○稻村委員 それじゃ私、もとへ戻ってまた御
質問申し上げますが、これは先ほど辻委員と
防衛庁長官との間の
質疑応答の中にも現われましたけれ
ども、すでに
武器としての空軍というものはだんだんと主たる立場を失いつつある、こういうことは事実だと思うのです。先ほ
どもICBM、IRBMが実戦の
段階にあるかどうかとお尋ねしたら、IRBMだけはあるようにも思われるというような、あいまいな御答弁ですが、そのようなことでは
日本の
国防計画はできないと思うのです。そんなことをあいまいにして、そして
日本の自衛とか、あるいは
国防とかいうものを私は論ずるだけの
価値はないと思うのです。現に世界の
情勢というものは、空軍にかわってロケットが出てきた。ロケット主位の時代になって空軍は従になる。だんだん、これは無用とはいかないけれ
ども、無用の方向にあることは事実なんです。たとえばこれは昨年の十月十四日のUPの電報でありますが、アメリカの
国防総省はダグラス、ボーイング、マーチンの三社に対して、B47、B52、B57、及び試作中の数種の原水爆機の製作を中止するよう命令を発しておるわけです。ソ連も戦略爆撃機である御自慢のバイソン、とかベアとかいうものの製作数を五十分の一に切り下げるということを言っておるのです。これを見ても、ロケットが発達すれば、ロケットの発達と並行して空軍はだんだん減りつつあるのです。というのは、どう見ても、これはすでにICBM、あるいはIRBM、特にIRBMが実戦の
段階に入っていることは明瞭なんです。これがわからぬというふうなことで
国防計画をされてはたまったものじゃない。
基本がはっきりしないで何で
国防計画ができるかというのです。要らないものを作って、ただ安心しているだけです。それだからピストル強盗に対してステッキでも持って対抗しようというようなことになるのですよ。それだから、あなたのそういうふうな根本的な立場が明確でなければ、幾ら
国防をやったって、それは何にもならない。そこで私は今日のロケットの
段階において、これは端的に申しますけれ
ども、かりに米ソ戦がありと仮定するならば、中共やソ連から
日本を攻撃した場合、当然攻撃されます、
日本はアメリカの
軍事基地があるのだから。米ソ戦はないと思うけれ
ども、かりにありと仮定した場合に、これは
軍事専門家でなくたってわかりますが、最初の
段階においては、とどめをさす
段階ならば別だけれ
ども、最初の緒戦の
段階は当然中共やソ連からロケットによる攻撃なんです。アメリカの
軍事基地の攻撃なんです。韓国だとか蒋介石なんかがもし侵略するとすればまた別でしょう。そういうことがあり得るかどうか知らぬけれ
ども、すでに世界はロケットの
段階に入っていることは明瞭なんです。そこでこの前も私が御
質問を申し上げたときに引用したのでありますが、何人が
考えましても、
防衛庁長官がICBMやIRBMが実戦の
段階に入ったかわからぬなんという、そんなことでは、現在の
国防など全然論ずる資格もなければ、
軍事科学を云々する資格もないのです。この前私は言ったでしょう。スエズ
戦争の一年前、もう三年以上になりますか、ソ連のジガレフ元帥というのが、「航空戦略に関する考察」というパンフレットを書いておる。これはソ連の内部において五万部売れておるパンフレットである。それから世界
各国で翻訳されて非常に売れたパンフレットである。おそらく
防衛庁の諸君でも見られた方があるでしょう。その中で、ジガレフ元帥は戦略空軍はもう廃物になったと大胆に言っておる。急にフルシチョフが言ったのじゃないのです。というのは、戦略空軍というものは膨大な基地が要るし、人員が要るし、しかも資材が非常に必要であるし、それから敵の爆撃にさらされる。速度もおそい、それから射程距離も短かい。ロケットの方がはるかに射程距離も長いし、速度も早い、しかも敵の目からこれをカムフラージュできる。地中深く埋没するから敵が気がつかぬ。それだから、すでにロケットの時代になった、戦略空軍が廃物になった、こう言っているのです。それは、世界の
軍事専門家はだれでも知っておる。アメリカの
軍事専門家もみな言っている。ところがアメリカではロケットに急に変えることができない。当時のウィルソン
国防長官が
航空機会社の代弁者だから、絶対に空軍からロケットに切りかえることに反対した。急に転換されては飛行機工場がつぶれてしまう、そうすると資本家が破産するから……。ところがソ連の方はいわゆる必要
生産だから、必要でないやつはどんどんスクラップにしてやめてしまう。そこで工業水準のおくれているソ連が——工業水準では、あなたの知っている通りソ連はアメリカよりはるかにおくれております。しかし
生産方法が優秀であったがために、人工衛星とかロケットが進んでしまった。そうして現にスエズ
戦争が起きたときに、ブルガーニンは、イギリスがスエズに出兵をしたときに、ロンドンをロケット攻撃するといっておどかしたでしょう。ちょうど私はインドに行っておりましたが、大騒ぎでした。そこでイギリスはすぐに撤兵した。だからロケットはすでに実戦の
段階になっておる。ロケット時代に入っているのです。しかも、アメリカはどうかというと、さっき言った通り、今までのウィルソン
国防長官がやめ、そうして人工衛星とICBMがソ連に出現すると、急に空軍をやめて、
日本の
軍事基地からも急速に引き揚げを開始したのです。それならもうすでに
戦争はロケット時代に入っているじゃないですか。それをまだわからぬなんて、そんなことで、どうして
日本の
国防計画が立てられますか。むだな
国防、おもちゃの軍隊を作っても何にもならないことになってしまうのです。私は
軍事専門家でも何でもないのですけれ
ども、常識の問題、政治の問題です。
政治家などというものは、何もこまかいことを知らぬでも、大局さえ知っていればいい。大局に立って、世界の大勢と今日の
軍事科学の
段階をよく洞察して、そのもとにおいて
国防計画を立てなければ、その
国防は全くむだなものになってしまう。ロケットがまだ実戦の
段階かどうかわからぬなんて、そんな話は——中距離弾道弾あるいは大陸間弾道弾というふうなものが実戦の
段階にあるかどうかわからぬなんという、そんな
考えで、どうして
国防計画が立てられますか。これは議論ではないのです。あなたはそんな
考えで
国防計画を立てておるのですか。もう一度あなたの
意見を聞かして下さい。