○鈴木(義)
委員 そうすると
文部大臣もその点は全く同感であるというようでありまするから、それならば
一つ思い切って改革に乗り出してはいかがでありますか。徐々になりますとか、先ほど北岡さんのお話でも、やるつもりはあるが、徐々にやるのだ、それは徐々にやるよりほかにない。大仕事のように見えるのでありまするが、
一つの革命を行うのに徐々にとか、そのうちにとかいっておったのではなかなかできないと私は
考えるのであります。
ただいま大橋議員から中国の文字革命のお話がありましたが、私はここに周恩来総理が今年の一月の政治協商
会議でこの中国の文字改革を
説明し、六億三千万の
国民に
協力を求める大演説をやったその速記を持っておるのでありまするが、これだけを読んでも、あらゆる国語と文字に関する考うべき問題が網羅されておると申して差しつかえない。さすがに周恩来であり、中国の指導者であると私は敬服をいたしたのでありまするが、これによると、まず漢字を略字化するということを徹底的にやる。合計五百六十九字があるものはへんだけで間に合せ、あるものはつくりだけで間に合せる。それから私の名前な
ども新聞に出ておりましたが、「義」という字は「又」というふうになります、
電報の「電」の字は雨をとって「 」というふうに
電報局の看板に大きく出ております。なるほど簡単で非常にいい。最近中国に遊んで、今まで六億三千万のうち大部分が文字を解しなかったのであるが、革命後この学習運動を盛んにし、文字の簡素化をやった結果、一応三カ月学べば、
——業余学習と申しまして、仕事の余暇に勉強をさせるのでありますが、三ヵ月やれば、無学文盲な者でも大てい普通の新聞雑誌を読めるようになるということを承わりまして、驚いたのであります。撫順炭鉱で露天掘り炭鉱長の王昌瑞という男は、二十年炭鉱夫をやって、目に一丁字なかったのであるが、あそこの政治協商
会議の議長があとでそっと小さい声で私に
説明したのでありますが、あの人はそういう人であったが、革命後学習に従事して文字が読めるようになり、私にも署名してくれました、そうして偉大なる発明をした。二百五十人の生産
能力を倹約する発明をしたために、いわゆる模範労働者として毛沢東の表彰を受けて、炭鉱長にまで昇進した。彼が隠されておった
能力を革命によって掘り起したのである。こういう奇跡を至るところに行なっておるということを聞いて、私は感激を覚えたのでございます。これはやはり文字の簡略化からきておる。それでこれを徹底的にやるということを周恩来は第一段に主張しておる。それから第二には、標準語を普及すること。四百余州、中国の北と南では全然違った言葉を使われておるのであり、福建省の南と北では言葉が違っておる。だからして、今までは共通に語ることはできなかったのである。ところが標準語の普及をはかった結果、この演説の中にありまするが、張溪若、今の教育部長、
文部大臣が四川省に行って、小学校の生徒が北京の言葉で話をしておるのを聞いて、実にりっぱな標準語を語るようになったことを発見して、非常に喜んだ、こういうことであります。だからして標準語というものを普及させれば、ラジオ、テレビ等の発達した今日は、意外に早く全国が共通化していくのである。それから表音を実施する。漢字の上にローマ字で発音
通りのルビをふる。私
どもは北京と書いてペキンと読むんだ、こう思っておりましたが、ペキンというのは英語であって、中国人はベイジンと言っておる。今度ローマ字のルビを見ると、ベイジンとなっておる。ベイジンと言えばすぐにわかる。それから上海、これは英語と中国と同じようでありますが、「上海」と書いて、「上」のところにはシャン、「海」の上にはハイ、こういうふうにルビをふることにしたわけであります。そうすると、横書きと相まって、きわめて簡単に中国の言葉はわれわれ読めるようになる。ローマ字は多少発音の基礎的なものを理解していなければなりませんけれ
ども……。そういうことも断行する。そういうことを宣言をしておるのであります。それは決して従来の漢文とか、漢学を、芸術として、古典として、あるいは専門学として、大学、大学院等における
研究から除外するわけじゃないんだ。ますますこれは保存をされ、育成もされていくであろう、けれ
どもそれは一部少数の
専門家がやる仕事となることは、物理学、医学、ほかの学問と同じであります。一般民衆はこの簡単な文字で読み、語り、音信を交換する、こういうふうにしようというのでありまして、まず第一に、中
国内にある五十の異なれる民族は異なれる文字、言葉を持っておる。チベットであるとか苗族とか、いろいろそういうものが
一つの言葉で語れるように仕向けていくのであるということをここに申しておる。やがて
世界は
一つの言葉で語るようになるだろうということを周恩来は申しておるのであります。私は必ず遠い将来においてはそうなると思う。現にこの演説の中にもあるが、アルファベットを使っておる国は六十余カ国ある。難字でやっておるのは
日本と中国だけである。中国は略字を採用するに当って、
日本で略した国という字であるとか、いろいろな
日本でうまく略したものはすぐこれを拝借して、そのまま使うことにしておるというほど、非常に度量が大きいのであります。このことを
考えると、
日本においても、これは
一つ思い切ってやらないと、ただ唯一の漢字を使っておる国として取り残されるおそれがあるわけであります。国語国字政策として、この内閣で
一つ一大
調査会なり
委員会をお作りになって、これも何年でもよろしいというゆうちょうなことは言わないで、一年かそこいらの期限を切って、
——専門家に尋ねると、どうもいろいろ利害得失、長所短所を述べるので、聞けば一々もっともなんです。それだから、ちゅうちょし、よろめいて、結局
ほんとうの改革はできないでしまう。なかなかそれに手がつけられない。ですから、長所短所はおのずからあるが、今周恩来が述べたような長所というものは
——中国語が
世界に進出していき、
世界の
人々と自由にコミュニケーションができるということは何にもかえがたい利益であるから、ぜひ
一つこれはやろうじゃないか、こういうことを演説の中に高調しておりますが、確かにそうなると思う。私
どもも中国を旅行し、あるいは新聞を見、すべてそれがローマ字でルビがふってありまするならば便利です。この間筆談をやってみたが、わからない。われわれ正式に習ったむずかしい漢字で、あちらでは略字でもって勉強している人が多いから、実は筆談もできないのでありまするが、ローマ字が使えるということになれば、これは非常に便利であるということを
考えておる。
日本においても同様である。
世界の
人々が
日本に来、
日本人が
外国に行って、やはり
日本の言葉をローマ字でもって表現する。地名、人名などはよく問題になりますけれ
ども、ことに歴史上の人名などは問題になりますが、みなやはりローマ字のルビをふることによって、かな書きもけつこうでありますけれ
ども、これは
世界的になることができるわけです。そういうふうにして、
一つ思い切った改革をおやりになる
意思がないかということを私はお尋ねするのでありまして、もっと言葉を簡易にし、やさしくする。私
ども実は
国会に入ったためにだいぶ演説が上手になった。最初のころは、お前の演説はむずかしくてわからない、もっとやさしく言えというが、どう言えばやさしいのか、私にはよくわからなかった。当りまえなことを言っているつもりなんだけれ
ども、聞いている人はむずかしいと言う。だんだん年を経てきて、なるほど自分はむずかしいことばかりしゃべっておったなということがわかりまして、このごろは、ここではあまりやさしい言葉をわざと使いませんけれ
ども、かんで含めるような言葉を使って選挙演説などをやると、投票も非常によく集まる。これはやはり大切なことでありまして、
文部大臣もその点については御異存はなかろうと思う。どうか
一つまじめに、この問題は
一つの革命事業をやるような気持で、お隣の中国は共産主義の国だ、あれのやることはまねたくない、そういうお
考えがあるかもしれませんが、共産主義をまねろというのではないのであります。やっておることで、よいことは遠慮なくまねるべきである。私はまねなければならぬと思うことをたくさん見て参ったのであります。そうして思い切ってやっておる。この勇気と、断行する力が必要であります。どうも
文部大臣は心細いことを言う。いつまでこの内閣の寿命が続くやらなどという。そういうことははなはだ遺憾であります。
一つ大いにプッシュしますからして、
松永文部大臣の時代にわが国の国字国語の改革に手をつけた、その方が東京都知事になるよりはなんぼ歴史に残るかわからない。どうか
一つそのことについて
責任ある御答弁をいただきたい、こう思うのであります。