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久保田(豊)
委員 そうすると、これで全部間に合わせる、こういうことですね。あとはやらぬ。今のお話ではそういうことですね。それではどうも、私どもは
滞貨金融とか
滞貨のたな上げというようなことはできないと思います。そこで、次に少し視覚を変えてその点を伺います。この前からのあなたの御説明だと、大体においてこの
資金の予想するくらいのワクで、長期に見れば今後いわゆる牛乳過剰という問題は出ないのだ。短期に、季節的に見ると特に冬場は多少の過剰が出るが、国民の消費構造の高度化の傾向が今後ずっと続けば、大体五年間に牛乳を倍にしてもスムーズに行くのだ。こういうお見通しのようです。しかし、これは相当危いのじゃないか。
乳価が今のように安くなってきますと、百姓の方も牛を飼うことは非常に困難になって、採算が合わなくなってきておることも事実です。従って濃厚
飼料のくれ方が少いから乳も出ないという傾向も最近は出ております。しかし大勢としてはあなたも御承知の
通り、特に最近は野菜その他の換金作物がまるでただでしょう。そこで
農民の大多数の動きというものは、いわゆる適地適産主義で政府が奨励したものがほとんど軒並みに全く採算が合わない状態。しかもこれがいつ回復するかというめどがない。市場の連中に聞いてみても、今年の大勢を切りかえるには、今年大暴風でもない限りちょっと変らないであろうと専門家がみんな言っております。おそらくこの情勢は続くと思う。従って
生産関係から言うと、どうしても
乳業、特に
酪農という方向が、政府の奨励いかんにももちろん大きく左右されますけれども、大勢としては今
農民の大きな動向として出てきます。これはわれわれ率直に認める。従って、年々牛乳の
生産量というものはふえていく。政府の計画
通り五年後に千四百万石になるかどうかは別問題としても、大勢としてはふえていく。かりに政府の計画
通り行ったとした場合、消費面があなたの言うように楽に行くかどうかということは非常に疑問だと思う。御承知の
通り、日本
経済の全体の伸びが六・幾らでしたか、これだけ順調に仲び、国民一人当りの所得が五・八%仲び、農業
関係も三・だかずつ伸びる、そういうすべていいことずくめの前提ですが、その
通りいけば問題はない。それはそうでしょう。そういう中でもって、あなた方の
考えておられるように、牛乳の消費量一日三十九グラムが六十何グラムになるという紙の上の計画だけ立っているならば、すべてけっこうずくめでうまくいくが、しかし
現実はすでに政府の予定した国民
経済の伸びは、この不況によってもう頭打ちである。しかも調整が六日ごろに終るとか八月ごろに終るとかいろいろ言っておるが、これだって明確な見通しがつかない。すでに
経済全体の見通しが悪ければこういうことはほとんど当てにならない。しかも国民の間では、やはり大きく貧富の差が開いてきている。大体大衆のふところというものはだんだん苦しくなってきている。確かに消費性向として
乳製品なり肉なりの消費はだんだんふえておりますけれども、国民のほんとうの所得というものは実際問題としてそう大してふえておらないように思う。一部の連中は別です。そういう中で万事政府の立った五カ年計画がそのまま実現できるように
考えておられることは、牛を飼う連中から言ったら迷惑しごくです。二十九年まではそういうふうな
指導をやって、朝鮮戦争後の不況でもってつまづいたわけです。資本主義というか、日本
経済全体が、戦後今まで回復
過程でやってきたのとは状態が違ってきているように思う。これは
議論をすれば幾らもある。しかし、いずれにしても、あの五カ年計画の数字を前提にして、短期のあれだというふうなことでこの問題を退治しようというところに非常に問題があると思う。今年は三十一万石の
滞貨ができた。来年は幾ら
滞貨ができる予定ですか、見通しがついておりません。今年は三十万石だから来年は百万石増で大体四十二、三万石の
滞貨ができるだろう、こういう簡単な計算では私はいかないと思う。もっと大きな波が来るので、この点についての見通しの甘さというか、これは政府
自体がすでに立証済みです。その政府の
経済見通しの一端を真に受けて、これを立っておられるわけです。もっとも政府の役人なら、政府全体がそう言っているのを私だけは違った意思ですということは言えないでしょうが、そこらに非常に大きな問題をはらんでいるように思います。もちろん
生産費がどんどん安くなれば消費がふえていくことは明らかです。けれども
生産費を安くするという方向は、あなたが
考えておられるような五ヵ年間に濃厚
飼料が六〇%から二〇ないし三〇には全体として減らない。その方の強力な
生産指導もしておられない、
現実には。あなた方としてはやっているつもりかもしれないけれども、
末端から言うとそういうところまでは行っていない。たとえば今度
酪農の
指導員等を作ったりしているけれども、その
指導員の腕はわからないではありませんか。今年から勉強してぼつぼつやろうというのでしょう。開拓普及員で牛の問題のわかっている連中が
末端に何人おりますか。これから牛のことを勉強してという連中ばかりで、三年や四年では実際にできません。そういう現状です。相当長期に見ても、あるいは特に短期に見た場合においては、大きなアンバランスが出てくる。このアンバランスをどうしたら克服できるかということを、この程度でなくもっと突っ込んで
考えてもらわなければいかぬと思う。それらについての
対策、今後の見通しについてはあとで触れますが、あなたなり政府なりの見通しはきわめていいことずくめ、大したことはなくて、ちょっとしたあれが出てくる程度だから、それに対応するだけの措置をとっておけばいいというふうな態度のように思う。これでは不十分だと私は思う。その結果は、結局
生産者なり何かが大きくこれを受けると思うが、
指導についてもう少し突っ込んだ
——五カ年計画の数字をべらべら並べて、これでいくというような程度のことは、だれだって知っていますよ。政府のことしの計画
自体が、五カ年計画の
通りいかないじゃないですか。しかも来年以降の見通しがどこにあるのです。農業
関係だって同じです。
酪農関係だって同じです。これを
一つよく勘案をして、もう一度見通しを聞きたい。