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1958-03-07 第28回国会 衆議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月七日(金曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 福永 健司君    理事 相川 勝六君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君    理事 石橋 政嗣君 理事 受田 新吉君       大村 清一君    北 れい吉君       小金 義照君    田村  元君       辻  政信君    永山 忠則君       山本 粂吉君    粟山  博君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       淡谷 悠藏君    稻村 隆一君       中村 高一君    西村 力弥君  出席国務大臣         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         国防会議事務局         長       廣岡 謙二君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         大蔵事務官         (管財局長)  加屋 正雄君         総理府事務官         (調達庁次長) 丸山  佶君  委員外出席者         防衛大学校長  槇  智雄君         防衛庁技官         (技術研究所         長)      青山秀三郎君         防衛庁書記官         (経理局施設課         長)      大森 頼雄君         農林事務官         (農地局管理部         長)      庄野五一郎君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月六日  建国記念日制定に関する請願外五件(古川丈吉  君紹介)(第一三三〇号)  同外三十六件(石坂繁紹介)(第一三六一  号)  同外三十三件(大橋武夫紹介)(第一三六二  号)  同外一件(黒金泰美紹介)(第一三八三号)  同(中馬辰猪紹介)(第一三八四号)  同(神田博紹介)(第一四三〇号)  農林省定員外職員全員定員化に関する請願(  阿左美廣治紹介)(第一三七〇号)  同(赤松勇紹介)(第一三七一号)  同(加藤清二紹介)(第一三七二号)  同(木村俊夫紹介)(第一三七三号)  同(小金義照紹介)(第一三七四号)  同(笹本一雄紹介)(第一三七五号)  同(田中幾三郎紹介)(第一三七六号)  同(田中伊三次君紹介)(第一三七七号)  同(田村元紹介)(第一三七八号)  同(中井徳次郎紹介)(第一三七九号)  同(中垣國男紹介)(第一三八〇号)  同(穗積七郎紹介)(第一三八一号)  同(横山利秋紹介)(第一三八二号)  同(阿部五郎紹介)(第一四三三号)  同(伊瀬幸太郎紹介)(第一四三四号)  同(今井耕君外二名紹介)(第一四三五号)  同(大平正芳紹介)(第一四三六号)  同(小川半次紹介)(第一四三七号)  同(大村清一紹介)(第一四三八号)  同(菅野和太郎紹介)(第一四三九号)  同(櫻内義雄紹介)(第一四四〇号)  同外一件(佐藤觀次郎紹介)(第一四四一  号)  同(志賀健次郎紹介)(第一四四二号)  同(鈴木善幸紹介)(第一四四三号)  同(辻原弘市君外一名紹介)(第一四四四号)  同(松平忠久君外三名紹介)(第一四四五号)  元満鉄社員恩給法等適用に関する請願外一件  (保科善四郎紹介)(第一三八五号)  同(井手以誠君紹介)(第一四四七号)  建設省定員外職員身分保障等に関する請願(  楯兼次郎君紹介)(第一三八六号)  同(櫻内義雄紹介)(第一四三二号)  旧暦元日建国記念日制定請願高橋禎一  君紹介)(第一三八七号)  肇国節制定に関する請願床次徳二紹介)  (第一三八八号)  建設省阿賀川工事事務所臨時職員身分保障に  関する請願松澤雄藏紹介)(第一三八九  号)  日本原を実弾射撃場使用反対に関する請願外  一件(和田博雄君外一名紹介)(第一三九〇  号)  文官恩給改善に関する請願外十一件(保科善四  郎君紹介)(第一三九一号)  同(猪俣浩三紹介)(第一四四六号)  建国記念日制定反対に関する請願淡谷悠藏君  紹介)(第一四二九号)  定員外職員全員定員化等に関する請願小川  半次紹介)(第一四三一号)  の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  三三号)  国防会議構成等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第四二号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、第二十六回国会閣法第一五五号)      ————◇—————
  2. 福永健司

    福永委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案国防会議構成等に関する法律の一部を改正する法律案、及び第二十六回国会よりの継続法案であります防衛庁設置法の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を続行いたします。保科善四郎君。
  3. 保科善四郎

    保科委員 私は本日、実は岸総理に対して防衛基本に関する所見をただしたいと思っておったのでありますが、岸総理は参議院の審議のために御出席にならぬということでありますから、岸総理に対する質問は保留いたしまして、御出席のあったときに質問をいたしたいと思います。これから防衛庁長官に対しまして、若干の質疑を試みたいと存じます。  第一は、わが国防衛計画基本として現在の国際情勢を勘案をいたしまして、極東における平和護持のために日米両国の分担すべき任務検討いたしまして、日本としてはこれに応じてどういうように自主的な防衛体制整備するかということを十分に検討いたしまして、私は結局において日米安全保障条約を合理的に解決するということを目途にして、一つ基本計画というものを持つべきであると考えるのであります。この基本計画があって初めて自主的な防衛体制確立もでき、防衛体制整備の上において最も重要である防御産業整備計画、あるいは旧軍施設を活用いたしまして、いわゆる防衛庁基地整備の基正本的な計画もできまして、最も経済的な実施計画ができるのだと私は信じておるのでありますが、長官はどういう構想によって当極東方面における平和を確保するという任務を果しまして、国際間において尊敬される地位を獲得せられるというお考えでありますか、この点について御所信を伺いたいと思います。
  4. 津島壽一

    津島国務大臣 保科委員の御質問に対してお答えいたします。御質問の要点は、わが国における基本的な長期防衛計画をもって今後の自衛カ確立また防衛生産あるいは旧軍の施設などの利用といったようなことを明確にして、防衛体制をさらに一そう確立すべきじゃないか、こういう点にあったのではないかと思うのであります。御質問の点はまことにごもっとものことで、私としては同感を表するものでございます。現状におきましては、御承知のように、三十三年度から三十五年度ないし三十七年度にわたる防衛整備目標というものが策定されまして、それに基いて自衛体制をまず根幹的に確立していこう。こういう構想に相なっておるわけでございます。来年度は初年度でございまして、この年度計画また今後続く計画についても構想を持っておりますが、さらに長期にわたる計画につきましては、これまた慎重なる検討を要する問題でございまして、この点についてもわれわれは鋭意考究を重ねておるところでございます。しかしながら三十五年度ないし三十七年度に続くか、またはこれに対して補正を加えるといったような計画は、今後の事態を見まして、国際的の軍事情勢その他を勘案し、また兵器改善といったようなことについても検討を加えて、これらの要素を含めて基本的な長期計画というものをどうするかという構想をまとめたいという段階でございまして、今日この長期計画というものの具体的なものを、われわれはまだ持っておらぬというのが実情でございます。これらの構想をまとめる上においては、お説の点は最もわれわれ考慮に入れる点だ、こう思っておる次第でございます。
  5. 保科善四郎

    保科委員 ただいま防衛三カ年計画に対して長官がちょっと触れられたのでありますが、ただいま提出しておられます予算でもって、まずとりあえず政府として決定されております防衛三カ年計画の第一年度がこの予算の上に盛られておると考えておるのでありますが、この予算によって計画されておる三カ年計画が完遂できるようになっておるか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  6. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。三十三年度においては、防衛整備目標達成のために初年度として必要な予算計上を要求いたした次第でございます。しかし財政その他諸般の事情から、防衛庁としての要求が全面的に計上されたということではございません。しかしながらまずこの三十三年度の防衛整備目標達成というものが支障ないように、予算のあんばいができておるわけでございます。具体的に申しますと、定員関係におきましては、陸一万の増勢というものが計上されました。また予備自衛官につきましては、千五百人の予算所要経費計上することができました。なお海上自衛隊関係においては、自衛官千二百九十五名の増員が予算計上されておるわけでございます。結局において二万五千人ばかりの自衛官になる、こういうことでございます。なお海につきましては、海上自衛隊艦船関係は、九隻の新規建造計画計上され、これによって約五千七百トンの艦船建造に着手するというような計画でございまして、結局において三十三年度末においては十一万一千トンといったような艦船計画というものがここに出てくるということでございます。なお海上自衛隊航空機についても所要機数調達予算の上において見積られておる、こういう状態でございます。最後に航空自衛隊関係でございます。これは自衛官においては六千七百人の定員増計上され、結局二万六千六百人の定員総数になるわけでございます。航空機に関しましては、三十二年度末の現況において約八百機ちょっとこしますが、これが三十三年度末には、予算の上において九百九十機になる、こういう予定でございます。  その計画をもってすれば、三十三年度ないし三十五年度においてこの整備目標はおおむね達成されるということに、予算の上においては相なっておるわけでございまして、要すれば、私どもといたしましては、この三十三年度の予算、またこれに必要なる法律案の御承認を受ければ、整備目標達成に対してまず十分である、こういうことに相なっておる次第でございます。
  7. 保科善四郎

    保科委員 今、大体計画達成ができるという御答弁をいただきましたが、次にやはり昨年決定されましたこの防衛力整備計画でこういうことが方針としてうたっております。「科学技術進歩に即応して、新式武器研究開発の促進並びに編成及び装備刷新をはかり、もって防衛力質的充実を期する。」こういうように方針にうたっておりますが、ただいま御説明になったこの予算において質的充実ということがどういうように具体化されておるか、このおもなるものを一つお述べを願いたい。
  8. 津島壽一

    津島国務大臣 御質問の点である質的充実ということでございますが、これは今日の内外の情勢から見まして最も必要とするところでございます。従って陸、海、空を通じまして、その主力をこの点に注いでおります。たとえば一万人の増勢をお願いいたしておりますが、混成団一個の増置、またその他の部隊増置ということにつきましても、大体機械化——通信その他の関係において、その四四%はそういった新式兵器による通信部隊であるとか、そういうものを装備したところの定員増加というようなことで、よほど今までと内容的に見まして変っておるわけでございます。というのは、その趣旨に沿うべく改善を加えてこういった増勢考えておる、こういうわけでございます。なお新式武器研究開発という問題は、これは非常に重大な問題と思いまして、来年度の予算計上においてもその点に重点を置いて参ったわけでございます。この点につきましては、研究開発ということについては、技術研究所予算増加、またその研究の題目のそういった目的に沿うべく、特に重点をそこに置こう、こういうことでございます。まず防空関係につきましては、いわゆる誘導兵器研究開発、こういう問題でございまして、これには御承知のようにAAM、空対空あるいはSAM、地対空とかあるいはAAのロケットであるとか、こういったような問題、すなわち防空用電子機器研究開発、こういったような点において、大体国債を入れまして四億七千万円程度のものをここに充当するという計画でございます。なお対潜水艦関係においての開発研究、これにも約二億近いものを充てようということでございます。また陸の関係においても約一億五千万円程度、合計いたしまして、これらのものによって国債を入れまして約八億円近くそういうものを充当するという計画でございます。なおそれ以外に陸上、空、海、それの固有の予算においての研究すべきものを約十四億円各部に計上いたしております。そういった意味におきまして、技術研究所は、人件費その他を除いて総計十九億一千九百万円の予算計上いたしておりますが、この内容は、直接開発研究というものについての予算総計は、大体二十一億円になると思います。それ以外に国債というか、国庫債務負担として四億円、こういったことでございます。これによって私どもは今後の質的改善というものに非常な重点を置いて自衛隊強化策を講じたい、こう存じておる次第でございます。
  9. 保科善四郎

    保科委員 同じく防衛力整備計画でこういうことが方針としていわれております。「防衛力整備と相持って、防衛産業整備について所要の措置を講ずる。」これは大へん重要なことだと私は考えておるのでありますが、こういう点について一体具体的にどういうことが講じられておるか。  それからもう一つ、この防衛産業再建というのは終戦後非常なブランクがありまして、現状にかんがみてこれは相当やっかいなことであると考えておるのであります。どうしても新しい兵器外国から導入し得るような体制をすみやかに整えなければならぬ、こういうように考えるのでありますが、これにはどうしても道義として機密保持をやることが前提となるのじゃないか。従って私はこういうような防衛産業再建なり新式兵器開発のためには、前提として最も重要なる問題は機密保持法制定じゃないかと思うのでありますが、これらに対して防衛庁の態度がすこぶる不徹底なように考えるのであります。何も遠慮する必要はない。国を守るために必要なものをちゃんと導入する、そしてそれを守るということは当然なことだと思うのですが、それらに対する御見解一つ承わりたい。
  10. 津島壽一

    津島国務大臣 まず第一段の件は、防衛力整備目標についても日本国内防衛生産の助長ということが必要である、これは国防方針の中にもうたってあるがどうであるか。こういう点であったと思います。私はいかにこの防衛整備目標達成しても、それが国内防衛生産によって裏づけされておるということでなければ、非常に薄弱なものであるということの観念を持っております。その意味において、今日のわが防衛計画達成国内防衛生産というものを助長するということは、これはバランスのとれた防衛というものができるものとして、これに十分の力を入れていくということを痛感しておるものでございますが、しかし現状においてはまだわが国産業が非常ないわゆるギャップがあったと申しますか、その能力において、また経済的な見地から見ても十分なことができないといったような事態であります。しかしながら今日まで御承知のように、航空機につきましては、あるいはF86Fというものとか、あるいはT33Aであるとか、あるいは近くはP2Vといったようなもの、これらはわが国でそれくらいの練習機はございますが、そういうものはわが国で国産するという建前から、その生産設備というものをここに作り上げて、現にこの生産一に着手しておる。またすでに生産を見ておる、こういう状態でございます。航空機に関する限りにおいては、もちろん機器等においてわが国生産の可能でないものもございますが、これは将来それをさらに促進していくという建前で、航空機関係においてはその趣旨を今日実現しつつある、こういう状態でございます。なお艦船については、これはわが国造船能力からいって国産艦船ということで防衛計画というものを充足し得るということに相なるかと思います。それ以外にいろいろな武器、この関係においては今日技術研究所において研究されたその成果に基いて施策をし、またこれを他日量産に持っていくように、各種の式辞について今そういった方向に進んでおる段階正でございまして、これはまだ十分とは申し上げません。要すればこういった意味における防衛産業維持育成ということにわれわれは技術進歩と相持って、財政の状況と見合ってやっていこうという方針を堅持しておる次第でございます。  それから第二の問題、すなわちこういった事態において新兵器等外国からの導入によって、その生産なり、また利用、活用を促進するというお考え、これは現に実際において必要上そういうことの段階であると思います。そういった場合に機密保護法の必要があるのじゃないかという御意見でございます。これは防衛庁といたしましては、これらの施策を実行に移す場合においては、機密保護法というものが完全でなければ外国からの新器等導入についても支障があるのでございます。その意味において今日のいわゆる相互防衛援助協定による機密保護は十分でない、こう思っております。この問題については、私はいろいろ検討を加えておりますが、これはなかなか広範な問題になると思っておりますし、いよいよこれは具体案を作る上においてはあらゆる角度から検討を要するものと思っておりますので、今はそういう段階である、こういうことを申し上げる次第でございます。
  11. 保科善四郎

    保科委員 こういう問題についてはいろいろ誤解を生みやすいのですから、十分にその必要なるゆえんを国民にもまた反対される方々にも御了解ができるように、十分なる一そうの努力を払われることが必要だと思います。  次にお伺いいたしたいのは、近来新しい兵器が出現いたしまして、通常兵器による自衛隊無用論というのが盛んになっておるように思います。しかし私はそういう一般的な感情論を離れて静かにこの問題を検討してみますと、原水爆とかあるいはICBMとかIRBMとか、そういうような科学兵器による戦争というものは、人類の破滅になるのであって、結局一方的勝利による戦争目的達成なんというものは、もうできないというように考えられるのが現在の常識であると考えます。従ってこういうようなものの生起の公算というものはきわめて少くなって、限定的な核使用とか、あるいは通常兵器による局地戦とか、冷戦の激化というようなことを、これから推進していくようなことになるんじゃないか、こういうように考えられるのであります。特に最近に発表されましたイギリスの国防白書を見ましても、こういう傾向が明白に出ておるのであります。今回の防衛庁の立てられました防衛力整備に関しまして、いろんな異論があるのでありますから、この際長官はその所信を明らかにして、これで十分にわれわれの極東における集団安全保障体制による極東平和護持ができるんだということを、はっきり所信を明白にされておく必要があるんじゃないか、こういうように考えるのでございますが、これに対する御所信を伺いたいと思います。
  12. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問は、通常兵器による国の防衛がこういった新しい事態に処しても必要であるが、しかしこれについては十分の認識がないように思うが、私の考えはどうであるかはっきり言明すべきじゃないか、こういう御質問であるように伺ったのであります。これは今日各国防衛の実際のやり方を見ましても、もちろん新科学兵器というものが非常に大きな役割を占めるということは当然のことだと思っております。しかしそれならば従来兵器、または通常兵器と呼んでおりますが、これはもう今日は役に立たないものだというような意見は、一部にはあると思いますが、軍事専門家のいろいろな意見を徴しましても、これは依然として必要であるという見解が私は多いと見ておるのであります。また各国の現に核装備を持った国の軍事当局の発表するところ、言明するところによりましても、在来兵器というものの必要性を、言明いたしておるわけでございます。核装備のない国というものは、今日は御承知のように非常に多いわけでございます。これらの国が今日の新事態において、自分の国防は必要ないとしてこれをやめてしまう、無価値のものであるというような考え方に私はなっておらぬと思います。わが国においては、核装備はいたさないという基本的な方針を持っておるわけです。しかも一国として独立と安全を守るためにはどうしても防衛ということが必要であり、自衛権の行使という事態がいつ起るかもわからぬというようなことも、防衛担当者としては考えなければならぬことだと思います。その場合に、しからばわれわれはそういうものは全然無価値であるから、捨てるべきかといえば、これは無防備状態に置けという議論だと思います。それは私どもは賛成できぬのであります。しかして今後の戦争の様相というものは、いろいろ見方があると思いまするが、いわゆる全面的の核戦争、ああいった究極兵器ともいわれる殺人的の武器が、必ずしも使われるということについての観測は区々でありまするが、私どもはそういったことは防止しなければいかぬ。また各国政治家というものは、今日の状態においては手詰まりの状態であって、私はそういうことを公算に入れるよりも、いわゆる制限的の戦争局地戦争といったものの公算は、ここに当然入れる必要があると考えております。それらの見地から申しまして、私は日本防衛はそういった見地の上に立って、あらゆる要素考えて、今日の通常兵器刷新を加えて、科学利用を十分に取り入れて装備改群刷新を加えて、防衛任務に当るという考えであります。もっとも御質問中にありましたように、各国おのおのただ一国をもって完全なる防衛体制がとれるかというと、今日の時代においてはそうでありません。でありまするから、ここに集団安全保障、具体的にいえば、国連の安全保障体制またこれが完全にその目的を達するまでは、日米安保条約によってわが国を守っていくということである。これは国防基本方針として確定されておる問題でありまして、私は今日の事態においても、これを変える必要がない、こう思っておる次第でございます。
  13. 保科善四郎

    保科委員 この問題に関連いたしまして、実は世上、核兵器誘導兵器、いわゆるミサイルというものが非常に混同されておるように思うのです。この二つの新兵器に対して明確なる解説をここに長官から与えていただきたい。
  14. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいまの御質問は、保科委員の方が十分御承知のことで、むしろ私よりは専門的だと思いますが、ただここにいわゆるミサイルという言葉が非常に広い意味であるのにかかわらず、今日西欧諸国あるいはアメリカそのその他の国で使われているミサイルという言葉と、誘導弾あるいは誘導兵器ということが全然同じものであるというような感覚を持つことは、私は大きな誤りがあると思います。その意味においては、いわゆるミサイルということは飛翔体というくらいな意味でございまして、必ずしも今の核兵器装備した誘導弾というものが、ミサイルという言葉で全部カバーしておるものだとは思っておりません。その意味におきまして、いわゆる誘導兵器誘導弾、この飛翔体に火薬をもってするものあり、核弾頭をつけるものあり、また宇宙外に飛翔するような飛翔体もあり、アメリカにおいても、私の報道を得ておるところでは、種類は四十にも達するということでありまして、その中にはいろいろ性能用途またそれに対する構成と申しますか、核弾頭がつけられないようなものもあり、また装備されるものもあり、いろいろあるようでございます。その意味において、一般的に誘導兵器とか誘導弾といったらすぐIRBMを想起するというようなことは、これは名前の実体に沿わないものだと思っておる次第でございます。われわれが今日装備に使おうというものは、そういったいわゆる核弾頭をつけた誘導兵器というようなものは考えておらぬということを重ねて申し上げる次第でございます。
  15. 保科善四郎

    保科委員 何かはっきりいたしませんが、私は、ミサイルというのは命中精度をよくする装置である。それから核というのは、火薬よりも破壊力を増大するものである。従ってこれははっきりとそこに明確なる区分があるのである。ミサイルは核兵器でも何でもないのである。われわれが、ミサイルをますます増強してこの精度をよくするということは、ただ政策として、その破壊力を増大するだけでも核を使わないということを言うておるのであって、こういう問題について何でもかんでも、何かしらぬけれども広島のかつての災害を想起させるような工合に、あらゆるものを結びつけておるという点に対しては、私ははっきり国民に示される必要があると思います。  次に伺いたいのは、近来各地に軍事基地問題が発生いたしております。私は自由諸国の戦略的優位というものは、この基地の優位ということによることが非常に多いと考えておるのであります。従って共産側がこの軍事基地反対をその主要なる闘争目標として、共産側がこれを使っておるというように、私は考えておる。そこでわが国においては、防衛上最も重要なる、かつて軍が使っておった基地が所々方々にあるわけであります。これらが漸次、米軍の撤退と同時に返ってくるのでありますから、防衛庁日本防衛する立場場から、これを計画的に、防衛上必要なる基地の確保というものをはからなくちゃいかぬ。どうもそういう点について基本的な計画あるようにも見えないのであります。特に最近新島のミサイル試射場の設定問題あたりに関連をいたしまして、一部の者の使嗾宣伝によって、非常に複雑しておる。こういうような点も、はっきりこの試射場の性格というものを明らかにせぬから、こういうような問題が起る。私はそういうような問題について——おそらく日本人と名前のつく者に、国を愛さない人はない。国を守らなくてもいいと考えている人はない。国家の安全保障があって初めて、われわれは国家の繁栄を期待できるのであるから、こういうようなものについて私は、もう少しはっきりしていただきたいと思う。これに対する御所見を伺います。
  16. 津島壽一

    津島国務大臣 進駐軍の撤退ということは、アイゼンハワー大統領と岸総理の共同声明によって具体化して参っておるわけでございます。進駐軍の撤退に伴って、随所にその施設返還ということが昨年来行われつつありますが、これらの施設でありまして、防衛整備目標によって順次整備を行なっていこうという、そのために必要な施設があるわけでございます。それらを今度の予算関係また三十四年、五年等においての予算関係と見合って、自衛隊として必要なものを利用するということは、私は国家の経済からいっても、これが適当であろうと思っております。まだ全体の計画が立っておりませんのは、この返還の時期または場所等について明確でない点が多々あるのでございます。しかしいずれにいたしましても、私は国家的見地からいって、国家の予算を出して新たな施設を作るよりも、これらの施設で返還を受けるものを利用するということは、私は国のためにもいいと思うわけであります。ただ、この返還施設自衛隊において引き継ぐに当りましては、地元の方々とも十分話し合いをいたしまして、個々にその目的を達するように努力をいたしたい、こういう趣旨でございます。まだ返還の全面的の計画が立っておらない今日の場合においては、個々の場合について大体予算と見合ってこの利用を実行していく、こういう方針でやっておるわけでございます。
  17. 保科善四郎

    保科委員 この問題は非常に地元の方々の利害に関係する問題ですから、この問題でもっていろいろな不要の摩擦を起すということは、結局また防衛に関する疑念を起さすというようなことにもなりますので、この問題は闘争として非常に強い目標に向けられている一つのものでありますので、十分にこの問題と取り組んで、きわめて円滑に、こういうものが国民の了解を得て実行ができるように、この上とも防衛庁において十分なる御配慮を私はお願いいたしておきたいと思います。  次に伺いたいのは、防衛庁の機構に関することでありますが、防衛庁の機構は、警察予備隊時代から幾多の変遷を経て、今日に至っておるのであります。しかし先ほど来お話のある通り、いまや防衛も新時代に入っておりまして、こういうような防衛新時代に対処して、最も効率的に運営をするということが、非常に大事なことだと私は考えており、特にもう防衛制度に対して相当検討を加えて、改変すべき時期に到達している、私はそう考えておるのであります。政治優先の原則のもとに、各部の権限と責任を明確にいたしまして、真に能率的に空海陸三軍を管轄いたしまして、防衛目的達成し得るような、こういう意図のもとに全般にわたって、私は防衛制度というものを再検討する、長官はその御用意をなさっておられるのじゃないかと思うので、その点に対する御意見を伺います。
  18. 津島壽一

    津島国務大臣 防衛整備目標の漸進的達成に伴って、防衛庁の事務も非常に多端になり、またその組織も膨大になり、私は現在の機構でいいかどうかということについて、自分としても非常に慎重に検討を加えておるわけでございます。従来海空陸というようなものが、規模が小さい場合は別といたしまして、だんだん大きくなってきた場合において、その機構にもそれに即応した効率的な、また十分統制のとれたようなものにしていく必要は認めております。これらの点については、一つ一般の有識者また国民の世論のあるところも十分に取り入れて、具体化していきたいと思っております。ただ一点必要なことは、現在の機構の上において、発足以来いわゆるシビリアン・コントロールという言葉が使われておりますが、これはどうしても私は支持していくという建前が最も必要なことである。それ以外の機構の上において効率的に、また統制がとれてやっていけるような、時代に即応したところの機構を考えるのが至当であろう、こう思っておる次第でございます。
  19. 保科善四郎

    保科委員 検討の必要を認められて、検討されておるということでありますが、これは金がかからずに、しかも能率を上げることができるんですから、何といってもやはり問題は人であって、人が喜んで能率が上げられるような制度というものを、時代の進展に応じてやっていくということは、当然なことであります。勇敢に一つこういう問題は検討して、この次の国会にぜひ出されるように私は希望しておきます。  次に長官にお伺いしたい点は、国民の防衛士気を高揚させて、自衛隊に対する国民の一そうの理解と支持とを得ることは、防衛庁としては非常に努力をしなければならぬ一番大事な点だと思うんですが、私はこういう点がどうも抜けていると思う。やってはおられるのでしょうけれども、どうも国民一般の誤解というものが解けていないのです。私はこういう観点から、国民一般に対しまして、国際情勢の現実とかあるいは新防衛力というものは、どういうところを目標にして戦争抑制力を作り上げるんだというような点を、よく国民にわかるようにしてもらう、そうして防衛に対する国民の正しい理解と支持とを求めるように、一そうの努力が必要だと思うのであります。先ほども申しました通り、イギリスあたりは、いわゆる国防白書というものを出しておる。またアメリカあたりも予算教書において、国家安全保障に対する問題について非常に重点を置いて説明をいたしておる、親切に説明しておる。どうもこういう点に対する努力が欠けてるように思いますが、一体どういうように国民に、日本の国家安全保障というものが大事であるということをお示しになるお気持でございますか、その点を一つ伺いたいと思います。
  20. 津島壽一

    津島国務大臣 防衛に関する一般の知識、認識の普及ということはますます重大性を加えていると思います。これは保科委員の今の御質問中にあられました御所見は、私は全然同感であります。御指摘のように、今日まで防衛庁といたしましては、この方面に十分でなかったことをまことに遺憾といたします。各国においても、いわゆる国防の白書というようなものを出し、またいろいろな国防方針を示して理解を求めるということに非常な努力を払っておるということを見るにつけましても、私どもは今日までの足らざるところを補い、さらに一そうこの問題について真剣に取り組んでいきたい。公正なる事実そのものを十分に示して、そして御批判を仰ぎ、また御理解を求めるということでなければ、今後の目標達成の上においても十分に実現を期することができないということを私どもは痛感しておる次第でございます。御説のようにその点について今後一そう努力をいたしたいと思いますが、どうぞ十分の御協力、御了解をいただきたいと思います。
  21. 保科善四郎

    保科委員 ただいまの防衛長官の御所信に対して全く敬意を表します。そこで、大体これは長管の御所管でもないので何ですが、かつて大蔵大臣もおやりになったので国務大臣としてぜひお願いしたいと思うのですが、どうも日本政府予算書がこういう点に非常に不親切でわからぬのです。大体民主主義の成長のためにも、こういう予算書あたりで国民にわかりにくいような問題についてもっと明確にわかるようにして、そして国民がこういう問題についても関心を持つように、予算書の書き方あたりについても注意をされる必要があるのではないか。特に防衛問題は問題のある点ですから、防衛庁並びに内閣においてもこの問題について十分なる認識をもって、国家安全保障の重大性を国民に十分に認識させるようにこの上とも御努力をお願いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  22. 福永健司

    福永委員長 辻政信君。
  23. 辻政信

    ○辻委員 私は政府の提案をなさった防衛に関する話法案につきまして、その根本問題は他日あらためて岸総理大臣にお伺いいたしたいと思いますが、きょうは山川総理大臣に対する内容も含んでおりますから、本日の問答の要点は、どうか防衛庁長官から総理にも連絡をなさって、他日あらためて私の質問の内容に対しての総理の所信を伺いたいと思います。そのつもりでお願いいたします。  最初にお伺いすることは、長官は最近問題になっておりますイギリスの国防白書をお読みなさったかどうか。お読みなさったとすればその特徴はどこにあり、その結果日本の現在の防衛体制において検討を加え反省をするものがあったかどうか、これをまずお伺いいたします。
  24. 津島壽一

    津島国務大臣 英国の国防白書は読みました。その特色は近代装備によって、特に核兵器によってその実力というかそれを強化していこう、従ってこれは従来の国防白書に現われた方針と非常に飛躍的なものではないと思っております。要すれば陸兵の削減を目標として、またそれが結果的にそうあるべきだという見地から、こういった新しい国防白書が出たもの、こう思っております。
  25. 辻政信

    ○辻委員 あの国防白書によりますと、英国は陸海空の現在の常備兵力の七十七万を一九六二年までに三十七万五千に削減をして、そして徴兵制を廃止し長期の志願兵制をとろうとしておるのであります。いわゆる三軍の常備兵力を半分以下にして、徴兵制をやめて長期志願兵制に切りかえようとしておる。これに対して日本の現在の制度に何か反省を加えるところはないかどうか、これをあらためてお伺いいたします。
  26. 津島壽一

    津島国務大臣 今日までの英国の国防白書を、従来に見ましても相当大幅な陸兵の削減を予定されておりまして、それが実績においては十分上っていないように思います。これは計数で調べたものでございます。今回もやはりその方針を貫く。徴兵制度は長い間の問題でございまして、英国は固有の志願兵制度を長くやっておったものであります。陸兵が少くなれば志願兵制度によっても募兵は可能であろうという見地も含んでおると思います。わが国はこれに比べまして今日は徴兵制度はないわけであります。いわゆる自由な意思による応募者を編入するということでございまして、私はその点については何ら別のものを感じません。しかしながら一般国防費というものは、英国においては節減をはかりつつある今の財政状況においても相当膨大な金額を掲げ、今日の英国の経済状況、財政状況から見まして、租税負担から見まして、削減すべき非常に強い世論というか、それがあるわけであります。若干減少を見ておるようであります。この陸の減少につきましては、英国は植民地と申しますか、海外また駐独の兵を掲げてそれらが要らなくなる分も含んでの海外派兵の撤退、当然の減少ということも考慮に入れてこの計数を見る必要があると思います。しかしいずれにしてもああいったような、ミサイル基地というか、言葉はIRBMの基地を設けて国防体制を強化しつつある、そういった手段のもとにこういうもの尊き得るものと思っておるのでありますから、この点においても日本とは事情が違う点があるという点を申し上げなければならぬと思っております。
  27. 辻政信

    ○辻委員 今度の法案の一番大きな論点は、陸上兵力一万をふやすかどうかという点でございまして、これにつきましては、党内においても非常に異論があり、ふやす必要がないという議論がかなり強かったのであります。それを押し切って増員を御決定なさった、その説明には日本防衛が底が浅い、動員制度もない、だから間接侵略、局地戦争に対してはどうしても一万増員が必要であるというように書かれておるのであります。しかしながらこの点につきまして私が考えておることを率直に申し上げますと、少しピントがはずれておるのではないかという感じがいたします。新しいミサイル時代の防衛体制において、陸上兵力の頭数をふやすことが必ずしも心要ではない。それよりももっとほかに必要度の高いものがあるのではないか、かように考えるのであります。長官は十八万の目標を立てておられますが、十七万では守れない、一万ふやして十八万ならば守れるという自信をお持ちになっておるのかどうか、これをまずお伺いいたします。
  28. 津島壽一

    津島国務大臣 今回の予算並びに法律案において陸の自衛官一万人の増勢をお願いしておるわけでございます。これは先ほど来申し上げました防衛整備目標として確定した方針を、今日漸増的に実行するその一環としての一万人増勢でございます。これが必要の有無ということになりますと、私は非常に異論があったように聞いておりますが、御承知のように、十六万の今日の体制では、日本の地形的、地理的の関係等から申しまして、万一起るべき直接、間接の侵略に対しては不十分であるという点が、用兵的の見地から申しまして十分検討された結果でございます。それから御指摘のありましたように、わが国自衛隊の組織はいわゆる予後備というものを持たないような制度であります。予備自衛官は今日約九千人というものでございます。大体陸につきましては、これはもう辻委員がよく御存じでございましょうから申し上げる必要はないと思いますが、大体常備軍に対して二倍、三倍あるいは四倍の訓練されたる予後備兵というものが、いつもこれに参加できる体制を持っておるのが世界列国の制度でございます。わが国においては、そういったようなことは、法制の上からいっても、また事実の問題といたしまして、ほんのわずかな予備自衛官を持っておるにすぎないのでございます。この制度をどうするかという基本的な問題をあわせて考慮すれば——この十八万がいいかどうかという基本的な問題とこれはあわせて考えるべき問題であると思いまするが、今日はその制度が確立しておらない実情にあるわけでございます。そういった意味におきまして、この十六万に一万加えるということは特に私は今日の事態においては国の防衛の上において必要であると思っているわけでございます。十八万にするのはどうか。これはすでに決定されたる十八万というものがあります。この実行についてはまだ決定しておらぬわけでございます。決定というのは、どういう年次でやるかどうかとか、その内容とか、いろいろな点はまだわれわれは具体的の検討はやっていない、一応の目標として掲げた数字でございます。そういった意味で、特殊の地位にある日本の、ことに制度自体が非常に特殊なものである。もう一つ考えなくちゃいかぬことは、日米共同声明において、米の陸上戦闘部隊が全部撤退したわけでございます。これは約二万名に上っておるわけでございます。こういった意味におきまして、陸の防衛上、どうしても間接、直接の侵略に対応してある程度の陸上部隊を増強することが必要になった事態も、一つ考慮の中に入れなくちゃならぬ。ことに今日の人口、産業の配置その他から申しまして、関東、中央地区には現在の配置が非常に手薄なわけでございます。人日四千何百万のところに、わずか二万余の者が配置されておるという状況でございまして、今回の一万の造成分はこの方面に配置しようという考えのもとにやっていく。それならばこれで守れるかという最後の御質問でありましたが、これは基本的な問題としては、一体今後起るべき直接、間接の侵略が、どういったふうな量と申しますか、規模であり、またその様相がどうであるかということに関連してくる問題でありまして、一がいにいかなる事態に対処しても完全であるということは、計数上はなかなか算定しかねる問題でございます。その意味においてわれわれは、先ほど来申しまたように、集団安全保障あるいは日米の安保体制というこの暫定的処置に一応依存していくことが防衛のために必要である、こう見ておるわけでございまして、十七万ならもうこれで完全だ、こういうことを申し上げることは私は困難であろうと思っておる次第でございます。
  29. 辻政信

    ○辻委員 この点に関しましては、遺憾ながら私は長官と根本的な見解を異にしております。具体的に申し上げますと、警察予備隊の発足してから三十二年末までに募集した隊員の合計は三十一万九千八百人です。二年間の訓練を受けて退職金を持たして除隊さした者の数が十万九千五百四十六人になっております。そのうちで予備自衛官を志願しておる者がわずか八千九百八十三人で、十万人は訓練のしっぱなしであります。防衛力の歩どまりとしては一割以下。しかしこの間に使った防衛費の総額は、三十二年度末までに防衛分担金を合せますと八千四百六十八億九千四百万円となっておるのであります。そうして得たものは何か。現在定員の二十二万三千五百二人と予備自衛官の九千人足らず、歩どまりが一割以下だ。これほど不経済な軍費が一体世界のどこにあるか、こういうのであります。英国は、先ほど申しましたように、七十七万を三十七万五千に半減をして、徴兵制度をやめて長期志願兵に切りかえておる。これが国防白書の一番大きな点であります。日本も、もし現在の二年間という期間を五年または十年の長期志願兵にして、金をかけて教育した者で適格でない者だけを除隊させて、能力のある伸びる者はどんどん伸ばす、そうして全員に幹部になるだけの能力を与えておきますと、十五万の幹部を持っておれば、いざというときにそれを骨幹にして百万の陸軍を作ることはきわめて容易であります。これは陸軍の性格なんです。予後備の制度もない、動員の制度もない、こういう時期に十八万の頭数を並べても、これはブリキのような防衛で深みがない。粗製乱造の隊員を二年間かかって金をかけて作って出しても、この二年間の最低期間の訓練というものは、社会における就業の条件にならない。しかも歩どまりがわずかに八千九百人。どこに一体この制度を支持する根拠があるか。現在の制度を切りかえていきなさい。二年間ではむだだから五年、十年にして、そうしてその間にみっちり教育した者が百パーセント幹部となって残る。歩どまりは完全であります。その幹部さえ持っておれば、いざというときにそれを中心に百万作ることは決して困難じゃない。そこに日本の国情に合った防衛の制度が生まれてくるわけであります。もう、二年というあの志願兵の制度を切りかえる時期に来ておると思うのですが、長官の御所見はいかがでありますか。
  30. 津島壽一

    津島国務大臣 辻委員の御質問中にお述べになりました御所見は、私も非常にもっともの点もあると思います。しかしそういったようなことが実現できるような今日の法制、実情にあるかということを、一つ反省していただかなくちゃならぬ。ただいま御質問中にありました、二年ないし三年で除隊になる者が十三万もある。これは計数ですから事実であります。しかしながら、これは募兵制度によって応募し、自由意思によって契約して入るわけであります。その意味において、七年、八年という長期にわたって幹部を作るように募兵するとなると、待遇いかんにもよりましょうが、果してどれだけの募兵が可能であるかという点も考慮に入れておかないと、そういう理想が実行できるかどうかということは、現実の事態では強制できないのです。また百万の予後備を動員できるだろうということを理想とされるかもわかりませんが、これは自由意思によって応募するわけでありますから、そういうものを百万人期待することが現状において可能であるかということも考えなければならぬ。そういう点を十分考慮いたしまして、また御意見のあった点を私は十分考慮に入れて、今後の改善に資するようにしたいと思います。すなわちなるべく長期の希望者を多くして、そうしてこれを幹部にまで仕立てていって、せっかく経費をかけて訓練した者が長くとどまれるようにすれば、人数によらず質において非常に向上するという点、これは私は非常に味わうべき御意見だと思います。私どもも実は就任いまだ日が浅いですけれども、あまり兵の除隊とか、出入りが多くて、それに非常な出費を要するということは、何とかしてこれは工夫によって長期にして、そうして十分な訓練、教育を受け、りっぱな者に仕立てて数を減らすという工夫はないかということを考えている。われわれの同僚におきましても、そういう意見があるわけでございまして、御指摘の考えのもとになる点は、私反対するわけじゃないのです。今数字をあげられたような点については、どうも今日の実情がそれを許すかどうかという点を疑うわけでございまして、そういった意味一つ御了承願いたいと思います。
  31. 辻政信

    ○辻委員 これは自由志願兵なるがゆえに、私は期限の問題は徴兵制度の時代と違うと言うのです。徴兵制度で義務兵役でありますと二年にするか三年にするかということは大へんな問題です。憲法上の問題もあります。幸いにして志願兵制度によって充足しておるならば、二年たって宙ぶらりんで除隊した者が社会に出てもほとんど能力を発揮し得ない。そうして数年たつとこれはゼロになります。訓練の成果は三年、五年、十年と続けておきますと、たとい能力が足りなくても年期を重ねた結果他よってりっぱな幹部としての技能を持ち得る。今日の軍備は一種の職業であります。職業制度なるがゆえに長期志願兵にして、不適格な者を除隊させて能力のある、希望する者を残しておけば、兵数はふやさずとも質の向上によって量の不足を補い得るのではないか。これをやろうと思えば今度の法案でも出せるはずです。人権問題に関係ない。そういう根本問題を解決せずに単にアメリカに約束したからというような理由で、形だけの、間口だけの軍備を持つことが、いかに不経済であるかということを今指摘したのであります。近い将来においてこの制度の根本について検討を加えて、私の意見を御採用になるという御意思があるかどうか、それをはっきり承わっておきます。
  32. 津島壽一

    津島国務大臣 私はただいまの辻委員の考え方については大いに考慮に入れるべき点があると申し上げたのです。ただ御指摘のように非常に長期の——今日では海空自衛隊の応募は三年ということで入っておるわけであります。陸については二年、またそれを随時更新し得ることになり、また特殊の部隊においては三年と、陸については二年が大部分でございます。それならこれを五年にしたら——現状において待遇とかいろいろな条件を変えれば別ですが、どのくらいの募兵があるかという応募者でございますが、その問題も十分検討しなければならぬ。ところが主義として、そういったような長期に隊務に服して訓練、教育の周密を期してりっぱに役立つ者にしたいという御趣旨の点は、十分私は了解しておるわけでございます。ただこれを実際に実行する上においては、今日の時代において五年の契約をもって入隊する場合何人の応募があるか。陸上部隊については三倍強の応募者でありますが、それが一倍というか、そのままになればおのずから質が悪くなって、人数だけはそろえるということにもなるということも考えまして、これは今ここで思いつきを言っておるのでございますから、十分検討を加える、こういうことで御了承願いたいと思います。
  33. 辻政信

    ○辻委員 長くなったら志願兵が少くなるというのは私は逆に考えておる。最初入った者は退職金五万円をもらって、そして商売の一つの資本にというような気持もあったように思います。その退職金が最近は値切られておる。そうして二年間隊内で青春を過して出ますと、社会に出てからの就職に非常に困るのであります。これを四年、五年の長期にすると一つは就職というような意味もある。最近出ました「兵隊サラリーマン」という本を長官お読みになったでしょう。二年間の教育を受けた兵隊が社会に出て、赤裸々な隊内の空気を書いたのがこれなんです。あなたはお忙しいから一々兵隊と話をするまひもないでしょうが、これをお読みになりますと内容がよく出ております。これからヒントを得て私は今のような議論をするわけであります。現在の制度においてもできる。しかもそこへ入ってまじめにやれば、五年、十年と俸給は上って身分が安定し、恩給ももらえる、家庭生活もできるということになれば、かえっていい者が志願するんじゃないか、こういう感じがするのであります。義務兵じゃないのです、志願共だから。そういう意味におきましてなるべく近い時期に根本的に制度の改革について御検討をお願いしたい。  次は海上自衛隊、海上兵力の増強はどこに重点を置いていかれるか。いかなる侵略に対して何を守るということが、海上自衛隊重点になっておりますか。まずそれをお伺いします。
  34. 津島壽一

    津島国務大臣 海上自衛隊任務は、御承知のように、港湾の防備、また機雷等の掃海、さらに護衛、輸出入をとめないように、これについては万一の場合に想像される潜水艇に対する防衛が必要である。今日の重点はこれに置いてあるわけでございます。その意味他おいて、たとえばP2Vというものをあれだけの大きな経費をかけて、今後まず四十二機を作ろうというのも、一にこれは対潜哨戒機というものの協力によって、防衛をいたしていこう、これは即国民生活につながる問題でございまして、御承知のごとく四千何百万トンというような輸入をする。しかも食糧までも含んでの、その必要な物資というものが国民に供給できないような事態が起れば、私はこれは一挙に国家の全体の安全を害するものだと思います。その意味においては、そういった方面に今日は主眼を置いて予算等においても計上をみておる、こういう事実でございます。
  35. 辻政信

    ○辻委員 そうすると防衛の主体は潜水艦防衛である。海外から必要な物資を船で運ぶのを守るのに重点を置く、そのためにP2Vと駆逐艦、これを海上自衛隊の骨幹兵力としよう、こう解釈してよろしゅうございますか。
  36. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいま申し上げた通りでございます。
  37. 辻政信

    ○辻委員 その考え方が私は日本の実情に適さない。目的はよろしい。それはなぜかと申しますと、現在の海幕の考え方は、日本に必要な四千万トンの物資を船団を作って持ってくる。その船団を駆逐艦が直接護衛をし、P2Vで空からそれを守ろうとする考え方は、太平洋戦争の前半ならばそれでよろしゅうございましたが、今日においては船団による護衛というものが成り立たない、こう感ずるのであります。それは一昨年の暮れ起りましたスエズ運河の戦争のときに、どういう事態が起ったかという実例を申しますと、地中海におりましたアメリカの第七艦隊は、スエズの戦争と同時に根拠地の港を出まして、全艦隊があの広い地中海の海上にばらばらに分散疎開したのであります。ソ連のミサイル攻撃に対して集団は許されない。この分散疎開ということが護衛の根本原則です。そうなると五そう十そうが団体を作って、ゆうゆうと駆逐艦に守られてくるという方式は、これは将来戦においては起り得ない。海上護衛を徹底するならば、商船の足を早くする。敵の潜水艦よりも快速の商船隊を作って、それが個々に分散、ばらばらになって単独で行動する。商船個々に対潜の警戒と防護の能力を与える、これが根本問題であります。それに着想せずして、古い形式の護衛ができるという前提のもとに立って、駆逐艦とP2Vを海上自衛隊の骨幹兵力とする現在の防衛の根本方針に私は異論を唱える。実はきのうも第七艦隊の招待を受けて横浜で見て参りました。その見学の結論を率直に申しますと、アメリカは膨大な国力で航空母艦を中心として対潜警戒をやろうとしております。その次は空軍の協力、この海の上と空はアメリカにまかせておけ。アメリカの最大の欠陥は水中にある。最も日本の条件に適するのが水中です。極東他おける潜水艦の数、ソ連全体の潜水艦の数、これをどういうふうに見ておられるのか。私の知ったところでは、ソ連の潜水艦は四百七十五隻持っておる。これはアメリカの六倍であります。このうち極東に活動するのは、少くとも百五十隻を上回る、これに対して自衛隊が持っておる潜水艦は、あの練習艦の「くろしお」が一ぱい、もう一つ作りかけておる千トンクラスが一隻で、二隻。アメリカの潜水艦もソ連の潜水艦に対しては歯が立たない。海上はよろしい、空中もよろしいが、海中に大きな欠陥がある。この欠陥を埋めるのが日本海上自衛隊防衛方針でければならない。日米共同で守るとしても、アメリカの最も不得意とするのは海中にある。最大の欠陥が海中にあったら、なぜ潜水艦整備というものに本気で取りかからぬか。五十億近い金を出して一千七百トンくらいの甲型警備艦を作って、三年後にあの駆逐艦ができ上ったとしても、駆逐艦による対潜警戒、対潜防護というものは、先ほど申しましたような船団護送ができない現状においては、ほとんど期待できない。駆逐艦一ぱい作る金をもって小型の潜水艦を作るという着想、これに切りかえなければならぬのであります。きょうここに持って参りましたのは、大戦末期に日本海軍の創意を集めて作った水中遊よく潜水艦、これはあなたにたびたび申し上げています。その五十分の一の模型を作ってきた。説明いたします。これがアンチ・レーダー、これがレーダー、これはシュノーケル、これは潜望鏡、この白線のところだけを出して、常時白線から下は水中で行動する。在来の潜水艦は事がないときには全艦型を水上に出すのです。いざというときにもぐる。両棲動物なんです。カメのようなクジラのようなものです。これはサメです。常時もぐっている。でありますから、設計においてもその原理を利用した流線型で徹底しております。この操縦によって、空中で飛行機を操縦すると同じような操縦ができる。しかもその全備重量は——ここに専門家が設計した基本設計図を持って参りましたが、この基本設計図によりましてもわかるように、全備重量が大体四百トンでできる。なぜ四百トンでできるか。なぜ千トン要らぬかということは、両棲動物じゃないから浮遊タンクが要らない、浮遊タンク三千日トンというものがチェックされておるから、水中に徹底したものを作ることによって、小型で安上りで、そして能力のあるものができる。進歩いたしますから、八方美人的な兵器は役に立たない。これは海軍が大戦末期に作って、ある程度試験をして、そうして実用に至らずして終戦になったのだが、私の言うのは単なる学問の論じゃない。設計の技師も残っておる。試験をした者も残っておる。最近防衛庁に入った緒明一佐はその方の係です。こういう権威の人間が残っておる。構想が生きておる。しかも十年間研究した結論が出ておるじゃないか。なぜもう少しこれと真剣に取っ組めないか。三年前から議論をしておるが、研究をやるとかいって、今度の予算で一体幾らこういう独創的な研究に出しておられるか。具体的に承わりたい。
  38. 津島壽一

    津島国務大臣 いろいろ御意見にわたる点が多かったので、一々お答えすることはいかがかと存じますが、ただいまお示しになりました遊よく潜水艦、これは辻委員から前国会において御説明を承わり、私はまことに着想というか、構想において非常に参考になるものがあるということを考えたものでございます。部内に対してもこれの研究をするようにということを申しております。なお専門家の意見も聞きました。これにつきましては、実際これを採用し、国費をかけてやる場合における踏み切り、それにはまだ研究する点がある。でありますから、その構想に今日までお触れになった技術家の方とは、会ってよく話をするように、その意見も伺って結論を出すようにということにいたしてあります。その結果として、これに対して一つやってみようということになりますれば、所定の予算計上したいと思うのです。今はそういった段階でございますから、こういった遊よく潜水艦に関する研究の経費というものは、実は三十三年度の予算の上には計上してございません。しかし問題は重大でございますから、もしそれが技術的に見まして非常に適切なものであるというような技術的の研究が出てきますれば、私はまた所要予算を振りかえてでもある程度やっていこう、こう思っておる次第でございまして、まことにいろいろ御卓見を拝承しまして、非常に感銘しております。
  39. 辻政信

    ○辻委員 これは私は三年前から言っておるのです。なくなられた砂田前防衛庁長官は非常な熱意を持って、ぜひとも研究費を出そうというところまでいったのですが、長官のかわるに従ってあなたの方の内部から抵抗が起ってきた。官僚の抗抗が起って参りました。その背後には船会社がある。あなたの今のまじめな御答弁の意思が海幕にも内局にも技研にも徹底しておりません。やはり在来の古いものを作って満足しようという空気に支配されておったのでは、いつまでたっても日本の独創的な海上自衛力はできない。その人的関係をどうお考えになられるのか。これは私は空論を言っておるのじゃありませんよ。ある民間人の——名前を申しますと、海軍の権威黒島少将が自費を投じて研究を継続されておる。この案に対する最大の理論的な抵抗は電池にあります。電池が重いから四百トンじゃできないというのだが、その電池まで私費を投じて町工場で作り上げて、これならできるという一つ考えを持つに至っておる。それを役人は、すぐ電池がだめだからと不可能だという。たびたび言っておるがふまじめきわまる。こういうことを考えると、思い切ってこの独創的なものに研究費をぶち込んで初めてそれが生まれてくる。在来の兵器研究だけに金をかけても意味はありませんよ。あなたは今、現在とった予算の中でも必要があればやりくりするとおっしゃったが、ほんとうにやりくりなさるかどうか。やりくりするには、これはよくわかっておるのは、そこにおる加藤陽三君、これはさすがに頭はやわらかい。兵隊の方はむしろかたくなっておる。大局を見てやろうという人間、しかも緒明一佐があなたの方に来ておるじゃありませんか。これを作った佐藤五郎技師は生きております。試験をした人もまだ残っておるのです。これくらい恵まれて、これくらいそろっておる条件はないじゃありませんか。不可能なものに金をやれというのじゃありません。架空のものに研究費をだせというのじゃありませんよ。今までたびたび言っておるのになぜやらぬのか、やりますか、どうですか。
  40. 津島壽一

    津島国務大臣 先ほどお答えを申し上げた通りでございます。今の段階で、この構想を持っておられる専門の方と技術研究所あるいはわれわれの持っておる技術者とよく話して、着想としてはこれは非常に参考になる点があるということで、実は私はずっとやっておると思っております。これは前国会でお話があった点で、そのとき話を聞いたわけでございます。それで予算の点は、先ほどの必要な経費はどうするかという問題でございます。これは先ほど答弁を申しましたように、一定の見通しがついた時分に一つ振りかえの方法もないとは言えぬだろうから考慮する、そういうことで御了解を願います。
  41. 辻政信

    ○辻委員 研究費というものは、一定の見通しがついてから出すのじゃ研究費にならない。見通しをつけるための必要な費用が研究費です。その結果整備するのは整備費なんです。あなたの言うのは逆ですよ。芽が出てからやろうというのじゃない。芽を出すための努力が研究費です。私は空理空論を言っておるのじゃありませんよ。実績を現実にとらえて言っておる。やると言いながら役人はやっておらぬじゃないですか。たびたび言っておるのですがびた一文も予算計上しておらない。だから言うのです。千四百六十一億という膨大な予算をとって十九億一千万円が技研にいっておる。一体その予算を何に使うのか。これにかりに二億、三億の研究費をやってごらんなさい。どういうものができるか。アメリカが今やろうとしてもできないのは水中なんですよ。水中の防衛力を持つことは、駆逐艦がなくても水上を制覇することになる。これほど日本に適応した海上自衛力はない。どうか長官は、現在おとりになった予算の款項目を修正されてもいいから、思い切った研究費をやって、あるものを培養していかなければならない。種はまかれて、肥やしさえやれば芽が出る。その芽を出そうとしないところに防衛庁の欠陥がある。いかがでございます。
  42. 津島壽一

    津島国務大臣 私の研究開発と技研でやるという意味研究開発段階はずいぶんあると思います。従って申し上げたいのは、その構想を持ち、今日までいろいろ研究して下すった方に十分御説明を願って、さあこれを一つやろうといえば研究段階に入るのです。その話し合いの段階研究とはいわなかったわけでございます。ほんとうの経費が要るということは、そういったものが話し合って、一つやろうという話でここに研究開発するというようになって振りかえ使用される、こういう意味で申し上げたのでありまして、まず一応十分話し合いをしていただくということをさきにやる。そこで結果を報告を受けて、これはやるべし、こうなったら、これに予算を振りかえしよう、こういうような趣旨でございます。
  43. 辻政信

    ○辻委員 それじゃ海上はこのくらいにしまして、次は航空に移ります。どうかただいまの御答弁をお忘れなく、こういうものがあるので、アメリカの古いものばかりまねするのが日本自衛隊じゃないぞということを、長官よく頭に入れておいていただきたいと思います。  次いで航空自衛隊に移りますが、機種選定、戦闘機の新しいものをどう選ぶかということにつきましては、昨年の十月八日、この委員会で私があなたに御質問申し上げた。100か104かそれとも別の機種をいつ決定するかという質問に対して、そのときの長官の御答弁は、アメリカから帰った調査団の報告を聞いておるので、来週中にでき得ればある程度の結論を出したい、これが十月八日のあなたの答弁の速記録であります。来週中に結論を出したい、去年の十月八日に来週中と言われたのにもう五ヵ月たっておるのであります。そうしていまだに新しい機種をどれにするかということがもたついておるが、そのもたついた原因はどこにあるのか、これは私の想像で、当るかどうかわかりませんが、悪い想像をいたしますというと、F100の背後にはノース・アメリカンがある。104の背後にはロッキードがある。それがそれぞれ三菱、川崎と技術提携をして、そうして防衛庁に売り込みを策している。政界、官界に働きかけておる。そのいうものに災いされて、あなたの御決心が鈍ったというふうに見られたならば大へんであります。ないだろうということを信じますが……。私は航空の専門ではございませんが、研究した結論から申しますと、100も104も、日本の置かれておる現状には適しない。そのほかの新機種をこの際決定すべきであるが、新機種の決定よりも重要な問題が足元にころがっておるのであります。何かというたら、F86の武装をいかにして有効なものに切りかえるかという点、御承知と思いますが、F86の十三ミリ機関砲は、朝鮮の戦場におきましてはミグに対してほとんど効果はなかった。これから現われるであろうものに対して効果のないことはもちろん。効果のない武装をした戦闘機というものは、これは戦闘機じゃなくて練習機です。それをどうするか。しかもこれは日本では量産に移っておる。むだなものを量産していいのか。人間とのつながりはこの数年間できておる。この人間とのつながり、訓練、量産、可能性、このF86というものをいかにして役立たすかという研究が行われておらない。かりに十三ミリの機関砲を二十ミリに変える、あるいはサイドワインダーでもって装備をする、ロケットで装備をしたならば、現在のあの速度のF86でも、いざというときには役に立つのだ。名前通り戦闘機として使える。現在のままでは戦闘機じゃなくて練習機ですよ。そういう持っておるものを改善するという研究に頭を向けられないで、先走って、音速の二倍とか三倍とかいうものを求めようとするところに、政治から遊離したふまじめさがある、こう考えますが、いかがでありますか。
  44. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。新機種の決定問題では、昨年の十月、決定すると申したかどうか記憶いたしておりません。調査団が帰って十分の報告を聞いてきめようと、来週ということをはっきり申し上げたか、記憶はございません。
  45. 辻政信

    ○辻委員 速記録に書いてある。
  46. 津島壽一

    津島国務大臣 それはもしそうであれば、言い違いだったと思います。取り消しいたします。調査団の報告についてもいろいろ検討すべき問題が多くあったわけでございます。それで御承知の当時あるいはF100とかF104というようなことが問題になったことも事実でございましょう。しかしながら日本の飛行場の距離と申しますか、滑走路の長さだとか、いわゆる装備関係また性能はもとよりでございます。経費の問題もございましょう。その他これが操縦上の安定性がある、その他あらゆる観点からこの問題を検討してきたわけでございます。しかしてまたアメリカにおいても諸外国においても、新しい機種というものは、だんだん開発されつつある時代でございまして、この機種の選定の問題は結局三十五年度以降にこの航空機を作ろうという問題でございまして、それまでにちゃんと一定の生産計画を立ててやっていくという問題でございまして、一ヵ月を争ってきめる必要はないという事態にもあったのであります。その意味において慎重に検討を加えて、いろいろその一長一短のところをどうするかという問題であります。御質問中にもありました特殊の会社がどうであるかということは、少くとも私は全然頭に置いておりません。これだけははっきり申し上げておきます。  そこで第二の御質問の点だと思いますが、F86は非常に何というか性能の劣ったものであって、その装備においても非常におくれたものであるということでございます。これは御承知のように、相当古い機種でございます。しかしこの機種を一定の計画のもとに今日量産中でございまして、この計画を変えるということはあらゆる面において、操縦士の養成または産業の上においてもこれを中止できない事態になっておるわけでございます。そこでこの86をどう強化するかという問題が私としては非常に苦労したわけでございます。そこで昨年この装備強化すなわち今の機銃で百メートルの近距離に立ってその射程において有効に発射できるというような飛行機では、上昇能力いかんによっては相手の飛行機に接近することはできないようなおそれがある。これは辻委員の方が御存じだろうと思います。そこで今の機銃によっての防衛と防御ということでは、この86というものはせっかく多大の経費をかけて訓練もいたしておるものが、効果をあげられないことは大へんに残念であるという点において、サイドワインダーはこの86の両翼に装備できるわけであります。しかもこれは核弾頭を一つけられない構成でございます。そういった点からいってこういう種類のものにおいては最も安価なものでございます。これを得てせっかく多額の経費をかけておるその飛行機の性能を強化しようという意味でございます。F86には比較的容易にこの装備ができるのでございます。ただし財政上の見地その他訓練の関係がございまして、一挙にこれをもって全機に装備するということはこれは実用上書されない部面もございますが、可能であるということははっきりしておるわけでございます。そこで三十三年度の予算においては五千万円余をもって約十発と申しますか、それに付帯したものを一つ米国の有償供与によって得たいというので、予算にも計上しておるわけでございます。従って先ほど申しました新機種の選定の問題、また現在存しておるF86Fの装備上の強化によって飛行機を効率的に有効にわが国防空のために、防御町にこれが働けるようにしたいということについて十分考慮を払ったつもりでございまして、どうぞその点御了承願いたいと思います。
  47. 辻政信

    ○辻委員 ついでに新機種選定についての私の参考意見を申し上げます。F100と104は、実情にあわない、それよりもむしろグラマン11、この方がアメリカ製ではいいじゃないか。それよりさらに視野を広めますと、フランスで最近出ました戦闘機、フランスは一九四八年以来アメリカのまねをすることをやめてしまいまして、自分の国に合った独得な研究を進めて参りました。NATOの名においてアメリカから新機種の研究費を毎年五百万ドルずつ受けて、そして自分の国に適当な戦闘機の研究を続けて参りました。最近その試作品ができ上っております。その諸元の詳しいことはわかりませんが、速度は大体秒速が一・五マッハ、最大はニマッハで、最大上昇限度は二万メートルまで行きます。滑走距離は九百メートルで芝生の飛行場で行動できる。コンクリートの長いものではなくて、芝生の九百メートルの短かい滑走路で離陸ができるというものをフランスは作っているのであります。フランスと日本の置かれておる防衛の態勢はよく似ておりますから、必ずしもアメリカ一辺倒にならないで、世界各国の新しいものを取り入れて独創的なものを編み出す努力をぜひともお願いしたいのであります。これはあえて答弁を求めません。  次に伺いたいことは、航空自衛隊整備重点をどこに置かれるか、戦闘機に置くのか、GMに置くのか、この点であります。日本の置かれておる防衛の最大の欠陥は、ミサイルに対する防衛ができておらない。このGMに対しては、飛行機で防衛することは不可能であります。やはり日本の防空体制はGMを主体にしたものになる。最近「誘導弾と核兵器」という本が出ておりますから、御研究になったと思いますが、これは新妻清一さんがお書きになったものです。この道の権威であります。この本に対して、あなたの幕僚諸君が推薦の言葉を書いておられる。陸幕の杉山茂君、海幕の長沢君、航空幕僚の佐薙君、防衛技術研究所の青山さん、研修所の林さん、防衛大学の副校長の鈴木さん、そういうそうそうたる人がこの新妻さんの書いた「誘導弾と核兵器」、これを中心にした日本の新しい防空体制はごもっともである、そうしなければならぬから、ぜひ読めと書いている。人の本をぜひ読めと責任ある幕僚が書きながら、その原理をとろうとしておらない、これはどうなんですか。読んだのか、読まないのか。無責任きわまる推薦の辞ですよ。内容はきわめて優先なものです。これを取り入れたならば——日本最大の欠陥はミサイルに対する防空力の皆無である。防空兵力の主体はGMとレーダー、この二つをかね合せて、飛行機や地上部隊のほかに新しい組織を作らなければいけない。これが今皆無なんです。これを空幕に持たせるか、陸幕に持たせるかということは、私は当然空幕だと思います。空幕を中心としてレーダーとGMをかみ合した独創的な、進歩した防衛体制、これをお作りになることが防衛庁の大きな仕事じゃなかろうかと思います。推薦された首脳部は、どういう顔を持って、どういう考えを持って推薦したのか。読めと勧めながら自分で採用しておらない。どうでありますか、長官
  48. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいまの航空に関する防衛能力の強化という問題ですが、これは私たちも最も今日重大な問題だと考えております。防衛庁にも内部組織において質的増強の関係研究して、またこれを将来必要に応じて実行すべく特殊の委員会を作っております。従ってわれわれ部内において、御所見のような点については十分考慮を払っておるわけでございます。ただ将来の航究機についても単純なる機としての性能以外に、装備がどうなるかという問題をあわせて考えて、その機種がいいかどうかというところまで研究していく段階である。これは最近空幕長がアメリカへ行って特に研究した点でございます。同時に、このミサイルという言葉は、私の言う言葉は今のような中距離弾道弾とか、そういう意味ではございませんで、われわれが採用し得る性質のミサイル、こういう意味におとりを願いたいと思いますが、これを研究して、そして防空体制を完備していくということについての御所見には全然同感であります。  従って今お触れになりました著書について、そういった推薦の言葉を書いている者の意見は私は適当であり、また一般の方がよくこれを理解していただかないと、施策に現わす上においてなかなかめんどうがあると思う。そういった意味においてやはり防空ということは、一般の皆さん方——皆さんというのは国民全体の方をさすのでありますが、十分御理解を願って、もっともだということで一歩前進、こういう格好をとりたいと思って研究は十分いたしておりますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  49. 辻政信

    ○辻委員 次に訓練に移ります。  防衛大学校を建設なさっておりますが、あの防衛大学のりっぱな建物を作るためにどのくらい金をかけておりますか。どなたでもよろしいから関係者の方に御答弁願います。
  50. 小幡久男

    ○小幡政府委員 防衛学校には現在まで十五億二千四百三十一万二千円、これは建設費でございます。
  51. 辻政信

    ○辻委員 一年の維持に必要な年度予算は幾らになりますか。
  52. 小幡久男

    ○小幡政府委員 平均いたしまして大体学生一人当りにいたしまして約三十万円弱でございます。
  53. 辻政信

    ○辻委員 これを作った目的はどこにあるか、十五億の金をかけて、一人の学生に三十万の税金を国民が払って特殊な学校を作った目的はどこにあるのか、長官
  54. 津島壽一

    津島国務大臣 将来の自衛隊幹部としてのりっぱな教養を受け、訓練を受け、また社会人としても高い情操並びに徳操を持った者を養成して、自衛隊の将来の質的、人的増強をはかる、こういう趣旨でございます。
  55. 辻政信

    ○辻委員 大学の校長の槇先生、ちょっとこちらへおいで下さい。  校長にお伺いしますが、防衛大学の中にアカシヤ会というものがあって、ダンス部を作っておられるのじゃありませんか。ダンスは自衛隊の幹部に必須の社会人の教養という意味でお作りになっておるのかどうか、それを承わりたい。
  56. 槇智雄

    ○槇説明員 ただいまの御質問に対してお答えいたしますが、これは防衛大学校内におきまして、学生の少数の者がやっていることでございます。だが防衛大学校といたしましては、やはり婦人との交際というものも教育のうちの大事な部分を占めると思っております。これをどういうふうにやっていくかということは年来の問題でございまして、十分考慮いたしました結果、慎重に、ダンスやるならやらせるということでやっております。
  57. 辻政信

    ○辻委員 それじゃ申し上げましょう。昨年の十二月十四日、ちょっと古い話ですが、私がある用件があって東京駅に参りますと、防大の制服を着た学生がたくさん玄関におりまして人を待ち合せ、そして若い女性を連れて、腕を組んで食堂に入っていった。その数があまりに多いので目についたのであります。妙なことをやっておると思って現場へ行ってみますと、ステーション・ホテルの二階を借り切って、約二百名の防大の学生が、制服を着て、そうして腕から肩を露出した若い女性を抱いて、薄暗いホールで踊っておる。その踊り方がまことに上手であります。(笑声)神宮外苑において長官がやられた観閲式の防大学生の行進を見ましたが、服装はよろしい。しかしながらほんとうの訓練は練馬部隊の一般兵の方が充実しておるという感じを私は受けておるのであります。教練は下手だがダンスが上手で防衛大学の目的達成しておると思うのか。その十四日の日、あまりのことにあきれまして調べると、学生は、これは校長の許可を受けておる。だれか職員が来ておるかと言ったら、竹下幹事が来ておる。そこで竹下幹事を呼び出して、君あまりひどいじゃないか、こう言いますと、ダンスをやって何が悪いかと言って私に食ってかかったのであります。私は今ここでダンスのよしあしを議論しようというのじゃございません。あなたが言われたように、女性に対する交際を教えるのも防衛大学において必要だとおっしゃっておるが、社会人として価値のないものを作れというようなやぼな議論はしませんが、問題は十二月十四日、一般大学の、あなたの前におられた慶応、早稲田、明治、東大の学生の諸君はどうしておられたのか。親から仕送りされる学費が足りなくて、あの寒い年の瀬を、アルバイトをやってデパートの歳暮配りをしておる。一般の学生はアルバイトをやって夜おそくまで働いておるのに、三十万円の税金をもらって特殊の目的に訓練をされておる防衛大学の学生は、校長、幹事以下四十人の職員が参期して、人の目もはばからずに、あの東京の表玄関を借り切って、七万円の金をかけてダンス・パーティをやるということが的はずれでないとお考えになるのか。どうです。
  58. 槇智雄

    ○槇説明員 ただいまのお話の通りでございまして、十四日には学生約二百人足らずのものが出て参りました。これは従来から、交際をするにはどうやったらいいかということにつきましてわれわれは考えておったのでありますが、まず第一に大切なことは、いい相手を選んでもらわなければならないというような考えから、りっぱな相手を選ぶということにつきまして、いろいろ横須賀地方におきましても、婦人会等の援助を受けてやっておりましたのであります。しかしやはり東京におきますところの学生も多いので、その姉妹あるいは友人というものが集まるのが工合がいいという話が出ましたので、東京に一年に一回くらいはよかろう、こういうような考えから許したのであります。そうしてこれを一つりっぱにやるように——私自身はダンスをいたしませんが、一つそのやり方をりっぱにやらしてやろうと思って来ておったのであります。しかし全体の訓練に対してこれがどういう影響を与えるかということを申し上げますと、これは決して悪い影響は与えておらないと思います。学生はりっぱに訓練もやり、あるいは体育の訓練もりっぱにやっておる。そうして卒業した暁にはりっぱな自衛隊員になり得るところの資格を備えて出ていっております。あるいはそれは年々出ますところの約四百人ないし五百人の学生内には、われわれの思い通りにいかなかった者もあるかもしれませんが、しかしながら大部分においては間違いなくいっておるというふうに申し上げてもいいじゃないかと私は考えております。
  59. 辻政信

    ○辻委員 御参考までに長官及び校長に申し上げておきますが、私は昨年の春トルコに参りまして、トルコの士官学校を一日見学して参ったのであります。そうしますとトルコの士官学校において、あの学校を卒業した将官の中にで、成績が一番よくて戦闘に最も勇敢であった者、すば抜けた者を呼んで校長に充てております。その士官学校長は寝台を持ち込んで学生と一緒に寝起きをしておるのです。その訓練は防大の比ではございません。私どもの過去の経験から見ても、日本の士官学校の比でもない。非常に猛烈な訓練をやっておるのであります。私はその校長に対して、こんなにひどくやらぬでもいいじゃないかと質問をしますと、校長は胸を張って答えました。われわれの敵はソ連である、トルコの十倍の兵力を持っておる、だからトルコの将校は一人でソ連の将校の十人に当らなければいけない、国が小さいから。その十人の将校に当らすためには、ロシヤの士官学校の十倍の訓練をするのはトルコとして当然である、こう答えておるのであります。私はこの、ダンス・パーティと思い合せまして、あなたにその直後電話でもって、長官、あれでいいんですかということを申し上げておる。この二つを比較されて、長官は今までの行き方で防衛大学の教育がいいと思われるか、その幹部の心がまえで信頼する自衛隊の幹部ができるとお考えになるか、はっきりお答え願いたい。
  60. 津島壽一

    津島国務大臣 防衛大学の訓練については、時代の変化ということも考慮に入れなければならぬ点もあり、従って科学教育の部面においても相当専心してやらせております。また体育の訓練という点においても猛烈にやらせておるわけでございます。ただいま御指摘の、ダンス・パーティの件は、私は少し行き過ぎがあったと思っております。しかしダンスそのものが悪いというのではありません。ただ東京のああいったような場所でそういった程度にやらなくても、その目的は達するのでなかろうかと思っておるのでございまして、御指摘のような点については、ダンスそのものは大して悪いということは申し上げませんが、ただいわゆるやり方の問題につきましては、いろいろ実効を上げていく方法があるだろう、こう考えております。
  61. 辻政信

    ○辻委員 久留米の幹部候補生学校に防大の学生と一般大学を卒業した学生が入っていることは御承知の通り。その久留米の学校教育の責任者から所見を聞きますと、金をかけて防大で作った学生が一般の大学を卒業した者よりも必ずしもまさっておるとは言えない、こういう所見がある。しかも防大を卒業した者は、一つの狭い、派閥を作って、一般大学から来た者との間に対立的な傾向が見えるのは残念だ、こういう気持があるのであります。何のために一年に七億二千万円の金をかけ、校舎に十五億の金をかけて、そしてあれだけの教育をやるのか。一般の大学の方がいいのじゃないか。特色がないような大学ならやめてしまって、むしろ貧乏人の秀才を集めて国立科学大学にした方がよほどいい。教育というものが一体どこに目的をしぼっておるのか、それを私は言うのです。あの状態を見たらアルバイトをやっておる学生はどう見るか。愼さん、ほんとうですよ。あなたの子供はアルバイトをやっておらぬでしょうけれども、貧乏人の学生はアルバイトをやっておるのですよ。小づかいまでもらって、三十何万円の国費をもって養われておる特殊目的の学生が、ああいうことをやっておって、一般の学生に与える気持がそれで済むとあなたはお考えになりますか。長官どうですか、まだ改める意思はありませんか。
  62. 津島壽一

    津島国務大臣 九州における幹部学校ですか、部隊において、防大卒業の者よりもいい者があったということですが、これは非常にけっこうなことだと思います。そういう者もどんどん自衛隊に入ってきていただきたいと思います。防大の卒業生が悪いということを一がいに言うのは、これは全体を検討してみなければ言えないことだと私は思います。従ってまた、第一回事業者が出たばかりでございます、創立以来短期間のことでございます。それであって今一定の教科のもとに熱心にやっているわけでございますから、しばらくその成果を一つ見守っていただきたい、こう思う次第でございます。
  63. 辻政信

    ○辻委員 それをおっしゃるならもう一つ実例をあげます。大村清一さんが防衛長官になられて久里浜の防大旧校舎で初度巡視があったときに私もついていった。非常などしゃ降りでありまして、学生はずぶぬれになって営庭に一時間も前から集合させられていた。学生をずぶぬれにさせておきながら、校長以下幹部は長官の行く五、六分前までストーブにあたりながら迎賓室にいて、ぬれずにこそこそ出てきている。こんなことで一体教育ができるのか。部下をぬらすときに幹部みずからもぬれなくてどこに教育ができるのか。そういういき方であなたはいいとお考えになりますか。  もう一つ申し上げます。アメリカの歩兵学校に留学しておる某一尉から最近書簡がきております。この書簡の一節を読んでみます。「自衛隊の成立を見ますと無から生じて米国のまねをしたにすぎず、それも形式上のみのように思われます。従ってここにおりますと、なぜ日本は多年の歴史と経験を持つ軍を持ちながら、その上に自衛隊を作ることができなかったかということを深く考えさせられます。旧軍を再建し、その上で米国の美点があれば取り入れるのがほんとうであったと思われてなりません。ここフォートベニングにおりますと、歴史を作りまた先人の伝統を継承することをいかに重視しているかをつくづくと感じます。ほとんどの講堂、射撃場、訓練場に戦場における勇士の名を付してその名の由来するところを説明し、後人の肝に銘ぜしめるようになっております。日本の場合はこれに反し、りっぱな歴史を持ちながらその歴史を故意に目をつむって見ようとはしていない感じであります。」こういうことを歩兵学校に留学しておる学生が送ってきております。同時に最近アメリカのライフ誌の中に出たウエスト・ポイントの状況についてという文献があります。お読みになったでありましょうが、この文献を読んで驚くことは、あの自由を尊ぶアメリカで、士官学校に入った生徒にニカ月にわたって野獣のような訓練と試験をしております。これに落伍した者はどしどし退校させて、生き残った者のみに士官学校の制服を与えて、生き残った人に誇りを持たせて訓練に移っております。自衛隊が発足してから今日まで、歴史を無視し、伝統を無視してアメリカの形骸のみをまねしている。アメリカ人は酒も好きであり、女も好きであり、ダンスもやるが、自衛隊の訓練は悪い形式ばかり見て、この野獣のようなたくましい訓練、命をかけた訓練というものをとっておらない、こう思うのであります。(「青竹事件があったぞ」と呼ぶ者あり)今そこに青竹事件というヤジが出ておるが、きのう私は横浜で第七艦隊の演習を見た。その演習は実戦さながらです。航空母艦の午後の演習におきまして、三番目に飛び出した戦闘機が目標に向って急降下の爆弾攻撃をやる。それがあまりに真剣でありまして、目標に飛行機をぶつけるように急降下して必中弾を落したが、その瞬間上げかじを失って海面にたたきつけられて、飛行機も人間も粉みじんに飛んでおります。これを現場できのう見てきた。ところが航空母艦の甲板におった三百人以上の将兵はだれ一人顔色一つ変えず、あわてないで予定の演習を予通り実行しておるのであります。司令官は顔色一つ変えておらない。部下を眼前になくした士官の気持というものは、私は体験から申し上げます、たまったものじゃありません。その悲しみを抑えて、訓練のためには微動だもせずにやっておるという魂がアメリカ軍にあるのですよ。青竹で死んだ、これは指導が悪い。私もはっきり言っておる。愛情がないからそうなるんだ。しかし指導監督して幹部みずからが雨にぬれ、行軍に苦労をともにしてやれば、今の青年はりっぱなものであります、防衛大学の学生はみごとであります、練馬の隊員もみごとである。このりっぱな素質を持った青年に対して幹部の実践が足りない。率先躬行が足りない。魂がゆがんでおる、ふらついておるからほんとうのものができぬのじゃないかと私は思う。アメリカにならうのはよろしいが、形骸のみをとらずにアメリカのあのすさまじい責任観念と真剣さをなぜとらないか、とらないとすればこれに金をかけることは愚である。防衛大学を解散しなさい。解散して貧乏な秀才を集めて科学技術大学を作った方がよほど国のためになる。何のために、何の目的を持ってあの予算を使っておるんだ、はっきり一つ長官所信を承わりたい。
  64. 津島壽一

    津島国務大臣 防衛大学設置の目的はどうであるかということは冒頭にお答え申し上げました。将来の自衛隊の幹部を訓練養成することである、しかしてその科目においてこうこうである、こう申し上げたのであります。それは変えることはできません。ただお読みになりました事実なり御感想、これは有益な参考のものとして私は十分考慮したい、こう思っております。
  65. 辻政信

    ○辻委員 時間がありませんから教育はそのくらいにして、次は青山所長をせっかくお呼びしましたので技研に移ります。  西ドイツにおきましては技術開発予算が、御承知と思いますが、今年は二億マルク、百八十億円であります。技研の予算は十九億一千万円、この間あなたのところに行きまして御説明を承わって参りましたが、十九億一千万円というとうとい税金で新しい自衛力の技術の開拓をされようとするあなたが、あの十九億一千万円の予算でもっていかなるものに重点を置き何を作り上げようとしておられるか、それをまず承わりたい。
  66. 青山秀三郎

    ○青山説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。三十二年度予算といたしましては、ただいまお話しのように、十九億一千万円をつけていただきました。私どもといたしましては大体昨年あるいは今年の結果にかんがみまして、私どもの与えられました使命にできるだけ忠実にこれを実行していきたいと考えております。ただいまの予算で進めますと、大体技研の技術研究開発費として考えますものは、まず十億と見てよかろうと思います。むろん機材費とかほかのものとの関連もございますが、まず十億、もっと幅を広げたいのでございますけれども、ほかの施設等も拡充いたさなければなりませんので、その方にも四億ばかりさかなければなりません。従いまして十億程度研究開発費に向けたいという考えでございます。その内容につきましては、先ほど長官からもお話がございましたように、できるだけ新装備費に重点を置いて進みたいというつもりでございまして、これは技研の予算の限りで申し上げますが、その十億の中でまず誘導ミサイル関係、これが私はまず三・五割、四割程度になると思います。できるだけこの範囲を広げたい、これにもっと重点を入れたいと思いますが、これもやはり技研を始めましてから日が浅いものでありますから、なかなかそこまで実際の成績が上らなければ申しわけないので、先ほどお話のございましたような系列に従いまして、GMの研究を進めたいと思っております。
  67. 辻政信

    ○辻委員 新しいGMの開発重点を置こうという青山所長の御方針には賛成でございますが、具体的問題としてそれに関連を持ってきましたから申し上げますが、スイスのエリコンから誘導弾を買い入れておる。そうしてそのライセンスを買おうとしない。これは防衛庁予算じゃない。三菱電機の関社長がわざわざ行ってすばらしいのにほれこんで、ぜひともライセンスを三菱の負担で五十万ドルで買おうとするのに、防衛庁が乗り気でない、大蔵省がまたぐずぐず言って、その外貨の割当さえ民間会社が受け得ない。その後あれは外資審議会で通ったかどうか、これは事務当局でよろしゅうございます。
  68. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 お答えいたします。エリコンのライセンスの導入の問題でございますが、われわれといたしましては、誘導弾研究開発をやって参ります上に、この誘導弾エリコン型そのものの装備量産ということはきまっておりませんし、そういうつもりはございませんが、部分的にいいアイデアのところは採用していくということもありましょうし、そういう研究開発のためにぜひともあれを入れてもらいたいということで、いろいろ折衝をしておりますが、外資法上の問題でいろいろ技術的の問題がありましておくれております。ただいま外資審議会の幹事会に上程せられまして審議中であります。遠からず解決つくと思います。
  69. 辻政信

    ○辻委員 近く解決するならこれ以上追及しませんが、私は大蔵省の人たちに連絡すると、防衛庁の腹がきまらないから、こういう返事がある。私が言うのは、でき上った誘導弾を一発買ってくるんじゃない、でき上ったものよりもスイス人の持っておる頭脳を買いなさい、この頭脳を買ってこれをわれわれの踏み台にして追いついていかぬと、今から同じライン、同じスタートで研究を開始しても役に立たない、この十年間の空白を埋めるためには、すぐれた頭を買ってそれを自分の頭にしてスタートせぬと役に立たぬぞということを言っておる。しかも技研は、青山所長のように、すぐれた人が所長にはなっておるが、残念ながら技研におる技術者、これは怒るかもしれませんが二流品であります、(笑声)三流品であります。(笑声)一流品は民間の会社が高給で雇っておるから、技研のような俸給ではやってこない、幾ら集めても。古手の役人か使いものにならない人を使って人件費を食っている。十九億の予算を使っちゃもったいない。それよりもすぐれた民間の研究、その頭脳を利用してやるということ他一そうの着意を持たれぬと、技術の面において劣りますよ。それはどうですか、それはできますか。
  70. 青山秀三郎

    ○青山説明員 お答え申し上げます。技術研究所の所員の地位、技官の質を向上したいということは、ただいま辻先生のお話の通りであります。私どもも非常に心がけております。ただ思うように十分充実されないということは、私は感じております。従いまして最近各方面他連絡いたしまして、その人の充実をはかっておりますが、お話のよう他会社関係の優秀な技術者の協力を受けるということは、これはもう最初から考えておりまして、日本の現在われわれが関係いたしております会社に、最近御承知の昼間ジェット練習機等の成功もございますが、そういう面の技術者の優秀さは非常他私どももはっきりしておりますので、そういう方他はただいまも相当連絡して御協力を仰いでおります。なお今後それを強化したいと思っております。
  71. 辻政信

    ○辻委員 その一つの例を申しますと、民間におられる、大学の教授をしておられる菊池博士、あれは世界的な電波の権威であります。こういうことを考えますと、皆さんが十年かかっても追いつかないあの隠れた人が、大学で教鞭をとっておられる、この人たちの独創的な世界的な電波の研究他ちょっぴり研究費をやってやったら、皆さんがやられる十年の仕事を一年でやる。だから金の使い方をむだのないようにやりなさいと言っておる、それができておらない。  それにもう一つ、放射能対策、これは一体どれだけの熱意を持ってやられておるか。これに幾ら熱意をかけても、社会党の諸君も反対はしないはずだ。戦争に入らなくても放射能をかぶる、それに対して人間と一切の生物を保護することが、日本防衛科学のこれは重点でなければいけない。西ドイツにおいては、再軍備を発足すると同時に赤十字を中心として、官民の科学陣を動員して、この放射能に対していかに守るかという研究を実に真剣にやられております。試練を受けた日本において無関心だ。学界も民間も防衛庁も——防衛庁が腰を入れる以外にこれはない。津島長官いかがでございますか、できておりますか、やる熱意があるのか。
  72. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。原子力から出る放射能をどう防除していくかという問題は、重要な問題でございます。その点につきましては、技術研究所においても技術面からの研究をもう三、四年来続いてやっております。この点につきましては、実は三十三年度予算においても、研究室他千数百万円の予算計上いたしております。引き続きこれが研究を私は大に他促進いたしたい。なおまた、部隊、幹部学校等におきましても、こういった場合にどうするかということを海外に留学させて研究さす、これは主として部隊としてのあれでございます。そういうことも研究させております。まだ十分だとは申し上げかねますが、全然何も考えていないということはないのであります。特に重点を置いております。
  73. 辻政信

    ○辻委員 重点を置いておるとおっしゃるが、ことしの予算でその方の研究費は幾ら出ておりますか。
  74. 青山秀三郎

    ○青山説明員 私どもの方では対原子力班としては、ただいま一部に所属いたしております。ここでやっておりますのは、御承知のような内容のものでございます。明三十三年度におきましては、ただいま防衛庁長官からお話しでございますが、施設をまず拡張して、まだあまり大きくないのでございますが、多分目黒になると思います。そこへ千四百万円で施設拡充をやる、これは六十二坪で、そういった放射線が人間その他一般に与えまする影響の研究を具体化したいというつもりで、そういう施設をお願いして予算計上してございます。研究費そのものの方は、大体一部全体でまだはなはだわずかなのでございますが、これ他は燃料あるいはその他の材料も一緒にやっております。この金額ははなはだ些少で、まだとても何千万円ということには参りませんが、私どもは今防衛庁長官お話しのように、施設の完了と相待って三十三年度、三十四年度に、これこそ防衛庁研究所でやるべき仕事だと思っておりますので、十分拡充していきたいと希望しております。
  75. 辻政信

    ○辻委員 今の御説明を聞いてもおわかりのように、私も行ったのですが、見べきものがないから見ずに帰った。実情はその通りなんです。千四百万円で研究所を作るというが、それは建物にかかるのであって、学者の研究費にその研究費が回らない。これはあなた方の頭だけじゃだめなんです。外国に留学さすというが、日本が一番正確なデータを持っておるわけでありますから、日本の民も官もあげてやらぬというとここに——大きなミスがある。戦争に入らなくてもかぶるんだ、どうして国民を生かしていくかということができておらぬじゃないか。これをやるのはだれがどう見てもあなたです、防衛庁長官以外にない。民間の会社がやる道理がない、大学教授もそこまでの力がない。そこで私が言うのは、技研というものは、技研の職員だけが制服でものを考えてはだめだ。大学教授、民間会社、お医者さん、こういうものを集めて、官民の合同した力の総意をあげて、科学技術の面において放射能から国民を守るというこの責任観念から、一部の一班じゃだめだ。極端にいえば、技研の半分の力をそれにぶち込んでいけ、国民を守る研究にどこに反対があるのか。国民の不安をどう解消するのだ、それができておらない。私はここで恥かしいからデータをあげない、あなた方の良心に聞いたらわかる、どこまでやっておるか、どこまで自信があるかわかるはずだ。もう少し真剣に取り組まぬというと、日本国民はどうするのだ、日本国民の運命を背負って立っておるのだ、防衛庁長官以下その気魄が足りません。どうかこの十九億一千万円の款項目を変更して、その重点ミサイルの防空研究、水中飛行機、放射能対策、この三点に集約すれば、三十三年度の予算が生きて使える。大ぶろしきを広げて在来兵器研究をしても何もなりません。重点をきめて、これとこれだ、何でそれをやらぬのか。  もう一つ最後に、食糧についての研究はできておるか。航空食、潜水艦要員の食糧。少量のものでエネルギーをとる研究ができておるか。具体的に質問いたしましょう。東京の郊外に徳川研究所というのがあるが、津島長官御存じですか。
  76. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。承わったことはございます。しかしどの程度研究になっておるかということについては、詳細に承知しておりません。
  77. 辻政信

    ○辻委員 クロレラというものがあることを御存じですか。クロレラ。だれか知った方あったら答えて下さい。幕僚で……。——このクロレラは、炭酸ガスと日光、それと藻類を利用しまして作った独創的な人造食糧であります。多分、青山さんは御承知だと思いますが、これは民間人の南喜一さんというのがアメリカの研究費と民間の寄付を集めて、一億近い金を集めて、郊外の国立に田宮博士が徳川研究所を作って、そうしてその開所式をやって製品ができ上ったのがこれです。これを分析してごらんなさい。大豆の数倍の栄養を持ち、ビタミンにおいてはこれにまさるものはない。これを航空食、潜水艦要員の食糧に利用するために、徳川研究所には、今ソ連とアメリカの技師が見学に殺到しておりますよ。防衛庁、だれ一人行った者がないじゃないですか。食糧の研究を解決せずして何があるのだ。それにどれだけの国が援助をしておるのか。民間人が一億近い金を集めて国のためにやっておる。研究が完成しておる。この通りだ。私の言うのは空論ではございませんぞ。なぜそれを取り上げて、防衛庁研究費の中から、政府の中からもやらぬか。政府がやったのは二千万だけ。八千万近いものは自分で集めてやっておる。新生活運動といって三千万円の予算を取ったがどこへやる。新生活運動の根本は食糧問題の解決、これをやれば日本の人口がいかにふえても、輸入食糧をなくして必ずやれるという一つの信念を持っておる。それに飛びついてきたのがソ連とアメリカの科学者だ。防衛庁は一人も見に行っておらない。いかにこういうものに対しての関心が薄いか、こういうことになる。重ねて申します。どうか十九億一千万円という技術開発の費用を役立つように使って下さい。  第一は、放射能対策、第二は、水中飛行機の研究試作、第三は、GMの研究による防空体制、第四は食糧問題の解決、こういうことに重点をしぼってやれば、あの金が生きてくるのだ。私は千四百六十一億というものは高いとは申しません。高いとは申しませんが、先ほど申しましたように、陸上自衛隊のこの一万人増員、それに伴う制度の問題、海上自衛隊において独創的な研究が欠けておるという点、航空自衛隊においてF86の改装、新機種の選定、防空の組織、技術研究において放射能対策、こういう重大なもののみならず、訓練がなっておらぬ。自衛力の漸増というのは、頭数をふやして予算をふやすだけが漸増ではございませんよ。人事を適当にして訓練を正当にしたならば、金をふやさず、人間をふやさないで戦力が向上するのだ。訓練によって、頭脳他よって科学は発展してくる。そういうことを考えると、今年度のこの予算は総額において異存はないが、皆さんの心がまえに不満がある。率直に不満があります。この根本は総理大臣に聞かなければ法案に対する私の態度は保留する。与党であっても保留します。しかもこれだけ膨大な予算を使いこなす経理をどう考えるか。駆逐艦の建造もよろしいが、なぜあれを競争入札させぬか。競争入札させれば今までの皆さんの値段よりも少くとも三割安くつくということをある船会社の者が言っておる。専門家が言っておる。これは名前を出すと、続いて発注を受けることができぬから、名前を出してくれるなと言っておる。何が必要あってあの小さな船を随契にしなければならぬか。日本の造船会社は一社、二社ではございません。競争入札によって価格を下げる方法がある。小にしてはくつの発注において、決算委員会でつるし上げられておる。契約二課長に公文書偽造の疑いがある。そういうものを峻厳に取り締らないで、千四百六十一億という防衛費を効果がないものに使うというおそれがあるならば、残念ながら私は態度を保留せざるを得ない。長官所信をただして質問を終ります。
  78. 津島壽一

    津島国務大臣 数々の御所見、有益なものを多分に含んでおったと思います。十分今後考えます。ずいぶん問題が多いようでございます。十分研究いたしたいと考えております。
  79. 福永健司

    福永委員長 午後二時に再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十九分開議
  80. 福永健司

    福永委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。稻村隆一君。
  81. 稻村隆一

    ○稻村委員 自衛隊の問題はしばしば憲法上の非常に重要なる問題にぶっかるわけです。たとえば第九条の問題でありますが、このことからすでに重要な問題なんです。今の内閣の方々は、岸総理を初めとして、防衛庁長官でも非常に教養のある専門家として私は尊敬しております。しかし率直に私申しますが、今の内閣の諸公の多くは、実際上優秀な官僚として戦前権力機構の上に乗ってやった人なんです。だから実際に、われわれのように長い間、人権のために戦ってきた人ではないのです。だから民主主義とかなんとか言うけれども、実際上感覚として、実践としての民主主義は全然——全然というと語弊があるけれども、口では民主主義と言っても、民主的な観念というものを把握していないような気がするのです。そこで自衛隊の創立過程において、しばしば憲法をじゅうりんするようなことをやって平気でおるわけですね。そういう点について、実は長官と憲法上の議論をする考えは毛頭ありません。いずれ岸総理大臣に来ていただいて御質問したいと思うのですが、こういうふうな憲法をじゅうりんすることをやられると、日本は必ず議会政治を破壊されて、独裁政治、専制政治の方向に行くことは明瞭なんです。そういうことを私は心配して言うのです。今さらあなたと憲法上の議論などする気はないのです。そこで先ほど保科委員から、武器に対する秘密保護法を制定するかどうかという御質問があった。私は昨年の十一月十一日の内閣委員会において、このこと質問しているのです。そのとき長官の答弁は、非常にあいまいでありました。そこで私は重ねてお聞きするのでありますが、先ほどの保科委員の御質問に対しても、はなはだあいまいな答弁をされておりますから、長官は、近い将来必要が起きたならば、武器に対する秘密保護法の制度を国会に提出するかどうか、これをはっきり答弁していただきたい。岸総理大臣も、一月の何日だったか、新聞に出ておりましたが、前橋かどっか他行ったときに、新聞記者が聞きもしないのに、秘密保護法を将来制定する用意があるというようなことを放言したわけですね。あとで取り消したようですが、これは非常に重大な基本的人権の問題でありますから、この点に対して、重ねて防衛庁長官の明確なる御答弁を私は要求したいと思います。
  82. 津島壽一

    津島国務大臣 防衛関係での秘密保護法を必要とするかどうかという問題、これはただいま御指摘のように、昨年の国会でも当委員会での御質問がございました。先刻の保科委員に対する答弁も、私は変ったところはないと思います。防衛の必要から申しまして、装備なりその他についてある程度の秘密ということが必要である。これは各国国防というものを立てていくところは、どこにもそういう制度があるわけでございます。そこで必要ありやいなやということを聞かれた場合には、私は必要はあると思う。しかし、それならばすぐこれを実現するかという第二段の質問に対しては、前回も同様でございましたが、この問題はすこぶる重大であるから十分検討いたしておる、しかし今直ちに提案するだけの段階とか、またそれが結論を得ておるということは申し上げかねる、こういうことを申し上げたわけでございます。それは従来と、また今日の委員会においても、用語は違ったでございましょうが、私の今率直なる考えを申し上げた、こういう次第でございます。
  83. 稻村隆一

    ○稻村委員 それでは、現憲法下においても、必要があれば秘密保護法を制定することができる、こういう御意見ですね。
  84. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。その内容との関連が大にあると思う。稻村委員のお説は、あるいは前国会においての御質問の際にお述べになったのも、憲法との関係はどうかということであったと思いますが、現に存在しておる秘密保護法は、アメリカとの相互援助協定に基いて受けるところの装備品についてのものでございます。私はこれについて、憲法と関連があって、そうして、何というか違反するとかいったようなことは考えておらない、要はその内容いかんによっての問題だと思うのでございます。
  85. 稻村隆一

    ○稻村委員 結局あなたのおっしゃるのは、ミサイル武器等に対して、必要があれば秘密保護法は制定できる、こういう意味だと思うんですな。そう思いますね、ものによっては。結局そうなんでしょう。
  86. 津島壽一

    津島国務大臣 機密保護をする対象がどういうものであるかということを十分に検討して、なるべく一般の自由、また権利というものを拘束しないようにするのが、私は政治だと思うのであります。その意味において、ここに内容的にも十分検討は必要である、こういう趣旨で申したつもりでございます。
  87. 稻村隆一

    ○稻村委員 私は秘密保護法とかそういうものは、いかなるものにせよ、憲法の十三条、十九条、二十一条に違反することは明瞭だと思うのです。そういうものを制定することは絶対に憲法違反であると考えております。こんなことはだれでも、憲法の条項を見ればわかるんです。見てごらんなさい。ただ問題は、あなたもこの前、公共の福祉に反するものは基本的人権は制限できるとおっしゃいましたね。憲法第十三条の問題について、あなたはそう言われるんですね、そうなんですね。この前もそう言われたようですが……。
  88. 津島壽一

    津島国務大臣 実はそういった憲法の条文について、私から解釈等を申し上げた記憶はございませんですが、もしそういったような純粋な憲法論、また法理的の解釈の問題でありますれば、これは一つこの方の専門の政府当局からお答えした方が間違いないだろうと思います。私はこの前憲法の条文を引用してこの問題をお答え申し上げた記憶は、実はないのでございますが、しかし、その点について政府見解をおただしになるならば、これはその方の専門家からお答えする方が適当でないかと存じます。
  89. 稻村隆一

    ○稻村委員 そうすると、総理大臣か法務大臣に来ていただいて聞かなければならぬのですが、しかし、これは自衛隊の問題ですから、いやしくも防衛庁長官である以上は、閣僚の一人ですから、それに対する憲法上の解釈がはっきりしないで、将来武器に対する秘密保護法のようなものを制定することができるということを明言するのは、おかしいと思う。
  90. 津島壽一

    津島国務大臣 先ほど申しました、現在行われております秘密保護法、これも装備に関しての機密保護をするために制定せられた法律でございます。私はこういったものが現在の憲法に違反しておるとは思っておりません。従ってこれが合法的に今日施行されておるわけであります。そういう意味において、防衛関係において特に必要な場合にその内容を検討し、いかなる程度にこれを実行するか、起案するかという問題は、憲法に違反するということに直接ぶつかる問題ではない、こう思っておる次第でございます。
  91. 稻村隆一

    ○稻村委員 これは私の意見を申し上げるようになりますが、われわれの見解によれば、秘密保護法のごときものは、日本の憲法からいって絶対に制定できないと確信しているわけです。公共の福祉に反するということで、基本的人権を制限する。そこなんです、労働争議でも何でも……。ところで公共の福祉という問題なんですが、公共の福祉に反するというのは、どろぼうとか、すりとか強盗とか暴力団とかのことをいうのだろうと思う。そういうものは監獄に入れなければいけない。そういうものは当然基本的人権は制限されるのです。ところが一体今武器の秘密というものがあるか。私は軍事専門家でないからよくわからぬけれども、今日武器の秘密といわれているのは、おそらく水爆の生産工程、ICBM、IRBM、人工衛星、こういうものは今秘密があるかもしれない。ほかの武器というものは実際上ほとんど秘密はありません。そうして私は武器の秘密ををなくするということは、戦争をなくし平和を招来する正しい道だと思う。武器の秘密がなくなってごらんなさい、戦争を不可能にするから。もう少し水爆の平和利用、核融合反応の道を、理論的にはできているけれども、これがほんとうに実際的にできるようなことを発見すれば、何も武器の秘密なんかありはしません。どこだってできるのです。これは将来の理論ですけれども、理論的にはそうなんです。そういうふうな武器の秘密がなくなることは、むしろ公共の福祉のためになるのだ。実際上武器の秘密なんかない方がいいんだ。武器の秘密をどんどん開放することが戦争をなくする。世界の方向はそこにいっている。武器の秘密はなくなっている。秘密だ秘密だと言っているうちに、みんなわかってしまう。アメリカの水爆、原爆の生産の秘密がソ連にスパイで漏れたとかなんとか言うけれども、これははなはだ疑問だが、ソ連が水爆原爆を作ったことはむしろ世界平和のためになったのです。ソ連が一方的に持っているとか、アメリカが一方的に持ってごらんなさい。それこそ強者が支配し、第三次大戦の危険を深める結果になるのだ。今武器の秘密がだんだんなくなりつつある。やれば人類の滅亡だから、幾ら戦争で金もうけをしたい者も、戦争によって世界を征服したい者も、戦争はできないというのが今日の状態でしょう。だからむしろ武器の秘密なんかなくなった方が公共の福祉のためになるのだ。だから武器の秘密を守る法律を出すことは、公共の福祉に全く反するのであって、武器の秘密を開放することが公共の福祉のためになるのだから、私は断じて秘密保護法などというものは制定できないと思うのです。そういうものからだんだん専制政治の萌芽を養っていくわけなんです。たとえば労働争議だってそうでしょう。これは議論になりますが、労働争議は公共の福祉に反するから労働争議を禁止する、世界のどこの国でも労働争議をどろぼうやすりと同じように見ているところはないのだ。資本家と労働者は対等の立場において交渉させなければ妥当な解決がつかぬから、そこでストライキ権を与えるというのは、公共の福祉に反しないという見解を文明国がとっているからです。労働争議といえども断じて公共の福祉に反するものではない。むしろ公共の福祉のために労使を対等の力において妥結させようというのが、文明国家がストライキを容認している理由なんです。こういうふうなことで、ストライキの禁止と同じように、現内閣はすでにまたこの基本的人権——言論、結社、出版、集会の自由を制限しようということを、やっておる。そこであなたに端的にお尋ねしますが、何でもかんでも公共の福祉に反するといってやれば何でもできるのだ。そこにいかなる専制政治も独裁政治もできるわけです。公共の福祉に反するからといってストライキを禁止し、公共の福祉に反するからといって秘密保護法を制定し、言論、出版、集会の自由を奪い、思想の自由を奪って、むしろ軍事科学研究を低下させ、アメリカの共和党政権がやったと同じような失敗をやっておる。そういうことをやることがいかに危険であるかということをあなたは一体どう考えますか。今の内閣の諸公というものは非常に教養があってえらい人がそろっているけれども、全然人権の擁護のために戦った経験がない人なんですよ。あなたでも岸さんでも権力機構によって仕事をした人だから人権なんか全然無視するんですよ。こういう点あなたはどう考えますか。
  92. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいまの御質問はだいぶ御意見に属する部分が多かったのですが、装備武器等には機密がないということと、機密を保つことは必要ないということとが、二つが一緒になったように思います。今日武器等に関して特殊のものについて秘密の保護をやっておることは世界各国でございます。これらがいいか悪いかという問題は別として、現実の事態に即応してこれが国を守る方法である、こういう観念であると思います。その意味において、現在の実際の状態からいきますと、機密の保護ということによって国防というもの、すなわち国の安全をはかっていこう、こういうことに相なっております。こういうものはない方が平和になるということであれば、それも一つの御見解だろうと思います。私は今すぐこういう機密保護法を提案するとかいうようなことを申し上げたわけではございませんで、現在ある法律においてなお足りない部分があるように思い、また国の安全のためにも、ある種のものには適用する必要があるのじゃないかということを考えておる、そういうことを申しておるわけであります。何が社会あるいは公共の福祉であるかということは、おのずからそこに社会の通念というものがあろうと思うのであります。そういう意味において、今の御意見ですが、そういうものはない方がよい、あり得ないというのは御意見であって、実際の政治というものは今世界各国でそういっていない、こう思うのであります。
  93. 稻村隆一

    ○稻村委員 軍事科学の発達で旧来の概念とか思想とかいうものが世界各国でだんだん変ってきておる。なるほどそういうものがあるかもしれないが、だんだんそういうものがなくなってきておる。アメリカでもマクマホン法があるのでかえって共同の研究ができないで弱っており、多くの学者が非難しておる。またオッペンハイマーを追放したり、一切このマクマホン法によって大統領といえども原水爆の所在地を言うことができない。こういう法律がある。こういうものに対しては、アメリカの伝統的な民主主義の精神からいって非常に非難があるわけです。こういうものは何とかして撤廃しょうと言っているくらいです。私はここで世界の情勢をあなたと今議論しようとするものではないが、日本国憲法から考えて、この機密保護法のような言論、出版、集会の自由を制限するがごときものは憲法違反である、これはできない、こういう憲法上の見解であなたに私は質問しておるわけであります。これは何度質問を繰り返しても同じだと思いますから、いずれ岸総理大臣か法務大臣に来ていただいて意見を聞きたいと思います。  そこで私は、この前の十一月の内閣委員会において防衛の根本問題に対してあなた方にしばしばいろいろな質問をいたしましたが、まだ十分な答弁を得ておりませんので、これを続いて質問したいと思うのですが、その前に私はやはりこの祕密保護法の問題につきまして、昨年の十一月十一日、やはり内閣委員会において防衛庁の中の「技術研究所の秘密報告文書の中に、昭和三十四年度末までに実戦に使用し得る国産誘導弾生産する予定であるが、それには祕密保護法の早急な制度と核兵器弾頭の供与が絶対必要な条件である」と報告書が出してあるはずだがどうかとお尋ねした、これをあなたはその事実は知らない、調べてあとで確かな返事をすると、こう言っておられました。そこで私は申し上げたのでありますが、一体事務当局が政治上の問題についてくちばしをいれて、祕密保護法を制定しろとか何とか言ったとするならば、そういう報告書を出したとするならば、これはふらち千万だ、そんなことは大臣がきめることですよ。事務当局が祕密保護法の制定の必要があるなんて、もしそんなことを言ったとすれば、そんな者は首切るべきなんだ、そういう政治上の発言をする者は……。特にわれわれは軍が政治関与をした過去の歴史でこりごりしている、日本をつぶしちゃった。それで私は前からやかましく言うのであるが、一体自衛隊とか防衛庁とか防衛庁の事務当局が政治的な発言をするがごときことは、絶対にこれは禁止しなければならぬ、こういう発言をする者は首切るべきなんだ。それが、火のないところから煙は出ないというが、同じ三十二年の十一月十日の東京新聞の夕刊にも、防衛事務当局は祕密保護法の制定を要求したが、長官があいまいだと言っていると、こういうのが載っておりますよ。新聞の切り抜きがありますよ。こういうことが事実でないと、あなた方は答弁されるにきまっている。わからぬ、そういうことはないと言うにきまっておるが、一体こういうことが出るこが、すでに事務当局がいろいろな政治上の問題にくちばしをいれる証拠なんです、これは絶対にいかぬ。過去の日本の軍隊の行き方、政治に軍人が関与して日本をつぶしちゃったことを考えると、これは二葉のうちに刈らなければならぬということを私はやかましく言った。こういうことがどうして出るかということ。それで、これはそういうことは覚えがないといって、あの当時は実はあとで調べて返事するということがあったのですが、こういうことはないのですか、絶対にありませんか。
  94. 津島壽一

    津島国務大臣 その点はその後も調べましたが、どういう文書であるか私は全然知りませんし、またそれを発見しませんでした。
  95. 稻村隆一

    ○稻村委員 これはこの前私が申し上げたのですが、日本週報の十月二十五日に、「アメリカの敗北と防衛庁に躍る怪美人」という題で書いてあるのを見たんですよ。それでこれを見てあなたに質問した、そういうことは知らぬとおっしゃる。それで私はいろいろ手を入れて、その文書を実は手に入れたのです。ところがあとになって、これはその人の名前は言えないけれども、返してくれと言って私のところから無理に持っていった。私はもう一度それを持って国会質問しようとした、ところがそれを持って帰っていった。もう一度質問するときにそれをお借りしにいこうと思っておった、ところが、きょう急に私は質問することになったものでありますから、その人に連絡するひまがなかった。今度貸すかどうかわからぬけれども……。だからこれはまんざらうそじゃないと思うのです、もう一度何とか借りたいと思っておるのです。そこで技術研究所というのがありますね、技術研究所長、おいでになっておりますか。
  96. 津島壽一

    津島国務大臣 技術研究所長は今出席いたしておりません。
  97. 稻村隆一

    ○稻村委員 この点、絶対にありませんか。あなたは絶対ないと言い切れますか、そういう秘密報告文書を出したことはないと、絶対言い切れますか。
  98. 津島壽一

    津島国務大臣 どういう文書であるか、はっきりわからないので、ないとかあるとか申し上げるのはちょっと早計だろうと思うのですが、何か技術研究所の者が書いたもので私どもに出した、こういう書類であるか、それがちょっとはっきり理解できませんので、あるかないかという御質問に対して何ともお答えいたしかねるのですが、はっきりいたしませんです。
  99. 稻村隆一

    ○稻村委員 技術研究所の報告書なんです。だから大臣におそらく出したものだろうと私は思っておる。私は四、五日借りておったのです、それでそのうちに一切写すつもりでおったのに、写さないうちにその人が返してくれといって持っていってしまったのです。
  100. 津島壽一

    津島国務大臣 重ねてお答えいたします。今のはどういう性質の書類であるか、技術研究所の報告書ということをおっしゃいますが、これはずいぶん数がある、いろいろな問題についてある研究員がいろいろな自分の仮定を置いて研究したものがあるかもわかりませんですし、内容的にもよくわかりませんので、先ほど申し上げた通りのお答えをするほかはないと思います。
  101. 稻村隆一

    ○稻村委員 いずれこの問題はまたあとで御質問いたします。  それでは先ほど辻委員からも、いろいろ日本防衛に対して御質問があったと思うのですが、いろいろ私も参考になったと思うのです。私は軍事専門家じゃないからきわめて抽象的でありますけれども、辻委員が御質問されたような内容を、やはりこの前の十一月の内閣委員会で御質問申し上げております。そのときにやはり十分な御答弁を得なかったので、重ねてこれの続きとして御質問を申し上げたい、こう思っておるのです。これは政治的の問題ですから、軍事専門家でなくてもわかるのであるが、世界の大勢に逆行したような軍備というものは、全く有害無益なんです。これはもうわかり切ったことなんです。これは政治の問題であり、外交の問題であって、軍事というものは外交や、政治と全く密接不可分なんです。軍事専門家は、ただ狭い範囲においていろいろ技術的な防衛方針を立てるのであって、根本の原理、原則は、これは政治の問題なんです。そこで技術的にいかに正しいと思われ、りっぱな計画であったとしても、この世界の大勢、根本原理からはずれたものは、これは全く役に立たないのです。だめなんです。そういう見解から、私は軍事専門の知識は小学生程度でありますが、しかし大局的見地に立って日本防衛に対してのあなたのお考え日本防衛に対する全責任を持っておる政治家としての津島防衛庁長官にお尋ねしたいと思う。  まず防衛庁長官のお考えをお聞きしたいのは、今日ICBMあるいはIRBMは、原水爆を装置して実戦に使用する段階になっておるかどうか、どう思うか、これはあなたの見解一つお聞きしたい。
  102. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。ICBMあるいはIRBMが実戦に使える段階に今日なっておるかという事実のお問い合せでありますが、これはいろいろ推測のことはあります。先ほど稻村委員は、秘密はないということだったのですが、これはなかなか秘密があるのです、こういうものは。でありますから、このICBMが今日ほんとうに実用の段階に入っておるかどうかということは、これはなかなか把握しにくい。これはいろいろ軍事専門家なりその消息通、そういった専門に研究された方からの総合した判断を見ますと、まだまだこれが実用化する段階に至っていないというのが、実際の意見のように私は思っております。またIRBMの方は、ややそれよりはすでに進歩した段階にある、これはいろいろな、種類がございます。そういったことは、大体私は間違っていないように思うわけであります。何年ごろにこれが実用の段階になるかというようなことについては、いろいろ意見があり、今後の科学進歩の過程においては、それらの推測が、さらに短縮されて早くなるというようなこともいわれております。これらは秘密の事項であるのです。そうでありますから、いっこうこうなるということを的確に知るということがなかなか困難な事情でございます。
  103. 稻村隆一

    ○稻村委員 IRBMもまだ実戦の段階にあるかどうかはっきりしてない、こういうわけですか。
  104. 津島壽一

    津島国務大臣 重ねてお答えしますが、ICBMよりはIRBMの方が実戦の段階に早くなるだろうということは一般にいわれておる、こういう時期の違いの点を申し上げたわけでございます。
  105. 稻村隆一

    ○稻村委員 ところが、これは常識上ICBMもIRBMも実戦の段階にあるのじゃないかと思われるのです。というのは、私は何も秘密を探ったわけではないし、軍事専門家でないから、的確だとはいえないが、たとえばこの間イギリスでロイド外相がアメリカの飛行機が水爆を積んで警戒飛行しているということを国会に報告して大問題になった、御存じでしょう、これは。これはすでにIRBM、ICBMが実戦の段階にあるということを事実上物語っているのですよ。なぜかというと、御存じのように、IRBMは音速の約十倍、ICBMは音速の約十三倍だといわれておる。これは軍事専門の雑誌を見ると、すべての軍事専門家たちがそう書いている。そうするといかに速度の早い飛行機でも、ICBMやIRBMから攻撃された場合において、幾らレーダーによって敏速に把握しても、すぐ飛び上ってそれを撃つだけの余裕がないわけなんですね。そこで必然に、しょっちゅうこれは警戒飛行をして、もしICBM、IRBMがやってきた場合に、直ちに応戦する体制を戦略爆撃機はとらざるを得ない。そうすると、すでにこれは実際上実戦の段階にあるものと常識上考えていいのです。だから、もう実戦の段階に入っているのですよ。私はこう断定しても差しつかえないと思う。そこでこれは日本にも非常に重大な関係がある。まずその点に対しましてのあなたの見解はどうですか。ロイド外相が、アメリカの飛行機が常に水爆を積んで哨戒飛行をしていると言っておるのは、ソ連に対する威嚇じゃないですよ。ソ連のICBM、IRBMが来たときに、実際にこれに対抗できるために、常に哨戒飛行をやっておることは間違いありませんよ。それをあなたはどう考えますか。
  106. 津島壽一

    津島国務大臣 先ほどお答えした趣旨は、IRBMは、この種のミサイルの実験段階は、よほど早く進んでおる。おそらくは早くこれが実用段階にいくであろうということをいわれておる。しかしICBMにつきましては、いろいろな情報を総合して、あの第一回の実射の結果によって、まだいろいろ研究すべき部分もあり、それが実用段階にいくのにはある程度の期間を要するだろうというのが一般の観測するところである、そういう一般の観測のことを申し上げたのです。  なお今のイギリスの上空を原水爆を搭載したものが飛んでおるという問題が、直ちにIRBMがもう実用段階に入ったからだということに直結する問題かどうかということは、私は意見として申し述べるということは、確信がございません。
  107. 稻村隆一

    ○稻村委員 少くともそれはIRBMが実戦の段階に入っていることを証明しているのですよ。これは実際問題としてそうなんです。そうでなければあんな危険なものを積んで哨戒飛行するはずがないのです。飛行士の一歩誤った行動で第三次世界大戦が始まってしまうわけです。しかも今の戦争は、第三次世界大戦が始まったら、これは人類が全滅になるのです。そんな危険なものを、飛行士が間違って投下した場合でも、世界全滅の責任を負わなければならぬのですよ。そういう危険なものを積んであれするはずがないのです。いわゆるそれはIRBMが実戦の段階に入った証拠なんです。ICBMはかりに疑問だとしても、IRBMはすでに実戦の段階に至っている証拠なんです。そこでこれは日本においても非常に重要な問題があるのですが、この点はほかの委員会もしくは予算委員会でも問題になったと思いますが、沖縄にアメリカの戦略空軍の基地があり、もしヨーロッパにおいてアメリカの飛行機が水爆を積んで哨戒飛行をしょっちゅうやっているとするならば、私は沖縄におけるアメリカの飛行機が水爆、原爆を積んで、日本の上空その他周辺等を警戒飛行をやることはあり得るのです。そういう場合に、これは法律的に見てこれを拒否するところの理由はないでしょう、ありますか、この点をお聞きしたいのです。
  108. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。沖縄に基地を持つ米軍機が、原水爆を搭載して日本の上空を飛翔しておるかどうかという、この問題については、そうした事実は承知いたしておりませんし、私はないということを思っております。
  109. 稻村隆一

    ○稻村委員 もしそういった場合にそれを拒否することができるか、と言っているのです。原水爆戦を予想する以上は、そういうことがあり得る。沖縄の基地から日本の周辺あるいは上空を警戒飛行する場合があり得ると思うのだが、そういう場合は拒否することができるかできないか、原爆を日本に持ち込むことは拒否すると岸首相もあなたも言われたが、しかしアメリカ軍の飛行機が日本の上空を原水爆を積んで飛行する場合に、それを拒否する法律的根拠があるかどうか、こう言うのです。
  110. 津島壽一

    津島国務大臣 これは政府見解と申しますか、予算委員会等においても問題になった点でございます。わが国方針が核兵器の持ち込み、またはこの装備について、これを受け入れないという方針が明確にされておるわけであります。またアメリカ側においてもそのことを十分に承知して、これによって行動されているわけでございます。そうでありますから、今日の事態においてそういうことが起り得ないという現実の事態をわれわれは信じておる、こういうわけでございます。
  111. 稻村隆一

    ○稻村委員 いや、私はそういうふうな、信ずるということをお聞きしているのではなくて、日本の周辺を飛ぶ場合にそれを拒否し得るかどうか、法律上の根拠があるかどうかということをお聞きしているのです。
  112. 津島壽一

    津島国務大臣 法律的の根拠ということですが、これは法律関係ではありませんで、日米間の今までのお互いの話し合い、また日米案保条約の精神からいって、われわれは友好と親善の基礎において日本とともに事をしようという建前に立っておりますから、そういった事実は起り得ない、こう確信しているわけでございます。
  113. 稻村隆一

    ○稻村委員 どうも私の言ったことにお答えにならないで、信じているということだけですけれども法律上の根拠があるかどうかを聞いているだけなんです。それをはっきりお答えできないのですか。国際法上とか、あるいは日米安全保障条約、行政協定において、そういうことを拒否できないのじゃないですかという……。
  114. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。これは法的拘束力、法律があるかどうかという問題じゃないと思うのです。法的拘束力ありやという点は、いろいろ議論のある点だと思います。しかしながら、われわれは、これを実行しないというアメリカ側の方針、またわれわれの態度を十分了解して、これに対処しておるということでありまして、ある意味においては、これは法律的の根拠があるかとおっしゃるならば、法律そのものはないわけでございます。条約の精神からいってそういうものである、こういう意味であります。
  115. 稻村隆一

    ○稻村委員 それじゃ私、もとへ戻ってまた御質問申し上げますが、これは先ほど辻委員と防衛庁長官との間の質疑応答の中にも現われましたけれども、すでに武器としての空軍というものはだんだんと主たる立場を失いつつある、こういうことは事実だと思うのです。先ほどもICBM、IRBMが実戦の段階にあるかどうかとお尋ねしたら、IRBMだけはあるようにも思われるというような、あいまいな御答弁ですが、そのようなことでは日本国防計画はできないと思うのです。そんなことをあいまいにして、そして日本の自衛とか、あるいは国防とかいうものを私は論ずるだけの価値はないと思うのです。現に世界の情勢というものは、空軍にかわってロケットが出てきた。ロケット主位の時代になって空軍は従になる。だんだん、これは無用とはいかないけれども、無用の方向にあることは事実なんです。たとえばこれは昨年の十月十四日のUPの電報でありますが、アメリカの国防総省はダグラス、ボーイング、マーチンの三社に対して、B47、B52、B57、及び試作中の数種の原水爆機の製作を中止するよう命令を発しておるわけです。ソ連も戦略爆撃機である御自慢のバイソン、とかベアとかいうものの製作数を五十分の一に切り下げるということを言っておるのです。これを見ても、ロケットが発達すれば、ロケットの発達と並行して空軍はだんだん減りつつあるのです。というのは、どう見ても、これはすでにICBM、あるいはIRBM、特にIRBMが実戦の段階に入っていることは明瞭なんです。これがわからぬというふうなことで国防計画をされてはたまったものじゃない。基本がはっきりしないで何で国防計画ができるかというのです。要らないものを作って、ただ安心しているだけです。それだからピストル強盗に対してステッキでも持って対抗しようというようなことになるのですよ。それだから、あなたのそういうふうな根本的な立場が明確でなければ、幾ら国防をやったって、それは何にもならない。そこで私は今日のロケットの段階において、これは端的に申しますけれども、かりに米ソ戦がありと仮定するならば、中共やソ連から日本を攻撃した場合、当然攻撃されます、日本はアメリカの軍事基地があるのだから。米ソ戦はないと思うけれども、かりにありと仮定した場合に、これは軍事専門家でなくたってわかりますが、最初の段階においては、とどめをさす段階ならば別だけれども、最初の緒戦の段階は当然中共やソ連からロケットによる攻撃なんです。アメリカの軍事基地の攻撃なんです。韓国だとか蒋介石なんかがもし侵略するとすればまた別でしょう。そういうことがあり得るかどうか知らぬけれども、すでに世界はロケットの段階に入っていることは明瞭なんです。そこでこの前も私が御質問を申し上げたときに引用したのでありますが、何人が考えましても、防衛庁長官がICBMやIRBMが実戦の段階に入ったかわからぬなんという、そんなことでは、現在の国防など全然論ずる資格もなければ、軍事科学を云々する資格もないのです。この前私は言ったでしょう。スエズ戦争の一年前、もう三年以上になりますか、ソ連のジガレフ元帥というのが、「航空戦略に関する考察」というパンフレットを書いておる。これはソ連の内部において五万部売れておるパンフレットである。それから世界各国で翻訳されて非常に売れたパンフレットである。おそらく防衛庁の諸君でも見られた方があるでしょう。その中で、ジガレフ元帥は戦略空軍はもう廃物になったと大胆に言っておる。急にフルシチョフが言ったのじゃないのです。というのは、戦略空軍というものは膨大な基地が要るし、人員が要るし、しかも資材が非常に必要であるし、それから敵の爆撃にさらされる。速度もおそい、それから射程距離も短かい。ロケットの方がはるかに射程距離も長いし、速度も早い、しかも敵の目からこれをカムフラージュできる。地中深く埋没するから敵が気がつかぬ。それだから、すでにロケットの時代になった、戦略空軍が廃物になった、こう言っているのです。それは、世界の軍事専門家はだれでも知っておる。アメリカの軍事専門家もみな言っている。ところがアメリカではロケットに急に変えることができない。当時のウィルソン国防長官航空機会社の代弁者だから、絶対に空軍からロケットに切りかえることに反対した。急に転換されては飛行機工場がつぶれてしまう、そうすると資本家が破産するから……。ところがソ連の方はいわゆる必要生産だから、必要でないやつはどんどんスクラップにしてやめてしまう。そこで工業水準のおくれているソ連が——工業水準では、あなたの知っている通りソ連はアメリカよりはるかにおくれております。しかし生産方法が優秀であったがために、人工衛星とかロケットが進んでしまった。そうして現にスエズ戦争が起きたときに、ブルガーニンは、イギリスがスエズに出兵をしたときに、ロンドンをロケット攻撃するといっておどかしたでしょう。ちょうど私はインドに行っておりましたが、大騒ぎでした。そこでイギリスはすぐに撤兵した。だからロケットはすでに実戦の段階になっておる。ロケット時代に入っているのです。しかも、アメリカはどうかというと、さっき言った通り、今までのウィルソン国防長官がやめ、そうして人工衛星とICBMがソ連に出現すると、急に空軍をやめて、日本軍事基地からも急速に引き揚げを開始したのです。それならもうすでに戦争はロケット時代に入っているじゃないですか。それをまだわからぬなんて、そんなことで、どうして日本国防計画が立てられますか。むだな国防、おもちゃの軍隊を作っても何にもならないことになってしまうのです。私は軍事専門家でも何でもないのですけれども、常識の問題、政治の問題です。政治家などというものは、何もこまかいことを知らぬでも、大局さえ知っていればいい。大局に立って、世界の大勢と今日の軍事科学段階をよく洞察して、そのもとにおいて国防計画を立てなければ、その国防は全くむだなものになってしまう。ロケットがまだ実戦の段階かどうかわからぬなんて、そんな話は——中距離弾道弾あるいは大陸間弾道弾というふうなものが実戦の段階にあるかどうかわからぬなんという、そんな考えで、どうして国防計画が立てられますか。これは議論ではないのです。あなたはそんな考え国防計画を立てておるのですか。もう一度あなたの意見を聞かして下さい。
  116. 津島壽一

    津島国務大臣 いろいろ多岐にわたった質問のように伺ったのでございます。今日の防空あるいは敵に対する攻撃が、飛行機、有人機の利用から、いわゆるロケット、ミサイルというものに移行しつつあるということは事実でございます。現にアメリカにおいても、航空機製造のいろいろな会社においても、航空機も同様有人機を作っておりまするが、同時にミサイルの方に非常に重点が移行しつつあるという事実はございます。しかしながら、こういったロケット、ミサイルができたから、既存の有人機というものが無用化したのであるというようなことは、これはよほど事実に違ったものと思います。従ってかりに例をとりましても、ICBMができたからソ連は有人機を廃止するか、無用化したものと見るかというと、私は極東方面におけるあの多数の有人機はそのままに保存され、また利用されるという状況でないかと思います。アメリカにおいてもそうでございます。今現に新しい飛行機の有人機を研究装備改善して、非常に大きな力でこの方面をさらに促進しているという状態でございます。であるから、理論的にこういったロケットの進歩がだんだん大きくなり、それに重点がかかるということはお説の通りでございます。しかしながら一方の有人機がもう無用化するものだということを現状においていうことは、私は事実と違っておるのじゃないかと思います。また日本国防方針が、こういった科学進歩の時代に即応して、国力、国情に応じてできる限りのことはやらなくてはならぬ。しかし多数の世界諸国において、そういった強力なロケットというか、そういったものを作り得る能力ありや、財力ありや、こういう問題になってくると、各国おのおのその事情に応じて最善を尽すという以外にはない。それなら国防を廃止してしまったらいいじゃないか、こういう議論は私は不敏でありまするが、諸外国情勢についてまだそういうことを聞いておりません。そういうような意味においてわが国国防は、そういった時代においても、施設改善、収術の向上による装備刷新ということをもって、わが国は自分で守るだけの体制を漸進的に進めていこう、しかしながら足らざるところは集団安全保障、また日米安全保障によって補っていくという現在の国防基本方針というものは、私はこれは当然に尊重され、また維持されていくべきものだと思うのです。国防方針は何もないのであるというようなことは、それは私は言い過ぎじゃないかと思うのでありますが、しかし御意見のあるところは全体の体制に大きく触れておる問題でございますから、十分考慮いたしたいと存じます。
  117. 稻村隆一

    ○稻村委員 私は結論を言っているのじゃないのです。ただあなたがICBM、IRBMというふうなロケットはまだ実践の段階にあるかいなやということがまだわからぬというふうな、そんなあいまいなことで日本国防計画を立てられてはたまらぬ、私はこう言うのです。そういう観測のもとにおいてそういうことを申し上げたのです。そこで私は、そういうほんとうの世界の軍事科学段階もしくは世界の情勢戦争があるかないかというふうな判断、そういう判断のもとに軍事科学進歩する段階を分析して、その上に国防考えるべきじゃないかというのです。ところが防衛長官がそんなあいまいなことをいうなら、私はあなたがどういうふうな国防計画——あなたの防衛庁のやっている国防計画は全部むだだとそこまでは言っていない。これから言うかもしれないけれども。あなたがそういうふうなあいまいな態度でもって日本国防計画を立てたらたまらぬと言うんです。そこで私は具体的な問題に入りますが、もし日本が米ソ戦の渦中に入った場合——渦中に入らざるを得ないのだから。今日日本にはアメリカの軍事基地があるのだから、軍事基地は爆撃する、これは常識です。その軍事基地の爆撃は、やはり原水爆で爆撃するということは常識です。科学者の常識なんです。その場合もし北方から攻撃があるとすれば——この点は防衛局長にもこの前十一月の内閣委員会で申し上げたのですが、はっきりした返事はありませんでした。ウラジオから東京を攻撃するには、IRBMで六分なんです。六分という計算が出ている。少しくらいな違いがあるかもしれませんけれども、一分やそこらの違いはあるかもしれないけれども、六分です。マイルにして七百六十マイル。そうすると、いかなる飛行機もこれを迎撃する余裕を持たない。無力になってしまう。こういうことになっておる。そこで今日本生産しておる飛行機ですが、F86Fというふうなものは少くとも大陸から来る攻撃に対して全く無力である、こういうことは事実でしょうね。海上はるかにこれを把握して落すなんということは不可能でしょうね。おそらくこれはそうじゃないですか。
  118. 津島壽一

    津島国務大臣 そういった種類の誘導弾に対処する道が今の自衛隊の持っておる飛行機で防御可能であろうかという問題、これは非常に困難なことであります。でありますけれども、これはいわゆる先ほど申しました一種の集団安全保障また日米安全保障条約の改正によって、これはともに相待って防備の方法を講じなければならぬ。また根本的の問題といたしましては今日原水爆、これを戦争利用するということに対しては、世界的の世論というものがある、またわれわれはこれを使用しないために、外交方面その他において全力をあげてやっておるわけでございます。各国政治家もおそらくそういったような無謀な戦争を必ず実行するというようなことはない、こういうように考える、これは外交方面の問題であります。しかし万一そういった問題があっても、われわれはそれに対抗する措置を今現有の戦闘機によって不能な部分はこれを補っていく道を考えなければならぬ、こういう考え方をいたしておるわけであります。
  119. 稻村隆一

    ○稻村委員 万一ということでだんだん自衛隊を拡充し、現に満洲事変当時とほとんど同じくらいの軍備になっておる。満州事変当時常備軍二十二万でしたね。それであれでもいろいろ問題が起って、軍縮問題が起きて、青年将校がそれに反対して、それが満州事変の原因——軍縮に対する一つの抗議なんです。二・二六事件、五・一五事件、みなそうなんです。今は実に当時とは比較にならぬほど、何というか、金のかかる軍隊になっているわけですね。そういうふうな軍隊を私は万一ということを目標としてやるのはおかしいと思うのです。実際もし第三次大戦がないという聡明な判断なら私もそう思いますよ。聡明な判断であるなら、何も今陸上自衛隊を一万何千名ふやしたり何かする必要はない。おかしな軍艦、実戦のためにならぬような軍艦のトン数をふやしたり何かする必要はないじゃないですか。しかもそれは局地戦に使うとこういうのでしょう。局地戦というふうなものは私は少くとも少しでも——こんなことは常識的な問題であるが、日本国防というものはアメリカとの安全保障条約や行政協定において、しかもソ連中共を相手に考えておるのですよ。間違いないのですよ、これは。間接侵略とは一体何をいりか。革命とか内乱とか、そんなものは航空機の三百機も必要ない、昭和三十五年までに千三百機も必要ないのだ。しかも何らこれはあなたの言う通り防衛に、ロケット戦の勃発した場合に能力のない飛行機なんだ、それを作っておる、それをアメリカから買ってきて作る、そうして三菱や川崎に作らしている。軍需工場にたくさんの人間を募集して作らしておる。こういうふうになると、必要がなくなっても、やめることはなかなかできないのですよ。あなたも知っている通り、軍縮くらいむずかしいものはないのだ。必要がなくなって軍縮をやろうといったら、みんな反抗いたします。南米なんかしょっちゅうです。日本の過去もそうです。普通の労働者のストライキは、武器を持たないから大したことはないけれども、職業軍人のストライキは、武器を持っているから、政治家は絶対に軍縮は不可能です。こういうことになりかねない。そして独裁政治の方向にいかざるを得ないのです。特に近代的な軍隊でないものはそうなる。そこで私は今ロケットの前に全く無力なF86Fなどをアメリカから買ってきたり、三菱や川崎に作らしたりする必要はないと思う。その飛行機を千三百機も三十五年までにふやすなんということは、時代はもう二、三年たつとうんと変ってしまいますよ。しかし一たん飛行機工場を動かしたら、これはなかなかやめるわけにいかぬ。軍縮をやったら、これはいろいろな社会問題が起きて、困ったことになるわけなんです。だから今つまらぬ飛行機などを作らないで間接侵略などというものは、これは内乱か暴動を意味するのだろうが、そういうものはないだろうと思う。国民の生活を安定させれば、暴動も内乱もない。かりにあったとしても、それは警察隊くらいで何でもない。飛行機の千三百機も要りはしません。そんなことをやらないで、もう少し軍事科学、ロケットの研究等やったらどうですか。軍事科学研究は差しつかえない。平和になれば平和利用に切りかえることができますから、そんなつまらぬ金を使って飛行機などを作る必要がどこにありますか。間接侵略ということのために飛行機を千三百も作ることは意味がない。そういうふうに、全く役に立たない国防方針をとっているわけなんです。間接侵略のために必要だということは、これは一つの三百代言的なにげ口上にすぎない。こういうばかげた国防計画はやめたらどうですか。この辺であなたの真意をお聞きしたいと思う。
  120. 津島壽一

    津島国務大臣 たびたび申し上げまして恐縮ですが、今の長距離、中距離の誘道弾、ロケット、これがあるために、有人戦闘機が全部無用になったということを即断することはいかがかと存じます。これは各国において従来の戦闘機を持っているわけであります。それを全然使わないという保証が世界的にあれば問題はないのでございますが、やはりそれに対しては、日本の防空という見地からいけば、それに対応する設備というか、そういったものが必要であるという見地がありまして、やはり一定の方針のもとに可能な限度においてこういったような防衛体制を作っていこうというのであります。諸外国において全部飛行機を廃止したらあるいは必要ないかもわかりません。しかしながらロケット時代においても、そういうような戦闘機は必要な数はみな持っているわけであります。それを使わぬという保証はどこにもないわけであります。それに対抗してはやはり戦闘機というものは防衛上必要だ、こういうような観点を持っているわけでございます。
  121. 稻村隆一

    ○稻村委員 もうこれ以上あまり言っても仕方がないと思いますが、それはイギリスだって、アメリカだって、空軍は一ぺんにはやめるわけにいかない。徐々にやめつつある。これは軍需工場の死活問題だ。失業者も出るし、破産、倒産も出る。だから一ぺんにはやらないで、徐々にやめつつあります。ところが日本はこれから始める。今まで作ったものだから、急激に転換できない。かりにF86Fを三菱や川崎の工場でうんと作り出す。作り出すと、これは川崎や三菱が、日本の航空工業の発達とマッチして徐々に民間航空にでも転換しなければ、実際上転換できなくなります。これはよくわかる。外国の事情もそうなんです。イギリスでもアメリカでも、航空機をやめてしまえば、それで失業者が出る。破産、倒産が出るから、これはそういう事情なんです。ところが日本は飛行機は何にもない。それは私どもと立場が違うから、あなたの立場からすれば、外国の余った、アメリカの用もなさない飛行機を買ってきて、そして自己満足している自衛隊というのもけっこうでしょう。けれども、F86Fという時代おくれの飛行機をわざわざ日本の軍需工場で作る必要がどこにあるのですか。どんどん日進月歩じゃないですか。軍事科学というものは一年たったら大へんな発達ですよ。外国が飛行機をやめないのは、飛行機をやめられない事情があるが、だんだんやめつつある。優秀なロケットに変えつつある。日本はこれからやるのだ。これからやるものを無用なことをやるなと言うのです。私はこの前も言った通り、おくれるのです。この前も、第一次大戦後のドイツとフランスの例をお話ししたでしょう。ドイツは一時裸になったけれども、新しい武器をどんどん作ることは可能になってフランスを追い越した。私は再軍備反対だから武器を作れと言うのじゃない。ドイツは過去の武器を全部こわされて、国防軍が十万に制限されて、しかも飛行機を作ることを禁止されておった。ところがフランスは時代おくれの武器をどんどん作っておった。ドイツは全然裸になったから、そこで今度ヒトラーが再軍備するときに、全然過去のものにとらわれないでどんどん新しいものを作ったから、フランスより進んで、世界一に進んじゃった。あなた方は再軍備の立場から見ても、今外国から少しぐらい買ってくるというようなことは、自衛隊だから空軍が一機もないというのは体裁が悪いでしょう。きまりか悪いでしょう。だから死の商人諸君がアメリカから買ってきて、そしていかにも軍隊らしい体裁を整えたいのは、あなた方の立場から見れば、これはやむを得ないでしょう。なぜ時代おくれの飛行機を軍需工場で作る必要があるのですか。そんなものは日本で作る必要はない。もし考えるならば、もっと新しい観点に立って、新しいものを日本科学利用し、日本の理論物理学やその他いろいろな学問を利用して、全然新しい構想において考えたらいいじゃないですか。何で工場を動かして時代おくれのものを作るんです。そうなった場合に転換ができない。社会問題を起したり大へんなことになりますよ。あなた方はそう思いませんか。近代的な軍隊は決して反乱なんか起さない。ドイツの軍隊は政治の命令に従っただけですよ。ヒトラー時代だって、決して軍隊が自動的に政治に関与したりしなかった。むしろあの第二次大戦をやるときには、ドイツの軍部は、純粋な軍事戦略の立場から反対だった。これはチャーチルの大戦回顧録を見てごらんなさい。はっきりその通り言っている。ただ彼は政治の命令に従った。ところが日本の軍隊みたいな歩兵万能の軍隊、そして政治などばかり論じている軍隊が政治に関与した。南米なんかそうです。ラテン・アメリカの一部では、近代的軍隊でないから、秩序も何もない。そういうものが常に政治に関与して国を誤まる。こういう議論は国会でしたって、ほんとうに問題にならない。国会というところは法律論ばかりやっているところだから……。こういうことをほんとうに考えてやらないと、あなた方がそんな時代錯誤の軍隊を作って、今度飛行機を減らす場合に、空軍が反乱を起すとか、軍需工場が大騒ぎするとかいうことで、軍縮が不可能になって、そして独裁政治、専制政治の方向に引きずり込むという悲惨なことになるのです。ラテン・アメリカの国なんかそうです。こういう点はあなたは考えませんか。なぜF86Fなんてあんなものを三菱やなんかで作るのですか。死の商人諸君に買わしたらいいじゃないか。あんなものを作って、社会問題を起すようなばかなことを、どうしてやるのですか。
  122. 津島壽一

    津島国務大臣 いろいろ御質問をいただきましたが、だいぶ御意見になる点が多かったと思います。私ども防衛の必要上航空機を一定の数はどうしても備えるということの必要を認めて、やっておるわけであります。新しい飛行機の選定についても、あらゆる観点から、性能、その他の点を十分考慮してきめたいと思っているわけであります。それ以外の点については、御所見は御所見として、私は拝承しておきたいと思っております。
  123. 稻村隆一

    ○稻村委員 私は憲法上の問題その他の問題について、岸総理大臣にぜひともここに来ていただいて、質問したいと思うので、あなたに対する質問はこれで打ち切りますけれども、ただ最後に、これは私どもの地方の問題ですが、非常に地方の人が心配しておりまして、ぜひ質問してもらいたい、こういうので御質問申し上げますが、今アメリカ軍の空軍基地がだいぶ返還されつつあります。私どもの新潟県でも、新潟飛行場は三月三十一日でアメリカは返すということを、仙台の調達長官が明言されたそうです。そこで新潟市民の一番心配いたしますことは、新潟市が発展いたしますためには、今の飛行場のあるところに発展する以外に道はないので、どうしてもあれは市民のために使わしてもらいたい、民間航空なら、まあそれでがまんをするけれども、あれを自衛隊が使うと言いうことになると、またいろいろな問題で大問題が起きるから、なるべく自衛隊があれを使わないように一つ話をしてもらいたいというので、実はこの間、長官はおいでになりませんでしたのでお目にかかれませんでしたが、その基地から陳情に来た者を連れて官房長にお会いしたのですが、はっきりした返事はいただけませんでした。ただ個人的に小山次官とお話ししたときに、新潟は自衛隊は使わないだろうというお話を、小山次官は、小山次官の個人の推測かどうか知りませんけれども、言われました。そこで、アメリカ軍が帰ったあと、自衛隊はあの基地を使うのでしょうか。差しつかえなければ、その点をはっきり御答弁願いたいと思うのです。
  124. 津島壽一

    津島国務大臣 新潟の飛行場につきましては、近いうちに駐留軍からの返還があるということを期待しております。その場合に、あの飛行場についてどうするかという問題は、目下検討中でございます。防衛庁の立場から申しますと、あの方面に着陸するような補助的の飛行場として、ある程度利用することが望ましい、こういうつもりでおります。地所等は航空局に、返還というか、当然に帰属するようなことになると承知いたしております。従ってそれらの用途と相待って、支障のないように、また地元の方にもよく御了解を得て、でき得るならば補助的の利用をしたい、こういうような考え方をしておるわけであります。
  125. 稻村隆一

    ○稻村委員 これで終ります。
  126. 福永健司

    福永委員長 西村力弥君。
  127. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私は国防基本問題については後日に譲りまして、この前お尋ねしました小川町に自衛隊音楽隊が出動した問題について、その後淺沼書記長と私現地に参りまして、そのついでに少し調査をして参りましたので、この点についてお尋ねをしたいと思うのです。あそこは御承知の通り、賛成反対で鋭い対立をしておるところなんでありまするが、そこに自衛隊が出て行ったことは、表面はとにかく自衛隊募集の宣伝活動だということになっておりまするけれども、実際はやはり飛行場拡張のために誘致賛成の諸君を激励し、反対派の者に威圧を加える、こういう意味をもって行かれた、私たちははっきりそういう工合に考えておるのですが、長官はそうじゃない、政治介入というような意味のものではないという御答弁でございましたが、現地に行って聞いてみましたところが、町長山西きよ女史が、自衛隊が参りましたときにその音楽隊の隊長に、私はここの町長だ、この町長に何らの連絡もなしに来るということは常識にちょっとはずれておるではないか、こういう質問をした。そうすると音楽隊の隊長は、どこの何とかいう学校の落成式に行く予定であったが、それが中止になったために、そうしてこちらの方からぜひ来ていただきたいという要請があるから来たんだ、こういうようなことを申したそうです。それで、その言葉は明確にしていませんけれども、こちらの方から要請があったからということは、すなわち、町長に連絡のない——町長は要請した覚えがない、そうすると要請したのは、自衛隊の基地誘致をはかっている諸君が要請をした、その要請にこたえたということが、その言葉の裏にはっきり現われておるのです。ですから表面はどんなに言われましても、やはりそういう言葉の端に現われておるのです。事は三十五名の自衛隊の隊員が行ったことでございますけれども、私たちがそういう芽ばえについて強く警戒しなければならぬ問題は、軍的性格のものが政治に介入する端緒というものは、はっきりとこれを断ち切っていかなければならぬじゃないか、こういう点から問題にしているわけです。長官も私が考えておる軍の政治介入はいかなるさまつなことであってもこれを完全に阻止していく、そういうふうに善処していく、こういう強い決意を持つことが必要だと私ども思うのですが、いかがでございますか。
  128. 津島壽一

    津島国務大臣 小川町に練馬部隊の軍楽隊が出張したという問題について、これと政治的な関係ありやという問題でございますが、これは前回もお答え申しましたように、茨城県の連絡部長が要請したものでありまして、練馬部隊としましては、そこの基地問題に関係のある方々の要請によって出かけたという事実はないと私は思っております。今後においてもそういうような理由でもって出張するということは、厳に取り締りたいと思う次第でございます。
  129. 西村力弥

    ○西村(力)委員 茨城県地方連絡部の部長さんですか、その人が、山西町長がそういう工合に連絡部からの要請によって出たというんだったら、真意いかんということを聞こうと思って連絡をして行った。そうしたところが出張せられた、それが第一回です。第二回目は、あすこの藤井という町会議員が連絡部に行って、今山西町長が来る、こう言ったところが、その連絡部の部長は、それは大へんだ、それでは雲隠れというわけで用事を見つけて出張せられた、こういう工合になっておるのです。山西さん、女で町長になられるくらいですからなかなか弁も立ちますし、相当な方でございますからおそれをなしたのかもしれませんけれども……。そういう工合にはっきりと要務に基いた純粋の宣伝活動に行くんだとすれば、何も逃げを打たなくてもかまわぬじゃないか。そういう工合に二回とも逃げを打っておるのです。特に二回目は今申したように、藤井なる町会議員が行って、今来るぞと言ったらあたふたと逃げたということになっておる。まともに応対を好まないというところ、そういう点から言うても、やはり宣伝に名をかりた意図的な出動である、こういう工合に私たちは考えざるを得ないわけなんです。こういうことは、基地を設置したいという強い希望があるにしても、軍のあり方という問題から今後、答弁ばかりじゃなく、本気にその立場をとってもらいたい。これは長官にしかと一つお願いしたい、こう思うのです。  それから宿泊費の件でございまするが、御答弁では三百五十円払われた、こうなっております。ところが実際に行ってみますと、なかなか調べがつきません。大体相当の手が回っておるらしい。だがいろいろの方法をもって私も聞きだしてみましたところが、やはり百円を払ったそうだ。そうして新聞で問題になってから、あの小川町の誘致派が一人当り百五十円、しかもそれを七十人分持ってきたそうだ。自衛隊の出動した人は三十五人、それと宴席の招待側に立った町の諸君が三十数名、合計して七十人なわけですが、その七十人分、一人当り百五十円ずつあとで届けたそうです。これが事実のようです。この件も、領収書は何も公的なものじゃないだろうと思うのですが、その領収書は、一体官房長どういう工合になりますか。これは個人々々で払うのですか、部隊の出張旅費でどんと一括して渡して部隊が支払うのですか。その点はどういう工合になっておるのでしょうか。
  130. 門叶宗雄

    ○門叶政府委員 お答え申し上げます。各隊員の旅費はそれぞれ個人に渡すことにいたしております。今回の宿泊料の支払いは、同行しております吉田二等陸尉が隊員からそれぞれ集めまして、宿屋の方に支払いをいたしわけでございます。
  131. 西村力弥

    ○西村(力)委員 次に問題になりますのは、自衛隊の音楽隊三十五人に対して石岡警察署の警官が三十数名、駅の到着と同時にこれをお迎えした。そして警官の護衛のもとに軍楽行進をやったということなんでございます。日本自衛隊が警察官に守られて行動するという珍現象を呈したわけでございますが、この点は出る警察も警察だし、それを受けてやられる隊の方もちょっと問題ではなかいと思うのです。これは指揮系統が全然別でしょうから、どうにもならないかもしれませんけれども、こういうことはどうでしょう、長官。そんなような状態でやらなければならぬところへは自衛隊が出動することはやめたらどうです。あまりにもおかしい姿だろうと思うのです。警察官の護衛下に自衛隊が行進する、これはちょっと考えられないことですが、事実その通りであったそうです。そういうところには今後そういう行事はおやめになる、あるいはまた警察官の出動の必要ある場合において、自衛隊は一体それを排除してどう守るか、自分たちをどういう工合にして守るかという問題になるでしょうけれども、しかし自衛隊自体が武力を行使して群集をけ散らすというようなことは許されないことでしょうから、そういうことはやめる以外にないのではないか。警察に守られてやるということをやらないとすれば、自分で自分たちの道を開く、そうしなければそういうところはやめにするか、いずれかを取らなければならぬと思う。そういう場合にどうなさるか、長官のお考えはどうですか。また警察官の護衛のもとにそういう行動をしたということに対して、自衛隊の御大将としてどういう感想をお持ちなさっていらっしゃるか、それをお聞きいたしたいわけなんであります。
  132. 津島壽一

    津島国務大臣 ただいま御質問になりました、警官が音楽隊を護衛したというようなことについて、この問題については報告もございませんけれども、全然それは承知してないことでございます。でございますが、事実はどうかという問題はございます。ただ、その有無ということは別といたしまして、もし万一そういったような必要があることを予見して、そういうところへ音楽隊が出かけていくということは妥当なことではない、私はこういうふうに考えます。事実は知りませんが、抽象的な問題として言うわけでございます。
  133. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私、これでやめたいと思いますが、自衛隊三十五人に警官が三十数名でありますから、一人に一人というような割になったのだそうで、やはり心ある人々はその姿を見て非常におかしく思ったり、悲しんだり、さまざましておったようでございますので、そういう場合においては、正式な治安の出動やなんかではないのですから避けられるべきである。こういう御方針を堅持なさったら仕合せじゃないかと思うのです。  以上をもって終ります。
  134. 福永健司

  135. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 だいぶんおそくなりましたけれども、しばらくごしんぼうをお願いいたします。  最初に防衛庁長官に、この間大蔵委員会でちょっとお尋ねしました日本原の演習場の件でありますが、あれはいつからお使いになる予定ですか。お使いになる予定をちょっとお聞きしたいのです。
  136. 津島壽一

    津島国務大臣 これは担当者の方から正確なお答えをした方がいいと思いますから、そういうことに御了承願います。
  137. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 日本原につきましては、国有財産審議会の決定がございまして、防衛庁に所管を移すということがきまったわけでございます。われわれといたしましては、できるだけ早く所管がえをしていただきたいということを、今大蔵省の方に申し出ておる段階でございます。なお庁舎につきましては、大蔵省の方からの許可を得まして目下建設中でございます。年度内には庁舎の方は何とかできるような見込みになっております。一日も早く使いたいというふうに考えております。
  138. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 お使いになる期間というか、時期もわからぬのに非常に急いで庁舎の建設をされているようでありますが、これは何か理由がありますか、理由があったら一つお伺いしたいと思います。
  139. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 実は自衛隊といたしましては、全国でも演習場は非常に少いのであります。日本原はぜひ自衛隊の方で使用したい、しかもその時期もなるべく早くいたしまして、部隊の訓練に支障のないようにしたいと考えております。非常に急いでおるところでございます。
  140. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 管財局長にお尋ねしますが、私先般現地へ行って参りましたが、庁舎が、まだ基礎工事の域を脱しませんけれども、かなり急いで建築をしているようであります。中国地方の審議会は一応防衛庁移管の結論は出ておりますが、最後的には大蔵大臣の決済を経るわけであります。あの事実を見ますと、先般来大蔵委員会でお尋ねをし、大蔵省当局が御答弁になったことと違って、すでにもうこれは防衛庁が当然使うものだという既定事実の上にああいうものが作られ、そのことが非常に現地の付近の住民に与える影響が大きいのでありますが、大蔵省は当然あの演習場をそっくり防衛庁にお移しになる意向であるのかどうか、この辺のところをお尋ねいたします。
  141. 加屋正雄

    ○加屋政府委員 お答えいたします。日本原の演習場を防衛庁の演習場として使用していただく方針には変りはございません。ただし全域が必要であるかという点につきましては、ただいま農林省の方にも開拓計画の御希望があるようでございますので、その方との調整をはかりつつあるような次第でございます。
  142. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 アメリカ軍が進駐いたしまして、旧陸軍あるいは海軍の軍用地を接収し、さらにそれに追加して相当民有地を接収したのであります。その中には、民有地のままで使用したものと買収したものとあるわけでございますが、その中で民有地として使ったものは当然行政協定の規定に従って原形復旧をして地主に返す、これは当然でありますし、さらに買収したものについても、アメリカ軍が撤退したときを契機に、当然これはもとの所有者がいわゆる所有権の回復を希望する場合には、これは相当な対価をもってもとの所有者に返してやるべきだと思いますが、これは日本原に直接関係があるかどうかは別として、一応必ず返還をされるべき一つのケースとして言うのですが、大蔵省はこれに対してどのような見解を持っていらっしゃるかお示しを願いたいと思います。
  143. 加屋正雄

    ○加屋政府委員 提供財産が民有地である場合、あるいは国有地である場合いろいろあると存じます。国有地の場合も買収をいたしまして提供するといったような場合もあるわけでございますが、民有地の場合にはもとの所有者に返す。一たん国有地としてこれを提供いたしましたものにつきましては、返還されました場合には、全般の財産をどういうふうに処理するのが適当であるかということを考えまして処理を決定するわけでございまして、もちろん国が必要としない場合にはそれぞれの処理方針に従って処分いたすわけでありますが、たとえば農地に適しておるという場合でありますれば、農林省に所管がえをいたしまして、農地委員会の御意思によって払い下げをすることになろうかと思います。
  144. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私がお尋ねしたのは、現在は国有地として使っておりますが、アメリカ軍が進駐して、いわゆる国有地だけの演習場では狭いために、付近の民有地を強制的に買い上げた場合がある。たとえば砂川でも問題になっておるが、あれは飛行場を拡張するために、今は民有地を強制的に買い上げようとしておる。これと同じようなことが方々の演習場にあるわけです。アメリカが進駐して元の国有地だけの演習場では狭いために、それに隣接した民有地を、所有者の意思を無視するような立場で強制的に買い上げた土地があるわけです。そうして使っておった。ところがアメリカは帰る。しかし現在は、買収したのであるから国有地になっておりますが、もとは民有地なのです。しかもその所有者は自分の意思を無視されて買収されたという形ですね。こういった場合、同じ国有地であってもこれは性質が違うわけです。従ってアメリカが進駐して、演習場に使うために強制的に接収したのであるから、アメリカがその用途がなくなったら、現在の姿は国有地であるけれども、もとの所有者から返還してもらいたいという要求があった場合には、私はやはりこれはもとの所有者の意思を尊重して返すのが当然であると思うが、大蔵省はどのような措置をされるか、こういうことなのです。
  145. 加屋正雄

    ○加屋政府委員 抽象的な例としてお答えいたしますが、今の、米軍が演習場として使用いたしますために国有地だけで足りないので強制的に買い上げたという例でございますが、私どもといたしましては、正式に一応契約ができまして対価を払っておるという場合には、やはり国有財産としての取扱いをせざるを得ないかと存ずるのであります。ただしそれが返還されました場合にどういうふうに処理するかという問題につきましては、個々のケースに当りまして、もとの所在者に返すのが妥当である場合もあろうかと思いまするし、またほかに提供するという場合もあろうかと思いますが、それは個々のケースによって決定すべき問題であると考えます。
  146. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 日本原の三百五十万坪の演習地でありますが、あれはおそらく管財局長も御承知と思うのですが、現在国有地としてございますが、私どもの調査したところによると、明治四十二年、日露戦争に勝った当時の陸軍が、戦勝の非常な勢いに乗って、もうほとんどひったくるような形で現地の農民の所有権を買い取ったもののようであります。その対価が妥当かどうかは別として、全農民は手放す意思もなければあれを陸軍に使ってもらう意思もなかったのに、当時の日露戦争に勝ってまるで酔ったような陸軍が強制的に買い上げた。そういう土地でありまして、私が先ほど御質問したことと関連して、アメリカ軍が接収したと同じような形でありますが、いわゆる旧陸軍が新憲法によって解体してなくなった瞬間に、この国有財産は、国有財産という形はあるけれども、実質的には強奪するような形でとったあの日本原の演習場は、対価の問題は別として、精神的には当然もとの所有者にこれは返すべきものだった。またもとの所有者も現在それを非常に望んでおる。にもかかわらずまたそれを引き続いてアメリカ軍に接収されたために今日に至ったのであります。そこで問題は、日本原に限ってはほかの完全に歴史的にもかつて民有地でなかったという完全な形における国有地の問題とは当然別個に考えてしかるべきであると思うのでありますが、この点大蔵省はどのような見解をお持ちになるか、このことに対して一つ管財局長の御見解を伺いたい。
  147. 加屋正雄

    ○加屋政府委員 私も日本原の演習場がどういう経過で国有になったかという点は、古い昔の話は承知いたしておりませんが、かりに茜ケ久保委員のおっしゃるようなことでありますれば、情においてそうお考えになりますことはごもっともな点もあろうかとは存じますが、私どもの国有財産の取扱いといたしまして、これのみを例外として取り扱うわけには参らないと思います。
  148. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 国有財産の管理として、一般的なケースとしての答弁ならそれはよろしいでしょう。しかしアメリカが進駐して日本人の財産権を無視するような形で演習場を拡張したことが多数ございます。私はこれと時間的には違っても同じケースだと思うのです。あなたは今現に国有財産の目録にあるから、これは国有財産であるから国が勝手に処分してもいいというお考えかもしらぬけれども、これはあなたは当然この日本原の歴史的な事実を調べて、当時の状況をちゃんと調べて、やはり現地の住民の意向を十二分にくまなければ、私がたびたび指摘したように、いわゆる全然昔からの国有地であったものですら、あなたは先般の御答弁で当地の住民の意向も聞くし、あるいはいろいろ適切な処置をしたいとおっしゃっている。にもかかわらず日本原の場合には——もうこれは明らかな事実であります。現に自分の土地を十数町歩旧陸軍にとられた古老にお会いして、私は当時の実情を聞いている。さらに聞いてみますとアメリカ軍も相当強引なことをしましたが、当時の陸軍もまことにむちゃをしたそうです。百四、五十戸の移転農家があったそうですが、最後まで残った十数戸の、今で言えば反対の諸君が家を立ちのかないでいたところが、いきなり実弾を撃ち込んでその十数戸の残った家がほとんどふっ飛ぶようなことをして追い出した、こういった事実があるのです。こういったことはたとい国有財産という名前のもとにありましても、この実情をよく調べて対処してもらわぬと、日本原の問題は簡単に大蔵省から防衛庁への手続上の移管だけでは済まぬものがある、あとに尾を引くものがあると思う。さらにさっきも言ったように、まだ決定もしないところに廠舎を急いで作っておる、こういったことも現地に対しては非常な不安と、さらに不信を抱かしておる。私は重ねて管財局長に申し上げますが、今あなたは昔のことは知らぬとおっしゃるならば、一つ早急にそういったことを、お調べ願って、それに対する適切な処置をしていただく必要があると思うのですが、そういったことをなさる意思があるかどうか、この点を一つ明確にしてもらいたいと思う。
  149. 加屋正雄

    ○加屋政府委員 何分古い話のようでございますので、資料が残っておりますかどうか確信がございませんが、調べられる限りは調べたいと思います。日本原の演習場につきましては、先ほども申しましたような処理方針で、ただいま関係省において話し合いを続けておるわけでございますが、農耕を一切認めないというわけでもございませんので、防衛庁の方でも演習に差しつかえない範囲で認めてもいいというお考えもあるようでございます。ただ国有財産の取扱いといたしましては、過去において強制的に取り上げたから必ずこれに返すというような取扱いは、ほかにもいたしておりませんし、この日本原の点につきまして特にそういうことをなす考えはございません。
  150. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 具体的な事実でありますから、もし現地の諸君が、特にかつての所有者の諸君が、旧陸軍にほとんど強奪されたような形でとられた土地であるから、陸軍もないことだし、重ねて占領しておったアメリカ軍も帰った今日であるから、われわれのもとの所有者に返してもらいたいという陳情なり、あるいは要請なり要求があった場合に、これは具体的な事実であります、またそういった動きもありますが、これに対して大蔵省は、今までのようにただ単に普通の国有財産としての取扱いでやっていこうとするのか、あるいはあなたが今調べるとおっしゃったけれども、調べた結果、そういう具体的な事実がはっきりした場合には、その事実の上に立って、現地の旧所有者から真剣にこの土地をもとに返してもらいたいという要求があった場合には、やはり相当な考慮をする必要があると思いますが、これに対してもやはり今の答弁と同じように、一般的な国有財産の処理として措置なさる意向かどうか、その点だけもう一ぺん伺いたい。
  151. 加屋正雄

    ○加屋政府委員 たびたび同じようなことを繰り返しますが、日本原に関する限りにおきましては、先ほど来申し上げておりますように、旧地主にそのまま返すということではなくして、防衛庁の演習場として利用していただく考えでおります。ただ先ほど申し上げておりますように、演習に差しつかえない範囲内において農耕を認めるということを考えてもおりますし、また別に全域を演習場として必要としないということから、現地の農民の意向もくんで、農林省でお考えになっております開拓計画にもできるだけ御協力するということで、その具体的な数量等について今話し合いをしておる次第でございます。この話し合いがきまりますれば、その線に沿って処理いたしたいと思います。
  152. 西村力弥

    ○西村(力)委員 関連。米軍演習場の返還に伴って国有地の処分の基本考え方についてでありますが、米軍の演習場の土地買収に当っては、調達庁はこれは米軍がおる間だけだという言い方をどこでもやっておるわけなんです。一般に農民も自衛隊の基地と米軍の基地の場合の考え方がこうなっておるのです。米軍の場合は、民族感情としてうまくいかない。だから売りたくない。しかし土地そのものの問題からいうと、いっかは米軍は帰るから、また返るだろう、こういう考え方です。自衛隊に対しては、日本の兵隊だから土地をやってもいいけれども、しかし自衛隊は永久にとられるからだめだ、こういう両方矛盾したような考え方に立っておるのです。そういう点からいいまして、住民は米軍に不承々々売却する場合においても、将来国有財産に移管になっても、米軍が帰ったならば当然自分たちがそれを返還してもらう潜在した権利があるんだ、こういう考え方に立っておるのです。そうしてまた米軍の用地として買収する場合の目的は、米軍の使用という、そういう使用目的で買収した。それを直ちに自衛隊用に転換するということは、使用目的を明示して、その住民の土地を買収したことと非常に反することになる。私が言いたいのは、米軍基地の返還の場合の国有地の処分の基本的な考え方は、やはりそこに前に所有権を持っておった農民の権利というものが潜在してあるのだ、これは沖縄の潜在主権のように潜在してあるんだ、こういう工合にはっきり考えて事を処してもらわなければならぬのじゃないか、それをただ表面上便宜国有財産になっておるから、今までの経過はどうあろうとも、こちらが処分するのは自由だ、こういう考え方はやめてもらわなければならぬじゃないか、こういう考え方をぜひとるべきであると私たちは思うのです。こういう点について大蔵省としてはどう考えるのか、関連して質問しておくが、御答弁願いたい。
  153. 加屋正雄

    ○加屋政府委員 国有財産の取扱いといたしまして、先ほど来申し上げておりますように、売り戻し条件付で買い上げたというような場合は、その条件が成就しましたときは売り戻すということになろうかと思いますが、しからざる限りにおきましては、一たん買いました以上は国の財産でございまして、これは沖縄の潜在主権のような、潜在所有権を旧所有者に認めるわけにはいかないと思います。
  154. 西村力弥

    ○西村(力)委員 調達庁の丸山次長がおられるので伺いたい。あなた方が米軍用地を買収する場合には、これは米軍に使用させるという使用目的を明示して、言葉の端々に、米軍が帰れば返すんだ、こういうことを必ず言ってやっておるはずなんです。その使用目的を明示して買収にかかっているということは間違いないでしょう。
  155. 丸山佶

    ○丸山政府委員 調達庁が米軍に使用させている土地を買収いたす場合には、お話の通り米軍に使用させる目的であるから売って下さい、こう申しておることは事実でございます。しかしながら買収は賃借と違いまして、買収してからは国有地になる——。(西村(力)委員「そこは答弁は要らない」と呼ぶ)私の知る限りにおいては、買収に際して売り戻し等のひもがついておるという、そういう例はないと記憶しております。
  156. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大蔵省としては機械的な話では賀屋局長の答弁もやむを得ぬでしょう。しかしやはり国民の、恩給を一度くれたらその恩給の額を減してもいかぬというほど、個人の財産権を尊重している現憲法のもとで、いわゆる放したくないものを一時権力によって無理やり没収するような形で、いや応なく引き揚げた土地あるいは財産に対しては、これは旧所有者の使用目的が変ってくるのですから、たとい国有財産に登録されましても、そういうような形のものは旧所有者の意思を強く入れてもらわぬと——これは今後も起る問題だ。そこでこれは賀屋局長に答弁を求めても無理でありましょうから、大蔵省としてはそういった何と申しますか、あたたかい処置をされぬことには納得がいかぬと思う。私はこの問題はこの問題として別にいたしますが、一つそういった態度をとってほしいと思う。  次に防衛庁長官にお伺いします。日本原をお使いになりたいという意思があって、すでに廠舎も作っておられます。あなたは現地を御存じかどうか知りませんが、防衛庁が国を防衛するという立場で演習をなさっても、撃ち出す実弾の発射が、いわゆる人が住んでおる部落の上をたまが飛び、さらに農民が生業にいそしむたんぼや畑の上を、あなたの指揮する陸上自衛隊が実弾射撃をする場合に、たまがどんどん飛んでいっても、あなたは国を防衛する一つの演習であるからやむを得ぬというお立場であるのかどうか。一つこういった点を——日本原の演習は現実にそうであります。かつて陸軍が撃っておったところと違いまして、七千メートルぐらいの距離に撃つのであります。その弾道下に宮内という部落がございます。さらにたんぼもある。畑もある。こういった現況でありますが、こういった部落の上を実弾がうなって飛んでいくようなことがあっても、これは国の防衛の演習上必要であるから絶対にしなくてはならぬという御意見かどうか、この点を一つ明確に御答弁願いたい。
  157. 津島壽一

    津島国務大臣 日本原の演習地は、国の防衛上の施設なんです。御承知のように、わが国土は非常に狭い。実弾演習をするというような個所がはなはだ乏しいのでございます。これは旧来からそのために供せられ、また国連軍が駐留しておった場合にも、これを利用するということで長年きたわけでございます。そこでお話のように田地または部落が、広い演習地でありますから、その地域内にあるということは承知しておりますが、これらはその仕事に差しさわりないように、適当によく打ち合せをして演習をやりたいという考えでございまして、危険のないように、また仕事についても極力じゃまにならないようにして、地元の方にも御協力を仰ぐということで、この訓練の目的を達したい。実はほかにも訓練する場所がございません。これは四国からも行って利用するというところでありまして、そういったような意味において、どうしてもこの演習ということが必要であり、また他に適地もないわけでございますので、そういった意味で地元の方にも御了解を得たい、こう思う次第でございます。
  158. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 地元の了解を得るとおっしゃいますが、現に私が実際に現地に行って調査したところによりますと、七千メートルの射程をとりますと、明らかに部落の上を飛ぶのです。これでは仕事はやれませんよ。住んでいる自分の家の上を飛ぶのですから……。あなた方が演習するのなら、その部落の者はどっかに行けというのですか。これは非常な反対です。それは防衛庁長官が何とおっしゃっても、住んでいる諸君は反対が強い。それをあなた、住居の上をたまがうなって飛ぶような実態は私は許せぬと思うのですが、これは話がつくと思いますか。
  159. 津島壽一

    津島国務大臣 お答えいたします。部落が付近にあるということは承知いたしております。それから田地がその中に二カ所かあるのです。これは田植えどきあるいは収穫時期という場合には、そこに農家の方がお出かけになることはありましょう。しかしそういう場合に必ずしも演習をやる必要もないだろうと思うし、また十分打ち合せして、危険のないような状態において演習を実行するということをいたしますれば、今おっしゃるようなおそれは避け得られる、こいうように考えている次第でございます。
  160. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私が言っているのは、部落の上を飛ぶ。これはあなたの方で調べておりませんか。あそこに宮内という部落があります。私が行って見ましたら、ちゃんと弾道下にあるわけです。この六十軒ばかりの部落は戦々きょうきょうとしている。このことを知らぬなら、これは防衛庁はとんでもない話で、部落があるのですから……。部落の上を飛ぶということははっきりしている。これを知らぬならとても問題になりませんよ。部落の実情を現地に行って見てきている。撃つ場所からたまの落ちる地点を見通して、その見通した間に部落がある。特に今の下手な自衛隊技術で同じところを飛ぶとは言えませんよ。その宮内部落の諸君の反対の気勢の強いことと非常な苦悶は大へんなものです。これに対してあなたはどういうふうな処置をされるのですか。どうして安心できるのですか。
  161. 津島壽一

    津島国務大臣 私が今まで図面の上で報告を受けたのは、ただいま申し上げた通りであります。田地の上を越えるということは演習上あり得るというように図面で説明を受けたのです。まだこれはそういったこまかいことは今私の報告を受けていない範囲でありまして、これは担当者から一つお答え申し上げた方が適切だろうと思います。
  162. 大森頼雄

    ○大森説明員 お答えいたしますが、今の七千の射程で撃てば宮内部落の上を通るという御質問でございますが、こちらで計画しておりますのは、七千の射程をとろうとすればそうでありますが、そんなことはとてもできませんので、砲座の位置をずっと北の方へ上げて、部落にずっと安全な距離をとって、そうして着弾区域を定めて撃ちますので、図上で今計算しておるのは四千メートルくらいが最大か、それよりちょっと大きくなるくらいしかとれないと思っております。従って御質問の七千の射程をとって撃とうとすれば部落の上を通りますけれども、そういうような計画をしておりますので、建物の上を通るというようなことは全然ございません。
  163. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大体日本原で実弾射撃をされる砲は何ミリの何という砲でございますか。
  164. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 一〇五ミリの榴弾砲を考えております。
  165. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 最大射程は何キロですか。
  166. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 一〇五ミリの榴弾砲、最大射程一万一千キロくらいだと思います。
  167. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大体一万一千か一万二千の最大射程を持った砲の実弾射撃演習が、四千メートルくらいで演習をして意義がありますか。防衛長官、あなた一万二千も持っておる射程の砲の実弾射撃演習が四千メートルくらいの距離で撃って、実弾射撃演習をした意義があるかどうか、お考えをお聞きしたい。
  168. 津島壽一

    津島国務大臣 最も完全とは申し上げかねると思います。しかし実弾演習は、至るところでほんとうの最大射程によって演習するということは、わが国の演習場の関係から非常に困難であると思います。そこである照準によって演習をいたしましたことは、実戦においてはそれと同じ機械の力によって可能であるということになるわけでございまして、これは至るところの演習地においてやっておるわけでございまして、私は完全だとは申し上げかねます。しかし演習の効果はこれによって期待できるかと思っておる次第であります。
  169. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 それはあなたはそういう答弁をしなければならぬでしょう。まさかそう効果はないとは言えぬでしょう。四千メートルなら別に部落やたんぼの上を撃ちませんでも、現在までアメリカが使っておった——ちょうど日本原演習場はこういうふうな形でございますが、今度撃とうとするのは今まではこの地点からこっちの山の方へ撃っておった、それが四千メートルなのです。それで足らぬからこちらに移して七千ないし八千にしたいというのが、今度の日本原演習場を使う根本なのです。今の施設課長の説明なんかインチキきわまるのです。現地に行って私は調べておる。そういうインチキな答弁をして済むものではありません。これは国有財産の取得関係についても問題がありますけれども、私は現地に行って見たが、あなた方が今度撃ちたいというところには宮内部落があるのです。その部落の反対は非常なものなんです。反対というよりは非常な危険を感じて今から右往左往しておる。四千メートル射程でいいのなら何も変えなくても今まで撃っておった地点でいいのです。そうしますと演習場の三分の一か五分の一で事足りるのです。三百六十万坪のうちの百万坪で足りるのです。射程一万二千メートルの一〇五ミリの砲であるから、どうしても七千から八千に伸ばさなければ演習をする意義がないというので伸ばしておる。長官も一万二千メートルの射程を持っておる砲の演習が四千メートルでも実効があるなんてでたらめな答弁をしてはだめですよ。ここには旧海軍の保科中将や辻大佐が控えておる。笑っていますよ。そんなことでごまかしてはいけない。もっとそれこそ腰のある答弁をしてもらわなければ困る。
  170. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 お答えいたします。従来英豪軍が使っておりました場所では二千から二千五百くらいの射程しかとれないのであります。先ほど施設課長から説明いたしましたように具体的に申しますと、従来は剣山という方向に向って撃っておったわけですが、それを若干砲座を北の方へ移動いたしまして馬天嶺の方角に射程を向けますと、ここで四千メートルとれる。もちろん一万メートルの射程を持つ砲でありますから、もっと長く射程がとれればこれにこしたことはないわけですが、何分にも狭い演習場のことでありますから、四千メートルでもってがまんしなければならない。しかし四千メートルとれれ訓練の効果は十分に上るということを確信いたしております。
  171. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 それはあなた方自衛隊で飯を食っておる人だからそう言うでしょう。しかし現地で生業にいそしんでおる諸君は、それ一では困るのです。しかも先ほど言ったように、長官もお聞のように、あの演習場はかつて陸軍はなやかな時代にほんとうに取り上げた土地なんです。非常な執着を持っておる。今度アメリカが帰ったら自分たちに返してもらって、自分たちに使わしてもらおうと思って長い間待っておったが、今度急に自衛隊が来る。反面賛成者もあるようです。かつての防衛庁長官が現地にいらっしゃるようですから、一部にはもちろんあります。ありますけれどもそれはほんの一部であって、大部分の諸君は自衛隊が来るのを反対しておる。私が参ったときも二千名あまりの人が集まりましたが、みんな反対なんです。ここに陳情書も、署名簿も持って来ております。これはあとで大蔵省と農林省に差し上げますが、多数の人が農地あるいは山林として民間に使用させてもらいたいという陳情書です。こういった中で、今言うように、私ははっきり申し上げておる。一万二千メートルの射程を持つ一〇五ミリならば、それは自衛隊の諸君は、四千でも実効があるとおっしゃるかもしれないけれども、これは砲の操作の演習なら実弾を撃つ必要はないのだから、これはどこでもできる。従ってそんなインチキな実弾射撃演習は弾を撃つだけ損なんだ。そんなばかなことをしないで、むしろあの日本原は私は現地に行って非常に感じましたことは、日本の狭い国土にあんなりっぱな土地ははかにございません。スロープといい、地味といい、すぐに土地は農地になる。現にアメリカが使わなかったところは、道の反対側にはブドウ畑あるいはリンゴその他のものが非常によく育っておる。あれこそ私は農地として解放した方がよほど国の政治の上から見たらりっぱだと思う。あとで農林省に私はお尋ねしますが、どうです、長官、ほしい土地だけれども、あなたのほしいところはよくわかるけれども、今言ったように実際の実弾射撃の実効のないところだから、むしろこの際ほかに適地を探して、砲弾ですから一つ人のいない私は北海道に参りましたが、北海道はずいぶんございますよ。しかも日本原の付近には自衛隊はおりませんね。四国の善通寺とか、山口県から来ている。どうせ行くならこれは船に乗って行くのだから北海道の広いところにいって撃ったら、一万二千も二万も撃ってる。どうしてむだ使いするのか。ほかの金を節約したら輸送費ぐらい出ますよ。あの土地は私は反対ですが、あなた方は自衛隊としてどうしてもやりたいなら、あの北海道富士の下にはずいぶんございますから、だれもいないところに行って撃った方がいいでしょう。これは冗談じゃなくてほんとうです。輸送費ぐらいは節約したら出ると思う。日本原付近に部隊がおって使うなら別ですが、いないのですから。善通寺なりあるいは山口県からはるばる、これも多かれ少かれ輸送費を使っていらっしゃる。それならば、私はああいうりっぱな土地はもう再び得がたい土地でありますから、農林省にもあとで申し上げますけれども、農地として解放された方が国策上最も適当と思うが、特にあなたはかつて大蔵大臣をせられた経済通の大臣ですからそんなむだをされずに、そうすることの方がいいと思うが、これはなかなか容易じゃないかもしれませんが、その決意をされる意思はないかどうかお伺いしたい。
  172. 津島壽一

    津島国務大臣 一応ごもっともの御説と承わりましたが、財政見地から申しましても、長距離に相当の部隊を移動することは輸送費がかかり、また能率を非常に阻害される。北海道まで姫路部隊、四国部隊、またその他の部隊を演習のために送るということは、どうも財政上の見地から見て許されないことだと思うのです。その意味におきまして、今申しましたように、地元に対するそういったような御心配の点をなくして、そして利便のいいところで、従来もこういうものに長年使っておった土地をわれわれが使いたいということは、国家財政の上からも訓練の能率の上からいっても当然じゃないかと思うので、これを防衛庁としては利用したいという希望を持って今日まで進めてきたわけでありますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  173. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 了承はできませんが、百五ミリの砲を持っている部隊を善通寺にお置きになる何か国防上の見解がありますか。狭い四国の土地に内乱が起るか何か知りませんが、太平洋岸から外敵が来る危険性はございませんでしょう。さらに四国で百五ミリの大砲を撃たなければならぬような内乱も起るとは考えられません。そうなったら善通寺に百五ミリを持っておる部隊を置くこと自身が、部隊の配置上おかしいと思う。そういうのは部隊そのものを北海道なり、そういった広い所へ置いて、自由に演習ができるようにされた方が、国防上、また部隊の訓練上よいと思うが、その点いかがでしょうか。
  174. 津島壽一

    津島国務大臣 ちょっと私のお答えした中に誤解を招く点があると思いますが、特科部隊は善通寺にあるのであります。しかし善通寺は御承知のように四国でありまして、演習地がないわけであります。そこで特科部隊その他の部隊は演習を必要とするわけでありますが、その場合四国の便利なところに演習地がないわけでございますから、それで日本原に出かけて、一定の期間でありますが、口を限って演習するので、これは今申しましたいわゆる特科部隊として行くのじゃございません。姫路の部隊が大体必要なのであります。しかしこの日本原はその意味において四国の部隊もこれを利用するということを申し上げたのであります。そういう趣旨でございます。
  175. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 この問題については、もう少しやることがありますが、だいぶ時間がおくれたのでまたの機会にやることにいたします。  農林省では、さすが役所柄だけあって、日本原のりっぱな土地の開墾に目をつけられて、相当な規模の営農計画をお持ちのようであります。また現地でも非常にそれを期待して、大蔵省と防衛庁と農林省との関係について、デリケートな気持でながめております。これは大蔵委員会でも同僚の山崎君からお尋ねしたのでありますが、本日は農林省の日本原における営農計画の具体的な面積並びにその場所、これは地図がなければわからぬでしょうが、言葉の上で表現できる範囲でけっこうですから、計画をここに御明示を願いたいと思います。
  176. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 日本原の演習場につきましては、昨年返還がありましてから、岡山県とも利用計画を相談しておったのであります。御承知と思いますが、終戦直後あの土地につきまして緊急開墾というような計画もございまして、当時一部入植開墾をしておった、こういうような経過でありますが、昭和二十一年に米軍に接収されて、その後御承知の県道から以南の土地が約百五十町歩でございますが、開拓地として解除された次第であります。ここには八十八戸新しく入りまして、なお相当部分が現地の増反部分として配分されたのであります。その経過から申しますと、八十八戸の入植というものの当時の営農計画は、ああいう山間地帯の畑地帯におきましては、大体一戸当りの営農といたしましては、二町八反から三町程度というものをわれわれは基準に置いて考えた次第でありますが、そういったような解除になるときの事情もございまして、ただいまのところこの営農計画は大体営農規模が一町五反程度になっております。なおこれをりっぱな農家として育成していく、そして正常な、安定した農家に育てるには、当時考えておりましたように、将来二町七反程度までにはやりたい、こういう計画をわれわれは持っておるのであります。幸い解除になりましたので、そういった入植営農の安定のために、さらに日本原の大部分を農地として、未墾地として所管がえをしていただいて開墾計画を立てたい、こういうように考えております。それにつきましてはただいま防衛庁と打ち合せておる次第でございまして、西の方の勝北の方と、それから奈義の方にまたがって、そうした面積を割当計画しております。なおそのほかに勝北の方にも、三十三年度に計画されておるようでございますが、県営の土地改良事業と申しまして、上から水を引いて、開田なり土地改良をやる、そういった計画で、その一部がこの演習場の西の方の端にかかる、そういった面も含めまして、何とか演習計画と調整のとれるところで善処したい。こういうような考えで折衝いたしております。
  177. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 さらに農林省で予定されている営農計画による開墾面積、さらに私は現地へ参りまして、先ほど言ったように、あそこは日本の内地に残された未開墾地の最も優秀な営農の適地と判断するのでございます。あれはほとんど全域にわたって、三百六十万坪の演習場の大半が、現在そのまま開墾すれば、すぐに農耕ができるような状態と判断するのですが、あなた方専門的な立場から見られまして、やはりそういった土地であるかどうか、この点もあわせて御答弁をお願いしたいと思う。
  178. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 この演習場につきましては、現在のところ、まだ十分な土壌調査といったようなものは、連合軍に接収されておりましたし、その前は陸軍の演習場であったというような関係もございまして、実施しておらないのでございますが、県北——県道の南の方の土地なりあるいはその北の方の土地あたりは、酸性でございますが、十分農地として適当だ、こういうふうに考えられておるのですが、問題はやはり水との問題が相当関係してくるのじゃないか、こう思っております。なお演習場の中には八十町歩程度の水田がございまして、これは旧来から、慣行によって、従来の耕作者が耕作しておる、こういうことになっております。
  179. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 新しく営農される予定の反別……。
  180. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 先ほど申しました入植者あたりに、さらに適正規模まで耕地を開墾して与える、あるいはあそこの土地におきまする零細規模の農家にも多少の増反を与える、そういうような点を勘案いたしまして、おおむね今のところは百七十町歩前後の土地が、演習場との調整がつけば農地としてできるのではないか、こういうように考えております。
  181. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 山下経理局長にお尋ねしたい。私は現地へ行って庁舎の建築の現場を見て参りましたが、私が非常に奇異に感じたことは、入札の手続等についても疑問があったようでありますが、あの入札の結果、仕事をしている土建業者が、驚いたことには自民党の逢澤代議士が経営する土木会社、さらに今度はその受けた土木会社の下請をしているのが、前防衛庁長官の部下です。防衛庁が仕事を出す場合に、どういうマジックがあったか知りませんけれども、自民党の代議士の逢澤氏の経営する土木会社が落札して、しかもその落札した会社自身が——聞いていますか。だめだ、そんなことじゃ。でたらめをしておいて、何だその態度は。こういう奇怪なことをやっている。どういう事情があったか知らないけれども、自民党代議士の経営する会社が落札している。それはよろしい。その会社がじかに仕事するならよろしい。その今社がしないで、下請に仕事をさしている。その下請の仕事をしているのが、先ほど言ったように、前防衛庁長官の部下である。これは皆さん方が何と弁解されましても、一般に与える影響、われわれが見た目では、まことに奇怪千万である。先般の大蔵委員会で山崎君の質問に対しては、多数の指名をして、その中から落札するとおっしゃっている。多数の指名をしたか知らぬけれども、現実にこういった姿が出ておる。防衛庁と自民党の代議士とが相通じてやったといわれても、私は弁解の余地はないと思う。たびたび言うように、それが落札した会社が直接仕事するなら、話はまだわかる。御丁寧にさらに下請に出している。その下請した名が防衛庁長官をした方の部下である。こういったことはよほど考えてもらわぬと私はいかぬと思う。私はここであえて何かということは言いませんけれども、こういったことは現地ではやはり非常に問題にしている。これに対して当面の責任者である山下経理局長はどういったお考えをお持ちになっているか、一つあなたのこれに対する責任ある御所見を伺いたい。
  182. 山下武利

    ○山下(武)政府委員 建築工事につきましては、この前に大蔵委員会でお答えをいたしましたが、たしか十社を選びまして、指名競争入札をいたしまして、その中から選んだわけでございまして、契約のやり方について手落ちがあったということは聞いておりません。
  183. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 それはわかっておる。そのまかされた会社が仕事をしないで、さらに下請に出しておる。下請に出しておるのが、今言った関係のものなんです。それはあなた方としては、だれが実際の仕事をしようと、予定した仕事ができればいいと思うかもしれぬけれども、これは私はそうじゃないと思う。特に防衛庁がいろいろな疑惑をもって見られておる。決算委員会で現に問題になっておる。先ほど辻自民党議員もそれを指摘しておる。そういった中でそういうことがあることは望ましくないと思う。私は、やはりそういう点はよほど厳重にしてもらわぬと、これはますますあなた方の仕事の遂行に疑惑を与えると思う。これは私は非常に遺憾な点として考えておりますが、一つよく調べて下さい、どういうことになっているか。おそらくあなた方も、ちゃんと形式的には手落ちがないと言うでしょう。私も土木事業に関係したことがありますが、これは十社、二十社指名しても、ちゃんと落札するところはわかっております。それは追及しません。しかし、さらにそれを下請に出しておるということをぜひ銘記されたいと思う。  最後にお尋ねしたいのは、これは防衛庁長官に、調達庁の担当大臣としてお伺いするのでありますが、御承知のように、いわゆる国の最高機関である国会の周辺に、いまだアメリカの基地が多数ございます。私どもここで国政を論じながら、あなた方は日本が独立したとおっしゃるけれども、この国政を審議する国会の周辺に、しかもほとんど境を接してアメリカの基地が、たといそれがいわゆる軍用に直接供する基地でないとしても、アメリカの基地があることは非常に遺憾であると思います。そのうちにおそらく撤退するであろうと期待しておりましたが、今日なお依然として厳存しておる。これに対して調達庁の担当大臣としての津島国務大臣はどのような措置をされたか。アメリカはこれに対してどのような態度を示したか。もし折衝されましたならば、折衝された経過と、アメリカ側のこれに対する処置について明確なお示しを願いたい。
  184. 津島壽一

    津島国務大臣 もし必要がございましたら、調達庁の関係の担当者から、この点についての経過なりを御報告申し上げた方がいいと思います。  私は就任以来、また参議院で昨年の五月だったと思いまするが、この国会周辺の駐留軍の施設は、なるべく早く除去すべし、これは議院運営委員会の決定であるというのでございますが、そのことをよく承知いたしております。就任後、従ってこの問題は防衛庁でありませんが、調達庁の事務担当大臣として、早く処理したいということで、調達長官また関係官に督励をいたしております。  今日までの経過は、先方といたしましては、部隊撤退等に伴いまして、どちらかというと関東、東京付近に集結するという事態であった。これはいろいろケースも聞きまして、撤退はあるけれども地方は非常に人が少くなり、むしろこの付近にこれらの方の住宅を必要とする、こういうような事態でございました。なかなか困難がそこにあったのでございますが国会の周辺において、こういった施設のあることを早く取り除きたいという願望から、いろいろ折衝いたしました結果、最近に至って適当の措置、すなわちある面においては大体のかわるべきものを見つけ、または作って、そういったことができるならばこの問題は処理できるという見通しができました。きわめて最近であります。今そういった交渉が進行中でございまして、これは予算関係も幾らかございまして、そういうことになっているわけです。委細のことは、もし御要求がございましたら担当官から御説明申し上げてけつこうだと思います。
  185. 丸山佶

    ○丸山政府委員 ただいま大臣から大体のところをお話しでございましたが、なお詳しく申し上げますと、この問題は御指摘のように、場所柄はなはだ不適当なところにある状況、なお国会あるいは政府機関でもこの場所を利用したいという計画、あるいは要望という事情がありますので、調達庁は昨年以来日米合同委員会を通じ、あるいは軍首脳部と直接の折衝を継続してずっときておるのでございます。これに対しまして軍側も、日本側の立場、要望はまことに了承できる。しかし遺憾ながら軍の配備状況において、直ちにこの辺の宿舎を引き払うというのはどうしても見当がつかない。何回も検討を重ねてきましたが、つかない。最近におきましても、その辺の住宅事情の資料を出して参りましたが、正規の住宅以外に、家族は直接個人が建てたもの、あるいは民間のものを個人が借りておるようなもの、これらがなお一万世帯以上に上っているのが実情である。また近き将来においても、先ほど大臣からお話がありましたように、全国的に兵力関係が関東地区、特に東京、横浜周辺に移りつつあるのが現在の状況であります。そのようなときにありますので、このままいったのでは速急の返還ということはどうしてもできない。そこで現在軍側並びにわれわれの方で意見の一致を見ておるのは、この問題に関しては、どうしてもある程度代替物というものを考えていかなくてはもう処置がつかない。そのようなことになりましたので、目下いかなる代替物、どの程度のもの、どの場所、それらのことの交渉に入っておるわけであります。これらの話がつきますと、近いうちには、この国会周辺の米軍の宿命の返還問題の解決のめどがつくものと考えております。
  186. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大体わかりましたが、これはもう十数年に達するのでありますから、アメリカ軍のわがままだと思う。というのは東京の中心にいたい、家族とすればこんなりっぱな住宅地はありません。都心でもあり、まことにけっこうなところでありますから、だまっておればほとんどアメリカ軍がいる間は使いたいでしょう。これはアメリカの勝手であり、わがままです。われわれはもうとてもがまんできない。そこで、ある程度予算も伴いましょうが、一つ考えを願いたい。国会に毎日バスが何十台と参りますが、小学生、中学生、高校生、若き世代の諸君が参りますが、国会に来て国会を見ながら、つい見るとその周辺にはアメリカ軍の宿舎がずっと並んでおる。こういった姿は、小さい国民に対する教育上もよくないと思う。調達庁の担当大臣である津島国務大臣は、断固強い決意で、アメリカに当ってもらいたい。そして近き将来とか何とか言わないで、障害があるならばその障害を克服して、少くとも今年中くらいには、全部そこの基地をとっ払ってもらいたいと思う。われわれも協力する。賀屋局長は管財の立場から、国有財産のことに対しては、非常に強いのですが、アメリカ軍を国有地の上にのさばらして、平然として日本国民のいわゆる没収した財産について、ああいう態度はいかぬと思う。大蔵省も弱い。ただ単に調達庁担当の大臣としてでなく、日本政府として強い立場から要求されて、次の国会のときには、あの基地が全部とっ払われるようにぜひお願いしたいと思う。これに対してわれわれ社会党も全面的に協力する。これ以上申し上げませんが、私はここで強く要望して、もしこの次の国会でまだあんなものがあそこにあるならば、津島国務大臣の不信任を出さなくてはならない。これはどうしてもそうなってくる。どうか不信任案を出さないでよいように、またさらにこれは全国民のほんとうの念願であります。だれが聞いても、あの事態については非常に不満を持っている。私が申し上げるのは、私だけでなく、日本国民ひとしく感じる要望でありますから、一つこの要望にぜひこたえていただいて、一日も早くなくするように御努力をお願いして、きょうの私の質問を終ります。
  187. 福永健司

    福永委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会