○塩尻参考人 ただいまから参考人としまして
農業所得税の問題で御説明いたしたいと思います。
私たちの村は北海道上川郡
永山町でございますが、私は上川
農業協同組合連合会の代表といたしまして、その管内及び全道的な範囲で多少
お話し申し上げたいと思います。
まず第一に、各税務署及び札幌国税局と話し合いをいたしました問題について、最初に国税局及び税務署のとっております農村に対する
態度を申し上げたいと思います。札幌国税局は、最初は各
農民団体及び農協その他それぞれの団体の
意見を十分聴取するという
ような話をしておりましたが、二月七日に札幌国税局は、国税局の
考え方の基準を発表いたしまして、われわれの
意見は一応聞きおく程度で、その後開示いたしました標準率は一向に修正をいたしておりません。それから各税務署におきましては、二月十日ないし十二日の三日間に、全道的に各税務署ごとに各町村にその
内容を開示いたしております。この問題に対して各町村におきましては、それぞれの
立場から国税局に
意見を申し述べる者及び各税務署に直接
意見を申し述べる者もございましたが、二月十七日には札幌の局に対しましてそれぞれ農村団体の
意見を申し述べております。しかしながら、このことは
意見を申し上げただけであって、一向にこれに対する
態度の
変更はあまり現われておりません。それが末端の税務署に入りましていよいよ町村段階の御説明に参りますと、税務署は各町村ごとにそれぞれの収入及び必要経費を示しまして、この標準率によって計算をしてよこせという
指示をいたしておりますが、その
内容における矛盾を追及いたしましても、各税務署ともこれを修正し
ようとはいたしません。特に新聞等で拝見いたしますと、
農民が、
指示する標準率をのまない場合には、直ちに更正決定をするという
ような記事が北海道新聞を通して発表されております。このことは申告以前において納税者に対して非常に脅迫的な印象を与えておる
ように感ぜられるわけであります。
今まで申し上げましたのは、国税局及び各税務署が各町村に対してとってきた
態度でございますが、次に開示された標準率の矛盾について町村がどの
ように困っておるかという実情を申し上げてみたいと思います。
まず経費率の問題につきましては、これはこまかくその開示された根拠に基いて御説明いたさなければむずかしいことでありますが、時間もございませんから、一、二点
指摘いたしまして、矛盾がその中に含まれておるということを御参考に申し上げたいと思います。
まず第一は、最も正しいはずであるべき市町村の市町村税、これが所得税に及ぼすいろいろの税収額がございますが、この町村税の累計をもって割りましたところの反当の必要経費が、幾ら役場でこれを税務署に持ち込みましもて、決してぴったり合わない標準率が毎年出て参るのでありまして、今年もそれと同じことが
指摘されております。それから農家がどうしても納得できない
一つには、北海道における牛馬費の認容率の問題でございますが、大体七〇%を適用しておるわけであります。この三〇%を削った
理由といたしましては、三割ぐらいの農家は馬を飼育していない、だから七〇%である、こういうふうに申しておるわでありますが、この三〇%の中には、自動耕耘機その他によるものもありますし、あるいは馬を飼育せざるところの小農家があるわけであります。これは自動耕耘機その他専業の馬車追いの馬を借りて起してもらうわけでありまして、実際の
農業経営に消費いたします分量からいきますと、当然一〇〇%になると
考えられるのであります。特に自動耕耘機その他のものを除外いたしますれば、これは当然一〇〇%認容しなければならぬものであります。これは単に一、二の例でございますけれ
ども、こういう
ような矛盾もたくさん包含いたしておるということを御
指摘申し上げるわけであります。
次になわ延びの問題でございますが、作物報告
事務所は、上川支庁管内あるいは十勝支庁管内、北海道をおしなべて生産量を計算する場合には、われわれとしては責任ある数字を出しておると思われるけれ
ども、個々にその町村の反別あるいは反収を
指摘せよと言われた場合に、これは決して正しいものではないと明らかに申しております。そのことは標準率の取り方がその町村の各反別もしくは反収を把握するためにとっておるのではないから、これはその町村に適用されては誤まりを生ずるとわれわれは聞いておるわけであります。この
ような大体統計
調査部の資料に基きまして、一部の町村はそのまま、もしくは一九・九%であるとか、いろいろ非常に大きななわ延べ等も適用いたしておる町村もございますが、この問題が末端の農家においてどの
ような課税の実態を生ずるかといいますと、農家自体には非常にでこぼこがございます。その中で正しい申告をいたしておりますところの農家は常にこの問題で第三者の被害を毎年続けなければならないわけであります。すなわち、昭和二十年の終戦以来まじめに申告をしておった者、まじめに米の
供出をいたしておった者、こういう
ような正しい農家が常に間違った数字の下敷きになって今日も呻吟をしなければばならないわけであります。そこで、われわれ市町村において、実際に農家についてこの課税の実務を行い、あるいは指導をいたす者といたしましては、忍び得ざる苦痛を味わうものであります。この
ような意味におきまして、当然作報自体の数字そのものすら正確度を欠くというものを、これをまた再びどこにあるかわからない架空の数字をもって正しい農家に対しまして非常な苦しみを与えるという札幌国税局あるいは税務署自体の指導、あるいはこれを実行せんとするところの強硬な
態度に対しましては、われわれとしては非常に苦痛を感じておるものでございます。
それから次に申し上げておかなければならないことは、担税力の問題でございます。御承知の
通り、昭和二十八年、二十九年、三十年を一年のけまして三十一年、これは北海道開拓以来の大凶作でございました。この北海道の凶作に対しましては、昨年度の国会におきまして多額の経費を投入され、
農民の救済のために当っていただいたわけでございますが、
ようやくお正月を
一つ越えましたときにわれわれに襲いかかってきましたものは、借りましたあらゆる
政府資金を始め、生産資材の資金あるいは市町村民税等あらゆるものの償還が待ちかまえておったわけでございます。この
ような苦しい北海道の
農民が、
ようやくお正月を
一つ過ごしただけで、普通並みの所得税を払えるであろうかどうかということは御想像にまかせるわけでございますが、この
ような
立場に立って、昨年来北海道協同組合連合会を初め
農業委員会、北海道議会、町村会、これらあらゆる北海道の各団体が、大蔵省を初めそれぞれの
政府機関に対しまして、本年度の所得税に対しましては特別なお
考えを願いたいという陳情をいたしておるわけでございます。
農林大臣が北海道に来られましたときにも、あるいはわれわれの代表から
お話をいたしておったと思うわけでございますが、過日われわれに示されましたところの所得税の開示を見ましたときに、まずわれわれの管内で二石九斗八升四合何がし、約三石の反当平均の村を筆頭といたしまして、二石八斗、二石七斗くらいがずらりと並んでおるわけでございます。かく昭和三十年の豊作以前において
考えてみますときに、三十年からは二斗何升、その他の年におきましては一俵以上の収穫率の増加が本年度の所得税の開示に当って反収として示されているわけでございます。この開示を見ましてわれわれは全く驚愕をいたしておるわけでございます。細民を救うのが国の政治であり、この政治を行うためには末端のそれぞれの機関が最も心を込めて行わねばならぬというときに当りまして、全く何といいますか、食う米もない農家からなお上着を取り、ズボンをむしるという
ような感じがいたされてならぬのでございます。また一方十勝地方の道東
地帯におきましては、本年度もあわせて冷害凶作を受けておるわけでございますが、この地方の豆類の価格の決定のいたし方について一言申し上げてみたいと思うわけでございます。
大体北連の発表価格でこれを七六%を二四%とっているわけでございます。これはなぜ北連の価格一本建にとらないかといいますと、業者に入ります価格は、まず仲買人がおってこれらが集めて参ります。そうして業者に入って参るわけでございますし、また一部には直接農家から買うものもございましょうけれ
ども、買上値段が非常に高いのであります。北連価格よりも業者価格の方が高く押えられているわけでございます。これは中間に
一つ機関を通します以上当然でございますが、これはほんとうの農家の手放れ価格ではないのであります。これを標準率の中に織り込みまして豆類の価格算定に寄与いたしておりますために、農家の手取価格が非常に高く押えられるという実情が明らかに出ておるわけでございます。それからまた、この中には規格外の、検査に通らない豆類も相当量にあるわけでございますが、これらの価格等が当然その中に算定をされまして大幅に引き下げられてなければならないわけでありますが、これらにつきましても、税務署の開示いたしておりますものの中には
農民の納得のいかないものが多数含まれておるのでございます。
そのほか一面各町村で計算をいたしますときに、税務署はどの
ような
態度をとっているかという中で、従来特別控除をいたしておりました用人費の問題等が、本年度は一反歩当りどれだけの耕作人員がかかるから、お前の家には家族が何人おるから用人はこれだけでよろしい、こういう
ように、
一つの基盤のますの
ようなものを作ってそれに当てはめ
ようといたしておりますが、北海道の
農業は、御承の
通り、田植えをいたしますのには五月の十五日ごろからぼつぼつ始まりまして、大体最盛期は五月の二十日ごろから五月一ぱいで終る上川の中央部地方、あるいは五月の二十日ごろから六月の五日ごろまでに終る空知管内、こういう
ように、大体
地帯別に多少のずれはございますが、その地方々々が十日間くらいの間にすべての田植えを終るわけであります。あるいはまた稲刈りにいたしましても、大体十日ないし十五日間の間に作業を終らせるわけでございます。でありますので、その期間に一度に多数の用人費がかかるわけでありますが、これをお前のうちでは、自分のうちで済んだら隣のうちから隣のうちへと一月の間かかって田植えをしたならば用人費は要らなくなるではないかという
ような方式で押えられては、まことに迷惑な次第でございます。こういう
ような面につきましても、十分に考慮を払われなければならないと思うわけでございます。これらの問題の諸点につきまして、各税務署ごとに、
農業協同組合の連合会あるいは町村の協同組合その他各
農業関係団体が連日のごとく陳情あるいは修正方に出かけるわけでございますが、がんとしてこれの採用というものが一向に行われないわけでございます。そして刻一刻と申告の期日は迫って参ったわけでございます。そこでわれわれといたしましては、どうしてもこれは末端の税務署だけの話し合いの結果では
解決がつかない、何とか国会の御審議の中で一日も早くこれらの矛盾を
解決していただきたいということがわれわれの念願でございまして、何とぞ本
委員会等におきまして
調査団等の派遣をしていただいて、一日も早くこれが
解決をはかられんことを切にお願いを申し上げる次第でございます。