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1958-02-18 第28回国会 衆議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十八日(火曜日)     —————————————  議事日程 第八号   昭和三十三年二月十八日     午後一時開議  第一 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員選挙  第二 肥料審議会委員任命につき国会法第三十九条但書規定により議決を求めるの件  第三 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件  第四 昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案内閣提出)  第五 角膜移植に関する法律案(第二十六回国会中山マサ君外三十九名提出)  第六 予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  日程第一 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員選挙  日程第二 肥料審議会委員任命につき国会法第三十九条但書規定により議決を求めるの件  日程第三 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件  小川豊明君の故議員竹尾弌君に対する追悼演説  日程第四 昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案内閣提出)  日程第五 角膜移植に関する法律案(第二十六回国会中山マサ君外三十九名提出)  日程第六 予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案内閣提出)  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提出)  最低賃金法案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑     午後四時六分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。  第四番、愛媛県第二区選出議員羽藤榮市君。     〔羽藤榮市起立〕     〔拍手〕  第二百七番、愛媛県第二区選出議員井原岸高君。     〔井原岸高起立〕     〔拍手〕      ————◇—————
  4. 益谷秀次

  5. 山中貞則

    山中貞則君 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。      ————◇—————
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第二につきお諮りいたします。内閣から、肥料審議会委員参議院議員北勝太郎君を任命するため、国会法第三十九条但書規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。      ————◇—————
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第三につきお諮りいたします。内閣から、原子力委員会委員菊池正士君を任命したいので、原子力委員会設置法第八条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出通り同意を与えるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御報告いたすことがあります。議員竹尾弌君は去る二月八日殉職せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。竹尾君に対する弔詞は議長において贈呈いたしました。  この際、弔意を表するため、小川豊明君から発言を求められております。これを許します。小川豊明君。     〔小川豊明登壇
  13. 小川豊明

    小川豊明君 ただいま議長報告にありました通り、本院議員従四位勲二等竹尾弌先生は去る八日午後三時過ぎ、議員会館の自室において執務中、突如心臓障害のため急逝し、議員の職務に殉ぜられました。まことに驚愕悲痛きわまりない次第であります。(拍手)私はこの際、諸君のお許しを得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼の辞を申し述べたいと存じます。(拍手)  竹尾先生は、かねてより宿痾のため入院加療に努めておられましたところ、国会が再開され、予算委員会審議に入りましたので、その強い責任感から、特に医師の許しを得て登院されたのでありますが、全く思いがけなくも病にわかにあらたまり、ついに不帰の客となられたのであります。私は、かつて青年時代親しく先生の教えを受けた一人であります。ともに政治に携わる身となってからは、所属政党こそ異にしてはいましても、何かと先生から激励され、先生の人格と識見とに対して常々深い尊敬の念を抱いていたものであります。(拍手)今ここに先生追悼の辞を述べますことは、まことに感慨無量なるものがあるのであります。  竹尾先生は、明治二十九年、印旛沼のほとり、千葉成田市大竹の地に生まれ、成田中学を経て、大正七年東京外国語学校露語科を御卒業になりました。同年シベリア出兵に際しては陸軍通訳として従軍し、大正九年には朝鮮銀行ウラジオ支店に勤務され、当時革命後日も浅いソ連邦の実情をつぶさに調査研究されたのであります。従って、先生は、ロシア語の造詣がきわめて深いばかりでなく、革命時のソビエト事情権威者として広く知られ、これに関する著作、論評等も数多くあり、学者としての先生の名声もまた非常に高いのであります。  その後、報知新聞社社員東京毎夕新聞社社員となって操觚界で活躍されましたが、やがて故郷に帰り、農民運動のすぐれた指導者として、みずから農民の先頭に立たれるととも、農村青年指導啓発に日夜努力を続けておられました。  先生は、昭和二十二年の第二十三回衆議院議員選挙千葉県第二区より出馬し、みごと当選の栄を得られ、その後現在に至るまで連続五回当選、在職十年十カ月に及んでおられます。この間、先生は、終始、真摯な態度をもって国政の審議に精励し、国会議員の本分を全うせられたのでありまして、その御功績は実に偉大なものがあります。すなわち、先生は、まず外務委員会理事となって得意の外交問題に多年のうんちくを傾け、また、第十二回国会には、平和条約特別委員会理事として活躍し、わが国の独立の回復に大いに寄与いたされました。次いで、昭和二十六年十二月には選ばれて本院文部委員長の重任につき、その後も文部文教委員会理事として尽力せられ、さらに、昭和三十年十一月には第三次鳩山内閣文部政務次官に任ぜられて直接文部行政に参画されるなど、わが国文教政策確立にまことに大なる足跡を残されました。  先生は、つとに、わが国教育がいわゆる文科偏重に流れているのを憂い、これを是正して理数科教育を充実し、科学教育産業教育を振興すべきことを強く主張するとともに、その実現努力せられたのでありまして、自由民主党における文教部門の第一人者として、党内外の信望はきわめて厚かったのであります。(拍手)  先生は、また、昭和二十七年八月国土総合開発審議会の発足以来、その委員の職にあつて尽瘁し、ことに利根特定地域総合開発計画の作成に大いに貢献されました。また、同年十二月以来、国立近代美術館評議員会評議員として、同美術館管理、運営に尽力しておられたのであります。  かくのごとく先生の、わが国教育の刷新、文化興隆に貢献せられたことはまことに顕著なものがあるのであります。(拍手)  竹尾先生は、資性きわめて明朗闊達、すこぶる包容力に富み、また、まれに見る清廉潔白の士でありました。(拍手先生はまことに苦労人と呼ぶにふさわしいお人柄で、常におのれを捨てて他人のためをはかり、ことに後進子弟指導誘掖に煩をいとわず努力されたのであります。されば、郷党、知友の信頼の的となり、特に印旛沼沿岸一帯農民諸君からは慈父のごとくに慕われておられました。(拍手)  元来、先生の御郷里は、利根川と印旛沼に囲まれた低湿地帯であります。年々のごとく来襲する水害に、付近の農民諸君は塗炭の苦しみを味わい続けて参りました。農家に生まれ、洪水の辛苦を身をもって体験された先生は、この苦難を救う唯一の道は印旛沼の干拓にあると信じ、これが完遂に揮身の熱意と畢生の努力とを傾注されたのであります。(拍手)この事業は、終戦後、食糧増産のための緊急開拓事業として取り上げられ、着工を見ましたが、何分にも大工事であるため障害も多く、意のごとくには進捗しなかったのであります。先生は、常に農民諸君の立場と利益とを擁護しつつ、事業促進に血みどろの努力を続けられ、その効あつて、ようやく工事も軌道に乗るに至りました。かくて、今や数年後にはこの工事も完成する運びとなり、その暁には数万町歩に及ぶ肥沃なる美田と八万石に上る米麦の増産とが約束されておるのであります。  このように、多年にわたる先生熱意努力とがまさに実ろうとするとき、天は、無情にも、いましばらくの時をかすことをせず、先生は溘焉として六十一才の輝かしい生涯を閉じられたのであります。造成または改良された田畑において、もはや水害の恐怖から全く解放され、営々として働く農民諸君の姿を先生にぜひ一目見ていただきたかったと思うのは、あに私のみではありません。(拍手)返す返すも痛恨の情にたえない次第であります。  思うに、民主政治の理想は、二大政党政策をもって相対立し、互いに切磋琢磨しつつ、国力の増進と国民生活向上発展という共通の目標に向つて努力することにあると信じます。かかる際に、竹尾先生のごとき、自己の名利を求めず、ひたすら国民の幸福のみを念頭に置いて議員の職責を果すという練達堪能の士を本議場より失いましたことは、邦家のため惜しみても余りあることと存じます。(拍手)  ここに、国会議員の本務に邁進し、ついにそのとうとい生命をも犠牲にされた竹尾先生の痛惜きわまりなき殉職に対し、御生前の功績をたたえ、その風格をしのび、つつしんで哀悼の誠をささげ、もって追悼の辞といたす次第であります。(拍手)      ————◇—————
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第四、昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員長足鹿覺君。     〔足鹿覺登壇
  15. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいま議題となりました昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案について、大蔵委員会審議経過並びにその結果について御報告申し上げます。  本法律案は、昭和三十二年産米穀について、昭和三十一年産米穀と同様に、事前売り渡し申し込みに基いて政府に対し米穀売り渡したものの昭和三十二年分の所得税を軽減しようとするものであります。その内容についても、昭和三十一年分と同様に、その売り渡しの時期の区分に応じ、玄米一石当り平均千四百円を非課税とする措置を講じようとするものであります。  本法律案につきましては、審議の結果、去る二月十三日質疑を打ち切り、討論の通告がありませんでしたので、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決いたしまた。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第五、角膜移植に関する法律案日程第六、予防接種法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。社会労働委員長森山欽司君。     〔森山欽司登壇
  19. 森山欽司

    森山欽司君 ただいま議題となりました角膜移植に関する法律案及び予防接種法の一部を改正する法律案の両案につきまして、社会労働委員会における審査経過並びにその結果の大要を御報告申し上げます。  まず、角膜移植に関する法律案について申し上げます。  現在、わが国には約十八万人の目の見えない人がおりますが、このうち角膜移植術によってある程度の視力回復することができる人は約一万人近くと推定されているのであります。ところで、死体から角膜を取りますことは、刑法の死体損壊罪との関係から、その適法性に関して種々問題がございまして、本手術を行いますのに大きな障害となっているのであります。このような実情からいたしまして、医師角膜移植術を行う必要がある場合、適法死体から眼球を摘出できることとしまして、視力障害者視力回復に寄与しようとするのが、本法案提出理由でございます。  本法案のおもなる内容は、医師角膜移植術の必要上死体から眼球を取り出すことを適法とするものであり、この場合におきましては、原則として、あらかじめ遺族の承諾を受けなければならないこと、その他、眼球の取扱い、死体に対する礼意保持等について規定を設けたこと等であります。  本案は、第二十六回通常国会において、昭和三十二年五月十六日本委員会に付託せられ、同日提出者中山マサ君より提案理由説明を聴取した後、引き続き本国会まで継続審査行なつたものであります。  本案医学専門的事項にわたるものでありますので、二月十二日東京大学教授萩原朗君外二名の参考人を招致して意見を聴取した後、同日及び翌十三日にわたり、岡本、滝井、加藤、八田、田中、長谷川の各委員より熱心な質疑応答が行われたのでありますが、これらの詳細については会議録により御承知願いたいと存じます。  かくて、十四日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、自由民主党及び日本社会党共同提案による修正案提出せられ、両党を代表して長谷川保委員よりその趣旨説明がありました。その要旨は、第一に、第二条の規定による眼球の摘出及び摘出した眼球の取扱いに関し必要な事項厚生省令で定めることとしたこと、第二に、業として死体眼球のあっせんをしようとするときは、厚生大臣の許可を受けなければならないこととし、これに違反した者は罰則の適用のあることとしたこと等であります。  次いで、修正案並び修正部分を除く原案について順次採決に入りましたところ、本案全会一致修正議決すべきものと議決いたした次第であります。  次に、予防接種法の一部を改正する法律案について申し上げます。  ジフテリア患者の発生は、この数年増加の傾向にありまして、特に三才以上の幼児においては著しく、ジフテリアに対する免疫効果はこの年令層において非常に低下しておりますとともに、最近の調査研究によりますと、親から受ける免疫効果も生まれて三月ごろから急速に減つている実情であります。従いまして、これらの年令層に対し強力な免疫効果を与えるために、本法に定めてあるジフテリア予防接種の時期を改めようとするのが、政府の本法案提出理由であります。  すなわち、本改正法案内容は、従来生後六月から十二月までの間に行なっていた第一期接種の時期を繰り上げて生後三月から六月までの間に行うことと、新たに第一期接種の十二月から十八月までの間に第二期接種を行うこととして、現行予防接種回数の三回を四回に増加し、乳幼児の免疫効果を高めようとするものであります。  本案は、二月三日本委員会に付託せられ、十一日政府より提案理由説明を聴取いたしましたが、本案医学専門的事項にかかり、慎重を期するため、十四日済生会中央病院長小山武夫君外一名の参考人を招致して意見を聴取し、八田滝井委員より専門的な質疑応答が行われたのでありますが、同日質疑を終了し、採決に入りましたところ、本案全会一致原案通り可決すべきものと議決いたした次第でございます。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします、日程第五の委員長報告修正、第六の委員長報告可決であります。両案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  22. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第七、在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。外務委員長床次徳二君。     〔床次徳二登壇
  23. 床次徳二

    床次徳二君 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審議経過並びに結果を報告申し上げます。  御承知通りエジプト及びシリアの両共和国は合併いたしまして新たにアラブ連合共和国が樹立され、二月二十一日に正式に発足することに予定されております。ついては、これに伴い、在エジプト日本国大使館及び在シリア日本国公使館を廃止し、在アラブ連合共和国日本国大使館及び在ダマスカス日本国総領事館を設置し、これらの在外公館に勤務する外務公務員在勤俸の額を設定する必要があり、これがために在外公館名称及び位置を定める法律並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正しようとするもので、この法律わが国アラブ連合共和国を承認いたしましたときから施行することになっております。  この法律案は二月十一日外務委員会に付託されましたので、政府提案理由説明を聞き、質疑を行いましたが、その詳細は会議録により御了承を願います。  本法律案は十七日、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって可決すべきものと議決いたしました。  以上、報告申し上げます。(拍手
  24. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  26. 山中貞則

    山中貞則君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出外国人登録法の一部を改正する法律案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  27. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  外国人登録法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。法務委員長町村金五君。     〔町村金五君登壇
  29. 町村金五

    町村金五君 ただいま議題となりました外国人登録法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審議経過並びに結果を申し上げます。本改正案要旨は、現在の国際情勢下、平和を念願とし、文化興隆及び諸外国との貿易を一そう促進するため、一年未満の比較的短期の在留外国人については、指紋押捺は一律にこれを免除しようというのがおもな点でありまして、その他、登録上の氏名、生年月日が事実に合わないことを知つた場合には、市町村長は職権をもって訂正できるように改めたことなどであります。  法務委員会におきましては、去る二月三日本案が付託せられてから、終始、熱心なる審議を重ねて参りました。その詳細は会議録に譲りたいと存じますが、そのおもな点を申し上げますと、まず、現在わが国に在留する外国人国籍別登録状況指紋押捺状況出入国管理令との関係における不法入国者の取扱い、犯罪外国人措置等について質疑応答が行われました。さらに、指紋制度につきましては、諸外国の例を聴取し、国際間の相互主義原則に従ってこの際これを全廃する意向はないかとの質問がありましたが、これに対し、今日の治安状況を考慮するとき、今直ちにこれを廃止することは時期尚早であつて現行の六十日未満を一年未満に緩和する程度が適当と思われるとの政府答弁がございました。なお、中華人民共和国通商使節については指紋を免除するかとの質問に対し、外務省と協議の上可及的すみやかにその方向に落ちつくよう努力する旨の答弁がありました。かくて、二月十八日質疑を終了し、討論省略の上採決いたしましたところ、本案は、政府原案通り全会一致をもって可決いたした次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、内閣提出最低賃金法案趣旨説明を求めます。労働大臣石田博英君。(拍手)     〔国務大臣石田博英登壇
  33. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 最低賃金法案について、その趣旨を御説明いたします。  終戦以来、わが国における労働法制は、労働組合法労働関係調整法労働基準法など急速に整備されたのでありますが、これらの法制により近代的労使関係確立され、また、産業合理化促進し、わが国経済復興に寄与するところ少くなかったことは、否定し得ない事実であります。  労働基準法は、労働条件最低基準について詳細な規定を設けているのでありますが、同法に定める最低賃金に関する規定は、今日まで具体的に発動されなかったのであります。これが理由について考えてみますと、まず、終戦後の経済の混乱が最低賃金制実施基盤をつちかえなかったことが指摘されるのでありますが、さらに、基本的には、中小企業零細企業の多数存在するわが国経済の複雑な構成のもとにあつては、労働基準法規定する最低賃金制のみによっては、その円滑な実施を期し得ないものが存したからにほかならないからであります。昭和二十五年、労働基準法に基いて設置された中央賃金審議会は、絹人絹織物製造業等四業種に対する最低賃金実施について、昭和二十九年に政府に答申を行なつたのでありますが、これが実現を見るに至らなかったゆえんも、当時の経済情勢とともに、わが国経済における中小企業特異性に存したといえるのであります。しかしながら、賃金労働条件のうち最も基本的なものであり、特に、賃金の低廉な労働者について今日最低賃金制実施することは、きわめて有意義であると考えるのであります。(拍手最低賃金制確立は、ただに、低賃金労働者労働条件を改善し、大企業中小企業との賃金格差の拡大を防止することに役立つのみでなく、さらに、労働力質的向上をはかり、中小企業公正競争を確保し、輸出産業国際信用を維持向上させて、国民経済の健全な発展のために寄与するところが大きいのであります。  翻つて世界各国に目を転じますと、十九世紀末以来、今日までに四十数カ国が最低賃金制実施し、また、国際労働機関においても、すでに三十年前に最低賃金に関する条約が採択され、これが批准国も三十五カ国に達していることは、御承知通りであります。経済復興労働法制の整備に伴い、わが国国際的地位は次第に高まり、昭和二十六年には国際労働機関へ復帰し、さらに、昭和三十一年には念願国際連合への加盟も実現されたのでありますが、また、それゆえに、世界各国は、わが国経済、特に労働事情関心を有するに至っているのであります。なかんずく、諸外国において特に大きな関心をもって注目しているのは、わが国賃金事情であります。過去においてわが国輸出産業がソーシャル・ダンピングの非難をこうむつたのは、わが国労働者賃金が低位にあると喧伝されたからであります。かかる国際的条件を考えましても、この際最低賃金制実施することは、きわめて意味があると考えるのであります。(拍手)しかしながら、諸外国における最低賃金制実施状況を見ても知り得るごとく、その方式、態様は決して一様のものでなく、それぞれの国の実情に即した方式が採用されているのであります。従いまして、わが国最低賃金制も、あくまでわが国実情に即し、産業企業の特殊性を十分考慮したものでなければならないことは言うまでもないところであります。(拍手)  政府といたしましては、最低賃金制の大きな意義にかんがみ、最低賃金制のあり方について、かねてから検討して参つたのでありますが、昨年七月、中央賃金審議会に、わが国最低賃金制はいかにあるべきかについて諮問したのであります。同審議会は、その後真剣な審議を重ねられ、十二月に至り、最低賃金制に関する答申を一致して労働大臣に提出されたのでありますが、同答申は、「産業別、規模別等に経済力や賃金に著しい格差があるわが国経済実情に即しては、業種、職種、地域別にそれぞれの実態に応じて最低賃金制実施し、これを漸次拡大していくことが適当な方策である」と述べているのであります。今日においても、最低賃金制実施は、中小企業実情にかんがみ時期尚早であるとの論も一部にはあるのでありますが、現実に即した方法によってこれを実施するならば、中小企業に摩擦と混乱を生ずるようなことはなく、その実効を期し得られるものであり、むしろ、中小企業経営の近代化、合理化等、わが国経済の健全な発展に寄与するものと考えるのであります。(拍手)  本法案は、以上の見地から、中央賃金審議会の答申を全面的に尊重して作成いたしたものでありますが、次にその主要点について御説明いたします。  その第一は、最低賃金の決定は、業種、職種または地域別にその実態に即して行うということであります。最低賃金制の基本的なあり方について、全産業一律方式をとるべきであるとの意見があります。しかしながら、わが国ににおいては産業別、規模別等によって経済力が相当異なり、また、賃金にも著しい格差が存在しているのでありまして、かかる現状において全産業全国一律の最低賃金制実施することはある産業、ある規模にとつては高きに失し、他の産業、他の規模にとつては低きに失し、これがため一般経済に混乱と摩擦を生じ、本制度の実効を期し得ないおそれがあると考えるのであります。(拍手)ここに、対象となる中小企業の実態を最も適切に考慮して最低賃金を決定し得るごとく、業種、職種、地域別に最低賃金を決定し、漸次これを拡大していくこととした理由が存するのであります。  第二は、最低賃金の決定について、当事者の意思をでき得る限り尊重し、もって本制度の円滑なる実施をはかるため、次の四つの最低賃金決定方式を採用していることであります。すなわち、その第一は、業者間協定に基き、当事者の申請により最低賃金を決定する方式であり、第二は、業者間協定による最低賃金を、一定の地域における同種労使全部に適用される最低賃金として決定する方式であり、第三は最低賃金に関する労働協約がある場合に、その最低賃金を一定の地域における同種労使全部に適用されるものとして決定する方式であります。(拍手)これら三つの方式のいずれの場合も、政府は、中央、地方に設けられる労使、公益各同数の最低賃金審議会の意見を聞いて最低賃金を決定することといたしております。第四は以上一ないし三の方式によることが困難または不適当である場合に、行政官庁が最低賃金審議会の調査審議を求めて、その意見を尊重して最低賃金を決定する方式であります。以上のごとく、四つの決定方式を採用し、それぞれの業種、職種、地域の実情に即して最低賃金制実施することとし、もって本制度の円滑にして有効な実施を期した次第であります。  第三は、決定された最低賃金の有効な実施を確保するため必要な限度において、関連家内労働について最低工賃を定めることができることとしたことであります。わが国中小企業は零細規模のものが多く、その経営は下請的、家内労働的な性格を有するものが多いのであります。しかも、わが国においては、これら中小企業と併存する関連家内労働者が多数存在し、これら家内労働者労働条件には劣悪なものが少くないのであります。しかして、一般の雇用労働者最低賃金が適用され、これと関連する家内労働を行う家内労働者の工賃が何ら規制されない場合には、家内労働との関係において最低賃金の有効な実施を確保し得ない事態を生ずるおそれがあるのであります。もとより、家内労働については改善すべき幾多の問題がありますので、政府は家内労働に関する総合的立法のため調査、準備を行うとともに、さしあたり本法案中に必要な限度において最低工賃に関する規定を設け、最低賃金制の有効な実施を確保すると同時に、家内労働者経済的地位の安定に資することとした次第であります。  以上が本法案の主要点でありますが、本法の適用範囲は、原則として労働基準法及び船員法の適用あるもの全部とし、これが施行に関する主務大臣は、労働基準法適用関係については労働大臣とし、船員法適用関係については運輸大臣としております。その他、最低賃金審議会の設置運営に関する事項、業者間協定締結等に対する援助、勧告及び違反の防止等に関する所要の規定を設けるほか、関係法令に関する整備を行い、もって最低賃金制の円滑なる実施を期しているのであります。  政府といたしましては、最低賃金制法制化することは、わが国労働法制上まさに画期的なことであり、かつ、その意義もきわめて大きいと信ずるのであります。しかしながら、何分にも、最低賃金制わが国において初めての制度であります。いかにわが国実情に即した最低賃金制でありましても、これを円滑有効に実施するためには、中小企業の経営基盤の育成をはかることが必要であることは申すまでもないところであります。政府は、最低賃金制実施状況等を勘案しつつ、中小企業対策等について今後とも十分配慮を行なって参りたい所存であります。また、いかに大きな意義を有する最低賃金制実施されたとしましても、法制定の趣旨が十分認識されず、本制度が誤まつて運用される場合には、労使関係の安定が阻害されるのみならず、社会経済の混乱を招くことにもなるのであります。政府といたしましては、本制度に対する労使の深い理解と絶大なる協力を期待するとともに、広く国民一般の支援を求め、これが円滑なる運営をはかりたいと存じている次第であります。(拍手)      ————◇—————
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告があります。順次これを許します。  小坂善太郎君。     〔小坂善太郎君登壇
  35. 小坂善太郎

    ○小坂善太郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま提案になりました最低賃金法案につきまして、内閣総理大臣、労働大臣及び通商産業大臣に対しまして若干の質疑を行いたいと思うものであります。(拍手)  まず初めに、総理大臣に対しまして、最低賃金制の理念についてお伺いいたしたいと思います。最低賃金制は今日国際的にも確立されました労働基本法の一つであるといわれておりまするが、実は、各国の歴史や国情によりまして、その目的やあるいは根本的な考え方は必ずしも同一ではないようであります。こうした最低賃金制の理念または把握の仕方が相違しておりまするがゆえに、最低賃金制に関する議論も、ことごとく、その点から紛糾いたしておると考えられまするから、この際政府最低賃金制に対する基本的な考え方を明瞭にされておく必要があると思うのであります。  最低賃金制につきましては、四つの考え方があると思います。その第一は、いわゆる苦汗労働、スウェッティング・レーバーというものを排除するという社会政策的な考え方であります。第二は、一般的な賃金を引き上げて有効需要を造成するという経済政策的な考慮に基くものであり、第三は、最低賃金制をもって国家権力による賃金公定制度の先がけといたしまする社会主義的賃金統制の考え方に基くものであり、第四は、適正な賃金基準を確立せんとする労働政策最低賃金制であります。  今回政府が提案されました最低賃金法は、事業の過当競争の結果が賃金にしわ寄せされるということを避け、事業の種類及び業態により、地域に応じて、産業の実態に即した適正な賃金基準を確立せんとするものでありまするから、社会政策をも含めた労働政策最低賃金制であると思うのでありまするが、最低賃金法を提案されるに際し、総理大臣はその基本的な考え方を明らかにされる必要があると思うのであります。御見解はいかがでありますか。お伺いいたしたいと思います。  次に、最低賃金制実施中小企業対策の関係について伺いたいと思います。最低賃金制は近代的な立法であります。しかしながら、これが適用されまする日本経済の実体は、政府経済白書を見ても書いてありますように、きわめて近代的な大企業と前近代的な小企業とが並び存し、ことに事業所の数で見まするならば、三十人未満の従業員を雇用する中小企業が九八%を占めるという大勢になっておりまするし、また、そこに大幅な賃金格差が存在するのが現実の姿であります。この現実のゆえに、昭和二十三年以来、労働基準法の中に明文があり、何どきでも実施し得る法律上の準備がありながら、最低賃金は今日まで実施されなかったのであると思うのであります。また、昭和二十九年の中央賃金審議会は、絹人絹織物業等、いわゆる四業種について、さしあたり最低賃金制実施すべきことを答申いたしておるのでありまするが、同時に、わが国中小企業に対しまして国家権力的な最低賃金制実施することの困難性を認めまして、これが実施の条件として、適用業種について減税あるいは金融上の実効性ある措置を付加することを勧告いたしておるのであります。この答申に基きまして、直ちに最低賃金制実施に至らなかった理由も、これらの特別措置を特に最低賃金制を適用する業種に対してとることが困難であったためであると思われるのであります。  政府は、今回、最低賃金制の施行に踏み切つたわけであります。しかしながら、周知のごとく中小企業の経営者中に、最低賃金の必要は認めながらも、現状において直ちにこれを実施することに対し根強く見られるある種の危惧の念があるのであります。私は、この際、政府に対して十分なる注意を喚起し、その御見解を承わりたいと思います。  すなわち、今回提案の政府案におきましては、わが国経済、特に中小企業の実態にかんがみまして、また、昨年末の中央賃金審議会の答申に代表せられました公正な世論の線に沿い、かつはまた、全労会議等の労働組合中まことに建設的な意見を持つ労働側の意見を十分に参酌され、全国全産業一律というような案でなく、最低賃金は地域別、業種別、また職種別に決定し、漸次これを拡大するという案になっておるのでございまして、わが国経済の実態に即しており、われわれも大いに賛意を表するところでございます。(拍手)しかしながら、業界の一部になお反対があることも否定できない事実であります。もとより、反対論の中には、法律案内容を知らず、社会党や総評等の唱えられる一律八千円案のごとき現状無視の賃金を強制さるる前提なりとの誤解に基くものもありましょう。しかしながら、反対論の中に根強くひそむものは、日本経済の基盤に対する、ばく然たる不安の念であります。わが国中小企業零細企業の現状が、果して最低賃金法の厳格なる施行に耐え得ると見通されるかどうか、この認識の問題であります。最低賃金制を施行することは、今日においては、すでに時代的な要請となっておると考えるのでありまするが、この法律の制定が、わが国中小企業の存立に脅威となり、その倒産を招き、これがために経済基盤が動揺し、かえつて失業者を生ずるような事態になれば、まことに本末転倒といわなければならぬと思うのであります。岸総理大臣は、この点に対し、日本経済の力をどう見ておられるか、わが国中小企業の基盤が最低賃金制の厳格なる実施に十分耐え得るというふうにお考えになるかどうか、さらにまた、最低賃金制実施中小企業の過当競争の防止、生産性の向上等を合せた総合的な中小企業振興のための構想をあわせてお持ちになっておられるかどうかを伺いたいと存ずる次第でございます。  次に、労働大臣に五つの点についてお伺いいたしたいと思います。  まず第一点は、賃金を含め、およそ労働条件というものは労使双方の当事者が自主的に決定すべきだという原則と、今回の最低賃金法案との関係についてであります。一部独裁国は別といたしまして、およそ自由社会におきましては、賃金を含め、労働条件企業主と労働組合側との間で自主的に決定すべきものであつて、国などがみだりに介入すべきものでないという原則は、近代社会の大原則でありまして、わが国におきましても、戦後の一時的な混乱の時代は別といたしまして、漸次労使関係者の間に確立して参り、今や一般の常識となっておることも、御承知通りであります。特に、労働条件の中核をなす賃金につきましての自主決定の原則は、千態万様の企業の実態にかんがみまするときに、特に重要であろうと思うのであります。この点、イギリスや西ドイツ等の諸国におきましては実に徹底しておるのでありまして、最低賃金の決定についても、かりに自主決定の機運がある場合には国は介入しないのが建前となっており、結局はその方が労使双方にとって利益であるということは歴史が証明しておることも、御承知通りであります。特に、賃金の問題は、社会的、経済的にまことに微妙に相関連し合うのでありまして、一定の業界において最底賃金を定めるということは、その業界の個々の企業賃金体系、賃金構造に響くばかりでなく、他の業界の賃金にも影響するのであります。かかる観点に立ちまして、今回の法案では、賃金の自主決定の原則との調整を基本的にどう考えておられるかというのが、お伺いいたしたい第一点でございます。  さらに、また、この点に関しまして、私は、率直に申して、一部の労働組合の動きにつきましては危惧の念を有しておるものでありまするが、かりに、最低賃金法の成立ということを一つの踏み台といたしまして、自分たちの当然になすべき組織化のための努力や、賃金の自主決定のための努力にかえて、これを政治的かけ引きの道具にし、中小企業者に不当、不法に最低賃金の決定を迫るというようなことがありといたしますならば、法制定の趣旨に反するのみでなく、長い目で見て労働者側にも決して利益でないと考えるのでありまするが、労働大臣として、これの見通し並びに対策について、これがありとすれば、お伺いいたしたいと思うのであります。  労働大臣にお伺いいたしたいことの次の点は、社会党の一部及び総評等が主張しておりまする全国一律の最低賃金制と、今回の政府案との比較考量の問題であります。私は、日本経済の現在の産業構造あるいは雇用状態から考えまして、全国一律八千円というような案は、とうてい実行不可能な案であると考えるのでありまするが、世上、往々にして、この二つの方式を比較いたしまして、世界的にきわめてまれな一律方式を目ざして、かえつてこの総評案こそが最低賃金制の本来あるべき姿であつて、業種別、職種別あるいは地域別に最低賃金を決定するというような案はごまかしであるというような誤まれる意見が相当に流布されておることも、御承知通りであります。(拍手)一律最低賃金制を今日自由社会において実施しておる国はアメリカ並びにフィリピンであるといわれておるのでありますが、そのアメリカにおきましても、一律最低賃金実施しておるものは、いわゆる州際産業、州と州とにまたがった大きな産業つてだけでありまして、また、フィリピンにおきましても、中小企業あるいはサービス業等はこれから除外されております。この点につきまして、特に目の子算用で八千円というような金額をつき出して、これを国家権力によってのめというような、そうした最低賃金に関する考え方は世界中いずれの国にもないということを、私はこの際明確にしておかなければならぬと思うのであります。(拍手)この点につきましては、私は政府のPR活動の不足にもその一半の責任があると考えるのであります。私は、せっかく苦労して政府が作られた法案が、かりにも国民から一種の偏見の目をもって見られるいうことははなはだ残念なことと考えるのでありまして、この際、総評等の主張する全国一律の最低賃金制に関する政府の見解を明らかにされ、世間一部の誤解を解かれる必要があると思うのであります。この点につきまして、労働大臣の所見をきわめて明確に披瀝せられんことを要求いたします。(拍手)  さらにまた、この点に関連して、第三点をお伺いいたしたいのでありまするが、私は、諸外国の立法例中、なかんずく最低賃金制度に関するILOの条約等も、決して全国一律の最低賃金制をとつておらないと考えるのであります。御承知のように、一九二八年の国際労働機関総会において最低賃金制に関する条約が採択され、すでに三十数カ国によって批准されておるのでございます。本法案内容はILO最低賃金条約の線に合致するものと考えられるのでありますが、わが国といたしましても、この際最低賃金制度に関するILO条約を批准して、国際的にも諸外国の信頼を高め、わが国内の本法案に対する悪意の批評を封ずることが望ましいと考えるのであります。この点につきまして、政府の見解並びに御方針を承わりたいと存じます。  労働大臣にお尋ね申し上げたい第四点は家内労働の問題であります。最低賃金制を問題とする以上、家内労働問題と切り離しては実効が上らないことはもとよりでありますが、諸外国の立法例等を見ましても、最低賃金の問題はむしろ家内労働の問題として扱つている例も少くないのであります。しかしながら、反面におきまして、最低賃金制実施わが国中小企業にとつてすら相当の問題があり、いわんや家内労働にとりましてはきわめて重大な問題であります。政府としてもよほど慎重な配慮がなされなければならないと考えるのでありまするが、今回の政府案におきましても、関連家内工業についての最低加工賃に関する規定が置かれておるのであります。ところで、政府はこの運用をどうされるのか。また、政府は別途総合的な家内労働法を立案すべく準備を始められると承わりましたが、基本的にはいかなる方向で、また、いつごろまでにお作りになる予定であるかをお伺いしたいと思うのであります。  労働大臣にお伺いしたい最後の問題は後ほど通産大臣にもお尋ねいたしまする問題と関連しておるのでありまするが、最低賃金制に関するところの基本的な考え方の問題であります。すなわち、今回提案されました最低賃金法の実施は、労働者諸君の生活向上をはかるという意味におきまして、労働政策、大きくは社会保障の一環をなすものでありまするが、同時に、単に企業の負担が増すという消極的な問題以上に、企業間の公正競争を確保し、おくれている中小企業合理化、近代化にも役立つという面があるのであります。労働大臣としまして最低賃金制の基本的な理念をどう考えられるか、また、私の見解と意見を同じゆうされるとすれば、中小企業対策等の経済政策との調整をいかようにされるか、伺いたいと思うのであります。  最後に、通産大臣にお尋ねいたします。先般来たびたび申し上げた通り最低賃金制の問題は経済政策、特に中小企業振興策と密接な関連があるのでありまして、最低賃金制度の実施についての危惧の念も、劣悪なる労働条件の克服という社会倫理的な目的は十分認めつつも、同時に、果して政府において中小企業の支払い能力向上のための諸施策をあわせ持っておられるかという点におきまして実は心配されておるように考えられるのであります。わが国中小企業の現状から見まして、賃金支払い能力に限界があります以上、最低賃金制も、企業の支払い能力の向上等、すなわち、過当競争の防止のための企業の組織化の促進、新規機械の導入、技術、経営管理の指導、金融、税制上の援助等、一連の近代的な中小企業の育成策の一環として推進される必要があるのでありまして、中小企業全般の体質向上改善のため、政府の積極的な援助、助長策を用意されることが必要であると存ずるのでありまするが、政府としてこれらの点についていかような配慮をされておるかということを承わりたいのであります。  これを要しまするに、最低賃金制実施は、わが国労働法制の上にまさに画期的なできごとであります。また、これがかつてイギリスにおきましてチャーチル保守党内閣において作られましたるごとく、自民党内閣において制定されるということも、また画時代的なできごとであると存ずるのであります。(拍手)私は、ここに、この法案の出現を歓迎いたしまして、いたずらに法の不備不足について伝々するよりも、せっかく出てきたこの二葉の芽を十分にはぐくみたいと存ずるのであります。また、社会党におかれましても、この近代的な労働法の若芽をつみ取るような心なきわざに専念されることのないよう衷心より希望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣岸信介君登壇
  36. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  第一は、本法の全体の基本的の考えがどこにあるかという御質問であります。本法は、すでに提案理由説明をいたしましたように、わが国実情、実態に即してこの法案を立法しようということでありまして、実態は、御承知通り、大企業中小企業との間に賃金の非常な格差があります。これは、この最低賃金法を制定し、この運用によって労働条件を改善していくという意味においては、あるいは労働政策的と見るのが適当でありましようし、あるいはまた、これが同時に劣悪な労働条件をなくするという意味につきましては社会政策的と見ることもできようと思います。同時に、一面においては日本の中小企業の非常な不安定な状況、また過当競争が行われて共倒れのような状況になり、労働者労働条件をますます劣悪ならしめているような不安定な状況を、これによって安定し改善していくという意味においては私は経済政策的、産業政策的の意味も持っておると考えるのであります。  第二に、この法律を適用するについてはいろいろ世間におきましても懸念があり、果して日本の中小企業はこれを受け入れるだけの基盤ができているかどうかという点に関する御質問であったと思います。言うまでもなく、日本の中小企業にはいろいろな弱点があります。その結果として、非常に賃金の格差も大企業との間に大きいし、今申したような不安定なことがございます。そこで、それらについてはやはり各種の政策を行なっていかなければなりませんが、本法は地域別に、また業種別に、職種別に、実態に即して、それぞれの実態にかなうような最低賃金の制度をとつておるわけでありまして、私は日本の中小企業も十分これを受けるだけの基盤があり、また、これを受け入れることによって、今申しましたように、労働条件が改善され、労働力もその質を良質化し、企業の経営も安定化していくという意義を持つ、こういう意味において、十分その基盤を持っておると考えております。(拍手)     〔国務大臣石田博英登壇
  37. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 第一の、最低賃金制だけでなく、賃金を含む一般の労働条件は、労使双方の自主的な処理にまかせるべきだという原則であります。この原則については、全く御意見通りでございます。それにもかかわらず、政府法律をもって最低賃金法を制定いたそうといたしますのは、わが国中小企業、特に零細企業実情におきましては、第一に、労働組合等の組織化がまだ進んでいない部分が相当多く、また、組織がほとんど不可能なほどの零細企業もございます。これは、もう一つには労働力の需給関係の現状と相待ちまして、力関係で押されるという状態にございますので、この下からのささえとして、この最低賃金法を提出いたしたわけでございます。しかし、賃金の問題は労使双方が自主的に決定せらるべきであるという原則を生かしますために、最低賃金制度の決定に四つの方式を求め、さらに労、使、公共三者構成による中央、地方最低賃金審議会を尊重するという制度を設けた次第でございます。  それから、この法案実施に伴いまする労働組合の動向についての御懸念でございますが、あるいはそういう御懸念もあるかと存じますけれども、一方においては、この法律を現実に生かして、特に恵まれない労働者諸君の生活向上に資したいという堅実な組合の動きもございまするし、それが動向に大きな期待を寄せて参りたいと思っておる次第でございます。  それから、第二は政府案と社会党の全国一律最低賃金制度との比較についての政府の見解を述べよということでございます。小坂さん御指摘の通り、世界じゅうで全国一律の最低賃金実施している国はアメリカとフィリピンだけであります。このアメリカにおきましても、厳格な意味におきまして全産業一律とは申せないことはただいま御議論の通り。特にアメリカの産業構造におきましては、最低賃金制度が実施せられる前からすでに中小企業の基盤も固まり、その賃金格差も一〇〇に対して七七・八という状態であったのであります。そういう状態の国においてさえ、なお全産業全国一律ということは完全に行われていないのに、わが国のような、これと全く違つた産業構造を有し、しかも、その基盤が非常に幾つかの問題を含んでおりまするときに、全国一律の最低賃金制実施せよということは、これはかえつてその本来の目的を達成するゆえんでないと私は信ずるのであります。(拍手)特に、労働組合やあるいは社会党の諸君がしばしば引用せられるILOの決議におきましても、これは業種別、職種別、地域別に決定せらるべきものだという勧告が行われておるのであります。われわれはILOの決議の精神をもこの法律案に生かしておる次第であります。  さらに、この法律案制定の経過でありますが、中央賃金審議会は御承知のごとく、労、使、公益三者の構成であります。労働者側の一部の人たちは表立って反対あるいは賛成ということは表明せられなかったのでありますが、他の公益、労働者及び使用者側三者すべて賛成せられた決定に基いて作られたものでありまするところに、本法案の妥当性、現実性があるものと私は確信をいたします。(拍手)それから、この法律の制定と相待って、われわれは当然ILOの決議を批准すべきものであると考えるのであります。  次に、家内労働の問題につきましては、先ほど私が趣旨説明の中に申しました通り、全般的な問題といたしましては、これから調査、準備を始めて参ります。何しろ三百万をこえるという業種の数でございますから、まずその実態をつかむことが前提であろうと考えておりまするけれども、特に本法と関連のある部分につきましては最低工賃を作ることになっていることはただいま申しました通りでございます。  それから、最後の中小企業との関連でございますが、ただいま総理の御答弁にございましたように、最低賃金法の制定はむしろ、中小企業の近代化を促進し、よき労働力を確保し、もって過当競争をなくし、中小企業の経営の基盤を強めていくものと私は確信をいたします。しかしながら、その法の制定に当りまして、中央賃金審議会は、関係各省の代表の参加を求め、その意見を十分聴取して参りましたし、この法の運営に当りましても、なお各方面との連絡を密接にいたして参りまして、この法律の効果を上げて参るようにいたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣前尾繁三郎君登壇
  38. 前尾繁三郎

    国務大臣(前尾繁三郎君) 先ほど来の御答弁にもありましたように、今回の最低賃金法は中小企業者を圧迫するものとは私は絶対に思っておりません。本法案は、業者間協定を原則としておるのでありまするし、また、通常の企業の支払い能力を考慮して定められるものでありますから、むしろ、一産業におきましては、もうすでに、各地に、過当競争防止のためにも、最低賃金のきめをやりまして、効果を上げておる事例がたくさん出ておるのであります。しかし、一面、中小企業者に対する対策を講じて支払い能力を培養すべきことは当然であります。先般も御説明申し上げましたように、私は中小企業者に対する振興策を三つに重点を置いて考えておるのであります。  第一は、すでに臨時国会で制定せられました中小企業者の団体の組織法であります。これによって中小企業の経営の安定ということを考えていかなければなりません。この法案を急ぎましたのも、実は、次には最低賃金制を制定しなければならぬというところにあったのであります。  第二点といたしましては金融の円滑化でありまして、これにつきましては、従来からいわゆる中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫、商工中金というようなものに大幅に政府資金を投じて参りましたが、御承知のように、今回は根本的に零細企業者の信用補完ということを考えまして、百七億の中小企業信用保険公庫というようなものを設立いたしまして金融の円滑化をはかっておる次第であります。また、税金につきましては御存じのように、法人税を二%下げます一面におきまして、低減税率の適用範囲を二百万円まで引き上げておるのであります。今回は事業税につきましては遺憾ながら見送ったのでありますが、それにかわりまして、零細企業者に最も適用の多い自転車税及び荷車税の廃止というようなことをいたしているのであります。  それから、ただいまお話にありました通りに、いわゆる生産性の向上、すなわち中小企業者の設備の近代化という点につきましては、すでに御説明しておりますように、設備の近代化の補助金、また、技術の向上のための公設試験所の設備の整備、その他企業診断につきまして大幅の予算を投入いたしまして、いわゆる体質の改善ということに本腰を入れておる次第であります。(拍手
  39. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 五島虎雄君。     〔五島虎雄君登壇
  40. 五島虎雄

    ○五島虎雄君 ただいま提案されました最低賃金法案について、日本社会党を代表して若干の質問をいたします。(拍手)  その内容いかんはともかくといたしまして、懸案の最低賃金法が保守政党政府の手から提案されたことは、まさに時代の流れというべきでありましょう。(拍手)  日本社会党は、去る第二十六通常国会に、最低賃金額を一律八千円と明示し、過渡的措置として二年間は一律六千円とすることを内容とするところの画期的な最低賃金法を提案し、目下継続審議中であります。政府案は、わが党とは全く相反したところの、業者間協定をその柱とするところの似て非なる最低賃金法を提案されて参りました。(拍手)  業者間協定による最低賃金方式というのは一体何であるか。昭和三十一年四月に静岡のカン詰業者の間で持たれたのですけれども、これが最初でありますが、労働者の意思を加えず、業者だけで申し合せをするものであります。政府は、昨年次官通牒を出して、全国各地でこの業者間協定の成立を援助しているのでありますが、これは、国の内外に対しては最低賃金制の第一歩を踏み出しているかのごとくに言いふらしながら、将来できるであろう最低賃金制の金額を低くする実績を今のうちに作り上げようとするものであります。(拍手)ところが、政府は、百尺竿頭一歩を進められて、この協定自体を法制化して、かつ、効力拡張を行おうとするものであります。業者間協定は、もともと利潤追求の資本家が集まつて作るのでありますから、でき上る最低賃金は、ただ労働者の募集に都合がよいものであればいい。あるいは経営の面からはお互いに競争しては不利だという不正競争の防止を目的としたものでありまして、労働者の生活を保障し救済しようというものでは決してございません。(拍手わが国の労働法は、労働賃金の決定は労使の自主的交渉によって行われることを要求しております。これは小坂議員が言われた通りであります。かつ、国際原則でもあるのであります。ところが、業者間協定は、文字通り業者の勝手な協定でありまして、賃金決定の常識からは逸脱しているのであります。このような協定を最低賃金法の柱とすることは、従来の賃金決定の原則をまつこうから否認する結果になると思いますが、労働大臣はどうお考えでしょうか。(拍手)  次に、一九二八年ILOの最低賃金決定制度の創設に関する条約の、労使対等の精神にこれは適合しておるとお思いになりますか、石田労働大臣。また最低賃金制度を有するところの諸外国四十九カ国のうちで、業者間協定方式法制化しておる国が幾つありますか、労働大臣。業者間協定賃金によって公正な最低賃金を確保することが可能と考えますか。静岡の、ミカンのカン詰業やその他の業者間協定に基く最低賃金が今や最高賃金に変貌しつつある事実を、どのように評価されておられますか。(拍手)  第三の決定方式であるところの労使協定による地域的最低賃金は、労働組合法第十八条で十分実現できるわけであります。この規定が活用されたのは、きわめて従来少いのであります。こういうような労組法の第十八条を今回最低賃金法の方に植えかえて、そうして、これをもって最低賃金法を拡大強化されようと説明される石田労働大臣の考え方、今後におけるところの拡大の方針を問うておきたいと思います。今まで、従来の通りならば、なかなか実現はできないと思うのであります。特に、労組法第十八条では労働委員の権限が非常に強かった。労働委員が決定することができていたのです。ところが、今度の法律最低賃金法に植えかえたものですから、労働大臣や基準局長にその権限が移っていきました。そうすると、労働組合法は後退をいたしまして、こっちの方だけ前進するということになります。これは労働組合法を無視する考えではないかというように解釈されますが、労働大臣、いかがですか。(拍手)  次に、最低賃金審議会の権限を見てみますと、非常に弱いのです。さいぜん、石田労働大臣は、四つの方式のそれぞれに最低賃金審議会を作つて、よく意見を聞くんだというように説明されておりました。よく意見を聞くが、よく意見を尊重するけれども、実施はしないのだ、と言ってしまえば、何のことはない、何にもできないということになります。こういうような審議会ではいけないから、これを外国の例にとって決定権を持たせるような、いわば行政審議会になぜしなかったかということ、これを労働大臣に聞いておきます。  それから、政府案は、さいぜん説明されましたように、四つの方式を採用しておるのでありますが、そのいずれもが、一つ一つとつて現行法で十分やれるものばかりです。さいぜん申し上げました業者間の協定にいたしましても、あんなのはない方がよろしい。それから、第二の効力拡大の問題にしましても、業者間を基礎といたしますから、こんなのもない方がよろしい。第三の方式は、労働組合法第十八条で十分これがまかなっていける。第四の方式労働基準法でやれるわけです。さいぜんも説明されましたように、四つの業種に、すでに賃金委員会から諮問が出た。ところが、これを三年間ほうっておつたのはだれかというと、政府その人であります。(拍手)やろうと思うなら、これはやれるのです。だから、こういうようなことでは、四つの方式をもっては最低賃金が確保されそうにない見通しから、多くの国民はやはり、こういうように一つ一つにたよっていてもなかなか実現されそうにない、従って、法の強制力をもって、ある程度の最低線を引いて、最低生活を樹立してくれろという要望が非常に多いということを、どう考えられますか。  それから、次に罰則規定に触れてみます。労働基準法に比しましても、罰則規定はちょっと後退しております。あるいは中小企業関係法規に比しましても、これまた軽いのです。ところが、中小企業関係の罰則は、業者と業者同士の問題です。それに、この最低賃金法よりもぐつと重いわけであります。ところが、さいぜんも石田労働大臣の説明の言葉の中にもありましたように、賃金というものは最も重要なものである、労使間の自主的な交渉、お互いの意思を尊重することは最も重要なものであるというように説明をされましたけれども、使用者がこの賃金を守らなければならないのを違反するときにおいて、非常に罰が軽いわけです。私は、この刑罰を無限に広げろとは言いませんけれども、労働基準法程度までにはこれを持っていかなければならぬではないか、こういうように考えます。また、外国の法令を引っぱり出して、大体参考にしてみましたけれども、やはり、賃金に関するところの刑罰は相当に重いものを使って、そうして労働者を保護しているのであります。(拍手)  最低賃金法の提案に伴いまして、中小企業に対する裏づけ措置といたしまして、労働省は、この予算案の要求に当りまして、特定金融機関に対するところの融資、それから信用保証制度など、相当大規模の構想を持っていたようであります。しかし、三十三年度の予算からこれが消えてしまっおるわけです。聞くところによりますると、自民党の諸君が、そういうような最低賃金法が通過して、そうして労働賃金が払えないような業者は、まあ業者の資格がないのだ、だから保証する必要はないのだと言ったか言わないかよくわかりませんけれども、こういうようなことで予算が削られたかどうかということを大臣に聞いておきたいのであります。  次に、総理大臣に聞いておきます。さっき小坂議員質問の中にもありました通り、ILO一九二八年の最低賃金決定制度の創設に関する条約の批准は、国際信用の問題もあり、すみやかに批准されるよう要望いたしますが、総理のこれに対する態度を、この際あらためてお聞きしておきたいと思います。なぜかならば、さいぜん、小坂議員質問に対しましては、労働大臣は、お茶を濁して、すみやかにやりたいと思いますとかなんとかというように、ごまかされておつたわけです。  また、総理が常に公約されております三悪追放の一つである貧乏の追放につきましては、この最低賃金法などもその一環とは思いますけれども、憲法第二十五条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という条項について、総理の日ごろの貧乏追放に関連したところの理念を聞いて、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣岸信介君登壇
  41. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えいたします。本法の制定に当りましては、ILOの条約を十分参酌して制定しておりますので、本案が成立をいたしますならば、すみやかにこの批准の手続をとりたいと考えております。それから、憲法二十五条のこの一項と二項の関係でありますが、これは言うまでもなく、近代的ないわゆる福祉国家としての、国民と国のあり方についての基本的理念を明らかにしたものであると思います。私どもは、こ意味におきまして、私の言っている三悪追放の一つである貧乏追放ということから考えましても、この二十五条の精神を実行していくことに努力していくことは当然であり、また、今度の最低賃金法の制定、これによって劣悪な労働条件にあるところの中小企業零細企業労働条件を改善していくということも、その相関連したものであると考えております。(拍手)     〔国務大臣石田博英登壇
  42. 石田博英

    国務大臣石田博英君) お答えをいたします。  ただいまの御質問趣旨の根本を貫いているのはこの最低賃金法案が業者間協定だけを中心にしておるかのごとき錯覚、それから、その業者間協定はやつてみても効果が上らないという、これは知っておられるだろうが、わざわざ知らぬ顔をしておられる御議論、これが基本であります。従って、誤解と錯覚に基いた御質問でありますから、一々お答えを申し上げる必要もないと思いますが、念のためにお答えを申し上げておきます。  業者間協定はただいままで二十件すでに成立を見ております。それから、ただいまなお四十件進行中であります。二十件はともどもに、約一割ないし二割の賃金増を来たしておるのであります。  第二点の質問はILOの決議と適応しておるかどうかということでありますが、適応しておると考えております。  それから、第三点は、これが最高賃金にならないかということでありますが、明確に、今までの実績に見られたごとく、一割ないし二割の賃金増を来たしているのであります。  第四点は労組法十八条の関係でございますが、労組法十八条は明確に生きております。しかし、労組法は、賃金だけを対象としているものでなく、労働問題一般を相手としておりますから、最低賃金のことについては、特に本法との関連を明確にしておる次第であります。  第五点は審議会の権限が弱いという御意見でありますが、列国の立法例等を参照いたしまして、現在のような法規にいたした次第であります。この審議会には建議権を与えてありますので、十分その自主性が発揮できると信じます。  第六は、全国一律の最低賃金を出せという声があるということでありますが、先ほど小坂議員の御質問にお答え申し上げました通り、列国中、今まで、アメリカを除いたほかは、全国一律の最低賃金実施していないのであります。  第七は罰則でありますが、罰則は基準法の賃金未払いに対する五千円ということよりは、倍額の一万円になっております。これは体刑を除いてある点を御指摘であろうと思いますが、法を困難な客観情勢の中に実施して参ります場合におきましては、にわかに体刑をもっておどしつけるという方策はとりたくないと思います。  第八は中小企業対策との関係でありますが、この法案労働者の生活の向上に何にもならない、実際上何の役にも立たないという御議論の口の下から、中小企業に対する有効なる措置を講ぜよということは、私は議論の一貫性を欠くものと考えます。(拍手)しかしながら、中小企業に対しまして、この法律案だけが中小企業の経営困難の問題ではなく、すなわち、賃金だけが中小企業の経営困難の問題ではなくて、他の諸条件の解決も必要であると考えますので、他の諸条件の解決とあわせて中小企業対策の促進を強く要望し、それが今回政府の予算案等においてもある程度実施せられておるものと考えておる次第であります。  結局、この法律案についてはいろいろ御議論もございましょうが、現実的に、いわば急がば回れであります。急がば回れ、着実に前へ前進することが必要であり、この法律案は着実に前へ前進しておるものと確信をいたします。(拍手
  43. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの石田労働大臣の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  44. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十九分散会