○国務
大臣(岸信介君) お答えいたします。対ソ、対中共、対
韓国の関係における質問の諸問題に対してお答えいたします。
第一点は、
日ソの間の
漁業交渉の問題に関する御質問でございまして、数点にわたっております。これは、言うまでもなく、
日ソ共同宣言と同時にきめられました
漁業協定に基くところの年々の
委員会の問題でございます。昨年第一回を東京でやり、本年モスクワでやるわけでありまして、この問題はあくまでもこの
漁業条約に基く
技術的な問題として処理さるべきことは、あまりにも明白な問題でございます。従いまして、ただいまの御質問にありました、これを
平和条約等と
関連させての御
意見でございましたけれども、これは
ソ連側はそういうことを
主張しておるやに見えますが、絶対に事理きわめて明白な問題でございまして、
漁業条約上の問題として私どもは
交渉するつもりでおります。従いまして、赤城全権に対する
権限もそういう範囲に限られておることは当然であります。いわゆる
政治折衝であるとか、政治
交渉という問題につきましては、世間に非常な誤解があるように私は思います。それは、本来この
漁業委員会においてきめられることは、
両国の
科学的な基礎に基き専門家の間においてその
漁獲量をきめるということになっております。ところが、今日まで共同の調査ができておりませんために、
両国の専門家が持っておるデータは互いに自分の方だけの立場から調査したものでありまして、これに食い違いがあるわけであります。これが、われわれは十四万五千トンを
主張し、
ソ連側が八万トンを
主張しておるゆえんであります。これを何とかまとめていくということになりますと、結局歩み寄りできめる、
科学的根拠だけではきまらないという問題を、私どもは政治的
折衝においてきめる、こういうことを申しておるわけであります。
科学的の根拠できめるものに対して、結局歩み寄りで妥協を見出すということが
政治折衝であります。この
漁業問題を、本来それと何らの関係のない
平和条約問題その他の問題と政治的に
関連せしめるという意図は、私ども全然持っておりません。
オホーツク海の
制限の問題及び八万トンの問題に関して、イシコフ
漁業相と当時の
河野国務
大臣との間に何らかの話があったのではないかというお話であります。これは、しばしば国会において
答弁されております通り、当の責任者である
河野君が明確に申し上げておる通り、伝えられるような文書によるものもなければ、そういう話し合いはない。ただ、この
漁業条約ができます過程において、
ソ連は当時八万二千トンをとるということを言っておりました。その
計画に基いて、もしも
ソ連が八万二千トンであれば、八万トンという数字は出たことは事実でありますが、今日
漁業条約ができたる後において、その話し合いというものは何らの拘束力を持つものではないと、私どもは
考えております。(
拍手)
また、
オホーツク海の問題につきましては、これは条約にも規制するということになっております。もと出しておった船団を相当に
制限して今日参っておるのでありまして、われわれは、その規制ということについては認めておりますが、全然これを
オホーツク海から締め出されるということには反対をいたして参っておることは、御承知の通りであります。そうして、これが何らか
防衛問題とからんでいるのではないかというお話でありましたが、私どもはそうは思ってはおりません。いろいろな想像、揣摩憶測が行われておりますが、現に、他のカニであるとか、あるいはニシンや、あるいはタラ等の漁船は、これに入れることを認めております。航行を禁止はいたしておりません。ただ、
サケ、
マスについては
ソ連側として、漁族の保護の上から、
オホーツク海の漁獲を全部禁止しようというのが
ソ連側の
主張でありまして、これに対しては、われわれは、われわれの根拠に基く
主張をする
考えであります。
なお、
フルシチョフやあるいはブルガーニン首相等に対する私の
親書の内容云々のお話がありましたが、これは
親書のことでありますから、ここで申し上げることができないことを御了承願いたいと思います。(
拍手)
それから、この
交渉が決裂した場合どうするかというふうなお話でありましたが、私どもは、誠意を尽して、あくまでもこの
両国の間に存しておる友好関係を増進するというこの基礎的な
考え方に立って、あくまでも誠意を尽し、われわれの
主張を
ソ連側に納得せしめて結論に達するという強い所信のもとに、実は
交渉に当っておるのであります。(
拍手)
安全操業の問題につきましては、それが
領海の問題に関係があり、あるいは領土問題に関係があるということにつきましては、御説の通りであります。従いまして、私どもはこの問題を持ち出して話をしたということは、
ソ連側と
日本との間に今領土問題を
解決するといったって、それは
主張がなかなか違っておる、こういう状況のもとにおいて、北海道の小さい零細
漁民が近海に出ていって拿捕される、こういう危険をなくするために、いわゆる
平和条約を
締結するまでの暫定
措置として、何らかの
安全操業ができるということを認めることは、
ソ連がかねて
主張している。こういう弱い人々に対し人道的立場から
ソ連としても当然
考えていただけるものだという見地に立って話をしておるわけであります。この
経過につきましては、すでに申し上げた通りであります。(
拍手)
それから、
対ソ政策の
根本について、
反共と反ソとは別であるというお話でありますが、これは当然のことであります。私どもも、
反共の立場をとっておりますけれども、
ソ連との間には、共同宣言に基くところの友好関係を増進するために、あらゆる努力をいたしております。すでに貿易、通商に関する
協定ができましたことも、御承知の通りであります。また、あらゆる点において友好関係を積み重ねていって、あの困難な
根本的の問題を
平和条約の
締結にまで達せしめようとして、真剣に努力をいたしておるのみであります。
日中関係についていろいろ御質問がありましたが、特に私からお答えを申し上げる点に関しましては、何か、この際、対中共の政策を
根本的に再検討し、これを変えていく必要があるのじゃないかという御
意見でありました。私どもは、従来、貿易はできるだけ日中との間に盛んにしていく、しかし、今日の状況においては、中共
政府というものを
承認し、これとの間に正常な
国交を回復すべき段階でないということを申し上げて、
承認する意思はないということを申し上げてきております。今日においても同様な
意見であり、第四次
協定を、われわれがこれを検討する場合におきましても、この
根本の
考え方については何ら変っておらないのでありまして、私は再検討をする必要を何ら認めておりません。(
拍手)
業務協定の問題について、いろいろな
協定を
政府間のレベルでやったらどうかという御
意見であります。私は、これが完全に
技術的また実務的の問題であるならば、これを
両国政府の間において
協定することも差しつかえないと
考えております。たとえば、郵便やあるいは気象の問題等についてはそういうものであります。しかし、おあげになりましたいろいろな
協定につきましては、内容を十分に検討しなければ、一がいに抽象的に申し上げることは困難であろうと思います。
なお、遺骨やあるいは引揚者をこちらに送るために大型の船の配船という問題についての御質問がありましたが、われわれも、今
事務的に検討しまして、その希望にできるだけ沿うようにいたしたいと思います。
それから
日韓の問題でありましたが、詳しいことは外務
大臣から
答弁いたしますが、
韓国の
政府というものをわれわれがどういうふうに見ているかという問題について、われわれの
考えを明らかにいたしておきたいと思います。私どもは、
外交の基本
方針の一つの大きな柱として、
国連中心の政策をわれわれは強く述べております。従いまして、こういう国際紛争のあるところ、また、その地域において分裂しておるというような場合におけるところの
政府の扱い方については、私は、
国連の決議なり
国連のこの取扱いというものを重視して
考えることは、
国連中心主義の立場をとるわれわれとしては当然であると思います。(
拍手)この意味におきまして、
韓国政府というものをこの
国連において取り扱っておることにつきましては、
田中君もよく御承知であろうと思いますが、この
方針によってわれわれがやっておるわけであって、また、
韓国と北鮮との間に、いわゆる全
朝鮮の統一されることにつきましては、私どもも心から隣の国としてそれを念願しておるわけであります。現在のところでは
韓国政府を正式な
政府として扱う、こういうことであります。(
拍手)
〔国務
大臣藤山愛一郎君
登壇〕