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松井委員 私は
日本社会党を代表して、ただいま
議題となっております
放送法第三十七条第二項の
規定に基き、
国会の
承認を求めるの件に関し、若干の
希望条件を付して、これを
承認することに
賛成の意を表するものであります。
本
議案の
内容をなすものは、
日本放送協会の
昭和三十三
年度収支予算、
事業計画及び
資金計画でありますが、御承知の
通りわが国の
放送事業界は、昨年夏から秋にかけての
テレビ・チャンネルの
全国計画の
決定と、それに続く
全国にわたる
テレビ放送局の一
齊仮免許とによって、いよいよ
国民待望の
テレビ時代を展開しようとしており、中にも
NHKはその
使命に基き、
一般放送事業者に先駆して、
テレビ時代啓発の役を果そうとしているのでありまして、
昭和三十三
年度の
収支予算等は、
放送事業の
重大転換期において、
NHK今後の方向を
決定するものとして、
例年とは異なるきわめて重要な意義を持つものと考えられます。わが党はかかる
観点から、本
議案については得に慎重かつ精細に
検討を進めて参ったのでありますが、二旬にわたる
審議の結果として、やむを得ざるものとの結論に達したのであります。しかしながら以下指摘する若干の
事項については、これを不満とせざるを得ないのでありまして、
政府並びに
NHK当局は、その趣意をくみ、向後の
事業監理、
運営において善処されるよう特に希望いたすものであります。
まず第一に申し上げたいことは、
協会財政について
長期の
計画を樹立しなければならないということであります。前述の
通りテレビ時代の到来を控えて、
NHKはその
事業規模を飛躍的に
拡大すべき時期に入ろうとしているのでありまして、この際において
協会が、
ラジオ、
テレビ両部門にわたる
長期の
建設整備計画を策定し、その推進をはかろうとしていることは、まことに時宜に適した処置であり、その
方針に
賛成するのでありますが、
構想についても必ずしもわれわれの納得するもののみではないのであります。
計画は初
年度から約五十億の
赤字をもって出発いたします。もとより一律に
赤字予算を排すべきではなく、ことに膨大な
整備計画を急ピッチで遂行する場合には、多少の
赤字はやむを得ないものとも言えましょうが、
NHKのような公共的な
事業においては、
赤字はその解消の見通しが明確につけられている場合にのみ容認されるべきものと考えます。私はかかる
観点から、
赤字に始まるこの
長期計画の
財政方針については特にしさいにただしたのでありますが、残念ながら
NHK当局、
政府当局のいずれからも、満足すべき回答に接し得なかったのであります。
当年度予算の
赤字については、
政府からの
融資あっせん等によって一応資金調達の見通しありとされておりますが、これはあくまで当面を糊塗する弥縫の策にすぎず、
長期計画を一貫財政
計画として樹立されていないと見られます。関係当局の
説明によれば、収入源である受信契約者の増減が推定困難であるため、年次
計画は策定できないということでありますが、財政
計画の裏づけがない限り、
整備計画は単なる一個の作文にすぎないのであり、また逐年、かような弥縫的
措置を繰り返していては、
事業の前途は憂慮すべきものと考えられます。
協会はこれらの点に留意し、
事業財政の前途を見きわめ、
長期の財政
計画を確立して、
事業経営の安定をはかるよう、格段の努力をいたされたいと強く希望するものであります。
次に申し上げたいのは、
放送番組、なかんずく
教育教養番組の充実についてであります。
放送番組の充実、向上については、かねてから当
委員会会でも繰り返し論議を重ねたところで、今さら多言を要しませんが、
放送番組に対して今日ほど世人の関心が集まり、その向上に期待かかけられている時期はなかったと存じます。ことに基幹放送としての
NHKに対しての期待は、一そう高く評価されつつありまして、
NHKがかねて念願の公共放送としての性格を明確化し、さらにまたその明徴化をはかる絶好の機会であると考えられます。
NHKはこの機運を
利用して、この
要望にこたえ、番組の充実、向上に努められんことを望みたいのであります。
第三は、
国際放送の充実であります。
わが国が置かれている国際環境はいよいよ
国際放送の
重要性を強めつつありますが、この情勢に背馳して、
政府は
国際放送の交付金を約一千五百万一円削減いたしております。
国際放送の充実については、当
委員会でも常に
要望を繰り返してきたところでありますが、今回のこの
政府の
措置は、必ずしも当を得たとは考えられません。従いまして
国際放送に対する熱意と、さらにまた今後における十分なる期待をしてやまないものであります。特に
政府は
国際放送の
重要性に顧みて善処されるべく、また
NHKはその
使命に徴して、一そうの精進をいたされたいことを重ねて
要望したいのであります。
最後に従業員の待遇問題についてであります。これはわが党多年の重大関心事でありまして、また当
委員会におきましても常にその論議がかわされたところであります。御承知のように
NHKの従業員の待遇の現状は満足すべきものではないのであります。特に類似
事業との較差はますます広げられていく状態にありますので、
NHK財政が逼迫を続けている今日、その
内容については必ずしも理解することができないことはないのでありますけれども、かかる事態の推移は
事業の将来に暗影を投じるのではないかと憂慮されるのであります。従いまして前途の
長期財政
計画の一要素として、従業員の待遇策の根本的樹立を強く
要望せざるを得ないのであります。
以上申し上げました諸点について、関係当用の善処を強く期待しつつ、
討論を終ります。