○高橋(禎)
委員 ごく簡単に
総理とそれから
法務大臣の所信も伺えればけっこうだと
思います。
実は、私の長い間こういう
質問をする機会を待っておった問題があるのであります。これは名前をあげることはいささか私といたしましても非常に苦しい点がありましたけれども、いろいろ
研究をいたしました結果、お許しが願えると思ったので、あえて申し上げるわけであります。それは、今国会中に、御存じの蘆田先生の事件が無罪が確定をいたしました。もう古いことでありまして、十年以上前のことでありますが、二十三年のあの事件が検挙されましたときに、私も国会に議席を持っておりまして、いろいろあの問題に関する
論議に
関係をいたしたわけであります。私どもといたしましては、あの検挙は誤まりであるということを確信いたしておりました。従いまして、二十三年の第三国会、第四国会で国家
公務員法が
改正されるその
審議中、人事
委員会において私はその問題について時の殖田法務総裁に
質問をいたしました。これは決して見通しを誤まっておるものではない、しかしながら、もしそれについてあやまちがある、過誤を犯しておるということならば、担当の検察官も検事正も検事長も検事総長もその
責任を負う覚悟であるということを明言されたわけであります。これは当時の人事
委員会の速記録に出ておるのであります。それからまた、衆議院の議院運営
委員会においては、えらい大罪人のような、しかもこれを逮捕しなければとても捜査もできないし、逮捕して調べればいろいろの事犯が起るようなことを法務当局は口をきわめて説明があったのであります。私どもは、われわれの
考えと非常に異なっておるこの当局の言明に対して非常に残念に
思いました。そして、いよいよ逮捕状の許諾請求の参りましたときに、本
会議においても、今
思い出しますと涙の出るような
意見を聞きつつ、ついに逮捕許諾ということに相なったのであります。ちょうどそのときに、私の尊敬する名裁判官と言われた三宅正太郎先生が、それこそ憤慨をしておられまして、事件の見通しについて、こんなことを検察庁がやるようであってはとても世はまつ暗やみであると言って悲憤慷慨されたのを私今も
思い出すわけであります。先生は早く世を去られましたが、ああいう
思い詰めた、まじめな当局に対する憤激というようなものが、後に主任弁護人になられた先生の生命をそれこそ短かくしたのではないかということさえ私は
考えざるを得ないような事態でありました。しかしながら、事件の結末はやはり裁判の経過を待たなければならぬわけでありまして、第一審裁判を待っておりましたら、われわれの
考えておった
通り無罪、そうして第二審判決も無罪ということになったわけであります。こういう結果になりました事件について、あの検挙当時は、もしこれが間違いがあるならばわれわれは
責任を負うと当時言明をされた、それは当然のことであると
思います。これについてどういうふうにやるのがいいという
総理のお
考え、
総理自身の手でもってなさるというそういう権限の問題、これはむしろ
法務大臣の方に具体的にはおありだと
思いますが、ただ、今
審議中のような
法案について、私は
検察ファッショ、警察ファッショということをどこまでも注意しなければならぬと
考えておるのであります。いろいろ各方面から、この
刑法一部
改正は全くなまぬるいやり方だ、特に
あっせん収賄罪のごときはざる法であり、骨抜きであって、ほとんど価値なきような
論議がありますけれども、私は、そうではない、これは実によくきく薬であると
思いますし、その法の制定によって、いわゆる
岸総理の意図しておられるところの
汚職追放ということについては、大きな役割を果すであろうということを確信しておるものであります。しかしながら、
法律をここで制定されまして、われわれの心配するのは、やはり運用である。これはいろいろしぼりをかけてありますけれども、疑えばいろいろ疑える。検察管にしましても、警察官にしましても、犯罪ありと思量するときには捜査をするというのですから、
請託があったかどうか疑わしい、
不正行為をさせまた
相当行為をさせないというようなことの
あっせんをしたかしないかが疑わしい、実費であったか報酬であったか疑わしいという疑いをもってこの検挙、捜査に着手するということが手放しで、行われるということになりましたら大へんであります。私は、
汚職追放というりっぱなお
考えのもとに
立法され、国会で
審議してそれが
法律となったときに、それが運用の段階においてもしも
人権じゅうりんというようなことがございましたならば、これは大へんなことになると思う。だから、そういうことのないということを単なる口で説明を承わっただけでは
国民はまだ安心できないと思うのであります。先ほど申し上げたような事例について、
一体どういうふうな態度をとれば正しいと
考えておられるのであるか、
法務大臣は具体的にこの問題についていろいろ調査をされ、どういうふうになさろうとしておられるか、その点も明らかにしていただきたいと思うのであります。本日は、もう第二十八国会もだんだん終りに近づきまますので、いい機会を得たと
思いますから、私は勇気を出してあえてお尋ねをいたした次第であります。