○芳賀
委員 この際日本一社会本番見並びに自民党を代表いたしまして、
寒冷地農業振興対策特別
措置の
確立に関する決議を提出いたします。
まず案文を朗読いたします。
寒冷地農業振興対策特別
措置の
確立に関する件
北海道をはじめとする寒冷
地帯は、気象条件が厳しく土地条件が劣悪な上に二十八年以来連年の冷害により、
農家の負債は累積し、経営
内容は、著しく悪化している。
政府は、これにかんがみ、昨年以来農林漁業金融公庫の貸付計画中に
所要経費の一部を計上し、また
農林省に
寒冷地農業振興対策室を設置して、鋭意、寒冷地における
畑作地帯不安定
農家の地域別経営安定
対策の樹立に努めているが、この際、酪農化、機械化、輪作化等を主軸とする寒冷地農業振興に確固たる見透しと総合性を与え、一層これを促進するため、寒冷地における
営農改善計画の樹立、
実施につき国及び
地方公共団体が行う
行政指導に対し、積極的な
財政上の援助を与え、かつ農林、漁業金融公庫からする長期低利
資金の貸付等についても融資条件の大巾な緩和若しくは融資方法の根本的な是正を図る等の特別
措置を講ずるものとし、これがため、現行諸法規の改訂乃至は新規の
立法措置につき特段の
考慮を払うべきである。
右決議する
昭和三十三年四月二十二日
衆議院農林水産
委員会
趣旨の
内容について簡単に申しますが、本決議案に言うところの寒冷
地帯とは、北海道を初めとする寒冷
地帯、たとえば五月から九月までの積算温度が二千六百度以下の
地帯はこれを
対象とするということにいたしまして、これらの地域は気象条件がきびしく、土地条件がきわめて劣悪で、しかもその他社会経済的な条件も整備されておらず、冷害の頻度が非常に高いというところに寒冷
地帯の宿命的な特色があるわけであります。このような悪条件下にある窓冷
地帯の農業経営は、他の地域に比べまして土地利用は制約され、土地及び草地の改良ははなはだしく立ちおくれており、
生産手段も不備で、技術水準が低く、
地方収奪的な農法が行われておるため著しく不安定であります。またこのため農民の所得水準は他の地域に比べて非常に低下しておりまして、しかもその経済的な基盤は悪化しておるわけであります。たとえば北海道のような場合におきましては二十万戸
農家で平均三十万円租度の固定化した負債を今日背負っておるというような点を見ましても、いかに寒冷
地帯の農業
生産力が劣弱でありさらに
農家の所得水準が低位であるかということが実証されておるわけであります。
従ってこのような寒冷
地帯の農業経営を安定させるために拡大再
生産への道を着実に進めることができるようにする必要があるのであります。すなわち農業の酪農化、機械化あるいは輪作化等を目ざしまして、土地及び草地の改良、畜舎、尿ため、サイロ、堆肥場や農業機械器具等の
生産手段の整備、さらには流通改善施設の整備などを速急に行うとともに、これらの施設や手段を
運用して農業経営を発展せしめる技術を農民に習得させる等、これに必要とする
措置を講ずべきであり、これがためには資本投下と指導体制の
確立が絶対に必要であります。
さらに一方寒冷
地帯の農民の現状におきましては、経済力が弱いために右のような資本投下を自力のみによって行うことが不可能であり、また現行制度下におきましては、融資条件がきびしいために
資金の導入を行うことが非常に困難であり、さらに万全の指導体制を
確立することも至難な事態に置かれておるわけであります。
以上のような現状に対処しまして、
政府におかれましても寒冷
地帯に対する農業の特殊性にかんがみ、特に昭和三十二年度には
農林省官房の中に寒地農業の
対策室を設けまして、寒冷
地帯農業の特殊性の上に立った総合的な
調査を進めると同時に、一方また本年度からは農林漁業金融公庫等の融資の面におきまして、いわゆる寒冷
地帯営農改善を
対象にいたしました総合融資の道が開かれることになったのであります。すなわち主畜農業
地帯、あるいは混同農業
地帯等の類型に分類いたしまして、この地域の
対象農家に対して総合融資、いわゆるセット融資の道を開いて、本年度におきましては公庫から七億円
程度の
資金の融通をするという新しい意図のもとに金融
措置が講ぜられることにつきましては、今後の寒冷
地帯農業の著しい前進を示すものであると、われわれも賛意を表しておる次第であります。しかしながら根本的に寒冷
地帯における農業振興を推進するためには、この
対策をさらに拡大発展せしめるとともに、
対策について、将来に対する確固たる見通しと総合性を与える必要があるのであります。従って以上の諸点に基きまして、根本的に寒冷
地帯における農業を振興させるためには、次の事項を総合的に
実施する特別の
措置が講ぜられるべきであります。
すなわち第一には、寒冷
地帯における不安定な
農家に対しまして、農業経営を安定化させるための
営農改善計画を樹立させ、これを計画的に実行させる必要があり、これがため国及び
地方公共団体が強力な指導を行うこととして、これに必要な
財政上の援助を積極的に行うことであります。
その二は、右の常農改善計画を実行するために必要な
資金については、長期低利
資金の融通その他
財政的な
措置によってこれを
確保することとし、特に長期低利
資金の貸付に当っては、現行の融資条件の大幅な緩和を考察するとともに、真にこの
資金を必要とする
農家に対して、
資金が流れるように融資方法の
確立をはかることを
考慮すべきであります。しかも融資の方式につきましては、従来のような縦割り的な用途別金融方式を改善いたしまして、農業経営の自立、安定化を
確立するための総合融資、すなわちセット融資方式が望ましいのであります。
以上のような特別
措置は、現行制度の是正をはかるべきものであるから、現行法規の改訂、あるいは新たなる
立法措置によらなければこれを実現することができないのであります。
最後につけ加えておきたい点は、現在におきましてもいわゆる積寒法なるものがありまして、寒冷
地帯の特殊地域に対しましては、この積寒法が成立以来相当の成果を上げておるということは、認めることができるのでありますが、ただ積寒法は、とかく特殊農業
地帯の地域の振興を使命といたしました、いわゆる振興立法、計画立法であるというところに、その性格が置かれておるわけでありまして、本決議案の
趣旨に述べる
寒冷地農業振興対策の立法化の意図するところは、寒冷地の個々の
農家を
対象といたしまして、個々の
農家を基礎にした総合的な
営農確立のための確固たる
施策を進めるための背景ともなるべき制度化に重点があるということを、特に強調いたしまして本決議案の
趣旨の
説明にかえる次第であります。