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1958-04-23 第28回国会 衆議院 地方行政委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十三日(水曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 矢尾喜三郎君    理事 亀山 孝一君 理事 纐纈 彌三君    理事 吉田 重延君 理事 川村 継義君    理事 中井徳次郎君       加藤 精三君    川崎末五郎君       楠美 省吾君    高瀬  傳君       渡海元三郎君    渡邊 良夫君       大矢 省三君    加賀田 進君       北山 愛郎君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 郡  祐一君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁行政局         長)      藤井 貞夫君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君     ————————————— 四月二十三日  委員加藤精三君及び川島正次郎辞任につき、  その補欠として亘四郎君及び高瀬傳君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員高瀬傳君及び亘四郎辞任につき、その補  欠として川島正次郎君及び加藤精三君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  町村合併に関する件      ————◇—————
  2. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長 これより会議を開きます。  町村合併に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。高瀬傳君。
  3. 高瀬傳

    高瀬委員 私は自分選挙区の大田原市並びに隣接湯津上村の合併問題につきまして、いささか自治庁長官所見をただしたいと思っておるわけであります。この問題につきましては、過日、わが党の野澤清人君が予算総会において、また社会党の相馬助治君が参議院委員会において、郡長官所信をただしたようであります。従って、それらの問題に関する自治庁長官所見は、地元の、町村合併関係しておるところの大田原市並びに湯津上村の住民に非常な影響を与えておることは否定できないと思うのであります。特に最近の参議院における相馬君の質問、これは非常に反響が重大でありまして、新聞記事をここに持っておりますが、私は別に新聞記事についてかれこれ言うわけではありませんけれども郡長官相馬君の質疑応答が「下野新聞」という栃木県の有力なる新聞に報道されておるわけであります。見出しなどは非常にセンセーショナルな見出しでありまして「大田原湯津上財政打切りは不穏当」という見出しと「続ければ指揮権考慮郡長官相馬氏に答える」、こういう見出しなのであります。もちろんこれは新聞記事でありますから、いろいろな観点から、郡長官答弁された通りに出ているかどうか、その点は速記録を精細に調査しなければわからないのでありますけれども、ともかくも総理勧告が出て湯津上村の合併問題は着々と緒についておりますときに、こういうような記事地元湯津上、並びに大田原市民に与える影響というものは非常に重大である。特に、それが現在の地方自治最高責任者であるところの郡長官によって語られたというところに非常な重大性があるわけであります。従って、私は大田原市民として、この湯津上村との合併問題に関して非常に深い関係にある市民でありますし、また国会議員の地位を持っておりますので、私ども軽々にこの問題について発言し、あるいはいろいろな意見を述べるということは、かえって総理勧告の線を撹乱するようなことがあってはいけないという慎重なる考慮のもとに、本日に至るまで郡長官に対しても何ら所見の開陳を公式にいたしたことはございません。いわんや自治庁にも陳情に参ったことはないのであります。従って、私の立場というものは決して選挙を前にして得票戦術であるとか、あるいはこれをもって自分政治的立場を有利にしようとか、そういうものではないのでありまして、この合併問題に直面しておりますところの一市民として、またそこの市から選出されておるところの国会議員として、どうしてもこの問題を放置することは非常にしのびないという観点から、この問題について率直に郡長官所見をただしたいというのが、私のこの質問に立ったゆえんであります。従って、この問題について、郡長官におかれましても大胆率直に、長官としての所信を御披瀝願いたい。これをまず冒頭に申し上げて、一応その質問を数項目にわたっていたし、またその次に具体的問題について伺いたい、かように考えておるわけであります。  まず第一に私が伺いたいことは、内閣総理大臣勧告というものは法的に強制力は持たないという郡長官答弁、これはもちろん私はさようであるかと思います。しかし県の審議会及び中央審議会審議を重ねて、知事及び内閣総理大臣があらゆる事情を検討した上に、最終的に合併が適当であり、また可能であると判断して発せられたものであるということは明らかでありますから、合併推進上、行政措置としては最終的なものであり、関係市町村に決定的な影響を事実上において発揮するものと私は考えておるわけであります。この点について、郡長官は一体いかなる所見を持っておられるか、これを一つ伺いたい。
  4. 郡祐一

    郡国務大臣 高瀬委員から、町村合併について非常に御理解のある前提で御質疑がありまして、そういう工合に、町村合併というものに深い理解と情熱を持っていて下さる方の多いことをまことに感謝するものであります。  おっしゃる通り総理大臣勧告が出ます場合には、そのかなり前に知事勧告がありまして、その場合に知事はいろいろな手続をとりまして勧告をいたして、それから総理大臣に申請して参り、総理大臣はそれを中央審議会諮問をいたしまして、諮問答申を得ましてから勧告をいたします前には、事実上相当長い期間をかけまして県当局なり県の審議会なり、その後の事情変更状況等を観察いたしまして、しかる後に勧告を出すのでございます。重大な事情変更があればそれは別でありまするけれども、普通の場合におきまして、勧告相当もつれてきておる場合にこの勧告を出すのでございますから、にわかにものが解決するとは期待できない場合もございまするけれども、しかしながら解決方法としては勧告案以外の解決方法は考えられないという状態において勧告を出しております。従いまして、先般七つの合併案件について勧告をいたしました。すでに勧告によりまして、それまで紛議のありましたところを解決しておりますことを喜んでおるのでございます。順次勧告案実現いたしますことを期待しております。従いまして、おっしゃる通り勧告というものが、町村合併について強制手段はついておりませんでも、まず最善の事態を予期して出しておる、こういう工合に私ども考えておる次第でございます。
  5. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいま重大な事情変更があれば別だというお話でありますが、この点はここで論議をすることを後ほどに譲りまして、郡長官の言われたように、この総理勧告以外の方法では解決が考えられない。従って、それではもう一度確かめますが、合併推進上の行政処置としてはこれが最終的なものであり、関係市町村に決定的な影響を事実上において発揮するものであるという、私はさように考えておる。さように考えてよろしゅうございますが。
  6. 郡祐一

    郡国務大臣 私は決定的な影響力を持つものだと考えております。
  7. 高瀬傳

    高瀬委員 わかりました。  それではその次に伺います。第二番目に、内閣総理大臣勧告を受けた市町村がこれを拒否しておる場合、その拒否している市町村に対して、報復的手段として県が各種財政援助を打ち切ることは穏当でない、これは当然であります。報復的手段として、この各種財政援助を打ち切るということは穏当でないことが当然であることはもちろんでありますが、この新市町村に対しまして、新市町村建設促進のために必要な財政援助を優先的に行うことは当然であろうと思うのであります。その結果として、未合併町村に対してはこれをあと回しにすることは結果的に起きるわけであります。従って新市町村建設促進法の第十五条第一項の規定によってこれは明らかなことだと思うのでありますが、この点いかがでございましょう。
  8. 郡祐一

    郡国務大臣 起債の許可なり特別交付税配分等につきまして、合併町村に優先的な扱いをいたす、これは認められていることでございます。ただ私どもが指導いたします際に、いつもそれは新市町村育成していくためにしておるのだから、そこに無理のないようにということは、いつも注意をいたしております。新市町村をほんとうに育成していくというために、そうした手段を、小さいところに起債などをつけちもうて、あとで困ってもいけないからというようなことを注意しながらいたしておる次第でございます。
  9. 高瀬傳

    高瀬委員 はっきりとわかりました。従って、新市町村建設促進のために必要な財政的援助を、そのために、報復的手段としてでなく、優先的に与えることは当然であろうと私はただいまの長官答弁で了解するわけであります。従っていろいろな財政的な見地からいたしまして、このまだ合併しないところの町村に対して、その財政的の援助が行われないような、結果的にそういうことが起きるというようなことも、これは一定の財政ワク内では当然であろう、こういうふうにも考えておりますが、その通り長官の御答弁でありましたから、その点はさよう了解してよろしゅうございますね。
  10. 郡祐一

    郡国務大臣 私は言うておるのです。町村合併の際には、なかなかその村の中で深刻に対立していることがあるのですから、その事柄解決と、県が特別交付税なり起債なりを扱いますときに、よくのみ込んでもろうて、先ほど申しましたような意味合いで育成をしたいからするのである、何もいじめると申しますか、意地悪いやり方をしておるのではないぞ、という点の理解だけは十分与えてくれ、何か非常に強圧的な手段であるかのような印象、申せば行政としてやり方のまずいことはしてくれるなということを、私の方でもしばしば注意しておるところであります。そういうような注意を十分しながら、新市町村育成しようとするために、何と申しますか、親心でやっておるのだということを完全に了解してくれるかどうかわかりませんけれども、了解をつけるようなやり方で、しかし目的は、どこまでも新市町村育成ということに置いていくということで進められることを期待しておるものでございます。
  11. 高瀬傳

    高瀬委員 その点はよくわかりました。従って、後ほど具体的にそういう事実があったがどうかということを自治庁に伺います。  それから三番目に、県が地方債を許可するに当りまして、新市町村建設促進法、第十三条第二項の第一号または第二号の趣旨に従い、新市町村のために優先的な処置を講じたために、その結果として未合併町村に対する起債が認められなかったとしても、あえて不当ということではないと私は思いますが、この点いかがですか。
  12. 郡祐一

    郡国務大臣 これは事柄一つ一つの例について考えなければいけませんけれども、何か見まして、報復的であるとか非常に強圧的であるとか、こういうようなことは一つ考えにゃいかぬと思いますのと、何か当該自治体必要限度事業遂行もできない、これは私よくこう言うのでございます。新市町村合併というものは、長い先を見てやっておることだから、当面の苦労は忍んでいただきたい。しかしながら同時にその経過においても、住民生活というのは続いておるのだから、住民の福祉を妨げるようなことはやってくれるな、従いましてある程度窮屈にはなる。しかし必要なある限度事業遂行というのはあるのだから、それだけは確保してほしい、その配意なしに、必要限度事業遂行もできないということになりますと、現に生活している住民が非常に不幸な目にあいますから、それだけはやってくれるな、非常に常識的なことでありますけれども、その常識のワクというものがあって、そうしてこのような財政的措置をとるのだという工合理解してもらっておりますし、またそのように運用されるものと思うております。
  13. 高瀬傳

    高瀬委員 確かに必要な限度事業遂行を阻害するような状態であってはいけないことは、私も同感であります。ただ原則として、この新市町村建設促進法の第十三条二項の第一号または第二号、これらの趣旨に従って、やはり新市町村のために優先的な措置を講ずるということは、これは当然の結果であろうと思います。この点は、郡長官も御異論がない。従ってその結果として未合併市町村にしわ寄せが参りまして、そうして起債等が認められなかったとしても、それは結果的な問題で、もしそこに必要限度以上の事業遂行を阻害するような意図がなければ、これはやはり不当と言うことはできないだろうと思うのですが、いかがですか。
  14. 郡祐一

    郡国務大臣 そこの判断でありまして、それはおっしゃるように、未合併町村へのしわが、勢い総額のワクの中では来るということはあろうと思うのです。ただ確かに県も行政上むずがしい問題を抱えておるところでは、でき得る限り気をつけて全体のワク等も考えておりますから、今私も必要な限度だとか、それから高瀬委員も同じようにおっしゃっていらっしゃいますが、そういう常識的なワクの中で、そうしてある程度窮屈であっても、それはしんぼうしてもらわなければいかぬということが起るのも、これはやむを得ないことだと思います。
  15. 高瀬傳

    高瀬委員 よくわかりました。  それではその次にちょっと伺います。この新市町村建設促進法の第十五条が基礎になるわけでありますが、県が新しい市町村建設を促進する、それと一方、未合併町村合併をあわせて促進するという県の立場から、新市町村に対して県単事業の施行、あるいは単独補助金交付、こういうような問題があります。これらを新市町村に対して優先的に処置を講じまして、未合併町村に対してはあと回しにするという方針を立てた場合、こういう場合があったと仮定いたします。そうすると、これは県がそういうふうな方針を立てましても、あえて不当とは私には考えられないし、またこれは純然たる県の行政の問題でありますから、自治庁が全然くちばしを入れてはならぬということではありませんけれども政府指揮権に類するようなことを県に対して発動するようなことは断然できない、こういうふうに考えておりますが、いかがですか。実はこの下野新聞に「指揮権考慮」などと書いてありまして、この表題は非常に衝撃を与えるので、あえてこれを聞くわけです。
  16. 郡祐一

    郡国務大臣 これはもう勧告をいたしますまでにも、県議会、県の審議会当該町村等にいろいろな形で話もし、事情の聴取もいたしてやることであります。従いまして、その後におきまして、今はなるべく府県に行政をまかしておりますが、ただ財政再建でありますとか、町村合併でありますとか、特別に国が助成をしておりますことについては、ときどきそのやり方はどうだろうというようなものの言い方をすることはございます。ございますけれども、それはどこまでも相談で、多くの場合、別に小言は言わぬが、もう少し上手に君のところはやったらどうかということを言うことは、よくあるのでございます。しかしながら現在の制度上もございませんし、またいかような考え方でも、いわゆる指揮権というような言葉にまつわっている、何か非常に高圧的と申しますか、ものを曲げてしまう、申さば自治という立場からは、自治と両立しない観念が入っております。従いましておっしゃるように、指揮権というようなことは考えてもおらず、また指揮というような言葉は、いかなる場合にも、私にいたしましても、私の部下にいたしましても、使っていることはございません。そういうようなことは、どこまでも必要があれば相談づくでいたそうという態度をとっております。
  17. 高瀬傳

    高瀬委員 それでよくわかりました。実は非常に関係町村でこの言葉衝撃を受けたわけなんです。ただいまの郡長官お話でよくわかりましたが、純然たる原則論から言いますと、やはりこれは地方自治行政権の範囲内の問題でありますから、原則としては県の方で処理できる、しかしながらいろいろな点で自治庁自治体に対する全責任を持っておるところでありますから、いろいろ話し合いをして、こういうふうにしたらいいだろう、そういうことはもちろん私は非民主的とも思いませんし、地方自治自主性を阻害するものであるとは思いませんが、ただこういうような場合にいわゆる指揮権発動などということになりますと、非常に衝撃を与え、せっかくできかかった町村合併というものが困難に陥る、こういうことでただいま伺いましたが、非常に明快に御答弁になりましたから、この点は了解いたしました。  それから第五番目に、未合併町村といいましても、これは当該町村行政を行なっていく上において、必要最小限度財政措置が講ぜられることは当然だと思います。従ってその必要最小限度財政措置というのは、先ほど長官もちょっと触れられましたが、国または県が法律その他の規定に基く義務的経費、及び地方交付税交付等をさすものと私は了解しておりますが、この点はいかがでございますか。
  18. 郡祐一

    郡国務大臣 その点はおっしゃるような点もございましょう。しかしまた事業等につきまして、たとえば衛生の関係とか、災害の関係とか、その県、その自治体の特殊の事情、そういうような限度で、割に幅は広く、しかし必要な最小限度という考え方をいたしております。全体の趣旨が、大きくなったところに十分な金をつければけっこうなんだから、小さいところで金がむだに使われないようにということでありまして、その事業なり財政措置をどの程度に考えるかというようなことは、個々具体に考えております。これは県自身も良識をもってやってくれるものと期待しております。
  19. 高瀬傳

    高瀬委員 そういたしますと、必要最小限度財政措置というのは、やはり先ほど私がここで申し上げました、国または県が法律その他の規定に基く義務的な経費、あるいは地方交付税、こういうようなものをさすものと、原則的に了解してよろしゅうございますね。
  20. 郡祐一

    郡国務大臣 義務的経費と申しますと、借金を返すとか、給料を払うとか、これだけではどうにも少し町村が苦しいですな。ですからそこはそういうような義務的経費とかなんとかいうことでなしに、また交付税でも交付税の中で相当事業ができるように見ておりますけれども、まあまあ普通の状態でということで、これはある程度それぞれの町村と相談づくで県にはやってもらいたいと考えております。また県はその気持はよくわかっておるだろうと思います。
  21. 高瀬傳

    高瀬委員 やはり義務的経費というものは、教育費とか、各種援護費とか、いろいろそういうものをさすことになりますが、その点は私もただいまのお話で、必要最小限度財政措置というのは、原則としてこういうものをさすということに、長官も御異論がないと思いますから、その点は一応了解いたします。  大体の原則論をこれで終りますが、ただいま亀山君から、内閣委員会で採決をやるから、早くやれという御注意がありましたが、これからが本論なんで、今退場されては非常に困る。そこで私は……。
  22. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長 ちょっと待って下さい。——暫時休憩いたします。     午前十一時十九分休憩      ————◇—————     午後零時五十九分開議
  23. 亀山孝一

    亀山委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  町村合併に関する件について調査を進めます。高瀬傳君の質疑を許します。高瀬傳君。
  24. 高瀬傳

    高瀬委員 先ほど来町村合併の大体の原則について郡長官にただしましたところ、種々返答がありました。それはそれといたしまして、これから具体的に私が問題にしておりますところの湯津上村の町村合併の問題について質疑を継続いたしたいと思う次第であります。  大体この湯津上村の合併という問題は、一度隣接小川町に合併計画がありました。その計画変更いたしまして、湯津上住民の意思を尊重いたしまして県が自治庁協議をいたし、しかもさらに知事勧告を出すに当っても、自治庁協議をいたしました。しかもさらに県の要請によって、自治庁中央審議会審議を経て、内閣総理大臣勧告がなされておるところであります。従ってこの内閣総理大臣勧告というものは、われわれ住民にとっては相当重大であり、いわゆる勧告という言葉は使っておりまするけれども、その内容より見ましても、当然これは単なる勧告でないことは明らかであります。すなわち湯津上大田原小川町、黒羽町に対してなされたところの総理大臣勧告内容は、非常にその点を明らかにしておるわけであります。これからその一部分を読み上げまするならば、「さきに同県知事が本職と協議して定めた次の町村合併に関する計画に基いて町村合併を行うべきものと認めるので当該計画に基き町村合併を行うよう同法同条同項の規定により勧告する」ということが内閣総理大臣の名において、昭和三十二年十二月十四日に出されておるわけであります。すなわち勧告を出された対象は、栃木県の大田原市、同じく小川町、同じく黒羽町、こういうことになっておるわけであります。しかもこの勧告が出された際に、自治庁長官は、栃木湯津上村等七件にかかわる町村合併に関する勧告について、自治庁長官談話を発表いたしております。この談話は非常にこの勧告について重大性があるわけでありますが、一応これを質疑前提として、もう一回私は再確認してもらうために読み上げたいと思うのであります。すなわち「栃木湯津上村等七件に係る町村合併に関して、本日、内閣総理大臣から新市町村建設促進法第二十九条第一項の規定に基く合併勧告が行われた。今回勧告の行われた各合併案件はいずれもすでに各関係県知事から合併勧告がなされ、その実現努力が払われてきたところであるが、関係市町村の一部には、複雑な事情が存するため今日までその実現をみるに至らず、このままに推移すれば、いたずらに関係住民間の紛議を助長するおそれもあった。各合併案件については、内閣総理大臣から新市町村建設促進中央審議会諮問されその答申を得、さらに慎重に検討された結果、本日ここに、勧告が行われた次第である。すでに全国的に町村合併もその大部分を完了し、新市町村建設が着々と進められている現段階において、一部の小規模町村合併実現をみないことは、当該町村のみならず、当該地域の今後の発展にも支障を来たし、ひいては地方自治全般の進展にも影響するものと認められる。関係市町村住民各位、議会及び当局においては、町村合併趣旨にかんがみ、関係地域の将来の発展を期待し、大局的な見地に立って、一層の努力を傾注し、すみやかにその実現を図られたい。」こういうのであります。 これは特に郡長官の出された談話でありまするので、一応郡長官のお耳に再び入れて、よくこの談話内容を御認識願っておるわけでありまするから、一応読み上げたわけであります。従ってこの趣旨に従って、総理勧告の性格について、具体的に一つ答弁を願いたい、こういうふうに考えるわけであります。大体が先ほど申し上げましたように、総理勧告なるものを非常にわれわれ関係住民においては重要視いたしておりまして、これが、単なる勧告という言葉は使われておりますけれども総理勧告がいきなりその関係市町村になされたのではありません。従って、やぶから棒に総理勧告大田原市あるいは湯津上あるいはその関係町村になされたといたしまするならば、これは実を知らざる勧告だ、従ってこれについては単なる勧告であるから従う必要もないなどという議論が出ないとも限らぬ。しかしながら知事勧告もあり、しかもそれに従わずなかなか紛争が継続して結局県が自治庁長官と慎重に協議した結果、自治庁においてこの町村建設促進中央審議会に付議して、そうして総理の名においてなされた勧告なるものは、非常にわれわれはこれを重大視せざるを得ないわけであります。従って私は単なる勧告であるがら、勧告にすぎない、あるいは住民がその点についていろいろな意見があればまたほかに方法でもあるかのごとき感じを自治庁が与えるとするならば、これは非常に影響するところが重大であります。従ってこの私が先ほど引用いたしました参議院における自治庁長官答弁が、あたかも総理勧告以外の線においてこの湯津上村の合併問題が解決するがごとき印象を新聞記事のみならず、速記録によりましても受けとれる節があるわけであります。従って郡長官と私の読み方あるいは見解の相違ということになるかもわかりませんが、実はその点について非常に現地の合併関係しておる住民影響するところが甚大なのでありまして、たとえばこの相馬君の質問に対しまして郡長官は、私と申しまするよりは自治庁が中に入りましてこの問題の解決をやってみたい、県に対してもその他に対しても新しく一つ虚心にものを考えていくというような工合に進みたい、こういうようなことも言っておられるわけであります。その他いろいろ随所に見られることは、郡長官の意思は十分わかっておるといたしましても、非常にその点が現地のまじめにこの問題を考えておるものからすると、誤解を受けるような点があるわけであります。たとえば、そして必ずしも県にまかしておっても、ものはあるいは解決することは無理かもしれぬ。もちろん地元と、それからそれを統括しておる自治体、つまり県だと思う、——とが考えてくれることはけっこうでございますけれども、私どもも中に入りまして、これが一つ。そうしていきさつ等は場合によっては抜きにして、現状ではほんとうにどうしたら一番住民の福祉になるか、自治体としての発展がどうしたらはかれるか、これを相談ずくでものをきめる、それができなければ決して——ここが大切なのである。決して時間を急ぐことはない、じっくりものを解決したいというような御答弁を、速記録によると、なさっておるわけであります。しかしながら私どもをして言わしむるならば、今のこの湯津上村の町村合併が未解決状態にあるということは、自治庁も県と同様の責任を私は感ずべきであろうと思うのであります。従ってこれらの点について、自治庁長官として総理勧告を県とともに協議して出された以上、自治庁総理勧告がなされて、それがいまだに解決しないという現状に対して一体責任を感じておられるかどうか、その点を一つ伺いたいのであります。
  25. 郡祐一

    郡国務大臣 責任を最も強く感じておりますればこそ、どちらの立場というようなことに決してこだわらずに、虚心に——これは何もその場合に私は答弁しただけでなく、ほかの県を越えます合併その他についても、いつも言っておるのであります。あなた方の方に何年かのいきさつのあることはよく承知いたしておる。しかしそのいきさつの一々にこだわるのではなくて、虚心に考えているのだから、あなた方の言うことも遠慮なしに言ってもらいたい、それを初めから押えたり何かはしませんよ、しかしものを落ちつけなければならないじゃありませんか、そしてきゃう来てもらうたがら、すぐ返事をしろというようなことは決して私言わない、しかしものは守らなければいけない。虚心に時間と手間は十分かけるから、一つ解決しようじゃありませんか、こう言いますのは、ただ事態をほらっておきましてもとてもいけませんし、それから制度から申しまして、事柄から申しまして、それは一片の政令を出してきまってしまう事柄でありますけれども、そうじゃなくて話し合いでありますから、今お読みになりましたような意味合いで責任を感じ、ものを解決したい一心で、場合によりましては、お前出てくれなんて言われることもあるのでありますが、もうだいぶものをきめなければいかぬという気持になっておるところで、そういう気持で事に当っておりますのも、どこかの県のどこかの部分で、自治体の紛争がだんだん深刻になっておるということは、まことに責任上たえられないことであります、そんな気持で言うておるつもりであります。もしそれがいろいろ地元で御心配下さる方々に何か水をかけると申しますか、違った意味合いが持たれますならば非常に残念なことでございまして、私はおっしゃる通り非常に責任を感じ、早く解決いたしたいと思っておるものでございます。
  26. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいまの郡長官お話で私もよくわかりましたが、実は地元といたしましては、この総理勧告にもあり、また長官談話にもあります通り、この談話の最後にその実現をはかられたいという要望があるわけです。ところが時間をがけてもいい、虚心に一というと、総理勧告以外に、地元さえ騒げば何かはかの方法があるのではないか、つまり騒いだ方が勝だ、総理勧告以外の線で、虚心にものを御破算にして、時間なんかかかってもいいから、とにかくやり直させるのだという感じを非常に濃厚に与えている、そういう意味じゃないのでしょうが、これを一つ明らかにしていただきたい。
  27. 郡祐一

    郡国務大臣 ほんとうにそういう意味じゃないのであります。私が虚心にと申しますのは、自治庁長官は、何か片寄った考えを持っているのだという受け取り方でなく、ありのまま、率直に言うてほしい、それは人間のやることだから、同じ結果が出るのでも、上手なやり方もあろうし、まずいやり方もあろう、しかし私としては、新市町村建設という大きい目的を達するためにやっているのだから、事柄の扱いを白紙にというのではなくて、私自身は——つまり私は率直に言われれば聞くだけのゆとりは持ってお話し合いをするからという意味合いで、何もこの場合だけじゃなくて、この種の問題についてはいつも申していることなのであります。従いまして、そのような意味合いに一つお聞きとりを願いたいと思います。
  28. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいまの郡長官の御答弁のごとくんば非常にけっこうなんでありますが、非常にその点が新聞に報道され、またいわゆる総理勧告を受ける必要はないというふうなことを考えておる方には非常に勇気を与え、総理勧告に従って自治体の発達をはかっていきたいという人には、非常に失望と疑惑の念を与える。つまり自治庁は一四体何を考えているのだかわからない、あるいは一つの政治勢力にでも動かされて、うやむやなことに総理勧告をして、どんなことをされるかわからぬという感じを与えるということは事実でありますから、その点で私はこの質問をいたしたのであります。  なお、それに類したことをちょっと伺いますと、実は自治庁行政局振興課長という名前で、昭和三十三年の四月一日に大田原市長からの疑義の点についての質問に対して回答をいたしております。すなわちそれはどういうことかといいますと、これは新市町村建設促進法第二条第五項の疑義についての回答であります。すなわち「昭和三十三年三月三十一日付総第三七一号で照会のあった標記については、市は、新市町村建設促進法第二条第五項に規定する「未合併町村」には該当しない右命により回答します」続いて大田原市が、その回答に対して出したチラシを読み上げますと、「大田原市と湯津上村の合併については、未だその実現を見るに至りませんが、その間大田原市は、未合併町村であるとの県の一方的法規の解釈によって、各種の国や県の補助金等が交付されないかの様に伝えられ、一部市民の皆さんに焦燥と不安の念を懐かせましたが、昭和三十二年度分については殆んど予定通り交付されました。然し当市としては「未合併町村」ではないとの確信を以て自治庁長官に対しその見解を照会しました処、この度自治庁から次のような回答によって「未合併町村」でないことがはっきりいたしました。  自治体は常に民主的な正しい法の運用によって育成されねばなりません。誤った主観的解釈によってこれが乱用され住民の福祉が妨げられることは市民の総力を挙げてそ止せねばなりません。  一部の人達の言動にまどわされることなく、冷静に市当局市議会の態度を見守って居て下さい。」こういうチラシであります。これは大田原市の意見でありますから、これを批評することは別といたしまして、この自治庁行政届振興課長の大田原市長に対する回答、なるほど新市町村建設促進法第二条第五項には市という字の書いてないことは確かであります。従って大田原市は、この新市町村建設促進法が出る前の町村合併促進法によって、すでに合併を完了いたしております。これは私市民としてはっきりとわかっておるところであります。従ってその後に発布されましたところの新市町村建設促進法は、前の時限立法であるところの町村合併促進法によってまだ合併が完了していない町村を指すのでありますから、この回答について私はかれこれ申すのではありません。しかしながら先ほど読み上げましたように、大田原市は総理大臣勧告を受けておる市であります。すなわち大田原市と小川町と黒羽町、これはこういうふうにして湯津上村の一部を合併しろといって勧告を受けておる市であります。ですから、あるいは人によっては新市町村建設促進法の二十九条の二項、すなわち総理大臣勧告があったにもかかわらず、合併しないものは弱小町村であるがゆえに、国の行う財政的援助を打ち切られることがある。これに一体大田原市は触れないかという疑問があります。しかしこれに対しては、自治庁はそれに触れないということを強く主張されておるようであります。従ってその法文上の解釈によると、おそらく市という字がそこに入っていないから触れないという御解釈であろう、これは一応の文字的な法律の解釈として私は異議を差しはさむものではありません。しかしながら大田原市というものが総理大臣勧告によってかくかくの湯津上村の一部分を合併して、早く市町村合併促進の実をあげろということを言われている市であることはいなめない。従って大田原市がこの総理勧告をもう全然拒否して何もしなかった場合に、何らの処置ができないかどうか、これは非常に疑問であろうと思うのであります。すなわち町村合併に関するところの関係市であることは事実問題としてもいなめないし、おそらく自治庁もこれを否定されないと思うのでありますが、これらの点について一つ見解を伺いたい。
  29. 郡祐一

    郡国務大臣 大田原市は高瀬委員よく御承知の通り、前に合併をいたした新市でありまするし、法律の見方についてはあるいは行政局長からお答えをいたした方がいいかもしれませんが、いわゆる未合併町村というものには私は当っていないと思います。従いまして振興課長の回答はその通りだろうと思うのであります。お尋ねのある場合には、私もただいま申しましたように答えておるのでありまして、それでその未合併町村に当るとか当らないという問題と別に、しかし長いこと考えた末にここに落ちついたのだから、それに何とか方向を同じゅうして、東と西と逆の方向でなく、ものを考えてくれ、こういうことは十分この際必要なことでございまして、勧告趣旨もそらでございます。その振興課長の名義によります回答というものは、事柄を特にむずかしくするようなつもりは全然ないのでありますが、しかしそれが地元においていろいろに扱われるということは、お話のようにありそうなことだと思います。ですからそれはそれといたしまして、その回答そのものということでなしに、一つ総理大臣勧告趣旨を十分市もわかってやってもらえるようにということは、私の方でも言葉の足りないところは補いまして、今後も事柄に当って参りたいと思います。
  30. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいまの御答弁でありますが、実はやぶから棒にこれだけの文章を出されて読みますと、大田原市というものは未合併町村でないのだから総理大臣勧告は、あれは単なる勧告であるし、何をしても結果的に起るところの——それは報復的とかなんとかという意味ではありません。市町村合併を促進させるための財政処置等不利益な処置というものは絶対受けないのだ。私も受けることを希望いたしません。これは誤解があるといけませんから言いますけれども、しかし場合によっては市町村合併を促進するために何かの処置をしなければならぬ、こういう場合は法文に明らかになっておるわけです。従って大田原市というものは、まるで治外法権を持っている市のごとく、少くとも未合併町村ではないのだから総理勧告があろうと何をしようと、市町村合併に関する限りはおれらは別格官幣大社だという感じを総理勧告の線に従わない人たちに与えるとしたら、これは地元影響するところ非常に重大でありますから、自治庁としてこの点はいかがですか。
  31. 郡祐一

    郡国務大臣 どういう場合にでも法律の読み方なり何かを聞かれますときには、これはいろいろ影響があるなと思うこともありまするけれども、しかし回答すべきときには法律の読み方については回答もいたしております。この委員会でもしばしばこの会期中お尋ねがありました住民の意向の尊重、住民の福祉をはかって参る、これはもういつのときにも何回かお答えしていることでありまして、現に一緒になったがまた分村の話などが出てきて私どもの頭を悩ましておる例もある。どうか住民の意向を——すべての人間を同じに考えるということは無理であります。無理でございまするけれども住民の意向をできるだけ尊重して、そして住民の福祉をはかるためにはこうしたらいいのだという一つの考え方で、勧告もいたしていることであるし、しかしそれは決して住民の意向を無視するということは申さないのでありますけれども住民の福祉をはかるために、そして住民の意向を十分尊重してものを解決いたしたい。その間にもし自治庁のいたしましたことで、それがかえって妨げになるようなことがありましたら、その事柄趣旨をよく申しまして、そのために話がほかにそれて、もののじゃまになりませんようには十分気もつけますし、またそういう点でこちらの考え方をさらに敷衍いたしますことは必要によって十分いたしたいと思います。
  32. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいまの答弁によりますと、結局大田原市というものは、総理勧告を受けた市でありますから、少くとも町村合併については実質的に関係のある市である、この点はもちろん御異論はないでしょうね。
  33. 郡祐一

    郡国務大臣 それはこのたびの勧告の対象になっておることでございますから、当然関係のあることでございます。
  34. 高瀬傳

    高瀬委員 そういうふうにいたしますと、ただいま自治庁の解釈によりますと、あらゆる場合に市は未合併町村ではないということでありますから、二十九条二項も適用されない、こういうふうな御解釈のようでありますが、実はこれだけの通達で、総理勧告を受ける必要がないという人たちを勇気づけたことは確かである。従ってそれでは市は何をしてもいいか、どんなことをしても、この総理勧告に従わないところの市のやり方に対して、自治庁も県も何らの手の打ちようがないが、一体その点はどうなんですか。
  35. 郡祐一

    郡国務大臣 私の言葉がもし足りなければ政府委員から補足いたさせますが、私は法律上の措置として与えられておることがありませんでも、これを促進いたしますための行政上の手段はいろいろ講じたらよろしいのでありまして、法律が特に明記していない、だから方法がないというのではなくて、法律はこれこれのことだけを書いてありますということで、ほかのあらゆる努力によって、ものができますように努めることは当然だと思います。
  36. 高瀬傳

    高瀬委員 実はこの行政上の処置によっていろいろな町村合併促進をはかるというのは、郡長官として、わが党の国務大臣として当然でございます。しかしながら場合によっては、それをやる場合に、何の根拠があるのだというようなことも、たくさんの住民でありますから出て参ります。そういう場合に、私はここで一つ御答弁をいただきたいのですが、新市町村建設促進法の中の第十五条の適用が大田原市に対してなし得られると私は考えておるのでありますが、いががでありますが。
  37. 郡祐一

    郡国務大臣 私も十五条というのは「新市町村建設計画の実施を促進するため、前三条の趣旨に従い、必要な措置を講ずるものとする。」この「必要な措置を講ずるものとする。」ということは、私は前に申しましたような行政上のいろいろな手段によっていくということでありまして、これが別に条文を設けてある、何と申しますか、財政上の不利益処分と申しますか、それはまた別の条文に扱っておりますから、この「必要な措置」というのが、そうした不利益処分とかなんとかいうものと関係のあることではなく、もっと広い別の意味でいろいろな措置を講ずるのだという意味合いで十五条は書いておるものだと考えております。
  38. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは大臣からでなく、この適用も大田原市に対してあり得るか、ないかということを局長から一つ。それだけでいいです。
  39. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 十五条の規定は「都道府県は、新市町村建設計画の実施を促進するため、前三条の」——これはいろいろの国の財政援助措置を書いておるわけですが、その「趣旨に従い、必要な措置を講ずるものとする。」ということになっておるのであります。すなわちこれは新市町村を促進、育成をいたしまするために、新市町村が立てております建設計画の実施を促進するために、都道府県としては独自の立場において必要な措置を講ずべきことの根拠規定を置いたのであります。従いましてはっきり申しますと、形式的に申せば先刻高瀬委員も御指摘になりましたように、大田原市自体はすでに合併をいたしました新市でございます。従って形式的にはこれは新市の扱いを受けてくるということにはなり得るわけです。しかしながら他面勧告を受けておるという、こういう厳然たる事実があるわけでございまするからして、他の何ら勧告の対象になっておらない新市町村との間に、行政的な判断として何らかの取扱い上の差異を生じる余地があり得るということは、これは当然考えていいことだと思います。
  40. 高瀬傳

    高瀬委員 それではこの十五条の適用は、大田原市のようなそういう勧告を受けた市に対しては、あるということで了解してよろしゅうございますか。
  41. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 形式的にはさようでございます。
  42. 高瀬傳

    高瀬委員 つまりそういうようなことをこの通達一本でやられると、そういう点が非常な誤解を受けるから、これでは悪用されはしないか。悪用という言葉は非常に不穏当であるかもわかりませんが、いろいろな点で利用されはしないか。一般の住民というものは法律だとかいろいろな点がわかりませんから、未合併町村でないというなら何をやったっていいという感じを持ってしまう場合がなきにしもあらずなんです。つまり自治庁は、直接そういう勧告の線で町村合併を促進しようと思うならば、そういう点に非常に詳細なる配慮があってしかるべきじゃないか。この点私はこの機会に自治庁長官にも注意をうながし、事務当局もこういう点について十分配慮をされんことを要望いたします。それで結局ただいま申しましたのは、そういういろいろな点、あるいは長官相馬君の質問に対して答えられた点が、別に勧告の線以外のことを打ち出したわけでもないから、長官談話にあるように、すみやかに実現をはかりたいという熱意自体をくつがえしたのではないということも、先ほどの点でよくわかりましたが、実はそういう点でこの新聞記事のような見出しが出たんじゃないか、これは無理からぬことだと私は思って、その点を明らかにしたいために、きょう質問をいたしておるようなわけであります。  そこで、それではその次に移りますが、たとえば勧告というものは確かに勧告である。しかしこれは先ほど私も申しました通り、やぶから棒に出された勧告ではありません。従って普通総理大臣がいきなり大田原市に対して、おれは勧告するが、これに従えというのではないことは明らかであります。この点は私は非常に重大なことであると思うのであります。正規の手続を経て、十分慎重に考慮した結果、総理勧告がなされた。これをどうしても住民によく認識させなければならなかったと思うのであります。そこで、ただいまの郡長官お話では、住民の意思が非常に大切だ、住民の福祉が大切だ、これについては私はもちろん異議はございません。しがしながら住民の意思が大切、福祉が大切、これはもう全くの町村合併の第一義的に重大なる要素でありまするが、少くとも総理勧告がなされたということは、これらのことが慎重に考えられてなされたわけでありまするから、やはり現段階におきましては、湯津上村の合併問題大田原市の問題等につきましては、これが十分考慮された結果、自治庁長官も正規の手続を経て総理勧告を出された、これは当然なんであります。従ってこういう点を十分考慮して、審議会にあなたは諮問され、さらに決済されたと思うのですが、その点はいかがですか。
  43. 郡祐一

    郡国務大臣 その通りであります。
  44. 高瀬傳

    高瀬委員 わかりました。私もそういうふうに考えておりましたが、実はこの参議院質問でその点も非常に怪しくなって参りましたので、この際再確認をする意味で伺ったようなわけであります。  そういたしますると、今のような状態総理勧告がなかなからやむやな状態にあるということは、われわれその勧告を受けた当該住民にとっては非常に重大なんであります。あっちにふらりこっちにふらりというふうに、この関係住民がぐらつき、総理勧告の線に私たちはあくまで従って法治国家の住民として正しく生きていきたいという主張の人が、場合によっては自治庁長官お話を誤解して、何だ、われわれは正しく法に従って法治国家の住民として国の再建をやっていきたいと思うのに、どらもわれわれのやっていることにけちがつくような感じがする、片方ではこのようなことを利用して、自治庁長官もあんなことを言っているのだから、おれらがんばればまたやりようがあるのだろう、長くあくまで持久戦でいけということを考えないとも限らない。私はそういう点を非常に心配するわけだ。従って少くとも、そういうふうになってぐらりぐらりと長くこの問題が長引くということは、行政の権威を失墜いたすのみならず、いたずらに事態を混乱させる。従って総理勧告の権威というものを早く確立しておかなければ、こんな勧告なんというものは全く有害無益なものではないかというふうな感じを与えてしまう。この点に対する長官の見解を、非常にくどいようですが、一つ伺いたい。
  45. 郡祐一

    郡国務大臣 七つのケースを同じときに勧告をいたしました。勧告通りに相なりましたのは岡山で一つありました。ほかの六つはまだきまっておりません。しかし大部分徐々にいい方に向いております。私どもはその六つについて区別したやり方をしておらないのでありますが、私は自治庁の事務当局に対しましてはしんぼう強くやってくれ、途中で失望してしまっては何にもならぬことだから、しんぼう強くやってくれということで、岡山のまとまりました一つの例なども取り上げて説得をいたしたり、あらゆることをやって、もちろん早いに越したことはございません。ただ私が気にしておりますのは、ものをこわしてしまっては何にもならないので、しんぼう強くやれというのは、そのような意味合いで言っているのであります。何とかこれを早く、七つのうち一つしかできないという状態から、半ば以上ができ、全部ができるような状態に持って参りたいと思っております。
  46. 高瀬傳

    高瀬委員 それでは伺いますが、少くともこの内閣総理大臣勧告というものは、新市町村建設促進に向ける、未合併町村に対する処理、これらの問題に関して最終であり、また最高の手続であることは間違いないと思うのです。これはもちろん郡長官意見をただすまでもなく、私もそう解釈し、郡長官もそう解釈していると思う。従って今さら湯津上村の三分割の計画以外に、さらに計画変更する、こういうような手続は私は全然ないと思うが、それについて何か別な手続がありますか。
  47. 郡祐一

    郡国務大臣 これは三十一年からでございましたが、考え抜いた上のことでございますから、そのほかに別に考えようはございますまい。
  48. 高瀬傳

    高瀬委員 実はその答弁を聞いて非常に安心をいたしました。実は先ほども申し上げた通り、いろいろほかに方法があるのじゃないが、がんばればあるのではないかというのが混乱の原因です。郡長官はそれ以外に方法はない——実は率直に申してこの問題について合併地元の方々もお見えになり、何か別な方法がないかというお話がありました。しかしながら私も地元の議員よしてまじめに考えてみまたが、実はここに中島政務次官がおりますと好都合なんですが、中島政務次官にその点を伺いました。何か地元住民全部が満足するような方法があるかどうか、ところがやはりただいま郡長官のお答えになりましたように、中島政務次官も、自治庁としてはこの総理勧告の線以外、すなわち湯津上村を三分割する線以外には全然自治庁としては手がない。やり直すなんということはできないし、その線以外には解決の道なしということを私に話したわけなのであります。従ってその点を郡長官も確認していただければ、私は非常に幸いだと思います。
  49. 郡祐一

    郡国務大臣 先ほど来ずっと申してきたようなことでございまして、総理勧告をしておる。これは念には念を入れ過ぎたくらいの勧告でありますから、それ以外に同じような場所についてほかの考え方もあるわけじゃなし、これでもう十分説得力を発揮して解決したいものだと考えるほかには、別の考え方は何も持っておりません。
  50. 高瀬傳

    高瀬委員 大へんに明瞭になりまして私も非常に安心いたしました。従ってこの問題について、総理勧告意見を異にする方々、つまり全村合併をするとか、そういうふうな方々にもいろいろ御意見もありましょうけれども自治庁としては、そういう陳情とか懇請に対しまして、結局新市町村建設促進法のもとにおいては、三分割以外は方法がないということを、今後そういう方が見えられたらはっきりとおっしゃっていただく用意があるか。
  51. 郡祐一

    郡国務大臣 それは私はいつも同じ場合に言っておりますように、虚心にあなた方の言うことを聞きますよ。時間の許す限り聞きます。それで私の方で、しかしこうじゃないかという説得をいたしておるのでありまして、そこは十分——これは県を越えた合併というのは、処分をいたせば、それでものはさまってしまうのでありますけれども、県内の合併というのは話し合いでいかなければならぬ部分があるのでございますから、説得のためにかなり私どももあれやこれやといろいろ苦慮いたしておるのであります。従いまして、いろいろ伺っても、それじゃものが落ちつかぬじゃありませんがということで説得をしておることは、ひとり湯津上村だけではありません。ほかも同じような問題についてはやっておりますから、そういう考え方でこれからも努力して参ります。
  52. 高瀬傳

    高瀬委員 つまり、くどいようでありますが、やはりこの問題は地方と中央との非常な有機的なつながりというものが根本的に大切だと思うのです。それで行政の効果というものはそういう点に重点を置かなければ——まあ、あなたは行政関係のエキスパートでありますから、私の方から言うのも妙でありますけれども、やはり中央と地方との有機的なつながり、これは根本的に重大なことだ。従ってそういうような点について、新聞記事郡長官の言われることと違うようなことが出る、あるいはこれについて自治庁はぐらついておって、全村派の人もがんばればうまくいくのじゃないかというような感じを与えるということになると、やはり日本の法治国としての、あるいは民主主義国家としての基礎というものがぐらつく、こういう点を一つ十分御注意願いたいと思うのですが、いかがでしょう。
  53. 郡祐一

    郡国務大臣 自治庁の扱っておりますことは地方紙なり地方版なりでは確かに大切なことでございます。従いましてこれはよく反省しにゃいかぬのですが、われわれ地方紙の記事については不感症になっている気味があるのです。ということは、決してそうは言うておらぬ、否定したことを逆に——国会でお答えしておりますことは、わきで聞いていて下さる方もそう間違いはないはずなんですけれども、これもときどき——先ほどの指揮権などというのは、地方自治法を知っておる方々には全く考えられないことでありますけれども、そういう言葉を使うと、やはり何かそういうこともありそうであります。場合によりますと、それは違うのだと否定したことが、やはり新聞に出ておったぞというようなことを言われることがございます。しかし、まぎれのあるようなことを申しますために誤解を生ずることは、私どもの非常な不行き届きでありますから、そういう点でこれからも十分戒心いたして事に当ることにいたします。
  54. 高瀬傳

    高瀬委員 大体今までのところでこの問題に対する自治庁の見解もはっきりいたしました。郡長官の御答弁も私は非常に満足であります。ただ、ここで私はあなたに訓示をするつもりじゃないのですが、あなたも自由民主党のわれわれを代表する閣僚であり、われわれも自由民主党の国会議員であるが、実はこの問題について、わが栃木県の連合会長船田中先生並びに県会議長、これはもちろん自由民主党ですが、それから栃木県出身の国会議員全員から、本部にも計画通り推進方について申し入れてあるわけです。従って自治庁長官におかれては、わが党出身の有力な閣僚でありますから、十分その点を御認識の上、この総理勧告の線に従って御善処あらんことを要望すると同時に、私はそれを強く確信いたしまして、この質問を終りといたします。
  55. 郡祐一

    郡国務大臣 今高瀬さんのおっしゃる通り、私も多分その申し入れをちょうだいした直後だったかに総理勧告を出したと思います。その後も、こういうわが党の一致した意見だからということで、その申し入れを大いに活用と申しますか、それをたよりにいたしておりますので、今後もその御趣旨にのっとって十分行動いたして参ります。
  56. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十六分散会