○
横山利秋君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました
政府提出の
税法四
法案に
反対し、
社会党提出の
修正案に心から
賛成をいたすものであります。(
拍手)
昭和三十三
年度の
税制改正案の
成案過程は、
予算編成が神武以来の難航と見苦しさを露呈いたしましたのと表裏
一体をなすものであります。元来、昨年九月十日、三十三
年度予算編成要綱が決定されましたときには、
減税のげの字もなく、いわゆる渋い
予算、完全たな
上げ予算、
輸出中心のそれでありました。しかるに、わが党の追及と
世論の反撃にあいましたら、
税制審議会に対しまして、当初
相続税の
諮問だけしていたものが、次いで
入場税、続いて
間接税、年末に至って急逝当面の
一般減税など、基本的な
構想も税に対する根本的な基盤もなく、まことに、次から次への、その場限りの
諮問でありました。そのために、でき上りました今回の
改正は、そのことごとくが、
低額所得者に縁もゆかりもない、
高額所得者、大
企業擁護の
政策減税であって、
世論はおろか、
大蔵事務当局ですら陰で不評判さくさくという始末であります。(
拍手)
二百六十億の
減税というのでありますが、これは
名目減税であります。
明年度税収は一兆二百五十九億、本
年度の
予算は九千四百六十九億でありますから、実は七百九十億の増税となる。
自然増収を
計算に入れましても大体とんとん、いかに理屈をつけようと、
納税者一人
当りの財布から出る
税金は、ことしよりも来年安くなることはなかろう、かえって高くなるのです。
昭和九年から十一年の
基準年次は、国税と
地方税を合せまして一人
当り二十七円であります。本年は一万七千円。いかに
物価倍率四百倍といたしましても、一万をこすくらいが普通であります。何としてもこれは
重税です。しかし、今の
納税者諸君は、国にどうしても必要な
税金であれば払わないと決して言ってはおりません。言うなれば、
税金が汚職や
軍事費などに使用されていることに限りない不満を持っているのであります。(
拍手)同時に、だれにでも納得できる、公平な、しかもわかりやすい
税制を痛切に望んでいるのであります。今日
租税の
特別措置によって払らのがほんとうだけれども、負けてある
税金は三十二
年度で七百八十億、これ、ことごとくといっていいほど大
企業、
大口所得者中心です。さらに、滞納が六百億、続いて脱税が、最近の日新製糖を考慮に入れますならば、
巨額に上ると推定されるのでありまして、かかる事態は、まじめな
納税者の痛憤やる方ないところであります。(
拍手)これは政治に対する危機ともなっておりまして、われわれ
社会党が、数年来、安く、公平な、わかりやすい
税制改正を主張し来たった
ゆえんもまたここにあるのであります。
その意味においては、今回の
政府案は、この根本的な問題をことごとくほおかむりしたのみならずもかえって逆行するがごときことは、まことに遺憾千万といわなくてはなりません。(
拍手)
その第一は、一
萬田大蔵大臣の一年がかりの
構想であります
減税貯蓄を柱とした
租税特別措置法の
改正、いな、改悪であります。本件に関しては、奇妙なことに、私は、
日本社会党を代表するのみならず、
与党内や大蔵省にある陰の正論の
人々を代まして
反対しなくてはならぬ
実情であります。(
拍手)税を知る心ある
人々もまゆをひそめております
法案であります。今日、
預貯金の利子などにつきましては、
原則として無税であるのみならず、
分離課税の恩典もあり、そのほか至れり尽せりの
恩恵があるのでありますが、それにもかかわらず、今回また、二カ年間の
預貯金をしたり、あるいは株を買って塩づけにしておいたりしておく
人々には三%の金を
税金を負けてやるというのが、この
法案であります。
一体、この世の中に二カ年
間金を積んでおける人はどういう人でありましょうか。こういう人は
金持ばかり、そういう人は今どき金を遊ばしておくことはないのであります。
税金が安くなるなら、ほかに回しておいた金を預けるか、株を買うかするにすぎないのでありまして、
政府がかねや太鼓で
新規貯蓄の増加を叫んだところで、あっちからこっちへ金の所在が移るだけで、
貯蓄総額は一向ふえないでありましょう。(
拍手)しかも、
所得税のかかっていない人には、どんなに
貯蓄をしても負けてもらうべき本体がないのでありますから、何にもならぬのであります。(
拍手)
税金のかかっておる人は、
金持になればなるほど得をします。これで五十億の
減税です。こんな、ばかげた、不公平な
減税はないのであります。この際こういうことはやめて、
巨額の
財源はあげて
低額所得者の方へ回すべきではありませんか。しかも、
政府は、
預金者保護に名をかりて、取り扱う
金融機関や
証券業者を制限し、株は全部
適用すると表に言いながら、実は
内面指導をするのでありますから、結局これは
株式市場に
差別待遇を与え、混乱と
権力介入を招くことになり、
低額所得者の犠牲において
金融機関擁護、大
企業擁護の正体見えたりといわなければならぬのであります。(
拍手)しかも、その手続たる
複雑多岐、
一体、
特別措置は廃止していくの、
税制は簡素化するのなどと言っていた
政府は、どの口開いて
世間に答えるか、あきれ果てる次第であります。
法人税法の
改正が、また、ねらいがおかしいのであります。
中小企業の
減税の
スローガンを
政府与党から聞くこと久しいのであります。
一体、今日の
経済の
不況に真に苦しんでいるものはだれでありましょう。資本も少く、昼はひねもす夜は夜もすがら額に汗して働く
零細企業こそ、
減税の手を差し伸べるべき第一のものである。(
拍手)
政府案は一率に二%の
減税でありますが、百万円を二百万円まで広げましたから、百万円から二百万円までの
所得については七%の
重点減税となり、
所得大なる
企業がその
恩恵が強いのでありまして、これは、
社会党主張のごとく、
年所得五十万円以下の小
企業に三〇%の
減税率を
適用し、
段階税率を作ることこそ、今日の急務といわなければならぬと思います。(
拍手)
関税定率法の
改正は、何の考えもなく
期限の切れるのを延長したものであります。本来、この
法律は、その大
部分が大
企業を
中心として政策的に行われているものであります。輸入を制限しようとする
政府が、
税金の方では
関税の
減免税を引き続いて
無為無策に行なっている態度には、解しかねるものがあります。
最も重視さるべき
所得税の
改正は、言うならば
事務的改正であって、問題の本質を何ら検討しておりません。一
萬田大蔵大臣は、口を開けば、いつも
所得税中心の
低額所得者の
減税と言っおります。ところが、いざとなると、
高額所得者の
優遇法案ばかり出してくるのでありまして、
一体一
萬田の舌は何枚だと、
世間は不思議に思うばかりであります。(
拍手)これを称するならば、俗にいうところの、こじきの
おかゆであります。こじきの
おかゆは湯ばかりでありまして、何らの
内容と
実行性がありません。(
拍手)
今や
不況の度合いは深刻であり、さらにこれは長期化すること明白です。
減税の
財源がないと
政府は言います。そういう
政府が、
明年度予算で千億の
自然増収を予定し、
支出の方では正体不明の四百三十六億のたな
上げ資金を計上しているのであります。
税金というものは、家計と違って、出るをはかって入るを制すものでありまして、
財政法に厳格に
規定されておる
ゆえんであります。何に使うか、いつ使うか、わけがわからない
支出があるが、とにかくそれに必要な
税金を出せなどということは言語道断であります。明らかに、これは、
財政法をじゅうりんするのみならず、
税金の取り過ぎでありまして、これは
納税者に
減税を断行して返すべきものであります、
減税したら
インフレになると言う人があります。しかし、今の
日本の
経済は、
国際収支においては九月以来堅実な
黒字基調をたどっており、国内においては供給過剰の状態でありますから、物があり過ぎて、
インフレになるなどと言えた義理ではありません。
経済の見通しを誤まつた
政府は、行きがかりにとらわれず、率直に
実情認識を願いたいものであります。
岸総理や一
萬田蔵相にさらに御認識願いたいことは、御親交厚い
アイゼンハワー大統領が、
アメリカ経済不況打開のために、今や真剣に
減税を考慮していることでありまして、この際十分反省を
願つて再検討さるべきだと確信をするものであります。(
拍手)
この際、
日本社会党が昨日
大蔵委員会で
提案をいたしましたように、
標準家族三十二万円までを免税することに大きく踏み切られんことを心から要望いたしたいと思います。残念ながら、このわが
党提案は
委員会では否決されました。しかし、この際
政府与党に申し上げておきますが、このわが
党提案を否決しておいて、間近に迫る
衆議院選挙に際し、
低額所得者の
減税などというおこがましい
スローガンを掲げるようなことがあれば、天下の物笑いとなるであろうことを、厳に警告する次第であります。
願わくは、
与党の
皆さんが、心静かに
重税と不公平な
税制に苦しむ満天下の
納税者の
皆さんの真剣な要望に思いをいたされて、
社会党修正案に満場御
賛成せられるよう心から要望いたしまして、私の
反対討論を終ります。(
拍手)