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1958-04-01 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月一日(火曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君    理事 笹山茂太郎君 理事 助川 良平君       安藤  覺君    木村 文男君       小枝 一雄君    中馬 辰猪君       綱島 正興君    丹羽 兵助君       松浦 東介君    松野 頼三君       赤路 友藏君    伊瀬幸太郎君       石山 權作君    稲富 稜人君       久保田 豊君    永井勝次郎君       中村 英男君    細田 綱吉君  出席政府委員         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         農林政務次官  瀬戸山三男君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    磯江 重泰君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    小林 誠一君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      河野 恒雄君         農林事務官         (畜産局酪農課         長)      松田 壽郎君         農林漁業金融公         庫総裁     山添 利作君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月二十八日  北洋さけます漁業完全操業に関する請願(助  川良平紹介)(第二四四八号) 同月三十一日  狩猟法の一部を改正する法律案成立促進に関す  る請願芳賀貢紹介)(第二五六五号)  同(松浦周太郎紹介)(第二六一〇号)  同(三浦一雄紹介)(第二六一一号)  同(井上良二紹介)(第二六七〇号)  同(灘尾弘吉紹介)(第二六七一号)  同(橋本龍伍紹介)(第二六七二号)  同(川俣清音紹介)(第二七〇六号)  狩猟法の一部改正に関する請願早稻田柳右エ  門君紹介)(第二五六六号)  農協役職員年金制度実現に関する請願松浦周  太郎君紹介)(第二六八九号)  農地改革による旧地主に対する補償反対に関す  る請願外二百六十二件(稻村隆一君紹介)(第  二六七三号)  繭糸価格の維持及び生糸の輸出振興策等に関す  る請願助川良平紹介)(第二七〇七号)  地方卸売市場法制定に関する請願外六件(南條  徳男君紹介)(第二七一〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酪農振興基金法案内閣提出第一一六号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇二号)      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。   酪農振興基金法案を議題といたし、審査を進めます。質疑を続行いたします。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まず政府当局にお聞きしますが、この基金法によりますると、これによって保証される債務は、大体五つになるようですが、一つ乳業者もしくはその団体生産者代金を支払う、その支払いに充てるところの債務、それから運転資金というようなもの、それから乳業者もしくはその団体設備資金、それから生産者をその構成員とし、しかも乳業をやってとおるような団体、つまり酪農系統協同組合ないしはそういうものの酪農をよくするための資金、それからそういう団体乳業者と取引をする過程において、乳業者の方の支払いが滞った場合の立てかえ資金、こういう五つになっておるようですが、この点についてはもう一度確認の意味でお聞きしますが、資金運用というものをこの五つに限定するのかどうか、この点を第  一にお聞きします。
  4. 谷垣專一

    谷垣政府委員 第二十九条に書いてありますような資金に対する債務保証、ただいま久保田先生のおっしゃいましたようなにとになるかと思います。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこで、この五つのために使うところの資金債務保証をするということですが、今日酪農振興上一番大事な問題は、大体において乳価の安定ということです。もっと、はっきり言えば、引き合う乳価をどこで安定させるかということが根本になると思うのです。ところがいわゆる酪農基金中心になっておるこの五つの中には、乳価安定に直接結びついているものはないわけです。いうならば、乳業者にとってはある程度役に立ちましょうけれども、生産家たる者にとってはほとんどないように思う。農林省は、こういう五つの使途によってどうして乳価の安定が期せられるのか、その根拠をわかるようにはっきり説明してもらいたい。
  6. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御指摘のありましたように、乳価そのものを直接にこの基金が支持するという形にはならないかと存じます。ただ二十九年あるいは三十二年の秋からの実情考えてみますと、乳製品滞貨が生じて参りまして、そのために乳製品価格の下落がまず出て参りました。さようにいたしまして、その結果として農民から買い上げますところの納入価格が下って参る、こういう順序を二十九年もことしも示して参ったわけでございます。二十九年の状況を振りかえって見ましても、あるいは昨年の秋からの状況を振りかえって見ましても、こういうような場合におきましての融資あっせん、あるいは昨年の場合におきましては、たな上げをいたした大カン練乳緊急保管金利その他の補助を出した、こういうことになっておりますが、とにかくそういう事態が生じましたときに、必要な融資をあっせんするということが、実はなかなかスムーズにうまくいきにくい状況であったわけでございます。何分商品は先安になりますし、あるいは乳製品性格自体長く貯蔵し得ないような状況でございますので、金融機関が貸し出します場合には、非常に憶病な形になっておった現状でございました。このような事態が生じた場合におきまして、こういう基金債務保証という制度がございますれば、もっと適確に、相場が実際以上にくずれようといたしますものを、てこ入れをすることが可能かと存じます。さらにこういう制度がありますことによって、金融機関その他も安心感を持つ。こういう形において、これがない場合に比べまして、そういう一時的な滞貨にしろ生じました場合のさばきが、ずっとよくなるというふうに考えるのであります。そういうことになりますれば、その結果といたしまして、当然に乳製品価格が、性格上夏場になればある程度はけるという性格を持っております。従いまして、乳製品急落というような問題が防げて参る。その結果としての納入価格の引き下げというような問題がチェックされる、こういうことに相なろうかと存じます。これが主要なる働きになるのであります。さらにこの業務の中で、乳業者がそういう力をなくしておりますような場合、しかも生産者としましては、ミルクを提供せざるを得ないというような場合もあろうかと思いますが、そういう場合におきましては、乳代立てかえ払いという形における債務保証生産者団体にも直接にする、こういう仕組みが取り得るわけであります。そういうことによりまして、この乳価の問題について、いわば間接的ではございますが、乳価に対する好影響が出てくる。幾ら幾らで支持するという形ではできかねると思いますが、二十九年、三十二年におきますような急落状況をこれによってささえるということは可能である、かように考えるわけであります。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも今の説明は筋が通っておるようだが、おそらく実際にはだれも納得いかないと思う。  そこで一つ一つお聞きします。第一に飼料その他の生産拡充資金といいますか、あるいはそういう生産団体立場からする流通機構整備資金、そういうものにもこれが使われるようになっておりますが、こういうことが必要かどうか。これは今の農協系統で十分できるのです。問題のできないところはどこにあるかというと、末端総合農協とそれからいわゆる単独畜産組合その他のものがうまくぴったりいっていない。そのいっていない根本原因は何かというと、大乳業その他のいわゆる特約組合的支配が比較的畜産組合等においては強い。そういう立場からいって、総合農協が実際にこれを一手集荷をするとかあるいは共同集荷をするという場合に非常に都合が悪いということになるわけです。そういうふうな状態であって、むしろこれは統一をして、総合農協にそういうことができるようにすれば、飼料その他の引取資金というものは、特にこういう小さなワクの中でこういうことをやる必要は私はないと思う。これが直接にせよ間接にせよ乳価の安定に役立つとは、われわれは常識的に考えられない。乳価安定に役立つための飼料流通対策なり購買対策というものがもっと別個立場から立てられるのが当然だと思う。にもかかわらずこれにみそもくそも一緒みたいに入れておる。また生産者側からしたところの、もしくは生産者団体からしたところの流通機構整備拡充という問題、こういう資金金利は比較的高くなる。三銭という。今普通二銭四厘くらいです。農協関係では少し高いが、普通の企業体においては二銭四厘その他でもって大体においてやっている。そういうときに三銭もしくはそれ以上になるような資金を使って、しかも生産者団体から整備をするということになったら、そういうことの経費はよけいかかって結局整備した意味がなくなる。こういうものに使うということは第一に混淆しているのではないかというように思われるのです。この点については、少くともこの基金が今あなたのおっしゃったように、間接にせよ乳価の安定に役立たせるという目的であるならば、こういう資金はすべからく農協統一して、農協がそういうふうに出しいいようにやるような方策をとることが根本であって、別個方策をとるべきである。この基金運用みそもくそも一緒に入れるということはまず第一にわからぬ。私は当然こういう点は除くべきものであるというふうに考えるが、この点はどうですか。
  8. 谷垣專一

    谷垣政府委員 農協系統金融というものを主として利用していくということ、またそういうふうに指導していくということ、これは私たちもその通りに感じております。従いまして、この基金の対象といたしましても、御指摘通り保証料は要るわけでありますが、正式の組合金融というものでまかなえるならば、それの方は保証料はいいわけでありますから、この債務保証を要求するという必要はなかろうかと思います。ただ問題は、現実の問題といたしまして、系統金融に十分より得ないものがあるわけであります。そういうものもやはり生産をいたしております酪農民一つ組織といたしまして、ミルクメーカーのところに出しておる、こういうことに相なっております。そういう場合におきまして、特にたとえば乳業者が未出資のものでありますとか、あるいは出資額が不足しておるというような場合があり得るわけでありますが、そういう場合に、そこにミルクを出荷しております生産者団体が、系統金融でなおかつまかない切れないような場合、またいろいろな感情論その他がありまして実際問題として系統金融により得ないというような場合、これが債務保証一つ仕組みを利用していくということは私はあり得ることだと思うのであります。これは現実問題でございますが、あり得ることだと思います。ただ私の方で申しておりますように、組合系統金融から別個のものとしてどうこうするという筋のことではないのでありまして、系統金融をもちろん利用するわけでございますが、それの一つ補強手段としての債務保証ということに相なるわけかと存じております。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 系統金融をうまく利用できないような生産者団体現実にある。だからそういうものが現実に使えるようにするには、こういう道も開いておかなければならぬというのですが、もともと大体生産者そのものはみな系統農協に入っている。上の方だけ頭がヤマタノオロチみたいになって、それがそれぞれの団体利益を固執して混乱を起しているのが今日の実情です。それが大乳業等と結んで、極端に特約組合的な格好になっておるのが今日の実情なんです。そういうものをどういうふうにして統一して、農民のほんとうに統一された組織的な力にするかということが、今日の流通過程における農民立場から見た基本の問題です。これでいくと逆なんです。これでいくと、そういうような系統組織なり何なりをだんだん再分割をして、いわゆる総合農協系統のものをあちこちと単独農協にする——ヤマタノオロチみたいに、あるいはもっと大きくするような一つの道を開くことになる。しかもそれが系統金融を利用するためにそういう債務保証が要るというのは、どう考えたって筋が通らないことだと思う。確かに今の総合農協活動が大体において不十分である、従って特に統一的な作物を販売するというような場合に、今の総合農協でうまくいかないという点は実際には多々あります。実際にはあるが、そのうまくいかない根本原因を突き詰めてみると、農林省指導が二途に出ておる。一つはどうかというと、従来のいわゆる整備促進手段の、米を扱い、肥料を扱ってとにかく赤字を出さないようにやっていけという指導が、片方に相当強く行われておる。そうなってくると、農協そのものが非常に大きく転回しており、しかも肥料の条件が強く変っておる段階では、そういう指導に縛られておる総合農協農民現実のいろいろの販売上あるいは流通上の問題についていけない。従って農民の側から非常な不満が出てきておることも事実であります。従って現実の問題として、今言ったようにそれぞれ単独組織を作ってやろうというふうな、いわゆる単独農協といいますか、そういう動きが出ていることは間違いない。間違いないが、問題はそういうものをばらばらにして総合農協骨皮筋衛門みたいな格好にすることではなくて、そういう間にどうして統一性を保っていくかということが問題になってくる。そういう点については、これは逆な方向に行こうとしているわけです。少くとも末端に行くと、それを強く感ずる。これは非常に困ると思います。そういう点について、農協なり流通過程段階での基本考え方を、農林省統一しているのかどうか。あなたの言う通り現実にあるからそれにまず即応するのだというだけでは、無策にひとしい。将来の混乱をますます強くするだけなんです。この点について、もう一度はっきりと——現実にあって仕方がないからそれを伸ばしていくのだというだけでは意味がないと思う。しかも私らの見るところでは、それが必ずしも乳価安定に役立たない。この点についてはどうか。
  10. 谷垣專一

    谷垣政府委員 現在系統金融の補完のために債務保証を行なっておりますものとしては種々ございます。たとえば、開拓の関係におきますもの、あるいは中小漁業の問題でありますとか、あるいは農協自体に関しても、各県に信用保証協会があります。あるいは有畜農家創設事業におきます債務保証制度というような形で、この系統金融を利用するのを主体といたしておりましても、なお損失保証制度というものが、これの補完的な役割をなして行われておる実例はすでにあるわけでございます。これは系統金融本質論から言いまして議論があろうかと思いまするが、これらの制度がやはりある程度現実問題として効果を出しておることも私は否定できない面があのだろうと思います。そういう実情でございますが、さらに今御質疑のありました総合農協特殊農協というものをどっちか一本にして、はっきり系統金融の中に入れたらいいではないかという点でございますが、これは私たち十分検討を要する問題だと思います。総合農協が是なのか、あるいはこういう特殊な製品に対しては特殊農協がいいのか、これはいろいろ議論があろうかと思います。ただ現実の問題といたしまして、ミルク生産いたします酪農民といたしましては、まず出荷する際に同士相求めた形で一つ組合を作ってやっていくのが発端的なあり方だと思います。これは任意組合である場合もありましょうし、農協法で法制化された組合もあると思いますが、そういうのがまず出発の形であろうかと思います。またそれに対しまして、ある程度それが大きくなる場合には、総合農協の方でそれを吸収していくという形もあろうかと思います。あるいはまた、総合農協現実にそれに対する対応力が不足しておりましたり、あるいは指導力が足りなかったりというような形で、特殊農協としての組織をむしろ大きくして酪農民利益を確保していくという形をとっているものもございます。特殊農協が直ちに大メーカーに隷属化された一種の特約組合である、必ずしもそれがすべてであるとは私たち見ておりません。特殊農協の中に、自分で判断をして自分においていろいろとやる、たとえばミルク・タンカーのごときものを持ちましてやっている組合はかなり多いのであります。そういう実情でございますので、酪農の場合にこれを総合農協一本でいくか特殊農協一本でいくかという問題はもう少し現実に即しました検討をやって結論を出したい、かように考えておるわけであります。ただ両者の間にいろいろと対立があったりいたしますことは、生産農民として不適当である、かように考えます。従いまして、私たちといたしましては、たとえば集酪地域におきまして一つ中心工場に持って参りますような場合、生産者団体一元集荷をする、そしてその工場あるいは他の工場へ持って行く場合におきましても多元販売の形をとるような指導をいたしております。総合農協がよいか特殊農協がよいかという議論のほかに、そういうものが一つの共同的な役割を果していくということが必要と思いまして、そういう指導をいたしておるわけでありますが、その総合農協がよいか特殊農協がよいかという問題は、これは農協基本問題にも関係がありますので、もう少し私の方で検討さしていただきたい、かように考えるわけであります。従いまして、この系統金融保証の問題は、いろいろ事情がございますけれども、運用いかんによりましては、この債務保証制度系統金融の流れに対しまして悪影響なくやっていける、かように考えておるわけであります。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その議論はとことんまでやっても片がつかない。しかしそれにしても飼料資金のごときものをそういう特殊農協を作って流さなければならぬ理由はどこにあるのですか。さらに生産施設改善資金というと、具体的にどんなことを考えているのですか、そういうものを特殊農協なり何なりに強く持たせるということは総合農協活動特殊農協活動をまさに分離させる根本になる。えさのごときは、そういうことをしなくても、末端がどういう組織であれ現在の総合農協を通じて十分行っているのです。こういうふうなことにして特殊農協全国団体なりあるいは何の団体なりのえさ資金まで融通してやる必要があるかどうか。そんなことをしなくても、総合農協えさは行っている、むしろ総合農協えさを提供する力を——特殊農協は、全部が全部ではありませんが、大きな会社等と結んで、この広さをえさにして、総合農協一元集荷なり多元販売なりを一生懸命切りくずしているのが末端実情です。それを農林省があえて援助するようなことをして、そうして末端におきます酪農家団結力というか、経済の裏づけのある団結力を弱くしては、いざというときに乳の買いたたきその他に対する対策が出てきません。もう逆にますます対抗力が弱くなってくるよりほかにない。そういう点はどういうようにお考えになるか。
  12. 谷垣專一

    谷垣政府委員 この法文は特殊農協のみに限定いたしておりません。総合農協に関しましても債務保証のあれが行われることに相なっておるわけであります。もちろんえさその他が総合農協へ十分に行き得る、また行かなければならないということ、それは私たちも異議はございません。ただ現実問題といたしまして、酪農民特殊農協によりましてメーカーのところにミルクを出しているという例がかなり多いのであります。またそういう諸君が、先ほど御議論がありました会社なり何なりからひもつきのような経費をもちましてえさを出してもらっている場合も中にはあるでありましょう。そうついうものをその組合としての自主的な立場債務保証を受けてやっていく、このこと自体は、私はむしろ隷属化されておるものが独立をするという一つの機縁になるのではないかと思います。もちろんこれは保証料が要りますので、そういう場合に通常系統金融の利用というものを否定しておるわけじゃ決してございません。系統金融で借りられるものは借りて、それでやっていくのが筋かと思います。思いますが、なおかつそれでやれない場合、あるいは相手乳業者が実際問題といたしまして、そういう債務保証その他を受け得ないような場合、また過度の乳価の値下げをやってきたような場合、この組合組合員に対する再生産資金めんどうを見てやる、こういう必要は私は生ずる場合があり得ると思います。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 あなたの今のお考えは、現実とは相当食い違っていると私どもは思う。しかしこれ以上突っ込んでも、時間の関係がありますので…。  その次は乳業者なり何なりが代金を支払わない場合に生産者団体立てかえ払いをする、この資金をこれによって融通をする、これはどういうことなんですか。金の払えないものを、つまり農協なり何なりが立てかえ払いをする、もしこれがとれなかったらどうするのですか。大体今の乳業者でもいろいろあります。末端へいくとひどいのがある。われわれが実際見るのは、たとえば一般が四円五十銭で値を出しておるときに六円で買う。こういうのが大体三カ月から半年です。そうしておいてあと代金をためておいてぽんぽん切っていく、次から次へ食っていく。百万円か百五十万円ぐらいやるとあとどんなに言っても一回二万円ぐらいしか払わない。そういうことで次々に食っていく中小企業メーカーが相当ある。少くとも大企業はそういうばかなことはしませんよ。大企業がそんな乳代を払わないというようなことはわれわれあまり聞いたことはない。中小企業の場合にはそういうべらぼうなやり方をやる場合が相当ある。そういうのはどこで立てかえたってとれやしませんよ。初めからそういうものを企業の基礎にとっておるのですから。そういうものばかりではないでありましょうけれども、そういう乳業者の方の団体が金を払わないというときに、それをかわって立てかえて、しかも日歩三銭以上になるような高利の金を借りて代金支払いを代行するなんということは、おそらくまじめに考え生産者団体はできないと思う。にもかかわらず特にそういう資金をここに入れたのはどういう意味か、どういう成算があってこういう資金をこれでめんどうを見なければならぬのか、これがどうもはっきりわからぬ。
  14. 谷垣專一

    谷垣政府委員 これは現実の問題として、今御提示になりましたような非常に悪質な中小企業の場合、むしろそういう中小企業相手にすることが間違っておると、思います。従いまして違う企業がそこに出てくるように、生産者といたしましても努力をいたすべき問題であろうと思います。ただ現実問題といたしましてミルクを出すところというものは、そこに各社の競争が激しく行われておりません場合には、やはり一定をせざるを得ないわけであります。しかも相手に対しまして相手に思うままにそれをやらしておくというわけには参りません。生産者といたしましてはそれに対して対抗手段をやはり考えなければならないわけであります。あるいはまたその場所と場合とかわりまして、メーカーが善良ではあるけれども、しかしそういう信用の何らかの債務保証を受けておるいろいろな形の場合があり得ると思います。そういう場合に通常の品物の売り買いの場合に、原料生産者がその代金を待ってやる、それは普通の原料を生産して加工いたします場合の商売では取引の場合は通常あり得るわけであります。もちろんそういう場合におきます原料提供者の立場はその後におきます取引においては強い立場になるでありましょう。経済的にはそういうことになるのであります。とにかくそういうやり方は通常の場合には行われておるわけであります。で、農民団体がいつでも中小企業なり乳業者の連中に一ぱいそういうことで引っかけられるだろう、そういう心配も確かにございますけれども、これは農民自体団体としての一つの判断にゆだねるべき問題であります。その判断の上でこういう債務保証を利用するかどうかということは、これとはまた別個の問題であろうかと考えるわけであります。債務保証制度を利用する場合の立場とこの保証制度とは、若干違って判断すべき問題だろうと思います。生産者団体が必ずこういう債務保証を悪用されてメーカーに一ぱい食わされるということのみではない。むしろ生産者団体としましても、相手状況を見ながら判定をいたすことと考えます。ただミルクの場合、毎日の生産がございます。そうしてそれをある工場に持っていく。その工場がやはり一つの対象になりまして、それを右左とすぐにほかの工場に持っていくことがなかなかいきにくい場合があるわけであります。そういう場合、相手がまた善良であります場合は、こういう制度によって猶予を与える、これは生産者団体として考えてしかるべき問題かと思います。もっと生産者団体の力がほんとうに強くなりますれば、今のようなメーカーその他に対してのこういうような乳代の延滞を積極的に認めて、そしてもっと担保をとるという形をとって認めていくというようなことも、商売の上からいえば当然あり得ることだと思います。生産者団体がそういうことができ得ないというふうに断定はできない、かように私は考えます。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今のお話もどうもなかなか納得がいかないと思うのです。それは確かに乳代等についてメーカー生産者団体の方と話がつかないという場合に、生産者団体の方でとり得る方法はいわゆる売り止めをして、他の方向に新しい販路を求めるか、そうでなければ牛乳の性質上とっておくわけにいきませんから、一応やっておいて、それからさらに団体交渉なり、あるいは何なりの交渉を続けるという場合に一時的に支払いがとまる場合もあり得る。ないことじゃない、しかし現実にはほとんどありませんよ。新しく出したことで去年あたりの実情を見ても、大体仮払いという格好ではほとんどこの問題についてはあとに問題を残しながらもやっておる。そういう場合に、仮払いが行われないにいたしましても、代金メーカーの方から全然取れない場合にいたしましても、総合農協その他においては概算払い立てかえをやります。特に、そういう場合に高い日歩を払った価格でそういう資金を特にこういう系統から流してやらなければならぬ必要はないのではないか。それが乳価の維持に特に、役立つとは考えられない。それならば、もっとはっきり言って、どこかに乳価そのものに対するはっきりした一つのめどをつけるような態勢になっておるならば別だけれども、この法律の態勢としても、価格そのものはもう必要以上に価格についての決定は農林省のこの案は逃げておる。そうしておいて、あと支払いが滞った場合にだけ、金の融通だけ借りられやすいようにしてやるといっても、これは問題にならない。概算払いでどんどんやるか、それでなければ、おそらく概算払い農協その他が立てかえます。特にこんなにワクの小さい、この資金の中から特に流してやるということが、乳価の維持に役立つとは私どもには考えられない。この点についてはもう一度農林省考え方を聞きたい。
  16. 谷垣專一

    谷垣政府委員 今の御質疑の要点は、必ずこういう場合に立てかえ払い、あるいは仮払いの形にしろ、乳代をと支払うのだ、あるいはまたそれが支払われない場合においても組合系統の金融で必ず再生産のものは見られるのだ、こういう前提でのお話のようにお聞きいたしておるのでありますが、そういう場合で、そういうものが行われております場合は、これは発動する必要はおそらくないでありましょう。しかし現実にはそうでない場合があるわけであります。また起っておるわけであります。それに対しまして、生産者団体が判断をいたします力、と言うとちょっと表現が悪いのでありますが、自分で独立してやり得る信用なり保証なりの力を与えてやるということ、これは私はむしろ生産者団体の自立する力を強くするゆえんだろうと思います。もちろん系統金融通常のものでやっていける、あるいは妥当な価格というものを仮払いにしろ何にしろ払っていくというような場合におきましては、そういう必要はないでありましょう。しかしそうでない場合が現実に起きておるわけであります。そういう場合におきます対策一つとしまして、こういう制度がありますこと、またこれを利用いたしますことは、生産者団体としてあり得ることだと考えております。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今言う、そうでない場合というのは、具体的にはどういう場合ですか。それはおそらく末端において牛乳の生産者団体そのものがいわゆる特約組合的な性格を持っておる場合が主としてそうでしょう。それはいわゆる総合農協なり何なりと相当強く対立している。そういうときだけ総合農協に行って金を貸してくれと言ってこれは出さない。そういう問題をどう解決するかということが今日私どもは問題だと思う。そういう現実があるから、それに金が流れていくようにしてやるのだというだけでは農業政策でも何でもないと思う。そこをどう考えるのかということです。これは要するに会社側なりメーカー側が困らせようという立場から現実支払いをとめておるのです。そういう根本の建前になっておるから、独立もあるいは自主的な交渉もできない。だからぶうふう言いながら大がいうのみになってしまう、こういうのが今の現実じゃないですか。だから今でもそうでない現実があるというなら、そうでない現実をどう解決していくかという、その解決の方法と方向が問題であって、そういうものがあるからそれに金を流してやればいいのだということでは、私どもは意味がないと思うが、この点はどうです。
  18. 谷垣專一

    谷垣政府委員 総合農協特殊農協の問題に対しましては、先ほど申し上げましたように、私たちとしても深く検討する必要があると思います。どういう形が酪農のためにいいかということにつきましては、片方を全然否定していいかどうか、まだ結論に達しておりません。従いましてそういう問題を先にきめてから、系統金融なり何なり、金融のあり方も直していく、これは一つ考え方であろうと思います。理想的にはそういう形でやっていかなければならぬと思います。しかしながら現状の農協の形、あるいは酪農状況というものは、総合農協がすべてやっておるわけでもございません。特殊農協も相当な部門を占めてやっておるわけであります。そういう状況でございますし、また今お話のございますような総合農協にいたしましても、あるいは特殊農協にいたしましても、もしもメーカーの方からの立場代金の切り下げをやるなりあるいは乳代の遅払いをやりますような場合において、やはり対応策としましては、農協としては少くとも組合員に対する再生産資金だけは何かの形で融資をしてやる必要があろうかと思うのであります。その力をこの債務保証の形で受けさしてやろうという考え方でございます。もちろん系統金融の形で融資ができますれば、この形でやるよりは保証料だけ安くなるわけであります。それが好ましいことであることは間違いございません。これは債務保証でございますから、資金そのものを持ってくるソース、出どころというものは組合金融になる場合もかなり多かろうと思います。これはただ債務保証でございますから、組合に対する力を加えてやる、力を強くしてやる、こういう役割をやるものだと考えております。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の点もまだ問題がありますが、その次の問題に移ります。乳代支払い資金をいわゆるメーカーならメーカー団体に貸すということと運転資金、これはなかなか実際には分けにくいものだろうと思う。乳代支払い資金ということになると、貸付の場合に何らかのひもをつけるのですか、どういうふうに運転資金と別に明確にしていくのか、この点が明らかでない。そうでないと運転資金と称して、いわゆる乳代支払い資金までぶち込む場合がある。特にいろいろの乳製品等が値下りした場合に、相当私は問題があると思うが、乳代支払い資金として特に貸し出しをする場合には、何らかの貸付等の制約をはっきりつける。もっと言えば、この資金をあるメーカーならメーカー団体に流してやれば、必ず乳代としてこれが生産者の方へ返ってくるという保証がどこかにあるのかないのか、そういう点を業務方法書なり何なりでやるとすれば、どういうふうにしてやるか、この点を一つ
  20. 谷垣專一

    谷垣政府委員 その点は通常の金融の場合にも起る例だと思います。やはり相手に対する信用の問題であろうかと思います。またこれは常時それぞれ専門の諸君が長い間の取引と申しますか、関係を持ってやっていくわけでございますので、相手に対する信用の問題として判断すべき問題だと思います。その一助としまして今御指摘になりますように、乳業者そのものに対しまする資金融資をいたしましても、やはりそれが乳代の購入資金でありますならば、乳代として払われることが要求されるわけでございますから、従いましてこの債務保証をいたします場合には、基金といたしましては、単に乳業者に対します信用調査だけにとどまりませず、取引のところまで調査をする必要があろうかと思います。ただこれはその都度調査をするというような繁雑なことは必要はなかろうと思いますけれども、あまりその取引の状況が、従来非常に約束を破るというような形のものが多いというような場合には、これは当然に保証をいたします場合の判定材料といたしまして参考にすべき必要があろう、かように考えております。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今のお話では、要するに乳業者なり何なりに対する信用ということと、一定の調査をしなければならぬということですが、調査といったって実際にはどれだけの基金の職員がおいでになるのか知らぬが、できるはずがありませんよ。たとえば私の村あたりで牛が千二、三百あるでしょうが、その村で取引先を勘定してみると、大体において十二くらいありますよ。しかもその団体がいろいろ入りまじっておる。これに対して従来の信用がどうであるとか何だということを——東京に何人基金の職員を置くのか知らぬが、調査などできるはずがない。従ってそういう場合においてはしかもそれが場合によっては間接融資になるでしょう、中央の団体の間で、さらに中小メーカー団体の間で、さらに末端へ流してやるという場合になった際に、金利が高くなるだけで、果してこれがほんとうに乳業者に支払われるいわゆる牛乳の支払い代金かどうかということはほとんどわからない。また信用々々と言うが、その信用が何を土台にして、どういう範囲でもってやるかということはわからない。従って運転資金というものと乳代支払い資金との区別がつくはずがない。私は中小メーカー等の場合は、ほとんどこれによって保証が得られないように思うが、この点は今の程度の説明では、私は現実には役に立たぬと思うがどうなんですか。
  22. 谷垣專一

    谷垣政府委員 この基金は、今東京に一つだけ置くという考え方で進んでいっております。従いまして末端におきます信用調査は業務委託という形に相なると思いますが、現実融資をいたしまする機関その他にそういうものの調査を委託する、かようなことに相なると考えています。また生乳の購入代金と経営に必要な資金というものとの間にけじめがないじゃないか、こういうお話でございまするが、それはほかの金融の場合にもそういうことはあり得ることであろうかと思います。これはやはり金融の普通の常識によりましての信用を確めるということ以外にはないかと思います。ただ先ほど申し上げましたように、この基金の業務といたしましては、単に乳業者の業務内容だけを見ることにとどまりませずに、その乳業者酪農民との間の関係がどういうふうになっているかというところまでは少くとも調査をいたしまして、それが従来通り、約束通り行われておるかどうか、あまり違約がないかどうかという問題は判定の材料にしなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  23. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこまでの調査をするというのはなかなか困難だろうと思います。そんな調査をして決定をしてやる場合には時間がうんとかかって、これは実際問題として役に立ちませんよ。全国何千とある中小メーカーや、それと結びついておる生産者団体一つ一つその関係がどうなっているかなんということをあなたの方で調査をしようなんといったって、実際問題としては、もしその調査が完全で信憑するに足るような調査をしようとするならば、時間がかかり、手数がかかって、特に乳価がまた値下げになるとかなんとかいうときに役に立つまいと私どもは思うのです。それをいいかげんにやればほかに流れることになる。ですからそこが私どもは非常にむずかしいところだと思うのですが、それはそれといたしましても、今言ったように、乳業者に対する乳代支払い資金運転資金、これをやることによって、たとえば非常に乳製品滞貨が多くなった場合に、この滞貨のたな上げにどういうふうにして役立ちますか。問題は乳製品が非常に滞貨をした場合には、たな上げに役立つか、役立たないかということが大きな問題だ。生産者に金を支払うのも、これを保証することも大事だ。しかしこれには価格の保障は一つもないのだ。この法案やその他には何もない。結局滞貨のたな上げ資金にこれを使うということがなければ、何にもこれは役に立ちませんよ。その滞貨のたな上げについては、ある程度市場から遮断をして、ある時期まで置かなければ、やはり依然として高い金利の金を借りて、よけい持っておる。先々は、春になれば、夏になれば多少値が出るということがわかるにしても、これとてもはっきりした明確なものはわからない。わからないということになった場合に、これが滞貨のたな上げ資金としてやるという一項が一つもない。ただ単に運転資金乳代の支払代金というだけであって、滞貨をある程度持って市場から遮断をするという性格がなければ、乳製品の値下りは必ずしも強力な役割はしないと思う。この点はどうなんですか。特に大企業の場合においては、ある程度の滞貨自分でかかえておることはできるにしても、中小企業の場合には三銭以上の金利を払ってそして滞貨を半年も、それ以上も持っていることは非常に困難だと思う。よほど先々のめどがつかない限り、何と言ったってその場合においては弱い方の今の生産家の方へしわ寄せするのは当然だと思う。それをこれでもって防止するという保証が私どもにはどうしても見られない。この点をどう考えていますか。
  24. 谷垣專一

    谷垣政府委員 信用調査が十分にできないじゃないかというお話でございますけれども、現実には大メーカーと称せられるものが五つ中小企業と称せられているものが大体四十幾つ、この程度のものが大体におきましてこういう乳製品その他をやっておりまする会社になっております。もちろんそのほかにこの業務の場合には農協その他のものもございまするから、いろいろ広がるわけでございまするけれども、しかし事乳業者に対しましては、現実問題としてその程度の数字になると思います。これの平常の信用の調査でありまするとかいうようなことは、私はできると考えております。またそれぞれの取引銀行がございますので、それらの内容等につきましては、基金の方で調べればある程度のことはできるかと思っております。また滞貨のたな上げの資金というものはどこにあるかということでございますが、乳業の経営資金といたしましては、乳業の経営に必要な資金という考え方、これはやはりたな上げ資金融資ができる、こういうふうに私たちは解釈いたしており
  25. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それならばむしろこれははっきりそういう一定の条件をつけて、乳代を支払うとか、あるいは一定期間たな上げをするという条件をつけて貸し出せるなら、これは私はよいと思う。なぜその条件をつけないのですか、そうしない限り乳製品が市場にダブつくことは当然ですよ。そのダブつきの程度がどうかということは次の問題ですけれども、今の段階ではそういうような危険が非常に強くなって出てくる、その場合に乳製品と市場との関係の方は業者の自主的判断にまかせる、そうしておいて金融だけはつけてやる、それもはっきりたな上げ条件というようなものがつかずに、ただ乳代なり運転資金のあれだということでやるということは、これは少くとも乳製品価格維持やあるいはその原料であるところの乳価価格維持ということには非常に規制力は弱い、その場合に業者のやることは、たな上げをした方がもうかるから、そうでなければ乳価をたたいた方がもうかるから、この二つの判断で弱いものを強いものがたたきますよ。たたくのが当然なんです。今まではみなそうなんです。それをここでその生産者の方の団体を強くすることは、酪振法なり何なりでやるというお考えかもしれませんが、今まで聞いたところでは、その点についてははっきりした農林省考え方は一つもない、大きなことは言っておりますけれども、今聞いたところでは何もない、やる気もなさそうです。そうして弱いものは弱いなりにしておいて、しかもこの資金を融通する場合に、そういう乳製品のたな上げという条件なり何なりをつけずに、ただ乳代だけは払う、払うのは当然ですよ。払わない方がおかしいのですよ。品物を持っていっておいて銭を払わないというばかなことはない。それとあとは運転資金だというだけで、いわゆる乳製品価格調整に役立つ、あるいは価格維持に役立つような機能がこれでできるかということになると、私どもは疑わざるを得ない、ですからもしこういう資金をやるならば、少くともそういう意味において、乳業者なりその団体融資するという以上は、乳製品のストックが出た場合においては、融資をするかわりに、反面においてある期間ある条件のもとにたな上げをするという条件がなけなば、乳価の維持は私はできないと思う。従って乳価の維持は困難になってくると思うが、それを特にたな上げ条件というものを除いた根拠はどこにあるか。
  26. 谷垣專一

    谷垣政府委員 先ほど申し上げましたように、たな上げ資金を除いておるわけではございません。経営に必要な資金というふうに読めると私たち考えております。たな上げをいたしますような場合に、どういう融資条件をつけるか、あるいは債務保証条件をつけるか、これは私は運用の問題だと思います。基金の経営に当っていますものが基金の目的に即応しまして判定をしてやっていく、こういうふうに考えております。
  27. 久保田豊

    久保田(豊)委員 しかし、今そういうお話があったけれども、ことしの状況として、乳製品のたな上げの場合には倉敷料なり金利の半額を政府の方がただで補助しているんですよ。ところが一般よりも、保証料その他が加わって実際には高くなる。実際問題としてそういう高い金利の金を使ってたな上げができますか。それを抜きにしてどういう条件をつけるのです。その点を明確にせずにただ金利の高い金を資金だけ融通してやれば各メーカーなりメーカー団体が自主的にたな上げをするだろうということでは、どうもこれは今の経済の実勢とあまりに合わない、考え方が甘過ぎるじゃないか、こう思うのです。それは裏を返していえば、たな上げなんということは条件にできないのです。またする意図もないというふうに私どもにはとれる。この点はどうなんです。今の説明じゃ、はっきりしない。
  28. 谷垣專一

    谷垣政府委員 三十二年の秋からの状況考えてみますと、現実問題といたしまして、経営のために必要なたな上げ資金融資のあっせんをいたしたわけであります。またそのほかにたな上げをいたしますものに対しましての金利、倉敷料を保証した、かようなことに相なっております。従いましてこの基金の運営いかんによりましては十分に私はたな上げの実をあげることが可能だと思います。もちろんこれはもう一歩進みまして、一定の条件でなければできないというふうに強力な形においてやれるかどうかということは軍営のいかんにかかっておるのであります。運営のいかんにかかっておると思いますが、この基金の運転いかんによりましては、かなりの程度にたな上げの実があがり得るものと私は考えております。
  29. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも基金の運営いかんによってはというだけでは納得ができない。たとえば昨年度にいたしましても二十六万五千貫ですかの大体大力ン練乳のたな上げを用意したわけですね。それに対する倉敷料なり金利保証というものをした。そうしてそれに対する資金のあっせんをあなた方はしようとした。ところがそれに実際に応じたのは大体大メーカーだけで、中小のメーカーはほとんどこれをやれなかったというのが実情です。しかもその内容はどうかというと、中小のメーカーの上からいってはそれだけのものは持ち切れないというところに問題がある。あなたの方は資金のあっせんをしようとしても、それだけではとうていそろばんをとってみると、そろばんに合わないし、持ち切れないというところで投げたわけですよ。そういう実情なんです。それをただ単にこういう高金利のものを、この基金運用だけでたな上げが可能だということは、少くとも中小企業メーカーという立場からいうと私は困難じゃないかと思う。おそらく大乳業者はこんなに高い金利の金を借りぬでもできると思います。何かそこにたな上げの条件なりあるいはたな上げを可能にするような新しい条件というものを加えなければ、この乳代支払い資金並びに運転資金、こういうものだけをこういう高い金利で出したって、これで私はたな上げの効果なんというものは出てこないと思う。従ってそういう場合においては、大資本なり生産者ないしは生産者団体乳業者の今の経済的な力関係乳業者の採算関係というようなものを考えてみると、この方にはほとんどこの金が使われないことになりやしないかという危険が非常に多いわけです。昨年の例だけでもうそうだったから、これは資金運用だけでうまくいくというのではちょっと納得ができない、この点はどうなんです。
  30. 谷垣專一

    谷垣政府委員 昨年の状況中小企業の人たちの保管の要求はほとんどすべていれて負担をいたしております。この基金の問題だけでそのすべてがやれるかどうか、酪農基金の問題を全部これで解消できるか、こういう問題はいろいろ議論があろうかと思います。それはそういう場合の過剰の問題あるいは経済条件の大きさの問題等によりますから、基金がすべて何でもやれるというふうには私たち考えておりません。しかし少くとも現実に二十九年、三十二年に直面いたしまして、そしてお互いに非常に苦慮してなかなかいい結果が出なかった、そういう意味滞貨融資保証がこれによって確実にできる、こういうことだけは申し上げられると思います。
  31. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうすると文章はこういうふうに乳代支払い資金ないしは運転資金とあるけれども、実質は滞貨融資ということで運用していこうというのですか。
  32. 谷垣專一

    谷垣政府委員 先ほど滞貨融資の問題でお話がありましたので滞貨融資という表現を使ったのでありますが、この基金の目的は、第一条に書いてありますように、滞貨融資をいたすそのことが、農民に生乳の代金としていい影響を与えていくというところまでこの基金はにらんでおるわけであります。
  33. 久保田豊

    久保田(豊)委員 滞貨融資ということなら、はっきり滞貨融資という明確なあれを使ったらどうですか。これは滞貨融資という言葉は第一条にもないじゃないですか。取引の改善とかなんとかいうきわめてぼけて、どっちでもとれるような言葉になっている。二十九条についても同じです。ですから私は滞貨融資基本にやるというならば、滞貨融資をはっきり、その目的のためにあるということを明示した方がいい、さっき言ったように五つも六つも何が何だかわからぬような用途にして、ばらばらに軍用するということになる。過般の参考人の意見等も主として問題はこの点にしぼられておる。非常に欲が深くてあれもやるこれもやるといって、しかも資金のワクは非常に小さい、しかも資金融資条件は必ずしも一般金融と比べてよくはない、そうして目的が一同にはっきりしないというところに、私はこの法案の一番大きな欠点があるように思う。滞貨融資をはっきり主としてやるというなら、滞貨融資をやるというふうに明確に書いたらどうです。この点はどういうふうに考えておりますか。特にこういうふうにぼけて、何が何だかわからぬような法案にした理由、背景というのはどういうところにあるのです。
  34. 谷垣專一

    谷垣政府委員 滞貨融資という表現が、この中の乳業の経営に必要な資金ということで十分に読めると考えております。この運営の問題を窮屈に考える必要は私はないと思います。業務の内容というものが必ずしもこれを狭めてやっていく必要はないので、そのときに応じまして重点的な扱いのできるような運営でやっていくことの方が私は望ましい、かように考えております。
  35. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、この資金運用滞貨融資もある程度できる、しかしこれでは不十分だ、ほんとうの滞貨融資ということをやるには、何か別個の、たとえばこの前やったような、要するに金利なり倉敷料の一部補助というふうなことも将来はあわせて実行するというのですか、どうなのですか。この点については前の閣議の了解事項その他によると、そうではなくて、昨年度はこういう基金ができないから、とりあえずの処置として倉敷料なり金利の一部補助をしたが、この基金ができればそういうものはやらないという意図が、そうはっきり書いてないけれども、大体全体を見るとそういうふうにとられる。今のあなたのお話では、この資金運用でうまくやれば相当程度の効果は出るが、しかしこれだけでは不十分だということを言っておられる。こういうことになると、また別個に、そういう特に滞貨の大きい場合については、滞貨のストックに対するたな上げなり何なりの措置を講じて、間接ながら乳価の維持を確実にしようという別途の方策を用意している、こういうことですか。あるいはそういうものは次の酪振法なり何なりの改正の中に入れていくというのですか、どうなのです。
  36. 谷垣專一

    谷垣政府委員 先ほど酪農の問題が基金ですべて解決するのでないと申し上げましたのは、酪農問題の広い分野におきましての意味で申し上げた次第であります。この基金があれば、基金のほかに保管料の補助とかいうことをやるのかやらぬのかというお話でございますが、私たちはこの基金運用によりまして、そういう場合はやっていけるものというふうに考えております。ただこれはそのときの乳業あるいは酪農における過剰、経済状況、そういうものの規模の大きさ、あるいはそれに応じます不況の状況というものを判定して考えなければならないのでありますが、私たちの見通しとしては、この程度のやり方で大体異常な——異常と申しますか、通常滞貨以上の異常滞貨はやっていける、かように考えているわけです。ただ突発したような事態、予想しないような事態が起きました場合の問題は、その時において考える必要があろうと考えている次第であります。
  37. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうすると、これで全部間に合わせる、こういうことですね。あとはやらぬ。今のお話ではそういうことですね。それではどうも、私どもは滞貨金融とか滞貨のたな上げというようなことはできないと思います。そこで、次に少し視覚を変えてその点を伺います。この前からのあなたの御説明だと、大体においてこの資金の予想するくらいのワクで、長期に見れば今後いわゆる牛乳過剰という問題は出ないのだ。短期に、季節的に見ると特に冬場は多少の過剰が出るが、国民の消費構造の高度化の傾向が今後ずっと続けば、大体五年間に牛乳を倍にしてもスムーズに行くのだ。こういうお見通しのようです。しかし、これは相当危いのじゃないか。乳価が今のように安くなってきますと、百姓の方も牛を飼うことは非常に困難になって、採算が合わなくなってきておることも事実です。従って濃厚飼料のくれ方が少いから乳も出ないという傾向も最近は出ております。しかし大勢としてはあなたも御承知の通り、特に最近は野菜その他の換金作物がまるでただでしょう。そこで農民の大多数の動きというものは、いわゆる適地適産主義で政府が奨励したものがほとんど軒並みに全く採算が合わない状態。しかもこれがいつ回復するかというめどがない。市場の連中に聞いてみても、今年の大勢を切りかえるには、今年大暴風でもない限りちょっと変らないであろうと専門家がみんな言っております。おそらくこの情勢は続くと思う。従って生産関係から言うと、どうしても乳業、特に酪農という方向が、政府の奨励いかんにももちろん大きく左右されますけれども、大勢としては今農民の大きな動向として出てきます。これはわれわれ率直に認める。従って、年々牛乳の生産量というものはふえていく。政府の計画通り五年後に千四百万石になるかどうかは別問題としても、大勢としてはふえていく。かりに政府の計画通り行ったとした場合、消費面があなたの言うように楽に行くかどうかということは非常に疑問だと思う。御承知の通り、日本経済の全体の伸びが六・幾らでしたか、これだけ順調に仲び、国民一人当りの所得が五・八%仲び、農業関係も三・だかずつ伸びる、そういうすべていいことずくめの前提ですが、その通りいけば問題はない。それはそうでしょう。そういう中でもって、あなた方の考えておられるように、牛乳の消費量一日三十九グラムが六十何グラムになるという紙の上の計画だけ立っているならば、すべてけっこうずくめでうまくいくが、しかし現実はすでに政府の予定した国民経済の伸びは、この不況によってもう頭打ちである。しかも調整が六日ごろに終るとか八月ごろに終るとかいろいろ言っておるが、これだって明確な見通しがつかない。すでに経済全体の見通しが悪ければこういうことはほとんど当てにならない。しかも国民の間では、やはり大きく貧富の差が開いてきている。大体大衆のふところというものはだんだん苦しくなってきている。確かに消費性向として乳製品なり肉なりの消費はだんだんふえておりますけれども、国民のほんとうの所得というものは実際問題としてそう大してふえておらないように思う。一部の連中は別です。そういう中で万事政府の立った五カ年計画がそのまま実現できるように考えておられることは、牛を飼う連中から言ったら迷惑しごくです。二十九年まではそういうふうな指導をやって、朝鮮戦争後の不況でもってつまづいたわけです。資本主義というか、日本経済全体が、戦後今まで回復過程でやってきたのとは状態が違ってきているように思う。これは議論をすれば幾らもある。しかし、いずれにしても、あの五カ年計画の数字を前提にして、短期のあれだというふうなことでこの問題を退治しようというところに非常に問題があると思う。今年は三十一万石の滞貨ができた。来年は幾ら滞貨ができる予定ですか、見通しがついておりません。今年は三十万石だから来年は百万石増で大体四十二、三万石の滞貨ができるだろう、こういう簡単な計算では私はいかないと思う。もっと大きな波が来るので、この点についての見通しの甘さというか、これは政府自体がすでに立証済みです。その政府の経済見通しの一端を真に受けて、これを立っておられるわけです。もっとも政府の役人なら、政府全体がそう言っているのを私だけは違った意思ですということは言えないでしょうが、そこらに非常に大きな問題をはらんでいるように思います。もちろん生産費がどんどん安くなれば消費がふえていくことは明らかです。けれども生産費を安くするという方向は、あなたが考えておられるような五ヵ年間に濃厚飼料が六〇%から二〇ないし三〇には全体として減らない。その方の強力な生産指導もしておられない、現実には。あなた方としてはやっているつもりかもしれないけれども、末端から言うとそういうところまでは行っていない。たとえば今度酪農指導員等を作ったりしているけれども、その指導員の腕はわからないではありませんか。今年から勉強してぼつぼつやろうというのでしょう。開拓普及員で牛の問題のわかっている連中が末端に何人おりますか。これから牛のことを勉強してという連中ばかりで、三年や四年では実際にできません。そういう現状です。相当長期に見ても、あるいは特に短期に見た場合においては、大きなアンバランスが出てくる。このアンバランスをどうしたら克服できるかということを、この程度でなくもっと突っ込んで考えてもらわなければいかぬと思う。それらについての対策、今後の見通しについてはあとで触れますが、あなたなり政府なりの見通しはきわめていいことずくめ、大したことはなくて、ちょっとしたあれが出てくる程度だから、それに対応するだけの措置をとっておけばいいというふうな態度のように思う。これでは不十分だと私は思う。その結果は、結局生産者なり何かが大きくこれを受けると思うが、指導についてもう少し突っ込んだ——五カ年計画の数字をべらべら並べて、これでいくというような程度のことは、だれだって知っていますよ。政府のことしの計画自体が、五カ年計画の通りいかないじゃないですか。しかも来年以降の見通しがどこにあるのです。農業関係だって同じです。酪農関係だって同じです。これを一つよく勘案をして、もう一度見通しを聞きたい。
  38. 谷垣專一

    谷垣政府委員 五カ年計画等で私たちがいろいろ作業いたしましたものが、どういうふうに実際のあり方として変化が出てくるかということは、これからの問題だろうと思いますが、私たちの見通しといたしましては、現在の計画でやっていける、かように考えております。これには五カ年計画のいろいろなデータ等を御説明をいたしたことがあったと思いますが、私たちは、今のところこの計画の需要の増大に即応しました生産の伸びを考えておる、かように御了解を願いたいと思います。もちろん、御指摘にありますように、将来におきまする消費増なり需要の測定の的確な推算はなかなかむずかしい問題でございます。私たちの方といたしましても、できるだけそういうマーケッティング・リサーチの的確なものをつかみたいと思って努力をいたしておるわけであります。こういう見通しを、遠くたって五カ年先のことでありますから、そんなに遠くありませんが、大体この程度の見通しでは、私たちは大体今の増産の状況でも十分こなしていける、かように考えておるわけであります。もっと短かい間の見通しとしましては、昨年からやっておりますような三カ月ごとの乳量の生産予察をやっていく。かようにいたしまして、生産者あるいはメーカーの方々あるいは各方面にそれから出ました資料を発表いたしまして、それに対しての対策をお考え願いたい、かようなことでございます。究極におきましては生産費を低減するということ、それから消費を増大をいたすということ、簡単に言えばこういうことになるわけでありますが、それに対しまする流通経路の問題ありますとか、そういうような多方面の問題を私たちは今まで努力してまたつもりでございますが、その努力を今後ともにますます強めていって、いろいろな問題を解決しなければならぬと思います。基金の問題にいたしましても、学校給食の問題にいたしましても、やはりその一つ対策といたしまして御審議をお願いし、ておるわけでございます。生産面におきまする生産費コストの切り下げの問題に対しましても、それぞれ予算等で御措置を願いまして努力をして参りたい、かように考えておる次第であります。
  39. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点触れますと、非常に問題が広くなりますから……。ですが、今のような政府のお役人としては五カ年計画に基きまして見通しを立てるよりほかにないと思いますが、現実にはそういかないということを十分頭に入れておいていただきたいと思う。これにいたしましても、要するに問題は私はたくさんあると思う。たとえば消費の拡大という問題、学校給食、これを昨年からやられたが、学校給食についても、三十万石程度余ったからこれだけ始末すればよいということであって、学校給食の問題というものは酪農政策と結びついた食糧政策なりあるいは衛生政策、そういうものとして本格的にやらなければならぬ。あの案を見ますと、結局片方においては牛乳が余った、片方においては前の砂糖の消費税のあれが十六億ぐらいあるから、この範囲でどうやらごまかしにしてやっていこうという程度にしかとれない。本格にあの問題と取っ組んでやっておるとはわれわれ考えられない、本格に取っ組むならあんなべらぼうな一時しのぎのやり方ではないはずです。これについても将来学校給食について長期の方策としてどういうふうにやっていくのかということをもっと真剣に、具体的に検討しないことには、そして対策立てないことには、学校給食という面を通じて牛乳の消費を恒久的にふやしていくということにはならぬと思う。この点については今までのところでは全く場当りです、政策そのものが場当りです。さらに問題になっております工場その他の集団飲用、これは政治的ないろいろの理由もありましょうけれども、この政治的な理由は別にして、今までの実績でも、たとえば川崎の日本鋼管でも三年くらいやっておる実績を見ますと、これは実際に明らかに労働者の健康状態も非常によくなっておる。肺病の罹病率は三分の一以下に減っております。あすこの会社の報告を見てもそうなっておる。全体の罹病率は少くなり、仕事に対する疲労度が少くなって、出勤率がよくなって、仕事の能率が上っておる。われわれが言いますと、与党の諸君はあれは社会党の人気取り政策だというようなことを言う力もありますけれども、そういうべらぼうなことではなくて、少くともああいう諸君に恒常的に集団飲用というものを政府がもっと積極的にやるべきだ。ことしの予算の当初にはああいう集団飲用をやるための一つの手がかりであったところの冷蔵庫に対する補助金があったはずです。それを畜産局の方は出さないうちに引っ込めてしまった、そうしてもう消えてしまった。こういうふうなことはそう大して銭のかかるものでない。一気に全国的にやろうと思ってもできないことですから、順序を立ててやっていけば、この面においても少くとも年間において百五十万石の新しい消費ができる。しかもそれがあらゆる意味において全体の国民の食生活の向上となり幸福となる、それが必ずしも労働者の利益だけてなくて、資本家の利益にもなってくる、こういう点についてもっと確信を持ってやるべきです。あなたの方でぐずぐずしておるから、明治、森永さんがどんどんやっておるじゃないか。こういう点ももう少ししっかりした方策立ててやるべきです、それもやってない。特に大きな問題は、今のように、乳価生産者は大体五円くらいでできる、ところが実際に消費者の口へ入るときには十四円である。その間において十円近くの御承知の通りの中間の経費がかかっておる。この中間の経費を少くし、あるいは流通過程を合理化するということについても、あなたの方としてはほとんどやってない、何にも手をつけてないじゃないですか。そういうふうな点を全部ほうっぽらかしておいて、そうしてさっきのお話のように、大体五カ年計画の線において牛乳や乳製品の消費というものはぐんぐん伸びる。そうしてその間にただ単に唯一の、生産者のコストを安くすることだけをねらっておる。これではざっくばらんに言って、畜産行政というものは、悪口を言えば、博労行政か大乳業会社のための酪農政策としか言えない。その点畜産局長ともあろうものは、もう少し確信を持って、しっかりした見通しを立ててやらなければ、ざっくばらんに言って、しかもさっき言ったようなこんな政策では全くさみだれ畜政というか、底抜け畜政です。これは最後には生産者にみなかかってくる。だからここらを一つはっきりやってもらいたいと私は思うわけです。  そこで次の問題として、さらに具体的な問題をお聞きします。この中で大体において一応政府が五億を当初に出資する、あと一億は業者が出資する、それからあと五年間に四億出資して、全体を十億の基金にする。これを全体としてやる場合には保証額の限度は五倍、個人としては十倍、こういうことですか。それにしても、それだけでこれだけの盛りだくさんのあれに足りますか。この前の参考人の意見でも、中小メーカーの四十二工場の施設更生資金として大体において八億円、そういうことで相当その方にとられる。あとつまり滞貨金融をこれでやるということになった場合、これでは現在のところ一カ月程度しかできない。そういうところで、実際に一カ月の滞貨金融がかりにできたとしても、それでいいかどうか。そういう点では一カ月の三十億程度の滞貨金融では今後の事態にはなかなか処せないのではないか。もう少しワクを広げるとか何らかの措置をとらなければできない。これは第一にこの程度の滞貨しか考えておらないのかどうかということと、もう一つは、明治、森永その他の大乳業は、こんな資金を使わぬでも滞貨金融は自力でできるじゃないか、こういう点も考えられる。こういう点の見通しなりあるいは計画なりというものは、この資金の今後の運用面として、あるいは既存の構想としてどう考えられておるか、この点を、一つお聞きしたい。
  40. 谷垣專一

    谷垣政府委員 酪農政策について種々御示唆を賜わりまして非常にありがたいのでありますが、学校給食の問題につきましては、私たち考えといたしましては、やはり一般の飲用、一般の需要に対します供給不足というようなことのありませんような形において学校給食を持っていきたい、かように考えております。三十四年度におきましてどうするかということにつきましてはまだ研究をいたしておりませんが、学校給食の従来の実績あるいはこれの持っております意義等から考えまして、需給調整の上から見まして、学校給食というものをできれば続けていきたい、かような考え方で案を今後練って参りたいと思っておるわけであります。  職場飲用の問題につきましては、御指摘通りこれは今後伸ばしていくべき問題だと考えております。ただ集団飲用の中でまず取り上げられたければならぬのは学校給食という意味で、この集団飲用の中の学校給食をまず重点的に取り上げた次第でありまして、職場飲用に関しましても今後なお私たちの方で努力をしていきたい、かように考えております。  それから出資のワクの問題でございますが、大体私たち考え方では、乳業界の従来の例から見ますと、月生産の一・五カ月くらいの在庫と申しますのは、通常状況としてあるように考えております。でありますからそれをこえる分がどのくらいあるか、こういう形になって参りますが、その通常在庫をこえるものを一応算定いたしまして、そしてこれを債務保証の対象の数字に考えてみたわけであります。もちろんこれは見通しの問題もございます。あるいは大企業がこれを利用するかせぬかという問題もございます。ございますが、達観的にこういう数字を出した、かようなわけでございます。従いまして大体先ほど御指摘がありましたが、一カ月程度のものということに当初におきましてはなってくる、かように考えております。  それから設備資金の問題でございますが、設備資金の金額をどの程度に見るか。これは債務保証の形で見なければならないものと、債務保証の形で見なくても、通常の金融ベースでやれるものも中にはあろうかと思います。当初におきましては、これは業務規程その他事業計画等できまることと思いますけれども、やはり五億程度のものを債務保証で見ていくということにして、あとのものは一般の金融なり何なりであっせんをしたりいろいろ努力をしていく、かような考え方でいくつもりであります。
  41. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その次の問題ですが、これはこの前参考人の意見開陳の際にも出ておったわけですが、政府の方としては五億円出す。とりあえず一億、あとは四億を五カ年間に追加出資をする、こういうことです。ところがこれについては、正式には一応出資承諾を取り消している。ところがこの一億円の出資は義務出資なんですね。あとの四億はそうではないにしても、六億だけは義務出資になる。せんだっての意見ではこれは条件次第によっては出します。しかし今の条件では出さないということをいっておるわけですね。この点についてはどう考えておるか。もし出さない場合には、この法案を変えるか何かしなければ出発はできない。またせんだっての参考人が言ったように、業者の要求をいれればこの構想は根本から変ってくる。この点についてはどう考えておられるのか、この点をはっきりお聞きしておきたい。
  42. 谷垣專一

    谷垣政府委員 私たちは、昨年の十月以降酪農審議会等にも答申を求め、漸次こういう法案を作って参ったわけであります。また業界の方々に対しましても、出発当初それぞれの出資をお願いするという約束で参ってきたわけであります。この間のように、そういう約束をこの際になりまして取り消す、こういう御意見があるわけでありますが、やはりこの間の御意見の中にもありましたように、この基金を何とかでかしたいという気持は、それぞれの参考人から表明があったわけであります。また私たちもこの基金酪農振興基金としてふさわしく出発させるためには、関係する諸君がみなそれぞれ出資をしていただいて、そうして資金のワクからいいましても、あの程度の当初の資金のワクで出発するのが正しいものと考えております。それぞれの出資予定をしております人たちには、今後とも努力をいたしまして、出発当初のあれだけのものが集まるように私たちは努力をいたしたい、かように考えております。
  43. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それは政府としては努力するでしょう。しかし、この基金の構想では出さないといっておるのです。出すと約束をしたけれども取り消します。しかし業者の意向をいれてくれるなら、従ってこの基金構想を基本的な面において変えていくなら出します。こういうことなんですよ。だからあなたの方は変える方を承認して金を出せるようにするのか。基金の構想だけは全然動かさない、そうしておいて何でもかでもとにかく一つ農林省の意向で出させようというのか、どっちかということを聞いておるのですよ。どっちなんです。ある程度業者の要求をいれて、この基金の構想を変えても一つ出資をやっていこうというのか、基金の構想は絶対に変えません。この基金の構想において業者が一たん承諾をしたのだから、あとは文句をいってもだめだ。何でもかでも出させるようにするのか、どっちかということを聞いておるのです。
  44. 谷垣專一

    谷垣政府委員 この基金の要望されましたのはだいぶ前からこの基金を作ってもらいたいという要望があります。今業界の一部に反対の意見もあるのでありますが、これは極力その諸君の出資をお願いし、あるいはまたそのほかの出資の督励をいたしまして、この基金を成立させたい、かように考えております。
  45. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうもその点はっきりしないが、あまり強く聞いても無理だろうと思う。それ外では今の御答弁の趣旨はこの基金の構想は変えない。変えないが、とにかく業者は一たん約束したのだから、出せというのですか。もし出せないといったらどうします。この法案は成り立ちませんよ。その点はどうします。この点をはっきり聞いておきます。
  46. 谷垣專一

    谷垣政府委員 出発当初民間出資が一億になりますように極力努力をいたして参ります。
  47. 久保田豊

    久保田(豊)委員 極力努力をされることは当然でしょうが、せんだっての大体の動きはそう簡単にはいかないように思います。これ以上畜産局長を追及しても気の毒だと思いますが、ただせんだっての参考人の意見その他をずっと総合して考えた場合に、われわれが考えられることは、この程度のワクで、この程度のものでは実を言うと大乳業についてはほとんど効果がないと思うのですよ。大乳業は、これがあってもよし、なくてもよしというところだろう。もし少しくらいの出資をしてこのイニシアチブをとって、今後の酪農についての流通面の指導権を大乳業が確実に握り、利益になるならば、これも利用しようというふうに私はせんだっての御答弁を聞いたわけです、ところがせんだっての参考人の意見の中で、中小企業はこの資金がなければどうにもやっていけない、中小企業中心にして考えてくれということ、同時に生産者の方はどうかというと、全酪系統の諸君はこれがあった方がいいと言う。ところが総合農協系統ではあまり歓迎をしていないというふうにせんだってのあれはとれたわけです。そこで私は、二十九条の資金の使い方等についてもさらに再検討して、修正するものは修正する、そしてこれを中小乳業者生産者団体——これはもちろん乳業を行なっている生産者も含めて、そして今の系統農協も含めてそういうものが十分使えるような体制にして、もちろん大乳業を全然オミットするというわけじゃありません。しかし少くともこの資金の中でのほんとうのイニシアチブというものは、中小企業メーカー生産者団体、こういうものが中心になるように、資金出資の配分等も変えていくことが必要ではないかと思う。そしてもちろん大乳業ともけんかをするという必要はありません。現状からいって、それこそ大乳業とけんかしては、ざっくばらんに言って、乳を作る連中はやっていけませんけれども、ただ大乳業が今のように大きな力を持ち、全国的指導権を握って引きずり回したのでは中小企業生産は芽が出ません。そこで私は非常に不十分な案ではありますが、せめてそういう点についてもう少し考え出資の割合等も考えて、そしてこの基金の使い方や何かも考えてやってもらいたいと思うが、またやるのが、今後の日本の全体の、大乳業者も含め、中小の乳業者も含め、生産者団体も含めた均衡のある酪農政策、不十分だけれども、少くともこの基金の範囲においても一つの行き方ではないかと思う。そういう点についてはいろいろ問題はあります。二十九条の資金運用方法等についてもいろいろ問題があるが、出資の割合はこれを見ますと、ほとんど大乳業中心だ。中小企業の人は二億五千万円を十年でもって出させてくれということを言っておる。そういう点も含めて生産者団体ももう少しこれを使えるということであれば、総合農協であれ単独農協であれ私はこれを使っていいと思う。私どもに言わせれば使うべきです。そういう意味でそういうところの構造を変える考えはあるのかないのか。そういう修正をかりにこの国会において出した場合においてはこれに応ずるつもりかどうか。この点をはっきりお聞きしたい。
  48. 谷垣專一

    谷垣政府委員 本基金が中小乳業に対して優遇するかどうかという問題に対しましてはこれは今までは非常に資金の需要があって、受信力が弱かった、こういう中小乳業が、軍用の上で重点的に対象になることは考えられることであります。ただ酪農全体の上から見まして、中小乳業だけに関係いたしますものにとどまることがいいかどうかということになりますと、やはり全体のものが入っていくということが好ましいと私たち考えておるのであります。またこれに対しまする出資の問題でございますが、これは政府と民間とがそれぞれ半分ずつ出し合うという構想になっております。当初の出発におきまする各民間出資者の比率等に関しましてはこれは中小乳業なり何なりの方がもっとよけいに出すという形がありますれば、従来予定しておりましたようなものが比率が変るということは当然あり得ることだと考えております。できるだけ中小乳業出資がよけいになるように努力をいたして参りたい、かように考えております。ただこの中小乳業あるいは大乳業というようにそれぞれの経営の形態が違いまして、入って参りました場合に、この基金の運営自体が直接に大企業の思うように動き得るのかどうかという問題でございますけれども、これは当然に理事その他の問題におきましても、出資額に応じたものとして考えておるわけではございません。もちろん出資額の問題も考慮に入れなければなりませんけれども、そのほかに出資関係はなくとも、それぞれの適当な人に理事になっていただく、こういう運営を考える必要があろうかと思っております。従いましてこれに大企業の方々が入られたからといって、大企業がすべてこれの運営をする、こういうようには私たち考えていない、適当に運営ができるものと考えております。
  49. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも答弁が的をはずれているのですよ。理事のことだけを言っているわけではない。二十九条の使い方についても、もう少し生産者団体中小企業が主になって、それに大企業も大乳業も加わったような点も、出資の構成においても考えてみたらどうか。これは使い方についても今五つあげていますけれども、これだけで不十分な点もあるし、このうちで私は要らない点もあると思っております。そういう点もある程度整理して、そうしてすっきりしたものにしてやったらどうか。こういう点についてはどう考えているかということを聞いているわけです。大乳業者を全部オミットしようということを言っているわけではありません。その点かりに法案を変えるようなことにこの国会でなった場合にはそれに対してどうかということを聞いているわけです。
  50. 谷垣專一

    谷垣政府委員 出資の構成の問題につきましては、私たちは従来約束しましたものを何も固執はいたしておりません。中小企業等が出資を増加いたして参りますならばそれはけっこうだと考えております。それから業務運営なり業務の問題でございますが、この点につきましては先ほど来いろいろ御意見がありますように、何と申しましても基金の一番重点に考えるべき問題は、滞貨が非常に生じて参りましたような場合における基金の運営力を十分に発揮させるということになろうかと思います。そのほかにやはり中小企業の希望しておりますような大力ン練乳の転換をいたしますための設備資金の問題が当初としては問題となろう、そういうようなところに業務の軍営上の重点を置く、こういうことが従来からいろいろ出ました意見等に徴しまして必要かと存じます。
  51. 久保田豊

    久保田(豊)委員 最後に一つお聞きしますが、この理事機構は、率直に言うと、これでいけばお役人さんの古手が全部握るということになると思う。そう言ってはあまり露骨になるかもしらんが、そういう結果になる。せんだっての参考人の意見のように、出資をした人たちが、出資額に応じて持ち分を持って、それを代表するという格好でやるということがいいか悪いかというと、これは私は疑問だと思うのです。そうかといって、この案に出ているように、これでは全く何というか官僚統制が——官僚統制という格好は出ておりませんけれども、これは強過ぎると思うのです。これを何とかもう少し調和する必要があると思いますが、こういう点の調和をはかる場合においても、これに応ずる用意があるのかないのか。どうしてもこういう理事構成なり、役員構成にしなければやっていけないのかどうか、この点を一点だけお開きしておきます。そのほかに参考人からいろいろ出資の持ち分や、あるいは解散時の返還の問題等もありましたけれども、これは時間もありませんから省きまして、今の点だけを最後に聞いておきたいと思います。
  52. 谷垣專一

    谷垣政府委員 理事の問題は、理事の申に出資者の諸君が入っていただくことは当然と考えております。それだけにとどまりませずに、学識経験者も入らなければならぬと思いますが、出資者の諸君が相当数入っていただくことは当然と考えます。ただこの申で、この業務を実際上常勤いたしましてやって参ります諸君に関しましては、これはこの法文にもありますように、営利を目的としております業務との兼職を禁止いたしております。これは現在の出資者の人たちお互いが、それぞれ商売上ときには競合する場合もある仲でございますので、むしろそういう関係から離れた人が運営していくことの方が妥当かと存じております。
  53. 中村寅太

    中村委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後三時三十三分開議
  54. 中村寅太

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。赤路友藏君。
  55. 赤路友藏

    赤路委員 今さら金融公庫のあるべき本質についてはもう言う必要はないのでありまして、ただこの公庫の本質から見ました場合、今度の一部改正について説明されております面からいきますと、原資構成がさか立ちしておると思う。このことは今まで、毎国会私の方で指摘をいたしまして御警告を申し上げておいたのでありますが、以前から申しますと、やや改善されたようには見えますが、本年度の予算を見てみますと、依然としてさか立ちの状態は解消されてないように思う。昭和二十九年度までは貸付原資の過半は無利子である政府出資であったことは事実です。三十年、三十一年は政府出資分が大幅に削減されてきております。三十二年、三十三年度は、ややこの点は改善されてきておりますが、依然として原資構成では、政府出資と借入金との比率は四五%、五五%、こういうふうな形になっておる。これらのことが経営に対してしわ寄せされるおそれがあるし、事実そういう傾向が見えるわけなんです。たとえば滞貨引当積立金の積立てが、計画において、一・五%になっておるのですが、三十一年度はこれに対して〇・四五%、三十二年度は 〇・〇三%、こういうふうに三十一年、三十二年は低下してきておる。こうした積立金の低下ということは言葉をかえていいますと、やはりこれは経理が、あるいは経営が不健全である、こういうふうに考えられるわけなんです。こういうような状態でありますから、当然これは公庫当局の方としましては、極力利子のつく借入金の借り入れを押えていくと申しますか、これを控え目にするという状態が出てくると思う。それから貸金の方は、従って回転していかなければならぬのですが、貸金は当然回収すべきものである。当然回収されなければならぬのだが、貸金回収というものに依存する度合いが多くなってくる、そういうような形で運営しておりますと、私たちが常に考えるところの金利引き下げ、これが不可能な状態になってくる、こういうふうに私たち考える。今度の法律の説明によりますと、これを改正することによって今までよりも支店ができる。当然人員も増す。要するに業務が拡大されてくる。業務が拡大されてくるのにもかかわらず、原資構成が依然としてこういうようなさか立ちした形であると、それでなくとも積立金等が低下してきて不健全な運営の方向にいっておるような状態では、ますます悪くなるのでなないか、こういうふうな懸念があるわけなんです。当然貸し得べきものも押えざるを得ないというような実態になってくる。そういたしますと公庫本来の農漁民に対するサービスの面、これは低下してこざるを得ない、こう考えられる。この点について大蔵当局の方ではどうお考えになっておるか。あるいは公庫総裁にも御出席を願っておるのですが、総裁の方で公庫当局としてはどう考えておるか、これを御説明願いたいと思う。
  56. 石田正

    ○石田政府委員 だんだんとお話がありまして拝聴いたしておった次第でございますが、いろいろ問題を含んでおるように思います。まず第一に農林漁業金融公庫の業務運営につきまして、その使命を達成する上に必要なところの資金量、これをなるべくふやした方がいいではないかという問題があろうかと思います。この点につきましては他の政府機関との関係におきまして、先ほど来お話がございました出資の形でなり、あるいは財政資金の借り入れにつきましてできるだけの配意をいたすつもりで、銀行局は大蔵省の中で努力をいたしておるつもりでございます。それが何と申しますか、いわゆる希望に対してまだ満足できないという点は、私はあろうかと思いますけれども、他の金融機関との権衡を考えまして、そういう点につきましてはできるだけの配慮をいたして参ったつもりでおるわけでございます。  それから第二の点といたしまして、これが御質問の核心かとも思うのでございますが、その原資の中におけるところの出資金と借入金の比率がさか立ちをしておるではないか、こういうお話だと思います。この点につきましてはまず経過的に各年度を比べて、だんだんと投資の方が減ってきて借入金がふえるという傾向にあるではないかというお話があったかと思うのでございます。この点はそういう傾向があるということはその通りであろううと思います。ただ御承知の通りに、年度によって国の一般財政その他との関係もございます。たとえて申しますと、一般会計において直接出資をするという予算を作りますときと、そういうことを一切いたさないという年とがあるわけでございます。それからまた他面産業投資特別会計というのがありますことは御承知の通りでございますが、それが大体出資の方を担当することに相なっておりますが、その出資の金額というものにおのずから限度がある。そういう点から申しまして、できるだけ産業投資特別会計の出資といたしましては、農林漁業金融公庫の方へよけい出すように努力いたしておりましても、きまる結果におきまして御満足のいくような数字にならない、こういうことがあろうかと思うのでございます。さてそういうふうな工合で御不満の点があった結果、それが業務の上にどういうふうに反映しておるかということにつきましては、今のお話で大体二点ほどあるかと思います。一つ農林漁業金融公庫が本来の目的として低利の資金を出す上において、それが支障があるかどうかという問題でございますが、これはすでに大蔵省におきましてもいろいろの考え方がございまして、いろいろ議論するわけでございますが、一応私たちといたしましては、微力ではございますけれども、金利を引き上げなければならないとかなんとかいうようなことのないように、できるだけ配慮をいたして折衝して参ったつもりでおるわけでございます。それからそのところと関連いたしまして、いわゆる滞り貸しに対するところの積立金と申しますと、語弊があるかもしれませんが、農林漁業金融公庫の内部留保が少いではないか、要するにほかの金庫等に比べてその積み立てが少いではないか、その少いということはすなわち公庫としての運営上も健全でもあるまい、またその金が多ければ資金量もふえるわけであるし、それからしてまた金利もあるいはもっと下げ得るという契機にもなるかもしれねという御指摘の点だと思います。この点は私は確かにそういう面もあると思います。これは結果としてそういうふうに現われてくるのでありますが、問題の根本は、やはり前段に申しました出資と借入金の比率をどうするか、こういう問題に帰着するのだと思っております。われわれといたしましては、その点についても今までも努力してきたつもりでおりますし、今後におきましても銀行局としては努力いたしたい、かように思っておる次第でございます。
  57. 山添利作

    ○山添説明員 ただいま大へん御親切な質問でございました。また十分内容を熟知の上で質問されておると思うのでございまして、私らはただいまの質問の趣旨のごとく平生考えており、また予算編成の際におきましては、その趣旨をもって政府当局にお願いしておる、こういうことを申し上げておきたいと思いますが、ただ出資構成が悪いために借入金をしない方が公庫の採算はよろしい、そのために少しけちなことをやりはしないかというお話でございますけれども、そういうことはございませんですから……。
  58. 赤路友藏

    赤路委員 一応大蔵省の方でも、公庫の性格というものを十分おくみ取り願って御配慮を願っておるように今の御答弁では承わりました。今局長の方のお言葉の中にありましたように、たとえば今年度の産業投融資にこれを限ってみました場合、産業投融資の方が約四千億、全体としまして三千九百九十五億ですか、その中で国民金融公庫、それから中小企業金融公庫、それから農林漁業金融公庫、それを合算いたしまして六百九十五億なんです。それでたとえば産業投融資融資という面だけを一つ取り上げて考えてみましても、ウェートの置き方が少し酷ではないか。この中小企業金融公庫にしましても、これはほとんど全国ですね、一千万以上の中小企業者のための融資なんですね。国民金融公庫は推して知るべし、農林漁業金融公庫にいたしましても大半は中小企業者への融資なんですね。だから現在の条件下においては、そういうような何と申しますか、庶民大衆ということが当てはまるか当てはまらぬかはわかりませんが、そういうような零細な企業家に対する融資をより考えなければならぬというのが、現在の情勢じゃないかと思うのです。だからその面だけをとってみても、私はいささかやはりさか立ちをしておるようなふうに思うわけなんです。せっかくいろいろ大蔵省の方でも、それほど心がけていただいておるのですから、すでに予算も参議院の委員会を通過したようですから、もう今さらどうということはできないでしょうけれども、今後十分これらの点については御配慮を願いたい、こう考えるわけです。これに対しましては別段御答弁は求めません。  そうしてもう一点は、この政府の提案理由の説明書を見てみますと、本年一月末の融資残高は一千百七十七億に達する、こういうふうに言っておるわけです。その面では非常にうるおっておるわけなんですね。しかしながらこの中には例の復金等から承継された債権があるわけなんです。これは一月末現在で七百四十一件、十四億一千二百万円あるわけなんです。そうすると、これは総体の融資残額に対しまして一・二%、こういうことになる。だから約一千百億円の融資残額から見ました場合は、一%余りですから、十四億そこそこのものが、大きいものではありますまい。しかしながら公庫の現在の経理の状態から見た場合、これは必ずしも僅少なものであるとは私は言い切れないものがあると思う。しかもこれを継承いたしました後、整理、回収がある程度進んでおるようであります。しかし私は、局長も御承知の通り復金の貸し出しというものは相当古いわけなんですね。すでに今日に至ってなお十四億残っておるというものは、これはほぼ回収不能という条件下に置かれておるものじゃないかと思うのです、そう考えて参りますと、これはどうにか処置をつけなければならぬ問題ではないかと思いますが、これは大蔵省の方で、これについてはどういうお考えを持っておるのか、あるいはまた公庫当局の方はこれに対してどうお考えになっておるのか、この点は、私は昨年もくれぐれも申し上げておいたはずなんです。いつまでも公庫にこうしたものを負担さすということは、ますます公庫の経理状態を追い込む原因になる、こういうことを言って御注意を申し上げておいたので、この際一つ御所見を承わっておきたいと思う。
  59. 石田正

    ○石田政府委員 例の復金債の承継につきましては、単に農林漁業金融公庫のみならず、ほかの金融機関にもあるわけでございます。それらにつきましても、全部復金関係債務が片がついておりません。農林漁業金融公庫につきまして、先ほどお示しがございました、本年の一月末において十四億残高がある、こういうことでございますが、これは実は私の方といたしましては、承継いたしました当時に三十三億ありましたのが、一月末において十四億になったというふうなことを、公庫の方からお話を承わっておるのでございます。ただ十四億というものがほんとうに回収不能というふうに、この際断定すべきものであるかどうかということにつきましては、遺憾ながら私の方といたしまして申し上げることは、やはりこの際としてははばかるべきことではないかと思っております。それから農林漁業金融公庫の方といたされましては、承継債権の中でほんとうに回収不能と認められておるものにつきましては、逐次償却をいたしておるように伺っておるのでございまして、これらの問題につきましても、その償却が果して十分であるかどうかというふうな点につきましては、これも農林金融公庫といたしましてやっておられることでございまして、われわれといたしましては、大体妥当なことをやっておられるもの、かように考えておる次第でございます。
  60. 山添利作

    ○山添説明員 結局、ただいま残っておりますもののうち、非常に多くのものが不良償権ではないか、そういうことになると、公庫の採算なりバランスなりを非常に圧迫するのではないかという御質問でございます。現在残っておりますものについての確たる程度を今申し上げるようなわけにはいかないのでありますが、一応調べたところでは、三億見当だと言う人もあるし、もう少し、二億くらいよけい出るのじゃないかという人もございます。ですから、もし三億程度ということであれば、大体この債権を引き継ぎましたときに、多分損が出るであろうということで、四億三千万の金をつけて引き取っておりますが、大体それととんとんに、見合うような結果になるのじゃなかろうかという気もします。しかし、実態はおそらくそれでは足りなくて、相当部分が実質上赤になるだろうと思いますが、これはなお整理には努めておる次第でございまして、今の状態でどうということをはっきり申し上げるわけにはいかないと思うのであります。
  61. 赤路友藏

    赤路委員 総裁の今のご答弁でいきますと、二、三億程度でとどまるのじゃないかということで、二、三億程度でとどまるのだったら、引き継ぐときに出された金で大体相殺できるのだというお考えのようです。しかし実際上私たちが今までにタッチした感じといいますか、それからいきますと、そう甘くはいかないと思うのです。たとえば、その担保物件をとっておったといたしましても、船の場合なんかはだんだん船齢が増してきますから、担保物件の価値は落ちていくのです。もちろん損保物件は百のものを百でとるわけではございませんが、いずれにいたしましても、下ってくるという結果になろうかと思うのです。だから私は、これは総裁の言うほど甘いものではない、こういうふうに考えております。もちろん、今のところでそれを捕捉せよと言っても無理かもわからぬと思います。しかし少くとも金融機関でもって長い経験を経てくるなれば、大体の点は私は握れなければならぬと思うのです。いつまでもこういうものがたな上げされると言うと語弊がありますが、おっかぶさっているということは、これは私は経営の上からいっても芳しいことではないと思う。これはできるだけ早い機会に、その捕捉をして処置をつけてもらいたいと思う。その場合、これは局長にお尋ねしますが、もしもかりに総裁の言うような甘い形でいけばけっこう。しかしそういう甘い形でいかないで、五億なり七億なりというものが絶対回収不能だ、こういうふうになった場合は大蔵当局として何か処置をお考えになりますか。それとも先ほど御答弁にありましたように、不良なものは漸次これを償却でやってしまって、それでいいというのか。それとも何とか政府で、そのはみ出した分については肩がわりするとか、見てやるとかいうような方法をお考えになるのか。この点は、どうも光の仮定の問題になっておそれ入りますが、大体の腹づもりだけを聞いておきたいと思います。
  62. 石田正

    ○石田政府委員 これは先の問題でございますので、あまりはっきりしたことを申しげ上るのはいかがかと思うのでございますが、とにかく感じを言ってみろというふうな御趣旨と解釈しまして、私のその問題に対する感じだけ述べさせていただきたいと思います。  私は農林漁業金融公庫というものは、国家機関ではありますけれども、金融機関だと思います。その処理というものは、私は金融機関らしく処理すべきものだと思うのであります。なるほど復金から引き継いだとかいうふうな問題はございますけれども、しかしやはり金融機関として一応の常識があるわけでありまして、この金融機関は成り立たないから、政府が補助するのであるというような形でやるのはどうであろうか。やはり償却という形が一つ考えられるでございましょう。それからまた、さらに根本からいいますれば、一番初めに御質問がありましたような工合に、農林漁業金融公庫というものの経営を堅実ならしめるようなことも考えて、そういう中で、もしかりに相当多くの不良資産ができるにいたしましても、それはそれとして、金融機関らしく処理していくということが本来の筋ではなかろうか、かように感じております。
  63. 赤路友藏

    赤路委員 そこのところが少し違うわけです。銀行局長のおっしゃっているのも、金融機関なんですから、一理はあるわけです。だからたとえばそういうような不良債権でどうしてもとれないものがあったとしても、これは金融機関の責任において当然回収すべきものである、こういうお考えだと思いますが、金融機関という一つのもので見た場合は、それは正しいと思います。金融機関が、一々不良債権をぽんぽん落して、さあどうにかしてくれというのはおかしいと思う。しかしそのことは一般の市中銀行の話です。かりにも政府が特別機関として金融機関を置いた理由は、そうじゃないと思う。単にこれがコマーシャル・ベースに乗ってやっていくというなれば、何も私は特別にこういう金融機関を、政府がわざわざ置く必要はないと思う。これは行政上ある程度の危険はあってもやらなければならない、こういう観点の上に立ってこの金融機関というものはあるのだ。でなければ意味はないはずなんだ。だからある程度危険性を前提に置いて金融機関の設置がされておるわけです。それでなければ私は必要ないと思います。金融機関当局はそういうことであったとしても、それは金融機関の建前から当然です。当然でありますけれども、少くとも成立の根本というものは、一般の市中銀行とは違う。だからもしも不良貸付になって——不良貸付といっては語弊がありますが、特にこれの分は継承分なんですから、その継承分をかぶってしまって、それを償却で補っていくということになれば、それだけ経営の面にしわが寄ってくる。それは当然農漁民に対するサービス面にも影響がくるはずなんです。この点、局長のお考え方とは少し違うんですが、局長は今おっしゃったように、やはり政府の特別金融機関である、そうお考えになっていますか。この点だけお聞かせ願いたい。
  64. 石田正

    ○石田政府委員 私は、言葉が足りなかったかと思いまするが、農林漁業金融公庫が普通の中中金融機関と同じだと申し上げているわけではないのでございます。農林漁業金融公庫は市中金融機関と違えばこそ、こういう形で運営されておるのでありまして、その根本につきましては、これは当然なことだと思っておるわけであります。それから先ほど、千百億という全体の貸し出しの中で、これが一・何パーセントであるというお話がありました。そのことを考えました場合に、一千億をこえるものにつきましても、これは特殊の金融であって、決して市中金融機関と同じ金融であるとは思っていないわけであります。従いまして、全体を通じて、農林漁業金融公庫というのは、復金からきたときの農林漁業中央金庫と、それからその後の農林漁業金融公庫がまるっきり違ったものだというふうに考えるべきじゃなくて、農林漁業金融公庫はあくまでも特殊の金融公庫であろうと私は思うのであります。しかしそうであるからといって、今度は償却その他につきまして、これは特別にこういうところから起っているからこの基金はこうであるというふうにいってやるべきものであるかどうかということについては疑問を持っている、こういう趣旨でございますので、決して市中金融機関と同じだという趣旨ではございません。その点は一つ御了承を願いたいと思います。
  65. 赤路友藏

    赤路委員 継承債権のことについては仮定論になるんですが、実際百パーセントとれるかもしれない、十四億あるやつがあるいはとれないかもしれない。総裁が言うように二億で済むか三億で済むかわからないわけなんです。だから仮定でわからぬことを対象にして言うわけなので、質問する方もはなはだ心苦しいのであるが、私の言っておることは、公庫は本来の目的に沿って、大いに僕漁民にサービスをしてもらおう。そのためには公庫の経営というものを健全な、安定したものにするということが第一の要件だ、こう私は考えるわけなんです。そのために先ほど来原資構成のさか立ちはいかぬということを申し上げたわけなんです。すべて農漁民に対してサービスをしてもらうという一点から出てくるわけなんです。そこでまた仮定に入るんですが、最後の全然とれぬとわかったものも、公庫の経理の中でまかなっていけ、落していけ、何年かかってもいいからやれと、こういうことではそのしわ寄せが農漁民にくるのではないかと私は心配するわけです。率直に言って、かりに十億なら十億という当然貸し出し得ベきものをどんどん落していけば、貸し出しができないんですよ。そうなってくると、それだけサービスが低下してくる、こういうふうに考えられるわけなんです。だから仮定ではあるが、そういうどたん場へ来たときに政府は何かお考えがありますか、こういうことなんですよ。これは仮定の話です。三年先か五年先か知りません。しかし何ぼ何でもこれを故意に十年も十五年も放っておいて、それでいつも残高がずうっと残っていくという形、旧債権がいつまでも残っていくということでは、私は決して健全な運営ではないと思う。ある程度の限界がくれば、打ち切るべきものは打ち切っていかなくちゃならぬのじゃないか、その際における政府の考え方というものは一体どうなのか。仮定の問題でおそれ入りますが、御答弁がむずかしければしいて答弁は求めません。もしそれに対して、その場合はわれわれはこう考えるという御意見が出されるなら出していただきたい。ただしそれは、先ほどおっしゃったように金融機関の中で当然処置すべきなんだというお考えであれば、あらためて御答弁を聞く必要はございません。
  66. 石田正

    ○石田政府委員 むずかしい御質問でございまして、私は率直に申しまして御仮定のような場合にどうするかということをお答えすることは、差し控えた方がいいだろうと思います。ただ、先ほど来の御質問に対しましてお答えしております趣旨をもう一ぺん繰り返さしていただきたいと思うのでございます。これは私はさか立ちというほどまでには思っておりませんけれども、出資と借入金の比率が、この機関といたしまして、本来の使命を達成する上において少し出資の比率が少いということを私個人は考えております。従いましてそこに私はできるだけの努力をこれからやっていきたい、こういうふうに思っておったわけであります。そういうことをやれば、長く出資をいたしますれば、その金が長くころがるわけでございますので、それが恒久的な問題でありまして、大蔵省の中でいろいろお話をいたします場合に、今お話がありましたような点に重点を置いてやることがほんとうに公庫というものを長い目でやっていくに適切であるかどうかということについていささか疑問に思っておりますので、私は私なりに先ほどお話がありましたところの原資構成の問題、ここに今後も努力をいたしていきたい、こういう趣旨でございますので、どうぞ御了承をいただきたいのでございます。
  67. 赤路友藏

    赤路委員 よくわかりました。私の大蔵省に対する質問はこれで終ります。
  68. 久保田豊

    久保田(豊)委員 銀行局長にお聞きいたしますが、これは農林省にも連関する問題ですけれども、今農業関係というものは非常に大きなある意味において転換期にきておると思う。従ってこれに連関する金融の問題、特に金利の問題等は相当大きな問題になってきていると思うのであります。そこでお聞きしたいのは、これは農林省が本職であろうと思いますが、農業関係——これは林業とか漁業等においては相当違って参りますが、大体一般農業の場合の金利の基礎、こういうものについて徹底した検討をされているのかどうかということなんです。一般的に言えば、普通の金融よりは農林金融の方は、公庫の扱うものについては、長期であって低利である、こういうことになろうと思いますが、最近の状態では、農業生産が、ほとんど経済事業としては採算が立たないような状態が次々に出てきておるわけですね。実際においてその一番ひどい例は、たとえば野菜とかその他を作った場合は、御承知の通りかりに白菜を一反歩やるとしましても、これに対して肥料も相当かかる、いろいろの資金がかかるけれども、売った金はほとんどただみたいなことになってしまう。従って土地改良その他のいわゆる資本部分に対する金利とか利子なんというものは生み出す余地がなくなっているわけです。麦についてもそうです。ものによっては多少そういう余地のあるものがありますが、全般的には畜産やその他を含めてそういうことにだんだんなりつつある。これはどこから来ておるかといえば、今の不況とかなんとかいうこともありますけれども、工業の生産性といいますか、生産力が非常に急速に発展をしておる、農業の生産性が非常にもたもたして停滞をしておる、この差からくる基本的な問題があるわけです。こういう二重構造みたいなところでは、やはり農業に対する金利基礎というものについては、大蔵御当局もいわゆる一般金融のうちの特殊な一つとしての農林金融ということを常識的に考えられてやるということではなくて、もっと深く突っ込んで検討していただかないと、ほっておいても工業関係生産力はぐんぐん伸びていく、農業関係生産力は、多少伸びつつあっても、依然として非常な停滞をしておる。しかも農業関係生産力の拡充ということは、昔とは違いまして、みなこれは資金が要るわけです。その資金に見合うような利益というものはほとんど出てこないというのが最近の実情です。こういう段階で、ことしの農林白書等にもありましたように、工業関係生産力と農業関係生産力との年々大きくなってくるアンバランスを埋めていくということになりますと、農林政策そのものについても相当考えていただかなければならぬ。大蔵省の大体の考え方は今までの補助金というのはあまり効果がないから、補助金はだんだん整理して融資に切りかえるという方向をとっておると思う。これに対しては、御承知の通り、毎予算期になって、農林省はもちろんでありますが、農業団体からこれに対する大きな抵抗運動を起して今まで食いとめてきておるというのが実情です。補助金の使い方、あるいは流し方等についてもむだがあることはよく承知しておる。承知をしておるが、その反面において、特に最近のような状況の中においては、これは具体的な結論を申すわけではないですが、大蔵省もこの点については、単に従来の補助金が非常にむだである、だから融資に切りかえるということだけであって、融資の成り立つ基礎条件をなすいわゆる農業の再生産性といいますか、そういうものに対して、もう少し突っ込んだ検討を願わないと、この政策は行き詰まると思うのですが、こういう点について大蔵省としてはどういうふうなお考えを持っておるか。われわれが見たところでは、どうも農業というものは、補助金そのものを流してやっても、むだ使いばかりであまり効果が上らない、だからとにかく融資にした方が——金を出さなければならぬということになり、それに利子をくっつけて出すということになれば、農民の方も一生懸命になってやるだろうから、かえってその方が効率的に国の金を使うにはいいだろうということになるかと思いますが、最近の農業事情、特に日本の経済全体の中における農業の立ちおくれといいますか、こういう面から見ると、私たちはどうもそういう政策の基本考え方について大きな疑問を持たざるを得ない。補助金と融資関係はともあれといたしまして、銀行局長さんに特にお伺いしたいことは、農業に対しまする農林融資の基礎の利子なり何なりについては、その利子の成り立っている基礎についてどの程度の御検討を今までされておるか。あるいは農林省もここに渡部局区長が来ておられますが、私は両方からこれらについてどの程度の検討なり調査なりがされておるのか、この問題を具体的に御説明をいただきたい、こう思うのです。
  69. 石田正

    ○石田政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、これからの農林関係について資金を供給する場合の金利は何ほどが妥当かということを示せというお話でございますが、この点につきまして、率直に申しまして、私どのくらいの金利にすべきかということは一がいに申し上げられないと思うのであります。  それからお話がございました補助金との関係でございますが、これは私の方でも主計局と理財、銀行等いろいろあるわけでございますが、生計局が補助金を減らしてなるべく金融の方へ切りかえる、こういう考え方をとりました場合において、われわれの受け方の問題でございます。これは金融に持って参られましても、われわれの方で金融としてなかなか受けられないような面はどうも困る。大体補助金をやめて、それを金融に切りかえるなら、その金融をどこで見るのだと、どうしてやるのだということにつきまして、われわれの方として納得ができない限り賛成をしないという形でわれわれとしてはやっておるわけでございます。  それから、具体的に示せということで、私も農林関係の金融につきましてはよくわからぬ点もあるのでありますが、大体長期の資金につきましては、補助金等でやっておりましたものをだんだんと金融のベースヘかえていこうということで、農林金融につきましては、特別会計なりあるいはさらに金庫になった、こういう経過だと思います。それから運転的な短期の資金をどうするかということが一番の問題だろうと思うのでございます。そういうふうな金融につきましては、現在のところやはり組合金融の形をとっておるわけでございます。こういたしますと、やはりその組合における預金の金利がどうなるかということがまず根本になり、そういうことで、御承知の通りに、農林関係金利は預金金利が高いのでございます。そういたしますと、自然貸し出しの方の金利も高くならざるを得ない、こういうむずかしい問題があるのでございます。これをどういうふうにしたらよろしいかということにつきましては、率直に申しまして、ここをこうしたらいいだろというような確たる考え方を持っておりません。まことに恐縮でございますが、そういう状況になっておる次第でございます。
  70. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もちろん短期、長期、中期というように、農林金融の性格によって違ってくることもよく承知しております。しかし、払う方は最後は一人です。特に長期の資金で私ども最近よく感ずるのはたとえば政府の方は、土地改良をやれというので大いにやっても、今のような農産物価格でいきますと、補助金を相当もらってやっても、金利を払ったらなかなかやっていけないという面が相当出てくるわけです。特にこれからは最近の相当進んだ土地改良等をやると、やれないという面が出てくるわけです。もちろん補助金と資金を借り合せてやるのですから、ここらについては、長期の農林金融の持つべき任務といいますか、これらも相当考慮されなければいかぬ、こういう構造になっておることはわれわれもよく承知しております。しかしながら特に最近では工業関係と農業関係生産力の開きが大きくなってきておる。これが農家の収入減あるいは経営圧迫という格好になってきておるわけです。そういうことについて、先ほどの私の質問に対して、あなたは今一がいに言えませんというような簡単なお答えでございますが、その一がいに言えませんという点も、一がいに今すぐ結論を出せというのではございませんけれども、そういう点ももっと深く突っ込んで御検討をいただきたい。補助金との連関において、金利というような点、特に長期のものについてこれを十分考えていただきませんと、政府がせっかく片方において生産基盤を確保するといって看板を上げて、それで一生懸命土地改良しても、その土地改良資金でもって改良した土地をまた手放さなければならぬというような状況現実に出てくる。そういう点を私はもう一歩突っ込んでやっていただきたい。特に今までの場合は政府の方も、たとえば土地改良については、国営は国営で考える、県営は県営で考える、団体営は団体営で考える。それだけ見れば金利は安いかもしれません。ところが出す方の百姓はみな出さなければならぬということになりますと、問題はなかなか払えないということです。現実にあるのは、たとえば新潟県の亀田郷のごときは、最高時になると反当で四千数百円払わなければならぬということになる。これは正直の話今までの米価ではどんなにはじいたって出ません。これから先これに似た例が出ないとは限らない。土地改良もだんだんと程度が高くなって参ります。金がかかってくる。こういう点についてぜひ農林省も大蔵省も、特に銀行局長さんのごときは金利の方については相当のことをお考えになっておる立場ですから、そういう農業と工業のアンバランスからくる特に長期金融についての問題ということについて、もう一度再検討をお願いすべき時期にきておるのじゃないか、こういう意味で私はお聞きをしておるわけです。そういう点について農林当局なり大蔵省は再検討をされた事実があるかどうか。そんなめんどうくさいことはあと回しだ、原資を幾らやるか、何を幾らやるかということだけが今問題だというふうな、従来ありきたりのことでいかれるとちょっと困るが、そういう点についての今までの作業経過といいますか、そういうものがあれば一つお話しをいただきたい、こういうわけであります。
  71. 石田正

    ○石田政府委員 実は私も銀行局に去年の十一月に参りましたわけで、過去の経過がどうなっておるか申し上げるには適格者ではないと思うのでありますが、お話の点はだんだんと承わって、今後の問題だと思いますが、お話がありました点を頭に入れまして今後研究をしてみたい、かように思っておる次第であります。
  72. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 私の方では御指摘のように農業金融というものは、借りられる方の立場からいえば、生産力が低く収益率が低いわけですから、なるべく安くしなければならないということは農林省の変らざる方針であります。果してしからばいかほどにしたらいいかということは、公庫の金についてみましても、共同施設であるとか土地改良であるとかあるいは林業だとかそれぞれの収益率を一応計算いたしまして、それに基いて別々の金利を出しておるわけであります。しかし農業の生産力の伸張と消費の増加率はだんだん狭まってきておりまして、農産物の価格は特別の措置を講じなければ低下していく傾向になりますから、生産コストを下げる努力はしなければならないけれども、これは世界的な傾向で、どの国でも農業金利については問題になっておるのです。これは一般金利もそうでありますが、日本のように農業金利が高い国はどこにもないと思います。しかし日本の国は一般金利が高いので、それに特別な安い金利をつけるのでありますから、その金利を安くするための財源というものが必要になってくるわけです。その財源の多寡によって、たとえば改良基金の問題、公庫資金の問題、あるいは今度御提案いたしております経済基盤強化の法律に基いて公庫に六十五億の出資をして、その金から生む利子で土地改良の一部の金を三分五厘まで下げていく、こういうことも努力しておるわけであります。これは結局預ける方はなるべく高く預かってもらいたい、借りる方はなるべく安く借りたい、そのギャップを国が見てやらなければ安い金利は出ないのでありますから、それらの関係を銀行局なり主計局なり、とにかく農林省といたしましては農業生産の収益に合うように持っていく努力を今後とも続けなければならない、こういうふうに考えております。
  73. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それはけっこうですが、そんな抽象論はだれも承知しておるのですよ。だからそういうことの具体的な作業を現実にやっておるなら、長期の農林金融について、特に土地改良その他についてどの程度の金利負担力があるのかないのかということに対する調査なり検討があったら、資料を出してもらいたい。今のあなたのお話のような抽象論はもうわれわれはあっちこっちで耳にタコのよるほど聞いているのです。ところがそれで片づかないで、政府の方は土地改良をやれやれという。乗っかってやってみると、最後にはとても金が払えないという問題になって、しかも農産物の価格はだんだん落ちてくる。今までのように、土地改良をやれば増産になるから、これを勘定すると幾らになるという、こういういいかげんな勘定ではもうだめなんですよ。ですからそういう作業をやっておられるというなら、それに対する調査なり検討の材料をここに出してもらいたい。決してこれは農林省をいじめようとか、大蔵省をいじめようとかいうけちなものではありません。もう少し私はこの問題についてお互いにつっ込んでやっていかなければ、日本の農業の生産力のアンバランスがますますひどくなって立っていかなくなると思うので、この問題をぜひ一つ真剣に考えてもらって、そういう作業をやってもらいたい。やっておるならば、そういったものの資料を不完全でもいいからここに出してもらいたい。今まではわれわれは多くの場合において、何とかして補助金さえ取ればいいのだ、あるいは事業資金さえ取ればいいのだといって取って帰ってきても、さてやって数年たってみると、農民がそのときはやってよかったというけれども、金利負担なり現金負担なりがだんだんよけいになって困るという問題が出てきつつある。これが一般化してきては困るので、今のうちからこういう点についての対策をお互いに考えてもらいたいという意味で言っておるのですから、そういうものがあるのかないのか、あったら出してもらいたい。
  74. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 それはいろんな試算に基いてこれでなければならぬという資料はなかなか出ないのであります。これは農家経済調査でごらん願いますように地方によっても非常に違いますから、いろんな試算をいたしまして、一方財政負担の問題が出てきますから、それとにらみ合してやっておるわけです。御指摘のようにもう少しこまかい作業をして、そしてこういうものは現状はここまで下げたらいいのじゃないかということは当然やらなければいかぬ問題でありますが、これは私の方で各局とよく相談しまして資料を出していただかなければいかぬわけであります。今後やりたいと思います。
  75. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと資料要求をしておきますから、できるだけ出してもらいたいと思います。海外移住振興株式会社融資措置等を含む事業計画を報告してもらいたい。これは外務省関係だと思いますが、出ますか。
  76. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは外務省に請求して出すようにいたします。
  77. 中村寅太

    中村委員長 残余の質疑は明日行うこととし、本日はこれをもって散会いたします。     午後四時二十八分散会