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1958-02-19 第28回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十九日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 江崎 真澄君    理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君    理事 橋本 龍伍君 理事 川俣 清音君    理事 柳田 秀一君       植木庚子郎君    内田 常雄君       小川 半次君    大倉 三郎君       大橋 武夫君    太田 正孝君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       坂田 道太君    周東 英雄君       須磨彌吉郎君    杉浦 武雄君       鈴木 善幸君    永山 忠則君       楢橋  渡君    野澤 清人君       福永 一臣君    船田  中君       古井 喜實君    松浦周太郎君       南  好雄君    宮澤 胤勇君       八木 一郎君    山崎  巖君       山本 勝市君    山本 猛夫君       井手 以誠君    井堀 繁雄君       今澄  勇君    岡田 春夫君       小平  忠君    小松  幹君       河野  密君    島上善五郎君       田原 春次君    辻原 弘市君       成田 知巳君    西村 榮一君       古屋 貞雄君    松本 七郎君       門司  亮君    森 三樹二君       森島 守人君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君         運 輸 大 臣 中村三之丞君         郵 政 大 臣 田中 角榮君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         内閣官房長官  愛知 揆一君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   石井 榮三君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         食糧庁長官   小倉 武一君         水産庁長官   奥原日出男君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      木村 秀弘君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十九日  委員中曽根康弘君、山口喜久一郎君、勝間田清  一君、辻原弘市君及び成田知巳辞任につき、  その補欠として杉浦武雄君、大倉三郎君、松本  七郎君、森島守人君及び小牧次生君が議長の指  名で委員に選任された。 同 日  委員大倉三郎君及び杉浦武雄辞任につき、そ  の補欠として山口喜久一郎君及び中曽根康弘君  が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第4号)      ————◇—————
  2. 江崎真澄

    江崎委員長 これより会議を開きます。  川俣清音君より議事進行に関し発言を求められております。この際これを許します。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 私はこの際予算審議の促進のために政府並びに委員長警告を発したいと思うのであります。二月十九日午前九時現在、提出予定件数百九十八件のうち予算関係法律は八十一件、ほかに条約一件、これに対しまして国会提出済みは六十九件でありまして、衆議院五十三件、参議院十六件、合せて六十九件、予算関係三十七件でございます。従いまして未提出が百二十九件で、予算関係におきまして四十五件を数えるのであります。しかもこの中には恩給関係あるいは道路特別会計等の、重要法案がいまだに提出されておらないわけでありまして、これは予算審議の上に重大な支障を来たすものでございます。この件に関しましては、たびたび警告を発して、分科会終了前に法案提出を希望いたしておりましたにかかわらず、今なお遅滞をいたしておりますことは、政府自体におきまして、予算審議に対して誠実を欠くものと見なければならないと思うのであります。かかる態度でありまするならば、予算審議が順調に行われないのでありまして、その責任は全部政府が負わねばならぬと思うわけでございます。  さらにまた、この予算審議中に政務次官選挙運動またはその他の口実をもちまして、郷里に帰っておる等、審議に不誠実な点が見受けられます。これらに対しましては、十分なる戒告をする必要があるだろうと思う。  さらにまた三十三年度予算説明書の中に、未定稿といいながら、不備な点があって、調整方を申し出ておったのでありますが、いまだに調整をいたしてきておられません。これは四十六ページ、特定土地改良工事特別会計の部でございますが「借入金相当額を償還させることとなっている。なお、この会計の設置に伴い、新たに国営干拓事業について二〇%の受益者負担金を」課するのでありますが、これは昨年度に行われたことでありまして、新たにまたことしから行うというようなことは、これは当然訂正さるべきものでありながら、いまだに訂正されておりません。  さらに問題は、昨日わが党小平委員から、食管特別会計について質疑が行われ、その際、農産物借款について政府説明があったのでございますが、本日資料として翻訳文が出ております。しかしながらこれは、従来国際慣行に基きまして、英文及び和文両方があって、原本があるはずであります。しかるにいわゆる英文のみを出しまして、翻訳文を出されましたことは、翻訳につきましても信を置きがたいと思われまするので、慣例に基きまして、当然英文及び和文原本があるはずだと思われますから、これを提出しなければ審議が進みかねるということを政府に申し入れておきます。非常な誤訳が各所に見えますので、この誤訳に基いた協定ではなかろうと思われまするので、おそらく原文があることと存じます。もしないとしまするならば、これは日本の国辱であるというふうにも感ぜられまするので、すみやかに原本を出されんことを希望いたします。(「原本を出せ」と呼ぶ者あり)この提出を待ちまして、審議を進めて参りたいと思います。政府において善処せられんことを望みます。
  4. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいまの御発言に関連しまして、前段の法案提出の件、それから政務次官の動向の件等につきましては、お聞きの通りでありますから、政府において善処せられんことを望みます。  なお、この際内閣官房長官より発言を求められておりまするので、これを許します。内閣官房長官愛知揆一君
  5. 愛知揆一

    愛知政府委員 法案関係について申し上げておきたいのでありますが、先ほどお話のございましたような状況でございますが、予算関係法律案は、大体総数が七十八、九件になる見込みでございますが、すでに国会提出されておりますものが三十六件のほか、現に法案を閣議として決定いたしまして印刷中のものも二十件足らずございます。なおその他の残りのものにつきましても、できるだけ努力を新たにいたしまして、御趣意に沿うようにいたしたいと思います。(「政務次官の問題はどうした」と呼ぶ者あり)  政務次官の問題につきましては、私からそれでは便宜お答えいたしますが、本日現在で欠席をいたしておりますのは、一名だけでございまして、今朝も午前八時半から政務次官会議を開きまして、国会審議にこの上とも努力をいたす申し合せをいたしておるような状況でございます。     —————————————
  6. 江崎真澄

    江崎委員長 昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第4号)を議題といたします。  一萬田大蔵大臣より発言を求められております。この際これを許します。一萬田大蔵大臣
  7. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日本銀行ワシントン輸出入銀行との間に成立いたしました一億一千五百万ドル借款に関しまする文書をお手元に差し上げてありますが、これによりまして明らかでありますように、この借款は、日本銀行法に基きまして日本銀行がなし得る借款であります。これに対して政府が何らの債務を負っているということはありません。この点はこの文書できわめて明白であると思います。     〔「仮訳じゃわからない」と呼ぶ者あり〕
  8. 江崎真澄

    江崎委員長 一萬田大蔵大臣にちょっと申し上げますが、先ほど議事進行川俣君から発言もありましたので、その問題にも関連して一つの御答弁を願いまして、審議に入りたいと思います。
  9. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お手元日本文が差し上げてあります。(「これは仮訳ですよ」「原本があるはずだ」「それを出せと言っておるのだ」と呼び、その他発言する者あり)これはこういう意味でございます。この仮訳を書いた意味は、正文ワシントンで調印されました関係もありまして、正文日本文がないのです。従いまして、英文翻訳しまして、その英文翻訳した意味において仮訳、こういう意味であります。     〔「外国との約定日本文がないのはおかしいじゃないか」「英文を訳す場合は、正文英語である以上は、訳を仮訳とつけるのは慣行だよ」と呼び、その他発言する者、離席する者あり〕
  10. 江崎真澄

    江崎委員長 御静粛に願います。ちょっと一萬田大蔵大臣発言をお聞きとりを願いたいと思います。
  11. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国際的にこういうふうな取りきめをする場合は、これは今日英文になるのは通例でありまして、大体英文でやっておるのであります。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)まあお聞き下さいませ。これは条約とか何とかいうのではありません。銀行の間の取引について、いろいろと話し合いをするのであります。これは今日まで英文になっておるわけであります。     〔「委員長資料要求だよ」と呼ぶ、その他発言する者多し〕
  12. 江崎真澄

    江崎委員長 どうですか、ただいまの大蔵大臣の御答弁で御納得いただけませんか。——ただいまの大蔵大臣発言通りでありまするから、これが国際慣例であるということを御了承願いまして、質疑にお入り願いたいと思います。     〔発言する者多し〕
  13. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいまの大蔵大臣発言に関連しまして、成田知巳君より質疑のお申し出がございます。これを許します。成田知巳君。
  14. 成田知巳

    成田委員 昨日の審議の過程を見てもおわかりのように、原本をこちらは要求した。そうすると、原本を写しました英文を持ってきた。ところがその英文の訳は私たちは納得できない点があるのです。しかも国際慣例からいって、条約なんかを締結するときには、必ず相手と日本と、英語日本語両方交換するのです。だから私たちは。……。(「借款じゃないか」と呼ぶ者あり)借款だから契約なんだ。民間であろうが政府であろうが、契約です。そこで私たち国際慣例からいって、常識的にいって、当然日本原本があるはずだと思う。原本を見なければこの訳は信用できないと言うのだ。私たちは何も英文原本を最初要求したのじゃない。原本を出せと言っている。ところが英文を持ってきた。ところがその訳たるや意識的に曲げた訳がある。たとえばアシュアランス確証と訳している。これは当然保証なんです。保証といえばひっかかるものだから、わざわざ確証と訳している。そういうところに私たちは誠意の欠けている点を感ずるから、原本を出してもらいたい、しかも日本語原本を要求しているのです。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは先ほどから申し上げますように、条約でもなんでもないのでありまして、日本銀行ワシントン輸出入銀行との間の、商行為といってもいい、取引に基いて締結したものでございます。そしてこういうふうな事柄の取りきめには、今日国際的に大体英文でやっておるのでございます。特にこれはワシントンで調印いたした関係もありまして、日本語では何もございません。私は何もうそを言うのではありません。英文です。それで昨日英文を提示いたしたのでありますが、日本文を出せ、急いで明日の何時までに訳して出せ、こういうお話ですから、今ここへ訳して出したようなわけであります。これは正文英文である場合は、それを訳す場合は大体仮訳とするのが、国際的な慣行です。これは外務省あたりのものについても、おそらく正文外国語である場合には、これを日本語に直すときには仮訳と断わり書きが入っていると思います。これは正文でないという意味において、そう申すのであります。
  16. 江崎真澄

    江崎委員長 それでは小平質疑を続行願います。     〔発言する者多し〕
  17. 成田知巳

    成田委員 どうも大蔵大臣の今の御答弁を聞くと、私たちは納得できない。こういうものは大体英語でやるとか、ワシントンでやったから英語でやりましたとか、そんなことで一億一千五百万ドルという借款を取り扱っていいのですか。ワシントンでやろうが、日本でやろうが、日本でやったら日本語でやるのですか、英語でやらないのですか。しかも大体なんというのは、いかに自信がないかということを証明している。従ってもし日本語原本がないというならば、これは政府手落ちなんです。大体こういうことは英語でやるとか、これがワンシトンでやったから英語でやったとか、そんな不見識なことがありますか。
  18. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは繰り返して言うように、政府がやったことではないのであります。いわゆる民間機関がそれぞれの立場で取りきめをするのであります。私は大体と言いましたのは、国際的に英文と私は思いますが、そうでないのも民間のことですからあり得るかと思いまして、さよう申したわけであります。
  19. 江崎真澄

    江崎委員長 それでは酒井政府委員から補足してこの問題についての説明をさせます。
  20. 酒井俊彦

    酒井政府委員 お答えいたします。ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたように、かような民間同士銀行間のこういう取りきめは、大体英文で作られるのが普通でございます。政府関係をいたしまして政府借款であるというようなことになれば別でありますが、これは正文英文でございます。英文以外にございません。日本語で書いたものに署名したものはないのでございます。そこで急いで訳をつけましたので、まあ仮訳というのはなんでございますが、一応そういう名前をつけたわけでございます。
  21. 江崎真澄

    江崎委員長 お聞きの通りでございますから、御了承を願います。小平君、質疑を続行願います。     〔「だめだ」「了承できない」と呼び、その他発言する者多し〕
  22. 成田知巳

    成田委員 今、民間機関と言っておられますが、日銀政府関係機関ですよ。純然たる民間機関ではない。それを民間貿易会社と一緒に取り扱うところに問題があるのじゃないか。その手落ちをお認めにならないのですか。
  23. 酒井俊彦

    酒井政府委員 これは日本銀行アメリカ輸出入銀行との契約でございまして、これは英語原本ができております。英語でサインして、それ以外に原本はございません。
  24. 成田知巳

    成田委員 今度の約定について、日本語原本がないということは、私はまことにおかしいと思うのです。その理由としては、今の政府委員答弁でも民間銀行間の契約だから国際慣例だ。しかしながら今度の契約日本銀行なんです。本来はここにも差異がありまして、当然政府政府借款の形でやらなければいけないものを、岸さんがアメリカにおいでになっていつの間にやら話をつけられて、日本銀行というところに持っていった。しかも日本銀行は単なる民間銀行じゃないのです。政府関係機関なんです。しかもその内容たるや、一億一千五百万ドルという額が借款になった。こういう重大な契約をやるのですから、これを単に国際慣例の大部分はそうだというようなことではなしに、性格からいきましても、これを重大視しまして、間違いのないように英文和文両方原本を作るのが当然だと思うのです。これに対して総理はどうお考えになりますか。日本銀行はこれだけ大きな借款をやっておる。しかもアメリカ英文だけなんです。ワシントンでやったからとか、国際慣例が大体そうだから、そういう不明確なことでは私はだめだと思います。当然今後政府としてはこういう問題については日本語原本も作る、これだけの御確約があってしかるべきだと思います。現在ないというならば、ないものを無理に出せとは言いません。しかしながら、今後こういうことはやらないように、正確を期していただきたい、こう思うのですが、総理の御意見を伺いたい。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 今日、御承知通り国際取引関係も非常に緊密になっておりますし、広く日本経済活動産業活動、あらゆる面において、外国との関係も以前と違って非常に密接な関係にあることは、成田委員も御承知通りであります。しこうしてこれらのもののうち、政府政府関係は、あくまでもこれは国対国として従来の慣行もありますし、また私は十分国立場から、正文につきましても日本語正文をつけることはこれは当然であると思います。しかし民間関係におきましては、やはり国際慣行があり、一般取引状況というものを見て、適当な方法がとられることが、私は今日の、また今後の国際経済界の緊密な関係から見て、当然ではないかと思う。今成田委員は、日本銀行というものの特殊な立場、及びこの金額等についても相当多額なものであるから、こういうものについては考えろというお話でございますが、やはり日本銀行というものが向う銀行との間に取引するというのは、これは一つ国際的の取引関係として、国際的一般慣行に従うということは当然ではないか。金額の点につきましても、ずいぶんこれから民間会社その他商行為として大きな額の取引も私は行われることだと思いますが、やはりそれは今申したように、国際慣行に従ってやっていくということで決して間違いも生じないし、心配ない、こういうふうに考えております。
  26. 成田知巳

    成田委員 今度のものは単なる民間借款じゃないということです。日本銀行性格からいってだけじゃなしに、今度の借款内容からいきましても、一億一千五百万ドル日本銀行借款して、それを政府がまた食管特別会計に借り入れているのです。単なる民間間の商行為じゃない。国の財政に影響しておる。従って国民経済に影響しておるのです。こういう問題を単なる民間会社商行為として同じような取扱いをするということは私たちは納得できない。日本語原本を作ることはどれだけ手間になるのですか。そのために非常に商取引がおくれるというならば別です。性格からいきましても重大な問題ですし、日本語原本を作ることはどれだけ商取引障害になりますか。非常に障害になるというならば私は考えますよ。しかしながら障害にならないじゃないですか。英文を作るときに日本語を作る、それを交換するだけじゃないですか。事実関係日本国民に明らかにする上において、日本語原本を作ることは私は決して障害にならないと思う。従って今度の問題については、日本銀行であるという点において、それから借款内容の点において国の財政関係がある、こういう点から考えまして、原本を作るのは当然だと思いますが、もう一度お考え直し願いたいと思います。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは先ほどからしばしば申し上げますように、インターバンクの問題と考えていいのであります。たとえば綿花借款をする場合におきましても同じような方法がとられております。あなた方は国の債務であるようにお考えになって議論をなさるから非常に事がむずかしくなると思いますが、そうじゃないので、これはくれぐれも申しますように、日本銀行におきまして当時の外貨事情もありまして借款をしよう、それで借り入れをした、これはインターバンク取引考えても今日の国際的な取引から見れば間違いないのであります。従いましてそういう慣行によるということはよろしい、かように考えております。
  28. 成田知巳

    成田委員 あまり時間をとりましてもあれですから……。あとでこの問題については同僚議員から発言があると思いますが、国の債務でないと言っておられますが、この英文を見ましても、一萬田さんは日本大蔵大臣萬田尚登としてアシュアランスを与えている。この約定に基くドルは期間内に必ず返済いたします、十三項にこういうアシュアランスを与えている。文章も出している。この内容については私は論議いたしません。しかしながら必ず払わせますといっている。これが保証債務でなくてなんですか。あなたたちアシュアランス確証と訳している。そういうところに問題がある。前提が全然食い違っている。私たち保証と見ている、あなたたち保証でないと言って言いのがれをしようとしている。そういうところに重大な問題があるから、少くとも原本日本語でやるべきだというのが私の意見なんです。そういう点、総理にもう一度僕は御再考願いたいと思います。総理大臣にお願いいたします。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私のアシュアランスの点について、重点でありますから、一応私から答弁いたします。何も日本銀行債務政府でもって支払ってやるという保証一つもしておりません。御承知のように日本銀行は円でありますから、アメリカ借入金ドルでもらったのを払う場合にはドルで払わなければならない。円では向うは受け取りませんからドルで払う。そのドルで払うようにしてやるということだけを言っているわけであります。その債務日本銀行ドルでお払いになるような状態にしてあげる、こういうことであります。何も債務保証でも何でもありません。
  30. 江崎真澄

    江崎委員長 成田君の発言に関連して柳田秀一君より同様発言を求められております。これを許します。柳田秀一君。
  31. 柳田秀一

    柳田委員 今成田君も言われましたように、あなた方はこれをバンク同士の取りきめだと言う、われわれはこれを保証と見ているのです。この仮訳の十三、アシュアランスをあなた方は確証と訳している。われわれは保証と訳している。保証となるとまた問題になるので、なかなか深謀遠慮に確証と訳しておられますが、「本取極第三正項の規定に従って米国商業銀行との取極を成立させる前提条件として、貴行は、当行に対し、」貴行というのは日銀です、当行というのはアメリカ輸出入銀行です、「(a)日本政府大蔵省が、貴行が本取極を締結することを是認し、且つ貴行が本取極に規定する債務を引受けることを認可せることを証した当行を満足させるにたる証明書、及び(b)日本政府大蔵省が、本取極により融資される信用状に基き振出された引受済手形の期日における支払のため、米弗を使用させることにつき当行を満足させるにたる確証提出するものとする。」一萬田さんはここにサインをしてヒサト・イチマダ・ミニスター・オブ・ファイナンス・ジャパ二ーズ・ガヴァメントとちゃんと出しておる。ところがこれについては、われわれに対してはこういうような英語だけ来ている。われわれは英語はチンプンカンプンでわからない。やはりわれわれが国会で論議する以上はこの問題点は明確にし、不明確なところは、なお十分に明らかにするためには、やはり日本国会ですから、当然日本語でわれわれに資料を出してもらわなければならぬ。われわれはアメリカ国籍があるわけじゃない、アメリカの人間じゃないわけですからこれでは審議できません。一番最初にきめたものについて、これだけなんです。これに対する訳文を提出になるまでは、われわれは審議することができませんから、どうぞ一つ政府の方で御善処あらんことをお願いいたします。
  32. 江崎真澄

    江崎委員長 柳田君にちょっと申し上げますが、それは資料要求されて、その訳が出ないうちは小平君の質問に入られない、そういう意味ですか。
  33. 柳田秀一

    柳田委員 そうです。
  34. 江崎真澄

    江崎委員長 ただいま要求の資料は直ちにお配りするそうでございまするから、すみやかに審議に入られんことを望みます。  ちょっと速記をとめて……。     〔速記中止〕
  35. 江崎真澄

    江崎委員長 速記を始めて……。  それでは願います。質疑を続行いたします。小平忠君。
  36. 小平忠

    小平(忠)委員 昨年の八月十六日にワシントンにおきまして、ワシントン輸出入銀行日本銀行との間に一億一千五百万ドル農産物借款協定をいたしておるわけであります。一体この協定は日銀法第何条の規定に従いまして、日銀がこのような借款をされたか、まずお伺いをいたしたいのであります。
  37. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは日本銀行法に基きまして輸出入銀行にいたしたものであります。むろんこれには大蔵大臣の認可が要ります。
  38. 小平忠

    小平(忠)委員 日銀法第何条の規定によってされましたか聞いております。
  39. 酒井俊彦

    酒井政府委員 お答え申し上げます。日本銀行法二十七条に基いてやった行為でありまして、こういう行為をすることについて、日本銀行大蔵大臣の認可を受けるということになっております。
  40. 小平忠

    小平(忠)委員 日銀法二十七条にはこう書いてある。「日本銀行ハ本法二規定セザル業務ヲ行フコトヲ得ズ但シ日本銀行ノ目的達成上必要アル場合二於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限二在ラズ」これです。私はただいまの答弁について、日銀法の日銀の業務になきことを主務大臣が認可を与えたということは重大な問題だと思う。大蔵大臣はこのような日銀アメリカ銀行借款をすることについての許可をいつ与えましたか。
  41. 酒井俊彦

    酒井政府委員 これは私からお答え申し上げます。昨年の七月三十日に与えております。なおそれ以前に普通の綿花借款と申しますか、これもこの規定に基いてやっております。
  42. 小平忠

    小平(忠)委員 この問題について非常に重要な問題点が含まれております。というのは先ほど答弁なり、昨日の答弁によりまして、主計局長は単なる日本の従来の農産物の輸入——余剰農産物にあらずして一般の農産物のように解釈されております。農産物の輸入、その実態についてはその形式は変らないでしょう。しかしながら代金決済の方法においてワシントン輸出入銀行から綿花を含めて一億一千五百万ドル借款をしている。ここが違うんです。これについて日銀日銀法二十七条の主務大臣の認可を受けて借款をしたんだ、これは法的に誤まっていないと思います。しかしながら私は法の解釈もここまで悪用されるならば、これは重大な問題だと思う。これは乱用です。金額が一億一千五百万ドル日本の円貨にして約五百億、これが一千億、二千億、一兆になったらどうするのです。金額によって制限するのですか。そういう規定がありますか。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この当時日本外貨事情が急激に悪化いたしまして、外貨を補充する必要が急であったことは御承知通りでありますが、この際におきまして、日本銀行ワシントン輸出入銀行において借款が一億一千五百万ドルできるということは、私はかれこれ言うべきことではない、むしろ日本としては歓迎すべきことであると思う。ただ御承知のように、輸出入銀行は単に借款をするということはしないのでありまして、必ずアメリカのものを輸入する、その場合において日本の最も——当時それなくしては新たに外貨を持ち出して買わなければならぬという農産物についての輸入ということも私は非常に至当なことであると思う。これについて日本銀行がこういう借款契約し、大蔵大臣が許したということは何ら誤りではないと考える。
  44. 小平忠

    小平(忠)委員 それは日本銀行の目的の第一条に、金融の調整という日銀のいわゆる目的があります。金融の調整につきましては、これはそこまで拡大解釈をされますと、私はずいぶん越権だと思う。そこで問題は、この基本契約を締結された第十三項です。十三項によって御承知のように大蔵大臣アシュアランスを与えている。あなたの方のこの翻訳には確証とありますけれども、通常アシュアランスの解釈、翻訳保証なんです。じゃ保証確証がどう違うか、われわれの常識では、保証を積み重ねたものが確証というふうに解釈する。大蔵大臣この保証確証はどう違うのですか。
  45. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはまた英語の専門家を呼んでもいいですが、保証の場合はギャランティという言葉を使っております。アシュアランスの場合はこういうことを確認する。認める、ごく通俗に言えば、御心配なくいけるでしょう、こういうような意味になる、かように御承知願いたい。
  46. 小平忠

    小平(忠)委員 それは一萬田大蔵大臣なりの解釈なんです。保証確証かの問題の議論は見解の違いになりましょうから、これは私はこのくらいにしておきます。そこで問題は、この基本協定十三項の規定によりまして、大蔵大臣が外貨予算に一億一千五百万ドルの、いわゆる予算を計上して、期限内にこれの支払いをするという保証を与えている。明白じゃありませんか。あなたが大蔵大臣萬田尚登の名において、上記契約の第十三項に関連して、下記の署名者日本政府大蔵大臣は、上記契約書に基いて融資された日本銀行引受債の手形の元利をすべて期限通り支払うために必要な金額の米ドルを、必要な時期に使用可能にすることをここに貴行に対して確証します。これは明確な保証です。この条項によりまして期限が一九五八年三月三十一日、本年の三月三十一日が期限です。もしこの期限内に支払いができないような場合にはどうするのです。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは支払い保証でないことはもう今お読みになった文章からもきわめて明白であります。日本銀行は円は持っておるが外貨を払う場合は、今日の為替管理法の関係から外貨予算に組んで、そのうちから払わなくちゃなりません。それですから、アメリカ借款を払うのに、円ではできぬということは常識じゃないか、これはドルで払わなくちゃならぬ。そのドルで払うような状態にしてあげるということを確認しておる、こういうことです。
  48. 小平忠

    小平(忠)委員 円で払えない、ドルで払うのは当りまえ、それなら何も確証は全然要らないじゃないか。結局これはドルの支払いについて大蔵大臣保証しておるということなんです。そのことは、もし払えなくなったならば大蔵大臣が、即日本政府保証をしていることなんです。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今申しましたように、支払いについては外貨予算に組まなくちゃならぬ。その外貨予算に組んであげる、これは大蔵大臣の権限でできることです。
  50. 小平忠

    小平(忠)委員 それを聞いているんじゃない。もし支払えなくなった場合にどうするのです。そのことは明確に大蔵大臣保証した限り、確証した限りにおいて責任があるじゃないか。
  51. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは支払い能力という問題よりも、どういう通貨で払うかというその形の問題なんです。日本銀行は払う能力を十分持っておるから、また日本銀行御自身も外貨を持っている。自分で払おうと思うならば二億以上持っている。そんなことは心配ないのです。ただ外貨予算に組むという形の問題なんです。
  52. 小平忠

    小平(忠)委員 この協定前文の中で、十三項の規定は大蔵大臣アシュアランスを与えることが条件なんです。これがなければ借款ができないのです。どうなんです、これは。そんな軽い問題じゃないです。
  53. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは何だか非常に悪いことをして、なるべくこういうものができない方がいいというようなお考えなら別です。しかし当時の日本状況からいたしまして、この借款をすることが非常に必要でありました。そういうふうな見地からこれは考えなくちゃいかぬと思います。     〔「いいとか悪いとかの問題じゃない」「連帯保証じゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  54. 江崎真澄

    江崎委員長 御静粛に願います。
  55. 小平忠

    小平(忠)委員 大蔵大臣、そう興奮しなさんな。何もあなたがいいとか悪いとか言っているのではない。私は法的根拠、協定の基本的精神を伺っておるのです。この協定の十三項の規定は、あなたが日本国の大蔵大臣としてアシュアランスを与えなければこの協定は成立しないのです。連帯責任じゃありませんか。日本銀行がいかにあなた方の見解では民間団体といいながら、日本銀行はりっぱな政府機関的な性格を持っている。そのものがアメリカ輸出入銀行とこのような一億一千五百万ドル借款協定をしている。それはあなたがアシュアランスを与えたからできている。それは責任ないのですか。     〔「連帯責任じゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  56. 江崎真澄

    江崎委員長 御静粛に願います。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから申しますように、今日の情勢からして外貨の充実が非常に急務であったから、それは私はこの借款ができることを希望して、そして認可することは間違いないです。
  58. 小平忠

    小平(忠)委員 外貨の逼迫からいわゆる一億一千五百万ドルについてそのような配慮、そういうことについて云々しておるのじゃありません。私は少くともアメリカ輸出入銀行日銀との間に農産物の借款協定を締結するのに全然国が関与してないのだ、これは民間がやったのだといって言いのがれをされますから、これは明確に大蔵大臣が関与しているじゃありませんか。大蔵大臣がいわゆる米ドルの支払いについてアシュアランスを与えておる……。
  59. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは先ほどから申しますように、むろん外貨情勢が悪いのだから、日本銀行としても通貨価値の安定の上からこの際外貨を強化したい、これは大蔵大臣も同じ気持です。そういう相談があったときにそれはよかろうといって認可を与える、そういう意味において大蔵大臣が関与しておることは私は間違いないと思います。何もそういうことをしないというのではありません。それからその後の問題は、銀行というものは、御存じのようにものごとの運びを非常にかたくかたく持っていきますから、日本には為替管理法という法律があって、外貨予算というものを組むような形になっておるので、償還期日に日本銀行が払うという場合には、外貨予算にそういうものを乗せて払うようにしてほしい、それを確認してほしい、こういうことなのですから、もっぱら商行為です。たとえば綿花借款をした場合でも同じ手続をとってやっているわけであります。
  60. 小平忠

    小平(忠)委員 総理大臣にお伺いしますが、このような輸出入銀行日銀との間に基本的な協定を締結して、大蔵大臣日本国を代表して米ドルの支払いについてアシュアランスを与えている、この事実に対して総理大臣は全然国は関係ないんだ、こうお思いになりますか。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 問題は債務そのものの連帯保証をするとか、保証債務を負っておるかどうかという問題については、私は負っておるものではないと思う。今のアシュアランスという問題は御承知通り為替管理法という法律があって、為替管理法上たとい債務者が支払い能力を持っており、支払いの意思があっても為替管理法上の手続を政府が握っておるわけですので、大蔵大臣としてはその点に関してのアシュアランスを与えておるだけでありまして、決して債務そのものの支払いを連帯してやるとか、主たる債務者にかわってこれを保証するという性格のものではないのであります。
  62. 小平忠

    小平(忠)委員 しからばこれはあくまでも政府関係をしていないと大蔵大臣総理大臣考えていないわけですね。政府は関与していると解釈してよろしゅうございますね。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 そういう場合に為替管理法上の許可を与えるということについて、政府があらかじめ意思を表示したことは確かです。しかし債務そのものに保証を負っておるという意味においては政府は関与いたしておらないのであります。
  64. 江崎真澄

    江崎委員長 小平君ちょっと申し上げますが、もうすでにだいぶ申し合せの時間を経過しておりますから、一つ論旨をお進め願いたいと思います。
  65. 小平忠

    小平(忠)委員 わかればいいのですから……。そうしますと政府は本件に関して連帯責任を持っておると考えてよろしゅうございますか。ありませんか。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 今明確に申し上げましたように、債務保証という意味において政府は何ら関与いたしておらないのであります。
  67. 小平忠

    小平(忠)委員 債務とか何とかと、そんなことを聞いておるのじゃないのです。あなたは今為替管理法上の義務を負う、履行するためにいわゆるアシュアランスを与えておるのだ、こうおっしゃったですね。そうしますと国は全然関与してないのじゃなくて、関与しておるのは事実だ、そうすると本協定の成立の要件に国は関与しておるのであるからして、もしや支払いができなくなるとかという場合には連帯責任を持っておるか持っていないかを聞いておる。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 毎々言っておる通り、連帯してこれを保証しておるわけじゃありませんし、また保証債務を負っておるわけでもありませんから、国が支払いの義務を持つわけでは絶対にありません。
  69. 小平忠

    小平(忠)委員 問題はそこです。どうしてあなたはそういう解釈ができるのです。この十三項の規定なりあるいは法律意見書の内容なりを見て、特に大蔵大臣がこのアシュアランスを与えた。この和文翻訳内容を見ましても、これは明瞭に連帯債務を負うのではありませんか。一体どこが違うのですか。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 私はきわめて明瞭だと思うのです。債務者が支払いをする場合においては、御承知通り、為替管理法によって許可を受けなければならぬ。これは大蔵大臣の権限でやるわけです。それを、むしろこの場合においては、そういう要件が備わってくれば許可しますぞということをあらかじめ大蔵大臣が言うたというだけのことであります。国家はそれ以上の債務は負っておりません。
  71. 小平忠

    小平(忠)委員 これはきわめて重大な問題で、この期限通り支払いするために、必要な金額の米ドルを必要な時期に支払いすることを確約している。こういう重要な問題について、あくまでも国は関係ないんだというようなことは無責任きわまる話であります。私はこの問題を保留いたしておきます。  同時に、先ほど関連質問で成田柳田委員から指摘いたしましたように、単なる民間側の借款協定に基くいわゆる交換公文の取引について、英文のみという慣例は、これはある程度今までの通商慣例があったでしょう。しかし、少くとも日銀がタッチするような、国がタッチするような重要な問題については、一般条約、協定同様に、日本国の体面を保つ上からも和文英文を交換するだけのことはぜひやるべきであると考えます。同時に、あなたは今このドルのことについてきわめて簡単な解釈をしておりますけれども、これに関連しまして、今日日本政府が外貨の問題についていかにでたらめな処置をしているかということについて私は憤りを感じておる一人であります。そのことは、例のアラビア石油会社の問題であります。本件については先般与党の川崎委員からも指摘されましたけれども、このアラビア石油会社の問題で当面必要とする外貨は十六億ドル内外だと大蔵大臣はおっしゃいました。ところが、あのアラビア石油会社の問題は、石油の層があるかないか調査するだけで二カ年を要します。この二カ年の間に四十四億の外貨を必要とする。もしなければ四十四億の外貨をふいにしてしまうのです。こういう問題を閣議で了承しておるのではありませんか。特に、ここに外務大臣がおられるから私は伺いたいのでありますが、最近の中近東の情勢はどうなんです。さらに、アラビア石油会社の問題は単にサウジアラビア政府だけの問題ではないのです。対クエート政府との交渉が最近は行き詰まっているのではありませんか。それに、アラブ連邦成立に伴うところの最近の国際情勢はどうなんです。外務大臣に特に最近の中近東の情勢を伺いたい。
  72. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り、シリアとエジプトとが最近合邦することになりまして、その手続を進めております。二十一日に大統領の選挙が行われ、二十二日以後新しい国家が誕生することになっております。また、イラクとヨルダンにつきましては、両王室が話し合いをいたしまして、最近連合することになっております。この性格はまだ必ずしもはっきりいたしておりませんけれども、しかし、外交に関する権能その他につきましては、統一的な政府によってこれを行う、また、主権者としてはイラク及びイラク国王がなり、イラク国王不在のときはヨルダンの国王がなる、首都につきましてはアンマンとバクダットとが六カ月ごとに交代して首都と定めるというようなことであります。これら両国の関係につきましては、まだ最終的な決定がございませんので、私どもも十分そういうことに対して注意して参りたいと思っております。お話のように、これらの四カ国がそれぞれ二カ国に一緒になる、その状況は、御承知のように、過去におきますアラブの大同団結というような大きな機運から醸成されてきておることとわれわれは考えております。アラブの大同団結というものは、御承知のようにアラブが植民地主義から解放されて、そうしてアラブ全体が一致してアラブ民族の独立と繁栄をはかろう、こういう機運から出ております。ただ御承知のように、それぞれの政体が違っております。共和制のところもあり、王制のところもある。従って、そういう状況につきましては、アラブの大同団結といいましても、個々のいろいろの立場から見まして、理想としてはアラブ全体が一つになることを理想としておるようでありますけれども、しかし、その過程においては、今申し上げたように、エジプトとシリアの合邦という問題がある、あるいはイラクとヨルダンの両王室の話し合いになるというような状態で現在推移してきておると思います。このこと自体は、いろいろな問題を起しております中近東がおのずからアラブの意識のもとにだんだん安定し固まっていく方向にある、一方ではアメリカを控え、西欧を控え、一方ではソ連を控え、その中間における非常に困難な立場を自分たちの力でもってだんだん固めていこうという動きだと思うのでありまして、そのこと自体はアラブの将来の安定という方向に向っていくのではないか、こう考えております。
  73. 小平忠

    小平(忠)委員 外務大臣の最近の中近東における、特にアラブを中心といたしました問題についてのいわゆる分析については、また私は私なりの意見を持っております。しかし、私はそういうことについての問答をするために聞いておるのではない。これはそもそも農産物の輸入借款に関連し、外貨の問題に関連するから聞いたのです。  私は総理大臣にお伺いしますが、二カ年間に石油の層があるかないか——ペルシャ湾の海底であります。これに対して石油の層を探鉱するのに四十四億の外貨を必要とします。こういうものを政府が一片の閣議了解できめるということは、政府みずからが大ばくちをやっておる、こう申し上げても過言ではないと私は思う。この点はどうなんですか。このアラビア石油会社設立については、日本の財界五十六社が参加して、特に経団連の会長石坂さんがこのアラビア石油会社の会長、日本輸出石油会社の山下さんが社長、こういう形で、鉄鋼、電力、石油あるいはガス等々、日本の財界がほとんど網羅されておるような形において、すでに二月の五日に創立総会を終り、二月の十二日に五十五億に及ぶ払い込みを完了いたしております。授権資本が百億でありますが、このペルシャ湾の海底の石油を掘るとなれば、百億やその程度の資本金でやれるかどうかということを考えてみるならば、これは政府が相当バックしなければできない。しかし、日本の現在の外貨事情その他から言って可能かどうか、私は総理大臣の見解をこの際承わっておきます。
  74. 岸信介

    岸国務大臣 石油問題につきましては、石油資源の貧弱である日本としまして、従来とも長い間国としましてもあらゆる努力をいたしてきておることは御承知通りであります。国内における石油資源の開発のために相当な金を出して試掘を奨励しやっております。同時に、海外における石油資源の確保の問題も、日本だけでなしに世界の有力国が競うてこれに力をいたしておることも御承知通りであります。しかも、日本の石油関係の輸入を見ますと、年々、非常な大きな外貨を支払わなければならない状況でありますとともに、日本の将来の産業の発達及び国民生活の向上から見ますと、この石油の使用量というものは将来に向って相当大きなものがあること、これが同時に、国際収支の上から言いますと、今申し上げるように国内資源が貧弱でありますから、相当な負担になることも考えられることでございます。こういう際におきまして、いろいろ海外における資源を確保して、円でもって持ってこれるというようなことにすることは、長い目で見て国際収支上に望ましいことであり、またそういう努力なり民間の意欲というものに対しては、私は、政府としてもこれに対して好意的な立場をとるということも、これも当然なことであると思うのです。  ただ、石油問題については二つの大きな問題があると思う。一つは、日本がそういう海外の資源を確保する上におきましては、すでに英米初の先進国が手をつけておりますので、これらの方面からいろいろな故障なり反対等がる。そういう故障や反対等を押し切って、日本がいかにしてこれを得るかという問題が一つと、それから、石油そのものの事業の性質上、これは出ておる油井なら別ですけれども、新たな資源開発ということになりますと、それがどれほどの確率があるかという問題がもちろんあると思います。従来ですと、あるいは三十本、四十本と掘ったうちで一本しか当らないとか、あるいはそれ以上のなにがあるとか、最近の電気探鉱その他の科学的探鉱の面から言って、相当に確率もよくなっておりますけれども、それでもなおこれが出るか出ないかということは、掘ってみなければわからないという問題がある。しこうして、今問題になっておるペルシャ湾の問題は、ちょうど南の方においては、すでにペルシャ湾の中においてアラムコが利権を持っておりまして、これが採油いたしております。北の部分においきましても、すでにイギリス系のなにがこれを採油しておる。その中間地帯であって、中間地帯であるために、サウジアラビアだけではなしに、クエートと両方の許諾がなければ利権が得られないという地域であります。しこうして、それを掘ってみて果して出るか出ないかということは、今言ったように、やってみなければわからない危険性のある問題であることは事実であります。しかし、それについては、いろんな石油の専門家がそこを調べておりますし、今言ったような、ペルシャ湾のちょうどその地域を差しはさんで両方から出る。両方ら出るということは、当然中からも出る、これは常識的に考えられますが、もちろんそう簡単なものじゃない。これは科学的な試掘をしてみなければわからない。そういう点はちょっと問題が存しておる。しこうして、問題は、今の段階におきましては、今までのわれわれの聞いておる限りにおきましては、サウジ・アラビアの方の話は大体ついておる、目下クエートと交渉中である。これに対してはいろいろ従来利権を持っておる会社等からの相当な故障、横やりが入っておるということも私ども聞いております。しかし、考えようによっては、横やりが入っておるということは、これらの地域が相当有望な地域であるがゆえに何されるとも考えられる。これは掘ってみなければわかりません。  そういう事態にあることであって、国家としては、いろいろこのほかにイランの問題もありますし、あるいはインドネシアの賠償で、平和条約ができた後におけるインドネシアの石油の問題もありましょうし、あるいは最近エジプトその他のなににおきましてもいろいろな話があることも御承知通りであります。これらの関係に処して、民間がそういうふうな、やるという場合におきまして、政府が好意的な立場に立つということは、私がさっき申し上げたような根本からさように考えております。しかし、いろいろな外貨事情というものも考えなければなりません。また、そのもののプロジェクトの合理性という——これは、石油の問題につきましては、さっき言いましたように根本的な不安はもちろんどこでもあります。ありますけれども、いろいろな科学的の専門家の調査その他におけるある程度の合理性というものを政府としても考えなければならぬ、こういう状態であると私は考えております。
  75. 江崎真澄

    江崎委員長 河野密君より関連質疑を行いたいとのお申し出があります。これを許します。河野密君。
  76. 河野密

    河野(密)委員 先ほど小平君が提議をいたしました問題について、大蔵大臣総理大臣から御答弁がありまして、一応何か解決がついたようなつかないような関係でありますが、私はこの点だけに限りまして一つ簡単にお尋ねしたいと思います。  先ほどからの答弁を承わっておりますと、日銀アメリカ輸出入銀行との間における協定であるから、大蔵省はこれに対して何らの債務的な責任を負うものではないのだということが答弁の趣旨でありまして、その裏づけといたしまして、総理大臣先ほど、外貨の割当をするということの責任だけを負うておるのだ、こういうことを言われました。そういう見解を表明されたのでありますが、実は、そういう見解は、総理大臣の見解でも何でもなく、向う側に通達をした林法制局長官のリーガル・オピニオンなのであります。そこで、その林法制局長官のリーガル・オピニオンが正しいかどうかということを、われわれはさかのぼってここで問題にしなければならないと思うのであります。  そこで、私は大蔵大臣にまずお尋ねをいたしますが、この翻訳と原文とを照らし合せてみて、一体日本銀行アメリカワシントン輸出入銀行における農産物に対するところの借款協定をやった者はだれであるか、これが主導的な地位に立った者はだれであるかということであります。これは日本銀行が自発的におやりになったのか、それとも大蔵大臣あるいはアメリカに行かれた岸総理大臣が計画をされて実際に行われたものであるかどうか。これが私はまず問題になる点だと思うのでありますが、これを総理大臣もしくは大蔵大臣から、主導者はだれであったかということを一つ明確にしていただきたい。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 このワシントン輸出入銀行日本銀行との借款は、これは日本銀行の主導のもとにやった借款であります。
  78. 河野密

    河野(密)委員 ちっとも明確でないのでありますが、この外国為替管理法には、大蔵大臣も御存じのように、外国為替管理のことを取り扱うのは政府である、為替管理の当局である、その事務を日本銀行に委託するのである、こういうことになっておるわけなのでありまして、先ほど大蔵大臣がしばしば言われたように、これは非常にいいことなんだ、——いい悪いはわれわれはここでは問題としていないのでありますが、外貨を獲得する一つの手段としてやったのだというのでありますから、これは日本銀行が主導的にやるべき理由は一つもないわけなんです。それを、日本銀行が主導的に発案したというのは、一体どういう理由に基いておるのですか。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この為替管理は大蔵省の所管であるが、日本銀行においてその事務を委託されてやる、それはその通りであります。しかし、為替管理は主として為替をなるべく減らさないというのがむしろ為替管理の主眼であります。そういう意味から、特に予算を組みまして、こういうものこういうものには使わない、それからまた、むろん、為替を集中するという意味から申しますれば、集中の方もやるのでありますけれども、為替管理はそういう意味合いのものであります。為替管理をやるから、日本銀行借款できない、こういうことは全然ありません。むろん、大蔵大臣の認可を受けなければならぬので、相談があることも、これも否定しません。
  80. 河野密

    河野(密)委員 日本銀行の業務から単なる外貨を獲得するというのではなく——大蔵大臣よく御存じでしょうが、よく聞いて下さいよ。その外貨は単なる外貨じゃないのですよ。アメリカ産の農産物を買うという外貨なんです。一体日本銀行が何の必要があってアメリカ産の農産物を買う必要があるのですか。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから御答弁申し上げておりますように、アメリカ輸出入銀行は単なるクレジットはくれないのであります。必ずアメリカの製品を輸入する、その決済の金としてこの借款を許す。従って、輸出入銀行から外貨で借款した場合には、何を輸入するかということは当然問題になるわけです。その場合において、食糧は日本としてはこの借款がないとすればやはり外貨を持ち出しても輸入しなければならぬという関係にあるものであります。しかも、これは食糧ですから、また民間にこれを払い下げて、それからまた金が入ってくる、こういうような償還の資源も確保されている。こういう意味合いからやったと私は考えております。
  82. 河野密

    河野(密)委員 私はそれならばまたあとでお尋ねしますが、一つ先ほど提案した、その主導者はだれであったかということが、この協定を解釈するのに非常に重大な問題だと思うのであります。この翻訳によりますと、「日本政府大蔵省が、貴行が本取極を締結するこことを是認し、且つ貴行が本取極に規定する債務を引受ることを認可せることを証した当行を満足させるにたる証明書」、こういうふうになっております。しかし、債務を引き受けることを認可せることを証明する云々ということがありまするが、この原文を見ますと、私の英語であれしましてもわかりまするように、「オーソライズド・ユー・ツー・アシューム・ジ・オブリゲーションズ・プロヴァイデッド・フォー・ヒアリン」と書いてあります。この協定に課しておる債務を引き受けるということを大蔵省が日本銀行に権限を与えて日本銀行をして代行せしむるという意味なんです。こういうことでありまして、主導者は、これによれば明らかに、先般来問題になる林法制局長官のわざわざ国際的にまで恥をかくようなリーガル・オピニオンをつけたこのオピニオンとは全く違っておるのです。そういう主導者が大蔵省であり政府である、それを代行するものが日本銀行である、こういうことがちゃんとはっきりこの原文に表われておるのです。大蔵大臣、これを一体どうお考えになりますか。
  83. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから詳しくたびたび御答弁申し上げましたように、そうじゃないのでありまして、これはあくまで日本銀行借款であります。むろんこの借款につきまして認可を大蔵大臣がするのでありますから、それについて相談がいろいある、こういうこともその通りであります。
  84. 河野密

    河野(密)委員 私は認可をするしないということを聞いているのじゃないのです。一体この実際の主体者はだれかということを聞いているのです。この契約の直接の当事者は日本銀行でありますけれども、しかし、あなたも多少法律のことは御存じだと思うのですが、その実際の主導者と、手先になってやる者と、手先になった代理者のやった行為というものはその主導者の行為になることになるのでありますが、これは一体、主導者が大蔵省であり日本政府であるならば、この責任を当然負うべきものは日本政府であり、その大蔵大臣でなければならぬことは明白ではありませんか。
  85. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはもう繰り返し申しまするように、日本銀行がこの借款をやったのは間違いないのであります。ただ、認可ということがありますから、その認可をいろいろと御解釈なら、いろいろとまた御意見もあると思いますが、実態は今申した通りであります。
  86. 河野密

    河野(密)委員 私は大蔵大臣の今の答弁ではとうてい満足することはできないのであります。それならば大蔵大臣にお尋ねしますが、日本銀行限りのものであるならば、なぜ食管特別会計に百六十億という借入金として計上したのでありますか。しかもこれは、一億一千五百万ドルという額全体から見れば、その一部分、その全体を計上しないで一部分を計上した。百六十億という食管借入金をなぜ計上したのですか。大蔵大臣、これは明確に大臣から答弁して下さい。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 詳しくは主計局長から満足のいくように答弁させてよろしいと思いますが、これはやはり、借款借入金にしておくと、返済等の期日が長期にもわたらないし、いろいろ都合がいい、こういうことから特に借入金の形式をとっておる、かように私は思っておりますが、詳しいことは主計局長答弁させます。
  88. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答えを申し上げます。全体の六千五百万ドルの中には、タバコでありまするとか……(河野(密)委員「あれは一億一千五百万ドル」と呼ぶ)それは綿花も入っております。食糧関係では六千五百万ドルであります。その中で、大豆でありますとか、そういうような食糧管理特別会計で当然取り扱わなければならぬものでありますので、小麦が四十六万トン、大麦が十八万トンを、食糧管理特別会計で取り扱いまする分を食糧管理特別会計が入れた。これを、昨日も申し上げましたように、食糧証券の形でなくして借入金の形で処理いたしておるということであります。
  89. 河野密

    河野(密)委員 いかに政府でいろいろに言われようとも、この実際の実態ということは、総理大臣大蔵大臣もよく御存じだと思いますが、実態は余剰農産物協定におけるワクがなくなって、実際においてアメリカドルの必要に迫られて、政府自身がおとりになった措置であるということについては間違いのない事実なんであります。(「その通り」)これをどんなに言いのがれようとされても、口の先や言葉の先で、政府には責任がないのだということを答弁されようとされても、実際においてこれは事実がこれを立証しておると私は思うのであります。為替管理関係の問題であるならば、単なる便宜として——便宜という言葉が悪ければ、とにかく、アメリカ輸出入銀行が裏づけのないものはクレジットを設定しないのだ、こういうことで便宜農産物というものの裏づけをもって設定したのだ、こういうのならば、何も食糧管理特別会計借入金というものを入れる必要はない。もし食糧というものが民間会社の取り扱うものであったならば、政府は一体これはほおかむりされるでありましょう。それを、食糧管理の問題があるから百六十億というものを食糧管理特別会計に繰り入れざるを得ない、得ないからして頭を出しておる、頭を出したけれどもその全体の説明がつかない、こういうことが現在の政府のあれだと思うのであります。私は、この点について、政府の問題については、主導者はだれであるか、この借款をしたところの責任——法律上の言いのがれは別として、主導者はだれであるかということ、先ほどから質問しておるのはその点なんであります。  岸総理大臣にお尋ねしますが、この借款は、実際はあなたがアメリカへ行って話し合いをし、そのあと一萬田大蔵大臣アメリカへ行って話し合いをして、それに基いた借款じゃありませんか。そうじゃないのですか。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは農産物の買い入れを特に主としてやったのではないのですが、これは非常に短期の借り入れになっております。大体余剰農産物は非常に長期のもので、積み立てられてさらに円資金として産業資金に供給されるということも一つのねらいとして余剰農産物をやっておるのですが、これはごく短期で、当時の為替事情、外貨事情が非常に悪いから、これを安定させるためには、IMFから一億二千五百万ドル借り入れましたが、なおそれだけでは安定させるに不十分だ、通貨価値安定のために輸出入銀行にこういう借款をする、ところが、当時アメリカの情勢から見ても、すぐに日本に輸入し得るものは、やはり今申したような食糧になるから、それならそれでよかろう、かようなことになっておるのでありまして、そういう点は御了承を得たいと思います。
  91. 河野密

    河野(密)委員 これから先幾ら質問しても水かけ論になりますが、その借款は三月三十一日が期限になっておりますが、これはそのまま返済するということになっておるのですか。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 返済するつもりにいたしております。
  93. 河野密

    河野(密)委員 そうすると、食糧はこれによってどのくらい輸入なすったのですか。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
  95. 小倉武一

    ○小倉政府委員 百六十億の基礎になっております食糧の輸入でございますが、大麦が約十八万八千トン、小麦が四十六万九千トン、これが三月までの見込みでございます。
  96. 河野密

    河野(密)委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、これによるとまだ一億六千五百万ドルですか、ほとんど半分以上残っているわけですね。これは使わずにそのままお返しになる、こういうことですか。
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の見込みでは、大体使い切るというような情勢であります。
  98. 河野密

    河野(密)委員 私はこれ以上質問することをやめますが、どうしてもこの点については納得がいかない。それは、大蔵大臣の再三再四の御答弁、それから総理大臣の御答弁、——総理大臣の御答弁は、先ほど私が言いましたように、これは法制局長官がつけたリーガル・オピニオンをそのまま答弁なすっておるのであるが、これではこの問題についての答弁にならないと思うのであります。私たちがなぜこれを繰り返して質問するかと申しますと、IMFの借り入れにいたしましても、エキジムからの借り入れにいたしましても、私たちは、これは当然国会の承認を得べきものである。日本銀行にこういう借款をさせるということ自身が、私は越権行為だと思う。日本銀行というものはそういうことをやるべき筋合いの銀行じゃありません。なぜ為替銀行をお使いにならないで日本銀行をしてやらしたかという問題が起る。しかも、日本銀行がひもつきの借款というものをなぜやったかということについての疑問は、依然として国民とともに氷釈することができないと思うのであります。しかも、その一部分は食管特別会計の中に百六十億という頭をちょっと出しておる。何のためにこれを出しておくのかということ自身が、依然としてわれわれの満足する御答弁になっておらないのであります。私は、この問題はなお機会があったならばいずれまた追及いたしますが、本日はこれでやめておきます。
  99. 江崎真澄

    江崎委員長 午後一時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  100. 江崎真澄

    江崎委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。小平忠君。
  101. 小平忠

    小平(忠)委員 私の質問に対しまして政府の御答弁が、満足をいたしまする答弁を得られないために、時間を相当食いました。従いまして、私は簡単に結論を得まして、私の責めを果したいと思います。  農産物借款問題につきましては、これはあくまでも私自身の考え方も、またわが社会党の考え方も、食糧は現在統制下にあります。同じ借款をいたしております綿花の場合と性質が異なります。食糧の管理のために、特に食管特別会計を設けまして処理いたしておりまするこのこと一事をもっていたしましても、現にアメリカワシントン輸出入銀行日本銀行との間の借款協定にいたしましても、大蔵大臣が関与しておるこの一時をもってみましても、これはまさに国が何ら連帯の責任を持たないのだと答弁されることはわれわれ了解できません。この問題につきましては、また場所をあらためまして政府の所信を明らかにし、あくまでも国みずからがあるいは今後の外貨の処理あるいは食管そのものの運営につきましても、誤まりのないようにいたすことが、これは当然の責務であると考えまして、これはまた別な角度から追及をいたしたいと考えるものであります。  そこで午前中に海外投資なりあるいは財政投融資、あるいは外貨処理の見地から、私はアラビア石油会社の問題を一つ例に取り上げて、政府の所信を明らかにしたのでありますが、この内容のごときは、特にこのアラビア石油会社に出資をいたしておりまする会社は全部で五十三社、個人で九人であります。この中には、現に開銀を通じて国の財政投融資を受けておるのが、電力において九社、その金額が百九十九億六千二百万円、鉄鋼においては二社でありますが、これが十二億九千万円、海運は二社でありますが四億三千八百万円、合計いたしまして二百十六億九千万円の、開銀を通じて国家の財政投融資を受けておるこれらの会社が、全く見通しも立たない、ばくちにひとしい石油会社に出資をする。私は当然、この財政投融資を受けておりまする会社につきましては、会計検査院の検査を受けることになっておりまして、会計検査院もこのような投機的な出資に対しまして、これは黙っておれないはずであります。一体こういう点に関しまして総理はどのようにお考えでありますか、伺います。
  102. 岸信介

    岸国務大臣 アラビア石油の問題につきましては、午前中にその経過並びに全体としての政府考えを申し述べておいたのであります。民間会社として、これが財界の有力会社あるいは財界の有力な人々の間において検討されて、それぞれ今おあげになりましたような、各界から出資して、二月の初めに創立総会が行われたということも承知いたしております。もちろん同時に財政投融資の関係において、直接にこれに投融資は政府はいたす意思は持っておりませんが、財政投融資を受けておる会社がこれに出資しておるのに対しての御質問であります。言うまでもなく、これらの出資しておる会社が、それぞれ開銀を通じて財政投融資を受けておりまするには、それぞれ具体的計画をもって、この遂行に必要な資金を開銀から借り入れておるわけであります。これが適当に使われておるかどうかということは、会計検査院その他の監査を受ける事項であることは当然であると思います。私はそういう意味において、これらの会社が従来ともいろいろな監査を受けておりますが、そういう関係にこの場合においても立っておるわけであります。政府はそれを特に手かげんするというような意思は、毛頭持っておりません。
  103. 小平忠

    小平(忠)委員 私はこの際、総理大臣あるいは大蔵大臣に重大な警告を発しておきたいのでありますが、先般川崎委員の質問に答えて、本件について大蔵大臣はこのような答弁をされておる。「私が今承知いたしておりますことは、とりあえず外貨送金は油の層があるかないかという調査をするその金、これはそう大きなものでない。その送金だけは一つやる。これは民間が金を持っておるのですから、そういう程度の外貨を送らせることによって支障を来たすことはなかろう。」そうしてその送金はどのくらい要りますか、とただしたのに対して、さしあたり十六、七億です、と答えておるのです。ところがこれはニカ年で探鉱段階に四十四億の金が必要であります。あなたは大した金ではない、民間のことだから、それはいいのだ。しかし民間といえどもこれは外貨を使う。同時にこの金はただいま申し上げたように、財政投融資を受けておる会社などが、この会社に、アラビア石油会社に出資をしております。ですからこういうような考え方で、私は今後このアラビア石油会社の運営に政府が閣議で了解を求めて、もし一歩誤まるならば、これは大へんなことになると思うのです。ですから十分に運営を誤まらないように、むしろわれわれ念願することは、もう少し中近東の情勢も落ちついて、見通しがはっきりついてからやることが正しいのじゃないかということを私は申し上げて、この問題を打ち切ります。  同時に、財政投融資に関連いたしまして、私は政府の御答弁を承わっておりますと、三十三年の予算規模の総額において一千億の増も、先刻いろいろ質疑を通じて明らかになったように、食管会計一つ取り上げてみましても、これは相当赤字を余儀なくされますから、これは特別会計からの繰り入れと、いわゆる予算的、法的措置をしなければならぬというようなことが必至でありましょう。従ってこの一点だけみましても、一千億のいわゆる増額額というものはくずれておる。財政投融質におきましても、きわめて放漫財政であります。ただいま総理大臣は開発銀行の云々とおっしゃいましたけれども、開銀におきましては、昨年の二百五十億に対して、三十三年は三百二十五億、七十五億の増額を見込んでおります。このようにきわめて無定見な中に今後いろいろ問題が起きてくるのでありますが、特に食糧問題一つ取り上げてみましても、国が一体本気になって国内のいわゆる自給度を高めるという考えがあるか。私は北海道の例などをとって申し上げることは、きわめてこれはどうかと思いまするけれども、卑近な例を申し上げてみますれば、北海道の総合開発は、戦後の国の最大重点施策の一つとして取り上げられたのです。私があえて申し上げるまでもなく、これは未開発資源が、内地の本州、四国、九州に比べて北海道は無限の資源を包蔵している。これを開発することが日本の食糧問題の解決、人口問題の解決のかぎを握っているんだと、これは政府が力説されて参りました。ところで昨年の十二月二十七日の閣議において、北海道総合開発第二次五カ年計画を決定されております。その内容を見ますると、昨年、学識経験者も、われわれも超党的に参加いたしておりまする北海道開発審議会で審議いたしましたその答申の趣旨を根底からくつがえして、きわめて抽象的なものにしてしまっておる。この問題について、特に戦後重要施策として取り上げておりまする食糧問題の解決ということだけでもきわめて重要な問題でありますが、これを担当いたしておりまする北海道開発庁長官である石井総理の所見を、この際承わっておきたいと思います。
  104. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えします。第二次五カ年計画が策定され、この間政府で決定になったのでありますが、今のお話では、北海道開発審議会において論議していただきましたものを根本的にひっくり返したようなお話に聞えましたが、北海道開発審議会で審議されたものを根本といたしまして、その趣旨を十分に生かしてこしらえ上げたものだ、そうして閣議の決定を得たのだと思います。ただ資金の面等におきまして、それから国家の持ち出す金の面におきまして、はっきりしたものを出しておりません。ただ資金は大よそこのくらい巨視的に見れば要るということにしておりますのは、これは五カ年のうちにいろんな変遷もありましょうが、その間に一番北海道の開発に必要だという線を出しながら、予算を毎年組んでいくということでありまして、ことし、三十三年度の組んだ予算も、この心持を十分に入れて、御趣旨に大体沿った案ができ上っておるということを申し上げます。
  105. 小平忠

    小平(忠)委員 石井さん、担当大臣としてこれは非常に重要なことなんです。というのは、第一次五カ年計画は二十七年から三十一年で終っております。この計画に対する実績は五九%。今度第二次計画こそこのような計画を一掃いたしまして、腹を据えかえてやるんだ。ところが三十三年の予算の要求に対し、計画に対し、実績はどうなんです。同時に国の新長期経済計画に合せるという理由で、三十二年度はついに北海道の開発問題については宙に浮いちゃったんです。一年ずっちゃったんですね。こういうような無定見なことだから、御承知のように、広大なあの北海道の地域に、土地改良、開拓、あるいは河川にしろ、港湾にしろ、漁港にしろ、ネズミの食いかじりのようになって、あちらも、こちらも手をつけたけれども、ほとんどそれが進捗しないという現実の姿であります。これは一方考え方によっては、その仕事は着工するけれども放置しておく。これによって起きるロス、これは全く私は国家的な一つの大きな損失だろうと思う。こういう点について、一体総理は今後この北海道の開発について、真剣になってやろうと考えるのか、それとも、まあまあ長期計画でも作っておけば、それについて場当り的にやっておけば、何とかなるというふうにお考えなのか、その点、総理はどうなんですか。
  106. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん政府として閣議決定した北海道の開発の第二次五カ年計画は、あらゆる努力をこれに傾注してその実現を期する考えであります。
  107. 小平忠

    小平(忠)委員 岸総理初め各閣僚が本気になっていないという証拠には、昨年の閣議決定のときの模様を見ますると、私はまことに遺憾にたえないことがあるのであります。ということは、あの閣議の際に書類を配付して、ろくに説明もしない。だから閣僚の中には、そんな計画があったかといって知らない閣僚さえもある。それを見ても、北海道の開発なんということには本気になっていないということは明瞭ではありませんか。特に仄聞するところによりますと、愛知官房長官は、あなたは閣議をまとめ推進する役割です。また案件によっては、みずから提案理由の説明をして、それをやるべき立場の人だ。ところが、この北海道開発問題になると、官房長官という立場なのか、東北出身の立場なのか知らないけれども、全く冷淡であったといって嘆いている人があります。これは一つの例にすぎません。こういう形で、ほんとうに北海道の開発をやれるか、食糧問題を解決できるのか、その点を私はあらためて岸総理大臣に伺います。
  108. 岸信介

    岸国務大臣 政府が誠意をもってそう実現を期するということは、先ほど明確にお答えをしておいた通りであります。
  109. 小平忠

    小平(忠)委員 私はこれで質問を終りますが、総理が責任をもって北海道の開発を推進するとおっしゃるのであるならば、ではなぜ——三十三年度の予算の編成に当って、当初の計画五百億の線はおろか、それが二百六十三億、前年度の二百三十一億に比してわずかの伸びしかありません。この数字をもってしても、いかに冷淡であるかということが明瞭であります。この問題については、また私はあらためて具体的に、国土開発委員会、あるいは一般質問等におきましてお伺いいたしますが、どうか一つ財政投融資にいたしましても、あるいは国際収支の見通しに立つところのいわゆる外貨の運用にいたしましても、私は政府答弁を伺いまして満足できる点は非常に少いのであります。どうか内外ともにきわめて重要なこの段階において、おざなり的な答弁でなく、ほんとうに岸総理がこの難局を乗り切るというならば、私は、この三十三年度の予算なり、ただいま議題とされておりまする三十二年度の補正予算についても、真剣に取っ組んで、国民の納得できる腹を示していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終ります。(拍手)
  110. 江崎真澄

  111. 松本七郎

    松本(七)委員 私は外交関係の主要問題についてお伺いいたすのでありますが、まず第一に、最近問題になりました北洋の安全操業の問題について御質問したいと思います。すでにだいぶん論議も重ねられておりまするけれども、大臣の答弁には前後する個所があり、必ずしも明瞭でない点もありますので、この機会にそういう点を明らかにしていくと同時にこれに対する政府の方針についていろいろお伺いしたい、こういうわけであります。ただ大臣の答弁が前後しておるとか、そういうことを追求するのが目的ではなしに、私ども党の代表が昨年ソ連を訪問しましたとき、この零細漁民の問題についてはずいぶん時間をかけていろいろ話し合ったわけです。ですから私どもも私どもなりの観測なり見通しなり判断を持っておるわけですが、何とかしてこれは安全操業の問題を見捨てるのじゃなしに、解決に持っていきたいという熱意は持っておるわけですから、本日は一つそういう問題を中心に、私も観測などをざっくばらんに申し上げて、何かいい方法を見つければと、こういう気持で御質問したいと思うわけであります。  最初に、すでに新聞でいわゆる安全操業の問題の内容は、大体報道されておるのですが、その新聞の報道も多少食い違っておる点もございまして、必ずしもはっきりいたしませんので、まず最初に、特に昨年六月三日に門脇大使がグロムイコ外相を尋ねて出した日本の要望の内容と、これに対する今度はグロムイコ外相を訪問した内容に対するソ連の返答があります。その内容だけを、もう一度はっきりここに御説明願いたいと思います。
  112. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安全操業の問題につきましての経緯を御説明申し上げたいと思います。昨年六月三日に門脇大使を通じまして、ソ連政府に対して安全操業の問題について話し合いをいたしたわけであります。日本側の当時ソ連政府に申し入れましたところは、わが北洋零細漁民の生活の問題として、近海における漁業を円滑に遂行さしていきたい。ソ連との間には御承知のように、領土問題についてのまだ確定がございませんので、平和条約は締結されておりませんし、かつまたソ連と日本との間におきましては、領海問題につきまして、意見が相違をいたしております。ソ連は御承知のように、十二海里説をとり、日本は三海里説をとっておるわけであります。この領海問題というものは、非常に重要な問題でありまして、国際連合におきましても、これを取り上げて海洋法の定説を作る国際間の話し合いをする研究も長年続けてきております。来たる二十四日からジュネーヴで海洋法に関する会議も開かれるわけであります。そういう問題が両者ともおのおの主張を譲っておりません。その形のままにおいて何らかソ連と日本とが友好関係にある、共同声明によりまして、友好関係を確立した以上は、できるだけ円満に北洋漁民の生活ができるように話し合いはできないものだろうかというのが、日本のソ連に対する申し入れの要旨でございます。そういう問題について平和条約等ができない前に、暫定的に一つ何かの取りきめをしたい、こう日本から申したわけでございます。それに対しましても、その後一、二の説明、折衝等がございましたが、八月十六日にソ連政府は口上書をもちまして、日本政府の要請を考慮し、若干の水域の漁業につき、交渉に入る用意があるという回答をして参ったわけであります。これがソ連の正式の回答と私どもは見ております。従いましてソ連がそういう話し合いをしていいということになりましたので、日本政府としてはそれに応じて、案を作りまして、そうしてソ連政府に話し合いを始めようじゃないかということを、八月二十九日に申し入れをいたしたわけであります。その後それに対しましてソ連政府の回答がございませんので、なるべくこういう問題は早い時期に話し合いを進めた方がいいだろうということを、再三督促をいたしました。ソ連側としては、現在そういう案は検討しているからもうしばらく待ってもらいたい。しばらくたてばこちらから話し合いに応ずるようにいけるだろうというような話し合いがそのときにあったわけであります。ところが昨年十二月になりまして、その問題は別個に会議等を開いてやるよりも、日ソ漁業委員会の交渉があるからその席上でやったならばどうだろうかというような返事が参ったわけであります。日本といたしましては、御承知のように、ソ連と日本との漁業委員会の性質というものが、私どもが近海操業を提起いたしましたのと性格が違うものであります。私が説明するまでもなく皆さん御承知通りであります。従いまして、その席上で討議することは、性格の違う問題を討議することであるから、適当ではない、しかし事務進行上の便宜があってそういう時期に並行して討議するということは差しつかえないのじゃないかというような話し合いをいたしておきました。ところが二月五日に、御承知のように、向うからこの問題は平和条約の問題と関連さして解決すべきである、平和条約ができれば問題が解決し得る道もあるのだからという話が参ったわけであります。そこで門脇大使は翌々二月七日に外務次官のところに参りまして、果して漁業相の言われたことがソ連政府の意向であるかどうかということを重ねて確かめたわけであります。ところがその通りであるという確認を得たわけであります。われわれとしましては、今日までソ連が八月十六日のエドメモワールでもって回答して別個で話し合いをする用意があり、暫定的にこの取りきめをすることにやぶさかではないという回答をして参っておりますので、私どもは今回のソ連の考え方と申しますか、申し述べた意向というものは従来われわれに対してソ連が言っておりますことと話がだいぶん食い違うのじゃないか、こう考えるのであります。不信とまで申すのはいかがと思いますけれども、従来の経緯から申しますれば違っておるように思います。従いまして直ちに門脇大使に対しまして、この問題は前から言っておるように、暫定的な協定を平和条約ができるまで取り結んで、北洋漁業の零細漁民の生活の安全を期していきたい、こういうことであるのだから、別個に一つ進めてもらいたいということを、さらに重ねて申し入れをいたした次第であります。以上が経過でございます。
  113. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで政府が安全操業をソ連側に要求する法的根拠はどこに置いてこれを要求されたのですか。
  114. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、北海道の零細漁民の方々はその生活のために出漁されるわけであります。ただいま申し上げましたように、領海という問題についてはまだはっきりいたしておりませんで、ソ連は十二海里を主張し、わが方は三海里を主張しておるわけであります。従いまして十二海里以内に入っても拿捕される場合もあり得るわけであります。そういうような状況では北海道の零細漁民の方々の生活のために適当でないと考えますので、もし話し合いがつきまして、この領海の問題のおのおのの主張はかりにたな上げをしましても、話し合いがつくものならつけたらどうだという希望を持ってやっておるのであります。
  115. 松本七郎

    松本(七)委員 今の御説明ですと、結局領海の十三海里説と三海里説で意見が対立しておって、この解決がついておらないから、十二海里を越えて行った場合に捕獲される。要するに十二海里、三海里の対立があるということが、こういう問題の解決を要求されておる日本政府の根拠になっておる。こういう御説明なんです。ところが実際問題から考えてみますると、今のお話でしたら、かりに日本の主張する三海里説をここでとったと仮定します。その場合でも——歯舞、色丹で今起っておる拿捕事件は、三海里以内なんです。むしろ歯舞、色丹周辺では接岸するために拿捕されている。また接岸しなければほんとうの仕事ができないのが、あそこの実情なんです。ですから、日本の主張しておる三海里説がかりに通ったとしても、やはり歯舞、色丹の周辺では、接岸するのですから、拿捕事件は起るのです。十二海里と三海里の説が対立しておるから、それを根拠にこの安全操業問題を持ち出したという根拠は、きわめて薄弱だといわなければならないと思います。ほかに何か根拠がございますか。
  116. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、今の三海里、十二海里説の領海の問題については、ただいま申し上げた通りであります。ただ北海道の零細漁民の方々が操業されるコンブでありますとか、その他の漁種につきましても、特別なものについては三海里に入って、接岸して取りたいという希望もあるわけです。ですから、そういう特定のものに対して、特定の地域だけには、もし日ソの間に友好関係があるならば、特別な取りきめができないものであろうかというのが、われわれの考え方でございます。
  117. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると十二海里、三海里の対立ということが一つの根拠、もう一つは、今の二度目の御説明によれば、歯舞、色丹周辺の場合は、つまり領海の中で利権を得たい、こういうことになると思うのですが、どうでしょうか。
  118. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 利権という言葉が適当であるかどうか私存じませんけれども、零細漁民が生活のために三海里以内に入りましても、接岸して取れる特別な漁種もあり、あるいはワカメ等の問題もありますが、平和に両国がある関係においては、その立場を認めてもらってもいいのではないかということを、われわれは希望をいたしておるのであります。
  119. 松本七郎

    松本(七)委員 結局歯舞、色丹の問題については、かりに日本の三海里説が通っても問題は解決しないということが、今の御答弁で明らかになったのですが、そうなりますと、日本政府先ほどからの経過報告の中にもちょっと出て参りましたけれども、領土の問題、さらには平和条約の問題と切り離して交渉ができると見きわめられたから、交渉を始められ、また継続もせられ、今後もその方針でいこうということでしょうが、その切り離し得るという根拠はどこにあるのですか。
  120. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは今申し上げましたように、零細漁民の生活の問題でもありますので、日ソ間で友好的な話し合いができるならば、日本の希望が全部通りますかは別として、そういう話し合いをしてみたいという希望を持ちますことは、日本として当然なことだと思うのであります。ただし、どの程度までソ連側がそれに応諾してくれるかは、交渉を始めましてからの問題になると思います。
  121. 松本七郎

    松本(七)委員 ですから日本政府が、そういう零細漁民のことを考えて、切り離した交渉がしたいという希望はわかるのです。しかし希望を聞いているのではない。希望ばかりでなしに、希望があっても相手があるのですから、切り離し得るという見通しと何らかの根拠を持って臨まなければ、相手を説得することはできません。そこで希望だけではなしに、切り離し得るという見通しは一体何を根拠に政府は持たれたのかということを聞いておるのです。先ほどの御答弁で、最初にお話しになったときに、八月十六日に至ってのソ連側の回答、これの内容を言われましたが、その後の外務大臣がこれに基いて解釈されておるお言葉は、この回答がすなわち日本側が希望しておるような切り離しの交渉を認めておるかのような大臣の口吻だった。ところが八月十六日のソ連回答というものは、何も日本側が希望しておるように、これを領土問題、平和条約問題を切り離して交渉しようと回答してきておるわけじゃないでしょう。だからこれは、ソ連側が日本の希望を受け入れるという根拠にならない。何かほかに根拠がございますかと聞いているのです。
  122. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 暫定的にそういう取りきめを、平和条約ができるまでにやろうという希望を申し入れまして、ソ連側が今申し上げましたような、エドメモワールをもちまして、そういう話合いをする準備があるということを言ってきたことは、私はそういう話し合いを進行させ得る見通しがついた、こう存じております。
  123. 松本七郎

    松本(七)委員 その問題は根拠が非常に薄弱だと思いますから、まだ論議を続けなければならないけれども、ここで一応、先ほどの御説明で、日本側から八月二十九日に門脇大使を通じて申し入れをしたと言われておるのですが、このときの申し入れは単なる申し入れでなくて、相当はっきりした協定案として、日本から向うにこれを出されたと言われておるのですが、この協定案の内容を一応御説明願いたい。それから、できれば至急に資料として配っていただきたい。
  124. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 政府委員より説明させます。
  125. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 協定案の概略、要綱を御説明申し上げます。  協定案は、日ソ両国間に平和条約が締結されるまでの暫定措置としての協定案というふうに前文で断わりまして、約五、六カ条の条文案の形で提案した次第でございます。そこで第一条の初めにおきまして、この協定の安全操業の適用される地域につきまして緯度経度の線をもって囲んだ地域を一応指定いたしました。すなわち大体それによりますと、樺太の南と千島——国後、択捉、千島の全部ではありませんが、その大部分が入るというような地域をまず協定で予想いたしました。次にこれらの地域につきまして、約四十トン以下の小さい漁船が、日本政府からの漁業許可証を持って、これらの地域において操業することができるというふうな提案でございます。そこで操業する場所としましては、大体におきまして歯舞群島、色丹島、国後島、これで国または地域におきましては、接岸一海里近くまでも入って漁業をすることができる。また特殊の、コンブというような漁種につきましては、もっとこれらの諸島に近接してる岩礁まで行って操業することができる。それからその他の地域につきましては、三海里まで入りまして操業することができる。そこで操業の内容としましては、いろいろはえなわ漁業であるとか、刺し網漁業、けた網漁業、から釣、コンブ漁業というような漁種をあげまして、このような地域においてこのような小漁船による漁業を許可するというふうな形の提案でございます。
  126. 松本七郎

    松本(七)委員 先ほどからの外務大臣の御説明のように、こちらから交渉を申し入れた、向うから返答がきて、直ちにこれだけの内容を含んだ協定案を出してしまったということについては、やっぱりソ連側が日本政府の希望である領土問題とは切り離して交渉するということを了承して、その前提で交渉するのだという確信がよほどなければ、いきなりここでこういう案を出すことは私はむちゃだと思います。確信があったからこそ出された。それにしては、先ほどからの御説明のようなことでは、果して日本政府がソ連の意向なり考え方なりをどこまでよく打診し、つかんでのことか、この点に疑いなきを得ないわけであります。先ほどの外務大臣の御答弁によりますと、こちらから出したものについてとにかく交渉に応じよう、これをもって暫定的な交渉だ、こういうふうに解釈してしまっておられるのですが、ここに私はこういう非常に困難な事態を招いた根本原因があるように思うのです。  そこでその次に、これに関連して直ちに問題になりますのは、今度の交渉に乗り出されたということは、御承知のように、今領土の問題についてはまだ最後的確定がなされておらない、けれども事実上はソ連が歯舞、色丹も含めて全部占有しておるわけです。ですから、法的にはまだどちらという決定はされておらないといたしましても、これらの諸島に対しては、ソ連が事実上の統治権といいますか、事実上統治しておる。実際に、占有しておる。いわばこれらの水域というものは、事実上のソ連の領海である、こういう前提に立たれて交渉に乗り出されたのだと思いますが、この点はそういうふうに解釈していいものかどうか。
  127. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 事実問題としまして、平和条約で領土の問題が日本の主張が通りまして解決しない間は、事実上の問題として認めざるを得ないのです。従って暫定協定ということを申しておるのであります。
  128. 松本七郎

    松本(七)委員 ここで事実上のソ連の統治を認めて、その上に立っての交渉だということは明らかになった。そうしますと、ここにいろいろな疑問がわいてくる。将来のためにも一つ明らかにしておかなければならないのは、第一点は、事実上ソ連が統治しておる、その現実を確認した上で交渉に入ったというこのことが、将来の領土権を確定する場合の基礎になるおそれはないかということです。
  129. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国後、択捉につきましては、日本の固有の領土であるというわが方の主張を曲げておりません。
  130. 松本七郎

    松本(七)委員 それはこちらの主張なのです。こちらの主張を幾ら曲げないでがんばってみたところで、相手が、今事実上の占有権、事実上の統治を認めて交渉に乗り出したというこの新しい事実を、将来領土権確定のときの根拠に使われるおそれはないか、こう聞いておるのです。
  131. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今度の暫定協定につきましては、ただいま申し上げましたように、領海の問題につきましても、両者の主張をそのままたな上げにしてやるということでありますので、日本がこれを放棄したというふうに解釈されることはないと思います。
  132. 松本七郎

    松本(七)委員 たな上げにしてと言われますけれども、十二海里と三海里の意見か違うからこそこういう問題が起ってきている。もっと極端に言えば、三海里以内に入ろうという要求を出している以上は、たな上げなんということは幾ら何でも勝手にそんなことはできません。問題にしているのだから。だからあなたがそれを勝手にたな上げをすると言われたって、相手はそんなことは受け付けません。問題にしたこと自体を領土権の正式の確定のときの根拠に使われないか、こう聞いているのです。
  133. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は正式の領土の問題の交渉のときに材料に使われないと信じております。
  134. 松本七郎

    松本(七)委員 どういう処置によってその材料に使われないようにできますか。
  135. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本としては領土権を譲っておりません。ちょうどただいま例に引きました領海の問題と同じでありまして、日本は三海里説を主張しております。またソ連は十二海里説を主張しております。それをそのままにしてそういう暫定的な取りきめをしよう、こういうことでありますから、領土権についても主張を譲っておらぬのであります。
  136. 松本七郎

    松本(七)委員 それはこちら側の主張であって、私の言おうとしているのは、領土権については対立しているのですから、相手側がさらに自分の領土権を将来主張する有利な新しい根拠として、今度事実上の統治を認めて交渉に乗り出したというこの事実をまた使うおそれはないか、そのおそれがあったら、しからばどう処置したらいいかという点を聞いているのです。
  137. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ソ連がこれに対して将来どういう理由をつけてくるかということを、私どもは予測するわけには参りませんけれども、しかしとにかくこの問題は触れないで暫定的にやろう、ソ連も暫定的にやろうということをエドメモワールで言ってきておりますので、私は今度の問題がそういう口実に使われることはないと信じております。
  138. 松本七郎

    松本(七)委員 ちょっと待って下さい。大臣、今大事なことを言われた。暫定的にやろうとソ連から言ってきていると言われますけれども、暫定的にやろうということをいつ意思表示していますか。
  139. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 八月十六日のエドメモワールでそういう話をしようということは、話し合いをしていこうという意思がソ連にあると見て差しつかえないと思います。
  140. 松本七郎

    松本(七)委員 そこに飛躍があるのですよ。こちらからは暫定的ということをはっきり使って言っているわけじゃありませんけれども、心組みとしてもちろん暫定的に切り離してやるつもりで、あなたは向うに最初申し入れをされた。八月十六日になってソ連側が回答してきたことには、暫定的ということが全然ないのです。交渉には応じようということだけなんですね。その中にはあなたの御希望通り暫定的にやりますぞということは決して書いてないわけです。これだけで交渉に応じようという返事が来たから、自分の希望するようにこれは暫定的に切り離してやってもらわれるのだ、こう解釈しているところに第一の甘さがある。ですからその点が問題なのです。  それはともかくといたしまして、私の先ほどから心配しているのは、とにかく今事実上ソ連が統治しているこのことを認めて交渉に乗り出した。日本はかつて安全操業問題のときに、この事実を認めて交渉に来たじゃないか、こういうふうに、将来領土権を最後的に確定する交渉のときに、一つの根拠に使われるおそれはないか、こう聞いているわけです。もしそのおそれがあるならば、たとえば暫定的であるとか、そういうこととは関係なしに——結局は実質的には領土問題に対しては暫定的になるでしょうけれども、交渉して何か話がまとまったときに、この事実上の統治権を認めたということは、決して将来領土権の確定には影響しないというようなただし書きをつけるとか、そういう方法考えてみればあると思います。そういうところまで政府は考慮を加えてこれに乗り出しているかどうかというところが、私は非常に不安だったので、この点を聞いているわけです。
  141. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 政府といたしましては領土権を譲っておりませんし、暫定的にそういう零細漁民の生活問題としてこの話し合いをしようということであるわけでありますから、それに対して何らの譲歩をいたしておるわけではございません。従ってソ連と日本と安全操業の問題についてソ連がこれに応じて参りますればそれから交渉が始まるのでありまして、われわれとしては主張することは当然主張していかなければならぬと考えております。
  142. 松本七郎

    松本(七)委員 自分の方の希望を述べ、自分の方の主張をただ主張するだでは交渉にはならないのです。相手側が今までどういう考え方で、また根拠でもってこれらに臨んでおるかということをよくつかまなければならぬ。これをつかめばつかむほど、こういう今度の安全操業の交渉でも、そういう先々で領土権を確定する場合にも、やはり十分考慮していかなければならぬじゃないかということで、私はこれを聞いておるわけです。この問題は、そういうものに臨む心がまえの問題として心配も多少残りますけれども、しかしいよいよ交渉に入って安全操業でも認められて協定文でもできるときに、このことは政府としても一つ心がけて十分気をつけていただければいいことですから、今これについて意見をもっと戦わせるということは、これ以上は差し控えておきたいと思います。  ところで今度は、今の御説明のように日本の方はもちろん領土権を主張しておるわけです。国後、択捉についても日本は領土権を主張しておる。その領土権を主張しておる日本側でさえ事実上のソ連の統治ということは認めざるを得ない。それを認めたからこそ今度の交渉に乗り出したわけです。そうしますと日本側でさえこの事実上の統治を認めておるのですから、ましてやソ連は、これは単なる事実上の占有ではないんだ。もちろん歯舞、色丹については平和条約ができれば日本に引き渡すという約束をしておりますからこれはまた問題は別であるけれども、その他の領土については事実上の占有だけではない、これはちゃんと条約その他の法的な根拠を持った正当な領土であるという立場をソ連側はとっておるわけです。そういう立場をとっておるソ連としては、当然この安全操業の問題は、領土、領海と不可分なものであると考えるのは、これはソ連側からすればむしろ自然ではないでしょうか。日本側からすれば、日本側は引き離して暫定的にやりたい希望があるのですから、希望的観測をすれば、今あなたが言われるように、しかも手紙に交渉しようといって、それによかろうといってきた。おれの方は最初から暫定的にやるつもなんだからその気持を了承してくれたんだ、こう解釈しておられるけれども、これは日本側の希望的観測であって、ソ連の今までの主張なり今の立場なり、そして事実上占有しておるというこの現実を日本政府も認めて交渉に乗り出したというこの新しい事態を前にして、ソ連がこの問題は領海、領土の問題と不可分だという立場をとるのはむしろ理の当然ではないでしょうか。この点はどうでございますか。
  143. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ソ連側の主張についていろいろと聞かしていただきましたが、私どもは日本の主張を根拠として交渉はいたしたいと考えております。
  144. 松本七郎

    松本(七)委員 あなたはふざけた答弁をしてはだめですよ。何ですか。ソ連側の主張を聞かしてもらったとは何ですか。政府自身がソ連は今どういう立場に立って、この問題に対してはどういう態度で臨んでくるかということをはっきりつかまないで、あなたは交渉できますか。私にソ連の主張を聞かしてもらったとは何ですか。交渉に乗り出した以上は、相手がどういう立場で、どういう根拠をもって、どういう主張をしてくるかということをはっきりつかまないで、あなたは交渉に乗り出したのですか、それじゃ、今初めてソ連側の主張を私に聞いて、初めてわかったわけですか。ふまじめだ。
  145. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は私なりにソ連側の主張を考えて交渉に入っておることはむろんであります。しかし先ほど松本議員が、自分はモスクワに行ってソ連側の意向も十分知っておる。従って自分の言うこともよく聞いてみたらどうだというお話でありましたから、松本議員が行かれてソ連側の意向がそこにあるというようなことを伺ったと思ってこう御答弁したのであります。
  146. 松本七郎

    松本(七)委員 私は向うに行って向うの意向を十分知っておるなどとは申しません。私は私どもなりの判断を持っておる、こう言うだけであります。今はここで、ソ連側の立場を理論的に解明しておるとさっきのような事情になります。そうするとソ連が領土の問題、領海の問題と不可分と考えることは無理もないことだと今あなたは考えられませんか。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私はソ連側が不可分であると考えるということは、無理もないことだとは考えません。
  148. 松本七郎

    松本(七)委員 そこに非常に甘いところがある。もしもソ連側の主張なり立場を正確につかんでおられるならば、最初に申し入れをされるときに、これは領土、領海とは切り離して、またもっと念を入れるならば、平和条約とは切り離して暫定的に交渉する意図を日本側は持っておりますよ、こういう意思表示をしてこの安全操業の交渉に最初から乗り出すべきではなかったか。それを最初はそうではないのだ。そういうことを少しも明らかにしていないのだ。気持だけでこれは暫定的だと自分で独断できめておる。それを相手が暫定的でないという解釈をするからといって、これは不信だとか何だとかいっても始まらない。最初の準備が不用意でこの交渉に乗り出していやしないかという心配があるから、この点を根掘り葉掘り聞いておるわけであります。いかがでしょうか。
  149. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 あらゆる機会に門脇大使を通じて、暫定的にこういう交渉をするということを申しておるわけであります。従いましてソ連側も暫定的にこの交渉をやるということをエドメモワールで言ってきた、こう考えております。
  150. 松本七郎

    松本(七)委員 それはそのために私は最初にその経過の報告で、最初に申し入れたときから向うの回答までの内容を知らせて下さいと言って、あなたは知らせてくれたのです。そのときの最初のあれには暫定的になどとは書いてない。それは門脇大使が言葉ではどう言ったか、それはわかりません。しかしもしそういうソ連側の考え方を正確につかんでおったとするならば、そういう口頭でなしにやはり申入書の中に、その日本の趣旨というものは明記しておかなければならなかったはずであります。それがやっていないということは、やはり何と言っても不用意ではなかったか。不準備ではなかったか。準備不足ではなかったかということを申し上げておるわけであります。おまけに愛知官房長官も——これは十二日の午前の記者会見で、ソ連が平和条約交渉を提案してくることは、これまでの経過から予想していた。そうしてこの予想が的中したわけだ、こう言っておられる。そうすると官房長官は——もちろん官房長官の発表ですから、政府考え方だと思うのですけれども、予想しておきながら——予想しておいたならば、なおさらのこと、これは暫定的なものだぞということを、最初から念には念を入れて文書にして出しておく順序をふまなければならぬと思うのですが、どうですか。これはやはり手落ちだと言わなければならぬでしょう。
  151. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 門脇大使はあらゆる機会に暫定的だということを申しております。その後も暫定的だという言葉をもって文書にも記録しております。あくまでも暫定的である、また暫定的でなければこういう交渉はできない。
  152. 松本七郎

    松本(七)委員 暫定的だということばかりではないですよ。さっきから言うのは、ソ連側は領海、領土と切り離してこれをやるという立場を、おそらくソ連の先ほどから私の述べましたあのことを理論的に進めていけば、領海と切り離して考えることはできないのだ、不可分なものだ、こう考えるだろう。それをこちらは、いやそれは切り離してやるのだ、こういう立場をとるでしょう。その暫定的という言葉にそれが当然含まっておる、こういう立場日本はとっておるわけです。ところがソ連側から言えば当然さっきの事実上占拠しておる、あるいは向うの今の立場からいってこれは切り離せないという立場をとることは予想できないのですよ。だからこそ官房長官はこう言っておられる。おそらく河野企画庁長官も向うに行かれていろいろ交渉された経験がおありですけれども、河野さんとすればやはりこういう問題については、もう少し文書でもって領海の問題とは切り離してやるのだということをはっきり——ただ大使口頭でやるのじゃなしに、文書でやっておかなければならなかったということは河野さんなら私は理解されると思うのですが、河野長官いかがですか。
  153. 河野一郎

    河野国務大臣 松本さんの御意見でございますけれども、こういうふうに日本が提案をするには、両国間の友好関係が積み上げられて日本側としてもいたしたいのでございまして、両国が領土問題について対立をして、そうして平和条約はあと回しにしよう、それなりの状態でございますればこういう事態は起らなかった。今松本さんのおっしゃることもごもっともでございますけれども、あなたのおっしゃるような事態で、両国間がそういう認識に立っておるならば、こういうふうな暫定的ないわゆる安全操業というようなものを日本側から提案する機会はなかったろうと私は思うのであります。ところが、これは現に私も経験したことでございますが、われわれが平和条約の共同宣言の話し合いにソ連に参りましたときにも、これらの近海における操業については一つなるべく協力をいたそうというような非常に友好的な雰囲気がございました。そしてただばく然とそういう雰囲気の中に出漁するということは、これまたあとでいろいろ物議をかもすというようなこともありましたろうというようなことから、わが外務当局はソ連側とそういう点について話し合おうということでおやりになったことと私は思うのでありまして、これがこういう事態になりますれば今お話しになったようなことがさかのぼって言われると思いますけれども、これは自然に両国の国交の当時の客観条件がこういう雰囲気をかもし出しておったのでございまして、私は外交のことはよくわかりませんけれども、それは時によくなり時に悪くなるということはあると思います。しかしこういうふうな事態は、昨年の七、八月ごろ両国の通商条約を結ぼうとか、いろいろな状態で非常に友好関係が円満に進んでおりました当時にかもし出された雰囲気がこういうふうになった。その後のソ連側がまたいろいろな関係からやかましく言い出したというようなことではなかろうかと私は思うのでございまして、これは私は常にそれに触れておるわけじゃございませんから、決してそれをしいるわけじゃございませんけれども、さればといってわが当局のとった態度が、今御主張になりますように非常に失態があるとか非常にどうであるとかいうことはなかろう。これはわれわれの希望といたしましては、なるべく平和条約締結までの暫定措置として両国間がそういうふうになり、それが積み上げられて平和条約の締結になるということは、少くともわれわれがモスクワに行きました当時にお互いにそういう条件を積み上げて、そうして両国に平和条約締結の一日も早からんことを期待するというような雰囲気でわれわれは帰っているわけであります。
  154. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうなかなか困難な関係にあればこそもう少しそういう向う立場、どういう態度に出るかということを正確につかんで出れば、事態の主張の分れ目、対立点がどこにあるかということがもっと最初から出たと思うのです。それが今になってこういうものがずっと出てきたものですから、両国民の不信の感情をいよいよ強くするような事態があった、この点が非常に残念だと思うのです。私どももモスクワに行きましていろいろ話したときに、向うが何とかして安全操業は解決できるようにしたいという非常な熱意が見えたわけです。けれどもこれは熱意だけのことではいけないわけで、やはり先ごろから私が説明したような事実上の占有を認めて交渉しておる。こういうような変則的な現実、こういう現実に立って考える場合には、相手から言うと、領海の問題とは切り離せない立場がここにあり得るということが、それを希望しない日本の側にももっと明確につかめたんじゃなかろうか。そこのところにどうも準備の不足があったように思う、こういうわけです。過ぎたことですから、これはこれ以上追求するという気持はないわけですから、この程度にしておきたいと思いますが、ただこれはいろいろな点に波及することを私は心配したわけなんです。これはもう少し研究してみれば、ソ連側から言った場合には、この安全操業問題は領海と切り離せないという立場が出てくるはずだ。理論的にも出てくるはずだ。それを日本政府は知らないでやったんだ、そうすればはなはだ不用意といわなければならない。もし知っておきながらあの申し入れの文書に、これは領海、領土とは切り離してやるんでございますよということを説明がなかったとすれば、これは故意にこれを隠して、そうして腹の中では領海問題とは切り離してやるんだということを蔵しながら、表面には、それを出さないで、交渉に応じさせる返答だけ早く引き取ろうという、いわば謀略的にこれを申し入れて、そうしてソ連が、よろしい、交渉しましょう、内容を検討してみれば、これはどうもおかしいということになって、ひっかけられたのではないかというような、一部でそういう心配が出てくるから、私はそれを心配しておるのです。そればかりではないのです。一部には、そういう事態を政府は知っておって、そうしてほんとうは安全操業、あの北海道歯舞、色丹周辺の零細漁民のことは本気に考えておるのではないんだ、今度の交渉でも先ほどの協定案の内容でもわかりますように、四十八度以南の安全操業という非常に広範囲にわたる安全操業の問題を主張しておっても、これは単なる交渉技術であって、初めは間口を広げたが、結局は国後の南岸、それから択捉、この水域におけるカニ漁業について、三海里、十二海里の間の操業を獲得するのが政府のねらいなんだ、こういうふうに今向うで必死になって安全操業を願っておる人々は勘ぐって、政府の意図を疑っておるような傾向も出てきておるのです。ですからこういう事態になりますから、私は、もっと初めから準備を十分整えて、こういう疑いが日本国民の中から起らないような処置をしてお方がよかったのではないかということを申し上げておるわけであります。このことだけは私どもの質問の趣旨をよく理解しておいていただきたい。ソビエト側の問題じゃないのです。  それから、これは安全操業ではなくて、今度は漁業条約に基く漁業委員会の方でございますが、きのうの新聞にも出ておりましたように、これは非公式情報ということにはなっておりましたけれども、伝えられるところによりますと、本年度のソ連側の北洋のサケ・マス漁業計画を昨年の十四万トンより二万トンだけ低くして、十二万トンにしよう、これは日本側の沖どり漁業量を昨年以下に押える前提ではないか、こういうことが報道されておるのです。最低八万トンまたは場合によっては八万トン以下に押えられるのではないか、こういうことで漁業代表が非常に心配しておるということが報導されておるのですが、何かそういうおそれがあるのでございましょうか。
  155. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 一月十四日からの漁業委員会におきます交渉経過等につきましては、水産庁長官から御説明いたします。
  156. 松本七郎

    松本(七)委員 いや経過じゃないのです。きのう新聞に出ました、まだ非公式情報といわれておる……。
  157. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ただいま御指摘のような情報はまだ正式に受けておりません。しかしいろいろな面で漁獲量を減そうというような情勢にあるようには考えられますけれども、今御指摘のような正確な情報はまだ受けておりません。
  158. 松本七郎

    松本(七)委員 河野さんがイシコフと会談されて取りきめられたものに基いた場合に、八万トン以下にこれが押えられるという可能性はあるのでありましようか。
  159. 河野一郎

    河野国務大臣 これは魚族が非常に減少いたしまして、そして八万トン以下にしなければならぬ場合が起ってくればあり得ることであります。ただし八万トン、十万トンということはしばしば問題になりますから、この機会にあらためて御了解願いたいと思いますことは、ソ連が陸上で漁獲いたしますものと見合いまして、おおむねソ連の陸上でとるものと、わが方が水上でとるものとは見合って計画を立てるということが基本の条件でございます。従いましてソ連の方がずっと減って参れば、わが方も減る場合がある。これは双方魚族保護の立場に立って作っておる条約でございますし、委員会でございますからこれはあり得ますが、ソ連の方が昨年は十四万トンの計画を十五万トンとったとか、ないしは十四万トンを十二万トンに減した場合には、わが方は七万トンになるということは絶対にあり得べからざる事態でございます。おおむね今申しましたように、八万トン、十万トンという数字が出ましたのは、大体の話は初年度だけで、双方の意見が一致しない場合には、前年度通りとすることが普通の慣例でございますけれども、前年度がありませんから、そこで意見が一致しない場合にはどうするかということから出た数字でございまして、そこで先方が八万トン、十万トンにしてくれといいますから、それはソ連側の陸上でとった数字が減るならばわが方も減してよろしい。これは双方見合いの上でそういうことにいたそうという前提条件付の取りきめでございます。従って昨年でもソ連側の魚族はますます豊富でございますから、漁獲量を増しております。そこでわが方も昨年度は十二万トンとった、十二万トンの取りきめをしたということになっておるのでありますから、これがにわかに昨年は十二万トンとったから、今年は七万トンでなければ承知せぬというようなことにはなる理由がないと私は考えております。     〔委員長退席、川崎(秀)委員長代理着席〕
  160. 松本七郎

    松本(七)委員 そこでその次の問題は、漁業条約に基く漁業委員会の交渉の方が、また平和条約問題とからんでくるという可能性は絶対にないと見てよろしゅうございますか。これは河野さん一つ……。
  161. 河野一郎

    河野国務大臣 これは御承知通り漁業条約は発効いたしております。漁業条約の第三条でしたかに基いてできておる委員会でございますから、それは平和条約とは全然関係がない。同時にこの漁業条約は先般の共同宣言によって効力が発生するということになっておりまして、平和条約関係なしにソ連側が三条に基く漁業委員会を認めております。この委員会の両国に対する勧告は、両国がこれに従おうということになっておりますから、これは平和条約とは全然関係なしに行わるべきものであって、この勧告には両国政府は従わなければならないということに相なるべきものと考えております。
  162. 松本七郎

    松本(七)委員 平塚さんが代表として出発される前に、平塚さんばかりではなしに、愛知官房長官も述べられたこととして伝えられるところによりますと、漁業条約に基く漁業委員会の北洋漁業の交渉と、それから安全操業問題と、それから平和条約の問題、この三つを関連させて新たに人を派遣せざるを得ないであろう、こういう見通しを述べられたと伝えられておるのですが、この事実があるのか。
  163. 愛知揆一

    愛知政府委員 本件については先ほど関係大臣から御説明を申し上げておりまする通りでございまして、三件はそれぞれ分離をして扱うごとに政府としては見解を明確にいたしておるわけでございます。従ってただいまお尋ねのようなことは全然考えておりません。
  164. 松本七郎

    松本(七)委員 現在考えておらないか、考えておられるかを聞いているのでなしに、平塚さんとあなたが、平塚さんの出発直前に、結局人を派遣せざるを得なくなるだろうという見通しを述べられたと言われておりますが、その事実がありやなしや。
  165. 愛知揆一

    愛知政府委員 さような事実はございません。
  166. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで結局今の事態からいうと、非常に心配されておるのは、いろいろ今後政府が方針を立てられて臨まれても、今までの政府の交渉の経過、それから現在の政府考え方、そういうものを総合的に判断していくと、結局これは四十トン以下の零細漁民の安全操業問題は捨て去られるのではなかろうか、そういう不安が相当出てきておるわけでございます。そこでこれから政府はどう対処するかという問題が非常に注目されることになるわけでございます。新聞の報道するところではいろいろまちまちである。それからこの前から外務委員会あるいは予算委員会で質疑が出ておりますその答弁が、必ずしも一貫しておらないので確認しておきたいのですが、一つの説は、平和条約問題について、日本政府は平和条約問題の交渉に全然応じないのではない、応ずるのだ。しかしそれはソ連側から正式に平和条約についての交渉をしようという申し入れがあればこれに応ずる。そういうことが一つ言われておる。そのほかいろいろな、これは込み入った判断ができるような情報しかまだわれわれにはわかっておりませんので、この機会に一つ総理から、今後どう対処されるかということについてお話し願いたい。
  167. 岸信介

    岸国務大臣 先刻来お答え申し上げているように、政府としては現在、漁業条約に基く漁業委員会の問題、すなわちサケ・マスの問題がございますが、これは漁業条約に基く本年が第二回の委員会でありまして、いわゆる日ソ間の交渉ではなしに、漁業委員会の議事として行われているということが一方にあります。それから安全操業の問題は、先ほど来何がありましたように、昨年の六月あたりから具体的にこの交渉をしようという両国間の了解のもとに出発しておる問題があります。それから平和条約の問題、これは御承知通り領土問題を含んで日ソ両国の主張が正面に衝突し、相いれない問題でございます。しこうして日本は従来長く、日ソの間の国交調整を、平和条約の締結によって両国の国交を開くという意図のもとにいろいろな努力をして参りましたけれども、われわれ国民的要望であるわれわれの固有領土の日本への引き渡しというこの主張に対して、ソ連側が従来全然違った見解を持ち、先ほど来もあったように、事実上これを占有しておる。そうしてわれわれの要望に沿おうとしないということで、ついにその問題を将来の懸案として共同宣言がされたことは御承知通りであります。そういういきさつにかんがみまして、私どもは従来日ソの間の友好関係をいろいろな形において積み重ねていく。貿易協定もやるし、あるいは漁業条約の履行も、両国とも公正かつ妥当な方法でこれを履行していく。あるいは安全操業の問題も人道上の立場の何から言っても、ソ連の従来の主張からいくと、こういう零細漁民の生活問題等に関しては他の国よりも同情を持ち、また友好関係である以上は、これがソ連に対して非常に利益を害するとか、非常な犠牲を払わなければならぬという問題じゃないのでありますから、好意的な何ができるだろう。こういうものを積み重ねていって、そして日本国民の一致した要望である国後、択捉の返還問題というものを解決するというふうな素地を作って、そうして平和条約を締結したいというのが私どもの従来考えてきたことであり、また私がしばしば答弁した通りであります。従ってソ連がもしも、この国民的のわれわれの願望であり一致した要望である日本の固有領土を日本に引き渡すというこのことに関して、従来の態度を改めて日本の要望をいれるというふうな立場に立って平和条約の締結を申し出られるならば、私は喜んでこれを受け入れて交渉に入るというつもりでおります。
  168. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、ソ連側から、領土問題についてどうやるかという内容には触れずに、平和条約の交渉を再開しよう、ただそういう正式の申し入れが来ただけでは、すぐには交渉には応じないで、お前の方は領土問題についてはどういう態度で来るのかと、そのソ連側の臨む態度を確かめた上でなければ交渉には入らない、こう理解してよろしゅうございますか。
  169. 岸信介

    岸国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、また過去のわれわれの日ソ両国間の交渉の経緯にかんがみて見ましても、領土問題というものは平和条約の唯一の懸案の事項であります。従ってこれが従来のように意見が対立しておるという形でもって交渉に応じたって、私はこれは妥結できない問題だと思う。従ってわれわれは、この領土問題に関する限りにおいては、もはや私が政府の責任者として申し上げるだけではなしに、私どもがこれは国民の一致した要望であるとする、この固有領土の日本への引き渡しということが、何としても平和条約に入る前提であって、それが見通しがつかないのに、ただ平和条約の交渉の申し出がありましても、これに応ずるということは、むしろ日ソ間にせっかくでき上りつつある友好関係を害するだけの結果に終るということが明白でありますから、そういう申し出には応じないつもりであります。
  170. 松本七郎

    松本(七)委員 この前の予算委員会でこの点について岡田委員から質問が出ましたときに、外務大臣は、どうしてもソ連側がこの両者をからませてくる場合には交渉に応ずる、こういう答弁をされておるのでございますけれども、この点ははっきりしていただきたいのですが、今の総理の御答弁では、平和条約の領土に関する内容において、ソ連が変更の態度を見せない限りは絶対に交渉には応じない、こういうことです。この前の予算委員会における外務大臣の答弁では、ソ連側があくまでも安全操業と領土問題をからませてくる場合には平和条約交渉には応ずる、こういう食い違いがあるのですが、この点はいかがでございますか。
  171. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま総理答弁された通りであります。
  172. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると取り消しをされたということなのですか。外務大臣の答弁を調べてみると、ずいぶんわずかの間に変更ばかりなのです。これではどうも外務大臣としての方針というものがあるのかないのか疑わざるを得ないのでございます。  そこで今の総理大臣の御答弁のような態度でこれから臨むといたしますならば、まず私どもの観測では、安全操業の問題は非常にむずかしい問題になるように思えるのです。ですからこれはむしろ領土問題だけに限れば——それは総理の言われるようにこれにかりに限ってみても、やっぱりあれからだいぶん期間もたっております。最近いろいろな人がソ連から日本に来て、その人たちがほとんど一致して言うのは、今まで自分たちがソ連で考えておったのと、実際に目で見、日本に来ていろいろな人に接してみたところで得た観測とはだいぶん違う、日本人の対ソ感情というものは、やはりもう少しわれわれは考え直さなければならぬ、こういうことをみんな言う人が多いのです。それでこうやって両国の関係がだんだん密接になれば、やはり日本国民感情というものもよく理解してくれるようになるでしょうし、また向うも内外政策ともにいろいろな変化がどんどん来るのですから、それは考え方の変化というものはこれからいろいろ具体的に現われてくると思う。ですから、過去においての交渉のときにああいうふうになって領土問題だけ残っているんだ、従って交渉はもうすっかりやるだけやったんだから、領土についての変更をはっきり示さない限りは交渉にはもう一切応じない、こういう態度でいきますと、これは平和条約の問題は日本でもむずかしいのですけれども、ましてや今度ソ連側があくまでも平和条約と安全操業をからませる以外にないという態度を固執してきた場合に、依然として今のような態度で行ったのでは、私はこれは話し合う機会そのものもつかむことができなくなってしまうと思う。ですからこの際は、やはり何か最高のレベルでいろいろな問題についてとにかく話し合うという機会を持つことが、あらゆる意味で必要ではなかろうか。そういう点から言うと、むしろ、平和条約内容をどうするというようなことはお互いにすぐ出し合わなくても、とにかくいろいろな政治問題全般を最高レベルで話し合ってみようではないかという程度の意思表示を、日本政府側から進んで向うさんにされるのが、私は賢明ではないかと思うのですが、この点についてはどう考えられますか。
  173. 岸信介

    岸国務大臣 私はしばしば申しておるように、日ソ間の長い問題が、いろいろ国内におきましても議論があったのでありますけれども、共同宣言によって友好関係が作り上げられ、そして大使を交換し、あらゆる友好関係を進める、積み重ねていく。また今松本委員お話しになりましたように、ソ連の人々が日本に来て、日本国民感情であるとか、日本のソ連に対する考え方というようなものについての理解を深めていく、あるいは日本からも向うへ行ってそういう実情をよく知り理解を深めていくということは、友好関係を結んでおる国との間におきましては、私は適当なことであると思う。しかし具体的に今松本委員が御提示になりましたようなことを、私自身は考えておりません。いつか、私に対してソ連からもし来いということがあったら行く意思があるかというお話がありましたのに対して、私は十分考慮して、友好関係の国々は、時間が許す限り、諸種の事情が許す限りは、これを訪問していくことは適当であろうということを答えておるわけであります。ソ連との間に友好関係を増進していくということについては誠意をもって考えておりますが、果して今の状態で行くことが適当であるかどうかは十分考えなければならぬし、私としては現在の状態においてはそれは考えておりません。
  174. 松本七郎

    松本(七)委員 この領土問題についての方針は、鳩山内閣当時の方針と全然変更ないと理解してよろしゅうございますか。
  175. 岸信介

    岸国務大臣 この問題に関しては、すでにわが党としても鳩山総理が交渉に入りますときに党議をきめております。その考え方に少しも変更はございません。
  176. 松本七郎

    松本(七)委員 これはあの当時もだいぶん論議されたことではございますけれども、大西洋憲章でも、あるいはカイロ宣言でも、ポツダム宣言でも、奪い取った土地の返還以外は領土の拡大は求めないということは大宣言が行われておるわけです。そこでそれはもう周知のことなのですが、そういう宣言があるにもかかわらず、特に北千島をはずして南千島だけを日本領土として、これを切り離して主張するのは、何か筋の通らないものがあるのじゃないか。やはり大西洋憲章でも、あるいはカイロ宣言でも、ポツダム宣言でも、奪取した土地の返還、これ以外は領土の拡大は絶対にしないという大原則が打ち立てられておるのですから、この原則から考える限り、この北千島を放棄するという理由は出てこないわけです。それにもかかわらず、南千島だけを、国後、択捉だけを日本領土と主張する根拠は非常に弱いように感ずるのですが、これはどうです。
  177. 岸信介

    岸国務大臣 御承知通り、サンフランシスコ条約でわれわれが千島に関する領土権の放棄をいたしております。その千島がどの範囲に属するかということは、解釈上の問題があるわけでありますが、当然従来、開闢以来という言葉は適当かどうか知りませんが、少くとも歴史が始まってから日本の固有の領土であったことが明確であるところの南千島は、放棄する中に入っていないというのが私どもの解釈であり、国民的の気持もそこにあると思います。しこうして、他の千島はこれをサンフランシスコ条約で放棄いたしておりますので、これが帰属というものは、サンフランシスコ条約に調印し締結しておる国々が、国際的にその帰属をきめるものであるという見解を私どもはとっておるわけであります。
  178. 松本七郎

    松本(七)委員 桑港条約を理由にされると、南北を分けること自体非常に根拠薄弱になってくるのです。ワシントン会議でも分けた証拠はないのです。それから一般常識的に言っても、クーリール島というのは日本の地図でも、世界の地図を見ても、全部南北を含めたものをクーリール島と言っている。それをはっきり講和条約文書において、これを分けるということが明記してあるならともかく、何もそんなものはないのですから、そういうサンフランシスコ条約を基礎に南千島だけを領土だと主張されるのは、非常に根拠が薄弱になってくると思うのであります。こういう点、もう少し再検討される気持はないでしょうか。
  179. 岸信介

    岸国務大臣 南千島が日本の固有の領土であり、日本のものとして日本に引き渡されるべきものであるということは、あらゆる点から検討することはもちろんであります。
  180. 松本七郎

    松本(七)委員 領土の問題はまた別な機会にもう少し論議したいと思います。今度の問題が起きてから、再度ソ連側の領土に対する態度などをやはりみんな再検討し出してきた。そうして過去のあの日ソ交渉当時と今とソ連側の態度に変更のきざしがあるだろうかということは非常に大事な点で、いろいろ検討が加えられつつあるのですが、どうもソ連側の態度には変更のきざしが見られない。あくまでもこれは戦争処理なんだ、戦争の跡始末という立場を堅持して、これはうんと先の将来、国際情勢がずっと変って、平和的な保障がなされるということになれば別としても、これは朝日新聞の広岡編集長がフルシチョフ第一書記と会談したときもそういう話は出ておるわけですが、将来のことは別として、当座はやはり戦争の処理という観点から、非常に厳格に臨んでくるのではないかということが考えられるわけです。そうしますと、やはり現実的にこの安全操業の問題の解決ということに取り組もうとする人々、特にあの歯舞周辺の近海で零細漁業に従事しておる人々、御承知のように根室あるいは釧路の漁民が大会を開いて決議をしておる、ああいう考え方がだんだんこれから私は強くなる可能性は十分あると思うのです。あの考え方というものは、やはりソ連の領土に対する考えは容易なことで動かないのだ、少々のことでは動かない、従ってこの機会にはやはり平和条約を共同宣言の線で一応結んで、戦争処理という一段落をつけて、その以外の領土については、ソ連も非公式ながら領土拡大はしないという声明をしておるのだから、また将来国際情勢が緩和するように努力をして、そうしてそのときに領土については再検討するというような条件を条約の中に入れて、この際一段落をつけることはどうだろうか、というような意見が最近かなり強くなりつつあるのです。こういう意見に対しては、総理はどのように考えられるか。
  181. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから申しておりますように、日本国民の、私はほとんど圧倒的多数であると思いますが、あるいは全部という言葉が適当であるかとすら思うのでありますが、固有の領土として歯舞、色丹のほかに国後、択捉を日本に当然渡すべきものであり、ロシヤがそれを占有していることは不当であるという、この国民的の一致した気持から申しまして、あくまでも領土問題については、先ほど来申しておる線を堅持して参りたい。今お話のように、共同宣言の線で、歯舞、色丹だけであとの問題は将来の問題に一応認めて残すというようなことは、先ほど松本委員がおあげになりましたように、事実上の占有を認めてすらも、これが将来正当なる領土であるという主張の根拠になりはしないかという懸念があるくらいのところへ持っていって、一応とにかく歯舞、色丹で満足して、国後、択捉のものはソ連に属するということを正当に認めておいて、そうして将来またこの問題はやるのだといっても、とうてい国民的な要望は実現できないと思います。だからやはり私としては、先ほど申した線であくまでもここれを堅持して参りたい、かように思います。
  182. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、伝えられるところによりますと、今度の安全操業問題で社会党にも協力を要請しよう、こういう意見が出たということでございますが、具体的にどういう形で協力要請をされるおつものであるのか。今もうそれを断念されたのなら断念されたでよろしゅうございますけれども、今まで考えられた内容はどういう形でございますか。
  183. 岸信介

    岸国務大臣 全般的の問題としまして、事外交に関するような重大な問題については、二大政党の問におきましても、なるべく意見調整していくことが望ましいということは、かねがね私の考えておることでございますけれども、具体的に安全操業の問題について、社会党に呼びかけるとか、あるいは協力を求めるというふうな具体的の考えをしたことはございませんし、現在のところはまだ考えておりません。
  184. 松本七郎

    松本(七)委員 今かねがね外交問題については、いろいろ意見調整を中心にしての話し合う機会を作りたいというお言葉でございましたが、今度の問題を機会に、単なる安全操業問題で社会党の協力を得るというようなことでなしに、御存じのように、サンフランシスコ条約以来、外交の基本的路線については、相当な考えの違いもあり、具体的な政策においても開きもあるわけです。これは世界の情勢が今日のように対立しておる以上は、考え方の開きが出てくるのは当然なことなので、昔のように、国の外交だから何もかも一緒にしてやらなければならぬというようなわけにはいかない。しかし考えが違えば違うほど、やはり広い立場から、国民外交という立場から、そういう基本的な問題についても、ほんとうに腹を割って考え方を交換する、今後の日本の行くべき基本的な外交路線はどうあるべきか、そういうことを十分に話し合うということは、これは総理も言われるように必要であろう、特にこれから先一そうそういう機関を持つことは必要だろうと思うのですが、早急に何らかそういう全般の問題について十分話し合う機関を作られることに踏み切られる御決意はないか。     〔川崎(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 岸信介

    岸国務大臣 今私がお答え申し上げましたように、現在のところ考えておりませんけれども、松本委員のお考えとしては承わっておきたいと思います。
  186. 松本七郎

    松本(七)委員 今御答弁を聞いておりますと、われわれが今までもずいぶん主張してきたことなんですけれども、日ソの間にはとにかくそういう懸案というものが残っておるのですから、やはりこれを円満に一刻も早く解決しなければならないし、それには両国の友好関係をあらゆる手を使って、政策を持って、もっと増進していかなければならぬということになるだろうと思う。それにはまだ残っておる問題がずいぶんあります。文化協定を結ぶ問題だとか、文化協定にしても、米ソの間にはすでに協定ができております。あれは厳密な意味の文化協定とは言えないかもしれないけれども、いろんな文化交流実施の積み上げができる。それもけっこうだと思う。あるいは航空協定、インツリーストを日本に置くとか、電信電話の問題、あげれば幾らでもあるだろうと思うのですが、そういう問題について、何かいつまでも政府が本腰でこれに取り組んでおらないというような印象を、どうもわれわれ持つのです。もっともっとこういう問題の推進に御努力をしていただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  187. 岸信介

    岸国務大臣 すでに御承知のように、昨年の秋には貿易協定、両国の通商関係を今後増進するための基本的な取りきめをいたしました。私は先ほども申し上げたように、日ソの友好関係を増進することについては、できるだけ積み重ねていって——さっきも申し上げた、非常な困難な問題であるが、これは日本国民の一致した要望である。これをソ連が理解し、これを受け入れるようなところまで両国の友好関係を推し進めていきたいというのが念願でありますから、あらゆる何に対しましては、今後といえども引き続き増進のために必要な措置、また取りきめ等も進めていく考えであります。
  188. 松本七郎

    松本(七)委員 その次はアメリカの原水爆の実験の問題ですが、新たにまた危険水域を設けて実験をしようとしております。これはまた強力に実験禁止の要請をしていただきたいと思うのですが、この点においては、従来より以上に決意を固めて乗り出していただけることが期待できますでしょうか。
  189. 岸信介

    岸国務大臣 原水爆の実験禁止の問題については、われわれはそれがイギリスであろうが、アメリカであろうが、あるいはソ連であろうが、常にその事態がありますごとに、強くこれに反省を求め、またこれをやめるように要請を続けて参りました。しかしながら、不幸にしてわれわれのこの国民的な悲願が到達されないことは、私は非常に遺憾に考えております。しかしこの考えは、われわれの一貫した強い考えでありますから、将来も、あらゆる機会にこれを続けていくつもりでありますが、特にこの春以後、太平洋水域において行わるべきアメリカの実験に対しましては、その禁止並びにそれに対するわれわれの強い気持を訴えて、その反省を求めるつもりでおります。
  190. 松本七郎

    松本(七)委員 それから今までの実験ですね、これは、禁止を要求したにかかわらず、強行されたわけですが、やむなく補償要求をやった。ところが補償が全然進んでないようなんですね。その損害がいかに大きいか、これはこの十八日の朝日の朝刊にも報道されておるのですが、一昨年あるいは昨年の補償は、一体どうなっているのでしょうか。何を根拠にしてどのくらい要求し、これがその後どうなっておるかということを、概略御説明願いたいと思います。
  191. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 政府委員答弁させます。
  192. 森治樹

    ○森(治)政府委員 御承知通りに一九五四年のビキニの実験の際には、確か二百万ドルの見舞金が支給せられております。その後、一九五六年のエニウェトクの核爆発実験の際には、日本側では昨年の五月に補償を要求いたしましたが、アメリカ側から一たんこれを拒否して参りましたので、さらに本年の一月になって、現在補償要求をしておる段階でございます。
  193. 松本七郎

    松本(七)委員 補償については、相手が誠意を示さない場合には、国際司法裁判所に提訴するぐらいの決意で臨まなければ、これはなかなか容易に解決しないと思うのですが、外務大臣の所信を一つ伺っておきたい。
  194. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総理大臣が言われましたように、わが国としては、原水爆の実験というものに対して強く反対をいたしております。それから当然の帰結として、強行された場合に損害を要求することは当然でありまして、われわれとしてはできるだけ強硬に、この問題を二国間で話し合って参りますが、終局の解決については、あらゆる方法をもって努力して参りたい。
  195. 松本七郎

    松本(七)委員 司法裁判所はどうです。
  196. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それも一つ方法だろうと思いますが、できるだけ強い立場で二国間の話し合いをしていきます。
  197. 松本七郎

    松本(七)委員 次は、ブルガーニン書簡に対する日本政府の回答は、一体どうなんですか。いつ出され、どのような内容で回答されるのですか。
  198. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ごく最近の機会にブルガーニン書簡に対する回答を出すことにいたしております。内容はその後に発表をいたします。
  199. 松本七郎

    松本(七)委員 総理大臣は本会議の施政演説でも、巨頭会談には賛成だ、頂上会談には賛成であるという意見を表明されたのですが、日本としてもこの会談を推進する方法はいろいろあるだろうと思います。それでこの機会に総理大臣考え方を少し伺っておきたいと思うのですが、その前に外務大臣にちょっとお伺いしたいのは、この前の外務委員会で——おとといですか、川上さんから、インドのネール首相から手紙を受け取っておるかおらないかという質問が出たときに、外務大臣は受け取っておらないという答弁をされているのですね。かりに書簡の形で来ておらないにしても、何らかの形式でインドのネール首相が、自分の考え方を伝えるべく、日本政府に接触をされたという事実はありませんでしょうか。
  200. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 書簡の形では何も来ておりません。私の承知しております範囲内においては、何の接触もございません。
  201. 松本七郎

    松本(七)委員 書簡以外に……。
  202. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 接触はございません。
  203. 松本七郎

    松本(七)委員 聞くところによりますと、何か外交官を通じて、インド首相の巨頭会談についての考え方を明確に岸総理にお伝えしたということが言われておるのですが、そういう事実はございませんでしょうか。
  204. 岸信介

    岸国務大臣 過般インドの駐日大使がインドに帰任をいたしまして、それが帰国いたしまして、東京に帰任した際に、ネール首相が日本に滞在中のいろいろな好意ある政府の処遇、歓待等に対するお礼を伝えるとともに、ネール首相としては最近の国際情勢というものを非常に心配しておる。二人で話し合ったように世界の平和を作り上げるために、現在の緊迫した状況をどういうふうにして緩和すべきかということについては、自分としても非常に心を使っておる、おそらく日本の首相も同様であろうと思うが、一つ将来とも世界の平和を増進するためにわれわれはできるだけ緊密な連絡をもってこれを増進することに努力したいという意味のことが、大使によって私に伝えられた事実はございます。別にそれが何か書簡を持ってきたとか、あるいは何かそれについて具体的のネール首相から提案というか、意見というものを、私に特に提示されたというふうに一部では伝えられておりますけれども、内容はそういうことでございます。
  205. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで巨頭会談、今は外相会議をやって準備してからやるか、あるいは一挙に巨領会談をやるかというようなことが議論されておるわけですが、日本としては直接その会談に入るわけじゃありませんですけれども、やはりこれをいろいろ成功させる努力をする仕方はあろうと思うのですが、考え方としてはどうでしょうか。岸さんはいきなり巨頭会談に持っていった方がいいと考えられますか、それともやはり外相会議でもやって準備していった方がいいと考えられますか。
  206. 岸信介

    岸国務大臣 この二つの方式については、私は非常にむずかしい問題だと思うのです。それは一つは、かつてやられたジュネーヴの巨頭会談が、緩和された空気をかもし出すことに非常に成功したようでありましたが、その後における続いて行われた外相会議がその空気をほとんどぶちこわしたというような事例から見ましても、あるいは準備して積み重ねていった方がいいじゃないかという過去の経験から、そういうことが当事国の間において今考えられておるというのが実情ではないかと思います。いずれにしてもこれは従来の日本としてはそういう経験も持っておりませんし、直接にそういうことに接したわけではございませんが、接した当事国としては、この問題を成功させようという熱意が強ければ強いだけ、その問題でどういう方法をとるかということを真剣にそれらの国々が今考えておるというのが現状ではないかと思うのです。いずれにしましても、私はこの機運をそういうふうに醸成することにつきましては、日本としても努力をいたしておるつもりでございます。外に現われておらないと言われますかもしれませんが、アメリカ側ともいろいろ接触をいたし、われわれの気持も伝えておるわけでありまして、最近の国際的な情勢はその方向に動いておるように私どもは看取いたしております。
  207. 江崎真澄

    江崎委員長 松本君、あなたの持ち時間はすでに経過しておりまするので、結論にお入り願います。
  208. 松本七郎

    松本(七)委員 なるべく急ぎます。では先を急ぎますが、その問題で直接アメリカに促進方を訴えるというようなことも、もちろんこれは必要なことでしょうが、やはり全体の空気を巨頭会談に、巨頭会談にというふうに空気を作っていくことが必要だと思います。そういう努力日本あたりでは相当やり得るのではないか。たとえばさっき出ましたネール首相、こういうところともっと密接に連絡をする。単にネール首相ばかりではない。インドばかりではない。その他アジアの諸国を叫合して、そうしてそういう空気をアジアから盛り上げていく、こういう努力を私は今後急速にやっていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  209. 岸信介

    岸国務大臣 松本委員のお考えも私は有力な方法一つであると思います。十分あらゆる努力をするといううちに含めて、そういうことも考えていきたいと思います。
  210. 松本七郎

    松本(七)委員 日韓関係に影響を及ぼすのではないかという憂慮される問題が出てきておるのですが、それは韓国ノリの輸入問題です。これは御承知のように、韓国政府が在日代表部を通じてやっておる仕事なんです。韓国ノリの日本に対する輸出、これは在日代表部と日本政府との契約になっておるわけです。昨年九月にこれに対して外貨八十万ドルの割当があった。そこで代表部と日本政府の間に契約を結びまして、ノリが日本に輸入された。これは目下大阪の渋沢倉庫にある。これは在日韓国代表部といたしましては、この問題は日韓問題にも非常に影響があるというのが一つの理由。それからもう一つは、一ヵ月に百五十万円の倉庫料を払わなければならない。すでに今までに払ったものが一千万円近くにもなっておる。はなはだどうもこれは困るというわけです。そこで早急にこれを買い取ってもらいたいという話が出てきておるわけですが、この問題、総理大臣今までに聞かれたことございますか。
  211. 岸信介

    岸国務大臣 承知いたしておりませんから、担当の大臣から……。
  212. 松本七郎

    松本(七)委員 このノリはもともとが衆議院の水産委員会で毎年百万束を買うことに決議して、そうして外貨もこれで割当られて輸入されたと言われておるのですが、まだ買い取りの許可はないわけです。そこで韓国代表部では、先ほど申しましたように日韓関係を非常に悪くするおそれがあるということを言っておるわけです。そればかりではなしに、ノリの値段が依然として高い、そこで生活を圧迫しておる。で、このノリを早く出廻るようにしてもらいたいという要望もあるし、また一方には中小業者としてみれば、材料不足に非常に困っておる、そこで中小のノリ産業の倒産寸前にまで追い込まれておるというようなことから、非常に心配されておるというわけなんです。ところが聞くところによりますと、農林省はやっとこれを許可したそうでございまするが、通産省としては、この生産者と輸入業者と問屋、三者の代表からなる需給調整協議会が毎年出す答申を待って、これを許可することになっておるわけなんですが、その答申は、二月七日にこの答申を作ることになっておるにかかわらず、一部の生産業者が反対していると言われているわけです。非常に反対しておる。しかもそれを生産業者が政界の有力者に働きかけて、この答申案の提出を妨害しておるということが報道されておるのです。その上にこの現在倉庫にある百万束のうち四万束は需給調整協議会の、名前は申しませんけれども、某氏が、無為替にこれを切りかえて国内に流しており、この問題について相当数の政界人が関与しておる、こういうわけなんです。これが今問題にされて、韓国代表部でさえもこれが日韓関係に影響があると言って問題にしておるのでございますから、すみやかに調査されて、早く答申するということ、それからこの四万束の横流しについては、すでに警視庁で相当取調べを進めておるということが報道されておるのですが、その取調べの状況、これらについて御報告をしていただきたい。
  213. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 韓国ノリの問題につきましては、ただいまお話がありましたように、生産者と輸入業者との間で話がいろいろ食い違いまして、実は価格の問題が最初非常に問題になりました。通産省としましては、八十セントと四十セントとの中をとって六十セントで話がついたときには、御承知のようにノリの生産の時期に入りまして、生産者が非常に圧迫されるので困るというようなことで延び延びになっておりました。しかしいつまでもほっておくわけには参りません。従って需給調整協議会で話をきめるようにというので、本年に入りましてから大体そういうような空気になって参りました。そしてお話のように何とかして話をきめてしまうようにということで、一応話がきまったと私は聞いておるのでございます。その報告が私の方にきておりますか、きておりませんか——その内容で聞いておりますのは、通関だけすぐやりますが、その販売につきましては需給調整協議会で協議してやっていこう、こういうことで話がついているように聞いております。われわれとしましても放置しておるわけではなしに、従来から極力きまったことは実行するようにということでやっておるのでありまして、別にわれわれも政界のいろんな人がそれに介入しておられるということは考えておりませんし、聞いておりません。また四万束の不正輸入か何かがあるようなお話が出ましたが、私は何らの報告も受けておりません。
  214. 松本七郎

    松本(七)委員 この四方束の無為替に切りかえた問題については、一つ木村税関部長から御答弁願います。
  215. 木村秀弘

    ○木村説明員 四万束の問題につきましては、無為替のライセンスが出されたということは聞いておりません。いずれにしても税関では無為替なら無為替のライセンスがなければ通関を認めない建前になっております。もちろん無為替輸入のライセンスは通産大臣の承認事項になっておりますので、勝手に通関するということはありません。
  216. 松本七郎

    松本(七)委員 警視庁ですでに取調べをやっておるということなんですが、警察庁長官どうです。
  217. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 お答えいたします。警視庁でそういう問題を内偵しているということも私聞いておりません。十分調査しておきます。
  218. 松本七郎

    松本(七)委員 少しピッチを上げます。すでに出た問題で、速記録等によってもう少し明確にしておかなければならない問題がございますので、それを少し補足しておきたいと思います。  第一は、これは成田委員から予算委員会で一度出された問題ですが、ヴェトナム賠償の問題について、ジュネーヴ協定では、南北両ヴェトナムの統一選挙の実施によって、ヴェトナム統一政府の樹立を約束しているわけです。それを、南ヴェトナムに賠償を払ったという根拠、これは外務大臣がすでに答辯されておるのですが、どうもその答弁が不明確なので、もう一度はっきり御答弁願いたいと思うのです。
  219. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 南ヴェトナムはサンフランシスコ条約の調印国であります。従ってそれに応じてやっております。
  220. 松本七郎

    松本(七)委員 調印国であるには違いないけれども、ジュネーヴ協定というものがあるでしょう。これによって、南北両ヴェトナムが統一選挙をすることによってヴェトナム統一政府を作る、それはもうはっきりした約束なんです。この約束を無視して、なぜこういう国際協定を尊重しないで——日本は入ってなくてもこういう国際協定はできるだけ尊重しなければならない。それを尊重しないで払う必要はどこにあるか。統一政府ができることは約束されているのだから、それができるまで待っておって何も悪いことはないじゃないか。なぜ統一政府ができるまで待たないで今早急に払うことにするのか、この点です。
  221. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 南ヴェトナム政府は、ただいま申しましたように、サンフランシスコ条約に調印しております。向うも賠償の要求をいたしてきております。またサミット会議におきまして南北事実上の統一をするということもわれわれは承知いたしております。従って統一政府に引き継がれるものと思っております。
  222. 江崎真澄

    江崎委員 長松本君に申し上げますが、すでに時間を相当経過しておりますから……。あと何問くらいですか。
  223. 松本七郎

    松本(七)委員 問題を別にしますと、これのほかは大体二つくらいです。
  224. 江崎真澄

    江崎委員長 すみやかに結論にお入り願います。     〔「繰り返しだ」と呼ぶ者あり〕
  225. 松本七郎

    松本(七)委員 不明確なことは明確にしておかなければならない。今の御答弁成田委員に対してもそういう御答弁をされておる。統一されれば統一された政府日本との関係を引き継いでいく、こう私どもは了承しておると言われるのですが、統一選挙でどういうような政府ができるかわからないのでしょう。それを自分が勝手に、統一されたときはどうせこの政府が引き継いでいくのだという解釈をされる根拠はどこにあるか。統一されるのを待たなければ、どの政府ができるのかわからないじゃないか。統一されるならばまたこの政府が引き継いでくれるのだから、これに払っていいのだという根拠はどうしても出てこない。そういう点もう少し国際協定というものを尊重した立場に立てば、こういう早まったことはやれないはずだ。この点はどうなんですか。
  226. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国際協定を尊重しておりますから、今申し上げたような御返事をしておるのであります。
  227. 松本七郎

    松本(七)委員 これはまたやり出すと長くなりますから先へ行きます。  その次は、急ぎますけれども、急ぎながらも、あまり急ぐと内容が理解できない問題ですからやや時間をいただきまして、安全保障委員会の性格の問題、これは岸総理が渡米される前に、日米安全保障条約は何とかして改訂するようにしたいという希望を表明されて行かれた。そうして帰られて、新しく日米安全保障委員会というものができたわけですが、あの岸さんの意思表明によって、国民はこれに非常に期待しておった。ところが実際は、日米安全保障委員会では安保条約改訂問題は何ら論議されておらない。これは再三にわたって外務委員会で外務大臣にも聞きましたが、外務大臣は、意見が交換されてないわけじゃないのだ、されておる、こう言われるけれども、しからば、いつどういうことが交換されたかということについては、これは言明をされない。それは、事実がなくて言明されないのか、言明を差し控えておられるのか、そこまではわかりませんけれども、とにかく、国民の受ける印象は、わずか四回、その間に一体いつ安保条約の改訂問題が議論されただろうか、四回目にはサイドワインダー問題が出てきておる。これは将来実質的な軍事機関になってくるんじゃなかろうか、こういう非常な不安を持ってこれをながめておるわけです。それとともに、岸さんの言われた安保条約の改正はどれだけ実行の見込みがあるだろうか、そこにも期待と不安を持ちながら心配いたしておるのが今日の実情だろうと思います。そういう今日の大事なときに、スタンプ太平洋司令官は、二月十三日に、これは読売新聞の特派員の質問に対してはっきり言明されておる。読売の特派員はいろいろな問題を出しております。あのときはナイキ供与のことも出しておる。ナイキ供与するかと言ったところが、日本側が希望するならば自分の方はこれを供与したい、こういうことまで言っておるのですが、その問題はまたに譲るといたしまして、もう一つこの特派員が聞いておりますのは、日本国民は日米安保委員会を通じて日米安保条約が改訂されることを期待しているがどうか、こういう質問をスタンプ司令官に発しておる。これに対してスタンプ司令官は、安保委員会の目的は条約を改訂するためではなく、現在のもとでいかに実際的な運営をうまくやっていくかを討議するためだと思っている、こういうふうに言明して、その平和条約の改訂問題を討議するんじゃないという意思表示をはっきりしているわけです。こういうふうになって参りますと、日本国民はいよいよこの問題については憂慮せざるを得ないので、もう少しこれの問題について私は明確にしておく必要があろうと思うわけです。  そこで、問題を少し急ぎ、またしぼっていくことがいいと思うのですが、第一に私が指摘しなければなりませんのは、この土台になっております岸さんとアイゼンハワー大統領との共同コミュニケ、これがまず問題になると思う。これは、最初はアメリカ軍の配備及び使用というようにばく然とした規定であったのを、わざわざ、ダレスが筆を加えて、合衆国によるその軍隊の日本における配備及び使用について実行可能なときはいつでも協議する、こういうふうに、合衆国の日本における配備、使用というものにぐっとしぼってきておる。そこで、一番問題になりますのは、この日本に駐在しているアメリカ軍が、万一朝鮮三十八度線で混乱が起った、あるいは台湾海域で何か事が起った場合に、このアメリカ日本駐留軍が行動を起すというような場合に、これを日本政府として……。
  228. 江崎真澄

    江崎委員 長松本君、発言中ですが、どうぞ一つ簡単に願います。
  229. 松本七郎

    松本(七)委員 要点をよくつかんでもらうためにある程度言わなければならないが、なるべく急ぎます。  日本外のこの行動を規則できないんじゃないかという問題です。果してこれを規制することができるか。これについては、今までの答弁も——答弁も繰り返していただかないために答弁を申しますと、これは規制できない、こう言っておられるわけです。それを解決するために、日米安全保障条約国際連合憲章との関係に関する交換公文、こういうものをやられたのだろうと思いますが、今後この問題についてはどう対処されていくかということをまず外務大臣から御説明願いたい。
  230. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お説の通り、自衛のためでない場合には、国連憲章の線に沿って問題を処理していく以外に方法はございません。従って、安保条約は国連憲章に即応していくんだという交換公文にいたしたわけであります。
  231. 江崎真澄

    江崎委員長 もう三十分超過しておりますから、あと一問程度で結論を願います。
  232. 松本七郎

    松本(七)委員 急ぎますよ。  国連憲章の五十一条ですかどうですか。
  233. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連憲章の五十一条です。
  234. 松本七郎

    松本(七)委員 国連憲章五十一条ということになると、この前予算委員会で、やはりわが党の今澄委員からの質問に対してもこの問題は出ておるのですが、国連憲章五十一条と安保条約との関係というものはどうなるのですか。
  235. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連憲章に従って安保条約の運営をやっていくわけであります。
  236. 松本七郎

    松本(七)委員 国連憲章に従って安保条約を運営すると言われるけれども、それじゃ、国連憲章五十一条と安保条約のどことが関係してくるかという点を伺いたい。
  237. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 自衛以外の問題につきましては、国連憲章の趣旨にのっとってやらなければならぬと承知しております。
  238. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、五十一条ですから、おそらく集団的自衛権という、このことですか。集団的自衛権ですか。
  239. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 法律問題になりますので、私から御説明申し上げたいと思います。日米双方とも国連憲章の規定を遵守すべく国連憲章の権利義務を持っているわけでございます。従いまして、安保条約を締結します場合に、安保条約の一方の当事国でありました日本は、当時加盟国でなかったもんですから、その点で多少疑いが起きるというようなことがあると困りますので、ここで安保条約と国連憲章の関係を再確認いたしまして、安保条約によってわれわれは権利義務を持ちますが、それ以前にやはり国連憲章の権利義務もわれわれは当然持っているものであるということをこの交換公文で確認した次第でございます。
  240. 松本七郎

    松本(七)委員 だから、集団的自衛でしよう。
  241. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 そこで、集団的自衛権の問題になりますと、安保条約の第一条で、極東の平和と安全のために在日米軍が使用されることができるというふうに規定してございますが、極東の平和と安全のために使用されるということは具体的にどういうことかと申しますと、結局国連憲章に合致した使用でなければならないということになるかと思います。国連憲章に合致した使用と申しますのは、国連憲章は武力の使用と武力による威嚇は禁止しております。従いまして、国連憲章で武力を行使することができるという場合は、憲章五十一条の個別的または集団的自衛権によるか、または安全保障理事会の決定によって、またはその許可によって使用される場合である。従って、このような場合にしか使用できない。そういうように、極東の平和と安全のために、在日米軍の使用は理解さるべきであるというふうに考える次第であります。
  242. 江崎真澄

    江崎委員長 松本君、すでにもう三十分も申し合せの時間を過ぎておりますから、その点一つよく含んでやって下さい。
  243. 松本七郎

    松本(七)委員 この問題の答弁がきちっと出ればそれで済むのですが、答弁が不十分だから仕方がないじゃないですか。  今の答弁で、非常にあれな点があるのです。五十一条の集団的自衛権でやると言われるけれども、それじゃ、はっきりわかるように、こういうふうに聞いたらどうですか。集団的自衛というけれども、日米安保条約に果して集団的自衛というものが全面的にあり得るかという問題がまたあるのです。それは、日本の国内に紛争が起った、動乱が起った、外国から侵略が来た、これはアメリカ軍も防衛に出なければならない。日本も協力しなければならない。だから、これは集団的自衛の考え方はあり得るし、集団的自衛でなくても、これはあの規定から言えばやれるわけです。ところが、海外に起った場合です。たとえば、朝鮮に起った場合とか、あるいは台湾水域に起ったという場合に、アメリカ軍が出動したときこれは集団的自衛にはならないでしょう、こういうことです。集団的自衛にはなり得ないだろうということです。
  244. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。日本における自衛権の問題はお説の通りでございます。そこで、日本外におきます問題でございますが、これはやはり、アメリカの軍隊の場合でございますと、アメリカの軍隊、すなわち米国の個別的または集団的な自衛権の行使の場面がございますれば、それに従ってやらなければならない。たとえば、米国の軍隊が日本の領域以外、極東において存在します場合、またその存在の地域と協定を結びましてお互いに集団的自衛権の存在を確認し合っておる場合でございます。その場合は、われわれ日本の自衛権とか集団的自衛権とは別に、アメリカ合衆国とそのほかの国との集団的自衛の関係が存在しますから、その自衛関係に基いて権利を行使することができるというふうに考えております。
  245. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ、これで最後にいたしますが、今の答弁はまだまだ問題を含んでおるのです。集団的自衛と、こう言われるけれども、外で事が起った場合にアメリカ軍が出動する、よその国が出動する、それに日本は加わって出動できないですよ。憲法で禁止して、できないから。この間外務大臣は、安保条約は共同防衛の考え方からきておるのだと言われるけれども、そうじゃない。ほんとうの意味の共同防衛というものは安保条約では出ていないのです。憲法の規定によって外に出られないのだから。だから、本来の意味の共同防衛というものは日本には禁止されておると見なければならない。そうなれば、外で紛争が起った場合に、日本にいるアメリカ軍が出る、日本がこれに協力するのは、日本の基地における協力しかできない。だから、本来の意味の集団自衛じゃないのです。そうでしょう。そうなると、今まで答弁されておるのは、今も外務大臣が言われたように、国連憲章でやるのだ、その国連憲章の何条かと言えば、それは五十一条だ。そのことが日米安全保障条約と国連憲章との関係に関する交換公文の主要な点であり、日本の安全保障条約とそれから国連憲章との関係の一番のポイントになっておるわけでしょう。そのポイント自体が非常におかしいわけなんです。共同防衛というものは日本はあり得ない。あり得ないから、ああいう変則的な安全保障条約というもので日本はいかざるを得なくなったわけだ。だから、共同防衛の観念、集団自衛の観念をもって日本のあれができるというふうに説明することは、これはもう日本の憲法、それから憲法が禁止しておる共同防衛ができないから安全保障条約の建前をとった、このこと自体と矛盾してくるのです。そういう問題を一つ含んでおる。そして、それ以上は問題が深くなりますから、別なときにこの問題はまたやりますけれども、そういう問題を含んでおるということと同時に、かりに一歩譲って国連憲章五十一条でやれるとこう仮定いたしましても、国連憲章五十一条は、御承知のように、日本にいるアメリカ軍が出動する、その場合には、出動前に国連に相談して、動いてよろしいという承認を経ていくという規定じゃないんです。出動した後に報告するわけなんです。そうして向う理事会を開く。理事会を開いたらあるいは拒否権でだめになるかもしれない。その場合は臨時総会を開く。その臨時総会は三分の二がなければ決定はできない。そうしたら、出動をした、国連に通知は行った、しかし何らかの措置がいつまでたってもとられないということがあり得るわけです。そうなりますと、日本にいるアメリカ軍が出動した、出動したために攻撃は日本が受けなければならない、その間は国連の方は何らの措置もとれないという事態が実際あり得るわけです。それですから、私どもは、早く、端的に申しますならば安保条約の改訂問題として、これはどうしてもそういう出動は事前に国連の許可を得てからでなければ出動できないというふうにこれを全面的に変えるか、それでなかったならば、今安全保障条約で規定しておるこの極東の安全のために出るという規定をすみやかに削除するか、どっちかがこの安全保障条約改訂の最も中心的な、基本的な問題になっておると思うのでございます。ですから、私は、こういう問題をすみやかに安保委員会あたりで問題にするなり、それが不適当なら、政府としてこの問題についてもっと明確な今後の対策を立てる必要が今迫られておるということを考えるのでございますが、これについて今後十分研究される御意思があるか、あるいはすでに研究されてこういうものを作られたのか、その点を一つ明快にお答え願いたい。私どもの今申しました説明から考えますと、幾らあなたが善意におやりになったといたしましても、結果的に、また法理論的には、この日米安全保障条約と国連憲章との関係に関する交換公文というのは、アメリカ軍がそういうふうに日本にも相談なしに、あるいは国連に相談する以前に出動できるという、そういうものの一種の隠れみのになってしまっているということを言わざるを得ないのであります。こういう点についての明快なお考え方をこの際伺っておきたいのであります。
  246. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安保委員会は、御承知通り、日米安全保障条約から起ります諸般の問題を討議するわけでありまして、アイゼンハワー大統領と岸総理とのコミュニケにありますように、三つの目的を持って運営されるわけであります。その最後に、安全保障条約の問題を日米両国民の願望に沿って改善していくということがうたってあるのでありまして、私は熱心にその線に沿って今後も運営をやっていく予定でおります。
  247. 江崎真澄

    江崎委員長 以上をもちまして補正予算二案に対する質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。井堀繁雄君。
  248. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は、日本社会党を代表して、政府提出昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)並びに昭和三十二年度特別会計予算補正(特第4号)に対し反対をし、政府に対し直ちに本案を撤回されて再編成の上再提出されることを要請するものであります。(拍手)  今回の補正予算は、一般会計予算において歳入歳出の規模は三百九十四億二千六百万円、歳入の財源は三十二年度の租税収入の増徴を見込んで、たとえば法人税の三百億円、相続税の十四億二千六百万円、関税の八十億円の自然増収をその財源に見込んでおるのであります。さらに、これを先食いする性格を持ったものでありますが、あとで言及いたしたいと思います。  そこで、歳出の面でありまするが、その一つは、駐留軍労務者の離職特別給与金に八千八百九十六万円を見込んでおります。地方交付税交付金財源として七十八億円、食糧管理特別会計への繰り入れとして三百十億三千七百四万円、イルカ漁業の整理転換助成費として五億円、これらが計上してあるのでありますが、特別会計補正については、交付税及び譲与税の配付金が特別会計一般会計から七十八億円の繰り入れとなっておるのであります。  ここで、歳出の駐留軍労務者に対する特別給付金についてでありますが、わずかに八千八百九十六万円でありまして、政府のこれに対する考え方は、昭和三十二年の六月二十二日以降三十三年三月の末までの退職者を三万五千人と見込んでおるようであります。この数字からいたしますと、頭割りにするとわずかに二千四百七十円というきわめて少額なもので、子供の小づかいにすぎないのであります。これは、言うまでもなく、前臨時国会総理からも答弁があり、政府の態度は明らかになっておるはずでありますが、日米両国の首席代表すなわち岸・アイクの会談という形において日本国とアメリカ合衆国との間に安全保障条約の第三条に基くところの行政協定及び交換文書、この外交上のきわめて権威あるべき形において両国の首脳者が取りきめられた問題に基因するところの事柄であることは今さら言うまでもないのであります。かような性格からいたしますと、その金額が著しく少額であるというだけでなく、これと同じ性格を持つ、たとえば連合軍に雇用されております労務者あるいはこれと全く同質といわれます特需関係の労務者などについて一つも触れていないという点であります。これは重大な手落ちであると言わなければならぬのであります。前にも述べたのでありますが、日本国が独立をいたしましてその体面を保持する上には、かかる事態に対する厳格な措置が講ぜられなければならぬものであると私は思うのであります。この条約の権威ある最終的な処置が政府によってなされなければならない。その裏打ちの予算案であったはずであります。永年にわたりまして日本国民にかわってこの条約の忠実なる履行のために幾多の忍びがたい屈辱に耐えて、また数々の困苦と戦い続けてこられたこれらの多くの労務者に対する最後の日本国民としての手向けであります。政府はこの精神によって物質的にも精神的にも遺憾なき処遇を講ぜられなければならないはずのものであります。私ども、こういう問題に対するかかる予算の組み方に対しては、単に政府の誠意を疑うのみではありません。日本国の独立の権威にかけて遺憾に思うのであります。わが党は、これに対し、さきに政府に対してあらかじめ具体的な要望や警告をいたしておったのでありますが、これがいれられておりません。今日の貨幣の価格からいたしますならば、少くも一人当りに五万円を下らないものが醵出さるべきことは、常識として何人も首肯できるところであろうと思います。また、日米両国の公式協定によって整理されるという公けの意味における労働問題の処置でありますから、これは全体に均衡できるようにいたさなければならぬはずであります。こういったような問題が全然考慮されていない本案には、この一点をもちましても、予算案補正としての性格上全くわれわれは反対せざるを得ないのであります。  次に、食管特別会計の問題については、先日から本日にかけてわが党の委員によって追及いたしましたことで明らかでありますが、三百十億三千七百四万円のこの政府答弁というものは、全くしどろもどろでありまして、一向要領を得ないのであります。絶えず答弁に行き詰まっているありさまは、まことにお気の毒にたえなかったのでありますが、たとえば、歳出の面における食管特別会計の歳入操り入れ百五十億円は、三十二年度並びに三十三年度の食管会計赤字見込みの補てんに充てる、そうして調整金であると政府説明しておるのでありますが、昨年の本委員会におきましてわが党の委員が質問いたしましたのに対して、食管会計の赤字の処理は決算確定の後に初めて行うものであるということを強く主張して、その基本を貫いて参ったのであります。それが、たった一年たたないうちに、全くこれとは反対に財政処理をみずから提案せんとしておるのでありますが、政府財政処理、予算編成のこういう基本的な問題に対して無原則、無原理であるということをみずから暴露するところのものでありまして、国家予算編成の権威の上から言ってまことに遺憾なことであります。また、三十三年度の赤字見込み額についてでありますが、きのうの本委員会において赤城農林大臣は、わが党の小平委員の追及を受けまして、そう質問されては私は困りますという、女学生の悲鳴のようなまことにかわいい悲鳴を発せられましたのは、その実態を伝えるような一幕であったと思うのでありますが、政府は三十三年度の赤字見込みにつきましては何らの確信を持っていない。またその見通しについてもそうであります。しかるに、ここで調整資金という新しい言葉を用いた点に注意をしなければなりません。こういう新しい用語を使って煙幕を引き、あるいはヴェールをかぶせて糊塗しようとすることは、あまりにも児戯にひとしいやり方であることを指摘しておきたいと思うのであります。このような食管会計におきます処置というものは申すまでもありませんが、さらに、百六十億円の借入金についてでありますが、政府答弁はこの点についてはまことに不明確なものでありました。三十三年度の食管会計につきましては、これはわれわれもよほど厳重に検討しなければならぬという感じを強くいたしました。こういう関係からいきして、三十三年度の食管会計に関する補正についてはもちろん賛成ができないのみではなくて、こういう食管関係の実態というものを一日も早く明瞭なものにいたしますためにも、本案の提案はその本質において多くの欠陥を有することを指摘しなければならぬと思います。  そこで、私は、重要な点をもう一つ言及いたして反対の討論にかえようと思うのでありますが、それは歳入の面についてであります。三百九十四億二千六百万円の三十二年度の租税収入の増収を見込みまして、これを先食いしようとしておるのでありますが、これは非常に重大なことであります。元来、自然増収については、税制調査特別委員会の答申にもありますが、こういうやり方は、私は財政法の規定にそむくのではないかと思うのであります。元来、財政法の解釈からいきますならば、三十四年度の余剰金に受け入れられる、すなわちむしろ歳入に計上されてくる性格のものであると思うのであります。政府説明によりますと、三十三年度は実質三%程度の経済の成長率を見込んでおる。これは三十二年度の成長率約六%と比べてみますと、その半分である。三十三年度の租税収入につきましては、政府が税制改革をしなければ千五十億円程度の自然増収が見込まれる。ところが、三十三年度の経済成長率は三十二年度の約半分であります。でありますから、半分程度の推定の上に立ちましても、三十四年度における租税の自然増収一千五十億円というものは、その半分とならないまでも、大きく下回らなければならぬと思うのであります。このように、三十四年度の財源について必ずしも楽観を許されないという見通しを政府みずから立てておいでになる。ところが、ここで、みずから自己否定をするような、その財源を先食いしょうというのでありますから、この予算案は歳入の面から参りましても絶対に許せない。政府はこのようにみずから矛盾を犯しております。またみずから撞着を繰り返そうとしておるのであります。  かくして、私どもは、歳出の面、歳入の面の一、二の事実をあげてみましても、本案はいかにずさんなものであり、不合理と矛盾を内包しておるものであるかということが明らかになっておるのであります。のみならず、財政法の精神からいきましても、また自然増収に対する取扱いという基本的な予算編成の上からいきましても、本案はまことに悪例を残すべき補正案と言わなければならぬのであります。  私どもは、かような事情からいたしまして、本案に対しまして反対をいたしますことはもちろんでありますが、政府は、十分この点を反省されまして、ぜひ本案を撤回されて、わが党の意をいれて再編成して提出されんことを要望いたしたいのであります。  以上、私ども社会党の立場を明らかにし、反対討論を終る次第であります。(拍手)
  249. 江崎真澄

    江崎委員長 上林山榮吉君、
  250. 上林山榮吉

    ○上林山委員 私は、自由民主党を代表しまして、ただいま議題となりました昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)及び特別会計予算補正(特第四号)の政府原案に賛成の意を表するものであります。  この予算の内容につきましては、さきに大蔵大臣から説明がありました通り、歳出におきましては、食糧管理特別会計昭和三十一年度決算による損失の補てん百六十億円、及び今回新たに法律をもって食管会計に資金を設けることに伴い一般会計から百五十億円を繰り入れる経費を中心とするもので、食管会計改善の適切な処置であるが、その他、地方交付税交付金の増加額七十八億円、駐留軍労務者に対する特別給付金八千八百余万円、イルカ漁業の漁業者の他漁業への転換助成費五億円で、いずれも急を要するもので、歳出は計三百九十四億余万円であります。  これらの歳出をまかなう財源といたしまして、法人税三百億円、相続税十四億余万円、関税におきまして八十億円、それぞれの自然増収をもって充てることになっております。  まず、食糧管理特別会計につきましては、昭和三十一年度の決算に基く赤字補てん百六十億円は、食管法附則第二項によって一般会計から繰り入れを行うことは当然のことでございますが、新たに法律をもって資金を設けることになった百五十億円の繰り入れは、きわめて画期的措置を講じたものと思うのであります。すなわち、食管会計は、これまで赤字が出ても、その赤字の出どころがはなはだ不明確な点がありまして、いわゆるどんぶり勘定とも言われ、常に論議をかもして参りましたことはすでに御承知のところであります。これらの不合理性を改めるため、昨年内閣に学識経験者及び専門の関係者からなる臨時食糧管理調査会が設置せられ、熱心に調査研究した結果、さきにこの調査会からの答申がなされたのであります。今回、政府は、この調査会の答申を尊重いたしまして、食管会計における経理の明確化及び損益処理の適正化を期することとし、昭和三十三年度予算より各部門別に勘定を設けることとしておるのであります。よって、今後は赤字見合額を考慮して一般会計より調整勘定に資金を繰り入れ、この資金と輸入麦等の益金で食管会計の損失を調整していこうというのでありまして、これによって食管会計における経理運営の改善、合理化の方向を打ち出したものであり、特に適切な措置が講ぜられたものと言うことができるのであります。  次に、地方交付税交付金は、法人税三百億円の増収に伴う交付率二六%に当る法律上当然の予算計上でありまして、これによって三十二年度における地方交付税交付金の総額は一千九百四十五億円となり、地方財政運営の円滑化が期待できるものと思うのであります。  駐留軍労務者に対する特別給付金につきましては、アメリカ合衆国軍隊の本国への引き揚げ、配備の変更等によりまして、退職を余儀なくされた者、あるいは業務上の傷病等によって退職を余儀なくされ、または死亡した人たちおよそ一万五千七百名を対象として特別給付するための措置を講じたものでありまして、政府の適切な配慮が示されたものとして同慶の至りであります。  また、従来イルカ漁業に従事しながらオットセイの捕獲を行なっている漁業者に対する転換助成費五億円につきましては、オットセイの捕獲を禁止する国際的取りきめを完全に実施すると  ともに、これら漁業者を正常なる漁業に転換させるための資金の助成を行うものでありますから、きわめて妥当の措置であると思うのであります。  以上、簡単でございますが、私は本補正予算の政府原案に賛成し討論を終ることといたします。(拍手)
  251. 江崎真澄

    江崎委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。採決は一括してこれを行います。昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第4号)に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  252. 江崎真澄

    江崎委員長 起立多数。よって、昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)及び昭和三十二年度特別会計予算補正(特第4号)はいずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)  委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 江崎真澄

    江崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本会議散会後第一委員室において理事会を開きまするから、理事の諸君は御承知を願います。  明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時十九分散会      ————◇—————