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1958-04-04 第28回国会 衆議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月四日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長代理 理事 佐藤觀次郎君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 山中 貞則君 理事 河野  正君       杉浦 武雄君    千葉 三郎君       渡海元三郎君    灘尾 弘吉君       並木 芳雄君    野依 秀市君       山口 好一君    櫻井 奎夫君       鈴木 義男君    高津 正道君       辻原 弘市君    野原  覺君       平田 ヒデ君    山崎 始男君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君  委員外出席者         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 四月四日  委員堀川恭平君、永山忠則君、松田竹千代君、  木下哲君及び小牧次生君辞任につき、その補欠  として井原岸高君、北村徳太郎君、濱野清吾君、  山崎始男君及び鈴木義男君が議長の指名委員  に選任された。     —————————————  本日の会議に付した案件  学校保健法案内閣提出第一二〇号)(参議院  送付)  学校統合及び児童生徒災害補償に関する件      ————◇—————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため欠席いたしましたので、委員長指名により理事の私が委員長職務を代行いたします。  まず学校保健法案を議題とし、その提案趣旨説明を聴取いたします。松永文部大臣。     —————————————     —————————————
  3. 松永東

    松永国務大臣 このたび政府から提出いたしました学校保健法案につきまして、提案趣旨を御説明申し上げます。  この法案は、学校における保健管理に関し必要な事項を定め、学校における保健管理についての全国的水準維持し、向上するための諸条件を整備しようとするものであります。  学校は、多数の児童生徒学生または幼児を収容して教育を行うところでありますから、人的にも物的にも最も健康に適した環境でなければなりません。また児童生徒等の健康は、学校教育における学習能率の向上の基礎でもあり、さらには健康の増進そのもの教育目的につながるものであります。およそ児童生徒学生及び幼児並びに職員健康保持増進をはかることは、学校教育の円滑な実施とその成果確保に資する基本的要件一つと言わなければなりません。  ところで現行学校教育関係法規規定された学校における保健管理に関する制度は、学校教育法第十二条の規定とこれに基く学校身体検査規程その他一、二の文部省令規定がある程度でありますので、政府といたしましては、とりあえず指導措置によって学校における保健管理の強化に努力して参ったのでありますが、法的不備と相持って必ずしも十分な成果を期待できず、優良な学校も一部に出てきた反面全国的には低水準にあることを免れなかったのであります。こうした現状にかんがみ、かねて保健体育審議会の答申あるいは全国学校保健大会の決議を初め、各方面より学校保健に関する立法措置が要望され、政府といたしましても学校における保健管理学校教育において占める重要性にかんがみ、慎重に検討の結果、この法案を作成いたした次第であります。  次に、この法案要点とするところを申し上げます。  まず、総則におきまして学校保健計画学校環境衛生のことを規定いたし、児童生徒等健康診断その他その保健に関する事項については、学校保健計画を立て計画性をもって実施すべきこと及び学校においては、換気採光照明保温清潔等についての環構衛生の維持及び改善に努めるべきことを明らかにし、第二章以下において具体的項目について規定いたしております。  第一は、健康診断及び健康相談制度を整備いたしたことであります。  すなわち、小学校へ初めて就学するに当っての就学時の健康診断を新たに制度化し、また学校における健康診断について、児童生徒学生及び幼児健康診断職員健康診断について所要の整備をはかり、その充実を期し、さらに健康相談制度規定いたしたのであります。特に児童生徒等健康診断の結果に基き、疾病予防処置を行い、または治療指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な事後措置を講ずることといたしました。  第二は、学校における伝染病予防に関して所要規定を整備いたしたことであります。  第三は、新たに都道府県教育委員会事務局学校保健技師を置くこととし、また学校には学校医学校歯科医及び学校薬剤師を置くための制度を整備いたしたこことであります。  第四は、要保護及び準要保護児童または生徒伝染性または学習支障を生ずるおそれのある一定の疾病治療のための医療に要する費用について、地方公共団体が必要な援助を行うこととし、これに要する経費についての国の補助と、また公立義務教育学校校長及び教員結核に関する定期健康診断に要する経費についての都道府県に対する国の補助とを規定いたしたことであります。  その他は、保健室設置保健所との連絡に関する規定を設けたことであります。  なお、学校教育法の第十二条を改正し、同法が基本法であり、この法案は、いわば同法の特別法であることを明らかにしております。  最後に、本法施行期日は、現行制度からの移行を円滑ならしめるため本年六月一日からとし、要保護および準要保護児童生徒に対する医療に要する費用についての地方公共団体援助及び国の補助については、新制度実施準備期間を考慮して、本年十月一日から施行することといたしました。  何とぞ十分御審議の上、御賛成下さるようお願い申し上げます。
  4. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 次に内藤政府委員より補足説明を聴取いたします。内藤政府委員
  5. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 学校保健法案についての文部大臣趣旨説明を補足しまして、その内容の概要を御説明申し上げます。  まずこの法案規定事項についてであります。従来は学校における保健管理制度全般にわたる統一的立法はなく、学校教育法第十二条の規定及びこれに基く省令等で各個別に規定しており、その他は指導措置によっていたのでありますが、この法案は、制度の全般にわたり、必要な基本的事項を総合的に規定するここととしたものでありまして、総則健康診断及び健康相談伝染病予防学校保健技師並びに学校医学校歯科医及び学校薬剤師地方公共団体援助及び国の補助雑則の六章二十一条と附則から構成されております。  以下、章ごとに順次その要点を御説明申し上げます。  第一章総則におきましては、目的学校保健計画及び学校環境衛生について規定しております。  まず、この法律目的とするところは、学校における保健管理に関し必要な事項を定めることにより、児童生徒学生及び幼児並びに職員の健康の保持増進をはかり、もって学校教育の円滑な実施とその成果確保に資することにある旨をうたい、この法案規定範囲とその目標を明らかにいたしております。  学校保健計画につきましては、児童生徒等の健康の保持増進をはかるためには、児童生徒等健康診断その他その保健に関する事項について合理的な計画を立て、計画性をもってこれを実施しなければならないことを規定しております。  次に学校環境衛生につきましては、主として学校内の環境衛生のことを規定したもので、日常努めるべき換気採光照明保温清潔等学校内の環境衛生維持と、必要に応じてその改善をはかるべきことを規定したものでありますが、この実施については参考指針を示したいと考えております。  第二章は健康診断及び健康相談に関する規定で、就学時の健康診断児童生徒学生及び幼児健康診断職員健康診断並びに健康相談のことを規定しております。  まず、健康診断という言葉でありますが、従来学校教育関係法規では、身体検査という言葉が使われていましたが、身体検査というと身体的な体格検査に偏したような語感もあり、最近の各方面用語例にも合わないので、この法案においては健康診断と改めることにいたしております。  就学時の健康診断につきましては、従来就学時の身体検査として全国約八割近くの小学校において行われておりますが、これは特別な法的根拠に基いて行われてきたわけではなく、その必要性から事実上行われてきたものであります。しかし就学時の健康診断は、市町村の教育委員会学齢簿を作成し入学通知を行う就学事務との関連において行なって、初めて所期の目的が達せられるものでありますから、この法案においてはそのように制度化いたすごととし、就学時の健康診断の結果に基き、入学までに必要な治療の勧告をし、就学義務の猶予もしくは免除または盲学校ろう学校もしくは養護学校への就学に関し指導を行う等の適切な措置をとるものといたしたのであります。  児童生徒学生及び幼児健康診断につきましては、これは従来の学校身体検査を移行したものでありますが、従来の身体検査がやや形式に流れているきらいがありますので、この法案成立の上は、健康診断方法及び技術的基準等省令においてできる限り整備し、また健康診断の結果に基く事後指導等措置につきましてもできるだけ実施に便なように整備いたし、後に述べます要保護及び準要保護児童生徒に対する保健医療費補助と相待って、いわゆる学校病の一掃に努力するようにいたしたいと考えております。  職員健康診断につきましては、事業主たる学校設置者が行う建前とし、また市町村立義務教育学校校長及び教員結核に関する定期健康診断は、従来の実績にかんがみ、また統一的基準をもってより効果的に行う必要性から、特に都道府県教育委員会において行うことといたしております。  健康相談につきましては、従来指導措置によって行われてきましたが、この法案におきましては、これを制度として行うこととしその充実をはかりたいと考えております。  なお、健康診断方法及び技術的基準、その時期、検査項目等に関しましては、細目にわたりますので主として省令で定めることにいたしております。健康相談実施基準につきましては、参考指針を示したいと考えております。  第三章は、伝染病予防に関する規定であり、出席停止臨時休業省令への委任のことを規定しております。  従前学校における伝染病予防に関しましては、学校伝染病予防規程という戦前省令がありましたが、新憲法制定以後は一つ参考規準としての意味しか持っておらないものとされております。この法案におきましては、伝染病予防法その他伝染病予防に関して規定する一般公衆衛生法規規定のない事項について、学校における伝染病予防に関し必要な事項を定めたものでありまして、最も重要な予防方法である出席停止のことと臨時休業のことを明記し、その他の予防方法細目省令委任しております。  なお、伝染病による児童生徒等出席停止については急施を要するので校長が行うものとし、伝染病予防上必要がある場合の臨時休業については単に個々の学校臨時休業だけでは効果を期待できないことが多いこと、及び学校の全部または一部の授業を休止することでもありますので、学校設置者が行うことといたしました。  第四章は、学校保健技師ならびに学校医学校歯科医及び学校薬剤師について規定しております。  学校保健技師は、都道府県教育委員会事務局に置き、上司の命を受け、学校における保健管理に関し、専門的技術的指導及び技術に従事する一種の専門職であります。この種の制度は、戦前地方学校衛生職員制という剌令によって各都道府県学校衛生技師というものが置かれていたのであります。学校における保健管理の問題は、専門的事項について学識経験がある医師等が必要でありますので、少くとも都道府県教育委員会事務局に、この種の専門職を置くことといたしたのであります。  学校医学校歯科医及び学校薬剤師については、従来省令で暫定的に規定されておりましたが、これらの学校医等設置は、本来法律規定すべき事項と思われますので、この法案においてはそれらの設置のことを規定し、また従来学校医等職務の範囲が必ずしも明確でない点もありましたので、この法案規定に基いて職務執行の準則を省令で定めることといたしました。なお、学校薬剤師につきましては、この制度が設けられたのが比較的新しく現在の設置状況が低いため、本法施行後も昭和三十六年三月三十一日までは置かないことができるという経過規定を付しておりますが、政府といたしましては、本則において学校薬剤師を必置とした趣旨にかんがみまして、三年間の猶予期間を待たずにできるだけすみやかに各学校設置されるよう勧奨いたしたいと考えております。  第五章は、地方公共団体援助及び国の補助に関する規定であります。  学校において健康診断実施し、児童生徒疾病が発見された場合等に学校において疾病治療指示をいたしましても、従来の最も大きな隘路は、経済的理由によって医療費を支出することが困難な要保護および準要保護児童生徒の場合であります。この法案におきましては、地方公共団体は、その設置する義務教育学校児童または生徒保護者のうち要保護及び準要保護のものの児童または生徒が、政令で定める伝染性または学習支障を生ずるおそれのある疾病について学校において治療指示を受けた場合は、その疾病医療に要する費用について必要な援助を行うものとし、その地方公共団体援助に要する経費の一部について国は補助することができることといたしております。なお、政令で定める疾病とは学校病ともいわれるトラホームその他の眼疾、伝染性皮膚疾患、中耳炎、アデノイド、蓄膿症、齲菌、寄生虫卵保有を予定しており、また国の補助については二分の一の補助を予定し、なお公費負担割合は、要保護児童生徒については全額、準要保護児童生徒については半額を予定しております。  次に国の補助としては、都道府県に対し、公立義務教育学校校長及び教員結核に関する定期健康診断に要する経費の一部を補助することができることとし、補助率は二分の一を予定いたしております。  第六章の雑則では、保健室保健所との連絡学校設置者事務委任を行うことができることを規定しております。  この法案規定された健康診断及び健康相談を行うため、その他救急処置等を行うため、学校には保健室を設けるものといたしました。  保健所との連絡につきましては、健康診断を行う場合、結核に関するエックス線検査ツベルクリン反応陰性者等に対する予防接種等に関し、保健所の協力が必要であり、また伝染病によって出席停止臨時休業措置をした場合は、保健所における一般公衆衛生活動との連絡が必要でありますので、規定いたしました。  学校設置者事務委任を行う場合については、この法案において建前として、学校設置者が行うとされた事務が二、三ありますが、大学以外の公立学校に関しては地方教育行政の組織及び運営に関する法律に、公立大学に関しては地方自治法にそれぞれ事務委任規定がありますので、これらの学校に関してはそれらの法律の特別の定めによることとし、その他の国立または私立の学校については、校長委任することができるとしたのであります。  附則におきましては、本法施行期日と前述いたしました学校薬剤師設置の特例の規定を設けたほか、本法施行に伴い、関係法律所要の改正を加えております。  以上、学校保健法案につきまして、各章ごとにその内容要点を御説明申し上げた次第であります。
  6. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 質疑の通告があります。順次これを許します。河野正君。
  7. 河野正

    河野(正)委員 ただいま学校保健法に関しまして、大臣並びに当局側からいろいろ法案趣旨説明がございました。私どもはこういった法案成立によって今後学校におきまする保健管理の面に一つの進歩が生まれて参ります点につきましては、全く了承することにやぶさかではございません。しかしながらなお今後児童生徒及び学生、あるいはまたそれに関連いたしまする職員健康保持増進をはかって参りますためには、さらに完璧を期するための努力が行われなければならぬということを私は強く痛感をいたすのであります。ある意味におきましては本法との関連において今日の制度というものが逆に矛盾を生ぜしめておるような点がないでもないと思います。この点につきましては後ほどいろいろとお尋ねを申し上げたいと思いますが、そういった意味から私は若干の点について御質疑を行なって参りたいと思います。  そこで、まず第一にお尋ねを申し上げたいと思いますのは、児童生徒及び学生並びに職員の健康の保持増進をはかっていくために、この法律案に基きまして今後いろいろ学校保健計画が行われて参るわけでございます。もちろんその計画は一応校長の責任において行われるというふうに私ども判断をいたしますが、後ほど規定がございまするように、実質的には学校医がその計画を立ててその実施を行なっていくということになると思うのであります。ところで第十六条で学校医任務規定という条項がございます、具体的には政令できめられるということでございますが、いずれにいたしましても学校医任務というものが規定され、その任務に基いて学校保健計画実施に当っていくということだと思うのでございますが、御承知のように今度の法案では、たとえば学校医法律規定されたという点につきましては、私は一歩前進だと思いますけれども、実質的にはこの学校医というものは非常勤でございましょうし、なおまた待遇の面においてどういった待遇考えられておるかわかりませんけれども、今日のような実情では、法律で定められました保健計画の完全なる実施に当っていくという点につきましては、私どもは非常に大きな困難性があるのじゃないかというような点を痛感いたすのでございますが、そういった点についてどういうふうにお考えになっておりますか、この点についてまずお尋ね申し上げたいと思います。
  8. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御指摘のように学校保健計画に基きまして、学校身体検査等健康診断に関しましては、主として学校医が行なっておるわけでございます。学校医設置状況は、ほとんど九七、八%に上っておりますので、大体各学校身体検査なり健康診断を行うのに支障はなかろうと思っております。ただ御指摘のように非常勤でございますし、また待遇むしろ悪いくらいでございますので、私どもは本年度の地方財政計画におきましてもやや増額いたしまして、従来三千円のところを七千円に引き上げたのであります。しかしこれもまだ十分な経費ではございませんので、今後一そう学校医の質の充実及び待遇の適正をはかって、健康診断に遺憾のないように努力いたして参りたいと考えております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 なるほど地方財政等関連もございますから、私どもが理想的に考えるようには相ならぬとは思いまするけれども、実際にこの法案が生まれました精神を考えますと、やはり適正なる運営が行われなければ、何のために法案成立せしめられたかということについて非常に疑問を抱かなければならぬ。学校保健計画実施というような意味におきまして、非常に大きな役割を果して参りますのはやはり学校医でございますので、こういった画に対しまする処遇というようなことを、今後十分前進的に考えていただかなければ、実際に運営に当りまする方の学校におきましても、非常に困難性がございますし、なおまたいろいろと学校医計画等指示いたしまする学校におきましても、待遇その他に非常に問題があるということで遠慮なさって、せっかくりっぱな法案が出て参りましても、その運営におきまして、将来いろいろ問題を起すのじゃないかというような点を心配いたしますので、こういった点につきましては、将来極力前進するような処置を行なっていただきたいと思うのでございます。  それから次にお尋ね申し上げておきたいと思います点は、学校において換気採光照明及び保温というものを適切に行なって、清潔を保つ等、環境衛生維持に努めていきたい、あるいはまたそれに必要な改善をはかっていかなければならぬというようなことでございますけれども、今日の学校校舎あるいは施設といったような面を私どもがながめて参ります場合に、すでに今日ございまする老朽校舎あるいは危険校舎、そういったものの改善がなかなか思うようにできないというのが今日の実情でございます。さらにそれを飛び越えた、飛躍したような——なるほどけっこうなことでございますけれども、今日ですら老朽校舎危険校舎改善がなかなわ思わしくいかない。そういった実情の中で、それをさらに一歩飛び越したような、こういった理想が実際に達成されるものかどうか。私どもはこの点につきましては非常に疑問を持っております。なおまた私が再三再四委員会において取り上げました基地周辺における防音教室の問題においてすら、なかなかこの環境衛生改善ということが思うようにできないのが今日の実情でございます。そういたしますと、この法案が出て参りましたけれども、ある意味においては絵にかいたもちに終るのではないかというふうな心配をいたすのでございますが、そういう点についてどのような財源措置をお考えになっておりますか。
  10. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 学校環境衛生につきましては、従来も学校でそれぞれ適切な処置を講じていらっしゃるわけでございますが、特に清潔とか保温あるいは採光喚起等、不十分ではありますけれども、できるだけの措置を講じておるわけでございます。特に老朽校舎危険校舎等改築に当りましては、こういう点が考慮されて設計、計画がされておると私ども考えております。最近の新しい建築については、こういう点が相当改善されておると考えておりますが、今後学校新設拡充に当りましては、この法案趣旨を十分生かすように配慮されるよう、関係当局にも要望いたしたいと考えております。
  11. 河野正

    河野(正)委員 ただいま局長の御答弁を承わりますと、今後新しく建設する校舎その他については、そういう点について十分善処するように配慮いたしたいというお話でございますけれども、私は新しく建設するよりはむしろ既存校舎なり建物の方が大きなウエートを持っておると思う。そういたしますと、既存の校合なり施設においてそういった改善が行われなければ、法に示されました成果というものは絶対にあげることはできないと判断いたすわけでございます。ただいまの御答弁では、今後新しい校舎施設というふうなお話でございまいしたが、既存ものにつきましてはどのような配慮がございますか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。
  12. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほどちょっと申しましたが、既存校舎でも、清掃をしてきれいにするとか、あるいは冬の場合十分な暖房をとるようにするとか、あるいは換気窓をつけて換気をするとか、あるいは採光が十分、とれなければ照明装置を用いるとか、多少の修繕は各学校でもいたしておりますので、もちろん既存学校でも十分この成果が取り入れられるように私ども指導をして参ったわけでございますが、なお今後一そうこの点は強化いたしたいと考えております。  先ほど申しましたように多少の修繕を伴いますれば現在でもある程度は改善できると思っております。しかしながら先ほど申しましたように、何しろ建物の古いものが多うございますので、十分な効果は期待できませんので、改築に当たっては十分その点を考慮する、こういう趣旨でございまして、決して既存校舎を置き去りにしたわけではございません。
  13. 河野正

    河野(正)委員 なるほど局長の御答弁はもっともらしい御答弁でございます。しかしながら現実の問題といたしましては、私どもが遭遇いたしますところは、たとえば換気採光保温というようなこともきわめて必要なことでございます。ところがそういう点に費用をかける予算があるならば、むしろ新しく校舎を建てたいとか、あるいは増設をしたいというのが現地の声のようでもございます。  なおまたこれは現地のみならず当局側においても反省していただきたいと思いますのは、たとえば基地周辺におきます防音教室のごとき、これは私ども国会で取り上げていろいろ御善処をお願いして参りましたが、飛行機のために非常に危険がある。危険があるなら移ればいいじゃないか。移りましたけれども全然防音装置も行われなければ、換気採光というふうな面についても考慮が払われない。なるほど危険は除去されたけれども、この防音については何ら考慮が払われぬというような過去における実例もございました。危険であれば危険ということに対して考慮を払えばいいじゃないか、それだけでは私は教育効果を上げることは困難だというふうに考えるわけです。そこでいろいろ先ほどから御答弁いただきましたが、そういう過去におけるいろいろな問題もございましたので、そういった点につきましては、今後十分なる御考慮を払っていただかなければならぬということを申し添えておきたいと思います。  それから今後市町村の教育委員会児童生徒学生及び職員に対しまして健康診断を行う、この法案成立いたしますならば、そういった計画が逐次実施されると思うのであります。ところが、この健康診断に基いて保健上必要な場合には治療の勧告を行うということでございますが、実際問題として、たとえば要保護者あるいはそれに準ずる準要保護者の場合は、二分の一なりあるいは全額の補助がございますから問題ないとしても、いわゆるボーダー・ラインと申しますか、要保護者でもなければ準要保護者でもない、しかしながら非常に生活上、経済的に問題があるというような家庭も私は多々あると思います。そういった場合に、治療を勧告して、果してそれが実際問題としてうまく実施されるかどうか。言葉をかえて申し上げますと、そういった場合に勧告して、果して勧告というものの権威が保たれるかどうかということについては、私ども若干不安を持つものでございます。これは実際に地方で診療しますと、おそらくそういった面が多々起ってくるだろうと思います。そういたしますと、結局勧告しても実際に実施してくれぬということになりますと、今度は勧告する方でも、もう勧告してもむだじゃないかというようなことで、だんだんと熱意が失われていくというようなことも当然考えてこなければならぬと考えます。そこで、私は将来の問題としては、治療を勧告する以上は、それに対する経済的な責任も持つというようなことの方がむしろ望ましいのじゃないか。おそらくこれは地方財政その他の面からこういうことになったと思います。しかし実際問題として、私は勧告する以上は、勧告に対して経済的な責任を持つということの方が正しいのじゃないかというふうに判断いたしますが、その点に対してどのようにお考えが、お尋ねをいたしたいと思います。
  14. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 身体検査の結果、治療を要する者に対しては治療を勧告するわけであります。この場合保護者に十分な経済的能力のない方も多いと思っております。そこでその結果どうしても治療費が出せないというような者がだんだんはっきりして参ると思います。ことに困難なものは、いわゆる生活保護法に言う要保護者でございます。この生活保穫法の適用を受ける児童については、これは無条件に市町村で治療費は支出するわけでございます。なお、それに準ずる程度の者を本予算では二%見込んでおります。私どもは教科書あるいは給食等を実施して参った関係で、大体二%で救われるのではなかろうかという期待を持っておるわけでございます。もしこの二%で今後十分でないということが明確になりますれば、さらに予算を増額して、一人の米治療者もなく完全に治療ができて、修学の効果を上げ得るようにいたしたいと考えております。
  15. 河野正

    河野(正)委員 ただいま要保護者に準じまする準要保護家庭が約二%というふうに判断されているというお話でありましたが、私どもが実際に遭遇いたしますることは、準要保護家庭の場合には、その半分については地方自治体がめんどうを見なければならぬということで、いろいろ政令その他で基準が示されているわけでございますけれども、非常に地方で圧縮する傾向がある。これは国が全額見るということになりますれば問題ないのでございますけれども、他方は実際半額持たなければならぬ。そこでそれを極端に厳格に適用していく。そのために実は私ども今日まで給食の問題、あるいは教科書の問題等でいろいろ御便宜をはかっていただきましたけれども、地方に帰りますと、やはりまだそういった点について非常に大きな問題を残している実例が年々ございます。ところが教科書あるいは給食の場合は、まあまあといたしましても、疾病の場合は人命に関する問題でございますので、教科書あるいは給食も必要なことと思いますけれども、比重の方からいきますと、さらにこの健康管理の面の方がより重要な問題ではないかと判断するのでございます。おそらく地方から上って参りまする比重から申しますと、あるいは二%ということになっているかもしれませんけれども、実質の面から参りますと、もっとこれはパーセンテージが高いのではないかという判断をいたしますし、そういった声も現実に聞いておりますので、この点につきましては今後適切なる指導をしていただかなければ、地方は今言ったように半分を負担しなければならぬということで、非常に厳格にしぼってきている。そこで中央におきましては、二%で事足りるというふうに御判断願っておられるかもわかりませんけれども、実際はただいま申し上げましたような実情だということを十分お含み願って、今後行政上の指導をやっていただきたい。こういった点につきましては、特に格段の御協力をお願い申し上げておきたいと思います。  それから学校設置者健康診断に基いて職員治療あるいはまた勤務の軽減等を指示するというふうな項目も規定されているようでございます。ここで問題になりますのは、たとえば健康診断に基いて治療指示する。治療指示すれば当然休養を要するという問題もございましょう。あるいはまた勤務を軽減することになりますと、学校の教職員でございますので、やはり授業その他においていろいろ支障を来たしてくるということももちろん起ってくるであろうと考えます。そうなりますると、今後この法案が適切な運営をされて、そのために定員その他に影響を及ぼしてくるというようなことも、これはやってみなければわからぬことでございますけれども、そういった状況というものも出てくるということは当然予想されます。その場合に定員との関係をどのようにお考えになっているのか。この点を一つ明らかにしていただきたいと思います。
  16. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 本法施行によりまして結核という診断をされて休養を要する場合には、これは定員外にしておりますので、本委員会に付託されておりますところの義務教育職員の、例のすし詰め学級解消及び定数基準の法律によりまして、当然結核休養者はあのワク外で算出されますので、これは実績に基いて地方交付税も算出されますし、なお義務教育国庫負担金も支出されますので、御心配はなかろうかと思っております。
  17. 河野正

    河野(正)委員 そういたしますと、極端な例をあげて申しますると、非常に多数の休養者を出すというような場合にも、実際の現場におきまする教育支障を来たすようなことは起らないということでございますか。
  18. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私ども予想しておりますのは結核でございます。結核で長期休養を要するような場合には、大体現在環境衛生その他公衆衛生等が非常に進みましたので、一・二%か、その程度になっております。総数にいたしまして、七千人程度でございますが、今後この法律実施することによってそういうことがふえても、これは地方交付税の方はワク外で定数を計算する、こういう法律趣旨になっておりますので、この点は御心配ないのじゃなかろうか。なお国庫負担金は、御承知の通り実支出額の二分の一精算負担を建前としておりますので、遺憾ないと思っております。
  19. 河野正

    河野(正)委員 そこで、さらに教職員の問題について触れておきたいと思いますが、それは今日まで教職員児童生徒学生に及ぼしまする影響、そういった点が十分考慮されて、地方公共団体では厚生施設として教員保養所等を設置いたしております。ところが組織法を見て参りましても、必ずしも設置しなければならぬということではないようでございます。しかし最近の傾向を見て参りますと、教育予算というものがだんだん圧迫されていく。その一つのしわ寄せとして、せっかく教職員の厚生施設として設置されました教職員保養所というものが、非常に累卵の危機に置かれておるというふうな実情もございます。たとえば今までせっかく設けられておりまするところの保養所、厚生施設というものを圧縮しよう、圧縮せぬにいたしましても、今後さらに科学というものが進歩して参りますから、内容充実をはかっていかなければならぬ、これは御承知だと思いますけれども、最近の結核に対しまする科学技術というものは非常に進歩して参りまして、むしろ施設というものは現状維持にいたしましても、内容そのものにつきましては逐次改善をはかっていかなければならぬというのが今日の趨勢だと考えるわけであります。ところが先ほど申し上げますように、組織法に基きますると必ずしも設置しないでもよろしいというふうなことで、私はせっかくこういった学校保健法というような学校保健管理の面において前進した法律が出て参りますならば、その前進に伴ってやはりこういった施設の拡充、改善というものにつきましても当然適正なる処置が行われなければならぬというふうに考えるわけでございますが、その点につきましてはいかがお考えでございますか、お尋ねいたしておきたいと思います。
  20. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御指摘のように各府県にほとんど全国的に教員保養所が設置されておりますので、私どもはその運営を十分しっかりやっていきたい、かような見地から、地方交付税の単位費用の計算の中にも十分な財源措置をしておるはずでございます。なおこのほかに最近は教職員共済組合の、いわゆる組合の病院が大体ブロックごとに普及して参りましたので、さらにこの共済組合の病院の拡充等によりまして教職員の健康管理に遺憾なきょうにしたいと考えております。
  21. 河野正

    河野(正)委員 なるほど共済組合制度に基きまするそれぞれの厚生施設が逐次ブロックごとに建設されておるというふうな実情は承知いたしております。しかしながらなかなか実際問題としては、このブロック別に建設されることには、利用する面におきましては非常に不便という点がございます。そこでやはりこの現実に利用され、あるいはまた現実に喜ばれておりまする今日の施設というものの内容改善あるいは充実というものをはかっていかなければならぬ。さっきも申し上げますように、組織法の中では置くことができるということだけでございますし、なおまた今日教育財政というものがだんだん圧迫を受ける、そのために充実することはさておいて、むしろ圧縮するという方向にきておるのが今日の趨勢でございます。そういたしますると、むしろ本法案と逆行する傾向がございます。しかもなおただいまの局長お話を承わって参りますると、財源措置については十分考慮をしておるということでございますならば——もちろん財源がないということならば別でございますけれども財源措置についても十分適切な措置を行なっておるということでございますならば、私はむしろこの際進んで、置くことができるではなくて、置かなければならぬ、現実に置いておるのでございますから、私は置かなければならぬというふうな規定で、この施設の退歩ということが起らないように努力せらるべきが建前ではなかろうかというふうに強く考えておるのでございますが、この点はいかがでございますか。
  22. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御指摘の点大へんごもっともだと思います。本法案につきましては教員保養所というものは除外しておりますけれども、さらに教員保養所の充実、整備は別途指導して参りたい、かように考えております。
  23. 河野正

    河野(正)委員 その点については別途充実されるということでございますので、今後一つ適切な善処をお願い申し上げたいと思います。  それから、都道府県教育委員会には学校保健技師を置くものとするというような規定が設けられております。実際問題として学校における保健管理専門的事項になりますれば、当然医師が学校保健維持に当るということになると思います。さっきの説明では医師等ということでございましたけれども、実際には医師そのものが当ることになると思います。ところがこの学校保健技師の使命というものはきわめて重大なものがあると考えます。それは各府県におきます学校医というものが必置制になるわけでございますから、各府県の学校医の数というものは非常におびただしい数になると思います。そういった学校医に対しまして適切なる専門的な指導をやっていくということになりますと、この学校保健技師の使命なり任務いうものは非常に重大なものがあると思います。ところが今日の実情をながめて参りますと、医師の中でも官公庁の職員でございまする医師の待遇というものはきわめて劣悪なる状況でございます。従って優秀な人が官公庁の職員としてなかなか入りたがらない傾向があるということは十分御承知の通りだと思います。せっかくこういった法案ができるといたしますならば、やはり最大の成果を上げていかなければならぬ、最大の成果を上げていくためには最も優秀な人を学校保健技師として迎えなければならぬということになると思います。ところが私は現実のような処遇では、少くとも都道府県におきまするすべての学校医指導するために優秀な技能を持った技師を迎えるということはなかなか困難ではないかという判断をいたすわけでございますが、そういった点について特別な配慮が行われておるものかどうか、行われておらなければ将来どのような配慮を行おうというふうに考えておられるのか、この点は私は特に重視をいたしておりますので、率直な御意見を承わっておきたいと思います。
  24. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 医療関係の従事者については、一般の事務職員と違った給与体系をとっておりますので——もちろんこの額が十分とは私ども考えておりませんけれども、ますます専門技術者として優遇するように今後も努力をして参りたいと考えております。
  25. 河野正

    河野(正)委員 この学校保健法運営いたすに当りましてのいろいろな学校医の問題あるいは保健技師の問題等等の問題が出て参りましたが、実際問題として学校児童あるいは生徒学生保健管理の実際の面の指導に当たって参りますのは、私はやはり養護教諭ではなかろうかというふうに思うわけでございます。ところがこれは学校教育法の中での規定でございますので、この法案とは別個に取り扱われたと思いますが、常時学校に勤務をして、常時生徒児童指導に当っていく養護教諭が今日の教育法では必置ではない、必ずしも設けなくてもよろしいという実情でございます。そういたしますと、この法案というものが学校健康管理の面において非常に前進した法案であるといたしますならば、そういった点私は一歩欠けるものがあるのではないかというふうな考え方を持つわけでございます。従って私はやはりこの法案の円滑なる運営、あるいはこの法案に基きまして大きな成果を上げて参りますためには、常時その面に対して指導的立場をとって参りまする養護教諭は当然必置でなければならぬと判断するわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  26. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 必置が建前になっております。ただ財政的な面が一つと、それから養護教諭の養成の面から考えまして、にわかに必置が困難でございますので、学校教育法百三条で置かないことができる、かようになっているわけでございますが、御趣旨の点は全く同感でございますので、私どもはこのたびの定数基準におきましては約三割増し、従来大体一万人の養護教諭がいるのでございますが、このたびの法案では三千人の増員を見込んで定数基準をきめておりますので、小学校の場合は大体千五百人に一人くらい、中学校の場合は二千人に一人、かような一応の配置基準を持っているのでありまして、本法案実施と相待ってさらに前進するように努力いたしたいと考えております。
  27. 河野正

    河野(正)委員 努力される点は非常にけっこうでございますけれども、ただ問題になりますのは、ただいまも御説明ございましたように、小学校におきまして千五百人に一人、中学校におきましては二千人に一人というような一つの基準が示されて参っております。そういたしますと私どもが一番心配いたしますのは、やはり僻地あるいは離島といった方面学校において非常に大きな問題があると思います。と申し上げますのは、たとえば今度学校医というものが必置制になる。法案に基きますと必置制でございますけれども、離島あるいは僻地におきましては、名儀上学校医ができて参りましても実際上学校医そのものが直接に児童管理に当るということは困難である。これが常勤でございますれば別でございますが、非常勤でございますから、離島には全然医者がおらぬ、あるいは僻地では全く無医村であって隣りの村から行かなければならぬというようなところが多々あるのが現状でございます。そういたしますと、表面上は学校医が直接健康管理を指導するわけでございますが、その直接指導いたします学校医というものが隣りの村あるいは隣りの町あるいは海を渡って行かなければならぬというようなことになりますと、むしろこの僻地とかあるいは離島といった非常に収容人員の少いような学校にこそ養護教諭というものが特に必要なことになって参るのではなかろうか。ところが現実に中学校が二千人に一人、小学校が千五百人に一人というような基準が生れて参りますと、私どもが最も重視しなければならぬと思います離島あるいは僻地にこの養護教諭がかえって設置されないというような結果に私は陥って参ると思うのです。せっかくこういった法案で、私どもも非常に喜ぶわけでございますけれども、結果において現実面においては必ずしも前進していかないというような、逆な面も出て参ると私は思うのでございますが、そういった具体的な例に対してどういうふうにお考えになっておりますのか、あらためて伺っておきたいと思います。
  28. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 一つはそういう離島あるいは僻地の場合に考えられますのは、巡回診療班のようなものでございます。ですからできるだけ巡回診療というようなものを整備する。もう一つは、今御指摘の養護教諭だと思います。養護教諭は小学校千五百人、中学校二千人に一人というワクはきめておりますけれども、これをどういうように配置するかということは各県の教育委員会実情を見て、必要なところに私は配置したいと思っております。ですからこの法の運営に当って十分遺憾のないようにしていきたい。それから養護教諭の場合に必ずしも一校一人で専任ということでなくして、数校兼任も可能かと思うのでありますので、こういう点もあわせ考えて僻地や離島が不当に保健衛生が管理できないというようなことのないように、運営に当って十分指導して参りたいと考えております。
  29. 河野正

    河野(正)委員 たとえばさっき御説明ございました巡回診療というようなこと、私も巡回診療に行ったことがございますが、実際に巡回診療というものはかえって害があるのじゃないかというような考え方を持つわけです。責任ある管理というものができぬわけです。もしそこで誤まって私ども指導しておったというような場合が起って参りますと、結果的には逆の効果が出てくるというように思いますので、私みずからも経験がございますが、巡回診療というものが必ずしも適切な方法かどうかということにつきましては、これは非常に大きな問題があると考えます。  それからなおまた実際配置についてはそれぞれ教育委員会でも考慮する、適切な配慮が行われるように指導をしていきたいということでございますけれども、先ほど御説明のございましたような千五百人あるいは二千人に一名というような基準が出て参りますと、現実の問題としてなかなか適切なる配慮が行われるということは困難じゃないかというふうに考えるのであります。そこでこういった面につきましては私どもはまことに不満の意を表明せざるを得ないと思います。こういった点につきましては今後十分一つ御考慮をお願いするということにいたしておきたいと思います。  以上申し上げましたように、なるほど本法案がこの学校保健管理の面において一歩前進した法案だということにつきましては、私ども心から賛成を表します。しかしながらその運営につきましては、私が再三再四御指摘申し上げましたように、なお問題点が多々あるというふうに考えまするし、そういった問題点を今後解決していただかなければ、私は本法案成果を完全にあげていくということは困難ではないかという判断をいたしますので、そういう点については十分一つ御考慮を払っていただきたい。  そこで私がただいまいろいろ局長に御指摘申し上げました点について、総括的に一つ大臣から今後どのような御配慮を払っていただけまするかお尋ね申し上げまして、私の質疑を終りたい、かように存じ上げます。
  30. 松永東

    松永国務大臣 御説になりましたところは一々ごもっともだと存じます。ただ問題は財政上の裏づけをどうするかということが大きな問題なんです。ことにただいま御指摘になりました養護教諭の問題でありますが、これは私らの古い考え学校の看護婦ぐらいに考えておっては大へんな間違い、それぞれの児童学生のそのふだんの健康育成の上を勘案して、そうして純然たる学校の教授と同じような取扱いをせんければいかぬのじゃないかというように私ども考えておるわけなんで、従って御指摘になりました点はそういう面からも特に僻地教育、離島教育というような面に——恵まれない学童生徒あたりはたくさんおりまする、これを何とかせんければならぬということは、これはもうあなた方と一緒になって協力しなければならぬというように考えております。何といたしましても財政上の裏づけが十分でありませんので、しかし御指摘の点は重々承知をいたしておりまするので、今後全力をあげてそういう面の欠陥を排除していくというふうに考えております。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 辻原委員
  32. 辻原弘市

    ○辻原委員 今この河野議員の質問に対する養護教諭の問題でありますが、どうも内藤さんの説明を承わりましても、大臣の御認識を承わりましても、われわれと意見が変らぬのであります。ところがこの法律学校教育法できめられてから自来今日までほとんどその答弁に前進がないということだけは事実であります。今度学校保健法成立をするというような機会になりまして、この法律によりますれば学校医それから学校歯科医が中心となって、おそらくその運営がやられるというような結果に相なるだろうと思います。そこで私は、今河野委員指摘いたしましたように、また大臣も最後に述べられたように、学校における常時の保健指導、いわゆる常時の健康教育なるものは、そのにない手はやはり学校全体でなければならない、その中で特に専門的な立場から日常のにない手は養護教諭であって、そのためにこそ法律はこの制度を設けているわけです。ところが一向にこの制度に対して忠実でないというのが今日までの文部省の態度でないかと思う。せっかく保健法が成立をするのでありますし、そのためには勢い事務のボリューム、学校に対する健康管理のウエートを非常に高いものを要求するという段階になると思う。その段階に何かしらぬエア・ポケットを感ずるのはこの制度だと思う。法律をしっかり何回読み直してみましても、特にこれは二十八条では排除規定を設けていない。学校教育法百三条で「当分の間」というのをわざわざ入れて、これを置かない場合もあり得るという表現をしておる。するならば、一体この「当分の間」というのはいつなのかということをわれわれ申し上げたいのです。法律成立の直後であれば、われわれはこういうやぼなことは申し上げませんけれども、これは財政上の理由あるいは行政上の理由というようなことでは引きさがるということもありますけれども、しかし今日に至ってもなおかつ同じような答弁を繰り返しておるということは、この制度はすでに有名無実になっているということを言わざるを得ないのです。  そこで私は具体的にもう少し聞いておきたいと思うのだが、まず今内藤さんが言われたように、今度の新しく出ている法律の中で、がらり三割ばかり増しておる、配置は都通府県の自由だから、その都道府県において、数は少いが少いなりにある程度適切な配置が試みられるのであろう、こういうことを言われておるが、これはとんでもない認識の誤まりです。実態はどうかというと、最近全体の定員が少いために、むしろ養護教員だとか事務職員の配置というものがなおざりにされておるのです。各府県の配置基準を見たら、これは一目瞭然です。それは事務職員という制度があり、あるいは養護教員という制度がありながら、一般の定員が窮屈だというので、名目は養護教員であり、事務員であるかもしれないけれども、やっていることは一般教職員と変らないという定員の配置をとっておるのであります。そういう現状をあなた方は認識せられておるかどうか、まずこれについて承わりたい。
  33. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私ども、養護教諭とか事務職員が財政の負担のためになおざりにされておるという事実はよく承知しております。ですから今度の定数基準に対しましては、養護教諭と事務職員は相当重点的に考慮して、定数を確保するように努力した法案を今提出しておるわけであります。もちろん十分ではございませんけれども、三十三年度の予算あるいはこの定数基準におきましてはこの点を十分考慮したつもりでございます。ただ全体の財政のワクがきついので、にわかに御期待のようになりませんが、漸進的に努力を続けて参りたいと考えております。
  34. 辻原弘市

    ○辻原委員 私はその数の問題を言っておるのではありません。制度の確立の問題が前提となるので、その点についてあなたの答えを要求しておるのです。ということは、かりに数が一〇〇%になれば別ですけれども、そうでもない限りこれを流用するということはあり得るわけです。現実に流用しておるのです。ですから、法律は後日審議になるでありましょうが、この法律を幾ら審議してみても、この法律建前によっては養護教員制度を確立することはできないということです。あるいは事務職員でも同然です。それは、それだけの者を配置しておる、しかしながら現実において名目は養護教員として実際上は一般の教員と変らないような配置をしておる。そういうような配置をせざるを得ないというのが今日の地方の状況です。あるいは事務職員とて同じです。そういう中で大臣の言われたことは、失礼ですが少し空疎なように聞えるのです。これは重大な学校の衛生管理を担当する教諭である、このあなたの御認識はまことにごりっぱなんです。しかし実際は、一般定員が減ってくればそっちに繰り込むというのでは、どこにおれたちはそういうにない手なんだという養護教員の誇りができますか。そういうことはできないのです。これは一般定員が窮屈になろうとも、どういう情勢になろうとも、その任務が明確であるならば、その制度というものはそれぞれ個々の学校において確立されていなければならない。それが今日一般定員が窮屈だという理由においてできていないという現状に立って、まずわれわれそこからもう一ぺんこの制度の確立をはからなければならぬということを言っておるのです。そういう御認識がおありになりますか、またおありになるとすれば、一体いかようにして防がれますか。こういうことができないならば、これは結果として同じようなことになるのは火を見るよりも明らかだと思うのです。ですから今度出した法案がいかにもりっぱなように言われておるのですが、私はそういう点において非常に危惧があるのです。必置ならば問題は別です。しかしながら今度一万三千人にしてそれを適正に配置しなさいということでは、これは完全に養護教員をして今度の学校保健の重要な現場のにない手としてなすためには、いかにも空疎なものを感ずるのです。どうして防がれますか。いかような具体的な方法をもってその制度の確立をはかられますか。数の問題については次にお聞きいたしますから、その制度の確立の問題についてまずお伺いしたい。
  35. 松永東

    松永国務大臣 今度御審議を願っておりますところの定数基準をきめましたが、大体はこれで何とか暫定的の方法はできるのではないかと思います。それと申しますのは、今大体私の承知いたしております範囲では、現在たしか養護教諭と養護助教諭を合計いたしまして八千三百人ということを承わっております。ところが御承知のようにこの養護教諭に対してもそれぞれの資格が法定せられております。従ってこの養護教諭を全部増して、先ほど来河野さんあたりからいろいろ御指摘のありましたように、各校漏れなく必置するというようなことになりますと、相当の人間が必要なんであります。すなわち、何でも今までの養護教諭と助教諭は今申し上げた通り八千三百名です。これを全部必置いたしますと、二万七千人の増員を要する、こういうことになるらしいのであります。ところがこのところにも欠陥があるのですが、年間に養護教諭を養成いたしますのは、大体今では五百人程度らしいのです。ですからこれを充足いたしますと、もちろん五百人のうちには自然退職者あたりもありますので、どうしても一ぺんにふやすということはなかなか困難であります。漸次増していくということにするよりほかない。しかし今いろいろ御指摘になりましたように、この養護教諭の必要性はもう何人も、いやしくも教育に関心を持っている人は認めておるところであります。ですから、御指摘のような点まで、すなわち完全なところまでこぎつけるために努力を続けていくと申し上げるよりしようがないと思います。ただ劈頭に申し上げました、つまり定数基準の編成をお願いしてありますことができれば、何とかまずやっていけるんじゃなかろうかと存じております。
  36. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 ただいま大臣が申しましたように、定数基準が今度できますので、従来は御承知の通り、実績の二分の一負担でございますから、基準が何もなかったわけでございます。このたび定数基準によって小学校、中学校それぞれ教員については一学級について何人というように基準ができて、教員数は一応確保し、さらに養護教諭、事務職員についてはそれぞれ基準を設けておりますので、総数のワクがきまりますし、具体的に養護教諭については大体何名かということがわかりますので、私は今後はこういう一般教員が足りないから養護教諭のワクを食うということはあまりあり得ないのではなかろうかと思います。ですから、私どもが算定した数だけは少くとも確保できるであろう、かように確信しております。
  37. 辻原弘市

    ○辻原委員 法律が通るか通らないか、これからの問題ですからわかりませんが、ただ今後段に言われた、必要な制度であるならば、地方においてそれが混迷を来たさないようにすることが必要だと思います。そのためには何か流用、これは金の場合は一番罪悪視されている。そういうことと同じように、やはりせっかく制度を設けながらその制度が地方において十分生かされていないというような行政のあり方は間違いだと思う。この点は法律が通るか通らないかは別として、私は何らかの方法でやはり明確にすべきではないかと思う。そのことが将来計画的に学校保健を養護教員の手でになっていき得る一つの方向を決定づけるものだ、そういう意味一つこの問題は後日また審議の機会もあろうかと思いますので、その点は多くを申し上げませんが、そのことをまず一つ明確にしてもらいたいと思います。  それから、いま一つは養成の問題で、これはやはり充足が非常にむずかしいということを言われるのですが、これも私は非常に無責任に聞えるのです。それは大体地方において看護婦の養成機関あるいは保健婦の養成機関というものはおそらくこれは限定されて、年々そう急にふえはしないのです。そういうところから供給を受けるということになれば、おのずからこれは足らぬということはわかっているのです。だから養護教員の必要があればそこに何らかの手を打たなければならぬ。私は地方でもこういう意見をある県で申したことがあるわけです。それは、実際普通の病院でも最近は看護婦が不足している。そこで医療法人個々においても自分たちで養成しようという考え方を持っている。医師会あたりでは自分たちみずからの手で養成しております。不足であるならばそういうところとタイアップをして、それぞれ都道府県において養成をはかる手もあるだろうし、またもっとこれが必要なものであるとするならば、私は国で何らかの養成方法を講じたらいいと思う。年間五百人ぐらいしか出ないから、今急にたくさんほしいといってもだめだというような議論は、これは結局頭としりが抜けているような議論だと思う。そういうことにならないようにしてもらいたい。それから全部必置にしてなお必要とする数は二万何がしであります。別にこの数は天下がひっくり返るような数字でもありません。とするならば、そう数におじてこの問題をなおざりにすることは私はおかしいと思う。また一歩下って考えれば、もちろんこれは一年や二年でいかぬとするならば、三年計画、五年計画、これはあなた方はすきなんですから、だから一つ三年計画でも五年計画でも立てて、そうして二万五千名充足するとするならば、年間五千名ずつ養護教員として充当していこう、そうすればりっぱな制度ができ上るのです。でき上ったら、私はこの学校保健法法律用語の三つや四つ間違っているよりも、はるかにりっぱな学校の健康管理というものができ上ると思う。そういうところに一つ着目をして、養護教員の問題はこれ以上口頭禅にならないようにこの機会にしてもらいたいと思います。この点についてはわれわれ与野党とも非常に熱望しておる。ですけれどもただ財政的な理由ということで御遠慮を申し上げておるだけです。しかし文部省が積極的に三年計画あるいは制度を確立するというような方針を打ち出されるならば、私は与党の方々といえども反対される向きはおそらくないと思うのです。皆さん賛成の御意見のように傾聴しておられますので、一つこの機会に、せっかく保健法も出ておるのだし、またあなた方の定数確保法律も出しておるのだし、われわれもまた学校教育法の改正案を出しておる。しゃにむに押さず、一つ与野党で相談しよう、政府も説得して相談しよう、大蔵省もいやな顔をするようなら一つここに来て聞いてもらおう、こういう決意を持っているのですから、もっと積極的にお考えを賜わりたいとわれわれは考える。大臣どうですか、計画的に制度を確立して、数は一ぺんにいかぬでも徐々にふやすという方策を、この際真剣にあなたは大臣としてお取り上げになることはお考えになりませんか。このことが私は学校保健というものをほんとうに教育の上で機会均等あらしめる最も重要な方策だと思う。お考えを承わっておきたいと思います。
  38. 松永東

    松永国務大臣 御指摘のことは重々その通りだと思います。従ってこの法案を通過さしていただきまして、その後は必ずや御趣旨に沿うように努力してみたいと思います。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 関連して平田ヒデ君。
  40. 平田ヒデ

    ○平田委員 大臣お尋ねいたしますが、大体辻原委員の質問で尽きておるわけでございますけれども、文部省の養護教諭の配当基準でございますね。小学校は一千五百名について一人、中学校は二千名に一人ということでございますけれども、この基準案は県の配当基準よりも悪いという調査はできておりませんでしょうか。文部省の方が低いという、そういう御調査はなさっていらっしゃいますか。
  41. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この基準は非常に高い基準でございますので、大体全国の大多数の県はこれより下回っております。そういうわけで、この基準を充足するに今申しましたように三千名の養護教員がさらに必要、こういうわけでございます。しかし一部の県においては、この基準よりも上回っておる県がございます。しかし私どもは、上回っているからといってこの基準に引き下げるようなことは、そういう指導はしたくないと思っております。
  42. 平田ヒデ

    ○平田委員 中学校が二千名と申しますと、地方の方に参りますと、一校で二千名の中学校というのは少い。そういたしますとこれはかけ持ちでございますね。
  43. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 養譲教員につきましては、小学校、中学校かけ持ちしていただいたり、あるいは他の中学校とかけ持ちしていただく。こういうふうに小学校の場合は千五百名、中学校は二千名でございますので、そこを彼此融通していただいて、できるだけ効果を上げていただきたいと考えております。
  44. 平田ヒデ

    ○平田委員 昨年のように大へん流感がはやりまして、ほとんど全校全滅というような場合も、これはなまなましい例でございましたけれども、こういうときに養護教諭一人で見回るということも容易でないから、全校あげて受持の先生方は子供たちを注意していらっしゃると思うのですけれども、私はなかなかその目が届かないと思うのです。子供でも持っておられる先生だったら、大てい子供の顔色を見てどうかということもおわかりでしょうと思いますけれども、これは若い先生方がいらっしゃるので無理かと思いますけれども、こういう例などもございますので、私はやはり千五百名とか二千名という基準は非常に酷だと思っております。今辻原委員の御質問でこれから三千人をふやすということでありますけれども、一千二百万人にも及んでおります中学、小学校の子供たちに対しても、私はほんとうに子供たちの健康を保持していこうというお考えでありますれば、もっとこれは予算化されて、もっともっと大ぜいふやしていらっしゃらなければいけない、そう思うわけでございます。  それからもう一つお伺いいたしますが、保健所との連絡でございますけれども、これも私二年ばかり前にお伺いをいたしたことがございました。これは僻地の学校でございますけれども、子供を連れていかなくちゃいけないという場合に、先生が一人の場合もあり二人くらいしかいらっしゃらない場合もある、そういうことになりますと、山の奥から出てきて、保健所に行って見てもらって帰るまでには短かくて四、五日かかるところもあるわけでございます。こうなりますと、私はなかなか問題が少くないと思う。相変らず僻地の学校は日の当らない場所に置かれてしまって、せっかくこういう学校保健法案が出たのですけれども、そのためにまた何かしら取り残されたという深刻な感じを与えるのではないかと思いますが、この問題についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  45. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御指摘のように、特にそういう意味保健所との強力な連絡が必要なんでございます。エックス線の検査とかあるいはツベルクリンの反応検査学校で非常にやりにくいようなものは保健所でやっていただく、この場合に保健所が非常に遠いというような場合も確かにあり得ると思うのです。できるだけ私どもも厚生省ともよく緊密な連絡をとりまして、巡回診療とかあるいは巡回治療といったようなことも考えていただいて、僻地における学校の健康管理に支障ないように努力して参りたいと考えております。
  46. 平田ヒデ

    ○平田委員 この前に私お伺い申し上げましたときも、保健所の方に連絡をとって、保健所の力ではなるべくやってあげたいと思うけれども予算がない、これは保健所の方でも厚生省の方でもそう言っていらっしゃるわけです。努力はするけれども予算がない。学校の方でも、局長さんの今のお答えでも、保健所連絡をとってとおっしゃいますけれども、ほんとうにお話し合いなさったことがございますか。
  47. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは厚生省としばしば連絡しまして——私ども保健所と直接やるわけではないのです。厚生省が積極的に学校保健計画には協力したい、こういう意味でこれは省令その他も十分協議してやることになっておりますので、御心配の点はないと思っております。
  48. 平田ヒデ

    ○平田委員 保健所の方でも、私はこの間、四、五日前ですけれども保健所の方に参りまして、実際に要求された場合にお出かけになっていらっしゃいますかと伺ったところが、なかなか出張するだけの費用がない。大へんお気の毒ですけれども、そう思いながらお伺いできない場合の方が多いということで、ほとんど行っていらっしゃらないということが言えると思うのでございますが、この点について、今年度の予算の中にはそういうことが——厚い生省のことを局長さんにお聞きしているのは、意地悪でも何でもございません。真剣になって交渉していただきたいと思うから申し上げているのでございますが、そういうことはどんなお話し合いがございましたか。
  49. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私、保健所の予算までは相談しておりませんけれども本法施行については厚生省は全面的に協力することを、各局長とも声明しておりますので、固い約束をとっておりますから、私どもは円滑に実施できると考えております。
  50. 小林信一

    ○小林(信)委員 関連して。今の平田さんの質問で、もう少し念を押しておきたいところがあるのです。  今多少でも養護教諭を、文部省の出した定数基準のワク外に、多く確保しているところがあるわけです。そういうところは減らすようなことはない、こういうふうに局長はおっしゃったのですが、ここのところをどういうふうに文部省は確約してくれるが、よく念を押しておきたいのです。私の心配するのは、かけ持ちでおやりになるとか、養護教諭の使命ということについて、文部省のお考えは、従来学校看護婦時代から養護教諭という形になってきた段階をまだ捨て切らないわけです。やはり学校保健法を出す精神というものは、普通の先生の仕事と、保健衛生をする先生の仕事と、両々相待たなければならない学校教育の重大問題なんです。ところが今までの過程から、ややもすると養護教諭は、一般の先生と比べてそうでないような考えを持ちやすい。だから、簡単に二千名というような数を出したということは、かけ持ちも可能だからというようなことを言われるのですが、もっとここのところは、学校保健法を出した文部省の精神からしても、私は強調しなければならないところだと思うのです。従って、決して現在の数を下回るようなことはさせない、これをどういうふうに文部省は具体的な方策をもって臨むか、そこのところを私はこの際ここで、法案の通る前に御説明願いたいと思うのです。私たちの憂慮する点は、そういうふうな考えがやはり地方にもありますから、最近の地方財政の影響から、先生の整理ということを、前にも申し上げましたが、自治庁あたりに強要されて各府県ではやっているわけです。そういう場合に養護教諭軽視の考えから、養護教諭を切ったらいいじゃないか、おれのところは定数基準よりも上回っているのだ、だから養護教諭を整理することによって、一般の先生の方の数を確保しようじゃないかということが起きないとも限らない。私はそれはあり得ると思うのです。そういう場合に、文部省としてはどういう確たる信念をもってやるのだ。これはこの前も、局長となくなった竹尾さんと三人でお話をしたことがあるのですが、あなたは、ぜひとも何らかの形で二万名まで——町村の費用でまかなっているのもあるけれども、二万名まで、約半数までは何とかして確保してくれれば、大蔵省も事実を無視することができなくて、百三条を撤回して、そして各学校に必置するという段階になるから、それまでお互いに協力しようじゃないかということをあなたも言ったはずなんです。こういう点から考えて、地方財政がどうであろうが、また軽視する者もあろうが、一人でも数を少くしてはならない。この学校保健法を出す趣旨からしても、その腹がまえを——これは大臣にも私はぜひとも聞いておいていただきたいのですが、ここで一つ御言明願いたいと思います。
  51. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは定数基準の問題でございますけれども、今おっしゃったように、地方財政が窮屈で、教員の行政整理が行われておったことは、皆様も御承知の通りでございます。現在十九県が赤字府県でございますので、それぞれの県で教員の行政整理の計画を立てておったわけであります。そこでその計画が、教育水準を下回っては困るというので、私どもこのたび定数基準の法案を出したわけであります。ですから、この定数基準の法案を通していただきますれば、今後地方財政ということで、首切り計画はなくなるわけであります。これが第一でございます。  それからもう一つは、今度具体的な養護教諭の問題でございますけれども、養護教諭は、私どもの基準で計算しますと、大部分の県が下回っております。ですからまず問題はないのですけれども、一、二の県では、この基準よりも高い県がある。たとえば佐賀県のようなところは、養護教諭をほとんど置いております。ところが幸いに、佐賀県では定数基準を計算しますと、なお増員をする計画になる。ですから養護教諭とその他の教員を全部含めますと、佐賀県では総数においてはさらにふやしてもいいという結果になるわけです。これはどういうことかと申しますと、一般の教員の方を窮屈にして、養護教諭を優遇している県でございます。ですからこういうような県は、総数としては上回っておりませんので、私はこれは問題ないと思います。たとい養護教諭の配当がよくても、その配当を下げる必要はないと思っております。  それから、全体として定数基準を上回っている県が、約十県ほどございます。しかしこの場合は、定数基準を上回っているからといって、整理をするようなことのないように、自治庁とも打ち合せております。少くとも今度の定数基準で国庫負担の方は計算しますし、さらに自治庁の方は、交付税の単位費用は、私どもの方の定数が単位費用の計算の基礎になるわけですから、同数のものが交付税の計算になるわけでございます。そこで、この新しい制度で計算した場合に、前年度よりも予算が減るようなことがあれば、特別交付税をもって穴埋めしましょうということを、自治庁と約束をしているわけです。ですから財政的に、今度の定数基準を使ったために減るというようなことは私はないと思います。ただ、これは地方の県の事情で、教育に熱心、不熱心というところがあると思いますので、一人も首を切らぬということは、私も明言できませんけれども、財政的には十分な手当をしているつもりでございます。
  52. 小林信一

    ○小林(信)委員 大体決意のほどはわかったのですが、しかし今まで文部省のやってきたことから考えてみて、自治庁に相当強力に働かれても、何か自治庁になめられるような形があるわけです。私の聞きたいのは、勤務評定を実施しないところに措置要求をして、法令違反で罰するという、その決意と同じように、もし養護教諭を減らすというようなことがあったら、それが財政的な事情からであっても、措置要求をなすというような決意を持っていかなければ、この学校保健法案意味は私はないと思うのです。そういうふうなところまで私は要望して、ほんとうに学校衛生、学校保健ということをやっていかなければ、教育の片手落ちだということを申し上げたい。  そこで、第四章に学校保健技師というのがございますが、これは私の聞くところでは、医師の代表と、歯科医の代表と、そして学校薬剤師、この代表というものがそろわされるようなふうに承わっておりますが、さしあたっては学校薬剤師は、この学校保健技師の中からのくというふうなことを聞いているのですが、これはどうですか。
  53. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 そういうことは考えておりません。学校保健技師は医師が中心でございますけれども、もちろん歯科医で適当な方があれば、歯科医でけっこうでございますし、また薬剤師で適当な方があればけっこうでございます。要は、学校保健の推進をはかる適当な人物であればけっこうでございます。
  54. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 高村坂彦君
  55. 高村坂彦

    ○高村委員 本法案につきましては、今まで社会党の各委員の諸君からいろいろ詳細にわたっての質問がございましたので、私がお伺いしようと思いました点もほとんど尽きております。養護教諭の問題につきましても、私ども考えておりました点につきまして質問がございまして、当局からもその決意を十分伺いましたので、この点は質問を省略いたします。ただ一、二の点につきましてごく簡単にお尋ねしたいと思います。  今回のこの法案関連する予算でございますが、国はこの法案関連しましてどれだけの予算を組んでおられますか、その内訳を明らかにしていただきたい。  第二は、この法案実施されることによりまして、地方公共団体がどのくらい新たに予算を必要とするようになるか。この点もおわかりでございましたら明らかにいたしていただきたい。  第三は学校医の問題でございますが、先ほど学校医につきましては地方財政計画において従来一人三千円であったものを七千円に引き上げたというお話がざいましたが、これは学校医だけでございますか。あるいは歯科医並びに薬剤師も含んでおるか。それからこの地方財政計画において引き上げましたものが、この計画通りに地方で実際使われるかどうか。一体保障ができるかどうかということについてのお考え、またもし心配があれば、それに対してそれに使われるような措置をとる方法があるかどうか、こういうことをお尋ねいたしたいと存ずるわけであります。  本法案ができまして、学校保健の面におきまして一大躍進だと私は思います。そういう面におきましては非常に敬意を表しますが、今申しましたような点をさらに十分一つ御注意いただいて、そうしてこの法案実施されました暁において、この法案目的としました趣旨が十分達成せられますように、一つ御配慮を願いたいと存ずるわけであります。与党でございますから、今の点だけを明らかにしていただきまして、私の質問を終りたいと思います。
  56. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この法案実施のために国の方の予算では約三千万円、これは児童生徒治療費でございますが、治療費の補助半年分として三千万ですから、平年度では少くとも大体六千万を予定しておるわけでございます。これは先ほど申しました要保護児童及び準要保護児童学校病に関する治療費の二分の一補助でございます。ですから少くともそれと同額のものが地方負担に相なるわけでございます。それからさらに地方負担といたしましては、新しく児童学校に入る場合は就学前の健康診断がございますので、就学前の健康診断にさらに数千万かかると思っております。だから全体で大体二億円程度が予想されておるわけでございます。それからなお職員健康診断費として二分の一の補助の七百五十万、地方負担分を合せまして千五百万が別に計上されております。それから地方交付税の中で学校医については七千円と申しましたが、三千円を七千円に上げたのは学校医のみならず、学校歯科医も入っております。なお薬剤師につきましても今後ふえますれば当然考えなければならぬと思っております。なお保障の道があるかというお尋ねでございますが、交付税交付金でございますので、この場合に私どもは従来これだけの経費を交付税の中で見たという通知をいたしておりますので、これを確保するように、都道府県教育委員会さらに市町村の教育委員会に通達をいたしまして指導をするつもりでありますが、これは補助金ではございませんので、的確に確保することは困難かと思いますので、十分指導を徹底いたしまして遺憾なきを期したいと存じます。  なお本法施行に伴う今後の措置につきましては、今後実施の状況を見た上で不十分な点を補って完全なものにいたしたい、かように考えております。
  57. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 ほかに御質問ございませんか。——なければ本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  これより本案を討論に付します。別に討論の通告がございませんので、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 御異議なしと認め、これより採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  59. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 起立総員。 よって本案は原案の通り可決いたしました。  この際坂田道太君より、本案に対し付帯決議を付したいとの提案がなされております。坂田道太君。
  60. 坂田道太

    ○坂田委員 付帯決議を提出いたしたいと思います。その案文を朗読いたします。    附帯決議   養護教諭は学校医の下において、学校保健の常務に従事するものであり、学校医が必ずしも常勤と限らない現状において、学校生活における養護教諭の重要性は極めて大なるものがある。   政府は本法案趣旨に鑑み、養護教諭制度の拡充について、適切なる措置を講ずべきものと認める。   右決議する。
  61. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 ただいまの坂田君の提案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  62. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 起立総員。よって坂田君提案の通り学校保険法案は付帯決議を付するに決しました。  ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  64. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 次に文教行政に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますから順次これを許します。櫻井奎夫君。
  65. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 私は学校統合に関する問題についてお伺いをいたしたいと思います。御承知の通り新市町村建設促進法の精神にのっとりまして、全国的に今学校の統合が行われておるわけでありますが、この統合につきまして、今全国的に各地にいろいろな紛争が起きておるのであります。このことはおそらくまだ文部大臣の耳には達していないものもあるかと思います。それは開校が四月一日ということで、この時点を境にして各地で紛争が起きておる、私が申し上げたいのは新潟県では二ヵ所の学校においてただいま紛争が起きております。一ヵ所は北蒲原郡の紫雲寺町における紛争であります。もう一ヵ所は西蒲原郡の吉田町における学校紛争でございます。これはひとり新潟県だけではなく、各地にこのような事態があると思いますし、あとでまた高津委員の方からも御質疑があると思うのでありますが、この紫雲寺町の方は反対派が学校の統合による廃校の方の引っ越しを実力をもって阻止をして、机やいすを渡さないという事態が起きております。それから吉田町の方はこの統合されるところの米納津中学がやはり住民に了解を得ないままに統合が行われました結果として、ただいま米納津地区の住民が結束をいたしまして、百七十一名の生徒のうち百六十名というものが前の米納津中学に立てこもりまして、ここで授業を続けておる、ところが統合になった吉田中学校からは、これを一日も早く統合するということでいすや机をとりにくる、こういうことで部落の人がここにピケを張って武装警官二十名が出勤をして今紛争が非常に激化しております。こういう状態であります。この吉田町の件につきましては、私は再三陳情を受けております。実は文部大臣あての陳情書もここに持っておるのでございます。しかしこれは何分にも地方の県教育委員会が自主的に解決すべき問題であるという立場から、今までできるだけ県教委が中に立って完全に円満なる妥結を遂げるように、私はこういう立場をとってきたわけでございますが、県の教育委員会の調停も失敗いたしまして、ついに今日このような険悪な事態ができております。これはこのまま放置いたしますと、おそらく傷害、暴行、刑事事件というものにも発展し、ひいてはまた政治的問題にまで発展する可能性なしとしない。これは非常に学校行政上重大な問題だと思う。こういう事態に対して一体文部省はどのような態度をとっておられるか。学校統合に関しましては、御承知の通り二分の一を国庫が補助しているわけでありますが この補助金の交付の際に、地元の実情というものを十分に調査をなさって、補助金交付があったのかどうか、こういうことがあったならば、今日のこのような事態というものは私は起らなかったと思う。やはり調査がずさんなままに、町から言ってきた、県の教育委員会を経由してきた、従ってこれはもういいのだ、こういうことで補助金を出しておられるのじゃないか。その結果地方の住民が非常に騒ぎを起す、こういう問題が起きているのじゃないかと思うのです。補助金の交付についても問題点がございますし、さしあたってこのような武装警官まで入ってきて、全村が結束して学校を守っておる。こういう事態は、児童生徒教育上一日も放置することのできない重大な問題だと思うのでありますが、文部大臣はこういう事態に対してどのような処置をとられるお考えでございましょうか。
  66. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点は、実はうすうす聞かぬでもないのです。しかし御承知のように、私どもの方では指導とか援助とかというような力しかありませんが、しかし学校統合は実は御指摘になりました新潟県ばかりじゃないのです。すぐ近くの埼玉県にもそういう問題があって、非常にもめております。どうすればいいかと思っていろいろやっておりますけれども、しかしうかつに口を出しますと、中央から出てきて押しつけたとかなんとかというような非難も受けるおそれもあります。しかしそんな非難なんかあってもなくてもかまいません。御指摘のように警官が立ち会って、そうして暴行脅迫とかなんとかというような刑事問題化するようなおそれがあります場合は、よく事情を調査しまして、そうして一つこちらも教育委員会あたりと協議いたしまして、善処しておさめなければならぬというふうに考えております。
  67. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 これはもちろん今日の教育委員会制度上、文部大臣が強力にこれをどうするという権限はお持ちにならない。しかしあなたがしばしばおっしゃる指導助言という権限はあるのです。指導助言をなさって、地方のいわゆる県の教育委員会の責任においてこれを解決させる、そのためには文部省はやはり補助金という大きなひもを持っておるわけです。この補助金を打ち切られるとどうにもならないでしょう。指導助言どころか、一種の脅迫のあれを持っておられる。この補助金をどうするかという問題もあります。こういう事態は私はどっちがいいとか悪いということは十分調査しなければわからないことですけれども、その中に巻き込まれておる児童生徒は、授業もできないで警官が周囲を取り巻いておるというようなことでは、教育上実に捨ておくことのできない重大な事件だと思う。この統合についての各地の紛争の真相は、十分文部省が責任を持って、各県の教育委員会指導されて、その真相を突きとめると同時に、将来このような紛争が起きないように、たとえば統合による補助金を交付する場合においても十分な地区住民の同意がなされておるかどうか。特に一番問題になるのは父兄です。実際生徒の父兄が統合については一番直接の利害関係があるのですから、そういう統合の場合に父兄の同意が得られておるのかないのか、こういう点は十分御調査の上で補助金の交付がなされないと、せっかく大事な国の税金が、そして教育をさらに充実し、さらに進めていこうという政府の親心が地方において紛争の種となって、逆効果を来たしておるわけです。このような事態の一日もすみやかな解決のために、文部省が直接その問題の起きている都道府県教育委員会に対する適切なる措置を一日も早くとられるように、もう警官が来て今傷害ざたが起きようとしておる、こういう事態でございますから、払は緊急なる措置を要望してやまない次第でございますが、大臣いかがですか、緊急な措置をとられる考えがあるかどうか。
  68. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたことは、まことに学童の今後の入学にも非常な影響を来たすばかりでなく、その精神にもショックを与える大きな問題です。従ってこうした問題については何といいましても円満に解決をしてもらって——事教育に関することでございますから、もちろんこれは超党派内に円満な解決をしなければならぬと存じております。従って急々調査いたしまして方法をとらなければならぬと存じております。  さらに御指摘になりました補助金につきましては、円満な解決ができない以上は補助金は渡さない。従ってそれは先ほど申し上げた通りその村の実情をよく調査いたしまして、その上に立って善処したいというふうに考えます。
  69. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 大臣の御決意のほどを承わったわけでございますが、ただその調査の場合、たとえばこの吉田町に起きた紛争はいろいろ私も調査をしたわけですが、これはやはり学校を統合するという決議をするに当って、一応形式は町の教育委員会あるいは町の議会、こういうものの賛同を得て、県の教育委員会を経由して文部省に申請が来ておるわけです。形式上何らあやまちはない。ところがそれらの手続は踏んでおるけれども、大事な統合される村の住民に対しては何ら局知徹底されていない。これは三年計画の統合でございまして、すでに昭和三十一年度、三十二年度と補助金を受けておって、三十三年度に完成する、こういうことになっておるのです。まだ三十三年度の分が残っておるのです。ところがたまたま昨年の夏会計検査院が検査に参りまして、この実態を見て、すでに二年度の補助金をもらっていながら何ら統合の実が出てないではないか、米納津中学校はこっちでやっておるじゃないか、学校を統合してないじゃないか、この会計検査院の報告にあわてて、町当局は今強引に力をもって統合させようということになっておるのです。町長は自分がそういう申請をした手前、自分の政治的生命を賭しても無理に統合させる、そうしなければ今まで自分がやってきた手続がうそになってくるおそれがある。会計検査院に対しては三十三年の四月一日から必ず統合させますし、住民には何ら異議がないのであります、こういう報告もしております。従ってこれはやはり県の教育委員会等にまかしての調査でなく、文部省が責任を持って調査をなさらないと、こういうただうわべだけの調査だと、町長の申告であるとか、県の教育委員会の町長派といわれるような者、町長と一諸になって今まで統合を進めてきた人たちの一方的な申告に終るおそれがあるのです。従って紛争が起きる以上は、これは起きる原因があるのですから、その原因についての公正厳正な責任を持った文部省の調査を私は要望してやまない。特にこの場合はそういう一方的な報告が行われるおそれがございますので、ぜひこの点を御調査願いたいし、また事と場合によっては衆議院なり参議院の文教委員会から実態調査のための議員派遣ということも考えられるわけでございますので、よろしくお願いたします。
  70. 高津正道

    ○高津委員 今櫻井委員の御主張は、私全部同感する、同じ意見でありますが、広島県の双三郡三和町上板木小学校を統合して持っていくというので、同様に警官が数十名も出て、三月三十一日の閉校式の場合に、非常な混乱を生じておるのであります。そうしてあした——ゆうべの長距離電話だから、きょう教材などをみんな統合校の方に持っていく。それで校長を別にこしらえて、また教師を任命して、一定の別の場所を——封印してしまうのですから、その封印を破るわけにいかぬのです。それで別のところで私立の学校を非常な負担をしてこしらえるわけですね。それできょう阻止に出なければ乱闘に及ぶかもしれぬというから、そういうことはするな。抵抗しないで十分陳情しなさい。みんな了承したのではないかと言われたらあと発言権はなくなるぞ。どうぞ法力などのないようにと私は個人の見解を電話で伝えておいたのでありますが、この広島県のような場合、文部大臣は同じように調査権をもって調査にお乗り出しになるお考えがあるのかどうか。全国にこういう事例は一ぱいあると思うのです。御見解を承わりたい。
  71. 松永東

    松永国務大臣 高津さんの今のお話で、広島県のことは初めて私耳にいたしました。これはそうどこにもここにもあるのじゃありませんけれども、私の耳にいたしておりますのは二、三個所あります。だけれども、これはこういう問題のためにそんなごたごたすることがありましては、さっきも申し上げた通り、事教育に関する問題だけに、何としてでもこれは円満に解決せなければならぬと存じます。仰せに従いまして、その問題について急々調査をいたしまして善処したいと存じます。さらに文部省からも何とかして都合を見て派遣したいというふうに考えております。
  72. 高津正道

    ○高津委員 櫻井委員の御注意のあったように、調査に文部省からも人を派遣する。非常にありがたい。同じ町内の少数の部落の人は、喜ぶことであろうと思いますが、その場合両方の側から同じように聞かれないでは真相はつかめないと思うのです。必ず両方から聞いていただきたい。  それから三十一年に制定された地方教育行政の組織及び運営に関する法律によって、文部大臣の権限がだいぶ拡大されたわけです。措置要求権、調査権等々いろいろ拡大されておるわけです。今までならば教育委員をリコールの方法もありますから、学区内の住民に、それを牽制する権限があったわけです。今やそれがない。上からの任命になっておりますから、これを救うのは文部大臣の権限以外にはない。違法行為があれば、それは地方裁判所に訴えることができるが、不当なことを押える権利は、町の行政当局が勝手なことをやり出した場合には、文部大臣がこれを扱わなければ全く助けようがないのです。  それからかつて平野力三君が、閣内で調和を破るようであるけれども全国の農民の実情をどうしてくれるのかと非常に大きく争ったわけです。平野力三君は落選しておっても、今もって彼を徳としておる。そしてまた京都の知事に今なっておる蜷川長官は、中小企業がこの状態で政府がこんなことじゃいかぬといって政府と争った。それをみんな今もって中小企業が徳としておるのでありますが、中小企業庁長官が中小企業の苦難に対してそれだけの愛情を持たねばしようがないのです。文部大臣は、教育について同様に末端を、ことに僻地の住民、父兄、六キロも七キロも通学しなければならないようなところで、小学一年生もおれば二年生もおりますから、そういうことは大へんなことです。通学バスの用意は全然ありません。第一町当局はバスを持っておりません。その予算の措置もちっともありません。それだから、子供の健康を児童福祉法の精神に沿って守らなければならぬ、死ぬようなことを子供にはさせられないといって奮起しておるのです。だから別の校長をこしらえておるわけです。早急に調査に乗り出し、何とかの措置を講じていただきたい。  それから、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第六十一条にこういうことが書いてあります。「この法律に定めるもののほか、市町村の廃置分合があった場合におけるこの法律規定の適用の特例その他この法律施行に関し必要な事項は、政令で定める。」この政令は出ておるのでしょうか、齋藤政府委員に聞きたい。
  73. 斎藤正

    ○斎藤(正)政府委員 地方教育行政の組織及び運営に関する法律施行令の第六章は、市町村の廃置分合の場合における特例を規定しております。
  74. 高津正道

    ○高津委員 上板木小学校の廃校をして、しゃにむに持っていくということは、その施行令のどの条項にも違反してはいないかどうか、それをやはり齋藤政府委員に承わりたい。
  75. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 ただいま申し上げましたことは、市町村の分合のことでございますので、お話しの学校統合のこととは別個の事柄だと存じております。
  76. 高津正道

    ○高津委員 どの政府委員からお答えいただいてもけっこうですが、このような場合に、上級機関に対する訴願の方法があるものかないものか。どういう方法をとればいいのか。税額の不当な通知があった場合には、税金でも何でもみな方法がありますれけども、このような場合に、どういう方法をとれば救われる道があるのか。今大臣が調査に乗り出す、必要に応じて措置権も使う、これは非常にいい答えで、私は満足しておりますが、他に何らかの方法があるのですか。
  77. 斎藤正

    ○斎藤(正)政府委員 御質問の点は、団体内部の事務の問題でございますので、国あるいは地方公共団体と国民との関係ということではございませんので、今伺っている範囲では、争訟の方法が私気がつかないのでございます。
  78. 高津正道

    ○高津委員 とにかくこの哀れなる部落の人々のために、文部大臣は、自分の管轄で正義の行われるように、不当行為のないように、松永文部大臣はよくおやりになったということが記録に残るように、りっぱに行動されることを私は要望して、私の質問を終ります。
  79. 佐藤觀次郎

  80. 山崎始男

    山崎(始)委員 文部大臣お尋ねいたしますが、私がお尋ねいたしたい点は、児童災害の問題でございます。昨晩各紙の夕刊紙によりますると、東京の武蔵ケ丘の生徒が京都観光バスに乗りまして、京都地内で十数人災害を受けております。その問題で私は、おそらく大臣も私たちと同じ気持だと思うのでありますが、ちょうど五月の末ごろまで、おそらく全国で修学旅行団が引きも切らないと思うのであります。きょうも国会へごらんの通りにたくさんの修学旅行団が参っておりますが、無事にこういう学生たちが修学旅行を終えてくれればと思う気持は、おそらく文部大臣も私たちと同じだろうと思っております。それについて実は私も提案者の一人となりまして、たしか昭和三十年の中ごろであったのでありますが、わが社会党の方から児童災害補償法という法律提案いたしております。そういたしておりますると、たしか昭和三十年の五月と記憶いたしまするが、御承知のように紫雲丸事件が起きた。引き続き同じ年の夏の土用休暇には、津の海洋におきまして御承知の三重県の海水浴場事件というものが起きた。災害は忘れたころにくると俗に申しますが、その後児童災害の法律制度の問題がその国会及び次の国会におきましても継続審議となっておることを私は記憶いたしておるのであります。それにつきまして、きょうもたまたま学校保健法というものが通過いたしましてお互いに御同慶なんでありますが、やはりこのような学校保健法なんかといわば兄弟のごとき法律ではないかと私は思うのでありますが、それに対しまして、昨年の十一月の初旬だと思うのでありますが、全国的に各新聞社が取り扱いまして、文部省の方で児童災害に対する政府提案として立案企画をされ、この国会にお出しになるということを新聞紙が大々的に実は報道したのであります。私も、その内容がどういう内容であるかはつまびらかにいたしませんが、いずれにいたしましても、私が児童災害法の提案者の一人となっておりまする関係上、これは政府が出して下さっても非常にけっこうなことだと、実は非常に喜んでおったのであります。ところがいつの間にかその後姿を消してしまいました。それにつきまして、事実そういうふうな政府提案として文部省がお出しになるお気持が非常に強くおありになったのかどうか、この点を一つお聞かせ願いたいのであります。
  81. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました児童災害補償法は、これを何とかして出そうというので——今あなたの仰せになった通り、前にもそういう議題が出たのでありますが、これはけっこうなんで、どうしてもそれをせんければならぬ忘れたころに災害というものは起るものだというのはお話の通りなんです。ですから、何とかこのわれわれの目的を達成したいと思いまして、お話の通り昨年この案を作りまして、そして強力に推進し出した。ところが先ほど御可決を願いました保健法案と二つがこんがらかったものですから、その災害補償法はどうしても予算の獲得の面からいって——これはもうあけすけにお話し申し上げますが、今年はどうしても予算が取れないということでございます。しかし御指摘の通りこれはどうしても、やらなければなりません。ことにこうした花どきともなれば、ことにシーズンともなりますともうあちらにもこちらにも旅行をする団体がたくさんありまして、ことにそれは小中学の学生連中が多うございます。こうしたいろいろな環境の中から道徳教育あるいはそうした面の教育も施したいという考えで、ぜひ一つこれはやらしたいという念願を持っております。仰せになりましたようなそうした補償法を作りませんと非常に不安であるばかりでなく、親たちも、ああした大きな被害が何度も起ったので、出すのに心配になると存じまして、その熱意を持っておったのでございまするけれども、右申し上げる通り、これはこの国会には間に会いません。しかし次の国会には必ず出さなければならぬ、また出して、そうして御説のような不安を除去せんければならぬというふうに考えております。
  82. 山崎始男

    山崎(始)委員 大臣の今この御答弁を聞きまして、実は私も非常に喜ぶ一人なんであります。申し上げるまでもございませんが、島根県あるいは岡山県、広島県というようなところで、各PTAがこの問題について多少でも救おうという目的で、たしか昭和二十九年ごろかと思いますが、自主的に児童災害に対する団体を作りまして、それが順次三重県あるいは岐阜県、滋賀県、愛知県などに及び、現在では東京都あたりでも一部分やっていらっしゃる学校もあると思うのでありますが、児童災害を多少でも救おうという趣旨の団体があちこちに生れておるのであります。たまたま私たちの地元の市におきましても、PTAが主体となりましてそういうふうなものを作らんとする動きが現在あり、実は私もその相談を受けているのでをあります。ところが私の気持では、いずれ文部省の方から政府提案としてこれが出されるから、いましばらく様子を見た方がいいだろうということで、実は昨年も抑えてきたのであります。ところが本年聞きますと、今おっしゃいますように学校保健法との二本建で出したために、この法律が実は芽を出さなかったのだという御説明でございますが、本会議が始まりますので私は長くは申し上げませんが、果して学校保健法との並行で出したためにこれが芽を出さなかったのか、あるいは一昨年あたりから、いわゆる保険会社が、この法律を作られたならば保険会社が困るのだということで、保険会社自体で、全国の二千万になんなんとする児童制とを対象にしたところの独自の保険会社の試案というものを出して強く大蔵省に折衝いたしておりました——今日私はそれをつまびらかにいたしませんが、そういうことが原因となってこの災害補償法というものが本年つぶされたのか、あるいは軍人遺家族あたりのいわゆる補償金の問題で途中から文部大臣が腰を折られたのか。私たち野党の立場からすると、今の文部大臣の御熱意のほどはうかがえるのでありますが、そういうふうないきさつがあって、そういうふうなことが関係しているのじゃないかという気もする、むしろ払はその方が強くするのでありますが、その点のいきさつを一つ忌憚なくお間かせ願いたいと思います。
  83. 松永東

    松永国務大臣 学童に対するいろいろ御親切なお言葉まことに感謝いたします。御指摘になりましたように、この問題は、保険会社の営利といいますか、そうした試案とかあるいはそうした問題とは全然関係がありません。さらにまた、最後にお話しになりました軍人の恩給ですか、そんな問題とは一つも関係ありません。私が先ほど申し上げた通り、この学校保健法案と二つ出しましたために、まず今度は学校保健法案だけの予算をということで、そうしてこれはあと回しということになったのが実情でございます。しかしおかげさまで今御説明になりました通り、全国十数府県に学校安全会ができておりまして、自治的に何とかこうしたことの防止をしたいというようなお企て、まことにこれもありがたいことだと思います。私ども文部当局といたしましては、今後こうした自治的の会も育てあげていきたい、さらにまた仰せになりました児童災害防止法、これもぜひ一つ提案いたしまして、そうして万然を期したいというふうに考えております。
  84. 山崎始男

    山崎(始)委員 それでは最後に一点だけ大臣の御決意のほどをお伺いいたすのでありますが、今の大臣の御答弁は、心の底からあなたの言葉が実は出ているように受け取れるのであります。その点私も非常に喜んでおるのでありますが、とにかく文部省はそういうふうないきさつによって芽をつぶされた。しかしながら次の国会では必ず提案して同時に通させてみるという御決意がおありになるかどうか。申し上げるまでもありませんが、もう解散は目の前に控えております。次の国会で松永文部大臣が生れるかどうか、これは保証の限りではありませんが、(笑声)私は今のあなたのお気持を伺っておりますと、解散後の政府におきましてもぜひ一つ松永文部大臣を出していただきたいというふうに考えるのであります。そこで次の国会のことをお尋ねするのも妙なことでありますが、次の国会には文部省提案で強く大蔵省とも折衝してこれをぜひ通過させるのだという御決意のほどを、最後に簡単でよろしゅうございますから、一点だけお聞かせ願いたいのであります。
  85. 松永東

    松永国務大臣 ぜひその目的を達成するように努力したいというふうに考えております。
  86. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員長代理 本日はこの程度にいたします。  これにて散会いたします。     午後一時三分散会      ————◇—————