○猪俣
委員 関連して……。
最高裁判所の、
調査官の御
意見ももっともだと思うのでありますが、ただ、私が多少不可解に存じますことは、これは
社会党が数年前
売春等処罰法を出しました際には、
売春婦を処罰するような
規定でありました。今回は単純
売春は処罰しないのでありますが、そのときから問題になっておった。こういう
売春行為を処罰するという文化革命と称せられるような重大な
法律の
審判は慎重にやらなければならぬから、これはもうすでに
少年法その他において経験を積んでおる
家庭裁判所が
裁判をやることが穏当じゃなかろうか、——普通の自然犯と違うのです。いろいろの
社会環境やらその精神
状態やらが影響いたしまして、かような
売春行為をやる者が出てくるわけなんであるから、ただ単純な自然犯として普通の
刑事訴訟法に従って処罰するということでなしに、これはやはり
家庭裁荊所で、
少年その他を取り扱うと同じような気持で、十分すべての
環境を科学的に
調査するために
調査官を活用した方がいいし、あるいはいろいろその他
家庭裁判所の長所を発揮して、やむを得ず処罰する者はするという態度をとった方がよかろうじゃないかということを、私は政府
委員に、ことに当時の
最高裁の
家庭局長、今その方は神戸の
家庭裁判所の所長になっておるかと思うのだが、その人に数回同じ
質問をしたのであります。ところが、当時の
最高裁の人のその答弁は七里けっぱいの答弁でありました。今の
家庭裁判所でも
事件が飽和
状態であるのに、
売春婦なんという者が出入りしたのでは大へんであるから、それはごめんこうむりたい。私は再々言うたのに対して、そういう態度をとっておられた。ところが、それであるからあなた方にお聞きしたいのは、あなた方の
考えることはもっともだと思いますけれども、今この補導院法なんかでもとにかくそう長い間
審議できないのだ。結論をもうしばらくの間に出さなければならぬと思うのですが、そこへきて突如としてこういう提案をなさる。これは、先ほど
議論がありましたように、弾劾
制度をとっておりまする
刑事訴訟法上は非常に画期的な提案であるわけです。それだけ、十二分なる、
刑事訴訟法の
根本と調和するように想を練らなければならぬ。
補導処分そのものが画期的なやり方でありますから、いろいろ疑惑が出てくるし
議論はありましょうが、とにもかくにも、今の政府の提案は
刑事訴訟法とマッチした提案はしてあるわけなんです。そこで、これをある
程度変革するような提案が
最高裁からの提案でありますが、それならば、なぜもう少し事前に十二分なる
最高裁の
意思というものを当
委員会にあるいは政府
機関にお打ち合せしなかったのだろうか。今、あなた、ここへきてこういうふうに
刑事訴訟法の
根本態度を変えるような案をいとも無ぞうさに——法文の一カ所をちょっと変えてやるということは無ぞうさ過ぎると思うのです。その精神はほんとうに私も賛成だから、場合によっては附帯決議をしてもいいと
考えますけれども、これは少し唐突過ぎはせぬか、こう私は
考えます。
最高裁判所がさような態度になってこられた理由、及びこれについて政府
機関と何らかの協議をなさったのであるか。同じ政府の
機関が公開の席上で
議論を戦わせようというのはいかぬという
議論をする人もあるかもしれませんけれども、私はそれは当らぬと思う。三権分立の今日、政府
機関といってもそれは行政
機関についてのことであります。
最高裁判所は、独自の予算をとり、独自の見解を持つことは当然であります。何らはばかることはない。何も政府の方針に盲従することはさらにない。しかし、ただ、あなた方の提案が唐突過ぎる。やはり同じ
国家機関である以上は、
国家機関内部で交渉があることが常識だと思う。そこで、私は、これは法務大臣と
江里口刑事局長にお尋ねいたしますが、
最高裁判所が、前に
売春等処罰法の
審議の際に、
委員側から提案したにかわらず、まるで一顧の価値なきやの答弁をしておったものが、今突如として
調査官を介入させるというような
考えに変られた理由、及びそういうことの経過について法務省側と緊密なる連絡のもとに相談をなされたかどうか、この二点をお伺いいたします。これは両者からお伺いいたしますが、江里口さんから先に御答弁を願って、相談があったかないかについて法務大臣の御答弁を願いたい。