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1958-03-27 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十七日(木曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 足鹿  覺君    理事 淺香 忠雄君 理事 大平 正芳君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 井上 良二君    理事 横山 利秋君       有馬 英治君    犬養  健君       大村 清一君    奧村又十郎君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       小西 寅松君    杉浦 武雄君       高瀬  傳君    竹内 俊吉君       内藤 友明君   橋本登美三郎君       古川 丈吉君    福田 赳夫君       堀川 恭平君    前田房之助君       松田竹千代君    森   清君       山本 勝市君    有馬 輝武君       石野 久男君    石村 英雄君       春日 一幸君    久保田鶴松君       横路 節雄君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   北島 武雄君         通商産業事務官         (重工業局長) 岩武 照彦君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    吉国 二郎君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      木村 秀弘君         大蔵事務官         (理財局証券課         長)      松井 直行君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月二十七日  委員足立篤郎君、井出一太郎君、遠藤三郎君、  川野芳滿君、夏堀源三郎君、平野三郎君、古川  丈吉君及び森三樹二君辞任につき、その補欠と  して犬養健君、福田赳夫君、松田竹千代君、橋  本登美三郎君、堀川恭平君、川島正次郎君、大  村清一君及び石野久男君が議長指名委員に  選任された。 同 日  委員犬養健君、大村清一君、橋本登美三郎君、  福田赳夫君、堀川恭平君及び松田竹千代辞任  につき、その補欠として足立篤郎君、古川丈吉  君、川野芳滿君、井出一太郎君、夏堀源三郎君  及び遠藤三郎君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  連合審査会開会申入れに関する件  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇号)  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第四三号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九六号)      ————◇—————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  昨二十六日、逓信委員会よりテレビジョン受像機に対する物品税低率適用期限延長に関し、申し入れがありました。中入書につきましては、印刷してお手元に配布いたしておきましたので、御報告いたしておきます。     —————————————
  3. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。この際勤労性事業に対する減税及び金融に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。なお小委員の員数は六名とし、小委員及び小委員長の人選は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なおこの際小委員及び小委員長辞任及び補欠選任につきましても、委員長に御任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました     —————————————
  7. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案及び関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の六法律案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。横山利秋君。
  8. 横山利秋

    横山委員 昨日、私から租税特別措置法減税預金制度についての質疑の中で、減税預金を取扱うべき証券業者認可基準証券取引法六十六条に伴う認可基準を出してもらいたい、こういうふうに要請をしておいたのでありますが、それについて、政府側の御答弁をお願いいたします。
  9. 松井直行

    松井説明員 御答弁申し上げます。法律六十六条に基きまして、さらにその政令におきまして、証券会社選定基準といたしましては、営業もしくは財産経理状況に照らして、投資者の保護のため適当であるもののみを承認するというこことになっております。しかしながら、ここにいう営業もしくは財産経理状況に照らしということが、どういう具体的な基準かという御質問と存じます。現在まだ法案審議中でありまして、現実に申請も出て参っておりません。これは、新しいごく最近の証券業者のバランス・シート、その他損益計算書等営業もしくは財産に関する資料をとつて、ここに審査することに相なるわけでありますが、従って、現在基準というものが最終的に固まつておりません。しかしながら、もう何次にもわたりまして、どうすれば客観的な基準が発見できるかという点につきまして、いろいろ検討中であります。今御質問になつた線に沿いまして、現在の検討段階のことにつきまして、申し上げられる範囲のものを申し上げてみたいと思うのであります。  先般もお答え申しました通り、基本的な考え方で一番問題になると思いますのは、資本金によって区分するかどうか、結局大きな証券業者だけができて、小さな証券業者がやれぬのではないかという問題につきましては、われわれ、以下に申し述べますように、資本か多い、少い、あるいは資本金がある一定限度以上だけがやれるという線で区分するという基準は、とらない方針であります。さらに証券取引所会員であるか、非会員であるがという区分によっても差別待遇はいたさないということを、まず最初に申し上げたいと思います。さらに具体的な基準に当りましては、横山委員の御趣旨の通り、どうすればおのおの一つ一つ業者信用状況が客観的に表わし得るかという問題でありますので、いろいな方面から、種々な観点から業者一つ一つ分析し、批判する以外に方法はないわけであります。従って、われわれが考え及びました限りの限度におきまして、大体次のような消長に目をつけまして判定していきたいと考えております。  第一番は、その証券業者平素売買高といいますか、扱い高であります。それが、証券業者一定水準に達しておるかどうか、たとえば、平均よりも非常に低いか、あるいは平均以上におるか、あるいは平均以下、あるいは平均にある一定の率をかけて、少くともこれくらい平素からの扱い量がないと、こういう業務はそろばんに合わないじゃないか、そういう一つ水準を考えまして、平素扱い高を、その業者につきまして、一体その一定水準をこえておるかという観点が第一、第二番は、これは、普通の企業におきましても当然のことでありますが、資産合計金額から負債合計金額を差引きましたいわゆる正味資産というものが、払込資本金に対してどういう状況にあるか、結局払込資本金以上にあるか、あるいは資本金の一部を食つておるかどうかという観点から見る。  第三番目は、経常収支率であります。証券業者の場合は、非常に経常収支率をはじくのがむずかしいのでありますが、経営収支と考えられます諸手数料収入受取配当金というものの合計額収入と考え、一方販売費及び一般管理費というものの合計額を支出と考えまして、その経常収支比率がどうなっておるか。  それをさらに次の二点について分析していきたいと思います。過去三期の間のその個々業者経常収支率の状態が現在持っております証券業者正味資産に将来どう影響するか。つまり、正味資産を将来どんどんふやしていけるだけの収益能力があるのかどうか。あるいはジリ貧になっておりまして、正味資産を徐々に食つていくような傾向にあるかどうかというような観点から見る。それから収支率が今後さらに上昇傾向にあるか、または下り坂にあるのかというような点について考えたいと思います。  それから次は、営業用資本額並びに負債比率、これは、証券取引法に、証券業者資産内容及び信用供与率を判定いたします基準数値として法定になっているものがあります。営業用資本額と申しますのは、流動資産から流動負債を引きました一種の当座資本と申しますか、その証券業者当座支払い能力を示すものが営業用資本額であります。これが一体どうなっておるか。  それから、そういう営業用資本額と、流動負債の総合計に対する歩合、これは、証券取引法では、営業用資本額の二十倍をこえて流動負債を持ってはいけない。結局、信用過多になってはいけないという規定になっておるわけでありまして、そういう状況がどうなっておるか。  その次は信用取引度合いであります。むろん証券業者実物取引ばかりではなく、信用取引も行なっておりますが、信用取引が多いということは、結局実物中心主義にやつていないということを半面からいうものでありまして、われわれは、やはりどこまでも実物中心主義業者が一そう健全性が強いという判断から、信用取引度合いをながめてみたい。  それから信用取引の中におきましても、業者自身の思惑による信用取引と、うしろお客さんがおります信用取引があります。証券業者自身信用取引が多いということは、すなわち証券業者自己取引が多いということを象徴するわけでありまして、そういう点を見たい。  それから信用取引実物取引全部合せまして、自己取引が総売買高に占める歩合はどうかということは、先ほどの点も総合いたしまして、お客さんの委託注文中心にやつておるかどうかという点について考えてみたいと思います。  最後に、これは判定が非常に困難でありますが、今度は、零細な個々投資家からある程度長期にわたりまして金を積む、あるいは有価証券を買うという長期契約を結ぶわけでありまして単純に買う、売るというような一時的な委託関係でなしに、非常に信託的色彩の強い長期契約関係になるかと思います。従いまして、台帳整理その他事務処理が非常に複雑になるかと思います。従いまして、従来からの帳簿の作成状況はどうか、あるいは有価証券の受け渡しの処理状況が非常にうまくいっているかどうか。それから、その証券業者人的構成などもあわせ考えまして、事務処理能力が果してあるかどうか。こういう零細な実物投資家長期契約を結ぶ、そういう処理がうまくいくかどうかという観点から、事務処理能力の程度を判定したいと思います。  最後に、従来法令順守状況は一体どうであったか。法令、それから取引所とか証券業協会等にきめております諸規則の順守状況はどうか、罰則を受けたことがあるのかどうかという点に注目いたしまして、その証券業者の素性といいますか、信頼できる経営者かどうかということを最後判断指標にいたしまして、以上のような項目につきまして総合的に判断を加え、最終的に適正と認められる業者を選びたい、こう考えております。
  10. 横山利秋

    横山委員 こまかい内容については、凝議がありますが、大臣がお見えになりまして、時間がないようでありますので、他の委員大臣に対する質問があるようでありますから、私は、この際大臣に二、三点伺つておきたいと思います。  それは、今大蔵委員会税法法案がいよいよぎりぎりの結着参つたのでありますが、この際お伺いしたい第一点は、先般来臨時税制調査会、あるいは特別調査会等、いろいろ政府としてはやつて参りました。そのたびごと社会党としては、これほど国民の重大関心事である税法改正政府諮問機関、あるいは大臣諮問機関、しかもその構成内容は、任意な自由裁量にまかされておる、その委員会に対する諮問の仕方も、明年度税制改正に対する諮問の仕方は、最初相続税、その次になると入場税、その次になると当面の減税方針はいかんという、随時気ままなやり方をしておられるのを指摘をしまして、本委員会においてこもごも意見がありましたのは、この調査会一つ法制化をして、しつかりした基盤に置いたらどうか、法制化をしたらどうかということ。第二点は、その構成内容についても、たとえばもう少し広く中小企業労働者代表を入れたらどうかという意見を何回も開陳をし、そのたびごとに、大臣としては、十分に考慮をいたします、こういうふうに言うてこられたはずであります。本国会における税法法案は、いうならば政策減免であつて、基本的な税制改正ではありません。今後大臣が引き続き大蔵大臣として税法を基本的に検討されるのでありますけれども、たび重なる本委員会における主張をどうお考えになっておるのか。法制化をする気持があるのか、またその構成内容について、広く各界の人々を集めて正式に出発する意思があるのかどうか、この際明らかにされたいと思うわけであります。
  11. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税制改正についての根本的な態度でありますが、今お話しのような点も、私ごもっともと思います。特に私は、いろいろな方の意見も今後聞くつもりでありますが、ヨーロッパでは共同市場、いわゆる一体になる、従ってヨーロッパの諸国における税制が、いろいろな意味において大きな変化をするであろうということを私は一つ考えております。それからアメリカにおいても税制が相当変化しつつあるように見受けられる。こういうようなことを考えました場合に、内外情勢からしても、今後日本税制について一般的といいますか、あるいは根本的に、一つそういうような見地に立って考えてみる必要があるのではないか、こういうふうな考え方をしております。従って、こういう際におきまして、どういう機構をもって衆知を集めるかにつきましては、十分の検討を加えますが、御説のような御意見つては、十分な考慮を払いたいと思います。
  12. 横山利秋

    横山委員 最後のところが、少し小さい声でわかりませんでしたが、法制化をし、各界の人を集めて出発する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  13. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さようであります。今御説の御意見についても十分考慮を払うようにいたしたいと思います。
  14. 横山利秋

    横山委員 第二番目にお伺いをいたしたいことは、今後の税制改正方向であります。これも、たびたび私ども社会党のみならず、与党の中からも御意見のあったところでありますが、税制根本原則であります、生活費に課税せずということ、それから公平な原則、この二つはどうしても貫いていただかなければなりません。大臣が今回税制改正の柱として提案をされておりますのは、租税特別措置法による減税貯蓄でありますが、これは、明ららかに今日までの税制調査会及び大蔵省の方向から逆行しておるのであります。いかに政策的見地とはいいながら、その内容も複雑であり、しかも公平の原則に反することおびただしく、かつはまた、結局これは実質的な預金貯蓄の増加にならずに、振りかえに終つて、ただ短期の貯蓄長期になるか、あるいはそういうようなところがねらいであり、貯蓄増強の呼び水というところにしか意義がないのであります。これは、今明日に本委員会を通過をするようでありますけれども、この際、一つ大臣が将来の減税方向明らかにされて、大臣としてたびたび手がけられた減税が、ほとんどといっていいほど政策減税方向であるから、一萬田大蔵大臣税制に対する認識について、納税者はきわめて疑つておるのであります。あなたは、これから税制改正を、こういう方向機構内容を持っていってやろうとなさるのでありますが、今後の税制改正はいかにあるべきかという点について、大臣の所見をお漏らしを願いたいと思うのであります。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまお話がありましたように、税を考えます場合に、公平の原則、それから担税力のあるところから、これはもう私は基本線として考えなくてはならぬと思っております。担税力のあるところから税をとるということで、やはり最低生活ということは、当然に考慮さるべきである、かように考えておるわけであります。どういうふうに税制を持っていくかという具体的のことにつきましては、今後設置されるであろう、あるいはまた拡大強化されるであろう税制調査会意見を十分尊重して出すことにいたしたい、かように考えております。  それからただいまお話がありました、政策的に特別な税法上の措置をするということは、これはほんとうに万やむを得ない必要なというときに限りまして、従来のそういうふうな措置は、その目的の達成ができていると思われるものについては、すみやかに廃止していく、そうして、その面からも、先ほど申しました税の負担の公平、言いかえれば担税力のあるところ、同時に税制簡素化をして、専門家でなくても、一般の人が考えてもよくわかるように、あまり複雑多岐にならないように、こういう税制を実は求めておるわけであります。
  16. 横山利秋

    横山委員 大臣のそのお言葉が、次に出て参ります法律案次期国会に出るであろう法律案について、決してたがいのないように要望をいたしておきたいと思うのであります。その次にお伺いしたいのは、本委員会税法法案がたくさん出ています。翻つて考えますと、九月十日に閣議で決定をいたしました明年度予算編成要綱を考えてみますと、減税のげの字もなかった。その後本委員会のたび重なる質疑応答から、緊急に間接税審議が依頼され、さらに年末になりましてから、当面の減税というものが調査会諮問をされたわけであります。この経緯をたどつてみますと、その場その場という感じがいたします。しかも経済情勢は、この半年の間に激変をいたしました。アメリカにおいては、アイゼンハワーが不況克服の要因として、解決の重大な方策として、減税を今考慮しておるのであります。大臣は、過ぐる年末の委員会で、余裕財源が継続をするならば、これは明らかに減税の方へ回すべきだ、当面は、それが長期にわたって余裕財源が作られるかどうかわからないからたな上げもし、当面のやむを得い減税をするのだ、こういう所懐を明らかにされております。ところが、その後になりまして、原主税局長は参議院において、明年、明後年、さらに続いてその次、五カ年計画にある余裕財源について相当膨大な数字を明らかにされておるわけであります。  それから、今の不況克服、これは、議論になるかと思うのでありますけれども、どうしても国内均衡をこの際重視すべできめる。国際均衡については、きのうも山際さんとここで一問一答を皆さんといたしたのでありますが、アメリカ不況がかりに回復するにしても——回復する見通しはないのですが、回復するにしてもしなくても、今日の日本国際収支は改善され、黒字基調であつて、そうして、一方においては、国内は供給過剰の状況である。従って、この不況を回復するには、内需を抑制すべきでない、また減税をすべきであるという声は、ちまたに今や満ち満ちておるのであります。大臣が半年前に考えられた、明年度予算大綱状況からいうと、まさにこの点については、あなたは、実は腹の中で情勢変化を認めておいでになると思うのです。従って、今われわれの審議最終段階にありますこの減税の、当初のあなたの考え方基盤は、違つておるのではないか、そう思うのですが、いかがでありましようか。同時に、この法案はかりにこの法案としても、直ちに大臣としては減税方向に踏み出して、具体案を、一般的減税について設置さるべき法制化された委員会諮問を発すべきではないか、こう考えるのでありますが、いかがでありましようか。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの御質疑は、三つあったように思うので、これについて申します。一つは、三十三年度の予算編成当時において、減税ということは考えていなかったではないか、卒然として出たではないかという御指摘でありますが、これは、さようではありません。予算編成に関して基本方針を作りました場合に、まず歳出は、一千億円以内にとどめる、それから過年度から繰り越してくる余剰金四百三十億はたな上げする。そうして減税は、あの当時二百四十億円くらいを考えた。この三本立の柱になっておつた。その額が若干ふえまして、これは、減税がふえるということは、私は適当であったろうと思うのでありまして、そういうことであります。決して卒然として出たわけではありません。  その次に、余裕財源処理についてのお話でありましたが、私も、余裕財源というのは、これは自然増収なんですが、自然増収が引き続いて常にある場合は、やはりまず何としても減税を考えるべきである、こういうように申し上げておるわけであります。  それから景気についての問題でありますが、むろん景気というものは、内外の諸条件に支配されますから、一つ政策、従ってある一国が、あるいは一つ政府がこういうふうにしようという政策と、その政策の実際の効果がずれるということは、これはある程度やむを得ない。特に日本経済のごとき、世界経済、また世界経済アメリカ経済に大きく動かされる、こういう情勢下にありましては、具体的な景気情勢がその国の政策通りに参らないということがあると思います。これは、私はやむを得ないところと考えておるわけであります。むろんできるだけその政策効果を期待しなくてはなりません。努力もしなくてはなりませんが、そういう意味において、若干ずれておるのでありますが、今日の日本景気状況、これは、前から私が申しますように、日本景気の行き過ぎを是正する施策をとりまして、そうして大体その当時からの構想からいたしましても、まあ一—三月、特に三月が生産調整のピークになってくるだろう、こういうふうに思っております。しかし、先ほど申しましたように、ずれてきましたことがありまして、政策的な効果としまして、今ごろがやはり日本経済が悪いだろうということは、これは当初から予定されておることなんです。これは、政策的な効果とも言い得る。従いまして、よほどこの扱いについては慎重な態度をもって臨まなくてはならぬのでございまして、一応生産調整の過程というものは、私は順調に所期の目的通りに終らせることがいいだろう、かように考えております。むろん国際収支の面から見れば、お話のように改善もできています。しかしながら、国際収支において単に黒字が出たからといって、満足すべきものではないと私は思う。これは、縮小均衡ということをあえていとわぬとすれば、そうむずかしい方策ではない、輸入を抑えていくことによってできるんじゃないか。経済縮小をして、そして日本みたいに人口の多い国では、雇用をどうするか、またその結果、財政が不生産的に大きくふくれるということをもたらすのでありまして、これは、やはり単に収支が合うとが黒字になるでは満足できない。日本の場合は、貿易を拡大して、経済の拡大ということを考える。そういう場合において、日本経済の姿としては、どちらかというと日本経済は、むしろ物に対する需要が多く喚起される性格を持っておる経済であるように考えます。それは、一面において人口が多い、そして同時に、日本経済は、まだ先進国後進国の中間にしかない国柄で、何も欄熟した国ではありません。従って、インヴェストにしても国民所得にしても、伸びる若さを持っておる、かように私は判断しております。そこに持ってきて、一方東南アジア諸国というものは、みな未開発で、ここに対しては幾らでも物資の需要がある。ただ購買力がないだけで、物資の需要は非常に多いのであります。従いまして、今後賠償も行きますし、同時にそれに付随する経済協力、これは、今のところまだ実現しておりませんが、今後着々と経済協力をやつていこう。またそのほかに、インドに対する借款もある。それから鉄鉱の開発もある。こういうふうに見て参りますと、物資の需要がどうというのも、これはよほど慎重に考慮していかなくてはならぬ。かように考えておるわけで、大体今までの方針は、私は堅持しておるわけであります。
  18. 横山利秋

    横山委員 大臣、時間が短かいのですから、私の質問に短かく答えていただきたい。あなたの最後の、今までの方針を堅持する、これだけ答えてもらえば大体わかるのです。  そこで、大臣に率直にお伺いをいたしますが、今までの方針を堅持する、つまり金融引き締めを堅持し、減税もします、内需も抑える方法を続ける、こうおっしゃる。ところが、今ちまたにあまり声は、もう最近のうちに解散になる、そして、五月の終りごろには総選挙だ、この一、二ヵ月のうちに、政府は手を打たざるを得ない、こういう意見がほうはいとしてある。現にあなたの方の与党の中にもあるのです。大臣が今既定方針を堅持して、選挙があろうが何があろうが、この方針はくずさない、ほんとうにそういうことをおっしゃるのですか。私は、何も選挙があるからやつたらどうだろうとか、やるだろうとか、そういういやらしい言い方をするのではないけれども、日本経済情勢というもの、国際情勢というものは、そうなっているではないか。従って、大臣の腹の中にあつて、そうして、今慎重に準備をして、適当な機会にやるならやるというふうに、ここで明らかにおっしゃったらどうか、こう言うのです。もしもそうでないというなら、選挙があろうが何があろうが、この基調はがんとしてくずさないならくずさないと、はっきりおっしゃって下さい。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の従来の考え方を堅持するという意味について、若干の説明が要るようであります。と申しますのは、非常に内需を抑制するかのような印象を与えますが、さようではない。いわゆる積極的に内需を抑制するという意味ではないのであります。それはなぜかといいますと、金融当局その他もしばしば言うように、これ以上金融引き締めをやることもないということにも、表現は出ておりますが、今後においては、どうしても金融は従来に比べるとゆるみます。どうしてもゆるむ傾向があります。それは、国際収支の上から見ても、あるいはその他から見ても、どうしても金融はゆるむ傾向をたどりますので、その限りにおきまして、従来とは若干違つた状況を持っておる。これは、別に私が政策的にそうしなくても、経済の動きとしてそういう状況が出るでしよう。それから、なおそれならどういうふうに考えるかといえば、今日の金融情勢というものが非常に不自然だ。たとえばコールにしても、三銭というような状況を呈しておる。それから日本銀行の貸し出しは、六千億に及んでおる。そして、社債は少しも出ない。こういう状態において、若干金融がゆるむ原因があるからといって、これを引き揚げる必要はない。むしろその勢いで金融を正常化しよう。こういうような考え方をいたしておりますが、同時に、生産調整が大方終末に近づくから、もう現在あるストックについては、ただいたずらに安く投げ売りさして、特に貿易面において競争をさして、ただ安い物を売らせるということは、私は適当でないと思う。根本において生産の調整が確立して、将来にわたる需給の見通しがつけば、その不当な値下りについては、もしもそれが金融的原因から来るなら、金融的措置をとるのも、これは私の従来考えておる事柄でありますので、そういう点について、若干の説明を申し上げておきます。
  20. 横山利秋

    横山委員 時間がありませんから、私これで終りまして、他の委員大蔵大臣に対する質問が済みましてから、先ほどの質問を続けます。
  21. 足鹿覺

    足鹿委員長 井上良二君。
  22. 井上良二

    ○井上委員 大蔵大臣に一、二点税法の関係で質問をいたしておきたいと思います。  先般来本委員会で、きわめて詳細にわたって質問をいたしております減税貯蓄に関する法案でございますが、大蔵大臣は、当面国民の日々の生活に税金を課さなけばならぬ現在のわが国の税制はお認めになりますか。五人家族で月に二万円なら二万円、三万円なら三万円はどうしても要る、それに税金をかけたんじや生活に食い込んでくる、こういうことで、国民の生活に税金を課しておりますが、その税金を課さなければならぬ現実は、わが国の現在の税の徴収上やむを得ない、こうお認めになってやつているんでしよう、そうじゃないですか、それを率直に聞きたい。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の税法におきましても、税のかからない限度があります。五人の標準家族で二十七万円までは税がかからない、こういうことになっております。どういうところがいわゆる税をかけるべきでない最低の生活であるかという点については、生活ですから、非常に弾力性を持っていて、なかなか線が引きにくうございますことが一つ。それともう一つは、国の財政という見地から考えていかなくてはならぬ。両方から考えて、今のところはさようにいたしておるわけであります。
  24. 井上良二

    ○井上委員 去年の所得税減税によりまして、あなたの方からお出しになっている資料によると、独身で一万一千円までは税金がかからぬ、夫婦で、一万七千円までは税金がかからぬ、それから夫婦と子供三人では二万二千円までは税金がかからぬ、こうなっている。大臣は、夫婦で一万七千円が、今日わが国がおかれておる国民の経済の現実から、妥当な生活費とお考えになっていますか。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 もしも国の財政が許し、かつまた税負担の公平という見地から許されるならば、私は、なるべく税のかからぬ限度が高い方がいいと思います。これは、異論ありません。が、しかしながら、全体の均衡から考えまして、今のところ遺憾ながら日本としては、現状が適当と考えております。
  26. 井上良二

    ○井上委員 そこで、あなたのおっしゃる通り、国の財政的な諸般の事情が許せば、できるだけ低額所得者にも減税してやりたい、そのあなたのお考えがあるなら、六ヵ月据え置いて二年間も定期で預けておかれる人、貯金のできる余裕階級に特に減税をしなければならないというのは、一体どういうことですか。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、それ自体をとりますと、いろいろと批判があると思います。しかしながら、今日日本経済を無理なくして拡大をしていくのには、どうしても資金というものが必要なのであります。特に長期の資金が欠乏いたしております。これらの上において、初めてインフレなくして、言いかえれば平静なる経済の拡大の基礎が成る、そこで初めて雇用関係もよくなり、そこで初めて所得というものも生まれてき、また動く、そして初めて税金ということになるのでありますが、そのもとをつちかうために、どうしても今必要だという見地に立っておるわけであります。
  28. 井上良二

    ○井上委員 それは何も減税だけじゃないのです。他の政府の政治施策が総合的に計画されるところに、国民の購買力が高まつて、わが国の生産力が国際的水準に高まつていくのであつて、何も一方に、極端に重税を課しておきながら、一方においては、当面する金融の非常な重点的施策を必要とするから、その資金源のために、減税というえさによって金を集めるんだ、そういう片ちんばな税制というものは、およそ国民は納得できないですね。あなたは、常に本委員会で、減税の公平を説き、税制の公平を説き、できるだけその負担を公平にするということを言うておりながら、やつておることは全く違うのであります。それは遺憾です。まして私が、先般来あなたに御考慮を促しておりましたが、あなたは大蔵大臣であり、しかも、一番国民が大きな期待をしております、減税の一歩を踏み出しておる間接税中一番重税を課せられておる酒税関係の税金をまけようとしておる。これは、税金をまけるのです。その税金をまける場合に、それがそのまま国民のふところに入らないということ、大蔵大臣の立場から考えても、またこれを受け取つて審議した大蔵委員会のわれわれメンバーの立場で考えましても、それがそのまま小売価格として改訂されて、国民に減税額が入っていくという措置がとられずに、途中で上前をはねられる。合成酒において三円、しようちゆうにおいて五円上前をはねようとしておる。そういうことは、はなはだ筋道上おもしろくないから、いずれ適正な原料その他の製造原価の検討がなされて、なるほどやむを得ないだろうということになるなら、これは価格改訂をしてもけつこうだと思う。しかし、今日の原料費構成、製造費構成におきましては、いろいろと問題がある。だから、ほんとうの減税といわゆる原料費諸掛りの値上りに伴う製造原価の引き上げというものとは、別個にしてもらいたいということを私ども口をすつぱくして言っておる。どういうわけで一緒にしなければならないのです。それで、私先週あなたにもお願いし、主税局長にもお願いしておいたのですが、いよいよあと今週一ぱいで参議院に送りませんと、四月一日からの減税が実施できなくなりますが、まだメーカー側や諸般の関係方面と検討して、結論を得ておりませんが、どうなっておるのですか、そこら辺の経過を、一週間たつておるのですから、一ぺんお示しを願いたい。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 酒の価格の問題でありますが、これは、ただいま最終的決定をいたしたいと思いまして、慎重に検討を加えておりまするが、今の御質疑の、消費税が下つたのであるから、当然価格はそれだけ下げていい、それは、私は御意見として、まことにごもっともと思いますけれども、行政上の扱いといたしまして、消費税分は一ぺん下げておく。それからまた、酒の価格構成の要素の変化に基いて上げる。こういうことは、行政の扱いとしては私ははなはだ適当でない、かように考えておるわけであります。しかし、これらの点について、最終的な検討をただいまいたしておるわけであります。
  30. 井上良二

    ○井上委員 そういう御答弁では、少しも本委員会審議の促進にはなりません。われわれはどうしていいかわからないことになってしまいます。われわれも、政府の意図するところにできるだけ協力して、すみやかに法案を成立さそうとしておるのでありますから、政府も、われわれの主張の是とするところをお認め願いますならば、それならその通り返事をしてもらわぬと困る。だれが考えてみましても、税金はこれこれ下る、一升について、清酒二級酒で二十円下る、あるいは合成清酒でもって十八円下る、しようちゆうでもって十五円下るということは明確であります。ところが、小売段階になって、小売価格の改訂では、清酒二級酒はそのまま二十円方下つておるが、他のものは、いずれもそのピンをはねられておる、上前をはねられておるということになつたら、一体大衆は何と申しますか。そういうことをやつていられるのです。ですから、私どもは、何も原料の諸関係が値上げをしなければならぬ実情にありますならば、こうこういう理由でもって値上げをしなければならぬということを明確にされて、そうして、それはそれで別個にやつていただきたい。あなたは、今日までたびたび業者の値上げ要求を受けておりながら、依然としてそれに対して検討を加えておつて、改訂をしなかったじやありませんか。今までほうつておいたじやありませんか。ほうつておいて、減税と一緒にそこに抱き合せでもってやろう。手続きがめんどくさい、ややつこしいという一点だけで、これと抱き合せでやろうというところに問題があるのです。それほどあなた方がややつこしいならば、統制を廃止したらどうです。雑酒みたいに、統制をはずしたら問題ないですよ。合成清酒においても、あるいはしようちゆうにおいても、何も統制しなければならぬ理由はない。そんなに言うならば廃止しなさい。そうして自由にやらせなさい。それならそれで、十分それぞれの関係で、大衆の需要のおもむくままに、価格は決定されていくのですが、統制している以上は、あなた方が責任を持ってやらなければならぬ。少しも国会審議には協力せず、一週間もたつてなおかつ依然として答弁は明確でないというようなことでは、われわれは、審議の方法はないじやありませんか。われわれ大蔵委員会においては、本日午前、理事会を開いて検討いたしましたけれども、与党の内部においても、やはりわれわれの主張の正しいところについては、一応了承しておる人も多数おるのです。ですから、これは、政府当局でも十分一つ検討願いたいと私は思うのです。どういうわけで明確にできないのです。もう一応明確に一つ御答弁願いたい。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬国務大臣 これは、    いいますか、酒の価格を構成する要素が今日変化をしておる。これに基いて価格も考えてみなくてはならぬ。一方、たまたま消費税の減税をするということになつた。そこで、計算の上では、必ず減税は幾ら幾らになる、今度は価格の構成要素の変化から、これくらいは上るという計算にはむろんなります。その点は明らかに示しますが、私は同時に、これは、一緒にしたらいいという考えをいたしております。これは大蔵委員会で打ちあけ話になりますが、そうしないと、一ぺん悦を全部落して、また価格だけを構成要素に基いて上げるとなると、これは私の感じなんですけれども、かえつて上がりはせぬか。そうすると、結局小売値というものは高くなりはせぬかという感じ——御意見はみんな聞くのですが、そういう感じもしていますが、そういうふうな考え方で、しかし、いろいろな方の御意見を聞きまして、きわめて近いうちに最終決定をいたしたいと考えております。
  32. 井上良二

    ○井上委員 ただいまの大蔵大臣の答弁を聞いておりますと、何か価格改訂をせなければならぬ必然的な原料諸関係の値上りがあった。従って、政府も当然その要望に応じて価格改訂をしたいと考えておつた。ところが、たまたまこの際下級酒に対する減税をやることになつたので、そこで減税以前の、業者間から、業界から要望されておる価格改訂と盛り合して一ぺんに解決したい、こういうことでやりたいというのが大臣の御答弁のように伺つた。ところが大臣、あなたはそこまで御検討され、意見を聞かれているが知りませんが、価格改訂を要求してきておるのは中小メーカー全体ですよ。中小メーカー全体は、値引きして売つて言いるのです。直売したり値引きして売つているのです。値引きしなければだめなんですよ。値引きして引き合うて売れているものを、何で上げなければならぬのです。値引きして売られているのですよ。御存じの通り、宝焼酎というようなものは、非常に名が通つて、全体の一割以上の焼酎を作つておりますが、この会社のごときは、値引きせぬでも堂々とあのレッテルで売れているのです。引き合うて売れているのです。何も価格改訂を言うていない。価格改訂をいっているのは、値引きしている中小企業です。値引きして市場を横行しておつて、それでやれておるのです。それを価格改訂してやらねばならぬというのは、どういうことです。どういう理由によるのです。またそれほど切実なものなら、とうにこの問題は解決しておかなければならぬ問題なんです。それを、今日までほつたらかしておる。そこに減税をおつかぶせる、これは困る(「その通り」)与党からもかような声援があります。与野党一致した意見です。これは大蔵大臣、簡単にはいきませんぞ。だから、それは、あなたの方でももう少し真剣に御検討願いたい。そうしなければ、われわれとしてはこれ以上審議するわけにはいかない。そんな下手なことでは、大蔵委員会の任務は果されないと思うのです。私の今申しました中小企業は、値引きしておるのだが、値引きして十分採算が合うとしてやつて、別にその後そんなに倒れておるんじゃない。だから、そこはあなたの一言うのとわしらの考えるのとは違うのです。だから、そこらをもう少しあなた方は御検討せられて、もしそんなに上げなければならぬものなら、とうにあなた方の方で改訂すべきだ。一年もほつたらかしておいて、それで今日になって、もし減税をやらなかったら、価格改訂はできないじゃないですか。そこはどうですか、そうじゃありませんか。もっと真剣に御答弁願いたい。いいかげんにかぶされたらたまつたものじゃない。
  33. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、詳細に、価格構成の要素について、値上げする必要があるかどうか、そういう変化があったかどうかということは、事務当局に十分調査させて、その結果になっておるわけです。むろんその結果、何も上げんでもいいということになれば、これはまた別です。しかし、事務当局で十分調査した結果、やはりあるものについては、消費税の減税減税、上げるものは上げなければならぬという報告を一応受けておるわけです。ですから、私はそれでいくわけであります。かように申し上げておるわけです。それから、むろん早く上げたらいいじゃないか。これは、それだけとれば一つの正しい考え方と思います。ただ政府は、当時物価を上げないという政策をとつておりまして、これは、その他のものについても同様であります。ですから、物価を上げない、こういうことであります。
  34. 井上良二

    ○井上委員 私どもの主張していることが非常に問違うておるというのなら、それは、われわれも十分反省もします。ことさらに反対せんがために反対をし、主張せんために主張をしているのじゃないのです。私どもは、当然の要求としてやつているのでありますから、何かそこに、そうしなければ非常に大蔵省で困る、事務的にも困るという具体的な何かがありますか、主税局長、どうですか。
  35. 原純夫

    ○原(純)政府委員 私は、たびたびお答え申し上げておりますように、減税があれば、なるべくそれを、消費者にフルに減税の利益を得させるように下げるという気持は、全然同感であります。同時に、公定価格というものがあるということは、自由な企業に対する制限がついておるわけです。しかも、昨年来異常なイモの原価の高騰があり、米あるいはアルコールというようなものも上ってきておる。そうすれば、本来自由に売れるものを押えておる。特別な必要で抑えておる。この統制価格は、そういう条件が変つて、上げなければならぬことがあれば上げるのは当然だ、これを上げないということは、自由な企業に対して非常に酷なことになるわけです。上げるのはあたりまえだと思います。ただおっしゃる通り、なぜ早く上げなかったといわれると、まことにその点は、それだけ考えればおっしゃる通りなんです。しかし去年以来、ああいう総合緊急施策といって、日本経済は重病人だといってやつてきた。それが、秋から冬にかけて上げろといわれれば、その通りだけれども、ちょっと待てということがあつてもいいではありませんかというのが、この場合だろうと思うのです。やつと今、いろいろお話しのように、ゆるめるとかゆるめないとかいうような時期になってきたわけです。そこへ、減税ということになるわけですから、これを、今引き上げを延ばすということはないじゃないか——なお事務的に申しますと、延ばして、かりにそれでは九月、十月に直そうというようなことにいたしますと、一年分の値上げを半年でやらなければならぬということになるから、値上げの幅は相当大きくしないといけない。これは、私企業でやらしている以上、当然なことになるのです。で、私どもは、そういうことはやりたくない。もう井上さんの気持は、私はよくわかるのですけれども、そういう気持を体して、下げる分は下げる、上げる分は上げる。そうして消費者の利益、製版三層の利益、そういうものを極力適正に判断して、間違いなくやれよ、というふうにおっしゃっていただきたいと思うわけであります。
  36. 井上良二

    ○井上委員 これは、私ははっきり申し上げておきますが、減税の筋道としては、局長もわれわれも、少しも異議はないところなんですね。減税額そのまま小売価格を改訂して、大衆にそれだけ潤いを大きしてやるということについては、一つ異議がないのですね。そこは異議がない。そうすると、そこへ原価が上つたとかどうやとかいうて、文句をいうてきて、その減税額に乗つかかっていこうとするところに問題があるのだ。そこに、政治的な大きな動きが加わつておるのだ。それだから、大蔵大臣の頭の中に、合成清酒か、あるいはしようちゆう会か何が知りませんが、それらの意見を代表する人から、相当あなたの方に圧力を加えて、この際もう価格改訂も一つ一緒にやつてもらいたい、再び繰り返すことは困るから、この際やつてくれ、こういう一つの圧力が加わる。そこで、何かこの際一拳に解決しておかなければ工合が悪いというような気持しか残つておらぬのと違うのですか。実際のところ、もう何人といえどもこれに反対すべき筋道は一つもないのです。私ら社会党におきましても、採算の合わぬ価格で売れとはいわないのです。採算が合わぬなら合わぬで、新しく価格改訂をやりなさい。しかし、それは減税とは切り離してもらいたい、こういうことを明らかにしているのです。だから、何もわれわれはむちやなことを言うて、あなた方を責めているのじゃない。だから、大蔵大臣の立場としても、大蔵委員会の立場としても、減税案が出てきたら出ただけ、そのまま大衆のふところに入るようにしなければならぬ。これは当然なことなんです。それを途中で横取りしたり、上前をはねるというような行き方は、何としてもやめてもらわなければならぬ。このわかり切つた意見を述べているのです。なぜわかり切つたことをやらないのですか。それほどメーカーの代表者になって、ここで意見を述べなけれならないのですか。そんな話がありますか。二、三のメーカのために、何百万、何千万という消費者大衆のふところに影響する問題を、なぜそんなにがんばらねばならないのですか。そんな非常識なことがありますか。私は、もっと責任のあるまじめな答弁を願いたいと思う。
  37. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私、別に無理なことをがんばるというわけでもありません。だんだんと話がありましたように、消費税の減税でありますから、これが消費者にすぐフルに潤つていく。それには異論はないのだが、先ほど局長から話がありましたように、やはり価格を構成している要素にいろいろと変化もあったから、価格も上げなくちやならぬ。それもすでにおそきに失しておるじゃないかとすれば、この際においてやはり上げなくてはならぬ。そんなら、これは、たとえば極端なことを言うようでありまするが、フルに下げて、すぐにまた上げる。何も上げるのに長い期間を置かなければならぬという理由もないでしょうから、それを下げてすぐにまた上げる。それは、やはり行政のやり方として、きわめて混乱を招くだけでありまして、今日の決定がやはり減税を入れての価格決定になっておるのでありますから、この減税の機会におきまして、すべてを勘案して妥当な価格をここできめる、かように考えておる次第でありまして、どうぞ御了承を得たいと思います。
  38. 横山利秋

    横山委員 議事進行。この今の質疑応答を聞いていまして、どう考えても、これは大臣にお考え直しを願わなければならぬと思う。しかし、きようは時間もないようでありますから、この質疑応答一つ預かつてもらつて理事会で十分に相談をして、そうして結着をつけたいと思いますので、委員長において手配を願います。
  39. 春日一幸

    ○春日委員 関連して。僕は、この間この問題に触れて、特に本委員会でも要望したことですが、これは、本会議大臣の財政演説の中でも、特に大衆負担の軽減ということを大きくうたつておられる。大衆負担を軽減するために減税を行うということをうたつておられるのですが、結局ここの大衆負担の軽減というものの象徴的なものは、本委員会では酒です、地方行政では荷車税、自転車税です。だから、そういう意味で、ほんとうに本会議における大臣の所信表明の中にあった大衆負担の軽減ということが、文字通り行われなければならぬということなんです。だから、税率が下つた分だけは、そのままこれを大衆負担の軽減に直結していただかなければ、その事前にいろいろな道草があつてはならぬ。それが、いろいろな名目によってゆがめられてはならぬ。こういうことは、本委員会においても再々要求して参つたことなんです。事情を明らかにしてきたことなんです。予算委員会においても、この問題については深く論ぜられたところなんです。私は、その間において政府において相当の猛反省があり、再三にわたって検討があったと思うのです。ところが、本日に至っても、なおかつ今井上委員との質疑応答の中で明らかにされたように、この国会意見というものを政府の中でまだ十分御理解願つていないということは、まことに遺憾だと思うのです。私は、こういう意味において、この際、ほんとうに大衆負担の軽減といってあの大演説をぶたれた以上は、やはりそれに沿つた執行を尽していただかなければ、これは、本委員会としてもとても納得のできる問題ではないと思うのです。それは、あとで上げたり下げたりという話もあるけれども、ほんとうに上げる必要があるかどうかについては、われわれは、それぞれの企業の過去何カ年にわたる決算の数字だとか、試算表だとか、割引の事実だとか、あるいはサービス販売の実情等を資料で出してくれといっておる。その資料はまだ出ていない。今、井上委員指摘されたように、現実に割引販売もされておるし、割引せざるまでも、これにかわるサービス販売を行なっております。宝醸造における、それぞれの決算における利益がどんなものであるかというようなことも、われわれもあらかじめ調査をしておるのです。それだから、現行生産者価格において、ネット・プロフィットはどの程度のものかということは、大体目安をつけておる。だから、こういう現実において、上げなければならないかどうかということについては、異論がある。上げるべしということは、われわれはもとより容認しておるのじゃない。上げてはならぬというところに、むしろウエートがあるのです。だから、そういう意味で、大臣の施政演説とそれに伴うこの酒の販売価格の変更という問題は、これは重大なつながりがあるのですから、井上委員の発言等を十分に一つ検討されて、またただいま横山君からも、この問題を重大視されて、その取扱いについては、もう少しこの理事会と政府当局の間に意見の調整を行なっていこうということでもありますから、この際こだわることなく、やはりあなたが、本会議においてかなり決意をもってあの演説をさたれこともよく反省されて、この問題については、何とかわれわれの意見に、そしてまた世論にこたえるように、十分検討されんことを強く要望しておきます。
  40. 足鹿覺

    足鹿委員長 ただいま横山委員から御要望がありました酒税法の問題でありますが、この点につきましては、追つて理事会等で協議の上、取扱い方については善処いたします。  次に移ります。石村英雄君。
  41. 石村英雄

    ○石村委員 酒の問題については、あとでやるということで、あまり長く申しませんが、一言大蔵大臣に申し上げておきたい。大蔵大臣は、事務当局からの、原価が上つたから上げなければならぬという意見をそのままいれておるようですが、中小企業の方の意見は、むしろ下げてくれ、こういう意見なんです。税金が下れば、当然それだけはすつかり下げてもらつた方がいいというのが業者意見であつて、これを一部かすり取ろうというのは、大企業意見にすぎないわけなんです。そのことは、よくお考えを願いたいと思います。  次に、相続税についてお尋ねいたします。今度の相続税法は、だいぶん減税になっております。相続税についての減税のいい悪いは、いろいろ意見があると思います。また今度の減税は、相当高額な相続財産についても減税が行われております。これに対しては、いろいろな人の意見が出てくると思います。ただ、今度の相続税法考え方の基調について大蔵大臣にお尋ねしますが、われわれは、今度の相続税法改正の底を流れておる基調というものは、考え方は、家族制度の復活、家督相続の復活ということを税金によって事実上ねらつておるのではないかという判断を、今度の相続税法改正によって下さざるを得ないわけです。大蔵大臣は、この点、どのようにお考えか、お尋ねいたします。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今度の相続税の改正で、そういう家族制度の復活とか、そういうふうな意図は、全然持っておりません。ただ、従来のままでは、徴税の上においてどうも不公平になるおそれが多分にある。それで、この相続税の負担を公正にしたい、かように考えたのと、同時に、この相続税の負担を軽減したい、こういうのがおもなる原因になっておるわけであります。従いまして、中小財産階層にとりましても、従来相当重かったのでありますが、今度の税法改正で比較的軽くなる、かように考えておるわけであります。
  43. 石村英雄

    ○石村委員 決してそんなことは考えていないというような御答弁と受けとつたのですが、全部が下るというのなら、それは、あなたのおっしゃるようなことに一応考えていらつしやるのかもしれません。しかし、今度の相続税法改正によって、全部が下るとは限らないわけなのです。     〔委員長退席、井上委員長代理着席〕 全般的に見られることは、まず配偶者の税金は、今度はうんと重くなるということです。民法では、配偶者は三分の一相続することになっておりますが、今度の相続税法によって妻がどような相続税の負担をするかということは、主税局からお出しになつた資料によって見ましても、たとえば相続財産が一億五千万円、これはかなり多いものですが、そのうちで妻が九百万円相続したときには、現行法では百一万五千円の相続税、それが二百六十九万八千円ということに今度は上るわけなのです。こういうふうに妻の相続税額が上るというのは、単に九百万円とかという一つの例に限らず、全般的に通じておる傾向であります。いま一つ傾向は、長男が——長男とは限りませんが、一人の者が——実質的には長男ということになると思いますが、その一人の子供が相続する場合には、その税金は非常に減つて、次男、三男の相続税額は、むしろ反対に上ってくるという傾向が同時にあるわけなんです。この事実から見ると、かつての家督相続の復活である、財産は一切長男に相続させる、その方が有利でございます、配偶者にやつたり、あるいは次男、三男に分けてやつたりしては、税金をよけいその人は出さなければならなくなるぞという税法に今度改正されておるわけなんです。そういう結果になる改正案なんです。これは、結論において妻の相続を否定し、次男、三男の相続を否定して、長男にのみ相続させるかつての家督相続の復活を結果においてねらつておると言わなければなりません。それを奨励しておると言わなければなりません。これに対するお考えはどうなんですか。一つ事実に対して御説明願いたいと思います。
  44. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の御質疑のような点はないと思っております。私は、むしろ今度の税負担は、実際に相続した財産に応じて税負担をするというふうな建前になって、むしろ前の方は、ある意味において、相続の仕方いかんによっては税負担が不当に軽くなる、こういうことはあったと思うのでありますが、今度のは、実際に相続額に応じて税は負担する、こういうことになるわけであります。なお私の説明が不十分でありますれば、主税局長から説明いたします。
  45. 原純夫

    ○原(純)政府委員 補足して申し上げます。今回の改正案によりますと、長男が一人で相続するか、あるいは次男、三男がわけて相続するか、いずれの場合でも、総税額は同じであるという制度になるようになっております。現行法では、それのわけ方で違つてくる。従いまして、今おつしやいましたように、今度の制度は、長男に相続させる制度だというのではないのです。どういう相続をしようが、税額は同じだ。もちろん親等の遠い者に行く場合には若干違うし、また配偶者に行く額が多い少い、それと、未成年者たる相続人に行く額が多い少いによって、若干の違いはありますが、それは若干の問題であつて、今度の制度で、長子相続を奨励するということはありません。むしろ従来の制度が、分ければ分けるほど税額が少くなって、極端に言えば零になるということから、税額を少くするために、実際と違う申告をしたり、また実際の、何といいますか、税法考慮外においた場合、相続分とは違う相続分が結果として起るという不自然があったわけです。それを改めようということでございます。配偶者の控除の問題は、先般御説明申し上げましたが、やはりそこでも同様な考慮が働いておる。総じて今度の方式は、決してだれによけい相続させようということを考えてやつたものではない。ただ逆に、こういう相続をすると税が少くなるから、税を考えてこういう相続をしようというようなことはないようにしたい、こういう考えでやつておるわけでございます。
  46. 石村英雄

    ○石村委員 そうおつしやいましても、まず現在の法律改正による対照ということが必要なわけです。現在の相続税法のもとで妻が相続した場合、同じ九百万円を相続した場合には、現行法の方が安くて、今度の改正案の方が高いわけなんです。で、長男がかなり多く相続すれば、それは安くなる。次男、三男が少し分けてもらえば、それは現行法に対して高くなる、こういうことになるわけです。民法は、申し上げるまでもなく、三分の一は配偶者、子供が三分の二を均分相続というのが、民法の根本の精神であります。そういう精神にのつとつて相続した場合には、現行法より今度の相続税法の方が、次男、三男、あるいは妻が高くなるということは、そういう者が相続しないで、長男だけに集中しろ、その方が安くなりますぞということに、結論はならざるを得ないわけなんです。これは、幾らあなたがそんなことをおつしやいましても、事実がそうなっておる。私の計算では、あるいは間違いがあるかもしれないと思って、主税局に計算してもらつた一つの例として、総額一億五千万円、そのうち妻が六%、甲の長男が七〇%、乙が一〇%、丙、丁が七%ずつにそれを分割して相続した場合の税金が、現行法と改正案といろいろ出ておりますが、たとえば丙が七%をもらう、三男は千五十万円相続すると、現行法では三百二十六万五千円の相続税をその丙は納めればよろしい。ところが今度の税法によると、四百二十四万二千円を納めなければならぬ。高くなるわけです。だから、丙は相続税をよけい納めなければならぬということから、千五十万円ももらわぬようにしよう、こういうことになる。妻が九百万円もらうと、今度は前の倍以上高くなるわけです。そんな税金をよけい納めることをしないで、長男の方へ集中しましょうということになって、今度の改正案によって、長子相続を奨励しておる。結果においてそうならざるを得ないわけです。これは、事実あなた方がどのように説明せられようとも、動かすことのできないことだと思います。それでもって、決してそんな家督相続、長子相続なんというものは奨励してはおりませんと言っても、結果においてはそうならざるを得ないじゃないですか。大蔵大臣、ただ相続税が安くなる、それはけつこうなことでありますというようないいかげんなことで、事務当局の出すのをお認めになってはいけませんよ。これは、憲法なり民法なりに基く根本精神に違背するかしないかということまでよく考えてお作りにならぬと、やはり大問題です。
  47. 原純夫

    ○原(純)政府委員 御議論でございますが、その資料の第一例についておっしゃったわけでありますが、第二例をごらんいただきます。第二例は、やはり実際の例からとつたのでありますが、相続財産一億五千万円のうち、配偶者が一億五百万円を相続取得しております。その結果、その一億五百万円に対する総相続税額は四千二百二十万円、しかるにただいまおっしゃった例では七千四百万円、こういうふうな大きな違いがあるわけです。私どもその一億五千万円の遺産で、配偶者が一億五百万円取得するというのは異例であると思います。普通の取得の型としては、こういうことはないと思います。これは、やはり配偶者の控除が半額控除であるから、とにかくこれでいこうというようなことが、まあこの例についてあったのじゃないかと言うとちょっとなんですけれども、そういう傾向があると思います。第一例の方は、むしろ長男が一億五百万円取得しておる、こういう型がいいかどうかということは別にしても、今の日本の社会的な条件、環境において、長男に割合財産がいくということはかなりあり得ることです。この場合、ごらんの通り、七千四百万という非常に高い税金になっております。これは、一億五千万円という大きな遺産ですから、問題がちょっとなにになりますが、低い農家、あるいは中小企業というような場合になりますと、その人たちにとつて、非常にきつい影響がくる。農家ならば、長男が相続したであろうと言われて、そうでないということは、なかなか言えないわけです。そうすると、その場合の税額は非常に多い。分けて相続できるところは安くなるというようなことで、現行法は、取得のしようで税額がどうにでも変るという非常に大きな弱味があるわけです。これは、考えようで長所だという見方ももちろんあります。しかし、税法のために相続の取得分が実際に変る、あるいは実際と違う仮装の申告が出るということが非常に顕著な現在の税制は、何とか直したいというふうに思ったわけであります。お話のような角度での議論は、あり得る議論でありますけれども、私どもは、私どもの考えましたそういう弊害を直すということの方が、総体としていい結果を得るゆえんではないかというふうに思って、御提案申し上げておる次第であります。
  48. 石村英雄

    ○石村委員 もちろん今日の日本状況は、まだまだ家督相続的な習慣が残つておるという事実は認めざるを得ないと思います。しかし、根本の今日の民法の精神は、そうではないわけなんです。家督相続なんか認めておりません。従って、今日の基本的な憲法、あるいは民法の精神に違背しない法律を作つていくのが筋道である。古いもとの因襲がそのまま残つておるから、それを助長するような税法を作るのは、私は間違いだと思います。  それから、お前は一例だけを取り上げて言つた、こういうことですが、二例でも三例でもそうなんです。二例について言えば、配偶者が一億五百万円相続した場合に、現行法でいくと、相続税が二千六百八十一万五千円です。それが今度の改正案では、四千三百四十二万一千円、これもやはり約倍近くふえております。また子供について言いましても、乙、丙、丁にいたしましても、同じく九百万円相続するとして、現行法では二百六十六万五千円の税金ですが、今度の改正では、この乙、丙、丁というのは、乙は三百六十万六千円というふうに上っております。丙が四百五十万円相続すると、現行法では五十六万五千円の税額で済むのですが、今度の改正では百六十九万七千円というふうに大きくなっている。ただ安くなるのは、長男が二千七百万円相続して、現行法で千百五十九万円というのが、千百二十四万一千円と下る。長男だけ下り、あとの者はみんな高くなる。相続税というものは、相続した財産によって変るのは、私は当然だと思います。これが長男だけ安くなって、妻だとか、母親、あるいは次男、三男は納める税金が高くなる。そういうものを作つておいて、決して長子相続を奨励するのではありませんと大蔵大臣主税局長が口でおっしゃっても、税額が現実に違つてくるのですから、納める方とすれば、長子相続の方に持っていった方が有利だ、自然こう考えてこざるをを得ないと思う。おかしいじゃないですか。いかにそうではありませんと言われても、それぞれの人が現実に納める税金が現行よりも高くなるという事実、これは動かすことのできない事実なんです。それでもって、そうではありませんと幾ら強弁されても、それは通用いたしません。これは、大蔵大臣の御判断を願います。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税の負担割合がどういうふうになるかという点については、先ほど主税局長から説明がありましたが、家督相続というような、そういうふうなものの考え方というものは、むろん税というようなことについても考慮を払うべきでございましょうが、これは、もう少し大きな見地から考えるべきことでありまして、今日、今後においても、昔のような家族制度が復活するというようなことは、私は、今日のこの民主主義の進行状況から見ましても、とうてい考えられぬことだし、またそういうふうな政治意識というものが、こういう方面にもあるというようにも思わない。     〔井上委員長代理退席、委員長着席〕 特殊な方面は別ですけれども、大勢として、こういうこことは私は心配は要らない、かように考えているわけであります。
  50. 石村英雄

    ○石村委員 そんなことはありませんと口で言いながら、実際はそのようなことをやつていらつしやる。好意的に考えれば、おそらく今度の相続税の改正一つのねらいは、農村なんかの相続の問題を相当慎重にお考えになつたのではないかと思います。田を一町か一町五反作つている、それは、あまり分割するわけにもいかぬという問題もございましょう。しかし、それはそれとして、別の方法で相続税を軽くする方法はあるわけなんです。今度のような方法によらなければ、絶対にできないというものではありません。妻が相続する場合の税金を高くするとか、あるいは次男、三男が、民法の精神によって均分相続なり何なりをした場合に、それが高くなるとかいうような方法をとらなくても、わずかな一町五反程度の農家の相続の問題の、相続税の関係を解決する方法はりつぱにあると思うのです。そういう方法をとらないで、今度のような方法をおとりになつたのは、口の先では、そんな非民主的なことは考えておりませんと言いながら、実際は、非民主的な方向日本を持っていくという意図がある、こう悪く言えば勘ぐらざるを得ない、結果においてそうなるわけですから。あなた方は、そんな意図を持っていらつしやらないかもしれません、意図を持っていらつしやらないとすれば、そういう結果の生まれない方法改正を立案されたらどうですか。結果においては、そう言わざるを得ない。大蔵大臣は、民主的な方だそうですから、決してそんなことはお考えになっておるとは思いませんが、ところが、おやりになることは非民主的なことになる。これより方法がないかといえば、そうではありません。りつぱに方法はあるはずなのです。これは、一つ御再考願いたいと思います。
  51. 原純夫

    ○原(純)政府委員 大事な点でございますから、重くなる軽くなるという点についての御非難に答えておきたいと思います。第二例のような一億五千万という財産を残して死んだ方の財産を配偶者が一億五百万も相続するというのは、私どもは非常に異例だと思うのです。子供さんがそこに四人もおられるのに、四人はわずがに四千五百万円しか取得しない、これは非常におかしいと思うのです。ですから、そのおかしいところを直さなければいかぬというので、今度の税法改正をお願いしておるというわけです。そのおかしい結果、そこにありますように、一億五千万の総財産に対しては、総額は四千二百二十万になっておる。ところが第一例のように、長男が一億五百万とる。これがいいか悪いかいろいろ御判断があると思いますが、こういうことは、今の社会ではよくあり得ることであると思います。そして、決してこれが封建的な古いやり方だとも言い切れないと思います。この第一例の場合は、総税額が七千四百万円であります。先ほどのに比べて三千二百万も多い、八割くらい多いことになるのです。第二例が、税金が安くなるためにこういう分割をする、あるいはしたことにするというような力が働いてないという保証があるでしょうか、私どもは、その保証はきわめて弱いと思うのです。そういう配慮のために分割が影響され、または申告が影響されるということは、非常によろしくないと思うのです。私どもは、むしろそういう分割の仕方については、税法は中立であった方がよろしいという考え方をとりました。その結果、お願いしているような、この法定相続人による法定相続分への分割を前提として総税額をはじき出すというようにいたしておるわけで、これらの資料から、今度のは長子相続を結果するようにおっしゃるのは、何としても私どもはそうですとは申し上げられない。逆に、それはむしろ現在の制度が、社会の実際の気持よりも分散相続を促進している、その方がよろしいのだという気持でそれをやめるのはけしからぬとおっしゃるなら、それはそれで一つの御議論ですが、実際は、そういう現行法が、実際の気持よりもさらに分散させる、事実上の分散よりもさらに分散を促進するという力が働くのを、それを私どもはやめたい。それはけしからぬという議論ならば、それは御議論でありますけれども、私どもは、その御非難に対しましては、何といいますか、それは御非難されるべき筋合いではないというふうにかんがえて御提案申し上げている次第であります。
  52. 石村英雄

    ○石村委員 石野君の質問もあるようですから、私は一応保留したいと思います。一億五千万円のこの例だけを私が取り上げて言っておるようですが、そうではありません。私が計算したのは五百万円、一千万円、あるいは二千万円、その中で、いろいろ相続の仕方を分けて計算してみると、やはりあなたの方でお出しになつた、一億五千万円に現われておると同様な傾向が出ておるわけなのです。それで申し上げておるわけです。それから、あなた方は、実際の相続でない、相続税の関係でそういう仮装の相続をやる、これはけしからぬ、そんなことの起らないようにする、こういう御意見なんでありますが、仮装の相続だというのは、さっき申しました農村等の例、あるいは日本の今までの長い間の因襲にとらわれたことによる結果なんです。新しい憲法、新しい民法の精神に沿つた相続が行われていないという事実なんです。ここは、政治として考えることなんです。今までの因襲をそのまま認めて、それを助長するという方向は、政治として私はとるべきではないと思うのです。むしろ新しい政治理念に基いた税法を作り、今までの悪い因襲は改めさせる方向税法も同時に考えていかなくてはならない。現実はまだそこまで完全にいっていないかもしれない、世の中にはまだ家督相続という古い観念にとらわれた方が多いかもしれない、しかし、それは間違つておるということから、新しい民法ができておるわけなんです。これによって税法も作らなければならないと考えます。しかし、これは、今申しましたように石野君の大蔵大臣に対する質問があるそうですから、保留いたしまして、私は今日はこれで打ち切ります。
  53. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ちょっと議事進行について……。所得税法案、それから租税特別措置法案については、今明日中に本委員会質疑打ち切り、採決に運びたいということでありますが、私は、数日前から大蔵大臣に、この両法案に関連して質問を要求しておりますが、まだその時間を与えられておりません。承わりますと大蔵大臣は午後参議院の予算委員会の方にお回りになるそうですが、どうしてもきようじゆうに私は質疑をいたしたい。またできるだけ早く質疑終つて、採決に持っていっていただきたいと思います。ついては、大蔵大臣の都合を一つお聞きして、どうしても質疑のできるように、委員長のお取り計らいを願いたいのですが、その点、どうなりますか、お聞きを願います。
  54. 足鹿覺

    足鹿委員長 奥村君に申し上げますが、大臣は参議院の都合等もあるようでありますので、あとでよくお打ち合せをいたしまして、御要望の意に沿うように取り計らいます。石野久男君。
  55. 石野久男

    石野委員 それでは、簡単に大臣にお尋ねいたします。今度大臣が行いました四法案減税の問題ですが、この減税については、大体自然増収が一千五十一億円ある。その他のものを含めて二千億の自然増の中で、今度は減税をやるということにしてこの法案を出した、予算を組んだ。そこで大臣考え方政府考え方というのは、この減税は、一般の国民に、自然増を返すというような意味を含めて行われたものであろう、こういうふうにわれわれ理解するのですが、そういうふうに理解されてよろしゅうございましょうか。
  56. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体さような考えをいたしております。
  57. 石野久男

    石野委員 そういう考え方であるとすれば、先ほど来いろいろ同僚議員の質問にもありましたように、大体われわれはこれを審議するに当つても、この減税は、一般の国民にそのまま恩恵が潤うものである、こういうふうに考える。従って、減税即国民への、消費大衆に対してそのまま恩恵がいき、あるいはまた相続税に関連しては、相続をする人々に、そういうことが従来の関連の中からずっと及んでいくものだ、こういうふうに考えます。ところが、たとえば酒の税金にすれば、減税額だけは消費者には及ばないし、また相続の問題については、なるほど総額においては同じかもしれませんけれども、その内容においては非常に不均衡があり、われわれの予想外のいろいろな事態が出てきておることは、ただいま石村委員からも質問があった通りであります。こういう事実は、国民に対して、またわれわれに対しても、政府減税の趣旨をはき違えさせるものであり、もししいて言えば、政府減税の趣旨というものは食言である、大蔵大臣減税すると言う趣旨とは、全く違つた内容を持つものであるというふうに考えますけれども、それについて、大臣はどういうようにお考えになっていらつしやいますか。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 仰せのように、減税いたしました場合におきまして、これが直接国民にとつて税負担が軽くなる、こういうふうに持っていく、これは異存ありません。しかし、また税制を改革する場合は、従来不公平であったとか、おもしろくなかった点は、同時に是正さるべきだ、かように考えております。
  59. 石野久男

    石野委員 公平であるとか不公平であるとかいう問題は、いずれまた考えなくちやならない問題だと思います。しかし、減税するということは、国民に対する減税であるだろうと考えるのです。特に酒の税金などを減税するということは、普通の概念からしますると、当然消費者に対して減税が行われる、こういうふうに考えるわけなのであつて、またそういうふうにすることが、政府も国民に対していい場をとることになるであろうし、与党の側も、それを要望しておるのだろうと思う。社会党は、減税はそのまま消費者に及ぶものと考えてきておる。そういうようなことが、中間で何か間引きされたような形で小売価格に及ばないということは、先ほど井上委員からもきつく質問がありましたように、これは、政府の意図する考えとは違うだろう、政治の理念とは違うだろうと思うのです。この点、大蔵大臣に真剣に考えてもらうよう、先ほど横山委員から再考をあなた方に促しておるわけですから、私は、いま一度あなた方の再考を促した上での論議をする場を持ってもらうことを期待いたします。そのためには、ぜひ一つ、こういう減税を通じて国民に食言するというようなことは、やらないでほしいと思うのであります。  それから、いま一つ相続税の問題について、しばしば原主税局長からは、現行の相続税のなにではずいぶんと弊害を生ずるような分散相続が行われる、こういうことを言われておるわけです。こういうことは、石村委員からも言われているように、憲法や民法の精神からいって、課税すべきあなた方の方でそういう想定を置くということに、第一間違いがあるとわれわれは思う。そういう想定の中で税を設定するということになると、憲法や民法の精神というものを踏みにじつた形で大蔵省は税の設定をすることになって、非常に大きな問題を生んでくると思います。  こういう問題について、大蔵大臣はどういうようにお考えになるか、この二点を、はっきりここで御答弁いただきたい。
  60. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、他の法律で規定されてある目的を達成しようとしておること、そのことがひとり税法によってどうというわけにも参りませんが、しかし、やはり法律全体の体系として、できるだけ税法においても、他の法律の趣旨に沿うていくということは必要であると考えております。
  61. 石野久男

    石野委員 税法においても、他の法律とよくにらみ合せて処置したいということであるならば、現行法律では、財産の相続などは均分相続することになっておるのであつて、大体この課税のような、今日この改正法に基いて主税局が算定しているようなものが出てくるはずはないのです。そういうことは、全然憲法や民法の精神を踏みにじつたことになる、違法行為ですよ。そういう問題について、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  62. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、決して、たとえば憲法とか民法に違反しておるとか、その精神をじゆうりんする、そういうふうに今後の改正がなるとは考えておりません。先ほど御答弁した趣旨は、そういうふうな他の法律との関係もできるだけ調整をしていかなければならぬが、しかし、他の法律で達成しようとする目的税法でひとり達成することも困難、また税法については、特殊な税の上の立場のあることも考慮しなければならない。要するに、でき得る限り調和を保つていくべきだ、これは異存がない、かように答弁いたしておるわけであります。
  63. 石野久男

    石野委員 あなたの今の答弁は、私の質問の要旨に対して答えていないのですよ。私が質問しておることは今日のこの改正された税率の問題でいきますと、しばしば石村委員からも、数字をあげて論じておるように、現行で課税される相続人の中の配列の状況、あるいは負担状況と非常に違つてきておるわけです。ある部分が非常に軽くなり、ある部分が非常に重くなるという面で、特に石村氏か言われておる長子相続の傾向を持つような配分が出ておることは、もう数字の上ではっきりしておるわけだ。だから、その数字の上ではっきりしておる問題を否定するなら、数字を直さなければならぬ。数字を直してくればわれわれは理解するけれども、その数字が、依然として今このような、あるところには重点がかがり、あるところには非常に軽くするというような数字では、今の答弁では、われわれは納得できないのです。この点について、政府がもっと考えるなら考えてよし、ここで答弁ができないなら、考えてもらつてよろしいのです。その点については、横山委員から、税の問題について特にもう少し考嘱すべきだという意見も出ておるわけだから、あなた方の方で考慮するというなら、その時期までわれわれはしばらく持つ。しかし、そういうことでなく、ここでどうしてもあなた方の方の意見を主張しようとするならば、具体的にこの数字の問題について、大臣から説明してもらいたい。
  64. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、たとえば家族制度を復活するという意図を持って、その家族制度復活に最も有利な立場にある人の税を優遇する、そういう意図は決して持っておりません。これは、やはり相続の仕方等によって、税の負担が異同があると考えるのでありますが、具体的な金額等については、主税局長から答弁いたさせます。
  65. 石野久男

    石野委員 大臣は、決して長子相続の意図を持っていないとかなんとか言うが、私も、すぐ長子相続ということにいかなくてもよろしい。この改正法案の率によりますと、現行と率の違いが出てきておることは間違いないのです。これは、数字の上では、六千百六十六万という減税の総額は同じなんですよ。しかし、この中で配偶者、甲、乙、丙、丁というものの負担率は、ずっと変つてきておることは事実なんです。だから、こういう負担率を変更しておる改正法案と現行法との規定の違いというものの中に、やはり今石村氏がしばしば質問しておるような内容があるのじゃないかということを言っておるのです。なぜそういうことを変えるのか、税を低くするなら、総体的に低くすればいいじゃないか、なぜそういうような内容変化をさせるような減税の仕方をするのかということを、大臣に聞いておるわけです。
  66. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 数字で具体的に説明した方がよろしいと思いますので、主税局長から答弁いたさせます。
  67. 石野久男

    石野委員 こまかい内容の問題については、先ほど石村委員に答弁したのと大体同じだと思うので、伺わなくてもいいと思うのです。大臣にお聞きしますが、減税をする場合、その減税は常に国民に潤うようにということが本旨だろうと思うのです。もちろん国民の中にも、いろいろな階層があります。その階層の中で、ある一部分だけに減税の恩典がいくというようなことについては、われわれがここでこの法案審議をし、あるいはまた減税を国民に及ぼそうとするときに、やはり疑義を持たざるを得ない。先ほども尋ねておるように、酒の税金の場合に、その減税一般の消費大衆にそのまま及ばないというときには、中で間引きされているわけです。その間引きされているのは、先ほど来言っておるように、酒造家のところにいっている。その酒造家の中にも、大と小があつて、しかも大の方にぐつとウエートがかかるというような間引きの仕方をしているわけです。今度は相続税の中においても、やはり同じように、相続する人の中に、また甲、乙、丙の差がある。こういうようなことを減税の中でやるならば、別途の法律の形で基本精神をきめるべきです。税法自身の改正においては、むしろそういうことをしないで、淡々と国民に対してその減税が潤うようにやるという考えを大臣は持っていないのかどうか、この点をはっきり聞いておきたいと思います。
  68. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 減税した場合に、その減税が国民に直接に響くといいますか、負担が軽くなる、こうあるべきことについては、異論がないことは先ほど申し上げましたが、同時にまた、従来の税負担のあり方に適当でない点があれば、税制改正の場合に、これが是正される。従って、前の負担とは割合が異なるものが生ずるということも、私はやむを得ないといいますか、あるいは当然なことであろうかと思うのであります。  それから酒の問題ですが、これは、酒の価格を構成する要素に何も変化がない、従って酒の価格を上げる必要はなしという立場に立てば、これはまた別個であります。しかし、また酒の価格は、やはり上げる必要がある、こういう条件があるという認識に立ちますれば、今回の場合においては、減税されることと、酒の価格構成の変化からくるその関係とが競合いたしまして、同時に起きておるという意味において、酒の価格は税を含めてきめておりますから、それならここで一緒に価格をきめよう、こういうことだけでございまして、その場合において、減税の分は、当然それだけ大衆の負担軽減となっておるわけであります。しかし、他面において、やはり酒の値段を上げなくてはならぬ理由が生ずるから、その意味において、小売価格の上る分が生ずる、こういうようなことになるわけで、観念的には、仰せのように分けて、少しも差しつかえないのでありますが、実際の扱いとしては、税を含めて価格をきめるから、何も分けなくても、税制として一本にきめてもいいじやありませんかということをお願いしているわけです。
  69. 石野久男

    石野委員 もう時間がございませんので、私は質問を保留いたしますが、ただ、このことだけは一言申し上げておきたい。それは、減税ということで政府は施策を出し、それを国民に訴えておるわけです。国民は、それをまともに受けいます。にもかかわらず、今減税と酒の価格構成の問題とをかみ合わせて、ここで一緒にやっていくということは、非常に不明朗なものがある。それならば、価格の構成の分についてはこれだけのもの上げるのだということを明確にしておきませんと、これは、やはり国民を為わるもはだはだしいことになる。だから、こういう点は、政府としては明確にすべきである。今ここで、政府ぶせつかく税の自然増の中からこれだけの減税をするというときに当つては、やはりその線をはっきり出すべきであると考えております。本案の審議に当たつては、そういう意図でこれを審議しておるのでありますから、国民を偽わらないように、政府が国民に対して食言をするということは、もってのほかでありますから、この点をよく考慮して、もう一度委員会大臣からの答弁を承りたいし、政府の施策をはっきりしていただきたいと思います。私は、これで終りまして、質問を保留しておきます。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後二時三十五分開議
  71. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。連合審査開会申し入れの件についてお諮りいたします。  ただいま農林水産委員会において審査いたしております酪農振興基金法案について、同委員会に連合審査会の開会を申し入れたと存じますが、御異ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  なお連合審査会開会の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。     —————————————
  73. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正法律案相続税法の一部を改正する法律案及び関税定率法の一部を改正する法律案の六法律案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。石村英雄君。
  74. 石村英雄

    ○石村委員 まず関税定率法改正案についてお尋ねをいたしますが、これは、従来から毎年のように、三月末になると期限がくるからというので、減免制度を続けられていらつしやるようですが、まず重要機械類について、依然として一五%ないし三〇%の免税を継続しようとしていらつしやるようですが、現在日本で、そういう機械が全然生産できないという前提に立っておるわけなんですか、これは、通産省の局長の方にお尋ねいたします。
  75. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 機械類の輸入は、現在は、国産で生産可能なものは輸入外貨を割り当てておりません。従って、輸入しておりますものは、すべて精度、能率、あるいは納期等の関係で国内では生産できないものでございます。特別に重要産業に使われます設備的な機械の中で、企業のコスト低下、あるいは能率増進にきわめて役に立ちますものを限りまして、政令の別表で免税をしております。これは、そのつど改正いたしておりまして、当該の機械が到着いたしますころを見計らつて追加し、必要なくなれば削除するということで、随時追加削除等を行なっております。大体そういうことでやつておりまするが、遺憾ながら日本の機械工業の現状では、なかなかこの制度を廃止するというところまでに至りませんで、だんだんに指定品目等は減少の方向にありまするが、かなりまだ残つておるというような実情でございます。
  76. 石村英雄

    ○石村委員 年々入れかえが行われておると思うのですが、しかし、関係方面に聞いてみますと、必ずしも日本でできないというわけではないものがずいぶん入れられておるようです。それは、あるいは見方の相違かもしれません。通産省としては、まだ精度が落ちておるとかいうようなことで、やはりそうしなければならぬというお考えかもしれませんが、大体通産省としては、機械工業に対してどういうお考えを持っていらつしやるのかと思うわけなんです。今日日本の雇用関係におきましても、機械工業を発展せしめることが、雇用の吸収でも最も有効なものだ、こう伝えられておりますが、根本的に通産省は、機械工業の発展策としてどういうようなことを考えていらつしやるか、ごく根本的なことを御答弁願いたいと思います。
  77. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 これは、あるいは大臣からお答えするのがほんとうなのか存じませんが、私事務的にやつておりますことを申し上げますれば、大体大別して二つになる、こう思っております。  一つは、日本の機械工業の一番の弱点といわれますのは、機械の基礎的な部分が弱い、たとえば工作機械とか、あるいはベアリングとか、歯車とか、バネ、ネジというような共通な機械要素を生産します部門が、精度において劣つたり、あるいはコストにおいて高かったり、あるいは世界的に競争ができるような性能度のものを入れなかったりというような面が非常に多いようであります。そこでそういう面に対しましては、一昨年の国会でありますか、機械工業振興臨時措置法という法律をお願いいたしまして、それに基きまして、各部門ごとに合理化計画を定めまして、たとえば工作機械のこういう旋盤のベッドの精度は、千分の一ミリメートル以下にするとかあるいは回転数は、一分間三千回転以上というふうな合理化の目標を定めまして、それに何年計画で到達するか、それのためにはこういう施設を整備する、あるいはこういう方面の共同研究を行わせるというふうなことを、一々合理化計画をきめまして、目下その計画の実施を督励して、これにはこういう計画をきめますほかに、所要の設備投資等につきましては、開銀資金をあっせんする、あるいはそれに必要な設備機械は、場合によっては、国産でできないものは輸入する、あるいは競争品種の輸入は制限するという形でやつております。  それからもう一つは、今の行き方とはちようど逆といいますか、需要の方から振興をはかるという方法で、御承知のように、多量生産の組み立て方式の機械類の生産を振興いたしますことは、これは、この及びます分野が非常に広いものですから、機械工業一般の精度向上、あるいは規模拡大、雇用の増加といろいろあります。一番いい例は自動車であります。自動車工業は、御承知のように、非常に広い分野を持ちました組み立て工業でございますから、この工業を振興させますことは、それだけ機械工業全般に潤うわけです。そのほかに、たとえば造船でありますとか、あるいは飛行機工業でありますとかというふうな、アッセンブリー方式の組み立て工業の振興をはかつております。あるいはちょっと違いますが、電子工業あたりも大体そのような一部になる、こう思っております。  大体そういう形の二つの面から振興をはかつておりまして、極カ努めておりますが、何分日本の機械工業は、アメリカあるいはイギリス、ドイツあたりに比べまして一番違いますのは、やはり全体の仕事の量が少いことが一番でございます。これは、ひとり国内の投資活動が低いということだけではございませんで、やはり輸出にもあまり出ていないということが一番問題だと思います。需要促進の方法としまして、やはり輸出振興ということも、機械工業の発展のために効果があることでございますので、特殊の輸出振興措置をとつておることは、御承知の通りであります。そういうことで、全体の仕事のボリュームをまず大きくする、それから個々の中の技術水準なり、あるいは企業関係者の腕を上げていくということも、あわせてやつておるわけであります。大体簡単でありますが、まとめて申しますればその程度でございます。
  78. 石村英雄

    ○石村委員 ただいまの御説明の中にありました需要の問題、つまり日本の機械工業がまだまだ幼稚だという大きな理由は、やはり販路が狭いということが、非常な影響を与えておるのではないかと思います。それとともに、また日本の関係業者が、外国の品ならいい、こういう昔の先入観があつて国内でりつぱな品ができても、外国の品でないと使わないという傾向も同時にあると思うのですが、その販路を広くとるという意味で、輸出も必要でありましょうが、同時に国内市場の拡大ということも、もちろん考えなければならないと思う。それが、この関税定率法によって免税をされておる。全然日本にできない品というなら、一つ考え方として、免税も必要かもしれませんが、大体似たり寄つたりなものができておるというときに、一五%ないし三〇%ですか、三〇%の関税を免税にしてしまつて、そうして競争させるということは、非常に無理なことをさせるのではないか、そのことが国内市場を同時に狭くしておるのじゃないか、こう考えられるわけでございます。このように免税をする必要が果してあるか、類似の品があり、また全然日本でできていない品にいたしましても、重要機械だからといって、免税の必要があるかないかも問題だと思う。それほど精度のいい、能率の上がる機械なら、それを使う産業が関税をちゃんと払つて輸入しても引き合うはずだと思う。それを、特に一五%から三〇%という大きな免税をする必要が果してあるかないか、相当疑問だと思う。昨年の輸入の急激な増加の中にも、機械の輸入が大きいウエートを占めておつたと思うのですが、今日のように技術革新とか、オートメーションだとかいうことになれば、重要機械類の輸入は、自然にふえていくと思います。資料によりますと、これによる減税額が約三十五億ですか、三十五億というような巨大なものになっておるようですが、そうまでして輸入しなければならぬものであるかどうか、これは相当疑問じゃないかと思う。関税をかけて当りまえのベースで輸入させて仕事をさせても、それほど優秀なものなら、りつぱに企業としても採算がとれるはずだと思うのですが、通産省は、やはりこういう大きな免税までしなければどうにもならぬような、そんな機械なんですか。
  79. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 これは、いろいろ御意見も伺いましたが、たとえて申しますと、最近電力会社で用いておりますいわゆる新鋭火力というような問題もある。大体類似のものができるとか、あるいは間に合うというものでは、実は機械関係のものというのは、いわば勝負にならないわけです。相当精度を持ち、かつ信頼性のあるものというのは、まず必要なわけであります。当初、たとえば東京電力の十二万五千キロの火力発電、あるいは関西電力の十五万六千キロの発電、その後十七万五千キロとか、あるいは二十六万に上っておりますが、こういうふうなものは、最初の一号機、あるいはニ号機と、いうものに、とうてい国内ではできないものであります。さりとて、類似のものももちろんございませんし、あるいはその下の小さいものでは、能率が悪くてとうてい話にならぬわけでございます。従って最初ナンバー・ワン、あるいはナンバー・ツーのものは輸入しまして、そうして、技術提携によって、二号機、三号機から国産化をはかつて参る、こういうふうな指導をしておるわけであります。その税額等は、発電機あるいはタービンの場合では十五%がありますが、これまた相当な額になりまして、これが固定資産の償却、あるいはその金利ということで、電気料金に及ぼす影響も考えられます。逆にいいますれば、そういうふうなコスト上昇の要因が、せつかくそういう機械を入れたコスト低下のメリットを相殺することになるわけであります。従ってそういう重要な、かつ高能率、合理化に役立つものにつきましてはやはり免税しまして、せつかくの機械のいいメリットを生かし、その結果電気料金等に与えます影響を緩和するという形が、きわめて望ましいかと思ってやつておるわけであります。もちろんいつまでもそういうふうな機械の輸入を続けるということは、われわれとしても、外貨の問題、あるいは国内の機械工業の問題から、これはもう問題になることでありますから、極力技術提携等によりまして国産化をはかつて国内の生産を大きくして参ろう、こういうふうにやてつおるわけでございます。
  80. 石村英雄

    ○石村委員 そうおっしゃっても、だいぶ前からこういう免税をやつていらつしやる。それほど能率の上るいいものなら、免税をしなくても、企業が採算のとれないはずはないと私は思う。電力なんかは、それで電力料金が上ればという話ですが、国全体から見れば、一方で関税を取つていないということで、やつぱりその分はどこかで補いがつけられておる。電力料金が上るという面か、あるいはほかの面か、とにかくどこかで補いはつけておるというようなことで、それは国全体から見れば同じことだと思う。むしろそういうことによって、国内の機械工業が発展できないことになるんじゃないか、そのマイナスの方が大きいんじゃないか、こうわれわれは考えるわけなんです。これだけの免税をしなければ、その企業というものは、それを輸入できないものであるかどうか、そこに疑問があると思う。どうしてもこの関税を免除しなければ、こういう重要機械類は輸入できないほどのものなんですか、見方によれば、それほど性能、能率の悪いものであるかということなんですね。免税をしなければ採算がとれない、とれるほどの能率を上げ得ないものであるかどうかということです。
  81. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 これは、先ほど申しましたように、一企業の採算の問題ではないわけでございます。せつかくそういうふうな高能率の機械を入れて、コスト低下、あるいはひいては販売価格の低下、あるいは高騰抑制をはかろうと思う意図が、課税のために阻害されるというのでは無意味でございます。御説のように、課税をして輸入したらいいじゃないか、あるいは輸入をしなければ、国内の機械工業が保護されるというお話でございますが、これは、そう簡単には参りません。先ほど申しましたように、だんだんに世界の機械のレベルは上って参りますので、日本のようにおくれて参りましたものは、だんだんにこの国内の国産化をはかつて参る、それには、先ほど来ちようどいい例を申し上げましたが、一号機、二号機といったものは免税輸入して、それと並行しまして、技術提携をしなきゃいかぬわけです。そうして、国内の機械工場でそういう国産化をはかつて参る。現に電気の機械、火力発電におきましては、十七万五千キロまでは、そういう措置で現在国産化もなっております。これを輸入しなければ、いつまでたつても十七万五千キロの国産化はできないわけであります。そうして入れまするからには、相当巨額の税負担にもなりまするから、やはり料金等に及ぼしまする影響を避けるために免税する。しかし、それもいつまでも免税するわけではありません。やはりわれわれのやり方としましては、同種のものを、引き続いていつまでも免税措置をしていくことはしておりません。そのつど追加訂正しておりまして、いわばトップ・レベル的なものしか免税をしていないというのが実情でございます。具体的な個々の機械につきまして、そのつど大蔵省の税関部の専門の方とやりとりをしてきめているわけでございまして、非常に高いレベルのものであります。
  82. 石村英雄

    ○石村委員 岩武さんは、しきりに新鋭火力とかなんとか、一つの特殊な例を大きくおあげになるのですが、この重要機械類は、一体何種類くらい免税になるのですか。
  83. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 これは、品目のわかつているものはいろいろございますが、現在約二百品目余りでございます。大体の傾向としましては、この数年来のあれを見ておりますと、品目は減つていく方向に向つております。先ほど来申しましたように、世界的にすぐれたものが次々とできて参りますので、全然皆無というわけには参らぬことは、御承知の通りであります。
  84. 石村英雄

    ○石村委員 二百何ぼとかあるそうですが、これは、毎年この定率法の改正が出て、いつも同じようなことを私は言うのです。こんな重要機械類に免税なんかしなくてもいいじゃないか、日本国内の産業の発展をむしろ阻害するんじゃないか、こういつも申し上げておるのですが、そのとき同じような御答弁なんです。やはり毎年差しかえるのだ。ところで、機械工業会とかなんとかいうところで聞くと、中には、なるほど日本で今のところさつぱり見込みのないというようなものもあるそうですが、相当多数のものが、こんなものは何も免税しなくても、日本でりつぱにできますという、当事者が言うのですから、あるいはうそかもしれませんが、少くともそう関係者は言っておるわけです。大蔵省の方やあなた方の方は、これはできませんと、こうおっしゃるのですが、それも、あなた方免税せられる当事者のおっしゃることで、私は機械工業の専門家でないから、どちらがほんとかうそか、それはわかりませんが、やはり相当見方の相違というものがあるには違いないと思う。大蔵省あるいはあなた方通産省の方で、これは免税すべきだというようなものが、見方によれば、いや免税しなくてもいい、日本でりつぱにできるはずだというものも、必ずしもないとはいえないんじゃないかと思う。結局こういう重要機械の免税ということは、大企業にただ免税という恩典を与えるだけで、日本国内産業自体に対しては、積極的に何らいい影響はないんじゃないか。なるほどこれを輸入してやる企業は、免税になるほど助かるとは思います。しかし、国全体の立場から見ると、それが果して妥当であるかないかということは、相当問題ではないかと思うのです。重要機械類については、それぞれ年々差しかえをしておるということですが、大蔵省なり通産省は、国内産業のことをもう少しお考えになって、あなたの方で、まあこれは少し悪いが、国内で大体できるんじゃないかというようなものは、勇敢に免税をやめるという措置をおとりになつたらどうかと思う。精度がどうだとかなんとかいったつて、それは見方の相違で、どつちがどうだか、実際はわからぬものじゃないかと思う。だれが見ても、いよいよどうにもならぬというものなら、われわれは関税をかけた方がいいとは思いますが、あなた方の論法に従って関税を免除するにしても、それは、もっとしぼるべきではないか、二百何十品目なんかにする必要はないんじゃないか、こう考えるわけです。通産省は、むしろ機械産業の振興に大いに努力していらつしやると思うのですが、もっとその点の配慮についてのお考えはありませんか。
  85. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 私自身も、実は機械工業の振興をはかる立場にございます。毎年々々輸入申請になる機械類を、担当の専門家の諸君が、一々検討して押えておるというのが実情でございます。ただ申し上げたいのは、輸入制限をするとか、あるいは課税をすれば、自動的に国内の機械工業が栄えるというものではございませんで、やはり先ほど申し上げましたように、あわせてそれを国内で培養する措置が要るわけでございます。そういうふうな措置の振興状況とにらみ合せてやつておりますが、どうも技術の世界の場合は、大体これでがまんしろということは、設備機械の場合には言いにくいようでございます。これは、精度なりあるいはいろいろな規格といった問題は、相当こまかいところの差が問題になりまして、これでがまんしろというわけには参りません。やはり所定の性能を持つたものを備えつけることが必要でございますので、できるだけ輸入を抑えておりますが、やはり要るものは入れる、あるいは入れても、早目に国産化するようにその措置を講ずるというふうな指導をしておるわけであります。
  86. 石村英雄

    ○石村委員 私の言うのは、何もそういう外国の品を輸入するなといってるのじゃない。免税までして輸入を奨励しなくてもいいじゃないかということを言っておるわけです。みなで三十五億円も免税をする。それほどまでして輸入の奨励をしなくても、ちゃんと関税は関税でとつて、そうしてやればいいじゃないか。国内の機械工業界も、それに応じるだけの努力もしなければなりません。これは当然なことだと思うのです。しかし、免税という形で奨励をしてまで、輸入をする必要はないじゃないか。各企業が、自分のペースに合せて輸入していけばいいので、国内品を使うか、海外の品を使うか、それはそれぞれの企業判断でいいことだと思う。こういう免税というフェ—バ—を与えなくてもいいのではないかということを強調しておるわけです。
  87. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 御参考までに申し上げますが、免税輸入になっておりまする機械類の輸入額は、全体の機械の輸入額の約四割くらいになっております。これは、先ほど申しましたように、火力発電機械のような大きなものもございますから、やはりそういうふうな税負担が及ぼす影響を考えたわけでございます。別段われわれの方でも、何でもかんでも免税しておるというわけではございませんし、また輸入の方も、そういうふうなことで極力しぼつております。やはり国内で生産可能なものは決して入れておりません。
  88. 石村英雄

    ○石村委員 どうも私の申し上げるように、免税してまで輸入しなければならぬかどうかということが、ただいまの御説明では納得できないのです。免税にしなければ、その機械を輸入して使用することができないという状態であるということは、どうもわれわれ、まだ納得できないのです。これは、こちらが専門家ならもっと詳しく具体的に聞きますが、不幸にして専門家でないから聞けませんので、一般論しかできないのでありますが、今度お考えになっておる免税の品目を、用途なり何なりに分けて、資料として御提出願いたいと思います。この前の分と比較してお願いいたします。
  89. 足鹿覺

  90. 奧村又十郎

    ○奧村委員 税制第二課長にお尋ねいたしますが、近ごろ、酒類のマル公をいつまで存続するのか、あるいはぼつぼつ廃止するのかというような意見が出ておりますが、大体、今マル公を指定しておるのは、どの法律に基いておるのですか。
  91. 吉国二郎

    ○吉国説明員 現在のマル公は、御承知のように物価統制令によって設けられておるものであります。
  92. 奧村又十郎

    ○奧村委員 物価統制令というと、あれはたしか占領中の法律であります。物価統制令がいまだに存続して適用されておるというのは、これは、酒類ぐらいのものだと思うのですが、ほかに何かありますか。酒類だけなら、酒類業団体法というせつかく本委員会で作つた法律もあるんだし、酒類業団体法に基いて、自主的に価格をきめる規定もあるんだから、それでいってもいいと思うのですが、どう考えますか。
  93. 吉国二郎

    ○吉国説明員 お説の通り、酒類業組合法におきましても、価格の規制ができることになっておりますが、御承知の通り、酒類業組合法におきまする価格の規制は、酒類業の運営が安定を欠いて、そのために酒税の滞納が生ずるおそれがあるといったようなときに、酒類業組合におきまして、自主的にその事態を解決するために設ける価格でございます。公定価格は、御承知の通りに、いわば消費者の面から価格を調整して、不当なる価格の出現をはばむという性質のものでございます。現在では、御指摘通り、公定価格を設定している品目はきわめて少くなっておりますけれども、酒類は、御承知の通り、一応一方に非常に高額な税金を課されておりますので、価格をかなり調整する必要が、消費者の面からもあるわけです。もちろん一部の酒類につきましては、その必要が漸次薄れて参っておりまして、すでに昭和二十五年におきましては、雑酒についての公定価格制度を廃止いたしております。実際上の必要、このような消費者保護、また同時に一種のいわば酒税の確保の面からも、これがかなり有力な作用をしておりますので、そういう面で漸次必要が薄れてくれば、公定価格というものは、酒類からも順次はずしていってもよいという性質のものであるとは思いますけれども、現在の段階では、はずれておるのは雑酒だけという格好になっております。
  94. 奧村又十郎

    ○奧村委員 物価統制令というのは、物価統制令のもう一つ基準になる国家総動員法かなんかがあったはずなんです。(「物価統制令を法律にする法律があるんだよ」と呼ぶ者あり)だから、物価統制令の基準になる法律は、たしか国家総動員法だと思うのですが、そんな国家総動員法というものは、戦争が済んだ今ごろには生きておるはずはないし、またそんなものをもとにした物価統制令というものの精神は、新憲法時代に合いはせぬ。今お話しの酒税の確保、非常な高率の酒税を負担しているからというのなら、その酒税を確保するために酒類業団体法というものがある。業界の安定というのはあとからつけたので、むしろ酒税の確保のためにあの酒類業団体法がある。そうしたら、もういいかげんに物価統制令という戦前の遺物のようなものによらないで、酒類業団体法に基いてそれをなさったらどうですか。酒以外に、物価統制令にいまだに基いているマル公というのがあるのですか。
  95. 吉国二郎

    ○吉国説明員 先ほど申し上げましたように酒類業組合法におきまする価格の規制と申しますのは、一定不況条件と申しますか、そういう条件が必要でございます。その条件がない場合に、極端に言えば、たとえば何らかの事情で酒類が非常に不足したといたしますと、価格が騰貴いたします。そ騰貴を抑えますために酒類業組合が物価の規制をするのは、おそらく困難ではないかと思われます。そういう方面で、おのずから価格規制にも一つのワクが酒類業組合の方にはかぶせられている。そういう意味で、現在のマル公が果しております役割は、必ずしも酒類業組合法の規定からは直ちに出てこないという面がある。もちろん先ほど申し上げましたが、現在では入浴代金とか、ごくわずかなものしか統制令による公定価格は残つておりません。漸次実効は少くなって参っておりますが、米、酒といったかなり日常生活に大きな関係を持っておりますものにつきましては……、(「米は違う、米は物価統制令ではない」と呼ぶ者あり)やはりある程度消費者保護という面もまだ必要であるということで、現在は一部の商品にマル公が残つているわけであります。
  96. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも苦しい答弁だな。これは、私は前からお尋ねしているのだが、もういいかげんにそれはやめて——そういう答弁では、おそらくこれは納得がいかぬと思う。今のお話によると、酒類が騰貴する場合に、その価格を押える方法が、物価統制令以外にないのだ、こう言われる。それなら、もっと生産をふやすとかいうような方法があるので、酒だけを物価統制令で押えるというのは、おかしいと思う。ほかにもある。また酒は、高率な酒税を負担しているからというので、特に酒類業団体法というものを作つてある。そのほかに、まだ戦前の遺物を大事に使わねばならぬということはないはずです。どうですか、近いうちにこれはやめて、新しい制度に切りかえるという考えはないですか。それとも、これはこのままいつまでもいくつもりですか。
  97. 吉国二郎

    ○吉国説明員 この公定価格につきましては、ご指摘のような問題、私が先ほど申し上げましたような問題もいろいろございます。将来の公定価格のあり方につきましては、慎重に検討しながら、各種の条件を入れて検討していくということが必要だろうと思っております。
  98. 奧村又十郎

    ○奧村委員 主税局長も銀行局の方もお見えになつたのですが、せつかくやつたのだから、一つだけつけ加えて言いますが、今社会党の諸君から、本委員会の方へ、酒類業団体法に関する改正案が出ております。これは、やはりマル公の制度と直接間接関係があるわけです。ところで、どういう基準によってマル公というものをきめるのか。たとえば二百石か三百石の小メーカーの採算を基準にしてマル公をきめるのか、あるいは何万石もの大メーカーの採算によってマル公をきめるのか、いろいろな問題はあるはずなのだ。またそれに基いて、酒類業団体法というものは動いていかねばならぬ。現にマル公をお作りになつたところで、おそらく相当の値引きがあるはずだ。値引きがひどくなれば、これは仕方がない、マル公があつても、別に酒類業団体法に基いて業者の自主的な価格協定というものを作らねばならぬ。その自主的な価格協定を大蔵大臣に申請して認可を求めた場合に、一方にマル公がある、一方に業者の自主的な価格協定を申請した、では、大蔵大臣はどつちをとるかというふうな問題にもかかってくるから、もうここまでの段階に来たら、そういうあいまいな戦前の遺物にぶら下つたマル公制度を改めて、新しい事態に即応するような制度をお考えになるべきじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  99. 吉国二郎

    ○吉国説明員 ただいまお尋ねのございました、マル公制度のもとにおきまして酒類業組合法による価格の規制が協定されて申請された場合どうするか、ということですが、確かに二つの価格が出て参ります。ただ問題は、マル公は、御承知のように最高価格でございますので、それ以下で物品が売買されるということは、当然あり得るわけです。これが非常にはなはだしくなってくるということは、一面においては、公定価格自体にも一つ検討の余地があると思うのです。そういうときには、おそらく公定価格自体も再検討する必要がある事態だとは思いますけれども、それでなくとも、最近のように、業者問の条件がいろいろ異なってくれば、マル公自体が正当な計算で行われておつても、値引き等は起るわけです。そういう場合に、自主規制の協定によりまして、協定価格を申請するということが考えられるわけです。理論的には、両者が両立し得ないものではないと考えられるわけであります。
  100. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、この税関係の法案を総括した締めくくりの質問として、ぜひ大蔵大臣にお尋ねしたいことがあるのですが、大蔵大臣もあまり長時間わずらわすわけにもいかぬというのでありますから、政府委員一つお尋ねしますから、大臣にかわつて一つ御答弁を願いたいと思います。  実は、今度貯蓄減税の制度については、税法上かなり不公平なことになると思いますが、政府は、前から臨時税制調査会の答申などで、預貯金の利子免税は暫定的、過渡的な臨時措置であるから、なるべくそういう特別措置は改めたいという方針であったし、また税制調査会からも、そういう答申を出しておった。ところが今度貯蓄減税を実施されれば、この利子所得の免税の制度は、実際はうらはらをなしますが、一方に減税をやつて、一方に税金をかけるというのは、理屈に合わぬことになってきますのに、この利子所得の免税がまた延びるという感じがする。多年の懸案である利子所得の免税をやめて、やはりほかの所得と同様に、多少なりとも課税するという制度を一体いつから実施なさるつもりであるか。そういう方針をもうさらつとあきらめてしまつたのか、臨時税制調査会の答申なんかは、もうとんとおやりにならぬというのか、そこを一つ伺いたい。
  101. 坊秀男

    ○坊政府委員 奥村委員の常におつしやられるように、租税制度というものが公正でなければならないということは、いまさら言を待たないところであろうと思います。しかしながら、そのときそのときの財政経済事情に応じまして——まあ公正それ一本やりでいけば、一番いいのだろうと私も思いますけれども、これは、あえてそのときそのときの場当り制度というわけではございませんけれども、そのときに応ずる施策というものも考えなければなるまい、私かように考えております。
  102. 奧村又十郎

    ○奧村委員 税制というものは、一貫して公平な制度を維持していかにゃならぬ。それでは、今御答弁に漏れましたが、利子免税は、いつか改めて、常道に復さなければならぬが、それはいつもとに戻すのか。それをどうなさる。
  103. 坊秀男

    ○坊政府委員 利子免税制度というものは、これはやはり暫定的な制度でございまして、恒久的にとるべきものではないと思っておりますが、先ほど申し上げました通り、そのときの財政事情、経済事情等を勘案いたしまして、これは廃止できれば廃止すべきものでありますが、目下のところいつということを、私はここではっきりとお答え申し上げるわけには参らぬと思います。
  104. 奧村又十郎

    ○奧村委員 法律は、昭和三十四年の三月三十一日という期限をつけておる。この期限のついたものは、その期限が切れたら常道に復すべきものだというのが、臨時税制調査会の答申でもある。しかし今度利子減税をやれば、おそらくその期限通りに実施はできぬ。しかし、おそらく国民だれ一人といえども、このいわば不労所得である利子所得の免税などということに、不公平と感ぜぬ者はないと思う。しかし、金融のアンバランスその他の経済情勢上、臨時、暫定的にやむを得ぬということでやつてきたのであるならば、金融が正常に復して一定の時期に来たら、もとに戻すのだということを、政府は国民に明示しなければならぬ。そうすれば、昭和三十四年三月三十一日という期限が切れたら、常道に復すのですか。
  105. 坊秀男

    ○坊政府委員 法律に期限をきめておりますから、一応はさように予定はいたしておる次第でございますが、そのときの経済情勢のいかんによりましては、これはまた御審議を願つて、そのときに応じた処置をしていくことこなろうかと思います。
  106. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それは答弁があいまいなんです。この貯蓄減税は、昭和三十四年度一ぱい、たしか来年度の年度末まで恩恵を受ける。そうすると、それから据え置きして二年間据え置く。すると昭和三十五年と六年は据え置く。この据置期間の切れるまでは、利子免税というものは廃止して常態に戻すということはできぬことになる。国民はそういうふうな疑いを持つのですが、今のところは政府は、昭和三十四年の三月三十一日に期限が切れても、またそれを延ばすのだという予定のもとにこの制度を新たになさるのですか。
  107. 坊秀男

    ○坊政府委員 御意見でございますが、さような前提のもとにこの制度を考えたというわけではございません。
  108. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも御意見とおつしやられると困りますが、すると、もし昭和三十四年の期限が切れたあと常道に戻す、利子所得に課税する、所得そのものに課税しながら、一方においては貯蓄した分に対しては減税する。ずいぶん手数な、また理屈に合わぬこと、そういう時期が暫定的にあり得る、こういうことなんですか。
  109. 坊秀男

    ○坊政府委員 主税局長から御答弁させます。
  110. 原純夫

    ○原(純)政府委員 若干技術的なこともからまつておりますので申し上げますが、おっしゃるような御懸念は、あり得るとは思います。しがし、貯蓄控除をやれば、利子免税は必ずその間続けなければいかぬかどうかということになれば、私どもは必ずしもそうでもない。現にドイツは、貯蓄控除は長くやつておりますが、利子免税はございません。ごく一部の証券について、利子免税の課税の特例が若干あるようで、利子免税というものはないのです。また特別措置としてこれによって貯蓄を奨励するといいましても、利子免税は、実際申しまして、何か一般の利子と一緒になってしまつて、奨励効果と申しますか、そういうものが非常に高いかどうか、そういう点もまた検討のポイントになるわけで、私どもの気分として、こういう新しい制度を設けるのだがら、利子免税についても要求が強くなるという気分はわかりますけれども、やはりその辺は、それぞれの特別措置効果と犠牲と十分はかつて、そうして措置を講じていく。感じとしては、利子免税のように、効果がいわばマンネリズムになってしまうというようなものよりも、何か新手を打つなら新手を打つという式のアイデアがあつていいのじゃないか。そういうようなことから、期限がきて切るということがあつても、またそれも一つではないか。これは、私は必ず切ると申しておるのではありませんけれども、質問は、こういう新しいのをやるのだから、今までのももちろん続けるのだろう。それは、御気分はわかりますけれども、もう少し効果と犠牲を精細に判断して最後の結論は出すべきだというふうに考えますので、先ほど来政務次官も、そういうような意味合いでおっしゃっておるというふうに御承知願いたいと思います。
  111. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、ドイツの貯蓄減税の制度と一般的な利子所得に対する課税制度、その関連性を簡単に一つおっしゃっていただきたい。
  112. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ドイツの制度は、一九四八年に、ドイツが戦後新しい国民経済を、新しいドイッチェ・マルクというのを作つて、これでやつていこうというときに、新通貨ができた。しかし、もう貯金というものはなくなつちやつておるわけです。そこで、貯蓄の熱が非常に強いということから、そのときに貯蓄控除制度というものを始めたわけです。その後、当初は期限がなかったのを、一九四八年一ぱいということで期限を切つております。ただし、最近また大蔵大臣がかわつて、期限といいますか、これに対する力がもう少し入るというようなことにもなってきております。大体一九四八年から今まで約十年の間に、いろいろな変遷がございましたが、最近の状態では、所得税の、所得金額からの控除額に特別控除というものがあります。特別控除にはいろいろな項目があるのです。貯蓄控除のほかに保険料控除、社会保険料控除というふうなものまで入って、総体で特別控除という制度がある。その中に特別控除として、長期貯蓄をしたというだけで、一定限度までを入れてよろしいという制度になっております。特別控除の限度額は、私どもの承知しております最近の分としては、年額千マルク、それから配偶者がありますと、もう干マルクふえる。子供がありますと、一人について五百マルクふえるということになっております。一マルクは八十五円ばがりでありますから、納税者本人で八万五千円、配偶者がありますと十七万円、それに子供が一人について四万二、三千円ずつふえていく。ですから、子供が三人あるとしますと十二、三万になりますから、夫婦の分を合せて三十万くらいになります。保険料控除、社会保険料控除、その他相当多数の項目があります。いろいろなものについて出した額があり、あるいは貯蓄した額がある。そうすると、それらを合算して、今の三十万までは控除してよろしいということになっております。そこで、その控除の対象となる貯蓄というものは、どういう貯蓄であればよろしいかというと、三年以上の預入期間がなくてはいかぬ。今度の日本の制度は二年以上、これよりもきつく三年以上。そのかわり、受ける利益は、今申しましたように、貯蓄した額を全部控除する。ただし、最高限は、他と合せて今のような額ということになっております。なお年令が多い人は、控除の限度額はふえる。また、今の限度をこえてすぐ控除を与えないというのではなくて、こえても倍額になるまでは——今のは三十万円としますね、三十万円をこえるもう三十万円については、半額控除だということになっております。  大体そういうような制度が、ドイツの最近の制度であります。一応一九五八年末までになっておりますが、また大蔵大臣がかわつて、いろいろ税制面で研究中のようです。おそらく来年から改正になるかと思います。ドイツの制度について、ごく概略を申し上げますとそうであります。  それから第二段の利子所得に対する課税、これは、原則として総合で、普通通りに課税しております。ただし、特殊な証券について特例がございます。それを申し上げますと、据置期間三年以上の連邦債、州債、住宅債券というようなものについては、利子所得に対する課税は免除するというのがございます。それから、その他のものでありましても、それよりも若干ランクは下るが、それに類した性格を持つというものについて、六〇%の源泉徴収、それから三〇%の源泉徴収で、分離課税をするというものがございます。それの細目は、ここに資料を持っておりませんが、いずれにしましても、一般には総合課税をする。特殊のものについて、免税または三割か六割の源泉分離課税というような制度を持っておるように承知をしております。
  113. 奧村又十郎

    ○奧村委員 政務次官にお尋ねしますが、委員会の運営の都合上、なるべく質疑を簡単に、焦点をはっきりしてやれということですから、政務次官にお尋ねします。  私は、あまり議論にわたることはもうやめたいと思うのですが、ただこの貯蓄減税の基本的な考え方に、私は反対なんですけれども、事ここに至れば、もうやむを得ない。しかし、それにしても、総花にこの適用金融機関を指定するというのは、いかにしてもおかしい、政府の責任のがれでないか、初めての制度をやるのに、適用する金融機関ぐらいはもう少ししぼつて、まず政府の責任をはっきりさせるべきじゃないか、こういうことですので、これにしぼつてお尋ねをいたします。結論から言うと誓うと、政令案としてお出しになろうとする適用金融機関は、最初からこんなに総花にやらずに、一ぺんしぼつてつてみて、結果がよかったらまたあるいは広げてもいいが、最初からそうやるこことはいかぬ。だから、政令案はまだ閣議にかけておらぬのだから、奥村委員の言う通りに一ぺん考え直しますと言うなら、質問のやり方を変えてもいいが、どうしてもこれで突つぱつてやるというのなら、私もそれだけの説明をどうしても聞かなければならぬ、こういうことですが、なぜそれを言うかと申しますと、この貯蓄減税というものの目的は、あくまでも貯蓄増強にあるはずです。貯蓄増強ならば、まず政府のなすべきことは通貨の安定です。通貨の安定ということになれば、まず電気料の値上げだとか、消費者米価の値上げだとか、政府みずから物価を上げるようなことは慎しむということが、第一点でありますが、これは別の機会にして、第二段としては、預金者保護です。預金者保護のために、金融機関を十分監督しなければいかぬ、そして、金融秩序を守らなければいかぬ。これが肝心であつて、六千円も恩恵を与えて預けさせて、それがつぶれてお手上げになって、元も子も取れぬというのでは、これは貯蓄増強にはならぬじゃないですか。そうすれば、そういういろいろな手を打ってなおかつ最後にこういう貯蓄減税の手を打たれるのならばわかる。しかし、第二段の預金者保護は、それほど十分やつておるか、政府はそれほど責任を持てるか、この点にしぼつてお尋ねするのです。結論から言うと、政府は、預金者保護のためには、現在継続審議中である預金保障基金法案、それから、金融機関の経営保全等のための特別措置に関する法律案、こういうものを出して、これが法律にならなければ、政府としては安心できません、預金者保護ができませんと言うておられる。そういう不安な金融機関もなきにしもあらずであります。そうしたら、ますこの法律案を通して預金者保護を確実になさつて、その上の貯蓄減税じゃないか。だからその議論からいきまして、私は、まずこの適用金融機関は、この預金保障基金法案及び金融機関の経営保全等のための特別措置に関する法律案、これを法律にして、これの適用を受けて、政府がある程度の責任を持って預金者保護のできる金融機関にまずしぼるべきである。そうなるならば、銀行、相互銀行、信用金庫の程度にとどめるべきである。そうしてまた時期をあらためて、新たに政令の域を拡大すべきである。しかし、政府の政令案として先般来委員会に出された資料によるとずいぶん広範に出ておるんだが、政府は、その政令案を考え直しをするお考えはあるかないか、これを一つ承わりたい。
  114. 坊秀男

    ○坊政府委員 この預金先といたしましては、先般政府がお示しいたしました範囲を縮小するというような考えを目下のところは持っておりません。ただしかし、奧村委員の御意見のように、預金者を保護しなければならないということは、申すまでもないことでございますので、預金者の保護につきましては、万遺憾なきように努めて参るという考えでおります。先般の国会におきまして、遺憾ながら通りませんでしたが、預金者保護のための金融二法案といったようなものも、ぜひ一つ審議の上、通していただきますようにお願い申したい、かように考えております。
  115. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、政府の言われるのは、政令案は、最初出した案は変えない、しかし、現在提案中の経営保全等のための特別措置法案などは通してもらいたい、そうして、預金者保護の万全を期する、その点はよくわかりましたが、当委員会においては、預金保障基金法案や金融機関の経営保全等のための特別措置に関する法律案について、これを今国会中に審議終了して法律にするかどうかということについては、まだ方針がきまつておらない。そこで、この法律通り、施行されて、預金者保護が十分できるようになってから、これの適用を受ける金融機関を政令で入れる、それまでは政令は待つ、そういうことにすべきと思うが、どうですか。
  116. 坊秀男

    ○坊政府委員 御意見ではございますが、この貯蓄減税制度と預金者保護のための二法案とは、もちろん関係のない法律ではございませんが、性質上は、これは別個の法律として、貯蓄減税につきましては、金融二法案と別個に一つ扱いを願いたい、かように考えております。
  117. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは、おかしい御答弁で、政府は、この二法案が通過しなければ十分な預金者保護ができないというのでしよう。預金者保護がまず貯蓄増強の前提であると言われるが、それなら、すでに去年の三月に出された金融制度調査会の答申にどう書いてあるか。やはり中には、経営の弱体なものもある、しかし現行法では、いわゆる業務停止という最後的な手段しか規定してないので、一応ささえれば再建ができるという場合の規定がないから、またそういう法律の必要な金融機関があるから、この際この法律は必要だというので、去年お出しになって、これは緊急に通さなければならぬ、こういうことなんでしよう。そうすると、去年と今とは情勢が変つたのですか、あるいは政府方針が変つたのですか。
  118. 坊秀男

    ○坊政府委員 私が御答弁申し上げましたのは、金融二法案がなければ預金者保護ができないというふうに申し上げたのではございません。現状におきましても、預金者保護に万全を期して、支障のないようにいたしていくつもりであります。ところが、これらの二法案審議、御成立願えますれば、さらに一そうこの預金者の保護に一歩を進めることができる、そこで、この二法案にも期待をかけておるということを申し上げたのでございまして、この二法案がなければ預金者保護ができないというふうに申し上げたのではございません。
  119. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうすると、この金融制度調査会の答申も、またこの二法案がなくとも預金者保護は確実にできる、こう言われるのですか。
  120. 坊秀男

    ○坊政府委員 預金者保護につきましては、現在におきましても、個々の場合には、これは人間の社会でございますから、大きな口をきけぬ場合もありましようけれども、大蔵省といたしましては万全を期してやっていく。しかし、この二法案といったようなものを御制定願えれば、さらに一段と預金者保護について歩を進めることができる、かように申し上げたのであります。
  121. 奧村又十郎

    ○奧村委員 政務次官だから、あまり突つ込めぬけれども、そういう答弁で事が通るのでは、われわれ国会議員は必要ない。金融制度調査会は、税制調査会とは違つて、大蔵省設置法によってちゃんとできておるが、これはまだ存続しておるのでしよう。それならば、この貯蓄減税は、これは諮問をかけたのですか、かけなかったのですか。
  122. 坊秀男

    ○坊政府委員 奧村委員十分御案内の通りだと思いますが、この貯蓄減税制度は税法でありますから、金融制度調査会にはかけておりません。
  123. 奧村又十郎

    ○奧村委員 何ということをあなたはおっしゃるのですか。大蔵大臣ではないから、なるべく適当に質問しようと思っているのだが、これは金融制度ではないのですか。年間六千円ずつの減税の恩典を与える指定金融機関として国が指定するということは、これは、金融制度とは違うのですか。所得税の免税ならこれは別として、今度は、勤労所得その他あらゆる所得税の税額を控除する一つの補助金的な、奨励金的なものです。それなら、特別にこういう金融機関にはとうてい、ある程度選択して、政府が奨励的に指定すべきです。これは、金融制度とは関係がないというのですか。
  124. 坊秀男

    ○坊政府委員 貯蓄税制度は、本来これは税法の制度でございまして、むろん金融制度に関係がないとは申しません。ないどころではない、非常にありますけれども、金融制度調査会にはかけておりません。
  125. 奧村又十郎

    ○奧村委員 しかし、すでに昨年の一月に、金融制度調査会預金者保護のために、また金融機関の再建整備のためにこの二法案が必要なんだといって答申して、それに基いて政府が提案してきておるが、これがいまだに法律にならぬ。そこにまた新たに、こういう二法案がなければ預金者保護が完全にできないというにもかかわらず、その金融機関に今度は貯蓄減税の恩典を扱わせるというのなら、新たな事態でから、金融制度調査会にも一応御相談をかけて、諮問をすべきです。どうですか。
  126. 大月高

    ○大月説明員 金融制度調査会は金融制度についての調査をするのでありまして、たとえば地方銀行という金融機構をどうするとか、あるいは信用金庫をどうするとか、あるいは為替銀行をどうするとか、そういう機構面から論じておるわけでありまして、今提出しております二法案につきましても、これは、預金保障基金という一つの金融上の制度を作る意味であります。それから経営保全の法律は、銀行法の特例になるわけでありまして、銀行という金融機関をどういうふうにしていくかという面から取り上げておるのであります。今回の貯蓄に対する税の問題は、結局税制としていかなるものを遇するかという観点からお考え願つておるわけでありまして、別個の問題としてわれわれは承知しております。
  127. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも政府は、税制特別調査会とか、金融制度調査会とかを作つて答申を求めるけれども、都合のよいものはとるし、都合の悪いものはてんから相手にしない。便利のよいときには利用するが、便利が悪くなつたら全然問題にしないという政府審議会とか調査会に対する態度というものは、全く政府自身勝手なもので、そういう態度だから、調査会などの答申もまた中途半端な、いいかげんな答申をするということになって、困つたものですが、これは、議論にわたりますからやめておきます。  それから信用組合の中で、四つ業務停止を受けておりますが、ここに預けた預貯金も、やはり貯蓄減税の恩恵を受けるわけですか。
  128. 大月高

    ○大月説明員 業務停止を受けております金融機関につきましては、預金の受け入れが停止されておるわけでありますから、当然新規の預金は受け入れない、従って、この制度につきましては、新しく預入されるものについての法律でありますので、当然適用はないわけであります。
  129. 奧村又十郎

    ○奧村委員 業務停止を受けても、これは明確に業務停止になっておりますか。大蔵大臣の業務停止の処分をしておるのですか。そうなっておらぬはずです。
  130. 大月高

    ○大月説明員 信用組合の監督は、直接都道府県がやつておりますので、大蔵大臣は、この点については関与いたしておりません。しかし、法律上の制度として都道府県で処置いたしておるものと承知いたしております。
  131. 奧村又十郎

    ○奧村委員 信用組合も、金融機関として特に銀行法を適用する。業務停止などの規定は、銀行法を適用する。そうすれば、金融行政の所管は大蔵大臣であり、少くとも金融機関が業務停止をするということになれば、信用組合といえども、信用金庫あるいは相互銀行その他の金融機関に影響を及ぼす。だから、もちろんこれは大蔵大臣に相談があったはずです。これは、業務停止なんですか、業務停止ではないのですか。
  132. 大月高

    ○大月説明員 ただいまのお話は、具体的なお話ではございませんので、考え方と申し上げておるわけでございますが、法律上の業務停止をする権限は、都道府県知事にあるわけでございまして、大蔵大臣としては、事実上いろいろ専門家としての意見を徴されることはございましても、権限としては、都道府県知事にあるわけでございます。
  133. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは、私は疑いがあります。それじや百歩譲つて地方長官の処分でよろしいが、その地方長官の処分として、これは銀行法第十九条の業務停止なんですか。
  134. 大月高

    ○大月説明員 信用組合法の言葉は、銀行法準用となっておりますから、これは適用ではございません。銀行の監督は大蔵大臣がやるので、大蔵大臣が直接業務停止をいたしますが、現在の監督官庁である府県知事が、それと同じ権限を行使するという意味で、準用という言葉が使つてあるわけでございまして、法律上の権限は、銀行法ではなくて信用組合法である、こういうふうに御承知願いたいと思います。
  135. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それは、信用組合法の規定に基いて、銀行法十九条を準用することになっておるのですね。そこで、昭和三十一年に四信用組合が事実上業務をやめておる。これは、銀行法十九条の適用を受けたのですか、受けないのですか。ずいぶんたくさんな預貯金者が、訳わからずに預貯金が引き出せないという状態で、今二年年間経過しておる。これは、預貯金者保護の責任を持つならば、法律に基いた処分がなければならぬが、十九条の準用をしたのかしないのか、それはどうですか。
  136. 大月高

    ○大月説明員 その四つというお話でございますが、それは、いかなる信用組合か、ちょっとわかりませんが、もし法律上の要件にかなって業務停止ということをやつたといたしますれば、今私が申し上げました通り、信用組合に関する法律に基いて、銀行法を準用して都道府県知事がやつた、こういうふうに考えます。しかし金融機関が仕事を休みますのは、必ずしも法律政府の側において業務停止を命ずるばかりではないわけでございまして、みずから経常の破綻を来たす、あるいは何らかの都合で全然金融業務をやめる、あるいは休むというようなこともあるわけでございますから、もしかりに自発的に仕事を今休んでおるということでございましたら、これは、銀行法十九条の関係でなしに、単に営業を休止しておる、こういう法律関係だと承知いたします。
  137. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも重ねてお尋ねしても、すでに二年前に事実上業務を休んでおるのに、それが銀行法十九条によるものかよらぬものか、それがわからないというふうな答弁ではおかしい。金融行政の主務大臣大蔵大臣にはこれは当然協議をかけておるはずであります。それがわからぬ。それじや預金者保護の監督ができるかということです。  そこで、これ以上その問題は追求せずに、別の角度からお尋ねしますが、各組合数千万円、総額何億数千万円の預貯金が事実上払えない、それで、期限がきても受け取れないという場合には、政府法律に基いての責任があるでしよう、その責任を政府は果しておるか。
  138. 大月高

    ○大月説明員 預貯金の払い戻しに関する責任は、それぞれの金融機関にあるわけでございまして、政府はそういう法律上の意味において、何ら責任を負つておりません。
  139. 奧村又十郎

    ○奧村委員 委員長大蔵大臣に対する質疑をさせていただきたい。
  140. 足鹿覺

    足鹿委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  141. 足鹿覺

    足鹿委員長 速記を始めて。  暫時休憩いたします。     午後四時七分休憩      ————◇—————     午後四時十三分開議
  142. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。奧村又十郎君。
  143. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの私の質問に対して、まだ不明確な点もありますが、政府の方で、この政令はまだ閣議決定も経ていないことでもあるし、再検討なさるようであれば、私もまだ今後質問する機会もあるわけでありますから、重ねて政府に、再検討なさるかどうかということについて承わつておきたいと思います。
  144. 坊秀男

    ○坊政府委員 先刻来奥村委員の御質問の件につきましては、今後政令段階におきまして、よく研究をいたして参りたいと思います。
  145. 足鹿覺

  146. 横山利秋

    横山委員 まだいろいろと質問も残つておるのでありますが、大臣も御出席ありませんし、問題も細目にわたりますので、一応この点の質疑は、他の機会に譲ることにいたしまして、質問を打ち切ります。
  147. 足鹿覺

    足鹿委員長 御報告申し上げます。租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しまして、大平正芳君外二十五名より修正案が提出されております。この際提出者の趣旨説明を求めます。大平正芳君。     —————————————     —————————————
  148. 大平正芳

    ○大平委員 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、修正の趣旨を御説明いたします。  修正案の案文につきましては、お手元に配付してありますからごらん願うことにして、朗読を省略させていただきます。  今回貯蓄の増強に資するための臨時措置として創設されます貯蓄控除制度の対象となる貯蓄につきましては、改正案の第四十一条の二におきまして、預貯金、証券及び生命保険ということになっておりますが、そのうちには、相互銀行の主要業務である相互掛金が含まれないことになっております。ところが、相互掛金の中には、現在貯蓄目的のために活用されているものもあるのでありまして、その割合は、契約高中、金額にいたしまして約二〇%、件数にいたしまして約三〇%を占める現状であります。また相互銀行におきましては、相互掛金について、主として貯蓄目的とするものと、主として融資を目的とするものとを作りまして、前者、すなわち主として貯蓄目的とする相互掛金契約により貯蓄性資金の獲得の積極化に努力している実情でございます。  以上のような点から考えまして、この際貯蓄的性質を持つ相互掛金につきましても、これを貯蓄控除制度の対象の中に含めるのが当然かつ妥当と認められる次第でありまして、これが本修正案を提出いたしましたおもなる理由でございます。  何とぞすみやかに御審議の上、満場の御賛成をお願いいたします。
  149. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて、修正案の趣旨説明は終りました。  これにて所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の四法律案、並びに法人税法の一部を改正する法律案に対する横山利秋君外十二名提出の修正案、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する横山利秋君外十二名提出の修正案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する大平正芳君外二十五名提出の修正案の三修正案の各案に対する質疑は終了いたしました。  次に、国会法第五七条の三の規定により、予算を伴うこととなる修正につきましては、内閣に対し意見を述べ機会をあたえることとなっておりますので、この際、法人税の一部を改正する法律案に対する横山利秋君外十二名提出の修正案につきまして、内閣において御意見があれば、述べていただきたいと存じます。大蔵政務次官坊秀男君。
  150. 坊秀男

    ○坊政府委員 本修正案に対しましては、次の理由からから反対でございます。  第一に、修正案による各種の法人税率は、いずれも所得税及び法人税を通じた税制の根本に触れる問題を含んでおり、このような改正については、広く意見を徴して、十分理論的、実証的な検討を経ることが必要であること。たとえば、修正案のように法人税率を細分化することは、法人税制の建前から好ましくなく、また三〇%の最低税率を設けることは、現行所得税の配当控除率との関係からも問題があること。  第二に、三〇%の最低税率を設けることは、個人に対する税負担との間に不均衡を招くことになるので、法人成りの多い現状においては適当でないこと。  第三に、法人の税負担の現況及び本年度における租税特別措置の整理による負担増加等に顧みるときは、政府案のような法人税率の一率引き下げを行うことが必要であり、修正案のように、年二百万円をこえる所得に対する税率を据え置く等の措置は適当でないこと。  以上でございます。
  151. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて内閣意見の陳述は終りました。  次に、横田委員より、所得税の減税に関する件について発言を求められております。この際、これを許します。横山利秋君。
  152. 横山利秋

    横山委員 私は、所得税減税に関する件について、本委員会において決議をされるよう提案するものであります。  まず案文を朗読いたします。    所得税減税に関する決議   政府は標準家族年三十二万円迄は課税を免除する所得税改正案を中心とする低額所得者のための減税法案提出すべきである。   右決議する。  理由を申し上げます。昭和三十三年度における政府税制改正案は、減税預金、法人税、相続税、酒税を中心とするものでありますが、そのいずれもが低額所得者に恩恵をもたらすものではありません。  そもそも、昨年一千億の減税が行われましたが、その内容は、高額所得者に重点が置かれたのみならず、その後の米価、運賃を中心とする物価の値上りによって、低額所得者に対しては、全くその効果を失っております。  明年度における自然増収は一千億に達し、経済情勢の激変は、経済政策としても減税を必要ならしめておる実情であります。  この際政府は、生活費に課税せずとの原則及び租税公平の原則を貫くべく、税制調査会の根本方針を尊重し、主題のごとく低額所得者中心の減税を断行すべきであると考えられるのであります。  以上であります。何とぞ御賛成あらんことを希望いたします。
  153. 足鹿覺

    足鹿委員長 お諮りいたします。ただいま横田委員提案の決議案委員会の決議とするに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  154. 足鹿覺

    足鹿委員長 起立少数。よって、本決議案は否決されました。  続いて、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の四法律案並びに法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案、の二法律案に対する横山利秋君外十二名提出の修正案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する大平正芳君外二十五名提出の修正案の三修正案の各案を一括して討論に入ります。横山利秋君。
  155. 横山利秋

    横山委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、社会党提出の修正案に賛成し、政府提出の原案に対して反対をするものであります。  今回の税制改正法律案は、予算編成のときと同様に、まことにその経過について感心しないものがあるのであります。何となれば、昨年九月ごろの明年度予算編成大綱におきましては、減税のことについては何らも触れず、その後において相続税、続いてにわかに間接税、さらに必要に応じて入場税最後に当面の減税というふうに、きわめて幾変遷をたどつておるのでありまして、それがために調査会におきましても、根本的な改正、根本的な検討もし得られず、枝葉末節の改正にとどまつた観がございまして、でき上つたものを見ましても、そのことごとくといっていいほど低額所得者には縁もゆかりもないものであります。特に一萬田大蔵大臣の提案ともいうべき減税預金がそうでありまして、本件に関しましては、奇妙なことに、社会党のみならず、与党の中にもこれに対して重大なる疑義があるというのであります。今日の預貯金の利子等につきましては、その定期制預貯金については無税という恩典があるのみでなく、幾重にも恩恵が施されておるのでありまして、ここに新たに二年間預貯金をし、あるいは株を買つて塩つけにしておいた人々に対しては、三分に相当する金を税金から負けてやろうというのは、これは、恩恵にしてもあまりにも過大といわなければなりません。一体この世の中に、ニカ年間金を預けていける人はどういう人であろうかといいますと、かりに限度額六千円を例にとつてみますならば、六千円を税金からまけてもらうためには、二十万円も預貯金をする、収入の一割を貯金するとして、この人は年間二百万円、月にして十七万円以下の収入の持主であります。こういう人は、経営者か、あるいは金持ちでありまして、そういう人は、金を遊ばせておくようなことはないのでありまして、せいぜい税金を負けてもらうのだから、事業につぎ込んでおつた金を預貯金に回すか、株を買うかする振りかえにすぎないのであります。政府がかねや太鼓で政策貯金を増加しろといったところで、結局貯蓄の総額は、一向ふえないものといわなければなりません。しかも政府は、この預金者保護に名をかりて、一方では、勤務先預金は適用しない、正規の金融機関でなければいけないといい、他方では、取扱い証券業者を厳選するということになり、あるいは適用銘柄も内面指導ということでありますから、実は金融機関に奉仕し、中小証券業者や小規様の株主等に差別待遇を与えるものというべきでありまして、証券市場に混乱をもたらすでありましようし、大資本や金融機関を擁護する政府の正体が見えたりといわなければなりません。しかも、課税の公平の原則からいいましても、これは明らかに今日までの方向と逆行をするものであります。法人税がまたそうであり、中小企業擁護のスローガンを政府から聞くこと久しいものでありますが、一体今日、不況に真に苦しんでいる者はだれかといいますと、資本も乏しく、昼はひねもす夜は夜もすがら汗して働く零細企業者でありまして、一率に二%といいながら、実は百万以上、二百万以下には七%の重点減税でありますし、高額になればなるほどその減税率は大になるのであります。従って、私どもは、社会党の主張のごとく、五十万までは三〇%に断行すべきことが、今日最も叫ばれておる中小企業擁護の道であると考えておるのであります。  関税定率法にいたしましても、今日の国際的な、国策的な立場、政府から言われておる立場から考えましても、もうこの辺で、根本的な改正をすべきものでありまして、いたずらに時限立法を延長するというような姑息の手段につきましては、私どもの賛成するところではありません。  所得税の改正は、今回はまことに事務的改正ともいうべく、問題の本質を取り違えているのであります。  以上のごとく、租税の原則に逆行するやり方よりも、生活費に課税をしない公平の原則に立って租税制度をきめる、こういう建前からいうならば、先ほどわが党が提案いたしましたように、標準家族三十二万円までは無税という立場を、声を大にして私どもは主張いたしたいところであります。皮肉なことには、一萬田大蔵大臣税制は、口に低額所得者の減税を唱えながら、今日までそのいたして参りましたところは、常に大資本中心であり、政策減税であるのでございまして、これでは、日ごろの公約に全く背反しているといわなければなりません。  今や、不況度合いはきわめて深刻であります。今後まだこれは継続するでありましよう、減税をしたらインフレになり、また財源に困る、こういうような御意見がございますが、一方においてはたな上げをしておいて、財源がないということは聞えない話でありまして、不況の中で何をすべきかは、岸総理大臣の御親友のアイゼンハワーが、減税を断行して不況を克服しようとする腹を持っておることを、よくよく総理並びに大蔵大臣は考えるべきであると思うのであります。  ここに私どもから提案をいたしました修正案につきまして、政府及び与党が十分に考えられ、そうして、満場一致賛成せられることを望みたいのでありますが、私どもの主張に対して、特別の御賛成を願いたいところであります。  ここに日本社会党を代表いたしまして、修正案に賛成し、原案に対して反対をいたすものであります。
  156. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて討論は終局いたしました。引き続き採決に入ります。まず所得税法等の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して採決いたします。両案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  157. 足鹿覺

    足鹿委員長 起立多数。よって両案は原案の通り可決いたしました。  次に、法人税法の一部を改正する法律案及びこれに対する横山利秋君外十二名提出の修正案について採決いたします。  まず修正案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  158. 足鹿覺

    足鹿委員長 起立少数。よって本修正案は否決されました。  続いて原案について採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  159. 足鹿覺

    足鹿委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する横山利秋君外十二名提出の修正案並びに大平正芳君外二十五名提出の修正案について採決いたします。  まず横山利秋君外十二名提出の修正案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 足鹿覺

    足鹿委員長 起立少数。よって本修正案は否決されました。  次に、大平正芳君外二十五名提出の修正案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  161. 足鹿覺

    足鹿委員長 起立多数。よって本修正案は可決されました。  続いてただいま議決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これを原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  162. 足鹿覺

    足鹿委員長 起立多数。よって本案は修正議決されました。  なおこの際お諮りいたします。ただいま議決いたしました四案に対する委員会報告書の作成並びに提出等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十四分散会      ————◇—————