運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-03-13 第28回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十三日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員   委員長 町村 金五君    理事 高橋 禎一君 理事 林   博君    理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君    理事 横井 太郎君 理事 青野 武一君    理事 菊地養之輔君       犬養  健君    小島 徹三君       小林かなえ君    世耕 弘一君       徳安 實藏君    長井  源君       古島 義英君    横川 重次君       神近 市子君    武藤運十郎君       吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君  出席政府委員         法務政務次官  横川 信夫君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君         検     事         (民事局長心         得)      平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         検     事         (保護局長)  福原 忠男君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      五鬼上堅磐君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      江里口清雄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月十二日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  鈴木義男君が議長指名委員選任された。 同月十三日  委員辻正原弘市君及び鈴木義男辞任につき、  その補欠として神近市子君及び田中幾三郎君が  議長指名委員選任された。     ————————————— 三月十二日  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三二号)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一三四号)  (予)の審査を本委員会に付討された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所法等の一部を改正する法律案内閣提出、  第二十六回国会閣法第八九号)  企業担保法案内閣提出第七〇号)(予)  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 町村金五

    町村委員長 これより会議を開きます。  企業担保法案について政府当局より逐条説明を聴取いたします。平賀政府委員
  3. 平賀健太

    平賀政府委員 それでは企業担保法案につきまして逐条の御説明をいたします。  この法律案の第一条から第九条までは企業担保権の実体に関する規定でございます。第十条以下が企業担保権実行手続に関する規定でございます。  まず、第一条でありますが、企業担保権の目的となりますのは株式会社の実体としての総財産であり、それからその被損保債権となりますのは会社企業のための長期資金調達方法であります社債であることを規定いたしまして、企業担保権法律上の性質をなお明らかにするためにこれを物権といたしておるのであります。  第二条は企業担保権効力に関する規定でありますが、企業担保権は、会社の営業に伴い変動する状態における会社の総財産を把握するものでありまして、会社に属しなくなった財産については消滅します反面、新たに会社に属することとなった財産については当然に効力が及ぶのであります。しかし、企業担保権実行手続開始されますと、その際における会社の総財産差し押えによって確定いたすのであります。第二条の第一項では、企業担保権者がこのようにして確定された総財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができることを規定いたしました。第二項では、個々の財産に対する強制執行競売の場合にはこの優先権がないことを規定いたしておるのであります。それから、国税徴収またはその例による滞納処分の場合におきましては、その手続において企業担保権者配当するという手続が行われませんので、企業担保権者優先権のないことはもちろんであります。そういう関係滞納処分のことは本条で特に規定いたしてないのであります。  第三条は企業担保権の設定及び変更に関する規定でありますが、企業担保権の設定または変更を目的とする契約は、その内容が複雑となることが予想されるので、企業担保権の成立及び内容を明確ならしめ、将来特に企業担保権実行の際の紛争を未然に防止し、実行手続を円滑に進めますために、契約の締結を公正証書によってしなければならないことといたしておるのであります。  第四条は企業担保権登記に関する規定でありますが、企業担保権の得喪及び変更は原則としてその登記をすることによって効力を生ずるものとして、その成立を明確ならしめ、しかもその手続を簡素化するため、右の登記会社の本店の所在地において株式会社登記簿にすることとし、その登記手続を政令で定めることにいたしたのであります。なお、企業担保権一般承継による移転、混同または被担保債権の消滅による変更・消滅は、登記をしなくてもその効力が生ずることといたしております。  第五条は企業担保権の相互間の順位でありますが、会社の総財産に数個の企業担保権が設定された場合の企業担保権相互順位は、他の登記した権利の場合と同様に、その登記の前後によることといたしたのであります。  第六条は企業担保権と他の会社財産に対する権利との関係でございます。第二条第一項の規定により、会社に属しなくなった財産に対しては担保権追及力を認めないこととしたことと関連して、会社の個々の財産の上に存する権利は、企業損保権登記前はもちろん、その登記後に対抗要件すなわち登記または引き渡し等が行われた場合におきましても、すベて企業担保権者に対抗することができることとし、第二条及び次条とも相持って企業担保権の目的たる会社の総財産実行開始に至るまでは常時変動するものであることを明らかにいたしたのであります。  第七条は他担保権との関係規定であります。本条は他担保権企業担保権との順位を明らかにしたものであって、一般の先取特権企業担保権に優先し、会社の個々の財産の上に存する特別の先取特権質権または抵当権当該財産につき企業担保権に優先することを明らかにしたのであります。  第八条は、企業担保権を設定している会社合併して消滅する場合には、その企業担保権は消滅することなく、合併後存続する会社、これは吸収合併の場合でありますが、または合併によって設立される会社、これは新設合併の場合でありますが、その会社の総財産について引き続き効力を有することを明らかにいたしております。これは第一項の関係であります。それからまた、合併をしようとする会社の双方が企業担保権を設定しておりますときは、合併後の会社の総財産にそれぞれ効力を有する企業担保権相互順位の混乱を防ぐため、その順位に関する企業担保権者間のあらかじめの協定がなければ合併することができないことといたしております。もしこの協定をしないで合併がされた場合には、会社合併は無効となりますので、企業担保権者も商法の第四百十五条の規定による合併無効の訴えを提起し得ることを明らかにいたしたのであります。  第九条は民法の関連規定の準用でありますが、本条は企業担保権に関し民法の中の担保物件に関する所要規定を準用したものであります。民法二百九十六条の準用は、債権が一部でも残存する限り企業担保権効力会社の総財産に及ぶことを明らかにし、同法第三百七十四条の準用は、企業損保権者優先弁済を受ける債権の範囲は、特別の登記をしない限り、元本のほか利息または遅延損害金を通じて満期となった最後の二年分に制限する趣旨であります。それから、同法第三百七十五条中順位の譲渡及び放棄に関する部分並びに第三百七十六条の準用は、企業担保権についてもその順位の譲渡及び放棄を認めようとするものであります。同法第三百九十六条の準用は、被担保債権が消滅しない限り、企業担保権のみが時効によって消滅するものではないことを明らかにいたしたのであります。  それから、第二章は、先ほども申しましたように、第十条以下におきまして、企業担保権実行に関する手続規定でございまして、民事訴訟法中の強制執行に関する規定、あるいは競売法規定ないし破産法所要規定を準用したのもありますし、また同趣旨規定したものもございます。それで、ここのとこはできるだけ簡単にその要旨を御説明いたしたいと存じます。  第十条は、企業担保権実行会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所が専属の官轄裁判所としてその関与のもとになされることを規定いたしております。  第十一条は、企業担保権実行企業担保権者申し立てに基いてなされることを明らかにいたしております。  第十二条は、企業担保権実行手続に関する裁判は、簡易迅速になされる必要がございますので、口頭弁論を開かずにすることができることを規定いたしております。従って、その裁判は決定の形式でなされることとなります。これは、民事訴訟法第五百四十三条第三項と同趣旨規定でございます。  第十三条は、企業損保権実行手続において必要とされますところの公告は、別段の定めがなされない限り、官報及び裁判所具体的案件に応じて職権で定める一個または数個の新聞紙に掲載することを第一項で明らかにしております。その公告の効力が生ずるのは、右の最終の掲載のあった日の翌日であることを明らかにして、公告の効力の生ずる時期を明権にいたしております。  次に十四条で、ありますが、企業担保権実行手続におきまして特別の保護を与えられる利害関係人の範囲を規定いたしております。これは、民事訴訟法第六百四十八条、競売法第二十七条第三項などと同趣旨規定であります。  それから、第十五条は、管財人の職務の公正を保障いたしますために、管財人会社財産の管理または換価等に関して裁判所への報告義務を課しておるのであります。  第十六条は、利害の関係を有する者に、その利益の保護ないし便宜のために、実行手続に関する書類の閲覧または謄写の請求権を認めたのであります。  第十七条は、企業担保権実行手続に関する総則的の規定民事訴訟法による訴訟手続及び強制執行手続に見ならうことが適当でありますので、第一項におきましては、原則として民事訴訟法第一編から第四編までの規定を準用することといたすことにいたしております。それから、第二項におきましては、特に強制執行編中の関係規定を準用することといたしまして、五百十三条その他の規定をここにあげておるのであります。  それから、第十八条は、これは細目の規定を政令、裁判所規則に譲る委任の規定でありますが、この法律に定むる以外の細則的な手続規定中、登記または登録に関するものは政令に、その他の裁判所手続に関するものは最高裁判所の規則に委任するこことにいたしております。  次は、第二節としまして、実行手続開始に関する規定であります。  第十九条は、企業担保権実行手続決定の形式によります裁判で開始されることを明らかにいたしております。これは競売法の第二十五条第一項と同趣旨規定であります。次は第二十条でありますが、企業担保権実行手続開始決定におきましては、会社の総財産を確定させますために総財産差し押えを宣言することといたしまして、その差し押え効力の生ずる時期を規定いたしております。民訴六百四十四条と同趣旨規定のものでございます。  次は第二十一条でありますが、二十条の規定によって差し押えられました総財産を管理及び換価するため管財人の選任が必要でありますので、裁判所開始決定と同時に管財人を選任すべきことを規定いたしております。  次は第二十二条でございますが、企業担保権実行手続開始されました場合に、取引の安全をはかるために、会社財産差し押え及び会社財産を管理する管財人を一般に周知せしめると同時に、会社債権及び第三者の所持する会社財産並びに一般の優先権及び特別担保権を有する債権者債権及び損保権の有無を調査しまして、実行手続を円滑ならしめるために、裁判所所要の公告をすべきことを規定いたしたのであります。破産法の百四十三条と同趣旨規定でございます。  次は第二十三条でありますが、企業担保権実行手続開始されました場合に取引の安全をはかるために、管財人会社の本店の所在地管轄登記所実行手続開始登記及び管財人登記を申請しなければならないこととしまして、あわせて管財人変更があった場合にはその登記を申請しなければならないことを規定いたしております。これも破産法第百十九条と同趣旨規定でございます。  次は第二十四条でありますが、企業担保権実行手続開始されました場合に、取引の安全をはかるために、会社財産登記または登録の制度のあるものにつきましては、管財人実行手続開始登記または登録を申請しなければならないということを規定いたしております。これも破産法の百二十条と同趣旨規定でございます。  次は第二十五条であります。二十三条及び二十四条の登記及び登録特殊性にかんがみまして、その登録税は課さないことにいたしたのであります。これも破産法百二十二条二項と同趣旨でございます。  次は第二十六条でありますが、会社債権を保全し、その債務者を保護するために、会社債権差し押えられた旨を管財人がその債務者に通知すべきことを規定いたしております。  次は第二十七条であります。実行手続開始決定による会社財産差し押え対抗要件規定いたしておりますと同時に、対抗要件が備わった後に第三者留置権のように法律行為によらない権利を取得しても、その取得の効力実行手続においては主張することができないことを明らかにいたしております。  次は第二十八条であります。これは、会社の総財産の換価を円滑に行いますために、会社の個々の財産に対してすでにされておりますところの強制執行などの処分を失効せしめることを規定いたしております。これは破産法七十条も同様の規定でございます。なお、強制執行などをしておりますところの一般の債権者企業担保権実行手続において配当を受けることになるのであります。  なお、本条の規定がありますことから、解釈上、実行手続開始後におきましては、会社の個々の財産に対する強制執行などの処分をすることができないことになるのは申すまでもないことであります。  次は第二十九条でありますが、本条は、民訴第六百四十五条第一項及び第二項を準用しまして、二重の企業担保権実行手続を許さないこととし、後に実行申し立てをした者につきましては、記録添付の方法により配当要求効力を生ぜしめ、さらに、先の申し立て開始決定取り消しまたは申し立て取り下げにより失効しましたときは、実行手続開始決定を受けた効力を生ぜしめることといたしております。  次は会社の総財産の管理に関する規定であります。  第三十条は、会社の総財産を管理し、換価する管財人につきまして、その選任方法及び管財人となることができる者を規定いたしております。  第三十一条は管財人の解任の手続に関する規定であります。  第三十二条は、実行手続の円滑をはかるために、管財人に、会社の総財産管理権限を与えるとともに、会式社の総財産一体性関係がなくまた価格の比較的明らかな商品及び有価証券売却権及び債権の直接取立権を認めることにいたしております。  次は第三十三条、管財人会社の総財産の調査を容易ならしめるため、会社取締役及び監査役会社財産に関する説明義務を課しております。その説明義務の違反の罰則については第六十二条に規定が設けられております。これは破産法第百五十三条と同趣旨規定であります。  第三十四条は、裁判所会社の総財産の状況を明らかならしめ、かつ一般の閣覧にも供しますために、管財人会社の総財産の状況を明らかにした財産明細表の作成及びその謄本の裁判所への送付義務規定いたしております。  次は第三十五条、これは、管財人の管理のための費用及び報酬に会社の金銭を充てることを認め、右の費用及び報酬の立てかえ義務を申立人に課しております。  次は第三十六条、これは、管財人に関しまして破産法所要規定を準用したものであります。破産法第百五十九条は管財人の選任を証する書面につきまして、同法第百六十条は管財人の辞任につきさましてて、同法第百六十二条は管財人会社財産に関する訴訟の当事者となることにつきまして、同法第百六十三条は管財人が数人ある場合の職務権限につきまして、同法第百六十四条は管財人注意義務損害賠償義務につきまして、同法第百六十五条は管財人臨時故障のある場合の代理人につきまして、同法第百六十六条は管財人費用の前払い及び報酬につきまして、それぞれこれらの規定管財人に準用しようとするものであります。  次は第四節、会社の総財産の換価に関する規定であります。  第三十七条は、会社の総財産換価方法規定しましたもので、民事訴訟法競売法競売手続に準ずるところの一括競売のほかに、企業担保権特殊性にかんがみ、任意売却の方法をも認めておるのが特色でございます。  第三十八条は一括競売の場合の会社の総財産及び特別担保目的財産の評価に関する規定をいたしております。  第三十九条は一括競売の場今日の最低競売価額に関する規定であります。  第四十条は一打競売の場合の競売期日及び競落期日を定める者がだれかということを規定いたしております。  第四十一条は一括競売の場合の競売期日その他所要事項の公告について規定いたしております。  第四十二条は競売期日管財人が開くこと及びその競売期日の実施に関する規定であります。  第四十三条は、競落期日裁判所が開く、それからその期日を定めるについての制限を規定いたしております。  第四十四条は一括競売の場合の競落による会社の総財産の移転の時期と会社の営業に関する免許権等の承継を規定いたしております。なお、解釈上、会社の総財産に属していても法律移転性の全くないものは競落人に移転しないことはもちろんでありますが、その移転が認められておりましても、主務官庁の許可、認可がなければ移転しないものは、あらかじめその許可、認可等を必要とすることは言うまでもないところであります。  次は第四十五条で、これは、一括競売に対しまして、任意売却の要件と、それから、管財人がこの任意売却を実施する旨を規定いたしております。  第四十六条は、任意売却の場合には、特別損保権者優先弁済を受ける限度が明らかになるように、特別担保の目的となっている財産売却価額を明確にして会社財産売却をすべきことを規定いたしております。  第四十七条は、任意売却の要件でありますところの裁判所の許可を得ないで売却がされた場合の効果を規定いたしております。  それから、第四十八条は、一括競売または任意売却により売却された記名の有価証券につきまして、競落人または買受人の保護のため、その名義書換のための権限が管財人にあることを規定いたしております。  第四十九条は、一括競売または任意売却によって売却された指名債権の移転の対抗要件としての通知を会社にかわって管財人がしなければならないことを規定いたしております。  第五十条は、会社の総財産の換価に関しまして民事訴訟法不動産強制競売についての所要規定を準用いたしております。個々の規定の準用の趣旨につきましては非常に長くなりますので省略をさせていただきます。  次は第五十一条以下でありますが、これは総財産売却代金配当に関する規定であります。  第五十一条は、配当手続裁判所が実施いたします関係上、管財人の保管しております換価代金その他の会社の金銭を裁判所に引き継ぎ、なお管理費用計算関係及び任意売却の結果を明らかにする書類を裁判所に提出すべきことを規定いたしております。  第五十二条は、配当手続が簡易迅速になされますように、実行手続費用を控除して、企業担保権者とこれに優先する債権者についてまず配当いたしまして、次いで他の債権者配当を実施することを規定いたしております。  第五十三条は特別担保権者の受けますところの配当額に関する規定であります。  第五十四条は、実行手続においてすでになされた登記または登録で必要のなくなったものの抹消、売却によって消滅した権利の登記または登録の抹消及び競落人または買受人の権利の取得の登記または登録手続及び費用について規定いたしております。  それから、第五十五条は、この配当に関しましても、民事訴訟法中の不動産に対する強制執行手続と性質上非常に似たところがございますので、不動産強制競売の場合の配当に関する所要規定を五十五条で準用することといたしております。  第六節は実行手続に関する雑則の規定でございます。  第五十六条は、企業担保権実行申し立て取り下げによって会社の総財産差し押えが消滅することを規定いたしております。  第五十七条は、任意売却の場合に第四十五条の規定によって売却してはならない財産は、そのことが明白になればすみやかに会社に返還するのが妥当でありますので、この場合の管財人から会社への引き渡し手続及び引き渡された財産の難し抑えの消滅を規定いたしております。  第五十八条は、実行手続実行申し立て取り下げまたは実行手続開始決定取り消しにより終結した場合に一般にその旨乙日を周知せしめるための公告について規定をいたしております。  第五十九条は、実行手続実行申し立て取り下げまたは実行手続開始決定取り消しによって終結しました場合及び第五十七条第二項の規定により差し押えが消滅した場合の不必要となった実行手続開始登記または登録などの抹消手続規定いたしております。  それから、第三章は罰則の規定であります。これは破産法なんかの規定と同趣旨であります。  第六十条は管財人等収賄罪及びわいろの没収または追徴についての規定であります。破産法三百八十条、会社更生法二百九十二条と同趣旨規定でございます。  第六十一条は管財人等に対する贈賄罪規定であります。破産法三百八十一条、会社更生法二百九十三条相当の規定であります。  第六十二条は会社取締役または監査役の第三十三条に規定する説明義務の逮反の罪に関する規定であります。これも破産法三百八十二条、会社更生法二百九十四条に同趣旨規定がございます。  それから、附則でございますが、第一項は、この法律施行期日を定めたものであります。  第二項は、日本開発銀行のいわゆる世銀借款、世界銀行からの借款等によります会社への貸付金については、同銀行の特殊性にかんがみまして、企業担保権によりこれを担保することができることの特例を認めたのであります。  第三項は、企業担保権者保護のため、第二項によって企業担保権を設定した会社有限会社への組織変更を制限いたしております。  第四項は、企業款保権順位の譲渡及び放棄を認めたことと関連いたしまして、社債に付せられた担保権について社責権者集会の決議によって一般にその順位の譲渡及び放棄を認め、また損保権実行について社債権者集会の決議を要しないこととするなど、担保附社債信託法所要の改正を加えたのであります。  第五項は、前項によりますところの担保附社債信託法第七十五条ノ二の規定の新設による担保権順位の譲渡及び放棄に必要な社債権社集会の決議にかえまして、同法第七十五条の担保の変更の場合と同様に主務大臣の認可によるものとして手続を簡素化しますため、銀行等の事務の簡素化に関する法律所要の改正を加えたのであります。  第六項から第八項までは、商法、破産法及び会社更生法の各関係規定所要の整理を加えたものであります。  第九項は、企業担保権に関する登記についての登録税を定めるために、登録税法に所要の改正を加える趣旨であります。  第十項から第十七項までは、漁業法、国税徴収法、地方税法、健康保険法、船員保険法、失業保険法、厚生年金保険法及び国の債権の管理等に関する法律の各関係規定所要の整理を加える趣旨であります。  以上であります。
  4. 町村金五

    町村委員長 以上で逐条説明聴取は終りました。  質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 町村金五

    町村委員長 法務行政に関し調査を進めます。  発言の通告がありますので、これを許します。神近市子君。
  6. 神近市子

    神近委員 きょうは本省関係の方々に恩赦法にからまることにつきましていろいろ御教授をいただきたい、また質問にも御回答願いたいと思うのであります。  最近、まだ御決定にもならない皇太子殿下の御成婚があるということを想定いたしまして、また同じような恩赦があるだろうということで、非常に悪質な選挙運動が行われておるといううわさをちらほら聞くのでありますけれども、あれは言論機関その他の想定だけでございましょうか。それとも、そういうような実態がいささかでも出てきているという徴候があるのでございましょうか。それをまず伺わしていただきたい。
  7. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいま御心配のようなことがあるのではないかというて新聞紙上等にも伝えられております。私どもの方でも、そういうことがあってはまことに遺憾なことであると考えまして、心配をいたしておるのでございますが、一応そういううわさは高いのでございますけれども、それは具体的の事例としてこういうことがあったというような報告にはまだ接しておりません。
  8. 神近市子

    神近委員 こういう事例があるのでないかという疑いが出てきましたのは、この前国連に加入ができましたときの恩赦がもとになっております。私は法律の方にうといものですから、こまかいことをお尋ねいたしますけれど、いろいろの罪種がある中から選挙に関する事犯だけを取り上げたということは、恩赦法の第二条、「政令で罪の種類を定めてこれを行う。」という規定によって選挙違反だけを取り上げたということになるのでしょうか。その辺のことが私にはよくわからないのでございますが……。
  9. 福原忠男

    ○福原政府委員 お尋ねのように、恩赦法第二条の政令で罪の種類を定めたものでございますが、ただし、選挙違反だけではございませんで、ほかに三種類ほどございます。
  10. 神近市子

    神近委員 三種類というのはどういう罪種であったでしょうか。
  11. 福原忠男

    ○福原政府委員 旧刑法にございます公選の違反の規定と政治資金規正法、今覚えているのはその二つでございます。
  12. 神近市子

    神近委員 今恩赦法第二条の規定によって御決定になったということを承わったのですけれど、そのとき御協議はどういうようになさるのでしょうか。たとえばどんな手続が必要でございましょうか。省内で上下ともにいろいろと案を御研究になって、持ち寄って、論議の上に御決定になるのか、あるいは、やや決定的なものを上司から持ち出して、それに賛成を求めるという形をおとりになるのか、その辺のことはどういうことになって、おりましょうか。
  13. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この前のいわゆる国連恩赦は、御承知のように、大赦令、政令をもって定めております。従って、政令でとる順序、手続を経るわけでございます。
  14. 神近市子

    神近委員 政令による手続というとどういうことをなさるのか伺っているわけです。
  15. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 法務省におきましてこれを調査研究いたしまして、法務大臣の責任におきましてこれを立案し、内閣に対して政令を制定する手続をとって参るのでございます。法務大臣がこの政令を立案するに先だちまして、その経過として職権的な機関といろいろ相談することがあるかというお尋ねでございますれば、今のところさようなことはございません。
  16. 神近市子

    神近委員 終戦後この新しい恩赦法による恩赦は何回くらい行われたでしょうか。
  17. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 はっきり記憶はいたしておりませんが、私の存じておる限りで申し上げますれば、大赦令が出たのは四回あるかと思います。これは、明治時代から通じて計算しますと、大赦令が出た頻度が非常に高いのでございます。これは第二次世界大戦後の日本の激動期に処した変態現象かと思うのでございます。過去におきましては、たしか三回か四回かしか大赦令は出ておりません。それが戦後十年間にたしか四回出ておると思います。もし度数の記憶違いでございますれば、いずれ後刻訂正いたします。
  18. 神近市子

    神近委員 終戦後頻度が多いということを考えますと、何か軽く扱われてきたような感じがいたします。特に、国連加入が実現いたしましたときの恩赦は、国民はあぜんとしたという言葉を使ってもいいのじゃないかと思うほど、政策的な恩赦だとか、あるいは罪種の選択が当を得なかったとかいう批評がかなりあったことは、きっと法務大臣も御記憶になっているだろうと思うのです。参議院で議員提案による恩赦法の一部を改正する法律案が出まして、これが継続審議になっていることは御承知だと思います。そして、これも私どもにはそのときの世論の非難の反映の一つだろうと考えられたのですけれど、こういう世間の非難は、特に法務関係におきましては反省の材料に一体なるのでしょうか。それとも、ちまたの雑音だから自分たちは自分たちの道をいく、こういうことを考えていられるのでしょうか。この民間の声の反映は、投書とかマスコミに報道されるとか、あるいは何かの請願の形をとるとか陳情の形をとるとかいうことでなければ、なかなかむずかしいのです。だけれど、あのときのことを考えてみますと、恩赦の類種が当を得なかったというような批評は相当方々で私ども聞かされて、そうしてその一つの現われが参議院立法の改正案となってきたと思われるのですが、法務大臣は、前任者のことにちょっと触れますのでそういうことを私伺おうとは思わないのですけれど、ただ、法務行政をなさる場合に、国民の声を聞こう、また参考にしようというお考えが一体あるかどうかということを承わりたい。
  19. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 国連恩赦について世上いろいろと批評のあることは十分承知いたしております。当時の責任者といたしましては、この恩赦はきわめて適当なものであるという確信のもとに行われたようでありまして、これはそれぞれの国連加入に対してどれだけの価値判断を持つかということによってきまるのじゃないかと考えておりますが。これが、終戦であるとか、日本が独立を回復したとか、あるいは平和条約が発効したとか、こういうような日本の激動期における大事件と並ぶだけの大きな事件であると、さような評価をいたしますれば、この際に大赦令が出たこともまた当然であると考えられると思うのでございまして、これは、国連加盟ということがそれだけの国際的の重要性を持つかということの価値判断がそれぞれの人によって違う結果といたしまして、いろいろの批評があるかと思いますが、これはもう過去のことでございますから、今これに対して私がかれこれ申すことは差し控えたいと思うのでございますが、これが一つの問題となったのでございますか、参議院において今恩赦法の改正案が継続審議になっております。その案の中心点は、恩赦を行う際にこれを諮問するところの諮問機関として恩赦審議会というようなものでも付置したらどうだ、こういうような案でございます。これにつきましては法務省におきましても従来だんだんと研究を重ねております。一方におきましては、恩赦を慎重にしなければならぬという観点から、あるいはこういう機関を付置してその意見を聞くのもこれは一案だろう、かようには考えておりますけれども、これはまた、一方におきましては、政府の責任においてなすべきことであって、それの功罪、責任については世上の批評を甘んじて受けるけれども、どこまでも政府の責任においてやるべき種類の事項である、——昔はいわゆる大権事項であったのでございますが、恩赦、大赦令等が出ます場合におきましては絶対秘密を要する事項でございます。もし万一事前に漏れるようなこことでもありますれば、非常な弊害をかもすと思わなければならぬのでありまして、その秘密性の保持というふうな観点も十分に考慮に入れなければなりませんということで、今参議院で継続審議中の恩赦法改正法律案につきましては、法務省において慎重に検討いたしておるところでございます。
  20. 神近市子

    神近委員 私は法律のしろうとでございますから、いろいろこまかいことを伺うのですけれども、この恩赦に関係がありますものに中央更生保護審査会がございます。この構成はどういう構成で、何人くらいで、そしてこれが扱います犯罪の種類には制限があるのでございますか。人数と、それからこれを構成される方々の身分と、それから扱われる事案に制限があるか、あらゆる罪種であるか。
  21. 福原忠男

    ○福原政府委員 中央更生保護審査会は犯罪者予防更生法で規定されている組織でございまして、委員は五人でございます。それで、この委員は法務大臣が任命するのでございますが、この任命については衆参両議院の御同意を得ることを法律上の要件としておるわけであります。現在の委員の力は、委員長は、東京控訴院長であられたと思いますが、坂野千里氏、この方は判事出身であります。それから検事出身の方が一人、弁護士の方がお二人、もちろんそのうちの一人は長く外交官の経歴を持たれる方であります。それともう一人は文化人として久保田万太郎さんが委員に入っておられます。そして、この委員会のつかさどる仕事といいますのは、おもなるものは、お話のございました個別の恩赦でございます。特赦と、それから特定の者に対する減刑、それから刑の執行の免除、それから特定の者に対する復権、これらをつかさどっておりまして、法律上、この審査会の申し出があって初めて大臣がこれについての恩赦を行うことができるような規定になっております。その申し出が個別的な恩赦を行うについての絶対的な要件ということになっております。
  22. 神近市子

    神近委員 その中央更生保護審査会の申し出は、法務大臣の認定が得られないという場合もあるのですか。それとも、この審査会の申し出は大体において法務大臣は認定なさるということなのでしょうか。それは法規的な決定でもよければ慣習となっていることでもよろしいのです。
  23. 福原忠男

    ○福原政府委員 御存じのように、恩赦は内閣の権限でございますので、最終の決定権は内閣にございますが、従来の例から申しますと、中央更生保護審査会の申し出をした事案について、これを拒否した例はありません。
  24. 神近市子

    神近委員 今、例の三鷹事件の犯罪者になっております竹内景助という人の助命運動が非常に広範に行われております。そして、与党、野党八十八人の衆参両議員が署名いたしまして、それを筆頭に、財界人、作家、詩人、画家、思想家、教育家、評論家、ほとんど私どもが存じている範囲内では一流中の一流の方が全部この署名をしていらっしゃるのです。国会関係の方では、岸総理のお名前はございませんですけれど、与党の中のずいぶん有力なメンバ一と思われている大野伴睦氏とか河野一郎氏とかのお名前が出ております。それから野党の鈴木委員長とかあるいは淺沼書記長、みな名前を連ねているのでございます。国会議員がこういう問題にタッチするということは、あるいは選挙に何か関係があるのかといえば、それは決してないのです。あべこべに、まかり間違うと、三鷹事件なんかに関与いたしますと票が逃げていく危険さえある。それを九十人に近い国会議員がこれに署名をしているということは、私はこれはちょっと異例なことだと思うのです。一人の犯人の助命嘆願について全体として五十数万の人たちが署名しておりますけれど、これは全部が全部良心的に胸をたたいた署名とは考えられないにしても、少くもこのうちの四分の一なり五分の一は、事態をよくわきまえて署名した日本の良心の一部を代表する人たちだと考えるわけであります。私がこの問題をここで委員会のお許しを得ていろいろお伺いしたというのは、この九十人もの国会議員が署名をしたものが、町かどこか駅前の小机の上で署名したものと同じように、われわれが署名しっぱなしでいいものかどうかということが疑問になりましたからであります。幸いに国会には恩赦の適否を批評する資格もあります。それから判例の批評をする権利も国会にはあるはずでございます。そういうことを考えますと、われわれがこれを署名しっぱなしで路傍の石のように見ては何だか割り切れない感じがしますので、当委員会にお願いしてこの問題をいろいろ伺ってみたい、そしてできる限りの御配慮を願うということをあえてしたわけでございますけれども、この竹内被告からは恩赦を嘆願する嘆願書が東京拘置所と中央審査会に出ているはずでございます。たしか三月二日の日付であったと思うのですけれど、これが出ているということをうわさにでもお聞きになったことは法務大臣はなかったんでしょうか。
  25. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 ただいまお尋ねの最後の点でございますが、私のところに届いております報告によりますと、日付は多少違うかもしれませんが、この竹内被告の恩赦問題につきまして、ことしの一月二十四日に、中央更生保護審査会におきまして、本人からの出願に基いて、東京拘置所長から恩赦上申が出ております。これを審査会で受理いたして、今審査をいたしております。
  26. 神近市子

    神近委員 たただいま中央審査会で審査中であるということだったら、なおさら、私どもが今日ここでいろいろお尋ねしたり、またお考えを承わるということは非常に有益であったと思うのです。これは新聞記事で拝見したのですけれど、鈴木忠五という第一審の裁判長もこの署名運動に署名しておられるそうでございます。  ここで一つ考えていただかなければならないことは、この事件は非常に古い事件で、二十四年でございますから、占領中に起った事件でございます。それは多分御記憶になっていると思いますが、あの時代はいろいろ不可思議なことがたくさん引き続いて起った時代でございます。たとえば下山事件だとかあるいは松川事件だとか、そして年代的に、今九州で問題になっております大分県の菅生事件も、その前後何か一連の関係がありそうな時代に属しているのです。それで、問題は、いつでも共産党、それから労働組合——まあこの場合は国鉄の労働組合でございますけれどもどうもその時代のことを考えてみると、何か割り切れないものがある。私はいろいろ雑学をいたしますのでいろんなものを関心を持って読んでおりますけれど、アメリカにも有名なサッコヴァンゼッチ事件だとか、この間のローゼンバーグ事件だとかいうようなものが起っておりますし、ソビエトにもゲー・ぺー・ウーの活躍の時代にはだれかがいきなり何かほうり込まれたというような事件が起っております。そういうふうに外国にも起っておりますし、日本にもこれがあり得ないということは考えられない。それから、フランスのドレフュス事件ですか、あれなんかも、死刑の人が重罪になって、五年後に無罪がはっきりした。やはり人間が人間をさばく場合にはいろいろ間違いも起り得るし、また特に占領下の事件であればいろいろ問題を含んでいたと思うのです。  それで、私、あまり過去のことを非常にこまかくお話ししたいと思いませんけれども、菅生事件と非常に似ている点があるのです。たとえば、この日の事件が起る三十分前に、三鷹本署から交番に、今夜は共産党が大事件を起すから警戒態勢を作っておけという電話がかかった。これはまあおまわりさんたちの証言がある。その晩は、八王子の支署も、それから警察も、あるいは国鉄の各部署も、全部警戒態勢を整えていた。そういうふうなことを考えると、どうも菅生事件と一味通ずるものがあって、交番爆破が今夜起るという内報があったというようなことが今論点になっておりますけれども、いろいろわからないことがあの事件にはからまっている。そして、しかも裁判が非常にスピーディに行われて、一審で鈴木裁判長の判決が無期であったのが、一回の取調べもなしに二審では死刑になる。しかも最高裁に行って、また一回の実際の取調べも面接もなしで、その書類だけによって、二審も三審も死刑になる。そこらに、私はこの日本の良知人たちがどうも何か割り切れないものを感ずる理由があると思うのです。まあ五十何万人が全部が全部一流の良識を備えた人ではないといっても、少くもそのうちの一割なり一割半なりは相当の知識と分別を持っている人たちが署名していると考えられる。この問題を、さっき申し上げましたように、これは雑音とだけ聞いておくべきなのか、あるいは全国民を代表している声と聞くべきなのか、私はこの点で法務大臣のお考えを承わってみたいと思います。
  27. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 だんだんと御意見のあるところを承りましたが、先ほど申し上げましたように、ここの竹内被告の恩赦の問題は、現に中央更生保護審査会で五人の委員が鋭意調査をいたしておるのでございまして、その間助命運動があるようなことも私も承知をいたしております。この審査会の委員の方々はもちろん承知をいたしておると思います。すべての観点から今調査をいたしておることであろうと思います。法務省といたしましては、その結論によっての申し入れがありましてから、法務省がこれに対する決定をいたすわけでございまて、それ以前には私として何も申し上げない方よかろうと考えております。
  28. 神近市子

    神近委員 御承知のように、この裁判は最高裁で七対八というようなきわどい差、非常に僅少な差で死刑が決定しております。その分は、その対立意見がすぐに公表され、いろいろの方々の批評が行われたのです。その一票を投じられたという方に対しては、国民的なふんまんが起っていた。そのことが最高裁の批評としてずいぶん悪い印象を与えた。それがまあかなり最近まで続いてきたと私は考えている者の一人ですけれど、ただいまのいろいろのお話で、中央審査会の決定が出れば、大臣はあるいは法務省としてもその決定に従う、あるいは慣例としてもそれに反対的なことはないというような御意見だったと思うのですけれど、そう承知いたしましてよろしゅうございますか。
  29. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 先ほど政府委員からお答えいたしましたのは、ただ過去の事例といたしまして、この審査会から出て参った申し出は大がいその通りに通っておるという過去のことを言うたのでございまして、法律的に申し上げますれば、この申し出を受けて、そこでその申し出の趣旨も参酌しながら法務大臣として意思決定をし、それから最後は内閣で決定するのでございまして、すべてこれに支配されるというわけではございません。法律的に申して、これは一つの申し出ということで、それを前提として、それを審査して、それから先の手続をとるわけでございます。先ほど局長から申し上げましたのは、過去においてどうであったかというお尋ねであったものですから、それに対して過去はこういうふうになっておるということを申し上げた次第でございます。
  30. 神近市子

    神近委員 これで大体私は、やっかいな問題でしたが、御意見がわかったと思いますけれども、さっきお尋ねいたしました、たとえば五十四万人とか五十五万人とか、しかも相当良識を備えた、日本の良心の最高のところにいるような人たちが全部署名している、それに対して大臣は、これはやはり雑音の一種とお聞きになるか、それとも、多少法律的に関係のないことでも、国民の一つの声として考慮するに値するとお考えになるかどうか、それを最後に一点承わっておきたいと思います。
  31. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この点は、先ほども申し上げました通り、現に今審査会においてそれぞれの委員が十分考慮して、結論を研究いたしておるところでございます。私の今この立場といたしましては、この際この問題について発言することは差し控えたいと考えております。
  32. 神近市子

    神近委員 私は、この特殊のケースでなくてもよろしいのです。政府のお一人としまして、一般論でけっこうでございますから、それを承わりたい。
  33. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 一般論と仰せになりますのはどういう意味でございますか、先ほども申し上げました通り、法務大臣といたしましては、この審査会の申し出がありまして初めて法的な手続をとり始めるのでございます。そうして、この申し出があった際に、どういうふうに処置をするかということは、法律上は法務大臣の責任において決定することでございまして、申し出に支配はされておりません。ただ、過去の実例だけは先ほど局長が申し上げた通りでございます。そうして、法務大臣が意思決定をいたしまして、それを内閣に諮って内閣で決定する、こういう順序になります。
  34. 町村金五

    町村委員長 吉田賢一君。
  35. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この際法務大臣に緊急にお尋ね申し上げ、かつ希望を申し上げたい事項があるのでございます。それは、ただいま当院の決算委員会で問題になっておりまする外国の原糖の輸入問題をめぐりまして、実は二万トンのドミニカの原糖が横浜に仮陸揚げをせられております期間に、それは三十年の十一月のことでありますが、これをめぐりまして商社あるいは外人ブローカーなどが利益を得べくずいぶんと活躍いたしました。そこで、そのうちの一人としまして、ある外商の代表者と称する中国人シュウカチン、四十六才ですか、これが活躍をいたしておりました。それが東京の北区中里町の第一東京アパートというところで三十一年の十二月三十日にガスの事故死をした、こういうことに表向きはなっておるのであります。ところが、いろいろと疑わしい事情もあって、衆議院の決算委員会におきましては、昨日並びにおととい、委員から、他殺のうわさがあるので、関係者においてもいろいろとこの点についてうわさが飛ばされている、こういうことの発言があったわけであります。そこで、法務省においては、刑事課長の御説明によって、この死体については刑訴の二百二十九条によって死体の検視がせられ、そして医師によって検案書が作成されたこと、そしてその検案書の趣旨を御朗読になったのでございます。ただし、しろうとの印象も、それからまた医師の説明によって見ましても、その検案書の中にも記載されてある事項として、口から血が出ております。普通のガスの事故死の場合に口から血が出るということはちょっと従来例がないというふうにも聞き及んでおるのでございます。及び前後の事情としまして、これもやはり委員会に現われたのですが、三千万円の金を松平守弘という人間にこの周が謝礼という意味ですか渡しているということも発言せられておるのでございます。のみならず、数百万円の金をあちらこちらで貸借するというような関係もあった人間らしいのであります。ところが、住居に所持金の残金もなければ手帳もなし、そういうことをつかむような資料も何もなくなっている、こういうような事情もあるらしいのであります。結局、身辺の人人、懇意な人々が他殺せられたのであるといううわさを流していることも無理からぬいろいろな事情があるものと判断せられるのであります。こういうわけでありますので、法務大臣に至急御要請申したいこことは、すでに国会の正規の委員会において委員から他殺の疑いありともっぱらうわさされているこの死体につきまして、これが他殺ならば申すまでもなく犯罪でありますから、こういう発言があった以上は、刑訴の捜査の端緒として適当に検察陣は捜査の行動を開始せらるべきではないか、こう考える。この際国会の論議もその点に相当集中していくはずでもありますし、また、この周が、自殺か、あるいは単なる事故死か、他殺かということは、この事件の解明に大きな影響を与えます。といいますのが、国会議員が三名ないし七名これに贈収賄の関係があるような発言さえ出るのであります。といたしますと、周の死因を明らかにしておくということば非常に重大なかぎになるものとわれわれは考えますので、このように他殺の疑いありという発言があった以上は、法務大臣として検察庁法六条並びに十四条を行使願いまして、検察と検事総長に向って適当に捜査の開始を指揮せらたいのであります。検案書もすでに法務省にはあることでありますし、ここ数日来の動きによって警視庁も新たにある程度まで材料を持っております。滝野川署はその後また捜査をしたことでありますので、こういう事態にかんがみまして、慎重にではあるけれども適切に即刻このような法務大臣としての指揮権の御発動を願って、捜査を開始するように行動せしめていただきたい、こう思うのであります。希望を交えながら御意見を伺っておきます。
  36. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この問題につきましては、昨日の衆議院の決算委員会での質疑応答のあったことも承知をいたしまして、そして、法務省といたしましては、検察当局にいろいろ問い合せて取り調べをいたしております。なお、ただいまお話のような申し出がございまして、調査をいたしておりまするから、この点につきましては、まだ新しい事実、もちろんきのうのきょうでございますから、わかりませんけれども、政府委員から補足して申し上げることにいたします。
  37. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 昨日の決算委員会において御発言の趣旨を要約いたしまして、今朝さっそく最高検の方にこの死因その他につきまして調査方をお願いをいたしておるところでございます。もちろん所轄の警察におきましても鋭意捜査をすることと思いますので、その間密接な連絡をとりまして、解明に努めたい、かように考えております。     —————————————
  38. 町村金五

    町村委員長 裁判所法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を続けます。  発育の通告がありますので、これを許します。三田村武夫君。
  39. 三田村武夫

    ○三田村委員 御承知の通り、最高裁機構改革の問題は長い懸案でありまして、当委員会においてもずいぶん久しい前から論議が出ておるのでございます。また在野法曹においてもさらに関係当局においてもそれぞれ御研究の上、昨年の二十六国会に政府提案として当委員会に付託され、会期中審議を続けてきたのでございます。当時私ちょうど委員長の職を汚しておりまして、いろいろ委員長の席から質疑応答、論議を伺っておったのでございますが、なかなか問題がすっきり割り切れて参りません。二十何人かのそれぞれの学識経験者、権威ある方々の御意見を伺いましたが、これまたどうもすっきりしたものが出てこないというような状態であったことは御承知の通りでございます。そこで、諸般の情勢を勘案いたしまして、当委員会としては、会期の末期に、もう少し十分最高裁判所の制度を運用の実際について諸外国の実情も調査しようじゃないかということになりまして、そのことが決定され、九月二十四日に当委員会の海外調査団が東京を出発し、十一月三日に帰国されたのでございます。その間、アメリカ、イギリス、フランス、西独、イタリアなどの最高裁判所機構・制度、さらに憲法裁判所の実情等詳細に調査の上、非常に貴重な資料を持って帰ったのでございます。その間、当委員会におきましても、六月には委員が三班に分れまして、北海道を除く全国各地枢要な地域で、高裁、高検、地裁、地検のそれぞれの責任者、また現地における在野法曹の方々、あるいは言論界の代表、学者というような方々の意見も伺って帰ったのでございます。それらの記録は八月八日でございましたか当委員会会議録に載っておりますから、これもごらんになっておられることと思います。要するに、継続審査となりまして、当委員会といたしましては、本国会中に何らかの結論を出さなくてはならないという段階に立ち至っておることは御承知の通りでございます。そこで、委員会におきましても、先般小委員会を設けまして、せっかくこの問題の結論を急いでおるのでございますが、その前に、私自身委員長の席からいろんな御意見を伺っておって、なお解きがたい疑問を相当残しておるのでございます。そういう点についてこの際お伺いいたしておきたい。そうして、いずれ小委員会で、得られるであろうところの結論と合せてさらに再度関係当局の御意見を伺いたいという趣旨で本日はお尋ねするのでございます。  すでに質疑も論議も十分尽されておりますので、最高裁当局におかれても、また法案提案者たる法務省におかれましても、十分その間のことは御承知のことと思います。要するに、最高裁判所というものは、国民の信頼をから得る機構・制度にどうしたら改めることができるかという一点でございます。裁判は言うまでもなく裁判所のためにあるのではなくて国民のためにあるのだ、これは憲法の大原則でございます。そういう立場からいたしますならば、われわれは改正法案の審議に当って何を一体考えるか。最も厳粛にどのような機構制度に改めることがより合理的で、より実際的であるか、より国民の権利を守る建前になるかということでございます。私たちは決して最高裁そのものに何らの悪意もまた感情も持ち合せておるものじゃないのであります。ただ、この機会に真実われわれはまじめに法案の実体を究明していきたい、そして真に裁判の権威を高からしむるような形に改めたいという点にあるのでございます。どうぞそういう点は一つ御了承の上、——これは申し上げるまでもありませんが、率直な御意見を伺いたいのでございます。  私、一応お尋ねいたしたいと思って、昨晩ちょっとまとめてみました点は、だいぶたくさん出て参りまして、五、六点あるのでございます。しかし、時間もだいぶ迫って参りましたから、要約いたしまして、また他の問題は他日に譲るとして、とりあえず二、三の問題についてお尋ねいたしておきたいと思います。  機構改革そのものに入る前に、時の問題と申しますか、前回の委員会でもちょっとこの問題について当日御出席の最高裁判所総務局長——総務局長だけでしたか、刑事局長もおられましたか、お尋ねいたしたのですが、きょうは裁判所の司法行政の最高の責任者であられる五鬼上事務総長が御出席になっておりますから、その立場からの責任のある御意見と御見解を伺いたいと思いまして、あらためてさらにもう一度この問題を取り上げてお尋ねいたします。それは、すでに御承知の、三月十日の毎日新聞に相当大きく書かれました全国司法労組のいわゆる春の闘争の問題であります。これは通称オール法務という言葉をよく使っておりますが、これが裁判所の書記官をもって構成する全司法労組、新聞によりますとその組合員一二万八千人と書かれております。問題を具体的にしぼってお尋ねいたしますが、この裁判所の書記官で構成する全司法労組、組織対象が一万八千人となっておりますが、こういう組織が実際あるのですか。その点からまずお尋ねいたしておきます。
  40. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 全員一万八千人の数があるかどうかはちょっと私の方で今すぐ確かでありませんが、書記官ばかりではなく、事務官、雇その他が組合員となって全司法労組を作っております。
  41. 三田村武夫

    ○三田村委員 その組織は、裁判所の当局、つまり、裁判行政内部の事務的な統括をおやりになる場合は裁判会議等で諸般の事務が処理されておるのが現状のようでございますが、裁判会議等において、これはオール法務でございますからひとり最高裁判所だけでなくて地方の下級裁判所——高等裁判所においても地方裁判所においても同じことだと思いますが、そういう場合一応この全司法労組というものを対象にして要求とかあるいは意見とかいうものを取り上げて話し合いをおやりになっておるのでございますか。
  42. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 全司法労組は、全国の裁判所裁判官以外の、職員の全部じゃございませんけれども、職員が加入しております。そして、年一回とか二回とかわれわれとの間にいろいろ組合の要求も聞き、また私たちも組合に対して説明をするというようなことはございます。
  43. 三田村武夫

    ○三田村委員 今、法務大臣がほかに所要があるから一つ質問を早く済ませという御希望でございますから、法務大臣の方から一、二点お答えを願いたいと思いますので、御迷惑ですが裁判所側一つお持ち願います。  今五鬼上事務総長にお尋ねをいたしました件ですが、このオール法務といいますと全司法労組ですか、こういう組織はひとり裁判所だけでなくて検察庁関係にもあるのですか。まずこれを一つお尋ねいたします。
  44. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 オール法務と同じものでありますかどうでございますか、その点ははっきりいたしませんが、法務省の中には職員組合がございます。御承知のように、労組は公務員として許されないかと思いますが、職員組合がございます。検察庁にはないように承知いたしております。もし何ならいま少し具体的に調べて申し上げますが、私の承知いたしておるところでは、法務省には職員組合がございますが、検察庁にはないように思います。
  45. 三田村武夫

    ○三田村委員 名称は職員組合でも労働組合でも、実態は、法務大臣御承知の通り、同じことなのです。いわゆる日教組と称する組合も職員組合なのです。労働組合とは申しておりません。  そこで、私は時間の関係で端折っていきますが、一つ法務大臣に申し上げ、かつ御意見を伺っておきたいと思いますのは、御承知の、裁判所にいたしましても法務省にいたしましても、いわば法律の番人なのです。法の権威と法の秩序というものを保っていかなければならぬのであります。それは、ほかの役所の公務員とは、多少どころでない、相当の職務内容に開きがあるということは申し上げるまでもなく御了解願えると思います。そのゆえに、警察官には、たとい職員組合といえども組合の組織は認められておりません。今五鬼上事務総長の御説明によりますと、その組合員を対象にしていろいろ待遇改善か何か知りませんが内部の秩序問題等について話し合いが行われておるようでございます。私は必ずしもそれ自体は悪いとは申しません。悪いとは申しませんが、世上これをオール法務と言います。そうして、この新聞に伝えられておるように、今度のこのオール法務は——これはあとで裁判所の方にお尋ねいたしますが、法務大臣もどうぞ一つお聞き願いたい。オール法務の春の闘争は総評の春季闘争の一環としてこういう運動が行われておるがごとく新聞は伝えております。これは、その内容の善悪——非常にいい意味合いの運動かもしれません、組合であるかもしれませんが、少くとも一般国民に対する印象といたしましては、あの法廷で、神聖なるとい言葉に注釈が要りますが、とにかく法の権威を保つために、一般国民の権利義務関係をきれいに正す裁判に関与しておる職員が、一たび法廷を出れば組合を組織していろんな待遇改善とか要求をやる、検察庁に職を奉じておる者が同じくそういうことをやるということは、私は非常に解し得ない気持を与えるのじゃないかと思うのです。内部的な関係で十分にそれぞれの職員の希望なり要求なりを聞き取ることは必要でありますが、しかしながら、こういう形においてこれが出てくることは、私は今日の段階においては非常に問題だと思うのであります。だから、私は繰り返し申しますが、内部的な関係においてその職員全体の意向を聞かなければならぬことはわかるのですが、組合を認めて、組合を対象にして、いろいろな折衝とか話し合いとか、待遇改善の問題を交渉か相談かなさることそれ自体がいいことか悪いことか、この点について私は大臣の御所見を伺っておきたいのであります。
  46. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 職員組合といい、労組といい、ケース・バイ・ケースで判定すべきで、全く同じものであるという御意見、いろいろの現象を見ましてまことに同感でございます。しかし、公務員といたしましての職員組合には団体活動に当って一定の法的制限がございますから、これを踏みはずすことは絶対に許されません。ことに、法の順守ということについては最も縁の近い法務関係の者についてはなおさらのことであろうと考える次第でございます。  ただ、最後にお尋ねのありました、法務省ならば法務省の責任者がそこに勤務しておる公務員の団体といろいろと交渉すると申しますか、あるいは相談すると申しますか、そういうことの可否についてでございますが、この問題は接触の方法にもよることと思います。また議題にもよることと思うのでありまして、必ずしもそういう職員組合の代表者と相談することが悪いとは言えないと思いますが、また、これが一つの労組のプロパ一の運動のようなことになりますれば、これは公務員としての範囲を逸脱するのではないか、かように考えておる次第でございます。
  47. 三田村武夫

    ○三田村委員 大臣のおっしゃる通りで、職員の人々と話し合いされることは悪いとは申し上げるのじゃない。これは必要なことです。事務を円滑にさらに能率的に遂行するためには、きわめて必要なことでありますが、これをあたかも一般の民間の労組と同じような好格で対外的に印象づけられることは、決して好ましいことじゃないと思うのでございます。これはただ法律上の制約があるとかないとかいう問題とは別なんです。ことに裁判所とか検察庁あたりにおける扱いは別なのであります。なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、これはあとから問題が出てくるのでありますが、近ごろ裁判とか検察に対する国民的信頼がともすると薄らぎつつある、こういう印象を持たれるこことは非常に困るのです。裁判所というものは御承知の通り民主政治の一本の大きな柱でありまして、これに対する信用がなくなるということは非常に重要なことなんです。そういう意味から私たちは心配するのでありまして、今大臣のおっしゃいました職員との話し合いそれ自体は決して悪いことではありません。むしろ私は進んでやっていいことだと思います。しかしながら、やり方自身がいつの間にか労働組合を対象にして交渉をやるというような格好に知らず知らず入って参りますと、こういう新聞種になる。全司法労組、世上オール法務と、言いますが、いろいろな資料によりますと、総評の一単位組織としてオール法務というものがあるのです。その中に裁判所の職員、法務省、検察庁の職員も参加して闘争というケースに入っていくならば、私は問題は別の観点から判断していかなければならぬことになるということを申し上げるわけであります。私はここで理論闘争をやるわけでもありませんし、問題の責任追及をしようというのでもありません。どうぞ一つ大臣は法務行政の責任者として頭に置いていただきたいということを申し上げたいのであります。  それから、これはあとから一緒にお尋ねするつもりであったのですが、機構改革案について、大臣は御提案になった当時の責任大臣ではありませんが、しかしながら、政府の責任は一体でありまして、どの大臣が提案しても同じことであります。そこで、原案提案者としての立場から、ちょっとあと先になりますけれども、大臣の御所見を伺っておきたいのであります。  大臣も非常に勉強される方でございますから、よく事案の性質、経過を御承知だと思いますが、先ほど申しましたように、前国会ではいろんな問題があってどうしても結論が出なかった。そこで、問題を推進させるために委員の海外派遣をやったのでございます。この点についても大臣には非常に好意ある御助言を願ったのでございますが、その結果もすでに印刷にされて法務当局にも配付されていると思いますし、当委員会会議録にも載っております。それから、先ほど申しましたように、当委員会が昨年現地調査をやった報告も会議録に載っております。これは提案者の法務省としてはつぶさにその内容をごらんになっておると思うのであります。そういう前提に立って、原案提案者たる法務省、法務大臣としては、今この問題をここで継続審議しておる段階において、事を新たにするか、原案そのままでいくか、あるいはどのような修正をするかを考える具体的な段階に立っておると思うのであります。その場合、提案者として、二十六国会以来の審議の経過、海外に調査団を派遣して持ち帰られた貴重な資料、それから、ここだけではだめだから下級裁判所の意見、現地の意見も聞こうじゃないかということでわれわれ三班に分れて現地調査をやり、持ち帰って委員会会議録に載っけた資料、それらを御検討になった上で、今ここで御所見を承わることができなければ他日の機会でもけっこうですが、今私が申しました経過の上に立って、原案提案者たる政府、法務大臣より、原案のままでよいというお考えなのか、いろいろ審議の経過にかんがみてさらに十分検討を加える必要があるというお考えなのか、私の方は御意見を承わっても、正直に申しますが、こちらは立法の府でございますから、それに拘束されるわけじゃないが、参考のためにこの一点をお伺いいたしておきます。
  48. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 最高裁の機構改革の問題は、私が申し上げますまでもなく、非常に重大な問題であります、また非常に内容の複雑な問題でございます。それで、先ごろ委員の皆様を初めといたしまして調査団が欧米を視察されて帰ってこられ、皆様の視察の御報告も十分拝聴いたしました。また法務省、最高裁からも代表者がお供をして参っております。これらの方々の意見も十分承わりまして、またそれに基いて地方の実際の経験者からの意見なども徴して、さらに検討を加えたのでございますが、今までのところでは、海外の状況を視察して大分啓発されるところはございましたけれども、ただいま継続審議としてお手元に差し上げてありますあの案を基礎として御審議を願いたい、こういう結論に達しております。かく申しましても、これはきわめて重大な問題であり、また非常に論議の多い問題でございますから、今私どもが提案をして御審議を願っておる案が最善の案であるといううぬぼれたことは申し上げません。謙譲なる心持ちで十分検討をいたしてみましたが、これ以上の案がないという意味におきまして御審議を願っておるわけでございます。だんだんと御検討の結果、私どももまた勉強をしまして、さらにあらためてベターな案ができるということでございますれば、決して初めの案に執着するわけではございません。ただ、今日までの調査の結果といたしましては、この案以上の案はないのではないか、法務省としてはかように考えるのであります。これは法務省の調査課長その他の関係者が最高裁の関係者などとも寄り寄り検討をいたしておりまして、今のところさような心持ちであります。最高裁の方の御意見は別に御聴取願います。
  49. 三田村武夫

    ○三田村委員 大臣の今のお立場ではそれ以外の御答弁はないと思います。それでけっこうでございます。  裁判所の方にお尋ねいたします。先ほど問題にいたしました全司法労組の問題ですが、あることは承知いたしました。新聞によると、「法の番人である裁判官自身が法律を無視していると、このほど春季闘争の一環として裁判官を相手に順法闘争を行なうことになった。」と書いてある。裁判所法律を守らなかったら大へんですから、順法闘争はけっこうですが、さて、その順法闘争に問題がある。前回の委員会でも私お尋ねしたのでありますが、「これは刑事、民事訴訟法裁判所の命令、決定裁判官が作成すると決められているのに、実際はこれらの書類作成(裁判書きという)は全部書記官に押しつけられる、ひどい裁判官になると私用までも書記官にやらせている」、こういうことで「去月十七、八日の中央委員会で賃上げ要求とならんで裁判書き返上、私用拒否の方針を決定、指令を発した。」、こういうことです。「これに対し最高裁当局は闘争参加者は業務命令違反で処分するとの態度を見せており、注目される。」、全く注目される事態なんです。国民が注目し世論が注目しておるこのオール法務の春の闘争、これは組合側の説明がついておる。最高裁は、強行すれば処分する、こういう意見のようでございますが、組合側の説明によると、「裁判書きについては二十三年七月当時の三淵最高裁長官命令で事務総長から決定命令など簡単なものでも裁判書原本の作成浄書は書記官をわずらわさないようにすることの通達が出ており、またその際「書記官に対する権限移譲」を調査する委員会もつくられた。ところが十年たった現在でも、裁判官は判決文を書くだけで、その他の裁判に関する事務手続書類の作成などは慣例として一切書記官が担当している実情で、裁判所によっては判事の異動などの際には下級職員が業務命令で引越し手伝いをさせられる」というのです。裁判所の職員がそんな引っ越しの手伝いを業務命令でやるなんてことは聞いたことがないのですが、好意でやる場合はありましょう。非常にこれは誤解を招くのです。私は新聞の報道が全部一言一句も誤まりのない真実だという前提のもとに立って申し上げるのではないのですが、この記事について最高裁は強行すれば処分するという意思が表明されているだけで、そういうことがあるともないとも意思表示されていない。この点について、五鬼上事務総長、一つ国民の疑惑を解くために明快な御説明が願いたいのです。このような組織のあることはさっき伺いました。このような闘争の事実があるかどうか。中央委員会決定して賃上げ要求をやってきた事実、それから業務命令返上、裁判書き返上の闘争指令を出したという事実、それから、それに対して最高裁当局、つまり裁判行政の最高をつかさどっておられる最高裁の事務総長としてどのような措置をおとりになっておるのか、お考えであるのか、という点をはっきり一つお示しを願いたいと思います。
  50. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 御指摘の新聞については、私も拝見いたしました。三田村委員のおっしゃる通り、新聞の記事必ずしもすべて真実でないことは、私ごく最近においても経験いたしております。さようなわけでございますが、しかし、新聞に出た以上は、私どもは、どこでどういうことがあったかということは十分調査する必要がありまして、私どもの調べたところによりますと、浦和の裁判所の支部、熊谷の支部においてこの事件が起こった。もう一つは盛岡の方においてもそういう事件があったということなどを承知いたしました。一体どういうことを言っておるのかということを調べてみますと、結局、調書の作成だけが書記官の仕事だ、だから、裁判書きの浄書、決定書きの浄書というものは書記官本来の職務ではない、裁判官の職務だ、こういうことを言っているらしいのです。  それで、ただいま御指摘の、昭和二十三年の通達がございますが、この二十三年の通達の当時は、非常に忙しく、言記官が戦時の異常な状態で相当過労になっている、病人が出たりしたというようなこともございました。これに対して、なるべく書記管にはやらせない、事務官とか雇い等にやらせて、書記官の仕事をなるべく省いてやるというような通達は出しております。これはどういうわけかと申しますと、当時そういういろいろなことで書記官の定員が少かった時代で、今日すでに書記官の定員はその当時から比べますと三倍程度ございます。私どもとしては、そんな裁判書きの浄書をするのが書記官の職務じゃないんだ、さようなこことは私どもは考えていないので、浦和の方から御照会がありましたときに、すぐに私の方は書記官の職務範囲について回答いたしました。ただ、実際に、新聞に書かれるようなそれほどの大きな闘争ではない。いわんや、業務命令を出して引っ越しをさすというようなことは全然ないように承知をいたしております。それから、いろいろなこまかいこと、たとえば、お茶をくむのは困るのだ、タバコを買うのは困るのだ、これは常識の問題で、それが職務権限になるかどうかということは、私として別に考えていません。大してそれほど大きな闘争ということじゃないと思います。
  51. 三田村武夫

    ○三田村委員 総長の説明でわかりましたが、法務大臣に申し上げたのと同じことなんです。裁判所も、第一線下級裁判所を含めて非常に多くの職員をお持ちになっておりますから、裁判官だけが別個の存在であって、その以外の職員はまた別個の存在であるというやり方は好ましいことではないと思っております。だから、そういう意味においても、書記官にしろ、あるいは雇員にしろ、そういう人々と一体の関係裁判所全体の雰囲気を作っていくことが必要でありますから、話し合いをされることはけっこうだと思いますし、おやりになっていると思うのですが、こういう形で、名前は職員組合だが、あたかも労働組合で、中央委員会を作って、その中央委員会決定によって闘争指令を発するというようなことは、私はちょっと国民の頭にぴんと来ないと思うのです。事裁判所に関する限り……。今まであったことを私は責めるのじゃないのです。このことのいい悪いを論外にして考えていただきたいことは、裁判所というものの信頼度を高める意味において、そして、裁判所に勤めておる人がやはり地方に行って市役所とか役場に勤めておる人よりは多少違った気持でなければならないし、その気持で職を持っておられると思うのです。そういうところに別途のお考えがあっていいんだという私の気持なんです。これは、裁判所全体の、一般の下級職員も含めた裁判所全体の国民的信頼を高からしめるために、もっと何かきれいな形においてこういうことがあっていいんじゃないかという気がするのですが、この点について事務総長はどういうお考えでありますか。
  52. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 組合の本部から指令が出たという記事もございますので、組合の本部の者を昨日招きまして話したところが、指令は出していないということをわれわれの前で申しました。また、われわれの手元にもそういう指令は見てございません。だから、そういう中央の組合の言うことは、われわれとしては現在の程度ではそれで信用していいんじゃないか、かように考えます。  それから、裁判官と職員が一体となって仕事をしなければ裁判が行われない、これはもっともなお言葉でございまして、ちょうど同じ言葉を昨日私は組合の人に話した。君たちと裁判所が離れてしまったら裁判ができない、国民はどうするんだということを懇々と話したのであります。そういうわけでありまして、三田村委員の、裁判所はかくなければならないというただいまの御発言に対しては、私、まことにけっこうな御発言と思い、将来もやはりそういう精神でやっていきたいと思っております。しかし、公務員法によるところの要するに組合というものに対してこれをどうするかというと、これは相当問題があると思いますから、私どもはよく検討いたしたいと思います。
  53. 三田村武夫

    ○三田村委員 この問題はそのくらいにいたしまして、時間の関係もありますから次に移っていきます。  冒頭に申し上げましたように、本日の委員会は、最高裁の機構改革に関する問題点を掘り下げておるのですが、機構改革という問題がやかましく論議されるに至った原因の重要な一要素として、最高裁判所の民事、刑事の事件が停滞したということがあったのであります。昭和二十六年、七年、八年ごろは七千件も八千件もたまった。ところが、最近は非常に事件は減ってきたんだということを伺うのです。先日いただいた資料によりましても減っている。それで、こんなに最高裁の事件が減ってきたなら機構改革はやらぬでもいいじゃないか、現状のままでもいいんじゃないかという意見が一部にあることは御承知だと思います。最高裁の中にもそういう御意見はあるようでございますが、私は実際の実情を伺いたいのであります。この表によりますと、昭和二十六年が七千四百七十七件、二十八年が七千三百八件、これは未済事件です。これが、三十二年になると四千百四十一件、三十三年の一月では四千百七十四件、こういうふうに減ってきております。だいぶ減ってきているので、この傾向なら非常にけっこうだと思いますが、しかし、また一面、減った減り方の実情、内容を見ると、簡単な事件はいわゆる三くだり半、玄関払いをやってしまう、上告の理由なし、上告の理由なしでずっと並べて一括して十ぱ一束、門前払いをやってしまうんだという意見があるのです。そうすれば事件は減っていってしまう。実は、私は、昨年でしたか、自分の地方の知人の事件を聞いて、判決の日に最高裁に行ったことがあるのです。そうすると、その事件の被告が十人くらい並んで、裁判官が、何々の件、何々の件とずっと十件くらい並べて、以上上告を棄却する——。全く十ぱ一束なんです。そして、私の聞いた事件は、上告趣意書が出て二カ月たっていない。何のために最高裁判所まで持っていったのか。訴訟をおくらすために、事件の結審をおくらすために延ばしていくんだというなら別ですけれども、そういうことだと最高裁の権威もなくなりますし下級裁判所の権威もなくなってしまう。そんなことなら上告させない方がいい。最高裁に持っていったけれども、三くだり半で、二月もたたないうちに、ずらっと並ばせて、以上何件上告を棄却する、これだけでは何のことだかわからぬ。こういう気持もあるので、三くだり半の門前払いじゃないかという意見がこのごろ出てきているのです。実は公判の判決言い渡し風景なるものを私も目で見たのですが、事件が減った反面、重要事件の審査は一体どうなっているのか、こういう問題が出てくる。これは最高裁ではありませんが、先般何年ぶりですか東京高裁の判決公判がありまして無罪の言い渡しを受けたわが党の長老芦田均氏の事件についても、あれは結審になってから判決公判が開かれるまで何年たったでしょうか。判決を書くのにそれほど長い時間をかける必要があるかという疑問も疑惑もある。そういう点が出てくるのでありまして、最高裁判所の事件はうんと減った、けれども実際の審理の実情はどうなっているのかということを私たち承知したいのです。こういう調子でどんどん減ってしまって、ほんとうにスピーディにしかも審理の内容が公正に適正にやられるならば、私たちは機構改革についてももう一ぺん考え直すことが必要じゃないかという気もするのです。この点、実際の内容は三くだり半の一括門前払いになっているんじゃないかという疑惑もある。一つは、今申しましたように、こんなにどんどん事件が片づくなら機構改革なんかやらぬでもいいじゃないかという意見もある。重要な事件は停滞して前と同じことだ、三年、四年、五年と最高裁に置かれたままあるのだという意見もあるのです。実際はどうなんですか。この点の実情を御説明願いたいと思います。
  54. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 未済事件が減って参りました一つの原因は、上告事件で審理事件が減ってきたというのが大きな原因だと思います。たとえば、昭和二十七年ごろ未済事件が七千件ぐらいあって、その当時の事件は年間八千件ぐらいあった。ところが、今日は、民事千件、刑事三千件、大体四千件ぐらいで、約半分に減っております。未済の方も、これは資料を提出してあるのですが、ごく最近で言いますと、未済事件がすでに三千七百件ぐらいに減っておる。そこで、今十ぱ一からげだとおっしゃるのですが、その十ば一からげについては、いろいろ解釈はあるでしょうが、上告事件の上告理由自体においても、これまた全然問題にならぬような上告理由がかなり上告事件として出てきておる。しかも、従来よく言われておった、最高裁に持っていけば二年は延びるから、何でもいいから持っていけ、こういう声が相当強かったのでありますが、最近は、二年どころではない、三ヵ月ぐらいで審理される事件が多くなってきたために、上告してもだめだ、——三田村委員のおっしゃる通り、何で持っていったか意味がわからぬ、そういうのが多くあると、自然減ってくる。同時に、重要事件はどうなっているのかというお話ですが、最近の判例集をごらんになればおわかりのように、判例集に登載される事件は二十七、八年よりずっと多くなってきております。従って、問題のある事件については相当長引いたものもありますけれども、私たちの見ておるところで申しますと、こういう事件の審理が減ってくると同時に未済が減ってきた、ことに昨年は既済の方が未済を上回ったというような状態でありまして、あとは要するに裁判官がどう考えておるかという会議のこことになりますから、この程度で御了承願いたいと思います。
  55. 三田村武夫

    ○三田村委員 総長の説明もわかりますが、これは最高裁の機構改革に関連して重大な問題なんです。事務総長のおっしゃる通り、昔は二年も最高裁でかかっておった、確定判決が二年間先へ延ばせるからというつもりで持ってきたんだ、それが今は二カ月か三カ月でどんどん上告棄却、上告棄却でやられしまうから、持っていっても意味がないのだという気持で上告事件が減った、このことはいいことだか悪いことだか私はわからぬと思う。これはもっと逆に言いますと、第一審の裁判なり第二審の裁判がもっと権威があれば訴訟関係者は、あれだけ親切に熱心に情理を尽して、ほんとうに寸分のすきもない判決を書かれたんだ、これ以上控訴しても上告しても意味ないのだというふうに、裁判に対する信頼度を高めることが私は一番大切だと思うのです。これは、最高裁判所に持っていっても、昔は二年かかったが、今は三カ月で三くだり半を食ってしまうのだ、やっても意味ないからもう上告をやめるということは、これは私は必ずしも裁判の権威を高めるゆえんではないと思う。あきらめというものは、人為的な、制度的な、機構的なその壁にぶつかってあきらめるのでなくて、民主的に自己の責任と判断においてこれに承服するという格好になりませんと、これは、幾ら弁護士が商売だといったって、ここに弁護士がおられますけれども、やはり一審、二審でりっぱな判決があれば、これは最高裁に持っていくという気持になれませんよ。持っていったって恥かきになるだけです。そうでなくて、どこかにすきがあるから最高裁に上告したのだ。ところが、さっと三くだり半を食ってしまうのなら持っていっても意味ないのだ、もうやめようというのでは、私は決して裁判の真価を高からしめるゆえんではないということをおそれるのです。これはあとから機構全体について申し上げますのでこの程度にいたしますが、これは要するに前国会でもしばしば論議の焦点となり、答申の末尾にも、附帯決議として、本案を完全に実施するためには下級審の充実が絶対に必要な条件だということがついておったんです。これはどうしても必要なんで、いろいろな法律上の論議は別といたしまして、私はこの点何かどうも足らぬような気がするのです。それで、前回の委員会でちょっと私はお尋ねしたのです。それは判事補の増員の問題でしたか何かでお尋ねしたのですが、現在判事の欠員が五十六名あるのです。判事補が十九名欠員になっておる。今度は二十名判事補を増すという案です。十九名欠員のとこころへ二十名判事補を増す。結局、この前の裁判所職員定員法の一部を改正する法律案で、判事補を二十名増すというこの法律がそのまま成立いたしましても、たちまちにして判事補が三十九名足りない。その上に判事が五十六名欠員になっておる。こういう計算になるのです。ところが、最高裁、高裁の事務で司法行政に携わっておる練達たんのうの判事が二十一名おる、判事補が二十名おる、こういうことになる。だから、やはりもう少し合理的な裁判配置といいますか、——全体の裁判というものは、最高裁だけ別にあるんじゃない。また高裁が別にあって地裁が別にあるんじゃない。ですから裁判は一つの機構なんです。司法の機構でありますから、そういう面から、もっと合理的な配置なりあるいは訴訟構造なりをお考えになっていいと思うのですが、これはどうなんでしょうかね。下級審の充実、これができませんと、やはり上告が多い。つまり乱訴です。乱訴を阻止するためには、先ほど申しましたように、下級審の充実、つまり第一審から信用のある裁判をやる。まあこういう言い方をしてはおかしいのですが、判事補から判事になったほやほやの若い判事が一人でやっても、ちょっと裁判の何のと言われてもぴんとこないのです。そういう点があるのですよ。だから、そういう点をもっとお考えになったらどうか。これはあとから私たちの方の委員会で十分練りたいと思いますが、この点についての総括した事務総長の御見解を伺っておきます。
  56. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 最高裁の機構改革の問題に関連いたしまして、一審の充実ということの御意見、まことに私どもごもっともな御意見と思っております。私どもは、率直に申しまして、実は当法務委員会に訴えたいのは、最高裁の機構だけを御改革下さっても、なかなかこの裁判の運営というものはむずかしい。やはり政府案にしても、ある程度小法廷を作ればそれだけ下級審の裁判官を使わなければならないというようなところに非常に頭を痛めておるのであります。しからば、一審の充実をどうするかということについてでありますが、これは、御承知の通り、司法試験を通って二年間修習をいたしまして、その修習をいたした者から判事補を採って、判事補が十年、それから弁護士を十年した者、検事を十年した者、大体こういうところから採るというのが裁判所法の理想であったのでありますが、そのために法務委員会においてもいろいろ御援助を願ったり、あるいは立法を願い、最近においては判事補の織権特例のついた者は高等裁判所に行かれる、そうして高等裁判所の判事を下ヘおろして、経験のある者を入れる、あるいは三人の合議体でやる、なるべく合議体を多くするというような考え方、そういう考え方で内部的には相当苦労いたして私の方ではやっておるつもりです。やはり、おっしゃる通り、判事補はおそらく今度はうまく埋まりますけれども、どういうところに判事の欠員があるかと申しますと、十年たって判事補が出ましたとき——ちょうど裁判所法ができた当時、当時はやはり司法研修所において戦争の関係でかなり人員が欠乏しておった。それがちょうど今来ているので、もう二、三年たてばそれほど現在の定員がしょっちゅう欠員になるようなことはないだろう、こういう見通しをわれわれは持っておりますけれども、ちょうど十年たって判事になるときの数が少いということは、ほんとうに遺憾なことだと思います。  なお、第一審の充実については私ども考えております。なるほど、先ほど、御指摘のあったように、訴訟構造も考える、手続も考えるということですが、これは、いかんせん、私どもだけで考えても、やはり政府の方で十分御了解をいただかぬと、なかなか法制審議会でひっかかっちゃって立法にならぬ。私どもは、理想としては、やはり現在の判事裁判がああいう人権保障の刑事裁判を取り入れてきた以上は、それに伴う簡単な事件を解決する方法というようなものについてはある程度やはり考えていかなくちゃならないが、そういうために、せめて売春事件の補導処分でも調査官くらいをつけてもいいのじゃないか、ましてこれから後の刑事裁判についてもそういうことを考えてもらってもいいのじゃないかということを、法務省の方にも私たち再三要望をいたしておるのです。事は刑事裁判の将来に関する問題でありますから、簡単にはいかぬと思いますが、さような点は、裁判所の方も研究いたしますが、政府の方にも私たちは要望しておる次第であります。
  57. 三田村武夫

    ○三田村委員 事務総長からここっちにお返しになったような言葉ですから、私もお返ししておきます。こちらは立法の府ですから、国権最高の機関としてその点は十分考慮いたします。委員会委員会の責任で考慮いたしますが、裁判所の方も、立案のとき、政府の当局である法務省となかなかうまく話がつかぬからなんという、そんななまぬるい話はだめなんで、これはやっぱり法の権威を高からしめ裁判の権威を高からしめるためにはこういうことが絶対必要だということを堂々とおっしゃることがいいと思うのです。しかし、これは今お話しの通り訴訟構造全体に関する重大な問題ですから軽率に手はつけられません。やる場合どういうことをやるかということは、裁判所の方も権威ある御検討の上、法務当局と御折衝になって——われわれは国会議員の立場から、国家の立場から十分検討いたしますが、裁判所の方も、ただここでどうもこれじゃ困るこれじゃ困るとおっしゃるだけでなくて、その点は十分より一そうの御努力、御検討を切望しておきます。  次に司法行政、裁判行政について簡単にお尋ねいたしておきますが、私はどうも少しおかしいと思うのです。今いわゆる司法行政で、裁判行政と言ってもどっちも同じことでしょうが、大体最高裁から下級審まで、裁判会議でやられているのです。このために重要な本来の裁判事務がずいぶんそがれておるような気がするのです。一体司法行政というものはああいう会議形態をとらなければいけないのかどうかということが疑問の一つです。そして、昨年現地調査をやったときもいろいろな声を聞いたのです。どこかの会議に、たとえば検察官会同に、あるいは裁判官会同に——特定のポストを招集される場合はいいのですよ。そうでない場合、裁判官会同をやる場合、今度の会同にだれを出すかということまで裁判会議にかけてきめなければならぬというんですよ。これは私はずいぶんおかしな話だと思うんです。実際ですよ。そうして、よく私は、裁判の独立という言葉の内容として、司法行政はもとより営繕管理まで、全部裁判所でやらなければいけないのだという、こういう意見を聞くのです。どうも私は納得がいかないのです。これは、御承知のように、日本と米英とは裁判制度の最初の生まれもあるいは成長の過程も違うのですが、こういう形をとらなくたって、私は司法の独立、裁判の独立は保たれるのじゃないかと思うのです。今最高裁へ行っても、児島惟謙先生の胸像がありますか。見当らない。どうしてあれがなくなってしまったんだ。日本の司法の伝統、裁判の伝統は、われわれの先輩に児島惟謙あり、あくまでも政府の干渉、一切の干渉を排して、われわれは司法の神聖、独立を守っていくのだという牢固たる権威と自信があったのです、裁判所の中に。何も司法行政から営繕関係まで自分たちでやらなければ裁判行政、司法行政が保てないという、そういうけちな考え方は、私は日本の裁判所の中にはなかったと思う。私はなぜそれを申し上げるかといえば、いろいろな雑音を聞くのですよ。たとえば、裁判所の機構改革という問題が出て、われわれが現地調査に行っても、特定の個人だれだれがこういう意見を持っておったということは言わぬでくれという。つまり、下の方の裁判官の意見がすなおにそのまま上の方に伝わらなければ、むしろかえって逆に弊害があるのだ。裁判の独立というものは、かえってそれによって侵される。裁判行政、司法行政というものは、今の形によって一本に同時に裁判所の手で握られたことによって、逆に私はその点にマイナスの面が出ているのではないかということを考える。なぜ私がそういうことを申し上げるかといえば、実は私には経験がある。かつて昭和十八年に東条内閣につかまったことがあるのですが、十八年の十二月十五日の今状で巣鴨の刑務所行き、十九年の十二月二十八日、東京地方裁判所の刑事第一部ですか、裁判長は八木田政雄氏ですが、この人はなくなりましたが、その間十何回か私は法廷に足を運んだ。それは大審院の第一号法廷です。毎日々々私は児島先生の胸像の前を通って法廷に入った。私は、最後の最終陳述で、裁判官は児島惟謙先生のこの胸像を忘れてくれるな、そう言った。その裁判官の魂の中には脈々として児島惟謙先生の司法独立の魂が流れているはずだ。われわれ東条内閣の弾圧のもとでつかまったのですが、最後に私はその言葉を吐いたことを今でも記憶しております。当の裁判長八木田判事は、陪席二人と非常に御苦労されたようです。あとからその御苦労のほども聞いたのですが、そのときに、十九年の十二月二十八日に堂々と無罪の判決を書きました。その当時の司法大臣は捜査の指揮をやりました。しかし、これとは別個に毅然たる裁判の独立と、いうものは、われわれはあくまでもあの戦争中といえども裁判に対する信頼感というものを失っていなかった。それだけの信頼感が今あるか。なぜ私がそれを申し上げるかといえば、この機械改革に当ってしばしば田中長官は、旧大審院時代に返っちゃ困るのだという言葉を吐かれる。われわれは、旧大審院時代に返ることを理想とするのじゃない。今この最高裁の機構が、その法制の系列が米英法の立場をとっておる。下級裁判所は大陸法の歩みを何十年間歩んだままだ。そこに大きな矛盾がある。これはここじゃ簡単に片づきませんが、その場合、最高裁判所ひとり米英法の系列から頭の上に乗っかっておる。頭と胴体と別々じゃ困るのだ。私は、ここは日本の裁判所ですから、それが米英法の系列であろうと大陸法の系列であろうと、真に国民が信頼するに足る裁判所ができることをこいねがってやまない。今の司法権の独立という立場から、司法行政、裁判行政についても全部これは裁判所裁判会議の形において握ってしまわなければならないというのがわからないのです。これは五鬼上事務総長の御見解を伺うというよりも、むしろ私はこれを強く申し上げたいのです。御検討を願いたいと思うのです。いろいろな雑音が入ってくるのですよ。公述人として昨年の国会で意見を聞きました。聞きましたが、ここで公式に述べられる意見と、別に個人で会って聞く意見と違うのです。どうもおかしな話なんです。いやしくも裁判官であるならば、しかも裁判の公正、その迅速を期するための機構改革であるならば、毅然たる態度を、長官が何を言おうと、裁判会議でどういう意見が出ようと、自分の所信は堂々と述べていかなければ困るのです。そういうとこころに、今の司法行政のあり方に何かもやもやした欠陥があるのじゃないかという気が私はするのです。これは大きな課題として御検討願いたいと思います。ここで今御所見を承わろうと思いません。  次に、時間がありませんから、最後に私は、これも今ここですぐ御答弁願えるかどうか問題だと思いますが、事を簡潔に、歯にきぬ着せないで申し上げれば、こういうことを言いたい。私は、最高裁判所の判決にもし憲法違反があった場合は、どこのだれがどういう形でこれを審理するか、こういう問題を一つの大きな課題として提示したいのです。それは、昨年の八月五日でしたか、五鬼上事務総長においで願って委員会でやったときに、私は例を三つ四つあげてお尋ねしたのです。そういう事実はありましたと事務総長おっしゃいましたが、昭和二十三年の最高裁の判決第一三九〇号、これは最高裁の判決、上告棄却は二十六年八月二日です。原審は懲役三年です。ところが、最高裁に行ってから二年十カ月拘禁されておる。第一審からずっと通算すると、未決勾留全部入れたために、四年八カ月事実上拘禁されたことになる。原審実刑懲役三年の判決に対して、最高裁に上告して、実際に実刑として事実上身体の自由を拘禁された間が四年八カ月とはどういうことか。明らかにこれは憲法違反です。憲法のどの条章を見てもこういうことは許されておりません。憲法違反です。同じような例がたくさんあるのです。二十五年の〇二三五五号、これは二十七年十月十六日上告棄却になっておりますが、これは原審は二年です。詐欺未遂事件で原審は二年です。これに対して、全勾留期間が二年十カ月、うち最高裁の勾留期間が二年一カ月になっておるのです。実刑二年に対して二年十カ月の拘禁したことになっておる。十カ月というものは余分に自由が拘束されておる。二十六年のあ第三三九八号、これは臓物運搬事件、原審一年です。これは二十七年の十月三十日上告棄却です。これは最高裁の勾留が一年二カ月で、実刑よりも十一カ月よけい拘禁されておる、こういうことになる。人の自由を、身体を拘禁するということは、憲法上保障された国民の基本的人権権利の上で最重大問題であります。そのことのゆえに、憲法は各条に人権の自由というものを保障しておるのです。その基本的人権を守るために、最高裁判所には違憲審査権というものが与えられておる。最高裁判所長官、田中長官が言われる通り、旧憲法は実際は不完全法だ、なぜかなれば、法律が合憲的に行われているかどうかということを審査する機関がなかった、今度は違憲審査権を最高裁判所が持つのだから、完全な法になっておるのだ、こういうことを言っておられる。これは長くなりますからやめますが、言っておるのです。憲法の番人、違憲審査権を持った最高裁判所が憲法に保障した人権を擁護するために、違憲審査、つまり個々具体の事件が憲法の条文、保障の条項に抵触しやしないかということを、最高の最も重要な審査課題として最高裁は取り扱っておられるものと私は了承しておるのです。ところが、最高裁自身の判決に重大なる憲法の侵害があったときに、これは一体どこでだれが救済をやるのですか。これは前の二十七年までのことで、これからはそういうことはありませんとおっしゃればそれまでですが、私はそうは了承いたさない。これからでもあり得ることです。こういうこことについては、最高裁判所裁判会議、で、三田村委員はこういうことを言ったと、速記録を提示して十分御検討願いたいと思います。私はその責任者を出してこいと申し上げるのじゃございません。だけれども、法の権威、裁判の権威を愛するがゆえに申し上げるのです。この事実は、私がここで申し上げるだけでなくて、ずいぶん世上の法曹学界に伝わっている。そういうことをそのままにして、最高裁判所の機構改革に関してわれわれがどのような態度をとるかということはきわめて重大でありますから、この点は一つ十分お考え願いたいと思う。この前の委員会でも申し上げた。たとえばあの世界的注視のまっただ中にあったジラード事件の判決をアメリカの連邦裁判所がやったのはたった三日間です。たしか両者の口頭弁論が行われたのは八月の八日でしょう。十一日には判決を下している。ちょうど前後して八丈島事件というものが新聞に大きく報道されました。あれはたしか昭和二十一年ごろで、そして判決の確定したのは去年ですよ。これは殺人事件で、たしか一審は無期か死刑だった。そうして最終審でこれは原審を破棄して無罪になった。最高裁判所裁判官諸君はそり身になって、どうだ無罪だといばったでしょう。しかし、私は軽べつします。無罪になるならばなぜもっと早く無罪にしてやらなかったか。被告人はまだ生きておった、からよかったですよ。最高裁の無罪の判決が下る前に死んだりすれば、彼は殺人の汚名を着たまま死刑囚として死んでいくのです。こういうことならば意味がないのです。一方、国際的に非常に大きな問題であるジラード事件のごときは、わずか三日間で判決を下した。最高裁判所で聞くと、ワン・ベンチ論、フル・ベンチ論があります。しかし、これは最高裁判所の都合のためにあるのではなくて、国民の自由を守るために、国民の公正な権利を守るためにある裁判でありますから、私は今ここで申し上げたのであります。田中長官はなかなかりっぱなことを言っておられますが、昨年の十月一日ですか、最高裁判所発足十周年記念に際して、裁判所、検察庁、弁護士会の合同協議会の席上における田中長官のあいさつはまことに堂々たるものです。私は最高の敬意を表してこの田中長官のごあいさつを拝読いたしましたが、この中にあることと、今私が申し上げたことは違うのです。最高裁判所は憲法の番人だ、そこに最高裁判所の権威があるのだとおっしゃる。ところが、最高裁判所の実際の判決を見ると、こういうことが事実あるのです。私はここでは全部申し上げませんが、三田村が三つの事例とジラード事件をあげて、さらに昨年の十月一日最高裁判所十周年記念に当って田中長官が述べられたあいさつを引いて、その内容には最高の敬意を表するが、これをどうするのだという意見を述べた、これは一つ最高裁判所お得意の裁判会議でも開いて十分御検討願いたいと言ったとお訴え願いたいと思います。これはどうせ一ぺんは最後の案をまとめるときには田中長官の御出席を願わなければなりませんから、そのときに長官の御意見を伺いますが、十分この点をお含みの上お訴え願いたいと思います。
  58. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 ただいまの三田村委員の御発言は、いろいろ大きな問題がございますが、ただ、裁判会議が全体で非常に窮屈にやっておるように考えておられるのじゃないかと思います。大体今のところは下級裁判所においては常置員というものを置いて所長と常置員で裁判会議は動いておるように思います。裁判所がそういう形をとっていることはわれわれとしては立法上の問題としては考えなければならないが、現在としてはなるべく常置員にまかしてやるというようにやっております。  もう一つ、最高裁の機構改革の問題については、これは最高裁判所裁判会議とは違う意見を申し上げることになるのですが、私たちが一番先に考えたのでは、これだけ事件がたまってきている、それで、最高裁判所は、違憲審査とか、ルールの制定とか、そういうものが憲法で定めてあるけれども、一方では司法裁判所なんだから、高等裁判所の判事を転補して、そして部を構成させて最高裁判所の判事と一緒にやったらどうかということを考えたのです。そして、今日でも、私どもとしては、裁判所の意見ではございませんけれども、事務総局あたりでは、転補して一時間に合せてやったらどうか、憲法は国民審査を受ける判事でやられるのだから、普通の事件は高等裁判所の判事を三人なり二人なり連れてきて、そして部を構成させて最高裁の判事を入れてやってもいいのじゃないか、こういうきわめて実際的の問題を考えておりますが、機構改革御審査に当りまして、かような点もあるということを申し上げて御参考に供したいと思います。
  59. 長井源

    ○長井委員 関連して……。  ただいま五鬼上事務総長からお話がありました例の裁判会議、昨年私どもは各地の裁判所を回っておりましたところが、大阪あたりの例で申しますと、何か裁判所の職員が間違ったことを犯した、ところがその監督の責任が裁判会議にあるのだというので、それがためにどこにも責任者が出てこないわけであります。それで、所長の言うのには、その会議のときに私だけ別に裁判会議から抜けられまして、私自身はまことに申しわけない、責任をとると言うのだけれども、それは所長でも全然責任がない、これは裁判会議でやるのだから所長はそういう責任を感ずる必要はないのだというような決になったということを裁判官の会同のときに聞いてきたのですが、そういう場合の直接の責任者は最高裁判所ではどう考えておいでになりますか。
  60. 五鬼上堅磐

    ○五鬼上最高裁判所説明員 なるほど司法行政は裁判会議でやるということに裁判所ではなっておりますから、理論は長井委員のおっしゃる通りだろうと思いますが、実際の運営は、職員の不正とかそういうものに対しては、やはり所長なり長官なりあるいは事務局長なりがこれに対して行政上の処分をしております。たとえば八王子の支部に事件があったときは東京の地裁の事務局長に対して減棒処分をするというようなことで行政的には扱っております。
  61. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 これまで資料が出ているのだと思いますけれども、ちょっと手元にないものですからお願いしておきたいのですが、これは法務省と裁判所側——と申しますのは、検事の仕事、裁判官の仕事というのはほかの行政事務などとは異なった非常な特殊性がありますし、それから、われわれ常識的に考えても、仕事の負担が非常に重い面があるのじゃないか。そこで、仕事の渋滞ということもあまり仕事が多過ぎれば当然起ることでありますし、それからまた、忙し過ぎると間違いを犯す場合もある。ところが、検察事務とか裁判事務というものに少しの間違いがあると、これは国民としても大へんなものですから、これは非常に大騒ぎいたしますし、その方面の権威を失墜しますし、いわば司法関係の仕事というのは国政の一つの背骨のような役割を持っておりますから、そこをしっかりさせるために、やはり機構の問題もあわせ考えなければなりませんが、私は、人員、特に仕事の負担量というものを十分承わりたい。今まで調査されておると思いますから、検事と裁判官との事務負担に関するいろいろの資料を少し詳細に、またできればほかの官庁との比較もやって一つ提出していただきたい。これは、こういう問題はただ予算編成期に当って大騒ぎする問題ではなくして、平素から十分考えておかなければならぬ問題だと思いますが、その提出を一つお願いいたしておきます。
  62. 町村金五

    町村委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時十一分散会