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田中国務大臣 ただいま議題となりました
放送法の一部を改正する
法律案の提案理由を御
説明もうしあげます。
放送法の施行後、わが国における放送事業は、
一般放送事業、いわゆる民間放送が発足し、きわめて顕著な発展を示しつつあるほか、
日本放送協会および民間放送を通じて、テレビジョン放送の飛躍的な普及を見ており、その発達はまことに著しいものがあります。従いまして放送が国民生活に及ぼす役割、影響力もまた重大なものとなっており、しかもこの傾向は将来さらに増大するものと予想されます。右の事情にかんがみまして、
日本放送協会につきましては、公共の福祉のため、放送及びその受信の進歩発達をはかるように、一そう積極的な活動が要望されますので、その業務の範囲を拡大し、機構を整備し、及び財政能力を充実いたしますとともに、放送番組の編集及びその放送の適正をはかるため、その指標を明確にし、内部に放送番組審議会を設けることとし、また
一般放送事業者につきましても、放送番組の編集及びその放送の適正をはかる等、所要の
規定を整備いたそうとするものであります。
この改正案のおもな点について申し上げます。
まず
日本放送協会に関する事項について申し上げますと、その第一点は、
日本放送協会の公共的な性格をより明確にし、その活動を活発にさせる措置として、その業務、機構及び財務等について、次のことを
規定しております。
その一といたしまして、現在の協会の行う業務の範囲は、協会の放送に関することに厳格に限定されておりますが、本改正においてはこれを広げて、放送協会のだけにとどまらず、わが国の放送全体の進歩発達を目的として、放送及び受信の
研究調査を行うことのほか、
一般放送事業者に対する番組等の提供等を行うことができること。
その二といたしまして、経営
委員会は、協会の経営
方針その他業務の運営に関する重要事項を決定する機関、すなわち協会の意思決定機関たる性格を明確にし、その
委員の数は、現行八地区から選出される者八名のほかに全国を通じて選出される者四名を加えて計十二名とし、さらにその欠格事項を若干緩和して適材の選出を容易にし、また
委員には現行法による旅費その他業務の遂行に伴う実費のほかにその勤務の日数に応じて相当の報酬を受けることができるようにすること。
その三といたしまして、
会長は意志決定機関たる経営
委員会に出席して意見を述べることができることとし、その議決には加わらないこととしております。これは協会の役員の権限と責任を明確にする措置であります。その他業務の範囲及び規模の増大に伴う措置として、
理事を五人以上十人以内及び監事を三人以内置くものとし、また
補欠の
会長の任期も前任者の残任
期間とする現行の制度を改めて、任命のときから三年として、役員の任期が同一時期に始まり、かつ終ることによって生ずる不都合を除去する措置を講じること。
その四といたしまして、業務の範囲規模の拡大に伴い、放送債券の発行限度額を純財産額の三倍以内に拡張し、また毎事業年度の収支予算等が国会において閉会その他のやむを得ない理由で
承認を得ることができない場合の臨時的措置を講じることといたそうとするものであります。
第二点は、放送番組及びその放送の向上及び適正をはかる措置として次のことを
規定しております。
その一といたしまして、協会が放送番組を編集するに当っては、現行法第四十四条第三項に
規定するもののほか、善良な風俗を害しないものでなければならないこととし、特別な事業計画によるものを除き、教養番組または教育番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け、放送番組の
相互の間の調和を保つようにしなければならないこととなし、教育番組についてはそのよりどころを
規定していること。
その二といたしまして、協会はあらかじめ放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて放送番組の編集の基準を定め、これに従って放送番組の編集をしなければならないものとなし、これを公表しなければならないこと。これは放送番組の編集については、協会の自主的規律にまかせようとするものでございまして、言論を統制しようとする意思のないことは、これをもってしても十分御納得がいただけるものと存じます。
その三といたしまして、協会は放送番組の適正をはかるために放送番組審議会を設けなければならないこととし、放送番組の編集の基準及びその基本計画を定めようとするときは、
会長はこれに諮問し、その意見を尊重して措置をしなければならないことといたそうとするものであります。なお放送番組審議会は、
会長の諮問に応じて答申するばかりでなく、放送番組の適正をはかるため必要があると認めるときは、
会長に意見を述べることができることとなし、
会長はこれを尊重して措置をしなければならないことといたそうとするものであります。
このほか協会は、政令で定めるところによって、放送番組の
内容を放送後において関係者が確認することができるように措置をしなければならないこと、及び郵政大臣は
放送法の施行に必要な限度において、協会に対し、その業務に関し報告をさせることができることといたそうとするものであります。
次に
一般放送事業者に関する事項について申し上げます。
その第一点は、放送番組及びその放送の向上及び適正をはかる措置について
規定した点であります。この点につきましては、さきに申し上げました協会の場合と全く同じでございまして、番組基準の制定、変更及びその公表等、もっぱら攻送番組編集の自主性をとうとびその自律にまかせ、言論統制とならないように十分意を用いた次第でございます。
なお協会の放送番組審議会と
一般放送事業者が設ける放送番組審議機関と異なるおもな点は、構成員の数が協会の場合は十五人以上でありますが、
一般放送事業者の場合は、十人以上である点及びその構成員の三分の一以内は、当該放送事業者の役員または職員をもって充てることができることとした点等でございます。
第二点といたしましては、
一般放送事業者について、その放送の健全な進歩発達をはかり、その業務の運営に当っての準則を設けるため、次のことを
規定しております。
その一といたしまして、学校向けの教育番組の放送には、業務に関する広告を含めてはならないこと。その二といたしまして、
一般放送事業者はその名義を他人に放送事業のため利用させ、または他人にその名において経営させてはならないこと。その三といたしまして、
一般放送事業者は受信者から放送の受信の対価を受けてはならないこと。その四といたしまして、
一般放送事業者が放送番組の供給に関する協定を行うに当っては、特定の者からのみ放送番組の供給を受けることとなる条項及び放送番組の供給を受ける者が、その放送番組の放送の拒否、または中止を禁止することとなる条項を含んではならないことといたそうとするものであります。
なお、放送
内容の確認のための事後整理等に関する事項及び郵政大臣の報告徴収権等につきましては、協会の場合と全く同じでございます。
そのほか以上の改正に伴う罰則その他の条文の整理を行い、及び所要の経過
規定を設けようとするものであります。
以上簡単でありますが、この
法律案の提案理由及びその
内容の概略を御
説明申し上げた次第でございますが、何とぞ御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたす次第でございます。