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1958-02-07 第28回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月七日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 町村 金五君    理事 高橋 禎一君 理事 長井  源君    理事 林   博君 理事 福井 盛太君    理事 横井 太郎君 理事 猪俣 浩三君       犬養  健君    小島 徹三君       小林かなえ君    椎名  隆君       徳安 實藏君    三田村武夫君       横川 重次君    吉田 賢一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 唐澤 俊樹君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  亀岡 康夫君         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁刑事         部長)     中川 董治君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君  委員外出席者         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 二月六日  更生保護事業拡充強化に関する請願池田清志紹介)(第六五五号)  糸魚川区検察庁舎改築に関する請願猪俣浩三紹介)(第六五六号)  富山地方法務局礪中出張所設置に関する請願(  松村謙三君外二名紹介)(第六五七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 町村金五

    町村委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますから、順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 十一時から地方行政委員会があるので、警察関係はそちらへいらっしゃるかと思いますから、先に質問したいと思いましたが、いらっしゃらないから、法務当局及び法制局に対して質問いたしまして、そこで、警察関係が来て、もし急ぐようであったらば、警察関係に移りたいと思います。  これは、私はとうに質問書を出しておきましたが、第一点は皇太子結婚式恩赦との関係であります。これにつきまして、法務大臣及び法制局長官の御答弁をいただきたいのですが、私の質問の正趣旨は、皇太子結婚式というものは、法規上に基いた国事というものであるか、あるいは皇室私事であるかという問題であります。実は、皇太子成年式に際しまして、私はやはり皇太子成年式というものは国事であるが皇室の内部のことであるかを質問いたしましたが、当時の法務大臣からは明確な御答弁はいただかなかったと思うのであります。ただ、皇太子成年につきましては、皇室典範に十八才をもって成年とするという規定があります。とにかくそういう多少の規定があるのでありますが、しかし、皇太子結婚式というものは、憲法にも皇室典範にも、何にも載っておりません。そこで、これが一体国事としてやるべきものであるがどうか。昔の、朕は国家なりという皇室中心主義時代におきましては、これは当然皇室私事国家の行事とが混淆いたしておりました。しかし、主権在民のこの憲法になりましてからは、昔の恩赦の観念ではいけないと思うのであります。公私の区別をはっきりしてもらわなければならぬ。憲法及び法律上何らの根拠もないその結婚式なるものによって、国の刑罰請求権を消滅せしめる恩赦を発動するというようなことは、これは私は民主主義主権在民思想と全く背離した昔の憲法時代思想じゃなかろうか。場合によりますれば、憲法根本精神である主権在民思想に背反する行動になるのじゃなかろうか。申すまでもなく、刑罰権刑罰請求権というものは国家存立の大権であります。こういう権限を消滅せしめるなんということは、重大なことでなければなりません。そこで私はこの質問をするのでありますが、一体、皇太子結婚式というようなものは、国事と見られるのであるか、皇室私事と見られるのであるか、それに対してお答え願いたいと思います。
  4. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 皇太子の御成婚皇室私事であるか国事であるかというお尋ねでございました。この点は学者などの間にもいろいろと考え方があるようでございまして、これに対する法律的の御解釈は、いずれ法制局長官見えましょうから、法制局長官からお答えいたした方が適当かと考えております。いろいろの考え方と申しますのは、皇室私事といい得る解釈もございますし、また、この御成婚に際して国の国事としていろいろの儀式をやってもやり得る、こういうような見解も立つようでございますが、これはすべて法制局長官の方からお答えを願った方がよかろうと思うのでございます。  それから、後段の、御成婚の際に、これが国家国事であるというような見解をとりますれば、自然そこに恩赦の問題が起きる、こういうような関係がございますが、純法律的に申しますと、これが皇室私事でありましても、また国事でございましても、理論的にはこの際に恩赦をするかしないかということとは直結はいたさないようでございますけれども、しかし、実際問題といたしましては、やはりそこに相当の密接な関係ができてきはせぬがというふうに存ぜられます。従いまして、これが私事であるか国事であるかということの解釈は、お尋ね通り非常に重大な問題でございます。  なお、この御成婚が遠からず行われるだろうというような見越し、それからその際には相当広い恩赦があるだろうというような見越しをもって選挙違反その他の犯罪が行われる、これを憂えている向きもあるのでございまして、法務当局といたしましては、この恩赦があるだろう、それを見越して、許されるだろうというようなことで選挙違反が手放しに行われるというようなことは、厳重に戒めなければならぬと考えておりまして、さような場合には断固たる処置をとっていきたいと、かように考えております。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の御説明はあまりはっきりいたさぬのでありますが、私は、皇太子の御結婚が皇室私事ということになるならば、国家刑罰権を消滅せしめるような恩赦というようなこととは全く関係のないことでなければ、公私混淆し、昔の誤まれる皇室中心主義の、これは反動的な行政ということになるんじゃなかろうか。私ども皇太子の御結婚式には心からお祝を申し上げる。ほんとうにうれしいと思います。それは決して人と変りませんけれども、法の精神憲法精神国家刑罰権、こういう国家存立に関しまする重大問題につきましては、いやしくも私の感情を交えてはいかぬ。全く冷静峻厳なる法規解釈から出発しなければ事を誤まります。長い堤もアリの一穴がら崩れるごとく、がような私のことと公けのことを混淆することから主権在民思想が崩れて参ります。その意味におきましても、これは法務大臣におきましては重大な問題として万遺漏なく御研究願いたい。本日の御答弁ではまだはっきりいたしません。  それから、さような意味において、国連加盟に際しまして恩赦を行われましたが、これは私ども賛成いたしました。日本国連加盟というような、国をあげての大問題、これは日本が新しい国際関係に入りまする重大な事案でありまして、これを国民全部が祝うということは当然のことであり、恩赦はしかるべき処置であったと私は思うのであります。しかし、今回の皇太子の御結婚式というものはこれとは全く違うのでありまして、ここを誤まらぬようにお願いしたいと思いまするが、いわんや、選挙に際しまして、選挙が四月であるか九月であるかわかりませんけれども、もうこれを当て込んで事前運動をやっておる者があるやに聞いております。現に私が経験いたしたことでも、選挙違反によって懲役二年半に処せられましたる当選者恩赦によって無罪放免に相なりました。こういうことが選挙民の眼前に展開されております。また皇太子の御結婚式はこれは国事であって恩赦可能だというようなことに相なりますると、これはどえらいことに私はなると思う。その意味からも、一体これは皇室私事であるか国事であるか、恩赦をしてしかるべき事案であるかどうかということについて厳重なる御研究を願いたい。恩赦が当然であるがごとき議論があるようでありまするが、これは私は違うと思う。主権在民の今日においては憲法精神に違反していると私は考えるのであります。そこで、この法的解釈につきまして法制局の御見解を承わりたいと思います。
  6. 亀岡康夫

    亀岡政府委員 お答え申し上げます。お尋ねの問題でありますが、非常に重要な問題でありますし、かつむずかしい問題であると存じておる次第でありまして、よく部内において協議いたしますと同時に、ただいま法制局長官が出席いたしておりませんので、長官とも十分協議いたしまして、あらためてお答え申し上たいと存じます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは内閣としても一つ明快なる結論を出して当法務委員会に御答弁願いたいと思います。私、きょう早急にこういう重大問題を結論出せと申しません。私どももまた研究の足らざるところがあるかもしれませんのでよく研さんいたしますが、政府はその責任においてこの点を明確にしていただきたい。一歩誤まりますと大へんな、憲法思想を乱すことに相なりますから、十分なる御留意をいただきたい。  そこで、ここに警察関係の方がお見えになっておりまするので、簡単にちょっとお尋ねいたします。  それは新潟東頸城郡松之山村に起きました警察官殺人事件についてであります。これは東頸城郡松之山東川という部落に起りました。私もここにいたことがあるのであります。その部落駐在の二十二才になる巡査が、六連発のピストルに五発の実弾を持って行って、全部それを有効に使用いたしまして、四人を撃って、三人は即死、一人は生命危篤重傷でいまだに意識がはっきりしない、その最後の一発でおのれを撃って死んでしもうたという、おそらく警察始まって以来の悲惨事ではないかと考えます。そこで、この原因がどこにあるか、もし本庁に報告がありましたら、かような凶行を演じました原因について御説明いただきたい。
  8. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま猪俣委員から御発言がありました、新潟県下における警察官による不祥事案につきましては、まことに申し訳ないところであります。衷心よりおわびを申し上げる次第区でございます。  事案内容は、ただいまお話もありましたように、去る一月二十日の夜、新潟東頸城郡松之山東川駐在武田巡査によって引き起された事案でございます。当日は、新潟地方におきましてはいわゆる二十日正月といわれる日でございます。武田駐在巡査は、当日午後、年賀のあいさつを兼ねて、部落有力者である区長あるいは消防団長うち等を尋ねまして、そこで正月であるゆえをもちまして若干酒をいただいたようでございます。その帰途、駐在へ帰る途中、事故の起りました高橋輝寿氏のうちに立ち寄りまして、高橋さんのうちで、友人、親戚の者等正月でもございますので炉ばたで酒盛りがなされておったのでございますが、その中に合流いたしまして一緒に酒をいただきながら話をしておった。その話の内容等が、ただいまお話もありましたように、現場におりました四名のうち三名が即死され、一名が重傷であります関係上、唯一の当時の事情現場において知っておるはずの重傷者の方からまだ十分に事情をお聞き取りすることができない関係上、今日ただいま正確にこうであるという決定的なことは申し上げかねる段階にあるのははなはだ遺憾でございますが、今まで私どもが第一線からその重傷者である小野塚馨氏、またその同家の家族方々でその現場にはい合せなかったけれども隣室その他におりまして何がしか当時の状況を察知し得た方々お話等を総合いたしまするに、武田巡査に対して他の方々いろいろ話をされておるうちに、武田巡査がかなり非難されたと申しますか、感情を刺激するような言辞があったのではないかと察せられるのでございます。そのために、武田巡査が興奮の余り、一たんそこを出まして、駐在所に帰ってから、制服拳銃携帯の上再び出向きまして事故を引き起したということに相なっておるのでございますが、原因はともあれ、およそ国民生命、身体、財産の保護任ずる警察官ともあろう者が、拳銃を本来の正当な使用目的以外に使用いたしまして、三名の即死者、また一名の重傷者を出すというような結果になりましたことは、何と申しましても弁解の余地のないことでございます。こうした事態を引き起しましたことは、ひとり新潟警察のみならず、全国警察といたしまして十分反省をいたしまして、こうした事故絶無を期するように配慮して参らなければならぬ、かように考えておる次第であります。  それにつきまして、この際、私どもといたしましては、本事案の起りました経過その他を十分に究明して反省の材料とすると同時に、武田巡査は、拝命後四年数カ月を経た、経験年数から言うとまだ十分ではないのみならず、年令も若年でございまして、独身者でございます。こういった者を駐在所勤務につけることの適否というような点についても十分に検討を加えなければならぬと思っておるのでございます。従いまして、こうした若い経験の浅い独身警察官駐在所勤務にしたこと、またそれに対する平素の指導監督がどうであったかというような点につきましても十分に究明をいたしまして、指導監督の任にある者の責任の追及というようなものを十分考えたいと思います。とりあえず急ぎますことは、遺家族に対する弔慰、お見舞、こういうことであろうということから、新潟本部長といたしましては、まずその点につきまして最善を尽して今日に至っておるというふうに聞いておるのでございます。報告によりますと、二月四日に新潟中野本部長はみずから遺家族のうちにお見舞に出向きまして、そのときに県知事を代理して県の秘書課長が同道されまして見舞金を贈呈いたしたというふうに聞いているのでございます。なお、新潟警察官のすべてが、こうした不祥事を起したことに対して深く遺憾の意を表し、反省もし、また遺家族に対しましても俸給の百分の一ずつを直ちに醵出いたしまして、気持ばかりでございますがお見舞として差し上げているというふうなことになっているのでございます。  私ども、中央におきましても、こうした不祥事を引き起しましたことに対しまして深く責任を感じておりますと同時に、先ほど申します通り、こうした事故絶無を期しまして、あらゆる角度から今回の事案のよって来たる原因を十分に検討いたしまして、今後の指導教養はもちろんのこと、駐在勤務人的配置の問題、あるいは拳銃使用取扱いについてもさらに一そう訓練を徹底する、さらにさかのぼって根本的に警察官の職責の自覚、根本的心がまえというような点につきまして、さらに一そうの指導教養を加えまして、こうした不祥事件を再び起すことの絶対にないように十分戒心して参りたい、かように思っております。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 本件の惨事に当りましては警察相当反省をなさっておるようでございますが、幾多の問題が横たわっておると思います。最も重点は、駐在所というもののあり方、それから、この新潟東頸城郡松之山東川というのは陸の孤島のようなものでありまして、雪が降りますと、ほとんど半年以上というものは他との連絡が絶つような全くの山間僻地であります。かようなところの駐在員というものはどういう者でなければならぬが、またこういうところにピストルを持たせる必要があるかどうか。都会警察官ピストルを、持たせると同じようなことで、何十年凶悪犯罪など起ったこともないような、こういう陸の孤島みたいなところの駐在にまでピストルをみな持たせる、そういう画一主義に対して何らかの反省がここになければならぬというふうに考える。なお、この根底には、警察官のうち頭のいい腕のいい者は何としても都会地の本署に残りたがって駐在所に行かないということがある。しかし、ほんとう民主主義の今日におきましては、駐在巡査こそが全くいろいろな意味においての重要なポイントでありまして、ここにいかなる人物配置すべきかということにつきましても、将来警察全体の問題として御研究願わなければならぬ。  なおこの点につきましては大臣もお見えになるそうでありますから後日に譲りまして、幸い法務大臣法制局からもお見えになっておりますので、一点法律的なことをお尋ねいたしたいのですが、県の本部長は、この武田巡査行動勤務時間外であって、そうして殺人なんということをやったのであるから公務執行じゃないのだ、ゆえに国家賠償法第一条の適用はないのだということを県会答弁しているようであります。私の見解はこれと違う。私の見解と申しますけれども、これは最高裁判所判例が出ておりまして、この県の見解は全く判例と違背しております。最高裁判所判例を見ますと、これは一審、二審、三審とも同じ判決になっておりますが、この事案は、警察官制服制帽勤務時間外に自分担当区域を出て強盗をやって、その持ったピストルでぶち殺したという事件であります。これに対しまして、国家は、これは国家賠償法に当らぬと称しまして、この被害者から国家賠償法第一条に基く訴訟を提起したに対しまして、これは公務じゃないのだ、強盗なんという、殺人なんという公務はありはしないというようなこと、及びこれは勤務時間外だったというようなこと、あるいはこの巡査管轄区域外だというようなことがら、公務じゃないと称して控訴をやっておりましたが、最高裁判所におきましては、これに対しまして、昭和二十九年第七百七十四号で、第二小法廷の判決として、国家公務じゃないという議論を棄却いたしまして、公務だという判決を下しました。そこで私は法務大臣並びに法制局に伺いたいのですが、本件武田巡査制服制帽であります。ことにそれは、一たん和服で酒を飲んでおったのであるが、駐在所へわざわざ行って、そこで制服制帽に着かえ、ピストルを携帯してこの現場に乗り込んで行った。これは管轄区域であります。ことに駐在においては勤務時間なんというものは私はないものだと思う。そうしてみればこの最高裁判所判決以上に公務執行中だという嫌疑が濃厚なわけであります。そこで私はお尋ねしますが、かように巡査制服制帽で、そうして自分の持っている官給品であるピストルでもって他を射殺するといったような場合、被害者国家賠償法第一条の救済を受けるものであるかどうか、これについてのお答えをいただきたいと思います。
  10. 竹内壽平

    竹内政府委員 お答え申し上げます。御案内の通り国家賠償法第一条の規定で、直接ただいまの行為が公務上その職務を行うについて故意または過失によって生じたものであるかどうかということの判定の問題になるわけでございますが、ただいまお示しの判例等寸趣旨もございまして、私どもとしましては、もう少し研究をさせていただきまして正確を期したい、かように考えております。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 この被害者たちはみな一家をささえておるところの主人公でございまして、またその生活は非常に貧農であります。その柱石といわれる人たちがぶち殺されてしまいまして、全く惨たんたる状況であります。県はさっそくお見舞をしていただいたようで、これは遺族にかわって感謝をいたしますけれども、この最高裁判所判例地方自治体警察の当時すらかように出ておる。いわんや今日は国家警察に相なっておる。私は、あまり研究余地はないのではなかろうか。この判決を見ますると、明白に、制服制帽でもって行った以上はこれは公務だというふうに断定を下し、その当時の、管轄区域外だの、時間外だの、殺人なんという公務はないのだという答弁は一切退けて、明確な判決を下しておる。かようなことは新聞にもずっと前から伝えられておることでありますから、法務省におかれましても相当御準備していただかなければいかなかったのではなかろうか。さっそく遺族に対して国家賠償法で賠償するということの態度を明らかにしていただきませんと、今村は騒然たるものであります。御研究になるというけれども、しかし判決に違反したような解釈はできないと思いますが、御研究になるというならばそれはやむを得ません。法制局はどう考えておられますか。
  12. 亀岡康夫

    亀岡政府委員 お答え申し上げます。お話しの点でございますが、確かに最高裁判所判決国家賠償法第一条第一項についての解釈について出ておるのでありますが、何分事実問題については非常にいろいろな込み入った問題もあるかと存じますので、十分検討すべきだと考えておる次第であります。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の質問に対してはみな御答弁いただけないで仕方がありませんが、やむを得ないと存じますが、至急政府態度を明らかにしていただきたい。かようなことは将来絶無だと思いますけれども、純朴な村民は割り切れない状態で、私どものところへ続々と上京して陳情に来ております。しかし、これは、私は、ただ単独にさようなことを言って法務省に参りましてもいかがかと存じまして、公けのこの法務委員会質問をしておるのであります。どうか至急結論を出されまして、族の救済に遺憾ないようお願いいたしたいと存じます。  それから、なおさっき話を進めたのですが、警察方々に御意見を承わりたいことは、この武田という巡査は二十二の独身の人でありまして、新潟県中頸城郡吉川町というところの元農林学校であったのが今高等学校になった農林中心高等学校卒業者であって相当の秀才であります。この人物警察官になるとほとんど間もなくこの陸の孤島みたいなところに派遣せられた。私は原因が非常につかみにくいことはある程度もっともじゃないかと思うことがある。四人をぶち殺して自分が死ぬというような理由があろうとは思えません。ことに彼がピストルを携帯して行ったうちとは非常に懇意で、お互いに酒を飲みかわしておった仲であります。そういうような者をぶち殺すというようなことは異常であります。これは私は普通では動機はなかなかつかめないのではなかろうか。この巡査はノイローゼになっておったのではなかろうか。私も実はそこにいたことがあります。泊ったこともありますのでわかるのですが、あんなところ、映画館があるじゃなし、飲み屋があるじゃなし、全くの寒村寒村であります。こんなとこにろ二十二のおまわりさんがおったとするならば、一体どういうことになろうか。雪が降りますと半年は外へ出てこれません。そういうところにどうしてこんな二十二の巡査などを配置したのであるか。駐在所というものをどういうふうに御理解になっているか、それを承わりたいと思うのです。駐在所というものは村のだんなでありまして、すべての人事相談から村の行政まで相談を受け、あるいは嫁やむこの媒酌の話までするような、全くの村の中心をなしているものであります。それがまた非常に大切である。されば駐在員を選ぶには、そういう、実際彼らの働きがどこにあるかということから選ばなければならぬと思いますが、二十二の独身巡査をそういうところに派遣するというところに、駐在所社会的位置というものに対して警察は御認識がないのじゃなかろうか。どういうふうにお考えになっているか、承わりたいと思います。
  14. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 全くお説の通りでございまして、私ども駐在所勤務の性格から見まして、およそ駐在巡査相当経験年数を経た老練な者であり、また家族持ちであることが必須条件である、かように考えまして、全国の各都道府県とも駐在巡査の人選に当ってはそういった点を十分考慮に入れて適材適所の配置をするように基本方針を定めておるのでございます。こうした基本方針新潟警察本部長におきましても十分認識をいたしまして、たしか一昨年であったと思いますが、本部長は通達を各署に対して出しまして、もし駐在巡査で今申し上げましたような基本方針に反するような者があるならばこの際配置がえをするようにという注意を喚起いたしておるのでございます。その一昨年本部長が通達を出しました当時、新潟県下には十一の駐在所独身巡査配置されておったのでございます。そこで、さっそく各署長とも配置がえに工夫をこらしまして、事故の起りました当時には五カ所まだ独身駐在巡査が残っておったのでございますが、そのうち三つはいわば臨時の駐在所と申しますか、電源開発等の関係で季節的に一時派遣をしておったのであって、当時は工事の関係等により一応引き揚げておったのでありまして、現実に独身駐在巡査勤務しておりましたのは、今回不祥事故を起しました武田巡査と、いま一人独身駐在巡査があったのでございますが、それは幸いにも姉さんが同居しておるということで、全くの独身巡査よりもいくらか条件がいいということを伺っておるのであります。いずれにいたしましても、先ほど来申し上げます通り駐在勤務の特殊性から考えまして、独身者はもとより、妻帯者でありましても、家庭の事情によって家族と別居して単身赴任するといったようなことは極力排すべきものでございまして、そうしたことのないようにかねがね指導いたしておるのでございますが、将来さらにその方針を徹底させて、駐在勤務の特殊性にかんがみまして適材を配置する、こういうふうにいたして参りたいと考えております。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおこの際お聞きいたしますことは、先ほども申しましたけれどもピストルの携帯でありますが、彼はピストルを持っておらなければこんな惨事は起らなかった。一体ばかと夕立は松之山から出るというような寒村であります。東川というのはそのまた奥なのであります。おそらくほとんど密猟くらいのことは百姓がひまのときにやることがあるか、あるいはどぶろくでも作るようなことがあるかも存じませんが、何にも凶悪犯罪など起ったことのない村であります。こんな村のささやかな駐在所にまでピストルを携帯させる必要が一体あるのかないのか。一体ピストルの携帯というものを全国画一的にやることがいいことだか悪いことだが、そういうことに対して何かお考えになっておりませんかどうか、それを承わりたい。
  16. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 警察官勤務に服するときは拳銃を常時携帯するということが一応の原則になっておるのでございますが、しかしながら、勤務の形態によりましては、拳銃を持つことがかえって不便である、あるいは事故を起すもとになるというような場合には、これを例外として携帯しなくてもよろしいということにいたしておるのでございます。たとえば警察署において内勤をする者、これは勤務中でございますけれども拳銃を携帯する必要はないというので、これははずしてよろしい。特に留置場の看守等に当る者は、拳銃をつけていることはかえって事故を起すもとにもなるということで、これは携帯させない。また私服の警察官——犯罪捜査等に当る場合は、危険性のある相手方に向って捜査に行くというような場合は別といたしまして、原則といたしまして拳銃を携帯する必要がないというふうに、いろいろの場合を取り上げまして拳銃の常時携帯に対する例外を認めておるのでございます。そういう見地からいたしまして、ただいませっかくの御意見がありましたので、私ども山間僻地等、平和な村で何ら拳銃を常時携帯する必要のないという場合につきましては十分に研究をしていきたい、かように考えます。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 松之山事件につきましてはこの程度にとどめまして、次に、きょうは警視総監がお見えになっておりませんけれども石井さんから御答弁いただきたいことは、丸の内警察署における同房者の殺人事件でございます。これは実は殺された男の父親が私のところへ訴えて参りました。どうも自分の息子は警察署の留置場で殺されたと思うのであるが、いかに警視庁へ行っても人権擁護局へ行ってもはっきり取り上げてくれない、こう言うて参りました。そこで、私は、これは検察庁へ直接告訴しなさい。被害者の父の名前で検察庁へ告訴状が行っておる。検察庁の捜査によりましてこの殺人犯人が現われまして今起訴されておるはずであります。  そこで私はお尋ねいたしたいことは、第一は、この事案を聞きますと、この殺された二十七になる人物は酒に酔っぱらっておって、そうして有楽町駅のはしご段の下のガラス戸か何かけってそれをこわしたということで丸の内警察署に引っ張られて、酔っておるものだから大きな声を出して警察署にはいっていって、四房という房に入れられたのでありますが、それでも何かがなり立てておったらしい。そうすると、六房の中にいた留置人が、うるさい野郎だ、おれのところへ連れてこい、おれが静かにしてやらあと言った。そこで看守がまた四房からその男を連れ出して、これは寺見さんという人ですが、寺見淳一さんを連れ出して、その六房へ入れた。そうすると間もなく静かになった。そうしてまた四旬へ連れてこられたそうですが、そのときはほとんど冷たくなってしまっていた。そういう事案であります。この事案に対して、警察態度というものは実に私はけしからぬと思う。頭からうそ八百を並べ立てて自分たちの責任を回避しようとしておる。また、警察といいますか監察といいますか、これもまたあまりはっきりしない。私は実に戦慄を禁じあたわざることは、何かのことで留置場へ入れられて同房者に殺されても、警察がそれを糊塗してしまえば、永久にこれはなぞだ。心臓麻痺だということになってしまう。しかし、明らかに外傷がついていたと遺族が指摘しても、いやこれは長いすに寝かしたところが、そこから落ちたと言ってごまかしてしまう。また、腕にある傷は古い傷で今の傷じゃないと言って、警察は徹頭徹尾うそをついている。人命の尊重というものを実に考えない。一個人の人命は地球よりも重いという判決がありましたが、自分たちの責任問題だけが先で、一人の男が命を落しておることについて原因を究明しない。私は不都合千万だと思う。そこで、この事件に対してすでに検察庁は起訴しておるはずである。警察はいかなる捜査をし責任者に対していかなる行政措置をとったか、御答弁願いたい。
  18. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいまお尋ねの件は、昨年の十月四日に丸の内署において起りました事案でございます。ただいまお話しの通り、当日寺見淳一氏が酔っぱらって有楽町駅の駅長室の入口のドアを足でけ飛ばしてガラスを破損したというふうなことがございまして、有楽町駅より届出がありまして、丸の内署において器物投棄の現行犯としてこれを逮捕したということになっておるのでございます。留置場における取扱いでございますが、寺見氏が相当酔っぱらっておられまして、大声も出されるし、あばれもされますので、署としましては寺見氏を独房に収容するのが適当であるというふうに考えまして、最初は寺見氏を少年房に入れたのでございます。ところが、その後さらに寺見氏よりももっと泥酔しておる人がありまして、これを保護留置しなければならぬことになり、これを個室に入れる関係上、寺見氏を他の房に移さざるを得ないことになりまして、その際、先ほどお話の出ました第六房に移したのでございます。この第六房は、看守をする者、看守席から最も見やすい位置にあるというので、この房が適当であろうということでここへ移したようでございます。ところが、その第六房に入りましてからも寺見氏はやはり元気よくいろいろ大声を出したりしましてなかなか寝つかないので、同房に三名の者が入っておったのでございますが、うるさいからもう休んだらどうかということで、手をとり足をとって寝かせるようにしたということでございます。その間に暴行事犯があったかどうかというようなことは、後日詳細に調査をいたしたのでございますが、特に泰行を加えたといったようなことは認められなかったのでございます。とにかくそういうふうに第六房におきましても依然として寺見氏が騒がしく行動されますために、やむなくさらに他の房、第四房に移ってもらった。また、本人からも第六房の同房者がこうるさく言うから房を変えてもらいたいという申し出がありましたので第四房に移した、こういうことになっておるのであります。ところが、第四房に移りましてからしばらくたったころでありますが、監督者が巡視をいたしましたときに、寺見氏が房のすみの方に中腰になって頭をかかえているので、どうしたのかと聞いたところが、頭が痛いという訴えがありましたので、さっそく房から出して様子を見ましたところ、容態が若干変でありますので、医者の手当を受ける必要があるというふうに考えまして、直ちに救急車を呼びまして近くの日比谷病院に連れ込んで手当をした。しかし遺憾ながらそこでなくなられた。こういうことに相なっておるのでございます。  こうした不幸な事案が起りまして、丸の内署といたしましてはもちろんのこと、本庁におきましても当時の関係者である看守あるいは当直の幹部警察官、また同房者等について事情を聴取いたしたのでございますが、暴行を加えたというような事実がはっきりいたしませんでそのままになっておったのでございます。遺族の方からいろいろ事情を尋ねられました際も、丸の内署といたしましても、また本庁といたしましても、事情の判明しておる限りは詳細にお答えをいたして、御納得のいくように申し上げたということになっておるのでございます。  右ひじに傷があったというような点も先ほどお話に出ましたが、こういう点も、房に入れる前に係官は十分に確かめておるのでございますが、これは前から傷を受けておられたのであって、その傷の上には黒い薄い膜が張っておった。従って警察署へ来る前にどこかで相当前の時間に受けた何らかの傷であろうというふうに考えられまして、警察署に参りましてから何者かによって受けた傷でないということがはっきりいたしているのでございます。  そういう状況でございますけれども、いずれにいたしましても、警察署における留置人の取扱いということにつきましては、人権尊重の見地から十分慎重でなければならぬことは申すまでもないところでございますので、私どもといたしましては、丸の内署におけるこの取扱いの状況に果して何ら欠くるところなかったかどうかということにつきましては、十分反省をいたしまして、将来考えなければならぬ点がありますならば十分考慮いたしたい、かように考えておるのでございます。  現に遺族の方からの告訴によりまして、当時同房におりました田中何がしという者は暴行罪で起訴されておるということでございます。そうした関係におきまして、関係の丸の内警察署員の取調べ等もございましょう。そうした結果、もし正不幸にしまして警察の方にも何らかの落度と申しますか関係がありますならば、そうした点も十分考慮いたしまして関係者の処分等も考えなければならぬか、かように考えておる次第でございます。  寺見氏がなくなられてから後、遺族への連絡等につきましても、いわゆる丁寧親切という点から考えまして果して適当な措置がとられておったかどうか、そういう点につきましても十分実情を確かめ、もしそうした点にも適切な措置がとられていないということであれば、警察官の今後の反省の材料にするように署長には反省を促しておるような次第でございます。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 長官の御弁解、私きわめて不満足であります。はなはだ人権尊重の観念がないのであります。長官はそういう報告を受けているので、それをおおむ返しに答弁されているかもしれませんが、現に検察庁で起訴しておるではありませんか。  そこで、検察庁から、どういう理由で起訴されたのであるか、その御説明を願いたい。今警察庁長官の話によると、絶対にそんなことはしていないのだと言うが、検察庁では起訴しております。何という人物で、どういう理由で起訴されたか、御説明いただきたい。
  20. 竹内壽平

    竹内政府委員 今警察庁長官からお話がありましたように、本件昭和三十二年十月四日夜から翌朝までの間に、寺見淳一が器物毀棄の現行犯人として丸の内警察署に逮捕留置せられた際に、同房者の田中輝男から暴行を受けて死亡したという容疑に基く捜査でございます。  本件は、被害者の実父から昨年十二月十日告訴が東京地検に提起されまして、捜査を行なった結果、同房者その他関係人の供述から、右田中の暴行の事実が明確となりまして、本年一月十六日これを起訴したのでございます。告訴は殺人の告訴でございますが、被害者死亡当時の状況としまして、病死と診断されておりますし、検視もまた同様な結果でございましたのみならず、死体はそのまま火葬に付されておりますので、ただいま殺害の点につきまして捜査を継続中でございます。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 実におそるべきことだと私ども考えるのです。これは、一人のむすこを失いました父親が涙ぐましい捜査を長い間やったがために、天網かいかい疎にして漏らさず、ある偶然のことからこの加害者が現われてきたんだ。警察やなにがみな口を合せて、何がやったことじゃないんだ。当法務委員会においても長官はまたそういう説明をなさっておる。ここにこの父親が参っておりますが、切歯扼腕しておるだろうと思う。ここに詳細な報告を私はとっておる。そんな事情ではない。丸の内警町察署の刑事の中にもいろいろの説をなす者がたくさんいる。同房者の中に証言しておる者がある。どういう事情でこれが発覚したか。この遺族が詳細に研究して、どうしてもふに落ちない、これは他殺である、というのは、この寺見淳一という人物は非常に健康な人物である。ことに有楽町から丸の内警察署まで元気で歩いてきた人間が、数分ならずして心臓麻痺を起す道理はない。それから、本郷かにあります解剖するところ、そこの医務課長の話も、はなはだ奇怪な話をしている。民主主義時代といえども、学校の先生すら子供をなぐり殺す時代だからねというようなことを遺族に言っております。まあ警察に頼まれてそういう診断を書くけれども、何かがここにあったようなことを言外に漏らしている。これは裁判所で明らかになるかも存じませんが、とにかく不審の点が多々あるので、警察としては徹頭徹尾これを調べるべきであります。こういう他殺事件を他人がやったらどうなりますか。そんな態度で済まされないでしょう。徹底的に洗うだろうと思う。これが署内から出たとなると、実にふしぎな点が数多あるにかかわらず、それを何にもないというふうに済ましてしまう。これはどういうわけで加害者がわかってきたか。新聞に、どうも警察の留置場で殺されたらしいという記事が出、警察署長その他の関係者は絶対そんなことがないという記事が出る、そうすると、被害者の父のところへある人から投書が来た。それは自動車の運転手でありまして、お気の毒にたえない、私は思い当ることがあるからお知らせする。ある日、刑務所から保釈になって出てきた人物、それを迎えに来た人物、この二人をタクシーに乗せた、彼らがタクシーの中で話し合っている、自分は丸の内警察署で牢名主をやっておって、酔っぱらいが来たがら、それを締めてやった、そうしたら間もなくのびてしまったと手柄話のようなことを言っておった。そこで、その運転手が、ははあ、この前新聞に出ておったのはこの男じゃなかろうか、そういうことで父親のところに投書が来、そこで父親がその運転手に会って、初めて加害者が浮び上ってきたのであります。それまでは何にも警察はやらない。調査もしない。人権擁護局に訴えても何もしてくれない。父親が血眼になって、涙とともに数カ月費して、初めてこれが現われてきた。そこで検察庁がこれを起訴するまでになった。そうなっているにかかわらず、なおその実相を報告なさらぬのは一体どういうわけであるか。奇怪しごくの事実がたくさん出つつある。同房者の一人も自白しておる。最初四房へ入れたんだが、六房から、やかましい、おれのところへ連れてこいと言ったら、看守が連れてきた、そうしたら静かになったということを同房者が自白しておる。その同房者が新聞にそういうことを発表したのです。これは詐欺罪で入っておったらしい。名前をIとして出ております。同房者のIが語るということが新聞に出ておった。そうすると、そこへ警察庁のお偉方が行って、まるで新聞と違ったことを調書にとってきておる。そういう事情をあなたはお聞きになりましたか。実に奇怪だと僕は思う。一人の人間が命を失ったことを、みんなが寄ってたかって隠蔽しようという態度をとっておる。警察がもしそういう態度をとったとするなら、われわれの生命というのは風前の灯です。今日、この父親の熱心と、幸いにしてこの運転手が現われたから、この事実の真相が出てきて、検察庁が取り上げることに相なったのでありますが、これがなかったとすれば、おそらく、このまま心臓麻痺でだびに付され、一個の生命が地上から姿を消してしまう。それが警察で起っておる。これではとてもたまらない。それに対して、警察はただ自分たちの責任をのがれることばかりに熱心で、事の真相を調査しない。今からでもおそくはありません。徹底的に調査しなさい。調査の材料は父親からみな出ておるはずである。ここに十数目にわたります警察態度の不明朗な疑惑に満ちた点を本人が指摘してきている。これを見ても、普通の人間でも常識上実に警察態度がおかしいということがわかります。ちょうど十二項目にわたってこの父親が警察態度の不審の点についてここに指摘してきておる。私、きょう時間がありませんから一々これを検討いたしませんが、今長官の言うような説明では納得できません。一体牢名主という制度が今でもあるのですが、ないのですか。この男は牢名主であったそうだ。そうして、入ってきた人の話を聞くと、みな昔の牢名主みたいな者がいると言っておる。警察はそれを黙認しておるらしい。留置場のあり方というものに対して、私ははなはだ疑惑を持つ。殺人まで行われる。一体留置場に牢名主という黙認しておる制度があるのですか、ないのですか。それをお答え下さい。
  22. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、この不幸な事案の発生しました直後、本庁はもとより当該丸の内警察署におきましても、事実の真相を究明すべく、関係警察官並びに同房者等につきまして詳細に調査をいたしたのでございますが、当時、先ほども申しました通り、格別暴行を加えたという者がないという結論に到達したのでございますが、今日ただいま遺族の方からの告訴に基きまして田中何がしというものが暴行を加えたということになって起訴されております関係もございまして、検察庁における取り調べの結果に基き、警察側に何らかの手落ちがあったということでありますならば、それはあらためて十分に究明いたしまして、責任の所在を糾明し、処分すべき者は処分したいということを先ほど私は申し上げたつもりでございますが、およそ警察はくさいものにふたをしようという気持は毛頭持っておりません。私は機会あるごとにそうした点は第一線の諸君に反省を促しておるのでございます。警察官といえども神ならぬ身でありますから、悪意なくしてときに間違いをしでかすことはあり得ることでございますから、不幸にしてそうした間違いをしでかした場合には、率直にその非を認め、将来再びそうした失敗を繰り返さないように反省し、陳謝すべきものは陳謝するという男らしい態度でなければならぬということを、私は機会あるごとに申しておるのであります。そういう意味から、丸の内署の今回の事件につきましても、お話通り、今からでもおそくはないので、十分に真相を究明しまして、改むべきは改めて、もし非がありますならばそれに対する責任の所在を糾明したい、かように考えております。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは昨年の十二月二十六日に各地の新聞にも発表されております。検察庁が加害者を起訴したということが出ている。朝日新聞の夕刊を見ますと「丸の内署が見落す?」とあって、インテロゲーション・マークまでついている。「留置場内の殺人」、「遺族が訴え容疑者検挙」、これを警察が知らぬ道理はないでしょう。一体田中という男はどういう理由でここに入れられ、どういう社会的地位のある男ですか。これはお調べになったでしょう。
  24. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいまその点に関しまして手元に資料を持っておりませんので、いずれよく調査いたしまして、後刻お答えいたします。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 こういう丸の内署の重大なミスであります。そうして検察庁が起訴している事件に対して、その加害者、丸の内署へ入れられておった人物がどういう人物か、まだお調べになっておらない。私は非常に怠慢だと思うのであります。これは新聞の報ずるところによれば集団スリの親分で、この運転手の言うところでは三十五、六のかっぷくのいい、一目見ても普通の人間じゃないと思われるような人物であったと報告しているそうでありますが、有名な人物と新聞社が言うております。それを警察庁はまだお調べになっておらない。それから、警察関係は今そういうことをおっしゃっているのですが、もし警察関係が言うている通りとすれば、起訴するのは権利の乱用じゃありませんか。起訴している以上は十分な証拠があって起訴なさったと思う。同房者の中にそれを目撃しておった者があったはずですが、それを検察庁でお調べになっているかどうか、お答え願いたい。同房者の中で、当時、おれのところに連れてこいと言って、看守が連れていって、それから静かになったという事情を知っている人があるはずです。新聞に匿名で名前が出ています。それを検察庁でもお調べになったはずでありますが、そういう同房の目撃者をお調べになったかどうか。お調べになった結果どういう結果が出たか。私は警察が否認なさらなければそこまで聞かぬでもいいと思ったのですが、明白に否認なさっているとすると、検察庁のやり方と矛盾してくる。もし警察が言うが通りとすると、検察庁は人権じゅうりんになってきます。しかし起訴するについては相当の理由があったろうと思う。同房者の中にそれを証明する者があったのがなかったのか、それをお聞かせ願いたい。
  26. 竹内壽平

    竹内政府委員 検察庁におきましては証拠につきましては確信を持って起訴しておることは間違いないのでございますが、ただ警察との間に若干の行き違いがありますことは、当初同房者間に、死人に口なしでしゃべるまいというようなことを申し合せた事実があるようでございます。そういう申し合せをしたような状況のもとにおいて、当時丸の内警察で内部の状況をお調べになった関係上、その間においてはこれらの真相を十分究明し得なかったものと察せられるのでございますが、その後綿密な捜査が続けられました結果、関係者の口も割れて参りまして、先ほど申しましたように泰行の事実は確認せられるに至っておるのでございます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、長官の暴行なんということは絶対なかったということと矛盾するじゃありませんか。長官どうなんです。
  28. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えしました通り、当時の調査においては暴行を加えた事実がつかみ得なかったのでございます。  なお、先ほど御指摘のありました田中輝男という方はいかなる犯罪で留置されておったかというお尋ねでありますが、窃盗容疑で留置をされておったのであります。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお警察としてもその責任を明らかにするべく十分なる調査を願いたい。第一、大体牢名主がおれのところに連れてこいというようなことで、ほかの房に入れておいた者をわざわざ乱暴な男の声のするところに看守が連れていったとするならば、私はこれは共犯だと思う。看守自身は犯罪者です。警察の任務を怠ったのみならず、刑法上の問題になると思う。この男が乱暴であることはわかり切っている。それなのに、おれが静かにしてやるから連れてこいということでわざわざそんなところに入れたとすれば、暴行を認容して連れていったと思われる。部内から犯罪者を出すのはいやでしょうけれども、そうしなければ人命の尊重は保たれません。綱紀の粛正は望まれません。だから、そういうことについてなぜ御調査にならぬか、私は疑問に存ずる。これが、警察官でない者がそういうことをやったならば、共犯者として処罰されるでしょう。捜査の対象になることは明らかであります。私はまだ私どもの意見を申し上げる機会があると思いますが、それまでに警察は内部のことをもっと調査していただきたい。もうすでに検察庁が現認して起訴している事件ですから、これは警察にとってはマイナスだと思います。それをあなた方がそのままにするならば、警察自分自身で綱紀粛正をする意思がないものと私は認めざるを得ない。警察官というものは何をやっているかわからぬということで、信用できなくなります。徹底的に御調査願いたい。  なおお尋ねいたしたいことは、これと逆の問題でありますけれども、関連することで、近ごろやかましい問題になっております静岡県の二俣町における一家四人惨殺事件、この被告人に対して有利な証言をしたという当時の山崎兵八という警察官は辞職を強要せられ、惨たんたる境遇に陥っている。これは最高裁判所で破棄せられ、無罪の判決が確定したのでありますが、一体これはどういう事情であるか、警察庁あるいは法務省でお調べになったかどうか。
  30. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 これは二俣町警察時代事件でありまして、かなり古いことでありまして、私ども記憶を呼び起すのにちょっと時間を要するくらいな事件であります。山崎巡査が辞職を強要されたというようなことは私ども聞いておらないのでございます。なおよくその点は詳細当時の事情を調査いたしまして、あらためてお答えいたしたいと思います。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは長官お答えのように非常に古い事件でありますので、私、事の真相を詳細に追及するつもりはありませんが、当時の日本週報等に死刑製造者はだれかというようなことで本人が詳しく書いている。これを見ますと、この巡査は被告人が無罪であることを確信した行動をしたためにやめさせられたことは事実でありますが、今日裁判所で無罪が確定してしまった。そこで、こういう者を復職させるなり何らかの救済の道はないだろうか。とにかく、無罪を主張したがためであることは明確でありますが、とにかくそれが裁判上無罪になった。そうしてみれば、この男も何か助けてやるという案がないものだろうか、長官の御意見を承わりたい。
  32. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 今申し上げました通り、山崎巡査が辞職に至った事情がどうであったかということをまず確かめなければならぬと思います。本人が無罪を主張したために、当時の捜査方針に背馳するというので辞職を強要したということであれば、これは由々しい問題でございますが、何か他の事情警察の職務を辞職したということであれば、また別問題であろうと思います。かりに不幸にして辞職を強要したようなことになって、本人が心ならずも辞職したということであり、そして現在復職したいという希望があるということでありますならば、これはまた考えてみるべき必要があろうかと思います。いずれにしましても、当時の事情を正確に詳細に調査した上におきまして善処したいと考えております。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 それをお願いしたいと思います。  それから、もう間もなく終りますが、先ほどの松之山の警察官殺人事件につきまして、国家賠償法が適用になるかどうか、法的な御研究をなさるということでありますが、法務大臣も政務次官もおそろいでありますが、非常に気の毒な被害者に対しまして、私は国家賠償がしかるべきだと思います。大臣はこれは法律を研究した結果ということになるかもしれませんが、これを希望されるのかどうか、国家賠償ということが適当だと思っておられるがどうか、どういうふうなお考えか、御意見だけ承わりたいと思います。
  34. 唐澤俊樹

    唐澤国務大臣 この事件は、お言葉にもありました通り警察始まって以来の不祥事とも言い得るかと思いまして、どういういきさつで命を落すようになったのか、そのいきさつはよくわかりませんけれども被害者はまことにお気の毒にたえないと思います。ただいまのお心持もよくわかります。ただ、御承知のように、国家賠償は法の規定に基いて行うことでございますから、十分この点は法律の解釈研究いたしまして、その上で処置いたしたいと考えております。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の質問はこれで終ります。
  36. 町村金五

    町村委員長 本日はこの程度にて散会いたします。    午後正零時十三分散会