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1958-02-21 第28回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十一日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 伊東 岩男君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    杉浦 武雄君       渡海元三郎君    灘尾 弘吉君       野依 秀市君    濱野 清吾君       木下  哲君    小牧 次生君       櫻井 奎夫君    鈴木 義男君       高津 正道君    野原  覺君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房会         計参事官)   天城  勳君         文部事務官         (初等中等教         育局長)    内藤譽三郎君         文部事務官         (大学学術局          長)     緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局          長)     福田  繁君         文部事務官         (調査局長)  北岡 健二君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         文部事務官         (管理局学校          給食課長)  宮川 孝夫君         専  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 二月十四日  井原岸高君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員野原覺辞任につき、その補欠として成田  知巳君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員成田知巳君及び井原岸高辞任につき、そ  の補欠として野原覺君及び馬場元治君が議長の  指名委員に選任された。 同月十九日  委員小牧次生辞任につき、その補欠として成  田知巳君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員成田知巳辞任につき、その補欠として小  牧次生君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員千葉三郎君及び馬場元治辞任につき、そ  の補欠として大橋忠一君及び井原岸高君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十七日  義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案内閣提出第六二号)  盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第六三号) 同月十八日  国立競技場法案内閣提出第六八号) 同月十七日  公立義務教育学校施設費半額国庫負担に関  する請願大森玉木紹介)(第九三七号)  同(徳田與吉郎紹介)(第九三八号)  同(辻政信紹介)(第九三九号)  同(原茂紹介)(第九四○号)  同(南好雄紹介)(第九四一号)  同(中馬辰猪紹介)(第九七八号)  公立学校施設費に対する国庫補助率引上げ等に  関する請願八木一郎紹介)(第九七七号)  教育公務員特例法の一部改正に関する請願外二  件(櫻井奎夫君紹介)(第九九二号) の審査を本委員会に付託された。 二月十五日  義務教育施設費国庫補助増額に関する陳情書  (第二八二号)  公立義務教育施設費半額国庫負担法制度等に関  する陳情書外十五件  (第二八三号)  学級編成定数基準適正化等に関する陳情書  (第二八五号)  へき地教育振興法の一部改正に関する陳情書外  六件  (第二八六号)  愛知学芸大学名古屋分校に後期二年課程設置の  陳情書(第三五六  号)  北海道大学工学部精密工学科設置に関する陳情  書外一件(第  三五七号)  公立学校文教施設補助制度改善に関する陳情書  (第三五八号)  教材費国庫負担増額等に関する陳情書  (第三五九号)  義務教育施設費半額国庫負担法制定等に関する  陳情書外四件  (第三六○号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  文教基本施策に関する件  昭和三十三年度文教関係予算に関する件      ――――◇―――――
  2. 山下榮二

    山下委員長 これより会議を開きます。  まず最初に、文教基本施策に関し松永文部大臣より説明を聴取することといたします。松永文部大臣
  3. 松永東

    松永国務大臣 先般来病気のために欠勤いたしましたことを、まことに恐縮に存じております。  委員長からの御下命によりまして、私どものこの国会に提案いたしまする大体の文教上の主要問題についての荒筋だけをお耳に達しておきたいと存ずるのであります。  まずその第一は、義務教育充実水準向上でございます。義務教育充実とその水準向上をはかることは、文教政策上の最も重要な問題であることは、今さら私がちょうちょうするまでもございません。義務教育について学級規模教員定数施設などあらゆる分野につきまして、このための施策を進めなければなりませんが、当面いわゆるすし詰め学級を少しでも解消して、学級規模適正化をはかるということは必要なことと考えまして、本年度児童生徒の増減その他いろいろこれに伴うところの必要な経費のほかに、特に中学校学級規模適正化に必要な教員増加五千人を予算に計上いたしました。また教員定数学級基準に関しては所要の法的処置を講じまして、今後ともに強力にこの面の施策を推し進めたいと考えておるのでございます。また施設整備についても、不正常授業老朽危険校舎の改築に意を注ぎまして、学校統合を推進し、さらに教材費その他学校経費増加をはかるなど、義務教育充実には格段の考慮を払って参ったのでございます。  第二に、科学技術教育振興でございますが、わが国の科学技術振興のためには小学校から大学を通じて、科学技術教育特段の力を入れなければならぬということも、これまた申すまでもございません。まず初等中等教育につきましては、教育課程改善をはかって基礎学力充実に努め、さらに理科教育産業教育充実するための経費増強をはかり、高等学校について新たに工業課程及び産業科を新設いたしまして、産業界中堅技術者養成の要望にこたえたい所存でございます。国立大学については、理工系十五学科の増設、短期大学の新増設等によりましで、ざっと約一千七百人の学生増募を行なって技術者養成に備え、また原子力を初め科学技術の進歩に即応した分野研究部門増強をはかり、教官研究費学生経費について増額を行なって、基準経費充実をはかった次第でございます。同様の趣旨私立大学についても、研究基礎設備及び理科設備について助成の経費増額し、また科学研究費増額に意を用いたのでございます。  第三に、育英事業における進学保障制度の創設であります。優秀な学生生徒経済的理由によりまして修学困難な者に対して、従来から日本育英会を通じて奨学資金の貸付を行なって参ったのでございますが、本年新たに進学保障制度を創設いたしまして、中学校修了者で、特に資質がすぐれておりながら、経済的理由によりまして進学をはばまれておる者に対して、その進学を強力に援助するため、高等学校生徒五千人につきまして、従来からの採用者とは別ワクで月額三千円を貸し付けるということにしたのであります。  以上のほか、従来その必要は認められながらも、施策の上でややもすればおくれがちでありました学校保健の面につきまして、このたび児童生徒の健康の保持、増進をはかり、学習能率向上に資するため、保健医療費補助を計上いたしまして、これが実施を確保するための新たな立法措置を講じたいと考えておるのでございます。また保健と並び体育につきましても、その振興をはかるために、文部省内に体育局を設置いたしまして、明朗なスポーツの発展を期したいという考えでおります。  大体以上が文部当局といたしまして構想いたしております大要でございます。御了承おきをお願いいたします。
  4. 山下榮二

    山下委員長 ただいまの文部大臣基本施策について質疑の通告がございます。これを順次許します。櫻井奎夫君
  5. 櫻井奎夫

    櫻井委員 ただいま松永文部大臣から、岸内閣文教行政重点的な面について御説明がございました。実は私ども先般来、大臣から親しく今年度文教行政施策重点をお聞きしたい、こういうことでお待ちを申しておりましたわけでありますが、大臣がおかぜで御出席ができない、こういうことで今日まで延び延びになっておったわけであります。もっとも私どもといたしましても、こまかい問題を取り上げて委員会を開催するなら、そういうこともできたわけでありますが、何分にも今回は通常国会の初めであり、従ってやはり冒頭には大臣から一応の政策説明があり、それに対する十分な質疑を行い、その後個々の法案の審議に入ろうと、こういうように大臣に非常な敬意を払って、今日までお待ち申し上げておったわけであります。  そこでただいまお述べになりました四つの重点施策でございますが、これは大臣が先般就任早々、私が、松永文教行政の最も重点とするところ何であるかということをお尋ね申し上げました際にも、とりあえずまず義務教育水準向上をはかりたい、こういうことをおっしゃっておったわけであります。それが今回の三十三年度予算にどういうふうに反映してきたか。おそらくこれは大臣も非常に不満のものであろうと思うのでありますが、しかし私どもからいたしまするならば、あまりにもこれは貧弱過ぎる。大臣が一体すし詰め学級解消であるとか不正常授業解消であるとか、こういうことを言っておられたわけでありますが、私どもはもう少し、松永文教行政の第一歩でありますので、相当期待をしておったわけであります。しかし出てきたところのものは、全くこれは、まあ羊頭を掲げて狗肉を売るというような、ここまで私はあえて申し上げてもいいような実際の予算上の裏づけしかない。  まず第一点にお尋ねいたしますのは、いつも大臣が申しておられるすし詰め学級解消についてであります。これは近く内閣の方から、義務教育学校学級編成並びに教職員定数基準に関する法律というのが出るようであります。この法律内容を漏れ承わるところによりますと、まず学級編成規模を、法文の上では五十名にする、しかしとりあえず中学校は五十三人以上の学級解消していきたい、こういう御趣旨のようでありまして、そのために中学教員五千人を増員しておられるようであります。しかしこの中学教員の五千人増も、実質は五千人ではなくこて、の予算説明書に明瞭に書いてありますように、小学校児童五十一万一千人の増、中学校生徒が五十万四千人減る、こういうのを見込んで、これに伴う教員数は、今までの従来の算定方式によると千七百八十四名の減となる。これは内容を申しますと、小学校が九千五百九十一人の増で中学校は一万一千四百四十一人の減、盲ろう学校は六十六人の増となる。で、本年度はさらに新たに圧縮学級解消をはかるために、中学校を五千人増加を見込んだといっておりますが、これを差引しますと、実質は三千二百十六人の増となっております。こういうことで五千人の増といっても、実際は三千二百十六人の増にすぎないのであります。このすし詰め学級というのは、もう私が申すまでもなく、今日本義務教育の中の最も大きなガンであることは、大臣も先刻御承知のことであろうと思います。特に中学校だけでなく、小中学校を全国的に見ますと、大体五十人単位にいたしまして、五十人以上を収容しておる学級というのは、驚くなかれ小学校においては九万九千六百八十八学級です。これは全学級数に対して三四・四%、中学校は四万百五十九学級、これは全中学校学級数の三三・六%に当っておる、このように今や、すし詰め学級というのは、日本義務教育の大きな障害として立ちはだかっておる、これをまず解消するということは、今日何をおいてもとられねばならない文教行政の最重点策だと思うのでありますが、しかし今回の文部省のこの案では小学校の九万九千六百八十八学級、これは五十人単位ですから五十三人とするともう少し少くなるかもわかりませんが、こういうものに対しては何らの手が打ってない、ただ中学校生徒が減り小学校生徒が増す。こういう原則の上でそこのところを先生方の数をうまく調節して、三千二百十六人の増という形でこれは中学校だけをまず一応五十三人の実数で押えよう、こういうような形になっておって、これはすし詰め学級解消のまだ緒についたというよりも、ほんとうすし詰め学級解消ということに大臣が真正面に取り組んでおられるかどうか、私どもは何が熱意を疑わざるを得ない、すし詰め学級解消するということを表看板に掲げられるならば、中学校のみならず、もっとそれより基礎的な小学校におけるすし詰め学級解消が当然あってしかるべきだと思うのであります。小学校に全然手を触れなかった理由はどこにあるのか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  6. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 小学校に……。
  7. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私どもが今日まで委員会を延ばして待っておりましたのは、やはり大臣から責任ある答弁を期待しておったからであります。こまかい数字等については大臣はおわかりにならないでしょうから、数字を私は聞こうとは思わない、私はこの実態をお知らせするために数字をあげておるので、大臣学級数とかこまかい点にこだわらなくてもいいのです。どうして中学校だけ手をつけて、小学校すし詰め学級解消に手をつけなかったか、そういうことを聞いておるので、こまかい点は局長が言えばいいので、私は局長に質問しておるのではないのですから……。
  8. 松永東

    松永国務大臣 専門家櫻井君の御指摘まことにごもっともだと思います。仰せになりました通り、私は就任以来すし詰め学級解消はどうしても、何が何でもやらなければならないというので、一生懸命努力をいたして参りましたが、何といたしましても現状の財政関係から思う通りにいかなかったことは、まことに残念だと思います。しかしながら今中学校の方についての問題は、御指摘になりました通りでございます。多少なりともこれを緩和することはできましたが、小学校の方はこの三十三年度においてざっと学級が一万だけふえる。これは三十三年度が一番ふえる限界だということに大体専門家の方ではされております。そこでまずこれに対してふえるのを、教員だけを一万人だけ増員いたしました。そしてこれで大体三十四年度からは完全にいける、こういう計算をやっておるわけであります。そこでこれはすし詰め教育の一番大きな原因は、これもしろうとですから大して私はわかりませんけれども、大体御承知通り戦後義務教育の六年を一ぺんに九年に延ばした。そういうことからやはりすし詰めというものに全然追い込まれてきたんじゃないかと思う。でありますから、なかなかこれは簡単には参りません。けれども大体三十三年度が一番小学校生徒増加する山となっておりますので、三十四年度からは何とか一つこれは是正できる、こういうふうに考えております。なお詳細な数字等の点については内藤局長からお答えを申し上げたいと思います。
  9. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今私ちょっと聞き漏らしましたのですが、これは内藤さんにお聞きしますが、小学校教員を一万人ふやすのですか。そこのところをあなた、ちょっと……。
  10. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 約一万人増加します。
  11. 櫻井奎夫

    櫻井委員 昨年度に比べて小学校先生は一万人増ですか。
  12. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  13. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それからそれにプラスの、中学校の方は五千人ですか。
  14. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 五千人ふやすことになっております。
  15. 櫻井奎夫

    櫻井委員 わかりました。それは予算の上に出ておりますのですね。
  16. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 出ております。
  17. 櫻井奎夫

    櫻井委員 大臣に私は申し上げておきたいのですが、このすし詰め学級というものは、複式、単式方法をとっておる学級もございますので、非常に数を出すのは困難でございますけれども、一番基準になるのは、この単式学級でございましょう。この単式学級すし詰めの状況を申しますと、これは御参考までにぜひ聞いておいてもらいたいのです。これは文部省にはそういう統計は十分あるはずですが、しかし大臣のお耳に入るかどうかわからない。これは大体小学校単式学級で六十人を平均にしておるものが十五県ございます。五十九人というのは十二県ございます。五十八人は六県です。これは一番多いのですが六十四人の学級を持っているというのが二県あります。こういうふうに四十六都道府県のうち、およそ五十人という基準を持っているのは一つもないのです。どうしてもやはり一番多いのは六十人でありますが、こういう状態はすでに解消するところの努力をなされなければ、これは幾ら先生方を叱咤勉励いたしまして、先生方勤務評定をつけて、お前の勤務成績はAだ、Bだ、Cだと言ってしりをはたいてみても、こういう基礎的の教育の環境というか、条件というか、そういうものが整備せられない限り、日本義務教育水準向上というものは、これは百年河清を待つにひとしいと思うのであります。また中学の場合は五十六人という学級が十府県ございます。五十七人が六、五十八人が五、六十人は六都道府県にわたっておる。こういうことが非常に大きなまだまだ解決すべき問題として残っておる。しかしあなたはただいま予算関係で非常にこのことが困難であるということをおっしゃられた。なるほどこれは大蔵省との折衝がなかなか容易なことではなかったと思うのでありますが、しかし大体一億五千万の金があると、大体平均の単価にいたしまして千人の教員を増員することができるのです。ところが今回は文部省は、これはあと法案が出たときに私は徹底的に追及いたしますが、校長管理職手当というものを出しておられる。この点は給与法の上からいっても非常に問題点がある。おそらく人事院あとで御相談なさったのかもしれませんが、管理職手当の本質というものは本来超過勤務手当から転じてきているところの給与の形なんです。超過勤務手当管理職手当に転化してきておる。これは日本給与法ができたときから調べていけば、そういう形でできてきておることがわかる。ところが何ら超過勤務手当のない教職員の中に、校長管理の立場をとっておるからといって、管理職手当をぽんと持ってきておる。しかもこのために四億五千万の経費を計上しておられる。文部省が四億五千万円の経費を計上するのでありますから、地方自治体はまだ詳細な地方財政計画が出ませんけれども、仄聞するところによると、八億の管理職手当を計上せざるを得ないということになっておるようであります。そうすると、中央、地方を合せて、ここに実に十二億五千万円という膨大な金を管理職手当にさくことになる。校長管理職手当をやるくらいの財政的余裕があったならば、私が申しましたように、一億五千万で千人の先生方増加が見込まれる。そういう文教の最も重点的な施策の方にどうしてこういう金を回されなかったか。給与法上にも大いに問題のある管理職手当のようなものをいきなりぽんと持ってきておられる。これは私はあえていきなりと言います。なぜかならば、給与の改訂があったのは昨年の九月十一日です。そのときに人事院は何らこの学校の、特に高等学校以下の校長さんたちに管理職手当を与えるというような何の動きもなかった。大学学部長には出ておるようでありますが、これはまた観点が違うのであります。ところがその給与法ができて改正がなってニカ月か三カ月足らずに、文部省の方からひょっこりこういう問題が出てきておる。こういうところが非常に問題である。案ずるにこれは愛媛県の勤務評定に手をやかれた文部省が、何とかその校長さんの頭をなでる方法を講じて、日教組の組織を分断し、そして勤務評定をうまく出させよう、こういう魂胆のもとになされたのではないかと疑いたくなるのでありますが、この管理職手当に対する大臣考え方並びにどうしてこういうさしずめ非常に大きな問題点——すし詰め学級解消というような文教上の大問題があるにもかかわらず、そのような予算がないないと言いながら、十二億円もの金をこういうところに——すし詰め学級解消よりもこちらの方があなたは先決と考えられたのかどうか。これは私は非常に問題のある文教行政であろうと思うので、大臣の御所見を承わりたいのであります。
  18. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりましたこの管理職手当ですが、この問題についてはいろいろ私ども研究をいたしました。しかし御承知通り、すでに国立学校では校長に対して管理職手当を出しております。管理職手当を出すという原因は、要するに教職としてほかに人事管理をしなければならぬという特段の御所労を校長さんにわずらわさいなければならぬ。従って多少なりの手当というものを出すことは当然じゃないか。特に国立校長さん方には出しておるからこれは当然ではあるまいかというので、今御指摘になりましたような四億五千万円を出したわけであります。でありますから、これは決して愛媛県の問題とかなんとか、他意あってやったのではございません。そんなことは私が幾ら詭弁を言ったって、あなた方がとうに御承知のことですか、これは当然なさねばならぬことだと思ってやったわけであります。御指摘になりましたすし詰め教育の是正は何としてもやらなければならぬと思って、先ほども申した通りであります。これからも十分一つ意を注ぐつもりでおりますから、御了承をお願いいたします。
  19. 櫻井奎夫

    櫻井委員 しろうとであられる文部大臣をこれ以上私は追及したいとは思いません。これはいずれ管理職手当法案が出るようですから、そのときに法的見解を戦わしたいと思う。これは校長さんが人事の面を管理しておるから、そして大学の学長や部長に管理職手当が出ているから、小中学校校長さんにも管理職手当を出した、こういう素朴な考え方では大へんなことになるのです。給与法というものをもう少し勉強してもらいたい。給与法専門人事院があるのですよ。こういうところとよく打ち合せしておかれて、この次のこの法案答弁には一つしっかりした答弁をしてもらわないと困る。そういう、大学もそうだから小中学校もそうだというような、全く素朴きわまる答弁では、国会答弁にはなりませんから、御注意を申し上げます。  さて次に入りますが、まず中学校の五十三人以上の学級解消する、こういうことで五千人を増して、予算は大体七億五千万円を計上してあるわけであります。これは私は小学校もなぜやらなかったのかと責めましたが、中学校も五十七人、五十八人とあったところを五十三人まで減らそうとなさったのですから、そのお心掛けに対しては、衷心から敬意を表するにやぶさかではない。事実上予算裏づけも、五千人増員に対して七億五千万円の裏づけをなさって下さっている。ところが問題は、この予算裏づけというのは、あくまでも半額国庫負担の建前から、半額だけの問題であって、ほんとうに五千人を日本の各地区の中学校においてふやすためには、地方自治体がこの残りの半額というものを計上しなければならない。これは文部大臣も御承知通りです。ところが地方の自治体は、今日の再建整備法の適用を受けたところの都道府県も相当あって、やはり財政的には困難を来たしておる。そういう赤字団体再建整備重点がどこにあるかというと、やはり人員整理ということを同じように言っておるのであります。人員整理というのを重点的にやっておる。そういう中で文部省がこの五千人をふやしていかれるためには、幾ら文部省半額予算を計上しても、これと見合う地方財政におけるところの半額の計上がなければ、実現することは不可能なのです。これば机上の空論にひとしいのです。この七億五千万円のうち幾らかは流れていくでしょうけれども半額を計上しない県には文部省は出さなくてもいいことになる。従ってほんとう文部省が、この五千人の中学校先生方をふやす、こういう熱意を持っておられるならば、府県において割当があるでしょう、広島県は何人、新潟県は何人というように。そういうふやされるところの数に対して、そこの府県知事は必ずそれに見合うところの財源を人件費に計上してくれ、こういう強い要望が自治庁を通じて私はなされなければならないと思うが、その点は私の調べたところでは、自治庁ではそういう通達も何も出ていない。地方においては教員の増員どころか首切りに血まなこになっているのが今日の状況です。こういう点は一体どうなさるのか。文部省だけが予算を計上して事足れりとしておったのでは、これは実際下におりていかないのですよ。ほんとうに自治庁と協力をして、自治庁を通じて、地方の県知事なり、そういうものにそれだけの見合うところの財源を計上させ、責任をもってそこまでのめんどうを見なければ、実際先生の数というものはふえてこない。そのような適切な措置を講じられておるかどうか、その点を承わりたい。
  20. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点は、これは自治庁ともずっと打ち合せしまして、予算を組んだのです。従って自治庁の方から、御承知通りそれぞれ都道府県に交付税が参りますので、その交付税とにらみ合せて、そうしてあんばいするようになっております。そればかりではございません、各都道府県では御承知のような教育行政については自主性を持っておりますので、むしろ都道府県教育委員会では強烈に文部省に迫ってくるというのが実情だと考えております。そうした場合には、文部省がやはり予算の範囲内で適当に善処して、計画通り実行したいというふうに考えておる次第であります。
  21. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これはぜひそういうふうな措置を講じていただきたいのであります。それからさらにやはり今の問題でございますが、中学校生徒が今年度は五十万四千人減ることになるのは先ほど申し上げた通りでありますが、これに伴うところの教員減は見込数が一万一千四百四十一人であることも先ほど申しました通り。これだけの中学校先生が減るわけでありますが、かりに五千人を中学校の方に増すといたしましても、六千人余りはどういうふうになさるつもりか。これは数字ですから内藤さんからでもよろしゅうございます。
  22. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 小学校の増がございますので、原則としては小学校の方に回すことになるわけであります。
  23. 櫻井奎夫

    櫻井委員 小学校の方の増があるので小学校に回すと事もなげに仰せられるわけでありますが、しかし中学校から小学校に回るのはそう簡単に参りませんよ。私が中学校の英語の先生で、中学校の英語の免許状を持っているとします。ところが、お前、小学校に行けと言われても、小学校は全科の担任ですから仮免になるのですよ。私が幾ら優秀な英語の教員であっても、小学校に行けば仮免許状をもらわなければならぬ。そしてこれは恩給の通算にならないのです。助教となるのでしょう。これは中学校の英語科主任だなんていって英語の指導なんかしておっても、お前、今度減員の関係小学校に行けと言われると、小学校に行ったとたんに助教にならなくちゃならぬ。そうして仮免であって、恩給の対象にならない。実際現場においてそういうことが現実として起るわけでありますが、それに対してはどういう処置をおとりになるつもりか。余ったから小学校に回すという、そう簡単なわけには参らぬと思うのであります。
  24. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大体旧制師範の卒業生は、小中学とも免許状を持っておりますので、旧制師範の卒業生の免許状を持っておる者を主として回すようにいたしたいと考えております。
  25. 櫻井奎夫

    櫻井委員 主として回されてあと残った者は首切りですか。
  26. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 小中学校の中にはただいまお話のように、小中学校の免許状を持った者は非常に多いのでありますから、六千人というのは非常にわずかだと思います。従ってこの程度の者は、現在の旧制師範学校卒業生をもって充て得ると考えております。
  27. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私が言うのは、そういうふうに資格のある人は問題ないわけです。資格のない人があるわけですね。そういう者に対する何らか具体的な、そういう不利な扱いにならないような措置を考えておられるかどうか。六千人が全部、そういうことを言っておるわけじゃない。六千人が余るが、資格のある者で小学校に転任できる者もあるでしょう。しかし中には私が言ったように助教となるような身分の人もあるわけです。これは自分で好んで配置転換するわけじゃない。国の施策文教行政の貧弱のためのそのしわ寄せとなって、その人は犠牲になるのですから、そういう人に対して不利にならないような扱い方をなさる処置を考えておられるかどうかということを私は聞いておる。
  28. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは文教施策が貧困ということよりは、当然減と当然増の問題が起きてくるわけであります。御承知通り義務教育費の負担金の場合には、生徒数の増減によってこれを改増、改減されるべき性質のものであります。従って、中学校の定数が落ちた場合は、これは当然減になるわけであります。けれどもそういう場合に、人事の混乱をできるだけ避けるために、小中学校の免許状を持った者から優先的に充てる、こういう方針に進んでおるのでございます。
  29. 櫻井奎夫

    櫻井委員 免許状を持たない者はどうなるのですか。
  30. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 免許状を持たない者は、回さないようにしたいと思っております。
  31. 櫻井奎夫

    櫻井委員 回さないで、中学校は今度は減になりますから、回さないようにして、結局首を切るというのですか。
  32. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 免許状を持つ者はたくさんおりますから、免許状を持った者を回すことにしたい、こういうことです。
  33. 櫻井奎夫

    櫻井委員 もう一つ、学科担任の問題でありますが、これは基準によりますと、大体中学校は一学級二人、教科は一人が二科目持てる、こういうことですね。ところが現実は非常に問題があると思う。これは内藤さんあたりは特に御承知だと思います。これは地方に行けば行くほど、僻地に行けば行くほど多いわけです。一人で幾つも学科を受け持っておる。免許状がなくても教えざるを得ないという状態です。これは大臣日本義務教育水準向上とか何とか言っておられるけれども、こういうものをすみやかに解消されない限りはなかなか水準向上しない。これはぜひ大臣のお耳に入れておきたい。ひどいのになると一人で九科目持っておるのがある。これはよほどの僻地だと思う。私は人数の調べも持っております。九科目持った者が何人おるか、あるいは八科目が何人おるかというのもありますが、そういう文字をここに羅列することが本日の私の質問の趣旨ではございませんので、日本義務教育である中学校には二科目、三科目というのは一番多い。これは当然なんです。三科目も問題があります。ほんとうは二科目です。ところが五科目、六科目、はなはだしきは九科目というふうに一人で担任させられておる。こういう状態がいなか、地方に行けば行くほど多い。これはやはりすみやかなる解消努力をなさらないと、免許状もない者が学科を教えておる。これは免許法違反にもなりますが、そういう法律論議をする前に、それを教えられている生徒が不幸です。私は数学の免許状のない者に数学を習っても大した効果は上らないと思います。こういう点はやはりすし詰め学級解消と同じ重さをもって、現在の日本義務教育の上にのしかかっておる大きな障害なんです。こういうものを解消するためにはやはり教員の定数をふやしていく、こういうことよりほかに方法はない。そのためにはやはり文部大臣が必死になって文教予算の獲得ということをなさらなければ、いくら口でアドバルーンを上げられても、こういう事態が一つ改善されてこない。この点についてはどのように考えておられるのか、御所信のほどをお伺いしたい。
  34. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました問題はひしひしと胸を打たれるような気持がする。それは私自身がそうした僻地で育って、僻地の小学校で教えを受けてきました。従って私どもの習っておりました先生は九科目、それ以上を受け持って、一人で一年生、二年生、三年生、四年生までも受け持ってくれておった時代がございます。しかも今もって私どもの郷里のそういう僻地ではやはりひどいところがございます。何とかしてこれを是正しなければ、御説の通りすし詰め教育と同様の熱意をもってやらなければならぬと思って、重々心得ております。三十三年度は遺憾ながらそこまで思う通りいかなかったのですけれども、しかしこれは来年三十四年度からは何とかしてやりたいというふうに強い熱意をもって研究を続けていきたいと思っております。
  35. 櫻井奎夫

    櫻井委員 以上私はすし詰め学級及び担任学科、そういう問題について申し上げました。これは非常に大きな問題ですから、これを解決しないで義務教育水準向上させる、こういうようなことを言っても、これは国民がほんとうにしません。これはぜひ一つ熱意を傾けて、全力を傾けてやってもらいたいのであります。  次に学校施設の問題についてお尋ねをいたします。学校施設の問題は、昨三十二年度は八十八億五千五百万円、三十三年度は八十九億七千百万円、これは予算書に現われた全額です。この施設整備というものの義務教育水準の確保、これはすし詰め学級とうらはらをなしている問題でしょう。先生の数だけを増しても、入れものがなければ何にもならない。すしを入れる箱がなければどうにもならない。ところがこの学校施設については去年とほとんど額は変っていない。あなたは、これでも義務教育水準向上させた、向上させたと言えるか。なるほどもし見るべきものがあるとするならば、五十五人も五十六人もあった中学校を五十三人に一応線を引こうというたったこれだけのことをなさった。この施設というものは何ら改善されていない。特に私どもはこの点についてはいろいろな法律がございますから、義務教育年限延長に関する国庫負担法あるいは不正常授業解消特別臨時措置法、あるいは危険校舎に対する促進法、こういう法律があります。しかしその法律はみんなばらばらなんです。こういう年限延長は二分の一国庫負担を義務づけておりますけれどもあと法律は三分の一以内で補助することができる、補助しなくてもいいという、こういう抜本的な問題を改めていかない限りは、市町村財政が——御参考までに申し上げましょうか、文部大臣時間がかかりますが聞いて下さい。大へんなんだ。建築を要する不足坪数は小学校中学校、盲ろうあ学校、全日制、定時制、こういうものを入れて百九十七万五千八百九坪なんです。屋内体操場は二百十万坪、危険校舎が小中学校高等学校を合せて四十七万四千坪、こういう膨大な施設が何ら手を打たれぬままに放置されておる。この大きな原因は、やはり赤字にあえぐところの市町村財政が、国の負担がないために、校舎は市町村で作れというんでしょう。これは小さな村や町では負担が困難なんです。しかも地所も買わなくちゃならぬ。地所は学校ができるといううわさが立つとだあっと上ってくるのです。あの近所に学校が建つだろうというようなことになると、今まで捨てて顧みられなかった土地が一挙に上ってくる。そういうものも市町村で負担して買う。その上に予算の範囲内で三分の一補助することができるという、こういう実にワクのゆるい法律で、これは補助しなくてもいいのです。こういうことでは熱意を持って学校の増改築をやり、学校を作っていこうという気持が出ないのは当然だと思うのです。従って全国的に何百万坪と下足しているところの学校の建築を促進するためには、ここにどうしても強力な国の補助、しかも法律に義務づけられた国の補助を強く一本打ち出していくことによって、財政困難な村にも町にもあなたの理想とされるりっぱな学校が建っていくんです。こういう根元のところをしっかり押えていくのが私は文教行政重点施策だと思う。従って、私はお尋ねしたい。このようなばらばらになっておる学校施設に対する法律案を一本化して、二分の一なりあるいは災害を受けたところは五分の四くらいでもけっこうですが、そういうような強い法律を政府が率先して提出する意思ありやなしや、お伺いいたします。
  36. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点は予算獲得運動といいますか、われわれの上に課せられた責任として予算編成をしますときに相当努力をいたしました。そうして何とか一本化しなければいかぬ、二分の一なら二分の一ということで一本化していきたい、今御指摘のようにちぐはぐになっておるのをやはりまとめんけりゃいかぬ、こういうことで努力をいたしたのでありますが、不幸にしてどうしても達成することができなかった。しかし今現に党といろいろ打ち合せをしておりまして、多分これは何らかの形式で、何らかの方法で御指摘のようなことが達成され得るという明るい見込みを持って今進みつつあるところでございます。御指摘によりましてなお一そう一つ努力を注ぐつもりでおります。さよう御了承願います。
  37. 櫻井奎夫

    櫻井委員 はなはだ明るいお話をお聞きいたしまして私も満足にたえないわけであります。政府の方も党の方もそういうことを考えておるというような大臣のお話でございましたが、そのような法律案が出ることについては、われわれ野党といたしましても全面的に御協力を申し上げたいと思うのであります。すみやかにそのような法律が具体化されて、話し合いがまとまって、今次国会に提案されることを私は心から念願するものであります。またその際私どもの出しておりますところの継続審議中の法律案よりも上回った法律案が出るならば、われわれは私ども法律案を取り下げるにやぶさかでないのでございます。どうかぜひともそういうりっぱな、日本義務教育水準向上の基礎となるべきそのような法律案を、一つ勇気をもって御提出あらんことをお願いしてやまない次第でございます。  次に父兄負担の軽減でございますが、このことは大臣も確かにはっきりすし詰め学級解消、不正常授業解消だとか、そういうことが第一の重点であり、次には父兄負担の軽減、こういうものを何よりも考えておる、こういうことをおっしゃる。ところが今日出てきたところの父兄負担の軽減というのは、これも私は羊の頭を掲げ犬の肉を売っているのたぐいだろうと思う。今日全国で父兄が負担しておる額は、百七十二億の多額に上っておる。これは固定的な負担であって、施設とか整備とか薪炭費、こういうものも負担している。薪炭費は、なるほど石炭も配ってきます。しかし各学級に配給される石炭ではどうしても足りない。朝の一時間目にストーブに入れると一時間で燃え上ってしまう。従って生徒が帰るまで石炭を燃やすためには、父兄がみんな金を出せということになる。私が申しました百七十二億という父兄負担は、給食費を全然含んでいない。これだけの膨大な金額というものを、義務教育でありながら父兄に負担さしておるということは、やはりこれは日本教育の正しい姿ではない。義務教育に関する限り、しかも今回は負担を軽減したといって、教材費小学校一人十円、中学生一人十五円上げておられる。これで父兄負担を軽減したと言われるのは大へんな口はばったいことだ。しかもこの中には、義務教育施設整備の国庫補助分を教科書に振りかえて、そうして一人十円とか十五円軽減したと言っておられることは、これはまさに私が申す通り羊頭を掲げて狗肉を売るの政策にすぎない。父兄の負担を軽減するというならば、もっと徹底的に、もっと重要なところに、学校施設費とか整備費とか薪炭費であるとか、教育にどうしても必要なものは、父兄に絶対に負担させないのだ、義務教育に関する限りは父兄は安んじて子供を学校に通わされるのだ、このような施策を講じてこそ、初めて私は義務教育向上すると思う。今日小学生中学生の父兄の個々の負担というのはなかなか容易ならぬものがあります。これ以外に、給食費とかいろいろなものを負担されている、こういうものを解決されるために何らかのお考えがあるかどうか、この点も一つ伺いをいたしておきたいと思う。このためには百億くらいを計上しなければ国民の要望には私は沿わないと思うのですが、百億くらいの父兄負担の軽減の経費を大蔵省と強力に——もう今は間に合わぬでしょうけれども、将来やる意思があるかどうか、いいかげんなことを言わぬで、ほんとうの決心を伺っておきたい。
  38. 松永東

    松永国務大臣 櫻井委員の仰せでございますが、いいかげんなことは一つも言っておりません。実際は、お説の通りこれは何とかしなければならぬと思って一生懸命やったのです。なおこれから先も一生懸命活動するつもりでございます。御指摘になりました通り義務教育は全部国庫負担にするのが当然なのに、PTAとか父兄に負担させておるということは、いかにも相済まぬことだと思っておるのであります。従って三十三年度も相当がんばってみたのですが、何せ一ぺん父兄負担、PTA負担のくせをつけておるのを、だぶっておる国家財政ならば別ですけれども、こうぴいぴい行き詰まっておるところから、いや今度はそれを国庫負担にしてくれといって幾らやってみても、昭和三十三年度はなかなかうまくいかなかった。しかしお説の通り、これはどうしても義務教育費の建前から国庫が負担せんければならぬと存じますので、一生懸命これからも努力を注いでいくつもりでおります。
  39. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 ちょっと補足説明さしていただきますが、実は御指摘通り教材費は十五億にいたしまして、従来はこれは一部負担でございましたが、地方費を確保するために二分の一負担ということにいたしまして、これは近く義務教育国庫負担法の改正案を出すつもりでおります。さらにその反面の十五億を地方費の中で確保し、そのほかに、いわゆる教育費の充実をはかるためにただいま自治庁と交渉しておりますのは、市町村の教育費の単位費用を上げたい、今御指摘になりました百五十数億の分のせめて半分程度は解消するように、ただいま自治庁とせっかく交渉中でございます。これは市町村の交付税の単位費用の引き上げによる措置でございます。なお従来給食の中で持っておりました作業婦等、これは父兄負担の関係でございまして、この作業婦等の関係につきましても、ただいま自治庁と交渉いたしまして、せいぜい一校二人程度は公費で支弁できるように、これも単位費用の改正でいたしたい、かように今折衝中でございます。
  40. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それでは次の問題に移りまして、今最重点策一つとして、科学技術振興をあげておられるのですが、これに二十九億ほどの予算を計上されておりますので、昨年度から見ればいろんな面で前進すると思うのでありますが、しかし私は、日本科学技術振興させるためには、大きな峰というのはふもとが高いわけでありますから、基礎的な、小中学校の科学教育というものが振興されないで、上の方だけやったところで、これは基礎がない。そういう意味からもっと基礎的な、高等学校以下の理科教育重点を置くべきであろうと思うのであります。これはもうここで別に大臣答弁は求めません。しかし各地をめぐって見る実情は、小学校においても中学校においても、黒板実験が行われておるという実情です。器具もなければ何にもないから、黒板で実験しておるわけです。顕微鏡もないから虫めがねで見ておる。顕微鏡が一台あるところには、ハエがたかるように珍しがって見ておるわけです。中には湯川博士のような突然変異のえらい学者も出るかもしれないが、これはほんとうの基礎というものがないから続かない。科学技術を列強並み、一流の国家並みの水準に引き上げるためには、やはり小中学校における理科教育振興というものを文部省ほんとうに考えていただかなければならない、これもおそらく御説の通りだという答弁に違いないですから、もう答弁は要りません。(笑声)しかし非常に重大な問題です。これはどこの学校でも黒板実験をやっているのですよ。そして実験室のない学校が多いでしょう。これはもうほんとうに深刻に考えていただかなければならなぬ。こういうことを放置しておいて、上の方だけで工業高等学校を作るとか、産業高等学校を作ったり、大学生徒数を大きく広げたり——これもやらぬよりはましでしょう、しかし決して根本的な解決にはならない、そういう点はぜひ強く反省をして政策に盛り込んでいただきたいと思います。  次に、今度はもう御説の通りとおっしゃらないような質問をいたしたいと思うのであります。それは紀元節の問題であります。これはおそらく、今内閣委員会に一部の議員から提案になっておりますし、もしこれが審議されるようになりますならば、文教委員会との合同審査となりましょうが、私はそれを重点的にやるのがきょうの質問の趣旨ではございませんので、これは簡単に文部大臣の御所見だけを伺って、その法案が出ました際にまた詳しく御質問を申し上げたいと思うのであります。  今日、二月十一日が紀元節であると言っておりますが、これは平たくいえば全くでたらめであるということは明瞭なんです。明治五年の太政官令によってこれは押しつけてきたのですが、しかもその日は決して二月十一日ではなかったのであって、一月二十九日なんです。それを日本書紀によれば「春正月庚辰朔」となっております。これは一月一日である。大陰暦を太陽暦に換算して、それをさらに干支の暦によって換算して、逆算していって二千六百何年、こういうことで、神武天皇が二月一日に即位した、これをもって日本の建国の日とする、こういうことになっておるのでありますが、しかし今日の科学はこのようなことを許さぬのです。考古学からいえば、あのものを言わぬ土器や瓦器は、二千六百年前は日本は石器時代であったということを明瞭に、今日科学的に証明をしておるのです。そういう時代に、このようなものを国の紀元の日である、そうしてこれを建国の日として今後復活させていこうという動きがある。こういうことに対して、もしこれが決定されるということであれば、これは将来の教育の上にも問題があります。私は教育上の見地から言っているので、ここで考古学や歴史学について論争しようとは思わない。ここは衆議院の文教委員会ですからね。で、この紀元節の制定そのものは、やはり明治政府の一つの皇室中心主義、政治的意図に出たことが今日明瞭です。あの当時、明治五年というのは、王政復古にはなったけれども、やはり維新の政府というものの基礎が薄弱であった、そのためにこういうものを設けて、天皇が日本国を治めるのは昔からの日本の道であるというような思想を持ってきたのです。そういうことを私はここで論じようとは思わない。塚本明毅という人がこの暦の換算に当ったわけですが、この人の日記を見てもはなはだ自信のないことを書いている。そういうことであって、やはり天皇支配の正当性を強調しようとし、そうしていわゆる時の権力者の政治的意図に出たことは明瞭である。その後紀元節というものがどういうふうに使われてきたか、日清、日露を経て皇室中心主義に結び、第二次大戦中は撃ちてしやまん、八紘一宇の侵略思想と結びついた。今日私どもはそういうことをまざまざと知っておる。そういうものを制定しようという動きがあるが、これに対しての文部大臣の御所見を伺いたい。
  41. 松永東

    松永国務大臣 これは大へんな議論のありますところで、結局は紀元節の問題は議員立法で制定されるということを聞いておりますので、議員立法ができれば、議員の一人としてそれにきん然参加して、大いに議論も戦わしてみたいと思っております。しかし私はこう考えております、もし個人松永東の意見を聞かれるなら申し上げてもいいのですが、ここは申し上げぬ方がよかろうと思います。結局議員立法できまるということでありますれば、そういうときにはそれに従うというつもりでおります。これだけを申し上げておきます。ただ歴史の問題や考古学の問題等については、いろいろ議論があろうと思いますが、それはもう櫻井委員よく御承知のことでありますから、私がここで繰り返して申し上げる必要もありません。
  42. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これは重大な問題ですよ。衆議院議員としての松永東さんの意見を聞いているんじゃない。かりに建国祭といいますか、紀元節法案が議会に出たときに、これがもし通ったとすれば、やはり文教行政の上で大きな問題になると思う。そういう点に関しては、松永氏個人がどうとかこうとかいう問題ではない。文部大臣として、その紀元節というものをどう取り扱うのか、どうするのか、これは重大な問題です。あなたは文教の最高責任者でしょう。私はそれに対する御意見を聞いておる。あなたが個人として、衆議院議員として賛成するとか反対するとか、そういうことはあなたの御自由です。私がここで、文教委員会で聞いているのは、文部大臣としての御所見を聞いておるのです。
  43. 松永東

    松永国務大臣 先ほど申し上げました通り、議員立法としてそれが決定いたしますれば、もちろんそれに従いますが、しかし今仰せになりました、文部大臣としての松永東の意見はどうかということでございますが、それは私の今考えておることを率直に申し上げますと、紀元節はあった方がしかるべきだ。それはこれだけの団結をなしている民族に紀元がないということはあろうはずがございません。いつの時代にかあったには違いございません。ただしかし、果してそれが二月十一日であったかどうかということは疑問です。疑問でありますが、なかった、二月十一日は違うという立証もありますまい。これはひとり日本の紀元ばかりではございません。西暦の紀元といえどもそうでございます。ですから、伝説もありましょうし、神話もありましょう。しかしわれわれとしては、国民感情としてやっぱりあるのが当然だ。しこうしてあるのはわれわれ子供のときから二月十一日、あの二月十一日を子供心にもちゃんと紀元節として、学校で紋付羽織を着て正装して、「雲にそびゆる高千穂の」を歌いました。今でもあの歌を歌うと六十年の昔のことが目がしらに現われて、ほんとうに何とも言えぬ気持がするのであります。その感情を表わして差しつかえないんじゃないかというふうに私どもは考えております。ただそれだけの気持を率直に申し上げるだけでございます。
  44. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これはいずれ法案がかかったときにあれいたしますが、しかしただいまの古色そう然たる文部大臣の思想は新しい日本教育の担当者として、あなたは率直に今自分の感情を言われたのであろうと思いますが、これは問題が非常に残ります。問題は、しからばかりにこれが通過して制定されたとした場合に、学校教育に及ぼす態度、こういうことはここではもう簡単にいたしておきますが、かりにそういう学校で紀元節を祝うとか、そういう問題が出てきた場合、文部大臣としてどうなさいますか。これは実際やっておるところは、高知県の何とか小学校日本一つある。そういうことが起きてくる。そうすれば今度は生徒は——今の生徒は紀元節なんて一つも知りませんよ。そういう教育は受けていない。そういう場合に、学校の実際教育というものと関連してくるわけです。これはあなたはまだ腹がきまっていないから、もう少し研究して答えるとおっしゃるならおっしゃってもいいのです。きょう下手に言質をとられてどうにもならぬようなことになってもお気の毒ですから、これは審議をする時期が残されておりますから、それでけっこうですけれども、一体そういう学校教育にこれが実際おりてきた場合、どのような態度をとられるのか。これは重大です。非常に重大だから、私は大臣の御所見を聞いておるわけであります。
  45. 松永東

    松永国務大臣 先ほど来申し上げましたように、この紀元節の問題が国会で決定せられまして、法律として公布せられるということになりますれば、もちろんそれに従わなければなりません。それだけのことは今から申し上げておいても差しつかえないと思います
  46. 櫻井奎夫

    櫻井委員 祝日がきまったらそれを祝日とすることは、それは法律できまるのですから、差しつかえないでしょう。しかしその祝日に今度学校では、あなたがおっしゃったように、はかまをはいて出てこい、白いもちと赤いもちを配って、学校で式をあげるわけですよ。昔はそうだったでしょう。そうして、「雲にそびゆる高千穂の」なんて歌っていた。ああいうことがまた再び学校教育の中に出てくるというような場合、これはやはり一つの宗派の宗教的な問題ともからんでくるわけです。法律上非常に問題があるわけですよ。そういうものが起きてきた場合はどうされるのかということを聞いておる。学校教育にそれが直接おりてきた場合——ただ祝日として決定されるということなら、これは法律できまったらあなたのおっしゃる通りになるでしょう。学校教育にそれがおりてきた場合に、文教行政上はこれが大へんな問題となるが、どうされるか。腹がきまっていなければ、またこの次に答弁なさってもよろしゅうございますよ。一応お聞きしておきたい。これは非常に問題になっておるのだから、文部大臣は全然そういうことを考えていなかったということになれば、はなはだ無責任だと思う。
  47. 松永東

    松永国務大臣 先ほど申し上げる通り、紀元節が国会できまりまして、そうして建国の日という祝日が制定せられることになりますと、それに従って学校あたりでもやはり祝賀をせんければならぬと思います。それだけのことは大体今からでも覚悟ができると思います。
  48. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私の質問はこれで終ります。またあらためて……。
  49. 山下榮二

    山下委員長 この際ちょっと皆さんに申し上げます。文部大臣に、予算委員会の方から、しばらくの間でいいから出席してもらいたいという要求がございます。従いまして文部大臣予算委員会の方においでを願いまして、直ちにその後こちらへ帰っていただくということにしまして、その間、文教関係に関する予算説明をお願いいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 山下榮二

    山下委員長 それではさよう決定いたします。     —————————————
  51. 山下榮二

    山下委員長 それでは昭和三十三年度文教関係予算について天城会計参事官より説明を願います。
  52. 天城勳

    ○天城政府委員 昭和三十三年度文部省所管の予算要求の事項別表につきまして概略を御説明申し上げます。お手元に事項別表と、それから予算事項別内訳という資料を出してございますが、内訳の方はいわば説明資料でございまして、積算基礎や内容を規定しておりますので、ごらんを願いたいと思います。事項別表に即して御説明いたします。  義務教育国庫負担金は明年度五十八億の増でございますが、中身は給与費と教材費に分れております。資料に給与費と教材費についてそれぞれ内容が載せてございます。たとえば給与費につきましては現行基準によります増減がございまして、それの合計三十八億になりますが、新規分として別に約十七億七千九百万を計上いたしております。その中身は中学校学級規模適正化による教員五千人増に要する七億七千八百万、あるいは管理職手当の新設に要する四億四千五百万、通勤手当の新設による五億五千六百万というたぐいでございます。教材費につきましては、前年度に比べまして一億八千七百万の増、合計十五億でございます。  その次は、学校教育等の改善充実、中身が幾つかに分れておりますが、一つ教職員の現職教育でございますが、明年度道徳教育理科教育に関しまして、新しい現職教育を行う予定でそれぞれ四百万ないし八百万の経費を計上いたしております。  教育委員会の運営指導に要する経費でございますが、これは前年度から行なっております事業を継続いたしますほか、新たに視学委員の三十人の新設等を見込んだための経費がこの額になっております。  それから学校健康管理の強化、これは資料の二ページに内容が規定してございますが、予算的には児童生徒の治療費の国の補助を新たに見込んだわけでございます。これは別途学校保健法の制定を予定いたしておりますので、その法律の中身でいわゆる学校病といわれるような蓄膿症とか虫歯等の徹底的な治療をはかりたい、それに要する診療費の補助、これを要保護児童、準要保護児童に対して行いたいというための経費でございます。  それから教育の機会均等としてまとめました事項、最初の盲ろう児童就学奨励費でございますが、増額のおもなるものは高等部に対しまして新たに給食費を補助しよう、従来は教科書費の補助だけでございましたが、新たに給食費の補助を加えるということを内定いたしております。  その次の準要保護児童に対する教科書の補助でございますが、これは対象児童数を二%にいたしたこと、それからその次の給食費の補助は対象児童数を一・五%に直したことに伴う増額経費でございます。内訳は資料の四ページの4、5にございます。  その次の公立養護学校教職員給与費及び教材費国庫負担金、これは養護学校は義務制未施行でございますが、盲ろうと同様の取扱いをいたすために別途の法律がございます。それに伴います給与費の半額負担、教材費負担、明年度児童生徒の伸びないしは学校の新設を見込んだ経費でございます。  次に僻地教職員住宅補助、特殊教育に対する予算措置はいろいろございますが、明年度教職員住宅につきまして約二割ほどの戸数の増加を見込んでおりますので、ここに計上いたしたわけでございます。資料の五ページに僻地関係の資料が載せてございます。  四番目の定時制教育振興関係経費としましては高等学校の設備費と通信教育の運営費の補助、これが合せて九千六百万、約三百五十万の増でございますが、この内訳のおもなるものは理科教育関係の設備費の増加を見込んだ経費でございます。  その次の夜間高等学校の給食施設及び設備の補助でございますが、明年度千二百万計上いたしておりますが、大体百十七校ほどを対象に考えております。  五番目の文教施設関係でございますが、大きく国立文教と公立文教に分れます。国立文教につきましては三十一億三百万の経費を計上して、前年度に対して一億二千二百万ほどの増でございますが、公立文教につきましては五十七億八千万円で、金額的には前年度と同じでございます。中身につきましては、資料の六ページに積算の根拠それから事項に従っての内容を規定してございます。ごらんいただきたいと思いますが、二、三申し上げておきますことは、小学校の屋内運動場という一項が新しく頭を出しました。それから小学校の一般校舎の整備費につきまして一億四千万ほどの増になっておりますが、中学校の一般校舎において約四億円ほどの減が目立っております。そのほかは大体金額も多少ございますが、前年より伸びておりますが、特に学校規模適正化、いわゆる学校統合につきまして二億の増で十億一千万円を計上いたしております。積算の基礎につきましては資料の六ページをごらんいただきたいと思います。  その次は、科学技術教育振興でございますが、これも幾つかの事項を内容といたしております。最初の科学研究振興、十四億四千二百万円、これは前年に比べまして二億二千万円の増でございますが、いわゆる科学研究費交付金初めいわゆる科学研究の重要なテーマに対する国の補助金でございます。  民間学術団体の助成、これは七億四千九百万円、前年度に比べて若干落ちておりますが、この減の意味は前年度限りの経費がございました関係で、団体の助成につきましては従来通り行うつもりでおります。  それから在外研究員の派遣、前年度一億円に対しまして一億一千万円を計上いたしております。  その次の私立大学研究設備助成、これは昨年来法律が制定されまして実施しております大学の基礎的な設備の助成でございますが、約一億円の増を見込んで一億九千七百万円。  それから次の私立大学の理科特別助成、これは理工系の学部学科の教育設備を助成する経費でございますが、約一億五千万円の増を見込みまして明年度一億九千八百五十万円を計上いたしております。  なお国際地球観測年事業でございますが、南極地域の観測、それから国内一般観測、ロケット観測を含めまして六億七千万円を計上いたしております。  理科教育の設備、これは理科教育振興法によります小中高等学校理科設備の補助金でございます。約二割ほどの金額の増加を見込みまして年次計画を少しでも早めて樹立をはかりたいと考えて四億四千七百万円を計上いたしております。  産業教育施設設備の補助金でございますが、これも産業教育振興法による補助金でございます。内容につきましては資料の七ページにこまかくございますが、前年度までで当初の五カ年の緊急計画の充実が一応終った形になっておりますので、その一般設備の充実以外に新たな事項を明年度考えております。その一つは、高等学校に新たに工業関係、主として電気、機械の課程をそれぞれ十五ほど新設するための施設設備の補助金、それから高等学校に一年ないし二年の短期の産業科を設置するために要する施設及び設備費の補助金、こういうものを新たにそれぞれ見込んでおります。船の建造費につきまして大型二隻、中型二隻、それから中学校研究指定校補助金につきましては九千万円を見込んで六百校ほどを対象にいたしたいと考えております。  それから国立学校の運営費でございますが、これは事項別表ではすべの経費を一括記載しましたので三百九十九億八千三百万円、前年度に対しまして三十億円ほどの増でございますが、内容につきましては資料のおしまいから二枚目が国立学校関係経費でございます。この三十億円の増額のおもなる事項の内訳を申しますと、講座あるいは教官研究費の増、学生経費の増、教官研究旅費の増、病院医療費の増、設備費の増等がおもな内容になっておりまして、これは従来の基準的な経費の引き上げという考え方でございます。  そのほか新規のものといたしまして原子力の関係、これは従来から行なってきております五大学研究所におきます原子力研究増強をはかる意味で、講座ないし部門の増強を考えております。学部の創設といたしましては、東京大学の医学部の中から薬学科を分離独立して薬学部を作るということであります。研究所の創設といたしましては、たん白質研究所を大阪大学に付置する。東京大学の理工学研究所を転換して航空研究所にいたす。それから東京工業大学の二つの研究所を合せまして工業材料研究所に転換する。こういうことを内容といたしております。短期大学につきましては久留米に工業短期大学を新設いたしますことと、大阪外国語大学に夜間の短期大学部を設置いたします。学科といたしては群馬、徳島の電気通信のそれぞれの短期大学部に、機械、土木、通信工学科を設置いたします。学科の新設といたしましては、京都大学の原子核工学科以下十五学科を創設いたし、主として機械、電気、応用化学関係技術者養成に備えていく考えでございます。六番目の医学進学課程の創設設置、これは東京医科歯科大学の医学進学課程が今まで千葉大学と一緒でありましたのを移してくるという考え方でございます。  付属研究施設の新設といたしましては、それぞれの研究部門の進展に応じまして、新たにここに書いてあるような個所における研究施設を新設いたします。付属病院の設置といたしましては、鹿児島大学に県立の医科大学を合併して参りまして、明年度病院を吸収する段階になりました。講座の増設研究部門増設、それぞれ例年並みに考えております。理工系学生増加といたしまして約一千名を予定いたしまして科学技術者の養成に応じたい、こう考えております。  事項別表の八に戻りまして育英学生援護事業関係でございますが、明年度育英会の仕事として考えておりますことは、先ほども大臣から申し上げました通り高等学校生徒につきまして進学保障制度を定め、高等学校生徒から明年度発足いたしたい。計算といたしましては従来の数のほかに五千人の採用を考え、奨学金は三千円といたしたいと考えております。それがおもなるものでございます。  それから事項別表の三ページの社会教育関係経費でございますが、特にここで申し上げることはございませんが、二番目の青年の家の補助金、これが新しく六千万円ついた形になっておりますが、私たちといたしまして従来青少年の家ということで全国二十数カ所設置して参っております。明年それをさらに規模と質を拡大して設置しようという考え方で六千万円を計上いたしております。  スポーツ関係ではことしの五月にアジア競技大会が開かれますので、これに伴います競技大会費の国の補助六千万円、それから国立競技場の建設を昨年度から急いできておりますが、これが大体でき上りまして、アジア大会を中心にして運営に入るわけでございます。これの所要額約一億、そういうようなものが明年度の特に新しい経費でございます。なお体育局の設置として三百八十万、これは人件費でございますが、見込んでございます。その次に私学振興関係経費でございます。さきの科学技術振興の中で私立学校に対します研究あるいは教育上の補助金の問題をお話ししましたが、ここはそれ以外の経費でございます。一つ振興会に対します資金五億、これで当初五十億出資の予定の線が確保されるわけでございます。その次は私立学校教職員共済組合補助金でございますが、これは法律に従いまして給付額の一五%国の負担、それから事務費についての補助を見込んだ経費であります。  国際文化の交流はいろんな事業がここに入っておりますが、特に申し上げることは国費による外国人留学生、主として東南アジアからの留学生が中心になっておりますが、明年度新たに七十人を呼びたいという経費がこれに入っております。  学校給食関係経費でございますが、学校給食の助成、これは資料では△が出ているように見えますが、実は△はないのでございまして、一億九千五百万円の増でございます。施設設備費の補助金でございますが、これは従来の例をとりまして大体学校数の増を見込んでおるための増額でございます。給食会に対します補助金、これも特殊法人の給食会に要する事務費の補助でございます。次の食管特別会計繰入金の十四億八千万は、学校給食用の小麦につきまして国が補助をいたしておりますが、それを食管会計の中で操作し所要額を繰り入れる形になっております。前年度の十三億は農林省の一般会計に計上されておったわけでございますが、明年度から給食ということで文部省の所管経費に計上することになりまして、十四億八千万を計上しております。これは小麦百グラムに対する国の補助一円と計算しまして十四万八千トン分の補助金額でございます。  その次のユネスコ活動の促進、これは特に申し上げることはございません。  文化財保存事業の強化、これも総額において大体前年度と同じぐらいでございますが、事業といたしましては、国立劇場の創設につきまして前年度と同じように準備費として大体千六百万を計上しております。その他。これは保存事業あるいは公債補助金等が計上されておるわけでございます。  以上非常に大ざっぱに申し上げましたが、文部省所管合計千五百四十一億五千三百万でございまして、対前年度比八十三億八千七百六十四万増ということになっております。重要な問題につきましては一応資料に積算を載せておりますのでごらんいただきたいと思います。
  53. 山下榮二

    山下委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
  54. 山下榮二

    山下委員長 速記を始めて下さい。 それでは先ほどに引き続きまして、松永文部大臣に対する質疑を行います。質疑の通告がございます。これを許します。木下哲君。
  55. 木下哲

    ○木下委員 時間もおそくなりましたので簡単にお尋ねいたします。  大臣にまず最初にお尋ねいたします。ついこの間別府でやりました日教組の教研大会について大臣はいかようにお考えになりましょうか。
  56. 松永東

    松永国務大臣 先般、御指摘になりました教研大会が別府で行われたことを承わっております。私は、そうした教員組合の人々が熱心に研究をせられることはけっこうなことだと考えております。
  57. 木下哲

    ○木下委員 ただいまの大臣の御答弁で、大臣のお気持はわかったのでありますが、私の調べたところによりますと、かつての大達文相は大いにこれを奨励された。ところが続いてお隣りにおられる内藤さんは、ラジオの放送によりまして、放送の論旨に矛盾もありますが、教組としては、ほかの組合と違うから教研をやれというならこれはいいのですが、性質としては大いに違う経済活動をやれ、論旨に矛盾もありますが、内藤局長はこれについて大臣と同じお考えをお持ちでしょうか。
  58. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これはやり方の問題だと思います。中味が偏向しなければけっこうでございます。
  59. 木下哲

    ○木下委員 ふなれな私が質問しておるので、局長もあんまりいいかげんな答弁をされぬで、内容が遺憾な問題だということはだれが考えてもわかることなんです。今度の別府の大会については、これは私証拠を持っておるわけではありませんが、スパイを入れたというようなことを聞いておりますが、そういうことがありますか、ありませんか。
  60. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 スパイを入れたというようなことはないと思います。
  61. 木下哲

    ○木下委員 そうですか。まさか入れたとはおっしゃらぬということは、私予想しておったのでありますが、これはほかの組合とは違う、しっかり経済活動のみをやれということをラジオではっきりおっしゃったということを調べておるのですが、その通りおっしゃったかどうか。
  62. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御承知通り日教組は職員団体でございますので、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し当局と交渉する団体でございます。日教組の基本的な性格はここにあると思っております。ただ日教組の教研大会について私が特別に発言をした覚えはございませんが、最近の日教組の活動を見ておりますと、たとえば道徳教育反対とか、あるいは科学技術教育も反対とか、あるいは教育内容改善反対とか、そういうふうに教育内容の全面に対する反対闘争を続けておられる。これは私は御批判としてなら承わりますけれども、それを実力をもって阻止するような団体行動については賛成しかねる、こういう意味において申し上げました。
  63. 木下哲

    ○木下委員 ところがラジオ放送では、はなはだ矛盾があるのであります。この矛盾をどうこうと言ったところでしようがありませんが、今のお話では、やはり教研大会を日教組自体でやるということについては、内容のいかんということよりも、ただいまやっておる子供をどうして教育するかということについてのこのひたむきな熱心な先生方の大会に対して、大臣はよろしい、大いにこれは奨励すべきだ、たとえていえば、大臣並びに局長あたりの祝辞など持っていってやるべきだくらいまでにお考えですかどうですか。
  64. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 今御指摘になった日教組の教研大会等の性格につきましては、私どもは別に考えを持っておりますので、大臣の祝辞をお出し願うかどうかについては慎重に検討させていただきたいと思います。
  65. 木下哲

    ○木下委員 続いて関連がありますから局長にお尋ねしますが、この日教組のやる教研大会に講師として出た進歩的な学者、われわれの最も尊敬するような学者を、文部省は一切の委員会その他からこれをパージにするというようなことが現実に行われております。これは資料も持っております。こういうことを文部省はやる方針か、やらない方針か、またやったかどうか。
  66. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 別にそういう日教組の講師だから排除するという考えは持っておりません。
  67. 木下哲

    ○木下委員 お答えで、ただいまそういう考えは持っておらないということはわかりましたが、現実はやっておる。文部省がやったのじゃない、いややったという、これはいたし方がありませんが、明らかに現実はそういう目にあっておる進歩的学者がたくさんあるということについて、十分一つ局長は、私も自分でこういうことを言うのもいやですし、失礼だと存じますが、内藤局長は、現内閣閣僚の重要なる地位の人から頭をなでられて、一切それをやることが自分の職業みたいに考えておるというようなことさえ私どもの耳に入るわけですから、これは重ねて御注意申し上げておきます。
  68. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 そういうようなことは、私は松永文部大臣以外に指揮を受ける大臣はございませんので、誤解のないように願います。
  69. 木下哲

    ○木下委員 それではもう一点関連ですが、教研大会をやるというようなことを、文部省自体でプランを立てて、材料その他を組んで、プログラムを組んでやることだということで予算を要求して、それは削除されたということを承わりましたが、これはどうなんですか。
  70. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 実は私、教職員の研修自体は、これは文部省なり教育委員会が本来やるベき職責だと思っております。従ってことしは特にいろいろ計画を持っておりまして、道徳教育科学技術教育の講習、この二点に集中しましたので、全般的な研修大会はこれを差し控えました。
  71. 木下哲

    ○木下委員 来年またこういうことに関しての予算を組むつもりはございますか、どうですか。
  72. 松永東

    松永国務大臣 私の考えとしては、こういう研修会なんかはけっこうだ、次代をになう青少年をりっぱな人格者に育て上げていくように研究してもらいたい、このことは私は非常に祈念する一人であります。しかし、問題が政治的といいますか、偏向的な方向に走られて、そうして児童に偏向した教育を授けるようなことがあってはならないと思って、それは注意しておりますが、しかし、研修会あたりで各組合が研究せられることはけっこうなことだというふうに考えております。それにこれから先積極的に協力するかどうかは別といたしまして、非常に研究してみたいというふうに考えております。
  73. 木下哲

    ○木下委員 最後に、局長としては予算まで組んで大いにやるべきことだと言いながら、また日教組としては経済活動をやるべきであると言う。そこのところについてはもう少し私も研究いたしまして後ほどまたこれに触れることにいたします。  次に、学校給食のことを課長さんに伺います。私はかつて長い間PTAの県連の会長というような妙な役をしたこともありますので、給食については非常に自分で関心を持っておりますし、ある程度のものをきわめておるつもりでありますが、課長は、今全国的に見て、この小中学校の給食が非常に進んでおるかどうか、御自分では進ませようとしておるかどうかということを最初に承わりたいと思います。
  74. 宮川孝夫

    ○宮川説明員 私どもとしては、できるだけ学校給食法の精神によりまして普及徹底をさせたい、かように考えております。学校給食の普及と申しましても私は二つ問題があると思います。 一つは、できるだけ多数の学校学校給食をやってもらいたいということであります。もう一つは、現在学校給食を実施しております学校内容的にりっぱな学校給食をやっていただきたい、この二つの面があると思います。この最初の普及の方法につきましては、できるだけ普及させたいと思いまして、昨年の九月から実は農山村地区に対しまして学校給食の普及講演会、試食会、そういうふうなものを各県で六カ所ほどセンターを置いてやっております。それから内容充実につきましては、これは栄養管理講習会を開きますとか、いろいろそういう面で指導をいたしております。
  75. 木下哲

    ○木下委員 普及と内容ということをおっしゃいましたが、この学校給食についてプラスの面はたくさんある、これは承わらなくてもいいのですが、今内容の面でもそれから数の面でも遅々としておくれておるという意見を私は持っておるのでありますが、それは何のために進まないのかということについて、責任ある答弁をいただきたい。
  76. 宮川孝夫

    ○宮川説明員 最近学校給食を実施したいという御希望の学校が非常にふえて参りました。これは私ども非常にありがたいことと思っております。ただ施設設備の補助の問題が実は満足に参っておりません。三十三年度は辛うじて本年度の一割増を確保いたしましたけれども、まだまだこれでは十分でないと思っております。今後とも十分に努力して参りたいと考えております。
  77. 木下哲

    ○木下委員 今後とも努力する、施設の面が行き届かないというごく上っぺらな御答弁でなく、あなたが今の給食課長としての地位におる間は、非常な情熱を持って、生きがいをお感じになってやるならば、私は、隘路はもっとほかのところにあると考えておりますが、あなたは今言った隘路以外にはお気づきになりませんか。ならないなら、ならないということを率直におっしゃれば、私の方で意見を申し上げます。
  78. 宮川孝夫

    ○宮川説明員 私は、大体今申し上げましたような点が一等の問題だと思っておりますが、木下先生は、あるいはこの従業員の身分の問題とかそういうものをお考えになっていらっしゃるかと思うのです。これは私どもも、給食法が規定いたしておりますように、ぜひとも人件費自体も町村負担という実をあげたいと考えまして、あらゆる機会に県を通じて市町村の指導啓蒙という面に努めておるわけでございます。三十二年度はわずかでありますが交付税交付金の算定基礎の中に若干の措置をいたしております。三十三年度は、でき得るならばその倍額程度のものを確保いたしまして、そういう面でも安定した姿において従事員が仕事ができますように持って参りたい。この二つの問題が解決いたしますれば、普及問題も今よりはるかによくなってくるだろうと考えております。
  79. 木下哲

    ○木下委員 私が、なければ申し上げるというような妙な口をきくのは、それだけの情熱があるのか、勉強しているのかどうかということを、私が情熱を持つのあまり、あなたに確かめたかった意味で伺ったのでありますが、今のお話ではなかなかまだ当っていないと思うのです。値段とかそういうものでなくて、現にだれか一人、校長なら校長先生なら先生で熱心にやる人があればできることなんです。そこに一つお気づきになって——あるいはもう一人担当者をふやせば問題ないのです。これには栄養士もありましょうし、養護訓導というようなものを考えてもいい。養護訓導に至っては、法律ができて以来すでに十年にもなることなんです。そういうところに力を集中されて、給食課長という責任上、ぜひとも給食費全額免除まで持っていくという情熱を持ってやっていただきたいということを、私は父兄として、と同時に国民にかわりましてお願い申し上げるわけであります。
  80. 松永東

    松永国務大臣 今の木下委員の仰せ、私もしごく賛成なんです。実は御承知通りまだ就任後わずかでありますけれども、昨年も何カ所か給食学校に参りまして、子供たちと一緒に子供たちの食べておるものを食べまして、これならば健康、保健の上からいってもどうしてもやらなければいかぬ、しかもそのほかに、子供たちがみんな自分でおぜんを運んで、そして一つのグループ、グループが集まって互いに協力していく、あの姿は一つの道徳教育です。情操教育です。ですからそうした面からも、どうしてもこれは全国に普及させなければならぬというように、私は非常に熱意を持っております。しかし遺憾ながら私もそう長い間この職にとどまっておるわけじゃないでしょうから、そこでさだめし木下さんは課長に一生懸命お尋ね下さったのだと思います。しかし私はそういう熱意を、この問題に限っては普通の問題以上に持っておるということだけ御了承願いたいと思います。
  81. 木下哲

    ○木下委員 給食の件はこれで終りますが、大臣のただいまのお話で、大臣も非常に同感だということについては、私に言わせれば、プラスの面というものはずいぶんたくさんあるわけであります。これは数えるにいとまがないほどであります。ただいまのお話で意を強うしましたから、重ねて課長にお願いしてこれは終ります。  次に大臣にお尋ねいたしますが、いよいよ体育局も設置されることになりました清瀬文部大臣のときだったと思いますが、私が大臣体育局設置方についてお願いを申し上げたところ、まことに同感だ、ただし今のところ予算的措置がこれこれであるからというお話で、かつての清瀬文部大臣もこの件については賛成の意を表されたのであります。いよいよ実を結びまして、体育関係のある私どもといたしましては大へんうれしい次第であります。この件については、文部省体育課担当官などの御苦心その他皆さんがこれをでっち上げたことに対して深甚の敬意を表する次第であります。  ところが予算書を見ますと、この発足が七月か八月になっておる。アジア大会は四月からもうすでに始まっていると言っていいと思うのです。ですから、これを七月か八月ということでなくて、予算的に何らかの措置をされて、すみやかに発足をしてもらわなければ、このアジア大会という大きな大会にもいろいろな面で何か支障を来たしておるということも聞きますし、非常におくれつつあるということでありますから、一つ早い発足ができないものかどうかということを大臣にお聞きしたい。
  82. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点は、われわれも同感でございます。実はこの法案は、四月一日から実施に移ることになっております。ですから五月のアジア大会にももちろん間に合うつもりでございます。さらにこれを非常に急ぎましたのは、御承知通り国際オリンピック招致運動もそろそろ強力にやらなければなりませんので、そういう面の必要性からもやはりどうしても局を設ける必要がありますので、急いだ次第であります。四月一日から実行に移す、こういうことであります。御了承を願います。
  83. 木下哲

    ○木下委員 今のお話で何も申し上げることはありません。まことにうれしい限りです。ところがこのアジア大会は、二十カ国からの国が集まってやるわけでありますが、目的としては勝負を争うことよりも、平和、友好というようなことにあると思いますが、これの輸送あるいは宿舎、競技場というようなものについて万端遺漏なくもうおできになっておるかどうか。
  84. 松永東

    松永国務大臣 これは大体できておるのです。一番困ったのは宿舎でございますが、宿舎もまず、ここで申し上げるのはどうかと思いますが、第一ホテルを全面的に借り受けて、あすこに収容する。それからその足らぬところも大体計画は立っております。ですから、各国からおいで下さる人々に友好親善の道が必ず尽されるというふうに考えております。
  85. 木下哲

    ○木下委員 今大臣のお話で、アジア大会を開催するに当りまして非常に意を強うし、安心したのでありますが、先ほどオリンピックのお話も大臣から出ておりました。オリンピックを今度はローマでやりますが、その次どこでやるかということはIOCですか、五十カ国の人たちが寄って相談をする、それがこの七月の中旬に日本に寄られるということで、そこできまることになるのが従来のシステムであったと思うのでありますが、ずいぶん立候補しておる。それについて、私はまだ行ったことがありませんが、中国あるいはモスクワあたりから帰った人は、見事な設備だということを言っておる。超党派的にオリンピックを招聘する委員会もできて、立候補しておる日本としてはモスクワその他のこういう立候補しておる連中に負けないだけの準備をする予定があるのかどうか。
  86. 松永東

    松永国務大臣 御説のような準備を充実するつもりで着々進めております。何もそうよその国には負けないようなのが、いよいよ実行せられるときには完備するというふうな強い決心を持っております。
  87. 木下哲

    ○木下委員 今のお話で、そういう超党派的にできておることで、そのように承わったのでありますが、私がそれを率直にそのまま安心のできないことは、岸内閣総理大臣のスポーツに対する諮問機関としてスポーツ振興審議会というようなものがある。この審議会でたびたび議論になったことは、選手の強化費を出せというようなことが議論されておるわけなのであります。ところが今度の予算を見ると、選手強化費というものは全然盛られておらない。こういう状態から見ますと、ただ口先だけでこういう委員会ができて超党派的にやるからどうこういうようなことだけで現実にできるかどうか。審議会でたびたび選手の強化費、あるいは一日五千カロリー食わせろという話が出たことも聞いておるのに、その裏づけとして今度の予算一つもないというようなことでは、今のお話がまだ少し不安になるわけでございますが、よろしゅうございますか。
  88. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいまの選手強化費の問題でございますが、御説のように、内閣のスポーツ振興審議会でも強化対策について考えるべきだというような御意見もございました。私どもとしては、それについての予算措置を新たに講じたいと考えたのでございますが、いろいろ研究いたしました結果、アジア大会の分につきましては、アジア大会組織委員会の諸経費の中で若干まかなえるというようなことで、実際上強化費として、費目としてはあげておりませんけれども、アジア大会組織委員会の運営費の中で適当に考えられる、こういうようなことで一応現状としてはいっておるわけでございます。
  89. 木下哲

    ○木下委員 御答弁で大体わかりました。これで了承するわけでありますが、スポーツの件等につきましては、アジア大会もあろうし、オリンピックもありますが、昨年の予算に盛られたような、地方の社会体育の指導の面で指導員というものが作られたわけでありまして、どこまでもやはりよき指導が地方のスポーツの中に溶け込むことを文部省としてはいつまでもお忘れにならないようにやっていただきたいということを、スポーツに関連しまして発言して、質問を終ります。
  90. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 一点だけ。文部大臣に伺いたいと思いますが、きょう文部大臣から御発表になったと思いますが、実は私が心配しておる宗谷の問題であります。御承知のように、きのうあたりは非常な濃霧ということで消息を絶っておるのでありますが、国民が非常に心配しており、留守家族の方も非常に心配されておると思いますが、これは文部大臣が統合本部の本部長として責任のある立場であります。われわれは今になって責任をどうのこうのということを追及する意思はございませんが、ただ善後処置をどのようにされるのか、また今後どういうようになっていくかということ、これは現地といろいろ連絡しなければわかりませんけれども、一体今日の段階でどういうような処置をされるものであろうかということを、文部大臣並びに大学学術局長から、一つ国民の安心するような率直な御答弁を願いたいと思います。
  91. 松永東

    松永国務大臣 今の宗谷の問題につきましては、これはもう国民とともにわれわれも非常に心憂いたしております。何といたしましても予測すべからざるああいう現地の天候を相手にしてのことでありますから、なかなか思うように参りません。だがしかし昨日までに入っております電報によりますと、せめて七人だけは次の越冬隊として残しておいて、そして本観測を完了したいというような気持を持って向うでは進んでおられる。しかしここ一両日の天候が重大であるのでありまして、その一両日の間しばらく待機をするというようなことが、昨晩までには私のところに入っておりました。なお詳細なことは政府委員から答弁いたさせます。
  92. 緒方信一

    ○緒方政府委員 宗谷の現況につきましてはただいま大臣からお話のございました通りでございますが、御承知のように、一時バートン・アイランド号の援助によりまして基地から百二十キロあたりのところに参りまして、そうして本観測の越冬隊の上陸に極力努力いたしたのでございますけれども、しかし予備観測の例の残っておりました十一人の越冬隊を収容することにつきましては、飛行機をもって成功いたしましたけれども、本観測の越冬隊を残すことにつきましては、その地点では気候も移りますし、その地点に長くとどまるようなわけにいきませんような状態になりましたので、そこからの上陸は今後断念せざるを得なくなった、そうして現在はさらにそれから北の方に氷を割って出まして、外洋に出ている状態でございます。ただいま大臣のお話にございましたように、なお飛行機でもって基地まで運び得る可能性を見つけまして、最低限七名にいたしましても越冬隊を残したいという努力をいたしておるのが現状でございます。ただ飛行機で基地に人員と若干、それに必要な物資を輸送するということにつきましては、非常な困難を伴うわけでございまして、特にビーバーという飛行機を飛ばしますためにはその条件がいろいろむずかしい。海水面からフロートで飛びました場合には基地付近に着陸する海水面がなければなりません。それからまた氷の上をそりで飛び出しました場合には、これは基地付近は着氷できる場所は十分あるわけでございますけれども、飛び出すことのできるような平らかな氷盤があるかどうかという問題がございまして、これは非常にむずかしいわけでございます。それから天気でございますけれども、ことしは雪が全般に非常に多いのに加えまして、ここきのうぐらいから非常に風が強くなっておるようでございまして、まだ飛行機を飛ばす状態に至っておりません。さような状況でございまして、非常に困難な現況でございます。しかも観測隊といたしましては最後までの努力を尽したいということで、今現地でがんばっておるような状況でございます。まだここしばらくの状況を待ちませんと、最終的なことは申し上げかねる、今の現状につきましてはそういうことでございます。
  93. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いま一点。これは留守家族の方が非常に心配されておると思うのですけれども、犬のことで各家庭まで脅迫されたりまた非常にひどい投書がいくらしいのですが、これはまことに気の毒で、家族の方は何も罪がないのです。これは現場を見なければわからぬと思いますが、そういうことについて文部省から、そういうような脅迫状、あるいはその家庭に対してどういうようなことを今までされておるのか。各家庭の方が関係のない犬のことで一々脅迫されたんじゃ気の毒で、これは新聞でちょっと見たんですが、そういうことについての善後処置が講じてあるのかどうか、その点を安心のいけるように一つ……。
  94. 緒方信一

    ○緒方政府委員 連れて参りました樺太犬の救出につきまして、愛犬家の方々あるいはその団体等から非常に熱烈な御要望の声が上っておりますことは御承知通りでございます。これはまことにその犬を愛する気持といたしましてはわれわれとしても全く御同感でございますけれども、しかし現地の事態というものは、今申しましたように、なかなかなまやさしい事態じゃないのでございます。第一先ほども説明いたしましたように、飛行機を飛ばします条件が非常にきびしいのでございまして、決して現地で飛ばせるのに飛ばさないでそのままにしておくという状態じゃ絶対にございません。雪が降り風が吹き、その間を見て飛行機を飛ばすわけでございますから、現地に何時間か待機いたしておりましても、飛行機を飛ばす回数というものは非常に限られております。もし飛行機を飛ばし得るという見通しがつきましたならば、もちろん本観測隊員は向うに残せるわけでございますが、それができない状態でございますので、気持といたしましては、われわれ本部の者もあるいは現地の越冬隊、観測隊の人々も、これを救い出す熱意は十分に持っておられることは申し上げるまでもないところでございますけれども、しかしながらそういう現状でございまして、まだ十五頭の犬が基地に残っているという状態でございます。  それから今お話の、熱意のあまり、永田隊長とかあるいは西堀越冬隊長、こういう留守宅にまで非常に強い要望が出ておるというのは事実でございまして、これにつきましては、先般、一昨日でございましたか、報道関係の方々の御協力を得まして、今申しましたような実情であることも十分それらの方々にわかっていただきますように、報道関係の方々に協力をお願いしたようなわけでございます。犬を救い出さなければならないという心情は、われわれも御同感でございますけれども、そのような実情でございますので、御了承願いたいと思います。報道関係の方々にも御協力を得まして、新聞でもだいぶそういう事情を伝えていただきましたが、今後なお留守家族を必要以上に悩ますことのないように、私ども心からそういう方々にお願い申し上げておる次第でございます。
  95. 山下榮二

    山下委員長 本日の質疑はこの程度といたしまして、委員会散会後理事会を開きたいと存じます。  これにて散会いたします。     午後一時二十三分散会