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1958-04-03 第28回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月三日(木曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 町村 金五君    理事 高橋 禎一君 理事 林   博君    理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君    理事 横井 太郎君 理事 青野 武一君    理事 菊地養輔君       犬養  健君    小島 徹三君       小林かなえ君    世耕 弘一君       徳安 實藏君    長井  源君       古島 義英君    横川 重次君       猪俣 浩三君    神近 市子君       田中幾三郎君    古屋 貞雄君       武藤運十郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      山口 喜雄君         法務政務次官  横川 信夫君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月三日  委員山崎始男君辞任につき、その補欠として猪  俣浩三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  証人等被害についての給付に関する法律案(  内閣提出第六一号)  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第一三  一号)  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三二号)      ————◇—————
  2. 町村金五

    町村委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び証人等被害についての給付に関する法律案の三案を一括議題とし、審査を進めます。  この際委員各位に申し上げます。総理出席の時間は大体一時間半の予定でございまするので、先刻理事会申し合せの通り、御発言の時間を厳守されまするようお願いいたします。  それではこれより質疑に入ります。菊地養輔君
  3. 菊地養之輔

    菊地委員 去年の何月か、月日は忘れましたけれども、岸総理がお伊勢参りをしたときに三悪追放公約を発表されたのでありますが、その公約は、言うまでもなく、本案の基調となった汚職追放、貧乏の追放暴力追放、この公約が一たび新聞紙上に発表されるや、これは国民あげて賛成したと思うのであります。私どもも、反対党ではあるけれども、この岸総理汚職追放その他の追放に対しては双手をあげて賛成をいたしたのでございます。そして、この追放がどういう形をもって実施に移されるか、注目をしておったのでありますが、その後それらしいものをわれわれは発見することができないので、幾分失望しておったのでございますが、今回暴力とそれから汚職に対しまして法案が提出された。その法案を先ほど来当委員会審査をして参ったのですが、どうもわれわれには納得のいかぬ点が多々あるのでございまして、どうしてもこれを公約され提案された首相自身の口からお聞きしたいと思うのでありまして、時間の制限がありますのできわめて大綱だけをお伺いするにすぎないのでございますが、御答弁を願いたいと思うのであります。  第一にお聞きしたいのは、いわゆる汚職原因首相はいかに理解しているかということであります。一体、いろいろの対策というものは、まず原因を分析してみなくちゃならない。その原因を除去することが一番大切である。腹が痛いといっても、それは腸捻転のためであるか、あるいは腸ガンのためであるか、あるいは腸結核のためであるか、いろいろ原因が存在する。その病状によって医者がその対策を講ずるように、今日存在する汚職の問題も、どこからその原因が出てきたか、その原因を追及した後に初めて対策が立てられなくちゃならぬ。本案審議するためにも、いわゆるその原因首相がいかに理解してこの提案をなされるに至ったか、公約されるに至ったかという点をまずお聞きしたいのでございます。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 お答えいたします。私は、私が政治最高責任を負うて政治を運営していく上から申しまして、汚職暴力と貧乏をなくするということを私の一つ政治的信念として国民に申し上げたのでありまして、私はそれを終始一貫実現しようと努力をいたしております。今回提案いたしました法案も、その問題の一端を示すものであります。もちろんこれだけですべてが達せられるわけでもございませんし、ことに、今お尋ねになりましたのは、これらのことが起ってくる原因というものを、どこにその原因考えるか、その原因に対して適切な措置を講ずることが、もちろん、これをなくする上から必要であるという意味の御質問であると思います。汚職の起って参ります原因もいろいろあると思います。特に、公務員綱紀弛緩ということ、あるいはまた戦後社公道義頽廃とかいうようなところに基因をいたしておる、また、政治に関しての、政治行動をいたす上におきまして、政治清浄を期するという一つモラルの確立が欠けておるというような、いろいろな原因から近年の汚職の問題が起っておると思います。これに対しましては、十分にその原因に適応するような措置を講じつつ、私の悲願である三悪を追放することに今後とも専念をいたしたい、かように考えております。
  5. 菊地養之輔

    菊地委員 汚職原因に対しまして、首相綱紀弛緩やあるいは戦後の道義頽廃その他一、二をあげられたのでございますが、これらは派生的なものじゃないか、もっと根本的なものを私は聞きたいのでございます。いわゆる汚職の出る根本的な本質はどこにあるかということを聞きたいのでございますが、その答えを得なかったことは非常の残念でございますが、私は今日の資本主義社会にその原因があるのじゃないかと思う。私はその議論を展開する時間を持っておりませんし、しようとも思っておりません。端的に言うならば、自由競争という点、利潤追求という点がいわゆる資本主義社会根本をなすものだと思うのでございます。ここからその遠因を発するのではないか、こう私は理解しているのであります。自由競争利潤追求の自由、こういうところから、いろいろな方法をもっていくのではないか、こう私は常に理解しておるのでございますが、首相はこの点に対してどうお考えであるか、この点をお聞きしたいのであります。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 私は、自由経済あるいは自由競争ということが唯一の原因であり、資本主義が是正され変革されて社会主義の世の中になれば一切の汚職がないようになるということは、必ずしもそう考えておりません。また、社会主義各国の実例を見ましても、そういうことを論断することは適当でなかろう、どの社会においても、社会道義一つモラルというものが一番根底をなしておるものだ、私は、むしろ、民主政治においてほんとうに社会道徳というものが確立し、これに基いて国民政治家もまた公務員も、あらゆる者が行動するようになれば、汚職というものは面目を一新する、かように考えております。
  7. 菊地養之輔

    菊地委員 これは意見の違いでございますから、これ以上追究しませんが、しかしながら、首相はこの点に深く思いをいたされたい。今日のように資本主義が非常に発展いたしまして、あらゆる方法を講じた上に公務員を利用し、職権も利用し、あらゆるものを利用して自分の利潤追求する社会においてはこういうことが行われるのではないか、それがそもそもの根本ではないかとわれわれは考えているのであります。どうか現代資本主義の病根、欠陥について首相は深く思いをいたされんことを望んで、この点はこれで終ります。  第二は、首相中村法相に対して汚職追放に対する立法措置を講ずるように命じたということを、われわれは新聞紙上だけで見ておるのでございますが、そうだとするならば、その汚職追放立法措置を講ずる場合に、どういう汚職追放しようとしたのか、いわゆる首相の理解する汚職とはどんなものであったか、どういう指示中村法相に与えたか、法案内容に対して指示を与えたか、その内容はどうであったか、そのいきさつをお聞きしたいのでございます。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 汚職につきまして従来贈収賄に関する刑法規定がありますことは御承知の通りでございます。ところが、従来のいろいろな例を見ますと、いわゆる世間あっせん収賄罪と称せられておるものは現在の刑法規定に含まれない。また、これに対する立法措置をすべきであるという議論も各方面にございますし、また、すでに社会党も提案をいたしておられるのでありますが、日本立法沿革を見ましても、この点に関していろいろと研究が出ております。私は汚職というものに対して国民公約をいたし、あらゆる面から汚職をなくするという強い信念を現わす一つの道としては、いわゆるあっせん収賄舞に関して懸案になっておる立法をいたして、この点に関する国民の意識を全面的に高揚し、政治の清潔を保持するという意味におきまして、あっせん収賄罪に関する研究を命じたわけであります。
  9. 菊地養之輔

    菊地委員 今のお話では非常にばく然たる研究を命じたわけでございますが、あっせん収賄罪という抽象的な言葉だけではわれわれは納得できません。一体汚職あっせん収賄罪内容首相はどう理解してこの立法措置中村さんに命じたか、こういう点でありますが、もっと具体性をもってお答えを願いたいと思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 世上いわゆるあっせん収賄罪と言われるこの観念は、今菊地委員も御指摘になりましたように、従来のいろいろな論議を見ましても、非常に不明確なものであり、いろいろな議論がございます。その具体的なことを専門家であり権威であるところの法制審議会に諮り、法務省として責任を持って提案するような具体的な研究を命じたわけであります。具体的にどうするかという問題に関しては、今申しました権威ある審議会審議決定に待とうというつもりで調査研究を命じたわけでございます。
  11. 菊地養之輔

    菊地委員 それでは、首相はでき上ったこの法案に満足しておられるのか、これで汚職追放できるとお考えになっておるのか、その点お聞きしたいのであります。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆるあっせん収賄罪と称せられるすべてのものを本法が網羅しておらないことは私よく承知しております。ところが、この問題に関しましては、私がここで詳しく申し上げるまでもなく、各国立法例を見ましても、日本立法沿革を見ましても、また実際上の運営——一方から、言うと汚職追放するということを考えると同時に、一方から言えばやはり検察ファッショになり人権じゅうりんされることのないようなことも考えなければならぬ。それらの点を考慮いたしましてこの結論を得たわけでありまして、私は、これで完全欠くるところなしとは考えておりませんけれども、現在の段階といしたまして、この法案が成立するならば、相当目的を達成し得る、かように考えております。
  13. 菊地養之輔

    菊地委員 従来の委員会でその点はだいぶ論議されましたから、ここで繰り返そうとは思っておりません。ただ、この法案世間で言うざる法案であることは申すまでもございませんが、その以外に、かえって、従来国民汚職として考えてきたことがいわゆるそのらち外に置かれて合法性を獲得する危険性はないか、こういう点を総理にお聞きしておきたいのでございます。国民の理解する汚職というものは、いわゆる公務員あっせんをやって、他の公務員に不正な行為をなさしめて金を取るということであります。顔をきかして金を取るというところに、国民がこれを指弾する考え方があるのでございます。ところが、この法案を見ますと、まず請託がなければならない、しかも公務員に対して不正の行為をなさしめたりあるいは相当行為をなさしめずして、その上で金を取るのである、かように非常にしぼりにしぼった法案になってしまったのでありまして、そうすると、国民の理解するあっせん収賄、いわゆる不正の行為をなさしめ、相当行為をなさしめないであっせんをし、そして莫大な金を取っても、これは犯罪にならない。こうなれば、国民の理解するいわゆる汚職というものはまとをはずされてしまう。しかも、このしぼられた請託とか不正行為であるとか、あるいは請託と金員の収受との間に原因結果の関係が生じなければならぬというようなむずかしい条件をつけた結果として、その他一切の国民の理解する汚職というものは野放しにされる。野放しされるばかりでなく、これが合法化される。そうすると、道義的に責めらるべきところの汚職も、法律という、いわゆる合法化によりて国民の目からそらされる危険性がある。こういう点を心配いたしまして、従来この委員会論議の中心となってきたのでございますが、一体これで首相汚職追放国民公約した目的が達せられると思うか。これではとうていその目的が達せられないばかりでなく、非常に不道徳な、政治家として恥ずべき行為合法化される危険性があるではないか、こうわれわれは理解せざるを得ないのであります。いわんや、このあっせん収賄罪によって処罰される者は、おそらくは国民の理解する汚職九十九は残されて、たった一つが律せられて処罰対象になるような状態になるのではないか。若いころ読んだ聖書の中に、間違っているか知りませんけれども、こんなようなことをさして言うのには、針の穴を、牛であったかラクダだったかわかりませんが、それが通るほどむずかしいことだということわざがありましたが、このあっせん収賄罪がいわゆる処罰対象になるためには、おそらくは、この聖書言葉の、針の穴をラクダが通るほどの困難性を持つものではないか。これでは、免れて恥じなき者がたくさん存在してくる、こういう結果になりはしないか。むしろ、このあっせん収賄罪がないよりも悪い結果を招来するのではないかという危惧の念があるのであります。こういう点に対して首相考え方をお聞きしたいのであります。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 あっせん収賄という言葉自身、従来の法律がこれを規定いたしておりませんから、いろいろその内容についてはあいまいな点があり、しかも、非常に広く考えでいる人もあり、また狭く考えている人もあり、いろいろあると思います。今回初めて法律に取り上げて、法律上の観念として明確にあっせん収賄罪というものを具体的に規定して、そうしてこれを処罰するということをいたしたわけであります。大体、法律というものの背後には、やはり国民一般観念といいますか、これが裏づけをしないといけないことは言うを待たないのでありまして、やはり国民がこれを悪として認めておるというなにがなければならぬことは言うを待ちませんが、しかし、国民が悪と考えておることがことごとく立法化されるかといえば、そこには、宗教のものもあり、道徳の範囲に属するものもあり、法律に属すものもある。なぜならば、法律は、これの処罰ということによって大きく人間の自由を制約するものでありますから、民主政治の本体とし、基本的人権を尊重する面から申しますと、そこに、ある刑事政策上の、必要上の限界というものがおのずから出てくると思います。従いまして、お話しのように、あっせん収賄もいろいろの場合が想定されますけれども、全然制限なしに、どこかでしぼられずに、すべてのあっせん収賄に関するあらゆる場合を、規定するということは、むしろ今度は個人の人権じゅうりん弊害——ことに、民主政治におきますと、民主政治家国民の声を代表し国民の要望というものを実現するために、政治活動をする、これは民主政治の当然のことであります。それ一に対して、それがことごとく法律に抵触する疑いがあって調べられるというようなこと等になりますと、正当なる民主政治家活動というものを非常に阻害するおそれがある。それに関連しての人権じゅうりんのおそれも出てくるというようなことを考えてみますると、私は、初めてこの法律に取り上げて観念として明確にしていくということから申しますと、相当なしぼりをかける必要があると考える。そのしぼりをどこにかけるかということについては、まずいろいろな専門家の間に議論がありましょうが、私は、この法制審議会意見であるところの案をもって現在のところ最も適当なものである、かように考えて、提案、御審議を願っておるわけでございまして、これが成立するならば、その目的を十分達すると私は信じております。
  15. 菊地養之輔

    菊地委員 大体法務大臣と同じような意見を持っておられるようでおりますが、最後にお聞きしたいのは、この法案だけではとうてい汚職追放目的を達せられないということは、首相自身も述べられたし、あるいはまた従来の法務委員会でも法務大臣刑事局長お話でそのことは何度も繰り返されておるのであります。しからば、いわゆるその他はいかなる方法によってこの首相公約を達せられると考えておられるか。この法案だけで終ってしまうのか、もっと汚職追放についてその他の方法考えておられるか、考えておられるならどんな方法考えておられるかということをお聞きしたいのであります。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 これは、一面におきましてはこの法律によって政治清浄を確保し、同時に公務員の公務というものが正しく施行されるように、これを求めておるわけでありますが、私は公務員のなにに対する関係におきましては、やはり行政上の機構等につきましても十分に責任態制を明確にし、公務員全体の綱紀を粛正するようなことについて十分な措置を講ずる必要があると思います。また、政治自体といたしましては、これは民主政治のなにとして政党政治でございまして、政党におきましても正しい一つ道義を樹立するように、政党自身として考えていかなければならないと考えておりますし、また、同時に、国民全体につきまして、社会道義の高揚に関しまして諸種の方策を講じていく必要がある、こういうものを、これはある意味から一言えば法律前の問題であり、ある意味から言えば法律を真にその目的を達成せしめる裏づけという意味におきまして、これらをあわせ行なっていかなければならぬ、かように考えております。
  17. 菊地養之輔

    菊地委員 これは岸総理も申されたが、私は詳しく申し上げる時間がございませんから簡単に申しますが、官僚主義の制度に欠陥がないか、あるいは政治資金規正法欠陥がないか、あるいは、選挙に莫大な金がかかる、こういうことがその根本原因になりはしないか、あるいは進んでは各政党のいわゆる派閥争いというものがこの原因になりはしないか、親分子分関係がある、これ封建的以前のものである、民主社会でもない封建的以前の親分子分関係がここに存在する、こういうことがその原因になりはしないか、いわば今日の社会における欠陥がこういう形をもって現われてきているのではないか、こう私は考えざるを得ないと思うのでございます。こういういわゆる社会的欠陥に対して、先ほど岸総理国民の協力が必要だというお話がありましたが、こういうものに対しては、単なる一法律規定ではだめだ、国民全体が汚職追放に立ち上らなければならない。そのためには、いわゆる国民運動を展開する必要があると私は思います。選挙に対しても公明選挙運動国民運動として展開される。大きな汚職追放するためには国民運動の展開が必要ではないか、こう私は考えているのですが、この点に対する岸総理の御意見を承わりたいのであります。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り、私も菊地委員と同様に考えます。今御指摘がありましたように、私が先ほど抽象的に申し上げましたが、政党自身として考えなければならぬということを申し上げましたのは、選挙自体公明で、多額の金がかからないという選挙考えていかなければならないということ、また、政党内部における派閥問題等につきましてもお話がありましたが、これらももちろん考えて参らなければならぬ。要は、民主政治でありますから、私は、今菊池委員の言われるように、こういうことが大きな国民運動として盛り上る、国民運動として展開されるということは最も望ましいと考えております。
  19. 菊地養之輔

    菊地委員 時間が参りましたから、この程度で終ります。
  20. 町村金五

    町村委員長 古屋貞雄君。——古屋君に申し上げますが、多少時間が経過しておるようでございますから、どうか簡潔にお願いいたします。
  21. 古屋貞雄

    古屋委員 刑法改正並びに刑事訴訟法改正につきまして、まず総理根本的なお考えをお聞きしたいと思います。  総理は、内閣を組織されると同時に、三悪追放の声明を出されまして、これを国民公約したのですが、そのことは今同僚の菊地君からも御質問がございましたが、もっと私は掘り下げて、申し上げたい一つは、それは歴代内閣政治貧困というところに原因があるのではないか。従って、まず第一に政治そのもの根本を改めていかなければ、私はこの三悪追放は不能であると思うのですが、総理、いかがでございましょう。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 もろちん、この三悪が起ってきております原因は、先ほど菊地委員も御指摘になり、私もお答えを申し上げましたように、いろいろな原因があると思います。抽象的に、政治貧困であるということも、ある一面から言えば言い得ると思う。政治がよくならなければならないし、また、いろいろな社会環境というものがよく改善されていかなければならない。また、国民道義心というものが高揚されなければならない。しかし、それはすべて大きく言えば政治関係をしておることでございますから、そういう意味においては、政治欠陥があるということも言えるだろうと思います。
  23. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、総理にお聞きしたいのですが、刑罰でもって世を治めていくということは、私は、消極的であって末の末だと思うのです。このことは、一方においては基本的人権を尊重しなければならぬ憲法の建前から考え、または法の上には平等であるということの建前から考えた場合に、刑罰でもって臨むということを考えまする場合には相当考慮が必要だと考える。むしろそれよりも、刑罰をもって臨む前に、やはり政治根本から改めていかなければならない。従来の汚職にいたしましても、暴力にいたしましても、貧困にいたしましても、政治が改められて参りますならば、これは根本的に自然になくなると私は思うのです。ことにその中で考えなければならぬことは、政治が一部の者の利益に運営せられて、多数の国民生活がこれの犠牲になるというような政治を行いますならば、どんなに重い刑罰をもって向って参りましても、根本的にはとうてい解決がつかない。むしろ、そういうような重い刑罰をもって特別に臨むということ自体が、多数の国民の憤激を買い、法律に対する反逆心を買い、思わざる結果を引き起すということに思いをいたさなければならないのでございますが、本件の刑法の一部改正並びに刑事訟訴法改正につきましては、十分にその点に御考慮を払われたかどうか、払われたといたしますならば、どういうように具体的に払ったかということの御答弁を願いたいと思うのです。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り刑罰をもってあることを処断し、ある悪を追放しようということは、決して私はそれが最善の道であるとは思っておりません。お話のように、あらゆる面において、その問題が起ってくる根源をついて、そしてこれに対する施策なり施設なり方策を立てなければならないことは言うを待ちません。ただ、しかし、その悪のうち、その時代において国民としてもこれを除くには刑罰をもってしなければいかぬというようなものに対しては、私は、やはり刑罰を科してそういう悪をのけるという手段を講ずることも政府として考えなければならない問題であろうと思います。もちろん、こういう法律が制定されるという場合におきましては、一方から言うと、その悪に関連して広くこれを取り締っていくというような議論もありましょうが、しかし、先ほど来申しておりましたように、法で罰するということは、そもそもこれは末と申しますか、やむを得ないものに限るべきである、そういう見地から、一方から言うと民主主義の人権を擁護し、これの乱用ということがあってはならぬ、また同時に、この悪に対する国民の要望なりあるいは国民考え方というものを取り入れて、その間に調和をもって実行していくということを、汚職なりあるいは暴力規定を作ります上においてわれわれとしては努力をいたしたわけであります。私が法務当局にこれらの研究を命じましてから、相当な事実も、あらゆる立法例やあらゆる事態等も研究をいたし、さらに法制審議会において十分専門会の御議論を戦わせまして得ました結論がこれであります。一方においては、悪の中核的なものに対しては、はっきりと明確に規定して、刑罰をもって処断すると同時に、それが乱用され、人権じゅうりん等が行われないような考慮をいたして、この成案を得たわけであります。
  25. 古屋貞雄

    古屋委員 私は人間の性は善だと思うのです。従いまして、悪をやるに至りますのもよくよくでなければならないと思います。現在のように、働こうとしても働く場所を与えられない、しかも働かせていただいておりまする職場を持っておりましても、生活の安定か得られない、そういうところに大きな原因があると私は確信するわけです。従いまして、私は、本年度の予算など拝見いたしまして、これを通観いたします場合に、まことに国民の税金でありましたとうとい予算の分配についても、国民生活を安定する方面に対する予算の使い方がパーセンテージから申しますると非常に少い。むだな面に行われている。しかも、毎年々々決算委員会あたりで私たちが会計検査院の報告に基いて決算を審議いたしまする場合においても、非常に疑惑を持った金の支出あるいは処理、そういう面が相当莫大な額に上っておることは明らかなのです。従いまして、こういう面について国民は非常に不安を持つわけなのです。ただいま提案になっておりまするあっせん収賄罪の問題でございますが、僕は、この点につきましても、歴代内閣政治が非常に間違っておった、こういうことは言えると思うのです。もっと端的に申し上げまするならば、まず、あっせん収賄罪あるいはその他の法律改正をする前に、内閣の首班としての立場から、公務員に対するはっきりした指導というものを確立していただきたい。従来の内閣公務員に対する態度、その指導力というもの、ここに大きな欠陥があったと私は考えますが、総理、いかがでしょうか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 公務員に対しまして明確な指示、指導を与えるべきであり、これに対する何か明確にしろというお話でありますが、私は実は内閣を組織しましてからその点に関しては相当意を用いてきたつもりであります。これは、言うまでもなく、公務員だけではなしに、私の考えはやはり民主政治、法治国である以上は、法をお互いに順守するということを出発点としてすべてのものが考えられていかなければならぬ。特に公務員国民に対してサービスをする公僕としての務めがあるわけでありますから、公務員に関する法規についてはこれを順守し、責任をあくまでも明確にして、信賞必罰を励行するようにしばしば私としても適当な方法でこれを公務員に通達し、また監督の立場にある各省大臣その他に向って特にそれを要望して、その実踐を期してきておるわけであります。と同時に、公務員に対する待遇の問題に関しては、私は人事院勧告を誠意をもって実現するということを明確にしてやってきておるつもりでございまして、一方においてはそういう公務員に対する待遇の改善なりあるいはその勤務条件等を改善していくということを考えると同時に、公務員自身も、あくまでも公僕たる立場をよく認識して、そうして法規に準拠して正しい行政を行うように、また、いいことをした者に対してはこれを賞していく、間違いを生じた者に対しても適当な方法によって罰していく、そうして綱紀を粛正するという考えで進んで参っております。
  27. 古屋貞雄

    古屋委員 総理はなるべく公務員に対するところの指導を正しくやっていくということに努力されたとおっしゃいまするけれども、私どもの知り得ておりまするところから御批評申し上げまするならば、総理内閣を組織いたしましてから後に役人の犯罪がふえてきたように考えられます。かつて法務省などには間違いのある、いわゆる法務省の職員がなわ目にかかるというようなことは私どもは考えてもおりませんでしたが、総理内閣を組織してからは、裁判所の職員にまでそういうなわつきが出た。各省ほとんど出ております。従いまして、国民に対して厳重な処罰をもって向おうとする前に、あなたの部下でありまする、しかも御説のような国民に対する奉仕者の立場に置かれる人々がその地位を利用しておもしろからざる悪をあえてなしておるという場合につきまして、これに対する特別の処置、特別な方法を講ずべきだと私は思いますが、それが講ぜられていないのでありますから、この刑法改正前にそういう処置をなさるお考えがあるかどうか。当然そうあるべきである。のみならず、国民の要望はそこにあると思う。その点いかがでしょう。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 私が政治を担当するに至ってから公務員の犯罪事実あるいは不正事実が非常に多くなったという御指摘でございます。私は、実は私の悲願である汚職追放をぜひやりたいという念願から、公務員政治家等におきましても、こういうことについていろいろ間違いがあり、そういう疑いがある者については容赦なくこの非理曲直を明瞭ならしめるということが必要である、——検察官の会議等におきましても、そういう意味において十分徹底してやってもらいたいということを申しております関係上、ある期間において犠牲が出ることは私はやむを得ぬと思います。そのために特にそういう者に対してくさいものにふたをするというような態度は厳に私としてはとらないところであります。あるいは、そのあげられましたところの事実が、私がなにになりましてから検挙されたとか、あるいはそういう司直の手にわたったというようなことでありましても、おそらくは、そのやった行為自身は、私が政局を担当する前の行為に対して私のときにそういう検挙が行われたのではないかと思います。今申しましたような関係上、そう思っておるわけです。しかし、私がなりましてから、それじゃ公務員に一人も不正がないかと言われるならば、私はそれだけの自信をもってここに言い切ることはできませんが、ぜひとも公務員の公正かつ廉直を期して参りたいという途上において、あるいはそういう事態が公務員の前に展開されるかもしれませんが、これは実に私は忍びないところであるけれども、この目的を達するためには実はやむを得ない犠牲であり、それをやはり通過していかなければ、ほんとうの公務員の廉直は期せられないと実は考えておるわけであります。十分に私自身としてもそういう心がけでこの上ともやって参りまして、ぜひ公務員政治家の廉潔を保持していくようにいたしたい、こう考えております。
  29. 古屋貞雄

    古屋委員 あえて私はこまかいことを申し上げませんが、あの事実はあなたがおやりになってからです。  それから、もう一つは、政党内閣の立場から考えますと、政党内閣を組織する土台となるべき選挙が一番大事である。選挙については、最近のようにもう目に余る事前運動をやっておる。日本中の国民は、もう何をやっておるのか、と驚いている。とにかく、清めらるべき政界、政界の根本をなすべき選挙、その選挙の幕前運動たるや、まことに目をおおうものがある。それを今手をこまぬいて、検察当局はどうもやれないという制度になっております。本件の法律改正は私どもは一部においては賛成を申し上げまするけれども、全面的に御賛成申し上げられない数々の点がありります。それはあとから御質問申し上げますが、少くともその先に、先行行為として、少くも汚職追放し、暴力貧困追放しようという三つの看板を掲げた岸内閣におきましては、選挙の粛正、根本的な問題は私はここにあると思う。そういう面については何ら触れておらないのです。もう世論は、国会で議員諸公がまじめに自分の与えられた議員の職務を遂行することはできぬだろうと言うくらいに、選挙区においては選挙運動をやって、黄白をまき、地位を利用する、いろいろな理由、口実を作ってやっておりますことは顕著な事実です。こういう問題について岸総理根本的に改める意思はありやいなや。あるならば、具体的にどういう方法を講ずるか、この点を承わりたい。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 選挙公明を期することは、私は民主政治におきましては最も心要な、最も根本的な一つのことであると思います。従来とも、その点に関しましては、私自身もいろいろな機会にその点を強く要望し、また、これに関する国民運動なりあるいは各政党におけるこの方針というものをその方向に持っていくように努力をしてきております。ただ、今おあげになりましたように、最近における日本の情勢は、御承知のように、われわれ衆議院議員の任期が来年において終了し、従って、どんなにおそくとも本年一ぱいに選挙が行われるだろう、行われなければならぬというのが一つの常識であり、また実際上そういう必要に迫られておるわけでございます。従いまして、他の場合におけると違って、その選挙を目ざしあるいは新たに新人として出ようという人々、また従来議席を持っている人々が、そういう目標としていろいろ選挙民に自分の考えを述べ、またその支持を受けるような運動が展開されておるという実情は、今われわれが置かれておる政治情勢から申しますと、一面から言えば当然そういうことが行われるのもやむを得ない。ただ、これに関連して、今古屋委員お話のように、あるいは度を越して、これがために、事前運動ということの実質が、あるいは金をまくとか、何か地位を利用してどうするとか、あるいは不当な、何かを制約するとかいうようないろいろなことが行われておるとすれば、これは、先ほど来私が申しましたような意味において、これに対してはやはり公明選挙目的とした意味からの取り締り指導というものをやらなければならぬことは言うを待ちません。ただ、全体としての状態は、今申しましたようなことから起こっておることであり、それがいろいろな方面において目に余るようなことに対しましてはやはり検察当局としても十分に取り締っていくという方針のもとに進んでおるわけでございます。
  31. 古屋貞雄

    古屋委員 政府は最近公明選挙をやろうという御相談や準備をされたそうですが、そんなことは私は百万べんやっても効果はないと思う。この点、選挙界粛正と政界粛正が行われなければ、あなたのおっしゃる三悪追放は絶対にできないと私は確信いたします。この方面に対する法の欠陥がたくさんある。従って、取締官は取り締れないで手をこまぬいておるわけだ。やりたくて歯ぎしりをしておるけれどもやれないというのであります。こういう点に対する万全な法律改正をする意思があるかどうか。それが私は一番先だと思う。現存しております刑法なり刑事訴訟法の一部を改正するということも必要でありましょうけれども、もっと先に行わるべき問題は、政治根本を改めるところのその基礎となるべき選挙法にあり、あるいは事前運動に対する断こたる取締りの法案が必要であると、かように国民に要望されておるのですが、それに対して総理は果してやる決意ありやいなや。ただ、今のような状況で、やむを得ないから傍観させておいていいのかどうか。その点の御決意を承わりたい。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 ただ、御承知の通り、事前運動の取締りということにつきましては、はっきりと投票の期日が明瞭になってくれば、これが法の対象になりますが、いろいろな思惑なりいろいろなうわさ等はございますけれども、今日国会がいつ解散され、いつ告示されて、いつが投票日になるというようなことが、法律的にきめることもできませんし、きまってもおらない状況のもとにおいては、非常に取締上困難のあることは事実でございます。私も、この三悪を追放する前提として、公明選挙が必要であり、政界の粛正というものはどうしても必要であるという古屋委員のお考えについては同感でございます。しかし、それならば、それに関するまず法律を出して、そして本件に入るべきじゃないかという問題に関しましては、私は今そういうことに関して法律を出す考えは持っておりませんが、趣旨に対しては私も同感でございます。
  33. 古屋貞雄

    古屋委員 困難だということは、人権を尊重するということが先に立つから困難だと思うのです。従いまして、本件の問題は、私はそれと関係があるから聞いておる。本件の法律改正の中にもそういう大きな問題がある。考え方の立場によってどうにもなるというようなあいまいな本件に対するところの刑法改正がありまして、立場において、どうにもなるというような解釈のしようがあります。言いかえますならば、改正される法律が一方には大きな国民的弊害を及ぼすようなおそれのある場合、そういう法案については、これはどこまでもそういう点に十分な考慮をされて立法していただかなくてはならぬと思う。  そこで、本問題に入りたいのですが、刑罰法規によって保護されるいわゆる法益ですね、保護される法益が大きければ大きいほど、その問題については、厳重にしかもやかましく処罰するという規定を置かなければならぬ。その保護される法益が小さい場合においては、その点においては多少ゆるやかな取締りあるいは処罰規定を制定するということが刑罰政策の根本的な考え方であると思うのですが、総理はそういう点についではお認めをいただくでしょうか。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 古屋委員と同様に私も考えます。
  35. 古屋貞雄

    古屋委員  そこで、ただいま審議しておりますところの法案改正を拝見いたしますと、国家の権威を失墜する、公務員の職務の神聖を害する、こういう大きな法益を守るために新たなるところの刑罰法規をこしらえようしとしておりますのがあっせん収賄罪。ところが、あっせん収賄罪の中で最も必要な大事な点、言いかえますならば国家の権威を失墜するというようなことについて、どうも一方においては検察ファッショというような弊害が伴うから非常にやかましく狭めておる、こういうことに相なっておると思うのですが、一方で、大衆に関するところの取締りの問題、言いかえますならば、本件で改正をしようとしておりますところの暴力団の問題、この問題は大体国民の個人の生命、財産、自由を保護するという、法益は個人ですけれども、ひいて治安には関係を及ぼしますけれども、主として個人の自由、生命、財産を守るということを、その目的とする一つ刑罰法規が、いわゆる集合罪あるいはその他の法律改正、さらに刑事訴訟法改正ということに相なっておりますが、こういうことから考えましても、現在提案されております法案が主客顛倒されておるというような気がする。大衆に影響を及ぼし、個人の財産、自由の保護、このものをもちろんどこまでも保護しなければなりませんけれども、もっと大きな国家の権威並びに国家の奉仕者である公務員の職務の神聖という面にいろいろと汚らわしいことが起る、こういうことと比較いたしますと、むしろ原則的にはこの方を重く罰しなければならないと考えているわけです。  そこで、総理から趣旨は御賛成ということでごさいましたので、進んで私は、時間がございませんから、御質問申し上げるのは、本件の問題となっております集合罪の問題です。このことは総理の御答弁をいただかなくてもいいのですが、現在行われておる日本政治の立場から考えまして、憲法で保障されておる国民の団結権、争議権というものが、公務員その他の現業には制約されておる点があります。従って、これらの人たちに対する給与の問題については、仲裁裁定あるいはさような中立的な立場の方たちから提案される条件に基いてこれを解決することに相なっておりますけれども、一方においては、予算が伴わなければだめだというので、その裁定行為そのものの実施が行われないということに相なって、今日までしばしばありましたけれども、そういった不合理な納得のいかない解決、あるいは解決が押しつけられる場合に、その働いておる諸君に憲法で保障された団結権、あるいは団体交渉権、言いかえますならば労働争議権行使の結果現われた現象形態であるところの暴力というものと、暴力を生業としてそれを一つの生活のかてにして職業として行われておるところの、今政府がねらっておるゆすり、かたり、あるいはグレン隊というものと、本質が根本から違っておる。従って、現象形態においては一つでございますけれども、処罰対象として考えるときに、非常なる考慮と区別をしなければならぬということになるわけであります。これが果して労働争議の限界を上回った行動であったかどうかという認定は、第一線におる警察官、検察官がきめるわけですが、そういう場合、今提案になっておる法律と、そういうような労働争議の取扱いとの関係については、かつての暴力行為処罰に関する法律の制定のときのように法律としてでき上った場合にはその法律はひとり歩きをしてしまって、最初の立法上の趣旨、いわゆる今提案になっておりますところのゆすり、かたりを職業とする暴力団の集合横行に対する取締りそのものが、正しい労働運動あるいは憲法で保障した労働争議の多少の行き過ぎというような場合と混同されまして、思わざる処罰を受ける、こういうようなおそれかある場合においては、そういった法案に対して総理相当考慮をされて、これが適当な処置をされる御意思があるかどうか、この点を承わっておきたい。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 暴力取締りに関する今回の改正というものは、これでもって正当なる労働運動を抑圧するとか、これでもって臨むというような考えは全然持っておりません。今回の改正の条項を具体的に御検討下さるならば、こういうような内容をもっていかなる場合においても労働争議が行われるということは、私自身も想像しておりませんし、相当に条件が出ておりますから、この法律でもって正当なる労働運動に対するということは全然考えておりません。
  37. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、緊急逮捕の問題ですが、今度の刑事訴訟法改正で、従来は三年以上の懲役もしくは禁固に当る罪という重罪を犯した者については緊急逮捕を許しておったが、ところが、今回は、二百八条のいわゆる暴行罪、二百二十二条の脅迫罪、これをも加えて緊急逮捕ができるようになっております。これは総理も御承知の通り、従来の三年以上の懲役という重罪に対する緊急逮捕ですら、憲法三十三条に違反するのではないかという議論相当強かったのです。しかるに、今回また暴行・脅迫の条文が加わりますならば、これはまことに憲法違反もはなはだしいものであると考えざるを得ない。総理は憲法違反の疑いのあるような法律改正をあえていたす決意があるのかどうか、この点について総理のお考えを承わりたいのであります。今日までで政府ではこの法案については相当研究あそばされて御提案なさっておられることと思われますので、特に総理から、憲法違反のおそれのあるようなものを、従来の刑罰に加えてさらにこれだけのものを加重しなければならないという状況に今の日本の状態があるかどうか、そういうことを十分御考慮の上で御答弁願いたいと思います。これは憲法違反になるという学説が相当に多いのです。それがさらに暴行・脅迫というような茶飯事、世の中によく行われておりますようなものについても緊急逮捕するということになりますと、諸般の与えられた交渉あるいは相手に対するところの要求、こういうものが誤まれる認定のもとにおける緊急逮捕で一切が御破算になりまして、そうしてわれわれの基本的人権というものは著しくじゅうりんされるという確信を持っておるのですが、これに対する総理の御意見を承わりたいと思います。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 緊急逮捕の問題につきましては、古屋委員お話のように、学者の間にも議論があったということでございますが、これにつきましては、すでに最高裁の方から憲法違反ではないという判決が出されておりまして、それを憲法違反だとは政府は実は考えておらぬのであります。なお、これに対して今回追加するということに関しての必要性につきましては、法務当局から一つ御説明をさせることにいたします。
  39. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この緊急逮捕に関する今度の立案につきましてお尋ねございましたが、この問題は、現行法における緊急逮捕の条文につきましても憲法違反なりやいなやの議論が学者間にございますけれども、われわれといたしましては、現行法における緊急逮捕の規定も憲法違反ではないと、解釈いたしておりますし、また最高裁の判例もさように相なっております。今度暴行脅迫等につきまして緊急逮捕ができるような規定を作ったのでありますが、これは、しばしば御説明申し上げました通り、いわゆる暴力団等、ちまたの暴力に対する処置として立案いたしたものでありまして、いろいろ御心配になっております労働運動等の場合におきましては、刑事局長からるる統計をあげて御説明申し上げました通り暴力行為処罰に関する法律の場合が多いのでございまして、従来の統計からいいましても、労働組合運動における暴行・脅迫が今度立案しております条文で処置される場合は将来ともあまりなかろう、かように考えておるわけであります。
  40. 古屋貞雄

    古屋委員 私はそういう答弁では納得がいかないのです。特にゆすり、かたりを商売にする者と一般の人との区別というものに対しては、法ができてしまってから後は不可能でございます。従って、それは納得いかないのです。ただ、私最後に総理にお尋ねしたいと思いますのは、総理は正当なる労働争議などに対する弾圧ではないとおっしゃいますけれども、まず第一に集合罪の問題、この問題については凶器を携帯。準備いたしましてそうして多数が集合するということ、そういう問題についての取締りの強化であります。それから器物損壊罪は、これは従来は親告罪であったものをはずそう、そうしてただいま申し上げた緊急逮捕、この三つの一連に流れておりますところの考え方なんですね。これはお取締りをなされます方々のお考え方と、される立場に置かれる国民考え方とは、あるいは相違するかもしれません。けれども、取締り対象になる国民全体からいたしますならば、杞憂であるとあなた方がお考えになるほど杞憂でなくなる。従来の立法に対する関係において、そういう歴史が証明しておるのは暴力行為処罰法です。法が出てしまいますと、あとは自由にひとり歩きしておるというこの現状、しかも、現在においては、暴力行為処罰法において処罰されております統計は、総理、驚くなかれ六割士までが労働争議の場合であります。現在六割までが労働争議に基因いたしました副産物としての処罰暴力行為処罰法でやられております事実にかんがみて、本件の改正で行われる集合罪の問題、器物損壊の親告罪からはずされるという問題、緊急逮捕の問題等、この三つを一連の系統的に考えますと、日本のあらゆる労働争議は弾圧に弾圧が加えられて、もう労働争議が行われないということは、いわゆる凶器を携帯しているだろうという想像のもとに集合者を片っ端から検挙するということにも相なるわけですね。これはそういたしますと、しかも一方には緊急逮捕権を持っておるということになりますならば、もう労働争議の従来の労働慣行なんというものは片っ端からつぶされてしまうのです。私どもはそれを憂えるのです。それは断じてそういうことはないとおっしゃられても、法が出て、法が制定されますならば、その法がひとり歩きすることは過去の歴史が明らかに証明しておる。従いまして、私どもは、この三つの流れがどこからどういう意図で生まれたかということは、これは国民から申し上げますならばいろいろと想像するでございましょう。しかし、国民がかような不安を持っております法律原案に対しましては、われわれは断じて賛成ができない。この点の納得のいく解明が行われなければ賛成申し上げることはできない。こういうような不安、こういう考え方国民が持っておるということを私は総理に申し上げて、これに対する総理の、それでもどこまでも断行する意思があるかどうかをお尋ねしたいと思うのです。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 最近、終戦後における日本社会混乱から来たのでありましょうが、暴力ざた、いろいろな暴力行為というものは、平和な市民の、いわゆる国民の生活を脅かすものが非常に多くなっている。これに対しまして取締りをしなければならぬことは言うを待ちません。特に、最近の情勢を見ますると、暴力団等のゆすり、かたりが、ただ個人的に行うだけじゃなしに、相当多数集合し、かつ他人の生命、財産というものに危害を加えるという目的をもって凶器を持って集まるという事態が、あちらこちらにひんぴんとあるというこの事態は、国民が非常に平和な生活を営んでいく上に不安を感じ、良民がこれに対して非常に迷惑を感じているという事例は、私が申し上げるまでもなく皆さんが御承知の通りであります。これを取り締るのが本法の改正目的でありまして、それを目途としておるわけであります。労働組合運動として多数の人が集合し、そうして団体交渉をし、あるいは団結してストライキをするということか認められておることは当然のことでございます。しかしながら、いかなる場合においても、労働組合のこういう運動というものは、暴力を用いていくということは私は考えられないことである。また、労働組合法におきましても、それは暴力の行使を正当化しておるのではないのでありまして、この点を明確にいたしております。そこで、今回われわれが目的としておるところは、これは明らかに御理解できると思いますが、ただ、御心配なのはそういうことが行われて、そういう悪が除かれることは、これは必要であるけれども、それに関連して、正当なる労働組合運動というようなものが弾圧されるような危険があってはならぬ、私もそう思います。決して正当なる労働運動というものをわれわれは押えるということはいたしませんし、あくまでも伸ばしていかなければならない。そうして、それは、従来の資本家的な頭から申しますと、労働組合が強固に団結されること自体も喜ばないかもしれません。しかし、そんなことではやはり民主主義の産業なり社会というものができないので、これが強固な団結のもとに、しかしその主帳なり、これを通す方法としては、やはり暴力を用いるということは、これはいけない。いわんや、凶器を持って集まるというようなことは、私はいかなる意味においても労働運動にはあり得ないことだと思う。あるいは戦後のあの混乱時代においてまだ労働組合が今日まで発達しておらぬときのなにとして行き過ぎが全然なかったとは私申しませんけれども、これは指導者もよくわかっておるし、また、今日の発達の状況から見ますと、そういうことは私予想いたしておりませんし、また、そのためにこれが乱用されるというようなことは絶対ないというのが私どもの所信でございます。
  42. 古屋貞雄

    古屋委員 弊害が多いのと、それから守られる法益との度合いの関係考慮されなければならぬことだと思います。  時間がございませんから、これで私は終ります。
  43. 町村金五

    町村委員長 神近市子君。
  44. 神近市子

    ○神近委員 私、こまかい打ち合せというものはこういう質問のときにはできないもんですから、前の質問者といささか重複することがあるかもしれませんが、お許しを願いたと思います。今回の改正案には、あっせん収賄罪と、それからく暴力処罰法が一諸に込められているのですが、私のかねて考えていることは、国民生活というものは、これが体力によるものとあるいは頭脳によるものとを問わず、勤労で生活するということが一番正しい、また健康なあり方だと考えているのです。この公務員の収賄の問題と、それからやくざやグレン隊というものの生活の本質を考えますと、どちらも勤労によらないで不当利得をねらっているという点では、経済的に考えて一脈通ずるものがあるということを考えるのですが、公務員という身分がある者と、あるいはやくざやグレン隊という身分も何もない町の者が、この不当利得をねらっているという一点で共通するものがあるということを、総理はお認めになりますか。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り、人間として正しい生活というものは、頭脳的にもしくは肉体的に正しい勤労をし、それによって適当な報酬をもらっていく、そして生活するということが最も正しいことであり、また各人が全部そういうふうになることが一番望ましいと思います。しこうして、世の刑法上の犯罪と称せられて罰せられておるところのものは、ほとんどそのすべてと申していいくらい、そういう基準から見ますと、今神近委員の御指摘になりますように、不当利得と申しますか、不当所得と申しますか、正しい勤労によって正しい相当な報酬を得るということでなしに、違うことを目的といたしておる。その意味においては、他の刑法処罰されておる多くの犯罪と同様に、今回提案いたしておりますあっせん収賄におきましても、また暴力団におきましても、共通しているものがあると私ども考えます。
  46. 神近市子

    ○神近委員 それを私ははっきりと伺ったのは、公務員の中でそういう収賄をするということは、ほとんどやくざやグレン隊と同じものだ、あるいは公務員の中のグレン隊だあるいはやくざだということがはっきりすれば、これを起した以上、たとえば選挙に際しましての場合なんか、国民がはっきりとそれを認識すれば、私、投票しないだろうと思うのです。それほど私はこの問題を憎む者の一人でございます。特にこの収賄は婦人はもう見聞きしていることに耐えられないほどに今日は流行しているのでして、それで、これはどんなに強く処罰しても国民は納得すると思うのです。歴史的に見ましても、名裁判だとか、あるいはよい立法だとかいわれるものは、国民のこういう要望を反映したものであると思うのですが、今度の特にあっせん収賄罪立法は、総理が前に三悪追放ということを声明されたその関係から出てきたものだということはよくわかります。私どもはその点で非常にこの立法を歓迎して、国民が待っていたくらいのものだったと思うのです。今いろいろ問題があったようですけれども、これで完全に目的が達せられるという自信を持っておいでになるのでしょうか。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来お答えを申し上げましたように、これは、われわれが望ましくない、また不当であるといいますか、正しくないと考えるいわゆる汚職に関するすべてのものを網羅はいたしておりません。しかし、先ほど来申し上げました通り法律刑罰をもって犯罪とするというものにつきましては、それが最も悪質であり、かつ明確なものに対しこれを規定するということが従来のなにであると思います。さらに、これに関連して、いやしくも政治家なり公務員の廉潔を疑われるような、国民がやはりそれに対し納得しないような行為をなくしていくようなことにつきましては、法律以外においてもわれわれは努力をしなければならぬことは言うを待たないのであります。従いまして、従来問題であったあっせん収賄罪に関する規定法律として明確に規定するということは、国民に対しても、また広く公務員政治家に対しまして、その反省を十分に求め、またこれに対する警戒心を十分に与えて、かかる悪をなくすることにつきまして相当な効果がある、私はこう確信をして提案をいたしておるわけであります。
  48. 神近市子

    ○神近委員 私は、道義が非常に高揚している時代なら今の総理のお考えで、いくと思うのです。ところが、もう日本の今日の道義というものはがまんのできない程度のところまで落ちてしまっていると思うのです。ですから、この際せっかく期待されている立法をなさるならば、きわめて厳重なものであっていい思うのです。私は法律は部外者でございますから、ただここへ出るようになってからあっちこっち勉強しているわけですけれども、刑法百九十七条の規定なんか見ますと、わいろといえばこれは公務員に本来きまっているのです。それを、公務員がその職務に関して——公務員が行動するときは職務でしょう、うちに帰れば私人ですけれども、そういうこまかい、ちょっとしたひっかかりが穴になって、そして、今までいろいろ恥かしい事例がたくさんございますけれど、それが職務であったとかなかったとかいうようなことで免れている人がたくさんあるのです。この間の売春法の場合だって、汚職が起りましたときに、それが職務であったなかったということで免れているというような状態、そういう抜け穴というものは、私は刑法がきまったときにそういうことは意図されてなかったと思うのです。ただこういう結果を予想できないで加えられていたものだと思うのですけれど、今度もそれに似たようなことが、この請託という——私はこの請託なんかはなくてもいいんじゃないかと思うのですけれど、それでしぼったというようなことをおっしゃる。そして、法務省の御説明でも、まあこれが手ごろだ、法務大臣も、まああんまり急激でない方がいい、これが手ごろだというようなことをおっしゃったのですけれど、このあっせん収賄罪立法の歴史を見ましても、十五年の刑法仮案、あるいは十六年の政府案、あるいは社会党が二回提出しております法案にも、請託とは入れてないのです。どういうわけで、せっかくかおれほど待望されたものを、厳格な規制をするところのものを作らないで、こういう効力の上から非常に貧弱と思われるものを入れなければならなかったのか、その必要はどこにあったのかということです。これは二つありまして、そして歴史的に、あるいはさっきからその道の権威者なんということをしきりに何度もおっしゃって、法制審議会その他でも権威ある人々に相談したとおっしゃるのですが、私はこの権威ある人々は少しばかり逸脱する危険があると思うのです。あんまり自分の専門の中に入り込みますと、その国民の通念というか、あるいは生活する状態の中で感じるものを忘れてしまって、そして自分たちの頭を突っ込んでいるところにあんこまり専門化するおそれがあると思うのです。  それでお尋ねいたしますのですが、十五年、十六年の、ベスト・ブレーンがこれを立案、そして社会党なんかもほとんどそれと同じものを出して、歴史的に見て一番よかろうと思うものが捨てられて、そして今度新しくおきめになったというところに、私どもは何とも割り切れないものを感じるのです。その点、どいうことで、そのベストのものをお捨てになって、ベターをおとりになったかということ伺いたい。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 あっせん収賄罪の問題は、私も、この三悪追放一つ汚職をなくする意味におきまして、ぜひやりたいという考えを持って、いろいろの研究をいたしてみますると、各国立法も、この点に対してはまちまちで、あり、日本沿革につきましても、御承知のようなものがあります。ところが、どの案を見ましても、ある程度のしばりがかけて、あると私は思うのです。あの刑法改正案にはたしか要求して云々という、要求ということが入っておったと思います。それから、社会党の提案のなには、たしか地位を利用してという言葉が入っておったと思います。これらの点は、従来学者の間にもまた専門家の間にもいろいろ議論のある言葉であり、また不明確であるということについては、われわれ考えてみても相当に不明確である。一方から一言うと悪をなくするということを考えなければならぬが、同時に、われわれはやはり、民主政治といい、また公務員が正当なる仕事をし、また正当な民意なりあるいは国民考えというのを伝達したり、あるいはそれを実現することに努めるということは、これは独裁政治じゃなしに民主政治としてはやはり正しい政治活動として認めなければならないと思います。これらの人々に対して人権じゅうりんするような事態が起ってはいかぬし、あるいはまた、一部でおそれられているところの、非常に広い明確な文句を用いて言うといわゆる検察ファッショというような事態も起り得る。そこで、こういうようなものを立案する場合においては、どこかにそそういう制約——その制約は、やはり、従来においても観念が明確にきまっており、そしてそれによって人権じゅうりんやあるいは検察ファツショが起り得ないというふうなことで方法も講じていかなければならぬ。同時に、一方、それでもって主眼のものが逃げてしまう、われわれ国民がこういうものを防止しなければならぬという本体が逃げていくようなしばりをかけてはいかぬと思う。そこの両方を十分に検討し、研究し、そうして議論を戦わして得たものが実はこの成案でございます。従いまして、これに対しては、これでもって国民が、その言葉がいいか悪いかわかりませんが、ラフに、法律的な専門的な今申しました検察なり裁判なりというようなことを離れて、常識的に考えており、これを除かなければならぬと思っておるようなすべてが網羅されておらないという批判はもちろんあると思います。私どももそう思いますが、しかし、今言ったような各種の場合を考えてみて、そうして最も明確に、最も乱用のない、また最も悪質のものであるということを明瞭につかみ得るところのものを規定して、これを取り締ることにするのが、実は今回の立法の趣旨であったわけであります。従来のなにとしばりのかけ方につきましては文句が違っておることは御指摘通りであります。しかし要求云々というようなことしばしることが、果して要求したかしないかというようなことの事態を実際に認めるとかなにすることは非常にむづかしい。あるいはまた、地位を利用してという言葉も非常にあいまいであって、どういう場合がこれに当るか、具体的な場合につきましてはこれまた議論のあるところで、ありまして、そういう非常に困難な、解釈のむずかしい、また具体的の事実にはめにくいことよりも、従来使いなれておる、法律観念としては明確になっておる言葉でしぼって、そうして、一方から言うと最悪の中核のものを取り締る、こういうものをねらって立案したわけでございまして、これができますれば、私は、先ほど申し上げましたように、相当この点に関する効果は期し得るもの、かように考えております。
  50. 神近市子

    ○神近委員 時間がございませんから、もう一点お伺いいたします。それは、公務員が、必ずと言っていいくらい、ある時期にくると、まあ大臣にもなれそうもないとか、あるいは次官にもなれそうにないというときに、横すべりということをやるのでございます。これは非常に弊害を生んでおりまして、収賄の温床みたいのものなんです。大蔵省の官僚だったら銀行その他に行くとか、あるいは税務官吏は大きな施設の会社に行くとか、農林官僚は必ず食糧関係、木材の方面に行くとか、ついこの間もあったことですけれども、自衛隊のくつの購入係が白木興業というくつ屋に入っておる。それから、黄変米の問題が起ったときには、あれは日本通運の名古屋と横浜かどこかの倉庫に入っておりましたが、運輸関係の官僚がその日通の重役に入った。これは最近の顕著な例でございます。それから、これはあなたも何かで意見をお出しになっていらっしゃいましたけれども、官僚の相当なところにおる人が、一カ月やそこら前にやめて参議院の選挙に出て当選した人も数人おる。これが、いろいろ観察しておると、わいろの温床を作っておる。そこへおりる前には必ず何かの利益を与えておいておりていく。そういうことについて、これはどうしても一度立法考えていただかなくちゃならぬと私はいつも考えているわけですけれども、それに対する総理の御見解を承わっておきたいと思います。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 公務員につきましては、御承知の通り、百何条で、職をやめて私企業に入る場合においては二年間それに行けない、禁止しておる規定がございます。ただ、人事院が指示して特に許すという許可を与えた場合はこの限りでないということになっております。私も、神近委員と同じように、公務員の廉潔を維持し、その公正な公務の執行を考え意味から申しまして、今お話しのようないろいろな事態を決して好ましいものとは実は考えておりません。ただ、私は、今の公務員法の規定で禁止をされておりますことは、そのうちの最も明瞭なものとして規定があるわけでございますから、それ以外にこれを拡張したような規定を作るべきかどうかということについては、なおこれは研究を要する問題であると思います。これは私がかつて役人をいたしておったからそういうことを申すわけでは決してありませんけれども、公務員をやめた場合において、その人がやはり生活していかなければならない。生活のなにを考えてみますと、何か仕事をしなければならぬ。従来から自分が関係のあったような仕事を、自分としては公務員をしておったけれども、こういうことなら実際上なれているし、多少の知識もあるというようなことで、関連した会社、事業その他団体等に関係を持つということも、弊害のない一面から申しますと、これは自然のことであると思うのです。ただし、しかし、それに関連してそれでは今神近委員の御指摘になりましたような弊害がないかというと、私も相当な弊害があると思うのです。従って、先ほど申しましたように、今の公務員法の規定だけで足りるか、あるいはそのほかに立法すべきであるか等につきましては、これは研究してみませんというと、一方から言うと今言ったような公務員の生活の問題も関連をしておる問題でございますから、研究はいたしますけれども、今直ちにそういうものを立法するという結論をまだ得ておるわけではございません。ただ、趣旨としては私もそういうことは望ましくないとかねがね思っておることでございますから、一つ検討をいたしてみたいと思います。
  52. 町村金五

  53. 武藤運十郎

    ○武藤委員 同僚委員の諸君からいろいろ御質問がありましたので、私はごく簡単にあっせん収賄罪のことを一点伺いまして、あとしばらく時間をかりまして二、三の政局に関する点を首相質問いたしたいと思います。  ただいま神近さんからも御指摘がありましたけれども、大体このあっせん収賄罪法案というものは、これはざる法と言われております。これは天下公知のところであります。これは必ずしも私がそう言うのではなくして、先ほどお話しの通り、昭和十五年の刑法改正仮案、あるいは十六年の貴族院を通過した法案いずれも、こういうふうな請託とか、あるいは不正な行為とか、報酬とかいうことをうたってないのであります。刑法改正仮案も、相当専門家が集まりまして検討に検討を長期間重ねた結果得たものであります。今法制審議会の議を経たと言われまするけれども、法制審議会はうのみにして原案を認められたようでありまするけれども、どうも私どもから考えますと、これは明らかにざる法であります。非常に抜け穴が多い。かねて汚職追放あっせん収賄罪提案を強調しておられた総理大臣が、どうしてこんな最低限度の、名前だけのあっせん収賄罪法をお出しになるに至ったかということを、もう少し突っ込んでお伺いをいたしたいと思うのであります。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 この案を一応法制審議会の議に付する前に、法務省におきまして、昨年来私も前法務大臣以来研究を命じまして、いろいろの研究をいたしたのでございます。私は、この前の刑法改正仮案も承知いたしておりますし、それとの実際上の利害得失についても検討をいたしたのであります。しかし、先ほども申し上げましたように要求してという、このこと自体は、実際上のなにとして、検挙し裁判する場合におきまして、そのことは容疑者の心理的の問題であり、これを証明することは非常に事実上の問題として困難であります。一見きわめて広いようでございますが、こういう制約を加えるということによっては、実際上の運営の上から言ったら、ほとんどこれが具体的に立証できないというようなことのために、目的を達せられないんじゃないか。それよりは、できるだけ客観的の証拠によって証明できるようなことを明確に規定することの方が、実際問題として、その立法目的を達する上から申しますと適当である。議論として、全然何にもそういうしぼりといいますか制約を加えずにやるという考えは、これはどうも、あっせん収賄罪の本質から見、収賄罪というような罪から申しまして、どこの立法にも、また日本沿革から見ましてもないのであります。その場合に、加える制約なり、しぼりというものを、具体的に客観性を持っておるものにできるだけすることが、私は、裁判の場合におきまして、一方において人権を正当に保護し、一方において最も悪質なものを処罰して、そうして社会に対して戒めを与えるということになるという意味におきまして、この案は今までの案よりも適当である、こう考えて、実は法制審議会の議に付することに賛成をし、法制審議会においても議論されました結果そういう議決を得たということでございまして、決して、私自身は、世間で言っているようなざる法ではない、それはなるほど全体の入れものは小さいかもしれませんけれども、これにひっかかるところのものは、ざるのように抜けるんじゃなしに、厳格に処罰される、ただ、もう少し入れものを大きくして、大きくすくったらどうだという御議論はあろうと思いますが、そういうことは、同時に善人まで、また許される行動まで一緒にすくわれるおそれがあるとして、入れものは小さいのでありますけれども、決してざる法でなしに、むしろ明確に処罰し得るという確信を持って提案をいたしたのであります。
  55. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ちょっと補足的に簡単に申し上げたいと思いますが、ただいま武藤委員のお言葉のうちに、法制審議会もうのみにしたというようなお言葉がございました。お言葉とがめをするわけではございませんけれども、法制審議会の名誉のために一言だけ弁明さしていただきたいと思います。武藤委員も御指摘のありましたように、昭和十五年に発表になりました改正刑法仮案中のあっせん収賄罪に関する一条、これにつきましては武藤委員相当の価値を認めていらっしゃるようでございますが、私ども当初この案について研究をいたしたのでございます。しかしながら、この案は、今総理からもお話がありました通り、要求してわいろを取った場合だけを処罰するということに書いてございます。当時の論議の模様を速記録等によって調べてみますると、学者、専門家が異口同音にこのあっせん収賄罪は新しい規定であるから、規定することはけつこうであるけれども、何かそこにしぼりを置かなければならない、そういう意味合いをもって、要求して取った場合だけを処罰するというふうにしぼったということになっております。さて、そのあっせん収賄に関する一条文を研究してみますると、今日の学者、専門家は多く、要求した場合と要求せざる場合とでもって犯罪性を区別するということは理論的に成り立たない、こういうことと、それから、実務家の方から申しますと、要求さえしなければ幾ら金を取っても犯罪を構成しないということになるのであるから、それは金の授受の際に要求をしたという証拠の残らないようにすることは簡単である、だから、検察の実務から申しましたならば、ほとんど要求してという条件一つにしぼられたために、おそらくは多くの場合においてこの罪はのがれるだろうという見方の検察当局なども相当あるのでございます。そういうことで法制審議会にただいまお目にかけて御審議を願っておる案を付議いたしまして、改正刑仮法案を採用しなかった理由等を説明いたしまして、学者、専門家は良心に従って賛成をしてくれたと私は存じております。このあっせん収賄罪に関する論議がなかったわけではございません。すでに新聞にも伝えられております通り、第三者供賄に関する規定がないではないかというような論議が盛んにございました。この点はやはり傾聴に値いする議論であったと思うのでございます。最後に、現段階において第三者供賄の規定を付加する必要はないけれども、将来において研究すべしという希望決議がついたわけでございまして、これはいかにもごもっともな意見だと思っております。この第三者供賄に関する規定改正刑法仮案の中にもございません。また、社会党から御提案になっておりまするあっせん収賄罪に関する法律案のうちにもございません。今御審議を願っておる政府案にもございませんが、これはともに将来研究しなければならぬ、かように考えておるわけでございますが、このあっせん収賄罪そのものに関する規定につきましては、大体、当時の法務省案を、このしぼり方がよろしいということで学者、専門家の御同意をいただいたわけでございまして、みなそれぞれの立場について学者として立っておられる方でございまするから、十分自分の良心に従って論議していただいたわけでございまして、これはうのみにしたという点だけはどうぞ一つ誤解を解いていただきたい、かように考える次第でございます。
  56. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そういう言葉上のこまかいことを私は言っているのではない。あっせん収賄罪規定がこのように骨抜きになったことは、私が端的に言いたいことは、与党内部において反対があったからじゃないかということを言いたいわけなんです。新聞なんかの伝えるところによりますと、初め岸総理大臣は、看板をかけたことだから仕方がない、作れということを命じたけれども、唐澤法務大臣がばか正直で、もっとずるずる延ばしていればいいのに、むきになってやり始めたということで、与党でも困っていやしないかということを伝えられております。それからまた、唐澤さんは非常にがんばって、先般、これは読売新聞の記事ではないかと思うのでございますけれども、どういう反対があってもやるんだ、与党の中に反対があるということをあなたは言われておる。三十二年の十月十一日の大阪駅記者会見におきまして、あっせん収賄罪は次期通常国会に提出するため検討中だが云々、また与党内部にこれに骨抜き的修正を加たようという動きもあるが法相としては云々、こういうことを、これは事実かどうか知りませんけれども、新聞によりますと伝えておるわけなんです。最初は、検察当局におきましては、やはりもう少し、刑法仮案に示されたような、ああいう、条件のつかない、抜け穴のない案を希望しておられたようであります。そうして、検察部内でも、こういうものを一ぱいつけられてはしようがない、検察ファッショというような名前によってわれわれ押えられて、こういう法律で検挙しなければならないということになると、やりにくくてやれないというような御意見もあったようであります。それがだんだん与党の方の内部の反対によってこういう見るもむざんなあっせん収賄罪の形が出てきたのではないかということを私は伺いたいのです。早い話が、岸総理大臣は、組閣当時から、あっせん収賄罪を出して汚職追放するということを言っておられる。法律におきましては、およそ立法をする場合には、いろいろな勢力を勘案し社会情勢を考えまして妥協的なものが出ることはやむを得ないと思います。やむを得ないと思いますが、大体、政府原案が出るときに、国会を通さなければならぬからこの程度にしようという場合には、与党はまとまって野党に反対がある、野党の方が反対があるから、それを避けるためにある程度妥協しようじゃないかということで、法案の一部がくずれてくる、ある程度骨抜きになるということは、私ども聞いております。しかし、この場合に限りましては、野党の社会党では刑法仮案に近いものを出しておる。決してこれに対し、もっと抜け穴を作れということは言っておらない。岸さんも組閣以来これを一枚看板にしておるわけであります。そういう状態でありまして、これは必ずしも世界的立法の傾向ではないでしょうけれども、最近日本に非常に汚職が多いということで岸内閣は一枚看板としておる。そういう立法的背景のもとにこういうものが生まれてきたのだろうと私は思うのです。ことに、先ほど来岸首相お話もありましたように、汚職が続々出てくるという問題については、むしろ岸首相に同情をいたしております。むしろそういうものをどんどん摘発する岸さんのやり方というものをわれわれは賞賛していいと思うのです。必ずしもそれが岸内閣時代の汚職でないかもしれませんのに、出しておるわけでありますから、私は賞賛をしてもいいと思うのです。問題は、そういうことが出てくるから岸内閣汚職があるではないかということでなくして、岸さんがほんとうに決意をして汚職をなくそうという一番いい機会はこのあっせん収賄罪規定を厳重なものにすることであろうと思うのです。逆に、こういうふうな世間公知のざる法を、これがいいのだ、これが一番理想的なんで、今の段階ではこれ以外にないのだということを強調して、弁解といいますか、詭弁といいますか、そこに安住されて、これでいいということを言われることは、結局岸首相汚職追放の決意が鈍いところがあるのじゃないか、それからまた、あっせん収賄罪規定をほんとうに作って、ほんとうに収賄、汚職を絶滅するという決意が足りないんじゃないか、これを私は言いたい。その原因反対党の野党にあるのでもなければ、一般の世論にあるものでもないのであって、岸内閣のよって立つ与党の内部に反対が内部あって、こういうものよりできないということは、岸首相の決意もどうかと思いますし、それからまた、あなたの統制力というものもどういうものであるかということを私は心配をして、今後岸内閣が一枚看板として掲げた汚職追放というものが果してやれるのかどうかということを私は伺いたいのであって、必ずしも唐澤法相が今るる弁解されたようなことを、言葉のしりをつかまえて言っているわけではないのであります。それについて御意見を承わりたいと思います。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 お言葉を返すようでありますが、何かこの成案を得る道程おいて党の部内の意見に妥協をし、そのためにこういうふうに骨抜きにしたのだ、というふうな御意見がございました。実は、この問題に関しましては、私は汚職追放ということをかねて念願をいたしており、そういうためには、もちろん立法だけでこれがなくなることは考えておりません。先ほど来私の所信の一端を申し述べておりますが、しかし、世間でも、あるいは世論の中にも、このあっせん収賄罪というものに対する規定を設けてこれを罰すべきだ、そうして汚職追放の一助とすべきだという議論がございました。これに対して私従来もある程度の関心を持って研究しておりましたが、いよいよ私が政治の首班に立って責任を持つことになって、この問題の立法ということについては、今までの沿革を見ましても、また純粋の法学的な見地から言っても、あるいは検察当局の運営の上から言っても、非常に微妙な、困難を伴う問題であるが、これをどうするかということを私はある程度研究した後に、どうしてもやるべきだという決意を得まして、法務省にその立案なり研究を命じたのであります。そうして、私は、従来のなにから見ますと、これは相当に、与党内部だけじゃなしに、世間でも議論があり、また今申しましたような学者の方々にも議論のある問題でありますから、与党内においても議論のあることはこれは当然であり、今お話のようなことの疑惑を少くともこの問題に関して与えてはいかぬ、従って、法務省が成案を得るまでは党と一切相談することは相ならぬし、また、私自身がその報告を聞いて、この案にするかどうかということを採決するまでは、一切ほかと相談せずに法務省で研究してくれということを私は厳に命じまして、そうして得ましたのがこの案でございます。そうして、先ほど申しましたように、これが刑法改正仮案等と違っておりますその違いについて、利害得失を私自身においても研究をいたし、法務省の専門家との間にも議論をさせまして、そうして得た案を法制審議会にも提案し、それから党の方にも、この案について党議をきめてもらいたいということを要求して、それ以来一字一句変っておらないのでありまして、従って、私はこの案にしたということにつきましては、私自身が全責任を持って、実ははなはだなにのことを申し上げておるようでありますが、国会に提案をいたしておる法律案はすべて総理責任を負うべきことは当然でありますが、御承知のように、人間の力には限りがありますから、ことごとくどの法案も私が検討し、あらゆるものについて厳密な検討をいたしたとは申し上げかねますが、少くともこのあっせん収賄罪に関しましては、私はそういう意味において検討し、私の結論によって提案をいたしておるわけでありまして、決してその他においていろんな勢力なりいろいろなことを顧慮して妥協し、骨抜きにしてこれを出したということは絶対にないということを私ははっきり申し上げます。この案自身についていろいろな御批判があることは私もよく承知いたしております。私は、先ほどから申し上げているように、これが完全無欠であるということを決して申し上げているわけではございません。しかし、刑法上にこういう新たな規定を設ける、そしていろいろな方面から懸念される、これでは足りないじゃないかという御懸念もあろうし、また、こういうふうにすると検察ファッショが起りはしないか、あるいは人権の侵害が起りはしないか、正当な政治活動が制約されはしないかという懸念も私はあると思います。そういうことを十分に勘案して、現在初めて規定するとしてはこの案が最も適当である、いろいろな点から研究して、これ以上の案を——今出すなにとしてですよ。実はこういうなにがあるのだがやむを得ずここまで妥協しているというようなことではなしに私は考えているわけであります。十分御審議なり御批判はいただかなければならぬと思いますが、新聞等に伝えられ、あるいはそれが事実であるがごとく考えられていることは、はなはだ心外でございますから、その点だけを明瞭に申し上げておきます。
  58. 武藤運十郎

    ○武藤委員 伺いましたが、およそどの立法をいたしますのでも、それぞれいろいろな摩擦、障害というものはあると思います。売春防止法のごときその一例だと思うのでありますが、この汚職の問題でありましてもいわゆる検察ファッショとかなんとかいう問題もあろうと思いますが、そういうことは別な方法でこれを防ぐことができるのであって、断固としてやるつもりならば、もう少し気のきいた——総理大臣はこれが一番いいと言われますから、見解の相違でありますけれども、一般ではこれはざる法だと言うことの方が多いわけであります。私はこれ以上追及はしませんけれども、やはり、やるときには断固としてやらなければほんとうのものができないということを私は、申し上げておきたいのであります。  この問題はこれでおしまいにしますが、一つのこ際首相に伺いたいことは、先般行われました全逓の——ほかにもありまするけれども、主として全逓の職場大会、去る三月二十日が一番山であったようでありまするけれども、そのときの問題つにいて、田中郵政大臣が、これは非常な刑事問題にもなることであるし、郵便法違反にもなることであるから、昭和二十五年にも百六十一人も解雇した例があるから、断固たる処分をするのだということを言われておりまして、閣議でもこれを了承したということであります。そういうふうに私どもは聞いておるのでありますけれども、私どもが考えますると、どうも労働者が憲法によって罷業権を保障されておるというのに、先ほどもお話がありました通り、公共企業体の労働者というものはそれがない。しかも政府の方では必ずしも今まで仲裁裁定を完全に守ってきていないという状態のもとにおきまして、非常に同情すべきところが私はあると思います。職場集会を二時間開くぐらいのことは、これは最低限度の抵抗といえば抵抗でありまして、これに対してだんびらを振り上げて刑事その他の法律によって処分する、あるいは行政処分を大量に厳重にやるということは、いささか行き過ぎではないかと思われますし、また、それほどせぬでもいいではないかというふうに私どもは考えるわけでありますが、今でも田中郵政大臣の考えられる通りに大量な処分、厳重な処分をするというお考え総理はおられますかどうか、お伺いしたいと思います。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 過般の全逓の争議に関しましては、私がかねて内閣を組織しましてから私の方針を明瞭にしておる通り、とにかく、これらの組合の人々がすべて法律を順守するという建前のもとに立ってもらいたい、また、政府が仲裁裁定を過去において十分に実施していない事例もあるけれども、自分になってからはこれを必ず完全に実施するということを示し、これをただ口で言うだけでなしに、昨年のなににおきましてもそれを実績で示し、そして、これらの企業体の人々やあるいは公務員の諸君に、公務法やあるいは公労法その他の規定を順守するように、私は強く要望しております。また、事前にも、そういうことがもしも違反されるならば、われわれとしては厳重に処罰せざるを得ないということも、あらかじめ通達をしてあり、そしてまた、政府としては、しかし仲裁裁定が出るならばこれを完全実施するという決意をさらに再確認をいたしまして、今度のことが起らないようにずいぶんわれわれは事前において努力をいたしてきたのであります。しかるに、不幸にしてそういう事態が起り、郵便事業やああいう仕事は言うまでもなく国民全般にきわめて重大な影響を持つことであり、それが二時間というお話でありますが、二時間おくれることによって国民の個々にどれだけの被害を与えるかということを考えてみると、そういうことはやはり法が禁止しており、許さないということは、郵便法やその他の事業の性質から当然来ていると思うのです。そこで、今度のそれらのことに対しましては、実は事前からそういう態度を政府としてはとっており、所管大臣におきましてもそういう趣旨で十分に折衝もし努力もしてきているのでございます。しかして、不幸にしてそういう事態が起りましたので、これに対する処分の問題も当然考えなければならないことになっております。その具体的のことにつきましては所管大臣たる郵政大臣が今検討いたしておりまして、私は結論はまだ持っておりませんけれども、その方針につきましては政府として少しも変える意思も持っておりませんし、それが特に行き過ぎであって不都合だというふうには考えておらないのでありまして、これを明確にして、政府として、また組合側として、正しい慣行を作り、フェアな方法によってすべての問題が改善されていくことをぜひとも作り上げないと、郵便事業自体、あるいは鉄道の問題もありましょうし、その他公企業体の性質から申しても、国民全体の福祉を考え、利益を考え政府の立場として、考えなければならぬ。また、労働問題自身の正しい健全な発達を考え意味から言っても、私はやはりその点を明確にしていきたいと考えております。
  60. 武藤運十郎

    ○武藤委員 最後にその問題について首相並びに唐津法務大臣に伺います。二十日の職場大会のことで、新聞にも報ぜられたのですが、前橋で行われた職場大会に私はたまたま法律家としてオブザーバーのような意味で行ってみました。新聞にも何段も抜いて三十五人もけが人ができたということを言っておりますけれども、見ておりますと、職場大会というのは、なるほど八時から十時までの二時間でありまして、勤務時間に食い込むことは食い込んでおりますけれども、その大会の情景というものは、情報を交換するとか、要求貫徹の方法を協議するとか、非常に静粛なものでありました。しかも、八時から十時までと二時間を限っておりまして、二時間たてば必ずおしまいになることは主催者側がそう申しておるわけです。もちろん、暴行、脅迫をするとか、あるいは威力を用いるとかいう考えも全然ありませんし、様相もありません。にもかかわらず、武装警官を百五十人も動員をして参りまして、静粛にやっておるところへ、何ら抵抗しないところへ、かかれという号令一下突貫をして参りまして、片っ端これをほうり出すというような乱暴なことをやっておる。これは私の目で見てきておるわけです。こういう状態で、警察当局の方が非常な乱暴を働いて暴力を加えておる。片方は無抵抗で静粛にしておるという状態であるのです。それにもかかわらず、今お話を承わると、片方だけが非常に悪いのであって厳罰方針は変えてないということを言っておられる総理大臣でありますけれども、私は、それは一つの郵便法に違反するという形があれば処分の対象になるかとも——場合によればやむを得ないかもしれませんが、片方の方が全然不問に付せられておるというようなことでは、法は正当には守られていかないと私は思うのであります。これは十分にお調べをいただきまして、一体こういう混乱が起ったもとは、従業員の側にあるのか警察当局の行き過ぎにあるのか、十分お調べの上でこの点を考慮をしなければ、全逓側の処分というものも影響を受けるわけでありますから、片方だけが非常に悪いということで一方的なことだけで刑事処分をなさるとかあるいは行政処分をなさるとかいうことでは非常に困ると思うのです。私は必ずしもそれを交換条件にどうと言うのではありませんよ。私のこの目で見たやり方としましては、静粛に従業員が会合をやって何ら抵抗しないのに、警察官の方で号令をかけて突貫をやってくる、そして暴力を加えてけが人を出すというようなことがまず責められなければならぬと思うのであります。そういう点について首相並びに法相の御意見を承わっておきたいと思うのであります。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 前橋の具体的な事件は、私、詳しいことは承知いたしておりません。職場大会というものが職務を離れ公労法やあるいは郵便法の規定に反するような事態が起るというおそれがある場合に、それを予防する意味において警察官等において適当な処置をとる場合はもちろんあるだろうと思います。それが果して今おあげになったような行き過ぎがあり、そこに何らか不当なことが行われておったかどうかということは、これは事情を十分に調査しなければならぬことでありますが、その趣旨から申しますと、やはり、犯罪が行われようとする場合に、それを事前に阻止するために警察官を出すとかあるいは警察官がある行動をするということは、もちろんこれは私は適法なことであると思います。ただ、その場合において行き過ぎがあるということはこれは適当なことでないことは言うを待たないのでありますが、その具体的な事情については一つ主管の大臣その他において十分調査いたしたいと思います。
  62. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 今総理からお答えのありましたところで尽きておるかと思いますが、第一線の警察の扱いに関することでございますから、私からも警察担当の大臣に十分ただいまの御発言について伝えまして、善処したいと考えております。
  63. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私の質問は終ります。
  64. 町村金五

    町村委員長 高橋禎一君。
  65. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 ごく簡単に総理とそれから法務大臣の所信も伺えればけっこうだと思います。  実は、私の長い間こういう質問をする機会を待っておった問題があるのであります。これは名前をあげることはいささか私といたしましても非常に苦しい点がありましたけれども、いろいろ研究をいたしました結果、お許しが願えると思ったので、あえて申し上げるわけであります。それは、今国会中に、御存じの蘆田先生の事件が無罪が確定をいたしました。もう古いことでありまして、十年以上前のことでありますが、二十三年のあの事件が検挙されましたときに、私も国会に議席を持っておりまして、いろいろあの問題に関する論議関係をいたしたわけであります。私どもといたしましては、あの検挙は誤まりであるということを確信いたしておりました。従いまして、二十三年の第三国会、第四国会で国家公務員法が改正されるその審議中、人事委員会において私はその問題について時の殖田法務総裁に質問をいたしました。これは決して見通しを誤まっておるものではない、しかしながら、もしそれについてあやまちがある、過誤を犯しておるということならば、担当の検察官も検事正も検事長も検事総長もその責任を負う覚悟であるということを明言されたわけであります。これは当時の人事委員会の速記録に出ておるのであります。それからまた、衆議院の議院運営委員会においては、えらい大罪人のような、しかもこれを逮捕しなければとても捜査もできないし、逮捕して調べればいろいろの事犯が起るようなことを法務当局は口をきわめて説明があったのであります。私どもは、われわれの考えと非常に異なっておるこの当局の言明に対して非常に残念に思いました。そして、いよいよ逮捕状の許諾請求の参りましたときに、本会議においても、今思い出しますと涙の出るような意見を聞きつつ、ついに逮捕許諾ということに相なったのであります。ちょうどそのときに、私の尊敬する名裁判官と言われた三宅正太郎先生が、それこそ憤慨をしておられまして、事件の見通しについて、こんなことを検察庁がやるようであってはとても世はまつ暗やみであると言って悲憤慷慨されたのを私今も思い出すわけであります。先生は早く世を去られましたが、ああいう思い詰めた、まじめな当局に対する憤激というようなものが、後に主任弁護人になられた先生の生命をそれこそ短かくしたのではないかということさえ私は考えざるを得ないような事態でありました。しかしながら、事件の結末はやはり裁判の経過を待たなければならぬわけでありまして、第一審裁判を待っておりましたら、われわれの考えておった通り無罪、そうして第二審判決も無罪ということになったわけであります。こういう結果になりました事件について、あの検挙当時は、もしこれが間違いがあるならばわれわれは責任を負うと当時言明をされた、それは当然のことであると思います。これについてどういうふうにやるのがいいという総理のお考え総理自身の手でもってなさるというそういう権限の問題、これはむしろ法務大臣の方に具体的にはおありだと思いますが、ただ、今審議中のような法案について、私は検察ファッショ、警察ファッショということをどこまでも注意しなければならぬと考えておるのであります。いろいろ各方面から、この刑法一部改正は全くなまぬるいやり方だ、特にあっせん収賄罪のごときはざる法であり、骨抜きであって、ほとんど価値なきような論議がありますけれども、私は、そうではない、これは実によくきく薬であると思いますし、その法の制定によって、いわゆる岸総理の意図しておられるところの汚職追放ということについては、大きな役割を果すであろうということを確信しておるものであります。しかしながら、法律をここで制定されまして、われわれの心配するのは、やはり運用である。これはいろいろしぼりをかけてありますけれども、疑えばいろいろ疑える。検察管にしましても、警察官にしましても、犯罪ありと思量するときには捜査をするというのですから、請託があったかどうか疑わしい、不正行為をさせまた相当行為をさせないというようなことのあっせんをしたかしないかが疑わしい、実費であったか報酬であったか疑わしいという疑いをもってこの検挙、捜査に着手するということが手放しで、行われるということになりましたら大へんであります。私は、汚職追放というりっぱなお考えのもとに立法され、国会で審議してそれが法律となったときに、それが運用の段階においてもしも人権じゅうりんというようなことがございましたならば、これは大へんなことになると思う。だから、そういうことのないということを単なる口で説明を承わっただけでは国民はまだ安心できないと思うのであります。先ほど申し上げたような事例について、一体どういうふうな態度をとれば正しいと考えておられるのであるか、法務大臣は具体的にこの問題についていろいろ調査をされ、どういうふうになさろうとしておられるか、その点も明らかにしていただきたいと思うのであります。本日は、もう第二十八国会もだんだん終りに近づきまますので、いい機会を得たと思いますから、私は勇気を出してあえてお尋ねをいたした次第であります。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 汚職追放を、私は私の政治信念として強くこれを念願をいたしております。今回の提案もその一端でございます。そういう私の考え方を実現するために、従来あります贈収賄に関する規定であるとか、今回これが制定されまするならばこの規定の実際上の運営につきましても、その趣旨に基いて十分に効果をあげていきたい、またその過程におきまして、私は、先ほどもどなたかの御質問お答え申し上げましたように、この私の悲願を達成する途上において、あるいは忍びがたいような犠牲が出ても、これも目的を達するためにはやむを得ないという考えをもって立っております。ただ、問題は、この場合において人権がいかに保護されるか、いわゆる世間で言っているような検察ファッショというようなことが行われないようにしなければならぬということは言うを待たないのであります。立法についても苦心をいたしておりますが、さらに運営においてもその点を十分考えなければならぬ。今おあげになった事例のごとく、これを検挙した当時において、おそらく検察当局においては、やはり今申されたように十分これについては責任を持って、確信を持ってこれを検挙し、起訴したことと思います。これが何らかの他の意図で動かされておるとか、あるいは軽率にやられるというような性質のものであるべきでないことは言うを待たないのであります。しかし、その裁判の結果として、検察当局が最初に考えておったと違う結果が出るかどうかということは、これは言うまでもなく裁判の結果に待つべきことであって、裁判が最高の決定をすることは、これまた言うを待ちません。その場合に、検察当局が十分な慎重な態度で、かつ十分ないろんな点から確信を持ちこれを検挙し起訴したというものが、一体どういう責任をとるべきか、また、最初にこれについては全責任を持つということを声明しておるから、それがあった場合においては何らかの形で責任を明瞭ならしめろということにつきましては、これは私はよほど考えなければならない問題であると思います。と申しますのは、今申すように、こういうことを検挙し、起訴するということについては、検察当局として十分な慎重な態度、それから行き過ぎのないように、またしかしそれを裏づけるだけの十分な確信を持ってやるべきもので、全責任を持ってやるというその考え方でやってもらわなければならないことは言うを待ちません。ただ、裁判の結果がそれと違っておったという場合において、いかなる場合においても、検挙し起訴した場合は、裁判がそれと同じ判決をしない限りは、検察当局は何か責任をとって進退しなければならないというようなことでもしあるとすれば、実際検挙や起訴という事実が行われ得ないであろう。慎重であり公正でなければならないということであり、それについては全責任を負うだけの覚悟でやるというようにすべてのことが行われなければならないことは当然でございますけれども、それが裁判の結果と違った場合においてどう処置するかということとは、おのずから私は分けて考えなくてはならない問題ではないかと思います。いずれにいたしましても、人権に非常に重大な影響のある問題であり、またそれが何といってもやや不明確——どんな明瞭な言葉を用いてしましても不明確なことがあるし、また、多くの場合、犯罪が行われます場合においては、その犯罪者におきましてはその証拠等を隠滅していく事態もありますので、そういう場合において、検挙し起訴したところの検察当局のやり方が公正であり、あくまでも慎重であったとするならば、裁判の結果が違いましても、これはやむを得ない事態ではないかと思います。しかし、具体的なこの事例等につきましては、これは、法務当局におきましても、事きわめて重大な事件であり、当の個人はもちろんのこと、社会的にも非常な影響のある問題でありますから、いろいろな点から十分に検討はいたしておることと思います。それにつきましては法務大臣からお答えいたします。
  67. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 お答えをいたします。お言葉通り、検察官といたしましては、自分の行なった検察事務について全責任をとるべきは当然なことでございます。検察官によって起訴せられ、そうして訴訟手続にかけられ、結局裁判において無罪となったという場合におきまして、その無罪となるようなことについて訴訟手続をされたその人に対しましては実に同情にたえないわけでございますが、さればと申しまして、判決の結果が無罪となったからといって、それは検察事務を誤まった、こう即断することは、今日の法制の解釈としてどうかと思うのでございます。これは高橋委員とくと御承知のことで、釈迦に説法のようなきらいがございますが、検察官としては訴訟手続を開始するに必要なだけの容疑ありといたしますれば起訴しなければならないことは御承知の通りでございます。その結果が法廷において争われて有罪となるか無罪となるかというようなことは、初めからはっきりと認定することはむずかしいのでございまして、ただ、法廷において争うだけの容疑ありと思量した際には、これを起訴しなければならないように法律によって要請されております。その意味におきまして、無罪となったことについては当然検察官がその検察事務を誤まったというふうには即断はできないとは思いますけれども、しかし、検察官というようなことがありまするならば、これは飜ってよく考えなければならない、かように思うのでございます。ただいま御例示の事件につきましても、法務当局においても十分頭を痛めて調べてはおります。おりますが、何分にも年月を経たことでありまするし、十分その当時の事情を明らかにすることはできませんけれども、たとえば、第一審の判決文などを読んでみますると、第一審はただいまのお言葉通り無罪でございます。無罪の判決ではございましたけれども、その判決文の中に、検察当局としてこれだけの容疑の資料があったならばやはり起訴したのは当然であったというような一文も見えるわけでございまして、当時といたしましてはこれを起訴するかしないかということにつきましては十分慎重なる考慮を払い、その影響するところも考えながら、やはり法の命ずるところはこれだけの資料があれば起訴しなければならぬと考えて起訴したものだろうと考えるのでございます。御承知のように、検察事務は非常にそういうところはむずかしいのでございまして、検察官といえどもあやまちを犯さないということは保証するわけには参りません。従いまして、今日の制度におきましても、内閣に検察官の適格を審査する委員会がございます。最後はここで御審査を願う、こういうことより仕方がないと考えておりまするが、ただいまお言葉のありました通り、検察官といたしましては、自分の扱いました検察事務については全責任を持っていかなければならぬ、かように考えております。
  68. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 総理を前にしそう長々と質問をする問題でないと思いますから、私はこれでやめますけれど、とにかく、こういう問題を忘れられては困る。そして、もう時がたってるからといっても、昭和二十三年の第三国会、第四回国会当時これがいかに論議されたか、一度記録を出して見てよく反省していただきたい。ただ疑わしいから着手した、起訴したけれども、起訴する資料、疑う資料は十分あったので、無罪になったものも検察審査会にでもかけてといった程度では、まだほんとうに引き締まった、検察ファッショの危険なしとして国民が安心できるような検察というものは行われないのじゃないかと思います。  その他の問題は後日に譲ることといたしまして、本日はこれで私の質問を終ります。
  69. 町村金五

  70. 三田村武夫

    ○三田村委員 時間が大へんおそくなりましたから、簡潔に一点だけ総理の御所見を伺っておきたいと思います。同僚委員からだんだんと質問がありまして、総理の御見解を伺いましたが、私、今度の改正法案に関連してただ点だけ同僚委員の触れられなかった問題が残っておるような気がいたしますから、その点についての御意見を伺っておきたいと思います。それは、総理も御承知の通り、最近青少年犯罪が非常にふえてきておるのでございます。今度の刑法改正の中で暴力に関する手当の部分、これはいわゆる町の職業的暴力団ももとよりその対象になりますが、近ごろ町の暴力の中に青少年の手で犯される暴力が非常に多いのでございます。いわゆるグレン隊といい、チンピラ暴力団といい、こういったものの手当もこれは必要であり、当然今度改正案が成立になった場合その対象となることは言うまでもありません。そういう見地から、率直に申し上げまして総理の御所見を伺いたいのでございます。  総理御承知の通り、最近の青少年犯罪の傾向は非常に憂うべき内容を持っておるのであります。これは警察庁の方で調べていただいた資料によるものでございますが、二十八年、二十九年、三十年、三十一年、三十二年、この五カ年間の調査によりますと、十四歳から二十歳未満、これが刑法上の犯罪で警察に検挙された者が五十万四千九百六十二人、二十歳から二十五歳未満の者が七十万四千四百十二人、合せて百二十万九千三百七十四人になっております。これは検挙された者だけの数字でございまして、同一傾向の者で検挙されない者がなお多数あることは想像にかたくないのでございます。この問題は非常に憂うべき傾向だと思いまして、先日も文部大臣の御出席を求め、文部大臣の御所見、御方針も伺ったのでございます。総理は青年の奮起を求めておられます。国家の将来を背負って立つのも、氏族の将来を背負って立つのも、これは今日の青少年であります。その青少年の傾向がこういう状態にあることはまことに悲しむべきことで、私は胸の痛む思いがいたします。それは犯罪者として検挙されたその当事者の将来も考えなければなりませんし、また被害者の立場も考えなければならぬ。しかも、その犯罪の内容は、強盗とかあるいは殺人とか、ことに強姦の罪なんかは、この青少年によって起される全強姦罪の五二%を占めておる。こういう傾向にあることを見てまことに寒心にたえないのでございます。戦前の統計と比較いたしますと、昭和十一年を一〇〇として、戦後十年を経た昭和参拾年が五〇〇になっております。まさに五倍であります。新憲法のもとでわれわれは文化国家を建設し民主的な諸制度を確立しなければならないという大きな責任を持っておりますが、青少年の犯罪が戦前の五倍になって、文化国家とか民主主国家とか口では言いますが、果してこれが誇り得る状態であるかということも考なければならぬと思うのであります。これはいろいろな原因、条件があり、またそのよって来るのものはあると思いますが、私は率直に一、二点の問題を取り上げて総理の御所見を伺いたいのでございます。一つは犯罪年令に達するまでの青少年のあり方であります。つまり、端的に申しますと、文教政策にどこか欠陥があるのじゃないか、こういう気がするのでございます。人間は、精神的に肉体的に未成熟にある間に一つの人間完成の方向に導きませんと、つまり、がけぷちに行って、立ちどまるだけの自制心というものが自然に備わらなければいけないと思うのでございますが、そういう点の文教政策と申しますか、どこかに欠けるものがあるのじゃないかという気がいたします。いま一つは、おとなの社会の反映でありますが、つまり、それは、社会構造の中のどこかに欠陥があるのではないか、こういう問題であります。それから、肉体的に精神的に一応青年の域に達した十八、九才から二十五、六才までの間、こういう人の環境、処遇、これも非常に重要であろうと思うのであります。スポーツのあり方あるいは娯楽機関のあり方、こういう問題もあると思います。先ほど来だんだんの御意見もありましたが、総理の御所見の通り刑法的処置には限界があるんだ、刑罰法令をもって臨むということは政治として最も策の下の下のものでありまして、法律以前の処置というものがほんとうの政治の任務だということを考えますとき、私どもがここで刑法改正の部分として暴力犯に対する手当をいたしますが、何か心痛むものがあるのであります。それだけでなくて、もう少し大きく社会全体でこれを抱擁していくということを考えなければいけないのであります。それは全体の責任である。もとより政治家責任は重大でありますが、同時に、親も兄弟も教育者も、すべての者が一つの大きな正しい新しい文化的な雰囲気を作り出して、この中に間違いのない態勢を持っていかなければいけないんじゃないかという気がするのであります。一つ、この重要な立法に際して、この刑事法の対象が痛々しい青少年にあるということを総理は十分御存じのはずでございますから、そういうものに対する対策、御方針、具体的な構想がおありでございましたら、その一点だけ総理の御所見を伺っておきたいのでございます。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 三田村委員のお述べになりました数字等に現われておるように、青少年の犯罪が戦後急激に増大しておることは、非常に憂うべき、心を痛める事態であると私も考えます。大きく言いますと、私はやはり、社会不安といいますか、社会の不安定から来ておると思うのです。この傾向は、私も詳しく調べたことじゃございませんけれども、世界的にもこうなっておることじゃないか。これはやはり、あの大戦争の後において、世界がわれわれの念願しておる恒久平和という方向に進まずして、そこにいろいろな恐怖もあり、脅威もあり、混乱もあるというようなことから来ている状況である。日本の事態を見ましても、私は、戦後における一つ社会の混乱状態、無秩序状態がこういう事態に追い込んだという事情が非常にあると思う。従って、この青少年問題というものは、ただ抽象的に青少年の奮起を望まれておるだけでなしに、実はこの問題に関しては常に私の心にかかっておる問題でございます。それに関連いたしまして、かくのごとき犯罪事実、統計等を見ますときに、まことに心痛むものがあります。しかし、それには何といってもやはり大きく言えば社会環境を改善していくということが大事であります。われわれ政治家の行動というものを——今おあげになりましたように、おとなの社会における事態というものは、この若い青少年の諸君に影響を与えるものが非常に多いと思います。あるいは、汚職をなくしてきれいな政治を作らなければならぬということを申しているのも、私はそういうことにも関連があると思います。学校教育についてもこの点は考えなければならぬ。これはいろいろな批判がありますけれども、われわれが道徳教育というものを特設して、青少年の諸君に学校教育を通じて、成人した後において平和なりっぱな社会の構成員となる人格を形成するという意味の徳性を身につける教育をしていかなければならぬということは言うを待たぬと思います。と同時に、私はやはり、青少年諸君の今言った社会環境、生活環境を改善すると同時に、健全な娯楽を与える必要がある。私どもお互いに青少年の時代を考えてみますと、何か活力にあふれておって、何かをせずにじっと老人のように静かにしておるということはとてもあの時代にはできない。何かに向って自分の活力を発揮しようというときに、健全なものになってそれが出されるようなものを考えていく。これは私は広い意味からスポーツの奨励ということは非常にいいと思います。いろいろな意味におきまして、スポーツに関する諸施設や——あるいは私自身これは好きであるというふうにいろいろな方から多少皮肉も出ておりますが、いろいろなスポーツのなにになるべく私が出ていっているということも、そういうことの奨励、関心を深めたいという私の多少の考えもこれは入っているわけであります。いずれにしても、健全なスポーツで健全な人間の活力を出させるようにすることが非常に望ましいし、また同時に、あの時代におきまして、できるだけ団体生活をさせるということも、私は、自分たちの経験から考えてみても、これは望ましいことである。予算にことし青年の家というものをわずかでありますが計上しているのも、青少年の諸君がそこに相つどって団体的な一つの修養を積んだり、あるいはお互いが娯楽をするというようなことの一助になればという考えでございます。  いずれにいたしましても、この青少年の犯罪の増加している傾向というものは、これは非常に重大な問題であり、憂うべき現象でございますから、そのことをやっておる青少年がけしからないんだというので、ただこれに罰をもって臨むというようなことでは、私はむしろ百害あって一利ないということになると思います。従いまして、今申しましたような社会各般の面から、また、おとなの世界において考えなければならぬ問題、また、これらの青少年に与える娯楽や、あるいはスポーツや健全な施設というものをできるだけ増大していく、学校教育においても、また社会教育においても、やはり道義の高揚についてのしつけを身につけるように、あらゆる面からやっていく必要がある、かように考えております。
  72. 三田村武夫

    ○三田村委員 総理のお考え通りであります。  最後に私一言希望を申し上げておくのでありますが、今お話しの通り、青少年問題はきわめて重要であります。戦後どこの国でも青少年犯罪はふえておりますが、その混乱せる中から出てくる青少年犯罪をうまく処理する国が早くその国力を回復する、民族の生々発展の新しい道を切り開いていくということも、歴史に徴して顕著なる事実でございます。そういう意味で、ぜひとも青少年に大きな希望を与えるような目標を与えていただきたいと思う。御承知の非常に単純で純真で行動性のあるものであります。今混乱の中にあってさまよえる姿を見ると、まことに痛々しい感にたえない気がいたします。すなわち、一つの大きな希望と目標を与える。昔のような意味でなくて、その点をどうぞお考え願いたいと思います。  それから、最後に、今度の刑法改正全体についての問題でありますが、総理お話のように、あっせん収賄罪に関し、汚職問題に関しても、刑法的処置には限界がある、これは私の二十何年変らない自分の信念であります。従って、現在の法案が必要やむを得ない最小限度の法律的手当だ、私はこう判断いたしております。同時に、先ほど高橋君からもお話がありましたように、運営上の問題もきわめて重要であります。かく申し上げることは、今度のあっせん収賄罪ができますと、その対象になる者はおおむね公選された公務員すなわち議員、これが世論の焦点にあるようでございます。新しい憲法のもとで、政策とか予算とかいうものをきめてこれを施行する責任の地位にある者は、すべて直接選挙のいわゆる公務員であります。そういう人々の活動というものは闊達で明朗であるということが民主主義の基本的原則であります。でありますから、そういう点について、政府最高の責めを負うておられる総理大臣、検察の衝にあられる法務大臣もともどもに、悪はあくまで除いていかなければならないが、そのことによって民主主義の基本的条件をくずさないように十分御注意願いたいと思います。これは法案成立の暁のことでございますが、それだけ簡潔に申し上げて私の質疑を終ります。
  73. 町村金五

    町村委員長 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時四十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後二時十分休憩      ————◇—————     午後三時七分開議
  74. 町村金五

    町村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。発言の通告がありますから、これを許します。青野武一君。
  75. 青野武一

    ○青野委員 私は唐津法務大臣にお尋ねいたします。  午前中の委員会岸総理大臣の御出席を願って、そのときに御質問したいと思いましたが、私の社会党所属委員の発言者が非常に多かったので実は遠慮したわけでありますが、三悪追放について、その目的を達成するためには真剣にやってもらえるかどうかというところから質問を申し上げたいと思っておりましたが、ああいうような結果で、午前中は質疑者の数が非常に多かったので、ついにその意を果すことができませんでしたが、私は、昨年の月から十二月まで、実は、御存じの方もあると思いますが、衆議院決算委員会委員長を約一年ほど勤めました。そのときに痛切に感じたことは、それぞれ所管大臣をお呼びいたしましても、例の会計検査院の検査報告については、ただ一分か二分の説明と陳謝があるだけで、そのままになってしまうのであります。こういうこととあっせん収賄罪とはどのような関係にあるか。あるいは処罰対象になるようないろいろな問題があると私は考えておりますが、私が委員長をしておりまするときには、二十九年度の決算は本会議で臨時国会のときに議決を経た。ただいま私は決算委員もしておりますが、三十年度と三十一年度の決算の審議を今しておる最中であります。法務大臣は公私ともに御多端の折柄でありますから、お読みになっていないかとも思いますが、大体今問題になっておりまするのは、三十年度と三十一年度の会計検査院の検査報告を中心にしていろいろな審議が進められておりますが、この点について法務大臣は、三十年あるいは三十一年度の決算報告書というものをお読みになったかどうか、まずこの点を一つお尋ね申したい。
  76. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 私はまだ読んでおりません。
  77. 青野武一

    ○青野委員 二十九年度で法務省関係が三件で五百二十六万円という不当事項がある。三十年度におきましては九件で三千九百七十九万円。それから今審査しておりまする、三十一年度は、ぐっと減りまして件数は一件ですが、これも三百六十万円ほどあります。二十九年度が、政府関係機関と各省を合計いたしますると、件数において二千二百四十六件、七十三億四千四百万円というのが不当事項ないし不正行為であったと指摘されておる。私が非常に困難の中を四、五日徹夜いたしまして、そして数字をあげて合計してみますると、三十年度が六十六億一千三百万円、それから、ぐっと下りまするけれども、今審査しておりまする三十一年度が一千一百二十八件、二十五億二千四百万円、それを総合計いたしますると、大体、この最近の三年間の会計検査院の検査報告によって、政府各省と冬機関が三年の間に、二十九年度、三十年度、三十一年度で合計百六十四億七千万円という不正行為と不当事項が行われている。ところが、最近御承知の通り決算委員会で、ドミニカの砂糖が無為替で輸入された、これにはいろいろなブローカーが暗躍をして、そして議員も七名ばかり関係しておるというようなことが委員の諸君の口から委員会の正式の会議の席上で出た。それは最後までその結論を出すに至りませんでしたが、このドミニカの砂糖が一万トン——一万トンと申しますと大体四トンのトラックに二千五百台、それが無為替で入った。これは農林省が入れたわけじゃない。これは外貨の割当は通産省である。そうすると、農林省関係のだれか、係の課長級かあるいは課長補佐くらいな程度で通産省へ頼まれて渡りがついて、そして異例な事実でありますが、ほとんどこういう例はなかったのが、西インド諸島——南米と北米の中間にありまするドミニカ島から二万トンの無為替の砂糖が横浜に入って、その横浜の倉庫に入れて八ヵ月約二千万円の倉庫料を払っておる、それが第三国人の死亡をめぐっていろいろな問題を最近決算委員会では起したのですが、これらも、あっせん収賄罪から考えてみますると、何か通産省に農林省の公務員の諸君が渡りをつけてこういう問題が行われておる、上層部の方の諸君はほとんど知らないが、一万トンの砂糖が日本に無為替で、外貨の割当なしに入ってきて、八カ月も横浜の倉庫に置いておいて、倉庫料が二千万円もかかったというようなことが、異例な事実で砂糖問題としてはあったのですが、しかし、こういうようなものが、決算報告書を私は三十年度と三十一年度を持ってきておりますが、いろいろな事件があるのです。この中をお読みになっていただくとよくわかります。ようこうも不正なことが行われた。件数にしてもただいま申しましたように非常に多い。それが不当事項はあっせん収賄罪に全部がかかるわけではないが、やはりこれは汚職と紙一枚の差です。不正行為というに至っては、明らかに、曲りくねっておっても、調べてみると確かにこれは汚職に通じておるのです。会計検査院の諸君が非常に熱心にこういう統計を出してくれましたが、決算委員会で過去一年間問題になったことは、ほとんど検査院の報告書の中にないようなスキャンダルばかりなんです。私は、こういう点を考えてみて、一度三十一年度と三十年度の決算報告を一つ法務大臣にお読みを願って、こういうものとあっせん収賄罪とはどんな関係にあるか、——こういうものはほとんど大部分が処罰対象になるべきものではないか。もちろん公務員あっせんしなければだめなんですけれども、直接行った場合に第三者供賄という点もおろそかにはできないことが、これによって明らかになるんじゃないか、かように思っておりまするが、どんなものでございましょうか。
  78. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ドミニカ糖のことにつきましては私も新聞紙等で毎々拝見をいたしておるのでございますけれども、正式にはまだ何にも報告を受けておりませんから、内容については一向存じないのでございますが、会計検査院の検査の結果については、事務当局ににおきましていろいろあっせん収賄罪に関するこのたびの案と比較しておるようでございます。いわゆる不正行為と不当事項と、この二つに分けて報告をしておるようでございますが、これが果してあっせん収賄罪に関する規定不正行為という観念と一致するかどうかというようなことについて考えてみますると、必ずしもこの二つの概念は、言葉は同じでございますけれど、も、ぴったりは合わないようでございます。もちろん、会計検査院で不正行為というておるうちに、あっせん収賄罪の解釈として不正行為と見られるものも相当あるようでございます。そういうような場合において、あの条文に規定しておりまする通りあっせん行為があったか、それからまたその報酬として、わいろが授受されておる、こういうような条件がそろいますれば、あっせん収賄罪をするというような場合もあるようでございます。なおその点もう少し詳細に政府委員から申し上げたいと思います。
  79. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。会計検査院の検査報告の中に不正行為として掲げてあります事項はおおむね刑法の各本条に触れる横領とか業務上横領とかいった事件を主として考えてあるようでございます。それから、不当事項として掲げてありますのは、必ずしも犯罪にはならない、あるいはなるかもしれないが、少くとも国に損害を与えたという点で掲記されておるようでございます。ただいま法務省の関係の部分についても御指摘がございましたが、私も前任は経理部長をいたしておりました関係で、決算委員会で詳細な御審議を受けました一人でございます。ただいま青野先生からのお話のありました通り、この三年間を見ましても百六十億以上の不正、不当の事項があげられておるのでございまして、この点は、法務省の立場から、つまり検察というような立場から絶えず関心を持って従来とても見ておるのであります。会計検査院におきましては、そのような不正・不当がどうして起ってきたかということの原因関係、その筋道というようなものにつきましてはあまり深く突っ込んでおらないようでございますけれども、もしも、今ドミニカ糖についてお話がありましたように、他の公務員が通産省の公務員に働きかけまして、そしてもしこの法規に反する無為替輸入というようなことを実現して、それの報酬として金をもらったというような事案になりますと仮定いたしますならば、まさしくあっせん収賄のただいま御審議をいただいております法案に該当するわけでございます。そういうふうに検査報告の中に掲げてある事項の中においても、ただいま大臣からお答えいたしましたように、相当なものがそういったような容疑で調べてみなければならぬのではないかというふうにも思われるのでありますが、わいろ罪の発覚の端緒と申しますのは、計画的にあばき立てるというようなこともなかなかできにくいものでございまして、全く偶然の機会に端緒をつかみまして、あとは証拠を追って調べていくというような順序に相なりますので、ただいま決算委員会で御審議をいただいておりますドミニカ糖についても、法務省といたしまして私ども絶えず傍聴させていただいておりまして、その成り行きを見守っておる状況であります。
  80. 青野武一

    ○青野委員 引き続いて全国的に大きな問題になりました国鉄のガード下の問題を例に引いてお尋ね申し上げたいと思います。というのは、東京じゅうにあるガード下は大体料金を九千万円ほど一年間に取っております。しかし、私などが行ってかなりの危険を冒しつつ詳細に調べてみると、実際は十億円以上になるのです。それが、間の口銭を取ったり、又貸し料を取ったりするので、結局、一万円国鉄本社に納めるのに、中間のブローカーがそれの約十倍の十万円を取っておる。新宿の西口はほとんど第三国人に占拠されておる。私が調べに行ったときも、大体その町のグレン隊みたいな連中があいくち、ピストルを持って尾行して、かなり危険であったけれども、思い切って調べて来た。脅迫状も私が委員長時代に百十通も来た。今でも全部持っております。月に十五日のやみ夜があるから覚悟はよいか、やり切れるならやってみろという脅迫状が来た。国鉄のガード下を第三国人の手で占めて、上野一帯は第三者の有力な人が買ってそれを又貸し料を取って貸しておる。これが東京において十億円だが、実際において九千万円ほどの土地の使用料を取っておるにすぎなかった。このようにして、特にはなはだしい神田駅付近は、ある一人の区会議員、これは関東一円の大親分といわれているそうですが、神田駅付近だけで九十何カ所の利権を持っている。そして、十二、三坪、四畳半二つくらいのものが、百五十万円から三百万円の権利金を取る。さらにそれに付随して又貸し料の莫大なさやを取っておる。そういうようなことが今まで行われておる。あの長崎惣之助さんが国鉄総裁をしているときに、私は四年ほど運輸委員をしておったが、そのときに質問をすると、生命に危険があるから手がつけられませんと御答弁になった。今の小倉副総裁もそのようなことを委員会で言われた。それでは私が命を張ってこれを解決してみましょうというところから、ガード下の問題を、実はかなり危険ではあるけれども扱ったのです。最後は、国鉄総裁の十河さんと運輸大臣の宮澤さんがおいでになって、決算委員会の満場一致の決議を尊重せられて、これから先は又貸しは許しません、権利金を取るなどということは絶対に黙認するわけにいきませんということになって、一応表面は解決がついたようになっておりますが、まだまだ検察庁や警察の御厄介にならぬ問題がたくさん伏在しておると思うのです。現に私はいろいろ調査もしておるのですが、やはり依然として国鉄関係責任者の職員に渡りがついて参りますと、またその係の課長なり部長なりのところに行く。いろいろあっせんをして、更に便宜を計らう。国鉄は御承知の通り非常に大きな世帯でありますから、いろいろな利権もあると思いますが、大体、国鉄の上層幹部が一ぺんおやめになると、現職の幹部を後輩としてあごで使っていく。たとえば車両です。貨車であるとか客車であるとか機関車であるとかの車両は、少くとも実際問題として一割のリベートが飛んでいるのです。この間には、前に国鉄の何々局長というような肩書きを持った人が現在の局長級をあごで使っておる。車両は莫大な数のものがありますが、それが一割です。たとえば三菱電機とか日立製作所に頼みますと、とにかく一割余分の値段で注文して、一割は途中で消えてしまう。こういう仕組みで実に巧妙にやられておる。そこにはやはり公務員あっせんというようないろいろな複雑な事情が含まれておると私は見ておるが、そういう点について法務当局が厳重に警察を通じ検察庁を通じておやり下されば、この検査報告に出ておりますような問題はおそらく半減するのではないか。私が一年ばかりこれに関係して決算委員会の運営の責任者をしておりますときには、法務省に対してもかなり厳重に警告を発した。そのお陰で皆さん方が非常にまじめになられたため、三件で五百二十六万円のものが翌三十年度には三千九百七十九万円になっておりましたが、三十一年度にはがたっと減って、件数がたった一件でしかも金額が三百六十万円に減っておる。これは自分で一生懸命にやった問題でありますから、私は非常にうれしく思います。こういう点について、この検査報告に出ておりますように、三年間を累計いたしましても百六十四億七千万円もの不当な使い込みあるいはむだな金を使っておる。こういう点で、法務省が先頭を切ってこんなに成績がよくなっておることを見ますと、私は非常に感謝するわけでありますが、それらの点について、ほとんど大部分があっせんによって表面に出ない巧妙な方法でわいろとりをやっておるのではないか、そうでなければそんなにぼろいもうけを第三者がするわけがないのです。また、検察庁で御厄介になっております国鉄のガード下の問題というものは、大てい課長か課長補佐くらいの人が二十万、三十万という金を取っており、ボスはそれの十倍、二十倍の金もうけをする。そこで、一割や五分の口銭をやっても知れたものでありますから、ずっと利権が次から次へと握られておるというような状態でありますが、これらの諸点について、やはり警察あたりを相当督励して厳重に監視をし監督をしてやれば、この不当事項というものは相当に激減するのではないかと考えますが、その点についての局長の御意見を承わっておきます。
  81. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 ただいまお話のありました国鉄のガード下の問題につきましては、決算委員会でも熱心に御討議になりましたし、検査報告書だけではわからない部分も、決算委員会の質疑応答の速記録等によってかなり明らかになってきておりますので、最高検察庁におきましても十分その速記録簿を検討しておるやに聞いておるのでございます。なお、最高検察庁といたしましては、会計検査院その他行政管理庁等その内部検査をします機関とも密接な連絡のもとに、このような公務員関係の犯罪、そういうものの処理にいろいろ苦心をいたしております。現にその種の担当の検事なども命じましてせっかく努力をいたしておる状況で、いずれ何らかの成果を見ることと考えております。  それで、ただいま御質疑の中に、いわゆる官庁ブローカーと申しますか、やめた元官吏の人が顔をきかせまして現在の職務権限を持っておる役人に働きかけて不当な利益を得ておるというお話でございます。このようないわゆる官庁ブローカーの存在がひんしゅくを買っておりますことも私ども承知をいたしておりますが、今回のあっせん収賄罪におきましては一応犯罪の主体を公務員、従って、みなされる公務員も含みますが、公務員ということに限定をいたしました結果、公務員でないいわゆる官庁ブローカーにつきましては今回の立法からはずれておるのでございますが、これは立法政策といたしましてそのような考え方をとったわけでございます。
  82. 青野武一

    ○青野委員 大体、官庁ブローカーというような点についてこの法律からはずされておることは、たびたび同僚委員の御質問に対しましての懇切丁寧な法務大臣答弁を私はみなメモに取っておりまして、私自身から御質問申さなくても、ほかの委員からの質問に御答弁になっておる内容は大体において納得のいく程度に控えを取ってありますから、重複を避けてそういう点について御質問しようと思いませんが、ここにもう一つお尋ねしておきたいと思いますることは、これは全国的に今氷山の一角で伏せられておるような形ですが、地方公務員、たとえば県庁あたりの知事あるいは副知事、出納長、こういった人は処罰対象公務員としてなるのですか、この点一つ明らかにしてもらいたい。
  83. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。ただいまお示しの知事、副知事、出納長その他地方公共団体の職員、これはいずれも本法にいういわゆる公務員でございます。
  84. 青野武一

    ○青野委員 これも私の経験した内容で、四十六都道府県にこういう問題が起っては大へんだというところから、自民党の諸君の協力を求めて深く掘り下げてみた問題でありますが、御承知の通り、この問題は、どこでも国から補助金をもらう、地方交付税をもらう、そして県からまた独自の税金を取り立てる。福岡県のごときは百三十五億円というのが国家の補助金と地方交付税です。福岡県は三百八十六万の人口ですが、一年間の半分以上は国の補助でまかなわれる。そこで、そういうような金をたくさん扱っておる者が東京のつぶれかかった第一銀行に公金一億を預けて、一割の一千万円のリベートを取った。そこで、二百十万の全福岡県下の有権者の三分の一以上の八十八万票をリコールで集めたことは新聞で御承知の通りである。その内容は、検察庁柳川検事正と私はたびたびお目にかかって、当時の事情も聞いておりますし、記録も持っておりますが、大体銀行に知事と——知事は、私は知らないということで通しましたが、副知事と出納長と信用組合の理事長の三人がブローカーと一緒になって公金の一億を東京の銀行に、ほとんど九分九厘つぶれかかってほかの銀行から五、六人来て整理をしておる銀行に、わざわざ何の関係もないのにブローカーの口車に乗って一億の金を預けて一千万円のリベートを取った。いわゆるわいろです。その金がどういうことになっておるか調べてみますると、県知事選挙のときの借金が二百二十万円あった、それに払われておる。知事は知らぬと言いますが、女房役の副知事がこれを払っておる。それから、来年に迫っております知事選挙の事前運動に約二百万円費しておる。一千万円のわいろからそれを支払ったのです。選挙費用にも使っておる。そうして、結局、いろいろな関係者の人たちが、二十万とか五十万とか、東京・福岡間の旅費や日当とか宿銭というものを取って、最後に残った三百万円を、副知事と出納長と、それから信用組合の理事長が取ったということは、これは検察庁ではっきり副知事が白状しておる。その記録にも残っております。それを知らぬ存ぜぬと言って知事が責任をとらないから、結局リコールの運動になって現われてきて、ああいう結末になってきたわけですが、こういうことは福岡県だけではない。おそらく全国で大きいこまいの差はあっても必ずやっておる、私どもはこういう見通しを立てまして、そうして自治庁に向ってその統計を要求したのであります。相当ありましたけれども、必ずしも公金を預けて一割なり五分なりのわいろを取っておるというところまでしっぽをつかむことができなかったが、実際に福岡県の例を見て全国の各都道府県がふるえ上ったことは事実なんです。悪いことをしておる、しようと思っている者が、全部手を控えてやめたのです。その効果だけはあったのです。ところが、今局長の御答弁によりますと、それは地方公務員としてあっせん収賄罪の上では処罰対象になるということでありましたが、こういうような問題が、とにかく、ブローカーから副知事へ、副知事から出納長へ、こういう工合で、やはり同僚の公務員がこの問題について割前なんかを中心にしていろいろなあっせんをするくせがあるのです。これは全国的に一つの傾向なんで、運が悪かったのは福岡県知事であったのです。こういう点についても一つ万全の処置をとっていただけば、地方々々で、また各官庁内でこういうようなわいろ事件、不正事件というものはなくなるように思いますが、こういう点についても大体心がまえというものがおできになっておりますか、その点を一つお聞きしてみたい。
  85. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 ただいま仰せのように、特に地方の政界におきましては、広く一口に申しますと汚職がかなり広く行われておるやに私どもも理解いたしております。その中には、御指摘のように、本法案対象となるような事例——現刑法にこのようなあっせん収賄規定がございませんために、今までにおきましては手がつけられなかったという事例も絶無ではないように私どもは考えるのでございます。そういう事情でございまして、今福岡県の県庁の事件についてお話がございましたが、まあこのような事件が各府県のどこにもあると、ちょっと責任を持ってお答できないのでございますけれども、この種の事件は、このあっせん収賄罪がもし立法化されました暁におきましては、相当頂門の一針となりまして、地方政官界の粛正に役立つものというふうに私どもは期待いたしております。御承知のように、検察組織は、最高検察庁を頂点といたしまして、全国各府県にそれぞれ地方検察庁があるわけでございまして、その上には高等検察庁もありますことは御承知の通りでございますが、全国の組織として中央の指揮下にございますもので大きな組織としては検察庁ぐらいなものではないかと現在思うくらいでございまして、このような組織的にも法律家として固まっておりますこの検察庁が健全に動きますならば、このあっせん収賄罪立法と相待ちまして、地方政官界の粛正にさらに大きく役立って参るというふうに私は確信いたしております。
  86. 青野武一

    ○青野委員 私はまだいろいろな質問の材料は持っておるのですが、大体、このあっせん収賄罪暴力取締りの問題については、各委員から、自民党及び社会党から、すでに出尽した感があるほど御質問が行われました。ある人は、人の質問のむしかえしを三時間も五時間もやって、そして法務大臣がまたこれが非常に正直に御答弁になっておるのを、私は横から一々控えを取って、大体心覚えをつけておきましたが、そういうばかなことは繰り返したくないので、暴力取締りに関して一つ二つ例を引いて竹内刑事局長にお尋ねをしておきたいと思います。  これは、私の郷里の近くの学校でことし行われた問題でありますが、学校当局側と学校の先生とが対立いたしまして、三十四、五名ある高等学校の先生が二派に分かれて、学校経営上とか、あるいは給料の未払いとか、あるいは転勤であるとか、首を切られたとかというような、感情的な対立もあって、対立をしておりましたところが、その対側にある先生方が登校してきたところ、お前たちは首を切ったんだからもう学校に来るに及ばず、そこで激高し出て、そこの先生の方についておる学生が、大部分のガラス、全部の学校のガラスを割ってしまった。机から、いす、こっぱみじんに大部分をやって、そうして、結局、暴力行為でありますから、学校側も手がつけられない。暴行いたしました方の側の先生もやれと教唆したわけでも応援したわけでもないが、実際に、現実としては非常にたくさんのガラスが割れ、机、テーブルがこわれてしまった。こういうことは今一つの流行になっているようです。あるときは、なまいきな中学生は凶器を持って先生をおどかしに行くとか、なぜもう少し成績を上げてくれないかと通信簿を突きつけて、かえって生徒の方が先生を脅迫するような事例がある。私の今申し上げましたようなことは、やはり何百人か集団で、凶器は持たないが、実際問題として、学校の器物を破壊したことは、これは事実なんです。そこで、やはりいまだにその問題がたたって、双方が感情的な対立を続けて、学校の教育も何もできないという状態になっているし、そこの学校を卒業した者は、会社、工場、どこにも雇い手がないので、学校の名前がすたれてしまったという事件が北九州の一角にある。こういうことを考えると、ここに暴力取締りに関して新しく改正せられた内容を読んでみますると、やはり、そういった学生・生徒が学校の器物を破壊したようなときは——何十人かあるいは何百人の中にはなまいきなやつがおるのです。実際問題として、柔道とか撃剣部におるやつは、あいくち一本くらい持っていつも歩いておるのです。そして、年の下な中学生などをつかまえると、盛り場で、あり金や時計をぶんどってしまう。あいくちをちらっと見せておいておどかす。そういうことはほかの諸君は知らない。そういう者がたった一人か二人まじっておることによって、器物をこわしたときに、凶器を持っておった、ほかの連中はみんな知っておったのだというようなことで、こういうような学校の生徒を処罰対象にしていくようなことになると、これはまた大へんなことになると思うのですが、そういう点について竹内局長はどのような大体御方針を持っておられるか。
  87. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 ただいまお話のありました学校の事件は、私も承知いたしております。日本におけ暴力教室の一つの例というふうに世間でもとっておるようでございますが、まことに遺憾な例だと思います。そのような場合に、ただいま暴力立法として考えております二百八条の二のいわゆる持凶器集合罪といったようなものが適用あるだろうかどうかという点の御質疑、御心配でありますが、この二百八条の罪は、二人以上の者が共同して他人の生命、身体、財産に害を加える目的、こういう目的を持った者の集まりであることと、そういう集まった凶器を準備したりあるいは準備のあることを知って集まった者を処罰する趣旨でございます。従いまして、多数の生徒が集まっておる中に、一人、二人凶器を持った者が入っていたといたしましても、多数の生徒は他人の生命、身体に対して共同して害を加える目的を持った生徒の集まりではございませんので、御心配のような本条適用という問題は起らないものと私は考えております。
  88. 青野武一

    ○青野委員 私は、先ほども申しましたように、岸総理がおいでになったときに、神近さんからぜひという希望がありましたので、質疑を保留して、そうしてお譲りしたわけでありますが、岸首相が三悪追放を天下に呼号せられても、岸総理が一人ではやれないことです。唱えておることはまことにりっぱなことである。貧乏、汚職暴力追放すると言う。私は、演説のときに、汚貧暴追放、こうやっておる。聞いている人は何言っているかわからないけれども、汚は汚職の汚、貧は貧乏の貧、暴は暴力の暴で、汚貧暴追放、こうやっておる。汚貧暴追放とはなかなか困難ではあるが、行うことはりっぱだ、そういう目標に向って日本政治を革新していこうという気力だけはあっぱれである、私は敵ながらおほめして今日までいろいろ演説会のときには言っておりますが、これは岸さんが政治をやっていく一つの目標として、念願としておやりになっておることは、十分理解することができる。けれども、これは岸総理が一人で幾らがんばってみてもできることじゃありません。全国の警察官なり検察庁なり法務省が一緒になって、鉄のようにかたく手を握り合って相協力しなければ、その目的を達することは非常に困難である。こういう点について、一日も早くその目的を達するように真剣にやってもらいたい。  私は四年前に北欧三国をある事情で回ってきましたが、スエーデンに行って見て驚いた。一緒に行った人は、田中龍夫代議士、防衛長官をしました船田中さん、それから予算委員長を一ぺん勤められました鹿児島の尾崎末吉さん、こういう人々でした。さすが社会党の天下ですから、自民党の諸君はこもうなっておりましたが、私はいろいろな関係者にお目にかかって、いろいろな話を聞いたのですが、ここに参りますと、たしかその当時——四年前でしたが、もう政権を担当して二十四年くらいになる、こう閣僚の人が御説明になっておりました。絶対多数というわけではありませんけれど、大体保守党は十四、五名くらいが関の山で、八十名から九十名くらいの下院議員を持っておる。そうして二十四、五年政局を担当して、総理大臣が病気で死んだのでかわる。そのまた総理大臣が病気で死んだ。二十四年間に総理大臣が三人目だ。あれから四年加えますと、ほとんど三十年近く政権を担当しておるわけですが、そこに行って見て驚いたことは、どろぼうがおりません。どろぼうする必要がないほどやっぱり収入がある。一例を引きますと、国鉄の従業員でも、日本の国鉄の職員とは違いまして、税金を引かれた残りが日本の金で七万円くらいの金が入る。六十才から以上の人は、相当の金額を、日本の金で二万五千円、三万円程度毎月もらっておる。これは養老年金の関係で……。そこで、どろぼうすることも要らないし、失業者もおらない。道路が非常にきれいである。悪いことをする人がおらない。戦争には百五十年間関係をしていないから、民生の安定のために有効な金が投ぜられて、政局を担当したが、さてどういうことで政治をしていいのやら見当がつかない。どうすれば国民がこれ以上喜んでくれるかということがスエーデンのこれから先の政治になっておる。やることは全部やりました、こういうような説明があったときに、話半分に聞いても、日本の現状と比較して非常にうらやましいという感じを私は持ったのですが、ねがわくは、資本主義社会主義にかかわらず、そういう高いところを目標にして、三悪追放を真剣に一つやってもらいたいということを私は岸総理大臣にお願いすると同時に、特に法務大臣には、あなたが中心となって、この目標、三区悪追放のこの目的を達するのだ、よし、岸さんの唱えておることは、おれが法務大臣をしておるときに大体の目鼻をつけて、これを完全に追放して、国民生活の安定と国家の発展のために努力するのだ、こういう火にも焼けない水にもおぼれない気魄と勇気を持ってやってもらいたいということを、私は最後にお願いをし、また御所見を伺っておいて、私の質問を終らしていただきたい。大体御質問申し上げることは、先ほども申しましたように他の委員の諸君の御発言に対するお二人の御答弁は大体メモを取ってありますので、重ねて聞く必要はないように思いますので、最後に私は結びとして御決意を一つお伺いして、私の質問を終らしていただきたいと思います。
  89. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまは、三悪追放関係いたしまして、スエーデン等のうらやましい事例を御引用になりまして、われわれ局に当っている者の覚悟を促し、その態度についてのお尋ねでございました。これは午前中に総理からもはっきり申し上げた通りであり、また総理がかねがね自分の悲願であるとまで言って強く主張しておられるところでございまして、私は、その三悪追放のうち暴力汚職関係を担当いたしておるものでございますが、岸内閣の閣僚の一人といたしまして、総理の意を体しまして、総理と変らないようなかたい決意を持って、この二つの社会悪の追放に当りたいと考えております。また、一年足らずの在任期間中、検察当局を督励いたしまして、この点につきましては全力をあげて努めて参ったつもりでございます。実は、世上往々、岸総理が三悪を追放するということを唱え出したけれども、汚職暴力事犯の少しも減らないじゃないかというような批判が出まして、その点は私ども局に当っておる者といたしましては非常に遺憾に考えておったのでございます。しかるに、きょうたまたまこの席上におきまして武藤委員からその点について明快なお話を承わりまして、私どもといたしましては、胸のすくような思いをいたしたのでございます。つまり、岸総理が三悪追放を唱え出してから、いろいろ汚職が摘発されたり、暴力事犯があがったりする、それは岸総理内閣を組織して以来のこともあるだろうけれども、その過去のこともあるだろう、その過去のことであれ、組閣以来のことであれ、ともかく厳重にこの二悪を追及するからこそここに統計数字が増すということも考えられるという武藤さんのお話でございまして、私どももその通り考えております。岸総理が唱えてから汚職なり暴力なりの検挙がふえたから、それは減らないじゃないか、こういう批判を受けることは非常に心外でございましたが、そういうことは別といたしまして、ともかく、厳正公平、そういうことの疑いがありました場合には、検察当局において仮借するところなく検察の手を伸べて参ったのでございます。われわれ、ただ検察の力だけで汚職暴力が絶滅するものだとは考えておりませんけれども、しかし、われわれの担当しておる範囲におきまして、法律を厳正に運用いたしまして、そうして、先ほど御激励の言葉をちょうだいいたしましたが、その意に沿うように十分に努力をいたしたいと考えております。
  90. 町村金五

    町村委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十五分散会