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青野委員 これで
官庁スパイ事件というものの
質問が大半は済んだわけでありますが、大体きのう
委員長の御了承を求めておきましたように、これに加えて、長崎の
機関車労働
組合の
最高幹部五名を不法に逮捕して、そしてこれを調べて起訴に付した
事件に非常な食い違いと誤まりがあるので、この機会に、時間はごく簡単で差しつかえないのでありますが、
法務大臣の御
意見を聞きたいと思います。
それは、昨年来年末手当その他の
要求のために行われた順法闘争に関して、馬場義治という門司地方本部の副執行
委員長を勤めておる諸君を初めとして、全部で五人、それが、御承知の
通り、ことしになって
捜査をされて、そうして二十二日という長い勾留期間を連れられて、非常にみな迷惑をした
事件であります。ここに私の
手元に
決算委員長の坂本代議士からいただいたその起訴
理由が四項目にまたがったものがあり、そして私がこれを友人として入手したのでありますが、その一、二、三、四と四項目に分れております
内容が、事実とほとんど全部違うのです。それは白と黒の違いどころの騒ぎじゃない、全然違うのです。果してどの程度に真実があるかということを疑わざるを得ない。ここに起訴
理由を四項目に分けてプリントしてありますので、これはあとで大臣に差し上げてもいいと思いますが、大体起訴の事実は、いろいろ順法闘争を通じてピケを張って、そうして列車の遅延をはかったということが
項目別に四つあげられている。それが、短かい時間で七分遅延さした、それから二十四分遅延さしたというのが一項目。それから、三番目の区項目には、十八分長崎定期発車をおくらかした、こういうとにかく何分といったような問題を、非常に大げさに、何か徳川十五代将軍を暗殺でもするような工合に問題を取り扱っているのです。
そこで、私は、第一点について申しますが、これはあとで大臣に差し上げます。この起訴
理由の第一とどれだけ違うかということの
内容になりますが、三一六列車の牽引車が出区に際して乗務員
作業基準に示されている石炭の積載量が立会確認を欠いている、
機関車に石炭を何トン積んだかはっきりわからぬから、いつもの
通り立ち会いをして調べてくれろ、やはり客車を引っ張って走る
機関車のことですから燃料は非常に大切です。これが確認と安全の保障を
組合が
要求したときに、当局側からは、当初威圧的態度に出てきたけれ
ども、話し合った結果、第一番に、今後は間違いなく完全に立ち会いをします、石炭積載量については大切なことであるから当局が来て立ち会います、三番目は、この列車については安全であることを保障するとの確認を得たが、そのために話し合いの時間で約三十分ほどつぶれた。それを
検察庁は、ピケを張って威圧的態度をとって三十分、あるいは二十四分とも第一項目には書いてありますが、遅延さしたと言う。ところが、実際はそうじゃない。
機関車労働
組合の
代表者と、国鉄の現地における当局の
代表者とが話し合って、合理的に話のついたものを、なぜここで
警察が介入をして、そしてこういう問題をでっち上げなければならないか。話はたったこれだけなんです。
起訴
理由の第二は、入れかえ四一仕業の
機関車出区の際に、速度計が、御承知の
通り日本の
機関庫には舶来のがみんなついておりますが、これが不備で非常に悪くなっている、それで運転士が危険だからすみやかに整備の上に出区さしてくれと
組合側が
要求したのに対して、
機関士の勘で大丈夫行けるじゃないかというようなことですったもんだ間答が繰り返されて、終始威圧的態度で当局側はやってきたけれ
ども、最後には応じまして、
組合側は安全の確保がなされるまではピケを張って話し合いを続けておった。第一に、列車がおくれるので
機関車を出すことを認める、第二は、入れかえの合い間に速度計を当局の手で取りかえます、それから、三は、その間安全運転とするが、これによって列車をおくらした
責任は
職員には問わないことを確認し、ピケを解除したのである。この話し合いのために十四分
機関車の出るのがおくれた。これが
内容なんです。当局が全
責任を持って
組合の
代表者と話をつけておるのです。
それから、三番目には、八一八列車の牽引車が出区の転向の際に転車台の電流計が故障のために、
組合側からこれが全安の確認と修理を
要求した。ところが、現場における当局は電気に対する知識が全然ない。そこで、専門家の
代表者、電力区の
責任者を呼んで検査の上に次のことが確認された。電流計が不備であることは認める、不備なままに
機関車が出ることは危険であることは間違いございません、転向には安全であることを、ちょこちょこ回った結果、安全なことは保障されたが、確認までの話し合いで大体二十分間列車が遅延したというのです。
四番目も、八三三列車、これが入区に際し線路分岐器の先端軌条が浮き上り、入ろうとしたところが、入っていく途中の軌条が、レールとレールの電気熔接のつぎ目のところが不密着ではね返っておるから、もしここで脱線でもして事故を起したときには大へんだというので、こういう故障が発見されたのですみやかに修理してもらいたいと
組合側から
要求した。当局側は無謀にも、問答無用だ、そんな一々言われたことをしておったのでは大へんだというので、話し合いを見守っていた
組合員の諸君の中に
公安官を突っ込ませて若干のトラブルが起った。問題は、レールがそってつぎ目がはずれておるから危ないじゃないか、何とかして熔接工を呼んできて全部修理をしてくれと頼んだ。ところが、それを相手にせずに、
公安官に命令をして、その話し合いがどう解決つくかとぐるりと取り巻いてピケという厳格なものではなくしてじっとその交渉の過程を見守っていた
組合員の諸君の中に突っ込ませた。いろいろ調べた結果が、危険がない、じわっと列車が入る、
機関車がレールを通って走ったあとすみやかに修理をするということを確認をして、この
関係列車の一本が約五分間おくれた。
これが現地からの報告であり、私
どもの調べた
範囲では非常に信憑性か強い。ところが、起訴
理由を読んでみると、あたかも
計画的に多人数をもって列車を遅延させたように事実を隠蔽した起訴
理由になっておる。
こういうことは
機関車労働
組合だけじゃない。いろいろな
組合に対して
警察権が介入して挑発を行う。
刑法の問題のときでもここで問題になりましたように、たとえば私鉄争議なら私鉄争議で五百人の
代表者が
全国を代表して社長に会おうといって広場に集まっておる、そこに何か右翼の暴力団の若い連中が同じような
作業服みたいなものを着てやってくる、
警察官の一部の私服の連中が飛び込んでくると、あいくちの二、三本ぽろぼろと落してさっと引き揚げてしまう、そして、事務所のガラスを割った、凶器を持っておった、多人数をもって集合した、そこで待機しておった
警察官がいきなり引致勾留するというようなことは、
全国に
相当の例があるのですよ。だから、そういう正常な労働
組合の運動にこの暴力取締りを強化して
適用され
乱用されたときには大へんだというのが、
刑法の問題のときの
法務委員会における私
どもの
質問の要項であったのですが、事実そういうことが行われておる。この問題にしても、起訴
理由の
内容を検討してみると、四項目にわたってあるが、これはやはりだいぶ食い違いがある。八幡太郎と番太郎の違いじゃない。私は三晩も四晩も徹夜してあらゆる
資料を集めて検討したのです。こういうことが公然と許され、職権の
乱用を認めていくということになれば、それは民間であろうと官公庁であろうと正常な労働
組合運動というものはできやしない。まして、いわゆる三公社五現業に至っては争議権を剥奪しておる。団体交渉によって解決をしなければ、それは仲裁裁定を求めて最後にはそれを実施しなければならぬのが
政府の
責任である。吉田内閣以来、私は労働
委員を五年ほどしておりましたか、たびたびの経験がある。最近まではただの一ぺんも仲裁裁定の
内容を完全実施したことはない。武田信玄と上杉謙信との川中島の戦いは、どっちか一方武装解除してしまえば、必ず他方か勝つ。上杉をたたきつぶして武装を解除して、よろい、かぶと、刀や鉄砲を取り上げれば、必ず武田信玄が勝つことはわかっておる。力と力の対立の
組合運動の心臓であるところの争議権という武器を取り上げておいて、そして、話し合いがつかなかったときには裁定が下るが、その裁定が下って決定したものを
政府が誠意をもって実行しないということになれば、勢いこれくらいな摩擦は起るのです。争議権を取り上げた労働
組合なんというものは、それは武装解除せられた軍隊と同じだ。それは満州における関東軍のやり方と同じなんだ。そこで、円満に話し合う場を作って、これが解決のために誠意をもって全力をあげなければ、こういう問題は片づくものじゃない。三公社五現業の諸君、官公庁の諸君、みんな歯を食いしばって苦しんで、一生縣命でその職責を尽しておるでしょう。それを、頭ごなしに、昔の御用聞きか目明かしのように
権力をもって頭からぴしゃっと長屋の連中を押えるような行き方は、私は承服できない。私も、倉石
委員長時代から吉田内閣の時代には、今申しましたように五年間は労働
委員で、労働三法改悪のときには微力にむち打って先頭を切って反対したものであります。だから、公労法の
内容にわたりましては、人後に落ちぬだけの知識を持っておる。こういう状態において武装を解除して、争議のできないようにしておいて、あらゆる面で、賃金値上げの運動をする、待遇改善の運動をする、それを、ぴしゃりぴしゃり、
警察権を中に入れて、ことさらに挑発して問題を起すようなやり方は、少くとも
法務省としては十分気をつけてもらわなければならぬ。こういう点について、きょうはせっかく
法務大臣においでを願っておりますので、この前は六つの
官庁の
責任者の方がおいでになっておりましたけれ
ども、この国鉄の
機関車労働
組合と長崎地検、長崎
警察署との問題は、こういうことが
全国的に右へならえで繰り返されては、正常なる労働運動なんというものはあり得ません。そこで、
一つできればお二人の
意見を聞いておきたいと思います。