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1958-03-26 第28回国会 衆議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十六日(水曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 川村善八郎君 理事 吉川 久衛君    理事 笹山茂太郎君 理事 助川 良平君    理事 芳賀  貢君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       石坂  繁君    大石 武一君       大野 市郎君    木村 文男君       清瀬 一郎君    小枝 一雄君       椎名  隆君    鈴木 善幸君       中馬 辰猪君    永山 忠則君       丹羽 兵助君    石田 宥全君       石山 權作君    稲富 稜人君       久保田 豊君    楯 兼次郎君       中村 英男君    細田 綱吉君       山田 長司君  出席政府委員         農林政務次官  瀬戸山三男君         農林事務員         (振興局長)  永野 正二君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君  委員外出席者         農 林 技 官         (振興局普及部         長)      徳安健太郎君         農林事務官         (畜産局酪農課         長)      松田 寿郎君         農林事務官         (畜産局飼料課         長)      森   博君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月二十五日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として柳田  秀一君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員楯次郎君及び柳田秀一辞任につき、そ  の補欠として島上善五郎君及び芳賀貢君が議長  の指名委員に選任された。 同日  芳賀貢君が理事補欠当選した。     ————————————— 三月二十四日  分収造林特別措置法案内閣提出第一四五号)  (予) 同月二十五日  農地改革による旧地主に対する補償反対に関す  る請願外十二件(稻村隆一君紹介)(第二二二  二号)  狩猟法の一部を改正する法律案成立促進に関す  る請願外一件(大村清一紹介)(第二二六五  号)  自作農貯蓄組合法制化に関する請願笹山茂  太郎君紹介)(第二二六六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  酪農振興基金法案に関し参考人出頭要求の件  酪農振興基金法案内閣提出第一一六号)  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣  提出第一四二号)      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選任についてお諮肥りいたします。委員の異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、その補欠委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、芳賀貢君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 中村寅太

    中村委員長 次に酪農振興基金法案を議題といたし審査を進めます。  この際お諮りいたします。本案について密接なる利害関係を有する金融機関乳業者及び生乳生産者等代表者参考人として出頭を求め、その意見を来たる二十八日の委員会において聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認めます。なお参考人の選定につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次に本案について補足説明を求めることにいたします。谷垣畜産局長
  7. 谷垣專一

    谷垣政府委員 酪農振興基金法案につきまして補足説明をさしていただきます。  さきに政務次官が大体提案理由の御説明こいたしましたが、若干補足さしていただきますと、御承知のように昨年は昭和二十五年に比べまして、乳牛の頭数で約三倍、生乳生産量で約四倍程度上向線を描いておる状況でございます。このように非常に酪農が伸展をしてきつつあるわけでありますが、今後さらにこれを健全に発展させて参りますためには、生乳生産基盤を強化いたしますとともに、また他方生乳取引特殊性からきますところの欠陥を克服いたしまして、安定した酪農経営を級持させることがぜひ必要であるかと存じます。生産基盤流通関係とあるいは消費拡大というふうに各方面の施策が必要でございますが、その重要な一つといたしまして、このような最近の非常に目ざましい酪農の発展の陰に、需給状況が一時的にしましても不均衡が生じてくる、こういうような問題がひそんでおるわけでございます。生乳取引関係を見ますと、需給関係から見まして、まず季節的な変動がございます。夏は生産が減少しますのに比べまして消費伸びるという傾向があり、冬は消費が減って生産がふえるという、一時的な滞貨がふえるという現象がございます。さらにこれを数年間にわたって考えてみますと、大局的には生産消費均衡しつつ伸びて参っておる現状でございますけれども、たとえば昭和二十九年の秋に起きましたような、あるいはまた昨年秋から生じておりましたような、数年に一度というような状況かなり需給の不均衡が生じて参る懸念があるのであります。御存じのように生乳需給に合せて貯蔵しておくことかできません、生産されますとすぐに処分をしなければならないものでありまして、従いまして需給の不均衡がある程度以上になりますと、乳価の過度の低落といったような酪農経営を危うくする事態が引き起されるおそれがあるわけでございます。たまたま昨年の下半期におきまして、牛乳乳製品需給の不均衡がある程度見通されるような折に、昭和三十年の砂糖消費税法の改正に伴いましての大力ン練乳等消費税免税措置がなくなるという状況になったのであります。九月末でこれが撤廃されるということになりまして、これが今後の乳業に与えまする影響を考慮いたしまして、政府の方といたしまして、牛乳製品需給調整対策につきまして酪農審議会諮問をいたし、いろいろの案を考えて参ったわけであります。酪農審議会諮問いたしまして、その答申をいただいたわけでありますが、その答申の重要なものといたしまして、乳業者または生乳生産者団体の必要といたしまする資金借り入れにつきましての債務保証をさせるために酪農振興基金を設置することの要請があったのであります。ここにおきまして政府はそれらの答申参考といたしまして、牛乳乳製品需給の不均衡から生じまする悪影響を緩和しながら、安定した酪農経営維持をはかりますために、一方におきましては牛乳乳製品学校給食を実施いたしまして、滞貨悪影響を緩和し、かつは学童の体位の向上と、さらには牛乳乳製品国民大衆の一般的な大衆食となりまするところの発展すべき礎石を置くようにいたしたい、こういうような施策をやります一方、他方酪農振興基金設立いたしまして、乳業者に対しましては生乳取引に要しまする資金あるいはまた大カン練乳免税措置の撤廃に伴いますところの設備資金融資保証というような点の融通を円滑にいたし、生乳生産者に対しましては、生乳生産に必要な資金融通を円滑にいたしますることによって、乳価の暴落なり、あるいはまた乳牛飼用の放棄なりの事態を回避いたしまして、生乳取引関係が安定いたしまして、その基礎の上に維持されるように企図いたしたのであります。このような趣旨経緯から立案されましたこの法案は、大よそ次のような構成及び内容を持っておるのであります。  第一は酪農振興基金性格でございますが、政府民間とが共同で出資いたしまして設立する特殊法人でございます。その趣旨は第六条から第十三条までに規定されておりまするように、設立当初に政府出資いたしまする五億円と、民間出資金との合計額資本金になるわけでありまして、これが基金業務を行いますための財産的基礎になるわけでございます。その額は設立当初は最低六億円でございますが、これを民間におきまする資本の充実でありますとか、あるいは生産の伸張に伴いまする資金需要の増加と見合せまして、民間出資は漸次これを増加して参り、昭和三十八年の三月末までには合計十億という姿といたしたい。またそうするように基金自体責任を持ちまして努力し、政府も指導監督する責任を持つわけでございますが、これが附則第七条並びに第八条の趣旨でございます。  第二に政府以外の出資者の問題でございますが、これは第八条に列挙されておりますように、大別いたしまして乳業者生産者とに分れると思います。乳業者につきましては、第一はみずから乳業を行なっておりまする法人または個人でありまして、この中には農業協同組合あるいはまた乳業を行なっておりまする連合会も含まれております。また規模の大小を問いませず、あらゆる乳業者がこの中に包摂されておるわけでございます。第二は乳業者の組織いたしまする中小企業等協同組合でございますが、現在乳業関係組合はただ一つでございまして、この組合では組合員の製品を共販しようとする具体的な動きもございますし、またその団結を強めますために組合としても出資するという態勢をとっております関係から団体加入を認めたわけでございます。第三の乳業着たる農業協同組合または農業協同組合連合会が直接または間接の構成員となっておる農協連合会も、これと同様の趣旨で、乳業を行なっておる農協あるいははその連合会構成員としております連合会団体加入を認めたのであります。他方生産者につきましては、この基金目的生乳取引の改善を目途といたしております以上、それを確保する措置が必要になるわけでございます。従いまして、単に乳業者のみに債務保証を行うにとどまらず、それが確実に生産者に支払われる必要がございます。従いまして、たとえば乳業者の中の未出資のものとか、あるいは出資額不足のために、乳業者であっても十分なる信用がないとかというような理由から乳業者に対しまして債務保証が行われない場合には、それと取引をいたしております生産者は困ることに相なりますので、あるいはまた必要がありますれば生産者みずからが信用力を持ちまして相手方に対して優位に立つということも考えられるのでありまして、従いまして生産者基金出資して債務保証を受けることとしておくことが必要になるわけでございます。  第三に基金業務でございますが、上述いたしました出資者につきまして第二十九条各号に掲げておりますところの資金借り入れ等による債務保証を行うわけでございますが、この資金乳業者につきましては乳代支払い資金等経営資金が大部分でございますが、これとともに乳業経営合理化いたしますところの設備資金、たとえば現在のところ考えておりますのは大カン練乳等加糖乳製品製造業者が、砂糖消費税撤廃等に伴いましてその設備市乳あるいは粉乳等製造設備に転換する必要が生じておりますが、そのような資金、あるいはまたこれらの製造設備を新設いたしますところの資金、これらが対象になるわけでございます。団体加入の場合にはこれらの資金をその組合員あるいは構成員に対しまして転貸するための資金ということになるわけでございます。一方生産者につきましては、生乳の共販などを行なっております農協あるいは連合会乳代の立てかえ払い資金が対象になるわけでございます。これは上述いたしましたように、基金性格あるいは目的乳業者経営維持あるいは安定のための資金ばかりでなく、生産者経営資金も見てその経営向上をはかる必要があるということを眼目としておりまする関係から出て参ったわけでありまして、生乳販売代金乳業者から受け取るまでの間におきまするその代金を限度といたしまして生産者の必要な生産資金を確保させる、こういうことになるわけであります。  第四に、基金機関につきましては、執行機関として理事長及び理事監査機関として監事、諮問機関として評議員会があるわけでございます。理事長及び理事二名は常勤になるわけでありますが、これは実際に基金業務を担当する幹部になるわけでございまして、第二十三条におきまして、常利事業に従事することを、禁止する旨の規定を設けてございます。こういうふうにいたしまして、公正な第三者的な立場にある者が選任されることを期待しておるのであります。このほかに非常勤の理事七名以内を予定をしております。これは出資者でありますとかその他学識経験のある者から選任いたしまして、その実際上の経験、知識あるいはまた出資をいたしました者としての立場というものを業務運営の上に生一かしていきたいと考えているのでございます。また諮問機関として設置されることになります評議員会は、出資者である乳業者あるいは生産者のほかに、広く牛乳あるいは乳製品等流通消費に関します学識経験者をもって構成いたしまして、その意見基金業務運営に適正に反映させる、こういうようなことになってございます。従いましてこれらの重要事項について理事長諮問に応じて審議をする、こういうわけでございます。  第五に、基金に対します監督と罰則の点でございますが、一定のこういう政策目的の実現のために政府出資しております団体でございまして、会員とかあるいはその総会というような議決機関がございません。従いまて所管行政庁はこの基金運営責任をもって監督する必要があるわけでございますが、本基金は他の政府出資いたしております出資団体におけると同じように、予算、決算及び事業計画資金計画につきまして農林大臣の認可あるいは承認を受けさせることといたしております。またこれらの財政的な問題につきましては大蔵大臣に協議をその際にいたす、かような規定を設けてございます。また罰則も同様に運営の厳正を期しておる、こういうことでございます。そのほか財務及び会計につきましては第五章におきまして、運用の基本準則を定め、付則におきまして法人税その他国税あるいは地方税免税措置を講じておる、かような次第に相なっております。  以上簡単でございますが補足説明を終ります。
  8. 中村寅太

    中村委員長 次に質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。石田宥全君
  9. 石田宥全

    石田(宥)委員 酪農全体について最近急速に非常な伸びを見せておるのでありますが、最近の進展のテンポからすると、ここ数年の後には非常なだぶつきが出てくることは当然なんであります。これは実は大臣政務次官に将来の見通しやら、基本方針を伺わなければならいと考えておったわけでりますけれども、一体将来このままにしておいたならばどの程度までこれが進展していくものであるか、また今の需給状況から見て、やはりこれを抑制するところの措置を講じなければならないような事態が生ずるのではないかということが心配されるわけです。今後の酪農見通しと、それに対する局長としての考え方を承わりたいと思います。
  10. 谷垣專一

    谷垣政府委員 最近の生産伸びは、御指摘のように非常に躍進的なものがあるかと思います。このテンポで参りまして、大体昭和三十七年には現在量のほぼ倍の生産があるもの、かように見通しを一応立てております。その際の消費の問題でございますが、これまでの状況におきましては、消費生産は大体順調に経緯をしてきておる、かように考えております。ただその間にいろいろと市乳伸びの問題あるいは乳製品の中におきます種々なる品目上の消費増大の変移、そういうものがもちろん現われております。しかし大観いたしまして、大体におきます状況は、まずこの数年に若干の需給のアンバランスは生じておりますが、問題なく過ぎておる。今後の五年後におきます見通しを考えました場合に、大体ことしが七百三十五、六万石のものでございまして、その倍のものは五年後にできるということを考えてみますと、これらの見通しになるわけでございますが、これは長期経済計画見通し基礎になります国民所得増大あるいは国民食糧構成の変化というようなものをそれぞれ推定を、いたしてみたのであります。またあるいは食糧構成上からきますところの諸外国等の例を考えてみたわけでありますが、さようなことから推測いたしまして、この程度需給増大は十分見通し得るものである、かように私たち見通しを一応立てておるわけであります。もちろんこの関係におきましては、今後ともに消費増大という面につきましてのいろんな手を打つ必要があろうかと思います。たとえば市乳消費増大いたしますための種々なる方策、あるいは乳製品等におきましてもこれを増大いたさせます方策というような種々なる方策をそれぞれとる必要があろうかと思いますが、今のところ私たちの五年後の見通しにおきましては、大体ここらで大丈夫ではないか、こういう考え方でやっていっておるわけであります。
  11. 石田宥全

    石田(宥)委員 諸外国等と比較いたしますと、日本国民生活程度文化程度から見て、日本市乳消費の量は非常に低いように考えられるのでありますが、これは一面からいうと、市販価格が諸物価に比較して高いということが一つ問題点ではないかと考えるのであります。もう一つは、やはり価格が高いということが、一面には農家消費量伸びが足らない、自家飲用というものが非常に低い、そういう問題がありはしないかと考えるのです。そういう点から考えると、もっとコストを引き下げるということに重点を置かなければならないのであって、農家の方は相当に最近考えておるようでありますけれども、濃厚飼料価格の問題がやはり一つ問題点だと思うのでありまして、大部分自家飼料でまかなうようにしなければならないことはわかっておる。またそういう方向には向っておるけれども、何といってもやはり濃厚飼料相当必要とするのでありますが、飼料に対する対策がはなはだ消極的ではないか。もう一つは、消費者に対する市販が、中間経費マージン等で少し高過ぎはしないか。そういう問題にメスを入れないと、ただ末梢的に滞貨が現われたからそれに対してどうするということでは、根本的な解決にならないのではないか、こういう点を考えるのであります。飼料対策についての現状と、将来の問題。それから消費面におけるいわゆる市販の問題、こういう点についてはどのように対策をお考えになっておられるか。
  12. 谷垣專一

    谷垣政府委員 ミルク国民大衆食になって参る、そのためには生産コストを安くし、また消費者に渡します価格を安くしていく必要があるということは御指摘の通りだと思います。それで生産面、主として農家の方におきます生産費の低減、合理化という問題は、今御指摘になりましたように、何と申しましても、酪農では現在生産費の半分がえさ代になっておる状況でございますから、どうしてもこの飼養費の中のえさの問題を考える必要があろうかと思います。このえさの問題は、結論的にはやはり自給飼料を増産させるという形が主流になるかと思います。自給飼料の利用ということになりますれば、当然に飼料作物あるいは牧草という問題に入って参るわけであります。従いまして、当然従来の田畑飼料作物あるいは牧草を入れる。これは従来の田畑自体地方回復のためにも役立ちますので、そういう対策、並びに従来の草地あるいは放牧地と申しますか、粗放な経営にゆだねられておりましたものを高度な牧草地帯にかえていく。こういう努力が大きく要請されるわけだと思います。この問題は、長期五カ年計画におきましても私たち一番重要な問題の一つとして取り上げて参ったわけでありますが、これらが着実に伸びていきますれば、ある程度そういう面における生産合理化が行われるかと思います。現在飼料費の中で購入飼料に依存しておるものを全国的に推定いたしますと、大体六割程度になっています。これを集約酪農地域におきましては最終的には八割程度までに飼料自給率を上げていく、こういう目標で指導いたしておる状況でございます。従って、まだ事業は端緒的なものではございますけれども、農家におきましても、かなり飼料を自給化することが、単にミルク生産費を安くするだけでなく、地方回復ということをも加えて、この問題が逐次浸透していく大勢にあると思っております。なお政府の方として考えました施策といたしましては、この牧草でありますとか、そういうものの種子を確保する方策、それから従来の草地牧草化するという方策、三十三年度からはこの草地改良の問題を、従来の一種の見本展示のようなやり方から事業化する方向に一歩を踏み切ってやって参りたい、かような考え方で進んでおります。  なお、消費者に届きますまでの流通過程の中におきます重要な問題といたしましてはこれを加工いたします際の生産費の低下という問題があるかと思います。これが日本におきます一番欠点と申しますか、そういうものは飼養密度が非常に疎であるので、一定個所密度を、高くいたしまして、そしてそれに対する飼養管理費あるいは集乳費合理化する、こういう形でこれを進めて参りたい、かような考え方に進んで参っております。消費増大につきましては、御指摘のありましたような点で、学校給食やあるいは集団飲用というような面につきましての拡大を考えていく必要があるではないか、かように考えておる次第であります。
  13. 石田宥全

    石田(宥)委員 自給飼料の問題は、実は最近ぼつぼつ草地改良その他が実効を奏して参ったようでありますが、さらにもう一つの問題としては、特にこれは北陸、東北地方の問題ですが、水田酪農に今入ろうとしておる状況です。二毛作可能なところが二毛作ができないでおって、しかも表作影響するような裏作は農民がなかなか好まないのでありますが、飼料作物ならば表作影響がなく、しかも土質の改善等に資するところが大きいので、そういう方向に今向おうとしているときに、現在の乳価の値下げという問題が起ったことは非常に憂うべき現象だと考えておるのであります。しかしこれはこれで既定方針としてお進め願いたい。  次に、購入飼料の問題。何といっても全国的には六〇%程度のものが購入飼料を使っているのでありますが、御承知のように、ふすまやぬかというものが他の物価と比較して高い。それがために、法律があって、外国から輸入した飼料をもってその需給のバランスをとろうということになっておるのでありますが、どうもこれが思うように運営されておらないうらみがある。もちろん予算の総額が少いということもあると思いますけれども、必ずしもその運用が適切になされておらないのではないか、かように考えるわけです。ここに伺いたいことは、輸入した飼料が今日適切妥当な経路を経て酪農家に届いておらない。この点はかなり強く批判を受けておるようでありますが、これについて根本的に配給経路を変更して、格安に酪農家の手に入るようにする意図を持っておられないかどうか、伺いたい。
  14. 谷垣專一

    谷垣政府委員 酪農家に渡ります購入飼料のうち、特に価格の問正題が大きく響いておりますものはふすまであろうかと思います。もちろんそのほかのえさにつきましても問題はあろうかと思いますが、ふすまがやはり最近におきます高騰その他を演じました重要な問題であろうかと思います。ふすまにつきましては、これは海外から入れまして、そして国内のふすまの相場を冷やしていくという方式をとっているわけであります。これは一昨年のスエズの問題のときに輸送が狂いまして、非常に需給の逼迫がございました。従いましてふすまの価格が上ったのでありますが、その後海外からの輸入に全力を尽して参りまして、また政府の方の買い上げいたしますものもだいぶ数量を増して参っております。あるいは民間輸入相当にふえております。最近におきましては御存じのように、ふすまの相場は下る態勢になっております。政府の手持ちあるいは海外からの輸入の肴船が相当にふえておりますので、大体におきましてそれらの価格は先安の状況を示しております。  これらの配給のルートの問題でございますが、政府の方から払い下げますえさは、大体におきまして競争入札の形でおろしておるわけでありますが、特にそれぞれの実需者団体指名いたしまして、そうしてこれを競争入札の形でやっていく、全購連でありますとか、あるいは全蓄連でありますとか、養鶏運でありますとか、あるいは配合飼料工場向け飼料を扱う日本糧穀株式会社であるとか、五つ、六つの実需者団体に対しまして、競争入札の形でこれをおろしておるわけであります。ただふすまにつきましては、これはふすまがえさ以外の用途に流れる危険が少いということ、あるいはふすまの市況を迅速に調整する必要があるというようなことから、現在ふすまに関しましては一般競争入札という格好にいたしておりまして、指名競争入札の形をとっておりません。それでこれが末端の農家に参ります場合の流通経路の問題でございますが、これは何分政府の方から渡しますところのえさというものは、国内そのもので入って参りますえさに比べますと、全体の数量から見ますと、その一定部分しかないわけであります。従いましてこの価格だけによって、末端の農家価格をそのままで渡すというわけにはなかなかいきにくい状況があるわけであります。これはそれぞれの系統機関によりまして配給されるそのコスト等につきましては、私たちも末端の受取価格が幾らになっておるか、中央からは幾らで渡しておるかというようなことを随時調べております。そういうような形で、まず順当に現在配給がなされておるというふうに考えておるわけであります。  なおこのほかに、低質小麦をふすま専門工場に委託いたしまして、ふすまの歩どまりを多くいたしましたふすまだけの生産工場を、三十三年の一月からやっておりますが、これに関しましては行き先につきまして指定をいたして参りたい、かような考え方でやっておるわけであります。
  15. 石田宥全

    石田(宥)委員 特殊の需給調整を目的とする飼料の取扱いは、競争入札になれば、どうしても市販に引きずられてしまう。しかも量が少いものでありますから、ぐんぐん引きずられてしまってつり上げられることになるので、そういうことでなしに、これはやはり特別の配給の形をとって、むしろ市販を動かすようにしなければならない性格でなければならないのですね。だからそういう点については、さっきも言ったように量が少な過ぎるのではないか。これを相当大幅に金額も増額いたしまして、その量をふやしておいて、そうして特別配給のような形をとることでなければ、市販を引き下げるという役割を果すことはできない。そういう点について根本的に考え直す必要があるのではないか。何も局長は遠慮することはないから、どの程度あったならば、ある程度市販を左右し得るか、そういうことについての考えがあると思うのですが、予算をどの程度に伸ばし、どの程度量があれば価格が市価について多少の影響を及ぼし得るかということについて一つお考えをお聞きしたいと思うのです。
  16. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御存じのようにえさの資源は、実は非常に種々雑多にわたっております。おそらく全体のえさの計算をいたしますと、国内産その他のえさに参りますものを、濃厚飼料だけに考えましても約五百万トンくらいになるのではないかと思います。その中で輸入をいたしますものはこれはそう多くはない、五、六十万トンのものが輸入になるわけでございまして、やはり主体は国内に生産されますいろいろなもの、あるいは残滓類等というものが、その主体にならざるを得ないのであろうと考えております。ただ今御指摘になりましたように、えさそのものの払い下げその他の問題につきましては、私たちの方といたしましての従来の方針は、先ほど申しましたような実需者団体に対します指名競争入札の形にいたしております。ふすまにつきましては市況を調整する必要がございましたので一般競争にいたしておりますが、ただ先ほどつけ加えて申し上げましたような、ことしから新しくやろうといたしております、また一部分すでに実行いたしておりますが、ふすまの加工専門工場の製品、これは今御指摘のような形で指名いたしました団体に渡していく、かようにいたしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 麦は御存じのように、これは公定で処置されておるわけですが、食糧庁の方と連絡を十分にされて、その点やはりえさについてはある程度価格を抑制する措置をとればとり得るのではないかと考えるのです。小麦粉と比較して非常にこれは高いのです。また今の麦または小麦粉の価格関係からいうと、製粉業者も製粉の方であまり利益がないという状態だから、ふすまで少しかせごうというような面も現われておるのですが、そういう価格全体の関係を調整するということについて努力はされておるかどうか。
  18. 谷垣專一

    谷垣政府委員 ふすまの問題も結果的にはやはり麦価の問題いかんになるかと思います。御存じのように海外の麦価は安い。国内の麦価はある程度高い、こういうような格好になっておりまして、ふすまだけの立場から申しますれば、海外の麦がそのまままちらに入ってくるという格好になりますと、ふすま自体は非常に安くなる、こういう格好になりますが、しかし現在の麦の価格体制というものは、国内の状況その他そういうわけにいっておりませんので、従いまして麦価の対策というものが現在の状況を前提にいたしまして、そのワク内でふすまをどういうふうにするか、こういうことを考えざるを得ないと思うのであります。そういう立場の限定を置きまして、それぞれ考えをめぐらしていく必要がある。そこで、先はど申し上げましたような外国の低質小麦を入れまして、そして従来のふすまの歩どまりから申しますと、二五%くらいのものを六〇%くらいにしてしまうというような形でふすまを増産させていく。これは、今御指摘のありましたような製粉との関係を一応切り離しまして、ふすま増産のためだけの専門工場という格好にいたしまして、ふすまの価格の低落をさせる材料にして参りたい。これらの動きが今後どの程度まで伸び得るか、ふすまの需要は非常に多いのでありますが、低質小麦そのものの需要が限度がございまして、どの程度まで伸び得るか、できるだけこれは伸ばしていって、今御指摘になりましたような点の牽制をしていこう、かように考えております。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 今の政府手持ちの飼料というものはどの程度ありますか。それから従来、時期的に見て払い下げというものをどういう時期にやっておられますか。それからもう一つは、政府で取り扱っておる飼料の経理の内容をちょっと伺いたいと思います。
  20. 谷垣專一

    谷垣政府委員 現在の手持の数量は、今ここに数字がはっきりしたものがありませんので、あとでまた御連絡させていただきたいと思いますが、三十二年度の、特にふすまについて申し上げますと、政府の方で輸入いたしましたものが約八万八千トンほどございます。これはふすまそのもので入れております。それを今までに約八万トンほど売り渡しております。そのほかに民間からのふすまそのものの輸入が約五、六万トンございまして、これが最近それぞれ若人いたしております。そういう状態になっております。政府の手持ちの数量は、最近で見ますと、今一番手持ちを持っております。そういうような状況で、かなり今ふすまの先安の相場が出ておる、かように考えておりますが、こういう状況をできるだけふすまの最盛期、最需要期その他にまで及ぼしていきたいと考えております。  それから経理の問題でございますが、これは御存じのように食管の特別会計の中で経理をされており、従来はいわゆるどんぶり勘定のような格好でやっておりますが、三十三年度は勘定別にはっきりした区分になって参ります。飼料といたしましての経理は、それによってかなり明確になってくる、かように考えております。
  21. 石田宥全

    石田(宥)委員 局長、遠慮されておるのかどうか存じませんが、先ほどの輸入飼料の問題ですが、予算が足りなければ、予算をどの程度にふやして、どのくらい量があれば、市価に対してある程度影響を与え得るかということについてのお見込みを伺ったのですが、どうなんですか。
  22. 谷垣專一

    谷垣政府委員 これは三十三年度、私たち計画をいたしましたときに大体算定をいたしたわけでありますが、ふすまの供給量はかなり大幅にふやしているわけであります。従ってふすまに関しては大体これでいけるのではないかと思います。もちろん、たとえば米の豊作がございますれば、国内の麦の消費が少くなりますから、従ってそういう影響がまた起きることと思います。そういう場合にはまたふすまに対する対策、ふすま輸入等をふやす必要が生じてくると思いますが、大体需給計画から申しまして、今の程度でやっていける、かように考えている次第であります。
  23. 石田宥全

    石田(宥)委員 最近若干下向いているというのは、これは二回にもわたって乳価の値下げ等があって、酪農家の方も高い飼料では採算がとれないということで、乳量を落しても濃厚飼料を使わないというような傾向からきているので、政府施策よろしきを得て下向いたものと考えられることは、これは非常に考え方が甘いと私は思うのです。今後このまま放任しておいても、乳牛はどんどんふえていくのですが、ふえればふえるほど需給のバランスがとれなくなって、やはり上向くというのが常態なんですから、そういう点はそんな甘い考えでなしに、今後の対策を立てる必要があると考えるので、少しも遠慮されることなしに、予算が足りなければ予算の増額を要求さるべきだと思うのです。そういう予算の増額についての要求をする必要はないというようなお話ですけれども、私はそうではないと思う。やはりその面でもっと大幅に増額をやって、市価の暴騰を押える役割を果すように配慮されなければならないと思うのですが、どうですか。
  24. 谷垣專一

    谷垣政府委員 三十三年度に政府海外から買い入れようとしております数量は、約五十三万トンになっております。三十二年度におきましてはこれが三十九万トン、実績は三十万トンくらいでございます。それで海外から買い入れまして、それによって操作し得る政府計画というものは、かなり上回っていると考えております。もちろん国内の畜産が盛んになって参り、国内における飼料需給率がそれに十分対応していかない場合には、海外からの飼料輸入は、どうしても考えなければならないわけでありまして、そういう必要がございますれば、もちろん現在の予算規模で満足するわけではございません。  それからえさ価格の問題でございますが、確かに卸の価格と、それが末端の消費者の受け取ります価格との間に、価格の伝わって参るのに時間的ずれがかなりあるように思っております。ふすまの最近の卸相場の下落が、末端においてそのままの価格が出て参るのには、その間に若干の時間的差と、それからそのままの形ではなかなか現われにくい、中間における流通経路の問題があろうかと思いますが、今後もできるだけ価格の安定するように努力を進めて参りたい、かように考えているわけであります。
  25. 安藤覺

    ○安藤委員 ちょっと関連して二、三点お尋ねしたいと思いますが、第一点は、自家飼料の問題でありますけれども、先ほども石田委員が言われましたように、政府自家飼料の奨励をなさっておりますし、農家も、あまりに購入飼料の値段が高いために、何とかして自家飼料の比率を幾分でも多くいたしたいという考え方になってきておりますにとは、両者の考え方が偶然にも、あるいは政府施策よろしきを得てか知りませんけれども、一致したことはまことにけっこうな傾向だと思うのであります。そこで先ほどおっしっやておられました牧草の種子の播種についての奨励方策を講ぜられることはまことにけっこうであります。さらに草地の企業化を試みるということを言っておられたが、その草地の企業化とは一体どういうことなのですか。私の聞き違いで、事業化ですか。
  26. 谷垣專一

    谷垣政府委員 事業化です。
  27. 安藤覺

    ○安藤委員 それは具体的にはどういうことを、やられるのか伺いたい。  それから第二点、今酪農家が一番切望しておられるところのものは、自家飼料を作りたい、作りたいのであるけれども、それを作ればそれにやはり課税される、そうして生産した乳代にも課税される、何とかして、せめて牧草飼料を作っている畑のその裏作だけでも免税するという方法は講じてもらえぬかという声が相当強いのでありますが、どうせここでも自家飼料の奨励をされようとするならば、思い切って当局は近き将来においてこれに手を染められるほどのお考え方はないか、またそれをやられる勇気を持ち合しておられないか。これが第二点。  第三点は、往々にして、たとえば私の県のごときもそうでありますが、反か二反、はなはだしきに至っては五畝の畑を耕作しておって、そうして五頭、六頭、七頭という乳牛を飼っさおる、しかもそれが一種の酪農組合員としてれっきとして存在している。当局において考えるところのいわゆる標準的運営という酪農家というものは、畑の六、七反ないし一町の耕作に対して多くて三頭ないし四頭くらいのところではないかと私は想像する。しかるときに、にういった基本的な考え方からずいぶんはずれた二反か一反半の耕作しかないのに、五頭、六頭の牛を飼って、しかもそれが酪農家として同率の保護と指導を、受けていこうとする行き方については何か考えがあると思うが、どうか。これらの方方はもはや専業搾乳家という立場に立たして、むしろ酪農家という考え方からはずした方がいいのじゃないか、そうすることによって、いわゆる農林省の言うところの酪農奨励の面において整理されたものがずいぶん出てくるのじゃないかと思うのですが、この辺についてはどうお考えになりますか。
  28. 谷垣專一

    谷垣政府委員 初めの御質問の草地事業化のことでありますが、これは従来草地改良いたしまするやり方に、草地を高度に牧草化する経験なり、あるいはそれに対しまする農民の受け答えする形が十分でなかった点がございましたので、従来まではたとえば十町歩の草地がございますると、そのうちの一町歩につきましてだけ見本展示のような格好で、それを牧草化するのに補助金を出したり、あるいは県からも指導する、こういうような形で見本展示の形をやって参ったのであります。ところがそういう問題を通じまして、あるいはまた酪農の熱がだんだん盛んになって参りましたために、これをその段階から一歩踏み越えまして、一種の公共事業化と申しますか、公共事業という名前は別でございますが、十町歩なら十町歩そのものに押し広げる必要がある、こういう問題になったのであります。ことし三十三年度からはそういうような意味の草地事業化をやって参りたい。これは農地局等でやっておりますように、全面的な土地改良をやった場合補助金を出すと同様に、草地改良につきましてもそれに必要な経費の何割かを国が補助して参る、あるいはそのほかにもちろんトラクターその他を利用いたしまして土地を開墾して参る、こういうような形の事業化に切りかえたい、こういうわけであります。  それから第二点の自給飼料を奨励するならば、それを税金の面から考えてやっていったらどうか、こういう問題でございます。これは御指摘のように、現在たしか三反歩までは非課税になっておったかと思いますが、それをもっと率を高くしろという御意見になるかと思います。この問題は、一つには二重に課税されておるのではないかという点と、それからもう一つは、奨励的な意味から非課税の措置を広げるという点と二つ問題があろうかと思いますが、二重に課税されているということは論理上はないようであります。実際のやり方でそういうふうに査定するものは別にいたしまして、二重にやられることはないようでありますが、もう一つの奨励的意味から申しまする三反歩の限度をもっと多くする意図があるかどうかということは一つ十分に検討さしていただきたいと私は考えております。飼料かなり有効な作物であるということになりますと、これに対する課税問題がやはりやかましく起ると思いますが、奨励的な立場でそこまで踏み切るかどうか、もう少し検討さしていただきたいと考えておるのであります。  それから御指摘のように、自分のところの畑が非常に少いのに牛を非常にたくさん飼っておる、こういう者の対策をどう考えるかという点でございますが、これはおそらく経済的に考えますと、都市の近郊におきましてはそういう形においての搾乳業と申しますか、あるいはそれも酪農と言えるかどうか問題もあると思いますが、これも経済的に成り立つものでありますならば排撃する必要はないと思っております。ただ私たちの考えております農業経営と申しますか、農家の間で問題にいたしまして農家経営の中にこれを盛り込みたいと考えておりますのはやはり端的に言えば、酪農によりまして畜力そのものがふえていく、この酪農から生じますところの糞尿あるいは酪農のために必要なえさ、そういうようなものが農家経営の中に一体となって循環していって、それが拡大生産されていく、こういう形のものが実は私たち酪農政策を打ち出しております一番主要なる対象のものになるわけであります。今御指摘のようなものになりますと、おそらくそれは酪農によって生ずる堆厩肥料を処置するのには土地が少くて、堆厩肥というものはむだになっているだろうと思います。こういうものは農業経営というらち内で考えますと、むしろむだの多いという言い方ができるかと思います。しかし乳をしぼるということに端的に突入しまして、そうして乳をしぼることに専心になり、牛が弱ってくれば、それは奥地の方の育成地帯のものと交換して、そこで遊ばしておくというような形で過度の搾乳をする形も都市近郊においてはある限度において経済的に成り立ち得ると私は思います。ただ私たちの主流として考えなければならぬ酪農対象は、やはり酪農というものがそこの農家経営の土地も肥やし、すべてのものが拡大生産されていくというような形におけるそういう酪農民を実はおもなる対象として考えております。しかし片一方の都市近郊の、そういう意味では乳の搾乳業といった方がむしろいいかもしれませんが、そういう形態のものも、奥地におけるもっと余裕のある土地との結びつきにおいて、その間がうまく結びつきができますならば、ある程度までは成り立ち得る一種の企業形態ではないか、かように考えておる次第であります。
  29. 安藤覺

    ○安藤委員 確かにいわゆる酪農政策の面から申しますと、今あなたがるるうんちくを傾けて御説明いただいた通りであろうと私も共鳴いたします。私の申し上げたいのは四頭、五頭の牛を飼いながら一反か一反五畝しか畑を作っておらない、どう見ても酪農とはいえないものが酪農家としての仲間に入って、すべての均霑を受けていることが、他のあなた方の考えられる正常なる酪農政策の線に乗るべき人々に大きなる迷惑を与えやしないか、だからここで何とかそれを一つ切り離す方策を考えられるべきではないか。その一端として、四頭、五頭の牛を飼っておられるということによって生活が成り立ち生業が成り立つということは、これはけっこうなことで、それをじゃましようとはしません。しかしその存在が大きくほんとうの酪農政策の上に悪い影響を来たすことはないか、来たすとすればそれを一つ考えなければならぬ段階じゃないか、こういうことを申し上げておるのであります。  それからもう一つ草地の免税の点につきましては、これは私の方もさらに調査してきますけれども、あなたの方におかれても一つ厳重に御調査願いたい。確かに二重課税をやっておるところがあります。現実に三反歩を減税するというところがあったわけでありますけれども、現実にはそれが行われておらないという事実があるようであります。これはさらにこまかくはいずれまた別の機会にあなたのデスクの前に立って申し上げましょうが、どうか一つ御調査を願いたい。
  30. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ちょっと今の点に関連して。今安藤委員から都市近郊のいわゆる搾乳の問題が出たわけなんです。これがいわゆる正常なあなた方の言われる酪農家悪影響を及ぼしはしないかというのですが、これは私どもあると思うのです。ここで一つ具体的な問題をお聞きしたい。その第一はこういう問題です。いわゆる正常なる酪農地帯においては家畜共済の保険金が御承知の通り五万円だと四千円、十万円だと八千円取られます。ところが実際にはそういう正常ないわゆる酪農村においてはこの保険金を取るというような機会は少いのです。死亡、老廃牛なり何なりで取るということは少い、ほとんどこれが使われない。しかもこれは非常に高い率になっておるわけです。これの原因はよくわからない。ほんとうの酪農村になりますと、おそらく普通の正常な酪農民の考えておることは、都市近郊のいわゆる搾乳業者も同じように家畜共済保険、乳牛共済保険に入っている、これはしぼり取るのですから早く死にますよ。きまった話です。そういう連中の方へほとんど流れておるのではないかという疑問を大きく持っておるわけであります。この点の実情を農林省としては調べたことがあるのかどうか。特にこの際私は委員長にもお願いをしておきますが、乳牛の死亡なり老廃牛なりその他の乳牛共済の支払い状況が地域的にどういうふうになっておるのか、またその経営の状態はどういう経営のものに保険金がよけい払われておるのか、またその原因はどういうのがあるかという点が、ある程度資料があったら調査をして資料として出してもらいたい。これば将来非常に大きな問題になる。  第二点は、例の有畜農家創設についての導入資金、これは大体今酪農を非常にやりたいところは、豊かなところもありますけれども、どちらかといえば国策的に見ても農民から見ても、今まで貧寒な山村地帯で、こういうところは農協も非常に貧弱です。ところが今のあれでは農協が貧弱だというと有蓄農家創設資金が入っていかない、しかもむしろ入れる必要のないようなところに入っていっておるが、こういう点についても、有畜農家創設資金の貸し出しがどんなふうに動いておるのかということを実情を調べておるのかどうか。これもまかり間違うと都市近郊のいわゆる搾乳業者相当流れておるのじゃないかという疑問があるわけです。ほんとうに牛を飼いたい地帯はなかなか資金がつかない、この点はどういうふうになっておるのか、一つ御答弁いただきたい。  もう一点これに連関して。今の創設資金だと御承知の通り一年据え置きの三年償還、ところが正常な酪農を農民がやろうとする場合にはこれじゃ返せない。あの四万二千五百円の資金では、実際には小さな牛よりほかに買えない。すぐに乳の出るような牛を買ってくるというと、少くとも十二、三万円からちょっと高等なものを買えば二十万円もかかる。これを四万二千五百円ではどうにもならないだろう、そういう点についてどういうふうに金が流れておるのか、そしてこれについても今言ったような資金の流れ方に、都市近郊の搾乳業者相当流れておる点がありはせぬか。そういう方に流れてしまって、ほんとうに酪農を今後振興させねばならぬ地帯に金が行かぬ、また金が行っても少くてこれがやれないし、また返せない、ああいう格好では経営ができない。この点を少くとも二年くらいの据え置きにして三年ないし四年で返すようにしないと、ほんとうに小さな今まで酪農をやったことのない連中が安心してやれない、金額も増す必要がある、こういう点についてはどうか。  もう一つは、最近農業の生命共済にひっかかって、御承知の通り、生命共済へ入れば牛の資金を貸してやるというものができてきた。そうすると入った方の連中は共済の生命保険の方の掛金も掛けなければならぬが、牛の金も元利償還をしなければならぬ、この二つではやはり牛は飼っていけない、こういう問題があるが、この点は農林省は農業共済保険組合ですか、あそことどんな打ち合せで実施しているのか、この実情、これに対する考え方を聞きたい。これはいずれも今言った都市近郊の問題と相当連関をしておる問題と思いますが、この点ばどうなっているのか、今後どういうふうにするつもりか、一つお聞きしたい。
  31. 谷垣專一

    谷垣政府委員 都市近郊の専門的に搾乳をやっておる農家の問題でありますが、これはやはり経済問題でございますので、経済の実態が漸次変って参りますれば変っていく方向になっておると思っております。と申しますのは、一つは交通の問題でございます。収入の範囲というものが道路なりあるいは輸送機関の発達のために非常に伸びております。従いまして従来のような都市近郊において有利であったという状況は漸次くずれて参っております。漸次これがもっと土地の豊富なところに移りつつある、こういうのが現在の、少くとも市乳圏の状況におきましてもそれが、実情であろうと思います。従いまして都市郊外におきまする先ほどの御指摘のようなものは逐次これから遠い地帯に入っていく、これは当然そうなるだろうと思います。そういう経済の状況に応じましての変化を、私たちの方でできるだけスムーズにさせる、こういうことではないかと考えております。  それから乳牛の共済の問題でございますが、確かに御指摘のように、非常に牛を搾乳一点張りで虐待して酷使いたしておりまするために、それに対する被害率が高いのは当然でございますが、ただ地方的に見ますと、必ずしも都市近郊がそういうふうに高くなっておるというふうには限ってないようであります。県によりまして非常にでこぼこがあるのが実態のようであります。これは家畜共済の方でも非常に問題にいたしておりまして、これに対して何らかの手を打たなければならない。もちろん生命共済と同じように過剰診療という問題もございましょう。あるいは人間でもそういうことはあると思いますが、牛が一頭入っておって、ほかの牛が診療を受けるというような、家畜共済にかなり独自の問題もあろうかと思います。その他いろいろ問題がございますし、あるいは飼養が非常に濃厚飼料偏重のために、栄養障害を来たしておって、それが悪い結果になっておるということもあろうかと思います。あるいはまたいろいろな乳業者等のところで非常に親切にやってやるために過剰診療になるというようなこともあろうかと思います。いろいろ実情があるようでございますが、これを三十三年度におきましては政府の方の施策といたしまして、各県にこの家畜共済におきまする状況を、是正いたしまするための対策委員会を作りまして、そしてこれの原因とそれを除去する方法を実施に移して参りたい。各県それぞれバラエティがありまして、実情がそれぞれ違っておるようでありますから、そういうような対策を講じて参りたいと考えております。一つには従来県におきましてのこの対策が、一つの家畜に対する対策といたしまして県の家畜衛生保険所、あるいはそれからずっと下の方へ参りますところの、要するに飼養、管理、保険というような形の態勢と、もう一つの家畜の共済事業というものとの間の、末端の間の脈絡がうまくいっていないようなところもあるようであります。そういうものの連絡を密にいたしまして、原因をはっきり究明させて、それに対応してあとの農家に対しまする飼育管理の指導をいたさせる、こういう必要があると思いますので、三十三年度からは各県にこれの対策委員会を設けまして、専門家がそれぞれの原因を突き詰めて、農家に対しましての指導をやって参りたい、かように考えておるわけであります。  それから家畜共済の地域的な差、あるいはどういう農家対象になっているか、これを一つ調べまして……。
  32. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ポイントが違っている。掛金率の高いのは何だということを聞いているのです。
  33. 谷垣專一

    谷垣政府委員 その問題につきまして、状況を調べまして、あとで数字を申し上げたいと思っております。この掛金率の高い低いのは県によりまして非常に差がございます。過剰診療をやって参りますとか、あるいは今申しましたような現地におきまする診療態勢の違いでありますとかいうような点で、掛金率の問題は各県によりましてバラエティが生じております。そういうものに対しまする対策を、今申しました方法をとって参りたい、かように考えておるわけでございます。それから御指摘になりました資料その他は私の方で作りまして差し上げたい、かように考えております。  それから有畜農家創設の問題が、これらの専門的な搾乳、都市近郊のところに多くいっているのではないかというお話でありますが、これは今有畜農家の割当、創設の導入をいたしまする割当は、この集約酪農地域を持っておりますものに重点を置いております。それで実際問題といたしまして、都市近郊、都市に対しましてはごく少いものしかいっておりません。たとえば東京都とか大阪というようなところには年間十頭とか二十頭程度のものしかいっていない。そういう状況でございますので、御指摘になりましたただ酪農をやっていかなければならないところの地帯の農協そのものが、ほかの水田地帯でありますとかあるいは果樹地帯でありますとかいうようなところよりも農協自体が貧弱であるために、それの系統資金がなかなか使えない。こういう問題は問題として確かにあるわけであります。この問題は今の形では解決のできない問題であろうと思います。私たちの方でやります問題としましては、政策的に導入を急ぎます地帯に対して割当をしていく。そうしてそこの農協をできるだけそういうものを使わせるように持っていく、こういう指導はいたしている状況でございます、  それから年限の猶予期間を二年に延ばすあるいは金額をふやすという問題、この問題につきましても検討いたしたいと思いますが、さらに従来やっておりますのは、一種の無畜農家解消と申しますか、そういう線でこれをやっております。もちろん無畜農家という表現の中に、地帯によりましてたとえばここは三頭まで達しないものは無畜農家と見るとか、ここは二頭までは無畜農家と見るというような、純然たる言葉の意味の乳牛が一頭もないという意味ではございませんが、幅を見ていっておりますが、それの限度をどういうふうに伸ばしていったらいいかということとあわせこの問題は考えていきたい。あるいは非常にどうしても導入を急ぎますところでは、系統資金という考え方ではあるいは無理が生じてくるという問題にも逢着すると思いますが、これは法律改正になりますかあるいは運用の方法で限度として行き得るか、これらの問題を検討いたしまして、もしも法律改正を要するならば近い将来そういう問題にまで突き進んで参りたい、こういう心がまえで検討をこれは続けている問題でございます。  それから生命保険と家畜共済の問題は、実は私よく存じておりません。生命保険に入らなければ導入資金を見てやらない、そういう問題は私まだよく聞いておりませんので、さっそく調べたいと思います。
  34. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に乳価の問題ですが、夏場と冬場に変動があるのはこれは例年のことでありますけれども、昨年来特に大メーカーが歩調を合せて二回にわたって値下げをやって、全国各地に紛争を生じているわけであります、この乳価の紛争につきましては、酪農振興会によりまして紛争あっせんの道が開かれているわけでありますが、紛争あっせんの機関を正式に作ってこれを運営している県がどの程度あるか、実情を承わりたいと思います。
  35. 谷垣專一

    谷垣政府委員 昨年の秋以来乳価の問題が随時起きたわけでありますが、その乳価の問題を現在県のあっせん機関に提訴しておりまするものはたしか全国で二県ぐらいあったかと思っております。なおあっせん委員の任命その他は大部分の県がそういう状況に相なっていると思います。
  36. 石田宥全

    石田(宥)委員 紛争あっせんの申し入れのあったのは二県程度ということでありますが、なぜ一体紛争があるにもかかわらず申し出がないのか、またそれによって実効を上げたという話をほとんど聞かないのでありますが、せっかく酪振法というものができて、乳価についての紛争あっせん機関を設けてやることができるという道が開かれておりながら、その法律が生かされない、運用されないのは一体どこに原因があるとお考えですか。
  37. 谷垣專一

    谷垣政府委員 この制度ができましたのがたしか昭和二十九年だったと思いますが、これが動き出しまして以来、大体乳価は好調に推移してきた実情にございます。問題は、昨年の秋からことしにかけましてのこの問題でございますが、その以前の状況から申しますと、乳価は大体強含みに参っております。二十九年の底がきまして、三十年の夏にそれを回復して、それからずっと乳価は順調にきておるわけであります。これはやはり一つの大きな原因だろうと思います。もちろん今まであっせん委員にかかりましたケースは数が少いのでありまして、また乳価そのものについてのケースは今まではなかったと思います。これが行われなかった根本的なバック・グラウンドはそういうものであろうと思います。あとあっせん委員等の者に対する信頼感と申しますか、そういうような問題も中にあった点があろうかと思います。それからもう一つ問題がありますのは、契約がはっきりしていないものがかなり今まで多かった。もちろん文書契約にはっきりなっているものの数が逐次伸びてきておりますが、そういうようなところにまでいっていないものもかなりあるわけであります。そのようなことが事情ではなかったか、かように考えております。
  38. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうも局長は顧みて他を言っておるような感がするのですが、酪振法によりますと、酪農家の方から申し出があって、知事がその委員会を招集しても、メーカー側の方が出席をしない。出席をしなくとも何らこれは強制することもできなければ処罰規定もない。だからメーカーと酪農家ではてんで立場が違うのです。力の関係でバランスがとれておらないのです。だからこの法律がじゅうりんされておる。そういう点が根本的な問題なんであって、今日までいろいろ紛争をやっても、結局は申し出をしても、今言うような実情から酪農側では期待を持てないから従って申し出もしない、実情はこういうことなんです。そこでこの点についてはすでにもう農林省側でも十分論議が尽されたはずでありますから、この点一つ政務次官にお伺いいたしますが、酪農基金法を提出されるに当って、酪農民の立場から見れば基金法よりももっとこれは重要な問題であるところの酪振法の改正の問題、要するに乳価安定についての紛争処理について法律の改正あるいはまた乳価安定法という単独法案を出すなり、そういうふうな基本的な点を一体どう考えておられるか。酪農法の一部改正でいくなりあるいは乳価安定法という単独法案を出すなり、それとの関連において初めて基金法というものが生きてくると思う。ところがそれが全然顧みられないで、基金法だけ提案されたというのは一体どういう事情に基くのか、またそういう問題については今後どう処理されるおつもりであるのか、政務次官からお聞きしておきたい。
  39. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 まことにむずかしい御質問でございます。酪農基金法はこれだけで満足だと思っておるわけではございません。御承知の通りに、この基金制度を作りまして、乳業者またいわゆる乳の生産者価格の安定をできるだけはかる、資金融通によって価格の安定をはかる、こういう趣旨でこの法案を出しておるのでございますが、ただいまお話のほかに酪農振興法の改正等によって乳価の安定をはかる措置を講ずべきではないか、ごもっともであります。そういう点についても実は検討いたしておるのでありますけれども、たとえば農業協同組合法の改正が相当論議されましたが、残念ながら諸般の情勢から今国会に提案する域に至っておりません。そういう関係から酪農関係について協同組合法の一部を改正する、たとえば十九条の第二項の例外規定を設ける等の処置を講じたい、あるいはただいまあっせんについて、現在の酪農振興法のあっせんでは効果はないではないか、これについても特別な、委員会を作ってもう少し強化すべきでないか、こういう点も検討をいたしておるのでありますけれども、諸般の情勢上今日まで提案するに至っておりません。これは私考えるのに、御承知のように酪農あるいは畜産を含めてでありますが、大いに日本の農業政策上振興しなければならない。相当の効果を上げておるのでありますけれども、生産消費あるいは生産者乳業者との関係価格の安定ということが非常に困難な状況になっております。従って酪農振興と言いながら酪農の振興に障害を来たすような事態が次々に起っておる状態でありますから、これはもう少し抜本的な対策と申しますか、法律あるいは制度を作らなければ、この重大問題は解決しない、こういうふうに考えております。今一応季節的の余剰の生乳等について、御存じの通り本年の一月から始めました学校給食に回すという制度を作っておりますが、これは単に三十万石でありますが、季節的余剰の生乳等の処理についての対策でありますけれども、今私どもが考えておりますようないわゆる強力なる酪農振興をはかるについては、こういう程度のものではとうてい酪農家の安定をはかるということは期せられないのではないか。むしろ私どもの将来の対策を立てるについてはそういう余剰の牛乳を処理するというよりも、それを学校給食等をまず優先さして、そしてその余剰をその他のいわゆる乳製品に作るというくらいの対策を講じなければ、ほんとうの酪農振興の対策にならないのではないか、また酪農者の安定をはかるゆえんにはならない、こういうふうに考えております。しかしそれはそう簡単に、あるいは法律、制度としては今日ただいまできると思いませんから、今せっかく検討を続けてそういう方針で進まなければこの問題はなかなか解決しない、こういうふうに考えておるわけであります。重ねて申し上げますが、酪農基金法は、乳業者あるいは生産者立場はそれぞれ違う対立的な状況にありますけれども、生産者立場も尊重してもらわないと、乳業者の継続的な安定した乳業というものはできないと思います。そういう意味で私どもはこれを双方相協力してこの基金制度を立てて価格安定の資に供してもらいたい、こういうつもりで提案をいたしておるのであります。
  40. 石田宥全

    石田(宥)委員 牛乳の問題はなるほどもちろん業者のことも考えなければならないでしょうけれども、農林省としてはやはり酪農民を中心に考えてもらわなければ困るのです。酪農民の利益を擁護し、酪農の安定をはかるということが、農林省としては基本的に考えなければならない考え方だと私は考える。しかるに乳業者酪農民、もちろん両者に関係のある基本法でありますけれども、そういうものよりも、今の御説明でもはっきりしておるように、もっと抜本的な基本問題をすっきりしたものを出さなければ、これは酪農の安定を期し得られないのですね。だから私はもっと基本的な問題について、はっきりした方針を持つべきだということを言っておるのです。酪農振興法というものができても、全く無意味なのです。肝心かなめな点がみな抜けておる。そういうことは一般の酪農民の立場から見ると、農林省というものは、どうも大乳業メーカーに押されて、乳業メーカーの顔色ばかり見て、酪農行政をやっておるのではないか、こういう批判が起るのは当然だと思うのです。だから少くとも今日七百五十万石に達する生乳が、五年後には倍になる、一千五百万石になる、一千五百万石にも達すれば、今日主要な農産物には、それぞれその価格安定の法律の適用を受けて、それぞれ安定対策がとられておるのです。しかるに牛乳に対しては、何らその措置が講じられておらないのみならず、その紛争処理についてすら、全く抜け穴だらけで、全然これは効用を発揮し得ない状態にある。だから今日この基金法を提案されるまでに、相当にもう審議が尽されておるのであろうから、そういう点について、もっと明確な態度、方針が、すでになければならないじゃなかいということを聞いておる。ところが依然として、その点きわめてあいまいな御答弁なのですが、他の農産物の価格安定法のように、乳価安定法という法律を作るなり、あるいはそれがまだ今急にできないとするならば、せめて酪振法に基く乳価紛争についての知事のあっせん機関というものに対して、やはりこの委員会に対しての強制規定、あるいは処罰規定というようなものを入れなければ、意味をなさない。そういう面についての改正について一体どうするのか。もう今日まで相当論議されておるでしょう。まだ全然あいまいもこたるものだとするならば、われわれは基金法だけを作ったって、意味をなさないと思うのです。もう少しここに、これだけを提案しなければならなかったところの事情を、お聞きしないと、納得できません。
  41. 谷垣專一

    谷垣政府委員 政務次官の御答弁に少し補足して申し上げたいと思います。この問題につきまして、これは酪農の特殊な問題といたしましても、あるいは乳価支持の価格政策全体の問題といたしましても、今後検討すべき点が多々あるわけであります。現在の酪振法を運営いたしまして一番問題になりますのは、ミルクというものが生鮮食料でありまして、腐敗する可能性の非常に強いもので、即座にこれは処置をしなければならない。こういう性格のものでございますので、これを今直ちに完全な統制のもとに置いて処置するということについては、いろいろ問題があるわけであります。たとえばほかの農産物のように、貯蔵という問題が非常にやりにくい性格のものでございます。従いましてこの品物を統制をする、あるいは価格支持のために買い上げをするというようなことになりますと、それを保管をするということの限度が非常にあるわけでありますので、従いましてこれは一般市場からほかへすぐに持ってくるような方法を考えざるを得ない。輸出をするとか、あるいはまたそのほか一般市場から隔絶したところでこれが処分を直ちにする、こういうことが必要になるように考えます。従いまして今の段階におきまして、そういう意味の一つの方法といたしまして、学校給食というような形において新しい層の需要の開拓をする、将来またそれが国民食として普及する基盤を作っていく、こういう形で、今の段階におきましては学校給食という形における需給調整を一つ考えてみたわけであります。従いましてこれは将来このやり方を漸次進めていく必要があろうかと思います。あるいは制度的なものとしても検討する必要があろうかと思います。さように考えているわけであります。  それから現在の酪農取引状況から申しまして、何と申しましても問題を突き詰めてみますと、生産者一つのまとまりを持って、そこでいろいろな取引に当る、こういう必要があろうと思うのであります。その体制がまだ十分になっていない。酪振法の改正を考えました場合に、だんだん突き詰めてみますと、やはり共販と申しますか、それをどういう形で突き詰めていくかということに一つの大きな問題点があろうかと思います。その問題を突き詰めてみますと、やはり先ほどだれかお話のございましたような農協法の専属利用契約の問題をどういうふうに考えていくかというところが一つの重要な問題点になろうかと思います。これは農協法そのものでの改正という態勢でいくか、あるいは酪振法における特殊なミルク製品という形でいくかという点に非常に問題点があるように思います。ただ現在の段階におきまして、農協法の根本的な思想、ものの考え方というものと、もしも十九条二項の修正問題が関係があるといたしますならば、これは同じ組織でありますところの酪農関係におきましても、酪農だけでそれを訂正するということについては、よほど慎重な検討を要するのではないか、かように考えるわけであります。従いまして酪振法の改正の問題になっております一つの重点としましての十九条二項等の取扱いの問題については、今のところ、実は率直に申しまして結論が出ていないのであります。これを酪振法だけでやるべきかどうか、現情から見まして、農協の中の組織におきましても、御承知の通りいわゆる総合農協でありますとか特殊農協というようなものの扱い分野の問題等が十分に解決されていない状態であります。実は酪振法におきまして専属利用契約等のいわゆる組合内部の問題をどうしていくかということについては、率直に申し上げまして、現在のところまだ成案がないのであります。その点が一つ。それからもう一つ、今度はその組合と、それからその取引の中に入り込みました場合における、たとえば先ほども御指摘のあっせん委員のような問題につきましてでございますが、これも先ほど来お話がありますように、現在までまだあっせん委員といいますか、この制度の利用あるいはこれが活用された例が非常に少い状況でございます。これがなぜ活用されないかという理由はいろいろあろうかと思います。私が申し上げたのも、私としては一つの重要な理由であろうかと考えております。あるいは先生の御指摘になりましたような関係の強制出頭命令がないということも一つ理由である、こういうことももちろん考えられる点であります。しかしこのあっせん制度というものが現在それほど使われていない状況で、一挙にこれをもっと動きやすいものにするとした場合、考られるいろいろの点をやってみますと、どういう権限とどういう性格を与えるかという点になるかと思います。さように考えてみますと、現在のあっせん委員の点だけを改正いたしましても、実はそれほど大きな改正になり得ないような気がいたすのであります。従いましてそのほかの点も含めまして、酪振法の改正につきましてはもう少し観点を大きく持って考える必要があるのではないかというようなところから、現在検討をいたしておる事情でありまして、現在のところこの基金法と同時に御審議を願うというわけに時間的にいかなった事情があるわけでございます。
  42. 石田宥全

    石田(宥)委員 まだ審議の過程であって、提案するに至らなかったということであるが、先ほど私が申し上げたような方向に向って調査を進め、その方針に基いて、近い将来これを提案する方針であるというふうに理解して差しつかえないわけですか。
  43. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 まさにその通りでございまて先ほど申し上げましたように、酪農振興を叫びながら、一方において生産者が非常に苦しい。諸般の農業政策にこれが出てくるのでありますけれども、酪農の場合は今局長から申し上げましたように、特別な生産物でありますから、他の農産物の問題と多少違います。しかし日本の農業政策として大きな転換を来たそうという時代でありますので、これを生かすためには相当抜本的な方策を国策として講じなければ解決できない問題だ、こういうふうに思って降りますから、今御指摘のような趣旨に従って根本的な方策をきめたい、こういうことであります。
  44. 中村寅太

  45. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま同僚石田委員から質問がありましたが、これは政務次官から率直な答弁を願いたい。特に酪農振興基金法が今日まで提案だけされて、実質的な質疑に入っておらない大きな理由は、やはり酪農振興法の改正をやると政府は唱えながらまだ提案していないところにあると思う。これは今国会の提出予定法案一つに入っておるわけです。しかし今の次官や舞講轄谷垣局長の答弁を聞くと、何かもう酪農振興法の改正に対しては全く自信がない、別に改正する問題点がないのではないかというようなお話もあるのですが、そうなりますと、当初の方針とだいぶ食い違ってきておるわけです。だから酪農振興法の改正はあきらめたのか、今国会へ出さない方針にきめたのか、その点を明確にしてもらわぬと、この基金法の審議にはなかなか入れないと思うのです。基金法の審議を進めたい意思があれば、この酪農振興法改正の意図があるかどうかということを明らかにしてもらいたい。
  46. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 酪農振興法の一部改正案を出すということで検討を加えておりまして、今お話の通りに一つの予定法案として名前を出しているわけであります。先ほど私も触れましたし、畜産局長からもやや詳細に申し上げましたが、たとえば農業協同組合法の十九条第二項の専属利用の制度、この分だけでも確立しようではないかという問題と、あっせんについて特別に各都道府県に酪農振興委員会というようなものを作ろうかという問題を検討いたしているのでありますけれども、その問題だけでも先ほど局長が申し上げましたように、なかなか各方面の意見が異なって、そう簡単に参らないという事情で今日までおくれております。しかしさらに根本的に掘り下げてみますと、その程度のことで先ほど来申し上げている大きな国策としての酪農振興、あるいはいわゆる酪農者の生活安定に資するというふうにも簡単に考えられぬ。酪農振興法は昭和二十九年にできたのでありますけれども、これはいわゆる酪農を振興しようというその緒に着いたときの法律でありまして、これが本格的に進行して参っている現在においては、もう少し魂の入ったものに改正すべきものであろうと考えております。それですから、先ほど申し上げたように、相当検討もし、準備を進めたものを出すこと自体が—現在のところはまだ出さないときまったわけではありませんけれども、御承知のような国会の状況でありますし、必ずこれを出すということも今日確言できない状態であります。むしろもう少し突っ込んだ根本的な制度を確立するくらいなかまえでこの改正、あるいは別に制度を作るというくらいの考え方で進みたい、こういうことであります。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 今の政府にそう大きな期待はだれも持っていない。だから根本的な改正をやってくれるというようなことはあまり期待していない。ただ可能な程度で、一歩前進できる程度の改正をやることができないのかということです。それもできないとすれば、ここでできませんということを言明してもらえばいい。この態度が明らかにならないと、この基金法はたな上げになって、四月解散ということになれば、これはもう廃案になりますよ。せっかく五億円の政府出資予算面にきめておきながら、たなざらしになって何ら使い物にならぬということではまことにお気の毒だと思うので、酪振法の改正をおやりになりますかということを聞いているわけであります。
  48. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 一歩前進という言葉が今ございましたが、一歩前進というつもりでこの問題だけで、も御解決願いたいと思うのでありますが、酪農振興法は今申し上げましたように、必ずこの国会に提案するという自信を持ちませんということを申し上げておきます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは提出されないのですね、どうなんですか。
  50. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 検討を続けているのですから、全然出しませんという考えではないのでありまして、今申し上げたように、この国会で成立できるように準備をする自信もない、こういうことです。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 基金法とは形の上から見れば直接の関連はないようですけれども、酪農政策の全体から見ると深い関連性を持っておるのです。ですから、もし今国会に努力をされてお出しになられるとすれば、われわれはそれまで待機して、両法案がそろってから真剣に審議を進めていくということも可能なのです。今国会にどうしても出せないということであれば、早急にはっきりした意思表示をしてもらった方がいいのではないか。そうでないと基金法の審議は進まないと思うのです。
  52. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 今検討を続けておるところでありますから、出しませんという言明をすると、今国会については検討をしないということになる。しかし正直なところ、国会の状況御存じのような状況でありますから、それに間に合うように成案を得るということはきわめて困難であります。しかしこれはあくまでも、今国会でできなくとも、先ほど申し上げましたように、もう少し強力な制度を作るという考え方で、次の国会でもそれに応ずるものを立てなくてはならない、こういうふうに考えております。この政府がどうなるということはこれは将来の問題でありますけれども、いかなる内閣ができましてもこの問題は日本国の農政として重大問題でありますから、政府がかわってもかわらなくても私どもはやはりそういう強力な酪農振興政策をとるべきものであるという確信を持っておりますからさようにお答えをいたすのであります。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 別に酪農政策を放棄したとまで僕は極言してないんですよ。ただ今の段階で酪振法の改正を今国会でやれない、提案ができないとすれば率直に言われたらどうですかね。あいまいなことを言って基金法までつぶすということになれば、あなたの方でもマイナスじゃないですか。
  54. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 基金法は、先ほども申し上げたましたように、一歩前進で早くお通しを願いたいと思っております。酪農振興法はこの基金法をお願いする時間に間に合うとは現在考えておりません。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、本朝の理事会においても付託された法案審議の日程とか、現在参議院で先議している法案が当委員会に回付された場合の審議の方針とか、委員会運営方針をきめたわけです。それとも関連して、今政府の答弁によると酪農振興法の改正案ははっきり出せないとも言わぬし、出すとも言わぬわけですが、これは委員長責任において政府に確かめてもらいたいのです。この点が明らかにならなければ私どもとしては酪農基金法の審議に入るわけにいかないのです。これは委員長責任の上において善処してもらいたい。
  56. 中村寅太

    中村委員長 承知いたしました。今日は時間がないと思いますので、後ほど農林大臣とも御相談をしてこの次の機会にはっきりいたしますから……。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 では午後の再開までに間に合いますか。
  58. 中村寅太

    中村委員長 午後の再開にはちょっと、間に合わぬと思います。今日午後は予定通りやっていただいて、この次の委員会開会までくらいに一つ相談をしてみますから。石田有全君。
  59. 石田宥全

    石田(宥)委員 さっき局長にちょっと伺ったのですが、これは政務次官にお伺いしたいのです。  今のよう酪農の状な況をもってすると、さっきもちょっと触れたように、五年後にはちょうど乳牛において倍額、程度になると子察されるということですが、そうすると需給のバランスがくずれて将来酪農家が非常に不利な立場に陥ることが予想されるわけです。そういう場合にこれの抑制措置をとる、簡単にそう生産制限というわけにはいきますまいが、やはりこれを抑制するような措置をとらなければならない事態が起るかもしれない、ことに今基本的な問題についてどうも確信のない御答弁ですね。そうするとますます将来に不安を抱かざるを得ないのですが、将来の酪農についてどうお考えになっておるのか。それとあわせて最近乳牛価格相当下落をしております。これは乳価が下ったということが一番大きな関係だと思いますけれども、私は必ずしも従来の乳牛の値段が適正妥当なものであるとは考えておらない。あまり高いことを欲するわけではないけれども、ここで乳牛価格というものと対外輸出との関係、これは非常に大き、な影響がある、たろうと思う。昨年わずかながらも中共に出たようでありますが、中国側では相当輸入の希望を持っておるわけです。これに対して農林省としては一体どういう方針をお持ちなのか。一部には少し輸出をするとすぐ価格が騰貴するから輸出をしたいという動きも見受けられるようであります。これとの関連は将来の酪農業に対して重大な影響を持つものでありますので、これに対する所信を伺っておきたい。
  60. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 中共等に対する乳牛の輸出等の問題は局長からお答えいたさせます。  酪農の将来について一体どういう考えを持っておるのかという点について申し上げておきます。これは日本の各種の農産物でも常に問題になり、よく慎重に考えなければならないところだと思いますが、その生産物の流通と申しますか、処理についてあまりに無計画生産を奨励するということは、生産農家に対して大きな打撃を受けさせる場合が、過去にもありましたし、将来も考えなくてはならぬことであります。でありますから酪農振興と申しますか、いわゆる蛋白食糧の増産をはかろうという計画で進めておりますが、その計画についてはその生産物の処理という問題をやはり頭に置いてその増進をはからなくちゃならない、こういう考えでおります。皆さんの方では政府があまり御信用にならないということでありますが、私どもの自由民主党におきましてはこの酪農振興計画を立てますについては、先ほどもちょっと触れましたが、今はまだ十分の酪農製品があると思っておりません。そこで増産をはかる政策を立てておるのであります。しかしながら日本国民生活の状態から申し上げると、まだまだ牛乳等の消費部面がそれほど普及されておらない状態でありますから、従って季節的には現在でも過剰を生ずる、そのために酪農あるいは乳牛に対して影響を及ぼしていることは事実であります。そういう問題も考え合せまして、酪農を振興するについてはその裏づけとして、現在あるいは季節的にやや臨時的にやっております学校給食等は全面的に広げて、流通の部面を十分裏づけをし、それに応ずる生産をはかろう、こういう考え方で進んでおるのでありますから御了承を願いたいと思います。
  61. 石田宥全

    石田(宥)委員 芳賀委員の方から、先ほど質疑応答の中に出たような基本的な問題についての政府の態度が明確にならなければ、基金法の審議は進められないという意見が出ております。これは当然だと思うので、私は酪農基金法の内容についていろいろ質疑をいたしたいと思いますが、それはその後に譲ることにいたしまして、以上をもって本日の私の質疑は保留しておきます。
  62. 中村寅太

    中村委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後二時三十三分開議
  63. 中村寅太

    中村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  午前中に芳賀委員より発言のありました、今国会に酪農振興法の一部改正案を提出するかいなかという点につきまして、この際政府より発言を求められておりますので、これを許します。瀬戸山政務次官
  64. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 ただいま委員長からお話がありましたように、午前の本委員会において、酪農振興基金法のほかに、前から問題になっております酪農振興法の改正案を出す問題について、種々お尋ねがありました。その問題については、午前もお答えをいたしたのでありますが、その後部内におきまして、慎重検討いたしましたところ、現在の状態におきましては、先ほど触れました、ただいま案の検討をいたしております農協法の第十九条二項関係、それから専属利用問題等についての独占禁止法との関係、その他各都道府県に酪農委員会等を常設する問題につきましても、なお急速に結論を得る段階に至っておりません。さようなことでありますから、今国会においては御審議を願う段階に至らないだろう、こういう結論に達したのであります。しかしながら、先ほどもお答えいたしましたように、酪農振興あるいは酪農生産者の、安定をはかることは、きわめて重要な問題でありますので、今後ただいま申し上げました問題点についても、さらに午前の委員会におきまして、お答えいたしましたように、もう一歩突き進んだ酪農振興の方策を立てるために、できるだけ早い機会に成案を得て御審議を願いたい、こういうことでありますので、御了解を願いたいと思います。
  65. 中村寅太

    中村委員長 芳賀委員より発言を求められておりますので、これを許します。芳賀貢君。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま政務次官より意思表示がありましたが、そこでお尋ねしておきたい点は、酪農振興法の改正を、今国会で行うことができないという場合に、問題になるのは、数年正前より常に共販体制の問題について、特に農林省と公正取引委員会との間において、見解が相違しておったのであります。この論争点に対しては、何らかの政府の統一した態度をもって明確にしなければいかぬでないかということで、たとえば当委員会において三十二年の四月二十六日の農林水産委員会で議決を行なっておるわけです。あるいは参議院におきましても三十二年五月十三日に参議院の農林水産委員会における決議が行われておるわけでありますが、これらの委員会の決議に対して、政府がいかようなる処理をされたかということの報告は、今までないわけでありますが、酪振法の改正が行われないという場合における公取と農林省の論争点に対しては、どのような調整をはかって、今後特に共販体制の運用等については、酪農振興途上に障害にならないような方途を示すのか、その点をお尋ねしておきたいと思います。
  67. 谷垣專一

    谷垣政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、その後公正取引委員会の方とも連絡を保ちまして、種々懇談を重ねてきております。御存じのように現在青森の三八問題にから見まして、審理がなお係属中でございますので、そういう問題を含めましての結論ということには、到達いたしておりませんけれども、現在まで両者の間で了解に達しておりまいして、同一の見解至っております点につきまして申し上げてみますと、たとえば芦野談話で問題になりましたような、共販体制の問題でございますが、農業協同組合によります牛乳の共販体制を、育成強化することにつきましては、これは両者ともに異議はない点でございます。農協組合が私的独占禁止法の適用除外になってお無条件委託販売等の問題についても、条件つき委託販売が共販の原則であるという趣旨のことが芦野談話にうたわれておりますけれども、そういうものではない、農協の共販に関しましては、たとえば無条件委託販売等についてもこれはけっこうなものである、こういうような了解に達しておるのでございます。また農林省といたしましても、共販態勢を育成確立いたしますために、今問題になっております専属利用契約の現行法においてのなお契約の推進、あるいは集約酪農地域におきまする共同集乳の組織あるいは設備というようなものの整備強化をはかって参りまするほかに、生乳の品質改善事業というようなものに対しましても助成をいたす措置を講じまして共販態勢を育成強化して参りたい、かような点は両方ともに了解をいたしておるのであります。また問題になっておりまする中心工場の問題でございますが、酪農振興法によりまする集約酪農地域の制度は、酪農振興計画に基きまする中心工場以外の工場に生乳を出荷しますことを制限する趣旨のものではないのでございます。従いまして、この中心工場制度と私的独占禁止法とは何ら矛盾するものではないのだ、このことも両者ともに了解に達しております。それから青森の三八地域の違反被疑事件についてでございます。これは公正取引委員会においてなお審議の係属中でございますし、また多数の参考人意見を徴しまして慎重に審判手続を続けておる現状でございますので、これについてとやかく申す段階ではございませんけれども、公正取引委員会の方におきましても、農林省と十分に連絡をいたしまして、酪農振興については十分留意する、こういう趣旨の了解に両者において達しておる、こういう段階でございます。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 今局長がお述べになった点は相当重大な要素を持っておりますから、後刻書面に整理して配付願いたいと思います。公取と農林省との間において見解の一致した点、あるいは不一致の点等についても、できるだけ詳細にわたって文書でお出しを願いたいと思います。  次にこの際資料の要求をしておきます。本日配付になった資料の中で三十三年三月十四日に日本乳製品協会から農林大臣にあてた酪農振興基金設立に関する件、この内容はさきに会員各社が出資引き受けに関する申し出をした一件書類はこれを撤回することに決定したというような通告文のようなものでありますが、この出資引き受けに関する内容です。どういう文書がこの申し出以前に出されたかということを参考資料でお出し願いたいと思います。いわゆる会員各社の出資引き受けの内容ですね。その見積書の内容についてお出し願いたい。それから次にお願いしたい資料は、午前の委員会石田委員からも質問がありましたが、最近の飼料です。主としてふすま等を中心とした飼料価格の最近における推移等についての資料、第三の資料は、全国を各府県別に分けた現在の生乳価格、地域別にどういうような現状に置かれているかというような資料を要望しておきます。     —————————————
  69. 中村寅太

    中村委員長 去る十九日付託になりました内閣提出農業改良助長法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査に入ります。  まず本案趣旨について政府の説明を求めます。瀬戸山政務次官。     —————————————
  70. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山政府委員 ただいま議題となりました農業改良助長法の一部を改正す法律案提案理由を御説明申し上げます。  農業に関する普及事業は、昭和二十三年に制定されました農業改良助法に基き国と都道府県とが協同して全国に約一万二千名の農業改良普及員及び生活改良普及員を設置し、これらの改良普及員が直接農民に接して農業または農民生活の改善についての科学的技術及び知識の普及指導に当ることを基幹とし実施して参ったのでありますが、最近における農業技術の急速な進歩と農業経営の多角化とに伴いまして、従来にも増して高度のかつ総合的な技術指導に対する要請が高まりつつある現状でございます。  この要請にこたえまして、従来普及事業が能率的な農法の発達、農業生産増大、農民生活の改善等を通じて農業経営全般の安定確立のために果して参りました役割を、将来にわたって維持向上いたしますためには、個々の改良普及員の技術指導の能力の向上をはかることはもちろんでありますが、さらにその普及活動の連絡調整を強化して普及指導の効率化に努めますとともに、地域の特性に応ずる各種の農業技術を総合した普及活動の推進をはかることが必要となるのであります。  従いまして農業改良助長法の一部を改正し、都道府県に条例をもって、改良普及員の行う普及活動の連絡調整並びに各種の農業技術及び知識の総合的な普及指導の推進に関する事務をつかさどる農業改良普及所を設置することとし、これに改良普及員を所属させることといたしまして、右の要請にこたえることといたしたいのであります。  以上がこの法科案の提案の理由及びその内容の大要でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  71. 中村寅太

    中村委員長 次に質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 若干の質問をいたします。  第一点は、農業改良普及事業の最近の進展状況がどういうことになっておるか。特に国あるいは府県、町村の実情等について、これは大まかの内容でいいのですけれどもお述べを願いたい。
  73. 永野正二

    ○永野政府委員 お手元に縦にとりました「農業改良助長法の一部を改正する法律一般参考資料」というのがございます。それの最初に図表を掲けておきましたので、これに基いて御説明を申し上げたいと思います。  農業改良普及事業は御承知の通り昭和二十三年に農業改良助長法に基いて設置せられた制度でございます。この制度の目的は、言うまでもなく農家経営に役立つような技術を、試験研究と密接な関連を持ちながら、農家の手元まで届けるというために設けられた組織でございまして、これが最近の農業生産改善に非常に貢献をしておりますことは申し上げるまでもないのでございます。当初旧市町村に大体一名ずつの農業改良普及員を置きまして、この改良普及員が直接みずから農家に接触をいたしまして、農家の技術の指導をしていくということに大きな特色があったのでございます。その後いろいろ経過がございまして、この図に掲げておきました数字は大体昭和三十三年度の数字に相なっておるのでございます。中央の農林省から都道府県の組織を通じまして、現状ではまん中のところにございますように、農業改良普及員が三十三年度から一万六百二十六人に相なるのでございます。この内訳は、今回御審議を願います法律改正によりまして設置せられます農業改良普及所の所長が千五百八十六名でございます。それから一番下の行にございます特技普及員が五百三十名でございます。この五百三十名は昭和三十三年度から新設をされるものでございまして、このうちの二百三十名は新規の増員でございます。またその残りの三百名は一般普及員からの振りかえによる新設でございます。従いまして残りました一般普及員が八千五百十名に相なるわけでございます。このほかに生活改良関係といたしましての普及員が三十三年度は九十二名の増員を見ることに相なっておりますので、これを含めまして千五百九十七名に相なるわけでございます。この改良普及員及び生活改良普及員が、現在では平均いたしまして二町村くらいを区域にいたしております農業改良普及所に所属をいたしておるのでございまして、その数は来年度から千五百八十六にいたす方針で、目下これは各県と協議をして、おおむね全国的にその協議は済んでおるのでございますが、なお二、三残りましたところにつきましても、北海道その他府県の府県庁との協議を十分いたしましてその数をきめて参りたい、こう思っておるのでございます。この下に普及員の普及活動を受け取る組織といたしまして、ここに示しておりますように、農事研究会、生活改善グループ、四Hクラブ、その他篤志指導者並びに個別農家というものを、その下に置いておるわけでございますが、農事研究会は現在ではその数約二万五千、その会員の数が約五十万人に及んでおるのでございます。生活改善グループはその数が約八千、これの会員が約十八万名となっております。また青少年のグループ活動をいたしますための四Hクラブ、これが全国で約二万の数を数えております。会員は三十万に達しておるのでございます。またこれと並んで、市町村の農業技術員あるいは農業た委員会の職員あるいは農業協同組合の営農指導員というものが、この普及員と密接な連絡をとりながらそれぞれの特色ある活動をいたしておるのでございます。この法律改正によって設けられます中軸単位の農業改良普及所におきましては、これらの諸機関の農業指導関係職員との連絡も十分密接にとりながら、それぞれの地区においての特色ある農業指導をいたして参りたい、こう考えておるわけでございます。  大要でございますが、以上でございます。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 特にことしから普及員の中に特技普及員というものが新設されることになったのですが、この特技普及員の全国的な配置はどういうような方針でやられるのですか。
  75. 永野正二

    ○永野政府委員 三十三年度に五百三十名の新設が認められたのでございますが、私どもといたしましては、これは三年計画で、今後明年度、明後年度さらに明々後年度の三カ年で整備をいたしたいと考えておるのでございます。総体の数は一応現在では正千五百二十八名を設置したいと思っておるのでございますが、これは最近農家の側の要望が、農業の多角化、畜産だとかあるいは果樹、蔬菜等の園芸でございますとか、その他農業の多角化に伴いまして、より高度な、またより専門的な技術指導を非常に強く望んでおるわけでございますので、これにこたえますために、一般の普及員で、すでに相当畜産でございますとか、あるいは果樹、園芸でございますとか、その他農機具の使用でございますとかいうような特殊の技術につきまして研修を積んだ適格者もございます。またそれ以外にもこういう特殊な技術について指導する適格者もございますので、これらを順次そういう特殊な技術別に特技普及員として任命をいたしたいと考えておるのでございます。項目といたしましては畜産がこのうちの数としては一番多くなりますが、現在の計画では九百十三名を畜産関係と考えております。その他蔬菜関係が二百四十一名、果樹関係が二百三十五名、農機具及び農作業の指導の関係が二百九名、合計千五百九十八名と考えておりますが、これらはそれぞれの地帯の農業の事情によりまして、たとえば集約酪農地区そのほかを中心としての畜産の特技普及員を入れていく、あるいは蔬菜の特産地帯に蔬菜の特技普及員を入れていく、果樹の特産地域にその関係の特技普及員を入れていく、また最近特に非常に普及をいたしております小型の耕耘機等が非常に入っておって、それを農作業の上でどう使っていったら合理的に使えるかという問題の多いような地区に対しまして農機具の特技普及員を入れていくということを考えておるわけでございます。初年度の五百三十名の配置につきましては、現段階では各県に照会を発しまして、どの部門の特技普及員の何名の設置を希望しておるか照会中でございますが、私の方で調べました各県の農業事情と府県の希望とをにらみ合せまして、これを配置いたして参りたい、こう考えております。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 改良普及事業が制定されて十年たっておるのですが、ようやくその成果が認められておるわけです。ですから今が一番大事な時期だと思うわけでありまして、特に政府の農政の後退が指摘されている中において、これが一つのバック・ボーン的な役割を果すべき期待は大きいと思うのです。それで法律にも規定されておりますように、この改良普及事業を進めていくためには、国と都道府県の経費の負担区分は法律で明確になっておるわけです。しかし実情を調査すると、国の支出が積極的に行われない関係上、そのしわ寄せが都道府県あるいは末端の市町村等に相当重荷されておるわけです。ですからこういう実情が、また一方において当然普及員の活動をも拘束することになるわけです。これはやはり国において積極的に打開するような方策を立てなければいけないのじゃないかと思いますが、これらの点に対しましてはどのように考えておりますか。
  77. 永野正二

    ○永野政府委員 御説明のために御配付いたしました参考資料の中に予算を掲げておきましたので、これをお読み取り願いたいのでございますが三十三年度の普及関係予算は一番上の行にございますように十九億九千九百七十七万円でございます。このほかに農林省の本省の事務費として六百八十五万四千円を計上いたしておるわけでございます。そのうちの人件費等につきましては、ただいま御指摘のございましたように国の負担が三分の二という計算をいたしまして、いずれも俸給、期末、勤勉手当等を計上いたしておるわけでございます。特にただいまお話がございましたのは改良普及所の経費の関係であろうと思うのでございますが、その関係は三ぺ一ジのCというところにございます。地区普及所運営費補助金というのがございますが、三十三年度におきましては千五百八十六の事務所に対しまして単価が六万五千百円、金額にいたしまして一億三百万円の補助金を、これは三分の二の補助率という計算で計上いたしておるのでございます。その計算の内容につきましては、その右側に表に出して掲げてございますように、大体一普及所当りの経費といたしましては十万二千円あまりのものを目標にして予算を計上いたしておるのでございます。ただ、ただいま御指摘のように、地方によりましては実際の事務所の運営費としてはこれよりももっとより以上に経費がかかっておる。それらの分について、あるいは市町村その他の関係からの負担をも願っておるというような実情にあることは、私どもとしても十分承知をいたしておるのでございます。この点今後の問題といたしましては、この事務所の活動をより一そう活発ならしめ、より一そう円滑ならしめるために、国費を計上いたしますことについてなお十分努力をいたさなければならない、こう考えておるわけでございます。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 今回の改正で改良普及所というものは法律の中に明記されることになったわけなんですが、現実の問題としては、現在までも各都道府県においては改良普及所とかあるいは改良相談所というものが置かれておって、そして活動を行なっておったわけです。ところが今度は明らかに普及所を設置するということになると、普及所を設置するに必要な費用というものは当然計上されることになるのですが、一事務所の経費の計上はこの表にある程度で果して事足りるものであるかどうか、この点はいかがですか。
  79. 永野正二

    ○永野政府委員 ただいまお話のように、今後普及所の活動をより一そう活発にいたしまして、農民の技術指導に力を入れていかなければならないこと、はもちろんでございまして、そのために現在でも普及所の実際の運営のためには、われわれが予算を一応計上しております金額以上のものを実際には使っておるという実情にあるということは、私どもも全く同様に考えるのでございます。この問題は、この普及所が法制上の制度になりましたことを機会にいたしまして、私どもといたしましてば今後一そう十分なる予算の計上に努力をいたしたいと思うのでございます。
  80. 芳賀貢

    芳賀委員 法律によると普及所の設置は都道府県の条例で箇所や区域をきめるわけですね。当然これは事務所ですから建物の所在も必要になると思うのですが、いわゆる建造物、こういう施設というものはどういうふうに考えていくわけですか。
  81. 永野正二

    ○永野政府委員 この普及所は全然の新設ということではございませんので、現在すでに事実上各県とも普及所あるいは普及事務所あるいは相談所というような名称で設置をいたしておるのでございます。その模様につきましては五ぺ一ジに掲げておるのでございますが、各県としてはいろいろな名称ですでに設置をいたしておるわけでございます。従いましてこれはすでに何らかの形でその事務所を持っておるのでございます。独立の事務所を持っておるものもあり、あるいは他の市町村役場あるいは農協の事務所等に適当な部屋を借りまして事務所を設けておるものがあるのでございます。私どもといたしましてでは、この法制化に伴いまして当然にこの事務所の建物について新設をするという考え方ではないのであります。ただ今後の問題といたしまして、普及活動をより一そう活発にするために、こういう関係の施設を整備をしなければならぬという必要は相当出てくるのではないかというふうに考えておるのでございます。これらにつきましては、必要に応じまして国家補助の計上等について努力をいたさなければならぬと考えております。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 この普及所は農林省の出先機関という性格でもないのですが、地方へいくと、たとえば統計調査事務所の各地区の出先あるいは食糧事務所の町村の出張所等にしても非常に経営費が少いのです。北海道なんかの場合は燃料費の見積りが非常に少くて、冬の半ばぐらいで燃料費が尽きてしまって、しかしまさか石炭をたかぬでおるというわけにもいかぬので、地方の職員の実情を聞くと非常に気の毒なような事例がたくさんあるわけです。改良普及事業の場合には、予算面においてもそれほど十分なものはないのですから、地域的に必要な燃料費等の場合には、地方に全く依存するという考えであるのか、国の方でも必要な経費というものは当然計上して、そのうちの国の負担分というものを明らかにして支出されるか、どういうふうにやられるか。
  83. 永野正二

    ○永野政府委員 私どもといたしましては、先ほど予算の説明で申し上げましたように、事務所の運営のための経費といたしまして、光熱費というようなものも一応積算の基礎に入れてこの補助金の計算をいたしておるわけでございます。ただ、ただいまお話のように、気象条件その他によりまして相当経費がよけいかかるという事情もあるかと思いまするが、これらにつきましてあまり極端な区別をすることはいかがかと思うのでございまするが、なお都道府県の負担の関係等もよく協議をいたしまして、この普及所の運営に支障を来たさないように、実情に応じてやって参りたい、こう考えます。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 それから普及活動に必要な研修費とかあるいは行動費ですね、特に町村外の出張とか行動に対してそういう費用が非常に制約されておる。これは地方団体においてもできるだけ積極的にやっておると思いますが、非常に金額が少いのです。ですからせっかく優秀な人材があり、活動能力は持っておるのだけれども、費用が全く少いために、有機的な行動ができないという難点があるわけなんです。こういう点はすでに十分認識されておると思うのですが、せっかくこの普及員の活動に期待を持たれておる今日において、この費用が非常に削減されておるために十分の活動ができない、研修もできないという点は、全く遺憾にたえない点だと思うのですが、こういう点をもう少し改善するという意思はないのですか。
  85. 永野正二

    ○永野政府委員 それらの点につきましては、ただいまお話の通りでございまして、普及員が効果的な技術指導をいたしますためには、絶えず新しい進んだ技術の研修によりまして身につけること、また数多くの農家を巡回いたしまして、普及指導いたしますために機動力を十分持たなければならない。たとえばオートバイでございますとかスクーターでございますとかいうような機動力を持たなければならないということは、私どももさように考えておるのでございます。このために現在予算の資料でお読み取り願えますように、いろいろな経費が計上してございますが、これが十分のものであるというふうには考えておらないのでございます。これらの点につきましては、なお今後とも一段の充実ができますように、予算編成の際に努力をいたさなければならぬというふうに考えるのでございます。
  86. 芳賀貢

    芳賀委員 次に普及員の身分保障の問題ですが、現在はこれは地方公務員という身分で活動をしておるわけでありますけれども、普及員諸君の過去から現在までの足どりというものを見ると、非常に不安定な路線をたどっておるわけです。ですから十分な活動をやってもらうということになれば、やはり社会的な身分保障とか、経済的な安定というものが前提にならぬと、安心して十分な活動ができないと思うわけなんですが、これらの点に対しては、これは直接国の職員ではありませんけれども、今後国の責任において普及員諸君の身分上の保障とか、安定の問題等に対しては、相当積極的な配慮が必要でないかと思うわけなんですが、現在までどういうような処置を講ぜられておるのですか。
  87. 永野正二

    ○永野政府委員 普及員は、ただいまお話のように、都道府県の職員の身分を持っておるわけでございます。その身分におきましての一般的な保障等の制度のもとにあるわけでございます。ただ御指摘になりましたのは、たとえば、予算上の定員が減るとかなんとか、そういう問題のために地位が不安定になるのではないかというようなお話であると思うのでございます。過去におきまして若干欠員等がありましたような場合に、そういうような措置が行われたことがあったのでございますが、最初にも申し上げましたように、この普及員の制度が現在農業生産を支える非常に大きな一つの技術指導組織として、また農民にも非常に評価をされております。この現状にかんがみまして、私どもといたしましては今後絶対にそういうことのないように勢力をいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 普及所の性格についてお尋ねしたいと思うのですが、今までの改良普及事業員は、こういう現存した事務所とか役所というものを持たないで活動しておる。これは普及員のそれぞれの諸君が、みずから出向いて農民と密着することによって、農業の一つの前進をはかるというような仕事をしておったのですが、今度は普及所ができると、相談所があるのだということになると、何か事務所の中にかまえて、むしろ農民の方から出かけてくるのを迎えて、そこで相談相手になったり、またはいろいろな指導的な役割を果すというようなことに、普及員活動の性格が変ってくるとなると、これは相当問題があると思うのです。またこ法律の改正によって、そういうような誤解を植えつけるようなことも避けなければならぬと思うわけですが、この点については明確な説明が必要だと思うのです。いかがですか。
  89. 永野正二

    ○永野政府委員 ただいま御指摘の点は、私どもも十分留意をいたさなければならない点だと思うのでございます。現在普及員の関係規定といたしまして、改良普及員は、直接農民に接して農業または農民生活の改善に関する普及指導を行うというこの条文は、「農業改良普及所に属し」という文言をつけ加えただけで、「直接農民に接して」というところはそのまま残しておきたいと思うのでございます。普及員が生きた人間として直接農民に接触をしながら技術指導をしていくということは、現在の普及制度の一つの眼目であると考えるのでございます。普及事務所ができたから事務所にすわって普通のホソイト・カラーの職員になるようなことがあってはならないのでございまして、現在でも、事務所がございましても、そこにただ一日一ぺん立ち寄るという程度で、大部分の時間は農家の庭先なり農家の圃場なりで農民に接しておるような実情でございます。こういう普及員の指導のあり方は、今後も引き続き続けて参って、いたずらに農民の側から努力をして接触をしなければならぬというような不便な状態に陥ることは厳重に避けなければならない、そういう方針で指導いたして参りたい、こう考えております。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 その点は十分注意してもらいたいと思うわけです。それなるがゆえに所長は普及員の中から選ぶということになっておるのであって、所長が数段上に立って、それ以外の普及員がその下の地位だということではないと思うのです。同じような活動の責任感の上に立ってみんなやってもらわなければならぬということで、これを十分理解を間違えないようにぜひ進めてもらいたいと思うわけです。ただ問題は、改良普及事業をやる上における普及員の事務的な分量はだいぶあるのです。本来の技術的な指導とか推進をやる以外の事務の分量は相当あると思うのです。ですから、事務上の分量がだんだんふえていくと、結局本来的な活動が減殺されるということにもなるわけです。こういう事務所を置いて、しかも中地区制を採用していくということになれば、結局これはどうなんですか。将来給料の使い事務職員を置いて、単に事務の部面における仕事をさせるとかなんとか、そういう構想はないんですか。
  91. 永野正二

    ○永野政府委員 私どもといたしましても、ただいまお話しのように、普及員にいたずらに通常の事務の負担を課するということは、できるだけ避けるようにして参っておるのでございますが、ただ御指摘になりましたのは、おそ、らく自作農維持資金の貸付あるいは農業改良資金の貸付の関係で普及員が農家の農業計画を作ります。そういう仕事をさしておられるかと思うのでございます。これはいわば農家経営改善いたしますための一つの手段としてそういう資金を導入するわけでございます。農家経営指導と関係して普及員がそういう仕事に携わって参ることはやむを得ないことであろうと考えておるのでございますが、今後普及所におきましては、先はどの予算の別の表の中にございます人夫賃の八名分というものも計算の中にあるのでございますが、これは備考にございますように、事務補助の臨時職員というようなつもりでこういう経費も計上しておるのでございまして、単なる通常の事務というものは、なるべく普及員の負担にならないようにいたして参りたい、こう考えておるのでございます。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は普及所の充実に伴って、やはり事務的な補助職員というものは、今後すみやかに置けるようにしたらいいじゃないかと私は考えるわけです。  それから次に普及所の位置とか、それから管轄区域は条例で定めるということになっておるのです、が、これは農林省の方から何か一つの模範的な条例か何かを示して、一つの規格というものを示して、それによって都道府県が条例を設定するというような順序になるのでしょうか。もしそうだとすれば、何か具体的な案があればこの際示してもらいたいと思います。
  93. 永野正二

    ○永野政府委員 この法律に基きます普及所の設置に至りますまでの過程といたしまして、農林省といたしましては、昨年の春ごろから各県で実際置いております事務所が非常に規模がまちまちである、担当農家の数も多い少いが非常にありますので、それをある程度そろえて中地区活動を一本に行いますように、各県と接触をしながら指導いたして参ったのであります。そのために先ほど御説明申し上げましたように、おおむね大多数の府県におきましては、現在置いております事務所をそのままこの法制上の普及所に直すということで事が足りるようになっておるのでございますが、なお二、三の府県につきましては、設置の指導につきましても今後農林省と道府県との間で協議を要するものがわずかでございますが残っております。それらにつきましてはその各県の事情を十分聞きまして、よく協議をいたしました上で数はきめたい、こう思っておるのでございます。名称はこれは各県それぞれの地区の名前をおとりになることでございますので、これは私の方でそうとやかく申し上げることはないと思うのでございます。なおその他の事項につきまして、たとえばおおむねどのくらいの農地面積を一つの事務所にするか、あるいはどのくらいの数の農家一つの事務所の官轄区域にするかというような標準につきましては、よく私の方で各都道府県を通じて一定の方針を立てて、その標準をきめたいと思っておるのでございます。なお設置の際の条例につきましては、各県におきましてはいろいろな地方機関の設置に十分経験がございますので、特に私の方としてこまかいところまで指示をする必要はないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 この中地区制の問題は、市町村合併以前からこれは構想としてだんだん実現化されていったわけですね。ところが現在市町村の合併が相当大幅に行われた場合、最初中地区と考えて発足したところも、大きな市が合併によってできたり何かしたことによって、今度はその単一区しということになる場合も出てきたと思うのです。そういうような、市町村合併による地域的な情勢の変化と、中地区制というものはどういうような関連を現在持っていますか。
  95. 永野正二

    ○永野政府委員 ただいま御指摘になりましたように、町村合併が非常に進みました結果、一市町村が一つの普及地区になるというような形も出て参ると思うのであります。ただ私どもといたしましては、市町村の区域というものはなるべくやはりこの普及の地区をきめます際にも尊重しまして、あまり市町村の地区と全然かけ離れた普及地区というものを作っていかないように、これは十分府県庁と接触をいたしまして指導して参りたい、こう思っておりますが、ただ私どもといたしましては、行政区域である市町村にこの普及組織を全部まかして、ゆだねてしまうという考え方は持っておらないのでございます。十分両方協調をとりながら今後動かして参るということが一番適当であろう、こういうふうに考えます。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 次にこれは地方問題なんですが、たとえば北海道のように地域が非常に広大であって、市町村の数も面積の割に少いというようなところは、やはり地域の実情というものを十分尊重してかからぬと、原則は中地区制ですから数ヵ村集めんければならぬということでいくと、全く期待に沿ったような活動の成果が上らぬと思うのです。ですから中地区制の場合においても普及所の適正な行動半径というものはおのずから算定ができると思うのです。ですから地方の実情というものを十分尊重して、それに最も適合をするような普及所の設置はどうしたらいいかというようなことに重点を置いて、そのような趣旨でこの普及所の設置とか運営をぜひやっていく必要があるのじゃないかと私は考えるわけです。この点に対してはどのようなお考えで進むわけですか。
  97. 永野正二

    ○永野政府委員 ただいま芳賀委員の仰せになりましたような趣旨で、十分地方の実情にマッチをするようによく関係の県と連絡をとっていきたい、こう考えております。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 それから内地府県においては地方事務所というものがあるですね。まさかこれを中地区制の普及所に使うなんていうようなことはおやりにならぬと思いますが、経費の便宜上そういうようなことで一応形式だけとるなんていうことになると、十分実質的な活動ができないような場合もあり得るのじゃないかと考えられるわけなんですが、やはり実質的に成果をあげるにはどうするんだということからこれは発足していかなければならぬと思いますが、そういう点に対してはどのような見解で進まれるのか。
  99. 永野正二

    ○永野政府委員 地方の実際の行政を担当いたします地方事務とこの普及のための普及所の組織とを一緒にするようなことは全然考えておりません。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 最後にお尋ねしたいのは、これは試験研究機関改良普及員との緊密化の問題なんですが、これは当然法律においては明記されているのでありますが、やはり十分でない点もあると思う。こういう点はやはり国の試験研究と末端における改良普及事業というものは完全な接合が行われて、そうして農業の近代化の方向に前進できる態勢ということが一番望ましいと思うのですが、地方によってはやはりいろいろな障害もあると思うのですが、こういう点に対しては今後どういうふうな方法で万全を期するお考えか。
  101. 永野正二

    ○永野政府委員 普及員が技術指導をいたします場合に、最も新しい最も進んだ農業技術を身につけていなければならないことはもちろんのことでございます。従いまして絶えず試験研究機関と接触し、新しい技術を身につけまするためには、第一にはあらゆる機会において必要な研修を行うということが第一であると思います。また第二には、専門技術員という項がこの改良普及組織の中にございます。この専門技術員はおのおのの専門技術につきまして試験研究機関と接触をいたしまして新しい技術を身につけまして、それを普及員に流して渡すという役割を果すわけでございます。この専門技術員の技術、試験研究機関と普及員の間をつなぐという役割によりまして、試験研究と普及との間の交流を密接にするということが今後も非常に必要であろうと思うでございます。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 今永野さんの言われた専門技術員ですね。この諸君が実際は動きがとれないのですよ。これは経費の関係があると思うのですが、全く閉じこもっちゃって、現地に自由に出向いてそうして普及員諸君と接触して高度の指導とか連絡を行うということが、なかなか実際問題として行われていないのじゃないかと思うのです。この点は調査になってみれば明白になると思いますが、せっかく有能な士が試験所あるいは府県の中心におって動きがとれぬというような状態は、これは遺憾千万だと思うわけでありますが、こういう一つの欠陥と見られるような点に対しては、重点的な改善がぜひ必要でないかと思う。早急に何らかの方法で、要は動きやすくするということだけで解決できると思うのですが、どういうようにお考えになりますか。
  103. 永野正二

    ○永野政府委員 先ほども申し上げましたように、新しい技術の修得のための一般の普及員なりあるいは特に今回新設をいたします特技普及員に対しましては、十分な研修をいたしたいと思うのでございます。その研修の機会に専門技術員の持っております技術というものが一番直接役立つのでございます。こういう意味におきまして、専門技術員の活用ということにつきましては、ただいま御指摘のように今後十分努力をして参りたい、こう考えております。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に一点お尋ねしておきますが、この改良普及事業を特に今度は普及所が設置できまして、しかも原則は中地区制でいくということになると、問題は市町村における農業関係の行政面の問題と、それからたとえば特に新農村建設の計画とか、あるいは農業委員会の活動の問題とか、それからその地域の中におけるところの農協の農業振興上の問題とか、いろいろ区域内における市町村の特殊性とか、独自の問題というものが、やはり区域の中に生ずるわけですね。ですから、そうした市町村の区域内における独特の問題とか計画というものと普及所の活動がどのようにマッチしてやっていけるかということも今後の一つの課題になるのではないかと思いますが、今までの相談所とかあるいは普及事業と市町村あるいは農業委員会等の横の連絡ということについては若干の指摘はあったわけですが、普及所というものが今度は明確に置かれるということになると、なおさら問題が新しくなるという点もあると思うわけです。ですからこういう点に対しては、事前の配慮というものが必要になるわけですが、局長はこの点についてはどういうように処理されようとしておるか。
  105. 永野正二

    ○永野政府委員 改良普及組織と並んで、市町村の勧業あるいは農業委員会の職員あるいは農業協同組合に置かれております営農指導員というものが、農家の営農指導という意味におきまして、やはり協力をして動かなければならないということは、先ほど触れたのでございます。私ども今後農業改良普及所が置かれた場合には、常時この普及員以外の農業技術指導関係者と接触をいたしまして、絶えず協議をしながら活動していくということが非常に大事であると思うのでございます。そういう指導をいたしたと思います。もちろんただいまお触れになりましたように、市町村の独特の問題あるいは一つの市町村の区域内で行われます新農村建設のためのいろいろな計画の問題というような問題につきましては、これは市町村関係が主体になりまして、これに技術普及員がむしろできるだけ協力して参るという形に相なると思うのでありますが、農家の農業指導という面におきましては、この農業改良普及所を中心として、それ以外のいろいろな指導機関の力を総合的にここに集めてやっていくということが適当である、こういうように考えておる次第であります。
  106. 中村寅太

  107. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただいま芳賀委員の質問に対する答弁で、技術指導態勢についてはよくわかったのでありますが、従来の普及事務所ができまして以来、わが国の農業技術の向上には稗益するところが非常に甚大であったと思うのでありますが、今回特技普及員というものを設置されるに当りまして、従来のような規模の普及事務所に特技普及員というものを入れるということも一つ考え方であろうと思うのでありますけれども、むしろその上に立って従来の普及事務所を相当数総合したようないわゆるサービス・センターというようなものを、県の大小によって違いますけれども、設置いたしまして、そこへ行けばそれぞれの専門的な相当程度の指導者がおって、たとえば土壌なら土壌、あるいは耕蔽機なら耕耘機というものについてそれぞれそこで一応相談相手になれる、こういうような段階的なセンターを設置するということが今日農民の最も切望しておるところのものではないかと考えるのでありますが、今度の法律改正に当ってそういうような点について考慮を払われましたかどうですか、御意見を承わりたい。
  108. 永野正二

    ○永野政府委員 先ほども申し上げましたように、最近におきます農家の技術指導に対する要望は、ただいま御指摘のございましたように、非常に高いレベルまたいろいろ特別な技術の総合されたものを望んでおるということは、私どもも同様に考えておるのであります。来年度から新設をいたします特技普及員はやはり一般の普及員と同じく、農家に直接接して技術指導をしていくという建前でございまして、ただいま御指摘のように、県に何カ所かの技術指導センターがあって、そこにいろいろな専門家がいわばグループになって駐在しておるというようなあり方も、これは十分研究に値する、考えなければならない問題であると私は考えておるのでございます。実は来年度の予算要求の段階におきましてはそういうふうな専門的な、現在おります専門技術員でもよろしいし、あるいはもっとそれ以外のものでもよろしいが、そういう専門技術の一つのグループ指導というようなことを考えたいと思っていろいろ要求もいたしたのでございますが、何しろ来年度予算につきましては、特技普及員の新設とか生活改良普及員の増員というようないろいろな問題が重なりましたために、残念ながらそれは実現をいたさなかったのでございます。これは今後の問題といたしまして、私どもは十分早急に実現できるように努力をいたしたい、こう考えるのであります。
  109. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういう考え方でお進みになったということなら大へんけっこうなんで、私はやはりできるだけ早い機会にそういう方向に持っていく必要があろうと思うのであります。  次にお尋ねしたいことは、技術指導の態勢の方はよく手が届いたように考えられるのでありますが、経営指導の面が必ずしもそれにマッチしていけないのではないか。特に最近は高度の農薬ができ、それが普及し、さらに一面においては機械化が急速に進みまして、耕耘機等の普及がよく行き渡ったのでありますが、これが果して農家経済にどれだけプラスになっておるか、実は疑問の点が多い。ある地方に参りますと、わずか一町か一町五反程度しか耕作しておらない農家相当大型の耕耘機を入れておる、しかもそれが隣が入ったから自分も入れるというようなことでかなり普及をしておる、これが経済効果から見ると実は疑わしいような面がかなりあるのです。こういう面についての指導というものは、これはかなりむずかしい問題ではあります。かってば耕転機の共同購入、共同使用などをやってもみておりますが、なかなかむずかしい。むずかしいけれども、しかしやはり日本の農業というものは共同化の方向へ向わなければほんとうの経営態勢にはならない。ところがそういう面についての指導が非常に弱体である。私は農協の場合、これは別な問題であるようですけれども、日本農協というものは生産共同体の方向に強くこれを指導しなければならないものではないかと考える。それが流通過程などにのみ専念するようになったことは邪道だ、こう私は考えておる。最近至るところに共同耕作、共同経営への熱意が現われて参りまして、ぼつぼつそういう試みも見られるようであるけれども、これに対する指導態勢がおろそかなのではないか。これがかなり今後重要な一つ問題点であろうと思うのでありますが、そういう点についての局長の所見を承わりたいと思います。
  110. 永野正二

    ○永野政府委員 ただいま御指摘のように、従来技術指導が、米作りあるいはイモ作りというような個々の作物の指導ということにつきましては相当な成果を上げておると思うのでございまするが、農家経営の総合的な観点に立った、たとえば農作業をどうするか、機械が入った場合に作付体系をどうするかというような総合的な指導に相なりますと、これは相当実は困難な問題でもございますので、これは今後十分こういう方面にむしろ力を入れて参らなければならぬというふうに考えておるのでございます。そのためにできるだけ末端の普及員に対しまする農業経営の研修であるとか、あるいは県におりまする専門技門員も農業経営の専門技術員というものも相当おります。むしろこれは数から申しますと、稲作の専門技術員、それから畜産の専門技術員と並んで相当多い方の数になっておるでございますが、こういう人たちの活動をもう少し活発にいたしますために、場合によっては試験研究による裏づけをも必要といたすのでありますが、試験研究と相並んでこういう方面に力を入れて参りたい、こう考えておるのでございます。ただ根本的には、ただいま御指摘のように、日本のような零細な経営の場合に、経営を飛躍的に改善するというためにはいろいろ問題が残っておると思うのでございます。農地の問題あるいは協同組合の問題等もからんで参ると思うのでございますが、私ども普及の関係からいいましても、最近のように畜産がどんどん取り入れられていくというような状態を目の前にいたしておりますので、経営の指導ということは十分留意して参らなければならぬ、こういうふうに考えておるのでございます。
  111. 石田宥全

    石田(宥)委員 経営指導の普及員の数が相当あるというお話ですけれども、やはりこれはその末端にだけおっても、今ちょっと触れられたようだけれども、試験場の段階あるいは中央の段階において相当に根本的な方針についてそれがこなされていませんと、やはり末端には浸透しがたいことであるし、末端の普及員はそれによって指導するわけにはいかないと思うのです。これは考え方にも相当いろいろありますから、やはり中央において明確な指導方針を確立されて、その方針のもとに府県段階の研究所、試験場等において、さらにこれを十分こなして農民の身につくようにするには、今の態勢ではまだその点が不十分ではないかと考えるわけです。  それからもう一つ伺いたい点は、この表にも出ておりますように、各府県ごとにそれぞれ非常な相違がありまして、特に新潟などは一普及場当り三千八百七十七町歩というような広範な面積に及んでおるわけでありますが、実情から見ましても普及員の数がどうしても足らない。足らない上にさっきもお話があったように、事務の分量が相当多いのではないか。これはやはり普及員というのは事務も必要であるかもしらぬが、なるべく事務に専念するようなことのないようにしなければならないわけです。その場合ここで特に御考慮をわずらわさなければならない問題は、さっきもお話になったのですが、農家経営計画の立案指導と関連して自作農維持創設資金借り入れの手続の問題です。これは実は非常に繁雑きわまりないものでありまして、農民の手にはとうてい負えないのであります。この前のその前ですか、本委員会で公庫の総裁を呼んだときにも、この点を指摘いたしまして、手続を簡素化するという約束がなされた。その後若干修正されたようだけれども、やはり自作農維持創設資金法案の中に、再建計画というものが知事の責任にわいてさ立てられなければならないという項目があるために、あまり簡素化すことができないのですね。ところがその仕事が普及員に課せられる。その普及員にはこれは非常に重荷なんです。重荷であるが、しかしそれが事実上役立つものであるならばこれまたやむを得ないと思う。しかし事実上これは単なる作文に終っておるのです。詳しく調べてみると、二十種類くらいの書類を八通ずつ作らなければならないので、これはもう大へんな仕事なんです。しかもそれがほとんどいろいろな条件を具備するように完全な作文をやらなければならないような状況なんです。これは意味がないのです。意味がないのですから、この点は将来法律を改正して再建計画というものをつけなければ非常に簡単な手続で済むのです。これは局長よくおわかりだと思うのですが、今国会にこれはもう間に合わないと考えるけれども、将来どうしてもこの点は法律の改正を必要とするのではないかと私は常に考えておるのですが、局長のお考えはどうですか。
  112. 永野正二

    ○永野政府委員 自作農維持資金はその資金の性質上特に非常に低利で長期資金でございますので、一般の資金と混淆されて使用されることを防ぎますために、非常に厳重な書類の要求をしております。これが農家の側にとりまして借り入れのための非常な負担になる、またひいてはこの書類作成を実際担当します普及員にとりましても非常な事務分量がかかっておるということは、私どももよく承知をいたしております。自作農維持資金の手続の簡素化ということにつきましては、これは直接私の所管でございませんので、ただいまのような御意見につきまして十分取次をいたしまして、農林省としてできるだけの考慮をいたして参りたい、こう思っておるのでございますが、この点は私から結論的なお答えはちょっとできかねるのでございます。
  113. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、普及事務所の予算との関係芳賀委員からだいぶ御指摘が行われたのでありますけれども、予算との関係でありますけれども、どうも設備が十分でない。特に自転車、それからオートバイですね。初めて普及事務所ができたときには、緑の自転車というものは農村では相当な魅力であったのですが、このごろではもうすっかりがたがたになってしまって、乗れないような状況になって、どこかの納屋に突っ込まれておる。それで仕方なく今度は普及員が自分個人のものとして、大部分が乗り回しておる。しかし自転車という時代が一体適切かどうか。もうそういう時代ではないと思うのです。昨年新潟地方などでセジロウンカが発生したようなときには、自転車ではとても回り切れない。そして、予察もできなければ、発生している事実もわからぬでおって、相当な被害を受けたというようなことがあるのでありまして、やはり今日の時代では、各事務所に、二、三台くらいのオートバイくらいを設置することが適切な緊急の要請であろうと思うのであります。そういう点について、もう少し近代的な施設をやって、普及員が十分手腕を発揮し得るような態勢を作ることが必要ではないかと思うのでありますが、そういうことについて予算要求などをされたかどうか、また将来どのようにお考えになっておるか。
  114. 永野正二

    ○永野政府委員 普及員の機動力を増加いたしますためにオートバイ、自転車、スクーター等の購入について助成をいたしておるのでございます。詳しくは資料の予算の項目の中に入っておりますので、お読み取りを願いたいと思いますが、今後もこういう問題についてもできるだけ努力をいたしたいと考えております。
  115. 石田宥全

    石田(宥)委員 普及員の給与の状況をちょっと伺いたいのでありますが、他の職員と比較いたしまして、どうも普及員の給与が非常に低過ぎやしないかと考えるのですが、その点をちょっと伺っておきます。
  116. 永野正二

    ○永野政府委員 普及員の給与が特に一般の県の職員に比べて低いというふうな、制度としては何にもそういうことはないのでございますが、以前の農業技術員の関係から引き続いて普及員になっておられる方が相当ございます。そういう場合には、民間歴と官歴の関係で、多少昇進がおくれぎみであるというようなことがあると思うのでございます。こういう点につきましては、地方の人事の上での問題でございまして、一挙に解決することはなかなか困難であろうかと思うのでありますが、私どもといたしましては、できるだけそういうことのないように府県と相談をして参りたい、こう考えます。
  117. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから特技普及員の学力程度なりあるいは試験制度なり、どういう標準で特技普及員というものを採用されますか。これは、ただ何かちょっと特技があるからといって特技普及員というふうにされることになると、将来いろいろ弊害も起る問題なのでありまして、やはりきちっとした一つの標準がなければならないと思うのでありますが、どうでしょう。
  118. 永野正二

    ○永野政府委員 もちろん御指摘のように、特技普及員であるための必要な資格というものは、私どもといたしましてははっきりときめて参りたい、こう思っております。従来いろいろな特技研修を受けた普及員、普及員としても経験を持っておるというような人を任命するのが適当であろうかと思うのでございますが、この標準につきましてはなおもう少し研究さしていただいた上できめて参りたいと思っております。
  119. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほど芳賀委員の質問に対して、普及員の員数については、府県とも協議の上決定するという答弁があったのですが、もちろん府県の負担もありますから、府県の意向も聞かなければならないと思いますけれすども、これに対して府県が熱意を持たないために、思うように人員の配置ができないということははなはだ遺憾だと思うのですが、そういうことはあるのかないのか。  それからもう一つは、従来の普及員の中から特技普及員というものを相当数ピック・アップされるということなのですが、そうなると五百三十名の特技普及員の中で三百名程度は従来の一般普及員の中から区振りかえるというとのようでありますが、そうすると従来の一般普及員がずっと減員になるのではないかと考られるのですが、そういうことになるのかならないのか、この点を伺っておきます。
  120. 永野正二

    ○永野政府委員 三百名分は定員といたしまして従来の普及員からの振りかえでございますので、その分だけは減員に相なります。
  121. 中村寅太

    中村委員長 細田綱吉君。
  122. 細田綱吉

    ○細田委員 ただいま石田委員から御質問があった改良普及員の問題でありますが、大体現在の普及員の平均の俸給は幾らですか。
  123. 永野正二

    ○永野政府委員 普及部長からお答えいたさせます。
  124. 徳安健太郎

    ○徳安説明員 私から御説明申しますが、これは少し古いのでありますけれども、三十二年の二月現在で、専門技術員が十級七号、二万八千四百五十九円、改良普及員が主任、所長が九級の五号、二万九百五十五円、一般が七級五号、一万四千三百八円、これが普及員の待遇でございます。
  125. 細田綱吉

    ○細田委員 いわゆる改良普及員の方は、大体学歴の最も多くを占めている諸君は、大学なのかあるいは高等学校なのか、あるいは旧制中学なのか、そういう点はどうでしょうか。
  126. 永野正二

    ○永野政府委員 普及員の学歴は一番多いのは旧制農学校の約六〇%でございます。
  127. 細田綱吉

    ○細田委員 農業改良法のねらいはどこにあるのでしょう。たとえば農家経済、農民生活の改善あるいは農業の発達、農業生産増大といろいろあるようですが、大体本改正法律案のねらいはどこにあるのでしょう。
  128. 永野正二

    ○永野政府委員 農家の側から求めてられております、より高い技術及び畜産でありますとか、園芸でありますとか、その他のいろいろな特殊技術を総合いたしまして指導いたしますために、従来の個々の普及員の普及活動に加えて、地区の普及所を単位といたしまして総合指導をしていきたい、そのために地区の普及所というものを法制化して参りたい、こう考えております。
  129. 細田綱吉

    ○細田委員 いわゆる局長の言う総合指導というのはどういうものですか。
  130. 永野正二

    ○永野政府委員 たとえば畜産を導入いたします場合に、家畜の飼養方法以外に飼料作物を取り入れました一つの作付体系をどうしていくかというふうに、一つの技術がほかの技術といろいろ関連を持って参りますので、それらの技術を矛盾なく、総合的に指導していきたい、こういうことでございます。
  131. 細田綱吉

    ○細田委員 技術の利用を遺憾なく総合的にという、そういう抽象的な説明では、頭の悪い私にはわからない。そこでねらいは生産を増強しようとするのか、あるいは生産はこの程度でいいがむだがずいぶん多いので、農家経済の向上を期するとか、ねらいを一つ具体的に教えていただきたい。
  132. 永野正二

    ○永野政府委員 私の説明が足りなかったと思うのでございますが、一人の普及員ではそういう農家の要求いたししますいろいろな高度の技術を、一人だけで指導するということは、なかなか困難でございます。普及地区単位には、一般の普及員のほかに、特技普及員もおりますので、そういう特異の技術をそれぞれの特異の普及員が農家に指導する、そのためにはばらばらに普及員が一人だけで活動するのではなくて、地区の普及単位に普及員が一つの組になりまして、おのおの必要な技術の指導をできるように、普及員の普及活動を総合調整する必要がある、こういうことでございます。
  133. 細田綱吉

    ○細田委員 そうすると、振興局の指導方法としては、たまたま採用した普及員のいろいろ特性、特技等に頼って、全国ばらばらに、お前のところは機械が上手だから機械をやってくれ、お前のところは馬を見ることがうまいから馬をやってくれ、お前のところは一つ野菜が趣味があるようだから野菜をやってくれ、こういうことなのですか。
  134. 永野正二

    ○永野政府委員 農家の要求は、必ずしも地区によって一つの技術だけではございません。いろいろな技術の組み合せの指導を希望しておる状態であると思いますので、そういう組み合せの指導ができるように、従来の一人々々の普及員が受け持ちをきめて、そこの受け持ち地区は一人の普及員でやっておったという体制に対しまして、今度はその体制にプラスをいたしまして、地区の普及所にいる普及員が、それぞれの特技に応じて、農家を指導していくことができるようにしようということでございます。
  135. 細田綱吉

    ○細田委員 これはあなたの責任でないかもしれません、経済局かもしれないが、いろいろあなたの言う専門技術を使って、からだはあまり使わぬで、サボりながら従来の生産を上げてい旧く。これも実際農村には必要なんです。現在あまり働き過ぎて、ちっとも生産が上っていない。これも昼寝しておっても従来の生産ぐらいはやり方によっては上っていくと思うんだが、もっと技術を導入し利用して高度の生産を上げていきたいんだということになると、農民にとっては非常に迷惑なんですよ。というのは、ことしの白菜を見ればすぐわかるでしょう。二割増産したら三割下った、三割増産したら五割下った。これでは迷惑なんですが、こういう点はどういうようにお考えになっておりますか。
  136. 永野正二

    ○永野政府委員 お説の通り、単に物量だけの増産をいたしたからといって、農家経営がよくなるものではございません。これは生産に即応しまして出荷なりあるいは価格なり、その他の施策が十分伴わなければ、農家経営改善されないのでございます。ただ今回、たとえば園芸の特技普及員というものが置かれますと、これは単に生産技術のみでない、出荷の事情、市場の事情等も絶えず研修その他によりまして、専門の知識を与えまして、それによって農家にできるだけのその部面に適当した仕事ができるように私どもも十分力を入れて参りたい、こう思うのでございます。ただこれだけで農家生産物の価格が安定し、農家の所得がふえていくということにはもちろん参りません。もちろんほかに価格対策、出荷対策その他の対策も十分考慮して参らなければならぬと思います。
  137. 細田綱吉

    ○細田委員 そこで価格対策、出荷対策に対しては、あなたはどういう見解をお持ちですか。
  138. 永野正二

    ○永野政府委員 これはもちろん品目によりましていろいろ対策があると思うのでございます。農産物の中の主要なものにつきましては、相当価格安定の対策が徹底いたしておるものも多いのでございますが、ただいまお話の蔬菜等につきましては、最近相当急速な増産が見られております。また本年は特に暖冬の影響を受けまして、冬野菜が相当増産になったというようなこともございまして、御指摘のような事態が生じたということは、これは今後こういう方面の出荷対策なりあるいは共同販売体制なりあるいは市場並びに消費地の事情の調査なり、その調査の結果を農民に対して円滑に的確に伝える情報組織なりというようなものを相当整備して参らなければならないというふうに考えております。
  139. 細田綱吉

    ○細田委員 農業経営の上に一番不足しているのは統計だと思う。統計がほとんど完備されていないし、農林省で相当整備されたものも農民には徹底していない。そこでこれは経済局の方面の所管になるが、農協の方も加わるのですが、もっと農家経済に対する統計ということを、どの面を見ても、畜産局の方を見ても同じですが、振興局の所管の問題を見ても、あるいは経済局の所管の問題を見ても、一番統計が足りない。またその統計が農家には徹底していない。ただ場当り——場当りというと言葉は悪いが、しかし一番適切な言葉だ。場当りにとっついていく。その作物にとっつく、そこで過剰状態にすぐなってしまって、大下落を来たして、何のことはない、一年むだをしてしまうということになる。実際むだなんですよ。ことしの白菜なんというものは、市場までトラックで持っていったら、トラック代の方が高くなってしまったというのがあるのですよ。そういうようなことで、幾ら振興してくれても、かえって農民の方はありがた迷惑である場合もあるわけです。そこで農業統計の方面については、これはもちろん統計事務所があるから別かもしれないが、この際やはり普及員もこれに協力しないと、ほんとうに地について統計というものは私は生まれないと思う。こういう点は振興局長はどうお考えでございましょうか。
  140. 永野正二

    ○永野政府委員 統計の整備があらゆる部面にわたって完全であるとは思いません。御指摘のように今後十分努力をいたさなければならぬと思いますが、普及員を統計の仕事に使うということにつきましては、私はもう少し考えなければ、まだ問題があるというように考えております。
  141. 細田綱吉

    ○細田委員 農業改良助長法に基く政令「農業改良研究員、専門技術員及び改良普及員の任用資格を定める政令施行規則」こういう政令があるようですが、これは現に励行されておりましょうか、大体従来の踏襲でそのまま行っているでしょうか、全国的な状況はどうでしょう。
  142. 永野正二

    ○永野政府委員 この資格につきましては、いろいろその後教育制度の新しくなったような問題、あるいは新しく特別な講習所ができるような場合にもちろん十分考慮しなければならない問題でございます。私どもは時々刻々の情勢に従いまして政令を十分変える必要があればもちろん変えて参りたいと思いますが、従来政令できめました通り実施はいたしております。
  143. 細田綱吉

    ○細田委員 専門技術員及び研究員というのは政令にあるのですか。いわゆる普及員というのは研究員のことをさすのか、あるいはほかの普及員という特別なものがあるのか。これはいかがでしょうか。
  144. 永野正二

    ○永野政府委員 改良研究員、専門技術員及び農業改良普及員はおのおの別のものでございます。
  145. 細田綱吉

    ○細田委員 改良研究員と普及員はどう違うのでしょうか。
  146. 永野正二

    ○永野政府委員 改良研究員は試験研究の中におきまして、試験研究の立場から普及組織に対しまして試験研究の成果を流す役割をいたしておるのであります。
  147. 細田綱吉

    ○細田委員 政令によっていわゆる普及員の資格を定めてないようなんです。あるいは不勉強で私の方が見落しているかもわからないが、もしそうであるとするなら、この資格まどうして定められなかったのですか。
  148. 永野正二

    ○永野政府委員 普及員はやはり一定の資格要件を備えることが必要だと考えますので、条令によってこの資格を定めておるわけでございます。
  149. 細田綱吉

    ○細田委員 そうすると、各府県にそれはまかしておる、こういうわけですか。
  150. 永野正二

    ○永野政府委員 この改良普及組織につきましては、国と県が方針につきまして十分協議をいたしてやることになっておりますので、それらにつきましては、農林省と協議をいたしました上で都道府県が定めておるわけであります。
  151. 細田綱吉

    ○細田委員 私はたまたま皮肉にも例外を見たかもしれませんが、普及員というのは旧制中学出の、見方によって農村ボスの失業救済のような場合を見るのです。私のようなつむじ曲りだからしょっちゅう例外を見るのかもしれませんけれども、これはどうなのですか。実際全国的にどういう人があなたの打ち合せられた条例で標準になっているのですか。
  152. 永野正二

    ○永野政府委員 現在の普及員の学歴を見ますと、大学、高専卒が約十二%でございます。それから農業講習所それから短期大学程度の技術員養成所出身の者が約二〇%でございます。それから旧制農学校程度の者が約六〇%、その他が八%となっております。普及員の関係はあまり交代が激しくございませんけれども、最近補充をいたしますものはおおむね農業講習所卒業以上の相当な学歴を持った者が多くなっております。
  153. 細田綱吉

    ○細田委員 普及員は大体県の吏員あるいは農林省、どちらになるのですか。
  154. 永野正二

    ○永野政府委員 県の吏員でございます。
  155. 細田綱吉

    ○細田委員 県の吏員とすると、県吏員以上の身分保障があるでしょう。これは先ほど芳賀委員でしたか、石田委員でしたか御質問しておったようですから私はあえて申し上げませんが、実際問題として、今の資格程度を見た場合に、農家経済の総合的な指導といってもこれは実際むずかしいと思うのです。そこであなたの方であれをこうやれとか、ああやれとか言ってたくさんの報告資料を集めるということになると思うのですが、そうすると、自主的な活動というものがだんだん制約される。旨いかえれば、その人たちの採用基準というか、それがあまりにも低いので、あなたの方としては目が離せないから、盛りだくさんの資料を説明してそういう方向に仕事をさせるということになるのですが、少くともこのごろの農家というものは楽な——富農とあえて言わなくても、楽な経営になって、いなかの方まで高等学校なんかが非常に多くなった、従ってそういうところへ出ている人たちが非常に多いしまたどんな貧農だといっても、御承知のように、中学校は義務制ですから全部出ている。今のままであなたのねらわれる技術と経営の総合的な調査、研究、普及なんといっても、これは先ほど石田委員も言っているように、報告書をこしらえるだけでも汗だくになってしまって、精一ぱいだということになると、あなたのねらいは少しはずれてきているのですが、これに対する御所感はどうでしょうか。
  156. 永野正二

    ○永野政府委員 先ほども申し上げましたように、県、市町村を対象にいたしまして普及員を設置いたしましてからその後の増員というものが割合に多くなかった、またその後の新陳代謝がそう多くなかったのでございまして、その現実の事態をもとにいたしまして、農家に対する指導を徹底いたしますためには、私どもとしてはやはり御指摘のような心配があるのでございます。これらの点につきましては、いろいろな新しい農業技術をそのつど研修によって末端の普及員に渡してやり、普及員に武器を供給するということに私どもとしては十分努力をいたさなければならぬと思っております。
  157. 細田綱吉

    ○細田委員 終ります。
  158. 中村寅太

    中村委員長 中馬辰猪君。
  159. 中馬辰猪

    ○中馬委員 若干の御質問を申し上げます。  普及所の運営費の国庫補助に対する法律的な根拠なんですけれども、今度の改正法案を見ましても若干あいまいではないかという感じがするんですが、その点についてお伺いします。
  160. 永野正二

    ○永野政府委員 普及所の運営費なるものはどれをさすかという問題でございますが、来年度の予算に計上しております普及所運営費といたしましては、先ほど御説明をいたしましたような消耗費、通信費等の内容のものでございます。これらはおおむね普及員の普及活動のために必要な経費でございますので、十四条の二号にございます普及員の活動に必要経費として計上しておる、こういうふうに私は理解をいたしております。
  161. 中馬辰猪

    ○中馬委員 ことしの予算を編成する際においても、大蔵省と農林省の間においていろいろいきさつがございまして、二分の一というのを三分の二に引き上げるということについては非常な努力があったと思うのですが、来年度、昭和三十四年度以降における予算を編成する場合も、おそらくこの問題では例によって例のごとき結果を来たすんじゃなかろうか、こういう心配を実はいたしておるのであります。そこで思い切って今度の法律を改正する際に、その国庫補助を三分の二にするということをもう少し明確にする必要があると思うのですが、そういう点いかがでしょう。
  162. 永野正二

    ○永野政府委員 現行の法律の十四条によりまして、普及所の運営のため必要な経費というものは補助の対象になるわけでございます。もちろんここに普及所のために必要な経費という明文を設ければより一そう明確になることは明らかだと思いますけれども、普及所の運営に必要な経費と申しますと、たとえば普及員自体の経費も普及所の経費じゃないかというような考え方もございますし、必ずしもそれを加えませんでも、現在の十四条で十分解釈上読めるというふうに私は考えております。
  163. 中馬辰猪

    ○中馬委員 従来でもときどきやっておると思うのですけれども、管轄区域の範囲外の指導ということは一体どうなっておるのですか。実は私は先般政調会でこの案を審議したときにも申し上げたんですけれども、だんだんこの法制化が進んできて、管轄区域が固定化してきますと、勢い自分たちの範囲外のところには顔出しをしないというような現象が出てくるのではなかろうか、たとえばお医者さんのようにどうしても自分の管轄内の普及員に満足をしない。さらにもっと隣村の普及員の方がよろしいというようなことがたくさん出てくると思うのですよ。その場合に管轄区域があまりにも固定化して参りますとそういう指導の交流といいますか、農家の人が呼びにいく、呼びに行かない、いろいろな問題があると思うのですが、そういうことについては行政指導の面でいろいろ御工夫はあると思いますけれども、願わくはいかにも固定化して自分の管轄区域外には全然指導をしないというような間違った方向に進むことがないことを望むのですけれども、その点についての御見解を伺います。
  164. 永野正二

    ○永野政府委員 この改正をいたしましても、一応建前といたしましてはおのおのの普及員につきまして受け持ち地域というものは、一応の仕事の区分として同様にきめて参りたい、こう考えておりますが、この普及所が設置されますれば、この普及所単位に普及員のおのおのの特技と申しますか、おのおのの特殊な経験等を利用いたしまして、できるだけ農民に対して適切な指導ができるように、普及員の活動を所長が調整をするということができるようになりますので、そういうことによりましてできるだけ御不便をかけないようにしたいと思います。
  165. 中村寅太

    中村委員長 他に質疑がなければ、質疑はこれにて終了いたしました  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十四分散会