○辻原
委員 ただいま議題となりました
昭和三十三年度
一般会計予算、同じく
特別会計予算、同じく
政府関係機関予算、以上三案に対し、私は日本
社会党を代表いたしまして、これに反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
政府原案
批判の第一は、世論が指摘するごとく、全くの無秩序、無方針
予算であるということであります。すなわち
政府が
昭和三十三年度
予算編成の基本構想なるものを発表いたしましたのは昨年九月でありました。当時国際収支は
最悪の事態にあり、
政府は三十二年末の
実質赤字は四億ドル台になるとの見込みのもとに、財政の膨張は行わない、財政投融資は三十二年度実行規模並みにする等の緊縮方針を決定いたしたのであります。さらに十二月十日の
閣議においてはこれを具体化し、
予算規模の増加は前年度に比し一千億以内にとどめること、剰余金はたな上げをすること等を決定いたしたのであります。しかるに一たびこの方針に基いて
大蔵省原案が作成せらるるや、
大蔵省のあまりにも機械的な
査定に反発をする空気と相待って、
与党議員の手による選挙目当ての各種補助金の
増額、復活要求が跡を絶たず、ここに醜い
予算ぶんどり合戦が展開せられたのであります。はなはだしきに至っては、
大蔵大臣を擁護せなければならない立場にある
岸総理みずからが、
大蔵大臣を責めるなどという姿が
国民に報ぜられるに至り、選挙のみを念頭に置く
与党議員の白昼堂々の百鬼夜行ぶりが、全
国民の前に余すところなく露呈せられたのであります。(拍手)
その結果、一月二十日に
閣議決定せられた
予算案は、同じ顔ぶれの
閣僚がきめたはずだのに、さきにきめた基本構想や
編成方針とはおよそ似ても似つかぬ
予算案に化けてしまったのであります。すなわち
一般会計では一兆三千百二十一億円となり、積極拡大の前年度放漫
予算よりも、さらに千七百四十六億円の増加を来たし、四百三十六億円の財政余裕金たな上げ構想は結局二百二十一億に縮小し、三十三年度
予算で歳出計上するはずであった五十二億の諸経費を、三十二年度補正
予算に計上しなければならなくなり、財政投融資に至っては三千九百九十五億円と前年度の実行計画よりも四百七十二億の膨張を来たしたのであります。しかも三十二年度財政投融資の繰延額のうち二百六十億円を解除し、電力資金五十億の融資を行うなど、独占企業に対しては引き締め方針を事実上放棄してしまったのであります。
以上のような
予算編成上の混乱、無統制ぶりは一体何を
意味するのか。
岸内閣にはもはや統一した政権担当能力がないということであります。このことはその後の本
委員会におけるわが党
委員の追及に際しての
政府側
答弁の不手ぎわ、醜態に、よくその結果が現われているのであります。
次に、
政府原案全般を通じて言い得る特徴的性格は、選挙を前にしてますます大資本擁護の傾向を深めているということであります。すなわち自然増収二千億を持ち、
財政規模も前年度よりはるかに膨張しているにかかわらず、大衆には依然として冷たい
予算、無縁の
予算であると世論が酷評するゆえんのものは、ここにあるのであります。
その傾向の第一は、歳入における減税方針にも歴然と現われております。約二千億の自然増収、言いかえれば税のとり過ぎであります。この際における
政府のとるべき方策の第一は、
予算規模の膨張を押え、大衆に対する公平な減税によって、とり過ぎた税金を再び
国民のふところに返すということでなければならぬと思うのであります。(拍手)しかるに
政府が行なった減税はわずかに二百六十億円であります。しかもその
内容たるや、法人税一率二%の引き下げ、相続税、長期預貯金の特別控除制度創設等、主として大会社、高額所得者に喜ばれる向きのものであり、わずかに酒税の若干の引き下げが、大衆減税への言いわけとなっているのであります。さらに財政投融資の膨張は緊縮方針とは全く相反するものであり、選挙を前にして選挙資金の財界への呼び水ではないかとかんぐられるのも、まさに当然と申さなければなりません。
次に重要なる問題は、
昭和三十三年度
予算の関連において
政府が発表した新長期経済計画なるものであります。この経済計画の前提となっているのは次の四点であります。すなわち輸出が輸入を上回ること、
国民総生産の三〇%が貯蓄されなければならないこと、第二次産業の成長が確保されなければならないこと、雇用の増大が確保されなければならないこと、ということであります。以上が完全に行われて初めて
昭和三十七年度にあるべきわが国経済の姿を作り上げることができるというのでありますが、いかにして輸出を増大せしめるか、果して計画のいうごとく雇用を増大せしめることができるか、貿易は金融引き締めによる輸入の減少により若干の黒字を示しているものの、輸出の伸びは今日停滞傾向を示しているのであります。加えて輸出依存度の高い対米輸出におきましては、アメリカの日本品に対する輸入制限が前途に暗い影を投げかけております。またわが国貿易のオアシスである中国貿易も、
政府の対米従属外交と無理解の結果、今日北京で行われておる第四次貿易協定も難航を続け、まさに暗礁に乗り上げようとしているではありませんか。こうした情勢のもとで、果して
岸内閣の施策でもって、輸出が輸入を上回る正常貿易が実現できるか、はなはだ心もとないものがあるのであります。
国民貯蓄三〇%の確保、三兆八千億の資金量はいかなる方法によって求めようとするのであるか。
委員会の質疑の
過程におけるわが党
河野委員の
質問にも、確たる
政府の具体的方法が示されなかったのであります。雇用の問題に至りましては、今日完全失業六十万を数えております。
政府の雇用増大計画は毎年次八十万であります。従ってこの増加は単に完全失業を埋める程度であって、年々増加する新規労働人口の雇用を満たすにはほど遠いものであります。のみならずわが国の雇用問題は諸外国とはその状態が異なり、六百万に上る膨大な不完全失業の雇用問題が解決されない限り、雇用問題の本質的解決とはならないのであります。
政府はこの点にことさら目をおおい、その対策を看過していることをこの際特に指摘しておきたいと思うのであります。
以上のごとく、新長期経済計画は全く絵にかいたもちであり、何らの具体的方法と確たる見通しの上に
立案せられているものでは断じてないのであります。従って、この計画の一環であるはずの
昭和三十三年度
予算も、
実質的な長期計画とは何ら関連なしに
編成せられていることは、今日までの
予算審議においてことごとく明らかとなったのであります。
次に、一兆三千億の歳出についてその性格を
批判すれば、第一に申さなければならないことは、きわめて財政的に不健全な
予算であるということであります。すなわち、総支出のうち、
行政費、防衛費、恩給費を合すれば、その割合五三%となり、全体の五割以上が不生産的経費であり、将来のインフレ的要因がここにも内在しておるのでありまして、わが国の経済の発展上憂慮しなければならぬ重要なる問題であります。なかんずく防衛費に至っては、人工衛星、ICBMの新しい時代に、依然として陸上部隊を中心とした自衛隊の増強をはかっていることは、全く時代錯誤であり、ナンセンスであると申さなければなりません。(拍手)自衛隊員一万九千名の増加、そのために百九十億、その他艦船建造費等の債務負担行為七十九億の
増額に、防衛
関係費は実に一千四百六十一億の巨額に達したのであります。かかる防衛費は、今日の常識においては、それ自体税金の浪費でありますが、さらに例年防衛
関係費が年度末に使い残され、かつまた中古エンジン、古ぐつ事件等に表われたような数多くの不正浪費が跡を断たないということは、断じて許すべからざることであり、私は腹の底から義憤を
感じてやまないものであります。さらに、核兵器の卵であるサイドワインダー等を
国会の承認を経ずして持ち込みつつあることは、
憲法違反であるばかりでなく、世界があげて軍縮の方向にある今日、全く世界の大勢にも逆行するものであると申さなければなりません。
岸内閣は、口に原水爆反対、平和を唱えておりまするが、具体的
政策に至っては、全く逆の、事実上核兵器の持ち込みを将来にわたって是認する
政策をとりつつあることは、もはや疑いもない事実であって、当
委員会において日米共同声明についてその
内容を
総理にただした結果に基いても、核兵器持ち込みを防止する何らの法的保障の根拠が得られなかったことは、
国民ひとしく一大不安感にかられているところであります。
さらに、
政府がわが党の追及により、天下にその醜態をさらしたヴェトナム賠償の問題にいたしましても、何がゆえに南ヴェトナムのみを対象とし急ぐのであるか、はなはだ了解に苦しむのであります。結局は、アジア諸民族の意思に反するアジア反共軍事同盟の布石となることを、今日
国民は心配をしているのであります。
防衛費に連なる旧軍人恩給制度の存続、
増額は、それ自体財政を不健全にするのみではなく、旧軍人勢力を温存し、
政府の軍備拡張
政策を助長せしめる思想的陰謀であると、論断して差しつかなえいと思うのであります。このような目的、背景を持つ軍人恩給制度の犠牲となっているものは、遺家族であり、また傷痍軍人であります。依然として階級差をつけられ、応召下級軍人が冷遇視されていることには、断じてわれわれは承服しがたいのであります。さらにまた国家の保障が得られない数多くの戦争犠牲者のことを考えれば、何ゆえに一将功成り万卒を枯らして、今日生きている人たちにまで高額の恩給をあてがわなければならないのか、全く了解に苦しむところであります。
こうした非生産的、反大衆的経費の
増額に比べて、一体
国民に直結する社会保障、文教、住宅建設、雇用等はどうなっているのでありましょうか。二千億円に上る自然増収がありながら、大衆に対する減税も行われず、また民生安定にもきわめて薄いのであります。歳出
予算の総額の前年度
予算に対する増加率は一割五分五厘でありますが、これに対して社会保障の増加はわずか八分五厘、九十九億、
義務教育負担金六分八厘、五十八億、文教施設費は一分、一億、住宅建設費はとんとんであります。計百五十八億の増加にしかすぎず、また人口の半分近くを占める農民に対する農業
予算を前年度に比し〇・七%減額していることも、農村不況の深刻化している現況を考えれば、黙過できないところであります。金詰まりによって最も深刻な打撃を受けた中小企業に対しては、一体どの程度の手当が行われているか。わずかに基金に若干の金額を計上したのみではありませんか。しかも社会保障、文教費等の増加は、人口の自然増に伴う
義務的経費がその主たる部分であって、これを
政策的に見ればほとんど
実質上の
増額はないのであります。保育所経費の減額、
国民皆保険の放棄、また
国民全般を対象とする
国民年金制度の創設を見送るなど、
総理が常に口にする三悪追放のトップに立つ貧乏追放の
政策はことごとくお題目に終っているのであります。逆に、健保単価一円の引き上げによる患者負担の増加は、年間二百十七億、本年度百億円の大衆への負担となり、後退の
あと歴然たるものがあります。失業対策に至っては、前にも申しましたように、完全、不完全合せて六百万を突破する膨大な失業者をかかえながら、わずかに二十五万人を失対事業に吸収しようというお粗末きわまるものであって、貧乏追放どころか貧乏拡大の
政策と申さなければなりません。わが党は、かかる大衆に冷たい、しかも無方針きわまる選挙目当ての戦後
最悪予算には、いかようにしても賛成するわけには参りません。従ってこの際わが党の
予算の基本的構想を明らかにし、
国民大衆に対してわが党の態度を明確にいたしておきたいと存ずる次第であります。
今回特にわが党が、
政府案に対し組みかえ
修正を行わなかった
理由は、昨秋、三十三年度
予算編成の前に、わが党は
予算編成に対する要望書を
政府に申し入れました。しかし
岸内閣は、わが党のわずかな合理的要求に対しても、一顧の考慮もしなかったのであります。
社会党と対決を呼号する反動的な
岸内閣は、わが党のいささかの組みかえ
修正にも応ずる動きのないことは、この一事をもっていたしましても明らかであります。さらに、さきに述べましたように、このたびの
政府予算案は、一方で緊縮方針を大衆に押しつけ、他方では
予算編成の分どり競争で、財政投融資その他の膨張を行うなど、手のつけようのない支離滅裂の性格分裂
予算案であります。従って計数的、局部的な組みかえ
修正のみをもっていたしましては、われわれの正しい
政策転換をとうてい表現し得ないのであります。かつまたこの
予算の積算基礎そのもの、補助金の具体的な使途そのものが、保守勢力に有利となるように組み込まれておりますので、単に款項の大きな費目の組みかえのみをもっていたしましては、勤労大衆の
政策要求を十分に表現し得ないうらみがあるのであります。よって以下わが党の構想を明示することによって、
政府案と対決いたしたいと思うのであります。
わが党の
予算の構想といたしまして、
昭和三十三年度
予算編成は、わが党の長期経済計画の第一期三カ年計画の第一年度財政計画に基いて
立案をいたすものでございます。
予算編成の基本といたしまして
一、
一般会計予算規模については、不急不用額の削減を極力はかるが、不況下における
国民生活の最低保障に必要なる経費は確保し、いたずらに緊縮を至上命令とはしない。
二、歳入面では、
国民の租税負担の不均衡是正のために、大法人及び高額所得者に対する過度の減免税措置の改廃による歳入増加と低所得者に対する減税を行う。
三、歳出面では、財源増加分は主として社会保障的支出並びに将来の経済発展の土台としての科学技術の振興費の
増額に充当する。
政府は、口では外貨危機に対処するため、緊縮
予算を
編成すると主張しつつ、歳出における最も非生産的要素であり、かつインフレ促進要因である防衛庁費の削減をはからないのは、矛盾もはなはだしいと存ずるのであります。
四、財政投融資計画の対象は、中小企業、農林漁業、低家賃住宅建設の引き受け等に重点を置く。
五、地方財政においても国の財政に準じて租税負担の均衡をはかるため、零細企業(農業を含む)並びに勤労者住民に対しては減税、大法人に対しては増税する。なお地方財政の財源不足にかんがみまして、過去の起債のうち、交付債の利子支払額は全額国庫負担とする。
この
基本方針に基きまして、歳入規模及び税制改正に関しましては、
一、現行の租税制度は、国税、地方税を通じて大法人の負担が軽く低所得者の負担が重い不均衡が放任されている。この実情にかんがみ、次の要綱に基く税制改正を実施せんとするものであります。
イ、国税。
(一)、所得税。家族五人年収三十二万円までを免税とし、累進税率を引き上げる。事業所得のうち年収三十万円までの所得を勤労者所得とし、これに対しては二〇%、最高六万円の特別控除を行う。
(二)、法人税。低所得五十万円以下の税率を三〇%に引き下げる。
(三)、物品税を廃止し、新たに高級品税を創設する。
(四)、酒税。大衆向き酒類の税率を一〇ないし一五%引き下げる。
(五)、相続税。基礎控除を現行五十万円より百万円に引き上げる。
(六)、租税特別措置法の改廃。大法人及び高額所得者に対し過当なる減免税措置は原則として廃止する。
(七)、富裕税を創設し、財産の価格から債務の全額を控除した金額が一千万円をこえるものに課税する。
口、地方税。
(一)、住民税。個人均等割の税率引き上げを取りやめて軽減し、地域的な不均衡の是正をはかる。
(ニ)、事業税。零細企業の負担加にかんがみて個人事業税の基礎控除を二十万円に引き上げ、特に勤労者事業に対する課税に限り基礎控除を三十万円に引き上げる。法人事業税は国税における大法人に対する減免税措置の改廃に伴って当然増徴される。
(三)、自転車荷車税を全廃する。
(四)、固定資産税のうち、農業用資産に対する課税を軽減する。
二、右によって明年度の
一般会計歳入規模は、約一兆三千三百億円程度となり、
政府案より約百八十億円の
増額となる。
第三、歳出
予算の
編成。
一、社会保障
関係。
(一)、医療保障。
昭和三十五年までに
国民皆保険を実施し、あわせて医療
内容を向上するために、イ、健康保険制度を五人天満事業所に適用。口、
国民健康保険に未適用者一千万人を新規加入。ハ、双方の療養給付率の引き上げ。ニ、
国民健康保険事務費単価の引き上げ。ホ、被保険者の負担増を伴わない医療費単価の合理的改訂。へ、無医村解消をはかる。
(二)、結核対策。結核対策を強力に推進し、五ヵ年計画をもって社会病としての結核禍を根絶する。このため結核対策本部を設け、予防、治療、後保護に至る一貫した対策を確立し、特に治療費は全額国庫負担をもって強力に推進する。
(三)、
国民年金対策。全
国民の生活保障の見地に立ち、当面
国民全体を対象とする左のごとき
国民年金制度の実施に着手する。イ、六十五歳以上の老令者に対して二万四千円の年金を支給する。口、十八歳未満の子女を有する母子世帯に対しては、年額三万六千円の母子年金を支給する。ハ、第一級より第三級の身体障害者に対し、年額三万一六千円の身体障害者年金を支給する。
(四)、
国民福祉対策。
国民福祉については生活保護単価と対象人員を増加し、かつ期末一時扶助の支給を行い、児童保育、婦人保護の経費を
増額する。
(五)、失業対策。明年度は雇用の伸びの減退と失業者の増加が必至となるにかんがみて、失業対策事業における一日平均吸収延人員を三十五万人に増加し、かつ生活最低保障の見地に立ち、日給ベースを三百六十五円に
増額し、稼働日数月平均二十五日分、期末手当二十五日分の支給を確保する。失業保険は支給人員を四十万人分を予定する。
二、低家賃公営住宅建設。明年度は公営住宅の建設を低家賃住宅を主体として最低十五万戸建設し、
政府関係建設戸数は総計二十三万戸を確保する。
三、文教
関係。
義務教育に対する父兄負担の軽減をはかるため、教材費の半額国庫負担、準要保護児童生徒七十三万人に対する教科書と学校給食の全額国庫負担、学校内における児童災害に対する国家補償を行う。
(ニ)、詰め込み学級、校舎不足の解消。
義務教育水準の向上をはかるため、教職員の一万名増員と校舎の増改築に対する補助率の引き上げを行い、かつ最低延五十万坪を建設する。
(三)、教育の
機会均等の実現。奨学生に対する貸与金の単価引き上げと人員増加、夜間定時制高校に対する国の負担率の引き上げ(最高四割まで)僻地教育振興のために適正なる僻地基準の制定、特殊教育の充実、私学に対する補助金を
増額する。
(四)、理工科系基礎教育の充実。科学技術振興の基礎として
義務教育及び高等学校における理工科系教育を充実する。
四、労働対策。
(一)、日雇失業保険の給付
内容の改善。給付金二百円の受給資格日額二百八十円を二百二十円に引き下げ、かつ待機期間を一日短縮する。
(ニ)、駐留軍
関係離職者対策費の確保。激増する離職者のために一律五万円の特別給付金の支給、離職者による企業組合に対する必要資金の融資、全額国庫負担による特別職業補導、離職に伴う移転費の支給等を実施する。
(三)、最低賃金法と家内労働法の実施と港湾運送事業法一部改正とに伴って、まず
審議会設置と
調査に必要な経費を計上する。
五、部落対策。不良住宅等の環境改善、職業補導、福祉施設の拡充、同和教育費の
増額につき、関連歳出項目全般にわたって特別ワクを確保する。
六、人権擁護対策。低所得者に対する訴訟費用の扶助、人権擁護局機構の拡充等を実施する。
七、科学技術振興。
(一)、科学技術研究費の
増額。国立公私立学校における理工科系学部の拡充と研究費の
増額。
各省庁並びに学校以外団体の科学技術研究試験に対する助成費を大幅
増額する。
(ニ)、原子力平和利用。日本原子力研究所と原子燃料公社の
予算を大幅
増額する。
八、地方交付税、交付金。地方財政の自主財源の窮乏にかんがみて、交付率を一・五%引き上げて、二七・五%を交付する。
九、国土建設費並びに災害復旧対策。国土建設費は道路建設に重点を置くという名目をもって、河川改修その他の建設費の継続事業及び最低必要新規事業を縮小してはならない。請負単価の適正化、事業監督の徹底等によって経費の効率的使用をはかって事業量を増加する。災害対策事業については、単に原型復旧にとどめるだけでなくて、災害防止に役立つ事業費を計上する。
一〇、農林漁業
関係。
(一)、生産費及び所得を補償する生産者価格の確保。米の生産者価格は生産費及び所得を補償する価格を定め、
一般会計は食管特別会計不足分を負担する。生産者麦価は具体的な畑作振興対策と相待って決定する。一方的な麦価の引き下げは反対する。
(ニ)、農業サービス・センターの設置。未墾地開墾、土地改良、草地改良、畑作振興を促進して農業生産力を高め、あわせて経営の機械化、共同化に資するため、農業サービス・センターを全国に当面百カ所設置する。
(三)、農業
関係融資の原資増大と資金コストの引き下げ。農林漁業金融公庫及び開拓者資金融通特別会計と農協系統資金に対しては、財政資金の出資及び融資を
増額する。
(四)、農薬補助。共同防除促進のため、農民が共同施設をもって防除事業を行うための農薬費は、国が一定額を補助する。
(五)、沿岸漁業
関係。漁業経営を安定させ、あわせて漁村失業対策にも資するため、全額国庫負担による水産増殖事業を大規模に行い、かつ漁港整備計画に基く修築事業の早期完成をはかる。
一一、中小企業
関係。設備近代化補助、貿易あっせん、小組合共同施設補助等を中心として、中小企業対策費を前年度の倍額以上に引き上げ、かつ
国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金に対する財政資金の出資及び融資を
増額する。
一二、貿易振興。中小企業
関係の貿易振興費、海外技術者の受け入れ、在外技術協力機構の整備拡充等、未開発国に対する協力費を中心として計上する。
一三、平和国土建設隊費。国土の建設と資源
調査等のため、平和国土建設隊を設置し、当面五万名規模とし、第三年目までに十五万名規模に拡大する。
一四、旧軍人等恩給費。
イ、現行の旧軍人等恩給費は、
国民年金との均衡を考慮して、生活保障的性格を付与しつつ改正し、公務扶助料の年額が五万四千円に満たない者については、すべて五万四千円まで引き上げる。普通恩給の年額が三万六千円に満たない者については、すべて二万六千円まで引き上げる。普通扶助料は右に準ずる。増加恩給については階級差を撤廃する等の現行体系の是正を行う。
口、右の是正された体系に基き、打ち切り補償を行う。打ち切り補償の方法は、受給者の余命率を考慮して交付公債を発行し、
国民年金の実施テンポ、国の財政負担力との見合いで年賦償還するものとする。この際、本公債を有する世帯の年間所得が二十四万円、月収二万円、または本人の年間所得が十二万円、月収一万円に達しない者については額面金額一カ年分の七割を、十八万円、月収一万五千円に達しない者については全額を、本人の希望に応じて
政府は現金化に応ずる。傷病恩給については、
政府は直ちに現金化に応ずるものとし、右の所得制限を受けない。本公債を有する世帯の年間所得が二十四万円をこえる場合でも、生業資金、医療資金に限り本公債を担保として
国民金融公庫は一定の貸し出しをすることができる。右の措置によって恩給費の国庫負担はさしあたり大幅に軽減することができるのであります。
一五、公務員給与の引き上げ。公務員の給与は民間給与水準に比較して初任給が低く、かつ給与の中だるみを生じているのみならず、昇給昇格の原資は確保されておりません。さらに最近は消費者物価も値上りしております。この実情にかんがみて、給与ベースの引き上げ、中だるみ是正のための臨時昇給、定員外に放置されている非常勤労務者等の定員内への繰り入れによる給与改善、通勤費の支給、期末手当の
増額、寒冷地手当、薪炭手当の
増額等をあわせて実施する。
一六、防衛
関係費。
(6)、防衛支出金。本項目を廃止し、必要経費は予備費より支出する。
(二)、防衛庁費。自衛隊を十二万五千人程度の民主的な警備組織に改組し、経費を大幅に削減する。
(三)、調達庁費その他。防衛支出金に関連して支出している調達庁経費等の項目を廃止し、必要経費は予備費より支出する。
一七、反動的諸
行政費等の削減。
憲法調査会費、国防
会議費、国防
調査委託費、日本生産性本部補助金、公安
調査庁費、集団不法行為取締費のごとき、
民主主義に逆行する国の歳出は全額削除する。
以上の建設的な案を明らかにいたしまして、
政府予算案はこれを全面的に返上することとし、再出発せられることを強く要求をするものであります。
以上の討論をもちまして、
政府原案に反対をいたしまして、討論を終る次第でございます。