年度は二二・四八%、三十一年度は二一。七〇%、三十二年度は二一・七八%であります。ここにおける社会保障費の考え方を一応前提としまして、
昭和三十三年度
一般会計
予算における歳出の中に占めております社会保障費の割合を見ますと、二一・六五%でありまして、恩給を含めた場合でも、
昭和三十三年度の社会保障費の歳出中において占める割合というものは、前年度に比べて小さくなっております。また恩給を含めた社会保障費の最近における
わが国の
国民所得に占める割合は、
昭和二十九年以降下っておりまして、多少のでこぼこがありますけれ
ども、
昭和二十九年度を除きましていずれの年度も三%以下でありまして、次のような状況を示しております。すなわち
昭和二十二年度は〇・七七%、二十三年度は〇・七三%、二十四年度は一・〇六%、二十五年度は一・三七%、二十六年度は一・三二%、二十七年度は一・七〇%、二十八年度は一・九七%、二十九年は少し上りまして、これはピークになりますが、三・二一%、三十年年度は二・八一%、三十一年度は二・六六%、三十二年度は二・九九%、ただ三十三年度は、
昭和三十二年度の
国民所得八兆三千九百三十億円の二・八六%、約三%の成長率として
国民所得を見ますると三・三五%という比率を示しております。これは
国民所得が思ったほど伸びておらないということに対比して、そういうことになるということは注意されなければならないのであります。ところがオーストラリアでは五・六四%、デンマークでは五・八一%、西ドイツでは六・五四%、スエーデンでは六・六六%、イギリスが六・八一%、フィンランドが七・九七%、ニュジーランドは最も高く八・七四%、こういうような状況を示しておるのでありまして、社会保障
制度の比較的進んでいる諸国におきましては、社会保障
関係費の
国民所得に対する割合というものが五%以上から八%強になっているということを知ることができるのでございます。もし
わが国が、イギリスや北欧諸国やニュージーランドや西ドイツ並みにいかなくても、ほんとうにいわゆる福祉国家の方向に進もうとしますならば、原則としてもっと社会保障
関係の経費を増額すべきであると考えられます。もとより恩給をふやしまして、社会保障
関係費の
予算面における比率を高め、ひいて
国民所得に対して占める社会保障
関係費の大をもちまして福祉国家のバロメーターとして
理解をすることは、あとで少し触れますように、それ自体問題があり、できるだけ避けらるべきであると考えられます。さて、
昭和三十三年度の
予算における社会保障
関係費はさきにも
指摘いたしましたように低調でありますが、次のような前進の部分ももちろん見受けられます。たとえば
国民皆保険四カ年計画の第二年度としまして、
国民健康保険及び日雇い労働者健康保険などの財政の
健全化のために、国保の療養給付費に対する二割の国庫補助のほかに、新たに財政
調整交付金を交付することとしまして、療養給付費の五分に当る金額を算定し、三十三年度には十三億八千二百万円が計上されておりますし、国保の助成に要する経費が前年度より三十四億七千三百万円余りの
増加を示して、事務費一人当りの単価も八十五円から九十円に上げられている点、あるいは日雇い労働者健康保険につきましては、これまでの国庫負担率一割五分を二割五分に引き上げ、さらに傷病手当金
制度を創設しまして三分の一の国庫負担を行うことにして、このため
一般会計から五億二千八百万円余り
増加して、約十一億八千四百万円を繰り入れる
措置をとっております点、さらに皆保険と深い
関係を持っております社会保険医療の診療報酬を十月から八・五%引き上げることとしまして、それぞれ医療保険並びに医療扶助費などに十八億五千万円、平年度四十億の財政
措置が講じられているというような点さらにまた最近の金融引き締めなどによる影響並びに人口
増加などを考えまして、生活扶助者数を
昭和三十二年の実績人員から三・六%ですか、そのくらいの
増加を予定いたしまして、月約平均百五十万と考えまして、生活保護費は前年度に比べて約十五億二千六百六十万円ほど
増加されておりまする点などが
指摘できると思われます。
しかしながら次に申し上げますように、いろいろな問題点が残っていると思われます。御存じの
通り、今日の社会保障は、医療保障と
所得保障を柱としまして、全
国民を適用対象とする、いわば貧困追放策であるというところに特色があると考えられ得るのでありますが、
わが国におきましては、医療保障の適用率はやっと七〇%ちょっとこえている
状態、
所得保障の適用率に至りましては、わずかに約三〇%にすぎない状況でありまして、まだまだ全
国民的な広がりを持っておりません。医療保険
制度の普及
発展は、御
承知の
通り国民皆保険四カ年計画が急速に進んでおりますが、全国に
国民健康保険を普及しまして、あらゆる地域の
国民を疾病の脅威から守るということは、必ずしも容易ではないのでありまして、四カ年計画の筋書
通り、
昭和三十三年度の
増加被保険者数四百十万、三十四年度の
増加被保険者数五百四十万、三十五年度も同じく五百四十万という工合に、順調に皆保険を推進せしめていくためには、少くとも市町村が進んで
国民健康保険を行うことが必要でありまして、そのためには、特に事務費単価の九十円は
実情に比べて
一般に低いものといわなければならないと存じます。今後大都市への国保の普及に際しましては、医療費の問題とともに、再検討されなければならないものと考えられます。またかりに医療保険が全国に普及
実施されたとしましても、医療
施設の
整備が不十分でありますれば、医療の機会均等をはかることはできないのでありまして、この点は重要視されなければならないと思うのであります。
昭和三十一年度現在で、病院数の約七割が市部に、三割が郡部にありまして、人口一万当り診療所数を都道府県別に見ますと、最高は東京都の九・二で、最低の北海道の三・四の三倍に近い
状態でありまして、病床数と同様に、都道府県の間に大きな不均衡が見出されるのであります。
かように医療
施設が偏在し、依然として無医地区のあることは、医療の機会均等をはかる医療保障の
確立のために許さるべきことではありませんが、この問題の根本的
解決のための経費は、もっと本格的に取り上げらるべきだったと思います。ましてこの結核
対策の強化を医療保障におけるきわめて重要な一環として考えます限り、医療
制度の効率的な
運営を脅かしておりますこの結核を退治することには、相当の
予算的
措置が講ぜらるべきであったと思われますが、この点はなはだ貧弱であったと思います。もとより
わが国の結核死亡率は最近減少しておりまして、結核死亡率の最も高かった
昭和十八年に比べまして、三十一年の結核死亡率はほぼ四分の一に下っております。
国民死亡の原因の順位においても、三十一年度には第五位になっておりまして、結核はもはや
国民病でなくなったような感じを与えておりますが、しかしデンマーク、オランダ、オーストラリヤ、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、スエーデン、イギリス、ドイツなどと比較いたしますると、
わが国の結核の死亡率はまだまだ高いのでありまして、
わが国の
状態はなお大いに
改善の余地が残されておる、こういうふうに考えられます。しかも結核死亡率の低下ということが、必ずしも結核患者数の減少を
意味しておるものではないのでありまして、
昭和二十八年に厚生省が
実施いたしました結核実態調査によりますれば、ほぼ三百万人の結核患者が推定されておるのでありまして、
昭和三十年度の調査によりましても、
わが国の結核患者の
実情は相当好転したとは称されがたい節があるのでありまして、結核予防法による届出患者数を人口一万対で見ますと、
昭和三十一年度には五百七十四でありまして、西ドイツ二百十九、フランス百四十、アメリカ六十七、こういうものに比べてみますと、依然として大きな隔たりを示しております。三十三年度
予算におきましても、もとより健康診断の
実施強化あるいは検診班に対する補助、それから治療内容の拡張などによりまして、結核
対策費は十億一千三百万円余りの増額になっておりますが、しかしそのうち約六億円は結核療養所の経費に回るのでありまして、いわゆる結核
対策の費用は約四億円にすぎない、こういうような
状態であります。今後の結核
対策は補助率の増額によりまして、
地方財政のかね合いもよく考えて、
国民医療費の負担の軽減のためにも、結核患者の大幅な減少をねらいまして、少くとも開放性結核患者の強制的な隔離、治療などを行うように、もっと積極的な
予算的
措置が講ぜらるべきであると考えられます。
医療保障
関係でもう
一つ申し上げておきたい点は、
政府管掌健康保険にかかわる、例の三十億円の問題でありますが、最近の政管健保の黒字
状態にかんがみまして、三十三年度は
一般会計から政管健保の給付財源としまして、十億円を繰り入れるということになったようでありますが、これはやはり約束
通り、できるなら三十億円を出しまして、政管健保給付の引き上げなり、あるいは保険料率の引き下げなり、あるいは医療費の
改善なり、健保の実質的
改善のために資せらるべきものと考えられます。組合管掌の健保との均衡上からいたしましても、また
わが国の医療保障推進の
観点からいたしましても、この点は望ましいものといわなければならないのであります。次に社会保障の他の柱であります老齢保障
関係について述べさしてもらいますが、厚生年金保険
制度を初め、
わが国の現行の公的年金
制度の適用範囲は雇用
関係で働いている人たちに限られておりまして、その総数は約千二百四十五万人、全被用者の六五%に上りますが、しかしそれらは自営者あるいは家族従業者を含めた全就業者のわずかに三〇%前後にすぎないのでありまして、五人未満の零細企業の従業者、臨時
事業所の被用者、日雇い労働者、あるいは季節的業務の被用者など、すべて適用を除外されております。かように現在の
わが国の年金
制度の包括範囲は決して
国民的な広がりを持っておりませんので、ほとんど賃金労働者や俸給生活者の一部に限られておりまして、多数の自営者や、零細企業で働いている人々や、農山漁民などが老齢保障外に置かれておる
実情でございます。最近
国民年金
制度の世論が喚起されているのも、こうした
事情に基くものと考えられるのであります。しかも今日
わが国の年金
関係制度は厚生年金保険
制度を初めといたしまして、船員保険、恩給、国家公務員共済組合、市町村職員共済組合、町村職員恩給組合、私立学校教職員共済組合、並びに公共企業体職員等共済組合などの雑多、不統一な
実情にございまして、これらの主官庁も厚生省、大蔵省、総理府、自治庁、文部省、あるいは
地方公共
団体、その他ばらばらであります。それがために手続様式や窓口などすべて異なり、複雑でありまして、行政費も非常にむだが多いと見なければなりません。のみならず、年金の受給
条件、受給年令及び年金額などそれぞれ違っておりまして、不均衡であります。しかも老齢者に対する実質的な生活保障としましては、きわめてお粗末なものが多いのであります。また厚生年金保険
制度と船員保険との間のほかには、
各種の年金
制度の間に年金を受ける資格期間の通算が全然行われておらないありさまでありまして、それがために公務員の年金
制度と
一般労働者の年金
制度の間はもちろんでありますが、同じ公務員を対象とする恩給
制度と共済組合の間でも資格期間の通算が行われていないという
状態であります。でありますから、年金を受ける機会を失う場合が非常に多いのでありまして、この点は年金
制度の重大な欠陥と見受けられなければならないのでありますが、かかる点に関する具体的な
解決策を推進せしめるような、
予算的
措置が積極的にとらるべきであったと考えられます。のみならず、軍人恩給をも含めて
昭和三十三年度は恩給
関係の費用一千億を突破する、こういうようなことが統一的な社会保障
政策の推進上やはり大きな問題であろうかと考えられます。そうしてベース・アップあるいは公務扶助料の倍率の引き上げとか、傷病恩給のための所要経費は、三十三年度には三十七億五千万円と見込まれておりますが、三十六年度にはそれは三百億、従って恩給
関係費が一千三百億以上になるわけでありますから、おそらく国家
予算の一割を突破するという莫大な国家負担と見られなければならないものでありまして、
一般財政規模との
関連におきましても、さらに社会保障
関係費との均衡からしましても、大きな問題となるものと信じます。今のところ公的年金
制度の中枢をなしております厚生年金保険の成熟係数はきわめて小さいのでありますが、この年金保険の給付が本格的に発生しました場合には、相当多数の老齢者が年金を受けることになると考えられます。しかしすべての老齢者に対するこの比率は、現行の
制度をもってしますと、大したことは望まれませんし、これにその他の
各種の公的年金
制度による老齢年金受給者数を合せましても決して満足するような
状態になるとは考えられないのでありまして、イギリス、スエーデン、オーストラリア、イタリア、フランス、アメリカなどの諸国に比べて、
わが国の年金による老齢保障が著しく低調不備な
状態に置かれているのであります。かかる
事情からいたしましても、最近統一的な
国民年金
制度の
確立が、既存の
各種年金
制度などととの
関連ないし
調整において考究されているものと思われます。
ところが最近厚生年金保険
制度に包括されております農協職員などが、厚年から離れて、別個に退職年金
制度を作る動きが見られております。また中小企業退職基金
制度の構想などが打ち出されております。前に申し上げましたような既存のばらばらな
各種の公的年金
制度をできるだけ
調整しまして、総合的な年金
制度を
確立することが望ましいものであり、また職域をかえても通算され得るような仕組みがほしいわけでありますが、しかしかつて私立学校教職員共済組合とか市町村職員共済組合とか、あるいは公共企業体職員等共済組合などが作られましたように、今またこの厚年から独立して、農林漁業
団体職員共済組合などが作られようとしておるのを見受けるのであります。もちろんこの農林漁業
団体職員共済組合に関する法案は、ただいま社会保障
制度審議会などにもかかっておるのでありますが、中小企業退職基金
制度は、まだ試案の域を出ていないようでありますが、しかしいずれにいたしましても、すでに申し上げましたような、これまでの
各種公的年金
制度のむしろ統合化が叫ばれ、年金相互間の不均衡の是正あるいは緊密化によりまして、できるだけ通算を可能にして脱落者のないように企図せられておりますところに、さらにばらばらな年金
制度が作られようとしているところに問題があると思うのであります。これは現行の厚生年金
制度は、給付の面におきましても、あるいは年金給付の年令の面におきましても、積立金
運用の面におきましても、あまり魅力を持っておらない。そこで農林漁業
団体職員がそれから離れて、さらにその他のものが独自の退職基金
制度を設けて、退職後の生活保障を処置していこうとしているのではないかというふうに考えられる節もありますが、ここでは問題の性質上、これ以上触れませんが、最近の厚生行政は医療保障に重点が置かれまして、年金
制度の
整備充実のための
努力をあまり払わなかったところにこうした
傾向が生じてきたのではないかというふうにも考えられるのであります。従いまして、厚生省も、
昭和三十三年度はちょうど五年ごとの厚生年金
制度の再検討の年に当っておるのでありまするから、この際大いに反省を要するところでありまして、それがための何らかの
予算措置が必要ではなかったか、こういうふうに疑問が持たれるのであります。
なお生活保護に関する問題点な
ども残っておりますが、時間もだいぶ超過いたしたと思われますので、これで終りたいと思いますが、要するに、健康で文化的な最低生活あるいは無差別平等の生活保護、こういうようなことを土台としまして、
国民の生存権の実現を企図するところの福祉国家の
確立のためには、もっといろいろな
予算措置が講ぜらるべきものがある、こういうふうに申し上げて私の
公述を終りたいと思います。(拍手)