○中井徳次郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
政府提案の
地方税法の一部を
改正する
法律案及び同修正案に
反対し、
社会党提出の同法の修正案に賛成の討論を行わんとするものであります。(
拍手)
政府の
改正案の
内容は大体七項目に分れておりまするが、そのおもなるものは、まず自転車荷車税の廃止、たばこ消費税率の
引き上げ、電気ガス税の非課税範囲の拡大、木材引取税の税率の半減等でございます。
まず第一に、自転車荷車税について申し上げますと、この廃止は、実はかねてから
社会党の主張してきたところでございます。昨年度の本
国会におきましても、私はこの壇上よりそれを主張いたしたことであります。しかしながら、この廃止には現在の市町村の困難なる財政状態から見まして、これに見返る確実なる財源を付与するということが必須
条件であり、これが前程
条件でなければならぬのであります。(
拍手)しかるに、この廃止の問題につきましては、実は今回の
政府の
地方税制の
改正の事務当局の原案にはありませんでした。これが閣議において話が出まして、早々の間に、実は
選挙対策として
社会党の
政策を借用されたというふうな形でありますから、その結果、財源の取り方がはなはだ乱暴であります。すなわち、市町村たばこ消費税を二%
引き上げて、総体としてはこの額が合うということになりますけれ
ども、税源の乏しい山村の町村、
地方の小都市等におきましては、たとえば、たばこの小売店が人口比率によってずっとあるわけではございませんから、非常な減収になって参ります。そうして、
政府にこれが説明を求めますと、一体減収になる町村の税額の総額は幾らであるかという答弁さえできない。ただ、府県単位としまして、たとえば埼玉県においてはプラス・マイナスの計算でどうなる、静岡県ではプラス・マイナスでは二千万円の減収になるという数字だけは出ますが、マイナスだけの総計は出てこない。このプラス・マイナスの数字だけで日本全国で七億円だというのでありますから、私
どもの判断ではおそらく十数億に上りまして、個々の市町村の財政欠陥ということになります。これに対しまして、
政府はいつも交付税と言うのでありますが、こういうふうに税制
改正をいたしますごとに差額ができるということは今の
政府の野放し、自由放任の資本主義体制下にありましては当然のことでありまして、これを放置して今回
改正をしようというがごときは、断じてわれわれの承服しがたいところでございます。
第二は木材の引取税であります。これにつきましては、この引取税の性格からいいまして、自転車荷車税以上に山村の市町村にかわりの安定財源を与えなければなりません。たとえば、一定の年限を経ました立木等につきまして、きわめて軽い、今の固定資産税の一割あるいは二割程度の固定資産税的性格を持った税金を課するとか、あるいは木材の伐採税のごとき税種を設ける、それと振りかえにこの引取税を廃止せよというのでありまして、これは私
どもも賛成でありますが、
政府はその裏打ち財源の措置をとりもしないで、一部業者の圧力に押されて、今日この税率を半減いたしました。
大臣の説明によりますと、税率を半減しても、西日本においては税収入は変りはない。まことに奇妙なことであります。東北、北海道のごとく国有林の多いところは一般交付税及び特別交付税でカバーすることができると言っておりますが、これはやはり語るに落ちたものといわねばなりません。すなわち、税率を半減しても税額が減らないというのは、過去における木材引取税の徴税のでたらめさを表明したものであります。そうして、
政府のこの方面における指導が全く欠けておったということを暴露したものであろうと思うのであります。また、東北及び北海道においては先に述べた自転車荷車税と同じように、この回答はやはり、
地方交付税、特別交付税まるでおかみさんが買物かごに物を買って全部それにほうり込むようなどんぶり勘定の答弁でありまして、これでは全国の市町村にとりましては、税収入の将来についていたずらに不安感を与えるだけでありまして、私
どもはとうてい首肯しかねる次第であると思います。
第三には、電気、ガス税の非課税範囲の拡大であります。これについては、金額にしましては一億円ばかりだ。そうして、
内容がジルコニウム地金、エチレン、テレフタール酸、エチレンオキサイド等々まことにむずかしい表現をもちまして、こういうものを製造するために使用する電気については免税となっておりますが、だんだん調べてみますと、一体こういうものを製造しておる
会社はどこかということになって参りますと、いわく三井石油、いわく住友化学、いわく三菱油化、いわく東洋レーヨン、いわく帝国人絹、カネカロン等々でありまして、いずれも日本の大産業系統のものであります。わずか一億円ばかりのものを、こうした一部大
会社の要求がありました場合には、直ちに、わざわざこれは国税ではありません、
地方税まで免税をするというところに、私は現
政府の性格を見るのでありまして、あきれ返った次第だと存じます。
以上、すなわち、自転車荷車税及び木材引取税につきましては、それによる見返り財源の不確実さという点において、
政府のこのどろなわ的な対策には賛成するわけにはいかないし、電気ガス税の免税については断固
反対せざるを得ないということになります。
政府の
提出案に対しまして、
社会党の
改正案は、まず第一に、現在
地方税中の最も問題の多い事業税に手をつけております。シャゥプ勧告以来、事業税の取り方につきましては、これは絶えず論争の的であります。中政連の主張を待つまでもなく、現在の事業税は果して応益性のものか、あるいは応能性のものか、はっきりいたしておりません。結局のところ、特に府県財政の混乱を救うための便宜的なものとして、商業、工業等にのみ課せられておる税金でありまするから、方向といたしましては将来撤廃に進むべきものであろうと思います。しかし、私
どもはさしあたりその現実の面を
十分勘案いたしまして漸進主義をとり、今般個人企業を中心として基礎控除を二十万円まで
引き上げ、税率を一律に二%引き下げるということにいたしました。
また、電気ガス税につきましては、
政府の
意見と全く対立をいたしております。戦後の復興も一応見通しがついて、大産業の
経営も昨年あたり異常な高利潤を上げた今日、これら産業に付随する電気、ガスの料金は、しかもまた他の一般料金に比べて非常に安い今日、依然として免税を続けて、中小企業はもとより、
生活援護者に至るまで、一般
国民大衆には一割の高率をずっとかけておるというがごときは断じて私
どもは首肯し得ないところであります。(
拍手)従いまして、わが党は、税率を一律に七%に引き下げまするとともに、街路灯のごときは一挙に免税にする。そうして、現在非課税でありまする一千数百億に及びまする電気料金について、一律に三%の課説を試みようとするものであります。現在の社会情勢より見まして、まことに妥当なものといわねばならぬと存ずるのであります。(
拍手)
次に、遊興飲食税について申し上げたい。昨年度、
政府は、芸者の花代を三割より一割五分に一挙に引き下げながら、
大衆飲食の税率を逆に五%から一割に
引き上げましたことは、その当時、世論のひんしゅくを買いました。そうして、保守党
内閣は、明年は改めます。こういう回答でありましたが、今年は依然としてほおかむりであります。そこで、私
どもは、
大衆飲食の免税点を現在の三百円より五百円に
引き上げ、旅館の宿泊の免税点を八百円より千円に
引き上げることにしたのであります。これは、
大衆の側から見て、時宜に適した、当然のことといわねばなりません。本件につきましては、
与党の
諸君も大半賛成やに私は承っておる。最後に
幹部の解釈によりまして押えつけられたのが実情であるように聞いております。はなはだ残念なことだと存ずるのであります。(
拍手)
なお、事業税その他の減税に伴う見返り財源につきましては、たばこ消費税を一挙に
引き上げまして、これをカバーしたい。これは、
政府の諮問機関でありまする
地方制度調査会が三年前から答申をし、これを主張し続けておるところであります。これによりまして、将来は、国の歳入の欠陥というものは租税特別措置法の
改正によりまして幾らでもカバーができるのでありまして、これに対する
与党、
政府等の御批判は私は当らないと
考えております。
以上をもちまして、
政府の提案に
反対し、
社会党提出の
地方税の一部
改正に賛成をする討論といたします。(
拍手)