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1958-02-12 第28回国会 衆議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十二日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 伊東 岩男君 理事 高村 坂彦君    理事 山中 貞則君 理事 河野  正君    理事 佐藤觀次郎君       簡牛 凡夫君    杉浦 武雄君       千葉 三郎君    渡海元三郎君       灘尾 弘吉君    並木 芳雄君       山口 好一君    木下  哲君       小牧 次生君    櫻井 奎夫君       鈴木 義男君    高津 正道君       野原  覺君    平田 ヒデ君  出席政府委員         文部政務次官  臼井 莊一君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         海上保安庁長官 島居辰次郎君  委員外出席者         南極地域観測統         合推進本部副本         部長      稲田 清助君         専  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 昭和三十二年十二月二十一日  委員宮澤胤勇辞任につき、その補欠として三  浦一雄君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員長谷川保辞任につき、その補欠として鈴  木義男君が議長指名委員に選任された。 昭和三十三年一月三十日  委員河野金昇君及び三浦一雄辞任につき、そ  の補欠として灘尾弘吉君及び渡海元三郎君が議  長の指名委員に選任された。 二月二日  理事竹尾弌君死去につき、その補欠として山中  貞則君が理事に当選した。     ――――――――――――― 昭和三十二年十二月二十日  国立及び公立義務教育学校児童及び生徒  の災害補償に関する法律案山崎始男君外六名  提出、第二十四回国会衆法第八号)  市町村立学校職員給与負担法及び地方教育行政  の組織及び運営に関する法律の一部を改正する  法律案平田ヒデ君外二名提出、第二十六回国  会衆法第一八号)  公立学校施設費国庫負担法の一部を改正する法  律案櫻井奎夫君外三名提出、第二十六回国会  衆法第二二号) 昭和三十三年二月三日  国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一九号) 昭和三十二年十二月二十七日  公立義務教育学校施設費半額国庫負担に関  する請願外十三件(内藤友明君外二名紹介)(  第三一号)  同(二階堂進紹介)(第八一号)  学校保健法制定に関する請願木村俊夫君紹  介)(第七八号)  教員配置基準及び学級編成基準法制化等に  関する請願中馬辰猪紹介)(第七九号)  へき地教育振興予算に関する請願中馬辰猪君  紹介)(第八〇号) 昭和三十三年一月十八日  愛知学芸大学名古屋分校後期課程設置反対に  関する請願小林かなえ紹介)(第一七二  号)  学校保健法制定に関する請願井堀繁雄君紹  介)(第一七三号)  同(岡本隆一紹介)(第一七四号)  同外二件(大石武一紹介)(第一七五号)  同(佐々木更三君紹介)(第一七六号)  同(平岡忠次郎紹介)(第一七七号)  同(阿左美廣治紹介)(第三六〇号)  公立義務教育学校施設費半額国庫負担に関  する請願外四件(池田清志紹介)(第一七八  号)  同(江崎真澄君外十名紹介)(第一七九号)  同外二件(黒金泰美紹介)(第一八〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第一八一号)  同(坂田道太紹介)(第一八二号)  同外一件(松澤雄藏紹介)(第一八三号)  同(山本猛夫紹介)(第一八四号)  同(山中貞則紹介)(第一八五号)  同(芦田均紹介)(第三七〇号)  公立小中学校統合特別助成費国庫補助増額に関  する請願吉川久衛紹介)(第一八六号)  へき地教育振興法改正に関する請願山本猛夫  君紹介)(第一八七号)  小中学校学級編成基準の引下げに関する請願(  吉川久衛紹介)(第一八八号)  公立小中学校施設統合整備に関する請願吉川  久衛紹介)(第一八九号)  教員配置基準及び学級編成基準法制化等に  関する請願山中貞則紹介)(第一九〇号)  教育予算増額に関する請願杉浦武雄紹介)  (第一九一号)  愛知学芸大学名古屋分校後期課程設置請願  (丹羽兵助紹介)(第一九二号)  学級編成基準適正化等に関する請願(稻葉修  君紹介)(第一九四号)  科学技術教育振興に関する請願前田房之助君  紹介)(第三三四号) 同月二十七日  学級編成基準適正化等に関する請願須磨彌  吉郎紹介)(第三九二号)  同(徳田與吉郎紹介)(第四二一号)  同(並木芳雄紹介)(第四二二号)  同(岡本隆一紹介)(第四二三号)  公立義務教育学校施設費半額国庫負担に関  する請願須磨吉郎紹介)(第三九三号)  同(岡本隆一紹介)(第四二四号)  同(山下春江紹介)(第四二五号)  学校保健法制定に関する請願松浦東介君紹  介)(第三九四号)  同外一件(赤城宗徳紹介)(第四六八号) 同月三十一日  学校保健法制定に関する請願河野正紹介)  (第四九九号)  同外一件(大野市郎紹介)(第五七四号)  同(大村清一紹介)(第五七五号)  同(菊地養輔君紹介)(第五七六号)  同(松澤雄藏紹介)(第五七七号)  公立義務教育学校施設費半額国庫負担に関  する請願外一件(三木武夫紹介)(第五〇〇  号)  同(愛知揆一君紹介)(第五九二号)  同(大石武一紹介)(第五九三号)  同(大村清一紹介)(第五九四号)  同(菊地養輔君紹介)(第五九五号)  同(須磨吉郎紹介)(第五九六号)  同(牧野良三紹介)(第五九七号)  学級編成基準適正化等に関する請願外三件(  赤城宗徳紹介)(第五七八号)  同外一件(大久保留次郎紹介)(第五七九号)  同外二件(大森玉木紹介)(第五八〇号)  同(加藤高藏君外三名紹介)(第五八一号)  同外二件(加藤高藏君紹介)(第五八二号)  同外二件(北澤直吉紹介)(第五八三号)  同(須磨吉郎紹介)(第五八四号)  同(塚原俊郎紹介)(第五八五号)  同外四件(徳田與吉郎紹介)(第五八六号)  同(中山榮一紹介)(第五八七号)  同外一件(並木芳雄紹介)(第五八八号)  同(橋本登美三郎紹介)(第五八九号)  同(南好雄紹介)(第五九〇号)  同外二件(山本粂吉紹介)(第五九一号) 二月六日  学校保健法制定に関する請願淡谷悠藏君紹  介)(第六六四号)  同(岡本隆一紹介)(第七五八号)  菱刈小学校舎改築に関する請願池田清志君紹  介)(第六六五号)  学級編成基準適正化等に関する請願塚原俊  郎君紹介)(第六六六号)  同(植村武一紹介)(第七二一号)  同(塚原俊郎紹介)(第七二二号)  新庄北高等学校木材工芸科設置に関する請願  (松澤雄藏紹介)(第六六七号)  公立義務教育学校施設費半額国庫負担に関  する請願植村武一紹介)(第七二〇 号)  同(辻原弘市君紹介)(第七五七号) 同月十一日  へき地教育振興法の一部改正に関する請願(赤  城宗徳紹介)(第七七九号)  同(助川良平紹介)(第七八〇号)  同外四件(坂田道太紹介)(第八一一号)  同(加藤常太郎紹介)(第八七九号)  学校保健法制定に関する請願大橋武夫君紹  介)(第七八一号)  同(内田常雄紹介)(第八一二号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第八一三号)  同(小林信一紹介)(第八一四号)  同(竹谷源太郎紹介)(第八八〇号)  公立義務教育学校施設費半額国庫負担に関  する請願野田卯一紹介)(第七八二 号)  同(大石武一紹介)(第八五五号)  教科書末端販売機構改革に関する請願高津正  道君紹介)(第八二八号)  私学理工科教育振興に関する請願長谷川四郎  君紹介)(第八五六号) の審査を本委員会に付託された。 一月十八日  公立小中学校統合立法化に関する陳情書  (第二八号)  学校保健振興促進に関する陳情書  (第二九号)  勤労青少年産業教育振興に関する陳情書  (第三一号)  新潟大学夜間短期大学併設に関する陳情書外  二件(第三二  号)  公立学校施設費補助に関する臨時措置法制定に  関する陳情書(第  三三号)  青少年不良化防止に関する陳情書  (第三四号)  マリモの保護費全額国庫負担に関する陳情書  (第七  三号)  義務教育学校施設費半額国庫負担法制定等に関  る陳情書外八件  (第八五号)  修学旅行に関する陳情書  (第八六  号)  児童生徒等災害補償に関する陳情書  (  第八七号)  養護教諭設置義務制に関する陳情書  (第八八号)  修身科復活に関する陳情書  (第八九号) 二月一日  新潟大学夜間部設置に関する陳情書外一件  (第一四一号)  特殊教育法制化等に関する陳情書  (第一四二号)  小、中学校に対する国庫補助及び起債わく拡大  に関する陳情書(  第二〇五号)  義務教育施設に対する補助単価及び補助率引上  げ等に関する陳情書  (第二〇六号)  昭和三十二年七月豪雨による公立社会教育施設  災害復旧に関する陳情書  (第  二五四号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  南極地域観測に関する件      ――――◇―――――
  2. 山下榮二

    山下委員長 これより会議を開きます。  初めに第十三回国会以来当文教委員会委員長であり、文教委員として文教委員会における文教施策に関する立法、その他の審議の過程を通じて、また文部政務次官として直接その衝に当り、わが国文教行政充実発展に多大の貢献をされ、自他とも文教のヴェテランとして今後いよいよその健闘を期待されておりました竹尾弌君が、去る八日第一議員会館において急逝されました。ここにつつしんで哀悼の意を表したいと存じます。皆さんの御起立を願って、黙祷をささげたいと存じます。     〔総員起立黙祷
  3. 山下榮二

    山下委員長 それでは理事補欠選挙を行いたいと存じます。理事でありました竹尾弌君が去る八日死去されましたので、理事が一名欠員となっております。つきましてはその補欠選挙をいたさなければなりません。先例によりまして、委員長においてその補欠指名いたしたいと存じます。御異議はございませんか。
  4. 山下榮二

    山下委員長 御異議の声を聞きませんから、それでは私より指名を申し上げます。山中貞則君を理事指名いたします。(拍手)     —————————————
  5. 山下榮二

    山下委員 次に南極地域観測に関する調査を進めます。まず南極地域観測の現状とこれまでの経過について説明を聴取いたしたいと存じます。島居海上保安庁長官より説明を願います。
  6. 島居辰次郎

    島居政府委員 宗谷につきましては、一般国民の皆様の関心のまとでもありますし、またいろいろ御心配もかけておりますので、これから極地における行動の概要について申し上げたいと思います。お手元に宗谷航跡図というのを配付いたしておりますので、それで一つごらんをいただきたいと思います。  宗谷は前回の予備観測の経験にかんがみまして、一昨年より十八日早く、昨年の十月二十一日東京を出港いたしまして、その後予定通り十二月二十一日に極地のエンダービー・ランドのクローズ岬沖に到達したのであります。これから大陸に沿いまして、西南方のコースをとりまして、ヘリコプターをもって進入水路調査を行いながらリュッツォフ・ホルム湾に接近していったのであります。この間にビーバーを組み立てまして、水路偵察に備えたのであります。二十三日、ちょうどその紙の一番右の上にございますが、十二月二十三日未明より氷盤は多少大きくなって参りまして、航行やや困難になってきたのでありますが、ヘリコプターによる進入路偵察と、それから水路調査を続行しながら、氷盤の弱いところを選んで、少しずつ前進していったのであります。そうして二十六日前方にビーバーの発着可能と思われる開水面を発見いたしましたので、これに接近してビーバーを飛ばそうと思いまして、氷原進入していったのでありますが、あいにくそのとき氷状が急激に悪化いたしまして、一進一退を余儀なくされまして、三十一日には強力なブリザードに襲われまして、その後はほとんど航行の自由を失いまして、完谷の全能力をあげ、乗組員全員の最善の努力にもかかわらず、大氷原とともに西に西にと圧流されて参ったのであります。そうして一月三十一日までにその距離は約二百四十海里に及んでおりまして、この間自力航行できた距離わずかに四十海里であります。一月三十一日に至りまして初めて氷状やや好転したので、行動を開始いたしまして、外洋に向け氷原脱出を強行いたしたのであります。しかしこの行動中二月一日の午前五時三十一分に宗谷の左の方のスクリュー——宗谷二つスクリューを持っております。その左の方のスクリューの、プロペラに四つの羽がありますが、その一つの羽を約四分の三程度折損したのであります。これは氷を割ってそうして氷を押していくその推力につきましては、約二割程度の低下はやむを得ないと思われるのでありますが、航行にはもちろん差しつかえございません。大体十ノット程度は保持しておるのであります。その後もちろん両方の推進器航行しておりますが、その後爆破作業等をあわせ行いまして、氷原と悪戦苦闘を続けること約一週間であります。二月六日の現地時間十三時三十分、日本時間十九時三十分、ついに自力をもって外洋脱出することができたのであります。  かくして宗谷氷原で難航を続けております状況にかんがみまして、一月の半ばごろから外国砕氷船援助を求める必要があるかどうかということについて検討を始めたのでありますが、また現地にもそういうことを言ってやりまして、非常に困ってから急に砕氷船を頼んでも、おいそれとはなかなか来れない。そこで少くとも二週間前から見通しをつけなければいけないということを松本船長の方へ言ってやったのでありますが、私の方といたしましては、一月二十一日に外務省アメリカソ連、イギリス、オーストラリア、ベルギー、ノルウエーなどの南極地域に派遣されております砕氷船の動静の調査を依頼いたしまして、そうして最悪の場合外国砕氷船援助を求めるような事態も予想される旨を申し入れておいたのであります。この間にも宗谷自力脱出はもちろん期待しておったのでありますが、一月末になりましても氷状が好転のきざしがなかったのでありまして、われわれの考えといたしましては、おそらく自力脱出はするでありましょうけれども、あまりおそく脱出したのでは観測に差しつかえる、また越冬隊収容にも差しつかえる、こういうふうなことも懸念いたしまして、一月三十一日に現地とと打ち合せ、現地からの要請もありまして、当時距離の上からも、また性能の上から最も適切であると判断されたアメリカ砕氷艦バートン・アイランド号援助外務省を通じてアメリカに要請したのであります。  横道になりますが、当時南極における各国砕氷船状況をちょっと地図で御説明申し上げますと、日本昭和基地はここでございます。そこで各国砕氷船はいろいろありますが、最も近いところにあるのは、日本の西の方約三百海里のところのベルギーブライド湾、ここにことし初めてできた基地がございます。ここには砕氷船が二隻おりますが、その二隻とも宗谷の五分の一程度でございまして、宗谷以上の役には立ちませんが、その二隻とも今なお氷に閉ざされておるような状況でございます。ここはウェスト・ウィンド号、これはアメリカの強力な砕氷船でございますが、これも氷に閉ざされたままになっています。それから日本の東の方約六百海里のところに豪州のモーソン基地がございます。ここには、ベルギーよりは大きいのでありますが、二千百トンばかりの砕氷船、これまた氷に閉ざされているような状況であります。でございますので、当時宗谷よりも能力のある船でということになってくると、まずアメリカグレイシャーとか、あるいはソ連オビということになってくるのでありますが、グレイシャーはあいにく、直接われわれの方への報告ではありませんが、外電によりますと、やはりプロペラを破損してニュージーランドで修理中だ、こういうことであります。そこでオビはどうかというと、ソ連の方へ外務省を通じて聞きますと、ジョージ五世島というのがございまして、そこからニュージーランドへ今荷物を積んで航行している、こういうことなのです。そこでみんな遠いので、最も近いので多少宗谷よりも能力のいいといったならば、アメリカバートン・アイラント号と、アトカというのがソ連ミールヌイ基地の沖の方を西の方へ向けて航行中だということでございましたので、まずこれが時期からいっても、また能力からいっても一番適当である、こういうことからこれに依頼したようなわけであります。御参考までに申しますと、バートン・アイランド号は約六千五百十六排水トンでありまして、主機関が一万二千馬力、砕氷能力が約三・六メートルでありまして、宗谷の約三倍くらいある船であります。そこで、本国からの救援の指示を受けましたバートン・アイランドは、宗谷脱出の五日前の二月一日のミールヌイ基地ソ連基地に寄ったようでありますが、この付近から行動を開始しまして、以後バートン・アイランド宗谷とは連絡を毎日一回とりつつ、二月七日オングル島の北方約九十マイルの地点にて会合しております。配付いたしました地図でごらんいただきますと、右の方に赤い線で書いてありますかどのところであります。その後宗谷バートン・アイランド号に続航いたしましてオングル島に向け進入を開始したのでありますが、進入するに従いまして、氷盤はだんだん悪くなり、オングル島に向う進入路も、去年実は東経四十度線に沿って南下したのでありますが、そのときの報告によりますと、直航して南下することは氷が固くて行けないから、西の方へ回って近づくというふうな報告を聞いたのでありますが、そういうふうにだんだん西南の方へ向って行っているようであります。そうして二月九日両船は現在位置オングル島の西北でございますが、そこの約六十八海里の地点に仮泊しているのであります。その後ヘリコプター四機によりまして周到に氷状偵察をした結果、これ以上進入することはほとんど不可能であるという結論に達しましたので、とりあえずここから現地において、現在行っておられる越冬隊収容のこととか、あるいは荷物の輸送のこととか、そういうことを現地で計画を立てているようであります。その後ちょうど最も大切の時期になったのでありますが、一昨晩の日本時間の午後九時からずっと磁気あらしのために通信が不能になりまして、全く困っているのでありますが、消息の連絡ができないという状況でございます。  ただ、その辺の氷原状況をつけ加えて申しますと、宗谷がおります現在位置南東方オングル島の北方でございますが、幅約十三海里にわたってハンモック状氷原をなしておりまして、それより先は定着氷となっており、そのハンモック状氷原は、何度もヘリコプターをもって調査いたしましたが、その結果、米国の砕氷艦バートン・アイランド号といえども突破は困難であるということがわかったのであります。それから七日の午後バートン・アイランド号と会合いたしまして氷海へ進入して間もなく、氷盤間にパンケーキ・アイスというのが密集いたしまして、また今のリード水面には半日くらいの間に厚さ約十センチのニュー・アイス、ことしの新しい氷でありますが、それが張り詰めてきたということから想像いたしますと、すでにこの付近結氷期に入っておることが明らかであるのであります。また天候の変化によりましても、このリードはいずれ近くは消滅するであろうということも予想されますが、今の一週間くらいはもちろん大丈夫であろうかと想像しているのであります。  大体従来の経過と、今宗谷がおります付近氷状について概略を申し上げさしていただきました。
  7. 山下榮二

    山下委員長 以上の説明に対して、質問通告順によいてお許しすることにいたします。河野正君。
  8. 河野正

    河野(正)委員 ただいま鳥居長官からいろいろと今日までの南極観測に関しまする経過報告が行われたわけでございますが、私はただいまの経過をいろいろ聴取いたしまして、今日までこの南極観測に寄せられました関係各位の御労苦に対しまして、まず深甚なる敬意と感謝を捧げたいと思うのでございます。しかしながら今後なお残された問題が多数ございますので、私はそういったいろいろな今日の結果論ではなくして、いろいろ責任を責めるというようなことではなくて、むしろ今後いろいろ問題が残されておりますので、そういった問題に対しまする完全の処置を行うといった意味から、若干の質問を行なってみたいと思うのでございます。  御承知のように、世界のあるいはまた国民各位が絶大なる期待を寄せられておりましたところの南極観測が、今日のような事態に立ち至りましたことは、まことに残念といわなければならぬのでございますが、結論的に申し上げますれば、今日南極観測問題というものは、観測を実施するか、あるいはまた中止しなければならぬのかというふうな、最後の断を下すべき重大なる段階に到達いたしておるというふうに私ども判断をいたすのでございます。そこで先ほど申し上げましたように、今日の結果をながめて、いろいろそういった事態責任を追及するというようなことではなくて、むしろ今後残されておる問題もございますので、そういった建前から、今日までとられました処置に対しまして遺憾の点がなかったのかどうか、むしろ教訓を受けるというような点があったのかなかったのか、そういった点をまず私は、きょう大臣がおられませんから、具体的なことは統合本部各位にお尋ねするといたしますが、まず次官の方からそういった大まかなことに対します御所見を承わっておきたいと思います。
  9. 稲田清助

    稲田説明員 ただいまの点でございますが、今日宗谷及び観測隊が非常な困難に直面している点につきまして、われわれといたしましても日夜非常に苦心いたしております。その苦心のうちに、ただいまお言葉のありましたように、本部のいろいろな仕事なりあるいは現地における活動においていろいろ反省し、今後に備えなければならぬ点がありはしないかということは、日夜考慮いたしておるわけでございます。今日この苦難に直面いたしました非常に大きな原因は、先ほど島居海上保安庁長官から申し述べられましたように、現地における気象の異常な状況が非常な原因であろうと思うのであります。わが国のみならず、各国砕氷船があるいは傷つきあるいはとじ込められておるというような状態に、宗谷も同じく苦心いたしておるわけでございますが、とにかくわれわれといたしましては、何としてもこの段階におきまして、現地とわれわれの間における意思の疎通ということが一番大切なことだと考えております。それから同時に観測隊員と船側、船長その他との間の緊密な連絡、それから同時にバートン・アイランド号が救助に加わりました以上は、同艦の関係における緊密な連絡、こうした人の協力一致、その間寸分もすきのないということに一番考慮を払うべきものと考えまして、その点については海上保安庁からは船長に毎日何回となく連絡いたしまして、現地意向を重要な参考資料としてこちらの方針を決定する、文部省におきましても隊長と常に連絡いたしまして、その意向を徴しつつ、文部省海上保安庁とは、また島居長倉と私とは、毎日会うなりあるいは電話なりしばしば連絡いたしまして、ことに多少方針めいたことがあります場合には、本部構成員のうち主要な人々の緊急連絡会議を開いてやってきたわけでございます。この点について私どもとしては努めて参ったつもりでございますが、さらに今後とも努力いたしたいと思っております。今現地においては非常に迫られた日時の間に非常に困難にしてしかもまたぜひとも遂行しなければならない越冬隊収容の問題、それからさらにでき得るならば、今度参りました目的であります観測隊を少数なりとも残さなければならないということを、このむずかしい条件下に、この短かい時期にいたすことでありますから、それらについて十分一つこちらで指示あるいは注意を与うべき問題があれば与えますとともに、また十分現地意向を尊重しながら事を決定いたしたいと考えておるわけでございます。
  10. 河野正

    河野(正)委員 ただいまいろいろ御報告があったのでございますが、もちろん今度の観測に対しまして、世界各国が気象の悪条件というような問題に取っ組んで、不測の事態に取っ組んで、非常に困難を招来したということにつきましては、私ども了解するにやぶさかでないのでございます。しかしながら事南極観測でございますから、そういった気象の最悪の条件というようなことも十分考慮に入れた上におきましてこの観測が行われたのでございますけれども、結果的にはただいまいろいろ御説明がございましたように、非常に困難な状態に逢着したということにつきましては、私どもまことに残念に感ずるのでございます。  そこでさらにお尋ねを申し上げたいと思うのでございますが、ただいまいろいろ御報告があったように、今日の事態はきわめて重大なる事態でございます。しかもなおここ一両日間に、磁気あらしと申しますか、私も専門的なことはよくわかりませんが、そういった磁気あらしによって現地との連絡通信が非常に困難な状態に置かれた。こういった新事態が発生することによって、今日まで統合本部で考えておられますいろんな構想に再び支障を来たさないかどうか、こういった点は、新事態でございますので、この席におきましてさらに明らかにしておいていただきたい、かように思うのでございます。
  11. 稲田清助

    稲田説明員 何と申しましても、先ほど島居さんからお話しのように、先日以来の磁気あらしで通信途絶ということは、今申し上げた現地との連絡が不可能であるので、非常に焦慮にたえないのでございます。しかしその前において現地といろいろ連絡いたしましたことは、ここ二、三日中は現地においては相当気象条件が好条件であると推察する資料がございますので、その間において飛行機を飛ばして、越冬隊員の収容は可能であると判断しておるのでございます。と申しますのは、今越冬基地宗谷との距離は百キロ余りでございますが、昭和号、ビーバー飛行機におきましては、宗谷付近においてそり滑走に適当な地点もございますし、また越冬地点付近においてはそりをもって着陸し得る地点があることを調べておりますので、飛行機をもっていたしますれば大体三往復くらいで人の収容は可能であると考えられますから、この間天候のいい時間をとらえれば、もちろん隊員の収容ということは安全に行い得ることと考えております。しかしながらこの磁気あらし前までの状況におきましては、まだ飛行機が飛び立つというような条件に恵まれてなかったようであります。おそらくその後においてそういう機会をつかみ得たとも思いますし、まだこれから二、三日の間につかみ得るということは、いろいろ気象関係の資料から見て私ども考えておる次第でございます。  次に越冬隊員を残すという問題につきましては、先般本部の緊急連絡会議におきましても、現地からの意見あるいは計画を聞きまして、いろいろ協議いたしました。現地としては雪上車七台を持っておりますので、それを使用いたしまして、少数に圧縮いたしました越冬隊員と必要な食糧等の物資を、氷上輸送して基地に送り込もうという計画を持っているようであります。もちろん現地におきましても、ヘリコプターを飛ばしたりいろいろなことをして調査を慎重にいたしておることとは思いますけれども、本部としては安全を第一と考える本観測事業の趣旨からいたしまして、どこまでもいろいろな調査の上、安全に氷上輸送をし得るという自信に到達したときに限ってこのことを行なってもらいたいということを現地に指示いたしております。そういうことで、どこまでも無理なく越冬隊員を収容し、またできるならば本観測隊現地に残すということを遂行してもらうように念願いたしておるわけでございます。磁気あらしが終りますれば、これらのことについてさらに詳細に連絡いたしたいと思っております。
  12. 河野正

    河野(正)委員 ただいまいろいろと御説明があったのでございますけれども、それはどこまでもこの磁気あらしが到来します以前における気象条件を対象としての説明であったものと考えます。しかしながらこの二、三日は磁気あらしのために現地との連絡が全く不可能でございますから、今日の事態がどういう事態になっておるのか、ことに気象状況というものがどういう事態に置かれておるのか、この点に対しましては当局側は自信を持って判断をしておられるのかどうか。なおまた磁気あらしのために現地との連絡は不可能であるけれども、ここ二、三日前の気象状況からきわめて気象状況というものは良好である。そこで着々と今日統合本部で考えておられますような構想の事態というものが実現されつつある。もしそうであるとするならば、越冬隊員の収容に重点が置かれておるのか、あるいはまた最小限度といいますか、いわゆる圧縮した編成での本観測を行うというふうな考え方での行動が重点で行われておるのか、そういった点の判断がどのように本部において行われておるか、この点は今後の問題におきましても、きわめて重要な要素をはらんでおりますので、その点を一つ明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  13. 稲田清助

    稲田説明員 通信途絶直前の現地の気象状況は雪でございまして、飛行機が飛べない状況なんでございます。ただこの十日にこちらで気象庁関係者その他集まりまして現地からの天気図で判断いたしましたところは、十日から数えて四、五日くらいは非常に気象が悪化することはないであろう、こういう判断に立った。ところがその後におきましては相当の気象の変化があるだろうという予測を天気図においていたしたのでございます。従って雪でございまするけれども、そう非常に悪化することは二、三日中なかろうかと思っておったのですけれども、飛行機が飛ぶような状況はまだ通信途絶前には受け取ってない、そういうのがただいまの気象状況の見通しであるわけであります。もちろんわれわれといたしましては、越冬隊員を安全に本船に収容するということを第一に重要な目的として考えておるわけでございます。それは何としても遂行しなければならない問題だと思っております。本観測越冬隊員を規模を縮小しても残すかどうかという問題は、先ほど申しましたようにいろいろ氷状調査、雪上車の運行が安全に可能であるということの見通しがつきましたときに、遂行してもらいたい、こういうふうに指示いたしておるわけでございます。
  14. 河野正

    河野(正)委員 ただいまの御説明によりますと、雪が降っておるために飛行機が飛べない状況であろうというふうな判断であったのでございます。ところが私どもが判断いたしまするに、今度の問題を今後遂行していくためには、あるいはまた言葉をかえて申し上げますならば、行動していくためには、雪上車によって収容し、またもろもろの物資を輸送するということか、あるいはまたビーバー機でこの行動を行なっていくかというふうな、私は方法としましては二つの方法しか残されておらぬのではなかろうかというふうに判断をいたすわけでございます。ところが御承知のように、昨年接岸いたしました現地昭和基地との間の距離というものは大体十三キロあったといわれております。ところが距離はなるほど十三キロでございましたけれども、実際に雪上車を走らせますというと、どうしても迂回をしなければならぬというふうな実情もございますので、大体十三キロの二倍でございまする二十六キロ程度の行程を踏まなければならぬというようなことが今日まで報告されておるのでございます。ところが今度の場合の接岸地点から昭和基地までの距離というものは、大体百キロ前後だというふうにいわれております。そういたしますと、前回の経験からながめますると、今回の場合は約二百キロ雪上車で行動しなければ昭和基地に到着することができないというような——これは算術計算でございまするけれども、そういった判断になろうかとも考えます。そういたしますると、二百キロ程度の行程を踏まなければ昭和基地に到着することができないということになるといたしまするならば、どうしてもヘリコプターあるいはビーバー機等の誘導がなければ、基地に到着することはなかなか困難ではなかろうかと私は判断いたします。そういたしますると飛行機が飛ぶか飛ばないかということが、この行動を助けます最も大きな要素になるのではないか。さっき統合副本部長のお話によりますと、飛行機が飛ばない程度の気象状況ではなかろうかという話でございましたが、その点はきわめて重要な影響をもたらす点でございますので、その辺の事情というものをもう少しはっきりしておいていただきたいと思うのでございます。
  15. 稲田清助

    稲田説明員 これは現地におきましても、また本部におきましても、越冬隊員の収容は飛行機によるのが一番早いし確実であろうと今のところ考えております。それから新たに越冬隊を残すという問題につきましては、これは飛行機でそれだけの物資を運ぶことは非常に往復回数がふえて困難でありまするから、それはやはり雪上車によるのがいいと考えております。雪上車を運行いたしますにつきましては、あらかじめ飛行機あるいはヘリコプターで道を調べることはもちろん、雪上車が運行いたします際にも、ヘリコプターが誘導するという計画を立てなければ安全を期し得ないと思っております。雪上車で百二十キロばかりの地点に参りますにつきましては、七台の雪上車でございまするけれども、相当な時間を要する、ただいまお言葉の通りでございます。従いまして越冬隊員の収容というように、非常に事を急ぐ問題につきましては、むしろ気候の回復の合間々々を見て飛行機によって遂行することをわれわれとしては望んでおります。
  16. 河野正

    河野(正)委員 もちろん人命がきわめて尊重さるべきことは当然でございますから、でき得べくんば飛行機をもって早急に収容していただくことがきわめて適切なる方途ではなかろうかというふうに判断いたすわけでございますけれども、ただ私どもが心配いたしましたのは、今日の気象状況の中では飛行機が飛ばないということでございますならば、さっき申し上げまする越冬隊を残す残さぬは別といたしましても、収容そのこと自身が困難な事態の中に置かれておるのではないかというようなことで、実は心配のあまりにそういった点を明らかにしていただいたのでございます。  それから、ただいまいろいろ御報告がございましたように、この越冬隊員の収容については御自信があるようでございまするから、さようといたしますならば、問題は今後もし本観測を実施するという観点から、最小限度の越冬隊員を送られるというようなことになりました場合を前提といたしまして、若干の質疑を行なってみたいと思うのでございます。それは、もし小規模といえども本観測を実施するということになりますと、やはり本観測に関します一つの実績を上げるということが前提でなければなりませんが、今日のようなきわめて悪条件の中で実績を上げ得るような本観測を行う編成員というものが、実際問題として送られ得るものかどうか。この点はもし本観測を今後実施されるというようなことになりますならば、きわめて重要な問題でございますので、その点を一つ明らかにしておいていただきたい、かように思うのでございます。
  17. 稲田清助

    稲田説明員 本観測の規模を縮小することにつきましては、現地からさきに第一次から第四次案まで送ってきておるわけであります。また最近事態が差し迫って参りましてからは、さらに第四次案を縮小いたしまして、八人程度の隊員を越冬せしめる計画を持っているということを通報して参ったのであります。その八人の内訳がどうであるかということを聞いたところで、この通報がとだえておりまするので、その八人の内容がどれだけか、いろいろ設営に当り、どれだけが観測に当るかということが、まだはっきりいたしておらないのであります。しかしながら、こちらで想像いたしますれば、非常に荷物を運ぶことが困難になりました点から見まして、新たに大きな機械を持ち込むというような点については、種目を割愛したのではないかと考えております。そういうような点から見まして、たとえば電離層あたりにつきましては、相当トン数のある機械を用意しておったのでありますけれども、そういう点については、あるいは割愛するのではないか、あるいは地震あたりを割愛するのではないかというふうに考えております。しかしながら、気象であるとか、あるいは宇宙線とか極光とか、そういうような各種目につきましては、予備観測中も始終機械を操作いたしておりますから、これは人を入れかえれば、できるものだと考えております。従いまして、規模を縮小いたしましても、これは当初から見れば遺憾ではありますけれども、越冬いたしますればするだけの科学的の価値はあるものだと考えております。
  18. 河野正

    河野(正)委員 ただいま御説明いただきました八名観測隊員を残すという問題でございますけれども、この問題を私どもがもう少し突っ込んで考えて参りますと、きわめていろいろの問題を残しておるのでございます。と申し上げますのは、八名につきましては、ただいま御説明がございましたように、どういう構成の八名であるかというようなことにつきましては、現地との連絡が十分にいっておらないというふうな話でございましたが、それでは今日連絡がつきます以前におきまして、統合本部の方から現地にいろいろ示唆をお与えになった事実があるのかないのか。と申し上げますのは、私が指摘申し上げたいことは、なるほど八名は八名でございますけれども、その八名の中で観測部門に重点を置くのか、あるいはまた設営部門に重点を置くのか、こういったことがきわめて重要なる要素を帯びて参ると思うのでございます。と申し上げますのは、八名の中で観測部門に重点を置きますと、なるほど観測そのものにつきましては、かなりの成果が上げられるものと考えます。ところが観測部門に重点を置いて設営部門が圧縮されますと、たとえば、私どもが想像いたしまするに、設営部門の中には人命上の問題等もございますから、医師が必要でございましょうし、なおまた、この南極地におきまする未開発な新しい環境でございますので、いろいろな事情もございまするし、調理というようなことについて相当科学的な知識を持った調理人というものも必要になって参りましょうし、なおまた現地と内地の本部とのいろいろな連絡上の建前からながめて参りましても、通信業務にたんのうな人物も必要でございましょうし、調理士、通信士、あるいはまた機械等の故障等もあってはいけませんから、そういったものも考えて参りますと、この観測部門の人員というものがきわめて圧縮される。ところが観測部門の方に重点を置きますと、設営部門というものがきわめて圧縮される。そういたしますと、あるいは設営部門を圧縮するために、そのために人命にいろいろと障害をもたらす、こういった人道上の問題が起ってこぬとは限らねと私は思うのでございます。従って、この八名の人員構成の内容というものは、きわめて重大な要素を持っておるということを、私どもこの八名の内容を検討して参りますと非常に強く感ずるのでございますが、そういった点も十分考慮の上今日までいろいろと現地との連絡をとっておられたのかどうか、そういった点を一つ明らかにしておいていただきたいと思うのでございます。
  19. 稲田清助

    稲田説明員 それはまことにお話しの通りでございまして、最終向うから連絡のありました圧縮いたしました案におきましても、通信、医療、装備、食糧というような設営部門は残しております。それから、現に現地におります第一次越冬隊におきましても、通信、医療、食糧、機械の人間がいるわけでございますし、とにかく一年の期間現地におるといたしますれば、こうした最低の設営部門は、もちろん計画のうちに現地としても置いておると思いまするが、われわれといたしましても、今までの連絡におきましては、どこまでも安全を第一とし、それから観測にいたしましても、好条件の生活ということが前提でありまするので、その点は最も重要のこととして連絡いたしてきて参っております。
  20. 河野正

    河野(正)委員 私が御指摘いたしましたようなことが、それぞれ今日まで非常に重大に考慮を払われておるということになりますと、どうしても観測部面における人員が大きな圧縮を受けて参ります。そこで、もちろんこれは人命上の支障がないとか、あるいはその他の障害がなければ別でございますけれども、そういったことも、当然今日までの経験からながめて参りましても、将来予期しなければならない事態でございますので、そういった事態ともあわせ含んで私どもが考えて参りまして、先ほど申し上げますような、きわめて僅少なる観測部面で、果してそういったいろいろな将来に対しまする杞憂以上の成果が上げ得るものかどうか。観測成果が上げ得るものかどうか。もちろんそれはやればやらないよりもいいわけでございましょうけれども、しかし、いろいろな犠牲を払う以上の成果が上げ得られるものかどうか。この点をどのように判断しておられるのか、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  21. 稲田清助

    稲田説明員 犠牲を払うということは、私ども考えませんし、また考えたくないのでございます。規模を縮小いたしましても、本年度の予備観測越冬隊の学術的成果も、やがて帰ってくれば明らかになると思いまするけれども、今までいろいろ連絡のありましたことから見ましても、わが国の学界におきましては、各国観測隊のうち相当高い価値のある仕事をしたものだというように一般に言っておりまするから、その機械をもってまた来年継続いたしまするといたしますれば、継続する部門につきましては、やはり本年同様、次の年におきましても各国に評価せらるべき成果は上げ得るものと考えております。ただ遺憾なことは、拡張いたしましょうと考えました新たな部門が拡張できないことであろうと考えられます。
  22. 河野正

    河野(正)委員 ただいま私の発言に誤解があったかと思うのでございますが、もちろん私どもも今日まで十一名の越冬隊員の方々がやられました功績に対しましては、非常に大きな敬意をささげておるのでございます。ところが今度の場合は、従前の十一名よりも若干の人員が減りまするし、なおまた、さっき申し上げまするように最小限の設営部門の人員というものは必要でございますので、従って、観測部門の人員が非常に大きな圧縮を受ける。そういった中から今後大きな成果が上げられるものかどうか。その場合に、もちろん成果があることにつきましては私どもも認めるということはやぶさかでございませんけれども、しかし、人員が非常に減少したために、今後今日以上の困難が伴う。そういった困難が伴うにかかわらず、さっき申し上げますように、観測部門の人員構成が非常に圧迫されますから、それがために業績がなかなか上げにくい、そういった意味で私は犠牲ということを申し上げたのでございますから、その点は一つ誤解がないようにお願いをいたしたいと思うのでございます。  それからさらに御質問を申し上げたいと思うのでございますが、それは、今度のバートン・アイランド号にいたしましてもアメリカの協力を得て、一応宗谷が接岸地点に到達したのでございますが、なおまたいろいろ今後の問題等につきましても協力を願わなければならぬ点が多々あるのではなかろうか。もちろんこれは昨年の委員会におきましても、宗谷が帰って参りました当時、私どもも本委員会におきましていろいろお尋ねもし、またいろいろと現地の実情というものもお聞き申したのでございますが、いろいろ現地におきましては現地の気持というものが、私どもより以上の気持というものがあるということを、私ども決して無視はして相ならぬと考えております。さればといって現地の気持といいますか、空気といいますか、そういったものを尊重するあまり、結果的にはかえっていろいろ不幸な事態を招来するというようなことがないでもないのでございまするから、そういった一つの面子と申しますか、あるいは現地の感情と申しますか、そういったものにあまりこだわることなく、むしろ今日の事態というものに、ことに人命上の危険がないように、あるいはまたできるだけ今日までの業績というものが内地に運ばれますように、最善の努力をやらなければならぬというように私ども考えております。そのためにたとえばさっきもいろいろお話がございましたように、ビーバ一機等を利用するというようなこともございましたが、宗谷に積載されておりまする飛行機、ヘリコプターだけではなかなか能力というものが少いのでございますから、従って現地の協力を得ておりまするバートン・アイランド号に積載されておりまするシコルスキー機等の援助を受ける用意があるのかどうか。あるいはまた今後の問題等もございますので、一点お尋ねを申し上げておきたいと思うのでございますが、それはアメリカ冷凍作戦本部報告によりますと、バートン・アイランド号に対しまして、グレイシャー号の援助を受ける用意があるのかないのかというふうな発表もあったそうでございますが、こういったグレイシャー号の援助をさらに受けるというふうなお考えがあるのかないのか。そういった点も今後の事態というものを私ども万全を期さなければならぬのでございますから、そういった建前から一つお尋ねをしておきたいと思うのでございます。
  23. 稲田清助

    稲田説明員 前段の問題につきましては、もちろんバートン・アイランド号に全面的に協力してもらっておる状況でございますので、必要に応じては、お話のごとく同艦搭載のヘリコプターもいろいろ協力してくれるものだと私どもは考えております。後段につきましては私ども何も聞いておらないのでございます。
  24. 河野正

    河野(正)委員 ただいまのグレイシャー号の問題につきましては、何も聞いておらないというお話でございましたが、それはアメリカ同士の話でございますから、別に統合本部に対しましての話でございませんから、あるいはお聞き願わなかったかもしれませんが、しかしそういったことが報道されておるのでございまするから、そういった点に対して御関心を持っておられるのかどうかということをお尋ねしたのでございまするから、その点の御所見を一つ承わっておきたい。
  25. 稲田清助

    稲田説明員 島居長官からお答えいたします。
  26. 島居辰次郎

    島居政府委員 先ほど一番最初にお話を申し上げましたように、半日に少しずつ、十センチくらいニュー・アイスが張り詰めてきておりますが、しかしこの新年度の一年氷というのは割合に砕氷しいいのでございますので、今の程度でしたらバートン・アイランドでもって外洋に出れると観測しておるのであります。しかしながら宗谷がずっとこの本観測をやるために、長くここに滞存することに万一——まだ通信ができませんので何とも言えませんが、かりに長くおるようになって、万一バートン・アイランド号も出られないというような場合には、当然これはグレイシャーが来ることになるだろうと思います。ですが今の状態ではそういうところまでは行っていないと私は観測しておるのであります。
  27. 河野正

    河野(正)委員 ただいま島居長官のお話を承わりますと、もしバートン・アイランド号が今度脱出するということが困難になったならば、グレイシャー号が援助に来るだろうというふうな対岸の火事を見るようなお話でございましたが、しかしそういうことでなくて、今日までもバートン・アイランド号援助につきましてもいろいろ問題がございました。しかしながら結果的にはバートン・アイランド号が参りまして、初めて今日のような事態が生まれたというように私ども理解するものでございます。しかもアメリカの冷凍作戦本部におきましては、グレイシャー号の援助の必要があるのかないのかというようなことが、バートン・アイランド号に対しましても発せられたということでございますから、もちろんそういうことにつきましては統合本部の方が積極的に関心を寄せらるベきでないか、こういうように私は考えるのでございますが、ただいまの御発言を承わりますと、何かよその火事を見るような御発言でございまして、この点に対しまして全く遺憾であるというように指摘せざるを得ないのでございます。そこでその点につきましては十分一つ慎重なる御考慮をさらにお願い申し上げておきたいと思うのでございます。  それから御承知のように今度の行われました予備観測におきましては、これは今まで人間が一歩も足を踏み込んだことのない場所で行なった歴史的な一つの学問的な科学的な業績であるというふうに私は思うわけでございまして、そういった国際的な貴重なる科学的な業績というものをむしろ越冬隊員の御苦心、御努力によって戦い取ったのでございまするから、私どもでき得べくんばそういった貴重なる資料はできるだけ多く内地に持ち帰っていただいて、そうして世界の共同研究に大きな役割を果していただきたいというように思うわけでございますが、そういった点についてどういう見通しでおられるかどうか。この点一つ学術局長の方からでも御回答願いたいと思うのでございます。
  28. 緒方信一

    ○緒方政府委員 お話の通り非常に貴重な研究資料と予備観測の資料といたしましても持って帰られることと思いますし、ただいま行っております本観測の人たちがかりに越冬ができない、万一できない場合にいたしましても、船上観測等で相当貴重な研究を遂げてくるものと存じます。それらの資料につきまして、今後の活用につきましては十分今後の問題として検討いたさなければなりませんが、十分関係学者の意見等も得まして、観測隊の永田隊長初めの意見も聞きまして、今後その研究資料につきまして考慮検討いたしたいと存じます。
  29. 河野正

    河野(正)委員 もちろん今度の事態を収拾するためには、第一には人命上の問題があり、第二は今日まで御努力いただいたいろいろの貴重なる国際的な業績というものをどうして内地に導入するかというこの二点を中心として、いろいろ御善処願わなければならぬものと考えております。ところが一面におきましては、今度の研究に非常に大きな役割を果しました樺太犬の問題をどう処理するか。さっきの二点を解決いたしましたならば、第三点としてはそういった問題が起ってくるのではなかろうか。ことに日本動物愛護協会を中心といたします八千名の方々が署名をして、ぜひとも樺太犬を持ち帰ってもらいたいというような陳情もあるそうでございますが、この問題はもちろんさっきの二点が解決され、その後に解決する問題でもあろうと思いまするけれども、そういった問題に対しまして最善の御努力も、やはり国民感情もございますから、お願いしなければならぬと思いまするが、そういった点につきましても深甚の考慮が払われているものかどうか。その点の事情を一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  30. 稲田清助

    稲田説明員 ただいまの犬の問題につきましては、いろいろ本部に対しましても御注意ないし御要望が各方面からあるわけでございます。もちろん本部におきましても、あれだけ働いた樺太犬でもあり、とにかく動物愛護の精神から考えましても、何とかして樺太犬も安全に収容したいという気持を持っておることはもとよりであります。さらに現地におきまして、一年これと起居を共にいたしました隊員等は、さらに切実にそのことを考えて、可能なる限りこれを収容することは疑いを得ないのであります。ただ先ほど来申し上げておりますように、飛行機をもって人を収容するということは、現地の気象条件その他から見まして相当いい機会をつかんで行わなければならないむずかしい仕事でございます。かりに人だけを運ぶといたしますれば、ビーバー機をもってすれば三往復程度収容は可能だと考えられますけれども、さらにまた樺太犬をかりに麻酔等を使用いたしましてできるだけ簡便に運ぶといたしましても、人を運ぶ以上の回数、少くも四往復以上はかけなければならぬ。従いまして、すべて現地における気象条件その他飛行可能であるかどうかというような条件にかかるわけでありまして、非常にむずかしい問題を含んでおりますけれども、希望とし気持といたしましては、何とかして救い出したいという点につきましては疑いのない問題であります。
  31. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ今まで当局側の御答弁もお願いし、また私どもの意見、希望、切望というようなものを率直にお話し申し上げたのでございますが、いずれにいたしましても、統合本部並びに現地の方々というものが最後まで観測を遂行していきたい、こういった希望を持たれ、またその希望を達成するための努力がそれぞれ行われなければならぬということは当然のことであろうというふうに考えます。しかしながら、あらゆる努力を行いましても、どうしても本年この観測を断念しなければならぬというようなことになりますというと、さらにそれでは来年の継続観測はどうするのかというような強い要望と申しますか、強い希望というものが当然起ってくるであろうというふうに私は考えるのでございます。これは仮定のことでございますけれども、もしそういった事態に陥った場合に、次の継続観測ということについてどういうふうなお考えでおられるのか。これは一つ参考のためにお伺いしておきたいと思います。
  32. 稲田清助

    稲田説明員 ただいまのことは、本年本観測越冬隊を残し得るかどうかというようなことが前提になって考えられる問題だと思っております。本観測越冬隊現地に残留せしめることができなくて、次の観測を新たにやり得るかというような問題につきましては、非常に困難が伴う問題だと私ども考えますが、そもそもこの南極観測にわが学界が協力するかどうかというような点につきましては、学術会議におきまして広く学界の意見をもとにして考えた問題でありまして、従いまして今後この観測を続けるかどうかというような点につきましても、一面は学界の意見等も徴しませんと、われわれ本部側だけでは何とも考え得られない問題だと存じております。
  33. 河野正

    河野(正)委員 最後に一点重要な問題をお尋ね申し上げておきたいと思うのでございますが、それはさっきからいろいろ論議いたしましたように、今日の段階におきましては越冬隊員を全員収容して、そして本観測を中止するか、あるいはまた本観測を続行するかというふうな二つの道が残されて参っておるのでございますが、しからばもし本観測を実施するということになって、八名の越冬隊員が残るということになりました場合に、私はまた来年、今日起りましたようないろいろの気象その他の困難な問題が起って参ろうかと考えます。そういった、要するに最小限度の越冬隊員を残して本観測を実施するということになります場合には、今日までの経験からながめて参りましても、当然来年の収容等につきましても深甚なる考慮を払っておかなければならぬというふうに思うのでございますが、そういった点につきましてどのような考慮が払われておるのか。この点は、もし本観測を実施するということになりますならば、きわめて重要な問題でございますから、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  34. 稲田清助

    稲田説明員 先ほど河野委員のお話では、さらに明年新たな継続をするかどうかという問題の御提示がありました。この問題を考えれば話は別でございますけれども、当初の計画でありますれば、明年は越冬隊員を収容するだけの問題でありまして、それにつきましてはわれわれといたしましてはことしの目的よりは非常に荷が軽い仕事だと思います。とにかくことしも非常に困難でありましたけれども、越冬隊員を収容するということにつきましては、私ども第一に考えているわけであります。来年はそれだけの問題で行動いたすということになりますれば、やはり場合によれば国際協力を求める必要もあろうかと存じまするけれども、ことしも行き、また昨年も行ったというように、宗谷を中心として計画を立てましても、あえて無理ではないと存じておる次第でございます。
  35. 河野正

    河野(正)委員 ちょっと今の言葉にいささか不審の点がございましたからさらにお尋ね申し上げておきたいと思います。それは来年の場合はいとも簡単だというふうな意味の御答弁があったのでございますけれども、今回の経験からながめて参りましても、やはり気象その他につきましては、不測の事態で今日のようなきわめて困難な事態というものが生まれたということを私ども十分反省してみなければならぬと思うのでございます。私はそういった反省の上に立って、来年の問題を論じまする場合に、さっき副部長が答弁せられましたように、来年の問題は人命だけの問題だからいと簡単だ、そういったような軽い気持ではなくて、今日の反省の上に立った、さらに慎重な態度というものがきわめて必要ではなかろうかというふうに考えるのでございますから、この点はあらためて一つ慎重に考えていただきたいということを申し添えまして、私の質問を終りたいと思います。
  36. 山下榮二

  37. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 統合本部が今日決議いたされますまでに、現地の永田隊長あるいは西堀隊長からいろいろ決意が来たといわれております。密書が来たといわれておりますが、そういうものは国民が非常に心配しておりますのでここで一つ公表していただきたいと思います。
  38. 稲田清助

    稲田説明員 現地の意見は常に徴しておりますけれども、非常な決意とか、あるいは何か密書とかいったようなものは私どもは思い当らないのでございます。われわれの決定はすべて現地の意見を参考といたしまして決定しておるので、お互いに毎日連絡いたしておりまするので、別にわれわれの考えることと違ったことを現地が考えているといったような事情は今まであまり発見いたしておりません。
  39. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 国民が非常に心配しておるのですが、一体最悪の場合に越冬隊員をどのようにして救出するかということを、国民が安心するように島居長官から一応説明していただきたいと思います。
  40. 島居辰次郎

    島居政府委員 これは文部次官からお答えになるのが本筋かと思いますけれども、御指名でありますので、私から御説明さしていただきますと、今の通信連絡がとだえる前には、すぐにでも飛行機を飛ばしていこうということであったのであります。もっと詳しく申しますと、オングル島の付近には開水面もあるかもしれませんが、そりでおりるのが一番有効であるというようなことで、幸い今宗谷が着岸しております北側の方、つまりオングル島に対して反対の方の側でありますが、そこに滑走路として使えるような格好な氷原があるということで、そこで、そこからそりをつけて飛ばして、今の昭和基地の近くにおりて、そうして現在おられる越冬隊の方々を一度に三人なり四人なり、荷物もございますのでそのときの都合によると思いますが、やれば三回または四回で完全に運んでこれる、こういう仕組みになっております。
  41. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 先ほども同僚の河野委員から質問があったのですが、犬を連れてくると十往復かかるとか、飛行機で人間だけ救済するなら三往復かかるというようなことを言われておる。新聞にはそう伝えられておるのですが、具体的にどういう状態になるのか、稲田次官でも島居さんでもいいですから、その説明をしていただきたいと思います。
  42. 稲田清助

    稲田説明員 宗谷昭和基地の間でございますが、百二十六キロメートルと勘定しております。飛行機なら直線距離で参りますから、往復二時間かかる、そういうような計算をいたすわけでありますが、一回の収容人員を四人くらいと勘定いたしますれば、三往復もあれば人だけは持ってこられる。もし好天が一日続いておれば、一日中に三往復くらいは可能ではなかろうかと思うのであります。犬の場合は、これをまとめて何とか箱にでも入れるとすれば大へんなことでありますが、あるいは現地ではそういうことはどういう方法でやるか、具体的な技術は別といたしまして、いろいろわれわれに対して意見を申してこられる方の示唆によりますれば、麻酔薬等を使用いたしますれば、比較的簡単に運び得るんじゃないか。今二十四頭おりますから、一回かりに六頭運ぶとすれば四往復かかるわけです。かりに犬を運ぶとすれば、人間があとに残らなければ始末がつきませんから、さらに一往復なり何往復なりふえるとすれば、どうしても十往復くらい飛行機が飛ばなければならない。ところが雪が降って、天候が変化の多い、しかも二、三日たてば相当大きな変化がありはしないかという懸念を持っておる気象状況でございますので、そういう意味で非常に困難を感じております。
  43. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いろいろ国民が心配しておりますが、私ども宗谷に乗せてもらいまして知っておりますが、問題は船の能力関係があると思うのです。あの船でこういうような非常に困難な仕事をやるということが、無理であるということは大体わかるのですが、一体日本の現状であれ以上の砕氷船があるのかないのか、また今後来年の観測の問題があるのですが、こういうようなことをほかの方法で考える方法がないのかということを思うのです。私たちも宗谷に半日ばかり乗ったのですが、あるいは東京湾くらいならいいけれども、少くとも南極に行くのにはいろいろ困難な事情があるのではないかということは、私は行ったことがないからわかりませんけれども、想像できるわけです。専門家の立場として、日本の現在ある船の改装で、宗谷以上の方法がとれるのかどうか、これが日本の今後の観測の問題に大きな影響があると思うのですが、そういう点を島居さんでも、どちらでもいいですから説明していただきたい。
  44. 島居辰次郎

    島居政府委員 この問題は一昨々年宗谷が出るその前の年に、いろいろ議論をしてやっとここに落ちついたのでありますが、もう一度おさらいをしてみますと、宗谷がきまります前にいろいろ議論がありまして、外国の船の用船で行ったらいいんじゃないかというふうな意見もありまして、用船を外国の市場に出したのであります。そのときにいってきたのはノルウエーだと思っていますが、わずか五、六百トンの船しかなかったのであります。もちろん各国の軍艦は、アメリカも持っておりますし、ソ連も持っておりますが、そうでない船で、日本に貸してくれるような船で、その当時用船の引き合いのあったのはその程度の船しかなかったのであります。それでこれはどうしても日本でやっていかなければならないという状況に立ち至ったのであります。そのとき日本で候補に上りましたのが、鉄道の連絡船でありました宗谷丸と、海上保安庁にありました同じ名前でありますが宗谷、こういう船であったのであります。ところが鉄道の連絡船は非常に古い船でもありますし、従業員その他の関係でいろいろ都合が悪い。海上保安庁宗谷でやってくれというふうな要請がございました。この宗谷という船は建造年月日は古いのでありますが、しかしその当時耐氷船でありまたので、これを改造していけば使える。こういうのでエンジン関係全部改造いたしましたし、船体構造その他相当改造いたしまして南極に持っていく、ざっと話せばこういう段取りになったのであります。そこで実際南極に行っている各国砕氷船を見ますと、まずアメリカソ連、これは別にいたしますと、先ほど地図で御説明申し上げましたように、豪州も、また英国も、それからベルギーも——ベルギーなどはノルウエーからの用船でございますがベルギーもみなわが日本よりも小さい船であります。ただ、船は宗谷の方がもちろん大きいので、能力もありますが、南極というところは場所、場所によって非常に簡単な——簡単というよりもやさしいところ、それからむずかしいところがあるわけであります。横道になりますが、明治四十三年でしたか、白瀬中尉が行かれたときのいわゆる大和雪原の方は、偶然というか、あるいは研究していったのか知りませんが、非常にあすこは入りよかったところであります。またほかの各国基地も、非常に接岸のしやすいところ——きのうの新聞でもごらんになったように、ソ連ミールヌイ基地などというのは非常にすぐそばに開水があって着岸がしいいところだと思うのであります。これは私の方で研究しますと、つまり暖流と寒流による差別だと私は考えるのでありますが、今アメリカなどがいっておるロス海の方は路岸大体八百マイルに暖流が流れているのであります。ところがわが昭和基地の方は距岸千二百マイルのところに暖流が流れておるのであります。日本の近くの例でいいますと、ロンドンが日本の方に持ってくると樺太の北の方の位置にあるのに、向うは気候はいいけれども、こっちは非常に寒い、そういうふうに暖流と寒流によって非常に付近のむずかしさ、寒さというものに関係すると思うのでありまして、これは私からは言いにくいのでありますが、たまたまこの昭和基地というのが非常にむずかしいところであるので、宗谷外国の船以上に、相対的には能力がありますが、また行く場所が非常にむずかしいところである、こういうことも一つ御了察願いたいと思うのであります。
  45. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に稲田次官にお伺いしたいのですが、実はこの問題は松村文部大臣以下、清瀬、灘尾、松永四代にわたる大臣のときにやった、文部省がトラの子にしておった大きな問題であります。稲田局長は大学局長からずっと副本部長としてやっておられますが、この見通しについて一体うまくやっていけるのであるかどうか、それから今後どうなるのか、あなたの決意と見通しを一つ聞かしていただきたい。
  46. 稲田清助

    稲田説明員 先ほど申し上げましたように、ここ二、三日の気象状況にかかわることでございますが、幸い宗谷付近及び昭和基地はそりをつけた飛行機の発着に適当であることがわかりましたので、飛行機を用いる越冬隊員の収容ということは、気象の合間、気象条件をつかんで、これは安全に行い得るものと、私どもといたしましては考えております。さらに越冬隊員を新たに残すという問題は、これはまだこれからいろいろヘリコプターで氷上輸送の雪上車の道を調査いたしました上でないと、できるともできないとも私どもは確信を持ちかねております。現地におきましては、何とかこれを遂行したいという熱意にあふれているように見受けられますけれども、私どもといたしましては、どこまでも安全を第一と考えて、十分自信のある場合に限ってのみ、これを遂行するようにというふうに現地に申しておるような次第でございます。ただいまの現状から見ましての見通しということにつきましては、以上のように申し上げる以外にはいたしかたない問題だと考えております。
  47. 平田ヒデ

    平田委員 関連して、基本的な問題について二、三点お伺いいたしたいと思います。なお私は遅刻して参りましたので、前の河野委員の御質問をよく伺っておりませんので、あるいは重複いたすかと思いますが、その点は御了承願いたいと思います。  まず一点は、昨年の十二月十一日に学術会議南極特別委員会で各部門の主任と文部省南極統合本部関係者を集めて会議を開き、観測計画延長問題について協議しておられます。その結果、地理部門を除いて九部門は延長を強く望み、少くともさらに一年は延長して三たび観測隊を出してほしいという結論に達しております。すなわち電離層が一年延長、極光が一年延長、地磁気が数年延長、宇宙線少くとも一年延長、地震が一年延長、地質一年ないし二年延長、地形一年延長、重力一年延長、海洋一年延長というものでございます。これは御承知の通りだと思います。観測陣の中では、予備観測の結果や、さらに今回の本観測の成果をあげるために南極観測を少くとも数年は続けたいという要望が強かったために、この会議が開かれ、純学術的な立場から討議がなされ、右のような一年延長を望むという結論となったと思います。現に米国を初めとして各国は、多くの予算と人員を擁して、少くとも数年間の長きにわたり調査研究を続けていく態勢を示しておるのでございます。この学術会議南極特別委員会は、この結論に基きまして文部省を初め関係官庁と予算問題等について折衝がなされたことと思いますが、政府としてはこれに対してどのような計画なり方針なりをお持ちになっておられますか、お伺いをいたしたいと思います。
  48. 緒方信一

    ○緒方政府委員 南極観測事業を今後継続して行うかどうかという関係でございますが、国際学術連合会議におきまして、これはもともと南極観測の企画を国際的に行なっている国際的な学術団体でございますけれども、そこに南極の特別委員会がございまして、そこで検討協議することに相なっておるわけでございます。各国に対しましてもその特別委員会からこの問題に対して検討するように要請が参っておりまして、その要請に従いまして、わが国におきましても学術会議でいろいろと今日まで検討して参ったのでございます。ただいまお話しのような会合等が重ねられておるわけでございますが、さらに一年延長するかどうかということにつきましては、これは各国におきましてもまだ今後検討を要する問題として残っておるわけでございます。ちょうど本年の二月上旬にオランダで特別委員会が開かれておりまして、これに委員の出席の要請がございまして、わが国からもただいま出ております。これは東大助教授の力武氏が派遣されておるわけでございます。この会議の結果、帰りましていろいろ報告があることと存ずるわけでございます。それに基いてまた学界におきましてもいろいろ研究があることと存じます。しかしながらこれを実施いたしますにつきましては、いろいろな条件があるわけでございまして、学術的な価値の問題はもとよりでございますけれども、実施上の各般の準備につきましていろいろと重大な問題がございますから、これは十分検討した上できめなければならぬと思うわけでございます。ただ現在までの考え方といたしましては、南極観測事業は三十二年度この本観測をもって打ち切るということでございまして、政府としては今日のところは来年度の予算措置等については、先ほども話が出ましたけれども、本観測を引き揚げて参りますと同時に、向うに参りまして、船上における一般的な観測をやるということに計画をいたしまして、予算措置等を進めておるような状況でございます。
  49. 平田ヒデ

    平田委員 次にお伺いいたしたいと思いますことは、ただいまの局長さんの説明で、またさらに三十三年度するかどうかは今後ということでございますけれども、先ほど佐藤委員の御質問に対する島居長官の御説明によりますと、日本観測地は大へんむずかしいところだということでございまして、それがはっきりとおわかりになっていらっしゃるようでございます。それならばそのような考慮が初めから払われなければならなかったと思うのでございますけれども、来年するかどうかということについては未決定ではございますけれども、一応私としてはもう一点、この点をお伺いいたしておきたいと思うわけでございます。それは南極観測統合本部の第五回総会が昨年の四月八日に開かれまして、本観測に使用する船舶の問題が協議され、その結果宗谷を改装して引き続き使用するということが確認され、そうして現在に至っているわけでございます。そのときの理由でございますけれども、宗谷より一段と砕氷能力の大きい船舶、排水量一万トン、二万馬力程度のものを新造するのには二年以上の工期を要するということでございます。第二番目には、国内の船舶を見ると、宗谷の性能に比べて、宗谷の性能と申しますのは、二千四百九十トン、四千八百馬力に比べて数段劣っておると思う。ほかのものは劣っているということ。三番目には、外国船を、チャーターするか、また買うこともほとんど不可能である。こういうわけで宗谷改装は二億三千万円を投じて浅野ドックで修理がなされましたが、予備観測で密群氷に閉ざされ力不足を嘆いた。馬力は四千八百馬力とそのままで、スクリューの設計を変えて、その推力を約二割ふやしたといわれております。問題の砕氷能力は一メートルから一・ニメートルになったと聞いております。それに比べまして外国砕氷船ソ連オビ号にしても、バートン・アイランド号にいたしましても、これは六千五百トン、一万三千馬力、砕氷能力三・六メートルというような優秀な船でさえも南極においては行動が大いに制約されておるわけでございます。このように考えて参りますと、初めから宗谷では非常に無理があったのではないか。またこれに対して優秀な砕氷船を新造しようというようなお考えをお持ちになっておられるかどうかということでございます。これはおわかりになっていらっしゃると思いますけれども、参考までに私の調べましたのを申し上げてみますと、グレイシャー号は、米国ですが、八千六百トンで、砕氷能力が六メートル、二万一千馬力です。それからバートン・アイランド号が六千五百トン、砕氷能力が三・六メートル、ウェスト・ウインド号が六千五百トン、砕氷能力が三・六メートル、アトカ号が六千五百トン、砕氷能力が三・六メートル、レーニン号、これはソ連が世界に誇る原子力砕氷船で一万六千トン、四万四千馬力、十八ノットの速度で二メートルの氷を割って進める。これはことしの一月五日に進水した、こういうわけでございます。今後砕氷船についてどういうようなお考えをお持ちになっておいでになりますか、お伺いいたしたいと思います。
  50. 島居辰次郎

    島居政府委員 よくお調べになってよくおわかりと思いますので、御説明もないかと思いますが、先ほどおっしゃいましたように、新しい砕氷船、少くとも一万トンくらいの船を作りますと金が五十億くらいかかりますし、また金はいずれといたしましても、その期間が二年と三、四カ月くらいかかるのでございまして、観測に行くにはとても時間的に余裕がないというようなことで、こういうふうな行動で行っておるようなわけでございます。今後三年、五年あとにこういうふうな観測があるということになりますれば、われわれといたしましても、そういうふうな新しい砕氷船を持っていった方がよりいいということは当然でございますので、お話の通りだと思っておりますが、現在といたしましては次々に行く——もちろん来年行くにいたしましても、五カ月や六カ月ではとても新造船というものは作れませんので、やむを得ない状態だと考えられるのであります。
  51. 平田ヒデ

    平田委員 次にもう一点お伺いしたいのですが、文部大臣の諮問機関であります測地学審議会では、昨年の七月七日に総会を開かれ、国際地球観測年の三十三年度予算として、南極、ロケット両観測を除いて総額三億四千万円を要求いたしております。この総会ではパリの国際重力委員会から依頼されておりました日本、イタリアの共同重力調査と、東京、メルボルンの重力測定を行うこともあわせて決定して、文部大臣に建議いたしております。三十三年度には地球を縦に結ぶ重力測定網として、日本からメルボルンに重力振子を運んで、同地でも重力測定を行う。これらの重力測定の国際協力によって地球の姿がはっきりして、正確な地図を作る重大なかぎとなるものであるといわれております。しかるに明年度予算案におきましては、二億八千万円に削減されておりますが、十分これで目的が達せられると思っておられるかどうか、この点をお伺いいたしたいのでございます。
  52. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいまの平田委員の重力測定についての予算措置のお尋ねでございますが、これは来年度の南極観測の予算の中ではございませんで、国立学校の大学の予算として計上いたして、それをもって実施できるのでございます。そういう予算を計上いたしまして要求いたしておる次第でございます。
  53. 平田ヒデ

    平田委員 最後に、もう一点だけお伺いして質問をやめますが、これはこの前、宗谷が出発する前にもちょっとだけ触れた問題でございますけれども、南極観測隊員の身分、隊の組織という問題について一言お伺いいたしたいと思います。  隊員の身分につきましては、一昨年の秋、予備観測に出発する前から問題になっておりました。そこで文部省に設けました南極観測統合推進本部の下で、国家事業を行うという建前から全員を公務員にするということになったと思っております。すなわち、当時民間におられました西堀現越冬隊長を京都大学の教授に、佐伯隊員を北大の助手にしたのもこのためであると聞いております。このほか、鈴木康氏は日本開発銀行員であったし、朝比奈菊雄氏は武田薬品社員であったと思いますが、すべて文部省の技術雇員に採用、公務員にした上で南極予備観測隊員に委嘱しました。しかしこれはあくまで書面だけの辞令であります。ところが南極観測に熱を入れれば入れるほど、本職はおろそかになるわけでありまして、一昨年春の準備から明年春の帰国する本観測越冬まで、三年間も席をあけるということになりますと、官庁や会社でも、同僚や後輩に席を奪われるという心配も起きてくるわけであります。そこで観測隊員一同はこの問題を真剣に検討した結果、みなの熱意は高い。しかしはっきりした身分をしっかりした組織の中にきめてもらわなければ、南極の仕事に熱中できない。身分さえできるなら、元の職をやめて加わるという意見が出されて、この意見をまとめて南極本部に申し上れたと聞いております。その希望をまとめれば二つの案となると思います。一つは、文部省内に南極局を新設して、恒久的な機関とすること、二番目には、南極研究所で、英国を初め各国極地研究所のように、砕氷船や装備一切を備えておいて、必要に応じていつでも出動できるようにする。ふだん隊員は局員あるいは所員として極地研究を行い、集めた資料の整理や展示をする、というものであります。これに対して南極本部側では、行政上、予算上の問題もございましょうが、全然問題にしておられないのではないかと思うわけでございます。現に南極本部の副本部長であられます稲田次官は、日本南極に領土的野心を持っていないから、本観測までやれば十分だ。だから恒久的な組織など作る必要はない。人の和を組織の力でとりたいというが、兵隊ではあるまい、と述べておられるのであります。しかし一方現地に行かれた永田観測隊長は、予備観測で困ったり苦しんだりしたできごとも、多くは組織がないこと、身分がはっきりしないことに原因があった。重大なときになって隊員に、好きで参加したんだ、黙って命令通り働けとだれが言えようか、こう語っておられるように私は聞いております。さらに某隊員も、南極の仕事こそ自分の一生をかけた仕事だと思いたいが、二、三年という中途半端な期間だけ使われてお役ごめんとなるのではやり切れない、と言っております。この問題に対して当局は、この際はっきりした方針、よりよい方法を早急にきめるべきだと思うのでございますが、この点についてどのようにお考えになっておられるか、お伺いいたしたいのであります。
  54. 稲田清助

    稲田説明員 ただいまの点でございますが、まことにごもっともでございまして、現在観測隊を構成しております方々は、大体各省庁あるいは大学の身分を有しておられる方であります。それを先般の閣議決定によりまして、文部大臣が観測隊員として委嘱いたしまして、観測隊の仕事に関しましては文部大臣の所轄下に置く、こういう仕組みになっておるわけでございます。問題になりますのは、主として設営部門の方であって、観測部門の方々は、大学あるいは各省庁の行政あるいは研究の仕事に従事しておられる方であって、もともとこれは恒久的の公務員であります。設営部門の方の一部では、あるいは山岳等の経験を持っている方々を御委嘱申し上げたのであって、しかもそれは給与その他の関係から、国家公務員になっていただくことが便利と考えまして、国家公務員になった上において隊員として委嘱したわけでございます。これを恒久化してもらいたいという希望が、一部の方々にあるようにも聞いておりますが、もともとこの南極観測は、今日まで政府として決定いたし、また国会の御承認をいただいておりますのは、本観測を中心といたしまして、その前年に予備観測を行うという、それだけの事業でございます。新たに、先ほど来お話がありまして、これを将来継続するとかしないとかいう問題がありますけれども、そのことが国の方針としてきまっておらない今日におきましては、これはやはり一定の限られた年限内の国の仕事として考える以外には仕方がないので、以上の方法をとった次第でございます。かりにもし将来、こういうことが恒久的に行われるというようなことになりますれば、自然国の必要から恒久職員が、必要な数だけ要ることになりましょうから、その場合はその場合として、また新たな問題が起り得ると思いますが、現在の段階におきましては、今まで処置いたしました処遇以上に考慮することは、私どもとしては不可能であると考えております。
  55. 山下榮二

    山下委員長 他に御質疑の方はございませんでしょうか。
  56. 野原覺

    ○野原委員 十分御質問のあったあとですから、私は簡単にお尋ねしたいと思うのですが、統合推進本部というのが文部省内にございます。そこで、新聞を見ますと、統合推進本部から指令というものが出されるように私どもは拝見しておるのでございますが、そうなって参りますと、統合推進本部がいわゆる最高の判断をする、現地からいろいろな情報が入ってきて、最高の判断をして指令をするという場合には、実際は統合推進本部のどういう人たちが御相談をなさっておるのか、この点を御説明願いたい。
  57. 稲田清助

    稲田説明員 統合推進本部は閣議決定によりまして、各省庁の関係者をもって構成しておるわけでございます。もちろん巡視船宗谷海上保安庁の所管でございまして、船長は保安庁長官の命を受けて働くわけでございます。一方隊員の方は、やはり同じく隊員構成の閣議決定によりまして、文部大臣が各省庁に属する方を隊員として委嘱いたしまして、隊としては文部大臣の所轄に属しておりまするので、文部大臣から種々隊に対して指示をする、こういう系統になっております。もちろん海上保安庁本部の構成員でございまするから、すべての意思決定は本部といたしまして御相談の上決定しておるわけでございます。どういう人が実際に相談するかという問題につきましては、本来ならば本部会議を開きまして、重要なことを付議決定いたします。さらに事務的の問題でありますれば、各省庁の事務担当者がなっておりまする幹事会を開きまして、随時幹事会において事務を処理いたします。ただ最近のごとく非常にひんぱんに緊要な問題について打ち合わせる場合におきましては、ごく少数の本部緊急連絡会議というものを便宜構成いたしまして、事を処置し、またそれを各本部関係者に事後に御了解いただくというような緊急の処置もとっているわけでございます。そういう次第で、緊急に集まります場合には、島居海上保安庁長官、それから学術会議の会長、それから学術会議の地球観測年、特に南極関係委員の中心をしておられます宮地天文台長、それから和達気象庁長官及び私、その他文部省関係者が緊急連絡をいたすわけでございます。こういうような仕組みにいたしております。
  58. 野原覺

    ○野原委員 これは私から申すまでもございませんが、本部長は文部大臣、それから副本部長、学術会議の会長以下、関係官庁の次官、それから委員なり幹事が設けられております。そこで事務的なことは幹事会でやるということである。しかしながら宗谷に指令を出すというような重要な判断、たとえば本観測をやるのかやらぬのか、あるいは第一次越冬隊収容だけでとどめるのか、とどめぬのか、そういう事態にここ一両日きておると思うのです。私は電信が通じたら、その判断をきょうから明日にかけてなされなくちゃならぬと思います。そういう場合において、今次官の御答弁によりますと、海上保安庁長官宗谷責任者、それから気象庁、天文台、それから文部省の実際の事務上の責任者であるあなた、これだけでやるということだけれども、しかしながらこの統合推進本部を設けた規則その他に、その点は何ら明快でない。これはどなたの判断でこれだけのものでよいと御判断なさって、そういう重要な指令を決定されるのか、どういう権限に基いて行われておるのか御説明願いたい。
  59. 稲田清助

    稲田説明員 統合推進本部の前回の会議——いつか記憶いたしませんけれども、緊急の場合には緊急に連絡会議を開き、あるいは事務的のことは幹事会を開くということは、会として御了承を得て、その基本においていたしております。  それから先ほど中心となります職種を申し上げましたが、もちろんそれ以外にも関係省庁の方が問題によっては緊急連絡会議に加わっております。実質上そういう形態において運営しておりまするが、われわれといたしましては、もちろん開くならば、ほんとうの会議を再々開きたいのでございますけれども、事緊急な場合が多いので、そういうことをいたしております。あるいはごく最近にも本部の正式な会議を開くことはあるだろうと考えております。
  60. 野原覺

    ○野原委員 本部長の文部大臣の責任でなされていることであろうかと思いますけれども、しかし私はここ一両日に決定するであろう重要なる事態は、これはやはり推進本部の正当な機関を開いて——わずか数名の者によって決定するということがないように、最悪の事態が起った場合にこれは問題を生ずることでありますから、慎重に配慮されんことを望んでおきます。  それから、何回も質問があったのですけれども、島居さんから明確な御答弁がない。私は今の事態ではそれは御無理もなかろうと思う。というのは、私がここで繰り返してお尋ねしたいことは、宗谷は遺憾ながら去年はオビ号に助けられた。ことしはアイランド号の援助を受けて昭和基地百キロメートルのところまで辛うじて前進してきております。松本船長以下の御苦労は大へんだろうと思う。こういう船に乗り組んでこの困難と戦う永田隊長あるいは松本船長の御労苦に対しては、ただただ頭が下るのでございますけれども、先ほど河野君の御質問に対する御答弁を聞いておりますと、また危なくなったらグレイシャー号になるかもわからぬ、こういうことになって参りますと、南極の気象ということは実は不測の事態じゃないのです。今日の南極の気象というものはこれは予測されなければならない事態なんです。それにもってきて去年も助けられ、ことしも助けられ、これからもグレイシャー号の力を借りなければならぬというようなことは、私は第二次越冬隊、いわゆる本観測に出発させるときに予測されていたかいなかったかという問題、こういうことは、ことしもまた宗谷は独立では困難ではないかということは、当然責任のある統合推進本部ならば考えていなければならぬことだろうと思う。万が一、僥幸にもあるいは独力でできるかもわからぬと思ったが、独力ではとても困難だ、どうしても外国の優秀な船舶にたよらなければならぬと考えて出発さしたか、統合推進本部はどう考えて宗谷を見送ったのか、承わりたい。
  61. 島居辰次郎

    島居政府委員 お答えいたします。宗谷能力は先ほど申し上げた通りでありますが、しかしながら南極の氷の状況というものは御存じのように毎年非常に変るものであるということは非常によく言われておるようなわけでございまして、われわれといたしましてもやさしく昭和基地に行けるということは毛頭考えておりませんが、松本船長が一昨年——予備観測でなくてその前に捕鯨船に乗っていきましたときの観測によっても、何とか行けると思います。——それもただ結論だけでなくて、いろいろのことを申しておりましたので、私は松本船長のその判断を信用いたしまして、おそらく行けるであろうというので宗谷を見送ったような次第でございます。しかしながら、今申しますように南極というものはむずかしゅうございますので、今回も自力脱出したといいながら、相当期間もかかっておるようなわけで、それからこちらの東の方へ回って、そうして四十度線に沿うて入っていくことは宗谷としてできたと思うのでありますが、しかし今のように時期が多少おくれて参りましたので、非常に困難をしておるような次第でございます。
  62. 野原覺

    ○野原委員 私はこの際国際地球観測年の計画というものは数年前から行われていたことであろうと思うのであります。だから国際地球観測年の特別委員会と称するものが、日本の学術会議に要請してきた。その際学術会議が——吉田内閣のときであったかと思うが、政府にやはり要請しております。これに参加しようと思うから十分御協力を願いたい、私はこれは数年前のことではなかったかと思う。そうなって参りますと、南極観測日本が参加をするという場合には、当然観測船ということが劈頭問題にならなければならぬ。そこで、政府の当面の責任者である文部省は、学術会議からこういう要請を受けたならば、一体観測船をどうするのかということを真剣に考慮されたという御答弁があったようにも思いますけれども、私はどこまで真剣に考慮したかということを実は疑っておる者の一人なのです。私はそれから二十九年ごろではなかったかと思うのだが、五十億くらいの金と思いますけれども、外国援助を受けて、あるいは万が一大へんな事態になるというようなことを考えますと、今日のわが国の力で、こういった文化を探求するために、国際的な地球観測責任を負わなければならぬために、五十億くらいの金はやろうと思えば何でもないのです。私はそこまで本気でやらなければ日本の科学技術教育というものは世界的に一人前の歩行はできないと考えておるのです。だから、文部省はなぜそのときに十分なる計画と準備をもって三十億か五十億か知りませんけれども、南極観測のりっぱな、グレイシャー号や、オビ号に負けないような船の建造に着手しなかったか。日本は船舶建造能力は世界的なので、国産でできないことはない。今日こういう事態になってこのような質問をするということははなはだ残念なことでありますけれども、私どもは実は去年もこの質問をやってきたのです。今もこれを繰り返しておる。何となれば、来年度継続観測ということもあり得るわけで、私はおそらく国際地球観測年の特別委員会は一カ年延長すると見ております。今回の本観測が困難になってきた事態をいろいろ総合してみますと、せっかく予備観測をやっても本観測のできる国は十二カ国のうちで数カ国しかない。こういうことになって参りますと、南極のいろいろな現象というものは科学的に把握できないということになってきて、一年延長しなければならぬということになる。そうなると、また来年船が問題になるのです。プロペラが折れたのじゃないかというようなことになって、また騒がなくちゃならぬ。いかに優秀な松本船長といえども、そういう能力のない船に乗り組まされたのでは私は困難だと思う。島居さんも非常に苦しい立場に置かれてくると思う。この点、一体統合推進本部としてはどう考えておるのか、どういう反省を持っておるかお聞きしたい。
  63. 稲田清助

    稲田説明員 ただいまの事柄を日にちを追うて申し上げますれば、初めてパリでございましたか、会議がありまして、永田東大教授が参加いたしましたのが昭和三十年の七月でございます。帰ってきまして学術会議から当時の内閣総理大臣鳩山一郎氏あてに要望が出ましたのが三十年九月二十九日でございます。その結果、いろいろ政府で協議いたしまして、南極地域観測への参加及び統合推進本部の設置を決定いたしましたのが三十年十一月四日でございます。それから統合推進本部におきましては用うべき船をいろいろ研究いたしました。あるいは買船、用船というような点につきましてもいろいろ研究いたしましたが、能力あるものは外国の軍艦等でもあり、その他にいたしましても、それぞれ同じく南極にいろいろ目的を持っておって、適当な用船も考え得られませんでした。ことに裸用船といったような点につきましては全く不可能であることを考えました。それで、内地における改造し得る船をいろいろ研究いたしましたところ、宗谷及び宗谷丸及び白竜丸というような船が出たのでありますけれども、いずれも航続距離あるいは馬力等から見て適当でないので、宗谷を用いることに統合推進本部としては決定いたしたわけでございます。お話のように、その際あるいは数十億を用いて船を作るというようなことも考えれば考える問題でありましたでしょうけれども、何としても予備観測に出ますのは翌年でありまして、相当な船を建造いたしますには少くとも二年あまりかかる、また当時造船状況をいろいろ調べましたところ、あいている造船船台等もそうないので、これは前もって計画しなければならぬといったような状況でございました。従って宗谷を用いてこれが可能であるかどうかということを一応考えつつ、ただいま島居さんからお話のように、松本船長を別の船に乗っけて現地を視察いたしました。またあるいは他の外国南極方面に行く船に、今名前は忘れましたが、学者を乗っけていろいろそちらからも調べまして、いろいろな資料を集めた結果、宗谷を改造することによってともかく予備観測に参加し得ると考えまして、同三十年の補正予算及び三十一年の予算に宗谷の改装費をいただきまして、三十一年の十一月でしたか、宗谷が出発した、こういうように、国際会議、学術会議の決定、閣議決定等、その間の時日の点からいたしまして、大きな船の建造ができなかったのは当時から考えてみましても遺憾ではございましたが、私どもといたしましては、宗谷をできる限り改造し、さらにまた予備観測後さらに許される時日の間においてこれを増強して用いておりますような次第でございまして、その点一つ御了承をいただきたいと思います。
  64. 野原覺

    ○野原委員 私は今日の事態では、これは取り立てて繰り返し追及するような質問は避けたいと思います。ただ、私どもとしてはきわめて遺憾な点がやはり二、三あるようにも思われてならぬのであります。宗谷が依然として去年もことしも難航をしておる、その難航の原因は、南極の異常な気象現象もさることながら、優秀な乗組員といえども何ともできないその宗谷の船の持つ能力というものにもやはり原因があるということを考え、またそのことが今日越冬隊収容だけに終らなければならぬという事態に発展しておるのだということを考えますと、これは私は政府としては、特にその責任省である文部省としては、最初の計画と準備において考えるべき点ではなかったかということを申したわけであります。  大体以上で終りたいと思いますが、最後に、国民の皆さんと一緒に私どもは第一次越冬隊を無事に収容し、もし幸いにして可能であるならば、本観測がりっぱに遂行できまするように宗谷並びに南極観測隊の皆様方の御健闘を心からお祈りいたすものであります。(拍手)  以上で終ります。
  65. 山下榮二

    山下委員長 他に質疑の方はございませんでしょうか。——なければ、本日はこの程度といたしまして、次会は十四日午前十時より開会することといたします。  これにて散会いたします。     午後零時二十八分散会