○井堀
委員 私は、
日本社会党を代表して、
政府提出の
昭和三十二年度
一般会計予算補正(第2号)並びに
昭和三十二年度
特別会計予算補正(特第4号)に対し反対をし、
政府に対し直ちに本案を撤回されて再編成の上再
提出されることを要請するものであります。(拍手)
今回の補正予算は、
一般会計予算において歳入歳出の規模は三百九十四億二千六百万円、歳入の財源は三十二年度の租税収入の増徴を見込んで、たとえば法人税の三百億円、相続税の十四億二千六百万円、関税の八十億円の自然増収をその財源に見込んでおるのであります。さらに、これを先食いする
性格を持ったものでありますが、あとで言及いたしたいと思います。
そこで、歳出の面でありまするが、その
一つは、駐留軍労務者の離職特別給与金に八千八百九十六万円を見込んでおります。地方交付税交付金財源として七十八億円、食糧管理特別
会計への繰り入れとして三百十億三千七百四万円、イルカ漁業の整理転換助成費として五億円、これらが計上してあるのでありますが、特別
会計補正については、交付税及び譲与税の配付金が特別
会計に
一般会計から七十八億円の繰り入れとなっておるのであります。
ここで、歳出の駐留軍労務者に対する特別給付金についてでありますが、わずかに八千八百九十六万円でありまして、
政府のこれに対する
考え方は、
昭和三十二年の六月二十二日以降三十三年三月の末までの退職者を三万五千人と見込んでおるようであります。この数字からいたしますと、頭割りにするとわずかに二千四百七十円というきわめて少額なもので、子供の小づかいにすぎないのであります。これは、言うまでもなく、前臨時
国会で
総理からも
答弁があり、
政府の態度は明らかになっておるはずでありますが、日米両国の首席代表すなわち岸・アイクの会談という形において
日本国と
アメリカ合衆国との間に安全保障
条約の第三条に基くところの行政協定及び交換
文書、この外交上のきわめて権威あるべき形において両国の首脳者が取りきめられた問題に基因するところの事柄であることは今さら言うまでもないのであります。かような
性格からいたしますと、その
金額が著しく少額であるというだけでなく、これと同じ
性格を持つ、たとえば連合軍に雇用されております労務者あるいはこれと全く同質といわれます特需
関係の労務者などについて
一つも触れていないという点であります。これは重大な
手落ちであると言わなければならぬのであります。前にも述べたのでありますが、
日本国が独立をいたしましてその体面を保持する上には、かかる事態に対する厳格な措置が講ぜられなければならぬものであると私は思うのであります。この
条約の権威ある最終的な処置が
政府によってなされなければならない。その裏打ちの予算案であったはずであります。永年にわたりまして
日本の
国民にかわってこの
条約の忠実なる履行のために幾多の忍びがたい屈辱に耐えて、また数々の困苦と戦い続けてこられたこれらの多くの労務者に対する最後の
日本の
国民としての手向けであります。
政府はこの精神によって物質的にも精神的にも遺憾なき処遇を講ぜられなければならないはずのものであります。私ども、こういう問題に対するかかる予算の組み方に対しては、単に
政府の誠意を疑うのみではありません。
日本国の独立の権威にかけて遺憾に思うのであります。わが党は、これに対し、さきに
政府に対してあらかじめ具体的な要望や
警告をいたしておったのでありますが、これがいれられておりません。今日の貨幣の価格からいたしますならば、少くも一人当りに五万円を下らないものが醵出さるべきことは、常識として何人も首肯できるところであろうと思います。また、日米両国の公式協定によって整理されるという公けの
意味における労働問題の処置でありますから、これは全体に均衡できるようにいたさなければならぬはずであります。こういったような問題が全然考慮されていない本案には、この一点をもちましても、予算案補正としての
性格上全くわれわれは反対せざるを得ないのであります。
次に、
食管特別会計の問題については、先日から本日にかけてわが党の
委員によって追及いたしましたことで明らかでありますが、三百十億三千七百四万円のこの
政府答弁というものは、全くしどろもどろでありまして、一向要領を得ないのであります。絶えず
答弁に行き詰まっているありさまは、まことにお気の毒にたえなかったのでありますが、たとえば、歳出の面における
食管特別会計の歳入操り入れ百五十億円は、三十二年度並びに三十三年度の食管
会計赤字見込みの補てんに充てる、そうして
調整金であると
政府は
説明しておるのでありますが、昨年の本
委員会におきましてわが党の
委員が質問いたしましたのに対して、食管
会計の赤字の処理は決算確定の後に初めて行うものであるということを強く主張して、その基本を貫いて参ったのであります。それが、たった一年たたないうちに、全くこれとは反対に
財政処理をみずから提案せんとしておるのでありますが、
政府は
財政処理、予算編成のこういう基本的な問題に対して無原則、無原理であるということをみずから暴露するところのものでありまして、国家予算編成の権威の上から言ってまことに遺憾なことであります。また、三十三年度の赤字見込み額についてでありますが、きのうの本
委員会において赤城農林大臣は、わが党の
小平委員の追及を受けまして、そう質問されては私は困りますという、女学生の悲鳴のようなまことにかわいい悲鳴を発せられましたのは、その実態を伝えるような一幕であったと思うのでありますが、
政府は三十三年度の赤字見込みにつきましては何らの確信を持っていない。またその見通しについてもそうであります。しかるに、ここで
調整資金という新しい言葉を用いた点に注意をしなければなりません。こういう新しい用語を使って煙幕を引き、あるいはヴェールをかぶせて糊塗しようとすることは、あまりにも児戯にひとしいやり方であることを指摘しておきたいと思うのであります。このような食管
会計におきます処置というものは申すまでもありませんが、さらに、百六十億円の
借入金についてでありますが、
政府の
答弁はこの点についてはまことに不明確なものでありました。三十三年度の食管
会計につきましては、これはわれわれもよほど厳重に検討しなければならぬという感じを強くいたしました。こういう
関係からいきして、三十三年度の食管
会計に関する補正についてはもちろん賛成ができないのみではなくて、こういう食管
関係の実態というものを一日も早く明瞭なものにいたしますためにも、本案の提案はその本質において多くの欠陥を有することを指摘しなければならぬと思います。
そこで、私は、重要な点をもう
一つ言及いたして反対の討論にかえようと思うのでありますが、それは歳入の面についてであります。三百九十四億二千六百万円の三十二年度の租税収入の増収を見込みまして、これを先食いしようとしておるのでありますが、これは非常に重大なことであります。元来、自然増収については、税制調査特別
委員会の答申にもありますが、こういうやり方は、私は
財政法の規定にそむくのではないかと思うのであります。元来、
財政法の解釈からいきますならば、三十四年度の余剰金に受け入れられる、すなわちむしろ歳入に計上されてくる
性格のものであると思うのであります。
政府の
説明によりますと、三十三年度は実質三%程度の
経済の成長率を見込んでおる。これは三十二年度の成長率約六%と比べてみますと、その半分である。三十三年度の租税収入につきましては、
政府が税制改革をしなければ千五十億円程度の自然増収が見込まれる。ところが、三十三年度の
経済成長率は三十二年度の約半分であります。でありますから、半分程度の推定の上に立ちましても、三十四年度における租税の自然増収一千五十億円というものは、その半分とならないまでも、大きく下回らなければならぬと思うのであります。このように、三十四年度の財源について必ずしも楽観を許されないという見通しを
政府みずから立てておいでになる。ところが、ここで、みずから自己否定をするような、その財源を先食いしょうというのでありますから、この予算案は歳入の面から参りましても絶対に許せない。
政府はこのようにみずから矛盾を犯しております。またみずから撞着を繰り返そうとしておるのであります。
かくして、私どもは、歳出の面、歳入の面の一、二の事実をあげてみましても、本案はいかにずさんなものであり、不合理と矛盾を内包しておるものであるかということが明らかになっておるのであります。のみならず、
財政法の精神からいきましても、また自然増収に対する取扱いという基本的な予算編成の上からいきましても、本案はまことに悪例を残すべき補正案と言わなければならぬのであります。
私どもは、かような事情からいたしまして、本案に対しまして反対をいたしますことはもちろんでありますが、
政府は、十分この点を反省されまして、ぜひ本案を撤回されて、わが党の意をいれて再編成して
提出されんことを要望いたしたいのであります。
以上、私ども社会党の
立場を明らかにし、反対討論を終る次第であります。(拍手)